(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】翼弦方向の間隙を最小限に抑えるように設計された翼弦方向に延在するピンブッシングを有する接合式風力タービンロータブレード
(51)【国際特許分類】
F03D 13/10 20160101AFI20240422BHJP
F03D 1/06 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
F03D13/10
F03D1/06 A
(21)【出願番号】P 2021550164
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 US2020020097
(87)【国際公開番号】W WO2020180601
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-02-20
(31)【優先権主張番号】PCT/US2019/020267
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513131419
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック レノバブレス エスパーニャ, エセ.エレ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【氏名又は名称】小倉 博
(72)【発明者】
【氏名】ライト,ジョン・スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】ロッドウェル,アンドリュー・ミッチェル
(72)【発明者】
【氏名】ヒュース,スコット・ジェイコブ
(72)【発明者】
【氏名】シリッグ,スコット・イヴァーソン
(72)【発明者】
【氏名】アガーウォル,ロヒット
(72)【発明者】
【氏名】ウィルフォード,アシュレー・シモーヌ
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0340510(US,A1)
【文献】特表2011-510208(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0158788(US,A1)
【文献】独国特許発明第102016123346(DE,B3)
【文献】米国特許第9790919(US,B2)
【文献】欧州特許出願公開第3144526(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0223796(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/00-80/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータブレード(28)であって、
翼弦方向ジョイント(34)から反対方向に延在する第1のブレードセグメント(30)及び第2のブレードセグメント(32)であって、前記第1及び第2のブレードセグメント(30、32)の各々は、翼形表面及び内部支持構造体(36)を画定する少なくとも1つのシェル部材を備え、前記第1のブレードセグメント(30)は受け部(60)を介して前記第2のブレードセグメント(32)と構造的に接続する長手方向に延在するビーム構造体(40)を備え、前記ビーム構造体(40)の縁部と前記受け部(60)の縁部との間に少なくとも1つの翼弦方向の間隙(51、53)が存在し、前記ビーム構造体(40)は第1のピンジョイントスロット(50)を画定し、前記受け部(60)は前記第1のピンジョイントスロット(50)と整列する第2のピンジョイントスロット(58)を画定する、第1のブレードセグメント(30)及び第2のブレードセグメント(32)と、
前記第1のピンジョイントスロット(50)の第1の端部に配置された第1のブッシング(55)であって、前記翼弦方向の間隙(51、53)内に延在し、かつ前記第1のピンジョイントスロット(50)の前記第1の端部を囲むフランジ(61)を備える、第1のブッシング(55)と、
前記第2のピンジョイントスロット(58)の第1の端部に配置された第2のブッシング(56)であって、前記第2のブッシング(56)は前記翼弦方向の間隙(51、53)内に延在し、かつ前記第2のピンジョイントスロット(58)の前記第1の端部を囲むフランジ(65)を備え
る、第2のブッシング(56)と、
前記第1及び第2のブレードセグメント(30、32)を互いに固定するために、前記第1及び第2のピンジョイントスロット(50、58)の前記第1及び第2のブッシング(55、56)を貫通して位置決めされた少なくとも1つの翼弦方向に延在するピン(62)と
を備え
、
(1)前記第1及び第2のブッシング(55、56)の前記フランジ(61、65)は、前記翼弦方向の間隙(51、53)を所定の規定の間隙又は締め代で充填するように、前記翼弦方向の間隙(51、53)内で互いに当接する、
または、
(2)前記ロータブレード(28)は、前記翼弦方向の間隙(51、53)内で前記第1及び第2のブッシング(55、56)の1つまたは複数のフランジに隣接する少なくとも1つのスペーサ構成要素(72)を備える、風力タービン(10)用のロータブレード(28)。
【請求項2】
前記第1のブッシング(55)は、前記第1のピンジョイントスロット(50)の前記第1の端部及び前記第1のピンジョイントスロット(50)の
第2の端部にそれぞれ配置された第1の対のブッシング(55、57)と
を備え、
前記第2のブッシング(56)は、前記第2のピンジョイントスロット(58)の前記第1の端部及び前記第2のピンジョイントスロット(58)の
第2の端部にそれぞれ配置された第2の対のブッシング(56、59)と
を備える、請求項1に記載のロータブレード(28)。
【請求項3】
前記翼弦方向の間隙(51、53)は、前記ロータブレード(28)の後縁
により近い第1の翼弦方向の間隙(51)と、前記ロータブレード(28)の前縁に
より近い第2の翼弦方向の間隙(53)とを備える、請求項1に記載のロータブレード(28)。
【請求項4】
翼弦方向ジョイント(34)から反対方向に延在する第1のブレードセグメント(30)及び第2のブレードセグメント(32)であって、前記第1及び第2のブレードセグメント(30、32)の各々は、翼形表面及び内部支持構造体(36)を画定する少なくとも1つのシェル部材を備え、前記第1のブレードセグメント(30)は受け部(60)を介して前記第2のブレードセグメント(32)と構造的に接続する長手方向に延在するビーム構造体(40)を備え、前記ビーム構造体(40)の縁部と前記受け部(60)の縁部との間に少なくとも1つの翼弦方向の間隙(51、53)が存在し、前記ビーム構造体(40)は第1のピンジョイントスロット(50)を画定し、前記受け部(60)は前記第1のピンジョイントスロット(50)と整列する第2のピンジョイントスロット(58)を画定する、第1のブレードセグメント(30)及び第2のブレードセグメント(32)と、
前記第1のピンジョイントスロット(50)の第1の端部に配置された第1のブッシング(55)であって、前記翼弦方向の間隙(51、53)内に延在し、かつ前記第1のピンジョイントスロット(50)の前記第1の端部を囲むフランジ(61)を備える、第1のブッシング(55)と、
前記第2のピンジョイントスロット(58)の第1の端部に配置された第2のブッシング(56)であって、前記第2のブッシング(56)は前記翼弦方向の間隙(51、53)内に延在し、かつ前記第2のピンジョイントスロット(58)の前記第1の端部を囲むフランジ(65)を備え、前記第1及び第2の
ブッシング(55、56)の前記フランジ(61、65)は前記翼弦方向の間隙(51、53)を所定の規定の間隙又は締め代で充填するように、前記翼弦方向の間隙(51、53)内で互いに当接する、第2のブッシング(56)と、
前記第1及び第2のブレードセグメント(30、32)を互いに固定するために、前記第1及び第2のピンジョイントスロット(50、58)の前記第1及び第2のブッシング(55、56)を貫通して位置決めされた少なくとも1つの翼弦方向に延在するピン(62)と
を備え
、当接する前記フランジ(61、65)の翼弦方向の幅が、前記締め代の嵌合を形成するように前記翼弦方向の間隙(51、53)の翼弦方向の幅よりも大きい
、風力タービン(10)用のロータブレード(28)。
【請求項5】
前記第1及び第2のブッシング(55、56)の少なくとも一方がコーティング材料を含み、前記コーティング材料が
0.2未満の摩擦係数を含む、請求項1に記載のロータブレード(28)。
【請求項6】
前記第1及び第2のブッシング(55、56)は、金属又は金属合金で構築される、請求項1に記載のロータブレード(28)。
【請求項7】
前記少なくとも1つのスペーサ構成要素(72)は、1つ又は複数のシム(74)又は1つ又は複数のばね装填装置(76)を備える、請求項
1に記載のロータブレード(28)。
【請求項8】
当接する前記フランジ(61、65)の翼弦方向の幅は、前記1つ又は複数のシム(74)及び前記フランジ(61、65)が前記翼弦方向の間隙(51、53)を完全に充填するように、前記翼弦方向の間隙(51、53)の幅よりも小さい、請求項
7に記載のロータブレード(28)。
【請求項9】
前記1つ又は複数のばね装填装置(76)が、円錐板ばね(80)、多層波板ばね(82)、又はゴム粘弾性リング(84)を備える、請求項
8に記載のロータブレード(28)。
【請求項10】
前記1つ又は複数のばね装填装置(76)が前記ゴム粘弾性リング(84)に対応する場合、前記ゴム粘弾性リング(84)の少なくとも一部が、前記第1及び第2のブッシング(55、56)の前記フランジ(61、65)の少なくとも一方の凹部内に着座する、請求項
9に記載のロータブレード(28)。
【請求項11】
前記少なくとも1つのスペーサ構成要素(72)は、前記第1及び第2のブッシング(55、56)の前記フランジ(61、65)間に配置されるか、又は前記第1又は第2のブッシング(55、56)のうちの一方のシャフト(78)の周りに配置される、請求項
1に記載のロータブレード(28)。
【請求項12】
前記少なくとも1つのスペーサ構成要素(72)は、金属又は金属合金で構築され、前記金属又は金属合金は、
+/-0.025ミリメートル(mm)の材料公差を含む、請求項
1に記載のロータブレード(28)。
【請求項13】
ロータブレード(28)を組み立てるための方法(100)であって、
成形プロセスを介して第1のブレードセグメント(30)及び第2のブレードセグメント(32)を形成することであって、前記第1及び第2のブレードセグメント(30、32)の各々は翼形表面及び内部支持構造体(36)を画定する少なくとも1つのシェル部材を有し、前記第1のブレードセグメント(30)は長手方向に延在するビーム構造体(40)を有し、前記第2のブレードセグメント(32)は受け部(60)を有する、形成することと、
前記ビーム構造体(40)が前記受け部(60)内に受けられたときに、前記ビーム構造体(40)の縁部と前記受け部(60)の縁部との間の少なくとも1つの翼弦方向の間隙(51、53)のサイズを決定することと、
前記ビーム構造体(40)の第1のピンジョイントスロット(50)の両端に、それぞれフランジ(61、63)を備える第1の対の金属ブッシング(55、57)を設けることと、
前記受け部(60)の第2のピンジョイントスロット(58)の両端に、それぞれフランジ(65、67)を備える第2の対の金属ブッシング(56、59)を設けることと、
(1)前記第1の対の金属ブッシング(55、57)
の第1の端のフランジ(6
1)
と前記第2の対の金属ブッシング(56、59)
の第1の端のフランジ(6
5)
とを前記翼弦方向の間隙(51、53)内で互いに当接
させ、それにより前記翼弦方向の間隙(51、53)が所定の規定の間隙又は締め代で充填されるように位置決めすること
または、
(2)少なくとも1つのスペーサ構成要素(72)を、前記翼弦方向の間隙(51、53)内で前記第1及び第2のブッシング(55、56)の1つまたは複数のフランジに隣接して配置することと、
前記第1及び第2のブレードセグメント(30、32)を翼弦方向ジョイント(34)の反対方向に位置させることと、
前記ビーム構造体(40)の前記第1のピンジョイントスロット(50)が前記受け部(60)の前記第2のピンジョイントスロット(58)と整列するように、前記ビーム構造体(40)を前記受け部(60)に挿入することと、
前記第1及び第2のブレードセグメント(30、32)を互いに固定するために、前記第1及び第2のピンジョイントスロット(50、58)内の前記第1及び第2の対のブッシング(55、56、57、59)を通して少なくとも1つの翼弦方向に延在するピン(62)を挿入することと
、
を含む
、方法(100)。
【請求項14】
ロータブレード(28)を組み立てるための方法(100)であって、
成形プロセスを介して第1のブレードセグメント(30)及び第2のブレードセグメント(32)を形成することであって、前記第1及び第2のブレードセグメント(30、32)の各々は翼形表面及び内部支持構造体(36)を画定する少なくとも1つのシェル部材を有し、前記第1のブレードセグメント(30)は長手方向に延在するビーム構造体(40)を有し、前記第2のブレードセグメント(32)は受け部(60)を有する、形成することと、
前記ビーム構造体(40)が前記受け部(60)内に受けられたときに、前記ビーム構造体(40)の縁部と前記受け部(60)の縁部との間の少なくとも1つの翼弦方向の間隙(51、53)のサイズを決定することと、
前記ビーム構造体(40)の第1のピンジョイントスロット(50)の両端に、それぞれフランジ(61、63)を備える第1の対の金属ブッシング(55、57)を設けることと、
前記受け部(60)の第2のピンジョイントスロット(58)の両端に、それぞれフランジ(65、67)を備える第2の対の金属ブッシング(56、59)を設けることと、
前記第1の対の金属ブッシング(55、57)
の第1の端のフランジ(6
1)
と前記第2の対の金属ブッシング(56、59)
の第1の端のフランジ(6
5)
とを前記翼弦方向の間隙(51、53)内で互いに当接
させ、それにより前記翼弦方向の間隙(51、53)が所定の規定の間隙又は締め代で充填されるように位置決めすることと、
前記第1及び第2のブレードセグメント(30、32)を翼弦方向ジョイント(34)の反対方向に位置させることと、
前記ビーム構造体(40)の前記第1のピンジョイントスロット(50)が前記受け部(60)の前記第2のピンジョイントスロット(58)と整列するように、前記ビーム構造体(40)を前記受け部(60)に挿入することと、
前記第1及び第2のブレードセグメント(30、32)を互いに固定するために、前記第1及び第2のピンジョイントスロット(50、58)内の前記第1及び第2の対のブッシング(55、56、57、59)を通して少なくとも1つの翼弦方向に延在するピン(62)を挿入することと
、
前記成形プロセスが完了した後に前記ビーム構造体(40)が前記受け部(60)内に受けられるときに、前記ビーム構造体(40)の前記縁部と前記受け部(60)の前記縁部との間の前記少なくとも1つの翼弦方向の間隙(51、53)のサイズを決定することと、
前記翼弦方向の間隙(51、53)よりも大きい締め代を除去す
ることと
を含む
、方法(100)。
【請求項15】
前記第1の対の金属ブッシング(55、57)を前記第1のピンジョイントスロット(50)の対向する端部に設け、前記第2の対の金属ブッシング(56、59)を前記受け部(60)の前記第2のピンジョイントスロット(58)の対向する端部に設けることは、
前記ビーム構造体(40)が前記受け部(60)に挿入されたときに、前記第1及び第2の対の金属ブッシング(55、57、56、59)の前記フランジ(61、63、65、67)が前記翼弦方向の間隙(51、53)を完全に充填するように、前記第1及び第2の対の金属ブッシング(56、59、55、57)を前記第1及び第2のピンジョイントスロット(50、58)にそれぞれ
挿入すること
をさらに含む、請求項1
3または14に記載の方法(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に風力タービンに関し、より詳細には、接合されたブレードセグメント間の翼弦方向の間隙を排除するように設計された、翼弦方向に延在するピンブッシングを有する接合された風力ロータブレードに関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電は、現在利用可能な最もクリーンで最も環境に優しいエネルギー源の1つと考えられ、この点で風力タービンは注目を集めている。現代の風力タービンは、典型的には、タワーと、発電機と、ギアボックスと、ナセルと、1つ又は複数のロータブレードを備えた回転可能なハブを有するロータとを含む。ロータブレードは、既知の翼形原理を使用して風の運動エネルギーを捕捉する。ロータブレードは、ロータブレードをギアボックスに連結するシャフトを回転させるように、又はギアボックスが使用されていない場合には直接発電機に、回転エネルギーの形態で運動エネルギーを伝達する。次いで、発電機は、機械的エネルギーを、送電網に供給することができる電気エネルギーに変換する。
【0003】
ロータブレードは、一般に、ブレードの前縁及び後縁に沿った接着線で互いに接着される、典型的には成形プロセスを使用して形成される負圧側シェル及び正圧側シェルを含む。さらに、正圧側シェル及び負圧側シェルは比較的軽量であり、動作中にロータブレードに加えられる曲げモーメント及び他の荷重に耐えるようには構成されていない構造特性(例えば、剛性、座屈抵抗、及び強度)を有する。したがって、ロータブレードの剛性、座屈抵抗、及び強度を高めるために、本体シェルは、典型的には、シェル半体の内側の正圧側面及び負圧側面に係合する1つ又は複数の構造構成要素(例えば、それらの間に剪断ウェブが構成された対向するスパーキャップ)を使用して強化される。スパーキャップ及び/又は剪断ウェブは、限定はされないが、ガラス繊維積層複合材及び/又は炭素繊維積層複合材を含む様々な材料で構築することができる。
【0004】
風力タービンが大型化し続けるので、ロータブレードも大型化していく。したがって、より大きなロータブレードは、1つ又は複数のピンジョイントを介して現場で組み立てることができるセグメントとして構築される場合がある。ブレードの長さを増加させると、重力が増加した長さに沿って引っ張り、より短いロータブレードよりも大きな曲げモーメントが発生するため、追加のブレード支持が必要になる。ピンジョイントは、ブレード先端部がこの荷重の一部に耐えるように撓むことを可能にするように構成される。
【0005】
そのようなピンジョイントは、典型的には、第2のブレードセグメントの受け部内に受けられた第1のブレードセグメントのビーム構造体を含み、翼弦方向に延在するピンが、ビーム構造体及び受け部の第1及び第2のピンジョイントスロットをそれぞれ通って延在し、したがって、第1及び第2のセグメントを互いに接合する。多くの場合、ビーム構造体はしばしば受け部よりも狭いため、ビーム構造体と受け部との間のそのようなピンジョイントの前縁及び後縁には翼弦方向の間隙がある。この間隙を最小限に抑えることは、ピンジョイントの性能にとって有益である。例えば、間隙を最小限に抑えることにより、連続的な荷重経路、構造効率、及び翼弦方向の最小変換が提供され、これにより摩耗も最小限に抑えられる。
【0006】
したがって、本開示は、接合されたブレードセグメント間の翼弦方向の間隙を排除するように設計された、翼弦方向に延在するピンブッシングを有する接合式風力ロータブレードに関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許出願公開第2018/340510号明細書
【発明の概要】
【0008】
本発明の態様及び利点は、その一部分を以下の説明に記載しており、又はその説明から明らかになり、又は本発明の実施を通じて学ぶことができる。
【0009】
一態様では、本開示は、風力タービン用のロータブレードに関する。ロータブレードは、翼弦方向ジョイントから反対方向に延在する第1のブレードセグメント及び第2のブレードセグメントを含む。第1及び第2のブレードセグメントの各々は、翼形表面及び内部支持構造体を画定する少なくとも1つのシェル部材を含む。第1のブレードセグメントは、受け部を介して第2のブレードセグメントと構造的に接続する、長手方向に延在するビーム構造体を含む。ロータブレードはさらに、ビーム構造体の縁部と受け部の縁部との間に少なくとも1つの翼弦方向の間隙を含む。ビーム構造体は、第1のピンジョイントスロットを画定し、一方、受け部は、第1のピンジョイントスロットと整列する第2のピンジョイントスロットを画定する。ロータブレードはさらに、第1のピンジョイントスロットの第1の端部に配置された第1のブッシングを含む。第1のブッシングは、翼弦方向の間隙内に延在し、かつ第1のピンジョイントスロットの第1の端部を囲むフランジを含む。ロータブレードはさらに、第2のピンジョイントスロットの第1の端部に配置された第2のブッシングを含む。第2のブッシングはさらに、翼弦方向の間隙内に延在し、かつ第2のピンジョイントスロットの第1の端部を囲むフランジを有する。さらに、ブッシングのフランジは、翼弦方向の間隙を所定の規定の間隙又は締め代で充填するように、翼弦方向の間隙で互いに当接する。したがって、フランジは、正確に画定された間隙又は締め代を画定するように翼弦方向の間隙を部分的に充填するように構成されるか、又は翼弦方向の間隙を完全に充填するように設計されてもよい。さらに、ロータブレードは、第1及び第2のブレードセグメントを互いに固定するように、第1及び第2のピンジョイントスロットの第1及び第2のブッシングを貫通して位置決めされた少なくとも1つの翼弦方向に延在するピンを含む。
【0010】
一実施形態では、ロータブレードはさらに、第1のピンジョイントスロットの第1の端部及び第1のピンジョイントスロットの対向する第2の開口部にそれぞれ配置された1対の第1のブッシングと、第2のピンジョイントスロットの第1の端部及び第2のピンジョイントスロットの対向する第2の開口部にそれぞれ配置された1対の第2のブッシングとを含むことができる。そのような実施形態では、翼弦方向に延在するピンは、第1及び第2のブレードセグメントを互いに固定するように、第1及び第2のピンジョイントスロットの第1及び第2のブッシングの対を貫通して位置決めされる。
【0011】
別の実施形態では、翼弦方向の間隙は、ロータブレードの後縁及び/又は前縁に隣接して位置する。
【0012】
さらなる実施形態では、当接するフランジの翼弦方向の幅は、締まり嵌めを形成するように翼弦方向の間隙の翼弦方向の幅よりも大きい。例えば、そのような実施形態では、当接するフランジの翼弦方向の幅は、翼弦方向の間隙の翼弦方向の幅よりも約1.5ミリメートル(mm)大きい。いくつかの実施形態では、第1及び第2のブッシングは、例えば約0.2未満の摩擦係数を有するコーティング材料をさらに含んでもよい。
【0013】
追加の実施形態では、第1及び第2のブッシングは、金属又は金属合金で構築される。したがって、そのような実施形態では、金属又は金属合金は、1000mmの翼長に対して約+/-0.025ミリメートル(mm)の材料公差を含むことができる。
【0014】
別の態様において、本開示は、ロータブレードを組み立てるための方法に関する。本方法は、成形プロセスを介して第1のブレードセグメント及び第2のブレードセグメントを形成することを含む。第1及び第2のブレードセグメントの各々は、翼形表面及び内部支持構造体を画定する少なくとも1つのシェル部材を有する。第1のブレードセグメントは、長手方向に延在するビーム構造体を有し、一方、第2のブレードセグメントは、受け部を有する。本方法はまた、ビーム構造体が受け部内に受けられる場合に、ビーム構造体の縁部と受け部の縁部との間の少なくとも1つの翼弦方向の間隙のサイズを決定することを含む。さらに、本方法は、ビーム構造体の第1のピンジョイントスロットの対向する端部に第1の対の金属ブッシングを設けることを含む。第1の対の金属ブッシングの各々は、フランジを有する。さらに、本方法は、受け部の第2のピンジョイントスロットの対向する端部に第2の対の金属ブッシングを設けることを含み、第2の対の金属ブッシングの各々はフランジを備える。加えて、本方法は、第1の対の金属ブッシングからのフランジのうちの1つを、第2の対の金属ブッシングからのフランジのうちの1つと、翼弦方向の間隙内でフランジが互いに当接するように位置決めし、それにより、翼弦方向の間隙を所定の規定の間隙又は締め代で充填することを含む。本方法はさらに、第1及び第2のブレードセグメントを翼弦方向ジョイントの反対方向に位置させることを含む。加えて、本方法は、ビーム構造体の第1のピンジョイントスロットが受け部の第2のピンジョイントスロットと整列するように、ビーム構造体を受け部に挿入することを含む。さらに、本方法は、少なくとも1つの翼弦方向に延在するピンを、第1及び第2のピンジョイントスロット内のブッシングの第1及び第2の対を貫通して挿入し、それにより、第1及び第2のブレードセグメントを互いに固定することを含む。
【0015】
一実施形態では、本方法は、成形プロセスが完了した後にビーム構造体が受け部内に受けられるときに、ビーム構造体の縁部と受け部の縁部との間の翼弦方向の間隙のサイズを決定すること、及び次いで、複数の金属ブッシングの複数のフランジを機械加工して、翼弦方向の間隙よりも大きい締め代を除去することをさらに含む。
【0016】
別の実施形態では、金属ブッシングの第1の対を第1のピンジョイントスロットの対向する端部に設けること、及び金属ブッシングの第2の対を受け部の第2のピンジョイントスロットの対向する端部に設けることは、金属ブッシングの第1及び第2の対を第1及び第2のピンジョイントスロットにそれぞれ注入することをさらに含むことができ、それにより、ビーム構造体が受け部に挿入されると、金属ブッシングの第1及び第2の対のフランジは、翼弦方向の間隙を完全に充填する。
【0017】
別の態様では、本開示は風力タービン用のロータブレードに関する。ロータブレードは、翼弦方向ジョイントから反対方向に延在する第1のブレードセグメント及び第2のブレードセグメントを含む。第1及び第2のブレードセグメントの各々は、翼形表面及び内部支持構造体を画定する少なくとも1つのシェル部材を含む。第1のブレードセグメントは、受け部を介して第2のブレードセグメントと構造的に接続する、長手方向に延在するビーム構造体を含む。ロータブレードはさらに、ビーム構造体の縁部と受け部の縁部との間に少なくとも1つの翼弦方向の間隙を含む。ビーム構造体は、第1のピンジョイントスロットを画定し、一方、受け部は、第1のピンジョイントスロットと整列する第2のピンジョイントスロットを画定する。ロータブレードはさらに、第1のピンジョイントスロットの第1の端部に配置された第1のブッシングを含む。第1のブッシングは、翼弦方向の間隙内に延在し、かつ第1のピンジョイントスロットの第1の端部を囲むフランジを含む。ロータブレードはさらに、第2のピンジョイントスロットの第1の端部に配置された第2のブッシングを含む。第2のブッシングはさらに、翼弦方向の間隙内に延在し、かつ第2のピンジョイントスロットの第1の端部を囲むフランジを有する。さらに、ロータブレードはまた、翼弦方向の間隙内のブッシングのフランジのうちの1つ又は複数に隣接する少なくとも1つのスペーサ構成要素を含む。加えて、ロータブレードは、第1及び第2のブレードセグメントを互いに固定するように、第1及び第2のピンジョイントスロットの第1及び第2のブッシングを貫通して位置決めされた少なくとも1つの翼弦方向に延在するピンを含む。
【0018】
一実施形態では、当接するフランジの翼弦方向の幅は、翼弦方向の間隙の幅よりも小さい。別の実施形態では、スペーサ構成要素は、1つ又は複数のシムを含むことができる。そのような実施形態では、シムは、当接するフランジによって充填されていない間隙の残りの部分を充填するように構成される。したがって、シム及びフランジは、翼弦方向の間隙を完全に充填する。
【0019】
さらなる実施形態では、スペーサ構成要素は、1つ又は複数のばね装填装置を含むことができる。そのような実施形態では、ばね装填装置は、円錐板ばね、多層波板ばね、又はゴム粘弾性リングを含むことができる。ばね装填装置がゴム粘弾性リングに対応する一実施形態では、ゴム粘弾性リングの少なくとも一部は、第1及び第2のブッシングのフランジの少なくとも一方の凹部内に位置する。加えて、ゴム粘弾性リングのばね定数は、所定の期間にわたって非線形になり、ゴム粘弾性リングは、所定の期間後に剛性になる。
【0020】
追加の実施形態では、スペーサ構成要素は、金属又は金属合金で構築されてもよい。したがって、金属又は金属合金は、一般に、1000mm当たり約+/-0.025ミリメートル(mm)の厳格な材料公差を有する。
【0021】
特定の実施形態では、スペーサ構成要素は、第1及び第2のブッシングのフランジ間に位置決めされてもよい。代替的に、スペーサ構成要素は、第1又は第2のブッシングのうちの一方のシャフトの周りに配置されてもよい。
【0022】
本発明のこれら及び他の特徴、態様及び利点は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲を参照することによってよりよく理解されるであろう。添付の図面は、本明細書に組み込まれて、本明細書の一部を構成し、本発明の実施形態を例示し、説明と共に本発明の原理を説明するのに役立つ。
【0023】
本発明の完全かつ可能な開示は、その最良の形態を含むと共に、当業者に向けられているが、その開示は本明細書に記載されており、本明細書は以下の添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本開示による、風力タービンの一実施形態の斜視図である。
【
図2】本開示による、第1のブレードセグメント及び第2のブレードセグメントを有するロータブレードの一実施形態の平面図である。
【
図3】本開示による、第1のブレードセグメントの一実施形態の一部分の斜視図である。
【
図4】本開示による、翼弦方向のジョイントにおける第2のブレードセグメントの一部分の一実施形態の斜視図である。
【
図5】本開示による、第2のブレードセグメントと接合された第1のブレードセグメントを有する風力タービンのロータブレードの一実施形態のジョイントアセンブリを示す図である。
【
図6】本開示による、風力タービンのロータブレードのジョイントアセンブリの一実施形態の分解斜視図である。
【
図7】断面線7-7に沿った
図5の翼弦方向ジョイントの断面図である。
【
図8】本開示による、風力タービンのロータブレードの翼弦方向のジョイントの翼弦方向に延在するピンの一実施形態の断面図を示しており、特に、ピンの前縁及び後縁に配置された複数のフランジ付きブッシングを示している。
【
図9A】本開示による、シムがフランジのうちの1つのフランジのシャフトの周りに配置されたロータブレードの翼弦方向ジョイントの当接するフランジの断面図である。
【
図9B】本開示による、シムが間に配置されたロータブレードの翼弦方向ジョイントの当接するフランジの断面図である。
【
図10】本開示による、円錐板ばねが間に配置されたロータブレードの翼弦方向ジョイントの当接するフランジの断面図である。
【
図11】本開示による、多層波板ばねが間に配置されたロータブレードの翼弦方向ジョイントの当接するフランジの断面図である。
【
図12】本開示による、ゴム粘弾性リングが間に配置されたロータブレードの翼弦方向ジョイントの当接するフランジの断面図である。
【
図13】本開示による、ロータブレードを組み立てる方法の一実施形態のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
ここで、本発明の実施形態を詳細に参照するが、その1つ以上の例が、図面に示されている。各々の例は、本発明を限定するのではなく、本発明を説明する目的で提示されている。実際には、本発明の範囲又は趣旨から逸脱することなく、本発明において様々な修正及び変更が可能であることが、当業者には明らかであろう。例えば、ある実施形態の一部分として図示又は記載された特徴は、またさらなる実施形態をもたらすために、別の実施形態において使用することができる。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物の範囲に含まれるそのような修正及び変更を包含することを意図している。
【0026】
ここで図面を参照すると、
図1は、本発明による風力タービン10の一実施形態の斜視図を示している。図示する実施形態では、風力タービン10は、水平軸風力タービンである。代替的に、風力タービン10は、垂直軸風力タービンであってもよい。加えて、図示のように、風力タービン10は、支持面14から延在するタワー12、タワー12に装着されたナセル16、ナセル16内に位置決めされた発電機18、発電機18に連結されたギアボックス20、及びロータシャフト24によりギアボックス20に回転可能に結合されたロータ22を含むことができる。さらに、図示のように、ロータ22は、回転可能なハブ26、及び回転可能なハブ26に連結され、かつ回転可能なハブ26から外側に延在する少なくとも1つのロータブレード28を含む。図示のように、ロータブレード28は、ブレード先端17及びブレード根元19を含む。
【0027】
ここで
図2を参照すると、
図1のロータブレード28のうちの1つの平面図が示されている。図示のように、ロータブレード28は、第1のブレードセグメント30及び第2のブレードセグメント32を含むことができる。さらに、図示のように、第1のブレードセグメント30及び第2のブレードセグメント32は、翼弦方向ジョイント34の反対方向から各々延在することができる。加えて、図示のように、ブレードセグメント30、32の各々は、正圧側シェル部材、負圧側シェル部材、前縁シェル部材、後縁シェル部材などの少なくとも1つのシェル部材を含むことができる。さらに、図示のように、第1のブレードセグメント30及び第2のブレードセグメント32は、ブレードセグメント30、32の接合を容易にするために、少なくとも両方のブレードセグメント30、32内に延在する内部支持構造体36によって接続される。矢印38は、図示の例のセグメント化されたロータブレード28が2つのブレードセグメント30、32を含むこと、及びこれらのブレードセグメント30、32が、内部支持構造体36を第2のブレードセグメント32に挿入することによって接合されることを示している。
【0028】
ここで
図3を参照すると、本開示による第1のブレードセグメント30の一部分の斜視図が示されている。図示のように、第1のブレードセグメント30は、内部支持構造体36の一部を形成し、かつ第2のブレードセグメント32と構造的に接続するために長手方向に延在するビーム構造体40を含む。さらに、図示のように、ビーム構造体40は、負圧側スパーキャップ44及び正圧側スパーキャップ46と接続された剪断ウェブ42の少なくとも一部を形成する。
【0029】
さらに、図示のように、第1のブレードセグメント30は、ビーム構造体40の受け部端54に1つ又は複数のピンジョイント52を含むことができる。一実施形態では、例えば、ピンジョイント52は、ブッシングと緊密に締まり嵌めされたピンを含むことができる。より具体的には、図示のように、ピン52は、翼長方向に、すなわちロータブレード28のブレード根元19からブレード先端17まで延在する軸線に沿って画定されるロータブレード28の翼長又は長さに沿って配向されてもよい。さらに、第1のブレードセグメント30はまた、ビーム構造体40上に位置する少なくとも1つの第1のピンジョイントスロット50を含んでもよい。さらに、図示のように、第1のピンジョイントスロット50は、翼弦方向に、すなわちロータブレード28の前縁から後縁まで延在する軸線に沿って画定されるロータブレード28の翼弦に沿って配向されてもよい。
【0030】
ここで
図4を参照すると、本開示による第2のブレードセグメント32の一部分の斜視図が示されている。図示のように、第2のブレードセグメント32は、第1のブレードセグメント30のビーム構造体40を受けるために、第2のブレードセグメント32内で長手方向に延在する受け部60を含む。さらに、図示のように、受け部60は、第1のブレードセグメント30のビーム構造体40と接続するために長手方向に延在する1つ又は複数のスパー構造体66(スパーキャップ44、46に類似)を含むことができる。加えて、
図5に示されるように、受け部60は、ピンジョイント52を受けるために、受け部を貫通して画定された翼長方向ピンジョイントスロット56を有する翼弦方向部材48を含むことができる。さらに、図示のように、受け部60は、ビーム構造体40の第1のピンジョイントスロット50と整列し、かつ受け部を貫通して画定された翼弦方向の第2のピンジョイントスロット58を含むことができる。
【0031】
ここで
図5を参照すると、本開示による、第1のブレードセグメント30が第2のブレードセグメント32と接合されたロータブレード28のアセンブリ70が示されている。図示のように、アセンブリ70は、ロータブレード28の外側シェル部材の下の複数の支持構造体を示している。より具体的には、図示のように、ビーム構造体40の受け端部54の翼長方向に延在するピン52は、第1及び第2のブレードセグメント30、32を互いに固定するように、受け部60の翼長方向ピンジョイントスロット56内に受けられる。加えて、図示のように、第1及び第2のピンジョイントスロット50、58は整列し、第1及び第2のブレードセグメント30、32を互いに固定するように、翼弦方向に延在するピン62が貫通して固定される。
【0032】
ここで
図6を参照すると、ロータブレード28のブレード先端に向かうアセンブリ70の複数の支持構造体の分解斜視図が示されている。図示のように、受け部60は、ビーム構造体40を受けるように構成され、そして、ビーム構造体40の第1のピンジョイントスロット50と整列し、それを貫通して翼弦方向に延在するピン62が挿入され得る翼弦方向の第2のピンジョイントスロット58を含むことができる。さらに、図示のように、翼弦方向に延在するピン62は、受け部60及びビーム構造体40が組み立て中に互いに接合されるように、整列するピンジョイントスロット50、58内において緊密な締まり嵌めのままであるように構成されてもよい。さらに、
図6はまた、ビーム構造体40のピン52を受けるように構成された半径方向ピンジョイントスロット56を含む翼弦方向部材48を示している。
【0033】
ここで
図7を参照すると、
図5のロータブレードアセンブリ70の断面図が線7-7に沿って示されている。より具体的には、図示のように、ビーム構造体40は、受け部60内に受けられる。さらに、図示のように、ビーム構造体40の縁部と受け部60との間には、前縁翼弦方向の間隙51及び後縁翼弦方向の間隙53が存在する。加えて、図示のように、翼弦方向に延在するピン62は、第1及び第2のブレードセグメント30、32の内部支持構造体40、60を互いに固定するように、翼弦方向ジョイント34を貫通して位置決めされる。さらに、図示のように、ビーム構造体40及び受け部60の第1及び第2のピンジョイントスロット50、58はそれぞれ、翼弦方向に延在するピン62を受けるための複数対のブッシング55、56、57、58を含んでもよい。例えば、図示のように、ビーム構造体40及び受け部60はそれぞれ、第1及び第2のピンジョイントスロット50、58の対向する端部内に配置された前縁ブッシング56、55及び後縁ブッシング57、58を含むことができる。特定の実施形態では、本明細書に記載の様々なブッシング55、56、57、58は、例えば約0.2未満の摩擦係数を有するコーティング材料をさらに含むことができる。
【0034】
さらに
図7を参照すると、翼弦方向に延在するピン62は、任意選択的に、その中に配置された1つ又は複数の構造インサート88、90を含むことができる。例えば、図示のように、翼弦方向に延在するピン62は、その後縁端部に配置された第1の構造インサート88、及びその前縁端部に配置された第2の構造インサート90を含むことができる。さらに、図示のように、構造インサート88、90は、ブッシング55、56、57、58と整列してもよい。特定の実施形態では、構造インサート88、90は、高荷重領域に追加の補強を提供するためにピン62に押し込まれる鋼インサートであってもよい。
【0035】
加えて、
図7及び
図8に示すように、ブッシング55、56、57、58の各々は、それぞれフランジ61、63、65、67を含むことができ、そのうちの2つはロータブレード28の前縁側にあり、そのうちの2つは後縁側にある。より具体的には、図示のように、第1のブッシング55は、翼弦方向の間隙51内に延在し、かつ第1のピンジョイントスロット50の第1の端部を囲むフランジ61を含むことができる。同様に、第2のブッシング56は、翼弦方向の間隙51内に延在し、かつ第2のピンジョイントスロット58の第1の端部を囲むフランジ65を含むことができる。さらに、図示のように、第1及び第2のブッシング55、56のフランジ61、65は、翼弦方向の間隙51を所定の規定の間隙又は締め代で充填するように、翼弦方向の間隙51内で互いに当接する。同様に、第1及び第2のピンジョイントスロット50、58の対向する側において、ロータブレード28は、ビーム構造体40と受け部60との間の別の翼弦方向の間隙53内にフランジ63、67を有する対向するブッシング57、58を含むことができる。したがって、図示のように、翼弦方向に延在するピン62は、第1及び第2のブレードセグメント30、32を互いに固定するように、第1及び第2のピンジョイントスロット50、58のブッシング55、56、57、58を貫通して位置決めされる。
【0036】
このような実施形態では、当接するフランジ(すなわち、フランジ61及び63又はフランジ65及び67)の翼弦方向の幅は、締まり嵌めを形成するように翼弦方向の間隙51、53の翼弦方向の幅よりも大きい。例えば、特定の実施形態では、当接するフランジの翼弦方向の幅は、翼弦方向の間隙51、53の翼弦方向の幅よりも約1.5ミリメートル(mm)大きくてもよい。例えば、特定の実施形態では、ブッシング55、56、57、58は、金属又は金属合金で構築されてもよい。そのような実施形態では、金属又は金属合金は、1000mmの翼長に対して約+/-0.025ミリメートル(mm)の材料公差を含むことができる。したがって、本明細書で説明するように、フランジ61、63、65、67は、翼弦方向の間隙51、53内の正確な嵌合を確実にするために、締め代の一部を排除するように機械加工することができる。
【0037】
ここで
図9A及び
図9Bを参照すると、翼弦方向の間隙51、53を完全に充填するフランジのうちの2つではなく、ロータブレード28の翼弦方向ジョイント34は、翼弦方向の間隙51、53内のブッシング55、56、57、58のフランジ61、63、65、67のうちの1つ又は複数に隣接する少なくとも1つのスペーサ構成要素72を含むことができる。このような実施形態では、当接するフランジ(例えば、フランジ61及び65)の翼弦方向の幅は、翼弦方向の間隙51の幅よりも小さい。したがって、スペーサ構成要素72は、間隙51内の残りの空間を充填するように構成される。例えば、
図9A及び
図9Bに示すように、スペーサ構成要素72は、1つ又は複数のシム74を含むことができる。そのような実施形態では、スペーサ構成要素72は、金属又は金属合金で構築されてもよい。したがって、金属又は金属合金は、一般に、1000mm当たり約+/-0.025ミリメートル(mm)の厳格な材料公差を有する。加えて、特に
図9Aに示すように、スペーサ構成要素72は、ブッシングのうちの1つ又は複数のブッシングのシャフト(例えば、ブッシング55のシャフト78)の周りに配置することができる。代替的に、
図9Bに示すように、スペーサ構成要素72は、当接するブッシング55、56のフランジ61、65の間に配置されてもよい。そのような実施形態では、シム74は、当接するフランジによって充填されていない間隙の残りの部分を充填するように構成される。したがって、シム74及びフランジ61、63は、翼弦方向の間隙51(又は間隙53)を完全に充填する。
【0038】
ここで
図10~
図12を参照すると、スペーサ構成要素72は、代替的に、1つ又は複数のばね装填装置76であってもよい。より具体的には、
図10に示すように、ばね装填装置76は、円錐板ばね80を含むことができる。代替的に、
図11に示すように、ばね装填装置76は、多層波板ばね82を含むことができる。さらに別の実施形態では、
図12に示すように、ばね装填装置76は、ゴム粘弾性リング84を含むことができる。そのような実施形態では、図示のように、ゴム粘弾性リング84の少なくとも一部は、第1及び第2のブッシング55、56のフランジ61、65の少なくとも一方の凹部86内に着座してもよい。したがって、ゴムの一部は取り囲まれず、それによって対向するブッシング面と相互作用する。ゴム粘弾性リング84は、そのばね定数が最終的に非線形になり、捕捉されたゴム部分が指数関数的に剛性になるため、短い圧縮サイクルに特に適している可能性がある。
【0039】
ここで
図13を参照すると、本開示による、ロータブレードを組み立てるための方法100のフローチャートが示されている。一般に、方法100は、
図1~
図12に示す風力タービン10及びロータブレード28を参照して本明細書で説明される。しかしながら、開示された方法100は、任意の他の適切な構成を有するロータブレードで実施することができることを理解されたい。加えて、
図13は、例示及び説明の目的のために特定の順序で実施されるステップを図示しているが、本明細書で論じられる方法は、任意の特定の順序又は配置に限定されない。当業者は、本明細書で提供される本開示を使用して、本明細書に開示される方法の様々なステップが、本開示の範囲から逸脱することなく様々な方法で省略、再構成、組み合わせ、及び/又は適合することができることを理解するであろう。
【0040】
(102)に示すように、方法100は、成形プロセスを介して第1のブレードセグメント30及び第2のブレードセグメント32を形成することを含んでもよい。上述したように、第1のブレードセグメントは、長手方向に延在するビーム構造体40を含み、その一方で、第2のブレードセグメント32は、ビーム構造体40を受ける受け部60を含む。(104)に示すように、方法100は、ビーム構造体40が受け部60内に受けられる場合、ビーム構造体40の縁部と受け部60の縁部との間の少なくとも1つの翼弦方向の間隙のサイズを決定することを含んでもよい。(106)に示すように、方法100は、ビーム構造体40の第1のピンジョイントスロット50の対向する端部に第1の対の金属ブッシング55、57を設けることを含んでもよい。上述したように、第1の対の金属ブッシング55、57の各々は、フランジ61、63を有する。(108)に示すように、方法100は、受け部60の第2のピンジョイントスロット58の対向する端部に第2の対の金属ブッシング56、59を設けることを含んでもよい。上述したように、第2の対の金属ブッシング56、59の各々はまた、フランジ65、67を含む。したがって、(110)に示すように、方法100は、フランジが翼弦方向の間隙(すなわち、間隙51、53)内で互いに当接し、それにより翼弦方向の間隙を所定の規定の間隙又は締め代で充填するように、第1の対の金属ブッシング55、57からのフランジ61、63の一方を、第2の対の金属ブッシング56、59からのフランジ65、67の一方と位置決めすることを含む。(112)に示すように、方法100は、第1及び第2のブレードセグメント30、32を翼弦方向ジョイント34の反対方向に位置させることを含んでもよい。(114)に示すように、方法100は、ビーム構造体40の第1のピンジョイントスロット50が受け部60の第2のピンジョイントスロット58と整列するように、ビーム構造体40を受け部60に挿入することを含んでもよい。(116)に示すように、方法100は、第1及び第2ブレードセグメント30、32を互いに固定するために、第1及び第2のピンジョイントスロット50、58内の第1及び第2の対のブッシング55、56、57、59を通して少なくとも1つの翼弦方向に延在するピン62を挿入することを含んでもよい。
【0041】
一実施形態では、翼弦方向の間隙51、53のサイズは、成形プロセスが完了した後に決定されてもよい。そのような実施形態では、方法100は、複数の金属ブッシング55、56、57、59の複数のフランジ61、63、65、67を機械加工して、翼弦方向の間隙51、53よりも大きい締め代を除去することを含んでもよい。
【0042】
別の実施形態では、第1及び第2のピンジョイントスロット50の対向する端部に第1及び第2の対の金属ブッシング55、57、56、58をそれぞれ設けることは、ビーム構造体40が受け部60に挿入されると第1及び第2の対の金属ブッシング55、57、56、58のフランジ61、63、65、67が翼弦方向の間隙を完全に充填するように、第1及び第2の対の金属ブッシング55、57、56、58を第1及び第2のピンジョイントスロット50、58にそれぞれ注入することをさらに含んでもよい。そのような実施形態では、注入プロセス中に、ブッシングを間隙の座部に含めることによって、間隙51、53を完全に回避することができる。より具体的には、複合金型のより高精度の機構は、連続的な金型自体の機構、金型インサートによって作り出された機構(例えば、閉じた金型又はベアリングブロックのフォームマンドレル、及び/又はコードピンインサート)、並びに同時注入された構成要素、複合材料が注入されたブッシング、ブッシングを正確に位置させるための工具、及び/又は限界寸法を確立するための工具(例えば、ブッシングフランジのインターフェース面の間)によって確立された機構の任意の組み合わせによって、ブッシングの座部を位置合わせするように構成される。
【0043】
当業者は、異なる実施形態の様々な特徴を相互に交換できることを認識するであろう。同様に、記載された様々な方法ステップ及び特徴、並びにそのような各方法及び特徴の他の既知の均等物は、本開示の原理に従って追加のシステム及び技術を構築するために、当業者によって混合及び適合させることができる。当然のことながら、上述のそのような目的又は利点のすべてが、任意の特定の実施形態に従って必ずしも達成され得るとは限らないことを理解されたい。したがって、例えば、当業者は、本明細書で説明するシステム及び技術が、本明細書に教示されるような1つの利点又は一群の利点を達成又は最適化する方法で、本明細書に教示又は示唆され得る他の目的又は利点を必ずしも達成せずに、具体化又は実行され得ることを認識するであろう。
【0044】
本発明の特定の特徴のみを本明細書に図示及び説明してきたが、多くの修正及び変更が当業者には思い浮かぶであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨の範囲内にあるすべてのそのような修正及び変更を網羅することを意図していることを理解されたい。
【0045】
本明細書は、最良の態様を含む本発明を開示するため、及びどのような当業者も、任意の装置又はシステムの作製及び使用並びに任意の組み込まれた方法の実行を含む本発明の実践を可能にするために、例を使用している。本発明の特許を受けられる範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者が想到する他の例を含むことができる。そのような他の例は、特許請求の範囲の文言との差がない構造要素を含む場合、又は特許請求の範囲の文言との実質的な差がない等価の構造要素を含む場合、特許請求の範囲内にある。
【符号の説明】
【0046】
10 風力タービン
12 タワー
14 支持面
16 ナセル
17 ブレード先端
18 発電機
19 ブレード根元
20 ギアボックス
22 ロータ
24 ロータシャフト
26 ハブ
28 ロータブレード
30 第1のブレードセグメント
32 第2のブレードセグメント
34 翼弦方向ジョイント
36 内部支持構造体
38 矢印
40 ビーム構造体、内部支持構造体
42 剪断ウェブ
44 負圧側スパーキャップ
46 正圧側スパーキャップ
48 翼弦方向部材
50 第1のピンジョイントスロット
51 前縁翼弦方向の間隙
52 ピンジョイント、ピン
53 後縁翼弦方向の間隙
54 受け端部、受け部端
55 第1のブッシング、金属ブッシング、前縁ブッシング
56 第2のブッシング、金属ブッシング、前縁ブッシング、翼長方向ピンジョイントスロット、半径方向ピンジョイントスロット
57 金属ブッシング、後縁ブッシング
58 後縁ブッシング、第2のピンジョイントスロット
59 金属ブッシング
60 受け部、内部支持構造体
61 フランジ
62 翼弦方向に延在するピン
63 フランジ
65 フランジ
66 スパー構造体
67 フランジ
70 ロータブレードアセンブリ
72 スペーサ構成要素
74 シム
76 ばね装填装置
78 シャフト
80 円錐板ばね
82 多層波板ばね
84 ゴム粘弾性リング
86 凹部
88 第1の構造インサート
90 第2の構造インサート
100 方法