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特許7476206患者固有の顎関節関係を測定してバーチャル咬合器に転送するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】患者固有の顎関節関係を測定してバーチャル咬合器に転送するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/045 20060101AFI20240422BHJP
   A61C 11/00 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
A61C19/045 110
A61C11/00 A
A61C11/00 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021536227
(86)(22)【出願日】2020-02-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-30
(86)【国際出願番号】 EP2020054224
(87)【国際公開番号】W WO2020169596
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2023-02-17
(31)【優先権主張番号】19020077.4
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515304558
【氏名又は名称】デンツプライ・シロナ・インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】519410367
【氏名又は名称】シロナ・デンタル・システムズ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】レスラー、フリーデマン
(72)【発明者】
【氏名】リュッカー、ヨハネス
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】独国特許発明第19702840(DE,C1)
【文献】特開2015-150258(JP,A)
【文献】特開2016-022228(JP,A)
【文献】特開昭56-008048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/045
A61C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者固有の顎関節関係を測定してバーチャル咬合器(2)に転送する方法であって、
バイトフォーク(11)、印象トレイ、又はデュアルアーチ印象トレイのような印象手段(5)を前記患者の口に挿入し、上顎に固定するステップと、
フェイスボウ(4)を前記患者の頭部に固定し、所定の頭蓋基準面(C)に従って位置合わせするステップと、
下端に固定された少なくとも第1の形状嵌合部品(7)を含むトランスファリンケージ(3)を前記フェイスボウ(4)に固定するステップと、
前記印象手段(5)のグリップ(9)上のシリコーン印象材(6)などを用いて前記第1の形状嵌合部品(7)の印象(8)を残すステップと、
前記フェイスボウ(4)、前記トランスファリンケージ(3)、及び前記印象手段(5)を前記患者から取り外すステップと、
前記第1の形状嵌合部品(7)を前記印象手段(5)内の前記印象(8)から分離するステップと
を備え、
前記患者の前記上顎及び下顎のデジタル3D模型を作成するステップと、
表面スキャナを使用することによって、前記上顎の印象の少なくとも一部を含む前記印象手段(5)の表面と、任意選択的に走査ボディが挿入されて/挿入されずに前記第1の形状嵌合部品(7)によって残された前記印象(8)の表面とを検出し、それによって前記印象手段(5)の模型を作成するステップと、
前記上顎模型を前記印象手段(5)の前記模型と相関させるステップであって、印象トレイを使用する場合には省略されるステップと、
前記印象手段の前記模型と、前記第1の形状嵌合部品(7)と前記フェイスボウ(4)との間の変換とに基づいて、前記上顎模型と前記フェイスボウ(4)との間の変換を決定するステップと、
前記決定された変換を使用して、前記上顎模型を前記バーチャル咬合器(2)に転送するステップと、
前記下顎模型に対する前記上顎模型の関係を決定するステップであって、デュアルアーチ印象トレイを使用する場合には省略されるステップと、
上顎模型と下顎模型との間の前記決定された関係に従って、前記下顎模型を前記バーチャル咬合器(2)に転送するステップと
を更に備えることを特徴とする、方法。
【請求項2】
患者固有の顎関節関係を測定してバーチャル咬合器(2)に転送する方法であって、
バイトフォーク(11)、印象トレイ、又はデュアルアーチ印象トレイのような印象手段(5)を口に挿入し、上顎に固定するステップと、
フェイスボウ(4)を前記患者の頭部に固定し、所定の頭蓋基準面(C)に従って位置合わせするステップと、
下端に固定された少なくとも第1の形状嵌合部品(7)を含むトランスファリンケージ(3)を前記フェイスボウ(4)に固定するステップと、
前記第1の形状嵌合部品(7)と第2の形状嵌合部品(10)とが係合状態にあるときに、シリコーン印象材(6)などを用いて前記印象手段(5)に前記第2の形状嵌合部品(10)を固定するステップと、
前記フェイスボウ(4)、前記トランスファリンケージ(3)、及び前記印象手段(5)を前記患者から取り外すステップと、
前記トランスファリンケージ(3)に固定された前記第1の形状嵌合部品(7)から前記第2の形状嵌合部品(10)を解放するステップと、
を備え、
前記患者の前記上顎及び下顎のデジタル3D模型を作成するステップと、
表面スキャナを使用することによって、前記上顎の印象の少なくとも一部を含む前記印象手段(5)の表面と、前記シリコーン印象材(6)を用いて前記印象手段(5)に固定された前記第2の形状嵌合部品(10)の表面とを検出し、それによって前記印象手段(5)の模型を作成するステップと、
前記上顎模型を前記印象手段(5)の前記模型と相関させるステップであって、印象トレイを使用する場合には省略されるステップと、
前記印象手段の前記模型と、前記第1の形状嵌合部品(7)及び前記第2の形状嵌合部品(10)と前記フェイスボウ(4)との間の変換とに基づいて、前記上顎模型と前記フェイスボウ(4)との間の変換を決定するステップと、
前記決定された変換を使用して、前記上顎模型を前記バーチャル咬合器(2)に転送するステップと、
前記下顎模型に対する前記上顎模型の関係を決定するステップであって、デュアルアーチ印象トレイを使用する場合には省略されるステップと、
上顎模型と下顎模型との間の前記決定された関係に従って、前記下顎模型を前記バーチャル咬合器(2)に転送するステップと
を更に備えることを特徴とする、方法。
【請求項3】
前記患者の前記上顎及び下顎のデジタル3D模型を作成するステップが、
口腔内スキャナを用いて前記患者の口内で直接記録するステップ、又は
口腔外スキャナを用いて、以前に生成されたシリコーン印象又は石膏模型を生成するステップ
を含み、前記下顎模型に対する前記上顎模型の関係を決定する前記ステップが、
最終咬合位置における2つの顎を記録するステップ
を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の形状嵌合部品(7)が、1つ又は複数の凹部(12)及び/又は1つ又は複数の凸部(13)を有することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の形状嵌合部品(10)が、前記第1の形状嵌合部品(7)の1つ又は複数の凹部(12)及び/又は1つ又は複数の凸部(13)とそれぞれ解放可能かつ形状嵌合的に係合する前記1つ又は複数の凸部(13)及び/又は前記1つ又は複数の凹部(12)を有することを特徴とする、請求項2又は、請求項2に従属する請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記凹部(12)及び前記凸部(13)が、適合する丸みを帯びた形状及び/又は角のある形状を有することを特徴とする、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記トランスファリンケージ(3)が剛性であることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記トランスファリンケージ(3)は、高さ方向(Y)において前記トランスファリンケージ(3)の前記下端の位置を調整するための調整手段(14)と、前記高さ方向(Y)における前記トランスファリンケージ(3)の前記下端の位置を読み取るための読取手段(15)とを備えていることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記調整手段(14)が、前記高さ方向(Y)及び水平方向(X)において前記トランスファリンケージ(3)の前記下端の前記位置を選択的に調整するように更に構成され、前記読取手段(15)は、前記高さ方向(Y)及び前記水平方向(X)における前記トランスファリンケージ(3)の前記下端の前記位置を読み取るように更に構成されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記トランスファリンケージ(3)が、前記高さ方向(Y)に延在する第1のロッド(16)と、前記水平方向(X)に延在する第2のロッド(17)とを備え、少なくとも前記第1の形状嵌合部品(7)が、前記第2のロッド(17)の端部に固定されており、前記調整手段(14)が、前記第1のロッド(16)と摺動可能に係合された第1のスロット(19)と前記第2のロッド(17)と摺動可能に係合された第2のスロット(20)とを有するスライダ(18)を備え、前記読取手段(15)が、前記第1の形状嵌合部品(7)の前記位置を読み取るための2つのスケール(21)を備えることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顎関節関係に基づいて、歯科補綴物、特にデジタルに構築された歯科補綴物の咀嚼運動をシミュレートするためのバーチャル咬合器及び物理的な咬合器に関する。本発明は、より詳細には、患者固有の顎関節関係を測定し、それをバーチャル咬合器又は物理的な咬合器に転送するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
顎関節(TMJ)関係を測定するために、歯科技術では咬合器が使用される。これらは、TMJに対する患者の顎の静的及び動的な関係を反映し、咀嚼運動をシミュレートする。この咀嚼運動を使用して、全ての歯科補綴物を可能な限り最適にして、患者が歯科補綴物で噛んでも気にならないように、そして正しい噛み合わせが保証されるようにする。物理的な咬合器を使用するためには、物理的な咬合器において最終咬合位置(咬合)に上顎及び下顎の石膏模型を取り付けなければならない。物理的な咬合器における位置は、理想的には、患者固有の顎関節関係を測定することで決定される。測定データが利用不可能な場合、咬合器における顎の位置は標準的な手順に従って推定され、咬合器の設定は、平均的な歯列(いわゆる内側咬合)に従って選択される。
【0003】
最適な歯科補綴物のためには、患者固有のパラメータを決定し、それらを咬合器に転送することが有利である。重要なのは、頭骨にしっかりとつながっている上顎と顎関節との関係である。この関係を決定するために、いわゆるフェイスボウが使用される(図1)。このフェイスボウは、所与の頭蓋基準面、例えば、カンペル平面(図2)又はフランクフルト平面に位置するように患者の頭部に取り付けられる。この目的のために、フェイスボウは通常、ほぼ顎関節の高さにある目、鼻梁、及び外耳道に位置合わせされ、固定される(図3)。次いで、バイトフォークのような印象手段を用いて、上顎との関係が決定される。これは、印象材によって上顎に取り付けられる。バイトフォークは、可動リンケージを介してフェイスボウと連結される。バイトフォーク及びフェイスボウの位置が正しく設定されると、両方のユニットが固定の関係で連結されるように、可動リンケージが固定される。次いで、リンケージ及びバイトフォークが技工所に送られる。技工所では、特別な転送装置を使用して、バイトフォーク-リンケージアセンブリが適切な物理的な咬合器に取り付けられ、上顎の石膏模型が、バイトフォークを介して、知られている正しい位置で物理的な咬合器に転送(プラスタ(plaster))され得る(図4)。
【0004】
CAD/CAM技術はまた、バーチャル咬合器(図5)を使用し、このバーチャル咬合器は、それらの物理的な相対物と同様に、デジタルに構築された歯科補綴物の咀嚼運動をシミュレートするために使用され得る。物理的な咬合器に関して、バーチャル咬合器がそれらを可能な限り患者固有に設定することも有利である。ここでも、それぞれの頭蓋基準面の正しい設定及び顎関節に対する上顎模型の関係が重要である。
【0005】
デンツプライシロナ社のinLab及びCERECソフトウェアを使用する場合、バーチャル咬合器のパラメータはこれまで手動で決定され、ユーザインターフェース上のスライダを介して設定されてきた。咬合平面の方向付け及び切歯点の決定は、模型軸ステップにおいて手動で実行される。この方向付けは、記録された顎模型に基づいてのみ行われ得る。患者の頭蓋骨の解剖学的特徴(例えば、カンペル平面)を直接参照することはできない。フェイスボウ情報の直接送信はサポートされていない。
【0006】
他のCAD/CAMソリューションは、物理的な咬合器内にキャストされる石膏模型を、更にバーチャル咬合器に直接転送することをサポートする。この目的のために、それぞれの物理的な咬合器に適合するバーチャルな相対物がソフトウェアに格納される。石膏模型は、物理的な咬合器から取り外されてトランスファホルダ(Amann Girrbach社)に挿入されるか、トランスファプレート(3Shape社)に取り付けられて関連する表面スキャナに挿入される。トランスファホルダと咬合器との間の幾何学的関係は、ソフトウェアに格納される。走査により、トランスファホルダに対する石膏模型の相対位置がキャプチャされる。この情報を用いて、走査された顎模型をバーチャル咬合器内で正しい状態に配置して位置合わせさせることができる。このソリューションの欠点は、まず石膏模型を作成して、上述した方法で物理的に咬合させなければならないことである。
【0007】
独国特許出願公開第102009044147号明細書(Broghammer及びNoack,Amann Girrbach AG)には、物理的な咬合器の場合と同様に、上顎の印象を有するバイトフォークをトランスファホルダに転送することが開示されている。次いで、バイトフォークが、このトランスファホルダで走査される。ソフトウェアに格納されている、バーチャル咬合器に対するトランスファホルダの幾何学的パラメータにより、印象走査が、バーチャル咬合器に直接転送され得る。この方法では、それぞれの咬合器模型に適合するトランスファホルダが依然として必要とされる。
国際公開第2011/103876号には、動的なバーチャル咬合器が開示されている。
【0008】
国際公開第2016/034672号(Fiskerら,3Shape AS)には、患者の上顎の歯構造と関係があり得る可動ピンを有するフェイスボウが開示されている。フェイスボウには、位置マーカも取り付けられている。最初に、フェイスボウが患者の頭部に取り付けられ、それに応じてピンが位置合わせされ固定される。3Dスキャナを用いて、患者の歯列に関連してピンの3D模型が作成される。この模型には、フェイスボウに取り付けられた位置マーカも含まれていなければならない。記録される3D模型は、システムに格納されたフェイスボウの3D模型と合致するように作られる。従って、患者の歯列とフェイスボウとの間の幾何学的変換が知られる。これは、バーチャル咬合器における歯科補綴物模型の転送に使用され得る。この方法の利点は、物理的印象を生成することなく、かつ石膏模型を生成することなく、フェイスボウ情報がバーチャル咬合器に直接転送され得ることである。しかしながら、3Dスキャナ、例えば口腔内表面スキャナを用いて患者の歯列に対するフェイスボウの3D模型をキャプチャすることは、非常に高価であり得る。
独国特許第19702840号明細書には、フェイスボウが開示されている。
【0009】
他のシステム、例えば、ジルコンザーン社のプレーンシステム(登録商標)を備えたフェイスハンターでは、患者の頭部が3D表面スキャナ(フェイススキャナ)を用いて検出され、解剖学的特徴、例えばカンペル平面が、3D模型から直接導出されるか、又は追加的に記録されたフェイスボウによって決定される。患者の頭部の3D模型と歯列の3D模型との間の関係を確立するために、患者の口から突出する位置マーカを有するバイトフォークが患者の口に挿入される。位置マーカは、患者の頭部の3D模型で検出される。バイトフォークの表面走査により、歯列模型と位置マーカとの間の関係が決定され、更には歯列模型と患者の頭部模型との間の関係が決定される。
【0010】
更に、いわゆる顎運動追跡システム、例えばSiCAT又はZebrisでは、静的な関節データだけでなく、動的な関節データも検出することが可能である。ここでは、フェイスボウが頭蓋骨に取り付けられ、位置合わせされる。加えて、患者の下顎には、相手部品が固定される。下顎は、フェイスボウ上のセンサによって検出される位置マーカを含む。これにより、患者の頭蓋骨、ひいては上顎に対する下顎の動きが決定され得る。これらの患者固有の軌道から、全ての関節関連データを導出することができる。
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、従来技術の欠点を克服すること、及び患者固有の顎関節関係をより複雑でない方法で測定してそれをバーチャル咬合器又は物理的な咬合器に転送することを可能にすることである。
【0012】
この目的は、請求項1及び2に定義される方法のいずれかによって達成されている。従属請求項の主題は、本発明の更なる達成を定義する。
【0013】
本発明によれば、トランスファリンケージの下端に固定された少なくとも1つの形状嵌合部品(以下、第1の形状嵌合部品と呼ぶ)は、患者の口から突出するバイトフォークのような印象手段のグリップ上に注がれる印象材に印象を解放可能に残すために使用される。それによって、フェイスボウの位置及び向きは、例えば歯科医によって、印象手段上の上顎の印象に、又は印象手段上の上顎の印象に隣接する印象に直接伝えられ得る。印象材が硬化した後、第1の形状嵌合部品は、それを引き離すことによって印象手段上のその印象から解放される。印象手段を歯科技工所に送った後、第1の形状嵌合部品の印象及び印象手段上の上顎の印象の少なくとも一部が表面スキャナを介して検出され、デジタルに記録され、このようにして、顎模型が、患者固有の方法でバーチャル咬合器内に配置され得る。ここで、フェイスボウの位置及び位置合わせに関する情報は、第1の形状嵌合部品によって生成された印象を介して印象手段に転送される。第1の形状嵌合部品は、情報ができるだけ正確に印象材に刷り込まれるように成形されなければならない。位置を検出するために、代替的に、第1の形状嵌合部品の形状を有するスキャンボディが印象内に導入され得る。上顎模型とバーチャル咬合器との間の変換を正しく決定するためには、形状嵌合部品とフェイスボウとバーチャル咬合器との間の変換が、バーチャル咬合器を管理するコンピュータシステムに予め保存(deposit)されていなければならない。フェイスボウ及びバーチャル咬合器を考慮してトランスファリンケージが構築される場合、この変換は、CADデータから直接導出され、その後コンピュータシステムに保存され得る。従って、本発明は、既知の方法よりも複雑でない方法で患者固有の顎関節関係をキャプチャし、それをバーチャル咬合器に転送することを可能にする。患者固有の顎関節関係に基づくデジタル歯科補綴物は、より良好にシミュレートされ、後処理をあまり必要とせず、患者によってより迅速に受け入れられ得る。これは、バイトスプリントのような他の歯科器具にも当てはまる。なお、本発明の技法は、バーチャル咬合器に限られたものではなく、物理的な咬合器にも適用可能である。例えば、印象手段を技工所に送った後、印象手段は、物理的な咬合器内のトランスファリンケージのコピーと接合され、その後、上/下顎模型が物理的な咬合器内の正しい位置に配置され得る。従って、歯科医は、印象手段を歯科技工所に送らなければならないが、トランスファリンケージは、更なる使用のために歯科医の手元に残り得る。
【0014】
本発明によれば、第1の形状嵌合部品と解放可能かつ形状嵌合的に係合され、患者の口から突出する印象手段のグリップ上に注がれる印象材に固定され得る追加の形状嵌合部品(以下、第2の形状嵌合部品と呼ぶ)を使用することも可能である。それによって、フェイスボウの位置及び向きは、例えば歯科医によって印象手段に直接伝えられ得る。それによって、第2の形状嵌合部品は、印象材によって印象手段に連結され、そこに留まり、上顎の印象と共に表面スキャナで検出され得る。これにより、フェイスボウによって決定された上顎模型と頭蓋基準面との間の幾何学的関係が知られ、バーチャル咬合器を設定するために使用され得る。第2の形状嵌合部品は、それ自体とトランスファリンケージ上のその適合する相手部品との間に明確な幾何学的関係があるように設計される。加えて、その位置及び向きが表面スキャナを用いて明確に決定され得るように設計されている。印象手段を技工所に送った後、第2の形状嵌合部品の表面及び上顎の印象の少なくとも一部が表面スキャナによって検出され得、顎模型が、患者固有の方法でバーチャル咬合器内に配置され得る。
【0015】
本発明によれば、バーチャル咬合器へのフェイスボウ情報の転送は、2つの主要なステップで行われる。第1のステップでは、フェイスボウ情報が、印象手段の上に第1の形状嵌合部品によって生成された印象を通して、又は印象手段の上にプラスタされた第2の形状嵌合部品を通して印象手段に転送される。第2の主要なステップでは、印象手段の模型が表面スキャナによって作成され、顎模型がデジタル化され、印象の模型と保存された変換とを使用することによってバーチャル咬合器に転送される。第1の主要なステップは、歯科医で実行され得、第2の主要なステップは、歯科技工所で実行され得る。しかしながら、この方法は、口腔内スキャナを使用する場合の純粋なチェアサイド供給にも適している。
【0016】
本発明は、フェイスボウ情報をCAD/CAMに直接転送する能力を提供し、ここでは、模型の位置及び位置合わせが、印象手段の走査から直接導出され得る。これにより、最初に物理的な咬合器内に石膏模型をセットし、次にそれらの向きをバーチャル咬合器に転送する必要がなくなる。印象手段を使用して走査する場合、石膏模型の製造を完全に省略することも可能である。本発明によれば、フェイスボウ情報を印象手段に転送することにより、既存の表面スキャナを用いて位置及び向きを決定され得る。追加の測定装置は不要である。歯科医は、印象手段を歯科技工所に送るだけでよい。フェイスボウ及びトランスファリンケージは、歯科医の手元に残り得、更に使用され得る。本発明は、任意のフェイスボウ及び物理的な咬合器/バーチャル咬合器を用いて実現され得る。較正によって、未知のフェイスボウもシステムに組み込まれ得る。本発明は、頭蓋基準面を決定することができ、トランスファリンケージとリンクさせることができる任意のフェイスボウ又は同様の装置と共に使用され得る。従って、顎関節関係を測定するための確立された方法は、歯科診療と技工所との間で更に最適化されデジタル化され得る。
【0017】
本発明によれば、印象手段は、バイトフォーク、印象トレイ、又はデュアルアーチ印象トレイであり得る。
【0018】
本発明によれば、第1及び第2の形状嵌合部品は、1つ又は複数の凹部及び/又は1つ又は複数の凸部を有し得る。これらの凹部及び凸部は、丸みを帯びた形状又は角のある形状を有し得る。
【0019】
本発明によれば、下端に第1の形状嵌合部品を有するトランスファリンケージは、フェイスボウが患者の頭部に固定されたときに、トランスファリンケージの下端が、患者の口から突出する印象手段のグリップの近くに位置するように設計される。トランスファリンケージは、剛性であり得る。代替的に、印象手段のグリップに対するトランスファリンケージの位置決めを容易にするために、トランスファリンケージは、高さ方向及び/又は水平方向においてその下端の位置を変えることができるように、1つ又は複数の調整手段によって調整可能であり得る。調整手段は、調整のためのジョイント機構、ねじ機構、及び/又はスライディング機構を含み得る。調整された位置は、スケールなどの読取手段を通して読み取ることができる。各スケールの値を読み取り、物理的な咬合器/バーチャル咬合器に転送する必要がある。
【0020】
本発明によれば、フェイスボウと印象手段との間の異なる距離を表すために、必要に応じて、異なる長さのいくつかの剛性の又は調節可能なトランスファリンケージが設けられ得る。トランスファリンケージは、フェイスボウから印象手段のグリップに向かって延在する1つ又は複数のロッド又は少なくとも部分的に直線で部分的に湾曲したバーを含み得る。印象手段のグリップは、全ての解剖学的状況に対してフェイスボウの位置及び位置合わせの転送が可能なほど大きく設計される。ロッド/バーは、患者の頭部の方を、特に印象手段のグリップの方を向くように、垂直方向及び/又は水平方向に位置合わせされ得る。ロッド/バーは、フェイスボウに堅固に又は調整可能に取り付けられ得る。ロッド/バーは、互いに堅固に又は調整可能に取り付けられ得る。第1の形状嵌合部品は、垂直又は水平ロッド/バーの端部に堅固に又は調整可能に取り付けられ得る。複数の長さのトランスファリンケージのセット、特に複数の長さのロッド/バーのセットが、バーチャル咬合器に転送されなければならない。いずれの場合も、調整された位置を読み取り、物理的な咬合器/バーチャル咬合器に転送する必要がある。
【0021】
以下の説明では、例示的な実施形態を使用し、図面を参照することによって、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】従来技術による、フェイスボウ、トランスファリンケージ、及びバイトフォークの概略図である。
図2】上顎の方向付けのための頭蓋基準面としてのカンペル平面の概略図である。
図3】患者の頭部に取り付けられたときの、従来技術による図1のフェイスボウ、トランスファリンケージ、及びバイトフォークの概略図である。
図4】物理的な咬合器に取り付けられたトランスファリンケージ及びバイトフォークの概略図であり、上顎模型及び下顎模型が、従来技術に従ってそれらの正しい位置にプラスタされている。
図5】inLabソフトウェアのバーチャル咬合器の概略図である。
図6】本発明の第1の実施形態による、バイトフォーク上の印象材に第1の形状嵌合部品の印象を残すプロセスで使用される装置の概略図である。
図7】本発明の第2の実施形態による、印象材を通してバイトフォーク上に第2の形状嵌合部品をプラスタするプロセスで使用される装置の概略図である。
図8】グリップ上にプラスタされた第2の形状嵌合部品と上顎の印象とを有する、図7の印象手段の概略上面図である。
図9】本発明の第3の実施形態による調整手段を備えたトランスファリンケージを含む装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面に示された参照番号は、例示的な実施形態の以下の説明において参照される以下の要素を表す。
1: 装置
2: バーチャル咬合器
3: トランスファリンケージ
4: フェイスボウ
5: 印象手段
6: 印象材
7: 第1の形状嵌合部品
8: 印象
9: グリップ
10: 第2の形状嵌合部品
11: バイトフォーク
12: 凹部
12’: 凹部
13: 凸部
13’: 凸部
14: 調整手段
15: 読取手段
16: 第1のロッド
17: 第2のロッド
18: スライダ
19: 第1のスロット
20: 第2のスロット
21: スケール
Y: 高さ方向
X: 水平方向
C: 頭蓋基準面
【0024】
図6は、患者固有の顎関節関係を測定し、それをバーチャル咬合器(2)又は物理的な咬合器に転送するための、本発明の第1の実施形態による装置(1)の概略図である。
【0025】
装置(1)は、トランスファリンケージ(3)と、フェイスボウ(4)と、印象手段(5)とを有する。トランスファリンケージ(3)は、その上端がフェイスボウ(4)に取り付けられている。印象手段(5)は、印象材(6)を保持し、上記印象材(6)を通して患者の上顎及び/又は下顎の印象を採得するのに適している。装置(1)は、患者の口から突出する印象手段(5)のグリップ(9)上に配置される印象材(6)上に印象(8)を解放可能に残すための、トランスファリンケージ(3)の下端に固定された少なくとも第1の形状嵌合部品(7)を有する。歯科医は、図6の装置(1)を次のように使用する。バイトフォーク(11)、印象トレイ、又はデュアルアーチ印象トレイのような印象手段(5)を患者の口に挿入し、患者の上顎及び/又は下顎に固定する。次に、フェイスボウ(4)を患者の頭部に固定し、頭蓋基準面(C)に従って位置合わせする。その後、下端に固定された少なくとも第1の形状嵌合部品(7)を含むトランスファリンケージ(3)をフェイスボウ(4)に取り付ける。その後、シリコーン印象材(6)などを印象手段(5)のグリップ(9)上に配置して、第1の形状嵌合部品(7)が印象(8)を残すようにする。印象手段(5)のタイプに応じて、同様に、上顎及び/又は下顎の印象を採得する。例えば、バイトフォーク(11)を使用する場合、上顎の印象だけを採得する。印象材(6)が硬化した後、フェイスボウ(4)、トランスファリンケージ(3)、及び印象手段(5)を患者から取り外す。最後に、図6の下部に示すように、第1の形状嵌合部品(7)を印象手段(5)内の印象(8)から分離して、印象手段(5)を歯科技工所に送る。
【0026】
図7は、患者固有の顎関節関係を測定し、それをバーチャル咬合器(2)又は物理的な咬合器に転送するための、本発明の第2の実施形態による装置(1)の概略図である。図7に示すように、装置(1)は、第1の形状嵌合部品(7)と解放可能かつ形状嵌合的に係合され得る第2の形状嵌合部品(10)を更に含む。第2の形状嵌合部品(10)は、患者の口から突出する印象手段(5)のグリップ(9)上に注がれる印象材(6)にプラスタされ得る。歯科医は、図7の装置(1)を次のように使用する。バイトフォーク(11)、印象トレイ、又はデュアルアーチ印象トレイのような印象手段(5)を患者の口に挿入し、患者の上顎及び/又は下顎に固定する。次に、フェイスボウ(4)を患者の頭部に固定し、カンペル平面(C)に従って位置合わせする。その後、下端に固定された少なくとも第1の形状嵌合部品(7)を含むトランスファリンケージ(3)をフェイスボウ(4)に取り付ける。その後、第2の形状嵌合部品(10)を第1の形状嵌合部品(7)と解放可能に係合させる。次に、第1の形状嵌合部品(7)と第2の形状嵌合部品(10)とが係合状態にあるときに、シリコーン印象材(6)などを用いて第2の形状嵌合部品(10)を印象手段(5)にプラスタする。印象手段(5)のタイプに応じて、同様に、上顎及び/又は下顎の印象を採得する。例えば、バイトフォーク(11)を使用する場合、上顎の印象だけを採得する。硬化した後、フェイスボウ(4)、トランスファリンケージ(3)、及び印象手段(5)を患者から取り外す。次に、図7の下部に示すように、第2の形状嵌合部品(10)と印象手段(5)を一緒に、トランスファリンケージ(3)に固定された第1の形状嵌合部品(7)から分離して、印象手段(5)を歯科技工所に送る。図8は、図7の印象手段(5)の概略上面図である。図8に示すように、印象手段(5)は、シリコーン印象材(6)などを用いて固定された第2の形状嵌合部品と上顎の印象とを保持する。
【0027】
図7に示すように、第1の形状嵌合部品(7)は、第2の形状嵌合部品(10)の凸部(13’)及び凹部(12’)と係合する凹部(12)及び凸部(13)を有する。
【0028】
本発明によれば、バーチャル咬合器(2)又は物理的な咬合器へのフェイスボウ(4)情報、すなわち位置及び向きの転送は、2つの主要なステップで行われる。第1の主要なステップでは、フェイスボウ(4)の位置及び向きが、印象手段の上に第1の形状嵌合部品(7)によって生成された印象(8)を通して、又は印象手段の上にプラスタされた第2の形状嵌合部品(10)を通して印象手段(5)に転送される。第1の主要なステップは、歯科医で実行され得る。第2の主要なステップでは、情報がバーチャル咬合器(2)又は物理的な咬合器に転送される。第2の主要なステップは、歯科技工所で実行され得る。
【0029】
患者固有の顎関節関係をバーチャル咬合器(2)に転送するために、歯科医又は歯科技工士は、次のように第2の主要なステップに図6又は図7の装置(1)を使用する。患者の上顎及び下顎のデジタル3D模型を作成する。次に、上顎の印象の少なくとも一部を含む印象手段(5)の表面及び第1の形状嵌合部品(7)によって残された印象(8)の表面(図6参照)又は印象材(6)を用いて印象手段(5)に固定された第2の形状嵌合部品(10)の表面(図7参照)を、表面スキャナを使用することによって検出し、これにより印象手段(5)の模型を作成する。次に、上顎模型を印象手段(5)の模型と相関させる。このステップは、(個別の)印象トレイが印象手段(5)として使用された場合には省略され得る。次に、印象手段(5)の模型と、第1の形状嵌合部品(7)/第2の形状嵌合部品(10)とフェイスボウ(4)との間の保存された変換とに基づいて、上顎模型とフェイスボウ(4)との間の変換を決定する。次に、決定された変換を使用することによってバーチャル咬合器(2)に上顎模型を転送する。次に、上顎模型に対する下顎模型の関係を決定する。このステップは、(個別の)デュアルアーチ印象トレイが使用された場合には省略され得る。次に、上顎模型と下顎模型との間の決定された関係に従って、下顎模型をバーチャル咬合器(2)に転送する。
【0030】
本発明によれば、上顎及び下顎のデジタル3D模型は、口腔内スキャナを用いて、患者の口内で直接記録することによって作成される。代替的に、上顎及び下顎のデジタル3D模型は、口腔外スキャナを用いて、以前に生成されたシリコーン印象又は石膏模型を記録することによって作成される。本発明によれば、下顎に対する上顎模型の関係は、最終咬合位置における2つの顎を記録することによって決定される。
【0031】
本発明によれば、フェイスボウ(4)情報、すなわち位置及び向きの転送は、また、物理的な咬合器に転送され得る。患者固有の顎関節関係を物理的な咬合器に転送するために、歯科医又は歯科技工士は、次のように第2の主要なステップに図6又は図7の装置(1)を使用する。印象手段(5)を歯科技工所に送った後、トランスファリンケージ(3)のコピー/複製物を物理的な咬合器に取り付ける。次に、印象手段(5)を、物理的な咬合器内のトランスファリンケージ(3)のコピーと接合する。次に、上顎模型/下顎模型を物理的な咬合器内の正しい位置で接合する。代替的に、元のトランスファリンケージ(3)が使用され得る。
【0032】
図6及び図7に示すように、本発明の第1及び第2の実施形態によれば、トランスファリンケージ(3)は剛性である。
【0033】
代替的に、図6及び図7の装置(1)には、調節可能なトランスファリンケージ(3)が設けられ得る。図9は、本発明の第3の実施形態による装置(1)の概略図であり、高さ方向(Y)及び水平方向(X)においてトランスファリンケージ(3)の下端の位置を選択的に調整するように構成された調整手段(14)と、高さ方向(Y)及び水平方向(X)におけるトランスファリンケージ(3)の下端の位置を読み取るように構成された読取手段(15)とを有する。図9に示すように、トランスファリンケージ(3)は、高さ方向(Y)に延在する第1のロッド(16)と、水平方向(X)に延在する第2のロッド(17)とを備える。図9に示すように、第1の形状嵌合部品(7)は、第2のロッド(17)の端部に固定されている。図9に示すように、調整手段(14)は、第1のロッド(16)と摺動可能に係合された第1のスロット(19)と、第2のロッド(17)と摺動可能に係合された第2のスロット(20)とを有するスライダ(18)を備える。読取手段(15)は、第1の形状嵌合部品(7)の調整された位置を読み取るための2つのスケール(21)を有する。

以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 患者固有の顎関節関係を測定してバーチャル咬合器(2)に転送する方法であって、
バイトフォーク(11)、印象トレイ、又はデュアルアーチ印象トレイのような印象手段(5)を前記患者の口に挿入し、上顎に固定するステップと、
フェイスボウ(4)を前記患者の頭部に固定し、所定の頭蓋基準面(C)に従って位置合わせするステップと、
下端に固定された少なくとも第1の形状嵌合部品(7)を含むトランスファリンケージ(3)を前記フェイスボウ(4)に固定するステップと、
前記印象手段(5)のグリップ(9)上のシリコーン印象材(6)などを用いて前記第1の形状嵌合部品(7)の印象(8)を残すステップと、
前記フェイスボウ(4)、前記トランスファリンケージ(3)、及び前記印象手段(5)を前記患者から取り外すステップと、
前記第1の形状嵌合部品(7)を前記印象手段(5)内の前記印象(8)から分離するステップと
を備え、
前記患者の前記上顎及び下顎のデジタル3D模型を作成するステップと、
表面スキャナを使用することによって、前記上顎の印象の少なくとも一部を含む前記印象手段(5)の表面と、任意選択的に走査ボディが挿入されて/挿入されずに前記第1の形状嵌合部品(7)によって残された前記印象(8)の表面とを検出し、それによって前記印象手段(5)の模型を作成するステップと、
前記上顎模型を前記印象手段(5)の前記模型と相関させるステップであって、印象トレイを使用する場合には省略されるステップと、
前記印象手段の前記模型と、前記第1の形状嵌合部品(7)と前記フェイスボウ(4)との間の変換とに基づいて、前記上顎模型と前記フェイスボウ(4)との間の変換を決定するステップと、
前記決定された変換を使用して、前記上顎模型を前記バーチャル咬合器(2)に転送するステップと、
前記下顎模型に対する前記上顎模型の関係を決定するステップであって、デュアルアーチ印象トレイを使用する場合には省略されるステップと、
上顎模型と下顎模型との間の前記決定された関係に従って、前記下顎模型を前記バーチャル咬合器(2)に転送するステップと
を更に備えることを特徴とする、方法。
[2] 患者固有の顎関節関係を測定してバーチャル咬合器(2)に転送する方法であって、
バイトフォーク(11)、印象トレイ、又はデュアルアーチ印象トレイのような印象手段(5)を口に挿入し、上顎に固定するステップと、
フェイスボウ(4)を前記患者の頭部に固定し、所定の頭蓋基準面(C)に従って位置合わせするステップと、
下端に固定された少なくとも第1の形状嵌合部品(7)を含むトランスファリンケージ(3)を前記フェイスボウ(4)に固定するステップと、
前記第1の形状嵌合部品(7)と第2の形状嵌合部品(10)とが係合状態にあるときに、シリコーン印象材(6)などを用いて前記印象手段(5)に前記第2の形状嵌合部品(10)を固定するステップと、
前記フェイスボウ(4)、前記トランスファリンケージ(3)、及び前記印象手段(5)を前記患者から取り外すステップと、
前記トランスファリンケージ(3)に固定された前記第1の形状嵌合部品(7)から前記第2の形状嵌合部品(10)を解放するステップと、
を備え、
前記患者の前記上顎及び下顎のデジタル3D模型を作成するステップと、
表面スキャナを使用することによって、前記上顎の印象の少なくとも一部を含む前記印象手段(5)の表面と、前記シリコーン印象材(6)を用いて前記印象手段(5)に固定された前記第2の形状嵌合部品(10)の表面とを検出し、それによって前記印象手段(5)の模型を作成するステップと、
前記上顎模型を前記印象手段(5)の前記模型と相関させるステップであって、印象トレイを使用する場合には省略されるステップと、
前記印象手段の前記模型と、前記第1の形状嵌合部品(7)及び前記第2の形状嵌合部品(10)と前記フェイスボウ(4)との間の変換とに基づいて、前記上顎模型と前記フェイスボウ(4)との間の変換を決定するステップと、
前記決定された変換を使用して、前記上顎模型を前記バーチャル咬合器(2)に転送するステップと、
前記下顎模型に対する前記上顎模型の関係を決定するステップであって、デュアルアーチ印象トレイを使用する場合には省略されるステップと、
上顎模型と下顎模型との間の前記決定された関係に従って、前記下顎模型を前記バーチャル咬合器(2)に転送するステップと
を更に備えることを特徴とする、方法。
[3] 前記患者の前記上顎及び下顎のデジタル3D模型を作成するステップが、
口腔内スキャナを用いて前記患者の口内で直接記録するステップ、又は
口腔外スキャナを用いて、以前に生成されたシリコーン印象又は石膏模型を生成するステップ
を含み、前記下顎模型に対する前記上顎模型の関係を決定する前記ステップが、
最終咬合位置における2つの顎を記録するステップ
を含むことを特徴とする、[1]又は[2]に記載の方法。
[4] 前記印象手段(5)が、バイトフォーク(11)又は印象トレイ又はデュアルアーチ印象トレイを備えることを特徴とする、[1]乃至[3]のいずれか一項に記載の方法。
[5] 前記第1の形状嵌合部品(7)が、1つ又は複数の凹部(12)及び/又は1つ又は複数の凸部(13)を有することを特徴とする、[1]乃至[4]のいずれか一項に記載の方法。
[6] 前記第2の形状嵌合部品(10)が、前記第1の形状嵌合部品(7)の1つ又は複数の凹部(12)及び/又は1つ又は複数の凸部(13)とそれぞれ解放可能かつ形状嵌合的に係合する前記1つ又は複数の凸部(13)及び/又は前記1つ又は複数の凹部(12)を有することを特徴とする、[2]に従属する[1]乃至[5]のいずれか一項に記載の方法。
[7] 前記凹部(12)及び前記凸部(13)が、適合する丸みを帯びた形状及び/又は角のある形状を有することを特徴とする、[5]又は[6]に記載の方法。
[8] 前記トランスファリンケージ(3)が剛性であることを特徴とする、[1]乃至[7]のいずれか一項に記載の方法。
[9] 装置(1)が、高さ方向(Y)において前記トランスファリンケージ(3)の前記下端の位置を調整するための調整手段(14)と、前記高さ方向(Y)における前記トランスファリンケージ(3)の前記下端の位置を読み取るための読取手段(15)とを更に備えることを特徴とする、[1]乃至[8]のいずれか一項に記載の方法。
[10] 前記調整手段(14)が、前記高さ方向(Y)及び水平方向(X)において前記トランスファリンケージ(3)の前記下端の前記位置を選択的に調整するように更に構成され、前記読取手段(15)は、前記高さ方向(Y)及び前記水平方向(X)における前記トランスファリンケージ(3)の前記下端の前記位置を読み取るように更に構成されることを特徴とする、[9]に記載の方法。
[11] 前記トランスファリンケージ(3)が、前記高さ方向(Y)に延在する第1のロッド(16)と、前記水平方向(X)に延在する第2のロッド(17)とを備え、少なくとも前記第1の形状嵌合部品(7)が、前記第2のロッド(17)の端部に固定されており、前記調整手段(14)が、前記第1のロッド(16)と摺動可能に係合された第1のスロット(19)と前記第2のロッド(17)と摺動可能に係合された第2のスロット(20)とを有するスライダ(18)を備え、前記読取手段(15)が、前記第1の形状嵌合部品(7)の前記位置を読み取るための2つのスケール(21)を備えることを特徴とする、[10]に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9