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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】プリンタブルリチウムを利用した電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/134 20100101AFI20240422BHJP
   H01M 4/1395 20100101ALI20240422BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240422BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240422BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/1395
H01M10/0562
H01M10/052
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021556513
(86)(22)【出願日】2019-09-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-24
(86)【国際出願番号】 US2019051705
(87)【国際公開番号】W WO2020190330
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-07-08
(31)【優先権主張番号】16/359,733
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/864,739
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/874,269
(32)【優先日】2019-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/573,587
(32)【優先日】2019-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520363317
【氏名又は名称】リベント ユーエスエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブレワ、マリナ
(72)【発明者】
【氏名】フィッチ、ケネス ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】シア、ジアン
(72)【発明者】
【氏名】グリーター、ジュニア、ウィリアム アーサー
【審査官】梅野 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-527095(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0239917(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104332657(CN,A)
【文献】特表2008-503865(JP,A)
【文献】特開2017-098012(JP,A)
【文献】特開2017-162812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/00-10/0587
H01M4/00-4/62
H01G11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード及び複合アノードを含む電池であって、前記複合アノードが、
リチウム金属アノード、
固体電解質、及び
前記リチウム金属アノードの表面と前記固体電解質の表面との間の少なくとも1つの界面層であって、乾燥重量基準で、50重量%から98重量%のリチウム金属粉末と、2重量%から50重量%のポリマーバインダと、レオロジー調整剤と、溶媒から構成されるプリンタブルリチウム組成物から形成された、1から50マイクロメートルの厚さを有するフィルム又は箔の形態である、前記少なくとも1つの界面層を含み、
前記ポリマーバインダは、ポリ(エチレンオキシド)、ポリスチレン、ポリイソブチレン、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ブチルゴム、水素化ニトリルブタジエンゴム、エピクロロヒドリンゴム、アクリラートゴム、シリコンゴム、ニトリルゴム、ポリアクリル酸、ポリビニリデンクロリド、ポリビニルアセタート、エチレンプロピレンジエンターモノマー、エチレンビニルアセタートコポリマー、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-プロピレンターポリマー、及びポリブテンの1つ以上であり、
前記レオロジー調整剤は、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、シリコンナノチューブ、黒鉛、ハードカーボン、及びそれらの混合物又はブレンドであるか、又は、ヒュームドシリカ、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム及び他の第IIA、IIIA、IVB、VB及びVIA族の元素/化合物、並びにそれらの混合物又はブレンドの1つ以上であ
前記溶媒は、非環式炭化水素、環式炭化水素、芳香族炭化水素、対称エーテル、非対称エーテル、環式エーテル、アルカン、スルホン、鉱油及びその混合物、ブレンド又は共溶媒である、
電池。
【請求項2】
前記リチウム金属アノードが、前記プリンタブルリチウム組成物で基板をコーティングすることによって形成されるリチウム金属アノードである、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記リチウム金属アノードを形成する前記プリンタブルリチウム組成物が、溶液重量基準で、5重量%から50重量%の前記リチウム金属粉末、0.1重量%から20重量%の前記ポリマーバインダ、0.1重量%から30重量%の前記レオロジー調整剤及び50重量%から95重量%の前記溶媒を含む、請求項2に記載の電池。
【請求項4】
前記リチウム金属アノードが三次元アノードである、請求項1に記載の電池。
【請求項5】
前記基板が平坦である、請求項2に記載の電池。
【請求項6】
前記基板が三次元多孔質構造を有する、請求項2に記載の電池。
【請求項7】
電池であって、
カソード、
リチウム金属粉末と、ポリマーバインダと、レオロジー調整剤と、溶媒から構成されるプリンタブルリチウム組成物から形成されたアノード、並びに
前記アノードに適用されて、複合アノードを形成する、少なくとも1つの界面層
を含み、
前記少なくとも1つの界面層は、乾燥重量基準で、リチウム金属粉末を50重量%から98重量%とポリマーバインダを2重量%から50重量%から構成されるプリンタブルリチウム組成物から形成され、1から50マイクロメートルの厚さを有するフィルム又は箔の形態であり、
前記ポリマーバインダは、ポリ(エチレンオキシド)、ポリスチレン、ポリイソブチレン、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ブチルゴム、水素化ニトリルブタジエンゴム、エピクロロヒドリンゴム、アクリラートゴム、シリコンゴム、ニトリルゴム、ポリアクリル酸、ポリビニリデンクロリド、ポリビニルアセタート、エチレンプロピレンジエンターモノマー、エチレンビニルアセタートコポリマー、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-プロピレンターポリマー、及びポリブテンの1つ以上であり、
前記レオロジー調整剤は、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、シリコンナノチューブ、黒鉛、ハードカーボン、及びそれらの混合物又はブレンドであるか、又は、ヒュームドシリカ、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム及び他の第IIA、IIIA、IVB、VB及びVIA族の元素/化合物、並びにそれらの混合物又はブレンドの1つ以上であ
前記溶媒は、非環式炭化水素、環式炭化水素、芳香族炭化水素、対称エーテル、非対称エーテル、環式エーテル、アルカン、スルホン、鉱油及びその混合物、ブレンド又は共溶媒である、
電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
以下の出願は、2019年9月17日に提出された米国特許出願第16/573,587号に対する優先権を主張し、これは2019年7月15日に提出された米国仮出願第62/874,269号、2019年6月21日に提出された米国仮出願第62/864,739号並びに2019年3月21日に提出された国際出願第PCT/US19/23376号、第PCT/US19/23383号及び第PCT/US19/23390号に対する優先権を主張し、これらは2019年3月20日に提出された米国特許出願第16/359,707号、第16/359,725号及び第16/359,733号に対する優先権を主張し、これらは2018年3月22日に提出された米国仮出願第62/646,521号及び2018年6月29日に提出された米国仮出願第62/691,819号に対する優先権を主張し、これらの出願の開示はそれぞれ、その全体が参照により組み入れられている。
【0002】
本発明は、プリンタブルリチウム組成物を利用する電池に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウム二次電池及びリチウムイオン二次電池、即ち充電式電池は、携帯電話、カメラ一体型ビデオ、ラップトップコンピュータなどのある用途に使用され、さらにより最近では、電気自動車やハイブリッド電気自動車などのより大電力の用途で使用されている。これらの用途では、二次電池が可能な限り高い比容量を備えているが、後続の再充電及び放電サイクルで高い比容量が維持されるように、安全な動作条件と良好なサイクル性をなお与えることが好ましい。
【0004】
二次電池には様々な構成があるが、各構成は、正極(即ちカソード)、負極(即ちアノード)、カソードとアノードを分離するセパレータ、カソードとアノードを電気化学的に連通する電解質を含む。リチウム二次電池の場合、リチウムイオンは、二次電池が放電されているとき、即ちその特定の用途に使用されているときに、電解質を通じてアノードからカソードに移送される。放電プロセス中に、電子はアノードから回収され、外部回路を介してカソードに移行する。二次電池の充電又は再充電中に、リチウムイオンは、電解質を通じてカソードからアノードに移送される。
【0005】
新たなリチウムイオンセル又は電池は、最初は放電状態である。リチウムイオンセルの最初の充電中に、リチウムはカソード材料からアノード活物質に移動する。カソードからアノードに移動するリチウムは、黒鉛アノードの表面で電解質材料と反応し、アノードに不動態膜を形成する。黒鉛アノードに形成された不動態膜は、固体電解質界面(SEI)である。後続の放電時に、SEIの形成によって消費されたリチウムはカソードに戻されない。これにより、リチウムの一部がSEIの形成によって消費されたため、初期充電容量よりも容量が小さいリチウムイオンセルが生じる。最初のサイクルで利用可能なリチウムが部分的に消費されると、リチウムイオンセルの容量が減少する。この現象は不可逆容量と呼ばれ、リチウムイオンセルの容量の約10%から20%超を消費することが既知である。したがって、リチウムイオンセルの初期充電後、リチウムイオンセルはその容量の約10%から20%超を失う。
【0006】
1つの解決策は、安定化リチウム金属粉末を使用して、アノードをプレリチウム化することである。例えばリチウム粉末は、参照によりその全開示が本明細書に組み入れられている、米国特許第5,567,474号、第5,776,369号及び第5,976,403号に記載されているように、金属粉末表面を二酸化炭素で不動態化することにより安定化することができる。COによって不動態化されたリチウム金属粉末は、リチウム金属と空気が反応するため、リチウム金属含有量が減少する前の限定された期間に、水分レベルの低い空気中でのみ使用できる。別の解決策は、例えば米国特許第7,588,623号、第8,021,496号、第8,377,236号及び米国特許出願公開第2017/0149052号に記載されているように、リチウム金属粉末にフッ素、ワックス、リン又はポリマーなどのコーティングを施すことである。
【0007】
しかし、エネルギー密度を上昇させ、安全性と製造性を向上させるために、リチウム化又はプレリチウム化された構成要素を有する固体電池がなお必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この目的のために、本発明は、プレリチウム化された、即ちプリンタブルリチウム組成物でリチウム化された1つ以上の構成要素を有する固体電池を提供する。プリンタブルリチウム組成物を含む固体電池は、エネルギー密度が上昇し、安全性と製造性が向上する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態において、電池は、カソード及び複合アノードを含み得る。複合アノードは、リチウム金属アノードと、リチウム金属アノードと固体電解質との間の少なくとも1つの界面層とを含んでもよい。例えば、リチウム金属アノード及び/又は界面層は、リチウム金属粉末、リチウム金属粉末と相溶性であるポリマーバインダ、リチウム金属粉末と相溶性であるレオロジー調整剤並びにリチウム金属粉末及びポリマーバインダと相溶性である溶媒から構成される、プリンタブルリチウム組成物から形成され得る。界面層は、固体電解質の表面に添加されて、その表面の均一性を改善し、リチウム金属アノードの表面と固体電解質の表面との間の接触を最適化し、より良好な電池性能をもたらし得る。別の実施形態において、アノードは、プリンタブルリチウム配合物から形成され、界面層として作用し得る。
【0010】
別の実施形態において、リチウム金属アノード及び/又は界面層は、リチウム金属粉末、リチウム金属粉末と相溶性であるポリマーバインダ、リチウム金属粉末及びポリマーバインダと相溶性であるレオロジー調整剤であって、プリンタブルリチウム組成物でコーティングしたときに箔又はフィルムの劣化を防止し、箔又はフィルムの耐久性を向上させる三次元支持構造を提供するレオロジー調整剤を含むプリンタブルリチウム組成物から形成された、箔又はフィルムから構成されてもよい。
【0011】
いくつかの実施形態において、カソードは、非リチウム化カソード材料とプリンタブルLi金属との複合材であってよい。例えば硫黄カソードはプリンタブルLiによってプレリチウム化することができ、この複合カソードは、固体電池の非リチウム化アノード又はプレリチウム化アノードと対にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態による固体電池の概略図である。
【0013】
図2】SLMP/スチレンブタジエン/トルエンのプリンタブルリチウム組成物の反応性試験の温度及び圧力プロファイルである。
【0014】
図3】アノードとしてのプリンタブルリチウムに由来するリチウム薄膜対市販のリチウム薄箔を有するパウチセルのサイクル性能を示すプロットである。
【0015】
図4A】LiFePO(LFP)カソード、Li10GeP12(LGPS)固体電解質及びプリンタブルリチウム組成物を含むアノードを有するコイン型全固体電池のサイクル電圧を示すプロットである。
【0016】
図4B】一実施形態の70℃におけるサイクル数に対する充電容量及び放電容量を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここで本発明の上述及び他の態様を、本明細書で与える説明及び方法に関してより詳細に説明する。本発明は様々な形態で具体化することができ、本明細書に記載する実施形態に限定されるとして解釈するべきではないことを理解されたい。むしろこれらの実施形態は、この開示が徹底的かつ完全であり、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。
【0018】
本明細書の本発明の説明で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本発明を限定することを意図するものではない。本発明の実施形態の説明及び添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が別途明確に指摘しない限り、複数形も含むことを意図する。また、本明細書で使用する場合、「及び/又は」は、関連する列挙された項目の1つ以上のありとあらゆる可能な組み合わせを示し、包含する。
【0019】
化合物の量、用量、時間、温度などの測定可能な値を示すときに本明細書で使用する場合、「約」という用語は、明記した量の20%、10%、5%、1%、0.5%又はなお0.1%の変数を含むことを意図する。別途定義しない限り、説明において使用される技術用語及び科学用語を含む全ての用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0020】
本明細書で使用する場合、「備える(comprise)」、「備える(comprises)」、「備える(comprising」、「含む(include)」、「含む(includes)」及び「含む(including)」という用語は、示した特徴、整数、ステップ、操作、要素、及び/又は構成要素の存在を明記するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、構成要素及び/又はその群の存在又は追加を排除しない。
【0021】
本明細書で使用する場合、本発明の組成物及び方法に適用される「から本質的になる」(及びその文法上の変形)という用語は、追加の構成要素が組成物/方法を実質的に変化させない限り、組成物/方法が追加の構成要素を含み得ることを意味する。組成物/方法に適用される「実質的に変化させる」という用語は、少なくとも約20%以上の組成物/方法の有効性の増加又は減少を示す。
【0022】
本明細書で言及する全ての特許、特許出願及び出版物は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている。用語に矛盾がある場合は、本明細書が優先される。
【0023】
ここで図1を参照すると、本発明の一実施形態に従って、アノード12、カソード14及び固体電解質16を備える固体電池10が提供されている。固体電池は、アノード集電体20及びカソード集電体22をさらに含み得る。一実施形態において、プリンタブルリチウム組成物は、固体電池の集電体、電極及び/又は固体電解質に適用又は堆積され得る。例えば、プリンタブルリチウム組成物は、米国特許第8,252,438号及び第9,893,379号に記載され、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている固体電池を含む固体電池で使用するための、様々な厚さ及び幅のモノリシックリチウム金属アノードの形成に使用され得る。さらに別の実施形態において、プリンタブルリチウム組成物は、固体電池用の固体電解質を形成するように適用する又は堆積させることができ、固体電解質を形成するための、プリンタブルリチウム組成物とポリマー材料又はセラミック材料との組み合わせを含む。プリンタブルリチウム組成物は、リチウム金属粉末、1つ以上のポリマーバインダ、1つ以上のレオロジー調整剤を含み、溶媒又は共溶媒をさらに含み得る。
【0024】
プリンタブルリチウム組成物は、米国特許出願公開第16/359,725号に開示され、及び参照によりその全体が本明細書に組み入れられているように、押出、コーティング、プリンティング(printing)、塗装、浸漬及びスプレーを含む各種の方法で集電体、電極又は固体電解質に適用され得る。例えばアノードは、プリンタブルリチウム組成物を厚さ及び幅が制御されたリチウム薄膜を形成できるアノード若しくは集電体にプリントする(printing)ことによって、又はプリンタブルリチウム組成物でアノードをコーティングすることによって、リチウム化又はプレリチウム化され得る。
【0025】
代表的な固体電解質の表面は、固体電解質の選択に応じて粗面となることがあり、したがって、固体電解質とリチウム(箔)アノードとの間に良好な接点が形成されない場合があり、最適ではない界面及び電池性能の低下がもたらされる。一実施形態において、プリンタブルリチウム組成物を使用して固体電解質をプレリチウム化し、固体電解質表面を改良して、したがってリチウムアノードとの付着性が改善された界面層を形成する。別の実施形態において、界面層は、プリンタブルリチウム組成物から形成された箔又はフィルムを含んでもよい。界面層を形成するプリンタブルリチウム組成物は、ポリマー、ガラス及びセラミック電解質を含む様々な種類の固体電解質に適用してよい。修飾された固体電解質表面を有することにより、固体電解質とリチウムアノードとの間の接触が最適化され、固体電解質とリチウムアノードとの間の界面が改善され、サイクル中にリチウムの体積が増加してするために生じる、リチウムと電解質との間の接触の消失により引き起こされるインピーダンス上昇を低減させることにより、より良好な電池性能がもたらされる。
【0026】
固体二次電池の別の例は、その全体が参照により本明細書に組み入れられている、米国特許第7,914,930号に記載されているように、リチウムを電気化学的に吸蔵及び放出することができるカソード、リチウムを電気化学的に吸蔵及び放出することができるアノードであって、活物質を含む活物質層を含み、活物質層が集電体上に担持されている、アノード並びに非水性電解質を含み得る。方法は、プリンタブルリチウム組成物をアノードの活物質層の表面に接触させることによって、リチウムをアノードの活物質と反応させるステップと、その後、アノードをカソードと合わせて電極アセンブリを形成するステップとを含む。
【0027】
米国特許出願公開第16/359,707号に開示され、参照によりその全体が本明細書に組み入れられているように、プリンタブルリチウム組成物は、リチウム金属粉末、ポリマーバインダ、レオロジー調整剤を含み、さらに溶媒を含み得る。ポリマーバインダは、リチウム金属粉末と相溶性であり得る。レオロジー調整剤は、リチウム金属粉末及びポリマーバインダと相溶性であり得る。溶媒は、リチウム金属粉末及びポリマーバインダと相溶性であり得る。
【0028】
リチウム金属粉末は、微粉化粉末の形態であり得る。リチウム金属粉末は、通常、約80ミクロン未満、しばしば約40ミクロン未満、時には約20ミクロン未満の平均粒径を有する。リチウム金属粉末は、FMC Lithium Corpから入手可能な低自燃性安定化リチウム金属粉末(SLMP(登録商標))であってよい。リチウム金属粉末は(米国特許第5,567,474号、第5,776,369号及び第5,976,403号に開示されているように)、フッ素、ワックス、リン又はポリマー又はその組み合わせの実質的に連続した層又はコーティングも含み得る。リチウム金属粉末は、水分や空気との反応が大幅に低下している。
【0029】
リチウム金属粉末は、金属と合金化してもよい。リチウム金属粉末は、例えば第IからVIII族元素と合金化してもよい。第IB族の好適な元素の例としては、銀又は金が挙げられ得る。第IIB族の好適な元素の例としては、亜鉛、カドミウム、又は水銀が挙げられ得る。周期表の第IIA族の好適な元素の例としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びラジウムが挙げられ得る。本発明で使用され得る第IIIA族の元素の例としては、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム又はタリウムが挙げられ得る。本発明で使用され得る第IVA族の元素の例としては、炭素、シリコン、ゲルマニウム、スズ又は鉛が挙げられ得る。本発明で使用され得る第VA族の元素の例としては、窒素、リン又はビスマスが挙げられ得る。第VIIIB族の好適な元素の例としては、パラジウム又は白金が挙げられ得る。
【0030】
ポリマーバインダは、リチウム金属粉末と相溶性となるように選択される。「と相溶性である(Comparatible with)」又は「相溶性(compatibility)」は、ポリマーバインダがリチウム金属粉末と、安全上の問題を生じる激しい反応をしないことを伝えるものである。リチウム金属粉末とポリマーバインダは反応してリチウム-ポリマー複合体を形成するが、そのような複合体は様々な温度において安定性であるべきである。リチウム及びポリマーバインダの量(濃度)は、安定性と反応性に寄与することが認識されている。ポリマーバインダは、約1,000から約8,000,000の分子量を有し得て、2,000,000から5,000,000の分子量を有することが多い。好適なポリマーバインダとしては、ポリ(エチレンオキシド)、ポリスチレン、ポリイソブチレン、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ブチルゴム、水素化ニトリルブタジエンゴム、エピクロロヒドリンゴム、アクリラートゴム、シリコンゴム、ニトリルゴム、ポリアクリル酸、ポリビニリデンクロリド、ポリビニルアセタート、エチレンプロピレンジエンターモノマー、エチレンビニルアセタートコポリマー、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-プロピレンターポリマー、ポリブテンの1つ以上が挙げられ得る。バインダはワックスであってもよい。
【0031】
レオロジー調整剤は、リチウム金属粉末及びポリマーバインダと相溶性であるように選択される。レオロジー調整剤は、粘度などのレオロジー特性を与える。レオロジー調整剤は、多官能性でもあり得て、レオロジー調整剤の選択に応じて、導電性、改善された容量及び/又は改善された安定性/安全性も与え得る。この目的のために、レオロジー調整剤は、異なる特性を与えるように、又は追加の特性を与えるように、2つ以上の化合物の組み合わせであってよい。レオロジー調整剤の例としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、シリコンナノチューブ、黒鉛、ハードカーボン及び混合物、ヒュームドシリカ、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム及び他の第IIA、IIIA、IVB、VB及びVIA族の元素/化合物並びにその混合物又はブレンドの1つ以上が挙げられ得る。
【0032】
リチウムと相溶性である溶媒としては、非環式炭化水素、環式炭化水素、芳香族炭化水素、対称エーテル、非対称エーテル、環式エーテル、アルカン、スルホン、鉱油及びその混合物、ブレンド又は共溶媒が挙げられ得る。好適な非環式及び環式炭化水素の例としては、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサンなどが挙げられる。好適な芳香族炭化水素の例としては、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、イソプロピルベンゼン(クメン)などが挙げられる。好適な対称、非対称及び環状エーテルの例として、ジ-n-ブチルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、グリムなどが挙げられる。シェルゾール(Shell Sol)(登録商標)(Shell Chemicals)やアイソパー(Isopar)(登録商標)(Exxon)など、沸点範囲が調整された市販のイソパラフィン系合成炭化水素溶媒も好適である。
【0033】
ポリマーバインダ及び溶媒は、相互に及びリチウム金属粉末と相溶性であるように選択される。一般に、バインダ又は溶媒は、リチウム金属粉末と非反応性であるべきか、又はいずれの反応も最小限に維持され、激しい反応が回避されるような量とすべきである。バインダ及び溶媒は、プリンタブルリチウム組成物が生成され、使用される温度で相互と相溶性であるべきである。好ましくは、溶媒(又は共溶媒)は、(例えばスラリー形態の)プリンタブルリチウム組成物からただちに蒸発して、適用後にプリンタブルリチウム組成物(スラリー)を乾燥させるのに十分な揮発性を有する。
【0034】
プリンタブルリチウム組成物の構成要素は、スラリー又はペーストとして共に混合され得て、固体を高濃度とする。したがって、スラリー/ペーストは、堆積又は適用の時間の前に必ずしも全ての溶媒が添加されるわけではない、濃縮物の形態であってよい。一実施形態において、リチウム金属粉末は、適用又は堆積時に、実質的に均一な分布のリチウム金属粉末が堆積又は適用されるように、溶媒中に均一に懸濁されるべきである。乾燥リチウム粉末は、強い剪断力を加えるために激しく撹拌(agitating)又は撹拌(stirring)することなどによって分散され得る。
【0035】
別の実施形態において、参照によりその開示全体が組み入れられている米国特許第7,588,623号に記載されているように、ポリマーバインダ、レオロジー調整剤、コーティング試薬及びリチウム金属粉末のための他の考えられる添加剤の混合物が形成及び導入されて、リチウム融点を超える温度での又はリチウム分散物の冷却後のより低い温度での分散中に、リチウム液滴と接触し得る。このように修飾されたリチウム金属は、乾燥粉末形態で又は選択した溶媒中の溶液形態で導入され得る。各種のプロセスパラメータの組み合わせを使用して、特定の用途のための特異的なコーティング及びリチウム粉末特性が達成可能であることが理解される。
【0036】
従来のプレリチウム化表面処理では、バインダ含有量が非常に低く、リチウムが非常に高い組成物が必要であり、例えば参照によりその開示全体が組み入れられている米国特許第9,649,688号を参照されたい。しかし、本発明によるプリンタブルリチウム組成物の実施形態は、乾燥基準で最大20パーセントを含む、より高いバインダ比に適応することができる。粘度や流動などのプリンタブルリチウム組成物の様々な特性は、リチウムの電気化学的活性を失うことなく、バインダと調整剤の含有量を乾燥基準で最大50%まで増大させることによって修飾され得る。バインダ含有量を増大させると、プリンタブルリチウム組成物の添加量とプリンティング(printing)中の流動が容易になる。プリンタブルリチウム組成物は、乾燥重量基準で約50重量%から約98重量%のリチウム金属粉末と、約2重量%から約50重量%のポリマーバインダ及びレオロジー調整剤とを含み得る。一実施形態において、プリンタブルリチウム組成物は、約60重量%から約90重量%のリチウム金属粉末と、約10重量%から約40重量%のポリマーバインダ及びレオロジー調整剤とを含む。別の実施形態において、プリンタブルリチウム組成物は、約75重量%から約85重量%のリチウム金属粉末と、約15重量%から約30重量%のポリマーバインダ及びレオロジー調整剤とを含む。
【0037】
プリンタブルリチウム組成物の重要な態様は、懸濁液のレオロジー安定性である。リチウム金属は0.534g/ccの低密度であるため、溶媒懸濁液からのリチウム粉末の分離を防止することは困難である。リチウム金属粉末の添加量、ポリマーバインダ及び従来の調整剤の種類及び量を選択することにより、粘度及びレオロジーを調節して、本発明の安定な懸濁液が生成され得る。好ましい実施形態は、90日を超えると分離を示さない。これは、1×10cpsから1×10cpsの範囲のゼロ剪断粘度を有する組成物を設計することによって達成され得て、このようなゼロ剪断粘度は、特に貯蔵中にリチウムを懸濁状態に維持する。剪断が適用されると、懸濁液粘度は、プリンティング(printing)又はコーティング用途での使用に好適なレベルまで低下する。
【0038】
得られたプリンタブルリチウム組成物は、好ましくは10s-1にて約20から約20,000cpsの粘度、時に約100から2,000cpsの粘度、しばしば約700から約1,100cpsの粘度を有し得る。そのような粘度において、プリンタブルリチウム組成物は流動性懸濁液又はゲルである。プリンタブルリチウム組成物は、好ましくは室温にて長い貯蔵寿命を有し、60℃まで、しばしば120℃まで、場合により180℃までの温度にて金属リチウム損失に対して安定である。プリンタブルリチウム組成物は、時間の経過につれて多少分離し得るが、穏やかな撹拌及び/又は熱の適用により、懸濁液に戻すことができる。
【0039】
一実施形態において、プリンタブルリチウム組成物は、溶液基準で約5から50パーセントのリチウム金属粉末、約0.1から20パーセントのポリマーバインダ、約0.1から30パーセントのレオロジー調整剤及び約50から95パーセントの溶媒を含む。一実施形態において、プリンタブルリチウム組成物は、溶液基準で約15から25パーセントのリチウム金属粉末、約0.3から0.6パーセントの分子量4,700,000のポリマーバインダ、約0.5から0.9パーセントのレオロジー調整剤及び約75から85パーセントの溶媒を含む。典型的には、プリンタブルリチウム組成物は、プレス前に約50ミクロンから200ミクロンの厚さに適用又は堆積される。プレス後、厚さを約1から50ミクロンに低減することができる。プレス技術の例は、例えば参照によりその全体が本明細書に組み入れられている米国特許第3,721,113号及び第6,232,014号に記載されている。
【0040】
本発明の別の態様は、固体電池であって、固体電池の集電体、電極及び/又は固体電解質が、そのどちらもその全体が参照により本明細書に組み入れられている、米国仮出願第62/864,739号及び米国特許出願第(本願と同時に提出された、代理人案件ID 073396.1263)に記載されているように、プリンタブルリチウム組成物によってコーティングされた基板を構成し得る、固体電池に関する。プリンタブルリチウム組成物は、リチウム金属粉末、リチウム金属粉末と相溶性であるポリマーバインダ、リチウム金属粉末及びポリマーバインダと相溶性であるレオロジー調整剤であって、組成物中で分散性であり、プリンタブルリチウム組成物を用いて作製された場合、劣化を防止し、アノードの耐久性を向上させるための三次元支持構造を提供するレオロジー調整剤を含む。
【0041】
一実施形態において、レオロジー調整剤は炭素系である。例えば、レオロジー調整剤は、コーティングされた電極用の構造を提供するためのカーボンナノチューブから構成され得る。別の実施形態において、カーボンブラックはレオロジー調整剤として添加してもよい。理論によって限定されることを望むものではないが、炭素系レオロジー調整剤は、プレス後にリチウム粒子間の導電性ネットワークも提供し得て、デバイス運転中に面表面積を効果的に増大させ、面電流密度を低下させ、リチウムイオンに、通常のリチウム箔で生じるような箔の表面上だけでなく、バルクに堆積するための経路を与えると考えられる。好適なレオロジー調整剤の他の例としては、酸化チタン及び酸化シリコンを含む、非炭素系材料が挙げられ得る。例えば、ナノチューブ又はナノ粒子などのシリコン構造をレオロジー調整剤として添加して、三次元構造及び/又は追加容量を提供することができる。レオロジー調整剤はまた、機械的劣化を防止することによってプリンタブルリチウム組成物から形成された層(即ちコーティング、箔又はフィルム)の耐久性を高め、より高速での充電を可能にし得る。
【0042】
一実施形態において、プリンタブルリチウム組成物は、エネルギー貯蔵装置基板などの基板に塗布されてもよい。例としては集電体、アノード、カソード及び電解質が挙げられ得る。電解質の例としては、固体電解質、ポリマー電解質、ガラス電解質及びセラミック電解質が挙げられ得る。一例では、プリンタブルリチウム組成物は塗布又は堆積されて、アノード又はカソードをプレリチウム化してもよい。プレリチウム化アノード又はカソードは、コンデンサ又は電池などのエネルギー貯蔵装置に組み込んでもよい。別の例において、基板はリチウムアノードであってもよい。例えば、リチウムアノードは、平坦なリチウム金属アノードであってもよく、又はNiuら[Nature Nanotechnology,Vol.14,pgs.594-201(2019);DOI:10.1038/s41565-019-0427-9]に記載され、その全体が参照により本明細書に組み入れられている、アミン官能化リチウム-炭素フィルムなどのリチウム-炭素アノードであってもよい。
【0043】
プリンタブルリチウム組成物は、固体電池用の固体電解質を形成するように適用する又は堆積させることができ、固体電解質又は複合固体電解質を形成するための、プリンタブルリチウム組成物とポリマー材料、ガラス材料又はセラミック材料との組み合わせを含む。例えば、プリンタブルリチウム組成物及びポリマー材料を共に押し出して固体電解質フィルムを作製してもよく、場合により他の活性電解質材料を含んでもよい。
【0044】
別の実施形態において、基板は、プリンタブルリチウム組成物でコーティングした電極を備え、リチウム層と電解質との間に保護層、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている、米国特許第6,214,061号に記載されている保護層をさらに含み得る。保護層は、リチウムイオンを伝導することができるガラス状又は非晶質材料であってもよく、リチウム表面と電解質との間の接触を防止するのに適している。好適な保護層の例としては、リチウムシリカート、リチウムボラート、リチウムアルミナート、リチウムホスファート、リチウムホスホラスオキシニトリド、リチウムシリコスルフィド、リチウムボロスルフィド、リチウムアミノスルフィド及びリチウムホスホスルフィドが挙げられる。保護層は、物理的又は化学的堆積プロセスによって電極表面上に塗布されてもよい。プリンタブルリチウム組成物は、コーティング、箔又はフィルムとして保護層上に塗布されてもよい。一実施形態において、保護層は、リチウム層と電解質とを分離していてもよく、電解質は、プリンタブルリチウム組成物でコーティングした基板から構成されてもよい。配合物は、リチウム金属と固体電解質との接触を増大させ、充電/放電サイクル中に接触を維持するために、Liら[Joule,Vol.3,No.7,pgs.1637-1646(2019),DOI:10.1016/j.joule.2019.05.022]によって記載され、その全体が参照により本明細書に組み入れられるような、半固体ポリマーバインダの使用を採用してもよい。
【0045】
一実施形態は、例えばLiuら[Energy Storage Materials,Vol.16,pgs.505-511(2019),DOI:10.1016/j.ensm.2018.09.021]によって開示され、その全体が参照により本明細書に組み入れられるような、スケーラブル三次元(3D)リチウム金属アノードを有する電池を備えてもよく、カソード、電解質、3Dリチウム金属アノード、又はその組み合わせはそれぞれ、プリンタブルリチウム組成物でコーティングした基板を含み得る。
【0046】
別の実施形態は、Kolensikovら[Journal of the Electrochemical Society,vol.166,no.8,pages A1400-A1407(2019),DOI:10.1149/2.0401908jes]によって開示され、その全体が参照により本明細書に組み入れられるような、カソード、電解質及びZnIで修飾したリチウムアノードを有する電池を含み得る。リチウムアノードは、プリンタブルリチウム組成物を銅箔上に塗布することによって調製され、箔をテトラヒドロフラン(THF)溶液中のZnIと接触させることによって修飾され得る。
【0047】
別の実施形態において、基板は、Forneyら[Nanoletters,Vol.13,no.9,pages 4158-4163(2013),DOI:10.1021/nl40176d]記載され、参照により本明細書に組み入れられるような、シリコン-ナノチューブアノードを含んでもよい。例えば、そのシリコンナノチューブアノードは、プリンタブルリチウム組成物から形成されたコーティング、箔又はフィルムなどのリチウム層をさらに含んでもよい。
【0048】
ポリマーバインダは、リチウム金属粉末と相溶性となるように選択される。「と相溶性である」又は「相溶性」は、ポリマーバインダがリチウム金属粉末と、安全上の問題を生じる激しい反応をしないことを伝えるものである。リチウム金属粉末とポリマーバインダは反応してリチウム-ポリマー複合体を形成するが、そのような複合体は様々な温度において安定性であるべきである。リチウム及びポリマーバインダの量(濃度)は、安定性と反応性に寄与することが認識されている。ポリマーバインダは、約1,000から約8,000,000の分子量を有し得て、2,000,000から5,000,000の分子量を有することが多い。好適なポリマーバインダとしては、ポリ(エチレンオキシド)、ポリスチレン、ポリイソブチレン、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ブチルゴム、水素化ニトリルブタジエンゴム、エピクロロヒドリンゴム、アクリラートゴム、シリコンゴム、ニトリルゴム、ポリアクリル酸、ポリビニリデンクロリド、ポリビニルアセタート、エチレンプロピレンジエンターモノマー、エチレンビニルアセタートコポリマー、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-プロピレンターポリマー、ポリブテンの1つ以上が挙げられ得る。バインダはワックスであってもよい。
【0049】
レオロジー調整剤は、リチウム金属粉末及びポリマーバインダと相溶性であり、組成物中に分散性であるように選択される。プリンタブルリチウム組成物の好ましい実施形態は、カーボンナノチューブなどの炭素系レオロジー調整剤を含む。カーボンナノチューブの使用はまた、プリンタブルリチウム組成物でコーティングしたときにリチウムアノードのための三次元支持構造及び導電性ネットワークを提供し、その表面積を増加させ得る。別の支持構造は、寄生反応(parastic reaction)を防止し、改善されたサイクル挙動をもたらす安定したホストとして中空炭素球を使用する、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている、Cuiら[Science Advances,Vol.4,no.7,page 5168,DOI:10.1126/sciadv.aat 5168]によって記載されているようなものであってもよい。さらに別の支持構造は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている、米国特許第10,090,512号に記載されているようなナノワイヤであってもよい。他の相溶性炭素系レオロジー調整剤としては、カーボンブラック、グラフェン、黒鉛、ハードカーボン及びその混合物又はブレンドが挙げられる。
【0050】
追加のレオロジー調整剤を組成物に添加して、剪断条件下での粘度及び流動などの特性を調整してもよい。レオロジー調整剤は、レオロジー調整剤の選択に応じて、導電性、改善された容量及び/又は改善された安定性/安全性も与え得る。この目的のために、レオロジー調整剤は、異なる特性を与えるように、又は追加の特性を与えるように、2つ以上の化合物の組み合わせであってよい。レオロジー調整剤の例としては、シリコンナノチューブ、ヒュームドシリカ、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム及び他の第IIA、IIIA、IVB、VB及びVIA族の元素/化合物並びにその混合物又はブレンドの1つ以上が挙げられ得る。リチウムイオン伝導性の向上を目的とする他の添加剤、例えばリチウムペルクロラート(LiClO)、リチウムヘキサフルオロホスファート(LiPF)、リチウムジフルオロ(オキサラート)ボラート(LiDFOB)、リチウムテトラフルオロボラート(LiBF)、リチウムニトラート(LiNO)、リチウムビス(オキサラート)ボラート(LiBOB)、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)などの電気化学デバイス電解質塩を使用することができる。
【0051】
別の実施形態において、参照によりその開示全体が組み入れられている米国特許第7,588,623号に記載されているように、ポリマーバインダ、レオロジー調整剤、コーティング試薬及びリチウム金属粉末のための他の考えられる添加剤の混合物が形成及び導入されて、リチウム融点を超える温度での又はリチウム分散物の冷却後のより低い温度での分散中に、リチウム液滴と接触し得る。このように修飾されたリチウム金属は、乾燥粉末形態で又は選択した溶媒中の溶液形態で導入され得る。各種のプロセスパラメータの組み合わせを使用して、特定の用途のための特異的なコーティング及びリチウム粉末特性が達成可能であることが理解される。
【0052】
プリンタブルリチウム組成物は、米国仮出願第62/864,739号に記載され、その全体が参照により本明細書に組み入れられている、箔又はフィルムの形態であり得る。一実施形態において、プリンタブルリチウム組成物から形成された箔又はフィルムは、電池における1個以上の構成要素で使用するための基板に適用され得る。例えば電池は、カソード、電解質及びプリンタブルリチウム組成物でコーティングした基板を有するアノードを含み得る。電解質は、1Mを超える、しばしば約3M以上、時には5Mを超える濃度を有し得る。好適な電解質の例としては、リチウムペルクロラート(LiClO)、リチウムヘキサフルオロホスファート(LiPF)、リチウムジフルオロ(オキサラート)ボラート(LiDFOB)、リチウムテトラフルオロボラート(LiBF)、リチウムニトラート(LiNO)、リチウムビス(オキサラート)ボラート(LiBOB)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)及びリチウムトリフルオロメタンスルホンイミド(LiTFSI)並びにその混合物又はブレンドが挙げられる。例示的な一例は、カソード並びにプリンタブルリチウム組成物及び高濃度電解質でコーティングした基板を有するアノードを有する電池であり、LiFSIは高濃度電解質の主要な塩である。別の例は、どちらも参照により本明細書に組み入れられている、Weberら[Nature Energy,Vol.4,pgs.683-689(2019),DOI:10.1038/s41560-019-0428-9]及び米国特許出願公開第2019/0036171号に記載されているように、カソード並びにプリンタブルリチウム組成物及び二塩液体電解質でコーティングされた基板を有するアノードを有する電池である。二塩液体電解質は、リチウムジフルオロ(オキサレート)ボレート(LiDFOB)及びLiBFから構成されてもよく、約1Mの濃度を有してもよい。二塩電解質は、初期容量維持率の向上及びサイクル性能の向上をもたらし得る。
【0053】
一実施形態において、プリンタブルリチウム組成物は、集電体上のアノード活物質に堆積又は適用され、即ちプレリチウム化アノードを形成する。好適なアノード活物質としては、黒鉛及び他の炭素系材料、合金、例えばスズ/コバルト、スズ/コバルト/炭素、シリコン-炭素、様々なシリコーン/スズ系複合化合物、ゲルマニウム系複合材料、チタン系複合材料、元素シリコン及びゲルマニウムが挙げられる。アノード材料は、箔、メッシュ又は発泡体であり得る。適用は、噴霧、押出、コーティング、プリンティング(printing)、塗装、浸漬及び噴霧によるものであり得て、同時係属米国特許出願公開第16/359,725号に開示され、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている。
【0054】
一実施形態において、アノード活物質及びプリンタブルリチウム組成物が共に提供され、集電体(例えば銅、ニッケルなど)上に押出される。例えばアノード活物質及びプリンタブルリチウム組成物は、共に混合及び共押出され得る。アノード活物質の例としては、黒鉛、黒鉛-SiO、黒鉛-SnO、SiO、ハードカーボン及び他のリチウムイオン電池並びにリチウムイオンコンデンサアノード材料が挙げられる。別の実施形態において、アノード活物質及びプリンタブルリチウム組成物は、共押出しされて、集電体上にプリンタブルリチウム組成物の層を形成する。上記の押出技術を含むプリンタブルリチウム組成物の堆積としては、多種多様なパターン(例えば点、縞)、厚さ、幅などとして堆積することが挙げられ得る。例えばプリンタブルリチウム組成物及びアノード活物質は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている米国公開第2014/0186519号に記載されているように、一連の縞として堆積させることができる。縞は、リチウム化中のアノード活物質の膨張に相当する3D構造を形成する。例えばシリコンは、リチウム化中に300から400%膨張し得る。このような膨潤は、アノードとその性能に潜在的に悪影響を及ぼす。プリンタブルリチウムをシリコンアノードの縞の間の交互のパターンとして、Y平面における細縞として堆積させることにより、シリコンアノード材料がX平面で膨張し、電気化学的研磨と粒子の電気的接触の損失を緩和できる。したがって、プリント方法は膨張に対する緩衝物を提供できる。プリンタブルリチウム配合物を使用してアノードを形成する別の例において、リチウム配合物はカソード及びセパレータと共に層状に共押出しされて固体電池を生じ得る。
【0055】
一実施形態において、参照により全体が本明細書に組み入れられている米国特許第9,837,659号に記載されているように、プリンタブルリチウム組成物を使用してアノードがプレリチウム化され得る。例えば、この方法は、事前製造/事前形成されたアノードの表面に隣接してプリンタブルリチウム組成物の層を配置することを含む。事前製造された電極は、電気活性材料を含む。ある変更形態において、プリンタブルリチウム組成物は、堆積プロセスを介して担体/基板に適用され得る。プリンタブルリチウム組成物の層が配置され得る担体基板は、非限定的な例として、ポリマー膜(例えばポリスチレン、ポリエチレン、ポリエチレンオキシド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリポリテトラフルオロエチレン)、セラミック膜、銅箔、ニッケル箔又は金属発泡体からなる群から選択され得る。次に、基板又は事前製造された(pre-formed)アノード上のプリンタブルリチウム組成物層に熱を加えてよい。基板上のプリンタブルリチウム組成物層又は事前製造されたアノードは、加圧下でさらに共に圧縮され得る。加熱及び任意の加圧により、リチウムが基板又はアノードの表面に移行しやすくなる。事前製造されたアノードに移行する際に、特に事前製造されたアノードが黒鉛を含む場合、圧力及び熱は、機械的リチウム化を生じる可能性がある。このようにして、リチウムは電極に移行して、好ましい熱力学のために活物質中に包含される。
【0056】
さらなる実施形態において、プリンタブルリチウム組成物の少なくとも一部を、電池の形成プロセス前にアノード活物質に供給することができる。即ち、アノードは、参照により本明細書に組み入れられている、米国特許出願公開第2018/0269471号明細書に記載されているように、部分的にリチウムが添加されたシリコン系活物質を含むことができ、部分的に添加された活物質は、インターカレーション/合金化などによって選択した程度のリチウム添加量を有する。
【0057】
電池のある実施形態は、複合カソードを利用してもよい。例えば電池は、米国特許第9,882,238号及び第9,917,303号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み入れられているような硫黄カソードを含み得る。
【0058】
一実施形態において、プリンタブルリチウム組成物は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている、米国特許出願公開第2018/0013126号に記載されているように、三次元電極構造に包含され得る。例えば、プリンタブルリチウム組成物は、三次元多孔性アノード、多孔性集電体又は多孔性ポリマー又はセラミック膜に包含され得て、プリンタブルリチウム組成物はその中に堆積され得る。プリンタブルリチウム組成物は、固体電解質中に組み入れられてもよく、固体電解質は、リチウム金属アノードと組合されて又はリチウム金属アノードに適用されて、複合アノードを形成してもよい。固体電解質は、リチウム金属アノードに対する1つ以上の界面イオン伝導性電解質層又は界面として適用されてもよい。一例は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている、米国特許第8,182,943号明細書に記載されている。
【0059】
別の実施形態において、プリンタブルリチウム組成物は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている、米国特許出願公開第2018/0013126号に記載されているように、三次元電極構造に包含され得る。三次元電極は、細孔を画成する支持体及び支持体上のアルカリ金属堆積物から構成される透過性複合材料であってもよく、アルカリ金属は、プリンタブルリチウム組成物を使用して堆積されている。三次元電極は、約1体積%から約95体積%の多孔度を有してもよく、約1nmから約300μmの範囲の平均流量孔径を有してもよい。
【0060】
電池の別の実施形態は、その全体が参照により本明細書に組み入れられている、米国特許第10,047,432号明細書に記載されているように、パルス電子ビームを使用して形成された複合アノードを含み得る。例えばパルス電子ビームは、電子ビームを使用して三次元多孔質アノード構造が作製される、アノード材料に適用される仮想カソード堆積(VCD)プロセスとして使用することができる。パルス電子ビームから形成される三次元構造は、リチウムイオン電池用の炭素同素体(CALIB)であり得る。CALIB構造は、プリンタブルリチウム組成物を使用してリチウムと共に堆積されて、炭素多形を形成し得る。
【0061】
いくつかの実施形態において、プリンタブルリチウム組成物によってプレリチウム化された電極は、リチウムが事前添加される電極を備えたセル内に組み付けることができる。セパレータは、各電極の間に配置できる。電極間に電流を流すことができる。例えば、本発明のプリンタブルリチウム組成物でプレリチウム化されたアノードは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている米国特許第6,706,447号に記載されているような、二次電池に形成され得る。
【0062】
カソードは、炭素質材料及びバインダポリマーと典型的に併用される活物質で形成される。カソードに使用される活物質は、好ましくはリチウム化できる材料である。好ましくは、非リチウム化材料、例えばMnO、V、MoS、金属フッ化物又はその混合物、硫黄及び硫黄複合材料を活物質として使用することができる。しかし、さらなるリチウム化が可能である、MがNi、Co又はMnであるLiMn及びLiMOなどのリチウム化材料も使用することができる。非リチウム化活物質が好ましいのは、一般に、リチウム化活物質を含む従来の二次電池と比べて、比容量がより高く、コストがより低く、エネルギーと電力の上昇を与えることができるこの構成において、カソード材料がより広く選択されるためである。
【0063】

例1
スチレンブタジエンゴム液(S-SBR Europrene Sol R 72613)10gを、21℃にて12時間撹拌することにより、トルエン90g(99%無水、Sigma Aldrich)に溶解させる。10重量%SBR(ポリマーバインダ)トルエン(溶媒)溶液6gをカーボンブラック(Timcal Super P)(レオロジー調整剤)0.1g及びトルエン16gと合わせて、Thinky ARE 250遊星ミキサにて2000rpmで6分間分散させる。20から200nmのポリマーコーティング及び20μmのd50を有する安定化リチウム金属粉末(SLMP(登録商標)、FMC Lithium Corp.)9.3gをこの懸濁液に添加して、Thinkyミキサにて1000rpmで3分間分散させる。次いで、プリンタブルリチウムを180μm開口ステンレス鋼メッシュで濾過する。次に、プリンタブルリチウム懸濁液を湿潤厚さ2ミル(約50μm)で銅の集電体に、ドクターブレードによってコーティングする。図3は、アノードとしてのプリンタブルリチウムに由来する20ミクロンリチウム薄膜対市販の50ミクロンリチウム箔を有するパウチセルのサイクル性能を示すプロットである。
【0064】
例2
分子量135,000のエチレンプロピレンジエンターポリマー(EPDM)(Dow Nordel IP 4725P)10gをp-キシレン(無水99%、Sigma Aldrich)90gに21℃にて12時間撹拌して溶解させる。10重量%EPDM(ポリマーバインダ)p-キシレン(溶媒)溶液6gをTiO2(Evonik Industries)(レオロジー調整剤)0.1g及びトルエン16gと合わせて、Thinky ARE 250遊星ミキサにて2000rpmで6分間分散させる。20から200nmのポリマーコーティング及び20μmのd50を有する安定化リチウム金属粉末(SLMP(登録商標)、Corp.)9.3gをこの懸濁液に添加して、Thinkyミキサにて1000rpmで3分間分散させる。次いで、プリンタブルリチウムを180μm開口ステンレス鋼メッシュで濾過する。次に、プリンタブルリチウム組成物を湿潤厚さ2ミル(約50μm)で銅の集電体に、ドクターブレードによってコーティングする。
【0065】
例3
分子量1.27MのPIB 1.5gを、21℃で12時間撹拌することによって、トルエン85gに溶解させる。次いで、カーボンナノチューブ1.5gを溶液に添加し、約1時間連続撹拌して均一な懸濁液を形成した。20から200nmのポリマーコーティング及び20μmのd50を有する安定化リチウム金属粉末(SLMP(登録商標)、FMC Lithium Corp.)30gをこの懸濁液に添加して、Thinkyミキサにて1000rpmで3分間分散させる。次いで、プリンタブルリチウム懸濁液を180μm開口ステンレス鋼メッシュで濾過する。次に、プリンタブルリチウム組成物を、湿潤厚さ2ミル(約50μm)及び積層前の乾燥厚さ約25μmで銅集電体上にプリントする。
【0066】
貯蔵寿命安定性
プリンタブルリチウム構成要素は、室温における長期貯蔵寿命の化学的安定性と、輸送中や乾燥プロセス中などのより短い期間の高温における安定性が確保されるように選択する必要がある。プリンタブルリチウム組成物の安定性は、熱量測定を使用して試験した。SLMP 1.5gを10ml容積のハステロイARCボンベサンプル容器に添加した。4%SBRバインダ溶液2.4gを容器に添加した。容器には24Ω抵抗ヒータと熱電を装着して、サンプルの温度を監視及び制御した。ボンベサンプル装置は、断熱材とともに350ml格納容器に装填した。Fauske IndustriesのAdvance Reactive Screening Systems Tool熱量計を使用して、190℃までの定速温度傾斜の間にプリンタブルリチウム溶液の相溶性を評価した。温度傾斜速度は2℃/分であり、サンプル温度を190℃にて60分間保持した。試験は、溶媒の沸騰を防ぐために200psiアルゴン圧下で行った。図2は、SLMP/スチレンブタジエン/トルエンのプリンタブルリチウム組成物の反応性試験の温度及び圧力プロファイルを示す。
【0067】
プリンティング性能(Printing Performance)
プリント能力(printability)に関するプリンタブルリチウム組成物の品質は、複数の因子、例えば基板又は電極表面へのリチウム添加量を制御する組成物の能力に直接影響する、流量コンシステンシーによって測定される。流量を測定する有効な方法は、添加量を制御する因子、即ち押出中の圧力及びプリンタヘッドの速度に関連する、平方センチメートル当たりの添加量の表示である、流量コンダクタンスである。流量コンダクタンスは、最も単純には流量の抵抗の逆数と考えることができる。
【0068】
この表示を使用すると、可変圧力と速度のプリント間での比較が可能となり、流量コンダクタンスの変化により、流量と圧力の非線形関係について注意喚起することができる。これらはアノード又はカソードの必要性に応じて、プリンタブルリチウムの添加量を増減するために重要である。理想的なプリンタブルリチウム組成物は、押出圧の変化に対して直線的に挙動する。
【0069】
プリント能力を試験するには、プリンタブルリチウム組成物を180μm開口ステンレス鋼メッシュで濾過して、Nordson EFD 10mlシリンジに添加する。シリンジをNordson EFD HP4xシリンジディスペンサに装着して、スロットダイプリントヘッドに取り付ける。スロットダイプリントヘッドには、所望のプリンタブルリチウム組成物の添加量を送達するように設計されたチャネル開口部を有する100μmから300μm厚のシムが装備されている。スロットダイヘッドはLoctite 300シリーズロボットに搭載される。プリントヘッド速度は200mm/sに設定され、プリンティング圧力(printing pressure)はシム及びチャネルの設計に応じて、20から200psiのアルゴンである。プリント長(printing length)は14cmである。プリンティング試行実験(printing trial experiment)の例において、プリンタブルリチウム組成物は、80psiから200psiの範囲のディスペンサ設定で単一のシリンジから30回プリントされた。このプリンティング試行実験では、流量コンダクタンスの平均は0.14
【数1】

で、標準偏差は0.02であった。このプリンタブル組成物は完全に線形に挙動するわけではないが、ディスペンサ圧の変化に対応する組成物流量応答は予測可能であり、当業者はリチウム添加量を所望のレベルに微調整できるようになる。したがって、固定ディスペンサ圧条件にて、リチウム添加量を高度な一貫性で制御できる。例えば、0.275
【数2】

のリチウム金属のプリントでは、変動係数は約5%である。
【0070】
電気化学試験
プリンタブルリチウム組成物のプレリチウム化の効果は、必要な量のプリンタブルリチウムを作製済み電極の表面にプリントする(printing)ことによって評価できる。プレリチウム化リチウム量は、アノード材料をハーフセル形式で試験して、SEIの形成又は他の副反応による第1サイクルの損失を補償するために必要なリチウムを計算することによって求められる。プリンタブルリチウムの必要量を計算するには、組成物のリチウム金属としての容量が既知である必要があり、例として使用される組成物では乾燥リチウム基準で約3600mAh/gである。
【0071】
プレリチウム化効果は、黒鉛-SiO/NCAパウチセルを使用して試験する。黒鉛-SiOアノードシートの配合は以下の通りである:人工黒鉛(90.06%)+SiO(4.74%)+カーボンブラック(1.4%)+SBR/CMC(3.8%)。電極の容量負荷は3.59mAh/cmであり、87%の第1サイクルCE(クーロン効率)である。プリンタブルリチウムは、黒鉛-SiOアノードに0.15mg/cmリチウム金属にて適用される。電極を80℃にて100分間乾燥させた後、電極の厚さの約75%のローラーギャップでラミネートする。7cm×7cm電極をプリンタブルリチウム処理アノードシートから打抜く。正極の配合は以下の通りである:NCA(96%)+カーボンブラック(2%)+PVdF(2%)。正極は6.8cm×6.8cmであり、容量負荷は3.37mAh/cmである。NCAカソードは、90%の第1サイクルCEを有する。アノードのカソードに対する容量比は1.06であり、全セルの第1サイクルCEのベースラインは77%である。単層パウチセルが組み付けられ、1M LiPF/EC+DEC(1:1)が電解質として使用される。セルは21℃にて12時間事前調整され、次いで形成サイクルが40℃にて行われる。形成プロトコルは、4.2Vまでの0.1C充電、0.01Cまでの定電圧及び2.8Vまでの0.1C放電である。説明した試験では、89%の第1サイクルCEが実証された。
【0072】
プリンタブルLiアノードは、コイン型全固体電池で試験を行う。例3でプリントしたリチウムアノード電極を、乾燥室(21℃にてRH<1%)内で110℃にて2分間乾燥させ、切断して12mm円板とする。カソード電極は、ドライペレットダイプレス(MTI Corp.、EQ-Die-12D-B)を使用して、LiFePO4(LFP):Li10GeP2S12(LGPS)=7:3重量%の比で構成された粉末混合物6.6mgをプレスすることによって作製される。加えた圧力は50,000psiである。次いで、LGPS粉末99.6mgをカソード電極上に広げる。次いで、この粉末を同じ圧力(50,000psi)でプレスして、固体電解質膜とする。次いで、Liアノードを固体電解質膜の上に置いて、25,000psiの圧力を使用してプレスする。次いで、全固体電池を、(最大20MPaまで)圧力制御されたスプリットコインセル(MTI Corp.、品番:EQ-PSC)で70℃、電流密度C/10にて、2.8Vと3.8Vとの間でのサイクルによって試験する。図4Aは、LFPカソード、LGPS固体電解質及びアノードとしてのプリンタブルLiを有するコイン型全固体電池のサイクル電圧を示す。図4Aは、3.5Vの典型的なLFP充電電圧プラトー及び約3.4Vの放電電圧プラトーを有する全固体電池を示す。図4Bは、70℃にてサイクルする全固体電池について、充電容量及び放電容量対サイクル数を示す。全固体電池は最初の12サイクルの間に良好にサイクルした。
【0073】
本手法は、好ましい実施形態及びその具体的な例を参照して、本明細書で例証及び説明されているが、他の実施形態及び例が同様の機能を果たし、及び/又は同様の結果を達成できることが当業者にただちに明らかとなろう。そのような同等の実施形態及び例は全て、本手法の要旨及び範囲内にある。
図1
図2
図3
図4