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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】空気供給システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/26 20060101AFI20240422BHJP
   B60T 17/00 20060101ALI20240422BHJP
   F04B 39/12 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
B01D53/26 230
B60T17/00 B
F04B39/12 101A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020562473
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2019051358
(87)【国際公開番号】W WO2020138392
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2018246456
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】510063502
【氏名又は名称】ナブテスコオートモーティブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 稔也
(72)【発明者】
【氏名】杉尾 卓也
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特表平05-505759(JP,A)
【文献】特開2003-276591(JP,A)
【文献】特表2004-537469(JP,A)
【文献】国際公開第2010/095754(WO,A1)
【文献】特開平08-159041(JP,A)
【文献】特開2004-124711(JP,A)
【文献】国際公開第2019/235583(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/26
B60T 17/00
F04B 39/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンプレッサから供給される圧縮空気を、フィルタと逆止弁とを有するエアドライヤを介して、上流から下流に流す供給動作を行う空気供給システムであって、
前記逆止弁の下流における空気圧を検出する圧力センサと、
前記供給動作と、非供給動作とを切り替え、前記非供給動作中に前記フィルタを再生する再生動作を行う制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記圧力センサによって検出された検出空気圧が供給開始値以下であることを必要条件として、前記供給動作を開始させるための前記供給開始値を備え、
前記制御装置はさらに、前記検出空気圧が前記供給開始値以下になっても前記再生動作の途中であれば前記供給動作を行わない、非供給継続条件を備え
前記非供給継続条件は、走行状態が前記検出空気圧の時間当たりの低下量が多いことに基づいて前記制御装置が判定した前記圧縮空気の消費量が多い走行状態であることを含み、
前記非供給継続条件が成立した場合には、前記検出空気圧が前記供給開始値よりも低い所定の圧力値としての非供給解除値になるまで前記再生動作を行う
空気供給システム。
【請求項2】
前記制御装置はさらに、前記非供給継続条件が成立しているとき、前記非供給解除値以下になることに応じて前記供給動作を開始する、非供給解除条件を備える
請求項1に記載の空気供給システム。
【請求項3】
前記非供給解除値は、前記再生動作に必要な時間を確保することのできるように設定されている
請求項2に記載の空気供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器に圧縮空気を供給する空気供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
トラック、バス、建機等の車両においては、コンプレッサから送られる圧縮空気を利用して、ブレーキ及びサスペンション等を含む、空気圧システムが制御されている。この圧縮空気には、大気中に含まれる水分及びコンプレッサ内を潤滑する油分等、液状の不純物が含まれている。水分及び油分を多く含む圧縮空気が空気圧システム内に入ると、錆の発生及びゴム部材の膨潤等を招き、作動不良の原因となる。このため、コンプレッサの下流には、圧縮空気中の水分及び油分等の不純物を除去するエアドライヤが設けられている。
【0003】
エアドライヤは、圧縮空気から油分及び水分を除去する除湿動作と、乾燥剤に吸着された油分及び水分を乾燥剤から取り除き、ドレンとして放出する再生動作とを行う。例えば、エアドライヤが再生動作を行うための技術が特許文献1に記載されている。
【0004】
特許文献1に記載の空気供給システムは、エアコンプレッサによって圧縮された空気をエアタンクに貯留する。空気供給システムは、エアタンク内の空気圧が第1圧力以下であるとき、空気圧が上昇して第2圧力に到達するまで、エアコンプレッサを駆動して圧縮空気をエアタンクに供給する。空気供給システムは、空気圧が第2圧力に到達したとき、エアコンプレッサによる圧縮空気のエアタンクへの供給を停止するとともに、排出弁(パージバルブ)を開弁する。空気供給システムは、その後、空気圧が第3圧力に低下するまでこの開弁状態を維持することによってエアタンク内の圧縮空気をエアドライヤに通過させて大気に排出する、再生動作を行う。空気供給システムは、エアタンク内の空気圧が第3圧力に到達したとき、排出弁を閉弁する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-229127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、圧縮空気の消費量が多い走行状態において、ブレーキ等による急激な圧縮空気の消費と、エアドライヤの再生動作による圧縮空気の消費とが重なると、エアタンク内の空気圧がコンプレッサから圧縮空気の供給を開始する供給開始値に到達するおそれがある。このとき、空気供給システムでは、エアドライヤの再生動作が中断され、コンプレッサによる供給動作が開始される。これによって、圧縮空気の不足が回避される一方、再生動作の中断によりエアドライヤの再生量が少なくなる。そのため、エアドライヤの性能が低下したままになるおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、エアドライヤの性能低下を抑制することのできる空気供給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する空気供給システムは、コンプレッサから供給される圧縮空気を、フィルタと逆止弁とを有するエアドライヤを介して、上流から下流に流す供給動作を行う空気供給システムであって、前記逆止弁の下流における空気圧を検出する圧力センサと、前記供給動作と、非供給動作とを切り替え、前記非供給動作中に前記フィルタを再生する再生動作を行う制御装置とを備え、前記制御装置は、前記圧力センサによって検出された検出空気圧が供給開始値以下であることを必要条件として、前記供給動作を開始させるための前記供給開始値を備え、前記制御装置はさらに、前記検出空気圧が前記供給開始値以下になっても前記再生動作の途中であれば前記供給動作を行わない、非供給継続条件を備える。
【0009】
この場合、ブレーキ等による圧縮空気の消費タイミングと、エアドライヤの再生動作による圧縮空気の消費タイミングとが重なるようなときであっても、ブレーキ等による圧縮空気の消費を継続させ、かつ、エアドライヤの再生動作も中断することなく継続させることができる。これにより、エアドライヤの性能低下を抑制することができる。
【0010】
一実施形態では、前記制御装置はさらに、前記非供給継続条件が成立しているとき、前記検出空気圧が前記供給開始値よりも低い所定の圧力値以下になることに応じて前記供給動作を開始する、非供給解除条件を備えてよい。
【0011】
この場合、エアドライヤの再生動作を可能な限り継続させつつ、圧縮空気が不足することを防ぐことができる。
一実施形態では、前記所定の圧力値は、前記再生動作に必要な時間を確保することのできるように設定されていてよい。
【0012】
この場合、エアドライヤの再生動作がより確実に行われるようになる。
一実施形態では、前記非供給継続条件は、走行状態が前記圧縮空気の消費量が多い走行状態であることを含んでよい。
【0013】
この場合、圧縮空気の消費量が多い走行状態のときにはエアドライヤの再生動作が中断されるおそれが低減される。
一実施形態では、前記制御装置は、走行状態が前記圧縮空気の消費量が多い走行状態であることを、前記検出空気圧の時間当たりの低下量が多いことに基づいて判定してよい。
【0014】
この場合、空気圧の時間当たりの低下量から走行状態を判定することができる。
一実施形態では、前記制御装置は、走行状態が前記圧縮空気の消費量が多い走行状態であることを、車両の制御装置から伝達される信号に基づいて判定してよい。
【0015】
この場合、車両から伝達される信号に基づいて走行状態を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】空気圧システムに用いられている空気供給システムの一実施形態の概略構成を示すブロック図。
図2】同実施形態における空気供給システムの概略構成を示す構成図。
図3】同実施形態におけるエアドライヤの動作モードを示す図であって、(a)は供給動作を示す図、(b)はパージ動作を示す図、(c)は再生動作を示す図。
図4】同実施形態における空気供給状態を空気圧により示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1図4を参照して、空気圧システムに含まれる空気供給システムの一実施形態について説明する。空気供給システムは、トラック、バス、建機等の自動車に搭載されている。
【0018】
図1を参照して、空気圧システムの概要について説明する。
空気圧システムでは、コンプレッサ4、エアドライヤ11、保護バルブ12、エアタンク13、ブレーキバルブ14、及びブレーキチャンバー15が、順次、空気供給路4E,11E,12E,13E,14Eを介して接続されている。このうち、コンプレッサ4、エアドライヤ11、及び保護バルブ12が、空気供給システム10を構成する。
【0019】
コンプレッサ4は、自動車のエンジン(図示略)の動力によって駆動され、空気を圧縮して、空気供給システム10に圧縮空気を供給する。コンプレッサ4は空気供給路4Eを介してエアドライヤ11に接続されている。
【0020】
エアドライヤ11では、コンプレッサ4から送られた圧縮空気がフィルタ17(図2参照)を通過することによって、空気中の不純物が捕捉され、圧縮空気が清浄化される。このように清浄化された圧縮空気は、空気供給路11E、保護バルブ12及び空気供給路12Eを介して、エアドライヤ11からエアタンク13に供給される。
【0021】
エアタンク13は、空気供給路13Eを介して、運転者によって操作されるブレーキバルブ14に接続されている。ブレーキバルブ14は、空気供給路14Eを介してブレーキチャンバー15に接続されている。よって、ブレーキバルブ14の操作に応じて、圧縮空気がブレーキチャンバー15に供給され、それによってサービスブレーキが作動する。
【0022】
また、空気供給システム10は、制御装置としてのECU80を備えている。ECU80は、配線E62,E63を介してエアドライヤ11に電気的に接続されている。また、ECU80は、配線E65を介して圧力センサ65に電気的に接続されている。圧力センサ65は、保護バルブ12における空気圧を検出して、ECU80に出力する。ECU80は、圧力センサ65の検出信号から、エアタンク13の空気圧に相当する検出空気圧を取得する。また、ECU80は、配線E66を介して温湿度センサ66に電気的に接続されている。温湿度センサ66は、エアタンク13の圧縮空気の湿度を検出して、ECU80に出力する。さらに、ECU80は、空気供給システム10を搭載する車両の各種信号を取得可能であるように、車両ECU100に電気的に接続されている。
【0023】
ECU80は、図示しない演算部、揮発性記憶部、不揮発性記憶部を備えており、不揮発性記憶部に格納されているプログラムに従って、エアドライヤ11に各種動作を指定する信号等を与える。また、ECU80は、再生動作に係る期間の計測に用いられるタイマを有する。
【0024】
図2を参照して空気供給システム10について説明する。
エアドライヤ11は、メンテナンス用ポートP12を有している。メンテナンス用ポートP12は、メンテナンスの際にエアドライヤ11のフィルタ17の上流に圧縮空気を供給するためのポートである。
【0025】
ECU80は、配線E63を介してエアドライヤ11の再生制御弁21に電気的に接続され、配線E62を介してエアドライヤ11のガバナ26に電気的に接続される。
図3を参照すると、エアドライヤ11は、内部空間11Aにフィルタ17を備えている。フィルタ17は、上流にあるコンプレッサ4からの空気供給路4Eと下流にある保護バルブ12につながる空気供給路11Eとを接続する空気供給通路18の途中に設けられている。
【0026】
フィルタ17は、乾燥剤を収容するとともに、濾過部を備える。フィルタ17は、圧縮空気を乾燥剤に通過させることによって圧縮空気に含まれる水分を圧縮空気から除去して圧縮空気を乾燥させるとともに、圧縮空気に含まれる油分を濾過部によって除去して圧縮空気を清浄化する。フィルタ17を通過した圧縮空気は、フィルタ17に対して下流への圧縮空気の流れのみを許容する逆止弁としてのチェックバルブ19を介して、保護バルブ12へ供給される。つまり、チェックバルブ19は、フィルタ17を上流、保護バルブ12を下流としたとき、上流から下流への圧縮空気の流れのみを許容する。
【0027】
戻って図2を参照すると、チェックバルブ19には、チェックバルブ19を迂回(バイパス)するバイパス流路20がチェックバルブ19と並列に設けられている。バイパス流路20には、再生制御弁21が接続されている。
【0028】
再生制御弁21は、ECU80によって制御される電磁弁である。ECU80は、配線E63を介して再生制御弁21の電源の入り切り(駆動/非駆動)を制御することによって、再生制御弁21の動作を切り替える。再生制御弁21は、電源が切れた状態において閉弁してバイパス流路20を封止し、電源が入った状態において開弁してバイパス流路20を連通させる。例えば、再生制御弁21は、検出空気圧の値が供給停止値を越えたときに駆動される。
【0029】
バイパス流路20には、再生制御弁21とフィルタ17との間にオリフィス22が設けられている。再生制御弁21が通電されると、エアタンク13の圧縮空気が、保護バルブ12を通じバイパス流路20を介して、オリフィス22によって流量を規制された状態で、フィルタ17に送られる。フィルタ17に送られた圧縮空気は、フィルタ17を下流から上流に向けて逆流する。このような処理は、フィルタ17を再生させる処理であり、エアドライヤの再生処理という。このとき、エアタンク13内の乾燥及び清浄化された圧縮空気がフィルタ17を逆流することによって、フィルタ17に捕捉された水分及び油分がフィルタ17から除去される。例えば、再生制御弁21は、所定の期間だけ開弁するように制御される。この所定の期間は、フィルタ17を再生することのできる期間であって、論理的、実験的又は経験的に設定される。
【0030】
コンプレッサ4とフィルタ17との間の部分から、分岐通路16が分岐している。分岐通路16にはドレン排出弁25が設けられており、分岐通路16の末端にはドレン排出口27が接続されている。
【0031】
フィルタ17から除去された水分及び油分を含むドレンは、圧縮空気とともにドレン排出弁25に送られる。ドレン排出弁25は、空気圧により駆動される空気圧駆動式の弁であって、分岐通路16において、フィルタ17とドレン排出口27との間に設けられている。ドレン排出弁25は、閉弁位置及び開弁位置の間で位置を変更する2ポート2位置弁である。ドレン排出弁25が開弁位置にあるとき、ドレンはドレン排出口27へ送られる。ドレン排出口27から排出されたドレンは、図示しないオイルセパレータによって回収されてもよい。
【0032】
ドレン排出弁25は、ガバナ26によって制御される。ガバナ26は、ECU80によって制御される電磁弁である。ECU80は、配線E62を介してガバナ26の電源の入り切り(駆動/非駆動)を制御することによって、ガバナ26の動作を切り替える。ガバナ26は、電源が入れられると、ドレン排出弁25に所定の空気圧のアンロード信号を入力することによって、ドレン排出弁25を開弁させる。また、ガバナ26は、電源が切られると、ドレン排出弁25にアンロード信号を入力せずにドレン排出弁25のポートを大気圧に開放することによって、ドレン排出弁25を閉弁させる。
【0033】
ドレン排出弁25は、ガバナ26からアンロード信号が入力されていない状態で閉弁位置に維持され、ガバナ26からアンロード信号が入力されると開弁位置に切り替わる。また、ドレン排出弁25においてコンプレッサ4に接続されている入力ポートが上限値を超えて高圧になった場合、ドレン排出弁25が強制的に開弁位置に切り替えられる。
【0034】
コンプレッサ4は、圧縮空気を供給する負荷運転と、圧縮空気を供給しない無負荷運転と行う。ガバナ26は、コンプレッサ4の負荷運転と無負荷運転との間の切り替えを制御する。ガバナ26は、電源が入れられると、コンプレッサ4にアンロード信号を送ることによって、コンプレッサ4に無負荷運転を行わせる。また、ガバナ26は、電源が切られると、コンプレッサ4にアンロード信号を入力せず、コンプレッサ4のポートを大気に開放することによって、コンプレッサ4に負荷運転を行わせる。
【0035】
ECU80は、圧力センサ65の検出空気圧に基づいてガバナ26の電源を入れる(駆動する)ことによって、ガバナ26を、アンロード信号が出力される供給位置に切り替える。また、ECU80は、圧力センサ65の検出空気圧に基づいてガバナ26の電源を切る(非駆動にする)ことによって、ガバナ26を、アンロード信号を出力しない非供給位置に切り替える。
【0036】
再び図3を参照して、エアドライヤ11の供給動作、パージ動作及び再生動作について説明する。図3(a)に示す供給動作は、圧縮空気をエアタンク13に供給する動作である。図3(b)に示すパージ動作は、パージ処理等のためにコンプレッサを停止させている動作である。図3(c)に示す再生動作は、フィルタ17を再生処理する動作である。再生動作とパージ動作は、非供給動作を構成する。
【0037】
図3(a)を参照して、供給動作では、ECU80が再生制御弁21及びガバナ26をそれぞれ閉弁する(図において「CLOSE」と記載)。このとき、再生制御弁21及びガバナ26にはそれぞれ、ECU80からの駆動信号(電源)が供給されない。よって、ガバナ26は下流に接続されるコンプレッサ4のポート及びドレン排出弁25のポートをそれぞれ大気開放する。供給動作では、コンプレッサ4が圧縮空気を供給する(図において「ON」と記載)。エアドライヤ11に対し供給された圧縮空気(図において「IN」と記載)は、水分及び油分がフィルタ17によって除去されてから、保護バルブ12を介してエアタンク13に供給される(図において「OUT」と記載)。
【0038】
図3(b)を参照して、パージ動作では、ECU80が再生制御弁21を閉弁し、ガバナ26を開弁する(図において「OPEN」と記載)。このとき、ガバナ26は、ECU80からの駆動信号(電源)が供給されることによって開弁して、下流に接続されるコンプレッサ4のポート及びドレン排出弁25のポートをそれぞれ上流(保護バルブ12)に接続する。パージ動作では、ガバナ26からのアンロード信号(図において「CONT」と記載)によってコンプレッサ4が無負荷運転状態である(図において「OFF」と記載)とともに、フィルタ17及び空気供給通路18にある圧縮空気が水分及び油分等とともにドレン排出口27から排出される。
【0039】
図3(c)を参照して、再生動作では、ECU80が再生制御弁21及びガバナ26をそれぞれ開弁する。このとき、再生制御弁21及びガバナ26にはECU80からの駆動信号(電源)が供給される。再生動作では、ガバナ26からのアンロード信号によってコンプレッサ4が無負荷運転状態である。また、再生動作では、再生制御弁21とドレン排出弁25とが開弁されることによって、フィルタ17に対して保護バルブ12側にある圧縮空気がフィルタ17(収容されている乾燥剤)を下流から上流に向けて逆流して、フィルタ17の再生処理が行われる。
【0040】
図4を参照して、空気供給システム10の動作について説明する。
ECU80には、コンプレッサ4による圧縮空気の供給を開始させる必要条件としての空気圧に対応する値である供給開始値CI1と、コンプレッサ4による圧縮空気の供給を停止させる空気圧に対応する値である供給停止値COとが設けられている。また、ECU80には、供給開始値CI1よりも低い所定の圧力値としての非供給解除値CI3が設けられている。例えば、供給停止値CO、供給開始値CI1、及び非供給解除値CI3は、ECU80の不揮発性記憶部等に記憶されてよい。
【0041】
ECU80は、圧力センサ65の検出した空気圧である検出空気圧を供給開始値CI1と比較する。ECU80は、検出空気圧が供給開始値CI1以下(区間UL11が終わる時間t11)になると、エアタンク13に圧縮空気を供給するため、エアドライヤ11(コンプレッサ4)を供給動作に切り替える。これにより、エアドライヤ11のガバナ26が閉弁されてアンロード信号の出力が停止される。コンプレッサ4は、アンロード信号の停止に応じて負荷運転を行う。エアドライヤ11(コンプレッサ4)の供給動作の継続により、エアタンク13に対する検出空気圧が上昇する(時間t11から時間t12までの区間LD11)。
【0042】
ECU80は、圧縮空気の供給によって検出空気圧が供給停止値CO以上(時間t12)になると、エアドライヤ11を再生動作に切り替える。これにより、エアドライヤ11ではガバナ26が開弁されてアンロード信号が出力される。コンプレッサ4は、アンロード信号の入力に応じて無負荷運転を行う。また、エアドライヤ11ではガバナ26がドレン排出弁25にアンロード信号を出力する。ドレン排出弁25は、アンロード信号の入力により開弁して、エアドライヤ11のフィルタ17内の圧縮空気は、再生方向に流される。再生方向は、下流から上流の方向であり、圧縮空気を清浄化するときの圧縮空気の流れである供給方向とは逆の方向である。その結果、フィルタ17に捕捉された不純物が、再生方向に流れる圧縮空気とともにドレンとしてドレン排出弁25から排出され、フィルタ17が再生される(時間t12から時間t13まで)。なお、時間t12から時間t13までの期間は、フィルタ17の再生に要する期間である。この期間は、ブレーキチャンバー15等による圧縮空気の消費量が通常であれば、検出空気圧が供給開始値CI1以下まで低下するよりも前に終了する。
【0043】
通常、ECU80は、検出空気圧が供給動作を開始させる必要条件である供給開始値CI1以下になることに応じて(時間t22)、破線L1に示すように供給動作を開始する(時間t22から時間t23まで)。
【0044】
しかしながら、ブレーキチャンバー15等による大量の圧縮空気の消費タイミングと、エアドライヤ11の再生動作による圧縮空気の消費タイミングとが重なると、フィルタ17の再生に要する期間が経過するよりも前である再生動作の途中に、検出空気圧が供給開始値CI1以下になるおそれもある(時間t22)。このとき、ECU80が、通常通り、検出空気圧が供給開始値CI1以下になることに応じて供給動作を開始すると、フィルタ17の再生を中断させたり、再生性能を低下させたりすることになる。例えば、再生に必要な期間(時間t12から時間t13まで)が経過するよりも以前に(時間t22)、エアドライヤ11の再生動作が中断等されると、中断等で失われた期間(時間t22から時間t13)に対応する再生量が、本来の再生量に対して不足することになる。そして、エアドライヤ11の再生動作の中断等によってフィルタ17の再生量が不足すると、エアドライヤ11の清浄化の性能が低下したままになるおそれがある。
【0045】
そこで、本実施形態では、ECU80は、実線L2に示すように、エアドライヤ11の再生動作の途中で検出空気圧が供給開始値CI1以下になった(時間t22)としても、供給動作を開始せず、エアドライヤ11の再生動作を継続させる(時間t22以降)。そして、ECU80は、検出空気圧が圧縮空気の供給量が不足しない非供給解除値CI3に到達することに応じて、供給動作を開始する。つまり、供給停止値COから非供給解除値CI3までの空気圧差ΔGP2が、通常の供給開始値CI1から供給停止値COまでの空気圧差ΔGP1よりも大きく確保されるようになるので、再生に必要な期間以上の期間UL12を確保することができるようになる(時間t12から時間t14まで)。つまり、非供給解除値CI3は、圧縮空気の消費量が多いときであっても、エアドライヤ11の再生動作に必要な時間を確保することのできるように設定される。これにより、ブレーキチャンバー15による圧縮空気の消費を継続させ、かつ、エアドライヤ11の再生動作を継続させることができるようになる。そのため、エアドライヤ11の性能が低下したままとなることが抑制されるようになる。
【0046】
そして、ECU80は、検出空気圧が非供給解除値CI3以下になることに応じて(時間t14)、エアタンク13に圧縮空気を供給するため、エアドライヤ11(コンプレッサ4)を供給動作に切り替える。検出空気圧が非供給解除値CI3以下になることが、非供給解除条件を構成する。これにより、コンプレッサ4の負荷運転が開始され、エアドライヤ11(コンプレッサ4)の供給動作の継続によりエアタンク13の検出空気圧が上昇する(時間t14から時間t15までの区間LD12)。
【0047】
なお、ECU80は、エアドライヤ11の再生動作が実行されていたとしても、検出空気圧が非供給解除値CI3に到達したとき、エアドライヤ11の再生動作を中断させる。これにより、ブレーキチャンバー15による圧縮空気の消費を継続させることができるとともに、エアドライヤ11の再生動作の継続時間をより長く確保することができる。そのため、エアドライヤ11の性能が低下したままとなることが抑制される。
【0048】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)ブレーキ等による圧縮空気の消費タイミングと、エアドライヤ11の再生動作による圧縮空気の消費タイミングとが重なるようなときであっても、ブレーキ等による圧縮空気の消費を継続させ、かつ、エアドライヤ11の再生動作も中断することなく継続させることができる。これにより、エアドライヤの性能低下を抑制することができる。
【0049】
(2)検出空気圧が通常の供給開始値よりも低い所定の圧力値以下になることに応じてコンプレッサ4による供給動作を開始することにより、エアドライヤ11の再生動作を可能な限り継続させつつ、圧縮空気が不足することを防ぐことができる。
【0050】
(3)非供給解除値CI3がエアドライヤ11の再生動作に必要な時間を確保することのできるように設定されることにより、エアドライヤ11の再生動作がより確実に行われるようになる。
【0051】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・エアタンク13は、ブレーキバルブ14以外の圧縮空気を消費する機器、例えばパーキングブレーキ等に圧縮空気を供給してもよい。
【0052】
・圧力センサ65は、エアタンク13の空気圧に相当する空気圧を検出することができるのであれば、チェックバルブ19よりも下流の任意の位置における空気圧を検出してもよい。例えば、圧力センサは、エアタンク13内の空気圧を検出してもよい。これにより、ECU80は、エアタンク13内の検出空気圧に基づいて、供給動作、非供給動作、再生動作を制御することができてもよい。
【0053】
・ECU80は、走行状態が圧縮空気の消費量の多い走行状態であることを、車両の制御装置としての車両ECU100から伝達される信号に基づいて判定してもよい。これにより、車両から伝達される信号に基づいて、圧縮空気の消費量の多い走行状態を判定することができる。
【0054】
・ECU80は、走行状態が圧縮空気の消費量の多い走行状態であることを、検出空気圧の時間当たりの低下量が多いことに基づいて判定してもよい。これにより、検出空気圧の時間当たりの低下量から走行状態を判定することができる。
【0055】
・非供給継続条件には、走行状態が圧縮空気の消費量が多い走行状態であることが含まれてもよい。圧縮空気の消費量が多い走行状態では、空気圧が供給開始値CI1に到達しても、再生に必要な期間が経過していない蓋然性が高まる。そのため、非供給動継続条件が成立して空気圧が非供給解除値CI3になるまでエアドライヤ11の再生動作を行うことを予め可能にしておくことができる。圧縮空気の消費量が多い走行状態のときには、エアドライヤ11の再生動作が中断されるおそれが低減される。
【0056】
・上記実施形態では、フィルタ17は、乾燥剤及び濾過部の両方を有するが、フィルタ17は、それらのいずれか一方のみを有してもよい。
・上記実施形態では、フィルタ17が設けられる場合について例示したが、これに限らず、フィルタ17の上流にオイルミストセパレータが設けられてもよい。該オイルミストセパレータは、圧縮空気との衝突により気液分離を行うフィルタを備え、コンプレッサ4から送られる圧縮空気に含まれる油分を捕捉する。フィルタは、金属材を圧縮成形したものでもよいし、スポンジなどの多孔質材でもよい。このオイルミストセパレータが設けられることで圧縮空気の清浄性能をより高めることができる。
【0057】
・上記実施形態では、空気供給システム10は、トラック、バス、建機等の自動車に搭載されるものとして説明した。これ以外の態様として、空気供給システムは、乗用車、鉄道車両等、他の車両に搭載されてもよい。
【符号の説明】
【0058】
4…コンプレッサ、10…空気供給システム、11…エアドライヤ、11A…内部空間、12…保護バルブ、13…エアタンク、14…ブレーキバルブ、4E,11E,12E,13E,14E…空気供給路、15…ブレーキチャンバー、16…分岐通路、17…フィルタ、18…空気供給通路、19…チェックバルブ、20…バイパス流路、21…再生制御弁、22…オリフィス、25…ドレン排出弁、26…ガバナ、27…ドレン排出口、65…圧力センサ、66…温湿度センサ、80…ECU、100…車両ECU、E62,E63,E65,E66…配線、P12…メンテナンス用ポート。
図1
図2
図3
図4