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特許7476217試料物質の機械的性質を評価するための光学触知装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】試料物質の機械的性質を評価するための光学触知装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20240422BHJP
   A61B 3/16 20060101ALI20240422BHJP
   A61B 1/317 20060101ALI20240422BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
G01N21/27 Z
A61B3/16
A61B1/317
A61B1/00 554
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021547600
(86)(22)【出願日】2019-10-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 AU2019051171
(87)【国際公開番号】W WO2020082133
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】2018904043
(32)【優先日】2018-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521177315
【氏名又は名称】オンコア、メディカル、プロプライエタリー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ONCORES MEDICAL PTY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(72)【発明者】
【氏名】ブレンダン、フランシス、ケネディ
(72)【発明者】
【氏名】チー、ファン
(72)【発明者】
【氏名】ローワン、ウィリアム、サンダーソン
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-42220(JP,A)
【文献】特表2018-507023(JP,A)
【文献】特表2016-508783(JP,A)
【文献】特表2013-538592(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104181036(CN,A)
【文献】Jong-Ha LEE et al.,Optical-Based Artificial Palpation Sensors for Lesion Characterization,Sensors,2013年,Vol. 13,No. 8,PP.11097-11113
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/01
G01N 21/17-G01N 21/61
G01N 3/00-G01N 3/62
A61B 1/00-A61B 1/32
A61B 3/00-A61B 3/18
A61B 5/00
A61B 10/00
A61M 25/00-A61M 25/18
G01B 11/00-G01B 11/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料物質の機械的性質を評価するための光学触知装置であって、
感知部分を有する本体と、
前記本体の前記感知部分に配置された感知層であって、前記試料物質の表面エリアと直接または間接的に接触するように配置された感知表面を有し、前記感知層は、変形可能であり、規定された変形に依存する光学的性質を有する、感知層と、
前記感知層の少なくとも一部分を透過された光を検出するように配置された光検出器と、を備え、
前記光学触知装置は、前記感知層の前記感知表面が前記試料物質の前記表面エリアと直接または間接的に接触している状態で、前記感知層と、前記試料物質の前記表面エリアの少なくとも一部分との両方を通じて圧力が印加されたときに、前記感知層が変形するとともに、前記感知層の前記規定された変形に依存する光学的性質のために、前記感知層の少なくとも一部分を透過した前記光を検出することによって前記試料物質の前記機械的性質が測定可能となるように、構築されるものであり、
前記感知層は、軸方向荷重がかかると前記感知層の体積が変化するように圧縮可能であり、
前記規定された変形に依存する光学的性質は、圧縮に依存する光学特性であり、
前記感知層は、圧縮荷重が印加されるとより透明になるように構成されている、光学触知装置。
【請求項2】
前記感知層の前記規定された変形に依存する光学的性質が、圧縮に依存する透過率、偏光、光吸収、または光散乱である、請求項1に記載の光学触知装置。
【請求項3】
前記規定された変形に依存する光学的性質が、前記感知層の少なくとも一部分を透過される光の波長範囲に関係し、前記感知層の少なくとも一部分を透過される前記光が、変形に依存する色を有する、請求項1に記載の光学触知装置。
【請求項4】
前記光学触知装置が、手持ち型装置またはビデオ内視鏡である、請求項1から3のいずれか一項に記載の光学触知装置。
【請求項5】
前記感知層内に光を向けるための光源をさらに備え、前記光源および前記光検出器が前記本体の中に配置される、請求項1から4のいずれか一項に記載の光学触知装置。
【請求項6】
前記装置が前記試料物質の表面に対して移動または走査されるときに前記試料物質に対する前記感知層および/または前記装置の位置を検出するための動き検出器をさらに備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の光学触知装置。
【請求項7】
前記機械的性質が弾性であり、前記検出される光は、前記印加された圧力に応答した前記感知層にわたる応力および/または変形の分布を示し、応力および/または変形の前記分布は、前記試料物質の前記機械的性質に関連している、請求項1から6のいずれか一項に記載の光学触知装置。
【請求項8】
力と、それにより生じる前記感知表面の領域の変位とを測定するために前記感知層の前記感知表面に配置された少なくとも1つの変位および力測定装置をさらに備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の光学触知装置。
【請求項9】
前記試料物質が生物学的組織または生物学的物質であり、
前記感知層は、
圧縮荷重がかかっていない非圧縮状態と、
圧縮荷重が印加され、前記感知層が前記非圧縮状態にあるときよりも透明になる圧縮状態と、の間で遷移可能であり、
前記感知層が空気空洞を含み、
前記感知層は、横方向に伸張することなく圧縮されるように構成されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の光学触知装置。
【請求項10】
前記光検出器がカメラを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の光学触知装置。
【請求項11】
前記カメラが立体カメラである、請求項10に記載の光学触知システム。
【請求項12】
前記光検出器がスマートフォン型の装置を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の光学触知装置。
【請求項13】
前記スマートフォン型の装置が、着脱可能なマイクロレンズ、および/または前記試料物質を配置するための3Dプリンティングされた台を備える、請求項12に記載の光学触知装置。
【請求項14】
前記光学触知装置がロボット外科装置の一部をなす、請求項1から13のいずれか一項に記載の光学触知装置。
【請求項15】
前記光学触知装置の少なくとも一部またはすべての構成要素が、バルーン・カテーテルにまたはその内部に配置され、前記バルーン・カテーテルは、使用時に前記バルーン・カテーテルが配置される前記試料物質の一部分の機械的性質が、前記光学触知装置を使用して判定可能となるように構築される、請求項1から11のいずれか一項に記載の光学触知装置。
【請求項16】
前記感知層が、前記バルーン・カテーテルのバルーンの外側に配置される、および/または前記バルーンに取り付けられる、請求項15に記載の光学触知装置。
【請求項17】
前記光学触知装置の少なくとも一部またはすべての構成要素が、針、プローブ、または関節鏡にまたはその中に配置され、前記針、プローブ、または関節鏡は、前記針、プローブ、または関節鏡が使用時に配置される前記試料物質の前記機械的性質が判定可能となるように前記感知層が配置される窓を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の光学触知装置。
【請求項18】
手袋を含み、前記光学触知装置の構成要素が前記手袋に組み込まれ、ユーザが前記手袋を着用したときに、前記光学触知装置の前記構成要素を備える前記手袋の部分を前記試料物質の上で前記ユーザが動かすことにより、光学触知測定が可能である、請求項1から11のいずれか一項に記載の光学触知装置。
【請求項19】
前記感知層がレンズの形態で提供される、請求項1から11のいずれか一項に記載の光学触知装置。
【請求項20】
前記光学触知装置が、患者の眼に配置して、前記眼の圧力および/または剛性の変動を判定するために構築される、請求項19に記載の光学触知装置。
【請求項21】
試料物質の機械的性質を評価するためのシステムであって、
請求項1から20のいずれか一項に記載の光学触知装置と、
前記光学触知装置に結合され、光検出器によって検出された光に関連する情報を示す信号を受信するように構成されたプロセッサと、を備え、
前記情報は、前記試料物質の前記機械的性質の指標を得るために使用可能である、システム。
【請求項22】
前記プロセッサが、有線方式で、またはWi-FiもしくはBluetooth技術を使用するなどしてワイヤレスに、前記光学触知装置と結合される、請求項21に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、光学触知を使用して試料物質の機械的性質を評価するための装置および方法に関し、より詳細には、これに限定されないが、試料物質の弾性を特徴付けるためのデジタル・カメラに基づく光学触知装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学撮像、超音波撮像、およびMRIに基づくエラストグラフィ技術は、一般に生物学的組織などの試料物質中の変形を測定するため、ならびに試料の剛性および他の機械的性質を評価するために使用される。
【0003】
近年、光干渉断層撮影(OCT)に基づくエラストグラフィが大きく発展しており、これは、数マイクロメートルの分解能で試料物質内部の数ミリメートルに至る深さの情報を提供するものである。例えば、本出願人は光学触知(OP(optical palpation))技術を開発しており、それはPCT国際特許出願第PCT/AU2016/000019号に開示されている。開示されたOP技術は、生物学的試料の表面に押し付けられて圧縮される順応性感知層を使用し、また、圧縮によって導入される層の厚さの変化を、OCTを使用して感知層と組織との間の力に基づいて測定する。OCTに基づく光学触知は、通例、干渉測定法を利用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、さらなる改良を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、試料物質の機械的性質を評価するための光学触知装置が提供され、この装置は、
感知部分を有する本体と、
本体の感知部分に配置された感知層であって、試料物質の表面エリアと直接または間接的に接触するように配置された感知表面を有し、感知層は、変形可能であり、規定された、変形に依存する光学的性質を有する、感知層と、
感知層の少なくとも一部分を透過された光を検出するように配置された光検出器と、を備え、
光学触知装置は、感知層の感知表面が試料物質の表面エリアと直接または間接的に接触している状態で、感知層と、試料物質の表面エリアの少なくとも一部分との両方を通じて圧力が印加されたときに、感知層が変形するとともに、感知層の規定された変形に依存する光学的性質のために、感知層の少なくとも一部分を透過した光を検出することによって試料物質の機械的性質が測定可能となるように、構築される。
【0006】
本発明の実施形態は、簡素化され、費用効果の高い光学触知装置を提供する。さらに、光学触知装置の使用が、OCTに基づく光学触知装置と比較して簡素化される。装置は、比較的軽量で、手持ち型であってよく、コンピュータ等にワイヤレス結合するために構築されてよい。
【0007】
1つの特定の実施形態では、感知層は圧縮性であり、変形に依存する光学的性質は、圧縮に依存する光学的性質である。感知層は、軸方向荷重がかかったときに最小の横方向の伸張を受けるように圧縮性であってよい。
【0008】
感知層の変形に依存する光学的性質は、圧縮に依存する透過率、偏光、光吸収、または光散乱であってよい。代替として、変形に依存する光学的性質は、感知層の少なくとも一部分を透過される光の波長範囲に関係してよく、例えば、感知層の少なくとも一部分を透過される光が、変形に依存する色を有する。
【0009】
一例では、変形可能な感知層は、シリコーン材料を含み、感知層が規定された不透明度を有するように全体に分散した空気空洞を有してよい。
【0010】
光検出器は、電荷結合デバイス(CCD)またはCCDアレイを備えるカメラであってよい。
【0011】
本体は、細長くてよく、感知層が配置された一方の端部に感知部分を有してよい。
【0012】
光学触知装置は、手持ち型装置であってよい。
【0013】
光学触知装置は、感知層内に光を向けるための光源をさらに備えてよい。
【0014】
光源および光検出器は、本体の中に配置されてよい。
【0015】
光学装置は、装置が試料物質の表面に対して移動または走査されるときに試料物質に対する感知層または装置の位置を検出するための動き検出器をさらに備えてよい。
【0016】
機械的性質は、弾性であってよく、検出される光は、印加された圧力に応答した感知層にわたる応力および/または変形の分布を示してよく、応力および/または変形の分布は試料物質の機械的性質に関連している。
【0017】
1つの実施形態では、試料物質の機械的性質を評価することは、印加された圧力の結果としての試料物質の歪みを判定することを含む。
【0018】
光学触知装置は、力と、それにより生じる感知表面の領域の変位とを測定するために感知層の感知表面に配置された少なくとも1つの変位および力測定装置をさらに備えてよい。変位および力測定装置は、圧子を備えてよい。1つの実施形態では、複数の圧子が、感知表面で感知層内に組み込まれ、試料物質に接触して、試料物質にかかる力と圧子が組織に押し込まれる距離との両方を測定することを可能にする。
【0019】
試料物質は、生物学的組織または生物学的物質であってよい。代替として、試料物質は、不均一な硬さまたは可撓性を有し得るポリマー材料などの、別の弾性のまたは変形可能な物質を含んでもよい。
【0020】
光学触知装置は、感知層が試料物質の表面エリアと間接的に接触するときに、感知層と直接接触しないように試料物質を保護するための透明シースなどの薄い層をさらに備えてよい。1つの実施形態では、感知層は、シースの一部をなすか、またはシースの形態で提供される。
【0021】
光検出器は、立体カメラなどのカメラを含んでよい。光検出器は、スマートフォン型の装置を含んでもよい。スマートフォン型の装置は、着脱可能なマイクロレンズ、および/または試料物質を配置するための3Dプリンティングされた台を備えてよい。
【0022】
本発明の1つの実施形態では、光学触知装置が、ロボット外科装置の一部をなす。
【0023】
本発明の別の実施形態では、光学触知装置の一部またはすべての構成要素が、バルーン・カテーテルにまたはその内部に配置され、バルーン・カテーテルは、使用時にバルーン・カテーテルが配置される試料物質の一部分の機械的性質が、光学触知装置を使用して判定可能となるように構築される。感知層は、バルーン・カテーテルのバルーンの外側に配置される、および/またはバルーンに取り付けられてよい。
【0024】
光学触知装置の少なくとも一部またはすべての構成要素が、針、プローブ、または関節鏡にまたはその中に配置されてもよく、針、プローブ、または関節鏡は、針、プローブ、または関節鏡が使用時に配置される試料物質の機械的性質が判定可能となるように感知層が配置される窓を有する。
【0025】
光学触知装置は、手袋を含んでもよく、光学触知装置の構成要素が手袋に組み込まれ、ユーザが手袋を着用したときに、光学触知装置の構成要素を備える手袋の部分を物質試料の上で動かすことにより、光学触知測定が可能であってもよい。
【0026】
さらに、感知層は、レンズの形態で提供され、光学触知装置が、患者の眼に配置して、眼の圧力および/または剛性の変動を判定するために構築されてよい。
【0027】
本発明の第2の態様によれば、試料物質の機械的性質を評価するための光学触知装置が提供され、この装置は、
感知部分を有する本体と、
本体の感知部分に配置された感知層であって、試料物質の表面エリアと直接または間接的に接触するように配置された感知表面を有し、感知層は変形可能であり、光学的に検出可能なマーカまたはパターンを有する、感知層と、
感知層が変形したときの光学系に対するマーカまたはパターンの移動を判定するために使用可能な情報を提供することが可能な光学系であって、情報が、光の伝搬方向に対して直交する平面について提供される、光学系と、を備え、
光学触知装置は、感知層の感知表面が試料物質の表面エリアと直接または間接的に接触している状態で、感知層と、試料物質の表面エリアの少なくとも一部分との両方にわたって圧力が印加されたときに、感知層が変形するとともに、光学系に対するマーカまたはパターンの位置の変化を測定することによって試料物質の機械的性質に関する情報が提供され得るように、構築される。
【0028】
検出可能なマーカまたはパターンは、感知層に固有であってよい。代替として、検出可能なマーカまたはパターンは、外部から被覆されるか、窪んでいるか、または光源によって感知層の感知表面に作り出される構造であってもよい。
【0029】
1つの実施形態では、光学系は、マーカまたはパターンから反射または透過された光を検出するように配置された、少なくとも2つの離間された光検出器構成要素を備える。少なくとも2つの検出器の各々によって検出された光は、感知層にわたる変形の深さ分布に関連する情報を得るために使用されてよい。各光検出器は、電荷結合デバイス(CCD)またはCCDアレイを備えるカメラであってよい。
【0030】
代替の実施形態では、光学系は、感知層を透過された光を検出するためのマイクロレンズなどの光学素子のアレイを備え、光学素子は、マーカまたはパターンの深さ位置が判定可能となるように配置される。光学系は、電荷結合デバイス(CCD)またはCCDアレイを備え得るカメラの形態で提供され得る光検出器を備えてよい。
【0031】
本体は、細長くてよく、感知層が配置された一方の端部に感知部分を有してよい。
【0032】
光学触知装置は、感知層内に光を向けるための光源をさらに備えてよい。光源および光検出器は、本体の中に配置されてよい。
【0033】
光学触知装置は、手持ち型装置であってよい。
【0034】
光学系は、立体カメラなどのカメラを含む。光学系は、スマートフォンに基づく装置を含んでもよい。スマートフォンに基づく装置は、着脱可能なマイクロレンズ、および/または試料物質を配置するための3Dプリンティングされた台を備えてよい。
【0035】
マーカは、透明粒子を含んでよい。マーカは、蛍光粒子または光ルミネセント粒子を含んでもよい。
【0036】
光学触知装置は、試料物質の写真と機械的性質とが同時に獲得可能となるように構築される。
【0037】
光学装置は、装置が試料物質の表面に対して移動または走査されるときに試料物質に対する感知層または装置の位置を検出するための動き検出器を備えてよい。
【0038】
機械的性質は、弾性であってよく、検出される光は、印加された圧力に応答した感知層にわたる応力および/または変形の分布を示してよく、応力および/または変形の分布は試料物質の機械的性質に関連している。
【0039】
1つの実施形態では、試料物質の機械的性質を評価することは、印加された圧力の結果としての試料物質の歪みを判定することを含む。
【0040】
本発明の第3の態様によれば、試料物質の機械的性質を評価するためのシステムが提供され、このシステムは、
本発明の第1または第2の態様に係る光学触知装置と、
光学触知装置に結合され、光検出器によって検出された光に関連する情報を示す信号を受信するように構成されたプロセッサと、を備え、
情報は、試料物質の機械的性質の指標を得るために使用可能である。
【0041】
システムは、プロセッサと通信し、情報を使用して感知層の画像を形成するのを容易にするグラフィカル・インターフェースをさらに備えてよく、画像は、感知層を通じて、および少なくとも(その下にある)試料物質を通じて印加された圧力によって引き起こされる感知層にわたる応力および/または変形の分布を示す特徴を含む。
【0042】
プロセッサは、デスクトップ・コンピュータなどのコンピュータ、携帯電話、タブレットなどの任意の他のモバイル装置の形態で、または任意の適切な他の形態で提供されてよい。
【0043】
プロセッサは、有線方式で、またはWi-FiもしくはBluetooth技術を使用するなどしてワイヤレスに、光学触知装置と結合されてよい。
【0044】
プロセッサは、グラフィック処理ユニット(GPU)を備えてよく、GPUアルゴリズムを使用して、感知層のリアルタイム画像、ならびに印加された圧力によって引き起こされる感知層にわたる応力および/または変形の分布を示す特徴を含むリアルタイム画像を獲得するために処理を高速化してよい。
【0045】
プロセッサは、拡張現実(AR)または仮想現実(VR)を提供するようにさらに構成されてよく、その場合、感知層のそれぞれのリアルタイム画像が、感知層にわたる応力および/または変形の分布を示す特徴を含むそれぞれのリアルタイム画像と重ね合わせられる。それぞれの重ね合わされた画像は、画面上に投影されるか、またはVRゴーグル内に埋め込まれてよく、併せて、試料物質の機械的性質の対応する定量的数値が表示される。
【0046】
プロセッサは、少なくとも2つの離間された光検出器の各々から信号を受信するように構成されてよく、各信号は、少なくとも2つの光検出器によって検出された光に関連する情報を示す。それぞれの信号は、グラフィカル・インターフェースを使用して感知層の光学画像を形成するために使用されてよく、光学画像は、感知層にわたる変形の深さ分布を示す特徴を含む。さらに、プロセッサは、装置が静止しているとき、または装置が試料物質にわたって移動もしくは走査されるときに、画像検出器であり得る光検出器を、規定された頻度で一連の画像を撮影するように制御するように構成されてよい。
【0047】
さらに、プロセッサは、装置が試料物質の表面に対して移動または走査されるときに試料物質に対する感知層または装置の位置(の変化)を検出するために動き検出器から信号を受信するように構築されてよく、それにより、装置が試料物質にわたって移動または走査されたときに、一連の画像と、動き検出器からの情報とを使用して、感知層の変形の分布のマップまたはスキャンが形成されることが可能である。
【0048】
本発明の第4の態様によれば、試料物質の機械的性質を評価するための方法が提供され、この方法は、
試料物質を用意するステップと、
第3の態様に係るシステムを用意するステップと、を含み、
上記方法は、
感知表面が試料物質の表面エリアと直接または間接的に接触するように、感知層を試料物質に対して配置するステップと、
感知層と、試料物質の表面エリアの少なくとも一部分との両方を通じて圧力を印加するステップと、
感知層の少なくとも一部分から透過または反射された光を検出するステップと、をさらに含む。
【0049】
本発明の第3の態様に係るシステムのプロセッサは、試料物質に対する感知層または光学触知装置の位置を示す信号を受信するようにさらに構築されてよい。
【0050】
1つの実施形態では、方法は、情報を使用して感知層の画像を形成するためにプロセッサと通信するグラフィカル・インターフェースを用意するステップを含み、画像は、感知層を通じて、およびその下にある試料物質の表面エリアの少なくとも一部分を通じて印加された圧力によって引き起こされる、感知層にわたる応力および/または変形の分布を示す特徴を含む。
【0051】
プロセッサは、デスクトップ・コンピュータなどのコンピュータ、または携帯電話、もしくはタブレットなどの任意の他のモバイル装置の形態で提供されてよい。
【0052】
方法は、試料物質の機械的性質を評価するために、印加された圧力の結果としての試料物質の歪みを判定するステップをさらに含んでよい。
【0053】
試料物質の歪みは、形成された光学画像中の画素分布を、マイクロプロセッサまたはGPUを使用して分析することによって判定されてよい。
【0054】
本発明のさらなる実施形態によれば、上記方法は、
装置が試料物質の表面に対して移動または走査されるときに試料物質に対する感知層または装置の位置を検出するための動き検出器を用意するステップと、
(i)感知層が圧縮されるように、感知層と、試料物質のそれぞれの表面エリアの少なくとも一部分との両方を通じて圧力を印加し、(ii)試料物質の複数の表面エリア各々について、感知層の少なくとも一部分を透過されたもしくはそこから反射された光を同時に検出しながら、または、試料物質にわたる装置の移動中に光を順次検出しながらのどちらかで、光学触知装置を試料物質の複数の表面エリアにわたって動かすステップと、
試料物質に対する感知層または装置の座標の移動または変化を検出するステップと、を含む。
【0055】
方法は、プロセッサおよびグラフィカル・インターフェースを使用して、検出された座標の移動または変化に従って一連の画像を組み合わせることにより、試料物質の複数の表面エリアとの関係で感知層にわたる応力の分布を示す応力マップを得るステップをさらに含んでよい。
【0056】
1つの実施形態では、方法は、感知層にわたる変形の深さ分布に関連する情報を得るために、感知層の同じ部分を通じて透過または反射された光を検出するように配置された少なくとも2つの光検出器を備える光学触知装置を用意するステップを含んでよい。
【0057】
方法は、変形の深さ分布を示す歪み画像を形成し、その歪み画像を、感知層にわたる応力の分布を示す応力マップと一体化し、歪み画像と応力マップの両方をAR装置またはVRゴーグルなどのVR装置に表示するステップを含んでよい。
【0058】
1つの特定の実施形態では、光学触知装置は、カメラと、試料物質に対する感知層または装置の位置または動きを検出するための動き検出器とを備え、上記方法が、
装置が試料物質の表面に対して移動または走査されるときに試料物質に対する感知層または装置の位置を検出するための動き検出器を用意するステップ、を含み、
感知層と、試料物質の表面エリアの少なくとも一部分との両方を通じて圧力を印加するステップが、感知層と、試料物質の少なくとも一部分との両方を通じて、変動する異なる圧力を印加することを含み、感知層を備える光学触知装置の部分を物質試料に対して動かして、変動する異なる圧力を印加することを含み、
感知層の少なくとも一部分から透過または反射された光を検出するステップは、一連の圧力に対する画像が検出されるように、変動する異なる圧力が印加される間にカメラを使用して行われ、
試料物質の応力などの機械的性質が、一連の圧力に対して記録された画像を用いて検出される感知層の光学的性質の変化から判定されることが可能であり、
物質試料の歪みが、物質試料に対するプローブの判定された移動から判定されることが可能であり、移動は、用意された動き検出器を使用して判定され、
それにより物質試料の非線形の機械的性質が判定可能である。
【0059】
本発明は、以下の本発明の特定の実施形態の説明からより完全に理解されよう。説明は添付図面を参照して与えられる。
【0060】
発明の概要に述べられた本開示の範囲に該当し得る他の形態に関わらず、次いで添付図面を参照して特定の実施形態が単なる例として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】本発明の一実施形態に係る光学触知装置の図である。
図2a-2h】本発明の実施形態に係る、感知層を通る光の透過に対する、感知層の所与の圧縮の影響を説明する写真である。
図3(a)】本発明のさらなる実施形態に係る、試料物質の機械的性質を評価するために使用される感知層の写真である。
図3(b)】本発明のさらなる実施形態に係る光学触知システムを使用した、図7(b)に示される感知層を用いた変形の深さ分布を示す写真である。
図4】本発明のさらなる実施形態に係る、試料物質の機械的性質を評価するために使用される光学系の模式的表現である。
図5】本発明のさらなる実施形態に係る、試料物質の機械的性質を評価するために使用される代替の光学系の模式的表現である。
図6】本発明の一実施形態に係る、試料物質の機械的性質を評価する光学触知方法のフローチャートである。
図7】一実施形態に係る光学触知装置を備えたロボット外科装置の模式的表現である。
図8】一実施形態に係る光学触知装置を備えたバルーン・カテーテルの模式的表現である。
図9】さらなる実施形態に従って図1または図4の光学触知装置を使用して行われる試料物質の機械的性質を評価するための方法を説明する模式的表現である。
図10】一実施形態に係る、手袋に組み込まれた光学触知装置の模式的表現である。
図11】別の実施形態に係る、コンタクト・レンズ・システムに組み込まれた光学触知装置の模式的表現である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本発明の実施形態は、光学触知を使用して試料物質の機械的性質を評価するための装置および方法に関する。
【0063】
光学触知は、生物学的組織または生物学的物質などの試料物質の表面応力をマッピングするために使用可能な技術であり、試料物質に押し付けられて配置された感知層に圧縮荷重が印加される。透明シリコーン材料を含み、圧縮荷重の印加下で、印加される荷重に対して横断する平面内で伸張してその体積を維持することによって圧縮および変形するように非圧縮性である、変形可能な感知層を有することが知られている。よって、感知層の厚さは、下にある物質の局所的剛性に応じて変化し、試料物質の上に置かれた感知層への圧縮によって導入される厚さの変化を測定および撮像するために、通例、OCTが使用される。OCT画像は、感知層の応力分布または応力マップを符号化し、それは試料物質の表面応力に関係する。OCTに基づく光学触知は、通例、変形の深さ分布に関する情報を得、さらに感知層によって経験される歪みを判定するために、感知層の全厚さの前後走査(または深さセクショニング)を必要とする。次いで、感知層によって経験される応力が、判定された歪みと、感知層の材料の既知の応力-歪み曲線とに基づいて判定され得る。次いで、判定された応力および歪みを使用して、試料物質の弾性が定量的に判定され得る。
【0064】
本発明は、OCT前後走査の必要なしに、感知層によって経験される(そして試料物質の表面における応力を示す)表面応力の指標を得ることを可能にし、続いて試料物質の機械的性質を評価することを可能にする、簡素化された光学触知技術を提案する。
【0065】
本発明の実施形態によれば、光学触知装置および光学触知方法は、デジタル・カメラに基づく。機械的性質は試料物質の弾性または剛性に関係し、試料物質は生物学的組織であってよく、そのため、本方法および装置は、癌の治療のために腫瘍の場所および大きさに関する情報が取得されることがある癌マージン撮像や、皮膚科学における瘢痕評価などの医療用途に特に使用され得る。医療分野では、疾患組織などの異常が生物学的組織の弾性を変化させ得ることが実際に知られている。例えば、癌組織は通例、周辺の健康な軟組織よりも「堅い」。試料物質は、代替として食品物質などの生物学的物質であってもよく、その場合、用途は食品品質の監視であってよい。別の実施形態では、試料物質は、不均一な硬さまたは可撓性を有し得るポリマー材料などの、任意の弾性のまたは変形可能な物質であってよい。例えば、非医療用途はテキスタイル感知であってよく、試料物質はゴムまたはゲルからなっていてもよい。
【0066】
他の試料物質が検討されてよく、また他の用途、および粘弾性やさらには非線形の機械的性質などの他の機械的性質が評価されてよいことが、当業者によってさらに理解されよう。
【0067】
1つの特定の実施形態では、提案される技術は、変形可能かつ圧縮性の感知層を使用する。感知層は、感知層の少なくとも一表面部分への圧力または荷重の印加時に、およびその後の感知層の圧縮時に変化する規定された光学的性質を有し、すなわち、感知層は、圧縮に依存する規定された光学的性質を有する物質を含む。
【0068】
圧縮性である感知層の使用は、以下の理由から有利である。圧縮性の感知層の表面に荷重を印加すると、感知層が、横方向に伸張することなく圧縮され、すなわち感知層は印加される荷重に対して横断する平面内で伸張せず、感知層の体積は保存されない。その結果、非圧縮性の感知層を使用する場合に発生する可能性の高い摩擦および/または表面粗さが大幅に低減されることが可能となり、下にある試料物質の異なる「剛性」に応じて感知層の厚さのより急峻な変化が観察され、測定され得る。続いて、光学触知技術の有効空間分解能が改善されることが可能となり、そのことが、機械的性質を判定できる精度を改良することをさらに可能にし得る。
【0069】
図1を参照すると、本発明の特定の実施形態に係る光学触知装置100は、ペン形状の手持ち型装置100であり、感知部分104と、感知部分104に配置された感知層106と、使用時に感知層106を通過された光が検出できるように配置された光検出器108とを有する本体102を備える。本実施形態では、本体102は、細長く、デジタル電荷結合デバイス(CCD)カメラなどのカメラの形態で提供される光検出器108を備える。感知層106は、圧縮性であり、圧縮に依存する光学的性質を有し、好ましくは、細長い本体102の端部109において感知部分104に堅固に固定される。感知部分104は、好ましくは、細長い本体102の端部109に固定され、かつ壊れたり傷がついたりした場合に容易に交換可能な撮像窓である。感知層106は、試料物質114の表面エリア112と直接接触するように配置された感知表面110を有する。代替として、感知表面110は、試料物質114と間接的に接触してもよく、順応性の透明手術用シースなどのラテックスまたは別のプラスチック材料からなる薄い層(図示せず)が、生物学的組織の汚染を防止し、滅菌状態を保証するために、例えば感知表面110と試料物質114との間に配置されてよい。カメラ108は、通例、カメラ108と試料物質114の表面エリア112との間の作動距離がおよそ数センチメートルに相当するように配置される。光学触知装置100は、感知層106の感知表面110が試料物質114の表面エリア112と接触している状態で、感知層106と試料物質114の表面エリア112の少なくとも一部分との両方にわたって圧力が印加されたときに、感知層106が圧縮され、感知層106の規定された圧縮に依存する光学的性質が感知層106内で光に影響して、カメラ108によって検出される光が試料物質114の機械的性質の指標となるように構築される。
【0070】
本発明の特定の実施形態では、図2aから図2hに示されるように、感知層106の圧縮に依存する光学的性質は、圧縮に依存する透過率である。感知層106は、圧縮が印加されないときに不透明であり、圧力が印加されると、すなわち感知層106にわたって圧力が印加されると、より透明になって、より多くの光が感知層106を透過されるように構成される。
【0071】
図2aから図2hを参照すると、異なる圧力レベルで印加される荷重がどのように感知層106内で光に影響を与えるかの図解200が示される。具体的には、図2aから図2dは、指を使用して感知層106にわたって次第に増す圧力で荷重を印加する場合のシミュレーションを示す画像に相当する。感知層106は、糊を用いるなどしてガラス板202に固定されて、感知層106がガラス板202に対して「滑る」または移動することがないようにし、また、荷重の印加が基本的に、感知層106の厚さに沿った感知層106の圧縮を生じさせ、感知層106の横方向への移動を全く生じさせないようにする。図2aは、最も低い圧力での荷重の印加に対応し、図2dは、最も高い圧力での荷重の印加に対応する。図2eから図2hは、デジタルCCDカメラを使用して形成された画像であり、それぞれ図2aから図2dに関係している。荷重が次第に増大する圧力で印加されるのにつれて、感知層106が、図2gおよび図2hのエリア204および206などの印加される荷重の領域内、すなわち指が圧力を印加する場所で、より透明になることが見て取れる。
【0072】
特定の実施形態では、感知層106は、砂糖とシリコーンの混合物からなり、感知層に圧縮が印加されない状態で特定の不透明度を実現することを可能にする方法に従って製造される。シリコーンが硬化するのと同時に砂糖がシリコーンと混合され、続いて砂糖が水で溶かして除去されて、全体に空気空洞が分散した感知シリコーン層106を得、感知層106はスポンジに似た質感を有する。感知層106内の空気-シリコーン界面は、光の反射を生じさせ、圧縮荷重が印加されていないときに感知層106の初期の不透明な外観を与える。図2aおよび図2eは、非常に小さい圧力が感知層に印加されたときの感知層106の不透明度の例を示す。
【0073】
感知層106の表面エリアに圧縮荷重を印加すると、感知層106内の空気空洞の圧縮および閉鎖が生じ、それにより増大した量の光が感知層106を透過されることが可能になる。試料物質114の表面と接触していない感知層106の表面の近傍に、すなわち感知層106の感知表面110と反対側の表面の近傍に、デジタル・カメラを置くことにより、デジタル・カメラによって検出される光の変化が、試料物質114の表面エリア112における応力に直接関係するようになる。感知層内の空気空洞の存在は、感知層の圧縮可能性という性質、すなわち比較的低いポアソン比によって特徴付けられる感知層を提供することを助け、圧縮の方向に対して横断する方向に伸張しようとする感知層の傾向が、相対的に最小化される。
【0074】
感知層106は、本発明の実施形態に係る光学触知装置の本体部分の所与の感知部分に固定されるのに適した任意の寸法を有してよい。ペン形状の光学触知装置100の特定の実施形態では、感知層106が、直径がおよそ10mm、高さがおよそ1mmの円筒形状であることが構想される。ただし、任意の他の形状および/または寸法がさらに構想されることが理解されよう。
【0075】
カメラに基づく光学触知装置100は、グラフィカル・インターフェース118と通信するマイクロプロセッサ116に、Wi-FiやBluetoothを使用するなどしてワイヤレスに結合され、それにより試料物質114の機械的性質を評価するためのシステム120が形成される。マイクロプロセッサ116は、デスクトップ・コンピュータなどのコンピュータの形態で、またはタブレットや携帯電話などのモバイル装置の形態で提供されてよい。マイクロプロセッサ116は、使用時、光学触知装置100から電気信号を受信するように構成され、信号は、CCDカメラ108によって検出された光に関連する情報である。情報は、次いで、マイクロプロセッサ116およびグラフィカル・インターフェースによって使用され、画像に変換され得る。画像は、図2eから図2hに示されるようなタイプであってよく、印加された圧力に影響される試料物質114の表面エリア112との関係で、感知層106にわたる応力および変形の分布を示す。
【0076】
マイクロプロセッサ116およびグラフィカル・インターフェース118にワイヤレスに接続された手持ち型のペン形状の装置100としての装置100の実装は、向上した使用性を備える小型の光学触知装置を提供することを可能にする。手持ち型のペン形状の光学触知装置100は、例えば、試料物質の遠いエリアに到達することができ、これは、従来のOCTに基づく光学触知システムまたは装置を使用して容易にアクセスできない生物学的組織のエリアに到達するための医療用途に特に有利である。加えて、本発明の実施形態により定められる光学触知装置に関連するコストは、従来のOCTに基づく光学触知装置に関連するコストよりも大幅に低い。
【0077】
ただし、カメラに基づく光学触知装置100は、代替として、グラフィカル・インターフェース118と通信するマイクロプロセッサ116に有線接続されてもよいことが理解されよう。
【0078】
また、代替実施形態では、圧縮に依存する他の光学的性質を有するように構成され、例えば、圧縮が印加されないときに透明であり、圧力が印加されると次第に濁るように構成された感知層を使用することが構想されることも理解されよう。さらに、他の実施形態では、感知層は、規定された圧縮に依存する偏光、光吸収、または光散乱性を有してよい。
【0079】
代替の実施形態では、変形可能であるが圧縮性ではなく、規定された変形に依存する光学的性質を有する感知層を有することも構想され、その場合、感知層は、圧力が印加されると色を変化させる物質を含み、使用時に、色の変化がデジタル・カメラ108によって検出され、試料物質114の表面エリア112における応力に関係する感知層106にわたる応力および変形の分布を示す画像を形成するために使用され得る。
【0080】
表面エリア112における試料物質114の弾性を評価するには、印加された荷重の結果生じる感知層106の厚さの変化を直接または間接的のいずれかで測定することにより、荷重を印加した結果としての感知層106にわたる歪みが判定される必要がある。
【0081】
歪みは、形成された画像を使用して間接的に判定され得る。この実施形態では、感知層106の圧縮に依存する光学的性質は、光検出器108によって検出される光強度の変化(圧縮に依存する光学的性質が圧縮に依存する光透過率である実施形態において)が歪みの値に関連付けられることが可能となるように較正される。その結果、光検出器108よって検出される光の変化が、感知層106によって経験される歪みの測定値として使用されることが可能となる。
【0082】
代替として、表面エリア112における試料物質114の歪みおよび弾性が、試料物質114の表面エリア112に接触して感知層106の感知表面110に置かれた圧子または圧子のアレイを使用して直接定量的に評価されてもよい。小さい圧子は、圧力が印加されたときの感知層106の厚さに沿った感知表面110の変位の深さを測定することを可能にし、これは、印加された荷重に対して横断する方向における試料物質114の表面エリア112の変位に関係する。
【0083】
圧力が印加された結果として感知層106によって経験される歪みεは、一般に次のように判定されることが可能であり、
【数1】
ここで、εは、感知層106の歪みに関係し、ΔLは、圧力の印加に起因する、印加された荷重に対して横断する方向における感知表面110の変位、およびその結果生じる感知層106の厚さの変化の深さに関係する。ΔLは、適切な荷重が印加される前の感知層106の初期の厚さに関係する。具体的には、感知層106が圧縮性であり、規定された圧縮に依存する光学的性質を有する本実施形態では、較正が使用されて、感知表面110の変位の深さを、印加された荷重の結果としての感知層106の初期の厚さと比較した感知層106の厚さの変化と相関付ける。
【0084】
表面エリア112のエリアにおける試料物質114の弾性の指標として、試料物質114のヤング係数Eは、通例、次の式(1)に従って定量的に判定されることが可能である。
【数2】
ここで、Eは、シリコーン試料のヤング係数に関係し、σsensing layerは、感知層106にわたって判定される応力に関係し、εsample materialは、表面エリア112のエリアにおいて試料物質内に分散した歪みに関係する。
【0085】
試料物質114の表面エリア112と接触して感知層106の感知表面110に置かれた圧子を使用する実施形態では、試料物質114の弾性の定量的指標は、より具体的には、次の式(2)に従って判定されることが可能である。
【数3】
ここで、Eは、試料物質114の換算弾性係数、すなわち、試料物質114と圧子の弾性変形の組み合わせであり、Eおよびvは、それぞれ試料物質114のヤング係数およびポアソン比であり、Eおよびvは、それぞれ圧子のヤング係数およびポアソン比である。この式では、Eおよびvは、事前に特徴付けられることが可能であり、vは、大半の固体物質について推定可能であり、Eは以下のように表されることが可能であり、
【数4】
ここで、A(h)は、接触の深さhにおける押し込みの投影面積であり、A(h)は、圧子の幾何学的寸法に基づいて計算可能であり、βは、既知の幾何学定数であり、Sは、圧子を取り除いたときの応力-変位曲線から示されることが可能な接触の剛性であり、試料物質に接触している圧子先端の応力および変位は両方とも、本発明の装置および方法から測定可能である。そのため、Eは、式(2)において測定可能なパラメータである。E、E、v、およびvを式(2)に代入することにより、試料のヤング係数の値Eが導出されることが可能である。
【0086】
加えて、感知層内に光を向けるために、光源(図示せず)が本体102内に設けられてよい。そして、本体102内のカメラ108は、光源から光を受けるのに応答して感知層106によって透過された光を捕捉するように構成される。
【0087】
本発明の別の特定の態様によると、感知層106は、変形可能または移動可能であり、非圧縮性であってよい。感知層106は、感知層106の感知表面110に印刷された光学的に検出可能なマーカまたはパターンを備える。代替として、マーカまたはパターンは、感知層106の感知表面110上の被覆もしくは窪みの形態であってよく、または光源が所与の光構造もしくはパターンを試料物質上に投影することによって作り出されてもよい。
【0088】
図3(a)を参照すると、スペックル・パターン302を備える感知層106の写真300が示される。
この実施形態では、光学触知装置100は、印加された荷重に応答して感知層106が変形したときの、光学系に対するスペックル・パターン302などのマーカまたはパターンの移動を判定するために使用され得る情報を提供することが可能な光学系を備える。
【0089】
この実施形態における光学系は、2つの離間された光検出器108などの2つの離間された光検出器を備える。図4を参照すると、本発明のこの特定の実施形態に係る光学触知装置100の立体光学系400が示される。光学系400は、距離dだけ離間され、光の伝搬方向に直交する平面内でスペックル・パターン302から反射または透過される光を検出するように配置されたカメラの形態で提供される、2つの光検出器402、404を備える。光学系400は、2つの眼の両眼視を模倣するように立体視を作り出すものであり、それにより、使用時に、圧力が印加されたときに感知層106にわたって分散した変形の特徴の深さについての情報を得ることがさらに可能になる。
【0090】
この実施形態では、マイクロプロセッサ116と同様のマイクロプロセッサが、2つのカメラ402、404から情報を受け取り、感知層106の感知表面110の表面エリア406、408の2つのそれぞれの画像が、それぞれカメラ402、404と関連付けられて形成され得る。スペックル・パターン302は、2つのカメラ402、404によって比較的よく認識され、相互に位置合わせされ得るように、かつ2つの画像間の相関が得られるように構築される。スペックル・パターン内の特徴はどこでも一意であるため、単純な相関アルゴリズムによって最小の相互の位置合わせ誤差が実現され得る。
【0091】
図4で見て取れるように、立体視では、カメラ402、404から相対的に遠い距離Dに位置する要素は、表面エリア406、408から最も遠い距離にある点410に関係する「uL-uR」線分によって図4に示されるように、小さい座標差または小さいずれを伴って2つの対応する光検出器上に合焦を生じさせる。対照的に、カメラ402、404から相対的に近い距離Dに位置する要素は、点412に関係する「uL-uR」線分によって示されるように、大きい座標差または大きいずれを伴って2つの対応する光検出器上に合焦を生じさせる。それぞれカメラ402、404から得られた2つの画像を相互に位置合わせすることにより、感知層106内の変形の要素の深さ分布の直接的な定性的指示であるずれマップを得ることが可能になる。
図3(b)は、図3(a)の感知層106および図4の光学系を使用して得られた変形の深さ分布を示す画像303を示す。変形の深さ分布は、色スケールの形態で定性的に表され、色スケール306の赤色端304は、印加された荷重の結果として感知層106の対応する部分がそれほど顕著でない変形を経験することを示す色スケール306の青色端308と比較して、感知層106の対応する部分が、印加された荷重の結果、より顕著な変形を経験することを示す。
【0092】
デジタル画像処理アルゴリズムを使用して行われる画像300の画素分布の分析は、表面エリア112において試料物質114によって経験される歪みに関係する、感知層106内の変形の要素の定量的な深さ情報を得ることを可能にする。
【0093】
カメラ402、404を備えるステレオスコープは、例えば、USB内視鏡カメラなどの何らかの既成構成部品によって作られてよい。3Dプリンティング技術が使用されて、2つのカメラ402、404を支持するための3Dプリンティングされたケースなどの、ステレオスコープの形態または形状をカスタマイズしてよい。
【0094】
図4に示される本実施形態は2つのカメラ402、404に関して説明されたが、3つ以上のカメラが使用されてよく、それにより、感知層106にわたる変形の深さ分布を制約するためのより正確な情報を得ることが可能になり得ることが理解されよう。
【0095】
さらに、1つの実施形態では、光学触知装置100の光検出器108などの光学触知装置の光検出器が、スマートフォン装置または他のスマートフォンに基づく装置のカメラの形態で提供されることが構想される。光学系400を備える光学触知装置100の実施形態では、光学系400がスマートフォンに基づく装置を備えることも構想される。それらの実施形態では、スマートフォンに基づく装置は、着脱可能なマイクロレンズおよび/または試料物質を配置するための3Dプリンティングされた台をさらに具備してもよい。
【0096】
図5を参照すると、感知層106内の変形の要素(変形可能または移動可能で、非圧縮性であり、スペックル・パターンを備える)の深さ分布の直接的な指示を得るために使用され得る代替の光学系500が示される。光学系500は、感知層を透過された光を検出するためのマイクロレンズ502のアレイを備え、マイクロレンズ502は、スペックル・パターンの要素の深さ位置dが判定され得るように配置される。光学系500は、変形可能な非圧縮性の感知層106の明視野撮像を行うことを可能にし、その場合、画像が形成されることが可能であり、画像は、感知層106内の変形の要素の深さ分布を示す。光学系500は、光検出器504と、光学触知装置100の感知部分104と同様の感知部分に配置された主レンズ506とをさらに備える。マイクロレンズ502は、主レンズ506から距離dinおよび光検出器604から位置fに配置される。図5で見て取れるように、感知層106を透過された各光線510の横方向の場所および角度は、マイクロレンズ502を用いて光検出器504によって検出されることが可能である。望遠鏡型光学系400と同様に、光検出器504から異なる距離d、d’、d’’に配置された要素は、それら要素の異なる画素分布D、D’、D’’を生じさせ、深さ情報は、例えばデジタル画像処理を使用して、形成された画像内の画素分布を分析することによって得られる。立体光学系400の実施形態に関して、感知層のスペックル・パターンは、マイクロレンズ502および光検出器504によって比較的よく認識され、相互に位置合わせされ得る。
【0097】
図6を参照すると、本発明の特定の実施形態に係る、試料物質の機械的性質を評価するためのカメラに基づく光学触知方法600のフローチャートが示される。
【0098】
OCTに基づく光学触知技術と同様に、本方法は、試料物質114の弾性に関する情報を得ることを可能にする。ただし、本方法は、小型のシステムおよび装置を使用して実装可能であり、またワイヤレスに実装可能であることから、大幅に簡素化されており、これは、他の方法ではアクセスするのが比較的難しい試料物質のエリアに到達することを可能にし得るため、特に生物学的組織への医療用途に有利であり得る。
【0099】
ステップ602で、試料物質114などの試料物質が用意される。特定の一実施形態では、試料物質114は生物学的組織である。ただし、上述したように、試料物質114は代替として、例えば、生物学的物質、または不均一な硬さもしくは可撓性を有し得るポリマー材料などの任意の弾性のもしくは変形可能な物質であってよい。
【0100】
ステップ604で、試料物質114の機械的性質を評価するための光学触知装置100または光学系400もしくは500を備えた光学触知装置などの、光学触知装置が用意される。
【0101】
ステップ606で、感知表面110が表面エリア112と直接接触するように、感知層106が試料物質114に対して配置される。感知層106は、代替として、例えば、生物学的組織の汚染を防止し、滅菌状態を保証するために感知表面110と試料物質114との間に配置される、手術用シースなどのラテックスまたは別のプラスチック材料からなる薄い層(図示せず)を使用して、感知表面110が表面エリア112と間接的に接触するように配置されてもよいことが認識されよう。
【0102】
ステップ608で、感知層106にわたり、および試料物質114の表面エリア112の少なくとも一部分にわたり、圧力が印加される。
【0103】
ステップ610で、光学触知装置100の光検出器108、または光学系400の光検出器402および404、または光学系500の光検出器504が、感知層106の少なくとも一部分から透過または反射された光を検出する。検出された光は、試料物質の機械的性質についての指標となる。詳細には、検出された光は、印加された圧力に応答した感知層106にわたる応力および/または変形の分布を判定するために使用される。
【0104】
グラフィカル・インターフェース118と通信するマイクロプロセッサ116が、デスクトップ・コンピュータなどのコンピュータの形態で、またはタブレットもしくは携帯電話などの任意のモバイル装置の形態でさらに設けられる。マイクロプロセッサ116は、光学触知装置100に結合され、装置100から電気信号を受信するように構成され、信号は、光検出器108によって検出された光に関連する情報を示す。受信された信号および対応する情報が、次いでグラフィカル・インターフェース118によって使用されて、感知層106の画像を形成する。画像は、感知層106を通じて、およびその下にある試料物質114の表面エリア112の少なくとも一部分を通じて印加された圧力によって引き起こされた、感知層106にわたる応力および/または変形の分布を示す特徴を含む。応力および/または変形の分布は、したがって、印加された圧力の影響を受ける試料物質114の表面エリア112に関係する。次いで、マイクロプロセッサ116がさらに使用されて、光学画像にわたる画素分布の分析を行って、表面エリア112における試料物質114の歪みを定量化することができる。
【0105】
測定値の光学的分解能は、通例、感知層106の変形に依存する光学的性質が、感知層106を透過される光にどのように影響するかに依存し、より具体的には、変形に依存する光学的性質のダイナミック・レンジに依存する。さらに、測定値の光学的分解能は、感知層106を透過される光の変化を検出するカメラ108の感度に、またはスペックル・パターンの特徴を相互に位置合わせするカメラ402、404もしくは光検出器504の感度に依存する。
【0106】
従来のOCTに基づく光学触知装置によって提供される光学的分解能は、通例、100μmと200μmの間の範囲である。本発明の実施形態によれば、カメラに基づく光学触知装置の光学的分解能は、使用される光学系の分解能および感知層106の物理的変形に応じて10μmと200μmとの間で変動し得る。特に、感知層106が圧縮性である、すなわち感知層106の横断方向の動きが制約される実施形態によれば、10μmと20μmとの間の範囲内のカメラに基づく光学触知装置の光学的分解能が実現される可能性がある。さらに、表面エリア112のエリアにおける試料物質114の弾性は、試料物質114の表面から最大3mm下の深さで評価され得る。それと比較して、知られているOCTに基づく光学触知技術の一つは、試料物質の弾性を表面から1から2mm下の深さで評価することを可能にする。したがって、本発明の実施形態に係るカメラに基づく光学触知装置100および方法600は、現在知られている光学触知技術と比較して、光学的分解能が同等であり、かつ試料物質114内での視野が改良された、改良された光学触知技術という利点を提供する。
【0107】
さらに、方法600は、装置100が試料物質114の表面に対して移動または走査されるときに、試料物質114に対する感知層106または装置100の位置を検出するための動き検出器(図示せず)を用意することを含んでよい。よって、試料物質114の表面にわたる感知層106または装置100に対応するxおよびy座標が得られる。方法600は、次いで、試料物質114の表面に平行な平面内で試料物質114の複数の表面エリア112にわたって光学触知装置100を移動させ、試料物質114にわたる複数の表面エリア112の各々についてステップ608および610を同時に行うことを含んでよい。よって、マイクロプロセッサ116およびグラフィカル・インターフェース118が使用されて、装置100が試料物質114にわたって移動されるのに伴って感知層106の一連の画像を形成してよく、それにより、装置100が試料物質114にわたって移動または走査されるのに伴って感知層106にわたる変形の分布の変化が追跡および観察され得る。代替として、複数の表面エリア112の各々ごとに感知層106の画像が獲得されてもよく、次いでマイクロプロセッサ116およびグラフィカル・インターフェース118が使用されて、試料物質にわたる感知層または装置の(x,y)座標に応じてそれぞれの画像を組み合わせて、考察対象の複数の表面エリア112を含む試料物質114のエリアについて、感知層にわたる変形の分布に固有の単一の画像を形成してよい。試料物質114の表面に平行な平面内における試料物質114に対する感知層106の座標の移動または変化を検出し、複数の表面エリア112の各々について画像を獲得することにより、試料物質114に対する感知層106または装置100の位置が追跡されることが可能となり、試料物質114の様々な走査エリア112にわたる変形および/または応力の分布の大域的表現が得られ、それが単一の画像内で観察されることが可能となる。そのようにして試料物質114の応力マップおよび/または歪みマップが得られる。次いで、複数の光学画像各々の画素分布が、歪みの定量的指標が得られるようにデジタル画像処理によって分析され得る。次いで、感知層106を構成する物質の既知の応力-歪み曲線から応力値が判定されることが可能であり、続いて上記で定義された式(1)を使用して試料物質114の弾性が定量的に判定され得る。
【0108】
プロセッサ116は、GPUをさらに備えてよく、GPUアルゴリズムを使用して、感知層106のリアルタイム画像、ならびに印加された圧力によって引き起こされる感知層にわたる応力および/または変形の分布を示す特徴を含むリアルタイム画像が獲得できるように、処理を高速化してよい。
【0109】
そして、方法600が、AR装置またはVRゴーグルなどのVR装置を使用して実装されることがさらに構想され、それにより、感知層106にわたる応力および/または変形の分布を示す特徴を含むそれぞれのリアルタイム画像が、感知層106のそれぞれのリアルタイム画像と重ね合わせられ、触覚が向上され得るように画面上に投影されるかまたはVRゴーグル内に埋め込まれ得る。
【0110】
さらに、装置100などの、または光学系400もしくは500を備える光学触知装置などの、カメラに基づく光学触知装置は、外科ロボットまたはビデオ内視鏡内に組み込まれてよく、併せて、重ね合わせられたそれぞれの画像が画面上に投影され、そのようにすると外科的処置中に触感を提供することが可能となる。
【0111】
図7は、光学触知装置100または光学系400もしくは500を備える光学触知装置に対応し得る、カメラに基づく光学触知装置702を組み込んだロボット外科装置700の例を示す。光学触知装置702は、外科用アームの1つとして働き、ロボット外科装置700がデジタル・カメラを使用して外科部位を見、感知層106および方法600を使用して試料物質(図示せず)の機械的性質を測定することを可能にする。さらに、測定された試料物質の機械的性質に関する情報が使用されて、触覚感知および/または外科部位、すなわち検査対象の試料物質の撮像を通じて、ロボット外科装置700の操作者を誘導してよい。
ロボット外科装置700は、他の外科用アームまたは器具704をさらに備えてよい。
【0112】
図8は、光学触知装置100または光学系400もしくは500を備える光学触知装置に対応し得る、カメラに基づく光学触知装置の一部の構成要素がバルーン・カテーテル800にまたはその内部に配置される実施形態を示す。バルーン・カテーテル800は、バルーン802およびカテーテル804を備える。図8に示されるように、光学触知装置のカメラ806(または光学系400もしくは500を備える光学触知装置のための立体カメラ806、806’)は、バルーン802の中に配置され、光学触知装置の感知層808は、バルーン802の外部に配置され、バルーン802の外側表面に取り付けられている。試料物質(図示せず)の機械的性質を測定するには、まずバルーン802が収縮され、カテーテル804が試料物質の目標部位、例えば試料物質が生物学的組織である場合には気道または脈管、に挿入される。カテーテルが目標部位に到達すると、感知層808が試料物質に押し付けられて圧縮されるようにバルーンが膨張される。次いで、光学触知装置の1つまたは複数のカメラが使用されて、方法600を使用して、弾性などの試料物質の機械的性質を測定することができる。光学触知装置およびバルーン・カテーテルはさらに、機械的性質を測定するのと同時に1つまたは複数のカメラを使用して目標部位の写真を獲得するように構築されてよい。試料物質が生物学的組織である特定の例では、カテーテルは、光学触知装置と共に働く、刃または流体排出器などの他の外科用器具をさらに組み込んでよい。測定および作業が終わると、バルーン802が再び収縮され、カテーテルが測定部位から引き抜かれてよい。
【0113】
代替として、光学触知装置(光学触知装置100または光学系400もしくは500を備えるものなど)の構成要素の少なくとも一部またはすべてを、針、プローブもしくは関節鏡にまたはその中に配置することも構想され、針、プローブまたは関節鏡は、針、プローブまたは関節鏡が使用中に配置される試料物質の機械的性質が判定可能となるように光学触知装置の感知層が配置される窓を有することがさらに理解されよう。
【0114】
図9は、本開示の実施形態に係るカメラに基づく光学触知装置が試料物質の非線形の機械的性質を判定するために使用されるさらなる用途を示す。図9は、902、902’、および902’’に示されるように、変動する異なる圧力を印加することによって試料物質900の非線形の機械的性質を測定するために方法600がさらに使用される実施形態を示す。光学触知装置904は、この特定の実施形態では、2つのカメラ906、906’と、撮像窓908と、シリコーン感知層910とを有するステレオスコープからなる。光学触知装置904は、代替として単一のカメラ906を備えてもよいことが理解されよう。光学触知装置904が使用されて、感知層910および試料物質900の部分912を継続的に圧縮し、感知層910を有する光学触知装置904が試料物質900に対して移動されて、変動する異なる圧力を印加する。1つまたは複数のカメラ906は、変動する異なる圧力が印加される間、そして光学触知装置904が試料物質900に対して移動するのに伴って、例えば毎秒24フレームまたはそれ以上のフレーム・レートで、圧縮された層の連続ビデオを記録してよい。記録された感知層910のビデオから試料物質900の応力マップが得られ、また、光学触知装置904に埋め込まれたジャイロスコープを使用して測定可能な、試料物質900に対する光学触知装置904の移動速度から、試料物質900の歪みが計算され得る。試料物質の応力および歪みを判定することにより、試料物質900の弾性が推定され得る。詳細には、連続した応力マップが異なる歪み点で獲得されることが可能であるため、試料物質の非線形の接線係数などの、試料物質の非線形の機械的性質が測定され得る。
【0115】
図10は、光学触知装置100または光学系400もしくは500を備える光学触知装置などの、本開示の実施形態により提供されるカメラに基づく光学触知装置が外科用手袋1000に組み込まれるさらなる実施形態を示す。カメラに基づく光学触知装置1002は、手袋1000の一部分に取り付けられ、それは、外科作業者が、使用時に手袋を着用し、次いで方法600のステップ606から610を行うことにより、目標生物学的組織などの目標試料物質の応力の測定および目標試料物質の機械的性質の評価に進むように構築される。目標試料物質または組織の写真も得ることができる。加えて、手袋を着用した外科作業者は、応力測定値を得て物質の規定されたエリアにわたる試料物質の機械的性質を評価するために、光学触知装置1002を備える手袋1000の部分を試料物質の上で動かしてよい。測定が終わると、外科作業者が他の外科作業を行うために、カメラに基づく光学触知装置1002が外科用手袋1000から取り外され得る。カメラに基づく光学触知装置の外科用手袋との併用性は、この特定の例における組織などの試料物質の機械的性質の測定値を得るために必要とされる時間が大幅に低減され得るという利点を与え得る。
【0116】
本実施形態は外科用手袋との関係で説明されたが、光学触知装置は他の種の手袋に組み込まれてもよく、それが、試料物質が生物学的組織に限定されるとは限らない他の用途との関係で使用されてよいことが認識されよう。
【0117】
図11は、光学触知装置100または光学系400もしくは500を備える光学触知装置などの、本開示の実施形態により提供されるカメラに基づく光学触知装置が、コンタクト・レンズ・システム1100に組み込まれる別の実施形態を示す。この実施形態では、光学触知装置の感知層が、患者の眼1104の表面に配置するために構築されたレンズ1102の形態で提供される。眼の圧力が変化すると、感知層1104の厚さがそれに応じて変化する。光学触知装置のカメラ1106は、感知層1104の厚さの変化が測定可能となるように構築され、それにより眼圧および/または眼の剛性の変動が判定され得る。
【0118】
以下の特許請求の範囲および上述の本発明の説明では、明示的な文言や必要な含意のために文脈が別の意味を必要する場合を除いて、単語「comprise」または「comprises」や「comprising」などの変化形は、包含的な意味で、すなわち、述べられた特徴の存在を明示するが、本発明の様々な実施形態におけるさらに他の特徴の存在または追加を排除しないものとして使用される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11