IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ガイストリッヒ ファーマ アーゲーの特許一覧

特許7476240骨代用材のコラーゲンマトリクス又は顆粒状ブレンド
<>
  • 特許-骨代用材のコラーゲンマトリクス又は顆粒状ブレンド 図1A
  • 特許-骨代用材のコラーゲンマトリクス又は顆粒状ブレンド 図1B
  • 特許-骨代用材のコラーゲンマトリクス又は顆粒状ブレンド 図2
  • 特許-骨代用材のコラーゲンマトリクス又は顆粒状ブレンド 図3A
  • 特許-骨代用材のコラーゲンマトリクス又は顆粒状ブレンド 図3B
  • 特許-骨代用材のコラーゲンマトリクス又は顆粒状ブレンド 図4
  • 特許-骨代用材のコラーゲンマトリクス又は顆粒状ブレンド 図5
  • 特許-骨代用材のコラーゲンマトリクス又は顆粒状ブレンド 図6
  • 特許-骨代用材のコラーゲンマトリクス又は顆粒状ブレンド 図7
  • 特許-骨代用材のコラーゲンマトリクス又は顆粒状ブレンド 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】骨代用材のコラーゲンマトリクス又は顆粒状ブレンド
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/24 20060101AFI20240422BHJP
   A61L 27/12 20060101ALI20240422BHJP
   A61L 27/46 20060101ALI20240422BHJP
   A61L 27/50 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
A61L27/24
A61L27/12
A61L27/46
A61L27/50
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021573817
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-29
(86)【国際出願番号】 EP2020066279
(87)【国際公開番号】W WO2020249716
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】19180350.1
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508326459
【氏名又は名称】ガイストリッヒ ファーマ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ツィールマン,クラウディオ
(72)【発明者】
【氏名】バフラー,ミヒャエル
【審査官】梅田 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-530568(JP,A)
【文献】特開昭60-220056(JP,A)
【文献】特表2016-524964(JP,A)
【文献】Acta Biomaterialia,2014年,Vol.10,pp.3363-3371
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00-33/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結CAPコアと、前記焼結CAPコアの外面上に堆積したナノ結晶HAPの閉鎖エピタキシャル成長層とを含み、それによって、エピタキシャル成長したナノ結晶がヒトの骨塩と同じサイズ及び形態を有する二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代用材の粒子を含むコラーゲンマトリクスであって、前記焼結CAPコアの外面上に堆積したナノ結晶HAPの閉鎖エピタキシャル成長層が平坦な板状結晶を含む均質な粗外面を有し、前記二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代用材において、前記粗面が、走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定したときに0.2~20μmのサイズを有する板状晶のインターロック網目構造を形成するエピタキシャル成長ナノ結晶ヒドロキシアパタイト板状晶を含む、コラーゲンマトリクス。
【請求項2】
60~97w/w% 骨代用材と3~40w/w% コラーゲンとを含む、請求項1に記載のコラーゲンマトリクス。
【請求項3】
前記二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代用材において、前記均質な粗外面が、水銀圧入ポロシメトリー(MIP)によって測定したときに0.03~2μmの気孔を含有するインターロック網目構造を形成するエピタキシャル成長ヒドロキシアパタイト板状晶を含む、請求項1又は2に記載のコラーゲンマトリクス。
【請求項4】
前記二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代用材において、前記均質な粗外面が、原子間力顕微鏡(AFM)によって特徴付けられ、AFM由来の自乗平均粗さRが50~400nmの範囲であり、そして、プロファイルの平均最大高さRが500~2000nmの範囲である、請求項1~のいずれか記載のコラーゲンマトリクス。
【請求項5】
前記二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代用材において、XRDによって測定したときのHAPの割合が1.0~10.0%である、請求項1~のいずれか記載のコラーゲンマトリクス。
【請求項6】
- 焼結CAPコアと、前記焼結CAPコアの外面上に堆積したナノ結晶HAPの閉鎖エピタキシャル成長層とを含み、それによって、エピタキシャル成長したナノ結晶がヒトの骨塩と同じサイズ及び形態を有するCAP/HAP骨代用材の粒子(A)であって、前記焼結CAPコアの外面上に堆積したナノ結晶HAPの閉鎖エピタキシャル成長層が、平坦な板状結晶を含む均質な粗外面を有し、XRDによって測定したときのHAPの割合が2.0~6.0%である、粒子(A)と、
- 以下からなる群から選択される骨代用材の粒子(B):
- 焼結CAPコアと、前記焼結CAPコアの外面上に堆積したナノ結晶HAPの少なくとも1つの閉鎖エピタキシャル成長層とを含み、それによって、エピタキシャル成長したナノ結晶がヒトの骨塩と同じサイズ及び形態を有し、XRDによって測定したときのHAPの割合が10~40%である二相性CAP/HAP骨代用材、並びに
- 天然骨に由来し、そして、天然骨の元の結晶構造及び鉱物微細構造を保持すると同時に、150ppm未満の有機不純物の含有量及び135ppm未満のタンパク質の含有量を有する骨塩
とを含む、請求項1~のいずれか記載のコラーゲンマトリクス。
【請求項7】
- XRDによって測定したときのHAPの割合が、前記CAP/HAP骨代用材の粒子(A)中2.0~6.0%であり、かつ
- 前記骨代用材の粒子(B)が、焼結CAPコアと、前記焼結CAPコアの外面上に堆積したナノ結晶HAPの少なくとも1つの閉鎖エピタキシャル成長層とを含み、それによって、エピタキシャル成長したナノ結晶がヒトの骨塩と同じサイズ及び形態を有し、XRDによって測定したときのHAPの割合が30~40%である二相性CAP/HAP骨代用材の粒子である、請求項記載のコラーゲンマトリクス。
【請求項8】
- XRDによって測定したときのHAPの割合が、前記CAP/HAP骨代用材の粒子(A)中2.0~6.0%であり、かつ
- 前記骨代用材の粒子(B)が、天然骨に由来し、そして、天然骨の元の結晶構造及び鉱物微細構造を保持すると同時に、150ppm未満の有機不純物の含有量及び135ppm未満のタンパク質の含有量を有する骨塩の粒子である、請求項記載のコラーゲンマトリクス。
【請求項9】
前記CAP/HAP骨代用材の粒子(A)の前記骨代用材の粒子(B)に対するw/w比が、0.1~9.9である、請求項のいずれか記載のコラーゲンマトリクス。
【請求項10】
パテとして使用するための請求項1~9のいずれか記載のコラーゲンマトリクスを調製するプロセスであって、コラーゲンスラリーを生成するために、ネイティブの天然に架橋されたコラーゲンのコラーゲン繊維をpH2~5の酸性溶液に分散させることと、コラーゲン/CAP/HAPスラリーを生成するために、前記コラーゲンスラリーを前記二相性CAP/HAP骨代用材の粒子と混合し、そして、ホモジナイズすることと、前記スラリーを凍結乾燥させ、そして、ガンマ線若しくはX線の照射又はエチレンオキシド処理によって滅菌することと、を含むプロセス。
【請求項11】
- 焼結CAPコアと、前記焼結CAPコアの外面上に堆積したナノ結晶HAPの閉鎖エピタキシャル成長層とを含み、それによって、エピタキシャル成長したナノ結晶がヒトの骨塩と同じサイズ及び形態を有する二相性(CAP/HAP)骨代用材の粒子(A)であって、前記焼結CAPコアの外面上に堆積したナノ結晶HAPの閉鎖エピタキシャル成長層が、平坦な板状結晶を含む均質な粗外面を有し、XRDによって測定したときのHAPの割合が2.0~6.0%であり、前記二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代用材において、前記粗面が、走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定したときに0.2~20μmのサイズを有する板状晶のインターロック網目構造を形成するエピタキシャル成長ナノ結晶ヒドロキシアパタイト板状晶を含む粒子と、
- 以下からなる群から選択される骨代用材の粒子(B):
- 焼結CAPコアと、前記焼結CAPコアの外面上に堆積したナノ結晶HAPの少なくとも1つの閉鎖エピタキシャル成長層とを含み、それによって、エピタキシャル成長したナノ結晶がヒトの骨塩と同じサイズ及び形態を有し、XRDによって測定したときのHAPの割合が10~40%である二相性CAP/HAP骨代用材、並びに
- 天然骨に由来し、そして、天然骨の元の結晶構造及び鉱物微細構造を保持すると同時に、150ppm未満の有機不純物の含有量及び135ppm未満のタンパク質の含有量を有する骨塩
との混合物を含む顆粒ブレンド。
【請求項12】
前記CAP/HAP骨代用材の粒子(A)の前記骨代用材の粒子(B)に対するw/w比が、0.1~9.9である、請求項11記載の顆粒ブレンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、均質な外面を有するリン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)に基づく二層構造を有する二相性骨代用材の粒子を含む、特にパテ、ストリップ、又はプラグ(例えば、口腔プラグ)の材料として使用するための新規コラーゲンマトリクス、該コラーゲンマトリクスを調製するためのプロセス、及びこのような二相性骨材料の粒子を含む新規顆粒状ブレンドに関する。
【0002】
医療分野、特に整形外科分野において、パテは、一般的に、好適な成形性及び凝集特性を備えるプレイドウ様の稠度を有する化合物と定義される。パテ材は、手で容易に成形することができ、そして、外力を取り除いてもその形状を保持する。
【0003】
ストリップとは、一般的に、グラフト部位の解剖学的湾曲に適合することができる柔軟かつ形態安定性の材料として定義される。ストリップは、圧縮し、そして、折り畳むことができるが、外力を取り除くと元の形状に戻る。
【0004】
プラグは、一般的に、異なる寸法を有する円筒形又は円錐形の材料として定義される。この材料は、柔軟であり、そして、圧縮することができるが、外力を取り除くと元の形状に戻る。口腔プラグとは、口腔内で使用可能なプラグである。特に、抜歯後のソケット等の穴又は空洞を埋めるために使用することができる。
【背景技術】
【0005】
骨構造の欠損は、外傷、疾患、及び手術等の様々な状況で生じるので、様々な外科分野で骨の欠損を有効に修復することが依然として必要とされている。
【0006】
骨の欠損部位における治癒を刺激するために、多数の天然及び合成の材料及び組成物が使用されてきた。歯周部及び顎顔面の骨欠損における骨成長を促進する周知の天然の骨伝導性骨代用材は、Geistlich Pharma AGから市販されているGeistlich Bio-Oss(登録商標)である。その材料は、米国特許第5,167,961号に記載されているプロセスによって天然の骨から製造され、該プロセスは、天然骨の小柱構造及びナノ結晶構造を保存することを可能にし、その結果、再吸収されないか又は非常に緩徐に再吸収される優れた骨伝導性マトリクスが得られる。
【0007】
リン酸三カルシウム/ヒドロキシアパタイト(TCP/HAP)系及びその骨代用材としての使用については、例えば、リン酸アンモニウムとHAPとの粉末混合物を1200~1500℃で加熱することによってα-TCP/HAPの二相セメントを調製するためのプロセスを開示している米国特許第6,338,752号に記載されている。
【0008】
欧州特許第285826号には、α-TCPの層を塗布し、そして、80~100℃でpH2~7の水と反応させることによりα-TCP層をHAPに完全に変換することによって、インプラント用の金属体及び非金属体上にHAPの層を生成するためのプロセスが記載されている。得られる生成物は、HAPの層で覆われた金属体又は非金属体である。
【0009】
国際公開公報第97/41273号には、(a)50℃未満の温度で、カルシウムイオン、リン酸イオン、及び重炭酸イオンを含有するpH6.8~8の溶液に基材を浸漬することと、(b)該基材と接触している該溶液の一部を、8を超えるpHを有するようになるまで50~80℃の温度に加熱することと、(c)工程(b)で得られたアルカリ溶液と接触した状態で該基材を維持して、炭酸ヒドロキシアパタイトコーティングを形成することと、(d)該基材を該溶液から取り出し、そして、コーティングを乾燥させることと、を含むプロセスによって、特にヒドロキシアパタイト(HAP)又は他のリン酸カルシウム(CAP)等の基材を、炭酸ヒドロキシアパタイト、すなわち、リン酸イオン及び/又はヒドロキシルイオンが重炭酸イオンによって部分的に置換されているヒドロキシアパタイトのコーティングで被覆するためのプロセスが記載されている。重炭酸イオンは、ヒドロキシアパタイト結晶成長の阻害剤として作用し、その結果、欠陥を含み、そして、かなり小さな寸法、つまり長さ10~40nm及び幅3~10nmを有する非化学両論的結晶が得られることが開示されている(7ページの1~7行目を参照)。
【0010】
リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)系、特にTCP/HAP系の成分は、その熱力学的安定性が異なる。この違いにより、CAP/HAP系を哺乳類、特にヒト患者に移植した場合、TCP及び他のリン酸カルシウムの体液への溶解度はHAPの溶解度よりも高くなる。リン酸カルシウムとHAPとの間の溶解度の差により、CAP/HAP系の不規則な焼結構造が破壊されるが、その理由は、溶解度の高い化合物であるCAP(例えば、TCP)がHAPよりも早く除去されるためである。また、高温で生成されるCAPとHAPとの焼結相互連結は、生理学的環境におけるデバイスの溶解度が高くなるのに大きく寄与する。化学的溶解及び細胞による生物学的再吸収という2つの異なる種類の反応が、このようなセラミックスのインビボにおける分解の加速を支配する。いずれのプロセスもセラミック材料を溶解させ、これが更にカルシウムイオンの局所的な過飽和を引き起こし、それによって、吸着されるカルシウムイオンよりも多くのカルシウムイオンが放出される。細胞外マトリクスでもインプラント周囲の組織でも、カルシウムイオンの天然の平衡はもはや存在しない。カルシウムイオンの過飽和の観点で天然のカルシウム平衡が局所的に乱れると、破骨細胞の活動が増加するので、特に合成骨代用材を大量に使用した場合にセラミック材料の制御不能な再吸収が加速され、そして、有害な炎症反応のリスクが生じる。
【0011】
骨代用材であるGeistlich Bio-Oss(登録商標)をヒト患者に移植した場合、天然のカルシウム平衡はほとんど影響を受けず、材料の表面上及びその局所環境内のカルシウムイオンの濃度はほぼ一定に保たれる。したがって、材料の生物学的吸収が起こらないか又は非常に緩徐な速度で進行するので、有害な炎症反応のリスクはない。
【0012】
欧州特許第2445543B1号には、非常に有利なリン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代用材であって、骨代用材Geistlich Bio-Oss(登録商標)と同様に、インビボで設置された後に材料の表面上及びその局所環境内のカルシウムイオンの濃度をほぼ一定に保つことができるので、破骨細胞の活動を増加させない骨代用材が開示されている。
【0013】
実際、最適な骨の再生に必要な天然のカルシウム平衡が乱れることも、破壊されることもない。更に、天然のカルシウム濃度の平衡は、再生プロセスが完了するまで骨代用材によって持続的に支持される。これら条件が満たされている場合、破骨細胞の活動が増加することはなく、したがって、有害な炎症反応のリスクも生じない。
【0014】
欧州特許第2445543B1号の発明は、焼結CAPコアと、該焼結CAPコア上に堆積したナノ結晶HAPの少なくとも1つの均一かつ閉鎖されたエピタキシャル成長層とを含む二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代用材であって、エピタキシャル成長したナノ結晶がヒトの骨塩と同じサイズ及び形態、すなわち、長さ30~46nm及び幅14~22nmを有する骨代用材に関する。
【0015】
焼結CAPコアは、リン酸三カルシウム(TCP)、特にα-TCP(α-Ca(PO)若しくはβ-TCP(β-Ca(PO)、及び/又はリン酸四カルシウム(TTCP)Ca(POOを含み得る。
【0016】
高頻度で使用される実施形態によれば、焼結CAPコアはTCPから本質的になり、α-TCPが好ましい。
【0017】
ナノ結晶HAPのエピタキシャル成長層は、構造的かつ化学的に天然のヒトの骨塩とほぼ同一である。
【0018】
ナノ結晶HAPのエピタキシャル成長層は、一般的に、少なくとも15~50nm、好ましくは少なくとも20~40nm、より好ましくは少なくとも25~35nmの厚さを有する。この最小厚さは、エピタキシャル配向のHAPナノ結晶の1層に相当する。
【0019】
ナノ結晶HAPのエピタキシャル成長層は、エピタキシャル配向の単層又は複数層のHAPナノ結晶を含み得る。このようなエピタキシャル配向のHAPナノ結晶の層の数に関連するナノ結晶HAPのエピタキシャル成長層の厚さは、身体の異なる負荷のかかる部分におけるインプラント又はプロテーゼとしての骨代用材の意図する用途に応じて選択される。その発明の骨代用材は、実際、焼結CAPコアがヒトの骨塩と同様のサイズ及び形態のヒドロキシアパタイトに徐々に変態する生体様の系としてインビボで機能するように設計されており、その変態の速度は、焼結CAPコアによるカルシウム放出の速度に依存し、この速度は、ナノ結晶HAPのエピタキシャル成長層の厚さによってかなりの程度制御される。
【0020】
CAP/HAP骨代用材の特性は、結晶性HAPのエピタキシャル成長層の厚さによってかなりの程度制御される。用語「特性」は、インビトロ及びインビボで一定濃度のカルシウムイオンを局所環境に放出するCAP/HAP骨代用材の能力を含む。
【0021】
ナノ結晶HAPのエピタキシャル成長層の厚さは、焼結CAPコア材のHAPに対する比に関連し、該比は、一般的に5:95~95:5、好ましくは10:90~90:10である。
【0022】
CAP/HAP骨代用材は、粒子状又は顆粒状であってよく、該粒子又は顆粒は所望のサイズ及び形状を有する。一般的に、該粒子又は顆粒はほぼ球形であり、そして、250~5000μmの直径を有する。
【0023】
また、CAP/HAP骨代用材は、成形体、例えば、ネジ、ネイル、ピン、又は特に臀部、鎖骨、肋骨、下顎骨、若しくは頭蓋骨の部分等の骨性の身体部位のプロファイルを有する構造であってもよい。このようなネジ、ネイル、又はピンは、例えば膝又は肘において靭帯を骨に固定するための再建整形外科手術で使用され得る。骨性の身体部分のプロファイルを有するこのような構造は、整形外科手術において、欠落又は欠損した骨又は骨片を交換するためのプロテーゼとして使用され得る。
【0024】
欧州特許第2445543B1号のCAP/HAP骨代用材は、
a)焼結CAPコア材を調製する工程と、
【0025】
b)該焼結CAPコア材を10℃~50℃の温度の水溶液に浸漬して、CAPからHAPへの変態プロセスを開始させ、それによって、該焼結CAPコア材の表面上にナノ結晶ヒドロキシアパタイトの均一かつ閉鎖されたエピタキシャル成長層が形成され、エピタキシャル成長したナノ結晶が、ヒトの骨塩と同じサイズ及び形態を有する工程と、
【0026】
c)少なくとも1層のHAPのナノ結晶層の均一かつ閉鎖されたコーティングが存在するが変態プロセスが完全に終了する前の時点で、該水溶液から固体材料を分離することによって変態を停止させる工程と、
d)任意で、工程c)でから得られた、分離された材料を滅菌する工程と
含むプロセスによって得られると教示されている。
【0027】
焼結CAPコア材の調製は、まずリン酸水素カルシウム(CaHPO)、炭酸カルシウム、及び/又は水酸化カルシウムの粉末を混合し、次いで、この混合物を適切な温度範囲内でか焼及び焼結し、それによって、バルク焼結CAPコア材を与えることを含む、当技術分野において公知の方法によって行うことができる(例えば、Mathew M. et al., 1977, Acta. Cryst. B33: 1325; Dickens B. et al., 1974, J. Solid State Chemistry 10, 232;及びDurucan C. et al., 2002, J. Mat. Sci., 37:963)。
【0028】
したがって、リン酸水素カルシウム(CaHPO)、炭酸カルシウム、及び/又は水酸化カルシウムの粉末を化学量論的比で混合し、その混合物を1200~1450℃の範囲、好ましくは約1400℃の温度でか焼及び焼結することによって、バルク焼結TCPコア材を得ることができる。
【0029】
また、上述のプロセスによって、バルク焼結TTCPコア材を得ることもできる。
【0030】
このような方法によって調製されたバルク焼結CAP材は、気孔率が2~80体積%であり、そして、気孔が広く分布している多孔質であってもよい。気孔率のパラメータは、CAP/HAP骨代用材の意図する用途に応じて選択される。
【0031】
工程b)で使用される焼結CAPコア材料は、
- 上記の通り調製されたバルク焼結CAPコア材、
【0032】
- 破砕、研削、及び/若しくは粉砕、並びに篩い分け等の従来の方法を用いることによって、上記の通り調製されたバルク焼結CAPコア材から得られる焼結CAPコア材の粒子若しくは顆粒、又は
- 所望の形状及びサイズを有する焼結CAPコア材のプリフォーム、例えば、ネジ、ネイル、ピン、若しくは骨性の身体部分のプロファイルを有する構造
であってよい。
【0033】
このような任意の所望の形状及びサイズのプリフォームは、CNCミリング又は3Dプリンティング等の周知のプロトタイピング技術を用いることによって、上記の通り調製したバルク焼結コア材から得ることができる(例えば、Bartolo P. et al., 2008, Bio-Materials and Prototyping Applications in Medicine, Springer Science New York, ISBN 978-0-387-47682-7; Landers R. et al., 2002, Biomaterials 23(23), 4437; Yeong W.-Y. et al., 2004, Trends in Biotechnology, 22 (12), 643;及びSeitz H. et al., 2005, Biomed.Mater. Res. 74B (2), 782を参照)。
【0034】
工程b)の水溶液は、純水、模擬体液、又はバッファであることが教示されている。重要なのは、工程b)の浸漬液のpH値がほぼ中性であり、そして、変態プロセス全体を通じて、好ましくは5.5~9.0のpH範囲内で安定していることである。
【0035】
用語「模擬体液」とは、体液を模した任意の溶液を指す。好ましくは、模擬体液は、血漿と同様のイオン濃度を有する。
【0036】
バッファは、上記のpH範囲の任意のバッファであってよいが、好ましくは、カルシウム、マグネシウム、及び/又はナトリウムを含むか又は含まないリン酸バッファである。
【0037】
実施例(実施例4及び5を参照)で使用したバッファは、水性リン酸バッファである。
【0038】
工程b)における温度範囲は、一般的に、10℃~50℃、好ましくは25℃~45℃、より好ましくは35℃~40℃である。
【0039】
浸漬工程b)は、第1の相において、CAPコア材の一次相転移を誘導し、ひいては、HAPナノ結晶前駆体の核形成を誘導する。第2の相の間、第1の相で得られたHAP前駆体が成長し、そして、閉鎖された(すなわち、完全に被覆している)エピタクティックなナノ結晶複合層を確立する。第1のHAPナノ結晶層は、均一かつ閉鎖されており、そして、焼結CAPコア材にエピタキシャルに連結されていなければならない。
【0040】
第3の相の間、新たに形成された二層複合材内で一次相転移が進行して、焼結CAPコア材(TCP又はTTCP)がナノ結晶HAPに更に変態し得る。この第3の工程の相転移の間、焼結CAPコア材の一部がナノ結晶HAPに変態するまで、拡散が制御された緩徐なプロセスによって制御可能な時間にわたってカルシウムイオンが放出される。HAP層の厚さ、ひいては、カルシウムの放出速度は、変態時間を変更することによって制御することができる。
【0041】
適切な厚さのエピタキシャル成長ナノ結晶HAP層をインビトロで調製し、CAPからHAPへの変態が完了する前に該変態を停止させる。
【0042】
CAP/HAP骨代用材をインビボで設置すると直ちに、体液との接触によりCAPからHAPへの変態プロセスが再活性化され、そして、骨代用材は、ヒトの骨塩に類似するサイズ及び形態の新規ヒドロキシアパタイトを形成する生体様の系として機能する。インビボでの相変態プロセスの間、輸送されたカルシウムイオンが局所環境に放出され、骨再生プロセスにとって重要かつ有益な局所カルシウム平衡を支援する。
【0043】
身体の負荷が異なる領域では骨欠損の再生時間が異なるので、カルシウムの放出速度を制御できることが重要である。これは、ヒドロキシアパタイトのエピタキシャル成長層の厚さを変化させることによって実現できる。
【0044】
したがって、工程c)が非常に重要な工程である。工程b)の水溶液中での曝露時間は、所望のHAP層の厚さに基づく。エピタキシャル配向のナノ結晶HAPが少なくとも1層必要である。CAPからHAPへの変態を完了させないことが必須である。
【0045】
所望の厚さに応じた適切な曝露時間は、リン酸カルシウム、セメント、及びコンクリート化学の分野の当業者に周知の幾つかの熱力学的微分方程式を用いることによって計算することができる。
【0046】
例えば、Pommersheim, J.C.; Clifton, J.R. (1979) Cem. Conc. Res.; 9:765; Pommersheim, J.C.; Clifton, J.R. (1982) Cem. Conc. Res.; 12:765;及びSchlussler, K.H. Mcedlov-Petrosjan, O.P.; (1990): Der Baustoff Beton, VEB Verlag Bauwesen, Berlinを参照。
【0047】
上述の微分方程式の解をCAP/HAP系に移行させることで、HAPのエピタクティックな層を安定かつ再現性よく調製することができるように、CAPからHAPへの相転移及び層の厚さを予測することが可能になる。
【0048】
通常、当技術分野で周知の技術を用いて濾過、洗浄、及び乾燥を行うことによって、工程c)の最後に水溶液から固体材料が分離される。
【0049】
欧州特許第2445543B1号の実施例(すなわち、実施例4[0057]及び実施例5[0058])では、分離した骨代用物の顆粒を精製水で3回洗浄して、緩衝溶液の残渣を除去することによって洗浄を行う。
【0050】
任意の滅菌工程d)は、ガンマ線照射又はX線照射等、当技術分野で周知の技術によって行うことができる。
【0051】
欧州特許第2445543B1号の実施例4及び5において教示されているように、工程b)の水溶液に水性リン酸バッファを、そして、工程c)の最後に分離された顆粒を3回洗浄するために精製水を用いると、焼結CAPコアと、該焼結CAPコアの外面上に堆積したナノ結晶HAPの閉鎖エピタキシャル成長層とを含み、それによって、エピタキシャル成長したナノ結晶がヒトの骨塩と同じサイズ及び形態を有する二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代用材であって、該焼結CAPコアの外面上に堆積したナノ結晶HAPの閉鎖エピタキシャル成長層が、エピタキシャル成長HAPナノ結晶からなる平坦な板状結晶(crystal platelets)の個々の(分離した)クラスタと、該平坦な板状結晶の個々のクラスタ間の平滑な領域とを含む不均質な外面を有し、該平坦な板状結晶の個々のクラスタ間の平滑な領域によって占められる外面の割合が、所与の変態条件における変態時間に依存する骨代用材が得られる。
【0052】
SEM(走査型電子顕微鏡)によって測定したときに平滑な領域が外面全体の約70%を占める、変態時間30分のプロトタイプ1(1~2mmの顆粒)のSEM写真を表す図1A、及びSEMによって測定したときに平滑な領域が外面全体の約50%を占める、変態時間40分のプロトタイプ2(1~2mmの顆粒)のSEM写真を表す図1Bを参照。
【0053】
国際公開公報第2015/009154号には、骨誘導能が改善された骨伝導性材を製造する方法であって、粒からなる表面トポグラフィーを有する焼結二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)材料を、出発材料の表面上のリン酸カルシウム粒を直径10~1500nmのリン酸カルシウムニードルに変化させるのに十分な期間にわたってpHを制御することなく125℃以上の温度で2~4barの圧力下において水熱処理に供することを含む方法が開示されている。少なくとも125℃の温度及び少なくとも2barの圧力は、HAPナノ結晶のエピタキシャル成長を可能にする欧州特許第2445543B1号で使用されている条件(温度35~40℃、pH5.5~9.0、常圧)とは大きく異なっている(人体の生理学的条件に近い)。これらニードルは、エピタキシャル成長するのではなくコア材に付着又は堆積し、そして、後者を部分的に(通常40~90%)しか被覆しないので、コア材の比表面積及びタンパク質を保持する能力が高まり、それによって、骨誘導能が増強される。
【0054】
国際公開公報第2019/115704号の発明者らは、欧州特許第2445543B1号に係る二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代用材の調製において工程b)の水性リン酸バッファにメタノール、エタノール、プロパノール、又はブタノールを含むがこれらに限定されない短鎖脂肪族アルコールを10~90%、好ましくは20~60%添加することによって、平坦な板状結晶の個々のクラスタとその間の平滑な領域とを含む、焼結CAPコア二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代用材の外面上に堆積したナノ結晶HAPの閉鎖エピタキシャル成長層の不均質な外面が、平坦な板状結晶の任意の個々の結晶クラスタのない平坦な板状結晶を含む均質な粗外面に置き換えられることを見出した。その均質な粗外面は、一般的に、使用される脂肪族アルコールの量に応じて、SEMによって測定したときの個々の板状晶のサイズが0.2~20μm、好ましくは0.5~5μmである板状晶のインターロック網目構造を形成する、エピタキシャル成長ナノ結晶ヒドロキシアパタイト板状晶を含む。
【0055】
胎児のヒト間葉系幹細胞(hMSC)の骨形成分化のインビトロ試験によって示されるように、インビボでの骨形成応答は、平坦な板状結晶を含む均質な粗外面を有する二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代用材の方が、平坦な板状結晶の個々のクラスタとその間の平滑な領域とを含む不均質な外面を有する欧州特許第2445543B1号によって教示されている二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代用材よりも強い可能性がある。
【0056】
したがって、国際公開公報第2019/115704号の発明は、焼結CAPコアと、該焼結CAPコアの外面上に堆積したナノ結晶HAPの閉鎖エピタキシャル成長層とを含み、それによって、エピタキシャル成長したナノ結晶が、ヒトの骨塩と同じサイズ及び形態を有する二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代用材であって、焼結CAPコアの外面上に堆積したナノ結晶HAPの閉鎖エピタキシャル成長層が、平坦な板状結晶を含む均質な粗外面を有する骨代用材に関する。
【0057】
該二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代用材は、胎児のヒト間葉系幹細胞(hMSC)の骨形成分化の増加を示し、これは、インビボでの骨形成応答増強の強い徴候である。
【0058】
用語「焼結CAPコアの外面上に堆積したナノ結晶HAPの閉鎖エピタキシャル成長層」とは、ナノ結晶HAPのエピタキシャル成長層が焼結CAPコアの外面全体を完全に覆っていることを意味する。
【0059】
用語「平坦な板状結晶を含む均質な粗外面」とは、巨視的には、平坦な板状結晶の個々の結晶クラスタがなく、平坦な板状結晶によって引き起こされる外面の粗さがCAPコアの表面上に統計的に均等に分布していることを意味する。様々な程度の粗さを有する均質な粗外面を有する本発明の二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代用材のプロトタイプ3~7のSEM写真を表す図2を参照。
【0060】
用語「平坦な板状結晶」とは、3つの垂直方向に関して、高さ(厚さ)が幅及び長さよりもかなり小さい結晶の集合体を意味する。図3Bでは、このような平坦な板状結晶がはっきりと見える。
【0061】
一般的に、均質な粗外面は、SEMによって測定したときのサイズ(幅及び長さ)が0.2~20μmである板状晶のインターロック網目構造を形成するエピタキシャル成長ナノ結晶ヒドロキシアパタイト板状晶を含む。板状晶のサイズが大きいほど、外面の粗さも大きくなる。
【0062】
好ましくは、均質な粗外面は、SEMによって測定したときのサイズが0.5~5μmである板状晶のインターロック網目構造を形成するエピタキシャル成長ナノ結晶ヒドロキシアパタイト板状晶を含む。
【0063】
通常、均質な粗外面は、水銀圧入ポロシメトリー(MIP)によって測定したときに0.03~2μmの気孔を含むインターロック網目構造を形成するエピタキシャル成長ヒドロキシアパタイト板状晶を含む。0.03~2μmの気孔体積が大きいほど、外面の粗さも大きくなる。
【0064】
一般的に、均質な粗外面は、AFM(原子間力顕微鏡)によって特徴付けることができ、AFM由来の自乗平均粗さ(R)は50~400nmの範囲であり、そして、プロファイルの平均最大高さ(R)は500~2000nmの範囲である。
【0065】
好ましくは、均質な粗外面は、110~150nmの範囲のAFM由来の自乗平均粗さ(R)及び550~750nmの範囲のプロファイルの平均最大高さ(R)によって特徴付けることもできる。
【0066】
一般的に、二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代用材中のHAPの割合は、XRDによって測定したときに1~90%である。
【0067】
好ましくは、その割合は、XRDによって測定したときに1.5~30%、より好ましくは2~15%である。
【0068】
焼結CAPコアは、リン酸三カルシウム(TCP)、特にα-TCP(α-Ca(PO)若しくはβ-TCP(β-Ca(PO)、及び/又はリン酸四カルシウム(TTCP)Ca(POOを含む。
【0069】
高頻度で使用される実施形態によれば、焼結CAPコアはTCPから本質的になり、α-TCPが好ましい。
【0070】
ナノ結晶HAPのエピタキシャル成長層は、構造的に天然のヒトの骨塩とほぼ同一である。
【0071】
CAP/HAP骨代用材は、粒子状又は顆粒状であってよく、該粒子又は顆粒は、所望のサイズ及び形状を有する。一般的に、該粒子又は顆粒は、250~5000μm、好ましくは1000~2000μmのサイズを有する。
【0072】
また、CAP/HAP骨代用材は、成形体、例えば、ネジ、ネイル、ピン、又は、特に臀部、鎖骨、肋骨、下顎骨、又は頭蓋骨の部分等の骨性の身体部位のプロファイルを有する構造であってもよい。このようなネジ、ネイル、又はピンは、例えば膝又は肘において靭帯を骨に固定するための再建整形外科手術で使用され得る。骨性の身体部分のプロファイルを有するこのような構造は、整形外科手術において、欠落又は欠損した骨又は骨片を交換するためのプロテーゼとして使用され得る。
【0073】
また、国際公開公報第2019/115704号の発明は、一般的に天然又は合成のポリマーを含む好適なマトリクス中に、上記で定義されたCAP/HAP骨代用物の粒子又は顆粒を含むパテに関する。一般的に、粒子又は顆粒は、250~5000μm、好ましくは1000~2000μmのサイズを有する。
【0074】
国際公開公報第2019/115704号の発明は、更に、
a)焼結CAPコア材を調製する工程と、
【0075】
b)該焼結CAPコア材を、10℃~50℃の温度の10~90% 短鎖脂肪族アルコールを含むバッファ溶液に浸漬して、CAPからHAPへの変態プロセスを開始させ、それによって、該焼結CAPコア材の表面上にナノ結晶ヒドロキシアパタイトの閉鎖エピタクティック成長層が形成され、それによって、エピタキシャル成長したナノ結晶が、ヒトの骨塩と同じサイズ及び形態を有する工程であって、該焼結CAPコア材の表面上に形成されたナノ結晶HAPの閉鎖エピタキシャル成長層が、平坦な板状結晶を含む均質な外面を有する工程と、
【0076】
c)少なくとも1層のHAPのナノ結晶層の閉鎖コーティングが存在するが変態プロセスが完全に終了する前の時点で、該水溶液から固体材料を分離することによって該変態を停止させる工程と、
d)任意で、工程c)から得られた、分離された材料を滅菌する工程と
を含む、上記で定義されたCAP/HAP骨代用材を調製するプロセスに関する。
【0077】
好適な短鎖脂肪族アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、及びブタノールからなる群から選択することができる。
好ましくは、短鎖脂肪族アルコールは、エタノールである。
【0078】
好ましくは、工程b)のバッファ溶液は、20~60%、より好ましくは30~50% 短鎖脂肪族アルコールを含有する。
【0079】
焼結CAPコアの外面上に堆積したナノ結晶HAPの閉鎖エピタキシャル成長層の均質な粗外面の粗さパラメータ、特に
- AFMパラメータ:AFM由来の自乗平均粗さ(R)及びプロファイルの平均最大高さ(R)、
- SEMによって測定したときのエピタキシャル成長ナノ結晶ヒドロキシアパタイト板状晶のサイズ、並びに
- MIPによって測定したときの0.03~2μmの気孔の体積
は、変態溶液のバッファ溶液液中の短鎖脂肪族アルコールの割合を変更することによって簡便に調整することができる。
【0080】
該割合が高いほど、AFM由来の自乗平均粗さ(R)及びプロファイルの平均最大高さ(R)が小さくなり、SEMによって測定したときのエピタキシャル成長ナノ結晶ヒドロキシアパタイト板状晶のサイズが小さくなり、そして、MIPによって測定したときの0.03~2μmの気孔の体積が小さくなる。
【0081】
10~90% 短鎖脂肪族アルコールを含有する工程b)のバッファ溶液は、水性バッファ溶液を様々な量の短鎖脂肪族アルコールと混合することによって得られる。水性バッファ溶液は、10~90% 短鎖脂肪族アルコールを更に含む工程b)の浸漬溶液のpH値がほぼ中性であり、そして、変態プロセス全体を通して安定している、好ましくは5.5~9.0、より好ましくは7.0~8.0のpH範囲内であるように選択される。
【0082】
バッファは、上記のpH範囲の任意のバッファであってよいが、好ましくは、カルシウム、マグネシウム、及び/又はナトリウムを含むか又は含まないリン酸バッファである。
【0083】
好適なバッファ溶液は、例えば、pH値が7.3~7.6である、0.05~0.3M リン酸二水素ナトリウム(NaHPO)水溶液である。
【0084】
工程b)における温度範囲は、一般的に、10℃~50℃、好ましくは25℃~45℃、より好ましくは35℃~40℃である。
【0085】
好ましくは、工程b)は、20~60% 短鎖脂肪族アルコールを含有するpH7.0~8.0のリン酸緩衝液中において35~40℃の温度で実施される。
【0086】
焼結CAPコア材の調製は、まずリン酸水素カルシウム(CaHPO)、炭酸カルシウム、及び/又は水酸化カルシウムの粉末を混合し、次いで、この混合物を適切な温度範囲内でか焼及び焼結し、それによって、バルク焼結CAPコア材を与えることを含む、当技術分野において公知の方法によって行うことができる(例えば、Mathew M. et al., 1977, Acta.Cryst.B33:1325; Dickens B. et al., 1974, J. Solid State Chemistry 10, 232;及びDurucan C. et al., 2002, J. Mat.Sci., 37:963を参照)。
【0087】
したがって、リン酸水素カルシウム(CaHPO)、炭酸カルシウム、及び/又は水酸化カルシウムの粉末を化学量論的比率で混合し、その混合物を1200~1450℃の範囲、好ましくは約1400℃の温度でか焼及び焼結することによって、バルク焼結TCPコア材を得ることができる。
【0088】
また、上述のプロセスによって、バルク焼結TTCPコア材を得ることもできる。
【0089】
このような方法によって調製されたバルク焼結CAP材は、気孔率が2~80体積%であり、そして、気孔が広く分布している多孔質であってもよい。気孔率のパラメータは、CAP/HAP骨代用材の意図する用途に応じて選択される。
【0090】
工程b)で使用される焼結CAPコア材料は、
- 上記の通り調製されたバルク焼結CAPコア材、
【0091】
- 破砕、研削、及び/若しくは粉砕、並びに篩い分け等の従来の方法を用いることによって、上記の通り調製されたバルク焼結CAPコア材から得られる焼結CAPコア材の粒子若しくは顆粒、又は
- 所望の形状及びサイズを有する焼結CAPコア材のプリフォーム、例えば、ネジ、ネイル、ピン、若しくは骨性の身体部分のプロファイルを有する構造
であってよい。
【0092】
このような所望の形状及びサイズのプリフォームは、CNCミリング又は3Dプリンティング等の周知のプロトタイピング技術を用いることによって、上記の通り調製したバルク焼結コア材から得ることができる(例えば、Bartolo P. et al., 2008, Bio-Materials and Prototyping Applications in Medicine, Springer Science New York, ISBN 978-0-387-47682-7; Landers R. et al., 2002, Biomaterials 23(23), 4437; Yeong W.-Y. et al., 2004, Trends in Biotechnology, 22 (12), 643;及びSeitz H. et al., 2005, Biomed. Mater. Res.74B (2), 782を参照)。
【0093】
浸漬工程b)は、第1の相において、CAPコア材の一次相転移を誘導し、ひいては、HAPナノ結晶前駆体の核形成を誘導する。第2の相の間、第1の相で得られたHAP前駆体が成長し、そして、閉鎖された(すなわち、完全に被覆している)エピタクティックなナノ結晶複合層を確立する。第1のHAPナノ結晶層は、均一かつ閉鎖されており、そして、焼結CAPコア材にエピタキシャルに連結されていなければならない。
【0094】
第3の相の間、新たに形成された二層複合材内で一次相転移が進行して、焼結CAPコア材(TCP又はTTCP)がナノ結晶HAPに更に変態し得る。この第3の工程の相転移の間、焼結CAPコア材の一部がナノ結晶HAPに変態するまで、拡散が制御された緩徐なプロセスによって制御可能な時間にわたってカルシウムイオンが放出される。HAP層の厚さ、ひいては、カルシウムの放出速度は、変態時間を変更することによって制御することができる。
【0095】
適切な厚さのエピタキシャル成長ナノ結晶HAP層をインビトロで調製し、CAPからHAPへの変態が完了する前に該変態を停止させる。
【0096】
CAP/HAP骨代用材をインビボで設置すると直ちに、体液との接触によりCAPからHAPへの変態プロセスが再活性化され、そして、骨代用材は、ヒトの骨塩に類似するサイズ及び形態の新規ヒドロキシアパタイトを形成する生体様の系として機能する。インビボでの相変態プロセスの間、輸送されたカルシウムイオンが局所環境に放出され、骨再生プロセスにとって重要かつ有益な局所カルシウム平衡を支援する。
【0097】
身体の負荷が異なる領域では骨欠損の再生時間が異なるので、カルシウムの放出速度を制御できることが重要である。これは、ヒドロキシアパタイトのエピタキシャル成長層の厚さを変化させることによって実現できる。
【0098】
したがって、工程c)が非常に重要な工程である。工程b)の水溶液中での曝露時間は、所望のHAP層の厚さに基づく。エピタキシャル配向のナノ結晶HAPが少なくとも1層必要である。CAPからHAPへの変態を完了させないことが必須である。
【0099】
所望の厚さに応じた適切な曝露時間は、リン酸カルシウム、及びセメント、及びコンクリート化学の分野の当業者に周知の幾つかの熱力学的微分方程式を用いることによって計算することができる。
【0100】
例えば、Pommersheim, J.C.; Clifton, J.R. (1979) Cem. Conc. Res.; 9:765; Pommersheim, J.C.; Clifton, J.R. (1982) Cem. Conc. Res.; 12:765;及びSchlussler, K.H. Mcedlov-Petrosjan, O.P.; (1990): Der Baustoff Beton, VEB Verlag Bauwesen, Berlinを参照。
【0101】
上述の微分方程式の解をCAP/HAP系に移行させることで、HAPのエピタクティックな層を安定かつ再現性よく調製することができるように、CAPからHAPへの相転移及び層の厚さを予測することが可能になる。
【0102】
通常、当技術分野で周知の技術を用いて濾過及び乾燥を行うことによって、水溶液から固体材料が分離される。
【0103】
任意の滅菌工程d)は、ガンマ線照射又はX線照射等、当技術分野で周知の技術によって行うことができる。
【0104】
国際公開公報第2019/115704号の発明のCAP/HAP骨代用材及びその調製プロセスの利点。
【0105】
平坦な板状結晶を含む均質な粗外面を有するその発明の二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代用材は、平坦な板状結晶の個々のクラスタとその間の平滑な領域とを含む不均質な外面を有する欧州特許第2445543B1号によって教示されている二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代用材と比較して、胎児のヒト間葉系幹細胞(hMSC)の骨形成分化の増加、特に、分化マーカーであるオステオポンチン(OPN)及びオステオカルシン(OCN)の高発現を示す。これは、インビボでの骨形成応答増強の強い徴候である。
【0106】
これは、ナノスケールの構造をマイクロサブマイクロスケールの粗度と組み合わせて導入することで、破骨細胞の分化及び局所因子の産生が改善されることを示し、言い換えると、インビボにおけるインプラントのオッセオインテグレーションが改善される可能性を示す、R.A. Gittens et al. in Biomaterials 2011 May, 32(13): 3395-3403によって公開されている結果と一致する。
【0107】
変態溶液のバッファ溶液液中の短鎖脂肪族アルコールの割合を調整することによって、その発明の二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代用材の調製プロセスは、焼結CAPコアの外面上に堆積したナノ結晶HAPの閉鎖エピタキシャル成長層の均質な粗外面の粗さパラメータ、特に
- AFMパラメータ:AFM由来の自乗平均粗さ(R)及びプロファイルの平均最大高さ(R)、
- SEMによって測定したときのエピタキシャル成長ナノ結晶ヒドロキシアパタイト板状晶のサイズ、並びに
- MIPによって測定したときの0.03~2μmの気孔の体積
を簡便に調整することができる。
【0108】
該割合が高いほど、AFM由来の自乗平均粗さ(R)及びプロファイルの平均最大高さ(R)が小さくなり、SEMによって測定したときのエピタキシャル成長ナノ結晶ヒドロキシアパタイト板状晶のサイズが小さくなり、そして、MIPによって測定したときの0.03~2μmの気孔の体積が小さくなる。
【発明の概要】
【0109】
上述の通り、国際公開公報第2019/115704号には、一般的に天然又は合成のポリマーを含む好適なマトリクス中に、上記で定義されたCAP/HAP骨代用物の粒子又は顆粒を含むパテ材料が開示されている。一般的に、粒子又は顆粒は、250~5000μm、好ましくは1000~2000μmのサイズを有する。パテマトリクスについては、具体的な合成ポリマーも天然ポリマーも教示されていない。
【0110】
この国際出願では、CAP/HAP骨代用物のいずれのストリップ、いずれのプラグ、又はいずれの顆粒ブレンドについても言及されていない。
【0111】
出願人は、コラーゲンマトリクス中に上記で定義されたCAP/HAP骨代用材の粒子又は顆粒を含む、好適な取り扱い特性を有するパテを調製する方法を見出し、そして、このようなパテをウサギの脊椎後側方固定(PLF)モデルにおいて試験した。
【0112】
本件出願人は、コラーゲンマトリクス中のCAP/HAP骨代用材のストリップ及びプラグ、並びにCAP/HAP骨代用材の新規の顆粒ブレンドを調製する方法も見出した。
【0113】
したがって、本発明は、焼結CAPコアと、該焼結CAPコアの外面上に堆積したナノ結晶HAPの閉鎖エピタキシャル成長層とを含み、それによって、エピタキシャル成長したナノ結晶がヒトの骨塩と同じサイズ及び形態を有する二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代用材の粒子を含むコラーゲンマトリクスであって、該焼結CAPコアの外面上に堆積したナノ結晶HAPの閉鎖エピタキシャル成長層が平坦な板状結晶を含む均質な粗外面を有する、コラーゲンマトリクスに関する。
【0114】
コラーゲンマトリクスは、特にパテ、ストリップ又はプラグの材料を形成するために有用である。
【0115】
コラーゲンは、通常pH2~5の酸性溶液によって処理された天然に架橋されたコラーゲンであってよい。このような処理は、均質なスラリーを得るためにコラーゲンを湿式粉砕するのに有用であり、該スラリーは、次いで、通常pH2~5の酸環境又は通常pH11~13のアルカリ性環境でCAP/HAP骨代用材の粒子と混合することができる。上記手順により、パテに必要な成形性及び凝集性の特徴をコラーゲンマトリクスに与えることができる。
【0116】
高度なネイティブ性を有する好適な天然に架橋されたコラーゲンは、米国特許第5,837,278号に記載されている。このようなコラーゲンは、Geistlich Bio-Gide(登録商標)(Geistlich Pharma AG, Switzerland)という名称で市販されている。
【0117】
また、コラーゲンは、ネイティブの天然に架橋されたコラーゲンをトリプシン又はペプシン等のタンパク質分解酵素で酵素消化することによって得られるアテロペプチドコラーゲンであってもよい。
【0118】
コラーゲンマトリクスをストリップ又はプラグとして使用する場合、コラーゲンは、一般的に、脱水熱処理(DHT)を用いる物理的な架橋によって、あるいは例えばEDC/NHS等の化学的架橋によって硬化している天然に架橋されたコラーゲンである。
【0119】
一般的に、コラーゲンマトリクスは、60~97w/w% 骨代用材及び3~40w/w% コラーゲン、好ましくは75~85w/w% 骨代用材及び15~25w/w% コラーゲンを含む。
【0120】
国際公開公報第2019/115704号で教示されている通り、上記で定義された二相性CAP/HAP骨代用材は、骨形成を促進する優れた能力を示す。
【0121】
一般的に、均質な粗外面は、SEMによって測定したときのサイズ(幅及び長さ)が0.2~20μmである板状晶のインターロック網目構造を形成するエピタキシャル成長ナノ結晶ヒドロキシアパタイト板状晶を含む。板状晶のサイズが大きいほど、外面の粗さも大きくなる。
【0122】
好ましくは、均質な粗外面は、SEMによって測定したときのサイズが0.5~5μmである板状晶のインターロック網目構造を形成するエピタキシャル成長ナノ結晶ヒドロキシアパタイト板状晶を含む。
【0123】
通常、均質な粗外面は、水銀圧入ポロシメトリー(MIP)によって測定したときに0.03~2μmの気孔を含むインターロック網目構造を形成する、エピタキシャル成長ヒドロキシアパタイト板状晶を含む。0.03~2μmの気孔体積が大きいほど、外面の粗さも大きくなる。
【0124】
一般的に、均質な粗外面は、AFM(原子間力顕微鏡)によって特徴付けることができ、AFM由来の自乗平均粗さ(R)は50~400nmの範囲であり、そして、プロファイルの平均最大高さ(R)は500~2000nmの範囲である。
【0125】
好ましくは、均質な粗外面は、110~150nmの範囲のAFM由来の自乗平均粗さ(R)及び550~750nmの範囲のプロファイルの平均最大高さ(R)によって特徴付けることもできる。
【0126】
好ましくは、HAPの割合は、XRDによって測定したときに1.0~10.0%又は2.0~5.0%である。
【0127】
焼結CAPコアは、リン酸三カルシウム(TCP)、特にα-TCP(α-Ca(PO)若しくはβ-TCP(β-Ca(PO)、及び/又はリン酸四カルシウム(TTCP)Ca(POOを含む。
【0128】
高頻度で使用される実施形態によれば、焼結CAPコアはTCPから本質的になり、α-TCPが好ましい。
【0129】
ナノ結晶HAPのエピタキシャル成長層は、構造的に天然のヒトの骨塩とほぼ同一である。
【0130】
CAP/HAP骨代用材は、粒子状又は顆粒状であってよく、該粒子又は顆粒は、所望のサイズ及び形状を有する。一般的に、該粒子又は顆粒は、250~5000μm、好ましくは500~2000μmのサイズを有する。
【0131】
上記コラーゲンマトリクスは、迅速に再吸収可能であり、それによって新たな骨の形成を促進する、HAP含有量の少ない(最大で6.0%)国際公開公報第2019/115704号に係る上記二相性CAP/HAP骨代用材の粒子と、緩徐に再吸収可能である、HAP含有量の多い(少なくとも10.0%)欧州特許第2445543B1号に係る二相性CAP/HAP骨代用材の粒子、又は骨伝導効果を有する、緩徐に再吸収可能である天然骨由来の材料の粒子との混合物を含んでいてよい。
【0132】
天然骨に由来する周知の緩徐に再吸収可能な材料は、米国特許第5,167,961号に記載の方法によって天然骨から製造され、天然骨の元の結晶構造及び鉱物微細構造を実質的に保持すると同時に、有機不純物の含有量が150ppm未満であり、そして、タンパク質の含有量が135ppm未満である骨塩を与えるGeistlich Bio-Oss(登録商標)である。
【0133】
したがって、本発明は、
【0134】
- 焼結CAPコアと、該焼結CAPコアの外面上に堆積したナノ結晶HAPの閉鎖エピタキシャル成長層とを含み、それによって、エピタキシャル成長したナノ結晶がヒトの骨塩と同じサイズ及び形態を有する二相性(CAP/HAP)骨代用材の粒子(A)であって、該焼結CAPコアの外面上に堆積したナノ結晶HAPの閉鎖エピタキシャル成長層が、平坦な板状結晶を含む均質な粗外面を有し、XRDによって測定したときのHAPの割合が2.0~6.0%である、粒子(A)と、
- 以下からなる群から選択される骨代用材の粒子(B):
【0135】
- 焼結CAPコアと、該焼結CAPコアの外面上に堆積したナノ結晶HAPの少なくとも1つの閉鎖エピタキシャル成長層とを含み、それによって、エピタキシャル成長したナノ結晶がヒトの骨塩と同じサイズ及び形態を有し、XRDによって測定したときのHAPの割合が10~40%である二相性CAP/HAP骨代用材、又は
【0136】
- 天然骨に由来し、そして、天然骨の元の結晶構造及び鉱物微細構造を実質的に保持すると同時に、150ppm未満の有機不純物の含有量及び135ppm未満のタンパク質の含有量を有する骨塩
を含むコラーゲンマトリクスに関する。
【0137】
好ましくは、コラーゲンマトリクスを脊椎後側方固定術(PLF)のためのパテ材として使用する場合:
- XRDによって測定したときのHAPの割合は、CAP/HAP骨代用材の粒子(A)中2.0~6.0%であり、かつ
【0138】
- 骨代用材の粒子(B)は、焼結CAPコアと、該焼結CAPコアの外面上に堆積したナノ結晶HAPの少なくとも1つの閉鎖エピタキシャル成長層とを含み、それによって、エピタキシャル成長したナノ結晶がヒトの骨塩と同じサイズ及び形態を有し、XRDによって測定したときのHAPの割合が30~40%である二相性CAP/HAP骨代用材の粒子である。
【0139】
通常、コラーゲンマトリクスを口腔プラグ材料として使用する場合:
- XRDによって測定したときのHAPの割合は、CAP/HAP骨代用材の粒子(A)中2.0~6.0%であり、かつ
【0140】
- 骨代用材の粒子(B)は、天然骨に由来し、そして、天然骨の元の結晶構造及び鉱物微細構造を実質的に保持すると同時に、150ppm未満の有機不純物の含有量及び135ppm未満のタンパク質の含有量を有する骨塩の粒子である。
【0141】
一般的に、CAP/HAP骨代用材の粒子(A)の骨代用材の粒子(B)に対するw/w比は0.1~9.9である。
【0142】
好ましくは、コラーゲンマトリクスをPLFのためのパテ材として使用する場合、CAP/HAP骨代用材の粒子(A)の骨代用材の粒子(B)に対するw/w比は0.4~1.0である。
【0143】
好ましくは、コラーゲンマトリクスを口腔プラグ材料として使用する場合、CAP/HAP骨代用材の粒子(A)の骨代用材の粒子(B)に対するw/w比は0.8~4である。
【0144】
一般的に、コラーゲンマトリクスは、例えばコラーゲンスラリーを生成するために、ネイティブの天然に架橋されたコラーゲンのコラーゲン繊維をpH2~5の酸性溶液又はpH11~13の塩基性溶液に分散させることと、該コラーゲンスラリーを上記の二相性CAP/HAP骨代用材と混合することと、ホモジナイズ化することと、を含むプロセスによって調製される。
【0145】
次いで、通常、コラーゲン-CAP/HAPスラリーを凍結乾燥させ、そして、ガンマ線照射若しくはX線照射、又はエチレンオキシド処理によって滅菌する。
【0146】
移植前に、凍結乾燥及び滅菌されたパテは、一般的に、血液又は等張食塩水で再水和される。
【0147】
本発明は、また、パテ材として使用するための上記コラーゲンマトリクスの調製プロセスであって、例えばコラーゲンスラリーを生成するために、ネイティブの天然に架橋されたコラーゲンのコラーゲン繊維をpH2~5の酸性溶液に分散させることと、例えばコラーゲン-CAP/HAPスラリーを生成するために、該コラーゲンスラリーを上記二相性CAP/HAP骨代用材の粒子と混合し、そして、ホモジナイズすることと、該スラリーを凍結乾燥させ、そして、ガンマ線若しくはX線の照射又はエチレンオキシド処理によって滅菌することと、を含むプロセスに関する。
【0148】
好ましくは、酸性コラーゲンスラリーを、コロイドミル、ブレンダーミル、又はカッターミルで湿式粉砕する。
【0149】
本発明は、また、特に、迅速に再吸収可能であり、それによって新たな骨の形成を促進する、HAP含有量の少ない(最大で6.0%)国際公開公報第2019/115704号に係る上記二相性CAP/HAP骨代用材の粒子と、緩徐に再吸収可能である、HAP含有量の多い(少なくとも10.0%)欧州特許第2445543B1号に係る二相性CAP/HAP骨代用材の粒子、又は骨伝導効果を有する、緩徐に再吸収可能である天然骨由来の材料の粒子との混合物である、骨代用材に使用するための顆粒ブレンドに関する。
【0150】
天然骨に由来する周知の緩徐に再吸収可能な材料は、米国特許第5,167,961号に記載の方法によって天然骨から製造され、天然骨の元の結晶構造及び鉱物微細構造を実質的に保持すると同時に、有機不純物の含有量が150ppm未満であり、そして、タンパク質の含有量が135ppm未満である骨塩を与えるGeistlich Bio-Oss(登録商標)である。
【0151】
したがって、本発明は、
【0152】
- 焼結CAPコアと、該焼結CAPコアの外面上に堆積したナノ結晶HAPの閉鎖エピタキシャル成長層とを含み、それによって、エピタキシャル成長したナノ結晶がヒトの骨塩と同じサイズ及び形態を有する二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代用材の粒子であって、該焼結CAPコアの外面上に堆積したナノ結晶HAPの閉鎖エピタキシャル成長層が平坦な板状結晶を含む均質な粗外面を有し、XRDによって測定したときのHAPの割合が2.0~6.0%である、粒子と、
- 以下からなる群から選択される骨代用材の粒子(B):
【0153】
- 焼結CAPコアと、該焼結CAPコアの外面上に堆積したナノ結晶HAPの少なくとも1つの閉鎖エピタキシャル成長層とを含み、それによって、エピタキシャル成長したナノ結晶がヒトの骨塩と同じサイズ及び形態を有し、XRDによって測定したときのHAPの割合が10~40%である二相性CAP/HAP骨代用材、又は
【0154】
- 天然骨に由来し、そして、天然骨の元の結晶構造及び鉱物微細構造を実質的に保持すると同時に、150ppm未満の有機不純物の含有量及び135ppm未満のタンパク質の含有量を有する骨塩
と、を含む顆粒ブレンドに関する。
【0155】
好ましくは、この顆粒ブレンドでは、
- XRDによって測定したときのHAPの割合は、CAP/HAP骨代用材の粒子(A)中2.0~6.0%であり、かつ
【0156】
- 骨代用材の粒子(B)は、焼結CAPコアと、該焼結CAPコアの外面上に堆積したナノ結晶HAPの少なくとも1つの閉鎖エピタキシャル成長層とを含み、それによって、エピタキシャル成長したナノ結晶がヒトの骨塩と同じサイズ及び形態を有し、XRDによって測定したときのHAPの割合が30~40%である二相性CAP/HAP骨代用材の粒子である。
【0157】
一般的に、CAP/HAP骨代用材の粒子(A)の骨代用材の粒子(B)に対するw/w比は0.1~9.9である。
【発明を実施するための形態】
【0158】
以下、本発明の好ましい実施形態の例示的な例及び添付図面を参照して、本発明を更に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0159】
図1A図1Aは、SEMによって測定したときに平滑な領域が外面全体の約70%を占める、欧州特許第2445543B1号によって開示され、そして、変態時間30分の実施例1で調製された骨代用材のプロトタイプ1(1~2mmの顆粒)のSEM写真を表す。
図1B図1Bは、SEMによって測定したときに平滑な領域が外面全体の約50%を占める、変態時間40分の欧州特許第2445543B1号によって開示され、そして、実施例1で調製された骨代用材のプロトタイプ2(1~2mmの顆粒)のSEM写真を表す。
図2図2A~2Eは、本発明に係る骨代用材のプロトタイプ3(図2A):20%エタノール、1~2mmの顆粒)、プロトタイプ4(図2B):30%エタノール、1~2mmの顆粒)、プロトタイプ5(図2C):40%エタノール、1~2mmの顆粒)、プロトタイプ6(図2D):50%エタノール、1~2mmの顆粒)、及びプロトタイプ7(図2E):60%エタノール、1~2mmの顆粒)のSEM写真を表す。図1及び図2A~2EのSEM写真は全て、倍率3500倍である。
図3A図3Aは、低倍率(1000×)におけるプロトタイプ5(40%エタノール、1~2mmの顆粒)の断面のSEM写真を表す。右下の角が顆粒の外面を示し、そして、左上の角に向かって顆粒の中心が位置する。
図3B図3Bは、より高倍率(14,000×)におけるプロトタイプ5(40%エタノール、1~2mmの顆粒)の断面のSEM写真を表す。
図4図4は、実施例2で調製した本発明に係る骨代用材の非多孔質ディスクのプロトタイプ3a(左:20%エタノール)及び6a(右:50%エタノール)のSEM写真(上の2枚の写真)及びAFM写真(他の4枚の写真)を表す。
図5図5A~5Bは、インビトロ試験において先行技術の骨代用材と比較して、本発明に係る骨代用材に接触している胎児のヒト間葉系幹細胞(hMSC)のオステオカルシン(OCN、図5A)及びオステオポンチン(OPN、図5B)の応答を表す。
図6図6は、実施例2で調製した本発明に係る骨代用材の1~2mmの顆粒のプロトタイプ3(20%エタノール)、5(40%エタノール)、及び7(60%エタノール)の1~2mmの顆粒と、実施例1に記載の通り生成した純粋なα-TCPとのMIP図を表す。
図7図7は、実施例6 3)で調製した本発明に係るコラーゲンマトリクスパテプロトタイプを移植した12週間後のウサギの脊椎のX線写真を表す。
図8図8は、移植の12週間後に、実施例6 3)で調製した本発明に係るコラーゲンマトリクスパテプロトタイプを移植したウサギにおけるPLF手技の樹脂組織学的蛍光顕微鏡写真を表す。
【0160】
以下の実施例は、本発明を例証するものであって、その範囲を限定するものではない。
【0161】
実施例1 欧州特許第2445543B1号に係る二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代用材の調製。
【0162】
α-TCPのバルク焼結材、粒径1.0~2.0mmのその多孔質顆粒、及びエピタキシャル成長したHAPコーティングを有する変態した顆粒を、欧州特許第2445543B1号の実施例1、2、及び4と同様に調製した。
【0163】
無水リン酸二カルシウム粉末 364g、炭酸カルシウム粉末 136g、及び脱イオン水 220mLを、実験室用スターラーを用いて700rpmで5分間混合した。混合プロセスから得られたスラリーを、直ちに高温安定性の白金製カップに移した。充填された白金製カップを低温炉に入れた。100℃/時の加熱速度を用いることによって炉を1400℃まで加熱した。この温度を12時間維持し、その後、500℃/時の冷却速度で800℃まで炉を冷却し、次いで、125℃/時の冷却速度で300℃まで冷却し、そして、最後に炉を切り替えることによって室温まで冷却した。バルク焼結材(相純度の高いα-Ca(PO)を炉及び白金製カップから取り出した。粉末X線回折分析を用いて、相純度を制御した。
【0164】
このバルク生成物を、ジョークラッシャーを用いることによって破砕した(ジョーの距離は10~1mmで変動)。生成された顆粒を、篩い分け機及びメッシュの目開きが2mm及び1mmである篩いインサートを用いることによって篩い分けた。篩い分けの後、顆粒に吸着している微粉末残渣を分離するために、顆粒をエタノールですすいだ。多孔質顆粒をキャビネットドライヤーにおいて80℃で1時間乾燥させた。走査型電子顕微鏡を用いる表面観察によって、すすぎ後の粒子表面の清浄度を制御した。
【0165】
0.4mol/L リン酸二水素ナトリウム(NaHPO)を蒸留水に溶解させることによって、コーティング及び相変態プロセスに適した緩衝溶液を調製した。水酸化ナトリウム(NaOH)を用いることによって室温で溶液のpHを7.45に調整した。前述の段落に従って生成した顆粒を、調製した溶液に浸漬し、そして、適正に調質された(well-tempered)水浴(40℃)内でそれぞれ30分間(プロトタイプ1)、40分間(プロトタイプ2)保存した。浸漬後、顆粒を蒸留水で3回すすいで相変態プロセスを停止させ、そして、緩衝溶液から残渣を除去した。多孔質顆粒をキャビネットドライヤーにおいて100℃で2時間乾燥させた。
【0166】
プロトタイプ1及びプロトタイプ2の顆粒に対して、倍率3500倍でSEMを行った。
【0167】
プロトタイプ1及び2のSEM写真を表す図1A及び1Bから明らかである通り、顆粒の外面は不均質であり、エピタクティック成長したHAPナノ結晶からなる平坦な板状結晶の個々の(分離した)クラスタと、結晶と結晶との間の平滑な部分とを含む。
【0168】
プロトタイプ1及びプロトタイプ2のそれぞれについてSEM写真上で個々のクラスタ及び平滑な領域が占める表面を測定することによって、平滑な領域がプロトタイプ1では外面の約70%、そして、プロトタイプ2では約50%であると判定された。
【0169】
実施例2 国際公開公報第2019/115704号の発明に係る二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代用材の調製。
【0170】
1)骨代用材の顆粒の調製
上記実施例1に記載の通り、相純度の高いα-TCPの1~2mmのサイズの多孔質顆粒を生成した。
【0171】
相変態及びコーティングの工程は、40℃に設定した水浴に入れたガラス製フラスコにおいて行った。変態バッファは、異なる比率のエタノールを混合したリン酸二水素ナトリウム(NaHPO)の水溶液であった。リン酸二水素ナトリウムの水溶液のモル濃度は0.05M~0.3M、そして、エタノールの含有量は20~60w/w%で変動させた。変態溶液のpHは、7.3~7.6であった。
【0172】
ガラス製フラスコに変態バッファを充填し、そして、α-TCP顆粒を1:40~1:80の(顆粒の変態溶液に対する)比で添加した。顆粒を40℃の変態溶液に24~72時間浸漬した。浸漬後、顆粒を脱イオン水(顆粒の水に対する比は重量に関して1:10である)で5回、そして、エタノール(99.9%、顆粒のエタノールに対する比は重量に関して1:10である)で2回すすいで相変態プロセスを停止させ、そして、緩衝溶液から残渣を除去した。多孔質顆粒をキャビネットドライヤーにおいて100℃で2時間乾燥させた。
【0173】
コーティング及び相変態プロセス後の表面形態を、SEMを用いて観察した。
【0174】
図2は、本発明に係る骨代用材のプロトタイプ3(20%エタノール)、プロトタイプ4(30%エタノール)、プロトタイプ5(40%エタノール)、プロトタイプ6(50%エタノール)、及びプロトタイプ7(60%エタノール)の倍率3500倍のSEM写真を表す。図1A及び図1B図2と比較することによって、平坦な板状結晶の個々のクラスタとその間の平滑な領域とを有するプロトタイプ1及び2の不均質な外面が、任意の個々の結晶クラスタのない均質な粗外面に置き換えられていることが分かる。均質な粗外面は、エピタキシャル成長ヒドロキシアパタイト板状晶のインターロック網目構造で構築されている。SEM分析によって観察される通り、変態溶液中のエタノール含有量を増加させることによって個々の板状晶のサイズが減少し、したがって外面の粗さ又は粗度が減少する。
【0175】
図3Aは、低倍率(1000×)におけるプロトタイプ5(40%エタノール、1~2mmの顆粒)の断面のSEM写真を表す。右下の角が顆粒の外面を示し、そして、左上の角に向かって顆粒の中心が位置する。
【0176】
図3Bは、高倍率(14,000×)におけるプロトタイプ5(40%エタノール、1~2mmの顆粒)の断面のSEM写真を表し、ここでは、粗面の構成要素である個々の平坦な板状結晶をはっきりと見ることができる。顆粒の中心における粗外面と顆粒の外面上の粗外面との間に差はない。
【0177】
水銀圧入ポロシメトリー(MIP)による気孔径分布の決定
【0178】
水銀圧入ポロシメトリー(MIP)を用いて、顆粒の気孔径分布を求めた。MIPは、多孔質材料の気孔径分布を求めるために使用される標準的な特性評価技術である。この技術は当技術分野において周知であり、例えば、Gregg, S. J. and Sing, K.S.W., Adsorption, Surface Area and Porosity, 2nd ed., Academic Press Inc. (1982), 173-190に記載されている。
【0179】
図6は、純粋なα-TCP(実施例1により生成したものであり、そしてプロトタイプ3、5、及び7のコア材)と比較した、本発明に係る骨代用材のプロトタイプ3、5、及び7のMIP図を表す。全ての測定を1~2mmの顆粒で行った。
【0180】
純粋なα-TCPサンプルは、表面が平滑であるので、0.03~2μmの範囲の気孔を全く有しないことが分かる。本発明に係る全ての骨代用材は、エピタキシャル成長ヒドロキシアパタイト板状晶のインターロック網目構造で構築された均質な粗外面が多孔質であることから、0.03~2μmの範囲の気孔を含む。0.03~2μmの範囲のMIP曲線下面積に相当する粗外面の気孔体積は、インターロック網目構造の個々の板状晶サイズに依存する。個々の板状晶が大きいほど、インターロック網目構造の含まれる気孔体積も大きくなる。このように、インターロック網目構造の含まれる気孔体積は、表面の粗さと直接相関し得る。MIP図における0.03~2μmの範囲の気孔体積が大きいほど、表面の粗さも大きくなる。示したプロトタイプのうち、0.03~2μmの範囲の気孔体積(曲線下面積)が最も大きいのはプロトタイプ3であり、プロトタイプ5及び7と続く。図2A~2EのSEM分析によって、プロトタイプ3からプロトタイプ5及び7へとプロトタイプの粗さが小さくなっていることが確認される。
【0181】
2)骨代用材の非多孔質ディスクの調製
【0182】
上記実施例1に記載の通り生成した相純度の高いα-TCPの1~2mmのサイズの顆粒を150rpmで20時間にわたって遊星ミルで粉砕して、微粉末を得た。この微粉末を圧縮型に充填し、そして、ハンドプレスで1トンの荷重をかけて圧縮した。素地を型から取り出し、そして、高温炉に移した。250℃/時の加熱速度を用いて炉を1450℃まで加熱した。この温度を24時間維持し、その後、500℃/時の冷却速度で800℃まで炉を冷却し、次いで、150℃/時の冷却速度で室温まで冷却した。バルク焼結非多孔質材(相純度の高いα-Ca(PO)を炉から取り出した。粉末X線回折分析を用いて相純度の制御を実施し、そして、SEMを用いることによって表面特性を分析した。
【0183】
唯一、α-TCPの変態溶液に対する重量比が1~3.5であったことを除いて、上記1)に記載の通り、調製したディスクの相変態及びコーティングを実施した。
【0184】
このようにして、本発明に係る骨代用材のプロトタイプ3a(20%エタノール)及び6a(50%エタノール)を調製した。
【0185】
コーティング及び相変態プロセス後の表面形態を、SEMを用いて観察した。原子間力顕微鏡AFMを用いて、対応する粗さパラメータを求めた。
【0186】
図4のSEM画像から、非多孔質ディスクの均質な粗外面の形態が、実施例2の段落1から得られる対応するエタノール含有量で生成された顆粒(プロトタイプ3及び3a並びにプロトタイプ6及び6a)の粗外面と同一であることが確認される。
【0187】
原子間力顕微鏡(AFM)
【0188】
タッピングモードの原子間力顕微鏡(TT-AFM、AFM Workshop)を用いて、ナノスケールにおける表面測定を評価した。直径11mm及び高さ1mmの非多孔質円筒ディスクを用いて、周囲雰囲気下でAFM分析を行った。共振周波数190kHz及び先端半径10nm以下を用いた。50μm×50μmの領域にわたって各AFM分析を行い、そして、全てのグループの3つのサンプルをスキャンした。数値補正を適用することによって元のデータをならして(plane-leveled)傾きを除去し、そして、Gwyddionソフトウェアを用いて自乗平均粗さ(R)及びプロファイルの平均最大高さ(R)の平均値を求めた。
【0189】
表面の類似の特性評価は、例えば、米国特許出願公開第2013-0045360A1号に記載されている。
【0190】
図4は、本発明に従って調製した非多孔質ディスクのプロトタイプ3a(20%エタノール、左側)及び6a(50%エタノール、右側)のAFM写真を表す。プロトタイプ3a及び6aについてのAFM由来の粗度の値は、以下の表1に見出すことができる。
【0191】
【表1】
【0192】
表1から分かる通り、エタノール含有量を20%から50%に増加させることによって、自乗平均粗さ(R)の平均値が237nmから130nmに減少し、そして、プロファイルの平均最大高さ(R)が1391nmから630nmに減少した。
【0193】
実施例3 胎児のヒト間葉系幹細胞(hMSC)の骨形成分化のインビトロ試験。
【0194】
実施例1及び2で調製した骨代用材プロトタイプが骨形成分化を支援するかどうかを評価するために、妊娠22週目以降のヒト胎児大腿骨から単離した約200,000個のhMSC(ScienCellから市販:カタログ番号7500、ロット番号6890)を、該骨代用材プロトタイプの顆粒 320mgに播種し、そして、3週間培養した。培養の最初の7日間は、細胞の増殖を最適に支援するために、市販のhMSC拡張培地(MSCM培地、カタログ番号7501、ScienCell)を使用した。その後14日間は、10% FBS及びペニシリン/ストレプトマイシンを補給したDMEMに培地を交換した。細胞培養培地に追加の骨形成剤は追加しなかった。hMSCを3週間培養した後、全MRNAを単離し、cDNAに転写させ、そして、Real Time Quantitative PCRを行った。ハウスキーピング遺伝子としてGAPDHを用いて、ΔΔCT法(Livak K.J. and Schmittgen T.D., Analysis of relative gene expression data using real time quantitative PCR and the 2-ΔΔCT method, 2001, Methods 25, pp. 402-408を参照)後に遺伝子発現を計算した。実施例1及び2で調製した顆粒形態(1~2mm)の骨代用材プロトタイプ全てについて、骨形成分化マーカーであるオステオポンチン(OPN)及びオステオカルシン(OCN)の発現を測定した。
【0195】
これらの測定結果は、実施例2の本発明に係る骨代用材プロトタイプでは、実施例1の先行技術による骨代用材プロトタイプよりも骨形成分化マーカーであるOPN及びOCNの発現が著しく高いことを示した(図5A~5Bを参照)。
【0196】
これらインビトロにおける結果に基づいて、本発明に係る骨代用材のプロトタイプについてはインビボで骨形成応答が増強されると予測される。
【0197】
実施例4 国際公開公報第2019/115704号の発明の二相性CAP/HAP骨代用材のHAPナノ結晶とヒトの骨塩との結晶サイズ及び形態の比較。
【0198】
欧州特許第2445543B1号と同様に、プロトタイプ3のサンプル及び天然のヒト骨塩に対してブラッグ法を適用することによるX線回折データの精密化を用いることによって、結晶サイズの分析を行った。
【0199】
本発明及びヒト骨塩は、同じ形態及び同じ結晶サイズを有する。
【0200】
以下の表2を参照。
【0201】
【表2】
【0202】
実施例5 国際公開公報第2019/115704号に係る3.0w/w% HAPを含有するCAP/HAP骨代用材の粒子を含む、本発明に係るコラーゲンマトリクスの調製。
1)3.0w/w% HAPを含有する高速再吸収性二相性CAP/HAP骨代用材の調製
【0203】
上記実施例2に記載したものに近いプロセスによって、国際公開公報第2019/115704号に従って、二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代用材の0.5~2mmサイズの多孔質顆粒を生成した。変態バッファは、50% エタノールを含有する0.1M リン酸二水素ナトリウム(NaHPO)溶液であった。XRDによって測定したときの表面変態に由来するHAPの含有量は3.0w/w%であった。
【0204】
2)パテとして使用するための本発明に係るコラーゲンマトリクスの調製
【0205】
選択された量のコラーゲン繊維(3w/w%)を脱イオン水に分散させた。パテ材を生成するためのコラーゲン繊維の供給源は、Geistlich Pharma AGから市販されている製品Geistlich Bio-Gide(登録商標)と同じであった。その後、2M 塩酸溶液でスラリーのpH値をpH=3.5に調整した。次いで、このスラリーを、コロイドミルを用いて湿式粉砕した。次の工程では、上記1)で調製した二相性CAP/HAP骨代用材の顆粒を、80w/w% 骨代用材及び20w/w% コラーゲンの比でコラーゲンスラリーに添加した。骨代用材を添加した後に、スパチュラを用いて手作業でスラリーをホモジナイズした。次いで、スラリーを金型(23mm×23mm×6mm)に充填した後、凍結乾燥(-40℃まで凍結、-5℃及び300μbarで24時間一次乾燥、20℃及び10μbarで11時間二次乾燥)させた。凍結乾燥した材料をX線照射で滅菌した。
【0206】
血液又は等張生理食塩水で再水和することによって、取り扱い特性の良好なパテプロトタイプが得られた。
【0207】
パテプロトタイプの取り扱い特性を評価するための手順:
パテ材を特定の量のヘパリン化血液と接触させ、その後、以下の工程を含む試験プロトコルを実施した:
1.濡れ性:発泡体を4分間以内にヘパリン化血液で濡らすことができる(操作なし)。
2.圧搾:追加の血液を絞り出すことができる。
3.粘着性:手袋又は器具にパテの塊が密着しない。
4.凝集性:パテが凝集性であり、そして、離れ落ちない。
5.成形性:成形可能なパテを、所望の形状に容易に成形することができる(最も困難な形態はボール状である)。
6.耐圧性:圧力を印加したとき、材料が横に押し出されなかった。
【0208】
3)ストリップ又はプラグとして使用するための本発明に係るコラーゲンマトリクスの調製
【0209】
上記本実施例の2)で得られた凍結乾燥材を、0.1~10mbar及び80~140℃で12~96時間、脱水熱処理(DHT)に供した。プラグ材を得るために、本実施例の2)の金型は、直径8~12mm及び深さ8~16mmを有する円筒形又は円錐形のものを用いた。
【0210】
実施例6 3.0w/w% HAPを含有する国際公開公報第2019/115704号に係るCAP/HAP骨代用材の粒子と、35w/w% HAPを含有する欧州特許第2445543B1号に係るCAP/HAP骨代用材の粒子との混合物を含むコラーゲンマトリクスの調製。
【0211】
1)35w/w% HAPを含有する欧州特許第2445543B1号に係る、低速再吸収二相性CAP/HAP骨代用材の調製
【0212】
欧州特許第2445543B1号に記載されているプロセスに従って、二相性リン酸カルシウム/ヒドロキシアパタイト(CAP/HAP)骨代用材の0.5~2mmのサイズの多孔質顆粒を生成した。変態バッファは、pHが7.45±0.1である0.15M リン酸二水素ナトリウム(NaHPO)溶液であった。α-TCP顆粒を40℃で24時間変態溶液に浸漬した。表面変態後、顆粒を洗浄し、そして、キャビネットドライヤーで乾燥させた。XRDによって測定したときの表面変態に由来するHAPの含有量は35w/w%であった。
【0213】
2)二相性骨代用材の高速再吸収粒子と低速再吸収粒子との混合物である顆粒ブレンドの調製
【0214】
実施例5の1)で調製した3.0w/w% HAPを含有する国際公開公報第2019/115704号に係る二相性CAP/HAP骨代用材の0.5~2mmサイズの多孔質粒子と、本実施例の上記1)で調製した35w/w% HAPを含有する欧州特許第2445543B1号に係る二相性CAP/HAP骨代用材の0.5~2mmのサイズの多孔質粒子とを、40:60のw/w比で混合した。顆粒ブレンドをタービュラシェーカーミキサでホモジナイズした。
【0215】
3)パテとして使用するための本発明に係るコラーゲンマトリクスの調製
【0216】
選択された量のGeistlich Bio-Gide(登録商標)のコラーゲン繊維(3w/w%)を脱イオン水に分散させた。その後、2M 塩酸溶液でスラリーのpH値をpH=3.5に調整した。次いで、このスラリーを、コロイドミルを用いて湿式粉砕した。次の工程では、本実施例の上記2)で調製した二相性CAP/HAP骨代用材の顆粒ブレンドを、80w/w% 骨代用材及び20w/w% コラーゲンの比でコラーゲンスラリーに添加した。骨代用材を添加した後に、スパチュラを用いて手作業でスラリーをホモジナイズした。次いで、スラリーを金型(23mm×23mm×6mm)に充填した後、凍結乾燥(-40℃まで凍結、-5℃及び300μbarで24時間一次乾燥、20℃及び10μbarで11時間二次乾燥)させた。次いで、材料をX線照射で滅菌した。
【0217】
4)ストリップ又はプラグとして使用するための本発明に係るコラーゲンマトリクスの調製
【0218】
本実施例の上記3)で得られた凍結乾燥材を、0.1~10mbar及び80~140℃で12~96時間、脱水熱処理(DHT)に供した。プラグ材を得るために、本実施例の3)の金型は、直径8~12mm及び深さ8~16mmを有する円筒形又は円錐形のものを用いた。
【0219】
実施例7 ウサギの脊椎後側方固定(PLF)モデルにおける本発明に係るパテの試験
【0220】
Mastergraft(商標)パテ(コラーゲンマトリクス中の二相性リン酸カルシウム顆粒、Medtronicによって販売)及びActifuse ABXパテ(ポロキサマーマトリクス中のSi置換ヒドロキシアパタイト、Baxterによって販売)と比較して、実施例6の上記3)で得られたコラーゲンマトリクスを、W.R. Walsh et al., 2009, Eur. Spine J. 18:1610-1620によって開示されているウサギPLFモデルでパテとして試験した。
【0221】
・ 移植の12週後にこれらの各パテにおいて、融合した塊がX線ではっきりと見えた。Mastergraftパテは、より高い分解率を示した。本発明に係るパテでは融合塊がはっきりと見える図7を参照。
【0222】
図8に示す通り、3.0w/w% HAPを含有する二相性CAP/HAP骨代用材の粒子は、35%w/w HAPを含有する二相性CAP/HAP骨代用材の粒子よりも早く再吸収され(図8ではサイズが大きく、そして、形状がより均一に見える)、新たな骨が内方成長するための空間を提供した。
図8では、欠損全体にわたって新たな骨の形成を観察することができる。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8