(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】相分析装置、試料分析装置、および分析方法
(51)【国際特許分類】
G01N 23/2252 20180101AFI20240422BHJP
G01N 23/2251 20180101ALI20240422BHJP
【FI】
G01N23/2252
G01N23/2251
(21)【出願番号】P 2022022238
(22)【出願日】2022-02-16
【審査請求日】2023-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100161540
【氏名又は名称】吉田 良伸
(72)【発明者】
【氏名】藤井 敦大
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 綱太
(72)【発明者】
【氏名】大竹 祐香
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-194691(JP,A)
【文献】特開2017-161309(JP,A)
【文献】特開2015-219217(JP,A)
【文献】特開2002-365246(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105486705(CN,A)
【文献】特開2023-068470(JP,A)
【文献】特開2023-068469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00 - G01N 23/2276
G01N 21/00 - G01N 21/958
G01N 27/60 - G01N 27/70
G01N 24/00 - G01N 24/14
G01N 33/00 - G01N 33/98
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料上の位置と前記試料からの信号に基づくスペクトルを対応づけたスペクトルイメージングデータを複数取得するデータ取得部と、
前記複数のスペクトルイメージングデータの各々に対して多変量解析を行って、前記スペクトルイメージングデータごとに第1代表スペクトル群を取得する第1取得部と、
前記第1取得部で取得された複数の前記第1代表スペクトル群に対して多変量解析を行って、第2代表スペクトル群を取得する第2取得部と、
前記第2代表スペクトル群に含まれる複数の代表スペクトルを分類する分類部と、
前記分類部における分類結果に基づいて、前記複数のスペクトルイメージングデータの各々に対して相分析を行う相分析部と、
を含む、相分析装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記相分析部は、
前記スペクトルイメージングデータごとに
、各ピクセル
の相を特定して相マップを作成し、
前記スペクトルイメージングデータごとに作成された前記相マップを結合して、1つの相マップを作成する、相分析装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第1取得部は、
前記複数のスペクトルイメージングデータを複数のグループに分け、
グループごとに多変量解析を行って、前記グループごとに前記第1代表スペクトル群を取得する、相分析装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記第2取得部は、
前記複数のスペクトルイメージングデータの各々において、前記第1代表スペクトル群を用いて各ピクセルのスペクトルを分類し、種類ごとに属するスペクトルを積算または平
均してスペクトル群を生成し、
複数の前記スペクトル群に対して多変量解析を行って、前記第2代表スペクトル群を取得する、相分析装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の相分析装置を含む、試料分析装置。
【請求項6】
試料上の位置と前記試料からの信号に基づくスペクトルを対応づけたスペクトルイメージングデータを複数取得する工程と、
前記複数のスペクトルイメージングデータの各々に対して多変量解析を行って、前記スペクトルイメージングデータごとに第1代表スペクトル群を取得する工程と、
取得された複数の前記第1代表スペクトル群に対して多変量解析を行って、第2代表スペクトル群を取得する工程と、
前記第2代表スペクトル群に含まれる複数の代表スペクトルを分類する工程と、
前記分類部における分類結果に基づいて、前記複数のスペクトルイメージングデータの各々に対して相分析を行う工程と、
を含む、分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相分析装置、試料分析装置、および分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー分散型X線分光器(EDS)や波長分散型X線分光器(WDS)等のX線検出器が搭載された走査電子顕微鏡では、試料上の位置とX線スペクトルを対応づけたスペクトルイメージングデータを取得できる。スペクトルイメージングデータを用いて化合物の分布を求める手法として、相分析が知られている。
【0003】
相分析は、複数の元素の相関関係から化合物の相を抽出し、相ごとの相関を調べる手法である。例えば、特許文献1には、元素マップデータから化合物の相の分布を示す相マップを作成する手法が開示されている。特許文献1では、主成分分析を用いて複数の元素の相関関係に基づき化合物の相を抽出するため、ユーザーが多数の元素から適切な元素の組み合わせを選択してその相関関係を見つけ出す必要がなく、容易に相マップを作成できる。
【0004】
電子顕微鏡では、高い倍率での観察が可能であるが、電子顕微鏡で得られる視野は狭い。そのため、特許文献2には、電子顕微鏡において、視野を移動させながら撮影を繰り返して複数の観察画像を取得し、取得した複数の観察画像をつなぎ合わせて1つの大きな画像(モンタージュ画像)を作成する手法が開示されている。モンタージュ画像では、試料の広い領域を一度に観察できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-219217号公報
【文献】特開2010-20997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
相マップについても特許文献2に記載された手法と同様の手法を用いることで、試料の広い領域の化合物の分布を観察できるモンタージュ画像を得ることができる。例えば、スペクトルイメージングデータごとに相マップを作成し、複数の相マップを結合して1つの相マップを作成することで、化合物の分布を観察できるモンタージュ画像が得られる。しかしながら、この場合、スペクトルイメージングデータごとに相マップが作成されるため、個々の相マップに整合性がないと、複数の相マップに同じ相(化合物)が存在したとしても、別の相に分類される場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る相分析装置の一態様は、
試料上の位置と前記試料からの信号に基づくスペクトルを対応づけたスペクトルイメージングデータを複数取得するデータ取得部と、
前記複数のスペクトルイメージングデータの各々に対して多変量解析を行って、前記スペクトルイメージングデータごとに第1代表スペクトル群を取得する第1取得部と、
前記第1取得部で取得された複数の前記第1代表スペクトル群に対して多変量解析を行って、第2代表スペクトル群を取得する第2取得部と、
前記第2代表スペクトル群に含まれる複数の代表スペクトルを分類する分類部と、
前記分類部における分類結果に基づいて、前記複数のスペクトルイメージングデータの各々に対して相分析を行う相分析部と、
を含む。
【0008】
このような相分析装置では、複数の第1代表スペクトル群に対して多変量解析を行って第2代表スペクトル群を取得し、第2代表スペクトル群を用いて複数のスペクトルイメージングデータの各々に対して相分析を行うため、複数のスペクトルイメージングデータから整合性がある相分析結果を得ることができる。
【0009】
本発明に係る分析方法の一態様は、
試料上の位置と前記試料からの信号に基づくスペクトルを対応づけたスペクトルイメージングデータを複数取得する工程と、
前記複数のスペクトルイメージングデータの各々に対して多変量解析を行って、前記スペクトルイメージングデータごとに第1代表スペクトル群を取得する工程と、
取得された複数の前記第1代表スペクトル群に対して多変量解析を行って、第2代表スペクトル群を取得する工程と、
前記第2代表スペクトル群に含まれる複数の代表スペクトルを分類する工程と、
前記分類部における分類結果に基づいて、前記複数のスペクトルイメージングデータの各々に対して相分析を行う工程と、
を含む。
【0010】
このような分析方法では、複数の第1代表スペクトル群に対して多変量解析を行って第2代表スペクトル群を取得し、第2代表スペクトル群を用いて複数のスペクトルイメージングデータの各々に対して相分析を行うため、複数のスペクトルイメージングデータから整合性がある相分析結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る相分析装置を含む試料分析装置の構成を示す図。
【
図2】本発明の一実施形態に係る相分析装置の構成を示す図。
【
図3】本発明の一実施形態に係る相分析装置における分析方法を説明するための図。
【
図4】本発明の一実施形態に係る相分析装置の処理の流れの一例を示す図。
【
図7】階層的クラスタリング法を説明するための図。
【
図8】階層的クラスタリング法を説明するための図。
【
図9】4つの相マップを結合する処理を説明するための図。
【
図10】参考例に係る分析方法を説明するための図。
【
図11】参考例に係る分析方法で得られた結合相マップを模式的に示す図。
【
図12】第1変形例に係る分析方法を説明するための図。
【
図13】第2変形例に係る分析方法を説明するための図。
【
図14】複数のスペクトルイメージングデータの取得方法の一例を説明するための図。
【
図15】複数のスペクトルイメージングデータの取得方法の一例を説明するための図。
【
図16】複数のスペクトルイメージングデータの取得方法の一例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0013】
1. 分析装置
まず、本発明の一実施形態に係る相分析装置について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る相分析装置80を含む試料分析装置100の構成を示す図である。
【0014】
試料分析装置100は、X線検出器70が搭載された走査電子顕微鏡である。試料分析装置100では、電子プローブEPで試料Sを走査して、試料S上の位置とX線スペクトルを対応づけたスペクトルイメージングデータを取得できる。
【0015】
試料分析装置100は、
図1に示すように、電子銃10と、コンデンサーレンズ20と、走査コイル30と、対物レンズ40と、試料ステージ50と、二次電子検出器60と、X線検出器70と、相分析装置80と、を含む。
【0016】
電子銃10は、電子線を放出する。電子銃10は、例えば、陰極から放出された電子を陽極で加速し電子線を放出する。
【0017】
コンデンサーレンズ20および対物レンズ40は、電子銃10から放出された電子線を集束させて電子プローブEPを形成する。コンデンサーレンズ20によって、プローブ径およびプローブ電流を制御することができる。
【0018】
走査コイル30は、電子線を二次元的に偏向させる。走査コイル30で電子線を二次元的に偏向させることによって、電子プローブEPで試料Sを走査できる。
【0019】
試料ステージ50は、試料Sを保持することができる。試料ステージ50は、試料Sを移動させるための移動機構を有している。
【0020】
二次電子検出器60は、電子線が試料Sに照射されることによって試料Sから放出された二次電子を検出する。電子プローブEPで試料Sを走査し、試料Sから放出された二次電子を二次電子検出器60で検出することで、二次電子像を得ることができる。なお、試料分析装置100は、電子線が試料Sに照射されることによって試料Sから放出された反射電子を検出する反射電子検出器を備えていてもよい。
【0021】
X線検出器70は、電子線が試料Sに照射されることによって試料Sから放出された特性X線を検出する。X線検出器70は、例えば、エネルギー分散型X線検出器(EDS)である。なお、X線検出器70は、波長分散型X線分光器(WDS)であってもよい。電子プローブEPで試料Sを走査し、試料Sから放出された特性X線をX線検出器70で検出することで、スペクトルイメージングデータを得ることができる。
【0022】
スペクトルイメージングデータは、試料上の位置(座標)と試料からの信号に基づくスペクトルを対応づけたデータである。すなわち、スペクトルイメージングデータは、スペクトルの集合体である。試料分析装置100では、スペクトルイメージングデータとして、試料S上の位置とX線スペクトル(EDSスペクトル)を対応づけたデータを取得できる。試料分析装置100では、試料S上を電子プローブEPで走査しながら、各ピクセルごとにX線スペクトルを収集し、試料S上の位置(ピクセルの座標)とX線スペクトルを対応づけて記憶する。これにより、スペクトルイメージングデータを取得できる。
【0023】
相分析装置(情報処理装置)80は、スペクトルイメージングデータを用いて相分析を行い、相分析の結果を表示する。
【0024】
【0025】
相分析装置80は、
図2に示すように、処理部800と、操作部810と、表示部820と、記憶部830と、を含む。
【0026】
操作部810は、ユーザーが操作情報を入力するためのものであり、入力された操作情報を処理部800に出力する。操作部810の機能は、キーボード、マウス、ボタン、タッチパネル、タッチパッドなどの入力機器により実現することができる。
【0027】
表示部820は、処理部800によって生成された画像を表示するものであり、その機能は、LCD(Liquid Crystal Display)や、CRT(Cathode Ray Tube)などのディスプレイにより実現できる。
【0028】
記憶部830は、処理部800の各部としてコンピューターを機能させるためのプログラムや各種データを記憶している。また、記憶部830は、処理部800のワーク領域としても機能する。記憶部830の機能は、ハードディスク、RAM(Random Access Memory)などにより実現できる。
【0029】
処理部800は、記憶部830に記憶されているプログラムを実行することで、以下に説明する、データ取得部801、第1取得部802、第2取得部803、分類部804、相分析部805、表示制御部806として機能する。処理部800の機能は、各種プロセッサ(CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハードウェアで、プログラムを実行することにより実現できる。処理部800は、データ取得部801と、第1取得部802と、第2取得部803と、分類部804と、相分析部805と、表示制御部806と、を含む。
【0030】
データ取得部801は、試料分析装置100で試料Sを測定して得られた複数のスペクトルイメージングデータを取得する。複数のイメージングデータは、互いに関連するデータである。例えば、複数のイメージングデータは、同一試料を測定して得られた複数のデータである。
【0031】
第1取得部802は、データ取得部801が取得した複数のスペクトルイメージングデータの各々に対して多変量解析を行って、スペクトルイメージングデータごとに代表スペクトル群(部分代表スペクトル)を取得する。多変量解析としては、自己組織化マップ、階層的クラスタリング法、K-means法、主成分分析、特異値分解、非負値行列分解、頂点成分分析などの手法が挙げられる。また、これらの手法を組み合わせてもよい。
【0032】
第1取得部802は、複数のスペクトルイメージングデータの各々に対して多変量解析を行うことで、各スペクトルイメージングデータに含まれる複数のX線スペクトルから、複数の代表的なスペクトル(代表スペクトル)を抽出する。すなわち、第1取得部802は、スペクトルイメージングデータに含まれる複数のX線スペクトルを対象として多変量解析を行い、どのようなパターンのX線スペクトルで構成されているかを解析する。
【0033】
このようにしてスペクトルイメージングデータごとに抽出された複数の代表スペクトルを、部分代表スペクトル群という。すなわち、第1取得部802は、スペクトルイメージングデータの数だけ部分代表スペクトル群を取得する。
【0034】
第2取得部803は、第1取得部802で取得された複数の部分代表スペクトル群に対して多変量解析を行って、複数のスペクトルイメージングデータの全体を代表する代表ス
ペクトル群(全体代表スペクトル群)を取得する。
【0035】
第2取得部803は、第1取得部802で取得された複数の部分代表スペクトル群に対して多変量解析を行うことで、複数の部分代表スペクトル群に含まれるすべての代表スペクトルから、複数の代表的な代表スペクトルを抽出する。すなわち、第2取得部803は、複数の部分代表スペクトル群に含まれるすべての代表スペクトルを対象として多変量解析を行い、どのようなパターンの代表スペクトルで構成されているかを解析する。
【0036】
このようにして、第2取得部803は、複数のスペクトルイメージングデータの全体を代表する複数の代表スペクトルからなる全体代表スペクトル群を取得する。
【0037】
第2取得部803における多変量解析としては、自己組織化マップ、階層的クラスタリング法、K-means法、主成分分析、特異値分解、非負値行列分解、頂点成分分析などの手法が挙げられる。第2取得部803における多変量解析の手法は、第1取得部802における多変量解析の手法と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0038】
分類部804は、第2取得部803で取得された全体代表スペクトル群に含まれる複数の代表スペクトルを分類する。分類部804は、例えば、全体代表スペクトル群に対してクラスター分析を行って、全体代表スペクトル群に含まれる複数の代表スペクトルを分類し、クラスターを作成する。クラスター分析は、多変量解析の一種であり、データ群のなかで類似したデータ同士を集めて仲間分けする教師なし学習である。クラスター分析としては、階層的クラスタリング法、K-means法などが挙げられる。
【0039】
相分析部805は、複数のスペクトルイメージングデータの各々において、各ピクセルのX線スペクトルと全体代表スペクトル群に含まれる複数の代表スペクトルとの類似度を求め、各ピクセルのスペクトルがどのクラスター(相)に属するかを判定する。すなわち、相分析部805は、各ピクセルのX線スペクトルが分類部804で分類されたどのクラスター(パターン)に属するか分類し、各ピクセルの相(化合物)を特定する。相分析部805は、例えば、特定された各ピクセルの相を色分けし、相マップを作成する。
【0040】
相分析部805は、スペクトルイメージングデータごとに作成された相マップを結合して、1つの相マップ(結合相マップ)を作成する。
【0041】
表示制御部806は、結合相マップを表示部820に表示させる。
【0042】
2. 分析方法
図3は、相分析装置80における分析方法を説明するための図である。
図4は、相分析装置80の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0043】
<スペクトルイメージングデータの取得S10>
データ取得部801は、試料分析装置100で試料Sを測定して得られた、複数のスペクトルイメージングデータを取得する。
図3に示す例では、データ取得部801は、4つのスペクトルイメージングデータ(第1スペクトルイメージングデータD1、第2スペクトルイメージングデータD2、第3スペクトルイメージングデータD3、第4スペクトルイメージングデータD4)を取得する。
【0044】
【0045】
図5に示すように、試料分析装置100において、電子プローブEPで試料Sの第1領域A1を走査し、試料Sから放出されたX線をX線検出器70で検出し、検出位置(試料
S上の座標)とX線スペクトルデータを関連付けて記憶することで、第1領域A1の第1スペクトルイメージングデータD1を得ることができる。データ取得部801は、試料分析装置100で第1領域A1を測定することで得られた第1スペクトルイメージングデータD1を取得する。第1スペクトルイメージングデータD1では、各ピクセルPに対応する試料S上の位置と、その試料S上の位置で得られたX線スペクトルが関連付けて記憶されている。
【0046】
第1領域A1に隣接する第2領域A2についても、試料分析装置100において第1領域A1と同様に測定を行い、データ取得部801は、第2スペクトルイメージングデータD2を取得する。第1領域A1の測定を終えた後、第2領域A2に移動する際には、試料ステージ50で試料Sを移動させる。これにより、電子プローブEPの走査範囲よりも広い領域の測定が可能となる。
【0047】
第2領域A2に隣接する第3領域A3、および第3領域A3に隣接する第4領域A4についても、試料分析装置100において第1領域A1と同様に測定を行い、データ取得部801は、第3スペクトルイメージングデータD3および第4スペクトルイメージングデータD4を取得する。
【0048】
データ取得部801が取得した第1スペクトルイメージングデータD1、第2スペクトルイメージングデータD2、第3スペクトルイメージングデータD3、および第4スペクトルイメージングデータD4は、記憶部830に記憶される。
【0049】
<部分代表スペクトル群の取得S20>
第1取得部802は、データ取得部801が取得した4つのスペクトルイメージングデータの各々に対して多変量解析を行って、スペクトルイメージングデータごとに部分代表スペクトル群を取得する。
【0050】
第1取得部802は、第1スペクトルイメージングデータD1に対して多変量解析を行って代表スペクトルを抽出し、部分代表スペクトル群G1を取得する。第1取得部802は、例えば、自己組織化マップを用いて代表スペクトルを抽出する。
【0051】
図6は、自己組織化マップを説明するための図である。
図6において、丸はノードを表し、矢印はベクトルを表し、太枠で囲まれたノードは勝者ノードを表している。
【0052】
まず、出力層の全ノードにベクトルを与える。次に、各入力データに対して、出力層上で最も類似するベクトルを持っているノード(勝者ノード)を探索する。次に、各勝者ノードが周辺ノードに分配する学習量を求める。次に、出力層の全ベクトルを、入力データの重みづけ平均になるように更新する。この勝者ノードを探索する処理、学習量を求める処理、出力層の全ベクトルを更新する処理を、規定の回数繰り返す。この結果、出力層のノードのベクトルは、入力データの代表的なベクトルとなる。
【0053】
横軸がチャンネル(エネルギー)、縦軸がX線強度で表されるX線スペクトルを学習させる場合には、X線スペクトルの各チャンネル(エネルギー)またはROI(region of interest)を1つの次元とし、そのX線強度を成分としたベクトルとして扱う。ROIは、所定のエネルギー幅を持った領域をいう。
【0054】
第1取得部802は、第1スペクトルイメージングデータD1に対して自己組織化マップを用いて代表スペクトルを抽出し、部分代表スペクトル群G1を取得する。部分代表スペクトル群G1は、第1スペクトルイメージングデータD1に含まれる複数のX線スペクトルを代表するスペクトル(代表スペクトル)の集まりである。
【0055】
第1取得部802は、第2スペクトルイメージングデータD2に対しても、第1スペクトルイメージングデータD1と同様に、自己組織化マップを用いて代表スペクトルを抽出し、部分代表スペクトル群G2を取得する。
【0056】
第1取得部802は、第3スペクトルイメージングデータD3に対しても、第1スペクトルイメージングデータD1と同様に、自己組織化マップを用いて代表スペクトルを抽出し、部分代表スペクトル群G3を取得する。
【0057】
第1取得部802は、第4スペクトルイメージングデータD4に対しても、第1スペクトルイメージングデータD1と同様に、自己組織化マップを用いて代表スペクトルを抽出し、部分代表スペクトル群G4を取得する。
【0058】
なお、上記では、第1取得部802は、自己組織化マップを用いてスペクトルイメージングデータから代表スペクトルを抽出したが、スペクトルイメージングデータから代表スペクトルを抽出する手法は自己組織化マップに限定されず、K-means法などその他の多変量解析を用いてもよい。
【0059】
<全体代表スペクトル群の取得S30>
第2取得部803は、部分代表スペクトル群G1、部分代表スペクトル群G2、部分代表スペクトル群G3、および部分代表スペクトル群G4に対して多変量解析を行って、全体代表スペクトル群Gを取得する。第2取得部803は、部分代表スペクトル群G1、部分代表スペクトル群G2、部分代表スペクトル群G3、および部分代表スペクトル群G4に含まれるすべての代表スペクトルを対象として、多変量解析を行う。
【0060】
第2取得部803は、部分代表スペクトル群G1、部分代表スペクトル群G2、部分代表スペクトル群G3、および部分代表スペクトル群G4を入力データとして、部分代表スペクトル群G1、部分代表スペクトル群G2、部分代表スペクトル群G3、および部分代表スペクトル群G4に含まれるすべての代表スペクトルから自己組織化マップを用いて代表的なスペクトルを抽出し、全体代表スペクトル群Gを取得する。
【0061】
なお、上記では、第2取得部803は、自己組織化マップを用いて部分代表スペクトル群から代表スペクトルを抽出したが、部分代表スペクトル群から代表スペクトルを抽出する手法は自己組織化マップに限定されず、K-means法などその他の多変量解析を用いてもよい。
【0062】
<分類S40>
分類部804は、全体代表スペクトル群Gに含まれる複数の代表スペクトルを分類する。分類部804は、例えば、階層的クラスタリング法を用いて、複数の代表スペクトルを分類し、クラスターを作成する。
【0063】
図7および
図8は、階層的クラスタリング法を説明するための図である。
【0064】
分類部804は、
図7および
図8に示すように、全体代表スペクトル群Gに含まれる複数の代表スペクトル(代表スペクトルC1、代表スペクトルC2、代表スペクトルC3、代表スペクトルC4、代表スペクトルC5、代表スペクトルC6、代表スペクトルC7、代表スペクトルC8、代表スペクトルC9、代表スペクトルC10)を、階層的クラスタリング法を用いて併合して、クラスターを作成する。
【0065】
具体的には、分類部804は、代表スペクトルC1,C2,C3,C4,C5,C6,
C7,C8,C9,C10間の距離(非類似度)およびクラスター間の距離(非類似度)を求め、その距離が短い組み合わせから順に併合する。併合の過程は、樹形図で表すことができる。併合に要する距離を結合距離という。
【0066】
図8に示すように、樹形図を閾値Tで切断することによって、新たなクラスターを作成できる。階層的クラスタリング法では、閾値Tを調整することで、任意の数のクラスターを作成できる。図示の例では、樹形図を閾値Tで切断することによって、4つのクラスターが作成されている。
【0067】
<相マップの作成S50>
相分析部805は、全体代表スペクトル群Gを用いて、複数のスペクトルイメージングデータD1,D2,D3,D4の各々に対して相分析を行う。具体的には、相分析部805は、スペクトルイメージングデータごとに、全体代表スペクトル群Gを用いて各ピクセルのスペクトルを分類して、相マップを作成し、スペクトルイメージングデータごとに作成された相マップを結合して、1つの相マップ(結合相マップM)を作成する。
【0068】
相分析部805は、まず、第1スペクトルイメージングデータD1の各ピクセルのX線スペクトルと、全体代表スペクトル群Gに含まれる各代表スペクトルとの類似度を求め、各ピクセルのX線スペクトルがどのクラスター(相)に属するかを判定する。この結果、各ピクセルがどの相に該当するのかを特定でき、相マップM1を作成できる。
【0069】
相分析部805は、第2スペクトルイメージングデータD2に対しても第1スペクトルイメージングデータD1と同様の処理を行って、相マップM2を作成する。相分析部805は、第3スペクトルイメージングデータD3に対しても第1スペクトルイメージングデータD1と同様の処理を行って、相マップM3を作成する。相分析部805は、第4スペクトルイメージングデータD4に対しても第1スペクトルイメージングデータD1と同様の処理を行って、相マップM4を作成する。
【0070】
<相マップの結合S60>
相分析部805は、相マップM1、相マップM2、相マップM3、および相マップM4を結合して1つの相マップMを作成する。
【0071】
図9は、相マップM1、相マップM2、相マップM3、および相マップM4を結合する処理を説明するための図である。
【0072】
図5に示すように、相マップM1は、第1領域A1を測定して得られたマップであり、相マップM2は、第2領域A2を測定して得られたマップであり、相マップM3は、第3領域A3を測定して得られたマップであり、相マップM4は、第4領域A4を測定して得られたマップである。そのため、
図5に示す各領域の位置関係に基づいて、相マップM1、相マップM2、相マップM3、および相マップM4を結合することによって、結合相マップMを作成できる。
【0073】
<表示S70>
表示制御部806は、結合相マップMを表示部820に表示させる。
【0074】
3. 効果
相分析装置80は、複数のスペクトルイメージングデータを取得するデータ取得部801と、複数のスペクトルイメージングデータの各々に対して多変量解析を行ってスペクトルイメージングデータごとに部分代表スペクトル群(第1代表スペクトル群)を取得する第1取得部802と、第1取得部802で取得された複数の部分代表スペクトル群に対し
て多変量解析を行って、全体代表スペクトル群(第2代表スペクトル群)を取得する第2取得部803と、全体代表スペクトル群を用いて複数のスペクトルイメージングデータの各々に対して相分析を行う相分析部805と、を含む。
【0075】
そのため、相分析装置80では、第1取得部802で取得された複数の部分代表スペクトル群に対して多変量解析を行って全体代表スペクトル群を取得し、全体代表スペクトル群を用いて複数のスペクトルイメージングデータの各々に対して相分析を行うため、複数のスペクトルイメージングデータから整合性がある相分析結果(相マップ)を得ることができる。
【0076】
図10は、参考例に係る分析方法を説明するための図である。
図11は、参考例に係る分析方法で得られた結合相マップMを模式的に示す図である。
【0077】
図10に示す参考例に係る分析方法では、第1スペクトルイメージングデータD1に対して自己組織化マップを用いて部分代表スペクトル群G1を取得し、取得した部分代表スペクトル群G1が含む複数の代表スペクトルを階層的クラスタリング法を用いて分類し、分類結果に基づいて相マップM1を作成する。同様に、第2スペクトルイメージングデータD2を用いて相マップM2を作成し、第3スペクトルイメージングデータD3を用いて相マップM3を作成し、第4スペクトルイメージングデータD4を用いて相マップM4を作成する。このようにして作成された相マップM1、相マップM2、相マップM3、および相マップM4を結合して1つの相マップM(結合相マップM)を作成する。
【0078】
このように各相マップM1、M2,M3,M4を作成するための処理は、個々に行われ関連性がないため、各代表スペクトルの分類において、複数の相マップに同一の相が存在する場合でも、異なる相に分類される可能性がある。そのため、
図11に示すように、結合相マップMにおいて、同じ相(化合物)にも関わらず、異なる相として表示される。このように、参考例に係る分析方法では、複数のスペクトルイメージングデータに対して相分析を行っても整合性がある相分析結果を得ることができない場合がある。
【0079】
これに対して、相分析装置80では、スペクトルイメージングデータごとに取得された部分代表スペクトル群に含まれるすべての代表スペクトルを対象として多変量解析を行って、全体代表スペクトル群Gを取得するため、複数のスペクトルイメージングデータに対して、共通の分類結果(共通のクラスター分析の結果)に基づいて、相分析を行うことができる。したがって、相分析装置80では、複数のスペクトルイメージングデータから整合性がある相分析結果を得ることができる。
【0080】
相分析装置80では、相分析部805は、スペクトルイメージングデータごとに、全体代表スペクトル群Gを用いて各ピクセルのスペクトルを分類して相マップを作成し、スペクトルイメージングデータごとに作成された相マップを結合して、1つの相マップMを作成する。そのため、相分析装置80では、整合性のある複数の相マップを作成でき、良好な結合相マップMを得ることができる。
【0081】
4. 変形例
次に、相分析装置80における分析方法の変形例について説明する。以下では、上述した相分析装置80の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0082】
4.1. 第1変形例
図12は、第1変形例に係る分析方法を説明するための図である。
【0083】
上述した実施形態では、
図4に示す部分代表スペクトル群を取得する処理S20におい
て、第1取得部802は、複数のスペクトルイメージングデータの各々に対して多変量解析を行って、スペクトルイメージングデータごとに部分代表スペクトル群を取得した。
【0084】
これに対して、第1変形例では、
図4に示す部分代表スペクトル群を取得する処理S20において、第1取得部802は、複数のスペクトルイメージングデータを複数のグループに分け、グループごとに多変量解析を行って、グループごとに部分代表スペクトル群を取得する。
【0085】
第1取得部802は、
図12に示すように、まず、データ取得部801が取得した4つのスペクトルイメージングデータを2つのグループに分ける。図示の例では、第1スペクトルイメージングデータD1および第2スペクトルイメージングデータD2をグループAとし、第3スペクトルイメージングデータD3および第4スペクトルイメージングデータD4をグループBとする。
【0086】
第1取得部802は、グループAに属する第1スペクトルイメージングデータD1に対して多変量解析を行って、部分代表スペクトル群G1を取得する。同様に、第1取得部802は、グループAに属する第2スペクトルイメージングデータD2に対して多変量解析を行って、部分代表スペクトル群G2を取得する。
【0087】
次に、第1取得部802は、部分代表スペクトル群G1および部分代表スペクトル群G2に対して多変量解析を行って、部分代表スペクトル群G1および部分代表スペクトル群G2に含まれる複数の代表スペクトルから、代表的な代表スペクトルを抽出し、グループAにおける部分代表スペクトル群G12を取得する。
【0088】
同様に、第1取得部802は、部分代表スペクトル群G3および部分代表スペクトル群G4に対して多変量解析を行って、部分代表スペクトル群G3および部分代表スペクトル群G4に含まれる複数の代表スペクトルから、代表的な代表スペクトルを抽出し、グループBにおける部分代表スペクトル群G34を取得する。
【0089】
このようにして、第1取得部802は、グループごとに部分代表スペクトル群G12,G34を取得する。
【0090】
全体代表スペクトル群Gを取得する処理S30では、第2取得部803は、グループAの部分代表スペクトル群G12およびグループBの部分代表スペクトル群G34に対して多変量解析を行って、全体代表スペクトル群Gを取得する。すなわち、第2取得部803は、部分代表スペクトル群G12および部分代表スペクトル群G34に含まれるすべての代表スペクトルを対象として多変量解析を行って、代表的な代表スペクトルを抽出し、全体代表スペクトル群Gを取得する。
【0091】
第1変形例では、第1取得部802は、複数のスペクトルイメージングデータを複数のグループに分け、グループごとに多変量解析を行って、グループごとに部分代表スペクトル群を取得する。そのため、第1変形例では、例えば複数のスペクトルイメージングデータの各々に対して多変量解析を行ってスペクトルイメージングデータごとに部分代表スペクトル群を取得する場合と比べて、第2取得部803が一度に処理するスペクトルの数を減らすことができる。したがって、第1変形例では、処理の負荷を低減できる。
【0092】
4.2. 第2変形例
図13は、第2変形例に係る分析方法を説明するための図である。
【0093】
上述した実施形態では、
図4に示す全体代表スペクトル群Gを取得する処理S30にお
いて、第2取得部803は、第1取得部802で取得された複数の部分代表スペクトル群に対して多変量解析を行って、全体代表スペクトル群Gを取得した。
【0094】
これに対して、第2変形例では、
図4に示す全体代表スペクトル群Gを取得する処理S30において、第2取得部803は、複数のスペクトルイメージングデータの各々において、部分代表スペクトル群を用いて各ピクセルのスペクトルを分類し、種類ごとに属するスペクトルを積算または平均する。これにより、スペクトルイメージングデータごとにスペクトル群を生成する。そして、第2取得部803は、複数のスペクトル群に対して多変量解析を行って、全体代表スペクトル群を取得する。
【0095】
第2取得部803は、まず、第1取得部802で取得された部分代表スペクトル群G1に含まれる複数の代表スペクトルを階層的クラスタリング法を用いて分類し、クラスターを作成する。
【0096】
次に、第2取得部803は、部分代表スペクトル群G1を用いて第1スペクトルイメージングデータD1の各ピクセルのスペクトルを分類し、種類(クラスター)ごとに属するスペクトルを積算して、積算スペクトル群S1を取得する。積算スペクトル群S1は、第1スペクトルイメージングデータD1の各ピクセルのスペクトルのうち同じクラスター(相)に属するスペクトルを積算して得られた積算スペクトルの集まりである。すなわち、積算スペクトル群S1には、相ごとに積算されたスペクトルが含まれる。
【0097】
同様に、第2取得部803は、部分代表スペクトル群G2に対して、部分代表スペクトル群G1と同様の処理を行い、積算スペクトル群S2を取得する。同様に、第2取得部803は、部分代表スペクトル群G3に対して、部分代表スペクトル群G1と同様の処理を行い、積算スペクトル群S3を取得する。同様に、第2取得部803は、部分代表スペクトル群G4に対して、部分代表スペクトル群G1と同様の処理を行い、積算スペクトル群S4を取得する。
【0098】
第2取得部803は、積算スペクトル群S1、積算スペクトル群S2、積算スペクトル群S3、および積算スペクトル群S4に対して多変量解析を行って、全体代表スペクトル群Gを取得する。すなわち、第2取得部803は、積算スペクトル群S1、積算スペクトル群S2、積算スペクトル群S3、および積算スペクトル群S4に含まれるすべての積算スペクトルを対象として多変量解析を行って、代表的な積算スペクトルを抽出し、全体代表スペクトル群Gを取得する。
【0099】
なお、ここでは、第2取得部803が種類ごとに属するスペクトルを積算して積算スペクトル群を生成する場合について説明したが、第2取得部803が種類ごとに属するスペクトルを平均して平均スペクトル群を生成してもよい。
【0100】
第2変形例では、第2取得部803は、複数のスペクトルイメージングデータの各々において、部分代表スペクトル群を用いて各ピクセルのスペクトルを分類し、種類ごとに属するスペクトルを積算または平均して、スペクトルイメージングデータごとにスペクトル群を生成し、複数のスペクトル群に対して多変量解析を行って、全体代表スペクトル群Gを取得する。そのため、第2変形例では、複数のスペクトルイメージングデータから整合性のある結合相マップを作成できる。
【0101】
4.3. 第3変形例
上述した実施形態では、複数のイメージングデータは、
図5に示すように、同一の試料Sの互いに異なる領域を測定して得られた複数のデータであったが、複数のイメージングデータはこれに限定されない。
【0102】
図14は、複数のスペクトルイメージングデータの取得方法の一例を説明するための図である。
【0103】
例えば、
図14に示すように、集束イオンビーム装置が搭載された走査電子顕微鏡(FIB-SEM)を用いて1つの試料Sに対して断面加工と測定を繰り返すことによって、互いに異なる断面の領域(第1領域A1、第2領域A2、第3領域A3、および第4領域A4)を測定できる。複数のスペクトルイメージングデータは、このように連続断面を測定することで得られた複数のデータであってもよい。複数のスペクトルイメージングデータの各々から得られた相マップを結合することで、3次元の化合物の分布を示す像を得ることができる。
【0104】
図15および
図16は、複数のスペクトルイメージングデータの取得方法の一例を説明するための図である。
【0105】
例えば、
図15および
図16に示すように、試料Sの1つの測定領域SAを測定して得られたスペクトルイメージングデータDAを分割して、複数のスペクトルイメージングデータを取得してもよい。
図16に示す例では、1つの測定領域SAを測定して得られたスペクトルイメージングデータDAを、4つのスペクトルイメージングデータ(第1スペクトルイメージングデータD1、第2スペクトルイメージングデータD2、第3スペクトルイメージングデータD3、第4スペクトルイメージングデータD4)に分割している。
【0106】
また、例えば、複数のイメージングデータは、試料Sの測定領域を、異なる時間に測定したその場観察のデータであってもよい。例えば、複数のイメージングデータは、試料Sを加熱しながら測定を繰り返すことで得られた複数のデータであってもよいし、結晶の成長過程や反応過程をその場観察して得られた複数のデータであってもよい。
【0107】
4.4. 第4変形例
上述した実施形態では、試料分析装置100が、X線検出器70を備えた走査電子顕微鏡である場合について説明したが、本発明に係る分析装置は、これに限定されない。例えば、本発明に係る分析装置は、試料Sからの信号(X線や、電子、イオン等)に基づくスペクトルを得ることができる装置であればよい。本発明に係る分析装置は、エネルギー分散型X線分光器や波長分散型X線分光器を備えた透過電子顕微鏡、電子プローブマイクロアナライザー、オージェマイクロプローブ、光電子分光装置、集束イオンビーム装置などであってもよい。
【0108】
なお、上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば各実施形態及び各変形例は、適宜組み合わせることが可能である。
【0109】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。実質的に同一の構成とは、例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0110】
10…電子銃、20…コンデンサーレンズ、30…走査コイル、40…対物レンズ、50…試料ステージ、60…二次電子検出器、70…X線検出器、80…相分析装置、100
…試料分析装置、800…処理部、801…データ取得部、802…第1取得部、803…第2取得部、804…分類部、805…相分析部、806…表示制御部、810…操作部、820…表示部、830…記憶部