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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】植物栽培光源および植物栽培装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20240422BHJP
   A01G 22/40 20180101ALI20240422BHJP
【FI】
A01G7/00 601C
A01G22/40
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021530762
(86)(22)【出願日】2019-08-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 KR2019010065
(87)【国際公開番号】W WO2020032677
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-07-29
(31)【優先権主張番号】62/717,304
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/824,473
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/536,222
(32)【優先日】2019-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506029004
【氏名又は名称】ソウル バイオシス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SEOUL VIOSYS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】65-16,Sandan-ro 163 Beon-gil,Danwon-gu,Ansan-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】コ, サン ミン
(72)【発明者】
【氏名】ソン, ヒョン ス
(72)【発明者】
【氏名】キム, セ リョン
(72)【発明者】
【氏名】ク, ジョン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジン ウォン
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-521046(JP,A)
【文献】特開2012-205520(JP,A)
【文献】特開2007-89430(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0311553(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
A01G 9/00
A01G 9/14 - 9/26
A01G 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1波長帯域の第1光を出射する第1光源、および
前記第1波長帯域と異なる第2波長帯域の第2光を出射する第2光源を含み、
前記第2波長帯域は紫外線波長帯域を含み、
前記第1光源及び前記第2光源は、前記第1光源が前記第1光を出射するあいだ、前記第2光源前記第1光源と独立して前記第2光を出射する又は出射しないように制御され、
前記第2光源は、前記第2光のドーズ量が3kJ/m 2 s以上14kJ/m 2 s以下になるようにオン又はオフを繰り返すように制御される、植物栽培光源。
【請求項2】
前記第1光源は、明条件で前記第1光を出射するようにオンになり、暗条件でオフになるように制御される、請求項1に記載の植物栽培光源。
【請求項3】
前記第1光源は、所定期間内においてオン又はオフを繰り返すように制御され、
前記所定期間内における前記第1光源がオンとなる時間と前記第1光源がオフとなる時間との比は、1:1~2:1である、請求項2に記載の植物栽培光源。
【請求項4】
前記第1波長帯域は、可視光線波長帯域を含む、請求項1に記載の植物栽培光源。
【請求項5】
前記第1光源は、440nm~495nmの波長帯域と620nm~750nmの波長帯域で相対的に高い光の強さを有する前記第1光を出射する、請求項1に記載の植物栽培光源。
【請求項6】
可視光線および紫外線の波長帯域の光を出射する光源部、
植物が植えられ、前記光源部がその内部に装着されたハウジング、および
前記光源部を制御する制御部を含み、
前記光源部は、
第1波長帯域の第1光を出射する第1光源、および
前記第1波長帯域と異なる第2波長帯域の第2光を出射する第2光源を含み、
前記第2波長帯域は紫外線波長帯域を含み、
前記制御部は明条件で前記第1光源がオンになり、暗条件で前記第1光源がオフになるように制御し、
前記制御部は前記明条件で前記第2光源が前記第1光源と独立してオン又はオフになるように制御し、
前記制御部は、前記第2光のドーズ量が3kJ/m 2 s以上14kJ/m 2 s以下になるように、前記第2光源がオン又はオフを繰り返すように制御する、植物栽培装置。
【請求項7】
前記第1波長帯域は、可視光線波長帯域を含む、請求項に記載の植物栽培装置。
【請求項8】
前記ハウジングは、前記植物が配置されて栽培される空間を有し、前記第1光源および前記第2光源は前記ハウジングの内面に設けられる、請求項に記載の植物栽培装置。
【請求項9】
前記ハウジングは、互いに締結して開閉可能な下部ケースと上部ケースを含み、前記第1光源および前記第2光源は、前記上部ケースの内面に設けられる、請求項に記載の植物栽培装置。
【請求項10】
前記第1光源は、所定期間内においてオン又はオフを繰り返すように制御され、
前記所定期間内における前記第1光源がオンとなる時間と前記第1光源がオフとなる時間との比は、1:1~2:1である、請求項に記載の植物栽培装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培装置および植物栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康に対する関心が高まるにつれ、有機農業を始めとする安全な食材に対する需要が増えている。一般の消費者の場合、有機農業食材をスーパーや市場で買って食べるのが普通だが、近年では有機農業食材を消費者が自分で生産して消費しようとする欲求も強くなっている。特に、野菜は他の食材に比べて消費者が自分で栽培することが相対的に容易なため、植物栽培装置に対する需要が大きい。
【0003】
さらに、健康に対する関心はアンチエイジング(Anti-aging)の面でも強くなっているが、近年では医学的施術および処方のような人為的な方法によるアンチエイジングよりも、食品内に存在する抗酸化物質の摂取による自然的なアンチエイジング法に対する関心が高くなっている。活性酸素は、細胞および組織の破壊を引き起こして皮膚を含む身体全ての組織の老化を促進させることで知られているが、抗酸化物質はこのような活性酸素を取り除いて身体の老化を遅らせる。抗酸化活性の高い物質には、ビタミン類、フェノール類物質、カロチン系物質等がある。特に、フェノール類物質は、植物系に広く分布し、抗酸化活性が高く、且つ肌の老化を促進する紫外線を直接遮断したりもする。抗酸化物質が多いとして知られている植物には、豆類、ベリー類、野菜等がある。安全で且つ健康に良い食材に対する需要に対応するために、家庭でも日常的に栽培しやすい植物のフェノール類化合物の総量を高めるための方法に対する開発が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、フェノール系化合物の総量および抗酸化活性の高い植物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施例によると、第1波長帯域の第1光を出射する第1光源、および前記第1波長帯域と異なる第2波長帯域の第2光を出射する第2光源を含み、前記第2波長帯域は紫外線波長帯域を含み、前記第1光源が前記第1光を出射するあいだ、前記第2光源は前記第1光源と独立的に駆動して前記第2光出射の有無を決定する、植物栽培光源が提供される。
【0006】
本発明の一実施例によると、前記第1光源は、明条件で前記第1光を出射するようにオンになり、暗条件でオフになる、植物栽培光源が提供される。
【0007】
本発明の一実施例によると、前記第2光源は、前記明条件で前記第2光を出射するようにオンになったり、前記第2光を出射しないようにオフになったりする、植物栽培光源が提供される。
【0008】
本発明の一実施例によると、前記明条件と前記暗条件は、一日単位で繰り返される、植物栽培光源が提供される。
【0009】
本発明の一実施例によると、前記明条件と前記暗条件の比は、1:1~2:1である、植物栽培光源が提供される。
【0010】
本発明の一実施例によると、前記第1波長帯域は、可視光線波長帯域を含む、植物栽培光源が提供される。
【0011】
本発明の一実施例によると、前記第2波長帯域は、約250nm~約380nmの波長帯域を含む、植物栽培光源が提供される。
【0012】
本発明の一実施例によると、前記第2光は、約270nm~約300nmでピーク波長を有する、植物栽培光源が提供される。
【0013】
本発明の一実施例によると、前記第2光源は、前記第2光のドーズ量が約1kJ/ms以上約14kJ/ms以下になるようにオン又はオフになる、植物栽培光源が提供される。
【0014】
本発明の一実施例によると、前記第1光源は、約440nm~約495nmの波長帯域と約620nm~約750nmの波長帯域で相対的に高い光の強さを有する前記第1光を出射する、植物栽培光源が提供される。
【0015】
本発明の一実施例によると、可視光線および紫外線の波長帯域の光を出射する光源部、植物が植えられ、前記光源部がその内部に装着されたハウジング、および前記光源部を制御する制御部を含み、前記光源部は第1波長帯域の第1光を出射する第1光源、および前記第1波長帯域と異なる第2波長帯域の第2光を出射する第2光源を含み、前記第2波長帯域は紫外線波長帯域を含み、前記制御部は明条件で前記第1光源がオンになり、暗条件で前記第1光源がオフになるように制御し、前記制御部は前記明条件で前記第2光源が前記第1光源と独立してオン又はオフになるように制御する、植物栽培装置が提供される。
【0016】
本発明の一実施例によると、前記第1波長帯域は、可視光線波長帯域を含む、植物栽培装置が提供される。
【0017】
本発明の一実施例によると、前記制御部は、前記明条件と異なる暗条件と、前記明条件が一日単位で繰り返されるように制御する植物栽培装置が提供される。
【0018】
本発明の一実施例によると、前記第2光は、約270nm~約300nmでピーク波長を有する植物栽培装置が提供される。
【0019】
本発明の一実施例によると、前記制御部は、前記第2光のドーズ量を約1kJ/ms以上約14kJ/ms以下に制御する植物栽培装置が提供される。
【0020】
本発明の一実施例によると、前記植物が配置されて栽培される空間を有する前記ハウジングをさらに含み、第1光源および第2光源は前記ハウジングの内面に設けられる植物栽培装置が提供される。
【0021】
本発明の一実施例によると、前記ハウジングは、互いに締結して開閉可能な下部ケースと上部ケースを含み、前記第1および第2光源は、前記上部ケースの内面に設けられる植物栽培装置が提供される。
【0022】
本発明の一実施例によると、前記明条件と前記暗条件の比は1:1~2:1である、植物栽培装置が提供される。
【0023】
本発明の一実施例によると、前記制御部は前記第2光源が前記植物の収穫前の第3時間のあいだ、前記植物に光を照射するように前記第2光源を制御する、植物栽培装置が提供される。
【0024】
本発明の一実施例によると、前記植物は、マメ科(Fabaceae Family)又はイネ科(Poaceae Family)植物である、植物栽培装置が提供される。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一実施例によると、フェノール系化合物の総量および抗酸化活性の高い植物を提供することができる。
【0026】
本発明の一実施例によると、植物の種類によって最適化された成長環境を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施例にかかる植物栽培装置の断面図である。
図2】本発明の一実施例にかかる植物栽培装置を概念的に図示した斜視図である。
図3】本発明の一実施例にかかる植物栽培装置の断面図である。
図4a】本発明の一実施例にかかる栽培装置において光源部を図示した平面図である。
図4b】本発明の一実施例にかかる発光ダイオードを概略的に図示したものである。
図5】本発明の一実施例にかかる栽培装置において、光源部を図示したブロック図である。
図6】本発明の一実施例にかかる栽培装置において、第1光源が太陽光と類似する波長帯域を有する場合の、第1光源から出射された光のスペクトルを図示したものである。
図7】本発明の一実施例にかかる植物栽培方法を示したフローチャートである。
図8】本発明の一実施例にかかる植物栽培方法を示したフローチャートである。
図9】本発明の一実施例にかかる栽培方法を順に図示したフローチャートである。
図10】第2光の波長によるフェノール性化合物の量を図示したグラフである。
図11】実験例2の条件と同じ条件で行うが、第2光が285nmでピーク波長を有する光をドーズ量だけ変えて麦の新芽に印加した後の、麦の新芽を撮影した写真である。
図12】実験例2の条件と同じ条件で行うが、第2光が285nmでピーク波長を有する光をドーズ量だけ変えて麦の新芽に印加した後、その麦の新芽に含まれる総フェノール性化合物の総量を示したものである。
図13】実験例2の条件と同じ条件で行うが、第2光が285nmでピーク波長を有する光をドーズ量だけ変えて小麦の新芽に印加した後の、小麦の新芽を撮影した写真である。
図14】実験例2の条件と同じ条件で行うが、第2光が285nmでピーク波長を有する光をドーズ量だけ変えて小麦の新芽に印加した後、その小麦の新芽に含まれる総フェノール性化合物の総量を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるため、特定の実施例を図面に例示し、本文に詳しく説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定するものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むと理解しなければならない。
【0029】
各図面を説明するにおいて、類似する参照符号を類似する構成要素に対して使用した。添付の図面において、構造物の寸法は本発明の明確性のために実際よりも拡大して図示した。第1、第2等の用語は多様な構成要素の説明に使用できるが、前記構成要素は前記用語によって限定されてはならない。前記用語は一つの構成要素を他の構成要素と区別するためだけの目的で使用する。例えば、本発明の権利範囲から外れなければ、第1構成要素は第2構成要素と命名することができ、同様に第2構成要素も第1構成要素と命名することができる。単数の表現は、文脈上はっきりと異なる意味を持たない限り、複数の表現を含む。
【0030】
本出願において、「含む」又は「有する」等の用語は、明細書上に記載の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはそれらを組み合わせたものが存在することを指定するものであって、一つ又はそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部分品またはそれらを組み合わせた物の存在または付加可能性を予め排除しないものと理解しなければならない。また、層、膜、領域、板等の部分が、他の部分「上に」あるとする場合、これは他の部分の「直上」にある場合だけでなく、その中間に他の部分が存在する場合も含まれる。また、本明細書において、ある層、膜、領域、板等の部分が他の部分の上(on)に形成されているとする場合、前記の形成された方向は上部方向だけに限定されず、側面や下部方向に形成された場合も含まれる。逆に、層、膜、領域、板等の部分が他の部分の「下に」あるとする場合、これは他の部分の「直下」にある場合だけでなく、その中間に他の部分がある場合も含まれる。
【0031】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施例をより詳しく説明する。
【0032】
本発明の一実施例にかかる植物栽培方法を用いると、フェノール系化合物総量の高い植物を栽培することができる。具体的には、第1時間のあいだに種を発芽し、発芽した種に第2時間のあいだ第1波長帯域の光を照射して種から植物が生長するようにし、次いで収穫直前の第3時間のあいだ生長した植物に第2波長帯域の光を照射することにより、フェノール系化合物総量の高い植物を得ることができる。
【0033】
以下では、本発明の一実施例にかかる植物栽培方法によって植物の栽培に用いられる植物栽培装置について先に説明する。
【0034】
図1は、本発明の一実施例にかかる植物栽培装置の断面図である。
【0035】
図1を参考すると、本発明の一実施例にかかる植物栽培装置10は、本体部100、第1光源部200、および第2光源部300を含み、本体部100内には種400が蒔かれる。
【0036】
本体部100は、内部に種400が蒔かれる空間を含み、外部の光を遮断できるボックス形態で提供され得る。
【0037】
本体部100は、内部に蒔かれた種400が生長できる環境を提供する。本体部100は、複数個の種400が蒔かれ、生長できる大きさを有し得る。さらに、本体部100の大きさは植物栽培装置10の用途によって異なり得る。例えば、植物栽培装置10が家庭で使用される小規模の植物栽培に用いられる場合、本体部100の大きさは相対的に小さくなり得る。植物栽培装置10が商業的に植物を栽培し販売に使用される場合、本体部100の大きさは相対的に大きくなり得る。
【0038】
本体部100は、本体部100の外の光が本体部100内部に入り込まないように光を遮断することができる。よって、本体部100内部には外部と隔離された暗室環境が提供され得る。これにより、外部の光が不要に本体部100内部に蒔かれた種400に照射されることを防ぐことができる。特に、本体部100は外部の可視光線が種400に照射されることを防ぐことができる。但し、場合によって、本体部100は一部が開放されて外部の光が入り込むように設計されてもよい。
【0039】
本体部100の内部表面には、光触媒が塗布されてもよい。光触媒は、第1光源部200から照射される光を浴びて光触媒反応を活性化させることができる。これにより、本体部100内部が湿気の多い暗室環境に維持されても、本体部100内部における細菌またはカビの増殖を防ぐことができる。このような機能を行うための光触媒物質は、二酸化チタニウム(TiO)、ジルコニア(ZrO)、タングステン酸化物(WO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)から選ばれた少なくとも一つであり得る。
【0040】
本体部100は、水分供給部110および栽培台120を含み得る。
【0041】
水分供給部110は、本体部100内部に蒔かれた種400に水分を供給する。水分供給部110は、本体部100上段に設けられて、本体部100下段に設けられた栽培台120上に水を噴射する形態に構成できる。但し、水分供給部110の形態は上述のものに制限されるものではなく、本体部100の形状および栽培台120の配置形態によって多様な形態の水分供給部110を設けることができる。例えば、水分供給部110は、回転するスプリンクラー、ミストノズル噴射、霧発生機等の形態で設けられてもよい。
【0042】
水分供給部110は、一つ又は複数個設けることができる。水分供給部110の個数は、本体部100の大きさによって異なり得るが、相対的に小さい家庭用植物栽培装置10の場合は、本体部100が小さいため、水分供給部110が一つ設けられ得る。逆に、相対的に大きい商業用植物栽培装置10の場合は、本体部100が大きいため、水分供給部110が複数個設けられ得る。
【0043】
水分供給部110は、本体部100に設けられた水槽または本体部100外部の水栓に連結できる。さらに、水分供給部110は水中に浮遊する汚染物質が種400に付着しないように、ろ過装置をさらに含んでもよい。ろ過装置は、活性炭、不織布等のフィルターを含むことができ、これにより、ろ過装置を経た水は浄水されたものとなる。ろ過装置は、場合によって光照射フィルターをさらに含んでも良い。光照射フィルターは紫外線等を水に照射して、水中に存在する細菌、バクテリア、カビ胞子等を取り除くことができる。水分供給部110が、上述のろ過装置を含むことにより、水分排出部を通して出た水をリサイクルしたり、雨水等をすぐに栽培に使用したりする場合にも、本体部100の内部および種400が汚染されるおそれがない。
【0044】
水分供給部110は、タイマーを含むことができる。これにより、使用者が操作しなくても、水分供給部110は設定された時間間隔で種400に水分を供給することができる。種400に水分を供給する間隔は、種400の種類によって異なり得る。生長に水を多く必要とする植物の場合は、相対的に短い間隔で水分を供給することができ、生長に必要とする水が少ない植物の場合は、相対的に間隔を長くして水分を供給することができる。
【0045】
水分供給部110から供給される水は、植物の生長に必要な養分を含むことができる。例えば、水には、窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、硫黄(S)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ホウ素(B)、モリブデン(Mo)等の植物の生長に必要な無機元素を含むことができる。例えば、ザックス(Sachs)液、クノープ(Knop)液、ホーグランド(Hoagland)液、ヒューイット(Hewitt)液等を水分供給部110から供給できる。
【0046】
栽培台120上には、種400が蒔かれる。栽培台120は、種400を支持すると同時に、種400が育つ養分を提供することができる。よって、栽培台120は種400の生長に必要な培地(Culture Medium)を含んでもよく、培地は、窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、硫黄(S)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ホウ素(B)、モリブデン(Mo)等の無機元素を含む培地でもよい。
【0047】
栽培台120は、従って、培地と培地とを収容するためのコンテナ(Container)を含む形態で設けることができる。コンテナは、少なくとも一面、例えば上面が露出したボックス形態で設けられ得る。ボックス形態のコンテナ内部には、培地および種400を入れることができる。種400は、その種類によって培地の中に埋めた形態であったり、培地表面上に置いた形態であったりすることができる。
【0048】
栽培台120の大きさと形態は、本体部100の形態および第1光源部200と第2光源部300の設置形態によって異なり得る。栽培台120の大きさと形態は、栽培台120上に蒔いた種400が、第1光源部200および第2光源部300から照射される光の照射範囲内に入るように構成することができる。これにより、複数個の種400が栽培台120上に蒔かれても、種400の蒔かれた位置と関係なく均一に種400から植物が生長し得る。
【0049】
第1光源部200は、種400に第1波長帯域の光を照射する。種400は、第1波長帯域の光を浴びて成長することができる。
【0050】
第1光源部200が出射する第1波長帯域は、可視光線波長帯域であり得る。これにより、種400は第1光源部200から出射した第1波長帯域の光を浴びて光合成する。光合成によって種400から植物が成長する。
【0051】
第1光源部200は、上述のように、可視光線波長帯域の光を出射するために、1個または複数個の発光ダイオードを含み得る。第1光源部200が1個の発光ダイオードを含む場合、上述の発光ダイオードは白色光を出射する発光ダイオードであり得る。第1光源部200が複数個の発光ダイオードを含む場合、複数個の発光ダイオードはそれぞれ互いに異なる波長帯域の光を出射することができる。
【0052】
第1光源部200が複数個の発光ダイオードを含むとき、複数個の発光ダイオードは、例えば、赤色光を出射する発光ダイオードと青色光を出射する発光ダイオードを含み得る。植物は、上述の発光ダイオードから出射される可視光線を浴びて活発に光合成を行うことができる。この場合、特に赤色光は、植物の光合成を促進させて種400からの植物の成長を促進させることができ、青色光は、種400から発芽した植物の葉の形態形成と、環境抵抗性を増大させることができる。第1光源部200は、緑色光を出射する発光ダイオードを含み得る。緑色光を含む発光ダイオードは、高い光透過性によって群落における植物の光合成の効率を高めることができる。
【0053】
第1光源部200が上述のように互いに異なる波長の光を出射する複数個の発光ダイオードを含む場合、発光ダイオードの構成割合は波長によって異なり得る。例えば、赤色光と青色光を出射する発光ダイオードは、緑色光を出射する発光ダイオードに比べて少なくすることができる。上述の赤色光、青色光、および緑色光を出射する発光ダイオードの割合は、種400の種類によって決定できるが、例えば、青色光受容体であるクリプトクロム(cryptochrome)と赤色光受容体であるフィトクロム(Phytochrome)の割合によって構成割合を変えることができる。また、各波長帯域の光を出射する発光ダイオードを同数で設置し、植物の種類によって互いに異なる割合で発光ダイオードを駆動することもできる。
【0054】
第1光源部200に設けられた発光ダイオードは、特に特定波長において高いピークを有する波形を有するため、種400の種類に合うように光照射することができる。これにより、少ない電力でも植物をより早く且つ大きく生長させることができる。
【0055】
第1光源部200は、本体部100の上面に設けられ、本体部100下面に蒔かれた種400に光を照射することができる。本体部100上面上において第1光源部200は、第1光源部200による光照射角と種400が蒔かれた栽培台120の位置を考慮して決定することができる。
【0056】
第1光源部200は、場合に応じて、赤外線(Infra-Red)又は近赤外線(Near Infra-Red)波長帯域の光を出射することもできる。
【0057】
第1光源部200は、防水構造を有してもよい。これにより、第1光源部200が水に触れても第1光源部200が故障するおそれがない。
【0058】
第2光源部300は、種400に向かって第2波長帯域の光を出射する。第2波長帯域は、第1波長帯域とは異なり、約200nm~約400nmであり得る。上述の波長の光を種400に照射することにより、種400及び種400から生長した植物のフェノール系化合物総量が増加し得る。
【0059】
第2光源部300が出射する光は、約275nm波長の光と約295nm波長の光を含み得る。上述の光を種400に照射することにより、種400の生長に影響を及ぼさずに、種400および植物のフェノール系化合物総量および抗酸化活性(Anti-oxidant Capacity)を向上させることができる。
【0060】
第2光源部300は、光を照射するために発光ダイオードを含み得る。第2光源部300又は第2光源部300に含まれた発光ダイオードは、それぞれ複数個になってもよい。この場合、複数個の発光ダイオードは、互いに異なる波長の光を出射することができる。例えば、一部の第2光源部300又は発光ダイオードは、約275nm波長の光を出射し、別の第2光源部300又は発光ダイオードは、約295nm波長の光を出射するように第2光源部300を構成することができる。
【0061】
第2光源部300は、防水構造を有することができる。これにより、第2光源部300が水に触れても第2光源部300が故障するおそれがない。
【0062】
種400は、本体部100内部に蒔かれ、水分、第1波長帯域の光、および第2波長帯域の光の供給を受けて成長できる。種400は、マメ科(Fabaceae Family)又はイネ科(Poaceae Family)植物の種であり得る。例えば、種400は、大豆、緑豆、エンドウ豆、ムラサキウマゴヤシ、小麦、麦、イネ、竹、エンバク、キビ、モロコシ、サトウキビ、トウモロコシ等の種であり得る。上述のマメ科とイネ科植物の種の場合、本発明の一実施例にかかる植物栽培方法によって栽培すると、フェノール系化合物総量あるいは抗酸化活性が非常に高くなることを確認することができる。これに対する詳しい内容は後述する。
【0063】
種400は、栽培過程中に第2光源部300から照射された光を浴びる。第2光源部300から照射された光は、種400から成長した植物のフェノール系化合物総量を増加させる。具体的には、第2光源部300から照射された第2波長帯域の光は、植物の二次代謝物質生合成を活性化してフェノール系化合物総量および抗酸化活性が増加し得る。植物に第2波長帯域の光が照射されると、上述の波長の光は植物細胞にDNA-損傷効果を与え、活性酸素を発生させる等のメカニズムを誘発し、これによって細胞および組織に深刻な損傷が生じる。植物は、組織細胞を保護するために、上述の光を吸収したり活性酸素を消去したりする二次代謝産物の生成を促進させる。
【0064】
例えば、上述の光が発芽した種400から生長した植物に与えられると、上述の活性を有する二次代謝産物の生合成に関与するフェニルアラニンアンモニア-リアーゼ(Phenylalanine ammonia-lyase)のような酵素が活性する。これにより、フェノール類化合物(Phenolic compounds)の生合成が促進され、その結果、植物の抗酸化活性の増進および上述の光による組織損傷が緩和される。
【0065】
上述の方法によって提供された植物が含む抗酸化物質は、フェノール系化合物(Phenolic Compound)、ビタミン類(Vitamin)、カロチン類物質(Carotenoid)等がある。
【0066】
さらに、フェノール系化合物は、フラボノイド(Flavonoid)、フェノール酸類物質(Phenolic acid)、ポリフェノール系物質(Polyphenol)、スチルベン類物質(Stilbenoid)、ヒドロ桂皮酸類物質(Hydrocinnamic acid)、クマリン類物質(Coumaric acid)等を含み得る。
【0067】
本発明の一実施例によると、本体部100、第1光源部200、および第2光源部300を含む植物栽培装置10を提供することにより、外部環境による影響を受けることなく、フェノール系化合物総量および抗酸化活性の高い植物を栽培することができる。また、それぞれ第1光源部200と第2光源部300から出射される第1波長帯域と第2波長帯域を、種400の種類に応じて構成することにより、植物の種類別に最適化された成長環境を提供することができる。
【0068】
植物栽培装置は、図1に開示したものと別の形状を有してもよい。
【0069】
図2は、本発明の一実施例にかかる植物栽培装置を概念的に図示した栽培装置である。
【0070】
図2を参照すると、本発明の一実施例にかかる植物栽培装置10は、植物の芽が育ち得る内部空間を有する本体部100、前記本体部100内に設けられ、光を出射する第1光源部200を含む。
【0071】
本体部100は、内部に植物の種を蒔いた後、植物が芽を出す空間をその内部に設ける。本体部100は、外部の光を遮断できるボックス形態で提供できる。本発明の一実施例において、本体部100は、上部方向に開口した下部ケース101と、下部方向に開口した上部ケース103を含み得る。下部ケース101と上部ケース103は、外部の光を遮断するボックス形態になるように締結することができる。
【0072】
下部ケース101は、底部と底部から上向きに延びた側壁部を含む。上部ケース103は、カバー部とカバー部から下向きに延びた側壁部を含む。下部ケース101と上部ケース103の側壁部は、互いに噛み合って締結する構造を有し得る。下部ケース101と上部ケース103は、使用者の意図に従って締結したり分離したりすることができ、これにより、使用者が本体部100を開け閉めできる。
【0073】
本体部100は、多様な形状で提供できる。例えば、略直方体形状を有してもよく、または円筒形状を有してもよい。しかし、本体部100の形状は、これに限定されるのではなく、これと異なる形状で提供されてもよい。
【0074】
本実施例において、本体部100内は空間を一つにすることもできる。しかし、これは説明の便宜のためのものであり、複数個の区域に分離することができる。つまり、本体部100内には本体部100内の空間を多数個に分ける隔壁が設けられ得る。
【0075】
第1光源部200は、本体部100内の空間で植物の芽に光を照射する。第1光源部200は、上部ケース103や下部ケース101の内面上に設けられる。本発明の一実施例において、第1光源部200は上部ケース103のカバー部上に設けることができる。本実施例では、一例として、上部ケース103のカバー部内面上に第1光源部200が設けられたものを図示したが、これに限定されるのではない。例えば、本発明の別の実施例において、第1光源部200は上部ケース103の側壁部上に設けることができる。又は、本発明の別の実施例において、第1光源部200は下部ケース101の側壁部に設けることができ、例えば、側壁部上段に設けられてもよい。又は、本発明のまた別の実施例において、第1光源部200は上部ケース103のカバー部、上部ケース103の側壁部、下部ケース101の側壁部の少なくとも一ヶ所に設けられてもよい。
【0076】
本体部100内の空間には、植物を栽培しやすいように、例えば、水栽培が容易なように栽培台130を設けることができる。栽培台130は、本体部100の底部から上部方向に離隔されて配置された板状のプレート131からなる。プレート131は、一定の大きさの貫通孔133を有し得る。栽培台130は、プレート131の上面にイネ科植物の種が置かれて育つようにするためのものであり、その上面にイネ科植物の種を位置させた状態で水を供給した時に、供給された水が排水されるように複数個の貫通孔133を有する。貫通孔133は、イネ科植物の種が下部に流されないようにする大きさで設けられる。例えば、貫通孔133の直径は、イネ科植物の種よりも小さくなり得る。栽培台130と下部ケース101の底部の間の空間は、排水された水が貯蔵される水槽として機能できる。これにより、栽培台130の貫通孔133を通じて下部に排水された水は、下部ケース101の底部と栽培台130の間の空間に溜めることができる。
【0077】
しかし、本発明の一実施例によると、イネ科植物の芽は水栽培以外の方法でも栽培することができ、この場合、本体部100内の空間は、イネ科植物の芽に必要な水分および/または養分が供給されるように、水、培地、土等を入れることができ、このとき、本体部100はコンテナとして機能することができる。培地や土等には、種が育つ養分、例えば、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、ナトリウム(Na)、鉄(Fe)等を含むことができる。種は、その種類によって、培地中に埋められた形態にしたり、培地表面に置いた形態にしたりすることができる。
【0078】
栽培台130の大きさと形態は、本体部100の形態および第1光源201と第2光源203の設置形態によって異なり得る。栽培台130の大きさと形態は、栽培台130上に蒔かれた種が第1光源201および第2光源203から照射される光の照射範囲内に入るように構成することができる。
【0079】
本体部100内には、種に水分を供給する水分供給部が設けられ得る。水分供給部は、本体部100上段、例えば、上部ケース103のカバー部内面上に設けられて、本体部100の栽培台130上に水を噴射する形態に構成できる。但し、水分供給部の形態は上述のものに制限されるのではなく、本体部100の形状および栽培台130の配置形態によって異なり得る。また、別途の水分供給部を用いず、使用者が直接本体部100内に水分を供給することもできる。以上では、本発明の一実施例にかかる簡単な形態の植物栽培装置について説明した。但し、本発明の一実施例にかかる植物栽培装置は、商業的な植物の生産に用いられるものであり、商業的な植物の生産に用いるための植物栽培装置の他の形態についてより詳しく説明する。
【0080】
図3は、本発明の一実施例にかかる植物栽培装置の断面図である。
【0081】
本発明の一実施例にかかる植物栽培装置10は、植物の生産工場形態で運営することができる。これにより、植物栽培装置10は複数個の栽培台120、第1光源部200、および第2光源部300を含み得る。
【0082】
図面に示したように、複数個の栽培台120、第1光源部200、および第2光源部300は、複数の区域を構成することができる。よって、本体部100は複数の区域(compartment)を含む構造物の形態で設けられる。
【0083】
本体部100に含まれた複数の区域は、それぞれ独立的に機能させることができる。例えば、一部の区域に設けられた第1光源部200では、赤色光よりも青色光がより多く照射され、別の区域に設けられた第1光源部200では、青色光よりも赤色光がより多く照射できる。さらに、本体部100の各区域は、時間的にも互いに相違するように機能させることができる。例えば、一部の区域では植物401を成長させるために第1光源部200から第1波長帯域の光が照射され、別の区域では植物401内のフェノール系化合物総量を高めるために第2光源部300から第2波長帯域の光を照射することができる。
【0084】
本体部100に含まれた各区域は、上述のように独立的に機能させることができるように、それぞれ密閉された暗室を構成することができる。これにより、任意の区域内に設けられた第1光源部200および/または第2光源部300から出射された光は、別の区域に影響を及ぼすことがない。
【0085】
本体部100に設けられた栽培台120もまた、植物401の種類によって互いに異なる培地を含むことができる。よって、植物401の種類に合わせた成長環境を提供することが可能となる。また、栽培台120は本体部100から分離することができる。よって、使用者は一部の栽培台120上で育つ植物401が収穫段階になった時、植物栽培装置10全体に影響を及ぼさずに、栽培が完了した植物401が入った栽培台120だけを本体部100から分離することができる。
【0086】
本体部100は、水分供給部をさらに含むことができるが、水分供給部は本体部100と栽培台120が接する面に設けられ、栽培台120に含まれた培地に直接水を供給することができる。これにより、スプレー形態の水分供給部とは異なり、栽培台120が幾層にも重なっているときでも、他の栽培台120に影響を及ぼさずに水分供給が可能となる。
【0087】
第1光源部200は、栽培台120の形態によって複数個設けることができる。上述のように、第1光源部200は互いに異なる波長の光を出射する複数個の発光ダイオードを含むことができるが、上述の発光ダイオードは、第1光源部200内に同じ割合で、又は異なる割合で設けることができる。第1光源部200内に互いに異なる波長の光を出射する発光ダイオードが同じ割合で設けられる場合、制御部によって植物401の種類に応じて第1波長帯域を調節することができる。これにより、植物401の種類に合った成長環境の提供が可能となる。
【0088】
第2光源部300もまた、複数個設けることができる。複数個の第2光源部300は、本体部100内の互いに異なる区域に設けることができ、独立的に駆動することができる。これにより、成長が完了してフェノール系化合物の総量増加段階にある植物401だけに第2波長帯域の光を照射することができる。
【0089】
上述のように、植物栽培装置10を用いて複数個の植物401を同時に栽培することができ、植物401の種類に合った成長環境を独立的に提供することができる。これにより、本発明の一実施例にかかる植物栽培装置10を用いると、互いに異なる種類の植物401を同時に栽培することができ、これにより栽培された植物401はフェノール系化合物の総量が高くなる。
【0090】
図4a、図4b、および図5を参照すると、第1光源部200は可視光線波長帯域の光を提供する第1光源201と、植物の芽に紫外線波長帯域の光を提供する第2光源203を含む。
【0091】
第1光源201および第2光源203は、基板210上に配置できる。基板210は、第1光源201および第2光源203が直接実装できる配線や回路等が形成された印刷回路基板であり得るが、これに限定されるのではない。基板210は、第1光源201および第2光源203が配置できるものであればよく、その形状や構造は特に限定されるのではなく、省略することもできる。例えば、後述のハウジングの上部ケース等も基板として使用することができ、上部ケース上に第1光源201および第2光源203を配置できる。
【0092】
第1光源201は、種に第1波長帯域の光を照射する。第1波長帯域は、可視光線波長帯域に該当してもよく、種は第1波長帯域の光が照射されて成長する。種は、第1光源201から出射した第1波長帯域の光を浴びて光合成を行うことができる。
【0093】
図4bは、本発明の一実施例にかかる発光ダイオードを概略的に図示したものである。
【0094】
図4bを参照すると、発光ダイオードは第1半導体層2013、活性層2015、および第2半導体層2017を含む発光構造体と、発光構造体に連結された第1電極2011および第2電極2019を含み得る。
【0095】
第1半導体層2013は、第1導電型ドーパントがドーピングされた半導体層である。第1導電型ドーパントは、p型ドーパントであり得る。第1導電型ドーパントは、Mg、Zn、Ca、Sr、Ba等であり得る。本発明の一実施例において、第1半導体層2013は、窒化物系半導体材料を含み得る。本発明の一実施例において、第1半導体層2013の材料としては、GaN、AlN、AlGaN、InGaN、InN、InAlGaN、AlInN等を挙げることができる。
【0096】
活性層2015は、第1半導体層2013上に設けられ、発光層に該当する。活性層2015は、第1半導体層2013を通じて注入される電子(又は正孔)と、第2半導体層2017を通じて注入される正孔(又は電子)が出合って、活性層2015の形成物質によるエネルギーバンド(Energy Band)のバンドギャップ(Band Gap)の差によって光を放出する層である。
【0097】
活性層2015は、化合物半導体で具現することができる。活性層2015は、例えば、III族-V族またはII族-VI族の化合物半導体の少なくとも一つで具現できる。
【0098】
第2半導体層2017は、活性層2015上に設けられる。第2半導体層2017は、第1導電型ドーパントと反対の極性を有する第2導電型ドーパントを有する半導体層である。第2導電型ドーパントは、n型ドーパントであり得るため、第2導電型ドーパントは、例えば、Si、Ge、Se、Te、O、C等を含むことができる。
【0099】
本発明の一実施例において、第2半導体層2017は、窒化物系半導体材料を含んでもよい。第2半導体層2017の材料としては、GaN、AlN、AlGaN、InGaN、InN、InAlGaN、AlInN、等を挙げることができる。
【0100】
第1電極2011と第1電極2019は、それぞれ第1半導体層2013と第2半導体層2017とが連結されるように多様な形態で設けることができる。本実施例では、第1半導体層2013の下部に第1電極2011が設けられ、第2半導体層2017の上部に第2電極2019が設けられたものを図示したが、これに限定されるのではない。本発明の一実施例において、第1電極2011および第2電極2019は、例えば、Al、Ti、Cr、Ni、Au、Ag、Ti、Sn、Ni、Cr、W、Cu等を多様な金属またはこれらの合金からなってもよい。第1電極2011および第2電極2019は、単一層または多重層で形成される。
【0101】
本発明の一実施例において、発光ダイオードがバーティカルタイプで提供されたものを説明したが、発光ダイオードが必ずしもバーティカルタイプである必要はなく、本発明の概念に符合する限り、別のタイプで提供されてもよい。
【0102】
本発明の一実施例によると、試料に光を印加するために、光源として、既存の一般的なランプではない発光ダイオードを使用することにより、次のような効果を得ることができる。
【0103】
本発明の一実施例によって、発光ダイオードを第1光源201および/または第2光源203として使用する場合、既存の一般ランプ(例えば、既存のUVランプ)から出射された光に比べて特定波長の光を植物に出射することができる。既存のランプから出射された光は、発光ダイオードから出射された光に比べて広い領域でブロードなスペクトルを有する。これにより、既存のUVランプの場合は、出射された光の波長帯域中の一部の帯域の光だけを分離することが容易ではない。これに対して発光ダイオードから出射された光は、特定波長におけるシャープなピークを有し、既存のランプからの光に比べて半値幅が非常に狭い特定波長の光を出射する。これにより、特定波長の光を選択することが容易となり、その選択された特定波長の光だけを試料に出射することができる。
【0104】
また、既存のランプの場合は、試料に光を出射するものの、光量の正確な限定が難しい場合があるが、発光ダイオードの場合は光量を明確に限定して出射することができる。また、既存のランプの場合は、光量の正確な限定が難しい場合があるため、照射時間もまた、広い範囲に設定できるが、発光ダイオードの場合は相対的に短い時間で明確な時間内に試料に必要な光を出射することができる。
【0105】
上述のように、既存のランプの場合は、相対的に広い範囲の波長、広い範囲の光量、および広い範囲の照射時間によって光の照射量の明確な判断が難しい。これに対して発光ダイオードの場合は、相対的に狭い範囲の波長、狭い範囲の光量、および狭い範囲の照射時間によって明確な光の照射量を提供することができる。
【0106】
さらに、既存のランプの場合は、電源を入れた後、最大光量に到達するまで相当な時間がかかっていた。これに対して発光ダイオードを使用する場合は、電源を入れた後のウォーミングアップ時間が実質的にほとんどなく、すぐに最大光量まで到達する。よって、発光ダイオード光源の場合は、植物に特定波長の光を照射する時に、光の照射時間を明確に制御することができる。
【0107】
本発明の一実施例において、第1光源は種が最大限成長できるように、太陽光と類似する波長帯域を有する光を出射することができる。
【0108】
図6は、本発明の一実施例にかかる栽培装置において、第1光源が太陽光と類似する波長帯域を有する場合の第1光源から出射された光のスペクトルを図示したものである。図6を参照すると、第1光源は約380nm~約750nm波長帯域の光を出射することができる。大部分は、可視光線波長領域帯に該当し得る。つまり、第1光源は白色光を出射する光源に該当する。
【0109】
第1光源は、可視光線波長帯域の光を出射するために1個または複数個の発光ダイオードを含み得る。図面では、第1光源が1個のものを図示したが、これに限定されるのではなく、複数個の発光ダイオードを設けることができる。もし、複数個の発光ダイオードが設けられる場合は、全て同じ波長帯域の光を出射することもできるが、それぞれが互いに異なる波長帯域の光を出射することもできる。例えば、複数個の発光ダイオードは、赤色光を出射する発光ダイオード、青色光を出射する発光ダイオード、および緑色光を出射する発光ダイオードの少なくとも一つを含んでもよい。
【0110】
本発明の一実施例において、第1光源が上述のように互いに異なる波長の光を出射する複数個の発光ダイオードを含む場合、発光ダイオードの構成割合は波長によって異なり得る。例えば、赤色光を出射する発光ダイオードは、青色光あるいは緑色光を出射する発光ダイオードに比べて少なく設けることができ、白色光を出射する発光ダイオードを設けることもできる。
【0111】
さらに、本実施例における第1光源は、植物の生長に必要なエネルギーを提供することができる。具体的には、第1光源は植物が光合成を行って生長する際に必要なエネルギーを光の形態で提供できる。第1光源が提供する光の波長は、従って、植物の光受容体の吸収率を考慮して決定することができる。例えば、第1光源は植物が光合成に主に用いる青色光波長帯域(約440nm~約495nm)、および赤色光波長帯域(約620nm~約750nm)で相対的に高い強さを有する光を出射できる。
【0112】
但し、第1光源の光出射形態は、上述のものに制限されず、場合に応じて、第1光源から出射した光は全体的な波長帯域の光が均等に混ざった形態で太陽光と類似するスペクトルを有することができる。但し、本発明の一実施例にかかる第1光源は、紫外線波長帯域の大部分を除いて出射するという点で、太陽光と違いがある。本発明の一実施例にかかる光源は、実質的に可視光線の全体波長帯域に対応する約380nm~約780nmの波長帯域を有する光を出射することができる。本発明の一実施例において、太陽光と類似するという意味は、ノーマライズされた太陽光スペクトルを基準にした時、既存の発明に比べて重なり合う面積が所定値以上で、太陽光スペクトルからのピークの偏差(太陽光スペクトルのピークを基準とした時に逸脱した程度)もまた、所定値以下である場合を意味する。例えば、本発明の一実施例において、第1光源はノーマライズされた太陽光スペクトルの面積に対して約55%以上の面積を有する光を出射することができ、第1光のピークはノーマライズされた太陽光スペクトルに対して約0.14以下の偏差(deviation)を有し得る。このように、第1光源が太陽光と類似するスペクトルを有することにより、植物の新芽は効率的な光合成を通じて十分に成長することができる。
【0113】
再度、図4a、図4b、および図5を参照すると、第2光源203は種に向かって第2波長帯域の第2光を出射する。
【0114】
第2波長帯域は、第1波長帯域と相違し、約250nm~約380nmの紫外線波長帯域であり得る。本発明の一実施例において、第2光はUV-A、UV-B、およびUV-Cの少なくともいずれかに該当する。発明の一実施例において、第2光源203は255nm、275nm、285nm、295nm、315nm、335nm、および365nmのピーク波長を有する光の少なくとも一つの光を出射することができる。
【0115】
本発明の一実施例において、第2光源203は、例えば、約270nm~約300nmの波長帯域の光を出射でき、本発明の一実施例において、275nm、285nm、および295nmのピーク波長を有する光のいずれかの光を出射することができる。本発明の一実施例において、第2光源203は285nmのピーク波長を有する光を出射できる。
【0116】
第2光源203は、紫外線波長帯域の光を出射するために1個または複数個の発光ダイオードを含むことができる。図面では、第1光源201が1個のものを図示したが、これに限定されるものではなく、複数個の発光ダイオードを設けることができる。もし、複数個の発光ダイオードが設けられる場合は、全て同じ波長帯域の光を出射することもできるが、それぞれが互いに異なる波長帯域の光を出射することもできる。例えば、一部の第2光源203または発光ダイオードは、約275nm波長の光を出射し、別の第2光源203または発光ダイオードは、約285nm波長の光を出射するように第2光源203を構成することができる。
【0117】
第2光源203は、紫外線波長帯域の光を植物の芽に照射することにより、植物内の抗酸化物質の含量を増加させるためのものである。第2光源203が出射する光を植物に所定程度の強度で所定時間照射することにより、種および植物の芽の抗酸化物質の含量を増加させることができる。
【0118】
本発明の一実施例において、第1光源201および/または第2光源203以外にも、赤外線(Infra-Red)又は近赤外線(Near Infra-Red)波長帯域の光を出射する光源をさらに設けることができる。又は、第1光源201が可視光線波長帯域の光以外にも、赤外線や近赤外線波長帯域の光を含んで出射することもできる。
【0119】
本発明の一実施例において、前記第1光源201および/または第2光源203には、第1光源201と第2光源203の作動を制御する制御部220が有線または無線で接続される。
【0120】
制御部220には、制御部220に電源を供給する電源供給部230が接続される。電源供給部230は、制御部220を通じて、又は第1光源部200に直接接続して、1光光源部200に電源を供給することができる。
【0121】
制御部220は、第1光源201と第2光源203を所定区間に所定の強度で光を出射するように、第1光源201および/または第2光源203のオン/オフを制御できる。植物の芽が抗酸化物質を最大限含有できるように栽培するためには、第1光源201と第2光源203がそれぞれ個別的に作動する。
【0122】
制御部220は、所定の波長帯域で所定の出射回数等で第1光および/または第2光が出射されるように、第1光源201と第2光源203をそれぞれ独立的に制御できる。また、第1光源201および/または第2光源203が複数個の発光ダイオードを含む場合は、個別的な発光ダイオードを独立的に制御することができる。
【0123】
本発明の一実施例において、ハウジングが複数個の区域に分けられている場合は、第1光源201および/または第2光源203は、複数個の区域に多様な個数で設けることができる。この場合、制御部220は複数個の区域に光が多様に照射されるようにそれぞれの区域に該当する第1光源201および/または第2光源203を独立的に制御することができる。例えば、一部の区域では植物の芽を成長させるために、第1光源201から第1波長帯域の光が照射され、他の区域では植物の芽の抗酸化物質の含量を高めるために第2光源203から第2波長帯域の光が照射され得る。ハウジングに含まれた各区域は、上述のように独立的に機能するように、それぞれ密閉された暗室を構成できる。これにより、任意の区域内に設けられた第1光源201および/または第2光源203から出射された光は、他の区域に影響を及ぼすことはない。
【0124】
本発明の一実施例において、制御部220は第1光源201と第2光源203の作動を事前にセッティングしたプロセスに従って、又は使用者の入力に従って制御できる。例えば、制御部220は、順に、第1時間には前記第1光源201および第2光源203を未作動させ、第2時間には前記第1光源201を作動させ、第3時間には前記第2光源203を作動させることができる。又は、使用者が第1時間~第3時間の長さ、このとき、第1光源201および/または第2光源203の光の強さ等を手動で入力することができる。
【0125】
本発明の一実施例によると、制御部220は第1光源201および/または第2光源203以外に、水分供給部にも接続できる。制御部220は、水分供給部を通じて供給される水分の量や、水分が供給される時間等を制御することができる。
【0126】
例えば、制御部220は、使用者が操作しなくても水分供給部は設定された時間間隔で種に水分を供給できる。種に水分を供給する間隔は、種の種類によって異なり得る。生長に水を多く必要とする植物の場合は、相対的に短い間隔で、或いは持続的に水分を供給することができ、生長に必要な水が少ない植物の場合は、相対的に長い間隔で水分を供給することができる。
【0127】
本発明の一実施例において、栽培台内に配置される種は、イネ科植物の種であり得る。例えば、栽培台内に配置される種は、麦、小麦、エンバク、イネ、キビ、モロコシ、サトウキビ、トウモロコシ等の種であり得る。しかし、種の種類はこれに限定されるのではない。
【0128】
本発明の一実施例によると、上述の植物栽培装置を提供することにより、外部環境による影響を受けずに抗酸化物質の含量が高い植物を収穫することができる。
【0129】
本発明の一実施例にかかる植物栽培装置は、相対的に少量の植物を栽培するための家庭用または個人用の栽培装置だけでなく、大量の植物を得るための大型工場、つまり、植物生産工場の形態で運営することもできる。これにより、植物栽培装置は、複数個の栽培台、第1光源、第2光源、および水分供給部(図示せず)を含み得る。
【0130】
本発明の一実施例において、植物生産工場の形態で運営される植物栽培装置には、制御部220に多様なセンサー(例えば、温度センサー、湿度センサー、光量センサー等)をさらに配置することができ、制御部220は、センサーによるデータが転送されて、第1光源201、第2光源203および水分供給部等を、全体的に又は個別的に制御することができる。このような植物栽培システムを備えた栽培装置は、直接、又は遠隔の離隔地で、有線、無線またはインターネット等の手段でデータを送受信することもでき、別途のディスプレイを通じて各種センサー、第1光源201および第2光源203、水分供給部からのデータを表示することもできる。使用者は、このようなデータを検討した後、制御部220を通じて最適な条件が具現されるように指示することができる。
【0131】
上述の通り、本発明の一実施例にかかる植物栽培装置を用いて免疫性が向上した植物を大量且つ容易に栽培することができる。また、本発明の一実施例にかかる植物栽培装置を用いると、複数個の植物を同時に栽培でき、植物の種類に合った成長環境を独立的に提供することができる。これにより、本発明の一実施例にかかる植物栽培装置を用いると、互いに異なる種類の植物を同時に栽培することができ、これにより栽培された植物は免疫性が高くなる。
【0132】
以上では、本発明の一実施例にかかる植物栽培装置について説明した。以下では、上述の植物栽培装置を用いるための植物栽培方法について詳しく説明する。
【0133】
図7は、本発明の一実施例にかかる植物栽培方法を示したフローチャートである。
【0134】
図7によると、先ず本体部に蒔かれた種を第1時間P1のあいだに発芽させる(S100)。
【0135】
発芽(germination)は、種から植物が発生することを意味し、幼苗(seedling)は発芽した植物の幼い段階を意味する。
【0136】
発芽条件は、種の種類によって異なり得るため、第1時間(P1)のあいだ本体部内部を種の発芽条件に合うように設定することができる。例えば、発芽に光を必要とする光発芽種子の場合、第1時間(P1)のあいだ第1光源部を用いて種に光を照射することができる。光発芽種子の場合、第1光源部は特に赤色光を種に照射することができる。赤色光は、種子内のフィトクロム(Phythochrome)を赤色光吸収型(Pr)から近赤外線吸収型(Pfr)に変換させ、近赤外線吸収型フィトクロム(Pfr)はジベレリン(gibberellin)含量を増加させると同時に、種子の休眠を誘導するアブシジン酸の含量を減少させる。これにより、赤色光によって発芽が促進され得る。逆に、発芽に光を必要としない暗発芽種子の場合は、第1時間(P1)のあいだ本体部内部を暗室のように維持することができる。
【0137】
発芽段階では、水分供給部による水分供給量が増加し得る。種子が細胞代謝と成長を始めるためには、十分な量の水を吸収しなければならないためである。よって、種子が十分な水を吸収できるように、又は種子が湿潤(imbition)されるように発芽段階で水分の供給が集中し得る。
【0138】
発芽段階において、本体部内部は約20度~約30度に維持される。前記範囲で種子の発芽が促進され得る。本体部は、前記温度を維持するために多様な形態の温度調節装置を含むことができる。
【0139】
発芽過程を行う第1時間(P1)は、植物の種類によって異なり得る。よって、使用者または制御部は、栽培しようとする植物の種類によって、第1時間(P1)を変えて調整することができる。
【0140】
次に、発芽した種に第1波長帯域の光を照射する(S200)。
【0141】
第1波長帯域の光は、第2時間のあいだ発芽した種に照射する。第1波長帯域の光が発芽した種に照射されることにより、種から植物が成長する。第1波長帯域は、可視光線波長帯域であり得るが、場合に応じて近赤外線波長帯域を含んでもよい。第1波長帯域は、前述の通り、栽培する植物の種類によって異なり得る。
【0142】
第1波長帯域の光は、約50μmol/ms~約300μmol/msの光量で発芽した種の上に照射できる。さらに、一部の作物の場合、第1波長帯域の光は約50μmol/ms~約70μmol/msの光量で発芽した種の上に照射できる。
【0143】
第1波長帯域の光の光量が約50μmol/ms未満の場合は、第1波長帯域の光による葉緑素の生成および光合成が十分に起きないため、植物の生長が鈍くなり得る。逆に、第1波長帯域の光の光量が光飽和点である約300μmol/msを超える場合は、植物が利用できる光量以上の光が照射されて、植物が枯れる場合がある。但し、光飽和点は作物および生長段階によって異なり得る。例えば、一部のマメ科とイネ科植物の幼苗の場合、光飽和点は約70μmol/msであり得る。これにより、第1波長帯域の光は、約50μmol/ms~約70μmol/msの光量で照射することができる。
【0144】
第1波長帯域の光が照射される第2時間は、植物の種類によって異なり得る。よって、使用者または制御部は、栽培しようとする植物の種類に応じて、第2時間を変えて調節することができる。
【0145】
次に、種から成長した植物に第2波長帯域の光を照射する(S300)。
【0146】
第2波長帯域の光は、第3時間のあいだ植物に照射する。第2波長帯域の光を植物に照射することにより、植物内のフェノール系化合物の総量を増加させることができる。
【0147】
第2波長帯域の光は、種から生長した植物の収穫直前の第3時間のあいだ植物に照射することができる。よって、植物は収穫時点から逆算して第3時間のあいだ光を浴びることができ、これによって植物内で二次代謝が促進され、フェノール系化合物総量が増加し得る。
【0148】
第2波長帯域の光は、種または植物に約5μW/cm~15μW/cmの量で照射することができる。上述の範囲の光量を浴びることにより、植物細胞が損傷/変形することなく、フェノール系化合物の総量だけを高くすることができる。例えば、種または植物に約5μW/cm未満の光量の光が照射される場合、植物細胞に加えられるストレスが微弱となり、抗酸化物質の生産のためのホルメシス(Hormesis)反応が十分に起こらない場合がある。一方、種または植物に約15μW/cmを超える光量の光が照射される場合は、植物細胞が損傷/変形し得る。
【0149】
第2波長帯域の光の強さが全ての波長帯域で同じなのではない。植物の種類によって、前記約200nm~約400nm波長の光のうち、特定波長帯域の光の強さを高くすることができる。例えば、植物が小麦の場合、約200nm~約400nm波長帯域の、特に約295nm波長の光の強さを高くすることができる。これにより、植物の種類に合った光照射が可能となり、植物内のフェノール系化合物の総量が最大になり得る。
【0150】
本発明の一実施例によると、植物の種を順に発芽させ、成長させて、植物内の二次代謝を促進することができる。これにより、市販の一般的な種からもフェノール系化合物の総量および抗酸化活性の高い植物を得ることができる。
【0151】
以上では、本発明の一実施例によって植物を栽培する方法を簡略に説明した。本発明の一実施例によると、植物は使用者が操作しなくても自動で栽培でき、以下では使用者が操作しなくても植物を栽培するための方法についてより詳しく説明する。
【0152】
図8は、本発明の一実施例にかかる植物栽培方法を示したフローチャートである。
【0153】
本発明の一実施例によると、植物栽培装置は制御部によって操作され、制御部は使用者が干渉しなくても本発明の一実施例にかかる植物栽培方法に従って植物を栽培する。
【0154】
まず、種が植物栽培装置に蒔かれる際、制御部は種を第1時点(T1)から発芽条件に保つ(S101)。第1時点(T1)は、本発明の一実施例にかかる植物栽培装置に種を入れ、使用者が栽培を始めるための動作を実施した時点になる。例えば、栽培を始めるための動作とは、植物栽培装置の電源を入れ、栽培開始ボタンを押す行為等になる。
【0155】
植物の発芽条件は、上述のように、植物の種類によって異なり得るため、制御部は植物の種類に適した発芽条件を、データベースから読み込んで適用できる。
【0156】
次に、制御部は現在の時刻(T)と第1時点(T1)との差、つまり第1時点(T1)から現在(T)まで経過した時間と、第1時間(P1)を比較する(S102)。第1時間(P1)は、植物の発芽に必要な時間であり、制御部は第1時点(T1)から第1時間(P1)が過ぎた時、種の発芽が完了したと判断する。
【0157】
第1時間(P1)は、前述のように、植物の種類によって異なり得るため、制御部は植物の種類に応じて第1時間(P1)を変えて構成することができる。例えば、植物がイネ科またはマメ科植物の場合、第1時間(P1)は約72時間であり得る。
【0158】
次に、制御部は現在の時刻(T)と第1時点(T1)との差が第1時間(P1)以上の時、種に第1波長帯域の光を照射するように制御する(S201)。このとき、制御部が、第1光源部が第1波長帯域の光を照射するように制御する時点が、第2時点(T2)である。一方、現在の時刻(T)と第1時点(T1)との差が第1時間(P1)より小さい場合、制御部は植物栽培装置内部を発芽条件として維持し続ける。
【0159】
第1波長帯域の光は、前述の通り、可視光線波長帯域であり得、場合に応じて近赤外線波長帯域を含み得る。第1波長帯域の光を照射することにより、発芽した種から植物が成長し得る。よって、第1波長帯域の光は、植物の成長率が高まるように植物の種類に合わせて制御することができる。制御部は、データベースから植物の種類とマッチする第1波長帯域情報を読み込み、これに合わせて第1光源部を制御できる。
【0160】
制御部は、第1光源部が照射する第1波長帯域および光量を、時間に応じて変えて制御することができる。例えば、第1光源部が光を照射し始めた時である植物の成長初期段階において、第1波長帯域および光量は、植物の成長完了段階における第1波長帯域および光量と異なり得る。これにより、植物の成長段階によって最適化された光を照射することができる。
【0161】
第1波長帯域の光が、第2時間(P2)のあいだ必ずしも連続して照射されるのではない。制御部は第2時間(P2)のあいだ第1光源部をオン/オフ(On/Off)に制御することができる。これにより、太陽が出て沈む野生環境のように植物栽培装置内部の環境を造成することができる。例えば、第2時間(P2)のあいだ第1光源部が第1波長帯域の光を出射する時間と光を出射しない時間の比は、約1:1~約2:1であり得る。これにより、一日のうち太陽が規則的に出て沈む野生環境と似た環境を植物栽培装置内に造成することができる。野生環境と似た環境を造成することにより、植物栽培装置内で植物が光合成と呼吸をバランス良く保つことができる。
【0162】
次に、制御部は現在の時刻(T)と第2時点(T2)との差、つまり第2時点(T2)から現在まで経過した時間が第2時間(P2)以上なのか判断する(S202)。第2時間(P2)は、植物の成長に必要な時間であり、制御部は第2時間(P2)が経過しなければ植物が所望の段階まで成長していないと判断する。但し、第2時間(P2)が、植物が完全に成長するのに必要な時間なのではない。例えば、新芽段階で植物を収穫しようとする際、第2時間(P2)は、発芽した種が新芽まで育つのに必要な時間となり得る。
【0163】
第2時間(P2)は、植物の種類によって異なり得、制御部はデータベースから植物の種類に適した第2時間(P2)を読み込んで適用できる。
【0164】
次に、制御部は現在の時刻(T)と第2時点(T2)との差が第2時間(P2)以上の時、第2光源部が種に第2波長帯域の光を照射するように制御する(S301)。このとき、制御部を、第2光源部が第2波長帯域の光を照射するように制御する時点が、第3時点(T3)である。一方、現在の時刻(T)と第2時点(T2)との差が第2時間(P2)よりも小さい場合、制御部は第1光源部が第1波長帯域の光を照射し続けるように制御する。
【0165】
第2波長帯域は、前述の通り、約200nm~約400nmであり得る。上述の光が照射されることにより、植物の二次代謝が活性され、植物内のフェノール系化合物の総量が増加し得る。
【0166】
次に、制御部は現在の時刻(T)と第3時点(T3)との差、つまり第3時点(T3)から現在(T)まで経過した時間が第3時間(P3)時間以上なのか判断する(S302)。第3時点(T3)から現在(T)まで経過した時間が第3時間(P3)以上の場合、制御部は第2光源部から第2波長帯域の光の出射を中断させる。逆に、第3時点(T3)から現在(T)まで経過した時間が第3時間(P3)未満の場合、制御部は第2光源部が第2波長帯域の光を出射し続けるように制御する。
【0167】
第3時間(P3)は、約48時間以下であり得る。第3時間(P3)が約48時間を超えると、植物に必要以上のストレスが加わって植物細胞が変形したり、植物が枯れてしまったりする場合がある。制御部を、第2光源部が第3時間(P3)の間だけ光を照射するように制御することにより、上述の問題が発生する余地がなくなる。
【0168】
第3時間(P3)のあいだ第2光源部が出射する光の強さは、波長別に異なり得る。制御部は植物の種類に応じて前記約200nm~約400nm波長の光のうち、特定波長の光の強さを高くすることができる。これにより、植物の種類別に合った光照射が可能となり、植物内のフェノール系化合物の総量が最大になり得る。
【0169】
第3時間(P3)は、植物の収穫直前に与えられるため、第2波長帯域の光による植物の二次代謝活性は、植物が所望の段階まで成長した後に行われ得る。これにより、第2波長帯域の光照射によって植物の成長が阻害されるおそれを減らすことができる。
【0170】
次に、植物を収穫する(S303)。このとき収穫装置が用いられるが、収穫装置は第3時間(P3)経過後に植物を水分から隔離する。これにより、植物が目標とするものより過度に生長することを防ぐことができる。収穫された植物は、収穫装置によって植物栽培装置内の別途の空間に移すことができる。これにより、収穫された植物が過度に成長したり、収穫された後に第2波長帯域の光を浴びて変形したりすることを防ぐことができる。
【0171】
本発明の一実施例によると、使用者が栽培過程に関与しなくても、設定された基準に従ってフェノール系化合物の総量が高い植物を栽培することができる。これにより、植物栽培に対する知識のない使用者でも、フェノール系化合物の総量が高い植物を容易に栽培、収穫することができる。
【0172】
以上では、フェノール系化合物の総量が高い植物を栽培するための植物栽培装置、植物栽培方法について説明した。以下では、本発明の一実施例にかかる植物栽培装置と植物栽培方法によって得られる植物のフェノール系化合物の総量および抗酸化活性について、データを通じてより詳しく説明する。
【0173】
下記表1~表5は、マメ科植物とイネ科植物に対して、第2波長帯域の光(275nm,295nm)の照射有無を変えて植物を栽培したものである。植物栽培条件は次の通りである。
【0174】
【表1】
【0175】
【表2】
【0176】
【表3】
【0177】
【表4】
【0178】
【表5】
【0179】
第2波長帯域の光照射有無を除いた植物栽培条件は、実施例と比較例共に同一である。実施例と比較例の植物は、約72時間暗室条件で発芽し、約144時間白色発光ダイオード光源を用いて成長した。白色発光ダイオード光源は、約144時間中の作動時間と非作動時間の比を2:1にして制御した。つまり、24時間のうち約16時間は白色発光ダイオードを作動させ、約8時間は白色発光ダイオードを切ることを繰り返して、約144時間植物を成長させた。白色発光ダイオードは、作動中に約60μmol/msの光量で光を照射した。植物栽培装置の内部は、約24℃、相対湿度70±5%に保った。さらに、実施例の植物は、収穫直前の24時間第2波長帯域の光を浴びた。第2波長帯域の光は、約10μW/cmの光量で照射した。比較例の植物は、第2波長帯域の光を浴びなかった。
【0180】
下記表6~表10は、実施例と比較例の植物に含有されたフェノール系化合物(Phenolic Compound)の総量を測定したものである。比較例1A~1Eを基準にした時、実施例1A~1Eと実施例2A~2Eに含まれたフェノール系化合物の量がどれくらいさらに増えたのか確認した。
【0181】
【表6】
【0182】
【表7】
【0183】
【表8】
【0184】
【表9】
【0185】
【表10】
【0186】
表6~表10を参考すると、実施例1A~1Eと実施例2A~2Eの場合は、一般的に第2波長帯域の光を浴びていない比較例1A~1Eと比べると、植物内のフェノール系化合物の総量が増加したことが確認できた。
【0187】
緑豆の場合は、第2波長帯域の光を浴びていない比較例1Aと比べると、約275nm波長の光を浴びた実施例2Aで、フェノール系化合物の総量が約9.8%増加したことが確認できた。
【0188】
エンドウ豆の場合は、第2波長帯域の光を浴びていない比較例1Bと比べると、約295nm波長の光を浴びた実施例1Bで、フェノール系化合物の総量が約12.7%増加したことが確認でき、約275nm波長の光を浴びた実施例2Bでは、フェノール系化合物の総量が約18.9%増加したことが確認できた。
【0189】
ムラサキウマゴヤシの場合は、第2波長帯域の光を浴びていない比較例1Cと比べると、約295nm波長の光を浴びた実施例1Cで、フェノール系化合物の総量が約18.6%増加したことが確認でき、約275nm波長の光を浴びた実施例2Cでは、フェノール系化合物の総量が約19.0%増加したことが確認できた。
【0190】
小麦の場合は、第2波長帯域の光を浴びていない比較例1Dと比べると、約295nm波長の光を浴びた実施例1Dで、フェノール系化合物の総量が約26.0%増加したことが確認でき、約275nm波長の光を浴びた実施例2Dでは、フェノール系化合物の総量が約21.6%増加したことが確認できた。
【0191】
麦の場合は、第2波長帯域の光を浴びていない比較例1Eと比べると、約295nm波長の光を浴びた実施例1Eで、フェノール系化合物の総量が約25.7%増加したことが確認でき、約275nm波長の光を浴びた実施例2Eでは、フェノール系化合物の総量が約33.9%増加したことが確認できた。
【0192】
これにより、マメ科とイネ科植物の場合は、第2波長帯域の光を浴びると、フェノール系化合物の総量が大きく増加することが確認できた。特に、実施例2A、実施例1B、実施例2B、実施例1C、実施例2C、実施例1E、実施例2Eの場合は、統計的に有意なレベルのフェノール系化合物の総量増加を確認することができた。
【0193】
次に、フェノール系化合物の総量の差が、実際の抗酸化活性(Antioxidant Capacity)の差として表れるかを確認するために、抗酸化活性測定試験を行った。抗酸化活性は、ABTS[2,2’-azino-bis(3-ethylbenzothiazoline-6-sulphonic acid)を用いるABTS検出法を用いて測定した。青みを帯びるABTSラジカルカチオンは、抗酸化物質と出合って無色の中性形態に還元されるが、抗酸化物質が多いほどABTSラジカルカチオンが無色の中性形態に還元される量が増加し、ABTSが帯びる青色が薄くなる。よって、実施例と比較例の植物抽出液をABTS溶液と反応させた後、ABTS溶液の色の変化を分光光度計法(Spectrophotometric)で分析して、抗酸化物質であるトロロックス(Trolox)の抗酸化活性と対比して抗酸化活性を測定した。
【0194】
下記表11~表15は、実施例と比較例の植物の抗酸化活性を測定したものである。比較例1A~1Eを基準にした時、実施例1A~1Eと実施例2A~2Eの抗酸化活性がどれくらいさらに増えたのか確認した。
【0195】
【表11】
【0196】
【表12】
【0197】
【表13】
【0198】
【表14】
【0199】
【表15】
【0200】
緑豆の場合は、第2波長帯域の光を浴びていない比較例1Aと比べると、約295nm波長の光を浴びた実施例1Aで、抗酸化活性が約20.6%増加したことが確認でき、約275nm波長の光を浴びた実施例2Aでは、抗酸化活性が約約34.5%増加したことが確認できた。
【0201】
エンドウ豆の場合は、第2波長帯域の光を浴びていない比較例1Bと比べると、約295nm波長の光を浴びた実施例1Bで、抗酸化活性が約20.8%増加したことが確認でき、約275nm波長の光を浴びた実施例2Bでは、抗酸化活性が約23.4%増加したことが確認できた。
【0202】
ムラサキウマゴヤシの場合は、第2波長帯域の光を浴びていない比較例1Cと実施例1C、2Cを比べると、抗酸化活性が実質的に変わらないことが確認できた。
【0203】
小麦の場合は、第2波長帯域の光を浴びていない比較例1Dと比べると、約295nm波長の光を浴びた実施例1Dで、抗酸化活性が約32.7%増加したことが確認でき、約275nm波長の光を浴びた実施例2Dでは、抗酸化活性が約39.5%増加したことが確認できた。
【0204】
麦の場合は、第2波長帯域の光を浴びていない比較例1Eと比べると、約295nm波長の光を浴びた実施例1Eで、抗酸化活性が約46.2%増加したことが確認でき、約275nm波長の光を浴びた実施例2Eでは、抗酸化活性が約46.2%増加したことが確認できた。
【0205】
これにより、マメ科とイネ科植物の場合は、一般的にフェノール系化合物の総量が実際の抗酸化活性の増加につながることが確認できた。特に、実施例1A、実施例2A、実施例1B、実施例2B、実施例1E、実施例2Eの場合は、統計的に有意なレベルの抗酸化活性の増加が確認できた。
【0206】
図9は、本発明の一実施例にかかる栽培方法を順に図示したフローチャートである。
【0207】
図9を参照すると、本発明の別の実施例では、植物の種を発芽させ(S11)、前記の発芽した種を新芽に成長させ(S13)、紫外線波長帯域の光を植物に照射した後(S15)、前記植物の新芽を成長させる段階(S17)を含む。このとき、植物の新芽を成長させる段階は、新芽を成体に成長させること、新芽を成体になる前の特定状態まで成長させることを全て含むことを意味する。植物の新芽を成長させる段階(S17)は、植物の種類を考慮してその期間を変えてもよい。
【0208】
植物の発芽は、本発明の一実施例にかかる栽培装置に麦の種を入れ、暗条件で水分を供給する方法で行うことができる。本発明の一実施例において、約1日~約5日の暗条件下で水分を植物の種に供給できる。例えば、3日間暗条件を維持しながら、種に水分を供給することにより、植物を発芽させることができる。
【0209】
植物の種は、発芽するために所定の時間以上精製水にふやかすことができる。これは、種が十分な水を吸収するようにするためのものであり、これにより、種に発芽段階で水分が供給される。発芽条件は、植物の種の種類によって変わり得るため、第1時間のあいだ種の周辺条件を種の発芽条件に合うように設定することができる。例えば、発芽に光を必要としない暗発芽種の場合は、第1時間のあいだハウジング内部が暗室のように維持されなければならないため、種の発芽時にハウジング内は暗条件に維持する。
【0210】
発芽段階において、植物の種を発芽させるために適切な温度と湿度を有するように維持することができる。植物の種周辺の前記温度を維持するために多様な形態の温度調節装置、例えば、ヒーターおよび/またはクーラーを使用することができる。
【0211】
発芽段階では、水分供給部等で種に水分を供給することができる。種が細胞代謝と成長を始めるためには、十分な量の水を吸収しなければならないためである。よって、種が十分な水を吸収するように、又は種が湿潤(imbibition)されるように、発芽段階で水分供給が集中され得る。ここで、前記水分は、精製水が使用され得る。
【0212】
次に、発芽した種を新芽に成長させ、紫外線波長帯域の光を新芽に照射させる。ここで、種を新芽に成長させるための過程において、紫外線波長帯域の光を新芽に照射させる過程が一緒に行われてもよい。これを以下で説明する。
【0213】
前記の発芽した種を植物に成長させるためには、暗条件または明条件、或いは暗条件や明条件が繰り返され得る。本発明の一実施例において、第1時間の間は明条件に維持され、第2時間の間は暗条件に維持することができ、このような明条件と暗条件を反復処理することができる。言い換えると、前記第1波長帯域の光が照射される第2時間は、連続してもよいが、明と暗が繰り返される光周期であり得、この場合、一定の時間明条件状態に保たれ、また別の一定の時間は暗条件状態に保たれる。明条件と暗条件は、通常24時間を基準に所定回数で反復することができる。例えば、24時間を基準に、明条件は14時間~18時間持続することができ、暗条件は6時間~10時間内で繰り返すことができる。本発明の一実施例において、光周期は24時間基準で、明条件16時間と暗条件8時間が繰り返されて行われ、光周期は約4日~10日間繰り返され得る。本発明の一実施例では、明条件で約16時間、暗条件で約8時間行われ得、このような明条件と暗条件状態を7日間繰り返すことができる。
【0214】
本発明の一実施例において、暗条件時には第1光源と第2光源共にオフに維持され、明条件時には第1光源がオンになる。明条件時、第1光は約60μmol/msの光量で植物の新芽に照射することができ、第2光は10μW/cmのエネルギーで照射することができる。第1光の光量は、植物の新芽の光合成および生長を誘導するためのものである。
【0215】
ここで、明条件内の第1時間が必要とされる間、第2光源は一定のドーズ量で一定時間オンに維持され得る。第2光源は、第1光源がオンのとき、第1光源と同じ時間、又は第1光源よりも短い時間光を出射することができる。また、第2光源は所定パターンで一定時間オンとオフが繰り返され得る。言い換えると、第2光源は第1光源がオンのとき、周期的に光を出射することができる。ここで、第2光源の照射周期は多様な形態からなることができ、一定時間に合わせてオンとオフが設定された反復パターンを有し得る。第2光の照射は、連続して行われることができるが、連続して行われても一週間以内の限度で照射することができる。
【0216】
しかし、第2光源の照射量は、植物に損傷を与えないドーズ量に限定される。例えば、本発明の一実施例において、第2光源は最大13.44kJ/msのドーズ量で光を照射することができる。第2光源はまた、植物に十分な量の抗酸化物質が生成できるように1.08kJ/ms以上のドーズ量の光を植物に印加することができる。
【0217】
次に、移植した植物を成体に成長させることができる。ここで、第2光の照射、つまり紫外線照射は、種の発芽以降から成体になる前までの期間内に行うことができる。しかし、本発明の一実施例はこれに限定されるのではない。
【0218】
本発明の一実施例において、新芽を成体に栽培する段階は省略可能で、抗酸化物質の含量が高い状態で新芽が成体に育つ前に採取することができる。
【0219】
上述の方法により、抗酸化性物質の含有量が増加した植物を得ることができる。特に、上述の方法を通じて抗酸化性物質の含有量が増加したイネ科植物を得ることができる。これにより、イネ科植物自体が抗酸化性物質を多く含むことにより、イネ科植物における免疫性が高くなってバクテリアや微生物等に感染しにくい高品質の植物を得ることができる。このようなバクテリアや微生物等への感染の発生が少なくなることにより、農薬散布による製剤費用、商品性の低下、環境汚染、作業者の危険に対する露出等が減少し得る。これに加え、このようなイネ科植物を人が摂取した場合、抗酸化性物質の含有量が高いため、人体内の細胞の老化を防ぐ効果も得ることができる。例えば、抗酸化物質が高い麦の新芽は、採取後、人によって摂取されたり、別途に加工されて多様な食品の材料として使用されたりして、人によって摂取される。
【0220】
上述の方法でイネ科の新芽を栽培すると、イネ科の新芽内の抗酸化物質が増加するため、これに対する実験例を説明する。
【0221】
実験例1.抗酸化物質の総量の確認方法
【0222】
抗酸化物質は、フェノール性化合物の総量を確認する形態で行われた。
【0223】
フェノール性化合物の総量を確認するために、イネ科植物の新芽(麦の新芽または小麦の新芽等)を採取した後、採取した新芽を凍結乾燥および粉砕した。粉砕した試料を、0.09gの脱イオン水と80%のアセトン8mLに入れた後、よく混ぜてから、超音波処理を15分間行った。その後、試料を-20℃/暗条件で12時間以上維持し、抽出した。抽出した試料を遠心分離器(RCF3000/RPM1350)に入れ、2分間遠心分離した後、新たな試験管に蒸留水135μL、10%のFolin-Ciocalteu試薬750μL、試料50μL、および7.5%のNaCO 600μLを順に添加した。その後、10秒間よく混ぜてから、45℃の恒温水槽で15分間反応させた後、十分に混ぜた。その後、十分に冷ました試料1mLをキュベットに移して765nmの分光光度計で吸光度を測定した。このとき、没食子酸(gallic acid)1mg/mLを希釈して0.4/0.35/0.3/0.25/0.2/0.15/0.1/0.05mg/mLの没食子酸溶液をつくり、その吸光度を測定して基準カーブを作成することにより、イネ科植物内のフェノール性化合物の総量を測定した。
【0224】
実験例2.第2光の波長による抗酸化物質の増加量
【0225】
第2光の波長によるイネ科植物の抗酸化物質の増加量を確認するために、イネ科植物の種(麦の種または小麦の種)を準備し、暗条件下で種を発芽させた。種の発芽のために、暗条件は3日間維持した。その後、1日の明条件は16時間、暗条件は8時間に設定して、7日間明条件と暗条件を繰り返した。このとき、暗条件時には第1光および第2光が共にオフになり、明条件時には第1光はオンを維持した。ここで、明条件時に、第2光は275nm、285nm、および295nmのピーク波長を有するものとして、周期的にオンとオフを繰り返した。第2光として、275nm、285nm、および295nmのピーク波長を有する光源を用いたケースは第1~第3実施例に該当し、第2光が印加されないケースは比較例に該当する。本実験において、比較例および実施例1~3は、印加された波長を除いた全ての条件が同様に保たれた。
【0226】
図10は、第2光の波長によるフェノール性化合物の量を図示したグラフである。図10を参照すると、比較例に比べて実施例1~3で全て著しくフェノール性化合物の量が増加した。つまり、実施例1~3全てにおいてフェノール性化合物の総量が、比較例に比べて20%以上増加した。特に、実施例2の場合は、対照群に比べて実施例1および実施例3よりもフェノール性化合物の量が著しく増加し、第2光が275nmおよび295nmのピーク波長を有する場合は、フェノール性化合物の総量が比較例に比べて約23%増加したのに対し、285nmにおける総フェノール性化合物の含量は比較例に比べ約38%も増加した。
【0227】
これにより、第2光の照射を通じてフェノール性化合物の総量が著しく増加することが分かり、特に、285nmのピーク波長を有する第2光の照射によってフェノール性化合物の総量がより一層著しく増加することが確認できる。
【0228】
実験例3.紫外線のドーズ量による麦の新芽の損傷有無
【0229】
第2光が285nmのピーク波長の光のときの有効ドーズ量の範囲を把握するために、ドーズ量に対する麦の新芽の損傷有無を確認した。
【0230】
図11は、実験例2の条件と同じ条件で行うが、第2光が285nmでピーク波長を有する光をドーズ量だけ変えて麦の新芽に印加した後の麦の新芽を撮影した写真である。図11の各写真に記載した数値は、各麦の新芽に印加された第2光のドーズ量を意味する。
【0231】
図11を参照すると、第2光の印加量が13.44kJ/ms以下の場合、麦の新芽に第2光を印加しなかった場合と外見上の違いは見られなかった。これにより、第2光の印加量が13.44kJ/ms以下の場合は、麦の新芽が第2光の印加にほとんど影響を受けないということが分かる。しかし、第2光の印加量が15.12kJ/ms以上の場合は、麦の新芽の各葉の端部から枯死が進み、黄色く変色したことを確認した。
【0232】
これにより、第2光の印加時に約14kJ/ms以下のドーズ量で印加される必要があることを確認できた。
【0233】
実験例4.紫外線のドーズ量による麦の新芽内の抗酸化物の総量
【0234】
図12は、実験例2の条件と同じ条件で行うが、第2光が285nmでピーク波長を有する光をドーズ量だけ変えて麦の新芽に印加した後、その麦の新芽に含有された総フェノール性化合物の総量を示したものである。図12において、実験例3のように、ドーズ量が約14kJ/msを超える場合は、麦の新芽の枯死が起こる等、第2光に対する被害が発生した状況のため、ドーズ量が約14kJ/msを超える場合を除き、約14kJ/ms以下の場合だけを表した。
【0235】
図12を参照すると、第2光の印加量が約14kJ/ms以下の場合は、フェノール性化合物の総量が比較例と比べて全て増加した。さらに、第2光の印加量が約3kJ/ms以上約14kJ/ms以下の場合は、フェノール性化合物の総量が比較例と比べて全て著しく増加した。特に、8.64kJ/msのドーズ量で麦の新芽に第2光を印加した場合は、フェノール性化合物の総量は、比較例と比べてより著しく高い値を示した。
【0236】
実験例5.紫外線のドーズ量による小麦の新芽の損傷有無
【0237】
第2光が285nmのピーク波長の光の時の有効ドーズ量の範囲を把握するために、ドーズ量に対する小麦の新芽の損傷有無を確認した。
【0238】
図13は、実験例2の条件と同じ条件で行うが、第2光が285nmでピーク波長を有する光をドーズ量だけ変えて小麦の新芽に印加した後の小麦の新芽を撮影した写真である。図13の各写真に記載した数値は、各小麦の新芽に印加された第2光のドーズ量を意味する。
【0239】
図13を参照すると、第2光の印加量が約13.4kJ/ms以下の場合、小麦の新芽に第2光を印加しなかった場合と外見上の違いは見られなかった。これを通じて、第2光の印加量が約13.4kJ/ms以下の場合は、小麦の新芽が第2光の印加にほとんど影響を受けないということが分かる。これにより、第2光は約13.4kJ/ms以下のドーズ量で印加される必要があることが確認できた。
【0240】
実験例6.紫外線のドーズ量による小麦の新芽内の抗酸化物の総量
【0241】
図14は、実験例2の条件と同じ条件で行うが、第2光が285nmでピーク波長を有する光をドーズ量だけ変えて小麦の新芽に印加した後、その小麦の新芽に含有された総フェノール性化合物の総量を示したものである。図14において、実験例5のように、ドーズ量が約13.4kJ/msを超える場合は、小麦の新芽の枯死が起こる等、第2光に対する被害が発生した状況のため、ドーズ量が約13.4kJ/msを超える場合を除き、約13.4kJ/ms以下の場合だけを表した。
【0242】
図14を参照すると、第2光の一日の累積照射量が約2.02kJ/m以下の場合、小麦の新芽内のフェノール性化合物の量が実質的に増加しないことが確認できた。具体的には、第2光を照射しなかった小麦の新芽内のフェノール性化合物の量と、第2光を一日約2.02kJ/mだけ照射した小麦の新芽内のフェノール性化合物の量が共に約13mg/g DW内外であることが確認できた。
【0243】
小麦の新芽に対する第2光の一日の累積照射量が13.4kJ/mを超える場合は、小麦の新芽内のフェノール性化合物の量がむしろ減少し得ることが分かった。具体的には、小麦の新芽に第2光を一日約13.4kJ/m照射した場合、小麦の新芽内のフェノール性化合物の量は、約14mg/g DW内外であることが確認できた。これは、小麦の新芽に第2光を一日約4.03kJ/m照射したり、約8.06kJ/m照射したりした場合の小麦の新芽内のフェノール性化合物の量に比べて少ない数値である。
【0244】
上述の傾向は、UV照射によって小麦の新芽内の2次代謝産物の量が増加するためには、UV累積照射量が臨界値以上でなければならないことを示唆している。また、UV累積照射量が増加するほど、新芽にUVによる被害が加わるため、UV累積照射量が一定水準以上の場合は、フェノール性化合物を始めとする新芽内の有用物質がUVによって破壊され得ることを示唆している。
【0245】
よって、小麦の新芽内のフェノール性化合物の総量を高めるためには、一日の第2光累積照射量を約4.03kJ/m~約13.4kJ/mの間に設定することが好ましい。
【0246】
以上では、本発明の好ましい実施例を参照して説明したが、該当技術分野の熟練した当業者または該当技術分野の通常の知識を有する者であれば、後述の特許請求の範囲に記載した本発明の思想および技術領域から外れない範囲内で、本発明を多様に修正および変更させられることを理解できると考える。
【0247】
よって、本発明の技術的範囲は、明細書の詳細な説明の記載内容に限定されるのではなく、特許請求の範囲によって決められなければならない。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14