(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】ステッパ・モータと一体化した改良型燃料タンク遮断弁
(51)【国際特許分類】
F02M 37/00 20060101AFI20240422BHJP
F16K 24/00 20060101ALI20240422BHJP
F16K 31/04 20060101ALI20240422BHJP
B60K 15/035 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
F02M37/00 311A
F02M37/00 311K
F02M37/00 301E
F16K24/00 F
F16K24/00 U
F16K31/04 A
B60K15/035 Z
(21)【出願番号】P 2022514809
(86)(22)【出願日】2020-09-12
(86)【国際出願番号】 IB2020058490
(87)【国際公開番号】W WO2021044395
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】201911035587
(32)【優先日】2019-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】519435935
【氏名又は名称】パドミニ・ブイ・エヌ・エイ・メカトロニクス・プライベート・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PADMINI VNA MECHATRONICS PVT. LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バーンダリ、カビール
(72)【発明者】
【氏名】クマール、アマルディップ
(72)【発明者】
【氏名】クマール、ヴァルン
(72)【発明者】
【氏名】シングラ、サヒル
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-097711(JP,A)
【文献】特開2016-121650(JP,A)
【文献】特開2015-161261(JP,A)
【文献】特開2005-081862(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0084410(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107084267(CN,A)
【文献】独国特許出願公開第69807273(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0112290(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0055943(US,A1)
【文献】特開2016-121790(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110486483(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00
F16K 24/00 ~ 24/06
F16K 31/00 ~ 31/11
B60K 15/03 ~ 15/035
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステッパ・モータ(17)と一体化した改良型燃料タンク遮断弁(10)であって、
(a)キャニスタ・ポート(13)及びタンク・ポート(14)を備え、過圧リリーフ(OPR)機能を行うための圧縮ばね(3)及びシール・サブ・アセンブリ(4)、並びに過真空リリーフ(OVR)機能を行うためのシール・サブ・アセンブリ(7)及び圧縮ばね(6)を含む弁ハウジング(11)と、
(b)電気接続ポート(15)を有するモータ・ハウジング(12)と、
(c)ねじ付プランジャ(16)と、
(d)ばねホルダ(19)と
を備え、
前記ステッパ・モータ(17)が、前記モータ・ハウジング(12)、ねじ付ロータ(20)、及び、前記ロータ(20)が作動状態の間、摩擦を低減するための、前記モータ・ハウジング(12)と前記ロータとの間に配置された複数のボール・ベアリング(9)を含み、
前記ねじ付プランジャ(16)が、上端に環状フランジ(22)を有して前記シール・サブ・アセンブリ(7)に嵌り、下端で、前記ロータ(20)のねじ付空洞(21)に固定されてインライン機能を提供し、
前記弁(10)が、ねじ付プランジャ(16)の直線運動によって弁の開閉を可能にする、改良型燃料タンク遮断弁(10)。
【請求項2】
前記ばねホルダ(19)が前記圧縮ばね(6)を固定し、前記プランジャ(16)が前記ばねホルダ(19)を通り抜ける、請求項1に記載のステッパ・モータ(17)と一体化した改良型燃料タンク遮断弁(10)。
【請求項3】
前記圧縮ばね(3)が上方に固定された前記シール・サブ・アセンブリ(4)が、過圧リリーフ(OPR)機能用のシール面(5)と接触する、請求項1に記載のステッパ・モータ(17)と一体化した改良型燃料タンク遮断弁(10)。
【請求項4】
前記圧縮ばね(6)が下方に固定された前記シール・サブ・アセンブリ(7)が、シール面(8)と接触して過真空リリーフ(OVR)機能を行う、請求項1に記載のステッパ・モータ(17)と一体化した改良型燃料タンク遮断弁(10)。
【請求項5】
前記モータ・ハウジング(12)と前記ねじ付ロータ(20)との間に、前記ボール・ベアリング(9)用の環状空洞が設けられている、請求項1に記載のステッパ・モータ(17)と一体化した改良型燃料タンク遮断弁(10)。
【請求項6】
前記ステッパ・モータ(16)が、圧力を保護圧力範囲内に保ち、燃料補給時に、タンクからキャニスタへの燃料蒸気の流れを電気的に制御し、過圧リリーフ(OPR)及び過真空リリーフ(OVR)を行う、請求項1に記載のステッパ・モータ(17)と一体化した改良型燃料タンク遮断弁(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良型燃料タンク遮断弁に関する。より詳細には、本発明は、プランジャ移動用のステッパ・モータと一体化され、過圧リリーフ及び過真空リリーフのインライン機能を有し、重量とコストを抑えたコンパクトな設計で、正確に制御された流れをもたらす改良型燃料タンク遮断弁に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車は、ほとんどの場合、電力を使用して走行し、燃焼エンジンはアイドリング状態にある。燃料タンクは閉鎖システムであるので、一般に、貯蔵された燃料の蒸発により、燃料タンク内は正圧になる。さらに、乗物では、燃料蒸気の発生速度を抑え、大気への炭化水素の排出を最小限にするために、燃料タンク内を高い圧力に維持する必要がある。この問題を克服するための最も明白な解決策は、燃料タンクに結合されて燃料タンクの通気を制御する燃料タンク遮断弁(FTIV:fuel tank isolation valve)を設けることである。燃料タンク遮断弁(FTIV)は、燃料タンクと蒸発排出制御システムの燃料蒸気キャニスタとの間の導管に配置される場合がある。これは、圧力が保護限界を超えると自動的に開き、燃料補給時に電気的に作動させられる。
【0003】
燃料タンク遮断弁(FTIV)はまた、エンジンが過剰な蒸気を処理するのに不適切な状況になるまで、燃料タンク内に燃料蒸気を封じ込めることができる。一般に、燃料タンク遮断弁は、入口ポート及び出口ポートを開閉するために電気的に制御される電磁弁を含むが、その場合、中間位置の開度をあまり正確に制御しない、又は中間位置の開度を全く制御しない。したがって、燃料補給時での燃料タンクからキャニスタへの燃料蒸気の流れは正確に制御されない。
【0004】
米国特許出願公開第20020112702(A1)号は、燃料タンク遮断弁及びキャニスタ通気弁を作動させるための方法を開示している。燃料タンク遮断弁は、第1のポート、第2のポート、電動アクチュエータ、及び弁体を有する。第1のポートは、燃料蒸気収集キャニスタと流体連通しており、第2のポートは、燃料タンクと流体連通している。電動アクチュエータは、弁体を動かして、第1のポートと第2のポートとの間の流体連通を制御する。そして、キャニスタ通気弁は、燃料蒸気収集キャニスタに対する周囲の流体流れを制御する。この方法は、弁体が、第1のポートと第2のポートとの間で実質的に無制限の燃料蒸気流を許容するように、電動アクチュエータに第1の電気信号を供給すること、弁体が、第1のポートと第2のポートとの間で燃料蒸気流を実質的に妨げるように、電動アクチュエータに第2の電気信号を供給すること、弁体が、第1のポートと第2のポートとの間で制限された燃料蒸気流を与えるように電動アクチュエータに第3の電気信号を供給すること、及び、燃料蒸気収集キャニスタへの周囲の流体流れを許容するようにキャニスタ通気弁に第4の電気信号を供給することを含む。このシステムでは、燃料タンク遮断弁は、典型的な構成要素である電磁弁などの電動アクチュエータによって制御されるが、それは、開閉設定が予め定められており、また、費用がかかる。また、電磁弁を制御することは難しい。
【0005】
米国特許出願公開第20020088441(A1)号は、揮発性燃料の蒸発排出を制御するためのシステム及び方法を開示している。このシステムは、燃料蒸気収集キャニスタ、パージ弁、遮断弁、及び燃料タンクを有することが好ましい。遮断弁は、ハウジング、弁体、及びシールを含む。ハウジングは、燃料蒸気収集キャニスタの供給ポートと流体連通する第1のポートと、第2のポートと、第1のポートと第2のポートとの間に延在する燃料蒸気流路とを有する。弁体は、第1の配置と第2の配置との間を、軸線に沿ってハウジングに対して移動可能である。第1の配置は、第1のポートと第2のポートとの間で実質的に無制限の燃料蒸気流を許容し、第2の配置は、第1のポートと第2のポートとの間で燃料蒸気流を実質的に妨げる。燃料タンクは、遮断弁の第2のポートと流体連通している。このシステムでは、燃料タンク遮断弁は、典型的な構成要素である電磁弁などの電動アクチュエータによって制御されるが、それは、開閉設定が予め定められており、また、費用がかかる。また、電磁弁を制御することは難しい。
【0006】
したがって、本発明は、引用した技術の欠点を克服し、アクチュエータとして働くステッパ・モータと一体化した改良型燃料タンク遮断弁を提供する。これは、コンパクトな設計、正確な機能制御、高い費用効果、軽量化、及びアセンブリ全体の構成要素数の削減をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許出願公開第20020112702(A1)号
【文献】米国特許出願公開第20020088441(A1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の主な目的は、正確に制御された流れを可能にし、低コストでコンパクトな設計である改良型燃料タンク遮断弁アセンブリを提供することである。
【0009】
本発明の別の主な目的は、燃料タンク遮断弁の開閉を制御するために、ノズル、ねじ付プランジャ、及びステッパ・モータが組み込まれたアセンブリを提供することである。
【0010】
本発明のさらに別の主な目的は、ねじ付プランジャの直線運動によって弁の開閉を制御するためのアセンブリを提供することである。
【0011】
本発明のさらに別の目的は、燃料タンク内の圧力又は真空度が限界を超えたときに、圧縮ばねによって弁の自動開閉を可能にするアセンブリを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、改良型燃料タンク遮断弁(FTIV)アセンブリに関する。より詳細には、本発明は、EVAPシステムに適用されるステッパ・モータ駆動弁に関するもので、燃料補給時に燃料タンクからキャニスタへの燃料蒸気の流れを制御するとともに、過圧及び過真空の状態の両方において燃料タンク内の圧力を保護圧力範囲に維持するために使用される。
【0013】
主な実施例では、本発明はFTIVのアセンブリを提供する。このアセンブリは、弁を燃料タンクに接続するためのタンク・ポートが一体化されたノズルと、弁をキャニスタに接続するためのキャニスタ・ポートと、弁を電気的に開閉するために使用されるステッパ・モータとから構成される。ステッパ・モータは、モータ・ハウジングと、雌ねじを有するロータと、ボール・ベアリングと、外径にねじを有する可動プランジャとから構成される。サブ・アセンブリは、上方で固定された圧縮ばねを有し、シール面と接触して過圧リリーフ機能を行う過圧リリーフ(OPR:over pressure relief)用のシール・サブ・アセンブリ、及び、下方で固定された圧縮ばねを有し、シール面と接触して過真空機能を行う過真空リリーフ(OVR:over vacuum relief)用のシール・サブ・アセンブリをさらに含む。モータ・ハウジングは,雌ねじを有するロータ、及び回転時の摩擦を低減するためのボール・ベアリングを有する。空洞に固定されたねじ付プランジャは、モータのねじ付ロータに固定され、したがってFTIVの組立が完了する。モータ・ハウジング内のねじ付プランジャの直線運動が弁の開閉をもたらす。
【0014】
さらに別の実施例では、本発明は、アイドル状態の改良型FTIVアセンブリを提供する。アイドル状態では、OVR用のシール・サブ・アセンブリ及びOPR用のシール・サブ・アセンブリを閉じることができ、したがって、タンク・ポートとキャニスタ・ポートは接続されていない。OVR用の圧縮ばねは、シール・サブ・アセンブリ(OVR)を保持し、同時にOPR用の圧縮ばねは、シール・サブ・アセンブリ(OPR)を保持し、弁を閉じた状態に保つ。
【0015】
さらに別の実施例では、本発明は、オンコンディション又は燃料補給状態の改良型FTIVアセンブリを提供する。燃料補給状態では、モータに電力が供給されて弁を開けることができる。モータのロータが回転すると、プランジャはモータの回転方向に応じて上下に動き、燃料補給時に弁を開閉する。
【0016】
さらに別の実施例では、本発明は、OPR状態の改良型FTIVアセンブリを提供する。OPR状態では、圧力が既定の限界を超えたときに、OPR用の圧縮ばねが圧縮され、シール・サブ・アセンブリ(OPR)が上方へ持ち上げられて、タンク・ポートからキャニスタ・ポートへの燃料蒸気の流れが可能になる。
【0017】
さらに別の実施例では、本発明は、OVR状態の改良型FTIVアセンブリを提供する。OVR状態では、真空度が既定の限界を超えたときに、OVR用の圧縮ばねが圧縮され、シール・サブ・アセンブリ(OVR)が下方へ動かされて、キャニスタ・ポートからタンク・ポートへの燃料蒸気の流れが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1(a)】本発明による燃料タンク遮断弁の透視図である。
【
図1(b)】本発明による燃料タンク遮断弁の分解図である。
【
図2(a)】本発明による燃料タンク遮断弁の断面図である。
【
図2(b)】本発明による燃料タンク遮断弁の拡大断面図である。
【
図3(a)】アイドル状態における、本発明による燃料タンク遮断弁の断面図である。
【
図3(b)】アイドル状態における、本発明による燃料タンク遮断弁の拡大断面図である。
【
図4(a)】燃料補給中の、本発明による燃料タンク遮断弁の断面図である。
【
図4(b)】燃料補給中の、本発明による燃料タンク遮断弁の拡大断面図である。
【
図4(c)】燃料補給中の、本発明による燃料タンク遮断弁の拡大断面図である。
【
図4(d)】燃料補給中の、本発明による燃料タンク遮断弁の拡大断面図である。
【
図4(e)】燃料補給中の、本発明による燃料タンク遮断弁の拡大断面図である。
【
図5(a)】OPR状態で作動している、本発明による燃料タンク遮断弁の断面図である。
【
図5(b)】OPR状態で作動している、本発明による燃料タンク遮断弁の拡大断面図である。
【
図5(c)】OPR状態で作動している、本発明による燃料タンク遮断弁の拡大断面図である。
【
図6(a)】OVR状態で作動している、本発明による燃料タンク遮断弁の断面図である。
【
図6(b)】OVR状態で作動している、本発明による燃料タンク遮断弁の拡大断面図である。
【
図6(c)】OVR状態で作動している、本発明による燃料タンク遮断弁の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の多くの態様は、下の図面を参照してよりよく理解することができる。図面の構成要素は、必ずしも原寸に比例して描かれていない。その代わり、本発明の構成要素を明確に示すことに重点を置いている。さらに、類似の参照数字は、図面のいくつかの描写を通して、同じ部分を示す。本発明の少なくとも1つの実施例を説明する前に、本発明の実施例は、その適用において、以下の説明で述べる又は図面に示される構造の詳細及び構成要素の配置に限定されないことを理解されたい。本発明の実施例は、様々な方法で実施及び実行することが可能である。加えて、本書で使用される表現及び用語は、説明のためのものであって、限定するものとして見なすべきではない。
【0020】
本発明は、改良型燃料タンク遮断弁(FTIV)アセンブリに関する。より詳細には、本発明は、EVAPシステムに適用されるステッパ・モータ駆動弁に関するもので、燃料補給時に燃料タンクからキャニスタへの燃料蒸気の流れを制御するとともに、過圧及び過真空の状態の両方において燃料タンク内の圧力を保護圧力範囲に維持するために使用される。
【0021】
主な実施例では、本発明は、FTIVのアセンブリを提供する。このアセンブリは、弁を燃料タンクに接続するためのタンク・ポートが一体化されたノズルと、弁をキャニスタに接続するためのキャニスタ・ポートと、弁を電気的に開閉するために使用されるステッパ・モータとから構成される。ステッパ・モータは、モータ・ハウジングと、雌ねじを有するロータと、ボール・ベアリングと、外径にねじを有する可動プランジャとから構成される。サブ・アセンブリは、上方で固定された圧縮ばねを有し、シール面と接触して過圧リリーフ(OPR)機能を行う過圧リリーフ用のシール・サブ・アセンブリ、及び、下方で固定された圧縮ばねを有し、シール面と接触して過真空機能を行う過真空リリーフ(OVR)用のシール・サブ・アセンブリをさらに含む。モータ・ハウジングは,雌ねじを有するロータ、及び回転時の摩擦を低減するためのボール・ベアリングを有する。空洞に固定されたねじ付プランジャは、モータのねじ付ロータに固定され、したがってFTIVの組立が完了する。モータ・ハウジング内のねじ付プランジャの直線運動が弁の開閉をもたらす。
【0022】
さらに別の実施例では、本発明は、アイドル状態の改良型FTIVアセンブリを提供する。アイドル状態では、OVR用のシール・サブ・アセンブリ及びOPR用のシール・サブ・アセンブリを閉じることができ、したがって、タンク・ポートとキャニスタ・ポートは接続されていない。OVR用の圧縮ばねは、シール・サブ・アセンブリ(OVR)を保持し、同時にOPR用の圧縮ばねは、シール・サブ・アセンブリ(OPR)を保持し、弁を閉じた状態に保つ。
【0023】
さらに別の実施例では、本発明は、オンコンディション又は燃料補給状態の改良型FTIVアセンブリを提供する。燃料補給状態では、モータに電力が供給されて弁を開けることができる。モータのロータが回転すると、プランジャはモータの回転方向に応じて上下に動き、燃料補給時に弁を開閉する。
【0024】
さらに別の実施例では、本発明は、OPR状態の改良型FTIVアセンブリを提供する。OPR状態では、圧力が既定の限界を超えたときに、OPR用の圧縮ばねが圧縮され、シール・サブ・アセンブリ(OPR)が上方へ持ち上げられて、タンク・ポートからキャニスタ・ポートへの燃料蒸気の流れが可能になる。
【0025】
さらに別の実施例では、本発明は、OVR状態の改良型FTIVアセンブリを提供する。OVR状態では、真空度が既定の限界を超えたときに、OVR用の圧縮ばねが圧縮され、シール・サブ・アセンブリ(OVR)が下方へ動かされて、キャニスタ・ポートからタンク・ポートへの燃料蒸気の流れが可能になる。
【0026】
図1(a)を参照すると、本発明による燃料タンク遮断弁(10)の透視図が示されている。燃料タンク遮断弁は、モータ・ハウジング(12)の上に取り付けられた弁ハウジング(11)から構成され、弁ハウジング(11)は、キャニスタ・ポート(13)及びタンク・ポート(14)から構成され、モータ・ハウジング(12)は、電気接続ポート(15)を有する。
【0027】
図1(b)を参照すると、本発明による燃料タンク遮断弁(10)の分解図が示されている。アセンブリは、弁を燃料タンクに接続するためのタンク・ポート(14)が一体化されたノズルと、弁をキャニスタに接続するためのキャニスタ・ポート(13)と、弁を電気的に開閉するために使用されるステッパ・モータ(17)とから構成される。サブ・アセンブリは、上方で固定された圧縮ばね(3)を有し、シール面と接触して過圧リリーフ機能を行う過圧リリーフ(OPR)用のシール・サブ・アセンブリ(4)、及び、下方で固定された圧縮ばね(6)を有し、シール面と接触して過真空機能を行う過真空リリーフ(OVR)用のシール・サブ・アセンブリ(7)をさらに含む。モータ・ハウジング(12)は、雌ねじを有するロータ(20)、及び回転時の摩擦を低減するためのボール・ベアリングを有する。空洞に固定されたねじ付プランジャ(16)は、モータのねじ付ロータに固定され、したがってFTIV(10)の組立が完了する。
【0028】
次に、
図2(a)を参照すると、本発明は、FTIVアセンブリの断面図を提供する。アセンブリ(10)は、弁を燃料タンクに接続するためのタンク・ポート(14)が一体化されたノズルと、弁をキャニスタに接続するためのキャニスタ・ポート(13)と、弁を電気的に開閉するために使用されるステッパ・モータ(17)とから構成される。ステッパ・モータ(17)は、モータ・ハウジング(12)と、雌ねじを有するロータ(20)と、ボール・ベアリング(9)と、外径にねじを有する可動プランジャ(16)とから構成される。サブ・アセンブリは、上方で固定された圧縮ばね(3)を有し、シール面(5)と接触して過圧リリーフ機能を行う過圧リリーフ(OPR)用のシール・サブ・アセンブリ(4)、及び、下方で固定された圧縮ばね(6)を有し、シール面(8)と接触して過真空機能を行う過真空リリーフ(OVR)用のシール・サブ・アセンブリ(7)をさらに含む。モータ・ハウジング(12)は,雌ねじを有するロータ(20)、及び回転時の摩擦を低減するためのボール・ベアリング(9)を有する。空洞に固定されたねじ付プランジャ(16)は、モータのねじ付ロータ(20)に固定され、したがってFTIVの組立が完了する。ねじ付プランジャ(16)がモータ・ハウジング内で直線移動することによって弁(10)が開閉する。
【0029】
図2(b)を参照すると、本発明による燃料タンク遮断弁の拡大断面図が示されている。シール・サブ・アセンブリ(4)は、OPR機能用のシール面(5)にかぶさって取り付けられて、OPR機能用のシールを提供する。また、シール・サブ・アセンブリ(7)は、OVR機能用のシール面(8)の下に取り付けられて、OVR機能及び燃料補給機能用のシールを提供する。
【0030】
次に、
図3(a)及び
図3(b)を参照すると、アイドル状態における、本発明による燃料タンク遮断弁の断面図及び拡大断面図が示されている。OVR用の圧縮ばね(6)は、OVR用のシール・サブ・アセンブリ(7)をシール面(8)と接触した状態に保ち、同時に、OPR用の圧縮ばね(3)は、OPR用のシール・サブ・アセンブリ(4)をシール面(5)と接触した状態に保ち、したがって、タンク・ポート(14)とキャニスタ・ポート(13)を接続しておらず、燃料蒸気を燃料タンク内に保持する。前記ねじ付プランジャ(16)は、上端に環状フランジ(22)を有してシール・サブ・アセンブリ(7)に嵌り、下端で、前記ロータ(20)のねじ付空洞(21)に固定されてインライン機能を提供する。
【0031】
図4(a)~
図4(e)を参照すると、燃料補給中の、本発明による燃料タンク遮断弁の断面図及び拡大断面図が示されている。燃料補給中、モータ(17)は電力を供給され、ロータ(20)はシャフトと共に、ねじ付プランジャ(16)を下方に動かす回転を開始し、それによって、圧縮ばね(6)を圧縮することによってOVR用のシール・サブ・アセンブリ(7)を下方に移動させ、
図4(a)に示すように、タンク・ポート(14)からキャニスタ・ポート(13)へ流れる状態が可能になる。
【0032】
第1の状態において、モータ(17)の漏れ点+2回転で、
図4(b)に示すように、プランジャ(16)の短い直線ストロークが生じ、小さな開口経路が開き、流量の第1の状態になる。モータ(17)がさらに回転すると、すなわちモータの漏れ点+20回転で、
図4(c)に示すように、プランジャ(16)のさらなるストロークが生じ、開口経路面積が増大し、流量の第2の状態になる。モータ(17)が完全に回転すると、
図4(d)に示すように、プランジャ(16)はフルストロークとなり、弁(10)は全開となり、流動抵抗状態になる。燃料補給状態での流路は、
図4(e)に示すような経路である。
【0033】
図5(a)~
図5(c)を参照すると、OPR状態で作動している、本発明による燃料タンク遮断弁(10)の断面図及び拡大断面図が示されている。燃料タンク遮断弁(10)がOPR状態のとき、ばねホルダ(19)とOPR機能用のシール・サブ・アセンブリ(4)との間の領域(18)の弁(10)の内部の圧力は上昇し、OPR機能用の圧縮ばね(3)は、
図5(a)に示すように、シール・サブ・アセンブリ(4)とシール面(5)との接触を保って燃料タンク遮断弁(10)を閉鎖状態に保つ。圧力が既定の保護点限界を超えて上昇すると、
図5(b)に示すように、圧力はOPR機能用の圧縮ばね(3)を圧縮するように力を及ぼし、OPR機能用のシール・サブ・アセンブリ(4)は上方に持ち上げられる。OPR機能用のシール・サブ・アセンブリ(4)が持ち上がると、弁が開き、タンク・ポート(14)からキャニスタ・ポート(13)への流れが始まる。
図5(c)に示すように、過剰な燃料蒸気はキャニスタに行き、圧力は低下し始める。圧力降下が保護点限界、すなわち安全限界に達するとすぐに、弁は再び閉じる。
【0034】
図6(a)~
図6(c)を参照すると、OVR状態で作動している、本発明による燃料タンク遮断弁(10)の断面図及び拡大断面図が示されている。燃料タンク遮断弁(10)がOVR状態のとき、ばねホルダー(19)とOVR機能用のシール・サブ・アセンブリ(7)との間の領域(18)の弁(10)の内部は真空になり、OVR機能用の圧縮ばね(6)は、
図6(a)に示すように、OVR機能用のシール・サブ・アセンブリ(7)とシール面(8)との接触を保って燃料タンク遮断弁(10)を閉鎖状態に保つ。プランジャ(16)の下端に設けられたねじに頼ることなく、ばねの力を完全に使って封止するために、OVR用のシール・サブ・アセンブリ(7)とプランジャ(16)との間にストロークが設けられている。加えて、流動抵抗機能に従って制御を行うので、同じストロークがOVR機能に対して利用される。真空度が保護点限界を超えて上昇すると、真空によって圧縮ばね(6)を圧縮する力が働き、
図6(b)に示すように、OVR機能用のシール・サブ・アセンブリ(7)とプランジャ(16)との間のストロークによりOVR機能用のシール・サブ・アセンブリ(7)は下方に移動する。ここで、プランジャはその位置に留まり、OVR機能用のシール・サブ・アセンブリ(6)の最大移動量は、OVR機能用のシール・サブ・アセンブリ(7)とプランジャ(16)との間に設けられたストロークに等しい。OVR用のシール・サブ・アセンブリ(7)が下方に移動すると、
図6(c)に示すように、弁が開き、キャニスタ・ポート(13)からタンク・ポート(14)への流れが始まる。タンクから真空状態が解除され始め、真空状態が保護点限界、すなわち安全限界に達するとすぐに、弁は再び閉じる。
【0035】
したがって、FTIVアセンブリは、プランジャの直線移動によって弁の開閉を可能にする。
「実例1」
オンコンディションでの燃料補給
【0036】
燃料補給中、ステッパ・モータはオンになる。ステッパ・モータの回転により、送りねじを有するプランジャが下方に移動し、OVR機能用の圧縮ばねを圧縮することによってOVR機能用のシール・アセンブリを下方に移動させる。第1の状態において、モータの漏れ点+2回転で、プランジャの短い直線ストロークが生じ、小さな開口経路が開き、16kPaで最大11.4L/minの状態になった。モータがさらに回転すると、すなわちモータの漏れ点+20回転で、プランジャのさらなるストロークが生じ、開口経路面積が増大し、16kPaで最大155L/minの状態になった。モータが完全に回転すると(416ステップ)、プランジャはフルストロークとなり、弁は全開となり、最大0.35kPaの圧力差で78L/minの流動抵抗状態になる。
【0037】
本発明の実施例の上記の記述は、例示及び説明のために提示された。それは、網羅的であること、又は本発明を開示された正確な形態に限定することを意図するものではなく、修正及び変形は、上記の教示を考慮に入れて可能であり、又は本発明の実施から得ることができる。実施例は、本発明の原理及びその実際の適用を説明するために選択され、説明されたものであって、当業者が、意図された特定の用途に適するように、様々な実施例において、また、様々な修正を伴って、本発明を利用することを可能にしている。