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特許7476261焼結ダイアタッチ及び類似した用途のためのナノ銅ペースト及びフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】焼結ダイアタッチ及び類似した用途のためのナノ銅ペースト及びフィルム
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/00 20220101AFI20240422BHJP
   B22F 1/052 20220101ALI20240422BHJP
   B22F 1/102 20220101ALI20240422BHJP
   B22F 7/08 20060101ALI20240422BHJP
   B22F 9/00 20060101ALI20240422BHJP
   H01B 1/02 20060101ALI20240422BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20240422BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20240422BHJP
   B22F 9/24 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
B22F1/00 L
B22F1/052
B22F1/102
B22F7/08 C
B22F9/00 B
H01B1/02 A
H01B1/22 A
H01B1/22 B
H01B13/00 501Z
B22F9/24 B
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022115509
(22)【出願日】2022-07-20
(62)【分割の表示】P 2020572393の分割
【原出願日】2019-06-21
(65)【公開番号】P2022169512
(43)【公開日】2022-11-09
【審査請求日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】62/689,962
(32)【優先日】2018-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598085065
【氏名又は名称】アルファ・アセンブリー・ソリューションズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ALPHA ASSEMBLY SOLUTIONS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】ゴーサル、シャミック
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラン、レンミャ
(72)【発明者】
【氏名】モノハラン、ベノド
(72)【発明者】
【氏名】サルカル、スイリ
(72)【発明者】
【氏名】シン、バワ
(72)【発明者】
【氏名】ロート、ラーフル
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-018832(JP,A)
【文献】国際公開第2012/157704(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0090597(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00
B22F 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅粒子を含む焼結粉末であって、
前記焼結粉末がダイアタッチのための焼結粉末であり、
前記粒子は、キャッピング剤で少なくとも部分的にコーティングされ、
前記粒子は、100nm以上のD10及び2000nm以下のD90を呈し、
前記焼結粉末がキャッピング剤を最大1重量%含み、
前記キャッピング剤がトリエタノールアミンを含む、焼結粉末。
【請求項2】
記焼結粉末が、0.1~0.5重量%のキャッピング剤、好ましくは0.2~0.4重量%のキャッピング剤を含む、請求項1に記載の焼結粉末。
【請求項3】
前記粒子が、1000nm以下、好ましくは500nm以下、より好ましくは450nm以下のD90を示し、および/または
前記粒子が、125nm以上のD10及び450nm以下のD90を示し、好ましくは前記粒子が、150nm以上のD10及び400nm以下のD90を示す、請求項1又は2に記載の焼結粉末。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の焼結粉末を含む、焼結ペースト。
【請求項5】
前記ペーストが70~90重量%の前記焼結粉末を含み、および/または
前記ペーストが1~5重量%の結合剤を含み、前記結合剤がエポキシメタクリレートウレタンを含み、および/または
前記ペーストが0.5~3重量%のジカルボン酸を含む活性剤を含み、前記ジカルボン酸がマロン酸を含み、および/または
前記ペーストが0.5~2重量%の分散剤を含み、前記分散剤が界面活性剤を含み、および/または
前記ペーストが10~15重量%の有機溶媒を含み、前記有機溶媒がテルピネオールを含む、請求項4に記載の焼結ペースト。
【請求項6】
前記ペーストが、
70~90重量%の前記焼結粉末と、
1~3重量%のジカルボン酸を含む活性剤と、
0.5~2重量%の分散剤と、
10~15重量%の有機溶媒と、
任意に、1~5重量%の結合剤を含み、および/または
前記ペーストが、印刷可能及び/又は分配可能及び/又はジェット可能及び/又はピン転写可能及び/又はスクリーン印刷可能である、請求項4または5に記載の焼結ペースト。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか一項に記載の焼結ペーストを含む焼結フィルムであって、
前記フィルムが、ウェハに予め適用され、ポリマー基材上にあり、または、自立型である、焼結フィルム。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか一項に記載の焼結粉末の製造方法であって、
銅イオン及びキャッピング剤を含む溶液を提供する工程と、
前記溶液を還元剤と接触させて、前記焼結粉末を提供する工程と、
前記焼結粉末を回収する工程と、を含む、方法。
【請求項9】
前記溶液中の銅イオン:キャッピング剤のモル比が、1:1~10:1であり、および/または
前記溶液中の前記銅イオンが銅塩の形態で提供され、前記銅塩が酢酸銅を含み、および/または
前記キャッピング剤がトリエタノールアミンを含み、および/または
前記溶液が7を超えるpHを有し、および/または
還元剤対銅イオンのモル比が1:1を超え、および/または
前記還元剤がヒドラジンを含み、および/または
銅イオン及びキャッピング剤を含む前記溶液が、5~30時間、前記還元剤と接触させ、および/または
回収する工程が、前記焼結粉末から前記得られる溶液をデカントすること、前記焼結粉末を洗浄し、前記焼結粉末を乾燥させることのうちの1つ以上を含み、および/または
前記方法が、非不活性雰囲気で実施される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項4~6のいずれか一項に記載の焼結ペーストの製造方法であって、
請求項1~3のいずれか一項に記載の焼結粉末を提供する工程と、
前記焼結粉末を有機溶媒及び任意にジカルボン酸を含む活性剤、分散剤、キャッピング剤及び結合剤のうちの1つ以上と混合する工程と、
前記焼結ペーストを粉砕することを任意に更に含み、
前記焼結ペーストをフィルムにキャスティングすることを任意に更に含む、方法。
【請求項11】
請求項1~3のいずれか一項に記載の焼結粉末、及び/又は請求項4~6のいずれか一項に記載の焼結ペースト、及び/又は請求項7に記載のフィルムの使用であって、ダイ取り付け、ウェハ-ウェハ結合、気密及び近密封封止、焼結粉末を含む焼結フィルム、及びバッキング層上のフィルムに形成された結合剤、分配、及び相互接続線の製造から選択される方法における使用。
【請求項12】
請求項1~3のいずれか一項に記載の焼結粉末、及び/又は請求項4~6のいずれか一項に記載の焼結ペースト、及び/又は請求項7に記載の焼結フィルムを使用して形成される焼結接合部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結粉末、焼結ペースト、及び焼結フィルムに関する。
【0002】
焼結接合部は、はんだ付け接合部の代替物を提供する。焼結接合部を形成する典型的な方法は、金属粉末を、多くの場合、接合される2つの作業片の間に粉末成形体の形態で配置し、次いで金属粉末を焼結することを伴う。得られる金属原子の原子の拡散は、2つの作業片の間の結合を形成する。
【0003】
金属ナノ粉末は、電子産業において焼結接合部を形成するために使用されており、鉛フリーのはんだ付けに対する有用な代替物であると考えられる。ナノ材料と対応するバルク材料との間の異なる挙動は、より高い表面積対体積比を有するナノ材料に起因すると考えられる。金属ナノ粒子を使用することによる2つの材料間の導電性接合部の形成は、従来のはんだペーストと比較して、その機械的、電気的、及び熱的信頼性の点で多くの利点を有する。
【0004】
銀ナノ粒子を含有する焼結粉末が既知である。銀ナノ粒子の原子拡散によって形成される焼結接合部は、バルクの融解温度よりも著しく低い温度で処理することができ、また高温の用途にも使用することができる。しかしながら、このような焼結粉末の焼結温度は、最も多くの電子部品用途で有効に使用するには高すぎる。
【0005】
焼結温度は、焼結中に外部の圧力を加えることによって低減され得る。銀ペーストのプレス支援低温焼結は、ダイ結合方法としてのはんだリフローの実現可能な代替物であることが示されている。高圧の適用は、焼結温度を著しく低下させることが示されており、ダイ取り付けの所望の特性は、比較的速い速度で達成され得、数分以内に焼結接合部が形成される。しかしながら、大きな外部圧力により、プロセスの自動化が困難になる。また、大きな外部圧力の適用により、作業片への損傷が生じる場合がある。
【0006】
銀金属は、その優れた電気伝導性及び熱伝導性に起因して、ダイアタッチ用途のため電子産業において長く使用されてきた。しかしながら、銀が高いコストであることが、多くの領域における銀の広範な適用を制限している。更に、銀はまた、相対的に高い温度及び湿度でイオンが移動する問題にも直面しており、これが他の主要な懸念原因である。
【0007】
銅は、銀と比較してはるかに安価な材料であり、また非常に高い導電率(Agより6%低いのみ)を有する。銅はまた、低コストであることに加えて、銀を越えて銅を縁部に与えるイオンの移動の問題を呈さない。しかしながら、酸化する銅ナノ粒子の固有の傾向は、依然として主要な問題である。
【0008】
銅ナノ粒子が、適切な保護層によってコーティングされる場合、周囲条件下で酸化に抵抗することができることを実証する様々なアプローチを提示するいくつかの報告が存在している。ダイアタッチ用途のための導電性ダイアタッチペーストにおけるこれらの銅ナノ粒子の有用性は、依然としてそれほど期待されていない。したがって、エレクトロニクス市場では、ナノ銀とほぼ同じ利益を与えることができるが、はるかに低いコストで、銅のダイアタッチペーストに対し、高い要求がある。
【0009】
国際公開第2014/068299号は、10マイクロメートル未満の平均最長直径を有する微粒子を含む焼結粉末に関し、二峰性粒径分布を有する銀ナノ粒子を対象としている。国際公開第2015/155542号は、低圧焼結粉末に関し、また二峰性粒径分布を有する銀ナノ粒子を対象としている。両文書は銀の使用を行うため、イオン移動の問題が生じ得る。
【0010】
本発明は、先行技術に関連する問題の少なくとも一部に取り組むこと、又は少なくとも、それに対して商業的に許容可能な代替策を提供することを希求する。
【0011】
第1の態様では、本発明は、銅粒子を含む焼結粉末を提供し、
粒子は、キャッピング剤で少なくとも部分的にコーティングされ、
粒子は、100nm以上のD10及び2000nm以下のD90を呈する。
【0012】
本明細書で定義される各態様又は実施形態は、別途明確に示されない限り、任意の他の態様又は実施形態と組み合わせることができる。特に、好ましい又は有利であると示される任意の特徴は、好ましい又は有利であると示される任意の他の特徴と組み合わされてもよい。
【0013】
本発明者らは、驚くべきことに、焼結粉末が有利な焼結特性を呈する一方で、従来の銅含有焼結粉末よりも酸化が起こりにくいことを見出した。
【0014】
有利には、焼結粉末は、焼結性、熱伝導性、導電性、及び最終接合部の有利な機械的特性の点で、ナノ銀の同等又は類似の利点を提供するが、コストは大幅に下がる。更に、ナノ銀に関連するイオンの移動の問題は克服される。
【0015】
焼結粉末は、典型的には、空気安定性及び非凝集性である。
【0016】
更に、焼結粉末は、表面の多用途性接合、特に、銅-銅銅-アルミニウム、アルミニウム-銅、アルミニウムーアルミニウム、及び銅-ニッケルなどの異なる仕上げの2つ以上の表面の多用途性接合を可能にする。焼結粉末は、ダイアタッチに特に好適である。
【0017】
本明細書で使用するとき、「焼結粉末」という用語は、焼結接合部を形成することができる粉末を包含し得る。焼結接合部は、接合される2つの作業片の間に配置された金属粒子の原子拡散によって形成される。「焼結粉末」という用語は、微粒子を包含し得る。
【0018】
焼結粉末は、銅粒子を含む。粒子は、規則的な形状の粒子(例えば、球体など)及び/又は不規則な形状の粒子(例えば、ウィスカー、プレート、ロッド、又はフレークなど)を含んでもよい。
【0019】
銅粒子は、例えば、銅金属又は銅合金、好ましくは銅金属の形態であってよい。
【0020】
焼結粉末は、銅粒子以外の粒子を含んでもよい。しかしながら、焼結粉末中の粒子の大部分は銅粒子であり、典型的には、粒子銅の実質的に全てが銅粒子である。
【0021】
粒子は、キャッピング剤で少なくとも部分的にコーティングされる。本明細書で使用するとき、用語「キャッピング剤」は、金属粒子の表面上に存在する場合、金属粒子の凝集を低減し、粉末製造中の粒径制御を可能にし、粒子の表面酸化又は他の汚染を低減する種を包含し得る。有利には、キャッピング剤の使用は、粒子の凝集を低減するのに役立ち得る。そのような凝集は、焼結粉末の焼結温度を上昇させ得るため、有利ではない。したがって、キャッピング剤の使用は、より低温での作業片間の焼結接合部の形成を可能にし、したがって、高い焼結温度への曝露によって引き起こされる作業片への損傷を低減するのに役立ち得る。加えて、キャッピング剤の使用は、例えば、金属を空気に晒すことによって引き起こされる損傷などの金属の劣化を回避するのに役立ち得る。
【0022】
粒子は、典型的には、キャッピング剤で実質的にコーティングされ、より典型的には、キャッピング剤で完全にコーティングされる。
【0023】
粒子は、100nm以上のD10及び2000nm以下のD90を呈する。D90は、直径を説明するものだが、それにおいて、
分布の90%は、より小さい粒径を有し、10%はより大きい
粒径を有する。D10直径は、10%いっそう小さく、90%いっそう大きい。当該技術分野において従来のように、直径は等価球面直径に相当し、分布は体積分布に対応する。D10及びD90は、例えば、レーザー回折、動的光散乱、及びSEM画像解析などの当該技術分野において既知の好適な技術によって測定することができる。
【0024】
100nmより小さい粒子は、酸化する傾向がより高くなり得る。2000nmよりも大きい粒子は、バルクと比較して、良好な焼結性及び焼結温度の低下など、有利な焼結特性を示さない場合がある。したがって、焼結電力は、空気などの非不活性雰囲気下で製造、保管、取り扱い、使用ができる、有利な焼結特性を呈する。D90は、好ましくは1000nm以下、より好ましくは500nm以下、更により好ましくは450nm以下、更により好ましくは400nm以下である。より低いD90値は、有利な焼結特性を改善することができる。D10は、好ましくは125nm以上、より好ましくは150nm以上である。より大きいD10値は、酸化に対する耐性を改善することができる。好ましくは、粒子は、125nm以上のD10及び450nm以下のD90を示し、より好ましくは、粒子は、150nm以上のD10及び400nm以下のD90を呈する。
【0025】
粒径分布は、典型的には単峰性である。
【0026】
好ましくは、焼結粉末は、ダイアタッチ用である。焼結粉末は、ダイアタッチでの使用に特に有効であり得る。
【0027】
キャッピング剤は、無機及び/又は有機であってもよい。有機キャッピング剤の例としては、ポリマー及び配位子が挙げられる。好ましくは、キャッピング剤は、アミン及び/又はカルボキシレート官能基を含む。このようなキャッピング剤は、金属粒子と弱い結合を形成し得る。したがって、結合を破壊するために必要とされる温度を低下させることができ、このことは焼結温度を低下させるのに寄与し得る。アミン官能基を含むキャッピング剤は、この点に関して特に好ましい。好ましくは、キャッピング剤はトリエタノールアミンを含み、より好ましくは、キャッピング剤はトリエタノールアミンである。トリエタノールアミンは、有利な焼結特性に悪影響を及ぼすことなく、粒子の凝集及び/又は酸化を低減するのに特に有効である。
【0028】
焼結粉末は、好ましくは、最大1重量%のキャッピング剤、より好ましくは0.1~0.5重量%のキャッピング剤、更により好ましくは0.2~0.4重量%のキャッピング剤を含む。より低い濃度のキャッピング剤は、望ましくない凝集をもたらすことができ、又は粒子を酸化しやすくすることができる。より高い濃度のキャッピング剤は、キャッピング剤を使用して形成された焼結接合部内に、より高いレベルの残留キャッピング剤が存在し得る。これにより、接合部の機械的特性、特にダイシェアの強度を低減することができる。粒子は、従来の焼結粉末より大きい粒径を有するので、凝集を低減する、及び/又は適切な耐酸化性を提供するために必要なキャッピング剤の量は、従来の焼結粉末よりも少ない。焼結された接合部中に存在する残留キャッピング剤の量が少ないため、焼結粉末を使用することによって形成される焼結された接合の機械的特性を改善することができる。
【0029】
焼結粉末は、有利にも粉末成形体の形態であってもよい。これにより、焼結粉末を所望の焼結接合部の必要な位置に配置することをより容易にすることができる。
【0030】
更なる態様では、本明細書に記載される焼結粉末を含む焼結ペーストが提供される。
【0031】
焼結ペーストは、ナノ銀ペーストとほぼ同じ利益をもたらすが、コストがはるかに低い。焼結ペーストは、優れた熱伝導性及び電気伝導性を示す。例えば、焼結ペーストは、典型的には、少なくとも1.0×10S/m、より典型的には少なくとも1.5×10S/m、例えば約1.8×10S/mの導電率を示す。有利には、ペーストは、周囲の室温下で安定である。
【0032】
ペーストは、印刷可能及び/又は分配可能及び/又はジェット可能及び/又はピン転写可能及び/又はスクリーン印刷可能であってもよい。ペーストは、特に分配に有利な粘度及び流動特性を有してもよく、これは、ペーストがはんだのための1対1の交換品として使用され得ることを意味する。
【0033】
焼結ペーストは、例えば、結合剤、活性剤、分散剤、及び有機溶媒のうちの1つ以上を更に含んでもよい。これらの構成要素は、典型的には、ペーストから除去することができるように(例えば、蒸発及び/又はバーンアウトによって)、焼結粉末の目標焼結温度未満の温度で除去することができるように選択される。これは、金属粒子のほぼ完全な焼結を促進するのに役立ち得る。焼結中に有機材料が接合部に留まるとき、金属粒子の不十分な焼結が生じ得る。これは、弱い焼結接合部をもたらし得る。
【0034】
好ましくは、ペーストは、70~90重量%の焼結粉末、より好ましくは70~87重量%の焼結粉末を含む。これは、有利な焼結特性及び取り扱い特性の有利な組み合わせを可能にし得る。
【0035】
ペーストは、好ましくは、1~5重量%の結合剤を含む。結合剤は、所望の焼結接合部の位置付けにおいて、正確に取り扱い及び配置することが容易になるように、ペーストを一緒に結合するように機能し得る。
【0036】
結合剤は、好ましくはポリマーを含む。結合剤として使用するのに好適なポリマーは、当該技術分野において既知である。好ましくは、結合剤は、エポキシ系樹脂、より好ましくはエポキシメタクリレートウレタンを含む。エポキシ系樹脂は、ペーストが取り扱いやすくなり、所望の焼結接合部の場所に正確に配置することがより容易であり得るように、ペーストを一緒に結合するのに特に有効であり得る。更に、エポキシ樹脂の使用は、焼結前により強い接合部を形成することができ、これは、焼結前に接合される作業片を一緒に保持する必要がないことを意味する。エポキシ樹脂の使用は、キャッピング剤がアミン官能基を含む場合、特に有利である。この場合、アミンは架橋構造を形成する硬化剤として作用する。これは、焼結前に、特に強い接合をもたらし得る。
【0037】
ペーストは、好ましくは、0.5~3重量%、より好ましくは1~3重量%の活性剤を含む。活性剤は、印刷されている表面から存在し得る任意の金属酸化物を除去するために、及び/又は焼結粉末中に存在し得る任意の酸化物を除去することができる。アリール又はアルキルカルボン酸は、活性剤として使用されてもよい。好ましくは、活性剤は、ジカルボン酸、より好ましくはマロン酸を含む。
【0038】
ペーストは、好ましくは、0.5~2重量%の分散剤を含む。分散剤は、典型的には界面活性剤を含む。焼結ペースト中に焼結粉末を分散させるのを助けるために、分散剤/界面活性剤を焼結ペーストに添加してもよい。特に好適な市販の分散剤/界面活性剤の例は、BYK 163である。
【0039】
ペーストは、好ましくは、10~15重量%の有機溶媒を含む。有機溶媒は、好ましくは、モノテルペンアルコール(例えば、テルピネオール)及び/又はグリコール(例えば、トリエチレングリコール)及び/又はグリコールエーテルを含む。モノテルペンアルコール及び/又はグリコールは、ペースト内に金属粒子を分散させる際に特に有効であり得、クラスタ集合及び/又は凝集が低減された有機成分のマトリックスでの金属粒子の均質な分布をもたらす。モノテルペンアルコール及び/又はグリコールの使用は、焼結ペーストの流動性及びプリンタの性能を高める役割を果たし得る。有機溶媒は、好ましくは、特に有効な溶媒としてテルピネオールを含む。
【0040】
焼結ペーストは、更なる種を含んでもよい。例えば、レオロジー変性剤を添加して、ペーストの粘度を制御してもよい。好適なレオロジー変性剤の例としては、Thixcin R及びCrayvallac Superが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
特に好ましい実施形態では、ペーストは、
70~90重量%の焼結粉末と、
1~3重量%の活性剤と、
0.5~2重量%の分散剤と、
10~15重量%の有機溶媒と、
任意に、1~5重量%の結合剤を含む。
【0042】
ペーストは、好ましくは印刷可能及び/又は分配可能及び/又はジェット可能及び/又はピン転写可能及び/又はスクリーン印刷可能である。
【0043】
更なる態様では、本発明は、本明細書に記載の焼結ペーストを含む焼結フィルムを提供する。
【0044】
好ましい一実施形態では、フィルムはウェハに予め適用される。別の好ましい実施形態では、フィルムはポリマー基材上にある。別の好ましい実施形態では、フィルムは自立型である。
【0045】
更なる態様では、本発明は、焼結粉末の製造方法を提供し、この方法は、
銅イオン及びキャッピング剤を含む溶液を提供する工程と、
溶液を還元剤と接触させて、焼結粉末を提供する工程と、
焼結粉末を回収する工程と、を含む。
【0046】
この方法は、銅粒子を含む焼結粉末をもたらす。この方法は、典型的には100nm以上のD10及び500nm以下のD90を有する、有利に狭い粒径分布を有する銅粒子を含む焼結粉末をもたらす。得られる焼結粉末は、焼結粉末として、例えばダイアタッチ用に使用するのに特に好適であり得、従来の銅焼結粉末と比較して改善された耐酸化性を示し得る。得られる焼結粉末は、本明細書に記載の焼結粉末であってもよい。本発明の以下の態様の方法の利点及び好ましい特徴は、この態様に等しく当てはまる。
【0047】
更なる態様では、本発明は、本明細書に記載の焼結粉末の製造方法であって、
銅イオン及びキャッピング剤を含む溶液を提供する工程と、
溶液を還元剤と接触させて、焼結粉末を提供する工程と、
焼結粉末を回収する工程と、を含む。
【0048】
焼結電力は酸化に対する耐性を示すため、有利には、この方法は、例えば空気などの非不活性雰囲気中で実行され得る。
【0049】
銅イオン及びキャッピング剤は、溶媒に連続して添加されて、溶液を形成してもよく、又は同時に添加されてもよい。典型的には、激しく撹拌しながら、キャッピング剤を銅イオンの溶液に滴加する。これは、キャッピング剤が溶液中に微細に分散されることを確実にすることができ、それによって粒径を所望の範囲に制御するのを補助することができる。
【0050】
溶液は、好ましくは、例えば脱塩水などの水溶液である。
【0051】
溶液及び還元剤は、典型的には、混合及び撹拌によって接触される。この工程の間、焼結粉末の粒子は溶液から沈殿する。
【0052】
溶液中の銅イオン:キャッピング剤のモル比は、好ましくは1:1~10:1、より好ましくは2:1~7:1、更により好ましくは4:1~6:1である。このような比は、所望のサイズで粒子を提供するのに役立ち得る。例えば、より多量のキャッピング剤は、望ましくない小さな粒子の形成をもたらし得る一方で、より少量のキャッピング剤は、望ましくない大きな粒子の形成をもたらし得る。
【0053】
溶液中の銅イオンは、銅塩の形態で提供されることが好ましい。銅塩は、好ましくは酢酸銅を含む。酢酸銅は、特に好適な塩であり、低コストである。
【0054】
キャッピング剤は、好ましくはトリエタノールアミンを含む。
【0055】
溶液は、好ましくは7を超えるpHを有する。7を超えるpHは、例えば、NaOH及び/又はKOHを添加することによって、溶液に水酸化物イオンを加えることによって達成され得る。7を超えるpHは、低減するためのより有利な条件を提供し、それによって収率を増加させることができる。更に、7を超えるpHは、銅粒子と酸との有利ではない反応を回避することができる。
【0056】
還元剤の銅イオンに対するモル比は、好ましくは1:1.を超えたものである。過剰な還元剤は、収率を増加させ得る。
【0057】
還元剤は、好ましくはヒドラジン(例えば、ヒドラジン水和物)を含む。ヒドラジンは、特に好適な還元剤であり、必要なサイズの範囲で粒子を製造するのに特に有効である。
【0058】
銅イオン及びキャッピング剤を含む溶液は、好ましくは、5~30時間、好ましくは10~20時間、還元剤と接触させる。より短い時間により、収率が低下し、及び/又は不利にも小さい粒子が形成される場合がある。より長い時間は、望ましくない大きな粒子の形成をもたらし得る。
【0059】
回収は、典型的には、焼結粉末からの得られる溶液(「母液」)をデカントすること、焼結粉末を洗浄し、焼結粉末を乾燥させることのうちの1つ以上を含む。洗浄は、例えば、水、続いてアセトンで実施されてもよい。乾燥は、例えば、30℃を超える温度、例えば35℃で実施されてもよい。
【0060】
この方法は、好ましくは、空気などの非不活性雰囲気で実施される。これは、酸化を受けやすい従来の銅焼結粉末の調製方法とは対照的である。非不活性雰囲気で方法を実行することは、方法の複雑性及び/又はコストを減少させることができる。
【0061】
更なる態様では、本発明は、本明細書に記載の焼結ペーストの製造方法を提供し、この方法は、
本明細書に記載の焼結粉末を提供する工程と、
焼結粉末を有機溶媒及び任意に活性剤、分散剤、キャッピング剤及び結合剤のうちの1つ以上を混合する工程と、を含む。
【0062】
本方法は、好ましくは、焼結ペーストを、例えば3ロールミルで粉砕することを更に含む。これは、ペーストの均質性を改善することができる。粉砕前の混合工程中の追加のキャッピング剤の添加は、粉砕中の凝集の発生を低減し得る。
【0063】
本方法は、好ましくは、焼結ペーストをフィルムにキャスティングすることを更に含む。好適なキャスティング方法は、当該技術分野において既知である。
【0064】
更なる態様では、本発明は、2つ以上の作業片間の接合部を形成する方法を提供し、この方法は、
接合される2つ以上の作業片を提供する工程と、
本明細書に記載の焼結粉末及び/又は本明細書に記載の焼結ペースト及び/又は本明細書に記載の焼結フィルムを、2つ以上の作業片の近傍に提供する工程と、
焼結粉末及び/又は焼結ペースト及び/又は焼結フィルムを乾燥させる工程と、
焼結粉末及び/又は焼結ペースト及び/又は焼結フィルムを加熱して、金属を少なくとも部分的に焼結する工程と、を含む、方法。
【0065】
好ましい実施形態では、2つ以上の作業片は、ダイ及び基材を含む。
【0066】
乾燥工程は、加熱工程の前に行われる。乾燥工程は、粉末、ペースト、又はフィルムをディスロッジ(「絞り出し」)することなく、焼結中に後続の圧力を加えることを可能にし得ることができる。乾燥工程はまた、「圧力低下焼結」にも有利であり、加熱工程中にいかなるディスロッジも防止する役割を果たす。
【0067】
乾燥は、好ましくは30~100℃、より好ましくは40~80℃、更により好ましくは50~70℃の温度で実施される。乾燥は、好ましくは1~60分間、より好ましくは5~40分間、更により好ましくは10~30分間実施される。
【0068】
少なくとも部分的な焼結は、接合部の形成をもたらす。加熱は、典型的には、金属の実質的な焼結、より典型的には、金属の完全な焼結をもたらす。加熱は、好ましくは140~300℃、より好ましくは180~280℃の温度で行われる。加熱は、好ましくは最大15分、より好ましくは1~8分、更により好ましくは2~6分間実行される。より低い温度及びより短い加熱時間は、不完全な焼結をもたらし得、それによって、最終的な接合部の機械的及び/又は熱的及び/又は電気的特性をもたらすことができる。より高い温度及びより長い加熱時間は、作業片への損傷をもたらし得る。
【0069】
加熱は、圧力下又は圧力なし(いわゆる、「圧力低下焼結」)で実施されてもよい。加圧下で加熱を行う場合、加熱中、好ましくは2~18MPaの圧力が、より好ましくは3~15MPa、更により好ましくは5~13MPa、更により好ましくは8~12MPaで適用される。より高い圧力は、有利には、より低い加熱温度を必要とし得、かつ/又は、改善された粒子間接触による、より有利な機械的及び/又は熱的及び/又は電気的特性を有する接合部の形成をもたらすことができる。しかしながら、圧力が高すぎる場合、作業片に損傷が生じるおそれがある。
【0070】
好ましい実施形態では、
焼結ペーストが、接合される作業片のうちの1つ以上の上にスクリーン印刷されて、スクリーン印刷パターンを形成し、
スクリーン印刷パターンにはんだが適用され、
任意に、スクリーン印刷パターンは、はんだが適用される前に無電解ニッケル浸漬金(ENIG)技術によってコーティングされる。
【0071】
スクリーン印刷に好適な技術は、当該技術分野において既知である。スクリーン印刷は、例えばメッシュスクリーン(例えば、メッシュサイズ70)を使用して実行されてもよい。スクリーン印刷は、2つ以上の作業片の近傍に焼結ペーストを提供する工程中に行われる。はんだは、例えば、標準的なはんだペーストを使用して適用することができる。焼結ペーストの結果として、はんだ付けは、有利な広がり及びはんだ付け特徴を呈し得る。はんだ付け及びENIGは、典型的には、乾燥工程及び加熱工程後に実行される。
【0072】
任意に、スクリーン印刷パターンは、はんだが適用される前に無電解ニッケル浸漬金(ENIG)技術によってコーティングされる。好適な無電解ニッケル浸漬金技術は、当該技術分野において既知である。無電解ニッケル浸漬金(ENIG)は、プリント回路基板に使用される表面めっきの種類である。これは、ニッケルを酸化から保護する、浸漬金の薄層で被覆された無電解ニッケルめっきからなる。ENIGは、優れた表面平坦性(特に大きなBGAパッケージを有するPCBに特に有用な)、良好な耐酸化性、及び、膜スイッチ及び接触点などの未処理の接触表面に対する有用性を含む、HASL(はんだ)などのより従来の(及びより安価な)表面のめっきに対するいくつかの利点を有する。
【0073】
2つ以上の作業片は、好ましくは半導体又は他のダイ要素及び基材を含む。基材は、例えば、DBC(ダイレクトボンド銅)を含んでもよい。DPC(ダイレクトプレート銅)、MCPCB(金属コアPCB)、FR4、銅リードフレーム、可撓性PCBがある。
【0074】
典型的なプロセスでは、粉末及び/又はペースト及び/又はフィルムは、基材上に配置又はスクリーン印刷され、次いで乾燥される。この後、これは、典型的には、例えばダイボンダー又はピックアンドプレースマシンを介したダイの配置が続く。次いで、加熱は、典型的には、例えば、Carverプレスを使用して実行される。次いで、はんだ付け及び任意にENIGは、典型的にはその後に実行される。
【0075】
更なる態様では、本発明は、本明細書に記載の焼結粉末、及び/又は本明細書に記載の焼結ペースト、及び/又は本明細書に記載のフィルムの使用を含み、ダイ取り付け、ウェハ-ウェハ結合、気密及び近密封封止、焼結粉末を含む焼結フィルム、及びバッキング層上のフィルムに形成された結合剤、分配、及び相互接続線の製造から選択される方法における。
【0076】
更なる態様では、本発明は、本明細書に記載の焼結粉末、及び/又は本明細書に記載の焼結ペースト、及び/又は本明細書に記載の焼結フィルムを使用して形成される焼結接合部を提供する。
【0077】
焼結接合部は、従来の焼結粉末を使用して形成された接合部と比較して高い剪断強度を示し得る。
【図面の簡単な説明】
【0078】
本発明は、以下の非限定的な図面に関連して論じられる。
図1】本発明による合成銅粉末のFESEM画像を示す(×10000)。
図2】本発明による合成銅粉末のFESEM画像を示す(×30000)。
図3】5MPa及び10MPaの圧力におけるダイシェアの箱ひげ図、並びに後硬化の効果を示す。
図4】異なる圧力での、焼結温度250℃におけるダイシェアの箱ひげ図を示す。
図5】250℃及び異なる時間及び圧力焼結条件での、圧力焼結を使用したダイ取り付け後のSEM断面画像を示す。
図6】200℃及び異なる時間及び圧力焼結条件での、圧力焼結を使用したダイ取り付け後のSEM断面画像を示す。
【0079】
本発明は、これより、以下の非限定的な実施例に関連して論じられる。
【0080】
以下の実施例で使用される材料は、以下のように購入した。酢酸銅(II)一水和物はFischer Scientificから購入した。トリエタノールアミン(85%)をViVochem;から購入した。水酸化ナトリウム、ヒドラジン(85%LR)、メタノール及びアセトンをSDFCLから購入し、脱塩水をSpectrum Chemicalsから購入した。
【0081】
以下の実施例で使用される装置は以下の通りであった。ダイシェアはDage4000 PXYで実施され、フィルムを、Proキャストテープキャスター(TC-71LC)上にキャスティングした。Carverプレス(3891CEB.4NE1001)を使用して焼結を行った。
【0082】
実施例1:銅ナノ粒子の合成
酢酸第二銅(100g)を脱塩水(1500mL)に溶解した。酢酸第二銅の水溶液にトリエタノールアミン(20g)を激しく撹拌しながら滴下し、次いで溶液を30分間撹拌した。次いで水酸化カリウム/水酸化ナトリウム(100mLの水中20gの水酸化カリウム)を加えて、溶液を塩基性(pH>7)にし、溶液を更に30分間撹拌した。この混合物に、過剰なヒドラジン水和物溶液(150mL)を、滴下漏斗を介して添加した。反応が相当の発熱を伴い、発泡を生じるため、予防を講じるべきである。したがって、反応の温度を20~25℃に維持した水槽で反応を実施した。次いで、得られた溶液を6時間撹拌した。反応混合物の色は青みがかった緑から橙色に変化し、次いで最終的に淡褐色に変化した。次いで、溶液を1時間静置して、合成銅粒子を底部に沈殿させ、次いで得られた溶液(母液)をデカントした。次いで、合成粉末を過剰な水で十分に洗浄し、不要な反応物を除去した。次いで、洗浄した粉末をアセトンで洗浄する。粉末を35℃で乾燥させた。
【0083】
次いで、合成粉末を、粉末走査電子顕微鏡(SEM)及び粉末X線回折(XRD)によって特徴付けた。画像解析によるD10は100nm以上であり、D90は500nm以下であった。図1及び2は、合成粒子の電界放出走査電子顕微鏡(FESEM)の画像を示す。FESEMは、粒子が異なる形状を有し、200~400nmの範囲の狭い粒径分布を有することを示す。理論に束縛されるものではないが、銅ナノ粒子のサイズが大きいことから、従来の焼結粉末中の銅ナノ粒子と比較して、酸化に対する耐性がより高いと考えられる。
【0084】
粒径はまた、SEMと一致して、150~350nmの範囲の非常に一貫性の高い狭いサイズ分布を示した粒径分析器(PSA)を使用して測定した。
【0085】
実施例2:銅ナノパウチの作製
実施例2.1:
上記合成されたナノ銅粉末(24g)を、高速ミキサー(1000rpm、1分)を用いてエポキシメタクリレートウレタン(0.279g)で分散させた。分散液に、トリエタノールアミン(85%、0.279g)、BYK 163(0.558g)、マロン酸(1.116g)及びテルピネオール(1.674g)を加え、高速ミキサーを用いて1000rpmで1分間混合した。次いで、得られた混合物を、EXAKT3ロールミルを使用して完全に粉砕した。次いで、収集した均質な印刷可能ペーストを、標準温度と圧力(STP)下で保管した。
【0086】
実施例2.2:
上記合成されたナノ銅粉末(15g)を、高速軌道ミキサーを用いてエポキシメタクリレートウレタン(0.70g)で分散させた。分散液に、BYK(0.70g)を添加した。マロン酸のメタノール溶液(1.41gのメタノール中1.41gのマロン酸)を分散液に添加し、続いてテルピネオール(1.5g)を添加した。次いで、混合物を高速軌道混合物に入れ、3ロールミルで数分間粉砕して均質なペーストを得た。
【0087】
実施例2.3:
上記合成されたナノ銅粉末(15g)を、高速軌道ミキサーを用いてエポキシメタクリレートウレタン(0.754g)で分散させた。分散液に、BYK(0.754g)を添加した。マロン酸(1.51g)を分散液に添加し、続いてテルピネオール(2.64g)を添加した。次いで、混合物を高速軌道混合物に入れ、3ロールミルで数分間粉砕して均質なペーストを得た。
【0088】
実施例2.4:
上記合成されたナノ銅粉末(15g)を、高速軌道ミキサーを用いてエポキシメタクリレートウレタン(0.754g)で分散させた。分散液に、BYK(0.754g)を添加した。マロン酸(1.51g)を分散液に添加し、続いてギ酸(1.511g)及びテルピネオール(2.64g)を添加した。次いで、混合物を高速軌道混合物に入れ、3ロールミルで数分間粉砕して均質なペーストを得た。
【0089】
上記の合成銅ペーストの導電率は、約1.8×10S/mであった。
【0090】
実施例3:フィルムキャスティングのプロセス
銅ペーストは、テープキャスターの補助のもと、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムにキャスティングした。フィルムの厚さを75μmに設定した。銅ペーストを100℃でテープキャスターに通した。フィルムのキャスティング時間は約25分であった。キャストされたフィルムの厚さは、約50~60μmであった。
【0091】
実施例4:ダイプロセスでのフィルム転写
Dataconダイボンダーを使用して、ダイのフィルム転写プロセス(DTF)を実施した。3mmの×3mmの金でコーティングされたシリコンダイのスタンピング条件は、以下の表1の通りであった。
【0092】
【表1】
【0093】
フィルムは、PET基材に銅フィルムが残っていない状態で、ダイ側に完全に転写された。次いで、銅コーティングされたSiダイを、表2の以下の条件下で、Treskyダイボンダーを使用して金/銅でコーティングされた直接結合銅(DBC)に取り付けた。
【0094】
【表2】
【0095】
上記の条件から得られたダイシェアを図3に示す。図3において、後硬化条件は、300℃の温度で30分間であった。ダイは、5MPaの焼結圧力で、後硬化の有無にかかわらず、それぞれ約14MPa及び約20MPaであった。ダイは、10MPaの焼結圧力で、後硬化の有無にかかわらず、それぞれ約24MPa及び約30MPaであった。ビヒクルが300℃で30分間後硬化されたときに、接合強度が劇的に増加することが明瞭に分かる。破壊様式は、使用される条件に関係なく、バルク破壊であった。
【0096】
実施例5:Carverプレスを使用した2インチシリコン金めっきウェハのウェハ積層
Carverプレスの圧盤の両方を175℃に維持した。シリコンウェハの積層は、5~10MPaの圧力を使用することによって行われた。積層のクッション効果として、シリコンゴムを使用した。積層の滞留時間は、約3分である。フィルムのスタンプされた部分は、PETシート上にフィルムが残っていないことを示した。次いで、積層ウェハをUVテープに取り付け、ダイシング機を使用してダイシングした。
【0097】
次いで、Carverプレスを使用して、ダイシングした3mm×3mmのダイをAu/CuコーティングされたDBCに取り付けた。焼結圧力が5MPaである場合、約30~32MPaの接合強度が得られた。一方、焼結圧力が250℃で3分間の滞留時間の間、約10MPaであったときに、40MPaの接合強度が達成された。
【0098】
図4は、異なる圧力での、焼結温度250℃におけるダイシェアの箱ひげ図を示す。図4では、第1の温度、圧力、及び時間の焼結条件は、それぞれ250℃、5MPa、及び3分であった。第2の温度、圧力、及び時間の焼結条件は、それぞれ250℃、10MPa、及び3分であった。ダイは、5MPa及び10MPaの焼結圧力で、それぞれ約31MPa及び約40MPaであった。
【0099】
実施例6:自立フィルムのプロセス
Carverプレスを使用して、自立型銅フィルムを作製した。キャストされたフィルムを、200℃で5~10MPaの圧力でシリコンウェハ上に押し付けた。滞留時間は約2分であった。銅フィルムはシリコンウェハの形状をとり、シリコン内に拡散しなかった。これは次に、ポリマー基材からのフィルムの分離に至り、厚さ約30~40μmの自立型フィルムをもたらす。9Vの電池がフィルム全体に接続されたときのナノ銅フィルムの導電性により、LEDが光を放った。フィルムの電気抵抗率は、2×10-8Ωmであることが判明した。
【0100】
実施例7:圧力焼結を使用したナノ銅ペーストダイ取り付け
半導体又は他のダイ要素の取り付けは、直接結合銅(DBC)、直接板銅(DPC)、金属コアプリント回路基板(MCPCB)、FR4、銅リードフレーム、可撓性PCBなどの基材上にナノ銅ペーストを印刷し、続いて印刷された基材を60℃で20分間加熱することによって印刷領域を乾燥させることによって、達成することができる。次いで、このプロセスに、ダイボンダー又はピックアンドプレース機を介してダイの配置、及び圧力焼結を使用してCarverプレスで焼結することが続く。
【0101】
焼結銅接合部の接合強度を、焼結圧力5MPa及び10MPaを使用して、各々3分と5分の焼結時間及び200℃と250℃の焼結温度で、3mm×3mmのシリコン・金コーティングダイを用いたDBCで評価した。ダイの配置後、次いでアセンブリ全体をアルミニウム箔で覆って、銅の酸化を防止した。シリコンダイの上方に保持した厚さ0.5mmの黒鉛シートを用いて、緩衝効果を提供した。低い方の焼結圧力(5MPa)及び温度(3分間の焼結時間)では、高い方の焼結圧力及び温度と比較して、接合強度が低いことが観察された。
【0102】
接合強度に対する異なる焼結温度及び圧力の効果を試験した。結果を以下の表3にまとめている。表3は、接合強度に対する異なる焼結温度及び圧力の効果を示す。高い方の焼結温度及び時間において、ダイの大部分が粉砕しており、このことが、ダイを基材から剪断するには接合強度が良好過ぎるという事実を明らかにしていることに留意されたい。更に、両方の境界面での銅の強い拡散も明示している。
【0103】
【表3】
【0104】
境界面での銅の拡散はまた、SEM断面によっても確認され、SEM断面は、焼結層内の銅ナノ粒子の非常に良好な高密度化、及びバルク破壊をもたらす両方の境界面におけるナノ粒子の優れた拡散を示す。10MPaにおける銅ナノ粒子の拡散及び高密度化は、5MPaの焼結圧力よりもはるかに良好であることが明らかである。これは、図5及び6のSEM断面で見ることができる。図5では、断面画像の上部2列は、境界面の比較を示す。最上段はダイ-銅層界面であり、中間の列は銅層-基材界面である。断面画像の最下列は、銅層の微細構造の比較を示す。断面画像の各列は、異なる時間及び圧力焼結条件のセットを例示する。第1及び第2の列の焼結圧力、並びに第3及び第4の列における焼結圧力は、それぞれ5MPa及び10MPaであった。第1及び第3の列、並びに第2及び第4の列における焼結時間は、それぞれ3及び5分であった。図6では、断面画像の上部2列は、境界面の比較を示す。最上段はダイ-銅層界面であり、中間の列は銅層-基材界面である。断面画像の最下列は、銅層の微細構造の比較を示す。断面画像の各列は、異なる時間及び圧力焼結条件のセットを例示する。第1の列の焼結圧力、並びに第2及び第3の列における焼結圧力は、それぞれ5MPa及び10MPaであった。第2の列の焼結時間、並びに第1及び第3の列の焼結時間は、それぞれ3及び5分であった。
【0105】
このような半導体素子及びダイ素子の取り付けはまた、DTF及び当該の材料から作製されたダイ裏面での積層、続いて圧力を使用したダイの配置及び焼結によって達成することができる。
【0106】
ウェハ・ラミネーションの主な利点は、スクリーン印刷の排除である。それは、機械加工及びマンパワーに関して追加的な利点である。次いで、ダイシングされた銅コーティングされたシリコンウェハを、ダイシング機を使用して個片化し、10及び5MPaの圧力で3分間Carverプレスを使用してDBCに取り付けた。ダイシェアがそれぞれ約30~40MPaであったことが観察された。
【0107】
10MPaの圧力で、シリコンダイの大部分が粉砕し、基板に対するダイの優れた結合強度を再度証明していることが観察された。理論に束縛されるものではないが、焼結圧力の増加に伴い、ナノ粒子は、次第に互いに接触し、ひいてはナノ粒子の接触点を増加させ、結果として、粒子のより良好な融合をもたらして優れた接合強度をもたらすと考えられる。
【0108】
実施例8:セラミック上のナノ銅ペースト接着、FR4及びPET基材
ナノ銅ペーストを、セラミック、FR4及びPETで接着について試験した。ペーストを、DEKプリンタを使用して様々な基材に印刷し、次いで、ボックスオーブン内、窒素下で、1700℃で30分間硬化させた。次いで、典型的な引っ掻き接着テープ試験の方法によって印刷物を試験した。セラミックとFR4との接着性は5Bに分類され、一方PETに対する接着性は4Bに分類された。
【0109】
実施例9:スクリーン印刷及びはんだ付け
合成されたナノ銅ペーストはまた、被スクリーン印刷の能力を有する。ペーストをメッシュスのクリーンでスクリーン印刷した。設計パターンは、DEKプリンタにおいて70のメッシュサイズのスクリーンを使用して作製した。
【0110】
次いで、スクリーン印刷されたナノ銅パターンは、コーティングされた無電解ニッケル浸漬金(ENIG)、続いて標準的なはんだペーストではんだ付けした。はんだ付けは非常に良好な広がりを示したが、一部の場所では、中間チップのはんだボールが見られた。
【0111】
更に、剥き出しのFR4クーポン上に合成されたナノ銅ペーストによって印刷された、銅印刷上のはんだ付けの可能性が検討されている。ナノ銅でのはんだ付けは、標準的なはんだペーストで行われた。銅印刷でのENIGコーティングなしのはんだ付けはまた、良好な広がり及び良好なはんだ付け特徴を示した。
【0112】
前述の詳細な記載は、説明及び図解によって提供されたものであり、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書に示される現時点で好ましい実施形態の多くの変形例は、当業者に明らかであり、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内に留まる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6