(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】タイヤの製造方法及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
B29D 30/68 20060101AFI20240422BHJP
B60C 11/00 20060101ALI20240422BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240422BHJP
B60C 11/117 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
B29D30/68
B60C11/00 H
B60C1/00 A
B60C11/117
(21)【出願番号】P 2021516143
(86)(22)【出願日】2020-04-21
(86)【国際出願番号】 JP2020017252
(87)【国際公開番号】W WO2020218309
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2019086660
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】早川 光太郎
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-001628(JP,A)
【文献】特開2016-155523(JP,A)
【文献】特開平07-329209(JP,A)
【文献】特開昭61-158431(JP,A)
【文献】特開昭57-126646(JP,A)
【文献】特開昭57-126647(JP,A)
【文献】特開2014-159088(JP,A)
【文献】特開平07-178842(JP,A)
【文献】特開2012-171469(JP,A)
【文献】特開2010-254852(JP,A)
【文献】特開2012-254767(JP,A)
【文献】特開2017-128650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00-30/72
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドの表面に複数の第1の凹部及び複数の第2の凹部を有する加硫済のタイヤの
前記トレッドの表面にレーザ加工を施して
少なくとも1つの別の凹部を形成
し、
前記第1の凹部は、タイヤ周方向に延びていて、延在長さは500~1500μmであり、
前記第2の凹部は、平面視で円形の窪みであり、
少なくとも1つの前記別の凹部が、前記第1の凹部及び前記第2の凹部の少なくともいずれかと連通するようにする、レーザ加工工程を含むことを特徴とする、タイヤの製造方法。
【請求項2】
少なくとも1つの前記別の凹部が、前記複数の第1の凹部及び前記複数の第2の凹部のうちの2つ以上と連通するようにする、レーザ加工工程を含むことを特徴とする、請求項1のタイヤの製造方法。
【請求項3】
前記レ
ーザ加工工程において、前記レーザ加工には、エキシマレーザを用いる、請求項1又は2に記載のタイヤの製造方法。
【請求項4】
前記レーザ加工工程において、前記凹部の幅は、60μm以下である、
請求項1~3のいずれか一項に記載のタイヤの製造方法。
【請求項5】
前記トレッドのゴムは、発泡率が15~25%の発泡ゴムである、請求項1~
4のいずれか一項に記載のタイヤの製造方法。
【請求項6】
前記トレッドのゴムは、親水性短繊維を有する、請求項1~
5のいずれか一項に記載のタイヤの製造方法。
【請求項7】
前記レーザ加工工程において、前記凹部の少なくとも一部の延在部分が、タイヤ幅方向に対し45°以下の角度で傾斜するように、前記レーザ加工を施す、請求項1~
6のいずれか一項に記載のタイヤの製造方法。
【請求項8】
前記レーザ加工工程において、前記凹部は、タイヤ幅方向に対し45°以下の角度で傾斜する部分と、タイヤ幅方向に対し45°超の角度で傾斜する部分とが、接続されるように、前記レーザ加工を施して形成される、請求項1~
7のいずれか一項に記載のタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの製造方法及びタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の安全性を向上させる観点から、乾燥路面のみならず、湿潤路面、氷雪路面等の様々な路面上でのタイヤの制動性や駆動性を向上させるために、種々の検討がなされている。例えば、スタッドレスタイヤ等の冬用タイヤは、氷雪上走行性能を向上させることを目的として、トレッドに発泡構造を搭載させたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この技術では、トレッド表面に微細な溝構造を形成することにより、氷上に形成された水膜を効果的に除去して、ミクロな排水性を向上させ、これにより氷上性能を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、非降雪地域等、もっぱらサマータイヤを用いるタイヤユーザが、突然の降雪時等に、タイヤに氷上性能を求めるようになる場合がある。また、スタッドレスタイヤ等の冬用タイヤのユーザが、氷上性能をより高いものに変更したい場合もある。
【0006】
そこで、本発明は、加硫済のタイヤに高い氷上性能を付与することのできる、タイヤの製造方法、及び、氷上性能を向上させたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
本発明のタイヤの製造方法は、
加硫済のタイヤのトレッドの表面にレーザ加工を施して凹部を形成する、レーザ加工工程を含むことを特徴とする。
【0008】
後述の「凹部の幅」は、該凹部の延在方向に一定でない場合は、最大幅をいうものとする。
【0009】
後述の「発泡率」は、トレッドゴムの平均発泡率Vsを意味し、具体的には次式(1)により算出される値を意味する。
Vs=(ρ0/ρ1-1)×100(%)・・・ (1)
式(1)中、ρ1は加硫ゴム(発泡ゴム)の密度(g/cm3)を示し、ρ0は加硫ゴム(発泡ゴム)における固相部の密度(g/cm3)を示す。なお、加硫ゴムの密度及び加硫ゴムの固相部の密度は、エタノール中の質量と空気中の質量を測定し、これから算出される。
【0010】
本発明のタイヤは、
トレッドに、壁面の少なくとも一部が炭化されている凹部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、加硫済のタイヤに高い氷上性能を付与することのできる、タイヤの製造方法、及び、氷上性能を向上させたタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる、タイヤの製造方法のフロー図である。
【
図2】準備した加硫済のタイヤのトレッドの表面の一部を示す展開図である。
【
図3】本発明の一実施形態にかかるタイヤのトレッド踏面の一部を示す展開図である。
【
図4】第1の変形例にかかるタイヤのトレッドの表面の一部を示す展開図である。
【
図5】第2の変形例にかかるタイヤのトレッドの表面の一部を示す展開図である。
【
図6】第3の変形例にかかるタイヤのトレッドの表面の一部を示す展開図である。
【
図7】第4の変形例にかかるタイヤのトレッドの表面の一部を示す展開図である。
【
図8】第5の変形例にかかるタイヤのトレッドの表面の一部を示す展開図である。
【
図9】第6の変形例にかかるタイヤのトレッドの表面の一部を示す展開図である。
【
図10】第7の変形例にかかるタイヤのトレッドの表面の一部を示す展開図である。
【
図11】第8の変形例にかかるタイヤのトレッドの表面の一部を示す展開図である。
【
図12】第9の変形例にかかるタイヤのトレッドの表面の一部を示す展開図である。
【
図13】第10の変形例にかかるタイヤのトレッドの表面の一部を示す展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。
【0014】
<タイヤの製造方法>
図1は、本発明の一実施形態にかかる、タイヤの製造方法のフロー図である。
図1に示すように、本実施形態では、まず、加硫済のタイヤを準備する(ステップS101)。本実施形態において、加硫済のタイヤは、トレッドを有し、該トレッドの表面(以下、トレッド踏面という)に第1の凹部2及び第2の凹部3を有するスタッドレスタイヤである(
図2参照)。本実施形態では、加硫済のタイヤのトレッドのゴムは、発泡率が15~25%の発泡ゴムである。発泡率を15%以上とすることにより、タイヤとしての排水性(ひいては氷上性能)を向上させ、一方で、発泡率を25%以下とすることにより、トレッドの剛性を確保して、乾燥路面での走行性能を向上させることができる。また、本例では、トレッドのゴムは、親水性短繊維を有する。これにより、トレッドの剛性を高めることができ、また、トレッドが発泡剤を有する場合に、特に排水性を高めることができる。なお、親水性短繊維を有しない構成とすることもできる。
【0015】
図2は、準備した加硫済のタイヤのトレッドの表面の一部を示す展開図である。
図2に示すように、準備した加硫済のタイヤは、トレッド踏面1の一部に、図示の範囲で3本の微細な第1の凹部2と、図示の範囲で8個の微細な第2の凹部3と、を有している。図示例では、第1の凹部2は、タイヤ周方向に延びている。特には限定されないが、第1の凹部2の延在長さは、500~1500μm、第1の凹部2の幅(最大幅)は、40~100μm、第1の凹部2の深さ(最大深さ)は、40~100μmとすることができる。また、図示例では、第2の凹部3は、平面視で円形の窪みであり、特には限定されないが、最大径を40~100μm、深さ(最大深さ)を40~100μmとすることができる。
ステップS101の段階において、スタッドレスタイヤの場合、トレッド踏面1に設ける凹部の形状、種類、個数、サイズ等は、特に限定されるものではなく、ミクロな水路を形成して水膜を除去することが可能なものであれば任意のものとすることができる。また、別の例として、ステップS101において、加硫済タイヤとしてサマータイヤを準備する場合は、トレッドにそのような凹部を有しないものとすることができる(通常の溝やサイプのみを有するものとすることができる)。
【0016】
トレッドのゴムの発泡剤としては、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DNPT)、ジニトロソペンタスチレンテトラミン、ベンゼンスルホニルヒドラジド誘導体、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、ニトロソスルホニルアゾ化合物、N,N’-ジメチル-N,N’-ジニトロソフタルアミド、トルエンスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルセミカルバジド、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジド等が挙げられる。これら発泡剤の中でも、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DNPT)が好ましい。これら発泡剤は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。また、該発泡剤の配合量は、特に限定されるものではないが、ゴム成分(例えばジエン系重合体)の合計100質量部に対して0.1~30質量部の範囲が好ましく、1~20質量部の範囲とすることがさらに好ましい。また、上記発泡剤には、発泡助剤として尿素、ステアリン酸亜鉛、ベンゼンスルフィン酸亜鉛、亜鉛華等を併用することが好ましい。これら発泡助剤は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。発泡助剤を併用することにより、発泡反応を促進して反応の完結度を高め、経時的に不要な劣化を抑制することができる。また、該発泡助剤の配合量は、特に限定されるものではないが、ゴム成分(例えばジエン系重合体)の合計100質量部に対して1~30質量部の範囲が好ましい。
なお、上記発泡剤を含有するゴム組成物を加硫した後に得られる加硫ゴムにおいて、その発泡率は、通常1~50%、好ましくは5~40%である。発泡剤を配合した場合、発泡率が大きすぎるとゴム表面の空隙も大きくなり、充分な接地面積を確保できなくなるおそれがあるが、1~50%の範囲内の発泡率であれば、排水溝として有効に機能する気泡の形成を確保しつつ、気泡の量を適度に保持できるので、耐久性を損なうおそれもない。ここで、また、発泡率は、発泡剤や発泡助剤の種類、量等により適宜変化させることができる。
【0017】
また、ゴム組成物が親水性短繊維と上述の発泡剤を含む場合、加硫時に発泡剤から発生したガスが親水性短繊維の内部に浸入して、親水性短繊維の形状に対応した形状を有する気泡を形成することができ、また、該気泡は、壁面が親水性短繊維由来の樹脂で覆われ、親水化されている。そのため、親水性短繊維と発泡剤を含むゴム組成物をトレッドに使用してタイヤを製造すると、タイヤの使用時において、気泡の壁面がトレッド表面に露出することで、気泡が水を積極的に取り込むことができるようになり、タイヤに優れた排水性が付与され、タイヤの氷上性能を大幅に向上させることができる。親水性短繊維の原料として用いる親水性樹脂としては、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ビニルアルコール単独重合体、ポリ(メタ)アクリル酸或いはそのエステル、ポリエチレングリコール、カルボキシビニル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン-酢酸ビニル共重合体、メルカプトエタノール等が挙げられ、これらの中でも、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ビニルアルコール単独重合体、ポリ(メタ)アクリル酸が好ましく、エチレン-ビニルアルコール共重合体が特に好ましい。「ポリ(メタ)アクリル酸」は、「ポリアクリル酸」又は「ポリメタクリル酸」を指す。
上記親水性短繊維の表面には、ゴム成分(例えばジエン系重合体)に対して親和性を有し、好ましくは、ゴム組成物の加硫最高温度よりも低い融点を有する低融点樹脂からなる被覆層が形成されていてもよい。かかる被覆層を形成することで、親水性短繊維が有する水との親和性を有効に保持しつつ、被覆層とゴム成分(例えばジエン系重合体)との親和性が良好なため、短繊維のゴム成分(例えばジエン系重合体)への分散性が向上する。また、かかる低融点樹脂が加硫時に溶融することで流動性を帯びた被覆層となってゴム成分(例えばジエン系重合体)と親水性短繊維との接着を図ることに寄与し、良好な排水性と耐久性とが付与されたタイヤを容易に実現することができる。なお、かかる被覆層の厚みは、親水性短繊維の配合量や平均径等によって変動し得るが、通常0.001~10μm、好ましくは0.001~5μmである。
被覆層に用いる低融点樹脂の融点は、ゴム組成物の加硫最高温度よりも低いことが好ましい。なお、加硫最高温度とは、ゴム組成物の加硫時にゴム組成物が達する最高温度を意味する。例えば、モールド加硫の場合には、上記ゴム組成物がモールド内に入ってからモールドを出て冷却されるまでに該ゴム組成物が達する最高温度を意味し、かかる加硫最高温度は、例えば、ゴム組成物中に熱電対を埋め込むこと等により測定することができる。低融点樹脂の融点の上限としては、特に制限はないものの、以上の点を考慮して選択することが好ましく、ゴム組成物の加硫最高温度よりも、10℃以上低いことが好ましく、20℃以上低いことがより好ましい。なお、ゴム組成物の工業的な加硫温度は、一般的には最高で約190℃程度であるが、例えば、加硫最高温度がこの190℃に設定されている場合には、低融点樹脂の融点としては、通常190℃未満の範囲で選択され、180℃以下が好ましく、170℃以下がより好ましい。
低融点樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリスチレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、並びにこれらのアイオノマー樹脂等が挙げられる。
親水性短繊維は、平均長さが好ましくは0.1~50mm、より好ましくは1~7mmで、平均径が好ましくは1μm~2mm、より好ましくは5μm~0.5mmである。平均長さ及び平均径が上記範囲内であると、短繊維同士が必要以上に絡まるおそれがなく、良好な分散性を確保することができる。
親水性短繊維の配合量は、前記ゴム成分(例えばジエン系重合体)の合計100質量部に対して0.1~100質量部の範囲が好ましく、1~50質量部の範囲が更に好ましく、1~10質量部の範囲がより一層好ましい。親水性短繊維の配合量を上記範囲に収めることで、氷上性能と耐摩耗性の良好なバランスを取ることができる。
【0018】
次いで、
図1に示すように、本実施形態では、ステップS101において準備した、加硫済のタイヤのトレッドの表面にレーザ加工を施して凹部を形成する(ステップS102:レーザ加工工程)。
【0019】
本実施形態では、上記レーザ加工工程においては、レーザ加工には、エキシマレーザを用いる。
エキシマレーザは、レーザ媒質に希ガスやハロゲンなどの混合ガスを用いる紫外線レーザである。本実施形態において、エキシマレーザの波長は、例えば、150nm以上400nm以下とすることが好ましい。一例として、ArFエキシマレーザ(波長193nm)、KrFエキシマレーザ(波長248nm)、XeClエキシマレーザ(波長308nm)、XeFエキシマレーザ(波長351nm)等を用いることができる。
これにより、レーザによりゴムが切削されて形成される凹部4をミクロンオーダーで加工することができ、また、波長が短いためトレッドのゴムに対して過度な熱ストレスをかけずに済む。
【0020】
図3は、本発明の一実施形態にかかるタイヤのトレッドの表面の一部を示す展開図である。
図3に示す例では、図示の範囲で2本のタイヤ幅方向に延びる凹部4が形成されている。凹部4は、レーザ加工工程において、レーザによってトレッドのゴムが切削されることによって形成されたものである。図示例では、凹部4は、いずれも2本の第1の凹部2と連通している。より具体的には、1つの凹部4は、2本の第1の凹部2及び1つの第2の凹部3に連通している。なお、凹部4は、第1の凹部2のみに連通しても良いし、第1の凹部2及び第2の凹部3に連通しても良いし、第2の凹部3のみに連通しても良いし、第1の凹部2及び第2の凹部3のいずれにも連通しなくても良い。排水性の観点からは、少なくとも1つの凹部4が、第1の凹部2及び第2の凹部3に連通することが好ましい。
【0021】
図4は、第1の変形例にかかるタイヤのトレッドの表面の一部を示す展開図である。
図5は、第2の変形例にかかるタイヤのトレッドの表面の一部を示す展開図である。
図6は、第3の変形例にかかるタイヤのトレッドの表面の一部を示す展開図である。
図7は、第4の変形例にかかるタイヤのトレッドの表面の一部を示す展開図である。
図8は、第5の変形例にかかるタイヤのトレッドの表面の一部を示す展開図である。
図9は、第6の変形例にかかるタイヤのトレッドの表面の一部を示す展開図である。
図10は、第7の変形例にかかるタイヤのトレッドの表面の一部を示す展開図である。
図11は、第8の変形例にかかるタイヤのトレッドの表面の一部を示す展開図である。
図12は、第9の変形例にかかるタイヤのトレッドの表面の一部を示す展開図である。
図13は、第10の変形例にかかるタイヤのトレッドの表面の一部を示す展開図である。
図4に示す例では、図示の範囲で3本のタイヤ周方向に延びる凹部4が形成されている。図示例では、各凹部4は、第1の凹部2の延在長さを長くするように、第1の凹部2に一部重ねて配置されている。図示例では、各凹部4は、1つの第2の凹部3にも連通している。
図5に示す例では、図示の範囲で3本のタイヤ幅方向に延びる凹部4が形成されている。図示例では、各凹部4は、いずれも第1の凹部2と連通している。図示例では、各凹部4は、1つの第2の凹部3にも連通している。
図6に示す例では、図示の範囲で3本の円環状の凹部4が形成されている。図示例では、各凹部4は、いずれも第1の凹部2と連通している。図示例では、2つの凹部4は、2つの第2の凹部3と連通し、1つの凹部4は、第2の凹部3とは連通していない。
図7に示す例では、図示の範囲で3本の屈曲形状の凹部4が形成されている。各凹部4は、タイヤ幅方向一方側から他方側へ向かってタイヤ周方向一方側に傾斜する第1部分4aと、タイヤ幅方向一方側から他方側へ向かってタイヤ周方向他方側に傾斜する第2部分4bとが屈曲部を介して接続されてなる。この例では、第1部分4a及び第2部分4bは、タイヤ幅方向に対して45°の角度で傾斜してなる。図示例では、各凹部4は、いずれも第1の凹部2と連通している。図示例では、2つの凹部4は、2つの第2の凹部3と連通し、1つの凹部4は、1つの第2の凹部3と連通している。
図8に示す例では、図示の範囲で4つの凹部4が形成されている。図示例では、凹部4は、いずれも平面視で円環状である。本例では、4つの凹部4は、タイヤ幅方向に配列されている。本例では、タイヤ幅方向に隣接する凹部4は、互いに連通している。図示例では、2つの凹部4(図示で左から2つ目の凹部4及び図示で最も右側の凹部4)は、第1の凹部2と連通しており、他の2つの凹部4(図示で最も左の凹部4及び図示で右から2つ目の凹部4)は、第1の凹部2と連通していない。また、本例では、いずれの凹部4も、第2の凹部3とは連通していない。
図9に示す例では、図示の範囲で3本の屈曲形状の凹部4が形成されている。各凹部4は、タイヤ幅方向一方側から他方側へ向かってタイヤ周方向一方側に傾斜する第1部分4aと、タイヤ幅方向一方側から他方側へ向かってタイヤ周方向他方側に傾斜する第2部分4bとが屈曲部を介して接続されてなる。この例では、第1部分4a及び第2部分4bは、タイヤ幅方向に対して30°の角度で傾斜してなる。図示例では、3本の凹部4は、タイヤ幅方向に配列されている。本例では、タイヤ幅方向に隣接する凹部4は、互いに連通している。図示例では、1つの凹部4(図示で最も左側の凹部4)は、第1の凹部2と連通しており、他の2つの凹部4(図示で中央及び最も右側の凹部4)は、第1の凹部2と連通していない。本例では、いずれの凹部4も、第2の凹部3と連通していない。
図10に示す例では、図示の範囲で3つの凹部4が形成されている。各凹部4は、3つの溝からなる平面視で三角形状の形状を有している。図示例では、3つの凹部4は、タイヤ幅方向に配列されている。本例では、タイヤ幅方向に隣接する凹部4は、(三角形の頂点位置で)互いに連通している。本例では、図示中央の凹部4が、図示左右の凹部4に対して、図示上下反転させた形状で配置されている。図示例では、いずれの凹部4も第1の凹部2と連通している。一方で、図示例では、いずれの凹部4も第2の凹部3と連通していない。
図11に示す例では、図示の範囲で1本の凹部4が形成されている。凹部4は、タイヤ幅方向に延びている。凹部4の側部の外輪郭は、湾曲形状をなしている。本例では、凹部4は、2本の第1の凹部2と連通している。また、本例では、凹部4は、第2の凹部3と連通していない。
図12に示す例では、図示の範囲で1本の階段形状の凹部4が形成されている。凹部4は、タイヤ周方向に延びる周方向部分4cと、タイヤ幅方向に延びる幅方向部分4dとが接続されてなる。図示例では、凹部4は、5本の周方向部分4cと5本の幅方向部分4dとが連通されてなる。図示例では、周方向部分4cの端部と幅方向部分4dの端部とが連通している。本例では、凹部4は、2本の第1の凹部4及び1つの第2の凹部3に連通している。
図13に示す例では、図示の範囲で1つの凹部4が形成されている。凹部4は、タイヤ周方向に延びる周方向部分4cと、タイヤ幅方向に延びる幅方向部分4dとが連通してなる。図示例では、凹部4は、2本の周方向部分4cと4本の幅方向部分4dとが連通してなる。図示例では、周方向部分4cの端部は、幅方向部分4dとは連通しておらず、また、幅方向部分4dの端部は、周方向部分4cと連通していない。本例では、凹部4は、3本の第1の凹部4及び2つの第2の凹部3に連通している。
図4~
図13に示す例においても、凹部4は、第1の凹部2のみに連通しても良いし、第1の凹部2及び第2の凹部3に連通しても良いし、第2の凹部3のみに連通しても良いし、第1の凹部2及び第2の凹部3のいずれにも連通しなくても良い。排水性の観点からは、少なくとも1つの凹部4が、第1の凹部2及び第2の凹部3に連通することが好ましい。
【0022】
本実施形態では、上記レーザ加工工程において、レーザにより切削され形成される凹部4の幅は、60μm以下である。これにより、水路の微細な加工が可能となる。本実施形態において、レーザにより形成される凹部4の幅は、50μm以下とすることがより好ましく、40μm以下とすることがさらに好ましい。なお、凹部4の幅の下限は加工精度の限界によって決定されるため、特には限定されない。凹部4の深さ(最大深さ)は、100μm以下とすることが好ましく、60μm以下とすることがより好ましい。凹部4の延在長さは、特に限定されず、例えば、μmオーダーからcmオーダーとなり得る。
また、本実施形態では、上記レーザ加工工程において、凹部4の少なくとも一部の延在部分が、タイヤ幅方向に対し45°以下の角度で傾斜するように、レーザ加工を施す。これにより、加硫済のタイヤにさらに高い氷上性能を付与することができる。
例えば、
図3、
図5に示す例では、凹部4の全体が、タイヤ幅方向に対し0°の角度で延びている。例えば、
図6に示す例では、凹部4の一部の延在部分が、タイヤ幅方向に対し45°以下の角度で延びている(
図6の凹部4は平面視で円環状であるので、円周の1/4の長さの領域2つ(合計で円周の1/2の長さ)が、タイヤ幅方向に対し45°以下の角度で延びている)。
図7に示す例では、凹部4の全体が、タイヤ幅方向に対し45°の角度で傾斜して延びている。
図8に示す例では、凹部4の一部の延在部分が、タイヤ幅方向に対し45°以下の角度で延びている(
図8の凹部4は平面視で円環状であるので、各凹部4につき、円周の1/4の長さの領域2つ(合計で円周の1/2の長さ)が、タイヤ幅方向に対し45°以下の角度で延びている)。
図9に示す例では、凹部4の全体が、タイヤ幅方向に対し30°の角度で傾斜して延びている。
図10に示す例では、凹部の一部の延在部分が、タイヤ幅方向に対し45°以下の角度で延びている(
図10の凹部4は、平面視で三角形状であり、各凹部4の1つの辺がタイヤ幅方向に対し0°の角度で延びている)。
図11に示す例では、凹部4の全体がタイヤ幅方向に対し0°の角度で延びている。
図12に示す例では、凹部4の一部の延在部分が、タイヤ幅方向に対し45°以下の角度で延びている(凹部4のうち、上記幅方向部分4dがタイヤ幅方向に対し0°の角度で延びている)。
図13に示す例では、凹部4の一部の延在部分が、タイヤ幅方向に対し45°以下の角度で延びている(凹部4のうち、上記幅方向部分4dがタイヤ幅方向に対し0°の角度で延びている)。一方で、
図4に示す例では、凹部4は、その延在方向に、タイヤ幅方向に対し45°以下の角度で傾斜している部分を有しない。
また、本実施形態では、上記レーザ加工工程において、凹部4は、タイヤ幅方向に対し45°以下の角度で傾斜する部分と、タイヤ幅方向に対し45°超の角度で傾斜する部分とが、接続されるように、レーザ加工を施して形成されることが好ましい。これにより、効率的な排水が可能となる。
例えば、
図6に示す例では、凹部4は平面視で円環状であるので、円周の1/4の長さの領域2つ(合計で円周の1/2の長さ)が、タイヤ幅方向に対し45°以下の角度で延び、残る円周の1/4の長さの領域2つ(合計で円周の1/2の長さ)が、タイヤ幅方向に対し45°超の角度で延び、これらが連通されている。
図8に示す例では、各凹部4は、平面視で円環状であるので、各凹部4につき、円周の1/4の長さの領域2つ(合計で円周の1/2の長さ)が、タイヤ幅方向に対し45°以下の角度で延び、残る円周の1/4の長さの領域2つ(合計で円周の1/2の長さ)が、タイヤ幅方向に対し45°超の角度で延び、これらが連通されている。
図10に示す例では、各凹部4は、平面視で三角形状であるので、各凹部4につき、タイヤ幅方向に対し0°の角度で延びる一辺と、タイヤ幅方向に対し60°の角度で傾斜して延びる他の2辺とが連通されている。
図12に示す例では、タイヤ幅方向に対して90°の角度で傾斜して延びる周方向部分4cとタイヤ幅方向に対し0°の角度で延びる幅方向部分4dとが連通されている。
図13に示す例では、タイヤ幅方向に対して90°の角度で傾斜して延びる周方向部分4cとタイヤ幅方向に対し0°の角度で延びる幅方向部分4dとが連通されている。一方で、
図3、
図4、
図7、
図9、
図11に示す例では、そのように構成されていない。
以下、本実施形態のタイヤの製造方法の作用効果について説明する。
【0023】
本実施形態のタイヤの製造方法では、加硫済のタイヤのトレッドの表面にレーザ加工を施して凹部4を形成している。従って、本実施形態のタイヤの製造方法によれば、加硫済のタイヤに対して、トレッドの表面に凹部4を付与することができるため、ユーザによる事後的な氷上性能への要求等に対して、加硫済のタイヤに高い氷上性能を付与することができる。
ここで、モールドにより凹部を形成する場合は、加硫時の気化現象により水路が形成されるため、その構造を制御することが困難であるが、レーザ加工により凹部を形成することにより、水路の微細構造を制御して形成することができる。
本実施形態では、準備する加硫済のタイヤに特段の事前加工等を必要とせず、本方法の実施前のタイヤの性能を通常通り発揮させることができる(例えば、本例では、発泡ゴムの発泡率を15~25%の発泡ゴムとし、トレッドのゴムを、親水性短繊維を有するものとし、少なくともそれによるタイヤの性能を、本方法の実施後も維持することができる)。
本実施形態では、凹部4を第1の凹部2と連通するように形成しているため、ミクロな水路が連通してより効果的な排水が可能となる。
また、本実施形態では、上記レーザ加工工程において、レーザ加工には、エキシマレーザを用いているため、凹部4をミクロンオーダーで加工することができ、また、波長が短いためトレッドのゴムに対して過度な熱ストレスをかけずに済む。
また、本実施形態では、上記レーザ加工工程において、凹部4の幅を、60μm以下としているため、水路の微細な加工が可能となる。
また、本実施形態では、上記レーザ加工工程において、凹部4の少なくとも一部の延在部分が、タイヤ幅方向に対し45°以下の角度で傾斜するように、レーザ加工を施すため、加硫済のタイヤにさらに高い氷上性能を付与することができる。
また、本実施形態では、上記レーザ加工工程において、凹部4は、タイヤ幅方向に対し45°以下の角度で傾斜する部分と、タイヤ幅方向に対し45°超の角度で傾斜する部分とが、接続されるように、レーザ加工を施して形成されるため、効率的な排水が可能となる。
【0024】
ここで、レーザ加工工程において、レーザ加工には、エキシマレーザを用いることが好ましい。凹部をミクロンオーダーで加工することができ、また、波長が短いためトレッドのゴムに対して過度な熱ストレスをかけずに済むからである。
【0025】
また、レーザ加工工程において、凹部の幅は、60μm以下であることが好ましい。水路の微細な加工が可能となるからである。
【0026】
また、トレッドのゴムは、発泡率が15~25%の発泡ゴムであることが好ましい。本方法の実施前においても、発泡率を15%以上とすることにより、タイヤとしての排水性を向上させ、一方で、発泡率を25%以下とすることにより、トレッドの剛性を確保して、乾燥路面での走行性能を向上させることができるからである。
【0027】
また、トレッドのゴムは、親水性短繊維を有することが好ましい。トレッドの剛性を高めることができ、また、トレッドが発泡剤を有する場合に、特に排水性を高めることができるからである。
【0028】
また、レーザ加工工程において、凹部の少なくとも一部の延在部分が、タイヤ幅方向に対し45°以下の角度で傾斜するように、レーザ加工を施すことが好ましい。加硫済のタイヤにさらに高い氷上性能を付与することができるからである。
【0029】
また、レーザ加工工程において、凹部は、タイヤ幅方向に対し45°以下の角度で傾斜する部分と、タイヤ幅方向に対し45°超の角度で傾斜する部分とが、接続されるように、レーザ加工を施すことが好ましい。効率的な排水が可能となるからである。
【0030】
なお、凹部4の形状や個数、サイズ等は、上記の例に限定されるものではなく、加硫済のタイヤに新たな水路を凹部4として形成することによって、加硫済のタイヤにさらに氷上性能を付与することができる限り、様々なものとすることができる。
また、上記の実施形態では、準備した加硫済のタイヤは、スタッドレスタイヤであり、トレッドの表面に、第1の凹部2及び第2の凹部3を有するものとしたが、加硫済のタイヤとしてサマータイヤを準備してもよく、この場合、トレッドの表面には、通常の溝やサイプのみを有し、ミクロンオーダーの凹部を有しないものとすることができる。
【0031】
<タイヤ>
本発明の一実施形態にかかるタイヤは、特には限定されないが、この例では、一対のビード部に跨るカーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側にベルトと、トレッドとを有するものである。
本実施形態のタイヤは、スタッドレスタイヤである。このタイヤのトレッドのゴムは、発泡率が15~25%の発泡ゴムである。また、本例では、トレッドのゴムは、親水性短繊維を有する。なお、発泡剤や親水性短繊維については、タイヤの製造方法の実施形態において既に説明した通りであるので、説明を省略する。
【0032】
既に
図3~
図7を用いて説明したように、本実施形態のタイヤは、トレッド踏面1の一部に、第1の凹部2、第2の凹部3、及び凹部4を有している。第1の凹部2、第2の凹部3については、タイヤの製造方法の実施形態において既に説明した通りであるので、説明を省略する。
本実施形態のタイヤは、トレッドに、壁面の少なくとも一部が炭化されている凹部4を有するものである。他の凹部4の諸元については、タイヤの製造方法の実施形態において既に説明した通りであるので、説明を省略する。
なお、第1の凹部2、第2の凹部3は、(凹部4と連通した箇所を除き)、壁面が炭化されていない。
以下、本実施形態のタイヤの作用効果について説明する。
【0033】
本実施形態のタイヤは、トレッドの表面に、第1の凹部2及び第2の凹部3に加えて、壁面の少なくとも一部が炭化されている凹部4が形成されている。これにより、壁面の少なくとも一部が炭化されている凹部4によるミクロな水路が形成され、水膜を除去する効果を高めて、氷上性能を向上させることができる。特に凹部4は、炭化された箇所において剛性が高まるため、水路が潰れにくくなって排水性が向上し、氷上性能を向上させることができる。
なお、凹部4は、壁面の少なくとも一部が炭化されていれば良く、(壁面全体ではなく)壁面の一部が炭化されていることがより好ましい。
特に本実施形態では、発泡ゴムの発泡率を15~25%の発泡ゴムとしており、発泡率を15%以上とすることにより、タイヤとしての排水性(ひいては氷上性能)を向上させ、一方で、発泡率を25%以下とすることにより、トレッドの剛性を確保して、乾燥路面での走行性能を向上させることができる。
また、本実施形態では、トレッドのゴムを、親水性短繊維を有するものとしているため、トレッドの剛性を高めることができ、また、トレッドが発泡剤を有する場合に、特に排水性を高めることができる。
本実施形態では、凹部4の幅を60μm以下としているため、水路が微細である。
本実施形態では、凹部4を第1の凹部2と連通させているため、ミクロな水路が連通して、より効果的な排水が可能となる。
また、本実施形態では、凹部4の少なくとも一部の延在部分が、タイヤ幅方向に対し45°以下の角度で傾斜しているため、氷上性能をさらに高めることができる。
また、本実施形態では、凹部4は、タイヤ幅方向に対し45°以下の角度で傾斜する部分と、タイヤ幅方向に対し45°超の角度で傾斜する部分とが、接続されているため、効率的な排水が可能となる。
【0034】
ここで、凹部の幅は、60μm以下であることが好ましい。水路が微細となるからである。
【0035】
ここで、トレッドのゴムは、発泡率が15~25%の発泡ゴムであることが好ましい。発泡率を15%以上とすることにより、タイヤとしての排水性を向上させ、一方で、発泡率を25%以下とすることにより、トレッドの剛性を確保して、乾燥路面での走行性能を向上させることができるからである。
【0036】
また、トレッドのゴムは、親水性短繊維を有することが好ましい。トレッドの剛性を高めることができ、また、トレッドが発泡剤を有する場合に、特に排水性を高めることができるからである。
【0037】
また、凹部の少なくとも一部の延在部分が、タイヤ幅方向に対し45°以下の角度で傾斜していることが好ましい。氷上性能をさらに高めることができるからである。
【0038】
また、凹部は、タイヤ幅方向に対し45°以下の角度で傾斜する部分と、タイヤ幅方向に対し45°超の角度で傾斜する部分とが、接続されていることが好ましい。効率的な排水が可能となるからである。
【0039】
なお、凹部4の形状や個数、サイズ等は、上記の例に限定されるものではなく、壁面の少なくとも一部が炭化されてなる凹部4を有することによって、タイヤの氷上性能を向上させることができる限り、様々なものとすることができる。
また、トレッドの表面に、第1の凹部2や第2の凹部3など、凹部4以外のミクロンオーダーの凹部を有しない構成とすることもできる。
【0040】
また、壁面の少なくとも一部が炭化されてなるサイプ7が形成されたブロック5を有するタイヤとすることも好ましい。
【0041】
上記の例では、タイヤは、スタッドレスタイヤを例示したが、サマータイヤ等の用途のものとすることができる。この場合、タイヤのトレッドは、非発泡ゴムからなることが好ましい。
【0042】
トレッドが、非発泡ゴムからなる場合、トレッドゴムのゴム組成物は、変性ポリマーを有しても良い(例えば変性SBR、変性BR)。また、トレッドゴムのゴム組成物において、シリカとカーボンブラックとの総重量に対するシリカの比率を70%以上、又は90%以上とすることができる。また、トレッドゴムのゴム組成物は、熱可塑性樹脂を含んでも良い(ゴム成分100質量部に対して5~50質量部とすることが好ましい)。なお、トレッドは、分割トレッドとしても良く、例えばタイヤ径方向に異なるゴム種が積層された構造、又は、例えばタイヤ幅方向に異なるゴム種を用いたものとすることができる。
【0043】
例えば、tanδの温度曲線のピーク位置の温度が-16.0℃以上-6.0℃以下にあって、ピーク位置のtanδが1.13よりも大きく、0℃におけるtanδが0.95以上であり、かつ-5℃におけるtanδと5℃のおけるtanδとの差の絶対値を―5℃と5℃との温度差で除した値{|(-5℃におけるtanδ)-(5℃におけるtanδ)|/10}(/℃)が0.045/℃より小さい、トレッド用ゴム組成物を用いることができる。
ここで、tanδは、動的引張粘弾性測定試験機を用いて、周波数52Hz、初期歪2%、動歪1%、3℃/分の昇温速度で-25℃から80℃におけるtanδの値を動的引張貯蔵弾性率E’に対する動的引張損失弾性率E’’の比(E’’/E´)から測定するものとする。
上記に加えて、0℃におけるtanδは、0.95以上とすることが好ましい。
あるいは、少なくとも2種類の結合スチレン含量の異なるスチレン-ブタジエン共重合体ゴムを含むゴム成分と充填材とを含有するゴム組成物であって、結合スチレン含量が高いスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(A)の結合スチレン含量St(A)と結合スチレン含量が低いスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(B)の結合スチレン含量St(B)との差{St(A)-St(B)}が6~22質量%であり、0℃におけるtanδが0.95以上であり、かつ-5℃におけるtanδと5℃のおけるtanδとの差の絶対値を―5℃と5℃との温度差で除した値{|(-5℃におけるtanδ)-(5℃におけるtanδ)|/10}(/℃)が0.045/℃より小さい、トレッド用ゴム組成物を用いることもできる。
結合スチレン含量(質量%)は、1H-NMRスペクトルの積分比から算出し、tanδは、動的引張粘弾性測定試験機を用いて、周波数52Hz、初期歪2%、動歪1%、3℃/分の昇温速度で-25℃から80℃におけるtanδの値を動的引張貯蔵弾性率E’に対する動的引張損失弾性率E’’の比(E’’/E´)から測定するものとする。
【0044】
例えば、トレッドゴムのゴム組成物として、天然ゴム及び合成イソプレンゴムからなる群から選択される少なくとも1種のイソプレン系ゴムを50質量%以上含むゴム成分(A)と、熱可塑性樹脂(B)と、シリカを70質量%以上含む充填剤(C)と、を含み、前記熱可塑性樹脂(B)の配合量が、前記ゴム成分(A)100質量部に対して5~40質量部であり、0℃におけるtanδが0.5以下であり、30℃におけるtanδと60℃におけるtanδとの差が0.070以下であり、動歪1%、0℃における貯蔵弾性率が20MPa以下である、ものを用いることができる。なお、長さ50mm、幅5mm、厚み2mmのゴムシートを切り出し、初期荷重160mg、動歪1%、周波数52Hzの条件下で、0℃、30℃及び60℃における損失正接(tanδ)、並びに、0℃における貯蔵弾性率(E’)を測定するものとする。
あるいは、ゴム組成物は、C5系樹脂、C5~C9系樹脂、C9系樹脂、テルペン系樹脂、テルペン-芳香族化合物系樹脂、ロジン系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、及びアルキルフェノール系樹脂の中から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂(B)を、ゴム成分100質量部に対して5~50質量部配合してなることもできる。規定量の熱可塑性樹脂(B)を配合することで、ガラス転移点(Tg)が高くなり、0℃での損失正接(tanδ)が向上するため、主にタイヤの湿潤路面での性能を向上させることができる。ゴム成分(A)は、上記の通り、NRを70質量%以上含有するものであるが、上記の熱可塑性樹脂(B)は、NRとの相溶性が高いため、上記の効果が特に得られやすい。上記の熱可塑性樹脂(B)は、ゴム成分(A)100質量部に対して5~50質量部、好ましくは10~30質量部配合される。熱可塑性樹脂(B)の配合量をゴム成分(A)100質量部に対して5~50質量部とすることで、所望の破壊特性や耐摩耗性を確保することができる。熱可塑性樹脂(B)の配合量が5質量部未満であると、湿潤路面での制動性能が充分に発揮されにくく、一方、50質量部超であると、所望の耐摩耗性や破壊特性が得られにくくなるおそれがある。
【0045】
なお、トレッドの表面にレーザ加工を施して凹部を形成した後にトレッドパターンを形成しても良く、あるいは、トレッドパターンを有するトレッドの表面にレーザ加工を施して凹部を形成しても良い。
【0046】
サマータイヤ(例えばトレッドゴムが非発泡ゴム)の場合も、スタッドレスタイヤ(例えばトレッドゴムが発泡ゴム)の場合も、路面への追随性はレーザ加工の有無によらずに、ほぼ同等と考えられる。しかし、排水性という点では、特にサマータイヤの場合、通常は非発泡ゴムを用い、氷面上の薄い水膜を除去できる気泡が存在しないため、排水性が低く氷上性能が十分には発現しない場合があるが、レーザ加工を施して凹部を形成することで、排水性が補完され、スタッドレスタイヤに近い氷上性能を発揮することができると考えられる。
【0047】
スタッドレスタイヤ(例えばトレッドゴムが発泡ゴム)においては、微細加工による更なる排水性の向上と、発泡率と弾性率とを好適範囲に設計できる利点がある。タイヤ周方向に対し垂直な方向にミクロ排水のパスが形成されることで、より高い表情性能を発現する。
【実施例】
【0048】
常法で作製した非発泡のスムースタイヤに対し、トレッドゴムを円環状に切り出し、切り出したトレッドゴムにレーザ加工を施して、元の台タイヤに接着し、パタン付与後に氷上試験を行った(発明例)。
低速条件(20km/h)及び中速条件(30km/h)でブレーキを踏んだ際の制動距離を測定し、その逆数を指数化した。
対比の対象として、レーザ加工を施さない同様の非発泡のスムースタイヤ(比較例1)を用意し、また、一般的なスタッドレスタイヤ(発泡ゴム)(比較例2)を用意した。
各タイヤのタイヤサイズは、205/55R16とした。
以下の表1に評価結果を示す。
【0049】
【0050】
表1に示したように、発明例のタイヤは、比較例1のタイヤより氷上性能が大きく向上し、比較例2のスタッドレスタイヤに近い氷上性能が得られたことがわかる。
【符号の説明】
【0051】
1:トレッド踏面(トレッドの表面)、 2:第1の凹部、 3:第2の凹部、
4:凹部、 4a:第1部分、 4b:第2部分、
4c:周方向部分、 4d:幅方向部分、