(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】車両用前照灯
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/14 20060101AFI20240422BHJP
F21V 7/00 20060101ALI20240422BHJP
F21V 14/04 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
B60Q1/14 H
F21V7/00 590
F21V14/04
(21)【出願番号】P 2021574718
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(86)【国際出願番号】 JP2021003373
(87)【国際公開番号】W WO2021153775
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2023-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2020015205
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀忠
【審査官】塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-73691(JP,A)
【文献】特開2011-218999(JP,A)
【文献】特開2009-214801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/00- 1/56
F21V 1/00- 8/00
F21V 9/00-15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方部位の左右に配置される一対の灯具と、
前記一対の灯具を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、検出装置から前記車両の前方に位置する再帰反射物体を検出することを示す信号が入力する場合において、前記一対の灯具のうちの前記再帰反射物体側に位置する一方の前記灯具から少なくとも前記再帰反射物体に向かって出射される光の光量が、前記一対の灯具のうちの前記再帰反射物体側とは反対側に位置する他方の前記灯具から少なくとも前記再帰反射物体に向かって出射される光の光量よりも少なくなるように、前記一方の灯具及び前記他方の灯具を制御する
ことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前記検出装置から前記再帰反射物体の状態を示す信号が入力する場合において、前記再帰反射物体からの反射光の光量が所定値以上となる所定の要件を前記再帰反射物体が満たす状態か否かを判定する判定部をさらに備え、
前記判定部によって前記再帰反射物体が前記所定の要件を満たす状態と判定される場合において、前記判定部によって前記再帰反射物体が前記所定の要件を満たす状態ではないと判定される場合よりも前記一方の灯具からの前記光の前記光量及び前記他方の灯具からの前記光の前記光量の総和が少なくなるように、前記制御部は前記一方の灯具及び前記他方の灯具を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項3】
前記判定部によって前記再帰反射物体が前記所定の要件を満たす状態と判定される場合において、前記判定部によって前記再帰反射物体が前記所定の要件を満たす状態ではないと判定される場合よりも前記一方の灯具からの前記光の前記光量及び前記他方の灯具からの前記光の前記光量のそれぞれが少なくなるように、前記制御部は前記一方の灯具及び前記他方の灯具を制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用前照灯。
【請求項4】
前記判定部によって前記再帰反射物体が前記所定の要件を満たす状態と判定される場合において、前記判定部によって前記再帰反射物体が前記所定の要件を満たす状態ではないと判定される場合よりも、前記一方の灯具からの前記光の前記光量は少なくなるように、及び、前記他方の灯具からの前記光の前記光量は多くなるように、前記制御部は前記一方の灯具及び前記他方の灯具を制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用前照灯。
【請求項5】
前記判定部によって前記再帰反射物体が前記所定の要件を満たす状態と判定される場合に、前記一対の灯具から前記再帰反射物体に向かって出射される光の光量と前記一対の灯具から前記再帰反射物体を除く前記車両の前記前方に向かって出射される光の光量との差が所定の範囲に収まるように、前記制御部は前記一対の灯具を制御する
ことを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の車両用前照灯。
【請求項6】
前記所定の要件を満たす状態は、前記再帰反射物体と前記車両との間の距離が所定の距離未満の状態である
ことを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の車両用前照灯。
【請求項7】
前記所定の要件を満たす状態は、前記再帰反射物体の見た目上の大きさが所定値以上の状態である
ことを特徴とする請求項2から6のいずれか1項に記載の車両用前照灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、前方車等の自ら発光する発光物体と、道路標識等の自ら発光せず光を所定の広がり角度で再帰反射する再帰反射物体とを検出する車両用前照灯システムが知られている。このような車両用前照灯システムは、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されている車両用前照灯システムは、光の照射と非照射とを交互に繰り返す前照灯と、照射時と非照射時とのそれぞれにおいて自車の前方を撮影し、照射時画像と非照射時画像とを生成する撮像部とを備える。また、車両用前照灯システムは、非照射時画像中に位置する高輝度部を発光物体として判定し、照射時画像中に位置するが非照射時画像には位置しない高輝度部を再帰反射物体として判定する検出部をさらに備える。
【0003】
【発明の概要】
【0004】
ところで、自車の前方の左右方向のそれぞれに配置される前照灯からの光が再帰反射物体を照射する場合、光の一部は、反射光として再帰反射物体から自車に向かい、自車の運転者にグレアを与えてしまう懸念がある。これにより、運転者の視認性が低下してしまう懸念が生じる。
【0005】
そこで、本発明は、運転者の視認性の低下が抑制され得る車両用前照灯を提供することを目的とする。
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の車両用前照灯は、車両の前方部位の左右に配置される一対の灯具と、前記一対の灯具を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、検出装置から前記車両の前方に位置する再帰反射物体を検出することを示す信号が入力する場合において、前記一対の灯具のうちの前記再帰反射物体側に位置する一方の前記灯具から少なくとも前記再帰反射物体に向かって出射される光の光量が、前記一対の灯具のうちの前記再帰反射物体側とは反対側に位置する他方の前記灯具から少なくとも前記再帰反射物体に向かって出射される光の光量よりも少なくなるように、前記一方の灯具及び前記他方の灯具を制御することを特徴とする。
【0007】
再帰反射物体が光を反射する場合、再帰反射物体から自車への反射光の強度は、再帰反射物体に対する灯具の車両の左右方向におけるずれ量が小さいほど、強くなる傾向がある。この車両用前照灯では、一方の灯具は再帰反射物体側に位置し、他方の灯具は再帰反射物体側とは反対側に位置する。このため、再帰反射物体に対する一方の灯具の車両の左右方向におけるずれ量は、再帰反射物体に対する他方の灯具の車両の左右方向におけるずれ量に比べて小さくされる。この車両用前照灯では、再帰反射物体が検出される場合では、再帰反射物体側に位置する一方の灯具から再帰反射物体へ向かう光の光量が再帰反射物体側とは反対側に位置する他方の灯具から再帰反射物体へ向かう光の光量よりも少なくなる。一方の灯具からの光の光量が他方の灯具からの光の光量よりも少なくなると、一方の灯具からの光の光量が他方の灯具からの光の光量よりも少なくならない場合に比べて、反射光の強度が抑制され得、反射光が自車に進行したとしても、自車の運転者へのグレアの付与が抑制され得る。従って、この車両用前照灯によれば、運転者の視認性の低下が抑制され得る。
【0008】
また、車両用前照灯は、前記検出装置から前記再帰反射物体の状態を示す信号が入力する場合において、前記再帰反射物体からの反射光の光量が所定値以上となる所定の要件を前記再帰反射物体が満たす状態か否かを判定する判定部をさらに備え、前記判定部によって前記再帰反射物体が前記所定の要件を満たす状態と判定される場合において、前記判定部によって前記再帰反射物体が前記所定の要件を満たす状態ではないと判定される場合よりも前記一方の灯具からの前記光の前記光量及び前記他方の灯具からの前記光の前記光量の総和が少なくなるように、前記制御部は前記一方の灯具及び前記他方の灯具を制御することが好ましい。
【0009】
この車両用前照灯によれば、再帰反射物体が所定の要件を満たしていない状態よりも再帰反射物体が所定の要件を満たす状態において、反射光の強度がより抑制され得る。従って、この車両用前照灯によれば、運転者の視認性の低下がより抑制され得る。
【0010】
また、前記判定部によって前記再帰反射物体が前記所定の要件を満たす状態と判定される場合において、前記判定部によって前記再帰反射物体が前記所定の要件を満たす状態ではないと判定される場合よりも前記一方の灯具からの前記光の前記光量及び前記他方の灯具からの前記光の前記光量のそれぞれが少なくなるように、前記制御部は前記一方の灯具及び前記他方の灯具を制御することが好ましい。
【0011】
この車両用前照灯によれば、再帰反射物体が所定の要件を満たしていない状態よりも再帰反射物体が所定の要件を満たす状態において、再帰反射物体への光の照射が抑制され、反射光の強度がより抑制され得る。従って、この車両用前照灯によれば、運転者の視認性の低下がより抑制され得る。
【0012】
また、前記判定部によって前記再帰反射物体が前記所定の要件を満たす状態と判定される場合において、前記判定部によって前記再帰反射物体が前記所定の要件を満たす状態ではないと判定される場合よりも、前記一方の灯具からの前記光の前記光量は少なくなるように、及び、前記他方の灯具からの前記光の前記光量は多くなるように、前記制御部は前記一方の灯具及び前記他方の灯具を制御してもよい。
【0013】
この場合、他方の灯具からの光の光量が多くならない場合に比べて、再帰反射物体は光によって明るくされるため、再帰反射物体に対する運転者の視認性が確保され得る。
【0014】
また、前記判定部によって前記再帰反射物体が前記所定の要件を満たす状態と判定される場合に、前記一対の灯具から前記再帰反射物体に向かって出射される光の光量と前記一対の灯具から前記再帰反射物体を除く前記車両の前記前方に向かって出射される光の光量との差が所定の範囲に収まるように、前記制御部は前記一対の灯具を制御することが好ましい。
【0015】
再帰反射物体を除く車両の前方に歩行者等の対象物が位置している場合、上記した差が所定の範囲に収まることによって、再帰反射物体の明るさと対象物の明るさとの相対的な差が抑制され得る。従って、この車両用前照灯によれば、対象物に対する運転者の視認性の低下が抑制され得る。
【0016】
また、前記所定の要件を満たす状態は、前記再帰反射物体と前記車両との間の距離が所定の距離未満の状態であることが好ましい。
【0017】
一対の灯具から出射する光の光量が変わらない状態で、再帰反射物体と車両との間の距離が所定の距離未満の状態となると、距離が所定の距離以上の状態と比べて、再帰反射物体から自車への反射光の強度は強くなる傾向がある。距離が所定の距離未満の状態である場合、制御部は上記のように第1光量が第2光量よりも少なくなるように一対の灯具を制御する。従って、再帰反射物体と車両との距離が所定の距離未満の状態となると、距離が所定の距離以上の状態と比べて、再帰反射物体から自車へ進行する反射光の強度が抑制され得、グレアの付与が抑制され得、運転者の視認性の低下が抑制され得る。
【0018】
或いは、前記所定の要件を満たす状態は、前記再帰反射物体の見た目上の大きさが所定値以上の状態であることが好ましい。
【0019】
再帰反射物体と車両との間の距離が所定の距離以上であっても、再帰反射物体の見た目上の大きさが所定値以上である場合、再帰反射物体が所定の大きさ未満の場合に比べて、車両からの光の一部は、反射光として再帰反射物体から車両に向かい、自車の運転者にグレアを与えてしまう懸念がある。上記のように、所定の要件を満たす状態が再帰反射物体の見た目上の大きさが所定値以上の状態である場合、制御部は上記のように第1光量が第2光量よりも少なくなるように一対の灯具を制御する。従って、再帰反射物体と車両との間の距離が所定の距離以上で、再帰反射物体の見た目上の大きさが所定値以上である場合においても、再帰反射物体から自車へ進行する反射光の強度が抑制され得、グレアの付与が抑制され得、運転者の視認性の低下が抑制され得る。
【0020】
本発明によれば、運転者の視認性の低下が抑制され得る車両用前照灯を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】
図2は、
図1に示す1つの灯具を概略的に示す鉛直方向の断面図である。
【
図3】
図3は、車両用前照灯の動作を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、再帰反射物体が所定の要件を満たしていない場合におけるハイビームの配光パターンを示す図である。
【
図5】
図5は、再帰反射物体が所定の要件を満たす場合におけるハイビームの配光パターンを示す図である。
【
図6】
図6は、再帰反射物体が所定の要件を満たす場合において第1光によって形成される配光パターンを示す図である。
【
図7】
図7は、再帰反射物体が所定の要件を満たす場合において第2光によって形成される配光パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る車両用前照灯の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良することができる。また、本発明は、以下に例示する実施形態における構成要素を適宜組み合わせてもよい。なお、理解の容易のため、それぞれの図において一部が誇張して記載される場合等がある。
【0023】
図1は、車両100を概念的に示す平面図である。
図1に示すように、車両100は、車両用前照灯10と、検出装置50とを備える。
【0024】
本実施形態の車両用前照灯10は、自動車用の前照灯とされる。車両用前照灯10は、車両100の前方部位の左右に配置される一対の灯具20と、判定部35と、制御部40と、記録部70とを主に備える。なお、本明細書において「右」とは車両100の進行方向において右側を意味し、「左」とは車両100の進行方向において左側を意味する。
【0025】
本実施形態の一対の灯具20は、ロービームまたはハイビームを車両100の前方に出射する。以下において、一対の灯具20のうちの一方の灯具20aは車両100の左側に位置し、一対の灯具20のうちの他方の灯具20bは車両100の右側に位置するものとして説明する。この場合、灯具20aは、車両100の左右方向の中心を通り車両100の前後の延びる直線を基準として灯具20bとは反対側に位置する。灯具20aの構成は、形状が左右方向に概ね対称であることを除いて、灯具20bの構成と同じとされる。このため、以下において、それぞれの灯具20a,20bの構成を、灯具20aを用いて説明する。
【0026】
図2は、灯具20aを概略的に示す鉛直方向の断面図である。
図2に示すように、灯具20aは、光源21と、リフレクタ22と、反射装置23と、投影レンズ24と、光吸収板25とを主な構成として備える。光源21とリフレクタ22と反射装置23と投影レンズ24と光吸収板25とは、不図示の筐体に収容されている。
【0027】
光源21は、光源21の前方に向かって光を出射する。光源21は、光を出射する発光素子である。このような光源21として、例えば白色の光を出射するLED(Light Emitting Diode)が挙げられる。
【0028】
リフレクタ22は、曲面状の板状部材とされる。リフレクタ22は、曲面状のリフレクタ22の内面に位置する反射面22rを有する。反射面22rは、光源21側とは反対側に凹状となるように湾曲している。このような反射面22rは、例えば、回転楕円曲面形状である。また、反射面22rが前方側から光源21に被さるように、リフレクタ22は配置される。反射面22rは、光源21から出射する光を反射装置23の後述する反射制御面23rに反射する。
【0029】
反射装置23は、光源21より上方かつリフレクタ22より後方に配置される。反射装置23は、所謂DMD(Digital Mirror Device)とされ、光を反射する反射制御面23rを有する。反射制御面23rは、前方側を向くように配置される。反射制御面23rには、光源21から出射してリフレクタ22の反射面22rによって反射した光が照射される。反射制御面23rは、二次元配列される複数の反射素子の反射面によって構成されている。それぞれの反射素子は、図示しない基板に個別に傾倒可能に支持される。また、それぞれの反射素子は、リフレクタ22からの光を投影レンズ24に向かうように反射する第1傾倒状態、または、リフレクタ22からの光を光吸収板25に向かうように反射する第2傾倒状態に、個別に切り替え可能とされている。このような反射装置23は、それぞれの反射素子の傾倒状態を制御することによって、反射制御面23rから投影レンズ24に向かう光によって所望の配光パターンを形成したり、配光パターンの形状を変化させたりできる。また、反射装置23は、それぞれの反射素子の傾倒状態を経時的に制御することによって、所望の配光パターンの光の強度分布を所望の強度分布にできる。
【0030】
投影レンズ24は、入射する光の発散角を調節するレンズである。投影レンズ24は反射装置23よりも前方に配置され、反射制御面23rから投影レンズ24に向かう光が投影レンズ24に入射し、この光の発散角が投影レンズ24において調整される。投影レンズ24では、入射面が前方に向かって凸状に湾曲し、出射面が前方に向かって凸状に湾曲している。投影レンズ24の後方焦点は、反射装置23の反射制御面23r上またはその近傍に位置している。このような投影レンズ24で発散角が調整された所定の光が灯具20aから出射し、この所定の光は車両100の前方に照射される。
【0031】
光吸収板25は、反射装置23よりも前方かつ上方に配置される。光吸収板25は、光吸収性を有する板状部材であり、光吸収板25に入射する光の多くを熱に変換する。反射制御面23rから光吸収板25に向かう光が光吸収板25に入射すると、この光の多くは光吸収板25によって熱に変換される。熱は、光吸収板25から光吸収板25の外部に放出される。光吸収板25として、例えばアルミニウム等の金属から構成されて表面に黒アルマイト加工等が施される板状部材が挙げられる。
【0032】
【0033】
制御部40は、車両100に搭載される図示しないライトスイッチからの制御信号が制御部40に入力されている場合には、灯具20a及び灯具20bを駆動させる。制御信号が制御部40に入力されていない場合、制御部40は、灯具20a及び灯具20bの駆動を停止させる。制御信号は、灯具20a及び灯具20bのそれぞれの光源21からの光の出射の開始を指示する信号である。
【0034】
制御部40は、例えば、マイクロコントローラ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large-scale Integrated Circuit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの集積回路やNC(Numerical Control)装置を用いることができる。また、制御部40は、NC装置を用いた場合、機械学習器を用いたものであってもよく、機械学習器を用いないものであってもよい。
【0035】
検出装置50は、車両100の前方に位置する対象物を検出する。この対象物として、再帰反射物体、及び再帰反射物体以外の物体が挙げられる。本実施形態の再帰反射物体は、自ら発光せず、再帰反射物体を照射する光を所定の広がり角度で再帰反射する物体である。このような再帰反射物体として、例えば、道路の傍らに設置される道路標識等が挙げられる。また、再帰反射物体以外の物体としては、先行車や対向車等の車両、歩行者等が挙げられる。
【0036】
検出装置50の構成として、検出装置50は、例えば、図示しないカメラ、画像処理部、及び検出部を備える。カメラは、車両100の前部に取り付けられ、車両100の前方を撮影する。カメラによって撮影される撮影画像には、一対の灯具20から出射する光が照射される領域の少なくとも一部が含まれる。画像処理部は、カメラによって撮影される撮影画像に画像処理を施す。検出部は、再帰反射物体を検出する場合、再帰反射物体を検出することを示す信号を、判定部35を介して制御部40に出力する。なお、検出部は、当該信号を制御部40に直接出力してもよい。また、検出部は、画像処理部によって画像処理される撮影画像から再帰反射物体の状態を検出する。再帰反射物体の状態として、例えば、再帰反射物体の存在、再帰反射物体の存在位置、及び撮影画像における再帰反射物体の割合が挙げられる。画像処理部の構成及び検出部の構成は、例えば、制御部40の構成と同じとされる。
【0037】
次に、撮影画像からの再帰反射物体の存在の検出の一例について説明する。なお、再帰反射物体は、道路標識であるものとして説明する。記録部70は、それぞれの道路標識の画像データを予め記録している。検出部は、撮影画像に映り込んだ対象物が記録部70に記録されている道路標識の画像データに該当する場合、当該対象物を再帰反射物体と検出する。検出の別の一例として、一般的に、道路標識の形状は、円形、矩形、または三角形であり、道路標識には、赤色、白色、青色、黄色、黒色、緑色といった色が組み合わされている。検出部は、カメラによって撮影される撮影画像に映り込んだ対象物の外形が円形、矩形、または三角形のいずれかであり、対象物の外形の内側の色が上記した色の組み合わせであれば、対象物を再帰反射物体として検出してもよい。上記した2つの検出の一例が組み合わされてもよい。また、再帰反射物体がデリニエータの場合、デリニエータからの反射光は例えば橙色となる。検出部は、カメラによって撮影される撮影画像に映り込んだ対象物からの光が橙色である場合、当該対象物を再帰反射物体と検出してもよい。
【0038】
検出装置50は、再帰反射物体の状態を示す信号を判定部35に出力する。また、検出装置50は、撮影画像を記録部70に出力する。
【0039】
判定部35は、車両100の前方に位置する再帰反射物体を検出する検出装置50からの再帰反射物体の状態を示す信号を基に、再帰反射物体が車両の右側及び左側のどちらに位置するかを判定する。例えば、判定部35は、再帰反射物体が撮影画像のうちの中心よりも左側の領域に位置する場合には再帰反射物体が車両100の左側に位置し、再帰反射物体が撮影画像のうちの中心よりも右側の領域に位置する場合には再帰反射物体が車両100の右側に位置すると判定する。判定結果を示す信号は、制御部40に入力される。また、判定部35は、車両100の前方に位置する再帰反射物体を検出する検出装置50からの再帰反射物体の状態を示す信号を基に、再帰反射物体が再帰反射物体から自車への反射光の光量が所定値以上となる所定の要件を満たす状態か否かを判定する。所定の要件を満たす状態とは、例えば、再帰反射物体と車両100との間の距離が所定の距離未満の状態であることを示す。所定の距離とは、例えば30mである。この距離の数値は、閾値として記録部70に記録されており、日中や夜間といった車両100の走行状況などに応じて変更されてもよい。例えば、判定部35は、算出部と判定本体部とを備える。算出部は、検出装置50からの再帰反射物体の状態における上記割合を基に再帰反射物体と車両100との間の距離を算出する。算出される距離を示す信号は、判定本体部に出力される。判定本体部は、記録部70から閾値である所定の距離を読み出し、算出される距離と所定の距離とを比較し、算出される距離が所定の距離よりも大きいか否かを判定する。算出される距離が所定の距離以上である場合、再帰反射物体が所定の要件を満たす状態ではない、と判定本体部は判定する。また、算出される距離が所定の距離未満である場合、再帰反射物体が所定の要件を満たす状態である、と判定本体部は判定する。判定本体部の判定結果は、再帰反射物体の存在位置といった再帰反射物体の状態を示す信号と共に信号として、制御部40に入力される。判定部35の構成は、例えば、制御部40の構成と同じとされる。
【0040】
記録部70は、検出装置50から出力される撮影画像と、判定部35における上記した閾値である所定の距離とを記録する。記録部70としては、例えば、ROM等の半導体メモリ、磁気ディスク等が挙げられる。
【0041】
次に、本実施形態の車両用前照灯10の動作について説明する。
図3は、本実施形態における車両用前照灯10の動作を示すフローチャートである。
図3に示すように、本実施形態のフローチャートは、ステップS1~ステップS7を含んでいる。
【0042】
以下では、再帰反射物体が車両100の左斜め前方に位置するものとして説明する。
【0043】
また、以下では、灯具20aから再帰反射物体を含む車両100の前方に向かって出射する光を第1光とし、第1光の光量を第1光量とし、灯具20bから再帰反射物体を含む車両100の前方に向かって出射する光を第2光とし、第2光の光量を第2光量として説明する。
図3に示すスタートの状態では、ライトスイッチは、OFFである。
【0044】
(ステップS1)
本ステップでは、検出装置50は、カメラによって車両100の前方を撮影する。検出装置50は、車両100の前方に位置する再帰反射物体を撮影画像から検出する場合に、再帰反射物体を検出することを示す信号を判定部35を介して制御部40に出力し、再帰反射物体の状態を示す信号を判定部35に出力する。信号が入力されると、処理はステップS2に移行する。
【0045】
(ステップS2)
本ステップでは、ライトスイッチがOFFのままで、ライトスイッチからの制御信号が制御部40に入力されないと、灯具20a及び灯具20bの駆動が停止することとなり、光は出射せず、処理はステップS1に戻る。また、本ステップでは、ライトスイッチがONとなり、ライトスイッチからの制御信号が制御部40に入力されると、灯具20a及び灯具20bが駆動することとなり、処理はステップS3に移行する。
【0046】
(ステップS3)
本ステップでは、判定部35は、検出装置50からの再帰反射物体の状態を示す信号における再帰反射物体の存在位置を基に、再帰反射物体が車両の右側及び左側のどちらに位置するかを判定する。この判定結果を示す信号は、制御部40に出力される。上記したように、本実施形態では再帰反射物体が車両100の左斜め前方に位置するため、灯具20aは再帰反射物体側に位置する灯具となり、灯具20bは車両100の左右方向において灯具20aを基準として再帰反射物体側とは反対側に位置する灯具となる。この場合、車両100の左右方向において、灯具20aと再帰反射物体との間の距離は、灯具20bと再帰反射物体との間の距離に比べて短くされることとなる。また、判定部35は、検出装置50からの再帰反射物体の状態を示す信号を基に再帰反射物体が所定の要件を満たすか否かを判定する。再帰反射物体が所定の要件を満たす状態ではないと判定部35が判定する場合には、処理はステップS4に移行する。また、再帰反射物体が所定の要件を満たす状態であると判定部35が判定する場合には、処理はステップS5に移行する。以下において、所定の要件を満たす状態は、再帰反射物体と車両100との間の距離が所定の距離未満の状態であることを例に説明する。
【0047】
(ステップS4)
本ステップでは、再帰反射物体と車両100との間の距離が所定の距離以上であることとなり、制御部40は再帰反射物体側に位置する灯具20a及び再帰反射物体側とは反対側に位置する灯具20bの駆動を以下のように制御する。
【0048】
ステップS4では、例えば、第1光量が第2光量と同じとなるように、制御部40は灯具20a及び灯具20bを駆動させ、車両100の前方に向かって灯具20aは第1光を出射すると共に灯具20bは第2光を出射する。
図4は、再帰反射物体401と車両100との間の距離が所定の距離以上である場合におけるハイビームの配光パターン200を示す図である。配光パターン200は、第1光によって形成される図示しない配光パターンと、第2光によって形成される図示しない配光パターンとの合成によって形成される。
図4においてSは水平線を示し、配光パターンが太線で示され、この配光パターンは、車両100から例えば25m離れた鉛直面上に形成される配光パターンとされている。
図4において、例えば、再帰反射物体401が道路の傍らに設置される道路標識である場合、当該再帰反射物体401は例えば道路の傍らから立設される金属の支柱である支持部403によって支持されている。なお、本ステップでは、第1光量及び第2光量の制御は、特に限定されるものではなく、第1光量は、第2光量よりも多くても少なくてもよい。第1光及び第2光が出射すると、処理はステップS1に戻る。
【0049】
(ステップS5)
本ステップでは、再帰反射物体401と車両100との間の距離が所定の距離未満であることとなり、制御部40は再帰反射物体側に位置する灯具20a及び再帰反射物体側とは反対側に位置する灯具20bの駆動を以下のように制御する。
【0050】
ステップS5では、第1光量が第2光量よりも少なくなるように、制御部40は灯具20a及び灯具20bを駆動させ、車両100の前方に向かって灯具20aは第1光を出射すると共に灯具20bは第2光を出射する。
【0051】
図5は、再帰反射物体401と車両100との間の距離が所定の距離未満である場合におけるハイビームの配光パターン300を示す図である。
図5に示す配光パターン300は、第1光によって形成される
図6に示す配光パターン310と、第2光によって形成される
図7に示す配光パターン320との合成によって形成される。
図6では配光パターン310のうちの再帰反射物体401及び支持部403が重なる領域を領域AR1としており、
図7では配光パターン320のうちの再帰反射物体401及び支持部403が重なる領域を領域AR2としている。上記したように、第1光量が第2光量よりも少ないため、領域AR1における光量は、領域AR2における光量よりも少なくされる。
【0052】
また、
図6では、配光パターン310のうちの領域AR1を除く領域を領域AR11としている。第1光は領域AR11にも出射するため、領域AR1における光量は、領域AR11における光量と同じとされる。また、
図7では、配光パターン320のうちの領域AR2を除く領域を領域AR22としている。第2光は領域AR22にも出射するため、領域AR2における光量は、領域AR22における光量と同じとされる。上記したように、第1光量が第2光量よりも少ないため、領域AR11における光量は、領域AR22における光量よりも少なくされる。
【0053】
次に、上記した第1光量及び第2光量の総和の制御の一例について、数値を用いて説明する。ここで用いられる数値は、光量の大小関係をイメージし易いように便宜的に記載するものであり、第1光量及び第2光量の実際の数値を示すものではない。
【0054】
再帰反射物体401と車両100との間の距離が所定の距離以上である場合では、ステップS4において、制御部40は、例えば、第1光量が「100」となり、第2光量が「100」となるように、灯具20a及び灯具20bを制御する。この場合、第1光量及び第2光量の総和は「200」となる。
【0055】
一方、再帰反射物体401と車両100との間の距離が所定の距離未満である場合では、ステップS5において、制御部40は、第1光量が「60」となり、第2光量が「80」となるように、灯具20a及び灯具20bを制御する。この場合、第1光量は第2光量よりも少なくなると共に、第1光量及び第2光量の総和は「140」となる。
【0056】
ここで、再帰反射物体401と車両100との間の距離が所定の距離以上である場合における第1光量及び第2光量の総和「200」と、再帰反射物体401と車両100との間の距離が所定の距離未満である場合における第1光量及び第2光量の総和「140」とを比較する。両者を比較すると、再帰反射物体401と車両100との間の距離が所定の距離未満である場合において、再帰反射物体401と車両100との間の距離が所定の距離以上である場合よりも第1光量及び第2光量の総和が少なくなるように、制御部40は灯具20a及び灯具20bを制御していることとなる。次に、再帰反射物体401と車両100との間の距離が所定の距離以上である場合における第1光量「100」及び第2光量「100」と、再帰反射物体401と車両100との間の距離が所定の距離未満である場合における第1光量「60」及び第2光量「80」とを比較する。両者を比較すると、再帰反射物体401と車両100との間の距離が所定の距離未満である場合において、再帰反射物体401と車両100との間の距離が所定の距離以上である場合よりも第1光量及び第2光量のそれぞれが少なくなるように、制御部40は灯具20a及び灯具20bを制御していることとなる。
【0057】
上記したように、第1光量は、再帰反射物体401と車両100との間の距離が所定の距離未満である場合において、再帰反射物体401と車両100との間の距離が所定の距離以上である場合よりも少なくされている。従って、
図6に示す領域AR11における第1光量は、再帰反射物体401と車両100との間の距離が所定の距離以上である場合において第1光によって形成される配光パターンにおける光量よりも少なくされる。また、第2光量は、再帰反射物体401と車両100との間の距離が所定の距離未満である場合において、再帰反射物体401と車両100との間の距離が所定の距離以上である場合よりも少なくされている。従って、
図7に示す領域AR22における光量は、再帰反射物体401と車両100との間の距離が所定の距離以上である場合において第2光によって形成される配光パターンにおける光量よりも少なくされる。
【0058】
なお、再帰反射物体401と車両100との間の距離が所定の距離未満である場合において、再帰反射物体401と車両100との間の距離が所定の距離以上である場合よりも第1光量及び第2光量の総和が上記したように少なくなるのであればよい。例えば、再帰反射物体401と車両100との間の距離が所定の距離以上において第1光量が「100」であると共に第2光量が「100」である場合、再帰反射物体401と車両100との間の距離が所定の距離未満において第1光量が「50」となり、第2光量が「110」となるように、制御部40は灯具20a及び灯具20bを制御してもよい。従って、再帰反射物体401と車両100との間の距離が所定の距離未満である場合において、再帰反射物体401と車両100との間の距離が所定の距離以上である場合よりも、第1光量は少なくなるように、及び、第2光量は多くなるように、制御部40は灯具20a及び灯具20bを制御してもよい。
【0059】
上記したように第1光量及び第2光量の総和が制御されると、処理はステップS6に移行する。
【0060】
(ステップS6)
本ステップでは、制御部40は、一対の灯具20から再帰反射物体401に向かって出射される光の光量と、一対の灯具20から再帰反射物体401を除く車両100の前方に向かって出射される光の光量との差が所定の範囲に収まっているか否かを判定する。差が所定の範囲に収まっていると制御部40が判定する場合には、処理はステップS1に戻る。また、差が所定の範囲に収まっていないと制御部40が判定する場合には、処理はステップS7に移行する。
【0061】
(ステップS7)
本ステップでは、制御部40は、差が所定の範囲内の収まるように、一対の灯具20を制御する。ここでは、例えば、第1光量が第2光量よりも少なくなり、差が所定の範囲内に収まるように、制御部は灯具20a及び灯具20bの少なくとも一方を制御すればよい。再帰反射物体401を除く車両100の前方に歩行者等の対象物が位置している場合、上記した差が所定の範囲に収まることによって、再帰反射物体401の明るさと対象物の明るさとの相対的な差が抑制される。第1光量及び第2光量が制御されると、処理はステップS6に戻る。
【0062】
以上のように、本実施形態の車両用前照灯10は、車両100の前方の左右に配置される一対の灯具20と、一対の灯具20を制御する制御部40と、を備える。制御部40は、検出装置50からの車両100の前方に位置する再帰反射物体401を検出することを示す信号が入力する場合において、再帰反射物体401側に位置する灯具20aから再帰反射物体401に向かって出射される第1光の第1光量が、再帰反射物体401側とは反対側に位置する灯具20bから再帰反射物体401に向かって出射される第2光の第2光量よりも少なくなるように、灯具20a及び灯具20bを制御する。
【0063】
再帰反射物体401が光を反射する場合、再帰反射物体401から自車である車両100への反射光の強度は、再帰反射物体401に対する灯具20の車両100の左右方向におけるずれ量が小さいほど、強くなる傾向がある。再帰反射物体401が車両100の左側に位置する場合、本実施形態の車両用前照灯10では、灯具20aは再帰反射物体401側に位置し、灯具20bは灯具20aを基準として再帰反射物体401側とは反対側に位置する。このため、再帰反射物体401に対する灯具20aの車両100の左右方向におけるずれ量は、再帰反射物体401に対する灯具20bの車両100の左右方向におけるずれ量に比べて小さくされる。本実施形態の車両用前照灯10では、再帰反射物体401が検出される場合では、再帰反射物体401側に位置する灯具20aから再帰反射物体401に向かう第1光の第1光量が再帰反射物体401側とは反対側に位置する灯具20bから再帰反射物体401に向かう第2光の第2光量よりも少なくなる。このように、第1光量が第2光の第2光量よりも少なくなると、第1光量が第2光量よりも少なくならない場合に比べて、反射光の強度が抑制され得、反射光が自車に進行したとしても自車の運転者へのグレアの付与が抑制され得る。従って、この車両用前照灯10によれば、運転者の視認性の低下が抑制され得る。なお、制御部40は、再帰反射物体が所定の要件を満たすか否かを示す判定部35の判定結果を入力されると、再帰反射物体401が検出されると判定してもよい。この場合、検出装置50は、再帰反射物体401を検出することを示す信号の制御部40への出力をしなくてもよい。
【0064】
また、本実施形態の車両用前照灯10は、検出装置50から再帰反射物体401の状態を示す信号が入力する場合において、再帰反射物体401からの反射光の光量が所定値以上となる所定の要件を再帰反射物体401が満たす状態か否かを判定する判定部35をさらに備える。判定部35によって再帰反射物体401が所定の要件を満たす状態と判定される場合において、判定部35によって再帰反射物体401が所定の要件を満たす状態ではないと判定される場合よりも第1光量及び第2光量の総和が少なくなるように、制御部40は灯具20a及び灯具20bを制御する。
【0065】
この車両用前照灯10によれば、再帰反射物体401が所定の要件を満たしていない状態よりも再帰反射物体401が所定の要件を満たす状態において、反射光の強度がより抑制され得る。従って、この車両用前照灯10によれば、運転者の視認性の低下がより抑制され得る。
【0066】
また、本実施形態の車両用前照灯10では、判定部35によって再帰反射物体401が所定の要件を満たす状態と判定される場合において、判定部35によって再帰反射物体401が所定の要件を満たす状態ではないと判定される場合よりも第1光量及び第2光量のそれぞれが少なくなるように、制御部40は灯具20a及び灯具20bを制御する。
【0067】
この車両用前照灯10によれば、再帰反射物体401が所定の要件を満たしていない状態よりも再帰反射物体401が所定の要件を満たす状態において、再帰反射物体401への第1光及び第2光の照射が抑制され、反射光の強度がより抑制され得る。従って、この車両用前照灯10によれば、運転者の視認性の低下がより抑制され得る。
【0068】
また、本実施形態の車両用前照灯10では、判定部35によって再帰反射物体401が所定の要件を満たす状態と判定される場合において、判定部35によって再帰反射物体401が所定の要件を満たす状態ではないと判定される場合よりも、第1光量は少なくなるように、及び、第2光量は多くなるように、制御部40は灯具20a及び灯具20bを制御してもよい。
【0069】
この場合、第2光量が多くならない場合に比べて、再帰反射物体401は第2光によって明るくされるため、再帰反射物体401に対する運転者の視認性が確保され得る。
【0070】
また、本実施形態の車両用前照灯10では、判定部35によって再帰反射物体401が所定の要件を満たす状態と判定される場合に、一対の灯具20から再帰反射物体401に向かって出射される光の光量と一対の灯具20から再帰反射物体401を除く車両100の前方に向かって出射される光の光量との差が所定の範囲に収まるように、制御部40は一対の灯具20を制御する。
【0071】
再帰反射物体401を除く車両100の前方に歩行者等の対象物が位置している場合、上記した差が所定の範囲に収まることによって、再帰反射物体401の明るさと対象物の明るさとの相対的な差が抑制され得る。従って、この車両用前照灯10によれば、対象物に対する運転者の視認性の低下が抑制され得る。
【0072】
また、一対の灯具20から出射する光の光量が変わらない状態で、再帰反射物体401と車両100との間の距離が所定の距離未満の状態となると、距離が所定の距離以上の状態と比べて、再帰反射物体401から自車への反射光の強度は強くなる傾向がある。ところで、本実施形態の車両用前照灯10では、所定の要件を満たす状態は、再帰反射物体401と車両100との間の距離が所定の距離未満の状態である。当該距離が所定の距離未満の状態である場合、制御部40は上記のように第1光量が第2光量よりも少なくなるように一対の灯具20を制御する。従って、距離が所定の距離未満の状態となると、距離が所定の距離以上の状態と比べて、再帰反射物体401から自車へ進行する反射光の強度が抑制され得、グレアの付与が抑制され得、運転者の視認性の低下が抑制され得る。
【0073】
以上、本発明について、上記実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0074】
灯具20aの構成は、特に上記に限定されるものではない。灯具20aの構成は、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)やガルバノミラー等を用いて光源から出射する光を走査させて光を前方に出射する構成であってもよい。灯具20aの構成は、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)や回折格子等を用いて光源から出射する光を回折して所望の配光パターンを形成して前方に出射する構成であってもよい。また、灯具20aは、例えば、パラボラ型の灯具、プロジェクター型の灯具、または直射レンズ型の灯具等とされてもよい。灯具20aは、並列された複数の発光素子を有してもよい。複数の発光素子は、マトリックス状に配置されて上下方向及び左右方向に列を形成し、前方に向かって光を出射する。複数の発光素子のそれぞれは、発光素子のそれぞれに供給される電力によって、出射する光の光量を個別に変更可能とされている。また、これら発光素子は白色光を出射する蛍光体方式のLEDであり、灯具20aは所謂LEDアレイである。発光素子の数や構成は、特に限定されるものではない。例えば、発光素子は、互いに異なる波長の光を出射する複数のLEDであってもよいし、互いに異なる波長の光を出射する複数のLD(Laser Diode)であってもよい。灯具20bの構成は、灯具20aの構成と同じとされているが、灯具20aの構成と異なってもよい。
【0075】
撮影画像は、動画像及び静止画像の少なくとも一方であればよい。
【0076】
再帰反射物体が車両100の右斜め前方に位置する場合、灯具20bが再帰反射物体側に位置する灯具となり、灯具20aは再帰反射物体側とは反対側に位置する灯具となる。この場合、灯具20b,20aから出射する光の光量における制御は、実施形態にて説明した灯具20a,20bから出射する光の光量における制御と同様とされる。再帰反射物体401を用いて光量の制御を説明したが、これに限定される必要はない。光量は、例えば、一対の灯具20からの光を当該光の入射角と同じ反射角で反射する反射物体を用いて制御されてもよい。
【0077】
ハイビームの配光パターンにおける第1光量及び第2光量の制御について説明したが、ロービームの配光パターンにおいても、第1光量及び第2光量はハイビームの配光パターンと同様に制御される。
【0078】
検出装置50は、カメラによって撮影される撮影画像から再帰反射物体401の存在及び再帰反射物体401の存在位置を検出するが、これに限定される必要はない。検出装置50は、再帰反射物体401を検出可能なミリ波レーダやライダー等を搭載している場合、ミリ波レーダやライダー等から入力される信号に基に再帰反射物体401の存在及び再帰反射物体401の存在位置を検出してもよい。
【0079】
また、ミリ波レーダは、ミリ波を再帰反射物体401に送信して再帰反射物体401に当たって反射される反射波を受信する。ミリ波レーダは、受信結果を示す信号を算出部に出力する。受信結果は、再帰反射物体401の状態に含まれてもよい。算出部は、ミリ波レーダから入力される受信結果を基に、車両100と再帰反射物体401との間の距離を算出してもよい。
【0080】
また、検出装置50は、車両100の前方を撮影するステレオカメラを備えてもよい。ステレオカメラは、2つのカメラを備えており、それぞれのカメラによって撮影される撮影画像を算出部に出力する。撮影画像は、再帰反射物体401の状態に含まれてもよい。算出部は、2つ撮影画像において互いに対応する画素である対応画素における視差を求めるステレオマッチングを基に車両100と再帰反射物体401との間の距離を算出してもよい。従って、算出部は、ステレオカメラからの撮影画像を基に車両100と再帰反射物体401との間の距離を算出することとなる。また、判定部35は、ステレオマッチングを基に再帰反射物体401が車両100の右側及び左側のどちらに位置するかを判定してもよい。
【0081】
また、検出装置50の検出部は、画像処理部によって画像処理される撮影画像から撮影画像における再帰反射物体401の大きさの時間的な変化量を検出してもよい。変化量は、再帰反射物体の状態を示す信号に含まれるものである。時間が経過して再帰反射物体401から離れている車両100が対象物に近づいた場合には再帰反射物体401の大きさの変化量は小さく、時間が経過して車両が前進して対象物に近い車両100が再帰反射物体401にさらに近づいた場合には再帰反射物体401の大きさの変化量はより大きくなる。再帰反射物体401の大きさとは、例えば、再帰反射物体401の面積や、再帰反射物体401の幅などを示す。検出装置50は、車両100の前方に位置する再帰反射物体401を検出する場合に、撮影画像における再帰反射物体401の割合及び上記変化量といった再帰反射物体の状態を示す信号を算出部に出力する。算出部は、上記割合及び上記変化量を基に、距離を算出してもよい。
【0082】
検出装置50が判定部35に出力する信号は、再帰反射物体の状態だけである必要はなく、再帰反射物体以外の物体の状態を示してもよい。当該状態として、例えば、再帰反射物体以外の物体の存在、当該物体の存在位置、及び撮影画像における当該物体の割合が挙げられる。また、検出装置50が検出する対象物、対象物の種類の数、及び検出装置50の構成は、特に限定されるものではない。
【0083】
所定の要件は、特に限定されるものではなく、距離でなくても上記した再帰反射物体401の見た目上の大きさなどであってもよい。所定の要件が再帰反射物体401の見た目上の大きさである場合、所定の要件を満たす状態は、再帰反射物体401の見た目上の大きさが所定値以上の状態であることを示す。この場合、検出装置50の検出部は、上記のように、画像処理部によって画像処理される撮影画像から撮影画像における再帰反射物体401の大きさを検出する。判定部35は、再帰反射物体401の大きさを基に、再帰反射物体が所定の要件を満たす状態か否かを判定する。所定値は、閾値として記録部70に記録されており、日中や夜間といった車両100の走行状況などに応じて変更されてもよい。再帰反射物体401と車両100との間の距離が所定の距離以上であっても、再帰反射物体401の見た目上大きさが所定値以上である場合、再帰反射物体401の見た目上の大きさが所定値未満の場合に比べて、車両100からの光の一部は、反射光として再帰反射物体401から車両100に向かい、自車の運転者にグレアを与えてしまう懸念がある。上記のように、所定の要件を満たす状態が再帰反射物体401の見た目上の大きさが所定値以上の状態である場合、制御部40は上記のように第1光量が第2光量よりも少なくなるように、一対の灯具20を制御する。従って、再帰反射物体401と車両100との間の距離が所定の距離以上で、再帰反射物体401の見た目上の大きさが所定値以上である場合においても、再帰反射物体401から自車へ進行する反射光の強度が抑制され得、グレアの付与が抑制され得、運転者の視認性の低下が抑制され得る。上記において、再帰反射物体401の見た目上の大きさを用いて説明したが、所定の要件は、撮影画像における再帰反射物体401の割合であってもよい。所定の要件が当該割合である場合、所定の要件を満たす状態は、当該割合が所定値以上の状態である。
【0084】
上記において、所定の要件を満たす状態は、再帰反射物体401が所定の大きさ以上の状態としたが、これに限定される必要はない。例えば、所定の要件を満たす状態は、実施形態で説明した再帰反射物体401と車両100との間の距離が所定の距離未満の状態、再帰反射物体401の見た目上の大きさが所定値以上である状態、及び割合が所定値以上の状態である状態とのいずれかを組み合わせた状態であってもよい。
【0085】
図3に示すステップS5では、灯具20aが消灯し、車両100の前方に向かって出射される第1光の出射が停止されてもよい。または、判定本体部は再帰反射物体401の状態を示す信号を制御部40に出力し、制御部40は、この信号を基に、車両100の前方に向かって出射される第1光のうち再帰反射物体401への第1光の出射を、反射制御面23rを第2傾倒状態にすることによって抑制してもよい。灯具20aが所謂LEDアレイである場合、灯具20aの複数の発光素子のうち再帰反射物体に向かう第1光を出射する発光素子が消灯し、車両100の前方に向かって出射される第1光のうち、再帰反射物体に向かう第1光の出射が停止されてもよい。この場合、例えば、判定本体部は再帰反射物体の状態を示す信号を制御部40に出力し、制御部40は、この信号を基に、灯具20aの複数の発光素子のうち、再帰反射物体に向かう第1光を出射する発光素子を制御すればよい。
【0086】
再帰反射物体401が所定の要件を満たしていない場合では第2光の第2光量を「100」とし、再帰反射物体401が所定の要件を満たす場合では第2光の第2光量を「80」または「110」としているが、これに限定される必要はない。第2光の第2光量は、再帰反射物体401が所定の要件を満たす場合と再帰反射物体401が所定の要件を満たしていない場合とにおいて、同じにされてもよい。
【0087】
第1光及び第2光は、少なくとも再帰反射物体401に向かって出射されればよい。
【0088】
また、本実施形態の車両用前照灯10では、車両100の前方に向かって出射される第1光及び第2光のうち、灯具20aから少なくとも再帰反射物体401に向かう光の光量が灯具20bから少なくとも再帰反射物体401に向かう光の光量よりも少なくなればよい。この場合、例えば、判定本体部は再帰反射物体401の状態を示す信号を制御部40に出力し、制御部40は、この信号を基に、車両100の前方に向かって出射される第1光及び第2のうち再帰反射物体401への第1光及び第2の出射を、反射制御面23rを第2傾倒状態にすることによって抑制してもよい。また、灯具20a,20bが所謂LEDアレイである場合、制御部40は、灯具20aの複数の発光素子のうち再帰反射物体に向かう第1光を出射する発光素子を制御し、灯具20bの複数の発光素子のうち再帰反射物体に向かう第2光を出射する発光素子を制御すればよい。また、灯具20aから再帰反射物体401を除く車両100の前方に向かう光の光量は、灯具20bから再帰反射物体401に向かう光の光量と、灯具20bから再帰反射物体401を除く車両100の前方に向かう光の光量とに同じにされてもよいし、大きくされてもよい、小さくされてもよい。また、灯具20bから再帰反射物体401に向かう光の光量は、灯具20bから再帰反射物体401を除く車両100の前方に向かう光の光量より少なくされてもよい。
【0089】
以上説明したように、本発明によれば、運転者の視認性の低下が抑制され得る車両用前照灯が提供され、当該車両用前照灯は自動車等の車両用前照灯の分野等において利用可能である。