(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】空気供給システム
(51)【国際特許分類】
B01D 53/26 20060101AFI20240422BHJP
B60T 17/00 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
B01D53/26 230
B60T17/00 B
(21)【出願番号】P 2020562471
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2019051356
(87)【国際公開番号】W WO2020138390
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2018246454
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】510063502
【氏名又は名称】ナブテスコオートモーティブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【氏名又は名称】藤井 稔也
(72)【発明者】
【氏名】杉尾 卓也
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-276591(JP,A)
【文献】特表平04-502740(JP,A)
【文献】特開平08-159041(JP,A)
【文献】特表2004-537469(JP,A)
【文献】国際公開第2010/095754(WO,A1)
【文献】特開2004-124711(JP,A)
【文献】国際公開第2019/235583(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/26
B60T 17/00
F04B 39/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンプレッサから供給される圧縮空気を、フィルタと逆止弁とを有するエアドライヤを介して、上流から下流に流す供給動作を行う空気供給システムであって、
前記逆止弁の下流における空気圧を検出する圧力センサと、
前記供給動作と、非供給動作とを切り替え、前記非供給動作中に前記フィルタを再生する再生動作を行う制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記圧力センサによって検出された検出空気圧との比較に基づいて前記供給動作を開始させる供給開始値を備え、
前記制御装置はさらに、前記検出空気圧が前記供給開始値よりも高いときであっても前記供給動作を開始する供給開始条件を備え、
前記供給開始条件は、前記非供給動作の継続時間が、前記供給開始値よりも高くて前記非供給動作を開始させる供給停止値から前記供給開始値まで空気圧が低下することに要する所定の期間よりも長いことを含む、
空気供給システム。
【請求項2】
コンプレッサから供給される圧縮空気を、フィルタと逆止弁とを有するエアドライヤを介して、上流から下流に流す供給動作を行う空気供給システムであって、
前記逆止弁の下流における空気圧を検出する圧力センサと、
前記供給動作と、非供給動作とを切り替え、前記非供給動作中に前記フィルタを再生する再生動作を行う制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記圧力センサによって検出された検出空気圧との比較に基づいて前記供給動作を開始させる供給開始値を備え、
前記制御装置はさらに、前記検出空気圧が前記供給開始値よりも高いときであっても前記供給動作を開始する供給開始条件を備え、
前記供給開始条件は、走行状態が前記検出空気圧の時間当たりの低下量が少ないことに基づいて前記制御装置が判定した空気消費量の少ない走行状態であること、かつ、前記検出空気圧が前記供給開始値よりも高い所定の空気圧以下であることを含む、
空気供給システム。
【請求項3】
前記逆止弁の下流には、エアタンクが設けられており、
前記検出空気圧は、前記エアタンク内の空気圧である、
請求項1
又は2に記載の空気供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器に圧縮空気を供給する空気供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
トラック、バス、建機等の車両においては、コンプレッサから送られる圧縮空気を利用して、ブレーキ及びサスペンション等を含む、空気圧システムが制御されている。この圧縮空気には、大気中に含まれる水分及びコンプレッサ内を潤滑する油分等、液状の不純物が含まれている。水分及び油分を多く含む圧縮空気が空気圧システム内に入ると、錆の発生及びゴム部材の膨潤等を招き、作動不良の原因となる。このため、コンプレッサの下流には、圧縮空気中の水分及び油分等の不純物を除去するエアドライヤが設けられている。
【0003】
エアドライヤは、圧縮空気から油分及び水分を除去する除湿動作と、乾燥剤に吸着された油分及び水分を乾燥剤から取り除き、ドレンとして放出する再生動作とを行う。例えば、エアドライヤが再生動作を行うための技術が特許文献1に記載されている。
【0004】
特許文献1に記載の空気供給システムは、エアコンプレッサによって圧縮された空気をエアタンクに貯留する。空気供給システムは、エアタンク内の空気圧が第1圧力以下であるとき、空気圧が上昇して第2圧力に到達するまで、エアコンプレッサを駆動して圧縮空気をエアタンクに供給する。空気供給システムは、空気圧が第2圧力に到達したとき、エアコンプレッサによる圧縮空気のエアタンクへの供給を停止するとともに、排出弁(パージバルブ)を開弁する。空気供給システムは、その後、空気圧が第3圧力に低下するまでこの開弁状態を維持することによってエアタンク内の圧縮空気をエアドライヤに通過させて大気に排出する、再生動作を行う。空気供給システムは、エアタンク内の空気圧が第3圧力に到達したとき、排出弁を閉弁する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の空気供給システムは、機器供給に適した第3圧力よりも高い第2圧力まで空気圧を高くしてから再生動作を行う。そのため、この空気供給システムでは、エアタンクの空気圧が、使用時最大圧である第3圧力を越えて、第3圧力よりも高い供給停止圧力である第2圧力になるまで、コンプレッサが継続運転される。第3圧力から第2圧力になるまでコンプレッサが継続運転されることに応じてエアドライヤの通気量が増えることにより、エアドライヤの除湿性能等が低下するおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、エアドライヤの性能低下を抑制することのできる空気供給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する空気供給システムは、コンプレッサから供給される圧縮空気をフィルタと逆止弁とを有するエアドライヤを介して上流から下流に流す供給動作を行う空気供給システムであって、前記逆止弁の下流における空気圧を検出する圧力センサと、前記供給動作と、非供給動作とを切り替え、前記非供給動作中に前記フィルタを再生する再生動作を行う制御装置とを備え、前記制御装置は、前記圧力センサによって検出された検出空気圧との比較に基づいて前記供給動作を開始させる供給開始値を備え、前記制御装置はさらに、前記検出空気圧が前記供給開始値よりも高いときであっても前記供給動作を開始する供給開始条件を備える。
【0009】
この場合、検出空気圧が供給開始値になる前に供給動作が開始されることから、フィルタを通過する空気量が少なくなるので、フィルタに蓄積される油分及び水分が少なくて済む。また、油分及び水分の蓄積が少ないうちに再生動作を行うことによって、フィルタを高いレベルで再生させることができる。また、油分及び水分の蓄積が少ないうちに再生動作を行うことによって、フィルタに油分及び水分が定着することが抑えられる。よって、エアドライヤの性能劣化が抑制されるようになる。
【0010】
さらに、供給停止値を変更せず、供給開始値よりも高い検出空気圧でも供給動作を行うことから、空気圧の影響を多少なりとも受ける再生動作における再生能力が通常通りに発揮される。
【0011】
一実施形態では、前記供給開始条件は、前記非供給動作の継続時間が所定の期間よりも長いことを含んでよい。
この場合、圧縮空気の使用量の少ない状況においても定期的に再生動作が行われる。
【0012】
一実施形態では、前記供給開始条件は、前記検出空気圧が前記供給開始値よりも高く、かつ、前記供給開始値よりも高くて前記検出空気圧との比較に基づいて前記非供給動作を開始させる供給停止値よりも低いことをさらに含んでよい。
【0013】
この場合、圧縮空気が消費されていないときに圧縮空気が供給されることを防止することができる。
一実施形態では、前記供給開始条件は、走行状態が空気消費量の少ない走行状態であること、かつ、前記検出空気圧が前記供給開始値よりも高い所定の空気圧以下であることを含んでよい。
【0014】
この場合、走行状態に応じたフィルタの性能低下が抑制されるようになる。
一実施形態では、前記制御装置は、前記検出空気圧の時間当たりの低下量が少ないことに基づいて、前記走行状態が前記空気消費量の少ない走行状態であることを判定してよい。
【0015】
この場合、検出空気圧の時間当たりの低下量から走行状態を判定することができる。
一実施形態では、前記制御装置は、車両の制御装置から伝達される信号に基づいて、前記走行状態が前記空気消費量の少ない走行状態であることを判定してよい。
【0016】
この場合、車両から伝達される信号に基づいて空気圧の低下量の少ない走行状態を判定することができる。
一実施形態では、前記逆止弁の下流には、エアタンクが設けられていてよく、前記検出空気圧は、前記エアタンク内の空気圧であってよい。
【0017】
この場合、エアタンク内の空気圧に基づいて、供給動作、非供給動作、再生動作を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】空気圧システムに用いられている空気供給システムの一実施形態の概略構成を示すブロック図。
【
図2】同実施形態における空気供給システムの概略構成を示す構成図。
【
図3】同実施形態におけるエアドライヤの動作モードを示す図であって、(a)は供給動作を示す図、(b)はパージ動作を示す図、(c)は再生動作を示す図。
【
図4】同実施形態における空気供給状態を空気圧により示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1~
図4を参照して、空気圧システムに含まれる空気供給システムの一実施形態について説明する。空気供給システムは、トラック、バス、建機等の自動車に搭載されている。
【0020】
図1を参照して、空気圧システムの概要について説明する。
空気圧システムでは、コンプレッサ4、エアドライヤ11、保護バルブ12、エアタンク13、ブレーキバルブ14、及びブレーキチャンバー15が、順次、空気供給路4E,11E,12E,13E,14Eを介して接続されている。このうち、コンプレッサ4、エアドライヤ11、及び保護バルブ12が、空気供給システム10を構成する。
【0021】
コンプレッサ4は、自動車のエンジン(図示略)の動力によって駆動され、空気を圧縮して、空気供給システム10に圧縮空気を供給する。コンプレッサ4は空気供給路4Eを介してエアドライヤ11に接続されている。
【0022】
エアドライヤ11では、コンプレッサ4から送られた空気がフィルタ17(
図2参照)を通過することによって、空気中の不純物が捕捉され、空気が清浄化される。このように清浄化された空気は、空気供給路11E、保護バルブ12及び空気供給路12Eを介して、エアドライヤ11からエアタンク13に供給される。
【0023】
エアタンク13は、空気供給路13Eを介して、運転者によって操作されるブレーキバルブ14に接続されている。ブレーキバルブ14は、空気供給路14Eを介してブレーキチャンバー15に接続されている。よって、ブレーキバルブ14の操作に応じて、空気がブレーキチャンバー15に供給され、それによってサービスブレーキが作動する。
【0024】
また、空気供給システム10は、制御装置としてのECU80を備えている。ECU80は、配線E62,E63を介してエアドライヤ11に電気的に接続されている。また、ECU80は、配線E65を介して圧力センサ65に電気的に接続されている。ECU80は、圧力センサ65によって保護バルブ12における空気圧を検出する。圧力センサ65の検出信号から、エアタンク13の空気圧に相当する検出空気圧が得られる。また、ECU80は、配線E66を介して温湿度センサ66に接続されている。ECU80は、温湿度センサ66によってエアタンク13の圧縮空気の湿度を検出する。さらに、ECU80は、空気供給システム10を搭載する車両の各種信号を取得可能であるように、車両ECU100に電気的に接続されている。
【0025】
ECU80は、図示しない演算部、揮発性記憶部、不揮発性記憶部を備えており、不揮発性記憶部に格納されているプログラムに従って、エアドライヤ11に各種動作を指定する信号等を与える。
【0026】
図2を参照して空気供給システム10について説明する。
エアドライヤ11は、メンテナンス用ポートP12を有している。メンテナンス用ポートP12は、メンテナンスの際にエアドライヤ11のフィルタ17の上流に空気を供給するためのポートである。
【0027】
ECU80は、配線E63を介してエアドライヤ11の再生制御弁21に電気的に接続され、配線E62を介してエアドライヤ11のガバナ26に電気的に接続される。
図3を参照すると、エアドライヤ11は、内部空間11Aにフィルタ17を備えている。フィルタ17は、上流にあるコンプレッサ4からの空気供給路4Eと下流にある保護バルブ12につながる空気供給路11Eとを接続する空気供給通路18の途中に設けられている。
【0028】
フィルタ17は、乾燥剤を収容するとともに、濾過部を備える。フィルタ17は、空気を乾燥剤に通過させることによって空気に含まれる水分を空気から除去して空気を乾燥させるとともに、空気に含まれる油分を濾過部によって除去して空気を清浄化する。フィルタ17を通過した空気は、フィルタ17に対して下流への空気の流れのみを許容する逆止弁としてのチェックバルブ19を介して、保護バルブ12へ供給される。つまり、チェックバルブ19は、フィルタ17を上流、保護バルブ12を下流としたとき、上流から下流への空気の流れのみを許容する。
【0029】
戻って
図2を参照すると、チェックバルブ19には、チェックバルブ19を迂回(バイパス)するバイパス流路20がチェックバルブ19と並列に設けられている。バイパス流路20には、再生制御弁21が接続されている。
【0030】
再生制御弁21は、ECU80によって制御される電磁弁である。ECU80は、配線E63を介して再生制御弁21の電源の入り切り(駆動/非駆動)を制御することによって、再生制御弁21の動作を切り替える。再生制御弁21は、電源が切れた状態において閉弁してバイパス流路20を封止し、電源が入った状態において開弁してバイパス流路20を連通させる。例えば、再生制御弁21は、検出空気圧の値が供給停止値を越えたとき駆動される。
【0031】
バイパス流路20には、再生制御弁21とフィルタ17との間にオリフィス22が設けられている。再生制御弁21が通電されると、エアタンク13の圧縮空気が、保護バルブ12を通じバイパス流路20を介して、オリフィス22によって流量を規制された状態で、フィルタ17に送られる。フィルタ17に送られた圧縮空気は、フィルタ17を下流から上流に向けて逆流する。このような処理は、フィルタ17を再生させる処理であり、エアドライヤの再生処理という。このとき、エアタンク13内の乾燥及び清浄化された圧縮空気がフィルタ17を逆流することによって、フィルタ17に捕捉された水分及び油分がフィルタ17から除去される。例えば、再生制御弁21は、所定の期間だけ開弁するように制御される。この所定の期間は、フィルタ17を再生することのできる期間であって、論理的、実験的又は経験的に設定される。
【0032】
コンプレッサ4とフィルタ17との間の部分から、分岐通路16が分岐している。分岐通路16にはドレン排出弁25が設けられており、分岐通路16の末端にはドレン排出口27が接続されている。
【0033】
フィルタ17から除去された水分及び油分を含むドレンは、圧縮空気とともにドレン排出弁25に送られる。ドレン排出弁25は、空気圧により駆動される空気圧駆動式の弁であって、分岐通路16において、フィルタ17とドレン排出口27との間に設けられている。ドレン排出弁25は、閉弁位置及び開弁位置の間で位置を変更する2ポート2位置弁である。ドレン排出弁25が開弁位置にあるとき、ドレンはドレン排出口27へ送られる。ドレン排出口27から排出されたドレンは、図示しないオイルセパレータによって回収されてもよい。
【0034】
ドレン排出弁25は、ガバナ26によって制御される。ガバナ26は、ECU80によって制御される電磁弁である。ECU80は、配線E62を介してガバナ26の電源の入り切り(駆動/非駆動)を制御することによって、ガバナ26の動作を切り替える。ガバナ26は、電源が入れられると、ドレン排出弁25に所定の空気圧のアンロード信号を入力することによって、ドレン排出弁25を開弁させる。また、ガバナ26は、電源が切られると、ドレン排出弁25にアンロード信号を入力せずにドレン排出弁25のポートを大気圧に開放することによって、ドレン排出弁25を閉弁させる。
【0035】
ドレン排出弁25は、ガバナ26からアンロード信号が入力されていない状態で閉弁位置に維持され、ガバナ26からアンロード信号が入力されると開弁位置に切り替わる。また、ドレン排出弁25においてコンプレッサ4に接続されている入力ポートが上限値を超えて高圧になった場合、ドレン排出弁25が強制的に開弁位置に切り替えられる。
【0036】
コンプレッサ4は、圧縮空気を供給する負荷運転と、圧縮空気を供給しない無負荷運転と行う。ガバナ26は、コンプレッサ4の負荷運転と無負荷運転との間の切り替えを制御する。ガバナ26は、電源が入れられると、コンプレッサ4にアンロード信号を送ることによって、コンプレッサ4に無負荷運転を行わせる。また、ガバナ26は、電源が切られると、コンプレッサ4にアンロード信号を入力せず、コンプレッサ4のポートを大気に開放することによって、コンプレッサ4に負荷運転を行わせる。
【0037】
ECU80は、圧力センサ65の検出空気圧に基づいてガバナ26の電源を入れる(駆動する)ことによって、ガバナ26を、アンロード信号を出力する供給位置に切り替える。また、ECU80は、圧力センサ65の検出空気圧に基づいてガバナ26の電源を切る(非駆動にする)ことによって、ガバナ26を、アンロード信号を出力しない非供給位置に切り替える。
【0038】
再び
図3を参照して、エアドライヤ11の供給動作、パージ動作及び再生動作について説明する。供給動作は、圧縮空気をエアタンク13に供給する動作である。パージ動作は、パージ処理等のためにコンプレッサを停止させている動作である。再生動作は、フィルタ17を再生処理する動作である。再生動作とパージ動作は、非供給動作を構成する。
【0039】
図3(a)を参照して、供給動作では、ECU80が再生制御弁21及びガバナ26をそれぞれ閉弁する(図において「CLOSE」と記載)。このとき、再生制御弁21及びガバナ26にはそれぞれ、ECU80からの駆動信号(電源)が供給されない。よって、ガバナ26は下流に接続されるコンプレッサ4のポート及びドレン排出弁25のポートをそれぞれ大気開放する。供給動作では、コンプレッサ4が圧縮空気を供給する(図において「ON」と記載)。エアドライヤ11に対し供給された圧縮空気(図において「IN」と記載)は、水分及び油分がフィルタ17によって除去されてから、保護バルブ12を介してエアタンク13に供給される(図において「OUT」と記載)。
【0040】
図3(b)を参照して、パージ動作では、ECU80が再生制御弁21を閉弁し、ガバナ26を開弁する(図において「OPEN」と記載)。このとき、ガバナ26は、ECU80からの駆動信号(電源)が供給されることによって開弁して、下流に接続されるコンプレッサ4のポート及びドレン排出弁25のポートをそれぞれ上流(保護バルブ12)に接続する。パージ動作では、ガバナ26からのアンロード信号(図において「CONT」と記載)によってコンプレッサ4が無負荷運転状態である(図において「OFF」と記載)とともに、フィルタ17及び空気供給通路18にある圧縮空気が水分及び油分等とともにドレン排出口27から排出される。
【0041】
図3(c)を参照して、再生動作では、ECU80が再生制御弁21及びガバナ26をそれぞれ開弁する。このとき、再生制御弁21及びガバナ26にはECU80からの駆動信号(電源)が供給される。再生動作では、ガバナ26からのアンロード信号によってコンプレッサ4が無負荷運転状態である。また、再生動作では、再生制御弁21とドレン排出弁25とが開弁されることによって、フィルタ17に対して保護バルブ12側にある圧縮空気がフィルタ17(収容されている乾燥剤)を下流から上流に向けて逆流して、フィルタ17の再生処理が行われる。
【0042】
図4を参照して、空気供給システム10の動作について説明する。
ECU80には、コンプレッサ4による空気供給を開始させる空気圧に対応する値である供給開始値CI1と、コンプレッサ4による空気供給を停止させる空気圧に対応する値である供給停止値COとが設けられている。また、ECU80には、供給停止値CO未満、かつ、供給開始値CI1よりも高い値である補助供給開始値CI2が設けられている。例えば、供給停止値CO、供給開始値CI1、及び補助供給開始値CI2は、ECU80の不揮発性記憶部等に記憶されてよい。
【0043】
ECU80は、圧力センサ65の検出した空気圧である検出空気圧を供給開始値CI1と比較する。ECU80は、検出空気圧が供給開始値CI1以下(グラフ中、L11Aの左端)になると、エアタンク13に圧縮空気を供給するため、エアドライヤ11を供給動作に切り替える。これにより、エアドライヤ11のガバナ26が閉弁されてアンロード信号の出力が停止される。コンプレッサ4は、アンロード信号の停止に応じて負荷運転を行う。エアドライヤ11の供給動作の継続により、エアタンク13に対する検出空気圧が上昇する(グラフ中、L11A)。
【0044】
ECU80は、圧縮空気の供給によって検出空気圧が供給停止値CO以上(グラフ中、L11Aの右端)になると、エアドライヤ11を再生動作に切り替える。これにより、エアドライヤ11では再生制御弁21が開弁されて、圧縮空気が保護バルブ12から逆流可能となる。また、エアドライヤ11ではガバナ26が開弁されてアンロード信号が出力される。コンプレッサ4は、アンロード信号の入力に応じて無負荷運転を行う。また、エアドライヤ11ではガバナ26がドレン排出弁25にアンロード信号を出力する。ドレン排出弁25は、アンロード信号の入力により開弁して、エアドライヤ11のフィルタ17内の空気は、再生制御弁21を逆流する圧縮空気によって、再生方向に流される。再生方向は、下流から上流の方向であり、空気を清浄化するときの空気の流れである供給方向とは逆の方向である。その結果、フィルタ17に捕捉された不純物が、再生方向に流れる空気とともにドレンとしてドレン排出弁25から排出され、フィルタ17が再生される(グラフ中、L11B及びL21Bの左端部分)。
【0045】
また、このようにフィルタ17が再生されるとき、コンプレッサ4はアンロード信号の入力によって無負荷運転を行なっているため、圧縮した空気が無駄に消費されない。
その後、再生処理が終了すると、ECU80は、エアドライヤ11をパージ動作に切り替える。これによって、エアタンク13からの圧縮空気が停止されてフィルタ17には圧縮空気が流通しない。また、エアタンク13の圧縮空気がブレーキチャンバー15で消費されることに応じて、エアタンク13の空気圧が低下する(グラフ中、L11B,L21B等)。
【0046】
まず、圧縮空気が供給開始値CI1まで消費されたときに供給動作が開始される、通常の動作を説明する。
ECU80は、検出空気圧が供給開始値CI1以下であることを判定する(グラフ中、L11B)ことに応じて、再び、エアドライヤ11を供給動作に切り替えてコンプレッサ4のアンロード信号を停止し、空気の供給を行う(グラフ中、L12A)。その後、ECU80は、検出空気圧が供給停止値CO以上(グラフ中、L12Aの右端)になると、エアドライヤ11を供給動作から非供給動作に切り替える。そのため、空気圧が低下する(グラフ中、L12B)。ところで、グラフ中のL11Bにおいて、検出空気圧が供給停止値COから供給開始値CI1まで低下することに所定の期間UL11を要するものとする。つまり、非供給動作の継続時間が所定の期間UL11である。なお、所定の期間UL11は、供給停止値COから供給開始値CI1まで空気圧が低下することに要する期間であって、車両において空気を消費する期間のうちの大抵の部分を含む。例えば、大抵の部分とは、95%以上の部分である。
【0047】
次に、圧縮空気が補助供給開始値CI2まで消費されたとき、供給動作が開始される動作を説明する。なお、この動作ではフィルタ17の再生処理が高いレベルで行われることになるので、この動作を高再生用動作と記す。
【0048】
本実施形態では、ECU80は、検出空気圧が供給開始値CI1よりも高い場合であっても、供給開始条件が成立することに応じて、エアドライヤ11を供給動作に切り替えてコンプレッサ4のアンロード信号を停止し、空気の供給を行う。
【0049】
第1の供給開始条件は、グラフ中のL21Bに示すように、通常の空気消費を示すグラフ中のL11Bに比較して、空気圧の消費が少ないことである。例えば、車両において、供給停止値COからの非供給動作の継続時間としての期間UL21が、例えば、所定の期間UL11(すなわち、供給停止値COから供給開始値CI1まで空気圧が低下することに要する期間)より長くなる場合、ECU80は、空気圧の消費が少ないと判定し、このとき第1の供給開始条件が成立する。第1の供給開始条件の成立に対応して高再生用動作が開始される。つまり、ECU80は、エアタンク13に圧縮空気を供給するため、エアドライヤ11を供給動作に切り替える。
【0050】
つまり、ECU80は、グラフ中のL21Bに示すように、供給停止値COからの期間UL21が所定の期間UL11より長くなると(グラフ中、L21Bの右端)、再び、エアドライヤ11を供給動作に切り替えてコンプレッサ4へのアンロード信号を停止し、圧縮空気の供給を行う(グラフ中、L22A)。ECU80は、圧力センサ65の検出する空気圧が供給停止値CO以上(グラフ中、L22Aの右端)になると、エアドライヤ11を非供給動作に切り替える。そのため、空気圧が低下する(グラフ中、L22B)。
【0051】
これにより、圧縮空気の消費量が少ない場合であっても、所定の期間UL11の経過毎に空気供給と再生処理とがセットで行われて、フィルタ17が再生処理される。フィルタ17には、差圧ΔGP2に対応する量の圧縮空気が通過する。差圧ΔGP2は通常の差圧ΔGP1よりも小さく、差圧ΔGP2に対応する圧縮空気の量は、差圧ΔGP1に対応するそれよりも少ない。このため、フィルタ17では、付着量の少ないうちに油分及び水分に対する再生処理が行われるため、より高いレベルでフィルタ17が再生されるようになる。また、エアタンク13における差圧は、通常の差圧ΔGP1よりも小さい差圧ΔGP2に抑えられ、差圧ΔGP2に対応する圧縮空気の量は差圧ΔGP1に対応するそれよりも少ないため、コンプレッサ4の圧縮空気の供給にかかる負荷が抑えられる。なお、所定の期間UL11は、コンプレッサ4の可動間隔がコンプレッサ4に負荷を与えない程度の周期が確保されるように設定されることが好ましい。さらに、供給停止値COは、通常の動作の場合の値と同じであるため、空気圧の影響を多少なりとも受ける再生動作における再生能力が通常通りに発揮される。
【0052】
また、第2の供給開始条件として、空気圧が供給開始値CI1よりも高く、かつ、供給停止値COよりも低い空気圧に対応する値である補助供給開始値CI2以下であることを採用し、第1、第2の供給開始条件の両方が成立することに応じて、空気の供給が行われてもよい。これにより、圧縮空気の消費量が極端に少ない場合、空気供給と再生処理との実行時間が抑制されるようになるためコンプレッサ4の負荷が抑えられる。なお、差圧ΔGP2は、コンプレッサ4の負荷が短時間駆動によって高まらないように設定されることが好ましい。
【0053】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)検出空気圧が供給開始値CI1になる前に供給動作が開始されることから、フィルタ17を通過する空気量が少なくなるので、フィルタ17に蓄積される油分及び水分が少なくて済む。油分及び水分の蓄積が少ないうちに再生動作を行うことによって、フィルタ17を高いレベルで再生させることができる。また、油分及び水分の蓄積が少ないうちに再生動作を行うことによって、フィルタ17に油分及び水分が定着することが抑えられる。よって、エアドライヤ11の性能劣化が抑制されるようになる。
【0054】
さらに、供給停止値COを変更せず、供給開始値CI1よりも高い検出空気圧でも供給動作を行う。そのため、空気圧の影響を多少なりとも受ける再生動作における再生能力が通常通りに発揮される。
【0055】
(2)圧縮空気の使用量の少ない状況においても定期的にフィルタ17の再生動作が行われる。
(3)圧縮空気が消費されていないときに圧縮空気が供給されることを防止することができる。
【0056】
(4)供給開始条件として、走行状態が空気消費量の少ない走行状態であること(すなわち、車両が空気消費量の少ない走行状態にあること)と、検出空気圧が供給開始値CI1よりも高い値である補助供給開始値CI2以下であることとを採用することにより、走行状態に応じたエアドライヤ11の性能低下が抑制されるようになる。
【0057】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・エアタンク13は、ブレーキバルブ14以外の圧縮空気を消費する機器、例えばパーキングブレーキ等に圧縮空気を供給してもよい。
【0058】
・圧力センサ65は、エアタンク13の空気圧に相当する空気圧を検出することができるのであれば、チェックバルブ19よりも下流の任意の位置における空気圧を検出してもよい。例えば、圧力センサは、エアタンク内の空気圧を検出してもよい。これにより、エアタンク内の検出空気圧に基づいて、供給動作、非供給動作、再生動作を制御することができてもよい。
【0059】
・ECU80は、空気消費量の少ない走行状態を、車両の制御装置としての車両ECU100から伝達される信号に基づいて判定してもよい。これにより、車両から伝達される信号に基づいて、空気圧の低下量の少ない走行状態を判定することができる。
【0060】
・ECU80は、空気消費量の少ない走行状態を、検出空気圧の時間当たりの低下量が少ないことに基づいて判定してもよい。これにより、検出空気圧の時間当たりの低下量から走行状態を判定することができる。
【0061】
・上記実施形態では、フィルタ17は、乾燥剤及び濾過部の両方を有するが、フィルタ17は、それらのいずれか一方のみを有してもよい。
・上記実施形態では、フィルタ17が設けられる場合について例示したが、これに限らず、フィルタ17の上流にオイルミストセパレータが設けられてもよい。
【0062】
該オイルミストセパレータは、圧縮空気との衝突により気液分離を行うフィルタを備え、コンプレッサ4から送られる圧縮空気に含まれる油分を捕捉する。フィルタは、金属材を圧縮成形したものでもよいし、スポンジなどの多孔質材でもよい。このオイルミストセパレータが設けられることで圧縮空気の清浄性能をより高めることができる。
【0063】
・上記実施形態では、空気供給システム10は、トラック、バス、建機等の自動車に搭載されるものとして説明した。これ以外の態様として、空気供給システムは、乗用車、鉄道車両等、他の車両に搭載されてもよい。
【符号の説明】
【0064】
4…コンプレッサ、10…空気供給システム、11…エアドライヤ、11A…内部空間、12…保護バルブ、13…エアタンク、14…ブレーキバルブ、4E,11E,12E,13E,14E…空気供給路、15…ブレーキチャンバー、16…分岐通路、17…フィルタ、18…空気供給通路、19…チェックバルブ、20…バイパス流路、21…再生制御弁、22…オリフィス、25…ドレン排出弁、26…ガバナ、27…ドレン排出口、65…圧力センサ、66…温湿度センサ、80…ECU、100…車両ECU、E62,E63,E65,E66…配線、P12…メンテナンス用ポート。