(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】置換ナフタレンジイミド及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07D 471/06 20060101AFI20240422BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20240422BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
C07D471/06 CSP
A61K31/5377
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2021568642
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(86)【国際出願番号】 GB2020051195
(87)【国際公開番号】W WO2020229840
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-05-15
(32)【優先日】2019-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505367442
【氏名又は名称】ユーシーエル ビジネス エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ネイドル ステファン
(72)【発明者】
【氏名】アンジェル リチャード
(72)【発明者】
【氏名】オクセンフォード サリー
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/103587(WO,A1)
【文献】Stephan A Ohnmacht et al.,A G-quadruplex-binding compound showing anti-tumour activity in an in vivo model for pancreatic cancer,Scientific Reports,2015年06月16日,Vol. 5, No. 1,pp.1-11,DOI: 10.1038/srep11385
【文献】MATTEO NADAI et al.,Assessment of gene promoter G-quadruplex binding and modulation by a naphthalene diimide derivative in tumor cells,International Journal of Oncology,2015年01月01日,Vol. 46, No. 1,pp.369-380,DOI: 10.3892/ijo.2014.2723
【文献】Filippo Doria et al.,Hybrid ligand-alkylating agents targeting telomeric G-quadruplex structures,Organic & Biomolecular Chemistry,2012年01月18日,Vol. 10, No. 14,pp.2798-2806,DOI: 10.1039/c2ob06816h
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D、A61K、A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
【化1】
(Lは、フェニル環のメタ位又はパラ位にあり、
Lは、(CH
2)
1~2であり、R
1は、含窒素5員~7員ヘテロシクロアルキルが任意にC
1~
6アルキル基で置換されているC
5~
7シクロアルキル、及びNR
9R
10からなる群より選択され、又は
Lは、(CH
2)
1~5NHであり、-NHはR
1に結合し、-CH
2はフェニル基に結合し、R
1は、5員~7員シクロアルキルであり、
R
2は、直鎖のC
2~4-アルカンジイルであり、
R
3は、Hであり、
R
4は、直鎖のC
2~4-アルカンジイルであり、
R
9及びR
10は、独立して、C
1~6アルキルであり、
Xは、NR
6
2であり、
基R
6は、それらが結合しているN原子と共にピロリジン-1-イルを形成する
)、並びに、
その塩、水和物及び溶媒和物。
【請求項2】
Lが(CH
2)
1~2であり、R
1が、含窒素5員~7員ヘテロシクロアルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記含窒素5員~7員ヘテロシクロアルキルが、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、アゼパニル、ジアゼパニルからなる群より選択される、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
Lが(CH
2)
1~5NHであり、R
1がC
5~7シクロアルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
Lがパラ位にある、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
前記化合物が以下からなる群より選択される、請求項1に記載の化合物:
2,7-ビス(3-モルホリノプロピル)-4-((2-(ピロリジン-1-イル)エチル)アミノ)-9-(4-(ピロリジン-1-イルメチル)フェニル)ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン-1,3,6,8(2H,7H)-テトラオン;
4-(4-(モルホリノメチル)フェニル)-2,7-ビス(3-モルホリノプロピル)-9-((2-(ピロリジン-1-イル)エチル)アミノ)ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン-1,3,6,8(2H,7H)-テトラオン;
2,7-ビス(3-モルホリノプロピル)-4-((2-(ピロリジン-1-イル)エチル)アミノ)-9-(3-(ピロリジン-1-イルメチル)フェニル)ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン-1,3,6,8(2H,7H)-テトラオン;
2,7-ビス(3-モルホリノプロピル)-4-(4-(ピペリジン-1-イルメチル)フェニル)-9-((2-(ピロリジン-1-イル)エチル)アミノ)ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン-1,3,6,8(2H,7H)-テトラオン;
4-(4-((ジエチルアミノ)メチル)フェニル)-2,7-ビス(3-モルホリノプロピル)-9-((2-(ピロリジン-1-イル)エチル)アミノ)ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン-1,3,6,8(2H,7H)-テトラオン;
4-(4-((シクロペンチルアミノ)メチル)フェニル)-2,7-ビス(3-モルホリノプロピル)-9-((2-(ピロリジン-1-イル)エチル)アミノ)ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン-1,3,6,8(2H,7H)-テトラオン;
4-(4-(アゼパン-1-イルメチル)フェニル)-2,7-ビス(3-モルホリノプロピル)-9-((2-(ピロリジン-1-イル)エチル)アミノ)ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン-1,3,6,8(2H,7H)-テトラオン;
4-(4-((4-メチルピラジン-1-イル)メチル)フェニル)-2,7-ビス(3-モルホリノプロピル)-9-((2-(ピロリジン-1-イル)エチル)アミノ)ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン-1,3,6,8(2H,7H)-テトラオン;並びに、
それらの塩、水和物及び溶媒和物。
【請求項7】
前記化合物が2,7-ビス(3-モルホリノプロピル)-4-((2-(ピロリジン-1-イル)エチル)アミノ)-9-(4-(ピロリジン-1-イルメチル)フェニル)ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン-1,3,6,8(2H,7H)-テトラオンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
式Iが以下の式IIの構造を有する、請求項1~5のいずれかに記載の化合物。
【化2】
(式中、L及びR
1は、請求項1~5のいずれかで定義される通りである)。
【請求項9】
希釈剤と組み合わせた、請求項1~8のいずれかに記載の化合物を含む組成物であって、前記組成物が医薬組成物であり、前記希釈剤が薬学的に許容可能な希釈剤である、組成物。
【請求項10】
癌治療用の、又は固形腫瘍の成長阻害用の、又は固形腫瘍のサイズを縮小するための被験体の治療方法用の、請求項1~8のいずれかに記載の化合物又は請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1~8のいずれかに記載の置換ナフタレンジイミド化合物を合成する方法であって、
i)求核置換反応において式IIIの化合物を式IVの化合物と反応させて式Vの化合物を得る工程であって、
【化3】
HN(R
3)(R
4X)
式IV
式IIIの化合物中の少なくとも1つのBrが、式IVの化合物中の求核性アミン窒素によって置換される、工程と、
ii)式III及び式IVの前記求核置換反応から生じる生成物から得られる式Vの化合物を式VIの化合物と反応させる工程であって、
【化4】
【化5】
式VIのフェニルと、式Vの化合物において結合したBrを有するフェニルとの間にアリール-アリール結合が形成され(式中、LG及びBrは脱離基である)、式Iの化合物を作る、工程と、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナフタレンジイミド(NDI)及びそれらを合成する方法に関する。NDIは、DNA-四重鎖結合(DNA-quadruplex binding)及び安定化活性を有し、膵臓癌、前立腺癌、及びその他のヒトの癌の治療に使用できる可能性がある。
【背景技術】
【0002】
特許文献1において、本発明者らは、三置換及び四置換ナフタレンジイミド、並びにそれらの製造方法について記載した。三置換された例示される生成物はいずれも、コアリガンド上の均等(equational)位置及び極性位置に異なるアミノ官能性リガンドを有していなかった。三置換化合物の製造に適していると言われている方法は、以下の概略図に基づいている。
【化1】
概略
図1中、R
1は任意に置換されたアルキル又はアリールであり、nは0又は1である。実際には、四置換(n=1)及び三置換(n=0)の化合物の混合物が生成された。全ての置換基、すなわちR
1基は同じである。
【0003】
本明細書は、上記で使用されるジブロモ化合物のジクロロ置換類縁体から出発して四置換化合物を製造する方法を記載する。プロセスは、同じH2NR1試薬が両方の無水物基及び両方の塩素置換炭素で反応して生成物に4つの同一のR1置換基を与える、1工程で進行するか、又は第1の工程で第1の試薬H2NR2が両方の無水物基で反応し、第2の工程で、第2の試薬H2NR3が両方の塩素置換炭素原子で反応する、2工程で進行した。イミド置換基及び/又は芳香環に塩基性置換基を持つ化合物は、強力なDNA四重鎖結合特性を有する。
【0004】
特許文献2において、本発明者らは、三置換ナフタレンジイミド及びそれらの製造プロセスを記載した。三置換化合物の製造に適していると言われている方法は、以下の概略図に基づいている。
【化2】
概略
図2中、YはH又はBrであり、基R
12は同一であり、直鎖及び分岐鎖C
1~6アルケンジイルからなる群より選択され、R
13はH及びC
1~6アルキルからなる群より選択され、R
14は直鎖及び分岐鎖C
1~6アルカンジイル及びC
7~12アラルカンジイルからなる群より選択され、X
2はハロ、R
11、NR
15
2、CONR
16
2、COOR
17、SH及びCOR
18からなる群より選択され、R
11は、H、任意に置換されたC
1~6アルキル、任意に置換されたC
5~7シクロアルキル、C
5~7ヘテロシクロアルキル及びアリールからなる群より選択され、各R
15は、H、C
1~6アルキル、アリール及びC
7~12アラルキルからなる群より選択され、N基R
15は、それらが結合しているN原子と共に5~7原子の飽和複素環を形成し、各R
16は、H及びC
1~6アルキル基からなる群より選択されるか、又は基R
16--は、それらが結合しているN原子と共に5員~7員の複素環を形成し、R
17は、任意に置換されたC
1~6アルキル、C
7~12アラルキル及びアリールからなる群より選択され、R
18は、任意に置換されたC
1~6アルキル、C
7~12アラルキル及びアリールからなる群より選択され、それにより、Br原子、又は1つのBr原子若しくは各Br原子がアミン試薬の求核性アミン窒素によって置換されて、置換NDI化合物を形成する。
【0005】
基R3とは異なる基R2を有する生成物を含む、四置換生成物は、特許文献3、特許文献4、並びに非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5及び非特許文献6において、テロメアの四重鎖、また幾つかの遺伝子のプロモーター領域に見られるものへのそれらの結合特性について試験されている。データは、幾つかのタンパク質の効果的なダウンレギュレーションを示し、その遺伝子のプロモーターはジイミドによって標的とされるため、癌細胞株のパネルからの幾つかの細胞株の成長阻害をもたらす。本発明者らは、これらの出版物において、置換基の性質及びカチオン性置換基の第三級アミン基の塩基性を変化させることが結合の特異性及び強度に及ぼす影響を更に調査し、膵臓癌を含む癌のモデルを試験することによって、癌治療における化合物の可能性を調査することを提案した。
【0006】
非特許文献7において、Ohnmacht S.A., et al.は、ヒト膵臓癌のマウスモデルにおいてin vivoで4,9-ビス((3-(4-メチルピペラジン-1-イル)-プロピル)アミノ)-2,7-ビス(3-モルホリノプロピル)ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン-1,3,6,8(2H,7H)-テトラオン(MM41としても知られる)の活性を開示する。
【0007】
非特許文献8は、各イミド窒素原子で置換された2-ジメチルアミノエチル基を有し、第3の置換基としてNDIコアの4位で置換された2-(4-ヒドロキシ-3-ジメチルアミノメチルフェニル)エチルアミノ基を有する三置換ナフタレンジイミド化合物を開示する。該化合物は、テロメアG-四重鎖(GQ)を安定化させる活性を有し、テロメア機能障害及びテロメラーゼダウンレギュレーションを引き起こす。細胞株のパネルでの全体的な遺伝子発現は、テロメア機能及び癌のメカニズムに関係する遺伝子の調節を示した。しかしながら、著者らは、細胞の状況におけるG-4の生物学的関連性の直接的な証拠はまだ不足していると結論付けている(非特許文献9)。
【0008】
Nadai et al.によって報告された三置換化合物の合成は、非特許文献10に開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2009/068916号
【文献】国際公開第2017/103587号
【文献】国際公開第2009/068916号
【文献】米国特許出願公開第2014-0275065号
【非特許文献】
【0010】
【文献】Hampel S. M. et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. (2010) 20, 6459-6463
【文献】Micco. M., et al., J. Med. Chem. (2013) 56, 2959-2974
【文献】Collie, G. W., et al., J.A.C.S. (2012) 134, 2723-2731
【文献】Gunaratnam, M. et al., J. Med. Chem. (2009) 52, 3774-3783
【文献】Gunaratnam, M. et al., Bioorg. Med. Chem. (2011) 19, 7151-7157
【文献】Mitchell, T. et al., Biochemistry (2013) 52, 1429-1436
【文献】Scientific Reports (2015) 5:11385
【文献】Nadai, M., et al., in Int. J. Oncol. (2015) 46, 369-380
【文献】Marchetti et al, J Med Chem, 2018, 61(6), pp. 2500-2517
【文献】Doria et al, Org Biomol. Chem, (2012) 10, 2798-2806
【発明の概要】
【0011】
驚くべきことに、本発明者らは、四置換ナフタレンジイミド化合物の特定の側鎖群が、ジイミド化合物のGQへの結合の改善をもたらし、抗癌活性の改善をもたらすことを見出した。
【0012】
したがって、本発明の第1の態様において、式Iの化合物:
【化3】
(Lはフェニル環のメタ位又はパラ位にあり、(CH
2)
1~6及び(CH
2)
1~5NHからなる群より選択され、
R
1は、任意に置換されたC
5~7シクロアルキル、任意に置換された含窒素5員~7員ヘテロシクロアルキル、及びNR
9R
10からなる群より選択され、
R
2及びR
4は、直鎖及び分岐鎖のC
1~6-アルカンジイルからなる群より独立して選択され、
R
3、R
9及びR
10は、H又はC
1~6アルキルからなる群より独立して選択され、
Xは、ハロ、OR
5、NR
6
2、CONR
7
2、COOR
8、H、及びCOR
8からなる群より選択され、
R
5は、H、C
1~6アルキル、C
4~7シクロアルキル、4員~7員ヘテロシクロアルキル及びアリールからなる群より選択され、
R
6は、H、C
1~6アルキル、アリール、及びC
7~12-アラルキルからなる群より選択されるか、又は基R
6は、それらが結合しているN原子と共にN含有飽和4員~7員複素環基を形成し、
基R
7は、それぞれ、H及びC
1~6アルキル基から選択されるか、又は基R
7は、それらが結合しているN原子と共に4員~7員の複素環基を形成し、
R
8は、C
1~6アルキル、C
7~12アラルキル、及びアリールからなる基から選択される)、並びに、
その塩、水和物及び溶媒和物が提供される。
【0013】
本発明は更に、癌を治療するため、又は固形腫瘍の成長を阻害するため、又は固形腫瘍、例えば膵臓腫瘍及び前立腺腫瘍のサイズを縮小するための動物の治療方法で使用される新たな化合物を提供する。
【0014】
本発明はまた、新たな化合物と、希釈剤又は担体とを含む組成物を提供する。組成物は好ましくは医薬組成物であり、その場合、担体は薬学的に許容可能である。
【0015】
本発明の第2の態様において、本発明の第1の態様による置換ナフタレンジイミド化合物を合成する方法であって、
i)求核置換反応において
式IIIの化合物を式IVの化合物と反応させ
て式Vの化合物を得る工程であって、
【化4】
HN(R
3)(R
4X)
式IV
式IIIの化合物中の少なくとも1つのBrが、式IVの化合物中の求核性アミン窒素によって置換される、工程と、
ii)式III及び式IVの求核置換反応から生じる生成物から得られる式Vの化合物を式VIの化合物と反応させる工程であって、
【化5】
【化6】
式VIのフェニルと、式Vの化合物において結合したBrを有するフェニルとの間にアリール-アリール結合が形成され(式中、LG及びBrは脱離基である)、式Iの化合物を作る、工程と、好ましくは、
iii)式V及び式VIの反応から生じる生成物から式Iの化合物を単離する工程(式中、L、X及びR
1~R
4は、本発明の第1の態様の式Iについて定義された通りである)と、
を含む、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の化合物及び比較化合物で治療したマウスの膵臓癌腫瘍における腫瘍退縮を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
本明細書において使用される場合、特に明記しない限り、「アルキル」基、「シクロアルキル」基、「ヘテロシクロアルキル」基、「複素環」基、「アリール」基、及び「アラルキル」基は、一価又は二価であり得る。
【0018】
本明細書において使用される場合、特に明記しない限り、「アリール」は、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル等の単環式、二環式、又は三環式の一価又は二価(必要に応じて)芳香族ラジカルを意味し、これらは任意に最大3つの置換基で置換され得る。
【0019】
本明細書において使用される場合、特に明記しない限り、「任意に置換された」は、C1~C6アルキル、ヒドロキシ、C1~C3ヒドロキシアルキル、C1~C3アルコキシ、C1~C3ハロアルコキシ、アミノ、C1~C3モノアルキルアミノ、C1~C3ビスアルキルアミノ、C1~C3アシルアミノ、C1~C3アミノアルキル、モノ(C1~C3アルキル)アミノC1~C3アルキル、ビス(C1~C3アルキル)アミノC1~C3アルキル、C1~C3アシルアミノ、C1~C3アルキルスルホニルアミノ、ハロ、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、カルボキシ、C1~C3アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、モノC1~C3アルキルアミノカルボニル、ビスC1~C3アルキルアミノカルボニル、-SO3H、C1~C3アルキルスルホニル、アミノスルホニル、モノC1~C3アルキルアミノスルホニル及びビスC1~C3-アルキルアミノスルホニルの群から選択される置換基の1つによるものである。
【0020】
本明細書において使用される場合、特に明記しない限り、「ヘテロシクロアルキル」基及び「複素環」基は、酸素、窒素及び硫黄から選択される最大4つのヘテロ原子を含む炭素環式ラジカルである。それらは二環式又は単環式であり得る。それらは好ましくは飽和している。複素環が二価リンカーである場合、複素環は、炭素原子により、又はヘテロ原子の1つ、例えばNにより隣接する基に結合し得る。複素環の例は、ピロリジン、ピペラジン、及びモルホリンである。
【0021】
本発明の好ましい基
本発明の第1の態様において、Lは、好ましくは(CH2)1~6、好ましくは(CH2)1~4、より好ましくは(CH2)1~3、更により好ましくは(CH2)1~2、更により好ましくは(CH2)である。好ましくは、Lはフェニルのパラ位にある。R1が任意に置換された含窒素5員~7員ヘテロシクロアルキル又はNR9R10である場合、R1はR1の窒素原子を介してLに連結されていることが好ましい。
【0022】
L又はR1が塩基性窒素原子を含むことが想定される。そのため、R1は、塩基性窒素原子を含む任意の基であり得る。R1は、好ましくは、含窒素5員~7員ヘテロシクロアルキル、好ましくは含窒素5員又は6員ヘテロシクロアルキル、より好ましくは含窒素5員ヘテロシクロアルキルである。好ましくは、含窒素5員~7員ヘテロシクロアルキルの窒素は、ヘテロシクロアルキル中の唯一のヘテロ原子である。別の態様において、含窒素5員~7員のヘテロシクロアルキルは、酸素原子等の第2のヘテロ原子を含む。
【0023】
好適には、含窒素5員~7員ヘテロシクロアルキルは、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、アゼパニル、ジアゼパニルからなる群より選択され、好ましくはピロリジニルである。好適には、Lは(CH2)であり、R1はピロリジニルである。
【0024】
好適には、R1はNR9R10である。R9及びR10は、H又はC1~6アルキルからなる群より独立して選択され、好ましくはC1~6アルキル、より好ましくはC2~4アルキル、更により好ましくはC2~3アルキルである。好適には、NR9R10は、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ又はエチルプロピルアミノである。
【0025】
別の実施形態において、Lは塩基性窒素原子を含む。好適には、Lは(CH2)1~5NH、好ましくは(CH2)1~3NH、より好ましくは(CH2)1~2NH、更により好ましくは(CH2)NHであり、R1はC5~7シクロアルキル、好ましくはC5シクロアルキルである。好ましくは、Lはフェニルのパラ位にある。
【0026】
式Iの両方のR2基は互いに同一である。R2は、好ましくは直鎖C2~4-アルカンジイル、最も好ましくは直鎖C3-アルカンジイルである。R4はR2と同一であっても又は同一でなくてもよく、好ましくは直鎖又は分岐鎖C2~4-アルカンジイル、最も好ましくはC2-アルカンジイルである。
【0027】
Xは、好ましくはアミン基を含み、すなわち、Xは、好ましくはNR6
2又はCONR7
2、更に好ましくはNR6
2である。基R6及びR7は、それらが結合しているN原子と共に、好ましくはN含有飽和4員~7員複素環基、更に好ましくはN含有飽和5員複素環基を形成する。かかる化合物のうち、2つの基R6が結合して複素環を形成するものは、癌細胞株試験において有用な細胞毒性活性を有するようであることから好ましい。Xは最も好ましくは飽和ピロリジニル基である。
【0028】
好ましくは、式Iは、以下の式IIの構造を有する:
【化7】
(式中、L及びR
1は、式Iについて定義された通りであり、好ましい基のいずれかは上記で概説されている)。
【0029】
好適には、化合物は、以下からなる群より選択される:
2,7-ビス(3-モルホリノプロピル)-4-((2-(ピロリジン-1-イル)エチル)アミノ)-9-(4-(ピロリジン-1-イルメチル)フェニル)ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン-1,3,6,8(2H,7H)-テトラオン;
4-(4-(モルホリノメチル)フェニル)-2,7-ビス(3-モルホリノプロピル)-9-((2-(ピロリジン-1-イル)エチル)アミノ)ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン-1,3,6,8(2H,7H)-テトラオン;
2,7-ビス(3-モルホリノプロピル)-4-((2-(ピロリジン-1-イル)エチル)アミノ)-9-(3-(ピロリジン-1-イルメチル)フェニル)ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン-1,3,6,8(2H,7H)-テトラオン;
2,7-ビス(3-モルホリノプロピル)-4-(4-(ピペリジン-1-イルメチル)フェニル)-9-((2-(ピロリジン-1-イル)エチル)アミノ)ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン-1,3,6,8(2H,7H)-テトラオン;
4-(4-((ジエチルアミノ)メチル)フェニル)-2,7-ビス(3-モルホリノプロピル)-9-((2-(ピロリジン-1-イル)エチル)アミノ)ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン-1,3,6,8(2H,7H)-テトラオン;
4-(4-((シクロペンチルアミノ)メチル)フェニル)-2,7-ビス(3-モルホリノプロピル)-9-((2-(ピロリジン-1-イル)エチル)アミノ)ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン-1,3,6,8(2H,7H)-テトラオン;
4-(4-(アゼパン-1-イルメチル)フェニル)-2,7-ビス(3-モルホリノプロピル)-9-((2-(ピロリジン-1-イル)エチル)アミノ)ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン-1,3,6,8(2H,7H)-テトラオン;
4-(4-((4-メチルピラジン-1-イル)メチル)フェニル)-2,7-ビス(3-モルホリノプロピル)-9-((2-(ピロリジン-1-イル)エチル)アミノ)ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン-1,3,6,8(2H,7H)-テトラオン;並びに、
それらの塩、水和物及び溶媒和物。
【0030】
本発明の第2の態様において、式IV~式VIIIのL、X及びR1~R4は、好ましくは、本発明の第1の態様の式IのL、X及びR1~R4についての上記の好ましい特徴として定義される。
【0031】
本発明の方法は、芳香族求核置換反応において、式IIIの臭素化ナフタレンジイミドを式IVのアミン試薬と反応させる第1の工程を含み、それにより、臭素原子がアミノ基N(R3)(R4X)によって置き換えられる。出発ジイミドはジブロモ化合物であり、芳香族求核置換反応により、両方の臭素原子がアミン基で置き換えられても又は臭素原子の一方のみがアミン基で置き換えられてもよい(すなわち、式Vの化合物)が、臭素の一方のみが置き換えられることが好ましく、少なくとも1種の式Vの化合物が生成されている必要がある。例えばカラムクロマトグラフィーを使用することにより、一置換ナフタレンジイミド及び二置換ナフタレンジイミド両方の混合物を分離することが好ましい。
【0032】
第2の工程では、第1の工程で生成された式Vの化合物は、置換反応において式VIの試薬と反応し、それにより、LG(脱離基)が最初に結合されている炭素原子を介して臭素原子が式VIのフェニルに置き換えられる。一態様において、LGはボロン酸基であり得るが、当業者は、置換反応を受けて式V及び式VIの間にアリール-アリール結合を形成するための複数の方法があることを理解するであろう。その結果、少なくとも1種の式Iの化合物が生成される。
【0033】
好ましくは、別の工程では、式Iの化合物は、カラムクロマトグラフィーを使用することによって単離される。
【0034】
好ましくは、使用されるカラムクロマトグラフィーの特定の形態は、ゲル及びフラッシュカラムクロマトグラフィーから選択される。
【0035】
本発明の化合物は、薬学的に許容可能な組成物の形態で提供され得る。本発明の化合物は、特に酸付加塩の形態で与えられる場合、例えば、塩基性アミン基の一部又は全てが塩形態に変換される場合、水溶性であり、ほぼ中性のpHを有する。そのため、これらの塩は、静脈内投与に適しているであろう水溶液の形態での投与に好適である。薬学的水溶液は、好ましくは1mg/l~500mg/lの化合物を含む。
【0036】
本発明の化合物は、例えば、担体又は希釈剤を用いて、例えば、乾燥した、再水和可能な形態で、医薬組成物に構成するのに適した形態で提供され得る。そのような乾燥形態は、結晶化及び/又は蒸発によって生成され得る。或いは、化合物は、投与前に希釈するために、例えば水又は有機の薬学的に許容可能な溶媒中の濃縮物として与えられ得る。
【0037】
本明細書において使用される場合、薬学的に許容可能な塩は、薬学的に許容可能な酸又は塩基を有する塩である。薬学的に許容可能な酸としては、塩酸、硫酸、リン酸、二リン酸、臭化水素酸又は硝酸等の無機酸、及びクエン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、酒石酸、安息香酸、酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、サリチル酸、ステアリン酸、ベンゼンスルホン酸又はp-トルエンスルホン酸等の有機酸の両方が挙げられる。薬学的に許容可能な塩基としては、アルカリ金属(例えば、ナトリウム又はカリウム)及びアルカリ土類金属(例えば、カルシウム又はマグネシウム)の水酸化物、並びにアルキルアミン、アリールアミン又は複素環式アミン等の有機塩基が挙げられる。
【0038】
誤解を避けるために、本発明はまた、in vivoで反応して本発明の化合物が得られるプロドラッグを包含する。
【0039】
本発明による組合せはまた、望ましくない制御されていない細胞増殖を阻害するために他の作用物質、例えば抗体と併せて使用され得る。化合物を、抗体と複合体形成させるか、又は2つの別々の成分として投与することができる。
【0040】
本発明の化合物及び該化合物を含む組成物は、任意の経路で投与され得る。一実施形態において、本発明の化合物を含む医薬組成物を、経口、直腸、非経口、鼻腔内若しくは経皮の投与、又は吸入若しくは坐剤による投与に適したフォーマットで製剤化することができる。典型的な投与経路は、非経口、鼻腔内若しくは経皮の投与、又は吸入による投与である。腫瘍の化学療法の場合、組成物は最も簡便には静脈内投与される。
【0041】
既存の腫瘍に対する治療として使用される場合、本発明の化合物は、化学療法剤のために開発されたレジメンを使用して投与され得る。
【0042】
本発明の化合物及び組成物は、癌を有する被験体を治療するのに有用である。或る特定のクラスの癌は固形腫瘍として知られており、癌性物質の固形塊を識別することができる。別のクラスは、血液系を冒す癌として知られる血液癌を含む。
【0043】
本発明の化合物及び組成物を使用して治療することができる特定の種類の癌としては、限定されるものではないが、前立腺癌、膵臓癌、小細胞肺癌、又は消化器癌が挙げられる。好ましい実施形態において、癌は前立腺癌又は膵臓癌である。
【0044】
本発明の化合物及び組成物は、固形腫瘍の成長を阻害するため、又は固形腫瘍のサイズを縮小するための治療において有用であり、例えば、腫瘍は膵臓腫瘍又は前立腺腫瘍である。
【0045】
治療される被験体は、好適には動物、好ましくはヒトである。
【0046】
そのため、癌を治療するための本発明の化合物又は医薬組成物、特に既に上に記載されているものを被験体に投与することを含む治療方法が提供される。
【0047】
癌の治療のための薬剤、特に既に上に記載されているものの製造における本発明の化合物又は医薬組成物の使用も提供される。
【0048】
本発明を、添付の実施例に更に示す。
【実施例】
【0049】
一連の四置換ナフタレンジイミドを合成し、G-四重鎖リガンドとして、及び可能性のある抗癌剤として評価した。
【0050】
化学
全ての化学薬品、試薬、及び溶媒は、商業的供給元から購入し、特に明記しない限り、受け取ったままの状態で使用した。乾燥溶媒が指定されていない限り、溶媒は市販のHPLCグレードであり、指定されている場合はAldrichの「Sure Seal」乾燥溶媒を使用した。カラムクロマトグラフィーを、指定の溶離液を使用して、事前に充填されたシリカ(230メッシュ~400メッシュ、40μm~63μm)カートリッジで実施した。
【0051】
1H NMRスペクトルを、Bruker Avance III分光計で残留非重水素化溶媒を参照として使用して、400MHzで取得した。
【0052】
分析LCMSを、次のように酸性又は塩基性のいずれかの方法を使用して実施した。
【0053】
酸性、HPLC:Waters X-Select CSH C18、2.5μm、4.6mm×30mmカラム、0.1%ギ酸水溶液中のMeCN中0.1%ギ酸のグラジエントで溶出。MeCN中の0.1%ギ酸の5%→95%のグラジエントは、2.5ml/分で0.00分~3.00分の間に発生し、4.5ml/分で3.01分~3.5分のフラッシュを伴う。5%MeCNへのカラムの再平衡化は、2.5ml/分で3.60分~4.00分である。溶出されたピークのUVスペクトルを、Agilent 1260 Infinity又はAgilent 1200 VWDを使用して254nmで測定した。質量スペクトルを、ポジティブ/ネガティブスイッチングで動作するAgilent 6120若しくはAgilent 1956 MSD、又はポジティブモード若しくはネガティブモードのいずれかで動作するAgilent 6100 MSDを使用して測定した。
【0054】
塩基性、HPLC:Waters X-Select BEH C18、2.5μm、4.6mm×30mmカラム、10mM重炭酸アンモニウム水溶液中のMeCNのグラジエントで溶出。5%→95%MeCN中のグラジエントは、2.5ml/分で0.00分~3.00分の間に発生し、4.5ml/分で3.01分~3.5分のフラッシュを伴う。5%MeCNへのカラムの再平衡化は、2.5ml/分で3.60分~4.00分である。溶出されたピークのUVスペクトルを、Agilent 1260 Infinity又はAgilent 1200 VWDを使用して254nmで測定した。質量スペクトルを、ポジティブ/ネガティブスイッチングで動作するAgilent 6120若しくはAgilent 1956 MSD、又はポジティブモード若しくはネガティブモードのいずれかで動作するAgilent 6100 MSDを使用して測定した。
【0055】
或いは、分析UPLC/MSを、次のように酸性又は塩基性のいずれかの方法を使用して実施した。
【0056】
酸性、UPLC:Waters Acquity CSH C18、1.7μm、2.1mm×30mmカラム、0.1%ギ酸水溶液中のMeCN中0.1%ギ酸のグラジエントで溶出。グラジエントは、0.0分~0.11分間保持された5%MeCNの開始点で構成される。5%→95%のグラジエントは、0.11分~2.15分の間に発生し、2.15分~2.56分にフラッシュを伴う。5%MeCNへのカラムの再平衡化は2.56分~2.83分である。溶出されたピークのUVスペクトルを、Acquity PDAを使用して測定し、質量スペクトルを、ESI pos/negスイッチングを伴うAcquity QDa検出器を使用して記録した。
【0057】
塩基性UPLC:Waters Acquity BEH C18、1.7μm、2.1mm×30mmカラム、10mM重炭酸アンモニウム水溶液中のMeCNのグラジエントで溶出。グラジエントは、0.0分~0.11分間保持された5%MeCNの開始点で構成される。5%→95%のグラジエントは、0.11分~2.15分の間に発生し、2.15分~2.56分のフラッシュを伴う。5%MeCNへのカラムの再平衡化は2.56分~2.83分である。溶出されたピークのUVスペクトルを、Acquity PDAを使用して測定し、質量スペクトルを、ESI pos/negスイッチングを伴うAcquity QDa検出器を使用して記録した。
【0058】
分取HPLCを、0.1%ギ酸水溶液中のMeCN中の0.1%ギ酸のグラジエント若しくは10mM重炭酸アンモニウム水溶液中のMeCNのグラジエントのいずれかを使用するWaters Xselect CSH C18、5μm、19mm×50mmカラム、又は10mM重炭酸アンモニウム水溶液中のグラジエントMeCNを使用するWaters Xbridge BEH C18、5μm、19mm×50mmカラムを用いて行った。画分を、Gilson 215分取HPLC又はVarian PrepStar分取HPLCの可変波長検出器で測定された単一波長でのUVによる;ZQシングル四重極質量分析計、陽及び陰イオンエレクトロスプレー、並びにWaters FractionLynx LCMSのデュアル波長検出器によって測定された単一波長での質量及びUVによる検出後に収集した。
【0059】
実施例1:2,7-ビス(3-モルホリノプロピル)-4-((2-(ピロリジン-1-イル)エチル)アミノ)-9-(4-(ピロリジン-1-イルメチル)フェニル)ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン-1,3,6,8(2H,7H)-テトラオン
【化8】
4-ブロモ-2,7-ビス(3-モルホリノプロピル)-9-((2-(ピロリジン-1-イル)エチル)アミノ)ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン-1,3,6,8(2H,7H)-テトラオン(100mg、0.141mmol)、(3,5-ジメトキシフェニル)ボロン酸(77mg、0.422mmol)又は1-(4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジル)ピロリジン(121mg、0.422mmol)及びPd(Ph
3P)
4(8.12mg、7.03μmol)をTHF/2M K
2CO
3(3:1、2mL)に溶解し、脱気して、窒素を3回充填し直した(backfilling)。混合物を3時間撹拌しながら加熱した(70℃のブロック温度)。反応物を冷却し、DCM(15mL)で希釈し、水(15mL)で洗浄し、疎水性フリットを通過させ、真空で濃縮した。粗生成物を分取HPLC(塩基性、水中の20~50MeCN)によって精製して、標題化合物(7.1mg、8.34μmol、収率6%)を暗赤色の固体として得た。
【0060】
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 10.24 (t, J = 5.3 Hz, 1H), 8.48 (s, 1H), 8.32 (s, 1H), 7.52 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 7.38 - 7.29 (m, 2H), 4.34 - 4.25 (m, 2H), 4.21 - 4.07 (m, 2H), 3.87 (s, 2H), 3.75 (q, J = 6.2 Hz, 2H), 3.62 (dt, J = 16.8, 4.7 Hz, 8H), 2.95 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 2.78 (s, 4H), 2.71 - 2.64 (m, 4H), 2.53 (t, J = 7.0 Hz, 2H), 2.50 - 2.35 (m, 10H), 2.02 - 1.78 (m, 12H)。CDCl3 1863-70-prep2の1H NMRは、93%の純度で生成物の構造と一致していた。LCMS、塩基性、1863-70B-prep、4分でm/z 792.4[M+H]+、254nmで純度96%。254nmでのLCにより、4%CMO3を含有。
【0061】
実施例2:4-(4-(モルホリノメチル)フェニル)-2,7-ビス(3-モルホリノプロピル)-9-((2-(ピロリジン-1-イル)エチル)アミノ)ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン-1,3,6,8(2H,7H)-テトラオン
【化9】
ジオキサン(4mL)中の4-ブロモ-2,7-ビス(3-モルホリノプロピル)-9-((2-(ピロリジン-1-イル)エチル)アミノ)ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン-1,3,6,8(2H,7H)-テトラオン(202mg、0.284mmol)及び(4-(モルホリノメチル)フェニル)ボロン酸(188mg、0.852mmol)の撹拌混合物を炭酸カリウム(568μLの2M水溶液、1.135mmol)で処理し、脱気した。S-Phos Pd G3(6.64mg、8.52μmol)を加え、混合物を再び脱気した後、全体を80℃に加熱した(ブロック温度、予熱)。18時間後、混合物を冷却し、次いで水(10mL)及び飽和NaHCO
3水溶液(10mL)で希釈し、DCM(2×20mL)で抽出した。合わせた有機物をNa
2SO
4上で乾燥させ、蒸発させた。カラムクロマトグラフィー(12g Buchi FlashPure、事前吸着、(1:1 THF:DCM)中の10%→70%[9:1(1:1 THF:DCM):MeOH中7M NH
3]によって、中程度の純度の生成物の2つのカットを得た。生成物バンドの中心を蒸発させ、MeCN(2mL)に取った。約48時間後、これを濾過し、固形物を廃棄した。その間、生成物バンドの端からの物質を蒸発させ、イソヘキサンから再スラリー化した。この物質を上記のバッチからのMeCN液と組み合わせ、得られたものをカラムクロマトグラフィー(12g RediSep Gold、DCM中30%→70%(9:1 DCM:MeOH中の0.7M NH
3)、DCM中でローディング)により精製した。このバンドの中央のカットを蒸発させて、生成物を明赤色のガラス状固体(50mg、22%)として得た。
【0062】
LCMS:6.68分で実測値m/z808.3(C45H58N7O7(MH+)は808.4を必要とする)。1H NMR (500 MHz, クロロホルム-d) δ 10.24 (t, J = 5.3 Hz, 1H), 8.50 (s, 1H), 8.33 (s, 1H), 7.45 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.32 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 4.30 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 4.15 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 3.83 - 3.71 (m, 6H), 3.65 - 3.59 (m, 10H), 2.95 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 2.70 - 2.67 (m, 4H), 2.58 - 2.50 (m, 6H), 2.47 - 2.40 (m, 10H), 1.96 (app p, J = 7.1 Hz, 2H), 1.90 - 1.84 (m, 6H)。
【0063】
実施例3:2,7-ビス(3-モルホリノプロピル)-4-((2-(ピロリジン-1-イル)エチル)アミノ)-9-(3-(ピロリジン-1-イルメチル)フェニル)ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン-1,3,6,8(2H,7H)-テトラオン
【化10】
ジオキサン(4mL)中の4-ブロモ-2,7-ビス(3-モルホリノプロピル)-9-((2-(ピロリジン-1-イル)エチル)アミノ)ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン-1,3,6,8(2H,7H)-テトラオン(149mg、0.209mmol)及び1-(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジル)ピロリジン(180mg、0.628mmol)の撹拌混合物を炭酸カリウム(419μLの2M水溶液、0.837mmol)で処理し、脱気した。S-Phos Pd G3(4.90mg、6.28μmol)を充填し、混合物を再び脱気し、全体を80℃に加熱した。16時間後、混合物を冷却し、次いで水(10mL)及び飽和NaHCO
3水溶液(10mL)で希釈し、DCM(2×20mL)で抽出した。合わせた有機物をNa
2SO
4上で乾燥させ、蒸発させた。カラムクロマトグラフィー(12g RediSep Gold、DCM中30%→60%(9:1 DCM:MeOH中0.7M NH
3)、DCM中のローディング)により、中程度の純度の生成物が得られた。残留物を逆相カラムクロマトグラフィー(12g Reveleris C-18、水中75%→100%(MeOH中70mM NH
3))、DMSO中でローディング)によって精製して、より良好であるが依然として不十分な純度の生成物を得た。残留物を逆相カラムクロマトグラフィー(12g Reveleris C-18、水中75%→100%(MeOH中70mM NH
3)、DMSO中でローディング)により再精製し、明赤色のガラス状固体として生成物(16mg、10%)を得た。
【0064】
LCMS:6.42分で実測値m/z 792.4:(C45H58N7O6(MH+)は792.4を必要とする)。1H NMR (500 MHz, 塩化メチレン-d2) δ 10.26 (t, J = 5.5 Hz, 1H), 8.47 (s, 1H), 8.35 (s, 1H), 7.47 - 7.37 (m, 2H), 7.35 (br s, 1H), 7.26 (dt, J = 7.2, 1.7 Hz, 1H), 4.30 (t, J = 7.4, 2H), 4.13 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 3.82 - 3.65 (m, 4H), 3.52 - 3.58 (m, 8H), 2.95 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 2.69 - 2.66 (m, 4H), 2.61 - 2.30 (m, 16H), 1.93 (p, J = 6.9 Hz, 2H), 1.89 - 1.75 (m, 10H)。
【0065】
実施例4:2,7-ビス(3-モルホリノプロピル)-4-(4-(ピペリジン-1-イルメチル)フェニル)-9-((2-(ピロリジン-1-イル)エチル)アミノ)ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン-1,3,6,8(2H,7H)-テトラオン
【化11】
ジオキサン(4mL)中の4-ブロモ-2,7-ビス(3-モルホリノプロピル)-9-((2-(ピロリジン-1-イル)エチル)アミノ)ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン-1,3,6,8(2H,7H)-テトラオン(155mg、0.218mmol)及び1-(4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジル)ピペリジン(197mg、0.653mmol)の撹拌混合物を炭酸カリウム(436μLの2M水溶液、0.871mmol)で処理し、脱気した。S-Phos Pd G3(5.10mg、6.53μmol)を充填し、混合物を再び脱気し、全体を80℃に加熱した。16時間後、混合物を冷却し、次いで水(10mL)及び飽和NaHCO
3水溶液(10mL)で希釈し、DCM(2×20mL)で抽出した。合わせた有機物をNa
2SO
4上で乾燥させ、蒸発させた。カラムクロマトグラフィー(12g RediSep Gold、DCM中30%→60%(9:1 DCM:MeOH中0.7M NH
3)、DCM中のローディング)により、中程度の純度の生成物が得られた。残留物を逆相カラムクロマトグラフィー(12g Reveleris C-18、水中75%→100%(MeOH中70mM NH
3)、DMSO中でローディング)により精製し、明赤色のガラス状固体として生成物(61mg、35%)を得た。
【0066】
LCMS:7.38分で実測値m/z806.3:(C46H60N7O6(MH+)は805.5を必要とする)。1H NMR (500 MHz, 塩化メチレン-d2) δ 10.25 (t, J = 5.1 Hz, 1H), 8.47 (s, 1H), 8.34 (s, 1H), 7.43 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.33 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 4.29 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 4.14 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 3.75 (q, J = 5.9 Hz, 2H), 3.64 - 3.50 (m, 10H), 2.95 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 2.69 - 2.66 (m, 4H), 2.56 - 2.29 (m, 16H), 1.93 (p, J = 7.0 Hz, 2H), 1.89 - 1.82 (m, 6H), 1.68 - 1.62 (m, 4H), 1.53 - 1.49 (m, 2H)。
【0067】
実施例5:4-(4-((ジエチルアミノ)メチル)フェニル)-2,7-ビス(3-モルホリノプロピル)-9-((2-(ピロリジン-1-イル)エチル)アミノ)ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン-1,3,6,8(2H,7H)-テトラオン
【化12】
ジオキサン(4mL)中の4-ブロモ-2,7-ビス(3-モルホリノプロピル)-9-((2-(ピロリジン-1-イル)エチル)アミノ)ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン-1,3,6,8(2H,7H)-テトラオン(155mg、0.218mmol)及びN-エチル-N-(4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジル)エタンアミン(189mg、0.653mmol)の撹拌混合物を炭酸カリウム(436μLの2M水溶液、0.871mmol)で処理し、脱気した。S-Phos Pd G3(5.10mg、6.53μmol)を充填し、混合物を再び脱気し、全体を80℃に加熱した。16時間後、混合物を冷却し、次いで水(10mL)及び飽和NaHCO
3水溶液(10mL)で希釈し、DCM(2×20mL)で抽出した。合わせた有機物をNa
2SO
4上で乾燥させ、蒸発させた。カラムクロマトグラフィー(12g BuchiFlashPure、DCM中30%→60%(9:1 DCM:MeOH中1.4M NH
3)、DCM中のローディング)により、中程度の純度の生成物が得られた。残留物を逆相カラムクロマトグラフィー(12g Reveleris C-18、水中75%→100%(MeOH中70mM NH
3)、DMSO中でローディング)により精製し、明赤色のガラス状固体として生成物(81mg、47%)を得た。
【0068】
LCMS:6.93分で実測値m/z794.2:(C45H60N7O6(MH+)は794.5を必要とする)。1H NMR (500 MHz, 塩化メチレン-d2) δ 10.24 (t, J = 5.2 Hz, 1H), 8.46 (s, 1H), 8.32 (s, 1H), 7.46 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.33 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 4.28 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 4.13 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 3.79 - 3.71 (m, 2H), 3.69 (s, 2H), 3.58 - 3.53 (m, 8H), 2.94 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 2.69 - 2.66 (m, 4H), 2.61 (q, J = 7.1 Hz, 4H), 2.50 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 2.47 - 2.30 (m, 10H), 1.93 (p, J = 6.9 Hz, 2H), 1.88 - 1.82 (m, 6H), 1.12 (t, J = 7.1 Hz, 6H)。
【0069】
実施例6:4-(4-((シクロペンチルアミノ)メチル)フェニル)-2,7-ビス(3-モルホリノプロピル)-9-((2-(ピロリジン-1-イル)エチル)アミノ)ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン-1,3,6,8(2H,7H)-テトラオン
【化13】
ジオキサン(4mL)中の4-ブロモ-2,7-ビス(3-モルホリノプロピル)-9-((2-(ピロリジン-1-イル)エチル)アミノ)ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン-1,3,6,8(2H,7H)-テトラオン(153mg、0.215mmol)及びN-(4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジル)シクロペンタンアミン(194mg、0.645mmol)の撹拌混合物を炭酸カリウム(430μLの2M水溶液、0.860mmol)で処理し、脱気した。S-Phos Pd G3(5.03mg、6.45μmol)を充填し、混合物を再び脱気し、全体を80℃に加熱した。16時間後、混合物を冷却し、次いで水(10mL)及び飽和NaHCO
3水溶液(10mL)で希釈し、DCM(2×20mL)で抽出した。合わせた有機物をNa
2SO
4上で乾燥させ、蒸発させた。カラムクロマトグラフィー(12g BuchiFlashPure、DCM中30%→60%(9:1 DCM:MeOH中1.4M NH
3)、DCM中のローディング)により、中程度の純度の生成物が得られた。残留物を逆相カラムクロマトグラフィー(12g Reveleris C-18、水中75%→100%(MeOH中70mM NH
3)、DMSO中でローディング)により精製し、明赤色のガラス状固体として生成物(29mg、17%)を得た。
【0070】
LCMS:6.57分で実測値m/z806.4:(C46H60N7O6(MH+)は805.5を必要とする)。1H NMR (500 MHz, 塩化メチレン-d2) δ 10.25 (t, J = 5.1 Hz, 1H), 8.46 (s, 1H), 8.34 (s, 1H), 7.45 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 7.33 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 4.29 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 4.13 (t, J = 7.4, Hz, 2H), 3.88 (s, 2H), 3.75 (q, J = 5.9 Hz, 2H), 3.58 - 3.53 (m, 8H), 3.23 (p, J = 6.4 Hz, 1H), 2.95 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 2.69 - 2.66 (m, 4H), 2.50 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 2.47 - 2.30 (m, 10H), 1.96 -1.89 (m, 4H), 1.88 - 1.80 (m, 6H), 1.79 - 1.72 (m, 2H), 1.65 - 1.58 (m, 2H), 1.51 - 1.42 (m, 2H)。CH2NHCHは測定されなかった。
【0071】
実施例7:4-(4-(アゼパン-1-イルメチル)フェニル)-2,7-ビス(3-モルホリノプロピル)-9-((2-(ピロリジン-1-イル)エチル)アミノ)ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン-1,3,6,8(2H,7H)-テトラオン
【化14】
ジオキサン(4mL)中の4-ブロモ-2,7-ビス(3-モルホリノプロピル)-9-((2-(ピロリジン-1-イル)エチル)アミノ)ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン-1,3,6,8(2H,7H)-テトラオン(223mg、0.313mmol)及び1-(4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジル)アゼパン(296mg、0.940mmol)の撹拌混合物を炭酸カリウム(627μLの2M水溶液、1.253mmol)で処理し、脱気した。S-Phos Pd G3(7.33mg、9.40μmol)を充填し、混合物を再び脱気し、全体を80℃に加熱した。16時間後、混合物を冷却し、次いで水(10mL)及び飽和NaHCO
3水溶液(10mL)で希釈し、DCM(2×20mL)で抽出した。合わせた有機物をNa
2SO
4上で乾燥させ、蒸発させた。カラムクロマトグラフィー(12g BuchiFlashPure、DCM中30%→60%(9:1 DCM:MeOH中1.4M NH
3)、DCM中のローディング)により、中程度の純度の生成物が得られた。残留物を逆相カラムクロマトグラフィー(12g Reveleris C-18、水中75%→100%(MeOH中70mM NH
3)、DMSO中でローディング)により精製し、明赤色のガラス状固体として生成物(130mg、51%)を得た。
【0072】
LCMS:7.69分で実測値m/z820.3:(C47H62N7O6(MH+)は820.5を必要とする)。1H NMR (500 MHz, 塩化メチレン-d2) δ 10.25 (t, J = 5.1 Hz, 1H), 8.47 (s, 1H), 8.34 (s, 1H), 7.47 (d, J = 7.8 Hz, 2H), 7.33 (d, J = 7.8 Hz, 2H), 4.29 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 4.14 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 3.82 - 3.70 (m, 4H), 3.57 - 3.53 (m, 8H), 2.95 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 2.78 - 2.61 (m, 8H), 2.50 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 2.47 - 2.30 (m, 10H), 1.93 (p, J = 7.0 Hz, 2H), 1.88 - 1.82 (m, 6H), 1.73 - 1.68 (m, 8H)。
【0073】
実施例8:
4-(4-((4-メチルピラジン-1-イル)メチル)フェニル)-2,7-ビス(3-モルホリノプロピル)-9-((2-(ピロリジン-1-イル)エチル)アミノ)ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン-1,3,6,8(2H,7H)-テトラオン
【化15】
ジオキサン(4mL)中の4-ブロモ-2,7-ビス(3-モルホリノプロピル)-9-((2-(ピロリジン-1-イル)エチル)アミノ)ベンゾ[lmn][3,8]フェナントロリン-1,3,6,8(2H,7H)-テトラオン(213mg、0.299mmol)及び1-メチル-4-(4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジル)ピペラジン(284mg、0.898mmol)の撹拌混合物を炭酸カリウム(599μLの2M水溶液、1.197mmol)で処理し、脱気した。S-Phos Pd G3(7.01mg、8.98μmol)を充填し、混合物を再び脱気し、全体を80℃に加熱した。16時間後、混合物を冷却し、次いで水(10mL)及び飽和NaHCO3水溶液(10mL)で希釈し、DCM(2×20mL)で抽出した。合わせた有機物をNa2SO4上で乾燥させ、蒸発させた。カラムクロマトグラフィー(12g BuchiFlashPure、DCM中30%→60%(9:1 DCM:MeOH中3.5M NH3)、DCM中のローディング)により、中程度の純度の生成物が得られた。残留物を逆相カラムクロマトグラフィー(12g Reveleris C-18、水中75%→100%(MeOH中70mM NH3)、DMSO中でローディング)により精製し、明赤色のガラス状固体として生成物(111mg、45%)を得た。
【0074】
LCMS:6.06分で実測値m/z821.2:(C46H61N8O6(MH+)は821.5を必要とする)。1H NMR (500 MHz, 塩化メチレン-d2) δ 10.25 (t, J = 5.1 Hz, 1H), 8.46 (s, 1H), 8.34 (s, 1H), 7.43 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.33 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 4.29 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 4.13 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 3.75 (q, J = 5.9 Hz, 2H), 3.62 (s, 2H), 3.57 - 3.53 (m, 8H), 2.95 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 2.77 - 2.20 (m, 27H), 1.94 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 1.89 - 1.80 (m, 6H)。
【0075】
生物物理学及び細胞生物学のデータ
細胞増殖アッセイ
CellTiter 96(商標)AQueous One Solution Cell Proliferation Assay(Invitrogen)は、増殖又は細胞毒性アッセイで生細胞数を測定するための比色法である。CellTiter 96(商標)AQueous One Solution Reagentは、新規テトラゾリウム化合物[3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム、内部塩;MTS]、及び電子カップリング試薬(フェナジンエトサルフェート;PES)を含む。PESは化学的安定性が強化されているため、MTSと組み合わせて安定した溶液を形成することができる。MTSテトラゾリウム化合物(オーウェン試薬)は、細胞によって生体還元されて、組織培養培地に可溶性の着色ホルマザン生成物になる。アッセイを、少量のCellTiter 96(商標)AQueous One Solution Reagentを培養ウェルに直接添加し、1時間~4時間インキュベートしてから、96ウェルプレートリーダーで490nmの吸光度を記録することによって実施する。490nmでの吸光度で測定されるホルマザン生成物の量は、培養中の生細胞の数に正比例する。キットを製造業者の指示に従って使用した。MIA-PACA2細胞で各実施例化合物と96時間インキュベートした後、MTS Cell Titre 96 Aqueous One Solution Cell Proliferation Assay(Promega Ltd)を使用して各試料の細胞増殖を測定した。阻害のパーセンテージを、DMSOで処理した対照試料の平均に対して計算した。
【0076】
【0077】
in vivo異種移植片有効性研究
体重およそ25g~32gの5週齢~7週齢のマウスに研究のため移植し、Charles Riverから購入した。膵臓腫瘍細胞の移植手順では、MIA-PACA2細胞(マトリゲル中1×10
7)を22ゲージの針を使用してマウスの後部側面に皮下移植した。評価されるパラメータは、腫瘍のサイズ及び動物の体重を含む。腫瘍体積を週に3回測定し、体重を少なくとも週に3回測定した。有効性試験において、動物の腫瘍がおよそ50mm
3に達したときに、治療群への割り当てを無作為に行った。動物(MIA-PACA2腫瘍を有する雌性無胸腺ヌードマウス)に、28日間、週2回、C1では10mg/kg及び15mg/kgの用量で、実施例1ではその10倍大きい細胞効力のため0.5mg/kg及び1.0mg/kgの用量で静脈内投与した。各群は8匹の動物を含んだ。この研究で使用された全てのプロトコルは、適切な動物福祉及び倫理審査委員会によって承認され、全ての手順は、1986年の英国動物(科学的手順)法のガイドラインの下で行われた。結果を以下の表及び
図1に示す。
【化16】
実施例1
【0078】
【0079】
【0080】
図1のグラフは、28日間の静脈内投与後、続いて28日間測定(AXIS BioServicesによって実施)した後のMIA-PACA2モデルの異種移植データを示す。示されるデータは、23日目まではn=8、そして研究終了まではn=4の平均±SDである。データは、実施例1の化合物が、週1回の投与計画においてさえ、膵臓腫瘍の成長を阻害し、比較化合物C1又は既知の抗癌剤であるゲムシタビンよりもかなり大きく腫瘍のサイズを縮小したことを示す。さらに、実施例1及び投与スケジュールは忍容性が高く、副作用の兆候は見られなかった。開始時の腫瘍体積は0.4mm
3であった。実施例1は、調査した両方の投与計画において、週に1回及び週に2回、両方とも1mg/kgの用量で活性であった。両方とも、投与期間の終わりに5/8の腫瘍体積の完全な退縮を示した。完全退縮コホートでは、腫瘍は完全に消失し、投与から28日後に再成長は見られなかった。C1群及び実施例1群の少数の腫瘍は完全な退縮を示さないが、腫瘍成長の低減を示し、ビヒクル対照群よりも一貫して小さい体積をもたらす。
【0081】
XTTアッセイ
CyQUANT XTT細胞生存アッセイ(Invitrogen)は、生存可能な哺乳動物細胞の一貫した比色検出を生成する、完全で最適化されたアッセイである。アッセイキットは、XTT試薬(2,3-ビス-(2-メトキシ-4-ニトロ-5-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム-5-カルボキサニリド)及び電子カップリング試薬の2つの試薬からなる。XTT試薬を、細胞の酸化還元電位の関数として細胞の生存率を評定するために使用し、電子カップリング試薬はアッセイのダイナミックレンジを改善する。キットを製造業者の指示に従って使用した。
【0082】
【0083】
要約すると、本発明の化合物は、多くの癌細胞株において抗腫瘍活性を示す。