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特許7476304多層部品の積層造形のための3Dプリンター、印刷方法及び部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】多層部品の積層造形のための3Dプリンター、印刷方法及び部品
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/336 20170101AFI20240422BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20240422BHJP
   B29C 64/129 20170101ALI20240422BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20240422BHJP
   B29C 64/35 20170101ALI20240422BHJP
   B29C 64/357 20170101ALI20240422BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240422BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240422BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20240422BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20240422BHJP
   B22F 10/73 20210101ALI20240422BHJP
   B22F 12/50 20210101ALI20240422BHJP
   B22F 10/68 20210101ALI20240422BHJP
   B22F 10/16 20210101ALI20240422BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
B29C64/336
B29C64/106
B29C64/129
B29C64/209
B29C64/35
B29C64/357
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
B33Y80/00
B22F10/73
B22F12/50
B22F10/68
B22F10/16
B28B1/30
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022517753
(86)(22)【出願日】2021-01-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-08
(86)【国際出願番号】 EP2021051346
(87)【国際公開番号】W WO2021151778
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-06-14
(31)【優先権主張番号】GM50015/2020
(32)【優先日】2020-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】ティーディーケイ・エレクトロニクス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TDK ELECTRONICS AG
【住所又は居所原語表記】Rosenheimer Strasse 141e, 81671 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】レヒャー, クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】レンツェン, トーマス
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0272608(US,A1)
【文献】特開2020-066236(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0126536(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0043619(US,A1)
【文献】国際公開第2019/089496(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110039049(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0336330(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
B22F 10/00-12/90
B28B 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層部品(11)の積層造形のための3Dプリンター(1)であって、
作業面(5)と、
少なくとも2つの異なる原料のうちのそれぞれ1つで前記作業面(5)を被覆するように構成された、少なくとも2つの可動のディスペンサー(3)であって、それぞれの前記原料の少なくとも一部が製造ステップにおいて1つの層として前記部品(11)に付加される、ディスペンサー(3)と、
1つの層の前記部品(11)への付加の際に使用されなかったそれぞれの前記原料を選択的に回収するため、及び、回収された前記原料をそれぞれ所属する前記ディスペンサー(3)内へ還流させるための、少なくとも2つの可動の回収装置(4)と、
を含む3Dプリンター(1)。
【請求項2】
前記作業面(5)内の、放射線に対して透過性の窓と、
前記窓の下に配置されており、その結果、前記窓を貫いて前記窓の上の前記原料を感光させ、それにより硬化させることができる、放射線源(10)と、
構築パネル(12)であって、前記構築パネル(12)の下面に前記部品(11)が配置され固定され得ると共に、前記作業面(5)の上方でこれに対して平行に配置され、前記作業面(5)に対して垂直に昇降され得る、構築パネル(12)と、
前記構築パネル(12)を前記作業面(5)に対して垂直に昇降させることができ、それにより部品(11)と作業面(5)との間の距離を決定する、位置決めシステム(13)と、
を更に含む、請求項1に記載の3Dプリンター(1)。
【請求項3】
ラミック粉末、金属粉末又は有機粉末のうちのいずれか及び光重合可能な有機バインダーを含むペーストを含む前記原料を加工するために設計されている、請求項1又は2に記載の3Dプリンター(1)。
【請求項4】
ディスペンサー(3)及び回収装置(4)は、1つの部材(2)内に形成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の3Dプリンター(1)。
【請求項5】
少なくとも2つのディスペンサー(3)が、1つの部材(2)内に形成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の3Dプリンター(1)。
【請求項6】
少なくとも2つの回収装置(4)が、1つの部材(2)内に形成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の3Dプリンター(1)。
【請求項7】
前記ディスペンサー(3)は、前記原料を貯蔵するためのタンク(6)と、前記作業面(5)を前記原料で被覆するための被覆装置と、を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の3Dプリンター(1)。
【請求項8】
前記作業面の異なる縁部に取り付けられた少なくとも2つの樋(8)を含み、前記可動の回収装置(4)は、使用されなかった前記原料を、所属する前記樋(8)内へ押しのける、請求項1~7のいずれか1項に記載の3Dプリンター(1)。
【請求項9】
前記部品(11)から原料を取り除くためのクリーニング装置(14)を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の3Dプリンター(1)。
【請求項10】
前記クリーニング装置(14)は、駆動システムによって、前記部品(11)の表面に沿って横方向に移動され得る、請求項9に記載の3Dプリンター(1)。
【請求項11】
前記クリーニング装置(14)のそれぞれに対して1つずつ還流装置が設けられており、
各還流装置は、回収された前記原料をそれぞれ割り当てられた前記ディスペンサー(3)内へ戻す搬送装置を含む、
請求項9に記載の3Dプリンター(1)。
【請求項12】
3次元的な多層部品(11)を積層造形するため及び使用されなかった原料を回収するための方法であって、以下のステップを含む:
- 第1の原料の層を作業面(5)上に前記作業面(5)の上方を横方向に移動する第1のディスペンサー(3)によって塗布するステップであって、前記第1の原料の層厚さは、少なくとも、前記部品(11)に付加すべき層の所望の層厚さに対応する、ステップ
- 前記第1の原料の前記層を、前記作業面(5)上の前記部品(11)の被覆すべき表面と接触させると共に、前記部品(11)の構造化された新しい層を形成するために前記第1の原料の一部を構造化された態様で硬化させるステップ
- 前記新しい層を含む前記部品(11)を前記作業面(5)から持ち上げるステップ
- 前記作業面(5)の上方を横方向に移動する第1の回収装置(4)を用いて前記作業面(5)から残りの前記第1の原料を取り除くと共に、前記第1の原料を前記第1のディスペンサー(3)に還流させるステップ
- 第2の原料及び第2のディスペンサー(3)を用いて前述した方法ステップを繰り返すステップであって、第2の回収装置(4)が設けられており、その結果、前記第1の原料及び前記第2の原料はそれぞれ選択的に対応する前記第1のディスペンサー(3)及び前記第2のディスペンサー(3)内へ戻され得る、ステップ
【請求項13】
- 前記作業面(5)は窓を有し、前記窓は、放射線透過性であると共に、前記窓の寸法において少なくとも付加すべき層のサイズを有し、
- 構築パネル(12)が前記部品(11)と共に前記窓の上方に位置決めされ、
- 前記構築パネル(12)は、前記部品(11)の前記表面と前記作業面(5)との間の距離が、前記部品(11)に付加すべき構造化された新しい層の所望の層厚さに対応するまで、前記窓に対して垂直に下げられ、
- 前記原料は、前記窓を通じた前記多層部品(11)の照射により、新しい層へと構造化され硬化され、
- 前記構築パネルは、前記部品(11)及びそれに付着している新しい層と共に、前記作業面(5)から持ち上げられる、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、以下の引き続くステップを含む:
- 前記部品(11)から原料を取り除くためのクリーニング装置(14)を準備するステップ
- 前記部品(11)の前記表面に沿った前記クリーニング装置(14)の横方向の移動によって、前記部品(11)の前記表面から余分な前記原料を取り除くステップ
- 所属する還流装置によって、前記原料を、当該原料に対応する前記ディスペンサー(3)内へ還流させるステップ
【請求項15】
前記部品(11)は複数の層(16)を含、前記層(16)は、
- 平面に沿って互いに境界付けられており、
- 異なる材料を含むと共に、
- 化学的に互いに直接的に結合されている、請求項12に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層部品の積層造形のための3Dプリンター、3次元的な多層部品の積層造形のための方法、及び、3D印刷された多層部品に関する。
【背景技術】
【0002】
液槽光重合(DIN EN ISO 17296参照)を用いて、多層部品を層状に構造化して構築することができる。対応する印刷装置は、原料が、液槽内に入れられるか又は他の作業面上に塗布され、続いて多層部品と接触した状態で構造化され硬化される、ことを特徴とする。いくつかの方法では、原料のそれぞれ1つの層のみが作業面上に塗布され、続いて部品と接触した状態で構造化され硬化される。多層部品は、部品上に移された層の構造が場合によっては異なる複数のステップを繰り返すことによって、生成される。
【0003】
原料を構造化し硬化させるための一般的な方法は、ステレオリソグラフィー(SLA)又はデジタル・ライト・プロセッシング(DLP(登録商標))である。これらの方法では、原料は、通常はプログラム可能なデジタル放射線源によって照射される。SLA法は、このために、通常、旋回可能なレーザーを利用し、一方、DLP法は、例えばプロジェクターを利用する。照射は、所定のパターンに従う。この場合に感光性の原料は、含まるバインダーの光重合によって硬化する。
【0004】
特許文献1は、DLP-3Dプリンターを開示しており、当該3Dプリンターにおいては、原料が、コンベヤーベルト上に塗布され、当該コンベヤーベルトによって作業面に搬送される。通常、使用可能な原料の一部が新しい層の構造化に使用されるにすぎないので、部品の製造に必要とされるよりも多くの原料が使用されなければならない。使用される余分な原料は、印刷プロセスを非効率的かつ高価なものにする。
【0005】
特許文献2には、コンベヤーベルトを有する別の3Dプリンターが開示されている。印刷プロセスにおいて残っている原料は、ここでは回収装置を用いて集められ、その後、再び製造工程で使用され得る。第2の原料で印刷するためには、第1の原料の残滓を除去するために、回収装置を含むプリンター全体が洗浄されなければならない。したがって、異なる材料の複数の層を含む部品の印刷は、1つの印刷プロセスでは不可能である。
【0006】
特許文献3は、横方向に移動する作業面を有する3Dプリンターを開示している。複数の原料ディスペンサーを用いて、ここでは異なる原料が塗布され得る。作業面及び部品は、各材料交換の前に洗浄されなければならない。余分な原料の回収は、開示された装置では意図されていない。
【0007】
多数の部品が、異なる材料を含む複数の層を含む。これは、通常、個々の構成要素が例えば別々に印刷され、続いて組み合わされる、労力のかかる製造プロセスを伴う3D印刷でのみ可能である。従来技術は、異なる材料を含む多層部品の印刷のための初期のアプローチを含むが、これらは、使用されるべき余分な原料及び装置の費用のゆえに、非効率的かつ高価である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2015/107066号
【文献】国際公開第2017/009368号
【文献】米国特許出願公開第2017/0182708号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、異なる材料を含む多層部品を、効率的、省資源かつ安価な方法で製造することができる、3Dプリンター及び印刷方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、少なくとも部分的に上述した課題を解決する。
【0011】
本発明は、多層部品の積層造形のための3Dプリンターを開示する。
【0012】
3Dプリンターは、その上で印刷プロセスが行われる作業面を含む。更に、プリンターは、少なくとも2つの異なる原料のうちのそれぞれ1つで作業面を被覆するように構成された、少なくとも2つの可動のディスペンサーを含む。作業面は、一実施形態では、不動であることができる。
【0013】
ディスペンサーは、種々の技術的な実施形態を含むことができる。例えば、ディスペンサーは、ノズルコーターとして、シリンジポンプとして、蠕動ポンプとして、インクジェットヘッドとして、ローラー搬送装置として、又は、転写フィルムとして、構成され得る。
【0014】
ディスペンサーによって作業面上に塗布されたそれぞれの原料の層の少なくとも一部は、印刷プロセス中に、層として部品に付加される。製造プロセスは、ここでは、付加的光重合プロセスである。部品の第1の層は、そのために設けられた構築パネルに直接的に付加され得る。更なる層は、それぞれ、最後に印刷された部品の層に付加される。その場合、構築パネルにおいて、印刷された部品が1層ずつ成長する。
【0015】
付加的に、3Dプリンターは、部品に1つの層を付加する際に使用されなかった原料のそれぞれを選択的に回収するための、及び、回収された原料をそれぞれ所属するディスペンサー内へ還流させるための、少なくとも2つの可動の回収装置を含む。
【0016】
回収装置も、技術的に種々の態様で構成され得る。可能な実施形態は、吸引ノズル、ワイパー、ブレード又はローラーである。
【0017】
したがって、各個々の原料には、第一に、この1つの原料のみを塗布するディスペンサーが割り当てられており、第二に、この1つの原料のみを回収して所属するディスペンサー内へ還流させる回収装置が割り当てられている。
【0018】
したがって、異なる原料が、製造プロセス中にも回収中にも互いに混合しないことが保障され得る。したがって、余分な原料が一定の品質で回収され、再び製造工程で使用され得る。したがって、プリンターは、効率的かつ省資源な方法で、1つの印刷プロセスで、異なる材料の複数の層を有する部品を印刷することができる。
【0019】
ディスペンサーの可動性の故に、それぞれのディスペンサーへの原料の還流は、2つの方法で行うことができる。第一に、回収装置は、ホースによって、可動のディスペンサーに強固に接続され得る。第二に、原料は、回収装置によって供給装置内へ返送されることができ、当該供給装置から、新しい印刷ステップの開始前に、ディスペンサーを満たすことができる。この場合、還流装置とディスペンサーは、互いに強固には接続されていない。
【0020】
可動のディスペンサーは、材料供給の場所を製造の場所から切り離すことを可能にする。可動の回収装置は、製造の場所を材料回収の場所から切り離すことを可能にする。これにより、プリンターのフレキシブルな構成が可能になる。
【0021】
3Dプリンターは、更に、作業面内に、放射線に対して透過性の窓を含むことができる。この場合、プリンターは、更に、窓の下に配置されており、その結果、窓を貫いて窓の上の原料を感光させ、それにより硬化させることができる、放射線源を含む。作業面の放射線透過性は、露光によって原料を硬化させることを可能にする。放射線源は、例えばレーザー(SLA法)又はプロジェクター(DLP法)である。ここ及び以下において、放射線は、可視光、赤外(IR)及び紫外(UV)領域の光、X線、並びに、他の全ての形態の電磁放射を含む。
【0022】
更に、3Dプリンターは、その下面において部品が製造され、そこに付着すると共に、作業面の上方でこれに対して平行に配置された、構築パネルを含むことができる。構築パネルは、作業面に対して垂直に昇降させることができる。このために、3Dプリンターは、構築パネルを昇降させることができる位置決めシステムを含む。したがって、位置決めシステムは、前に印刷された部品の層と作業面との間の距離を決定する。第1の層は、構築パネル上に直接的に印刷される。次いで、調整された距離によって、部品に付加すべき層の厚さが設定される。
【0023】
構築パネルには複数の部品が付着することもでき、それらには、並行して新しい層が付加される。全ての部品は、この構成においては、作業面の上方かつ放射線透過性の窓のエリア内にある。
【0024】
印刷プロセス中に使用される原料はペーストを含み、当該ペーストは、セラミック粉末、金属粉末又は有機粉末のうちのいずれか、及び、光重合可能な、すなわち放射線の下で重合する有機バインダーを、含むことができる。そのような原料は、光の照射により構造化され硬化され得る。UV光は、例えば、UV感受性の有機バインダーを刺激して重合させ、それにより、原料中に硬化した構造が形成される。
【0025】
印刷の後に、脱バインダー工程及び焼結工程が続き得る。これらの工程は、有機バインダーを除去するために実行され、その結果、セラミック材料又は金属材料のみを含む構造化された層が残存する。ポリマー層の場合、これらのステップは省略することができる。そのようにして、セラミック層、金属層及びポリマー層を含む所望の多層構造を、部品内で調整すると共に得ることができる。
【0026】
一実施形態では、ディスペンサー及び回収装置は、単一の部材として構成されている。すなわち、同じ部材が、作業面を新しい原料で被覆するために、及び、残っている未硬化の原料を作業面から除去するために、利用される。この部材は、例えば、原料を貯蔵するためのタンクと、作業面を被覆するための被覆装置と、原料を作業面から回収してタンク内へ搬送する回収装置と、を含む。
【0027】
被覆装置は、例えば、ノズルコーターとして、シリンジポンプとして、蠕動ポンプとして又はインクジェットヘッドとして、構成することができる。回収装置は、例えば、吸引ノズル又はブレードとして、構成することができる。
【0028】
部材は、例えば、作業面の上方を横方向に移動可能な要素であることができる。作業面上への原料の塗布及び回収は、この部材によって、同時に又は別々のステップで実行することができ、その結果、部材は、1つのステップにおいて、それぞれの原料を、単に塗布するか又は単に回収する。
【0029】
ディスペンサー及び回収装置を1つの部材に統合することにより、3Dプリンターを構築するためのハードウェアコストが低減される。更に、それは、原料の塗布及び回収を1つの工程ステップで実行することを可能にし、それにより、印刷プロセスをより効率的に構成することができる。
【0030】
更なる実施形態では、1つの部材内に少なくとも2つのディスペンサーが形成されている。したがって、部材は、2つの異なる原料を作業面上に塗布することができる。しかしながら、1つのステップでは、常にただ1つの原料が同時に塗布される。部材は、固定された作業面の上方を横方向に移動することができる。部材は、更に、原料を貯蔵するためのタンクを含むことができる。
【0031】
被覆装置は、例えば、上述したように構成することができる。1つの部材内に2つのディスペンサーを形成することにより、必要とされる部材の数が低減され、したがって、3Dプリンターのハードウェア構造が単純化される。
【0032】
一般に、ディスペンサーは、常に、原料を貯蔵するためのタンクと、作業面を原料で被覆するための被覆装置と、を含むことができる。原料を貯蔵するためのタンクは、回収装置によって、使用されなかった原料で再び満たされ得る。このために、回収装置は、例えばホースのような還流装置を含むことができ、それを用いて、ディスペンサー内の原料が返送される。搬送は、ポンプ又は同様の搬送ユニットによって促進され得る。ディスペンサー及び回収装置が1つの部材内に構成されている場合、還流装置は不要である。更に、タンクに、新たに追加された原料を満たすこともできる。
【0033】
一実施形態では、ディスペンサーのタンクは、印刷された個々の層の均一な組成を保証するために、還流された原料と、場合によっては追加された新しい原料とを混合する、混合装置を含む。
【0034】
更なる実施形態では、1つの部材内に少なくとも2つの回収装置を形成することができる。回収装置の可能な実施形態は、上述されている。部材は、更に、それぞれの原料を貯蔵するためのタンクを含むことができる。2つの回収装置を1つの部材内に形成することにより、3Dプリンターを構築するためのハードウェアコストが低減される。
【0035】
部材は、一実施形態では、2つのディスペンサー及び2つの回収装置を含むことができる。これらの構成要素を統合することにより、プリンターの構造が単純化され、異なる原料であっても1つの工程ステップにおいて回収及び塗布が可能になり、それにより、印刷プロセスを著しく単純化することができる。しかしながら、この場合、1つのステップでは、それぞれ1つの原料のみが塗布され、1つの原料のみが回収される。このために、部材は、更に、2つの異なる原料を貯蔵するための2つのタンクを含むことができる。
【0036】
部材は幅B及び長さLを有する作業面のうち、印刷プロセスのために利用される全領域に亘って横方向に移動することができる。この場合、例えば、部材の第1のユニットは、第1の原料を塗布及び回収するために用いられ、同じ部材の第2のユニットは、第2の原料を塗布及び回収するために用いられ得る。第1の原料が作業面上に塗布され、この原料で印刷プロセスが実行されると、部材は、第1の原料を回収するために、第1のユニットと共に作業面の上方を前方へ移動される。これは、例えば、第1の原料を吸引することにより行うことができる。原料は、部材内の第1のタンク内に貯蔵される。同じステップで作業面の上方を移動される部材の第2のユニットは、部材内の第2のタンク内に貯蔵された第2の原料を、作業面上に塗布する。
【0037】
3Dプリンターの部材、ディスペンサー及び回収装置の数は、限定されない。2つの代わりに、3Dプリンターは、3つ、4つ又はより多くのディスペンサー及び回収装置を含むこともでき、それらには、それぞれ固有の原料が割り当てられている。個々の部材は、これらのディスペンサー及び/又は回収装置のうちの全て又は複数を含むことができる。代替的に、個々のディスペンサー及び/又は回収装置は、複数の個々の部材内に形成することもできる。しかしながら、部材の数が増えると、3Dプリンターを構築するためのハードウェアコストも増大する。
【0038】
更なる実施形態では、3Dプリンターは、作業面の異なる縁部に取り付けられた少なくとも2つの樋を含み、可動の回収装置は、使用されなかった原料を、それぞれ所属する樋内へ押しのけることができる。各原料には、この実施形態では、固有の樋が割り当てられている。
【0039】
回収装置は、例えば、作業面の上方を横方向に移動することによって、使用されなかった原料を作業面から所属する樋内へ押しのける、ワイパー又はブレードとして構成されている。樋は、原料を樋から所属するディスペンサー内へ還流させる還流装置に接続されている。異なる原料のための複数の異なる樋が、作業面の異なる側に取り付けられ得る。
【0040】
好ましい実施形態では、回収装置は、作業面の上方を完全に移動する際、残された原料をそれぞれ所属する樋内へ完全に押しのけることができるように、作業面の上方を移動する。
【0041】
一実施形態では、3Dプリンターは、部品から原料を取り除くためのクリーニング装置を含む。クリーニング装置は、駆動システムを含むことができ、それを用いて、クリーニング装置は、部品の表面に沿って横方向に移動され得る。
【0042】
クリーニング装置は、例えば、吸引ノズル、ブレード又はローラーであることができる。クリーニング装置は、好ましくは、受動状態においては部品の横方向に隣接して位置決めされ、能動状態においては部品の表面の上方を横方向に移動され得るように、配置されている。
【0043】
各原料に対して別個のクリーニング装置を設けることができ、その結果、プリンターは、少なくとも2つのそのようなクリーニング装置を含む。
【0044】
各クリーニング装置は還流装置を含み、各還流装置は、回収された原料をそれぞれ割り当てられたディスペンサー内へ還流させる搬送装置を含む。搬送装置は例えばポンプであり、還流装置はホースである。別々の還流装置によって、原料が混合されず、したがって再使用され得ることが保障される。
【0045】
一実施形態では、還流装置は、クリーニング装置と同一であることができる。例えば、粘着性の表面を有し、部品表面を走査することによってその上に残された原料を除去するローラーを使用することができる。続いて、ローラーは位置決めシステムによってディスペンサーに移動されることができ、そこで原料はローラーから除去され、ディスペンサー内へ充填される。そのような装置は、ローラー搬送装置と呼ばれる。
【0046】
代替的に、クリーニング装置は、粘着性の表面を有する転写フィルムを含むことができる。クリーニング装置が吸引ノズルである場合、還流装置は、例えば搬送装置としてポンプ又はブロワーを含むホースとして構成することができる。クリーニング装置が、部品の表面に沿って摺動するブレードとして構成されている場合、還流装置は、部品の下にある桶であることができ、当該桶は、位置決めシステムを用いてディスペンサーに移動され得る。
【0047】
本発明は、更に、3次元的な多層部品を積層造形するための、及び、使用されなかった原料を回収するための方法であって、以下のステップを含むものを開示する:
【0048】
作業面の上方を横方向に移動するディスペンサーによる被覆によって作業面上に原料の層を塗布するステップであって、原料の層厚さは、少なくとも、部品に付加されるべき層の所望の層厚さに対応する、ステップ
【0049】
所望の寸法を有する無傷の層を製造するためには、通常、余分な原料が必要とされる。
【0050】
原料の層を、作業面上の部品の被覆すべき表面と接触させると共に、部品の構造化された新しい層を形成するために、原料の一部を構造化された態様で硬化させるステップ
【0051】
部品の第1の層は、そのために設けられた構築パネルの表面と接触した状態で製造される。
【0052】
新しい層を含む部品を作業面から持ち上げるステップ
【0053】
持ち上げることにより、塗布され硬化された層を有する部品は、硬化されていない原料から分離される。余分な原料の一部は、部品に付着したままになる可能性がある。
【0054】
作業面の上方を横方向に移動する回収装置を用いて作業面から残りの原料を取り除くと共に、原料をディスペンサーに還流させるステップ
【0055】
回収装置は、例えば、吸引ノズル、ブレード又はローラーとして構成することができ、更に、原料をディスペンサー内へ還流させるための装置を含むことができる。吸引ノズルの場合、通常、回収装置と同一の部材内に、原料を貯蔵するためのタンクが存在する。ここから、例えばホースが、所属するディスペンサーに直接的に、又は、第1のディスペンサーを満たすことができる別のタンクに、導かれる。ディスペンサー及び回収装置は、上述したように、1つの同一の部材として構成することもできる。
【0056】
ブレード又はワイパーの場合、原料は、通常、作業面の側部に取り付けられた樋に押しのけられ、樋には、例えば原料を還流させるためのホースが取り付けられている。ローラーの場合、回収装置は、搬送ローラー機械として構成することができる。搬送ローラーは、その粘着性の表面によって原料を受け取り、続いてディスペンサーに移動されることができ、そこで原料を対応するディスペンサーに引き渡す。
【0057】
同一の又は第2の原料、及び、後者の場合は第2のディスペンサーを用いて、前述した方法ステップを繰り返すステップであって、第2の回収装置が設けられており、その結果、第1及び第2の原料はそれぞれ選択的に対応するディスペンサー内へ還流され得るステップ
【0058】
方法の更なる構成では、前述した方法ステップは、第3の又は更なる原料、及び、第3の又は更なるディスペンサー、並びに、第3の又は更なる回収装置を用いて、繰り返される。第3の原料は、選択的に、対応するディスペンサーに還流される。更なる原料も、それぞれ選択的に、対応する更なるディスペンサー内へ還流される。原料の混合は生じず、その結果、当該原料は、再び印刷プロセスに投入され得る。
【0059】
作業面自体は、静止したままであることができる。次に、上述した方法では、原料の塗布及び原料の回収の際、それぞれのディスペンサー及び/又は回収装置が、それぞれ、作業面の上方を横方向に移動する。この横方向の移動により、ディスペンサー及び回収装置は、作業面のうち印刷プロセスのために利用される領域の全体に到達することができる。
【0060】
本方法の一実施形態では、作業面は、放射線透過性の窓を有する。その寸法に関して、窓は、少なくとも付加すべき層のサイズを有する。構築パネルが、部品と共に窓の上方に位置決めされる。構築パネルは、部品の表面と作業面の上面との間の距離が、部品に付加すべき構造化された新しい層の所望の層厚さに対応するまで、窓に対して垂直に下げられる。部品の第1の層を印刷する際、構築パネルは、構築パネルの表面と作業面との間の距離が第1の層の所望の厚さに対応するように、下げられる。
【0061】
この方法では、原料は、窓を通じた多層部品の照射により、新しい層へと構造化され硬化される。このために、原料は、感光性を有するバインダーを含む。照射により、バインダーの重合が引き起こされる。
【0062】
当該方法では、更に、構築パネルは、部品及びその上に付着している新しい層と共に、作業面から持ち上げられる。このために、少なくとも一実施形態では、部品と構築パネルとの間の付着力は、部品と作業面との間の付着力よりも大きい。部品の構築パネルへのこのより大きな付着力は、構築パネルの材料の選択によって、及び、作業面と比較して構築パネルの表面粗さが大きいことによって、保障される。大きな表面粗さは、部品の構築パネルへの付着を容易にする。構築パネル材料を選択する際、部品の材料と同様の特性を有する材料又は粗く構造化された金属パネルを選択することが、有利であり得る。
【0063】
方法では、以下の引き続くステップが実行される:
【0064】
- 部品から原料を取り除くためのクリーニング装置を準備するステップ
【0065】
クリーニング装置は、ここでは、好ましくは、部品の横方向に隣接して位置決めされている。
【0066】
- 部品の表面に沿ったクリーニング装置の横方向の移動によって、部品の表面から余分な原料を取り除くステップ
【0067】
クリーニング装置は、例えば、吸引ノズル、ブレード又はローラーであることができる。
【0068】
- 所属する還流装置によって、原料を、当該原料に対応するディスペンサー内へ還流させるステップ
【0069】
吸引ノズルの場合、還流装置は、例えば、ホースシステム又はパイプシステムであることができる。ローラーの場合、それは搬送ローラー機械であることができる。各原料に、対応する還流装置を有する対応するクリーニング装置が割り当てられ、その結果、原料は混合されない。
【0070】
本発明は、更に、複数の層を含む部品であって、
- 平面に沿って互いに境界付けられており、
- 異なる材料を含むと共に、
- 化学的に互いに直接的に結合されている、
ものを包含する
【0071】
本発明は、更に、前述の特性を有する部品を含み、その層はそれぞれ最大300μmの厚さを有する。好ましくは、部品は、5μm~200μmの層厚さを有する層を有する。
【0072】
層は、横方向にも垂直方向にも、並べて配置され得る。異なる層の間の境界面は、部品の外表面に対して平行に延びることができる。部品の材料は、異なる金属及びセラミック、又は、両者のうちの一方を含むことができる。個々のセラミック層又は金属層の間に、例えば接着剤のような付加的な接合剤は設けられていない。層厚さは、印刷プロセスにおいて可変に調整することができ、その結果、部品のフレキシブルな構造化が可能である。
【0073】
一実施形態では、部品は、印刷後、第1の構造で存在し、バインダーを含む。焼結プロセスにより、バインダーは除去され、その際、部品の構造を変化させる。焼結後、部品は所望の第2の構造で存在する。
【0074】
本発明が、以下において、複数の実施例について図面に基づいて詳細に説明される。しかしながら、本発明は、記載された又は図示された形態及び例に限定されない。保護範囲は、特許請求の範囲に開示された特徴にのみ依存する。
【図面の簡単な説明】
【0075】
図1】1つの部材内に2つのディスペンサー及び回収装置を有する3Dプリンターの第1の実施形態の概略的な断面図である。
図2】3Dプリンターの第1の実施形態の概略的な上面図である。
図3】印刷プロセスのクリーニングステップにおける3Dプリンターの第1の実施形態の概略的な断面図である。
図4】2つの別々の部材内に2つのディスペンサー及び回収装置を有する3Dプリンターの第2の実施形態の概略的な断面図である。
図5】それぞれ4つのディスペンサー及び回収装置を有する3Dプリンターの第3の実施形態の概略的な上面図である。
図6】印刷された多層部品の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
図面は、概略的な描写である。図面は、3Dプリンターの縮尺通りの描写ではない。寸法及び大きさの比率は、図面に示された描写とは異なる可能性がある。
【0077】
図1は、3Dプリンター1の第1の実施例を示す。3Dプリンター1は、2つの異なる原料での印刷のために設計されている。3Dプリンター1は、2つのディスペンサー3a及び3bと、2つの回収装置4a及び4bとを含む、可動の部材2を含む。ディスペンサー3は、例えばノズルコーターとして構成されている。回収装置4は、例えばワイパーとして構成されている。
【0078】
可動の部材2は、作業面5の上方に移動可能に取り付けられている。部材2は、例えば、その長い方の広がりにおいて、作業面5のうち、少なくとも印刷プロセスのために必要な部分を覆うことができるように、寸法決めされている。これには、印刷プロセスの進行中にその上に原料が塗布されるべき作業面5の全ての領域が含まれる。したがって、部材2は、その長い方の辺に対して垂直な平面内での1次元的な横方向移動によって、作業面5のうち、全ての必要な部分に到達することができる。
【0079】
部材2は、第1のユニット(図において右側)と第2のユニット(図において左側)とに分割されている。第1のユニットは、第1の原料の塗布及び回収のために用いられる。第2のユニットは、第2の原料の塗布及び回収のために用いられる。
【0080】
各ユニットは、更に、原料を貯蔵するためのタンク6を含む。これらのタンク6は、供給装置7を用いて満たされ得る。作業面5の第1の側には、第1のタンク6aを満たすための第1の供給装置7aが存在し、作業面5の第2の側には、第2のタンク6bを満たすための供給装置7bが存在する。供給装置7は、外部から、新たに追加された原料で満たされ得る。更に、供給装置7は、印刷プロセスで使用されなかった回収原料を受容することができる。
【0081】
部材2のタンク6a又は6bを満たすために、部材2は作業面5の第1又は第2の側に移動される。部材2が、例えば、作業面5の第1の側の縁部にある場合、第1のタンク6aは、第1の供給装置7aによって満たされ得る。同じことが、第2の側に当てはまる。
【0082】
作業面5の第1及び第2の側には、更に、作業面5の縁部の直ぐ傍に、2つの樋8が取り付けられている。ワイパーとして構成された第1の回収装置4aは、作業面5の上方を移動する際、残存する原料を第1の樋8a内へと拭い取る。この樋8aは、第1のホース9aを介して、供給装置7aに接続されている。ホース9aは、原料を樋8aから供給装置7aに搬送もするポンプを含む。同じことが、第2の側に当てはまる。
【0083】
作業面5は、更に、面の大部分を占める放射線透過性の窓を含む。窓の下には、プロジェクター10が配置されており、当該プロジェクターは、新たな層として部品11に追加されることになる、窓と既存の部品11との間の原料を、所定のパターンで照射し、それにより構造化し硬化させる。例示的な光線10bが、図に示されている。パターンは、例えば、プロジェクター7の上に載置されたマスクの形態で定義され得る。代替的に、パターンは、例えばデジタル的に予めプログラムされ得る。
【0084】
パターンは、新しい層が、部品11上に印刷された後、直前の部品11の下側の領域のみを覆うように、構成され得る。したがって、後の印刷プロセスでは、既存の層に横方向に隣接して、更なる層も印刷され得る。
【0085】
複数の部品1が、構築パネル12に取り付けられている。取り付けることができる部品11の数は、部品11及び構築パネル12の幾何学的形状に依存する。本例では、4つの部品11が構築パネル12に取り付けられている。構築パネル12は、部品11が良好に付着する、大きな表面粗さを有する下面を含む。構築パネル12は、作業面5に対して平行に、その上方に配置されている。
【0086】
位置決めシステム13を用いて、構築パネル12は部品11と共に、作業面5に対して垂直に昇降され得る。このために、位置決めシステム13は、作業面5の中央の上方に、これに対して垂直に、位置決めされている。
【0087】
更に、3Dプリンター1は、駆動システムを用いて部品11の下面に沿って移動され得るクリーニング装置14を含む。したがって、前記駆動システムは、作業面5の上方で十分に大きな距離をおいて構築パネル12に対して平行に、かつ、位置決めシステム13の前方又は後方に、位置決めされている。クリーニング装置14は、この場合、使用されなかった原料を部品11からかき取ることができるブレードとして構成されている。
【0088】
図2は、3Dプリンター1の第1の実施例を、上面図で示す。2つの樋8a及び8bの間には、放射線透過性の作業面5がある。第1の樋8aは、第1のホース9aを介して第1の供給装置7aに接続されている。同じことが、第2の側に当てはまる。各樋は、ホース及び供給装置と共に、特定の原料に割り当てられている。原料は、印刷プロセスの進行中に混合されない。これにより、原料の純度が維持され、その結果、当該原料は再びプロセスに投入され得る。
【0089】
可動の部材2は、印刷プロセスのために必要な作業面5の幅Bに亘って延びる。それは、2つの原料の塗布、回収及び貯蔵のために、2つのディスペンサー3a及び3bと、2つの回収装置4a及び4bと、2つのタンク6a及び6bとを備える。
【0090】
可動の部材2は、印刷プロセスのために必要な作業面5の長さLに亘って、第1の樋8aを有する第1の縁部から、第2の樋8bを有する第2の縁部まで、移動され得る。これにより、ディスペンサー3a及び3bも、回収装置4a及び4bも、全長Lをカバーすることができる。
【0091】
図2に示された例では、第1のタンク6aに新たな原料が充填されている。部材2は、前の印刷プロセスの残りの原料(ハッチング領域)を第2の樋8b内へと拭い取り、同時にその右側で第2の原料(ドット付き領域)を第1のディスペンサー3aを用いて塗布するために、第1の側から第2の側に移動する。
【0092】
図1の断面図には存在するが作業面5の上方にある3Dプリンター1の更なる要素は、明瞭性の理由により、図2には再びは示されていない。
【0093】
例示的な方法では、第1のステップAにおいて、第1のディスペンサー3aが、第1の原料を、前述したように作業面5上に塗布する。作業面5の上方をディスペンサー3aが横方向に移動することにより、作業面5は原材料で完全に被覆され得る。
【0094】
作業面上への原材料の塗布による完全な被覆の後、構築パネル12は、位置決めシステム13(図1参照)により、ステップBにおいて、構築パネル12が作業面5上に塗布された原材料と接触し、構築パネル12と作業面5との間の距離が新しい層の所望の厚さに対応するまで、下ろされる。余分な原料は、ここでは、第1の層の印刷の際、構築パネル12の縁部へ押しのけられる。
【0095】
続いて、ステップCにおいて、構築パネル12の下方の原料が、所望のパターン又は所望の構造に従って、プロジェクター10により放射線を照射される。放射線により、材料は、有機バインダーの光重合によって硬化し、構築パネル12に付着したままとなる部品11の第1の層を形成する。構築パネル12は、位置決めシステム13を用いて持ち上げられることができ、残りの硬化していない原料の大部分は、作業面5上に残る。
【0096】
図3に示されているように、構築パネル12がそれに付着した部品11と共に持ち上げられた後、ステップDにおいて、前述したように、この場合ワイパーとして構成された可動の回収装置4aを用いて、残っている原料が作業面から完全に取り除かれる。残りの原料は、このために、例えばそのために設けられた樋8a内へ押しのけられる。同時に、同じ部材2の第2のディスペンサー3bによって、既に新しい原料を塗布することができる。
【0097】
それと並行して、ステップEにおいて、新たに印刷された層の下面が、部品11の表面をクリーニング装置14によって走査することにより(図3参照)、クリーニングされる。このようにして回収された原料は、同様に、所属するディスペンサー3内へ戻される。
【0098】
第1の層が印刷されてクリーニングされ、第1の原料が作業面5から完全に取り除かれるとすぐに、第2の層、次いで更なる層が、上述した方法ステップを繰り返すことにより、場合によっては他の硬化された構造と共に、部品11の上に塗布され得る。
【0099】
第2の又は更なる層のために他の原料が意図されており、個々のディスペンサー3が個々の分離した部材として構成されている場合(第2の実施例参照)、第1のディスペンサー3aは、更なる印刷プロセスがブロックされないよう、作業面5の所属する側の縁部に移動される。その代わりに、第2の又は代替的に第3のディスペンサーが、作業面5の第2の又は第3の側から挿入され、プロセス全体が更なる原料で繰り返される。
【0100】
その場合、部品11の少なくとも1つの層が既に構築パネル12に付着しているので、ステップBに対応するステップFにおいて、部品11は、当該部品11と作業面5との間の距離が所望の新しい層の厚さに対応するまで、下げられる。その場合、余分な原料は、部品11の既存の層の縁部に押しのけられる。
【0101】
第1の原料は、例えば、有機バインダーを含むセラミック原料である。第2の原料は、例えば、同様に有機バインダーを含む金属ペーストである。更なる層は、再び同じ又は別の異なる原料を含むことができる。各層は、異なる構造を有する状態で又は異なるパターンとして塗布されることができ、その結果、任意の空間形態及び任意の内部構造を有する部品の製造を行うことができる。
【0102】
図4は、3Dプリンター1の第2の実施例を示す。第2の実施例は、実質的に第1の実施例と同様である。しかしながら、第1の実施例とは異なり、3Dプリンター1は、ここでは、個別に移動可能な2つの別個の部材2a及び2bを含む。このような実施形態は、前述した方法においても既に言及されている。各部材2は、それぞれ、ディスペンサー3と、回収装置4と、タンク6とを含む。1つの部材は、それぞれ1つの原料に割り当てられている。2つの部材2a及び2bは、個別に、互いに独立して、作業面5の上方を横方向に移動され得る。
【0103】
例えば、最初に、部材2bが作業面5の上方を樋8bから樋8aに移動されることによって、第1の原料(ハッチングされている)がディスペンサー3bによって作業面5上に塗布され得る。このために、部材2bのタンク6bは、供給装置7bによって、対応する原料で予め満たされた。部材2aは、このプロセスの間、樋8aが取り付けられている作業面5の縁部に静止しており、その結果、部材2bを妨害しない。
【0104】
第1の原料が完全に塗布されると、実際の印刷プロセスが、第1の実施例のステップB、C及びEと同様に実行される。部材2bは、印刷プロセスの間、樋8aの側にある。印刷の後、部材2bは、回収装置4bを用いて残りの硬化していない原料を作業面5から完全に取り除くために、樋8bの方向に戻る。
【0105】
次に、更なるステップにおいて、部材2aのディスペンサー3aによって、第1の原料と同様に第2の原料(ドットを付けられている)が、作業面5上に塗布され得る。部材2bは、このために、樋8aから樋8bに移動する。このような独立した部材2は、とりわけ、3つ、4つ又はより多くの原料を用いた印刷のための、更なる部材2の統合を容易にする。
【0106】
この図4では、第2の原料は、作業面5のうち印刷プロセスに使用される領域の全体に既に塗布されている。
【0107】
図5は、3Dプリンター1の第3の実施例を示しており、これは、実質的に前の2つの実施例と同様である。3Dプリンター1は、ここでは、個別に移動可能な4つの別個の部材2を含み、当該部材は、それぞれ、ディスペンサー3、回収装置4及びタンク6を含む。
【0108】
作業面5の上方にある3Dプリンター1の更なる要素は、明瞭性の理由により、図5では省略されている。
【0109】
3Dプリンターの第3の実施例は、以下の変更を通じて、前の実施例とは区別される。第1及び第2の側の樋、ホース及び供給装置に加えて、作業面5の2つの更なる側に、2つの更なる原料のための樋8c、8d、ホース9c、9d及び供給装置7c、7dが取り付けられている。したがって、プリンターは、4つの異なる原料で印刷することができる。
【0110】
作業面5は正方形の形状を有し、その結果、第1及び第2の側の樋8a、8b及び部材2a、2bは、互いに平行に配置されており、2つの付加的な樋8c、8d及び部材2c、2dは、それらに対して垂直に配置されている。2つの付加的な樋及び部材は、やはり、互いに平行に配置されている。
【0111】
本例では、可動の部材2b、c及びdは、作業面5の縁部において、それぞれの樋9b、c及びdに隣接して配置されている。これらの部材は、能動的には使用されていない。
【0112】
他方、第1の側で供給装置7aによって充填された部材2aは、作業面5を第1の原料(ドットを付けられている)で被覆するために、作業面5の上方を移動する。
【0113】
図6は、印刷された多層部品11を、例示的に、概略的に示す。部品11は、ここでは、6つの層16a~16fを含む4つの垂直に積み重ねられたレイヤー15a~15dを含む。下から1番目及び3番目のレイヤー(15a、15c)は、それぞれ2つの層(16a、16b、16d、16e)を含む。最も上の層16fは、印刷プロセスで最初に生成された層に対応する。図中の最も下の層16a及び16bは、印刷プロセスで最後に生成された。
【0114】
部品11は、異なるハッチングで示された3つの異なる材料の層を含む。3つの材料のうちの1つは金属であり、他の材料は2つの異なるポリマー又はセラミックである。
【0115】
層間の境界は、それぞれ、部品11の外面17に対して平行な平坦な境界面に沿って延びている。個々の層は、本部品11において下から2番目及び4番目の層(16c、16f)のように、部品11の水平なレイヤーを完全に含むことができる。しかしながら、層は、部品11の第1及び第3のレイヤー(15a、15c)のように、横方向に互いに隣接して存在することもできる。
【0116】
部品11の層厚さは、変えることができる。部品11の他の層と比較して、図示された部品11において最も上の層16fは薄く、最も下の2つの層16a及び16bは厚い。
【0117】
記載された層の間には、例えば接着層のような更なり中間層又は接続層は存在しない。
【符号の説明】
【0118】
1 3Dプリンター
2 組み合わされた部材
2a-d 4つの個々の部材
3,3a-b ディスペンサー
4,4a-b 回収装置
5 作業面
6,6a-b タンク
7,7a-d 供給装置
8,8a-d 樋
9,9a-d ホース
10 プロジェクター
10b 光線
11 部品
12 構築パネル
13 位置決めシステム
14 クリーニング装置
15a-15d 部品11のレイヤー
16a-16f 部品11の層
17 部品11の外面
B 作業面5の幅
L 作業面5の長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6