(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】船舶、および持ち上げ手段を使用して船舶の甲板から細長い要素を上向きにするための装置
(51)【国際特許分類】
B63B 25/28 20060101AFI20240422BHJP
B63B 27/00 20060101ALI20240422BHJP
B63B 27/10 20060101ALI20240422BHJP
B66C 1/44 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
B63B25/28
B63B27/00 D
B63B27/10 A
B66C1/44 K
(21)【出願番号】P 2021535805
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2019086752
(87)【国際公開番号】W WO2020128016
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-11-14
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(73)【特許権者】
【識別番号】520282638
【氏名又は名称】ディーム・オフショア・ベーエー・エヌ・ヴェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ケネス・ジェラルド・ファンニューウェンハイセ
(72)【発明者】
【氏名】ディーター・ヴィム・ヤン・ラバウト
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02886722(EP,A1)
【文献】国際公開第2018/117846(WO,A1)
【文献】特開2013-029101(JP,A)
【文献】特開2014-015311(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0126767(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 25/28
B63B 27/00
B63B 27/10
B66C 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶であって、ある位置に設けられた持ち上げ手段と、前記持ち上げ手段を使用して前記船舶の甲板から細長い要素を上向きにするための装置と、を含み、前記装置は、
相互に連結され、互いに平行に延び、横になった位置で複数の細長い要素のうちのある細長い要素を支持するようにそれぞれ構成された複数の支持構造体であって、各支持構造体は、この目的で、2つの支持部であって、前記支持構造体の長手方向に相互距離を置いて設置され、前記甲板に接続され、前記支持構造体内に提供された1つの細長い要素の周辺部を支持するように構成された、2つの支持部を含む、支持構造体と、
前記複数の支持構造体を、前記持ち上げ手段の前記ある位置に向かってまたは前記持ち上げ手段の前記ある位置から離れるように、まとめて、前記甲板に平行に、前記支持構造体の前記長手方向に対して実質的に垂直に延びる方向に転置させ、それによって前記支持構造体のうちの1つに提供された細長い要素を、前記持ち上げ手段の届く範囲内で動かすことを可能にするように構成された、転置手段と、
を含み、
前記装置の前記複数の支持構造体のうちの少なくとも1つの支持構造体は、上向けツールをさらに含み、前記上向けツールは、前記船舶の縁部に平行に延びる軸の周りで回動するように、前記少なくとも1つの支持構造体に接続され、前記少なくとも1つの支持構造体内に受容された細長い要素を、当該細長い要素が前記持ち上げ手段により上向きにされるときに支持するように構成され、前記上向けツールは前記軸の周りで回転される、船舶。
【請求項2】
前記転置手段は、前記支持構造体を前記持ち上げ手段の方向に転置させるように構成される、請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
要素が前記支持部内に存在しない、無負荷状態にある支持構造体の前記支持部は、前記甲板に対して垂直に延びる軸の周りで回転可能である、請求項1または2に記載の船舶。
【請求項4】
前記装置は、支持構造体の積み重ねを含み、支持構造体の前記支持部は、前記積み重ねにおける別の支持構造体の支持部の上に位置する、請求項1から3のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項5】
前記回転可能な支持部を含む前記支持構造体は、その他の支持構造体に比べて前記持ち上げ手段に最も近接して位置する、請求項3に記載の船舶。
【請求項6】
前記上向けツールを含む前記支持構造体は、その他の支持構造体に比べて前記持ち上げ手段に2番目に近接して位置する、請求項1から5のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項7】
前記支持構造体の積み重ねは、その他の支持構造体に比べて前記持ち上げ手段から最も遠くに位置する、請求項4に記載の船舶。
【請求項8】
連結される支持構造体の数は、合計で、少なくとも3つで
ある、請求項1から7のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項9】
前記支持構造体は、前記甲板に接続された前記支持構造体の支持部の連結によって相互に連結される、請求項1から8のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項10】
前記甲板に接続された前記支持構造体の前記支持部は、前記船舶の
前記縁部に実質的に平行に延びる線に沿って延在する、請求項1から9のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項11】
前記支持部は、左舷側および右舷側に配置された支持部を含む、請求項10に記載の船舶。
【請求項12】
前記転置手段は、前記甲板に接続されたガイドを含み、前記支持構造体は、前記ガイドの上を、前記支持構造体の前記長手方向に対して垂直に延びる前記方向にスライドし得る、請求項1から11のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項13】
支持部の支持表面は、前記支持構造体内に受容された要素の周辺部に接続されるように、湾曲している、請求項1から12のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の船舶を利用して、持ち上げ手段を使用して船舶の甲板から細長い要素を上向きにするための方法であって、複数の細長い要素が、相互に連結された細長い支持構造体によって前記甲板上で横になった位置で支持され、前記細長い支持構造体は、互いに平行に延びており、それぞれが、2つの支持部であって、前記支持構造体の長手方向に相互距離を置いて設置され、前記甲板に接続され、前記支持構造体内に提供された要素の周辺部を支持するように構成された、2つの支持部を含み、前記支持構造体は、前記持ち上げ手段の前記ある位置に向かって、まとめて、前記甲板に平行に転置されて、持ち上げられる要素を、前記持ち上げ手段の届く範囲内で動かし、支持構造体は、前記船舶の縁部に平行に延びる軸の周りで回動するように前記船舶に接続された上向けツールをさらに含み、当該支持構造体内に受容された細長い要素は、当該要素が前記持ち上げ手段により上向きにされるときに前記上向けツールによって支持され、前記上向けツールは前記軸の周りで回転される、方法。
【請求項15】
前記支持構造体は、前記支持構造体の前記長手方向に対して実質的に垂直に延びる方向に転置される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記支持構造体は、前記持ち上げ手段の方向に転置される、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
要素が前記支持部内に存在しない、無負荷状態にある支持構造体の前記支持部は、前記甲板に対して垂直に延びる軸の周りで回転される、請求項14から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
要素は、支持構造体の積み重ね内に受容され、支持構造体の前記支持部は、前記積み重ねにおける別の支持構造体の支持部の上に位置する、請求項14から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
回転される前記支持部は、その他の支持構造体に比べて前記持ち上げ手段に最も近接して位置する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記上向けツールを含む前記支持構造体は、その他の支持構造体に比べて前記持ち上げ手段に2番目に近接して位置する、請求項14から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記支持構造体の積み重ねは、その他の支持構造体に比べて前記持ち上げ手段から最も遠くに位置する、請求項18から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記支持構造体は、前記甲板に接続されたガイドの上を、前記支持構造体の前記長手方向に対して垂直に延びる前記方向にスライドさせられる、請求項14から21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶、および持ち上げ手段を使用して船舶の甲板から、細長い要素、例えば中空の管状要素を上向きにするための装置に関する。本発明は、船舶の甲板上で横になった位置でいくつかの細長い要素を支持するための装置にも関する。本発明は、持ち上げ手段を使用して船舶の甲板から細長い要素を上向きにするため、かつ船舶の甲板上に設けられた持ち上げ手段の届く範囲内で、持ち上げ手段によって持ち上げられる要素を移動させるための方法にさらに関する。持ち上げ手段の届く範囲は、持ち上げ手段の回転点から計算された、最小および最大の距離または半径によって境界をつけられる。
【0002】
本発明を、風力タービンの沖合での設置の観点から、以下で説明する。風力タービンへの言及は、本発明が、そのような風力タービンの状況での使用に限定されることを意味するものではない。装置および方法は、任意の細長い要素であって、船舶の甲板上で支持されなければならず、オプションとして海上で横になった位置で輸送されなければならず、かつ、いったん現場に着いたら、上向きにされなければならない、任意の細長い要素に原則として適用され得る。
【背景技術】
【0003】
沖合の風力タービンは、一般的に、海底に係留される支持構造体上に設置される。支持構造体は、海底から、水面より上の位置までの距離を埋め、種々の方法で具体化され得る。よって、支持構造体は、単一のパイル(モノパイル)を含むか、または、ジャケットとも呼ばれる格子構造体として具体化され得る。支持構造体は、例えば適切な基礎を海底に配置することによって、海底に係留され得る。
【0004】
効率上の理由から、モノパイルが上向きにされ水中に入れられなければならない沖合の場所まで、1つの船舶でできるだけ多くのモノパイルを輸送できることが重要である。しかしながら、モノパイルは、相当の長さを有する中空の管状構造体であり、船舶上のスペースが制限される。
【0005】
モノパイルを横になった位置で整然と輸送可能とするために、船舶の甲板は、互いに平行に延びるいくつかの細長い支持構造体を含む装置を備えることができる。各支持構造体は、モノパイルの周辺壁部とほぼ同じ形状を有する支持表面であって、モノパイルが支持構造体内に受容されると周辺部を支持する、支持表面を備える。各モノパイルまたは各細長い要素は、概して、ここで既知の手段により支持構造体に固定される。
【0006】
特許文献1は、船舶の甲板から、細長い要素、この場合は沖合の基礎を上向きにするための装置および方法を説明している。基礎は、支持構造体内に受容され、支持構造体は、支持構造体の長手方向に相互距離を置いて設置される2つの支持部であって、甲板に回動可能にさらに接続される、2つの支持部を含む。転置手段も記載されるが、これら転置手段は、支持構造体を、持ち上げ手段の位置に対して、まとめて、甲板に平行に転置させるように構成されていない。
【0007】
特許文献2は、同様に、持ち上げ手段を使用して船舶の甲板から風力タービンブレードなどの細長い要素を上向きにするための装置を説明している。示された装置は、いくつかの相互に連結された支持構造体を含み得、これら支持構造体は、互いに平行に延び、かつ、それぞれが風力タービンブレードを横になった位置で支持する。ウィンチが、支持構造体を、後部甲板上に設置されたクレーンの位置に対して、まとめて、甲板に平行に転置させるように構成される。2部分からなる船舶(two-part vessel)が提案され、ここでは、持ち上げおよび設置がプラットフォームから行われ、第2の輸送船舶が、風力タービンブレードを供給し、プラットフォームにつながる。レールガイドが、風力タービンブレードのための支持構造体を輸送船舶からプラットフォームに転置させる。
【0008】
特許文献3は、駆動ロッドによりモノパイルを上向きにすることを記載しており、一方、特許文献4は、風力タービンマスト全体を上向きにすることを記載している。
【0009】
特許文献5は、動きが減衰されたパイルグリッパーを記載している。
【0010】
最後に、特許文献6は、ヒンジの周りで船舶からモノパイルを上向きにすることを開示しており、ここでは、モノパイルのための支持ラック、および、上向きにされるモノパイルのための、船舶上に装着されたガイド構造体が、使用される。
【0011】
船舶の甲板上で最大限の数の要素を輸送することができるだけでなく、いったん現場に着いたら、できるだけ効率的に海底の方向に要素を動かすために要素を上向きにすることを実行することが重要であり、このことは、通常、最短期間で作業を実行することに等しい。しかしながら、作業の効率は、海に設置されるモノパイルなどの細長い要素の寸法が増大し続ける現在の傾向によって制限される。要素の寸法が大きいほど、動作範囲が増大した大きな持ち上げ手段の使用が必要となる。これは、持ち上げられる最大荷重、および持ち上げ手段の届く範囲の両方を意味していると理解される。持ち上げ手段および要素のより大きな寸法は、船舶上で利用可能な限られたスペースと調和することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】欧州特許出願公開第2208824号明細書
【文献】韓国特許出願公開第20180126767号明細書
【文献】国際公開第2018/117846号パンフレット
【文献】台湾特許出願公開第201215538号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2886722号明細書
【文献】独国登録実用新案第202009006507号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、持ち上げ手段を使用して船舶の甲板から細長い要素を上向きにするための装置を提供することを目的とし、その装置では、先行技術の前述した欠点は、少なくとも部分的に取り除かれる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によると、この目的は、請求項1に記載の装置を提供することによって達成される。具体的には、持ち上げ手段を使用して船舶の甲板から細長い要素を上向きにするための装置が提供され、この装置は、
横になった位置で細長い要素を支持するために、相互に連結され、互いに平行に延びるいくつかの支持構造体であって、各支持構造体は、この目的で、要素の周辺部のための2つの支持部であって、支持構造体の長手方向に相互距離を置いて設置され、甲板に接続された、2つの支持部を含む、支持構造体と、
支持構造体を、持ち上げ手段の位置に対して、まとめて、甲板に平行に転置させるように構成された、転置手段と、
を含み、
装置の支持構造体は、上向けツールをさらに含み、上向けツールは、船舶の縁部に平行に延びる軸の周りで回動するように、関連する支持構造体に接続され、支持構造体内に受容された細長い要素を、この要素が持ち上げ手段により上向きにされるときに支持するように構成され、上向けツールはこの軸の周りで回転される。
【0015】
いくつかの利点がこのようにして達成される。いくつかの支持構造体内に受容された要素を、甲板に対してまとめて、かつ横になった位置で甲板に平行に転置させるように構成された転置手段は、例えば、持ち上げ手段の届く範囲内で要素を動かすことを可能にし、持ち上げ手段は、次に、要素を持ち上げて上向きにし、最終位置まで運ぶことができる。モノパイルでは、これは、例えば、海底に係留された基礎である。これは、要素を支持構造体内に存在する他の要素に対して転置させて、支持構造体内の別の要素のためのスペースを解放するのにも有用となり得る。持ち上げ手段に対する転置は、持ち上げ手段の位置に向かうかまたは持ち上げ手段の位置から離れる転置を含み得る。このように、要素は、持ち上げ手段の届く範囲内で動かされ得る。持ち上げクレーンのブームは、実際に、決まった角度にわたって回転され得、それによって、円形領域が水平面内でカバーされ得る。この円形領域は、持ち上げ手段のブームが持ち上げ手段のデザインによって可能になる限り最大限に上げられ(luffed in)得る最小半径と、持ち上げ手段のブームがそのデザインおよび持ち上げられる荷重によって可能になる限り最大限に下降され(下げられ(luffed out))得る最大半径と、によって境界をつけられる。
【0016】
船舶の甲板上の(限られた)スペースを有効に利用するため、細長い要素は、好ましくは、甲板上でスペースを取らないように保管される。適切な保管方法は、互いに平行に延び、いずれの場合も要素が受容される支持構造体に関し、それによって、要素の長手方向は、それが受容される支持構造体の長手方向に平行に延びる。本発明のある実施形態では、転置手段は、支持構造体の長手方向に対して実質的に垂直に延びる方向に要素を転置させるように構成される。これにより、支持構造体の長手方向の横断方向に要素を転置させることが可能になり、それによって、要素の相互平行が維持される。ある実施形態によると、支持構造体の長手方向は、相互距離を置いて配置された2つの支持部を接続する線によって定められる。
【0017】
要素は、各支持構造体の支持部内に受容される。本発明のある実施形態によると、支持部の支持表面は、この目的で、湾曲しており、それによって、支持部の支持表面は、支持構造体内に受容された要素の周辺部に接続され、さらに好ましくは、支持構造体内に受容された要素の周辺部にぴったりと接続される。支持部は、好ましくは、それらの支持表面にサドルを備え、サドルの上で要素の周辺部が支持される。改善された支持を得るために、サドルは、船舶の甲板に平行に延びる軸の周りで回転するように具体化され得る。
【0018】
本発明の別の実施形態は、転置手段が、支持構造体を、甲板に対して、甲板に平行に、持ち上げ手段の方向に転置させるように構成されることを特徴とする。
【0019】
既に前述したように、船舶の甲板上のスペースは限られている。さらに、発明された装置の意図された利点のうちの1つは、甲板上に保管された要素、および上向けツールが、持ち上げ手段の届く範囲内で動かされ得ることである。これにより、より大きな持ち上げ手段を使用しなければならないのを防ぐ。しかしながら、持ち上げ手段自体は、持ち上げ手段の方向に動かされる支持構造体について、さらなるスペース上の制限を形成し得る。したがって、要素が支持部内に存在しない、無負荷状態にある支持構造体の支持部が、甲板に対して垂直に延びる軸の周りで回転可能である点で、ある実施形態の装置を特徴づけることは有利である。支持部は、ある幅を有し、この幅は、支持部内に受容される細長い要素の横断方向寸法に適合される。支持構造体の支持部を鉛直軸の周りで回転させるオプションを提供することによって、支持部は、例えば90°の角度にわたって回転され得る。これによって、支持部は、支持構造体の動く方向に占めるスペースが小さくなり、これにより、次の支持構造体のためのスペースが解放される。
【0020】
発明された装置で使用される上向けツールは、水平軸の周りで回転するように乗り物の縁部に装着された構造体を含み、この構造体は、少なくとも1つの支持部、好ましくは2つ以上の支持部を含み、支持部の中に、要素の長手方向に相互距離を置いて位置する、少なくとも1つの、好ましくは2つ以上の、周辺部が受容され得る。本発明によると、上向けツールは、上向きにする間に要素が持ち上げ手段からぶら下がるときに、長手方向において関連する支持構造体内に受容された要素を支持するように構成されている。ある実施形態では、これは、上向けツールが、持ち上げ手段において上向きにされた要素の下方外側端部上に係合するブラケット部を含むという点で達成され得る。必要に応じて、ブラケット部は、入れ子式に延長可能なサイドアームを含み得、サイドアームは、下方外側端部と上向けツールによって係合された要素の周辺部との間の長手方向距離の調節を可能にし、これにより、種々の寸法を有する要素を受容するオプションを提供する。上向けツールは、中に受容された要素の周辺部がクランプ方式で受容され得るクランプ部もオプションとして含み得る。
【0021】
本発明の別の実施形態は、装置が支持構造体の積み重ねを含むことを特徴とし、支持構造体の支持部は、その積み重ねにおける別の支持構造体の支持部の上に位置する。この実施形態により、輸送され上向きにされる要素の数が増えることができ、このことは必ずしも船舶の甲板上で利用可能なスペースに悪影響を与えるわけではない。上に重なる支持部は、ここで、好ましくは取り外されるかまたは折り畳まれ、要素が、下にある支持部へのアクセスを得て、下にある支持部内に配置され得る。
【0022】
回転可能な支持部を含む支持構造体(または複数の支持構造体)は、原則として、互いに平行に延びる、いくつかの相互に連結された支持構造体における任意の位置に位置し得る。しかしながら、回転可能な支持部を含む支持構造体がその他の支持構造体に比べて持ち上げ手段に最も近接して位置する点で、ある実施形態による装置を特徴づけることが有利である。これにより、関連する支持構造体は、持ち上げ手段を使用して、その中に受容された要素をそこから取り外すことができ、その後、その支持部が回転され得る。
【0023】
上向けツールを含む支持構造体(または複数の支持構造体)は、原則として、やはり、互いに平行に延びる、いくつかの相互に連結された支持構造体における任意の位置に位置し得る。現実的な実施形態は、上向けツールを含む支持構造体がその他の支持構造体に比べて持ち上げ手段に2番目に近接して位置する装置に関する。
【0024】
最後に、支持構造体の積み重ね(または複数の積み重ね)は、やはり、原則として、互いに平行に延びる、いくつかの相互に連結された支持構造体における任意の位置に位置し得る。ある実施形態によると、支持構造体の積み重ねがその他の支持構造体に比べて持ち上げ手段から最も遠くに位置する装置を提供することが有利である。
【0025】
本発明による装置における支持構造体の数は、原則として自由に選択され得、好ましくは、合計で、少なくとも3つ、さらに好ましくは少なくとも4つ、さらにより好ましくは少なくとも5つの支持構造体、最も好ましくは少なくとも8つの支持構造体となる。支持構造体の支持部は、例えば海上での輸送中に、それぞれが細長い要素を支持するように構成され、回転可能な支持部を含む支持構造体、および上向けツールを含む支持構造体など、いくつかの支持構造体は追加の機能を有する。本発明による装置では、比較的多数の物体が輸送され得る。よって、少なくとも5つの物体、さらに好ましくは少なくとも10個、さらにより好ましくは少なくとも20個、最も好ましくは少なくとも30個の物体を輸送することが可能である。物体の寸法は、ここで一翼を担い得る。よって、輸送されるピンパイルの数(例えば25~30)は、例えば、一般的に、輸送されるモノパイルの数(例えば8~10)より多くなる。追加の機能を有する支持構造体の数も、原則として自由に選択され得る。現実的な実施形態は、追加の機能を有する支持構造体の数を、多くて4つ、さらに好ましくは多くて3つ、最も好ましくは多くて2つに制限する。後者の実施形態では、装置は、好ましくは、回転可能な支持部を含む1つの支持構造体と、上向けツールを含む1つの支持構造体と、を含む。2つの機能は、1つの支持構造体において組み合わせられてもよい。積み重ねられた支持構造体の数も、原則として自由に選択され得、現実的な実施形態では、その数は、合計で、多くて3つ、さらに好ましくは多くて2つ、最も好ましくは多くて1つとなる。積み重ねにおける支持部の数は、少なくとも2つ、好ましくは2つ~4つである。
【0026】
支持構造体の連結は、当業者に既知の任意の方法で実行され得る。ある実施形態では、本発明による装置は、例えば、支持構造体が、甲板に接続された支持構造体の支持部の連結によって相互に連結されるように、具体化され得る。
【0027】
船舶の甲板上のスペースは、甲板に接続され、好ましくは互いに連結された、支持構造体の支持部が、船舶の側縁部に実質的に平行に延びる線に沿って延在する装置のある実施形態において、最適に利用され得る。
【0028】
船体を横切る方向において最大のスペースを利用することができるように、装置のある実施形態は、支持部が左舷側および右舷側に配置された支持部を含むことを特徴とする。支持構造体の支持部内に受容された要素は、次に、船体を横切る方向に延び、要素の外側端部が、船舶の船体を横切る幅を越えて延びることも可能である。
【0029】
発明された装置では、持ち上げ手段によって持ち上げられる要素は、浮遊する装置の甲板上に設けられる持ち上げ手段の届く範囲内で動かされ得る。装置のある実施形態では、要素を持ち上げるための持ち上げ手段は、この目的で設けられ、転置手段は、要素を持ち上げ手段の方向に転置させるようにさらに構成される。
【0030】
適切な方法では、いくつかの細長い要素は、いくつかの細長い支持構造体によって甲板上で横になった位置で支持され、細長い支持構造体は、互いに平行に延びており、それぞれが、要素の周辺部のための2つの支持部であって、支持構造体の長手方向に相互距離を置いて設置され、甲板に接続された、2つの支持部を含み、持ち上げられる要素は、甲板に対して、横になった位置で甲板に平行に転置される。
【0031】
支持構造体のための転置手段は、原則として任意の適切な方法で具体化され得る。本発明のある実施形態は、この点において、転置手段が、甲板に接続されたレールガイドを含み、支持構造体が、レールガイドの上を、支持構造体の長手方向に対して垂直に延びる方向にスライドし得る装置に関する。ここでは、すべての支持構造体がレールガイドの上をまとめてスライドするか、または、1つもしくは複数の支持構造体がガイドの上を、他の支持構造体に対してスライドさせられることが可能である。支持部は、レールガイドのスライド表面の上を動くことができる。必要に応じて、支持構造体の支持部は、少なくとも2つのレールガイドの上をまとめてスライドさせられる。
【0032】
発明された装置では、例えば風力タービンのモノパイルなどの細長い要素は、持ち上げ手段を使用して船舶の甲板から上向きにされるのが、既知の装置の場合よりも効率的になり得る。本発明は、この目的で、持ち上げ手段を使用して船舶の甲板から細長い要素を上向きにするための方法を提供し、この方法では、いくつかの細長い要素が、相互に連結された細長い支持構造体によって甲板上で横になった位置で支持され、細長い支持構造体は、互いに平行に延びており、それぞれが、要素の周辺部のための2つの支持部であって、支持構造体の長手方向に相互距離を置いて設置され、甲板に接続された、2つの支持部を含み、支持構造体は、持ち上げ手段の位置に対して、まとめて、甲板に平行に転置されて、持ち上げられる要素を、持ち上げ手段の届く範囲内で動かし、支持構造体は、船舶の縁部に平行に延びる軸の周りで回動するように船舶に接続された上向けツールをさらに含み、この支持構造体内に受容された細長い要素は、この要素が持ち上げ手段により上向きにされるときに上向けツールによって支持され、上向けツールはこの軸の周りで回転される。
【0033】
持ち上げ手段による要素の持ち上げは、例えばホイストなどの係合手段を、要素の上方外側端部に締結し、その後、持ち上げ手段により係合手段を上方に引っ張ることによって、行われ得る。少なくとも横たわる要素の上方外側端部はこれによって上方に動かされ、これによって、要素は、要素が支持部からも完全に切り離されるまで、支持される支持部の周りで回転する。
【0034】
発明された方法の適切な実施形態では、支持構造体は、支持構造体の長手方向に対して実質的に垂直に延びる方向にまとめて転置され、支持構造体は、好ましくは、持ち上げ手段の方向に転置されて、回転可能な支持部を有する支持構造体、および/または、上向けツールを有する支持構造体、および/または、積み重ねられた支持構造体を、持ち上げ手段の届く範囲内で動かす。
【0035】
スペースを解放するために、別の実施形態による方法が提供され、この方法では、要素が支持部内に存在しない、無負荷状態にある支持構造体の支持部は、特に、支持構造体内に受容された要素が持ち上げ手段の届く範囲内で動かされかつ持ち上げ手段によって持ち上げられた後で、甲板に対して垂直に延びる軸の周りで回転される。この回転により、要素を備えた次の支持構造体を、その方向に、持ち上げ手段の届く範囲内で動かすことが可能になり、その後、このプロセスが繰り返される。
【0036】
同じ目的を有する他の実施形態は、要素が支持構造体の積み重ね内に受容される方法を提供し、支持構造体の支持部は、その積み重ねにおける別の支持構造体の支持部の上に位置する。好ましい方法は、回転される支持部が、その他の支持構造体に比べて持ち上げ手段に最も近接して位置することを特徴とする。別の好ましい方法は、上向けツールを含む支持構造体が、その他の支持構造体に比べて持ち上げ手段に2番目に近接して位置することを特徴とする。さらに別の好ましい方法は、支持構造体の積み重ねが、その他の支持構造体に比べて持ち上げ手段から最も遠くに位置することを特徴とする。ある実施形態による方法では、支持構造体は、甲板に接続されたガイドの上を、支持構造体の長手方向に対して垂直に延びる方向にスライドさせられる。支持構造体は、このように、横断方向に、好ましくは持ち上げ手段の方向に、並進運動される。この結果、持ち上げ手段に最も近接して位置する支持構造体はまた、持ち上げ手段の届く範囲内に最初に到達する。よって、持ち上げ手段に最も近接して位置する支持構造体内の要素が、持ち上げ手段によって最初に持ち上げられることが明らかであるが、これは必須ではない。持ち上げ手段による、最も近接した支持構造体からの要素の持ち上げは、例えば、関連する要素を上向けツール内に配置し、その後それを上向きにする目的に役立ち得る。
【0037】
細長い要素は、例えば中空の管状要素を含み得る。要素の寸法は、原則として特定の寸法に制限されず、本発明の利点は、50m超、好ましくは70m超、さらにより好ましくは80m超に等しい長さと、8m超、さらに好ましくは10m超、さらにより好ましくは12m超に等しい横断方向寸法、例えば管状要素の場合は直径と、を有する、細長い要素において最も明確に明らかとなる。
【0038】
船舶は、意図された目的に適切な任意の船舶を含み得る。よって、船舶は、水中の底部で支持させることによって現場で固定されるジャッキアッププラットフォームを含むことが可能である。船舶が、浮遊する船舶を含むことも可能である。船舶は、全地球測位システム(GPS)と、波の動きなどの結果としての船舶の動きを相殺する補償手段と、を備えることができる。
【0039】
この特許出願に記載される本発明の実施形態は、これらの実施形態の任意の可能な組み合わせで組み合わせられ得、各実施形態は、分割特許出願の主題を個別に形成し得る。
【0040】
本発明は、添付図面を参照してさらに詳細に説明されるが、それに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】モノパイルを横にして支持するための支持構造体を備えたジャッキアッププラットフォーム、およびモノパイルが持ち上げられ得る持ち上げ手段の概略斜視図である。
【
図2A】第1の位置にある、本発明のある実施形態による装置の概略正面図である。
【
図2B】第2の位置にある、本発明のある実施形態による装置の概略正面図である。
【
図3】いくつかのモノパイルを備えた、本発明の別の実施形態による装置の概略斜視図である。
【
図4A】本発明のある実施形態による左舷側構造の概略斜視図である。
【
図4B】本発明のある実施形態による右舷側構造の概略斜視図である。
【
図5】本発明のさらに別の実施形態による装置の船舶の船首の概略正面図である。
【
図6】本発明のある実施形態による回転可能な支持部の概略斜視詳細図である。
【
図7】最後に、本発明のある実施形態による転置手段の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1を参照すると、モノパイル3を海底2上に設置するための据え付けジャッキアッププラットフォーム1が示されている。プラットフォーム1は、他の細長い要素、例えば、甲板10上に保管される風力タービンマストのトランジションピース4を設置するのにも同様に適切である。このようなトランジションピース4は、風力タービンマスト(不図示)への移行部として、海底2内に配置されたモノパイル3上に配置される。船尾28および船首29を備えたジャッキアッププラットフォーム1は、独立して進むことができ、いくつかのスパッドポール(spud poles)11を海底2上に下げることによって目的地で所望の位置に固定される。プラットフォーム1の甲板10は、ここで水から持ち上げられ、それによって、水面20から数メートル上に位置する。スパッドポール11は、スパッドポール11が海底2中にさらに沈むのを防ぐためのスパッドカン(spud cans)12を備えることができる。
【0043】
設置される構成要素、例えばいくつかのモノパイル3が、プラットフォーム1の甲板10上に提供される。モノパイル3は、装置5内に受容され、その実施形態は以下でさらに説明される。モノパイル3は相当な寸法を有し得、例えば長さが80mで、直径が8m以上である。
【0044】
ジャッキアッププラットフォーム1の甲板10には、モノパイル3を持ち上げるためのダブルブーム60を備えた持ち上げ手段6が設けられる。持ち上げ手段6は、プラットフォーム1の船尾28の位置に位置しており、基部61の周りで、実質的に鉛直の軸62の周りで回転可能であり、巻き上げケーブル63をさらに備え、巻き上げケーブルは、ウィンチ(不図示)により、持ち上げ手段6の上部65の上で引き込まれるか、または繰り出され得、また、外側自由端部において、フックにより巻き上げブロック66に接続され、これにより、モノパイル3または他の要素が、必要に応じて巻き上げスリングを備えた巻き上げヨークを介在させて、持ち上げられ得る。ブーム60の角度位置は、基部61上に設けられた支持体67に上部65を接続する一組の牽引ケーブル64によって調節され得る。牽引ケーブル64は、ウィンチ(不図示)を使用して、引き込まれるか、または繰り出され得る。引き込まれると、ブーム60は上げられ、一方、ブーム60は、牽引ケーブル64が繰り出されると下げられる。持ち上げ手段6の届く範囲は、決定された重量の負荷について、基部61の中心軸62と、巻き上げ手段6がこの負荷で依然として安定している、巻き上げヨーク66の位置と、の間の、可能な最小および最大水平距離68によって、得られる。
【0045】
完全にするために、プラットフォーム1の甲板10はまた、持ち上げ手段6によって支持構造体5から持ち上げられるモノパイル3のためのグリップ構造13を備えることができる。グリップ構造13は、巻き上げ手段6からぶら下がっているモノパイル3に係合し、海底2に下げる間、モノパイルをガイドするように構成される。
【0046】
本発明のある実施形態は、ジャッキアッププラットフォーム1の甲板10上で横になった位置でいくつかの細長いモノパイル3を支持し、持ち上げ手段6を使用して、プラットフォーム1の甲板10からのモノパイル3を装置5から上向きにするための装置5に関する。横になった位置では、モノパイル3は、実質的に水平に、言い換えれば実質的に甲板10に平行に、延びる。
【0047】
図3で明らかに分かるように、モノパイル3の長手方向30は、モノパイル3が受容される支持構造体50の長手方向52に実質的に平行に延びる。図示の実施形態では、各支持構造体50は、支持構造体50の長手方向52に相互距離54を置いて設置された2つの支持部51を含むが、本発明はこれに限定されない。よって、支持構造体50は、ただ1つの支持部51、または逆に3つ以上の支持部51を含み得る。距離54にわたって連続的に延びる支持部51を提供することも可能である。各支持部51は、実質的に、その中に受容されるかまたは受容されるべきモノパイル3の周辺部31のように成形された支持表面を有する。図示の実施形態では、各支持構造体50は、距離54を置いて設置された2つの支持部51を含み、第1の一連の相互に連結された支持部51は、実質的に、プラットフォーム1の右舷側SBに平行に延びる線に沿って延在し、第2の一連の相互に連結された支持部51は、実質的に、プラットフォーム1の左舷側PSに平行に延びる線に沿って延在する。支持部は、右舷側SBにおいて甲板10に接続されたブルレール(bull rail)15as、および左舷側PSにおいて甲板10に接続されたブルレール15apに沿って、またブルレール15apおよび15asに平行に延びる二次レールガイド15bpおよび15bsに沿って、転置可能である。ブルレールガイド15asおよび15apは、支持構造体およびその中に受容された要素によって生成された実質的に鉛直方向の力を、甲板および船舶の他の構成要素に伝達するように構成される。二次レールガイド15bpおよび15bsは、妨害のリスクがほとんどない状態で、少なくとも1つの支持構造体を、甲板に平行に延びる平面内で転置させるように構成される。さらに、二次レールガイド15bpおよび15bsは、支持構造体およびその中に受容された要素によって生成された実質的に横断方向の力を、甲板および船舶の他の構成要素に伝達するように構成される。物体の輸送および上向きにする間に生じる鉛直方向の力は、同様に、少なくとも部分的に、二次レールガイドによって吸収される。
【0048】
レールガイドは、鉄道で知られるようなレールガイドと関連付けられ得る幅に制限されないことが注目される。本発明のレールガイドは、比較的大きな幅を有し得る。よって、ブルレールガイドの滑走表面(またはスライド表面)は、例えば、1m超の幅を有し得る。
【0049】
図2Aおよび
図2Bに示す装置5の実施形態の側面図は、いくつかの細長い支持構造体50を含み、細長い支持構造体は、船体を横切る方向14に沿って互いに平行に延びており、互いから距離を置いて設置された、相互に連結された支持部51を含む。支持部51は、例えば
図2Aおよび
図2Bに示すレール接続部15を介して、(直接的または間接的に)甲板10に接続され、レール接続部のうち、プラットフォーム1の、いわゆるブルレール15aのみが、側面図で見ることができる。
【0050】
図5(すべての構成要素がこの図面に含まれているわけではない)も参照すると、二次レールガイド15bpおよび15bsは、横断方向接続部150pおよび150sにより、プラットフォームの甲板10に固定的に接続される。ブルレールガイド15asおよび15apは、ある高さ(154p、154s)で、甲板10に接続された回転レールガイド501dsおよび501dpによってさらに接続される。直立部分53pおよび53sならびに支持構造体(50a、50b、50c、50d)の他の部分は、接続ロッド151pおよび151sによって二次レールガイド15bpおよび15bsにスライド可能に接続される。接続ロッド151pおよび151sは、この目的で外側端部に、二次レールガイド15bpおよび15bsの上をスライドし得る二次スライドシュー152pおよび152sを備えている。ブルレールガイド15apおよび15asは、実質的に鉛直方向の力をプラットフォーム1の甲板10に伝達し、一方、二次レールガイド15bpおよび15bsは、ブルレールガイド15apおよび15asと共に、横断方向の力を吸収し、それら力を甲板10に伝達するように実質的に構成される。
図5によると、右舷側SBにおける支持構造体の差し渡し幅101は、左舷側PSにおける支持構造体の差し渡し幅102より大きい。このより大きな幅101は、モノパイル3を上向きにする間に右舷側SBに配置された上向けツール8によって生成されたトルクを吸収することができるようにするのに必要である。距離100は、船体を横切る幅に実質的に対応する。
【0051】
支持構造体50は、断面において丸みを帯びたU字形状を有する支持部51を含む。U字形状のサイドアームは、その中に受容されるモノパイル3の水平方向の安定を提供し、一方、各支持部51の底部表面は、その中に受容されるモノパイル3の鉛直方向の安定を提供する。支持部51は、鉛直に向けられた直立部分53間に受容され、直立部分は、モノパイル3によって支持部51内に生じた力を、レールガイド15に、またジャッキアッププラットフォーム1の甲板10上に伝達する。
【0052】
図4Aおよび
図4Bに示す装置の実施形態は、プラットフォーム1の左舷側PSに設けられた、相互に連結された支持部(51ap、51bp、51cp、51dp)(
図4A)、およびプラットフォーム1の右舷側SBに設けられた、相互に連結された支持部(51as、51bs、51cs、51ds)(
図4B)に関する。
【0053】
左舷側における支持部(51ap、51bp、51cp、51dp)、および右舷側における対応する支持部(51as、51bs、51cs、51ds)は、共に、船体を横切る方向14に沿って延びる細長い支持構造体(50a、50b、50c、および50d)を形成する。各支持構造体(50a、50b、50c、および50d)は、それぞれの支持部(51ap、51bp、51cp、51dp)および(51as、51bs、51cs、51ds)を介して甲板10に(直接的または間接的に)接続される。図示された実施形態では、この接続部は、レール接続部15を含む。
【0054】
各支持部51は、断面において丸みを帯びたU字形状を有する。U字形状のサイドアームは、その中に受容されるモノパイル3の水平方向の安定を提供し、一方、各支持部51の底部表面は、その中に受容されるモノパイル3の鉛直方向の安定を提供する。支持部51は、鉛直に向けられた直立部分53(左舷側では53p、右舷側では53s)間に受容され、直立部分は、モノパイル3によって支持部51内に生じた力を、レールガイド(15a、15b)に、またジャッキアッププラットフォーム1の甲板10上に伝達する。各支持部51は、実質的に、その中に受容されるかまたは受容されるべきモノパイル3の周辺部31のように成形された支持表面を有する。支持表面は、サドル511(511ap、511bp、511dp、511as、511bs、511ds)によって形成され、そのうちのいくつかのサドル512(512ap、512bp、512dp、512as、512bs、512ds)は、水平軸の周りで回転するように具体化される。これは、種々の直径を有するモノパイル3が、サドル512内に受容され得るという利点を有する。中央の支持部51cpは、左舷側PSにおいて、高さ方向または他の方向において調節可能であるサドル513cpを備える。
【0055】
図4Bによると、中央の支持構造体50cは、上向けツール8を備え、上向けツール8は、プラットフォーム1の右舷縁部SBに平行に延びる軸の周りで回動するために、関連する支持構造体50cに、または少なくとも、関連する支持構造体50cの鉛直の直立部分53sに接続された支持アーム83に、ヒンジ接続部82によって接続される。上向けツール8は、1つの支持部81を含み、支持部81は、その他の支持部51と同じように具体化され、その中に、モノパイル3の周辺部が受容され得る。よって、支持部81は、実質的に、その中に受容されるかまたは受容されるべきモノパイル3の周辺部31のように成形された支持表面を有する。支持表面はサドル811によって形成され、そのうちのいくつかのサドル812は、水平軸の周りで回転するように具体化される。上向けツール8は、使用中に、持ち上げ手段において上向きにされたモノパイル3の下方外側端部に係合するブラケット部80をさらに含む。必要に応じて、ブラケット部80は、入れ子式に延長可能なサイドアームを含み得、これは、下方外側端部と上向けツール8によって係合されるモノパイル3の周辺部との間の長手方向距離の調節を可能にし、このことにより、種々の寸法を有するモノパイル3を受容するというオプションが提供される。上向けツール8は、中に受容されたモノパイル3の周辺部がクランプ方式で受容され得るクランプ部(不図示)もオプションとして含み得る。本発明のある実施形態によると、上向けツール8は、関連する支持構造体50c内に受容されたモノパイル3を、このモノパイル3が持ち上げ手段6からぶら下がり、持ち上げ手段6によって上向きにされているときに、長手方向30において支持するように構成される。上向けツール8は、ここで、ブラケット部80の平面が鉛直方向に対して実質的に平行に延びるまで、ピボット接続部82の軸の周りで方向84に回転される。
【0056】
この実施形態では、転置手段7は、支持構造体(50a、50b、50c、50d)を、甲板10に対してまとめて、甲板10に平行に、レールガイド(15ap、51bp、51as、51bs)の上で転置させるように構成される。これは、左舷側における支持部(51ap、51bp、51cp、51dp)、および右舷側における対応する支持部(51as、51bs、51cs、51ds)を、左舷側におけるレールガイド(15ap、15bp)および右舷側におけるレールガイド(15as、15bs)の上で同時に転置させることによって、達成される。支持構造体内に受容されたモノパイル3は、ここで、同様に、甲板10に対して並進運動される。
【0057】
転置手段は、右舷側において甲板10に接続されたブルレールガイド15apおよび15asと、左舷側における二次レールガイド15bpおよび15bsと、を含み、油圧回路(不図示)に接続されたいくつかの油圧ピストンシリンダ17pおよび17sをさらに含む。
【0058】
図7を参照すると、ピストンシリンダ17は、シリンダ側において支持構造体50、または少なくとも支持部51もしくはその直立部分53に、また、ピストン側においてスライドブロック18に固定的に接続される。直立部分53(または支持構造体50の別の構成要素)は、固定ピン500を使用してブルレールガイド15aに固定され得る。スライドブロック18は、ピン180を使用して、連結のためにブルレールガイド15a内に配置された固定開口部181内にピン180を配置することにより、ブルレールガイド15aに固定的に接続され得る。シリンダピストンを延ばすか、または逆に後退させることにより、支持構造体50は、プラットフォーム1の船尾28の方向に、または持ち上げクレーン6の方向に、ブルレールガイド15aの上を動かされ得る。支持構造体(50a、50b、50c、50d)の、さらに具体的には、左舷側における支持部(51ap、51bp、51cp、51dp)および右舷側における対応する支持部(51as、51bs、51cs、51ds)のまとめた転置は、以下のように実行され得る。最初に、固定ピン500(左舷側の500pおよび右舷側の500s)は、支持構造体50がブルレールガイド15apおよび15asから切り離されるように、後退される。ピストンシリンダ17pおよび17sは次に、支持構造体50がブルレールガイド15pおよび15sの上をスライドし、転置されるように、延ばされる。スライドブロック18pおよび18sは、ここで、ピン180pおよび180sを使用して、ブルレールガイド15aに固定的に接続される。支持構造体50の転置中、ピン180pおよび180sは、スライドブロック18pおよび18sからの水平方向の力を、ブルレールガイド15apおよび15asの上方フランジに伝達する。鉛直方向の力は、スライドブロック18pおよび18s上に設けられかつブルレールガイド15aの上方フランジの周囲に係合するサイドクランプ182pおよび182sによって吸収される。固定ピン500pおよび500sは次に、支持構造体50がブルレールガイド15apおよび15as上で固定されるように、押し出される。ピストンシリンダ17pおよび17sは次に、再び後退され、これにより、スライドブロック18pおよび18sは、ブルレールガイド15pおよび15sの上をスライドし、支持構造体50の方向に転置される。最後に、スライドブロック18pおよび18sは、ピン180pおよび180sを使用して、ブルレールガイド15apおよび15as内に配置された固定開口部181内にピン180pおよび180sを配置することによって、ブルレールガイド15aに固定的に接続される。前述した転置プロセスは、数回繰り返され得る。
【0059】
図4Aおよび
図4Bでは、シリンダピストン17pおよび17sは後退位置にあり、支持構造体50pおよび50sは、プラットフォーム1の船尾28からできるだけ遠くに移動されるか、または代わりに、持ち上げ手段6からできるだけ遠くに移動される位置にくる。前述したように、ピストンシリンダ17pを数回延ばすことによって、支持部(51ap、51bp、51cp、51dp)は、
図4Aを参照して、船尾28および持ち上げ手段6(不図示)の方向へと右側に移動される。前述したように、ピストンシリンダ17sを数回同時に延ばすことによって、支持部(51as、51bs、51cs、51ds)は、
図4Bを参照して、船尾28および持ち上げ手段6(不図示)の方向へと左側に移動される。
【0060】
持ち上げ手段6(または船尾28)に最も近接して位置する支持構造体(50a、50b、50c、50d)の側においてスペースを解放するために、支持部51dpおよび51dsは、この実施形態では、鉛直軸58pおよび58sの周りで矢印56pおよび56sの方向に回転可能である。よって、離れるように回転された支持部51dpおよび51dsは、移動の方向16に占めるスペースが少なく、これにより、次の支持構造体50、この場合は支持構造体51cpおよび51cs、ならびに上向けツール8は、持ち上げ手段6の近くに、かつその届く範囲内で動かされ得る。軸58pおよび58sの周りでの回転により、移動の方向16において持ち上げ手段6に最も近接して位置する支持部51dpおよび51dsの占有幅59を、より小さな占有幅59a(
図2Bを参照)に減少させる。
【0061】
図6は、回転可能な支持部51dsの詳細図を示す。支持部51dsは、ピン接続部500dsによってブルレールガイド15as上で固定される。このピン接続部500dsを外すことによって、支持部51dsは、鉛直軸58sの周りで方向56sに回転され得る。支持部51sは、ここで、甲板10に接続された回転レールガイド501ds上で支持される。支持部51dsが離れるように回転された位置では、この支持部は、ピン接続部502dsを使用して、回転レールガイド501ds上で固定される。回転は、シリンダ部により甲板10に固定的にかつピストン側において支持部51dsに接続されたピストンシリンダ503dsによって起動される。ピストンを後退させることによって、支持部51dsは、方向56sに回転する。ピストンが延びると、支持部51dsは、ブルレールガイド15asに実質的に平行に延びるまで、再びブルレールガイド15asの方向に回転される。
【0062】
本発明は、前述した例示的な実施形態に制限されず、その多くの変形例が、添付の特許請求の範囲の保護範囲において可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 据え付けジャッキアッププラットフォーム
2 海底
3 モノパイル
4 トランジションピース
5 装置、支持構造体
6 持ち上げ手段、巻き上げ手段、持ち上げクレーン
7 転置手段
8 上向けツール
10 甲板
11 スパッドポール
12 スパッドカン
13 グリップ構造
14 船体を横切る方向
15 レール接続部、レールガイド
15a レールガイド、ブルレールガイド
15b レールガイド
15ap ブルレール、レールガイド、ブルレールガイド
15as ブルレール、レールガイド、ブルレールガイド
15bp 二次レールガイド
15bs 二次レールガイド
15p ブルレールガイド
15s ブルレールガイド
16 移動の方向
17 ピストンシリンダ
17p 油圧ピストンシリンダ
17s 油圧ピストンシリンダ
18 スライドブロック
18p スライドブロック
18s スライドブロック
20 水面
28 船尾
29 船首
30 長手方向
31 周辺部
50 支持構造体
50a 支持構造体
50b 支持構造体
50c 支持構造体
50d 支持構造体
50p 支持構造体
50s 支持構造体
51 支持部
51ap 支持部
51bp 支持部
51cp 支持部
51dp 支持部
51as 支持部
51bs 支持部
51cp 中央の支持部、支持構造体
51cs 支持部、支持構造体
51ds 支持部
52 長手方向
53 直立部分
53p 直立部分
53s 直立部分
54 相互距離
56p 矢印
56s 矢印、方向
58p 鉛直軸
58s 鉛直軸
59 占有幅
59a 占有幅
60 ダブルブーム
61 基部
62 軸
63 巻き上げケーブル
64 牽引ケーブル
65 上部
66 巻き上げブロック、巻き上げヨーク
67 支持体
68 水平距離
80 ブラケット部
81 支持部
82 ヒンジ接続部、ピボット接続部
83 支持アーム
84 方向
100 距離
101 差し渡し幅
102 差し渡し幅
150p 横断方向接続部
150s 横断方向接続部
151p 接続ロッド
151s 接続ロッド
152p 二次スライドシュー
152s 二次スライドシュー
154p 高さ
154s 高さ
180 ピン
180p ピン
180s ピン
181 固定開口部
182p サイドクランプ
182s サイドクランプ
500 固定ピン
500ds ピン接続部
500p 固定ピン
500s 固定ピン
501dp 回転レールガイド
501ds 回転レールガイド
502ds ピン接続部
503ds ピストンシリンダ
511 サドル
511ap サドル
511bp サドル
511dp サドル
511as サドル
511bs サドル
511ds サドル
512 サドル
512ap サドル
512bp サドル
512dp サドル
512as サドル
512bs サドル
512ds サドル
513cp サドル
811 サドル
812 サドル
PS 左舷側
SB 右舷側