IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マッセー ユニバーシティの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】ガスを吸着するための金属有機構造体
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/20 20060101AFI20240422BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20240422BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20240422BHJP
   B01D 53/047 20060101ALI20240422BHJP
   C07C 229/62 20060101ALN20240422BHJP
   C07F 15/04 20060101ALN20240422BHJP
   C07F 15/06 20060101ALN20240422BHJP
   C07F 13/00 20060101ALN20240422BHJP
【FI】
B01J20/20 A
B01J20/34 E
B01J20/34 H
B01D53/04 110
B01D53/04 220
B01D53/047
C07C229/62
C07F15/04
C07F15/06
C07F13/00 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021535303
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 NZ2019050163
(87)【国際公開番号】W WO2020130856
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-11-29
(31)【優先権主張番号】2018904882
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】521266413
【氏名又は名称】マッセー ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】カズヴィーニー,オミド タヘリ
(72)【発明者】
【氏名】テルファー,シェイン
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-521320(JP,A)
【文献】特開2018-172320(JP,A)
【文献】特開2016-155879(JP,A)
【文献】TANG En et al.,Two Cobalt(II) 5-Aminoisophthalate Complexes and Their Stable Supramolecular Microporous Frameworks,Inorganic Chemistry,米国,2006年11月07日,45,6276-6281
【文献】TIAN Chong-Bin et al.,Four New Mn Inorganic-Organic Hybrid Frameworks with Diverse Inorganic Magnetic Chain's Sequences: Syntheses, Structures, Magnetic, NLO, and Dielectric Propertties,Inorganic Chemistry,米国,2015年,54,2560-2571
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00- 20/28
B01J 20/30- 20/34
B01D 53/02- 53/12
C07C 229/60-229/62
C07F 15/04
C07F 15/06
C07F 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合物からの二酸化炭素の分離のための方法であって、金属有機構造体(MOF)を含む吸着剤と混合物を接触させることを含み、前記MOFは、
複数の二次構造単位(SBU)であって、各SBUは、有機リンカーの第1の部分を介して別の金属カチオンに接続された1つの金属カチオンの繰り返し単位を備える、複数のSBUと、
第1のSBU中のリンカーの第2の部分が隣接するSBUの金属カチオンに接続される、接続された隣接するSBUの層と、
を備え、
隣接する層は、リンカー間結合相互作用を介して相互に接続され、
各金属カチオンはコバルト(II)イオン、マンガン(II)イオンおよびニッケル(II)イオンから選択され、前記有機リンカーは5-アミノイソフタレートであり、前記第1の部分はカルボキシレート基であり、前記第2の部分はアミノ基である、方法。
【請求項2】
前記リンカー間結合相互作用は、非共有結合である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リンカー間結合相互作用は、水素結合相互作用を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記リンカー間結合相互作用は、カルボキシル間結合相互作用を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記混合物は、麻酔ガス、冷媒又は冷却ガス、空気、天然ガス、液化石油ガス、炭層ガス、合成ガス、煙道ガス、地熱ガス又はこれらの組み合わせを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記混合物は、硫化水素(HS)、酸素(O)、窒素(N)、水素(H)、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン、オゾン(O)、一酸化炭素(CO)、二酸化硫黄(SO)、アンモニア(NH)、一酸化窒素(NO)、亜酸化窒素(NO)、及び二酸化窒素(NO)、水蒸気、炭化水素(官能基化された又は官能基化されていない)、又はこれらの誘導体、のいずれか、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記吸着剤が、高分子材料、膜、樹脂、生体分子、粘土、セラミックス、炭素、無機酸化物、及びこれらの組み合わせから選択される材料をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
混合物から二酸化炭素を分離するためのシステムであって、
混合物をチャンバ中に誘導するように適合された入口を有するチャンバと、
前記チャンバ内に配置された金属有機構造体(MOF)を含む吸着剤と、
を備え、前記MOFは、
複数の二次構造単位(SBU)であって、各SBUは、有機リンカーの第1の部分を介して別の金属カチオンに接続された1つの金属カチオンの繰り返し単位を備える、複数のSBUと、
第1のSBU中の有機リンカーの第2の部分が隣接するSBUの金属カチオンに接続される、接続された隣接するSBUの層と、
を備え、
隣接する層は、リンカー間結合相互作用を介して相互に接続され、
各金属カチオンはコバルト(II)イオン、マンガン(II)イオンおよびニッケル(II)イオンから選択され、前記有機リンカーは5-アミノイソフタレートであり、前記第1の部分はカルボキシレート基であり、前記第2の部分はアミノ基である、
システム。
【請求項9】
前記吸着剤は、高分子材料、膜、樹脂、生体分子、粘土、セラミックス、炭素、無機酸化物、及びこれらの組み合わせをさらに含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記吸着剤は、吸着カラム内に配置されるか、又は固定床上に配置される、請求項8又は9に記載のシステム。
【請求項11】
前記チャンバ中の圧力を変化させるための圧力スイングシステムをさらに備える、請求項8~10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記チャンバ中の温度を変化させるための温度スイングシステムをさらに備える、請求項8~10のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲスト種を吸着するための多孔質材料に関し、より詳細には、二酸化炭素を吸着するための金属有機構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
化学分離プロセスは大量のエネルギーを消費する。この負担を軽減するために経済的且つ実用的な経路が必要とされる。これは特に二酸化炭素の取り込みに関連する。温室効果とその後の気温上昇の根底にあるのは大気中への二酸化炭素の放出である。CO排出量を低減する差し迫った必要性があり、これは、炭素フリー燃料を取り入れることとCO隔離技術の強化と結び付けられるエネルギー強度の全体的な削減を含む多面的なアプローチを用いて達成できる。例えば、化石燃料は、使用前に合成ガスから二酸化炭素を捕捉することにより脱炭素化でき、排出されるCOは、その濃度が高い点源で取り込むことができる。二酸化炭素は、他の多くの状況でガスの流れから、例えば天然ガス及びバイオガスから、重合又は化学誘導体化の前に価値ある炭化水素を精製するために除去されなければならない。これらのプロセスはすべて、他のガスを上回る二酸化炭素の選択的な捕獲に基づいている。二酸化炭素を捕捉するための確立された技術は、溶液中の吸収剤、典型的にはアミンとの化学反応を含む。これには、再生中の高いエネルギーペナルティ、分解及び蒸発に起因する損失、ハードウェア及びパイプラインの腐食などの複数の欠点がある
【0003】
二酸化炭素の削減は、工業プロセスにおいても重要である。例えば、天然ガス中の二酸化炭素のレベルを下げることは、その輸送を容易にし、かつ機器及びパイプラインの腐食を防ぐ。また、他のガス又はガス混合物(アセチレン、エチレン、及びエタンのストリームなどの)中の二酸化炭素は、ファインケミカル、燃料、及びポリマーの製造のための供給原料として用いられる前に除去される必要がある。さらに、二酸化炭素は、宇宙機及び潜水艦などの閉鎖空間から取り除かれる必要がある。
【0004】
ナノ細孔材料中の二酸化炭素の吸着は、化学吸着に対する魅力的な代替的解決策である。物理吸着の根底にある弱い非共有結合の相互作用は、分子スケールで構造化されたアクセス可能な細孔に依存する。それらは、捕捉されたCOを解放するためのエネルギー要件を下げて持続可能でリサイクル可能な材料を供給する。効果的な物理吸着剤は、高い取り込み、迅速なゲスト拡散、及び関連する濃度で競合するガスを上回るCOに対する選択性についての長期安定性を兼ね備えている。
【0005】
これに関連して、金属有機構造体(MOF)が台頭してきた5,6。MOFは、金属イオン又はクラスターと有機リンカーの規則的なネットワークを備える。MOFは、多孔性であり、MOFの細孔を占める小分子の吸着を可能にする。それらは、概念的な「二次構造単位」(SBU)サブユニットを備える規則的な繰り返しの拡張構造を有する。SBUは、個別の金属又は金属-配位子クラスターであってよく、或いは繰り返しの金属又は金属-配位子鎖(無限SBU又はSBUロッドと呼ばれることもある)であってよい。MOFは、小分子の捕獲、保存、分離、及び送達において大きな可能性を秘めていると考えられる。
【0006】
従来の多孔質材料(ゼオライト、シリカ、及び活性炭など)とは異なり、設計者はMOFの構造、孔径、及び機能性を微調整できる。分離に適した多孔質材料は、他の分子を完全に排除しながら特定のタイプの分子を吸着できる、慎重に設計された孔径及び幾何学的形状をもつ材料である。細孔の幾何学的形状に加えて、MOFは、細孔内の官能基及び特定の静電特性(例えば、分極率及び極性)などの他の特性に基づいて、特定のガスを選択的に吸着するように設計され得る。
【0007】
この分野の進歩にもかかわらず、良好な分離性能と、長期安定性、低コスト、迅速なゲスト拡散、及び製造の容易さを含む他の必要な特性とを組み合わせたMOF吸着剤の特定には課題が残っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記の必要性又は問題の少なくとも1つに対処する、又は少なくとも公衆に有用な選択肢を提供する多孔質材料、方法、及び/又はシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書でより詳細に説明するように、複数の金属イオンと複数の有機リンカーとを有する多孔質金属有機構造体(MOF)が提供される。第1の化学種を含むガス混合物から第1の化学種を分離するための方法がさらに提供され、この方法は、ガス混合物を、多孔質金属有機構造体(MOF)を含む吸着剤と接触させることを含む。チャンバと、チャンバに取り付けられ、流体混合物をチャンバに誘導するように適合された入口と、チャンバ内に配置された多孔質金属有機構造体(MOF)を含む吸着剤を備える、第1の化学種を含む流体混合物の流れから第1の化学種を分離するためのシステムがさらに提供される。
【0010】
一態様では、複数の二次構造単位(SBU)を備える多孔質金属有機構造体(MOF)であって、各SBUが有機リンカーの第1の部分を介して隣接する金属カチオンに連結された金属カチオンの繰り返し単位を備え、接続された隣接するSBUの層は、第1のSBU中の有機リンカー化合物の第2の部分と隣接するSBUの金属カチオンの配位より形成され、SBUの3次元ネットワークは、隣接する層間のリンカー間結合相互作用により形成され、MOFは、ゲスト種を含むガス混合物からその細孔中にゲスト種を吸着する、多孔質金属有機構造体(MOF)が提供される。
【0011】
リンカーは、金属イオンを架橋して1次元SBUを形成するための2つのドナー原子を含む第1の部分と、隣接する1次元SBU中の金属イオンに配位して2次元層を形成するためのドナー原子を含む第2の部分と、3次元構造を形成するように、隣接する層中の有機リンカーと結合するためのH結合部分を備える。
【0012】
第1の部分の2つのドナー原子は好ましくは、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子から独立して選択される。より好ましくは、ドナー原子は酸素原子である。2つのドナー原子は、カルボン酸、アミジン、又はアミドなどの同じ官能基(例えば二座官能基)の一部であってよく、又は2つのドナー原子は、2つの別個のカルボニル基又はヒドロキシル基などの別個の官能基の一部であってよい。
【0013】
第2の部分のドナー原子は、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子であり得る。ドナー原子は、官能基の一部、例えば、カルボキシル、ヒドロキシル、アミノ、又はチオールであり得る。
【0014】
H結合部分は、リンカー間結合相互作用に関与できる官能基を含む。H結合部分は好ましくは、他のリンカーのH結合部分と結合する。一例では、H結合部分は、ヒドロキシル、アミノ、カルボン酸、アミジン、及びアミドなどの水素結合に関与できる官能基を備える。好ましくは、H結合官能基はカルボン酸である。
【0015】
第1の部分、第2の部分、及びH結合部分は、リンカーの有機コア部分に接続される。一例では、コア部分は、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、又はヘテロシクロアルキル基である。好ましいコア部分の例としては、フェニル基、フラニル基、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、ビフェニル基、ナフチル基、ビピリジル基、及びキノリニル基が挙げられる。好ましいコア部分は、6員のアリール又はヘテロアリールである。コア部分の具体例は、フェニル基である。
【0016】
一例では、リンカーは、特にその部分がイソフタル酸フェニル上で置換される場合に、金属イオンに配位できるドナー原子を含む別の部分で置換されたイソフタル酸又はそのアニオン(例えば、イソフタレート)を含む。一例では、リンカーは、カルボキシル基を有する2つの部分でメタ置換され、さらに金属カチオンへの配位のためのドナー原子を含む別の部分で置換された、フェニルコアを含み、この部分は、アミノ、ヒドロキシル、及びチオールから選択される官能基を含み得る。言い換えれば、この例では、リンカーは、金属カチオンへの配位のためのドナー原子を含む部分でさらに置換されたイソフタル酸又はイソフタレートを含む。
【0017】
さらなる態様において、多孔質金属有機構造体(MOF)であって、それぞれの二次構造単位(SBU)が第1の部分を介して隣接する金属カチオンに連結された金属カチオンの繰り返し単位を備える、複数のSBUと、第1のSBU中の第2の部分の隣接するSBU中の金属カチオンへの配位によりSBUが接続される、接続された隣接するSBUの層とを備え、隣接する層は、リンカー間結合相互作用により相互に接続され、MOFは、第1の化学種を含むガス混合物からその細孔中に第1の化学種を吸着する、多孔質金属有機構造体(MOF)が提供される。
【0018】
さらなる態様において、第1の化学種を含む混合物から第1の化学種を分離するための方法であって、混合物を、金属有機構造体(MOF)を含む吸着剤と接触させることを含み、MOFは金属カチオンと有機リンカーを有する、方法が提供される。
【0019】
リンカーは、式(I)の構造又はその塩又はアニオンを有し得る:
【化1】

(I)
【0020】
Aは、第1の部分であり、-COOR、-CONR 、-C(NR)(NR )、-NO、-OC(O)NR 、-OC(O)OR、-OC(O)R、-N(R)C(O)OR、-N(R)C(O)R、-RCO、-RC(NR)(NR )、-RCONR 、-RNO、-ROC(O)NR 、-ROC(O)OR、-RNRC(O)OR、-RNRC(O)OR、-RN(R)C(O)R、-SO、-RSO、-ROC(S)NR 、-RSC(O)NR 、-SO、-RSO、-R(OR、-R(OR)(COOR)、-R(OR)(NR )、-R(OR)(SR)、-R(COOR、-R(NR )(COOR)、-R(SR)(COOR)、-R(SR、-R(NR )(SR)、-R(NR 、-R(O)、-R(OR)(O)、-R(O)(COOR)、-R(O)(NR )、-R(O)(SR)から選択される。一例では、Aは、-COOR、-CONR 、-C(NR)(NR )、-NO、-OC(O)NR 、-OC(O)OR、-OC(O)R、-N(R)C(O)OR、-N(R)C(O)R、-RCO、-RC(NR)(NR )、-RCONR 、-RNO、-ROC(O)NR 、-ROC(O)OR、-RNRC(O)OR、-RNRC(O)OR、-RN(R)C(O)Rから選択される。さらなる例では、Aは、-COORから選択される。
【0021】
Bは、第2の部分であり、-OR、-ROR、-NR 、-RNR 、-SR、-RSR、-COOR、-RCO、-CONR 、-RCONR から選択される。一例では、Bは、-OR、-ROR、-NR 、-RNR 、-SR、-RSRから選択される。別の例では、Bは、-NR から選択される。
【0022】
Cは、-OR、-ROR、-NR 、-RNR 、-COOR、-CONR 、-C(NR)(NR )、-NO、-OC(O)NR 、-OC(O)OR、-OC(O)R、-N(R)C(O)OR、-N(R)C(O)R、-RCO、-RC(NR)(NR )、-RCONR 、-RNO、-ROC(O)NR 、-ROC(O)OR、-RNRC(O)OR、-RNRC(O)OR、-RN(R)C(O)R、-SO、-RSO、-ROC(S)NR 、-RSC(O)NR 、-SO、-RSO、-R(OR、-R(OR)(COOR)、-R(OR)(NR )、-R(OR)(SR)、-R(COOR、-R(NR )(COOR)、-R(SR)(COOR)、-R(SR、-R(NR )(SR)、-R(NR 、-R(O)、-R(OR)(O)、-R(O)(COOR)、-R(O)(NR )、-R(O)(SR)から選択される。一例では、Cは、-COOR、-CONR 、-C(NR)(NR )、-NO、-OC(O)NR 、-OC(O)OR、-OC(O)R、-N(R)C(O)OR、-N(R)C(O)R、-RCO、-RC(NR)(NR )、-RCONR 、-RNO、-ROC(O)NR 、-ROC(O)OR、-RNRC(O)OR、-RNRC(O)OR、-RN(R)C(O)Rから選択される。さらなる例では、Cは、-COORから選択される。
【0023】
は、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールから独立して選択される。一例では、Rは、水素及びC1~C4アルキルから独立して選択される。別の例では、Rは、水素及びメチルから独立して選択される。別の例では、Rは、水素から選択される。
【0024】
は随意的に、アルキル、ハロゲン、ハロアルキル、アミノ、アルキルアミノ、アルコキシ、ヒドロキシル、アルキルヒドロキシル、チオール、アルキルチオール、シアノ、及びニトロの1つ又は複数で置換される。一例では、Rは随意的に、C1~C4アルキル、C1~C4アルキルアミノ、ハロゲン、C1~C4アルコキシ、ヒドロキシル、C1~C4アルキルヒドロキシル、チオール、C1~C4アルキルチオールの1つ又は複数で置換される。
【0025】
は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルコキシ(alkyoxy)、アリール、アラルキル、及びヘテロアリールから独立して選択されるジラジカルである。一例では、Rは、C1~C4アルキル、C1~C4アルキルアミノ、C1~C4アルコキシ、C1~C4アルキルヒドロキシルから独立して選択されるジラジカルである。
【0026】
は随意的に、アルキル、ハロゲン、ハロアルキル、アミノ、アルキルアミノ、アルコキシ、ヒドロキシル、アルキルヒドロキシ、チオール、アルキルチオール、シアノ、及びニトロの1つ又は複数で置換される。一例では、Rは随意的に、C1~C4アルキル、C1~C4アルキルアミノ、ハロゲン、C1~C4アルコキシ、ヒドロキシル、C1~C4アルキルヒドロキシル、チオール、C1~C4アルキルチオールの1つ又は複数で置換される。
【0027】
A、B、及びCは、コアQに結合され、Qは、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、及びシクロアルキル基からなる群から選択される。一例では、Qは、5又は6員のアリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、及びシクロアルキル基から選択される。別の例では、6員のアリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、及びシクロアルキル基Qは、から選択される。別の例では、Qは、6員のアリール又はヘテロアリールから選択される。別の例では、Qはフェニルである。
【0028】
Qは随意的に、それぞれ随意的にさらに置換され得るヒドロキシ、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルコキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、アミノアルキル、ジアルキルアミノ、アミノアルケニル、アルキルオキシ、アルケニルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、シクロアルキル、カルボキシ、カルボキシアルキル、カルボキシアルケニル、チオール、アルキルチオ、アリールチオ、アラルキルチオ、ニトロ、又はシアノから選択される1つ又は複数の置換基でさらに置換される。一例では、Qは随意的に、C1~C4アルキル、C1~C4アルキルアミノ、ハロゲン、C1~C4アルコキシ、ヒドロキシル、C1~C4アルキルヒドロキシル、チオール、C1~C4アルキルチオールから選択される1つ又は複数の置換基でさらに置換される。
【0029】
一例では、第1の化学種は、二酸化炭素、二硫化炭素、亜酸化窒素、水、硫化水素、シアン化水素、官能基化されたC1~C3炭化水素、及びこれらの組み合わせから選択される。一例では、官能基化されたC1~C3炭化水素は、C1~C3アルコール、C1~C3アルデヒド、C1~C3ニトリル、C1~C3ハロゲン化アルキルから選択される。別の例では、第1の化学種は、二酸化炭素である。
【0030】
コアが6員のアリール又はヘテロアリール基である、いくつかの実施形態では、第1の部分、第2の部分、及びH結合部分は、コア上の1,3,5又は2,4,6の置換パターンを有する。
【0031】
一例では、有機リンカーは、式(II)の構造を有し、
【化2】
(II)
式中、A、B、及びCは、式(I)について定義される通りであり、R、R、及びRは、それぞれ随意的にさらに置換され得る水素、ヒドロキシ、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルコキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、アミノアルキル、ジアルキルアミノ、アミノアルケニル、アルキルオキシ、アルケニルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、シクロアルキル、カルボキシ、カルボキシアルキル、カルボキシアルケニル、チオール、アルキルチオ、アリールチオ、アラルキルチオ、ニトロ、又はシアノから独立して選択される。一例では、R、R、及びRは、水素、C1~C4アルキル、C1~C4アルキルアミノ、ハロゲン、C1~C4ハロアルキル、C1~C4ハロアルコキシ、アミノ、ニトロ、C1~C4アルコキシ、ヒドロキシル、C1~C4アルキルヒドロキシル、チオール、C1~C4アルキルチオールから独立して選択される。
【0032】
一例では、A及びCは、-COOH又はそのアニオンであり、Bは、-NH2である。一例では、MOFは、式[M(Haip)を有し、式中、Mは、金属カチオンであり、Haip-は、5-アミノ-イソフタレートのアニオン(すなわち[C(COOH)(COO)(NH)])であり、nは、1~0より大きい整数(例えば、100,000,000)であり得る。より具体的な例では、MOFは、式[Co(Haip)、又[Mn(Haip)、又は[Ni(Haip)を有する。
【0033】
一例では、SBUは、式[MLを有し、式中、Mは、金属カチオンであり、Lは、有機リンカーであり、nは、0より大きい整数である。
【0034】
一例では、SBUは、2つの有機リンカーによって隣接する金属カチオンに連結された金属カチオンを含む。
【0035】
一例では、リンカー間結合相互作用は非共有結合であり、かつ水素結合相互作用であり得る。一例では、リンカー間結合相互作用は、リンカーの基C間(すなわち基C間の相互作用)である。一例では、リンカー間結合相互作用は、カルボキシル間結合相互作用を含む。
【0036】
一例では、金属は、Li、Na、K、RB、Cs、Be2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Sc3+、Sc2+、Sc、Y3+、Y2+、Y、Ti4+、Ti3+、Ti2+、Zr4+、Zr3+、Zr2+、Hf4+、Hf3+、V5+、V4+、V3+、V2+、Nb5+、Nb4+、Nb3+、Nb2+、Ta5+、Ta4+、Ta3+、Ta2+、Cr6+、Cr5+、Cr4+、Cr3+、Cr2+、Cr、Cr、Mo6+、Mo5+、Mo4+、Mo3+、Mo2+、Mo、Mo、W6+、W5+、W4+、W3+、W2+、W、W、Mn7+、Mn6+、Mn5+、Mn4+、Mn3+、Mn2+、Mn、Re、Re6+、Re5+、Re4+、Re3+、Re2+、Re、Re、Fe6+、Fe4+、Fe3+、Fe2+、Fe、Fe、Ru8+、Ru7+、Ru6+、Ru4+、Ru3+、Ru2+、Os8+、Os7+、Os6+、Os5+、Os4+、Os3+、Os2+、Os、Os、Co5+、Co4+、Co3+、Co2+、Co、Rh6+、Rh5+、Rh4+、Rh3+、Rh2+、Rh、Ir6+、Ir5+、Ir4+、Ir3+、Ir2+、Ir、Ir、Ni3+、Ni2+、Ni、Ni、Pd6+、Pd4+、Pd2+、Pd、Pd、Pt6+、Pt5+、Pt4+、Pt3+、Pt2+、Pt、Cu4+、Cu3+、Cu2+、Cu、Ag3+、Ag2+、Ag、Au5+、Au4+、Au3+、Au2+、Au、Zn2+、Zn、Zn、Cd2+、Cd+、Hg4+、Hg2+、Hg、B3+、B2+、B、Al3+、Al2+、Al、Ga3+、Ga2+、Ga、In3+、In2+、In1+、Tl3+、Tl、Si4+、Si3+、Si2+、Si、Ge4+、Ge3+、Ge2+、Ge、Ge、Sn4+、Sn2+、Pb4+、Pb2+、As5+、As3+、As2+、As、Sb5+、Sb3+、Bi5+、Bi3+、Te6+、Te5+、Te4+、Te2+、La3+、La2+、Ce4+、Ce3+、Ce2+、Pr4+、Pr3+、Pr2+、Nd3+、Nd2+、Sm3+、Sm2+、Eu3+、Eu2+、Gd3+、Gd2+、Gd、Tb4+、Tb3+、Tb2+、Tb、Db3+、Db2+、Ho3+、Er3+、Tm4+、Tm3+、Tm2+、Yb3+、Yb2+、Lu3+、及びこれらの任意の組み合わせから選択される。
【0037】
より好ましくは、金属カチオンは、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Sc3+、Sc2+、Y3+、Y2+、Ti3+、Ti2+、V3+、V2+、Nb3+、Nb2+、Cr3+、Cr2+、Mo3+、Mo2+、Mn3+、Mn2+、Fe3+、Fe2+、Ru3+、Ru2+、Co3+、Co2+、Rh3+、Rh2+、Ni2+、Pd2+、Cu2+、Zn2+、Cd2+、b3+、Al3+、Ga3+、In3+、Tl3+、Si2+、Ge2+、Sn2+、As3+、As2+、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0038】
一例では、金属は、M2+である。
【0039】
一例では、金属カチオンは、八面体配位の幾何学的形状を有する。
【0040】
一例では、ガス混合物はさらに、空気、水(HO)、硫化水素(HS)、酸素(O)、窒素(N)、水素(H)、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン、オゾン(O)、一酸化炭素(CO)、一酸化窒素(NO)、及び二酸化窒素(NO)、官能基化された及び官能基化されていない炭化水素、又はこれらの組み合わせを含み、炭化水素としては、メタン(CH)、エタン、プロパン、ブタン、エテン、プロペン、1-ブテン、2-ブテン、エチン(アセチレン)、プロピン、1-ブチン、及び2-ブチンを含むC2及びC3炭化水素、及びその置換された類縁体又は誘導体、及びその組み合わせが挙げられる。
【0041】
一例では、ガス混合物としては、水蒸気を含む水を含むガスなどの、加湿ガスが挙げられる。
【0042】
一例では、ガス混合物としては、麻酔ガス、冷媒又は冷却ガス、空気、天然ガス、液化石油ガス、炭層ガス、合成ガスが挙げられる。
【0043】
一例では、第1の化学種は、不純物又は微量不純物であり、ガス混合物は、商業用、工業用、又は医療用のガス又はガス混合物である。例えば、ガス混合物は、酸素、医療用又は呼吸用空気、亜酸化窒素、窒素、燃料ガス、石炭ガス、合成ガス、バイオガス、水素、高炉ガスである。
【0044】
別の例では、ガス混合物は、大気又は周囲空気である。
【0045】
ガス混合物が第1の化学種と官能基化されていない炭化水素を含む、一例では、第1の化学種は、二酸化炭素、二硫化炭素、亜酸化窒素、水、硫化水素、シアン化水素、官能基化されたC1~C3炭化水素、及びその組み合わせから選択され得る。
【0046】
第1の化学種が二酸化炭素である、一例では、ガス混合物は、空気、水(HO)、硫化水素(HS)、酸素(O)、窒素(N)、水素(H)、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン、オゾン(O)、一酸化炭素(CO)、一酸化窒素(NO)、及び二酸化窒素(NO)、官能基化された炭化水素、官能基化されていない炭化水素、又はこれらの組み合わせを含む。
【0047】
一例では、吸着剤は、高分子材料、膜、セラミックス、樹脂、生体分子、粘土、炭素(例えば活性炭)、無機酸化物、金属塩、及びこれらの組み合わせから選択される材料をさらに含む。
【0048】
一例では、吸着剤は、膜として提供される。
【0049】
一例では、MOFは、ゲストフリーMOFの1グラムあたり(1バール及び293Kで)COが10ccを超える、好ましくは20を超える、好ましくは30を超える、好ましくは40を超える、好ましくは45を超えるCO取り込みを有する。
【0050】
一例では、MOFは、8を超える、10を超える、12を超えるCO/炭化水素取り込み比(等モル混合物、1バール及び293Kで)を有する。
【0051】
一例では、MOFは、8を超える、10を超える、12を超えるCO/C2取り込み比を有する。
【0052】
一例では、MOFは、8を超える、10を超える、12を超えるCO/C取り込み比(等モル混合物、1バール及び293Kで)を有する。MOFは、8を超える、10を超える、12を超えるCO/C取り込み比を有してよい。
【0053】
一例では、MOFは、8を超える、10を超える、12を超える、14を超える、16を超える、18を超える、20を超える、25を超える、30を超えるCO/CH取り込み比(等モル混合物、1バール及び293Kで)を有する。
【0054】
一例では、MOFは、8を超える、10を超える、12を超える、14を超える、16を超える、18を超える、20を超える、25を超える、30を超えるCO/N取り込み比(等モル混合物、1バール及び293Kで)を有する。
【0055】
一例では、MOFは、少なくとも30の、少なくとも50の、少なくとも100の、150を超える、200を超える、250を超える、300を超える、350を超える、400を超える、450を超える、500を超える、550を超えるCO/C2のIAST選択性(1バール及び293Kで50/50の比)を有する。
【0056】
一例では、MOFは、少なくとも30の、少なくとも50の、少なくとも100の、150を超える、200を超える、250を超える、300を超える、350を超える、400を超える、450を超える、500を超える、550を超えるCO/CのIAST選択性(1バール及び293Kで50/50の比率)を有する。
【0057】
一例では、MOFは、少なくとも400の、500を超える、1000を超える、2000を超える、3000を超える、3500を超える、4000を超える、4500を超える、5000を超えるCO/CHのIAST選択性(1バール及び293Kで50/50の比率)を有する。
【0058】
一例では、MOFは、少なくとも300の、500を超える、1000を超える、2000を超える、3000を超える、3500を超える、4000を超える、4500を超える、5000を超える、6000を超える、7000を超える、8000を超える、9000を超えるCO/HのIAST選択性(1バール及び293Kで20/80の比率)を有する。
【0059】
MOFは、加熱されたときに、商業的及び工業的に有用な時間にわたり、二酸化炭素に対するその選択性を保持できる。MOFは好ましくは、最高で200℃、より好ましくは250℃、より好ましくは300℃、より好ましくは350℃、最も好ましくは400℃の温度での窒素雰囲気下で安定である。使用中及び/又は周囲条件では、MOFは、様々な温度で二酸化炭素に対し選択的である。例えば、MOFは、周囲温度、50℃を超える温度、100℃を超える温度、又は150℃を超える温度で、二酸化炭素に対し選択的であり得る。
【0060】
MOFは好ましくは、ガス混合物中の二酸化炭素の濃度(又は分圧)が低いガス混合物から二酸化炭素を選択的に吸着する。好ましくは、MOFは、二酸化炭素が50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、1%以下、0.1%以下、0.01%以下、0.001%以下、0.0001%以下、1000ppm以下、100ppm以下、10ppm以下、又は1ppm以下であるガス混合物から二酸化炭素を選択的に吸着する。
【0061】
MOFは、低いガス圧力及び高いガス圧力で安定な構造を保持する。例えば、MOFは、ほぼ真空で、好ましくは最高約50バール、100バール、150バール、200バール、250バール、300バール、350バール、400バール、450バール、500バールのガス圧力で安定な構造を有する。
【0062】
MOFは、加熱することにより及び/又は減圧下で活性化させることができ、周囲環境中のガス(もちろん、周囲の二酸化炭素を除く)を上回る二酸化炭素に対する選択性があるため、必要とされるまで周囲条件下で保存できる。二酸化炭素の存在下での使用の後に、MOFは、再使用のために真空で及び/又は加熱して及び/又はガスでパージして二酸化炭素を脱着することにより再活性化され得る。
【0063】
MOFは好ましくは、圧力の低減及び/又は温度の上昇により随意的に別のガスの存在下で)、吸着したゲスト種を完全に脱着できる。一例では、MOFは、温度及び/又は圧力スイングを使用して再生できる。別の例では、MOFは、加熱すること(例えば、約20℃と約130℃の間に)により、又は真空中で、又は乾燥空気の流れでパージすることにより、又は前述の方法の2つ以上の組み合わせにより、第1の化学種を脱着できる。
【0064】
MOFは好ましくは、複数の吸着/脱着サイクルを行うことができる。好ましくは、MOFは、少なくとも5サイクル、好ましくは10サイクルを超える、好ましくは50を超えるサイクル、好ましくは100、200、300、400、又は500を超えるサイクルにわたり、二酸化炭素の取り込み及び完全な脱着を実質的に維持できる。
【0065】
MOFは好ましくは、商業的及び工業的に有用な時間にわたり、空気及び/又は水の存在下で第1の化学種に対する吸着活性及び選択性を保持する。好ましくは、MOFは、1週間を超える、より好ましくは2週間を超える、より好ましくは1か月を超える、より好ましくは2か月を超える、より好ましくは3か月を超える、より好ましくは4か月を超える、より好ましくは5か月を超える、及びより好ましくは6か月を超える間、室温での湿った空気中(およそ25℃で湿度80%)で安定である。より好ましくは、MOFがガス混合物から第1の化学種を捕獲する能力は、水蒸気の存在による影響を受けない。好ましくは、MOFは、バルク水の存在下で安定であり、好ましくは、バルク水との接触(水への完全な浸漬を含む)後に選択性及び活性を保持し、水との接触は、2日、5日、10日、又は15日を超えて持続し得る。
【0066】
MOFは好ましくは、アンモニア、硫化水素、及び二酸化硫黄などの(限定はされないが)有毒ガス及び/又は腐食性ガスの存在下で、第1の化学種に対するその選択性を保持する。
【0067】
別の例では、MOFは、他の成分と組み合わせて配置されてよい。例えば、MOFは、さらなる1つ又は複数の成分と組み合わされてよい。これらの成分は、ポリマー、生体分子、樹脂、セラミックス、炭素(例えば活性炭)、及び無機酸化物などの材料を含み得るが、これらに限定されない。複合材料は、例えば、ペレット、膜、シート、又はモノリスの形態をとることができる。例えば、MOFは、さらなる成分と組み合わされて、ガス分離膜などの膜を形成し得る。
【0068】
MOFは、流体又は流体の流れ(液体、液体の流れ、ガス、及び/又はガスの流れを含む)から第1の化学種を選択的に吸着するために用いることができる。特に、MOFは、前述の濃度又は分圧で第1の化学種を含む流体から第1の化学種を吸着するために用いることができる。MOFは、流体の連続ストリームで、例えば、フィルタ又は流体が流れる床として用いることができ、又は流体のバッチに加えることができる。
【0069】
MOFは、化学種の混合物を含む流体混合物の流れから第1の化学種を分離するために用いることができる。例えば、MOFは、吸着床に含まれ得る。流体は、液体、ガス、又は超臨界流体であってよく、好ましくはガス又はガスの混合物である。入口流体は、或る量の第1の化学種を含んでよい。例えば、流体は、炭化水素と第1の化学種の組み合わせを含んでよい。流体がMOFを通過する際に、第1の化学種が選択的に吸着される。出口を出る流体は、入口に入った流体に比べて二酸化炭素が少ない。
【0070】
一例では、MOFは、天然ガス、液化石油ガス、炭層ガス、アセチレン、メタン、エタン、及びそれらの組み合わせなどの、工業原油、原油、未精製の、又は部分的に精製された炭化水素のソースから第1の化学種を吸着するために用いることができる。
【0071】
別の例では、MOFは、リブリーザ装置の呼気から第1の化学種を吸着するために用いることができる。
【0072】
別の例では、MOFは、閉じた又は部分的に閉じた麻酔システム又は呼吸装置で第1の化学種を吸着するために、及び/又は麻酔ガス(例えば、イソフルラン、セボフルラン、デスフルラン、シクロプロパン、及びキセノン)の回収を強化するために用いることができる。
【0073】
別の例では、MOFは、大気から第1の化学種を吸着するために周囲環境に配置されてよい。MOFは、商業会議室、住宅用アパート及びホテルの部屋、潜水艦、宇宙機、又は掩蔽壕などの閉鎖系又は密閉系内に配置でき、MOFは、二酸化炭素スクラバー又はスカベンジャーとして作用できる。
【0074】
したがって、第1の化学種を含むガス又は流体混合物をMOFと接触させることにより第1の化学種を除去する、隔離する、貯蔵する、又は捕獲する方法が提供される。ガス又は流体混合物は代替的に、麻酔ガス、冷媒又は冷却ガス、空気、水素ガス、酸素ガス、又はC2ガス(アセチレン、エテン、エタン、及びそれらの混合物など)を含み得る。例えば、MOF又はMOFを含有する複合材料をガス混合物に曝すことを含む、第1の化学種を含むガス混合物から第1の化学種を除去する方法が提供される。MOFは、第1の化学種レベルが比較的高い、又は微量(例えば1%未満)でのみ存在する場所で用いられ得る。MOFは、煙道ガス、バイオガス、及び熱水噴出孔からのガスなどの産業排出物から二酸化炭素を捕獲するなどの用途で用いられ得る。
【0075】
MOFはまた、原油又は未精製の流体ストリームを精製又は除染するために用いることができる。例えば、MOFは、天然ガス、液化石油ガス、又は炭層ガスなどの、水素、酸素、炭化水素のストリームを精製又は除染するために用いることができる。
【0076】
本発明のMOFを含む吸着床は、H2成分が高純度ストリームに直ちに溶出される間、COを保持することが本明細書で示されているので、これらの材料は、合成ガスの精製中にCOを除去するために配置できる。
【0077】
同様に、C及びCなどのより重い吸着物の存在はMUF-16のCO捕獲能力を妨げないので、MOFは、バイオガスと天然ガスの両方からのCOの除去に特に適している。本明細書でさらに実証するように、より高い圧力(9バール)での破過測定は、ガスの流れからCOがきれいに除去されたことを示し、これは、天然ガスのスイートニング又は工業二酸化炭素の捕獲などの高圧プロセスへのMOFの優れた適用可能性を示す。
【0078】
図25に示され実施例5で説明される破過装置は、MOFを、固定床吸着カラムに入れ、化学種の混合物を含む流体混合物の流れから二酸化炭素を分離するために用いることができることを実証する。流体は、液体、ガス、又は超臨界流体であってよく、好ましくはガス又はガスの混合物である。入口流体は、或る量の二酸化炭素を含み得る。例えば、流体は、炭化水素と二酸化炭素の組み合わせであり得る。流体がMOFを通過する際に、二酸化炭素が選択的に吸着される。出口を出る流体は、入口に入った流体に比べて二酸化炭素が少ない。
【0079】
したがって、混合物から第1の化学種を分離するためのシステムであって、混合物をチャンバに誘導するように適合された入口を有するチャンバと、チャンバ内に配置された本発明の金属有機構造体(MOF)を含む吸着剤とをさらに備える、システムがさらに提供される。
【0080】
使用中に、チャンバを出る混合物は、チャンバに入る混合物に比べて低下された第1の化学種のレベルを有する。
【0081】
MOFは、高分子材料、膜、樹脂、生体分子、粘土、セラミックス、炭素(例えば活性炭)、無機酸化物、及びこれらの組み合わせから選択される材料などの基体内又はその上に含まれ得る。MOF又は基体は、固定床などの吸着床の一部であり得る。システムは、入口及び出口を有するチャンバ内に配置されたMOFを含んでよく、二酸化炭素を含むガス混合物は、入口を通ってチャンバに入り、MOFと相互作用し、出口を通って出ていく。MOFの温度を制御するように構成された温度コントローラ及び/又はMOFが配置されるガス流路の圧力を制御するように構成された圧力コントローラを含む、温度及び/又は圧力スイングを含めることができる。システムはさらに、背圧レギュレータ、マスフローコントローラ、質量流量計、ヒータ、及びキャリアガス供給源のいずれか1つ又は複数を含み得る。混合物は、本明細書に記載の混合物成分のいずれかを含み得る。
【0082】
MOFを形成するための1つの方法は、溶媒中の金属とリンカー前駆体の組み合わせを含む。この方法の例では、前駆体試薬は、金属塩と、MOFの有機リンカーを形成する有機化合物を含む。一例では、MOFは、金属塩及び有機化合物とプロトン性溶媒の組み合わせにより調製される。プロトン性溶媒は、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール)、又はこれらの組み合わせから選択できる。例えば、溶媒は、メタノールと水の組み合わせであってよい。次いで、溶媒を加熱し、その後、冷却して、固体MOF生成物を得る。好ましくは、反応条件は、5時間未満、より好ましくは4時間未満、より好ましくは3時間未満、より好ましくは2時間未満の反応時間を含む。好ましくは、ソルボサーマル条件は、150℃未満、より好ましくは130℃未満、より好ましくは110℃未満、より好ましくは100℃未満、より好ましくは90℃未満の温度を含む。この方法は、ソルボサーマル条件下で実施できる。好ましくは、ソルボサーマル条件は、閉じた反応容器及び自生圧力を含む。MOFは、その反応容器から取り出される形態で、すなわち、ソルボサーマル反応から得られる結晶又は微結晶の形態で用いることができ、又は、例えば、反応生成物の洗浄、溶媒交換、活性化、又は機械的粉砕によりさらに改質されてよい。MOFは、任意の粒径で用いることができる。本発明者が想定する代替的な方法としては、メカノケミカル合成法、溶融合成、及びフローリアクタでの合成が挙げられる。
【0083】
MOFは、好ましくは結晶であるが、MOFはさらに、半結晶構造ドメイン、又は少なくとも部分的にアモルファス構造ドメインを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0084】
図1】MUF-16のSBUの分子モデルを示し、ここで八面体はCo(II)カチオンである。1次元コバルト(II)鎖は、Haip配位子(Haip=5-アミノイソフタル酸)のμ-架橋カルボキシレート基により接続され、隣接するSBUのHaip配位子からの窒素ドナー原子は、アキシアル位で配位する。
図2】MUF-16の4つの接続されたSBUの層の一部の分子モデルを示す。
図3】MUF-16中の層間水素結合の分子モデルを示す。
図4】1次元のSBU、細孔、及び層間の層間水素結合の上からのビューを含む、MUF-16の構造の分子モデルを示す。
図5】合成後そのままのバルクサンプルの測定値と、単結晶X線回折(SCXRD)構造から予測された回折図との比較とともに、MUF-16、MUF-16(Mn)、及びMUF-(Ni)のPXRDパターンを示す。
図6】MUF-16について195Kで測定したCO、C、C、及びCHの体積吸着(黒丸)及び脱着(白丸)等温線を示す。
図7】293KでのMUF-16(Mn)による様々なガスの体積吸着(黒丸)及び脱着(白丸)等温線を示す。
図8】293KでのMUF-16(Ni)による様々なガスの体積吸着(黒丸)及び脱着(白丸)等温線を示す。
図9】(a)293Kで測定したMUF-16の実験的なH、Ar、N、CH、O、C、C、C、C、及びCの吸着(黒丸)及び脱着(白丸)等温線、(b)293Kでの種々のガス混合物に対するMUF-16の、対数スケールで表された、予測されたIAST選択性、を示す。
図10】排気されたサンプルを1バールで測定したそのガスの総吸着量に等しいドーズのガスに曝したときの、293KでのMUF-16による様々なガスの取り込みの速度論プロファイルを示す。qは、時間tでの取り込み量であり、qは、最終的な取り込み量である。
図11】293KでのCO/Cの0.1/99.9の混合物についてIASTにより予測されたMUF-16の混合ガス等温線及び選択性を示す。
図12】293KでのCO/CHの15/85の混合物についてIASTにより予測されたMUF-16の混合ガス等温線及び選択性を示す。
図13】293Kで50バールまでのCO/CHの15/85の混合物についてIASTにより予測されたMUF-16の混合ガス等温線及び選択性を示す。
図14】293KでのCO/Nの1/99の混合物についてIASTにより予測されたMUF-16の混合ガス等温線及び選択性を示す。
図15】293KでのCO/Hの20/80の混合物についてIASTにより予測されたMUF-16の混合ガス等温線及び選択性を示す。
図16】293KでのCO/Cの50/50の混合物についてIASTにより予測されたMUF-16の混合ガス等温線及び選択性を示す。
図17】293KでのCO/Cの50/50の混合物についてIASTにより予測されたMUF-16の混合ガス等温線及び選択性を示す。
図18】MUF-16ファミリーについて293KでのCO/Nの50/50混合物に対するIAST選択性を示す。
図19】MUF-16ファミリーについて293KでのCO/Nの15/85混合物に対するIAST選択性を示す。
図20】MUF-16ファミリーについて293KでのCO/CHの50/50混合物に対するIAST選択性を示す。
図21】MUF-16ファミリーについて293KでのCO/Cの50/50混合物に対するIAST選択性を示す。
図22】MUF-16ファミリーについて293KでのCO/Cの50/50混合物に対するIAST選択性を示す。
図23】MUF-16ファミリーについて293KでのCO/Cの50/50混合物に対するIAST選択性を示す。
図24】MUF-16ファミリーについて293KでのCO/Hの50/50混合物に対するIAST選択性を示す。
図25】動的条件下でMOFのガス分離性能を測定するのに用いられる破過装置を示す。
図26】MUF-16を充填した吸着カラムでの1.1バール及び293KでのCO/Nの0.4/99.6の混合物についての実験破過曲線を示す。
図27】MUF-16を充填した吸着カラムでの1.1バール及び293KでのCO/Hの50/50の混合物についての実験破過曲線を示す。
図28】MUF-16を充填した吸着カラムでの1.1バール及び293KでのCO/CHの15/85の混合物についての実験破過曲線を示す。
図29】MUF-16を充填した吸着カラムでの1.1バール及び293KでのCO/CH/C/Cの15/80/4/1の混合物についての実験破過曲線を示す。
図30】MUF-16を充填した吸着カラムでの9バール及び293KでのCO/CHの15/85の混合物についての実験破過曲線を示す。
図31】MUF-16を充填した吸着カラムでの9バール及び293KでのCO/CH/C/Cの15/80/4/1の混合物の実験破過曲線を示す。
図32】MUF-16を充填した吸着カラムでの1.1バール及び293KでのCO/Cの5/95の混合物についての実験破過曲線を示す。
図33】MUF-16を充填した吸着カラムでの1.1バール及び293KでのCO/Cの50/50の混合物についての実験破過曲線を示す。
図34】MUF-16を充填した吸着カラムでの1.1バール及び293KでのCO/Cの50/50の混合物についての実験破過曲線を示す。
図35】MUF-16を充填した吸着カラムでの1.1バール及び293KでのCO/Cの0.1/99.9の混合物についてのシミュレートした破過曲線を示す。
図36】MUF-16を充填した吸着カラムでの50バール及び293KでのCO/CHの15/85の混合物についてのシミュレートした破過曲線を示す。
図37】MUF-16についての293K及び1.1バールでの様々なサイクルでのCO/N(15/85)混合物の実験破過曲線を示す。
図38】4回の連続した吸着-脱着サイクル後の、湿度約80%の空気に6か月間曝した後の、及び水に24時間浸漬した後の、合成後そのままのMUF-16のCO吸着等温線(293K)を示す。
図39】真空下130℃で活性化後に、等温線測定後に、破過実験後に、相対湿度>80%の空気に少なくとも12か月間曝した後に、及び水に2週間浸漬した後にその構造が変化しないことを示す、MUF-16のPXRDパターンを示す。
図40】MUF-16、MUF-16(Mn)、及びMUF-16(Ni)の熱重量分析曲線を示す。
図41】水蒸気がある場合及びない場合の27℃でのCO/N(15/85)の混合物についての実験破過曲線を示す。水蒸気は、相対湿度82%で存在する。
図42】PVDFバインダでペレットにした後にその構造が変化しないことを示す、MUF-16のPXRDパターンを示す。
図43】PVDFバインダでペレットにした後にMOFのCOに対する固有の吸着性能が変化しないことを示す、293KでのMUF-16のCO吸着等温線を示す。ペレットの容量の観察された低下は、非吸着性の5wt%のPVDFから生じる。
図44】沸騰したお湯に浸す前及び後の、MUF-16/PVDFペレットを充填した吸着カラムでの293K及び1.1バールでのCO/Nの15/85の混合物についての実験的破過曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0085】
定義
特に明記しない限り、本明細書で用いられるすべての技術用語及び科学用語は、(例えば、材料科学及び化学の)当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味をもつと解釈されるものとする。
【0086】
本明細書で開示される数の範囲(例えば、1~10)への言及は、その範囲内のすべての関連する数(例えば、1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9、及び10)、並びにその範囲内の任意の有理数の任意の範囲(例えば、2~8、1.5~5.5、及び3.1~4.7)への言及も組み込むことが意図され、したがって、本明細書で明示的に開示されるすべての範囲のすべての部分範囲が明示的に開示される。これらは特に意図される数値の単なる例であり、列挙された最小値と最大値の間の数値のすべての可能な組み合わせが、同様の様態で本出願に明示的に記載されていると考えられるべきである。
【0087】
「及び/又は」、例えば、「X及び/又はY」という用語は、「X及びY」又は「X又はY」のいずれかを意味すると理解されるものとし、両方の意味又はいずれかの意味に明示的に対応すると解釈されるものとする。
【0088】
本明細書の全体を通して、「含む、備える」という言葉、又は「含んでいる」又は「備えている」などの変形は、記載された要素、整数、又はステップ、或いは要素、整数、又はステップのグループの包含を意味するが、あらゆる他の要素、整数、又はステップ、或いは要素、整数、又はステップのグループを除外しないと理解される。
【0089】
本明細書の全体を通して、特にそれ以外の指定のない限り、又は文脈がそれ以外の要求をしない限り、単一のステップ、組成物、ステップのグループ、又は組成物のグループへの言及は、それらのステップ、組成物、ステップのグループ、又は組成物のグループのうちの1つ及び複数(すなわち1つ以上)を包含すると解釈されるものとする。
【0090】
「水素」は、重水素を含む、水素の同位体を包含することが意図される。
【0091】
「炭化水素」という用語は、官能基化されている又は官能基化されていない場合がある、直線、分岐、又は環状炭素構造を含む飽和又は不飽和有機化合物を意味する。官能基化されていない炭化水素の例としては、メタン(CH)、エタン、プロパン、ブタン、エテン、プロペン、1-ブテン、2-ブテン、エチン(アセチレン)、プロピン、1-ブチン、及び2-ブチンを含むC2及びC3炭化水素が挙げられる。官能基化された炭化水素は、1つ又は複数の官能基又はヘテロ原子で置換された炭化水素である。官能基化された炭化水素の例としては、アルコール、アルデヒド、アミン、ハロゲン化アルキル、及びアルキルニトリルが挙げられる。「官能基化されたC1~C3炭化水素」という用語は、最高3つの炭素原子を有する任意の官能基化された炭化水素を意味し、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ホルムアルデヒド、アセトン、酢酸、臭化メチル、ヨウ化メチル、メチルアミン、エチルアミン、シアン化水素、シアノゲン、及びアセトニトリルを含む。
【0092】
「アルキル」という用語は、任意の飽和した官能基化されていない炭化水素ラジカルを意味し、直鎖と分岐鎖の両方のアルキル基を含むことを意図している。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、2-エチルプロピル、n-ヘキシル、及び1-メチル-2-エチルプロピルが挙げられるが、これらに限定されない。「C1~C6アルキル」という用語は、最高6つの炭素原子を有する任意のアルキルラジカルを意味する。
【0093】
「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの二重結合を有する任意の官能基化されていない炭化水素ラジカルを意味し、直鎖と分岐鎖の両方のアルケニル基を含むことを意図している。アルケニル基の例としては、エテニル、n-プロペニル、iso-プロペニル、n-ブテニル、iso-ブテニル、sec-ブテニル、t-ブテニル、n-ペンテニル、1,1-ジメチルプロペニル、1,2-ジメチルプロペニル、2,2-ジメチルプロペニル、1-エチルプロペニル、2-エチルプロペニル、n-ヘキセニル、及び1-メチル-2-エチルプロペニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの三重結合を有する任意の官能基化されていない炭化水素ラジカルを意味し、直鎖と分岐鎖の両方のアルキニル基を含むことを意図している。アルキニル基の例としては、エチニル、n-プロピニル、iso-プロピニル、n-ブチニル、iso-ブチニル、sec-ブチニル、t-ブチニル、n-ペンチニル、1,1-ジメチルプロピニル、1,2-ジメチルプロピニル、2,2-ジメチルプロピニル、1-エチルプロピニル、2-エチルプロピニル、n-ヘキシニル、及び1-メチル-2-エチルプロピニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
「アルキレン」という用語は、アルキル基に対応するジラジカルを意味する。アルキレン基の例としては、メチレン及びエチレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
「シクロアルキル」という用語は、好ましくは3~8個の環炭素原子を有する、飽和した又は部分的に飽和した非芳香族炭素環基を意味する。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
「ヘテロシクリル」という用語は、環炭素原子の1つ又は複数が1つ又は複数のヘテロ原子、例えば、窒素、酸素、又は硫黄で置き換えられているシクロアルキル基を意味する。ヘテロシクリル基の例としては、ピロリジニル、ピロリニル、ピラゾリジニル、アジリジニル、チイラニル、1,2-ジチエタニル、モルホリニル、フラニル、ピラニル、チオフェニル、イソキサゾリル、フラザニル、テトラヒドロフラニル、チエタニル、ピペリジニル、アゼチジニル、オキシラニル、エポキシド、及びチアシクロヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
「アルコキシ」という用語は、酸素原子に単結合したアルキル基を意味する。アルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、n-ブトキシ、iso-ブトキシ、sec-ブトキシ、及びt-ブトキシが挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
「アリール」という用語は、芳香族ラジカルを意味する。例としては、単環式基、並びに二環式基及び三環式基などの融合基が挙げられる。例としては、フェニル、インデニル、1-ナフチル、2-ナフチル、アズレニル、ヘプタレニル、ビフェニル、インダセニル、アセナフチル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントレニル、アントラセニル、シクロペンタシクロオクテニル、及びベンゾシクロオクテニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
「ヘテロアリール」という用語は、複素環式芳香族(ヘテロ芳香族)ラジカルを意味する。例としては、単環式基、並びに二環式基及び三環式基などの融合基が挙げられる。例としては、ピリジル、ピロリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、インドリル、イソインドリル、インドリジニル、プリニル、インダゾリル、フリル、ピラニル、ベンゾフリル、イソベンゾフリル、チエニル、チアゾリル、イソチアゾリル、ベンゾチアゾリル、オキサゾリル、及びイソキサゾリルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
「アラルキル」という用語は、アルキレン部分に結合しているアリール基を意味し、ここで、アリール及びアルキレンは上記で定義した通りである。例としては、ベンジル基が挙げられる。
【0102】
「IAST」は、単一成分の吸着等温線から混合成分の吸着等温線を予測するのに用いることができる、「理想吸着相溶液理論」を意味する。
【0103】
詳細な説明
本発明者らは、多様な他のガスを上回るCOに対する選択性を有するナノ細孔吸着剤である驚くべき特性を示すMOFを開発した。これは、ゲストCO分子と細孔表面の間の引力的な非共有結合の物理吸着接触と、迅速な拡散速度、頑健性、及びリサイクル性とを兼ね備えている。公知のMOF吸着剤は、1つ又は2つの他のガスを上回るCOに対する選択性を示し得るが、本発明のMOFが呈する選択性の幅は、並外れた予想外の特性である。
【0104】
1次元鎖
本発明のMOFは、金属-リンカーの繰り返し単位の接続から作られる規則的な拡張構造を備える。繰り返し単位は、有機リンカーを介して接続された金属カチオンを含む。各有機リンカーは、隣接する金属イオンに配位し及び接続して、本明細書では二次構造単位(SBU)とも呼ばれる1次元鎖を形成する、第1の部分を備える。MOFは、複数の二次構造単位(SBU)を備え、各SBUは、金属-リンカーの繰り返し単位の直鎖を備える。
【0105】
一例では、SBUの式はM(L)であり、式中、Mは、金属カチオンであり、Lは、隣接する金属イオンを連結する有機リンカー化合物である。この例では、2つの有機リンカーの第1の部分は、隣接する金属イオンと架橋する。第1の部分は、各金属カチオンの隣接する配位部位で配位できる。
【0106】
第1の部分は2つのドナー原子を備え、1つは隣接する金属イオンのそれぞれに配位するためのものである。第1の部分は、隣接する各金属カチオンへの1つのドナー原子の配位により、隣接する金属イオンと架橋する。一例では、第1の部分は、カルボキシレート基を備える。
【0107】
図1図4は、本発明の例示的なMOFである、MUF-16の構造を示し、ここでリンカーは5-アミノイソフタレートであり、金属はコバルト(II)である。八面体は、金属を表す(MUF-16の場合、これはCo(II)である)。図1は、MUF-16のSBUを示し、ここでSBU中の繰り返し単位は-[Mμ(OCRO)Mμ(OCRO)]-である(式中、Rは、有機リンカーの残りの部分を表す)。Co(II)カチオンは、2つの5-アミノイソフタレート(Haip)リンカーのμ-架橋カルボキシレート基により連結される。
【0108】
2次元層
第1のSBU中の各有機リンカーは、隣接するSBUの金属カチオンに配位するドナー原子を有する、第2の部分を備える。隣接するSBUへのドナー原子の配位は、SBUの2次元層を形成する。
【0109】
本明細書で例示されるMOFにおいて、第2の部分の官能基は、アミノ基である。
【0110】
図2は、MUF-16のSBUの2次元層の断面を示す。第1のSBU中のリンカーのアミノ基は、隣接するSBU中のCo(II)イオンに配位する。
【0111】
3次元骨格
3次元骨格構造は、2次元層の積み重ねにより形成される。隣接する層は、有機リンカーのH結合部分間のリンカー間水素結合相互作用を介して互いに接続される。
【0112】
第1の層に位置する1つのリンカーのH結合部分は、第1の層に隣接する第2の層に位置するリンカーのH結合部分と水素結合相互作用する。
【0113】
MUF-16では、H結合部分は、カルボン酸又はカルボキシレート基である。H結合部分はカルボキシレート基であるが、これらのいくつか又はすべては、プロトン化される。これらのH結合相互作用は、2次元層を3次元骨格へと連結する。
【0114】
図3は、MUF-16中の層間水素結合を示す。5-アミノイソフタレート(Haip)水素のカルボン酸基は、互いに結合して2次元層を3次元骨格へと接続する。
【0115】
図4のMUF-16の結晶軸及び視覚化を参照して、3次元骨格は、結晶軸の1つに沿うカルボキシル架橋金属イオンの1次元鎖(又はSBU)、一部は金属へのアミン配位により形成された結晶面を横切る隣接するSBUの2次元層、及びカルボン酸ブリッジを介した複数の2次元層の積み重ね、を備えるものとして説明できる。細孔が、隣接する2次元層間に形成される。細孔は、SBUと同軸である。
【0116】
細孔
MOFの多孔率は、ゲスト種が入るのに十分な断面直径を有する開口した細孔により定義される。細孔は、実質的に規則的なパターンで配置される。細孔の幾何学的形状は、金属-リンカー相互作用及びリンカー間相互作用(特に、リンカー間水素結合)により定義される。細孔は、3次元、2次元、又は1次元細孔であり得る。例えば、細孔は、線形の実質的に1次元のチャネル、或いは2次元又は3次元に延びる細孔の相互接続されたネットワークであり得る。一例では、細孔は線形チャネルである。
【0117】
ゲスト種は、MOFの細孔に入り、MOF上に吸着され得る。このようにして、MOFは、ガス又はガスの混合物を取り込む、貯蔵する、隔離する、及び/又は精製することができる。細孔内の分子の吸着は、MOFとゲスト種の間の相対的な立体的及び電子的相互作用に依存する。細孔の断面は、少なくとも部分的に、分子がMOFの細孔に入ることができるかどうかを決定する。結合などの好ましい電子的相互作用は、ゲスト種の吸着に対するMOFの親和性及び選択性に寄与する。好ましい電子的相互作用の例としては、ファンデルワールス相互作用、水素結合、双極子-双極子及びイオン-双極子相互作用が挙げられる。
【0118】
図3及び図4を参照して、MOFの細孔は、接続されたSBUの2次元層間に画定され、SBUと実質的に同軸である。このようにして、細孔は、部分的に層間距離により定義され、層間距離自体は、部分的にリンカー間結合相互作用により定義される。MUF-16の細孔は、断面が楕円形であり、層間のリンカー間結合により定義される長軸寸法を有する。骨格の単結晶X線回折(SCXRD)の構造特性評価は、MUF-16及びそのMn及びNi類縁体について、原子のファンデルワールス表面を説明する、断面積が約6.8×2.9Åの結晶軸に沿って延びる1次元チャネルを示す。
【0119】
細孔環境は、特定のゲスト種に対し選択的であり得る。したがって、MOFは、混合物から1種類の分子を吸着するために用いることができる。特定の化学種に対する選択性は、MOFが第2の化学種よりも第1の化学種と強く相互作用し、安定な結合相互作用をもたらすために生じる。したがって、ガス混合物中の第1の化学種の濃度が実質的に減少するように、標的化学種をガス混合物から捕獲する(例えば、分離する)ことができる。
【0120】
有機リンカー
実施例1で説明するように、本発明の例示的なリンカーは、5-アミノイソフタル酸(Haip)及びその負に帯電したアニオン(例えば、5-アミノイソフタレート、Haip-)である。5-アミノイソフタレート(Haip)に関して、第1の部分はカルボキシレート基であり、この場合、官能基の2つの酸素原子が、2つの金属カチオンを架橋するドナー原子である。金属/第1の部分結合の1次元伝播は式MLのSBUを形成する(図1参照)。第2の部分はアミノ基であり、この場合、官能基の窒素原子が、隣接するSBU中の金属カチオンに配位するドナー原子である。金属/第2の部分結合の伝播は、接続された隣接するSBU中の2次元層を形成する(図2参照)。水素結合部分は、カルボン酸官能基であり、この場合、カルボン酸基は、隣接する2次元層中のリンカーのカルボン酸官能基に水素結合する。MUF-16の隣接する2次元層中のカルボン酸間のH結合は、2次元層の伝播と直交する軸に沿った構造の伝播を可能にし、この場合、リンカー間相互作用は、カルボキシル-カルボキシルブリッジを含む。
【0121】
本発明のMOFにおける各有機リンカーは、3つの金属イオンに配位する。リンカーは、第1の部分のドナー原子を介して2つの金属イオンに配位し、リンカーは、第2の部分のドナー原子を介して別の金属イオンに配位する。各リンカーは、リンカー間相互作用を介して別のリンカーに結合する。
【0122】
金属カチオン
実施例1で説明するように、MOFは、Co2+、Mn2+、及びNi2+から選択された金属カチオンを用いて合成された。例示的なMOFの構造的特徴は、構造が、金属カチオンが置換されている場所で維持されることを示す。ガス吸着特性とCOの選択性も維持される。この発見に基づいて、金属カチオンの同一性は、COに対する骨格の選択性に不可欠であるとは考えられない。したがって、金属カチオンMは、Li、Na、K、RB、Cs、Be2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Sc3+、Sc2+、Sc、Y3+、Y2+、Y、Ti4+、Ti3+、Ti2+、Zr4+、Zr3+、Zr2+、Hf4+、Hf3+、V5+、V4+、V3+、V2+、Nb5+、Nb4+、Nb3+、Nb2+、Ta5+、Ta4+、Ta3+、Ta2+、Cr6+、Cr5+、Cr4+、Cr3+、Cr2+、Cr、Cr、Mo6+、Mo5+、Mo4+、Mo3+、Mo2+、Mo、Mo、W6+、W5+、W4+、W3+、W2+、W、W、Mn7+、Mn6+、Mn5+、Mn4+、Mn3+、Mn2+、Mn、Re、Re6+、Re5+、Re4+、Re3+、Re2+、Re、Re、Fe6+、Fe4+、Fe3+、Fe2+、Fe、Fe、Ru8+、Ru7+、Ru6+、Ru4+、Ru3+、Ru2+、Os8+、Os7+、Os6+、Os5+、Os4+、Os3+、Os2+、Os、Os、Co5+、Co4+、Co3+、Co2+、Co、Rh6+、Rh5+、Rh4+、Rh3+、Rh2+、Rh、Ir6+、Ir5+、Ir4+、Ir3+、Ir2+、Ir、Ir、Ni3+、Ni2+、Ni、Ni、Pd6+、Pd4+、Pd2+、Pd、Pd、Pt6+、Pt5+、Pt4+、Pt3+、Pt2+、Pt、Cu4+、Cu3+、Cu2+、Cu、Ag3+、Ag2+、Ag、Au5+、Au4+、Au3+、Au2+、Au、Zn2+、Zn、Zn、Cd2+、Cd+、Hg4+、Hg2+、Hg、B、Al3+、Al2+、Al、Ga3+、Ga2+、Ga、In3+、In2+、In1+、Tl3+、Tl、Si4+、Si3+、Si2+、Si、Ge4+、Ge3+、Ge2+、Ge、Ge、Sn4+、Sn2+、Pb4+、Pb2+、As5+、As3+、As2+、As、Sb5+、Sb3+、Bi5+、Bi3+、Te6+、Te5+、Te4+、Te2+、La3+、La2+、Ce4+、Ce3+、Ce2+、Pr4+、Pr3+、Pr2+、Nd3+、Nd2+、Sm3+、Sm2+、Eu3+、Eu2+、Gd3+、Gd2+、Gd、Tb4+、Tb3+、Tb2+、Tb、Db3+、Db2+、Ho3+、Er3+、Tm4+、Tm3+、Tm2+、Yb3+、Yb2+、Lu3+、及びこれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0123】
より具体的な例では、金属カチオンは、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Sc3+、Sc2+、Y3+、Y2+、Ti3+、Ti2+、V3+、V2+、Nb3+、Nb2+、Cr3+、Cr2+、Mo3+、Mo2+、Mn3+、Mn2+、Fe3+、Fe2+、Ru3+、Ru2+、Co3+、Co2+、Rh3+、Rh2+、Ni2+、Pd2+、Cu2+、Zn2+、Cd2+、b3+、Al3+、Ga3+、In3+、Tl3+、Si2+、Ge2+、Sn2+、As3+、As2+、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0124】
調製方法
本発明のMOFは、溶媒中で有機リンカーを金属イオンと組み合わせることにより調製され得る。好ましくは、MOFは、骨格の自己組織化を可能にする条件下で調製される。
【0125】
実施例1は、リンカーが5-アミノイソフタレート(Haip)であり、かつ金属イオンがコバルト(II)、マンガン(II)、及びニッケル(II)から選択される、本発明の例示的なMOF骨格の調製を説明する。リンカー及び金属イオンを、溶媒に溶解し、密閉容器中にて自生圧力下で加熱する。式[M(Haip)](M=Co、Mn、又はNi)を有する得られるMOFは、高収率で溶液から沈殿する。
【0126】
合成後そのままの形態では、MOFの細孔は吸蔵された溶媒(しばしば水)を含む場合がある。吸蔵された溶媒は、加熱すること、真空引きすること、又は乾燥空気の流れをパージすること、又は前述の方法の2つ以上の組み合わせにより、MOFの細孔から除去できる。
【0127】
結晶化度及びマクロ構造
実施例2を参照して、SCXRD及び粉末XRDは、MOF化合物が結晶であることを示す(表1及び表2参照)。
【0128】
図1図4に示すように、金属イオンは、6つの異なるリンカーから互いにトランスに配置される、4つのカルボン酸塩と2つのアミノドナーを有する八面体構造をとる。より詳細には、八面体構造を有するM(II)原子は、Haipリンカーからの架橋カルボキシレート基を通じて結晶b軸に沿って1D鎖に整列する。2つの隣接する鎖は、Haipリンカーにより2D層へと互いに連結される。各Haipリンカーの2つのカルボキシレート基の1つは、M(II)に配位し、もう1つは、水素結合のアクセプタ及びドナーとして作用する。
【0129】
Co(II)、Mn(II)、及びNi(II)骨格の粉末XRD(図5に示される)は、本発明のMOFの結晶構造を確認し、骨格が金属イオンの置換により維持されることをさらに確認する。
【0130】
吸着及び選択性
MOF骨格は、単原子及び二原子のガス、二酸化炭素、及びC1~C3炭化水素を含む、様々な流入ガスにアクセス可能である。実施例3及び表3を参照して、77Kで測定した窒素吸着等温線は、MUF-16、MUF-16(Mn)、及びMUF-16(Ni)についてそれぞれ215、209、及び238m/gのBET表面積を示した。0.11cm/gの総細孔容積が、3つの骨格すべてについて測定された。これらの値は、結晶座標から計算した幾何学的表面積及び細孔容積と同等である。
【0131】
本発明のMOFは、二酸化炭素の吸着において特に用途がある。本発明のMOFがCOをホストする容量はかなりのものであり、MUF-16とMUF-16(Ni)の両方は、1バールで2.13mmol/g(48cm/g)を吸収し、MUF-16(Mn)は、2.25mmol/g(50.5cm/g)吸着する。これは、1金属サイトあたりCOおよそ0.9分子に相当する。MUF-16、MUF-16(Mn)、及びMUF-16(Ni)についてのCO吸着等温線(図6~8)は、低圧で急上昇し、1バールに向かいほぼプラトーになり、これは、COゲストに対する骨格の強い親和性を示す。
【0132】
本発明のMOFの細孔は、293K及び1バールでほぼ飽和するので、COの取り込みは273Kでわずかにより高いだけであり、本発明のMOFを周囲温度以上で容易に使用できることを示している。
【0133】
電子的相互作用は、本質的に物理吸着性又は非共有結合性である。MUF-16(Mn)の細孔中のCOの位置及び配向のXRD分析(実施例2参照)は、CO分子の負に帯電した酸素原子の1つがそれぞれアミノ基及びフェニル基の水素原子とのN-H・・・O及びC-H・・・O相互作用に関与することを示唆する。同様に、CO分子の正に帯電した炭素原子は、非配位のカルボキシレート基の酸素原子と接触する。したがって、データは、COに対する選択性は、少なくとも部分的に、細孔壁と二酸化炭素のδ+及びδ-領域の間の相補的な電子的相互作用に起因することを示唆する。
【0134】
本発明のMOFは、ガスの混合物から二酸化炭素を優先的に吸着すると本明細書で示される。実施例3~実施例5を参照して、本発明のMOFによるCOの高い取り込みは、他のガスとは対照的である。図9(a)を参照して、H、Ar、N、CH、O、C、C、C、C、及びCの実験的な吸着等温線は、これらのガスのわずかな量だけが吸着されることを示した。例えば、および表6に示すように、MUF-16は、1バール及び293Kでそれぞれ1.32及び1.20cm/gのN及びCHを取り込み、それは、Cに対し5.35cm/gの、測定された吸着物の中での最高値に上昇する。
【0135】
本発明のMOFは、Nを上回るCOの選択的取り込みを有し、17.6~36.2の取り込み比を有する(表5参照)。MUF-16ついてのNを上回るCOの優先的な取り込みは、ベンチマークの物理吸着剤 [Cd2L(HO)]11と同等であり、SIFSIX-2-Cu-i12及びDICRO-3-Ni-i13などの材料を上回る。例えば、アミン官能基化骨格en-Mg-dobpdc14を含む、化学吸着によりCOを捕捉するいくつかの材料は、より高い取り込み比を示すが、このような化学吸着性の骨格は、取り込まれたCOを脱着するために大量のエネルギー入力を必要とし、したがって、多くのCO分離用途には適していない。
【0136】
MUF-16は、C2及びC3炭化水素よりも多くのCOを吸着し、293K及び1バールで9.0と15.9の間の取り込み比を有する(表6参照)。これは、特にゲストのπ電子とオープンメタルサイトの間で結合が生じる可能性があるときに不飽和炭化水素を優先する、典型的な物理吸着剤とは対照的である15
【0137】
単原子及び二原子のガスの低い取り込みは、それらの小さい分極率と小さい(又はゼロの)四重極モーメントの確立された関数であるが、より大きい(C1~C3)官能基化されていない炭化水素ゲストに対する親和性の低下は、注目に値する。理論に拘束されることを望まないが、本発明者らは、C2~C3炭化水素ゲストに対する親和性の低下は、炭化水素の末端の周りのゲストの正に帯電した領域に起因し、これは骨格細孔表面との反発相互作用につながると考えている。例えば、エチン、エテン、エタン、及びプロパンの末端での正の静電ポテンシャルは、COの末端の負の静電ポテンシャルとは対照的である。MUF-16におけるエチン(及び他の官能基化されていない炭化水素)の取り込みは、COの結合について結晶学的に観察される部位をエチン分子が占めると仮定して、エチンのδ+領域とMUF-16のδ+領域の間の相互作用、及び同様にエチンのδ-領域とMUF-16のδ-領域の間の反発相互作用に起因して生じる、比較的エネルギー的に好ましくない反発力により説明され得る。
【0138】
理論に拘束されることを望まないが、本発明者らは、本発明のMOFにおけるCOに対する親和性及び選択性は、第1に、骨格細孔の寸法がCO分子のサイズと一致し、これが、これらの分子が複数の非共有接触で包まれることを可能にすることに起因すると考えている。第2に、COは、正に帯電した中心炭素原子に比べて、その末端の酸素原子に負の電位をもつ。COはしたがって、細孔表面とのより好ましい相互作用を有する。
【0139】
特定の炭化水素、単原子及び二原子のガスの存在下でのCOに対する本発明のMOFの選択性が本明細書で例示されているが、本発明者らは、本発明のMOFが同様の特性をもつゲスト分子に対し同様の吸着特性を有することは、妥当な推論であると考えている。例としては、二硫化炭素、亜酸化窒素、及び官能基化されたC1~C3炭化水素(シアン化水素、アセトニトリル、C1~C3アルコール、C1~C3アルデヒド、C1~C3ニトリル、C1~C3ハロゲン化アルキル化物、及びシアノゲンを含む)が挙げられる。MOFが、官能基化されていない炭化水素、単原子及び二原子のガスの存在下でこれらの化合物に対し同様に選択的であることは、妥当な推論である。
【0140】
本明細書で例示される官能基化されていない炭化水素及び単原子及び二原子のガスに対する本発明のMOFの低い親和性は、二酸化炭素に加えて、MOFが、官能基化されていない炭化水素、単原子及び二原子のガスをさらに含む混合物からの小さい極性の及び分極性の化合物に対しても選択的であることを意味する。したがって、本発明者らは、MOFが、官能基化されていない炭化水素を含む混合物から、二酸化炭素、二硫化炭素、亜酸化窒素、水、硫化水素、シアン化水素、シアノゲン、及び官能基化されたC1~C3炭化水素を選択的に吸着すると考えている。
【0141】
本発明のMOFの選択性のメカニズムが分子ふるい作用(すなわちサイズ排除)に依存する可能性を除外するために、本発明者らは、195Kでのガス吸着等温線を測定し、これは、MUF-16がかなりの量のCを取り込むことができることを明らかにした。図6は、MUF-16についてのCO、C、C、及びCHの体積吸着及び脱着等温線を示し、各分子が細孔ネットワークに自由に入ることができることを明確に示している。周囲温度での本発明のMOFの体積吸着/脱着等温線を示す図7図9は、エチン、エテン、エタン、メタン、及び窒素の取り込みが周囲温度で低いことを示す。図9(a)は、酸素、アルゴン、水素、プロパン、及びプロペンの取り込みが低いことをさらに示す。MUF-16へのゲスト分子CO、N、CH、C、C、Cの吸着速度を、MOFの排気されたサンプルを、1バールで測定したそのガスの総吸着量に等しい量のガスに曝すことにより、測定した。結果が図10に示され(qは、時間tでの取り込み量であり、qは、最終的な取り込み量である)、これは、測定されたすべてのガスが1分以内に平衡取り込みに達し、取り込み速度がすべてのガスで類似していることを示す。したがって、動力学ではなく熱力学効果が、MUF-16についてのこれらのガスの親和性の違いに最も決定的な影響を与える。
【0142】
IAST-ガス混合物
本発明のMOFについての取り込み比は、優先的な親和性の優れた指標を提供するが、ガス混合物の特定の成分に対する選択性は、理想吸着相溶液理論(IAST)計算により定量化できる。本発明のMOFについてのIAST計算は、N、H、特定のC1~C3炭化水素、及びそれらの混合物の存在下でのCOに対する例外的な選択性を示す。
【0143】
実施例4及び表6を参照して、本発明のMOFは、N、H、CH、C、C、C、C、及びCの存在下でCOに対し高い選択性を有する(図9(b)も参照)。本明細書に記載のIASTデータは、COが水素、窒素、及び特定のC1~C3炭化水素の混合物から分離できることを示すので、O2及びArの取り込みデータ(図9(a)参照)に照らして、本発明のMOFは、他のガスの存在下でCOに対し非常に選択的であると予想することは妥当である。
【0144】
図11図24は、MUF-16の混合ガスの等温線と、ガスの組み合わせに対するIASTにより予測された選択性を示す。IAST計算は、本発明のMOFが、1バールを超える圧力でH、N、及び官能基化されていないC1~C3炭化水素の存在下で、依然としてCOに対し非常に選択的であることを示す。例えば、図13は、本発明のMOFが50バール(5,000KPa)のメタンの存在下で依然としてCOに対し非常に選択的であることを示す、取り込みデータとIAST計算の両方を示す。
【0145】
破過試験
本明細書で説明するIASTデータは、実際の動作条件下でのMOFの性能を示す破過測定からの実験データにより裏付けられる。本発明のMOFを受け入れるためのチャンバを備える装置を、組み立てた。この装置は、MOFが特定の圧力及び温度でガスの混合物に曝されることを可能にした。MOFの圧力及び温度は、温度コントローラ及び圧力コントローラにより変更可能である。破過装置の具体的な詳細は、実施例5で説明され、図25に示される。
【0146】
破過分離測定は、MUF-16が、H、N、及び官能基化されていないC1~C3炭化水素の混合物を含む混合物からCOを選択的に吸着することを示した。ガス混合物からのCOの分離についての破過曲線を、図26図37に示す。破過データを、表9に示す。データは、MUF-16が、50/50、15/85、1/99、及び0.4/99.6の比率のCO/N混合物について、COを効率よく保持し、純粋なN2を送達したことを示す。同様に、CO/CHの15/85、CO/Cの5/95、CO/Cの50/50、及びCO/Cの50/50の混合物の破過データが示すように、COが保持され、純粋な炭化水素が炭化水素/CO混合物から送達される。
【0147】
図35に示すシミュレーションの破過プロファイルは、MUF-16がCから微量のCO(すなわち、エチンストリーム中の0.1%のCO)を除去して高純度Cストリームを生成できることを実証することにより、実験結果を拡張する。
【0148】
図36に示すシミュレーションの破過プロファイルは、高圧(9バール)でのCO/CH混合物からのCOの分離をモデル化し、COがガスの流れからきれいに除去されることを示す。COに対する動的取り込み能力は、1バールで測定したものよりも9バールでより高い。天然ガス処理に関連する圧力(約40~60バール)へのこれらのデータの外挿は、MUF-16が生天然ガスストリームからCOを効率よく隔離できることを予測する。
【0149】
破過試験は、MUF-16が動的条件下で優れた吸着剤であることを示す。MOF-16のこれらの破過測定から導出されるCOについての動的取り込み能力は、対応する分圧での平衡取り込み能力とほぼ同一である(表9参照)。これは、本発明のMOFが、動的条件下で優れた吸着剤であることを示し、これは、(i)2つのガスに対する異なる親和性、及び(ii)吸着されていないNの出現の短い時間遅延とそのほぼ垂直な溶離プロファイル、の組み合わせに由来する。
【0150】
再生
本発明のMOFは、COの取り込みのために十分に再生及びリサイクルすることができる。破過試験中に、MUF-16の完全なCO脱着が、MUF-16を動的真空下におくか又は室温及び1バールの乾燥空気の流れ(CO含有量<200ppm)でパージすることにより達成された。吸着床からの溶離液中のCOプロファイルを測定して、COが25分以内に放出されることを示した。
【0151】
代替的に、吸着床は、室温で約15~20分間の動的真空(ターボ分子ポンプ)下で再生させることもできる。
【0152】
代替的に、吸着床は、高温で再生することもできる。
【0153】
図37は、MUF-16のリサイクル可能性を示し、MOFは、CO/Nの分離のための200回の破過再生サイクル後に、その分離活性において実質的に変化を示さない。その高い安定性と並んで、MUF-16は、この期間にわたり、その分離性能及び取り込み能力を維持する。
【0154】
安定性/頑健性
本発明のMOFは、並外れた耐水性及び熱安定性も有する。図38は、MUF-16についてCOの取り込みが、空気に6か月間曝される、4サイクル後に、及び24時間水に浸漬された後に、実質的に一定のままであることを示す。図39に示すように、MUF-16サンプルのPXRDは、MOF構造が、真空下130℃での活性化後に、等温線測定後に、破過実験後に、相対湿度>80%の空気に少なくとも12か月間曝した後に、及び水に2週間浸漬した後に、変化しないことを示す。MUF-16(Mn)及びMUF-16(Ni)は、真空で、水、湿度の存在下で、130℃の温度で同様の安定性を有する。
【0155】
熱重量分析は、MUF-16、及びそのMnとNi類縁体の、窒素下で330℃を超える熱安定性を示した(図40)。
【0156】
MOFがガス混合物からCOを捕獲する能力は、ガス混合物中の水蒸気の存在による影響を受けない。図41は、水蒸気なしの同じガス混合物と比較した、水蒸気(相対湿度82%)の存在下での27℃でのCO及びN(15/85)の混合物の破過曲線を示し、MUF-16が、水の存在下でCOを効率よく保持しかつ純粋なNを送達することを示す。
【0157】
ペレット化/他の材料中への組み込み
他の材料中への本発明のMOFの組み込みは、MOFの取り扱いを改善し、それらのガス捕獲特性の潜在的な用途を広げる。これらの成分は、ポリマー、生体分子、樹脂、セラミックス、炭素(例えば活性炭)、及び無機酸化物などの材料を含み得るが、これらに限定されない。複合材料は、例えば、ペレット、膜、シート、又はモノリスの形態をとることができる。例えば、MOFは、さらなる成分と組み合わされて、ガス分離膜などの膜を形成し得る。
【0158】
MOFを典型的な大規模ガス分離プロセスにより適合するようにするための追加の手段として、実施例8は、複合材中への本発明のMOFの組み込みを説明する。MUF-16を、特定の量のポリフッ化ビニリデン(PVDF)と組み合わせて複合材ペレットを作製した。MUF-16を含むペレットのPXRDプロファイルは、MUF-16のプロファイルと実質的に同じであり、材料の結晶構造が分子スケールで維持されることを示す(図42参照)。ペレットは、MUF-16と同じ吸着プロファイルを呈し、ガス吸着特性が変化していないことを示す。例えば、図43は、MUF-16/PVDFが、MUF-16と比較して同じCO吸着等温線を呈することを示す(PVDFペレットの能力の観察された低下は、非吸着性の5wt%のPVDFから生じる)。ペレットは、図44に示すように、MUF-16で観察された安定性及び頑健性を維持し、これは、ペレットが、ペレットを沸騰したお湯に浸した後であってもCO/N分離性能を保持することを示す。
【0159】
実施例
すべての出発化合物及び溶媒は、特に断りのない限り、さらなる精製なしに商業的供給元から受け取ったときのままの状態で使用した。
【0160】
実施例1:MUF-16、MUF-16(Mn)、及びMUF-16(Ni)の調製
【化3】
【0161】
MUF-16の合成:
Co(OAc)・4HO(0.625g、2.5mmol)、5-アミノイソフタル酸(1.8g、10mmol)、メタノール(80mL)、及び水(5mL)の混合物を、密封された1000mLのショットボトルの中で20分間超音波にかけ、これを次いで、予熱したオーブンの中で、70℃で2時間、自生圧力下で加熱した。
【0162】
オーブンを室温に冷却した後に、得られた桃色の結晶を、母液をデカントすることにより単離し、次いで、メタノールで数回洗浄し、130℃で20時間、真空乾燥させた。収率:0.98g(コバルトに基づき94%)のゲストフリーMUF-16。
【0163】
MUF-16の代替的な合成:
Co(OAc)・4HO(5.0g、20mmol)、5-アミノイソフタル酸(12g、68mmol)、メタノール(490mL)、及び水(40mL)の混合物を、ガラスビーズが部分的に(約20%)事前に充填された、密封された2000mLのショットボトルの中で20分間超音波にかけた。ボトルを次いで、予熱したオーブンの中で、70℃で5時間、自生圧力下で加熱した。オーブンを室温に冷却した後に、得られた桃色の結晶を、母液をデカントすることにより単離し、メタノールで数回洗浄し、130℃で20時間、真空乾燥させた。収率:7.8g(コバルトに基づき92%)のゲストフリーMUF-16。
【0164】
MUF-16(Mn)及びMUF-16(Ni)の合成:
【化4】
【化5】
【0165】
M(ClO・6HO(式中、M=Mn又はNi)(1.25mmol)、5-アミノイソフタル酸(2.50mmol、0.45g)、及びNH4NO3(2.50mmol、0.20g)と、CHCN(20mL)及びCHOH(15mL)の混合溶媒の混合物を、20分間超音波にかけ、100mLのテフロン加工のステンレス鋼製反応容器に密封し、160℃で2日間、自生圧力下で加熱した。オーブンを室温に冷却した後に、得られた茶色がかった結晶を、母液をデカントすることにより単離し、メタノールで数回洗浄し、130℃で20時間、真空乾燥させた。収率:0.21g(Mnに基づき40%)のゲストフリーMUF-16(Mn)、及び0.28g(Niに基づき53%)のゲストフリーMUF-16(Ni)であった。
【0166】
実施例2:構造特性評価
MUF-16及びそのMn及びNi類縁体の単結晶X線回折特性評価を、MicroMax MM007回転アノードジェネレータ(Cuα放射線、1.54180Å)、高フラックスOsmic多層ミラー光学系、及びSCXRD及びPXRDデータを収集するために用いた湾曲型イメージングプレート検出器を備えたRigaku Spider回折計を使用して、行った。
【0167】
MOF結晶を、メタノールで洗浄後に分析した。室温でのデータ収集は、低温でのデータ収集よりも優れたリファインメント統計をもたらした。すべての原子が電子密度差マップで見つかった。
【0168】
すべての原子を、水素原子と細孔内の水分子の特定の原子を除いて、異方的に精密化した。溶媒マスクを、MUF-16(Ni)について計算し、124個の電子が、単位胞あたり1ボイド308Åの体積で見つかった。これは、単位胞あたり120個の電子を占める、非対称単位あたり3つの無秩序な水分子の存在と一致する。
【0169】
SCXRDデータを、FS Process Rigaku(リガク社、東京、日本、1996年製)で統合、スケーリング、及び平均した。SHELX16を、OLEX17の下で、構造解析及びリファインメントのために使用した。
【0170】
PXRD測定の場合、特に断りのない限り、サンプルを、測定前及び測定の間溶媒で湿った状態に保った。デバイリングの2次元画像を2DPと統合して2θ対Iの回折図を得た。データを、メタノールで数回洗浄された、新たに調製したMOFサンプルから得た。予測される粉末パターンを、Mercury(商標)を使用して単結晶構造から生成した。
【0171】
表1:MUF-16、MUF-16(Mn)、及びMUF-16(Ni)についての結晶データと構造リファインメントの詳細
【表1】
【0172】
本発明のMOFを、真空下とCO充填時(約1.1バール)との両方でのガラスキャピラリのSCXRDで特性評価した。真空下及びCO充填時のMUF-16(Mn)のSCXRDデータを、表2に示す。
【0173】
表2:ゲストフリー及びCO装填MUF-16(Mn)のSCXRDデータとリファインメントの詳細
【表2】
【0174】
実施例3:取り込み-吸着/脱着等温線
特に明記しない限り、CO吸着等温線を、293Kで収集した。等温線は、低圧で急上昇し、1バールに向かいほぼプラトーになり、これは、COゲストに対する骨格の強い親和性を示す。
【0175】
合成後そのままのサンプルを、無水メタノールで数回洗浄し、50~1000mgを、事前に乾燥させて秤量したサンプルチューブに移した。大量のサンプルを使用して吸着の弱いガスの等温線を測定して、信頼できる結果を保証した。サンプルを活性化するために、それを、ターボ分子ポンプによる動的真空下で10℃/分の速度で130℃の温度に20時間加熱した。
【0176】
77KでのCO吸着等温線は、MUF-16の永続的な多孔性を確立し、215m/gのBET表面積と0.11cm/gの細孔容積を示した(表3)18。MUF-16(Mn)及びMUF-16(Ni)についての同様の結果を、表3に示す。これらの値は、結晶座標から計算した約310m/gの幾何学的表面積及び0.1cm/gの細孔容積と一致する。
【0177】
COの等量吸着熱(Qst)を、ビリアル法の実施により計算した19。ゼロカバレッジでの等量吸着熱(Qst)は、およそ33~37KJ/molであると計算され(表5参照)、吸着中のネットワーク構造(消費エネルギー)の段階的な拡張と一致する高負荷で増加する。
【0178】
表3:MUF-16ファミリーの計算された特性と実験で測定された特性
【表3】
【0179】
表4:MUF-16の293K及び1バールでのCOの取り込み容量
【表4】
【0180】
MUF-16(293K,1バール)についてのCO/N/CH分離に関連するメトリクス
【表5】
【0181】
実施例4:IAST選択性
293KでのCO/C、CO/C、CO/C、CO/N、CO/CH、及びCO/Hの様々な混合物についての混合ガス吸着等温線とガス選択性を、Myers及びPrausnitz20により提案された理想吸着相溶液理論(IAST)に基づき計算した。pyIASTパッケージを使用してIAST計算を行った21。二成分混合ガスの分離に向けたMUF-16の収着性能を予測するために、単一成分の吸着等温線を、以下のように最初にDual Site Langmuir又はDual Site Langmuir Freundlichモデルに当てはめた:
【数1】
【数2】
【0182】
式中、qは、ガスの取り込み量であり、Pは、平衡圧力であり、q、b、t、q、b、及びtは、定数である。これらのパラメータをその後、IAST計算を実行するために使用した。
【0183】
MUF-16ファミリーのガス吸着データとIASTで計算された選択性のまとめを、表6に示す。
【0184】
表6:1バール及び293KでのMUF-16ファミリーについてのガス吸着データとIASTで計算された選択性のまとめ
【表6】
【0185】
実施例5:破過試験
本発明のMOFを用いた動的条件下でのCO分離の実現可能性を、図25に示される装置に係る破過装置の吸着床を使用して調査した。
【0186】
典型的な破過実験において、活性化されたMUF-16(0.9g)を、吸着カラム(直径6.4mm×長さ11cm)に入れて固定床を形成した。吸着剤を、高真空下130℃で7時間活性化させた後、カラムを、20℃に冷却しながらさらに3時間真空下においた。カラムを次いで、破過実験の前に、1.1バールで20mLN/分のHeガスフローで1時間パージした。
【0187】
様々な比率のCO/N、CO/CH、CO/H、及びCO/CH+C+Cのガス混合物を、1.1バール(CO/CH及びCO/CH+C+Cについては9バール)及び20℃でカラムに導入した。
【0188】
6mL/分のフィード流量を、設定した(CO/Nの0.4/99.6の混合物については10mL/分、CO/Cの5/95混合物については6.85mLN/分)。動作圧力を、背圧レギュレータで1.1又は9バールに制御した。フィード中のHeの流量を、特に明記しない限りすべての実験で2mLN/分で一定に保った。出口組成を、SRS UGA200質量分析計により継続的に監視した。COを、その濃度が600ppmvに達したときにカラムから破過したとみなした。
【0189】
吸着物(主としてCO)を、周囲温度(20℃)及び1.1バールで20mLN/分の流量で乾燥空気をパージすることによりカラムから除去して、吸着剤を再生した。吸着床からの流出物を、質量分析により監視して、すべてのCOが、およそ25分間にわたり20℃で除去されたことを示し、40、60、80、又は130℃ではCOのさらなる損失が観察されなかった。
【0190】
実験破過分離試験結果を、表9にまとめる。
シミュレーションの破過実験を行って、微量濃度などの、低CO濃度での分離を調査した。最初に、シミュレーションの破過曲線に用いられる物質移動係数を、実験破過曲線に基づいて経験的に調整した。これは、シミュレーションの破過曲線と実験破過曲線との一致をもたらした。この物質移動係数を使用して、破過曲線を、1.1バール及び293Kでの0.1/99.9のCO/C2炭化水素の供給組成について予測した。図35は、シミュレートされた0.1/99.9のCO/Cの破過曲線を示す。C及びCについてシミュレートされた破過曲線は、実質的に同一である。これらの計算は、MUF-16がC2炭化水素から微量のCOを除去できることを明らかにした。
【0191】
破過曲線のシミュレーションを、以前に報告された方法22を用いて実行した。物質移動係数(k)の値を、予測された破過曲線の急勾配を実験曲線と一致するように経験的に調整することにより得た。このようにして調整された物質移動係数を後で、他のフィード混合物及び動作圧力の破過曲線を予測するために用いた。吸着カラムのパラメータとフィードの特性評価のまとめを、表7に提示する。CO/C2炭化水素についての破過曲線のシミュレーションを、上記の方法を用いて実行した。吸着カラムのパラメータとフィードの特性評価のまとめを、表8に提示する。
【0192】
MUF-16のシミュレーションに用いた吸着カラムのパラメータとフィードの特性評価
【表7】
【0193】
MUF-16のシミュレーションに用いた吸着カラムのパラメータとフィードの特性評価
【表8】
【0194】
実施例6:吸着剤の再生
実施例5で使用した吸着床をその後、空気流でパージすることにより再生し、破過実験を、繰り返した。図37に示すように、破過曲線は、CO/Nの15/85のガス混合物(6mL/分)への200回の暴露/パージサイクル後に実質的に変化しなかった。
【0195】
表9:MUF-16吸着床を用いる実験破過試験についての入口ガスフィードストリーム、出口組成、及び関連するデータのまとめ
【表9】
【0196】
実施例7:安定性
本発明のMOFのエージング実験を、以下のように行った:合成後そのままのサンプルを、メタノールで数回洗浄した後に、真空下130℃での活性化後に、等温線測定及び破過測定の後に(実施例3及び実施例5参照)、相対湿度>80%の空気に10か月間曝した後に、及び水に2週間浸漬した後に、PXRDで分析した。結果を図39に示す。
【0197】
熱重量分析測定を、以下のように行った:新たに調製したMOFサンプルを、メタノールで洗浄し、次いで真空下130℃で10時間活性化させた。サンプルを、空気に1時間曝し、次いでアルミニウム製のサンプルパンに移し、次いでTGA測定を、5℃/分の加熱速度にてNフローの下で開始した。MUF-16、MUF-16(Mn)、及びMUF-16(Ni)についての熱重量分析の結果を、図40に示す。
【0198】
PXRD及び等温線測定を、本明細書に記載のパラメータに従い行った。
【0199】
実施例8:ペレット化
MUF-16を、以下の方法に従いバインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用いてペレットに組み込んだ:
1.MUF-16(約0.5g)を、乳鉢と乳棒を使用して穏やかに粉砕した。
2.粉砕したサンプルを20mLのバイアルに移し、0.5mLのDMFを加えた。粘稠な懸濁液を、30分間超音波にかけた後に得た。懸濁液を、さらに30分間攪拌した。
3.PVDF粉末(約50mg)を、1時間かけて徐々に加えて、粘稠なペーストを作製した。
4.ペーストを、スパチュラを使用してプラスチックシリンジに移し、それをスライドガラス上に1本の細いヌードル状に押し出した。
5.ヌードルを、小さいペレットに切り、120℃で4時間、真空乾燥させた。
***
【0200】
本明細書で説明及び特許請求される発明は、本発明の概要に記載又は説明又は言及されるものを含むがこれらに限定されない多くの属性及び実施形態を有する。これは包括的であることを意図するものではなく、本明細書で説明及び特許請求される発明は、限定ではなく例示のみを目的として含まれる本発明の概要で識別される特徴又は例に限定されない。
【0201】
本発明は例として説明されているが、特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱することなく、変形及び修正を行うことができることを理解されたい。さらに、特定の特徴の公知の均等物が存在する場合、そのような均等物は、本明細書で具体的に言及されているかのように組み込まれる。本明細書に記載の特定の組成及び方法は、好ましい例の代表的及び例示的なものであり、本発明の範囲に対する制限を意図したものではない。他の態様及び例は、本明細書を検討する際に当業者が思いつき、特許請求の範囲によって定義される本発明の精神内に含まれる。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書で開示される本発明に対して様々な置換え及び修正を行うことができることは当業者にはすぐにわかるであろう。本明細書に例示的に記載された本発明は、不可欠であるとして具体的に開示されていない1つ又は複数の要素或いは1つ又は複数の制限がない状態で適切に実施することができる。したがって、例えば、本明細書で説明される又は用いられる各場合において、本発明の実施形態又は実施例において、「含む、備える」、「本質的に~からなる」、及び「~からなる」という用語のいずれも、本明細書での他の2つの用語のいずれかに置き換えることができる。また、「備えている」、「含んでいる」、「含有する」などの用語は、広く制限なく読まれるべきである。本明細書に例示的に記載されるアッセイ及び方法は、異なるステップの順序で適切に実施することができ、それらは、本明細書又は請求項に示されるステップの順序に必ずしも限定されない。さらに、本明細書及び付属の請求項で用いられる又は説明される場合の、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上他の意味に明白に規定される場合を除き、複数形での言及を含む。いかなる状況においても、この特許は、本明細書に具体的に開示された特定の実施例又は実施形態又は方法に限定されると解釈されてはならない。
【0202】
採用されている用語及び表現は、限定ではなく説明する用語として用いられ、そのような用語及び表現を使用して示され説明された特徴又はその一部の均等物を除外する意図はないが、特許請求される本発明の範囲内で種々の修正が可能であると認識される。したがって、本発明は、好ましい実施形態及び随意的な特徴によって具体的に開示されているが、本明細書で開示された概念の修正及び変形が当業者によってなされてよく、そのような修正及び変形は、本明細書で説明され付属の請求項によって定義される本発明の範囲内にあると考えられることが理解されるであろう。
【0203】
本発明は、本明細書で広く一般的に説明されてきた。一般的な開示に含まれるより狭い種及び下位概念のグループのそれぞれも本発明の一部をなす。これは、削除された材料が本明細書に具体的に列挙されているかどうかに関係なく、その概念から主題を削除する但し書き又は否定的な限定を有する本発明の一般的な説明を含む。他の実施形態は、以下の請求項内にある。
【0204】
【表10】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44