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特許7476306油中水型エマルションの形態の固体組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】油中水型エマルションの形態の固体組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/891 20060101AFI20240422BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20240422BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20240422BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20240422BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240422BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240422BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240422BHJP
   A61K 8/894 20060101ALI20240422BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20240422BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
A61K8/891
A61K8/02
A61K8/06
A61K8/19
A61K8/34
A61K8/37
A61K8/81
A61K8/894
A61Q1/00
A61Q19/00
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022521451
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-15
(86)【国際出願番号】 CN2019126522
(87)【国際公開番号】W WO2021120084
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ユジエ・ジャオ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・ワン
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/142076(WO,A1)
【文献】特開2004-026833(JP,A)
【文献】国際公開第2016/007519(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油中水型エマルションの形態の固体組成物であって、
(i)少なくとも1種の揮発性シリコーン油、
(ii)ポリエチレンワックス及びホホバエステルワックスを含む、65℃以上の融点を有する少なくとも2種のワックス、
(iii)前記組成物の総質量に対して少なくとも5wt%の顔料、並びに
(iv)前記組成物の総質量に対して40wt%以上の水性相
を含む、固体組成物。
【請求項2】
前記揮発性シリコーン油が、直鎖状又は環状のシリコーン油;ペンダントである又はシリコーン鎖の末端にある、2~24個の炭素原子を含有するアルキル、アルコキシ又はフェニル基を含むポリメチルシロキサン;これらの組合せから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記揮発性シリコーン油が、前記組成物の総量に対して、20wt%~45wt%の範囲の量で存在する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリエチレンワックスが、エチレンホモポリマー、又はエチレンと以下の式(I):
CH2=CHR (I)
[式中、
Rは、モノ若しくはポリオキシアルキレン単位で中断されうる直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル鎖、アリール若しくはアラルキル基、又は-CH2COOH若しくは-CH2CH2OH基を表す]
に対応する別の共重合性モノマーとのコポリマーである、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリエチレンワックスが、前記組成物の総量に対して、2wt%~10wt%の範囲の量で存在する、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ホホバエステルワックスが、式(II):
R1-COO-CH2-R1 (II)
[式中、R1は、CH3-(CH2)y-を含み、yは、16、18、20又は22である]
の完全水素化ホホバエステルから選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ホホバエステルワックスが、前記組成物の総量に対して、1wt%~10wt%の範囲の量で存在する、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記顔料が、チタン、ジルコニウム又はセリウムの酸化物又は二酸化物、並びにまた、亜鉛、鉄又はクロムの酸化物、雲母、プルシアンブルー、マンガンバイオレット、ウルトラマリンブルー及びクロム水和物、並びにこれらの混合物から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記顔料が、前記組成物の総質量に対して18wt%までの量で存在する、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記水性相が、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンチレングリコール、グリセリン及びこれらの任意の混合物から選択される少なくとも1種のポリオールを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも1種の式(III):
【化1】
[式中、
R1、R2及びR3は、互いに独立に、C1~C6アルキル基又は-(CH2)x-(OCH2CH2)y-(OCH2CH2CH2)z-OR4基を表し、少なくとも1つのR1、R2又はR3基は、アルキル基ではなく、R4は、水素、C1~C3アルキル基又はC2~C4アシル基であり、
Aは、0~200の範囲の整数であり、
Bは、0~50の範囲の整数であるが、但しA及びBは、同時にゼロに等しくなることはなく、
xは、1~6の範囲の整数であり、
yは、1~30の範囲の整数であり、
zは、0~5の範囲の整数である]
のオキシプロピレン化及び/又はオキシエチレン化ポリジメチル(メチル)シロキサンを更に含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
式(III)のジメチコンコポリオールにおいて、R1=R3=メチル基であり、xが、2~6の範囲の整数であり、yが、4~30の範囲の整数である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも1種の式(VI):
【化2】
[式中、
- PEは、(-C2H4O)x-(C3H6O)y-R基を表し、Rは、水素原子及び1~4個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、xは、0~100の範囲の整数であり、yは、0~80の範囲の整数であるが、但しx及びyは、同時に0に等しくなることはなく、
- mは、1~40の範囲の整数であり、nは、10~200の範囲の整数であり、oは、1~100の範囲の整数であり、pは、7~21の範囲の整数であり、qは、0~4の範囲の整数である]
の(C8~C22)アルキルジメチコンコポリオールを更に含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記(C8~C22)アルキルジメチコンコポリオールが、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコンである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物の総質量に対して、
(i)25wt%~35wt%の、ポリジメチルシロキサンから選択される少なくとも1種の揮発性シリコーン油、
(ii)両方とも65℃以上の融点を有する、2wt%~5wt%のエチレンホモポリマーワックス及び2wt%~5wt%のホホバエステルワックス、
(iii)少なくとも5wt%の、未処理の若しくはステアロイルグルタミン酸二ナトリウム/水酸化アルミニウム対でコーティングされた、雲母、酸化チタン及び酸化鉄、又はこれらの混合物から選択される顔料、並びに
(iv)40wt%以上の、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンチレングリコール、グリセリン及びこれらの任意の混合物から選択される少なくとも1種のポリオールを含む水性相
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
皮膚をケア及び/又はメイクアップするための美容方法であって、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物を皮膚に適用する工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚をメイクアップする及び/又はケアするための組成物に関する。特に、本発明は、油中水型エマルションの形態の固体組成物に関する。本発明は、皮膚をメイクアップする及び/又はケアするための美容方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
ファンデーション組成物は、一般的に、皮膚、特に顔の色を魅力的にするため、及び/又は皮膚の不具合、例えば、赤色斑若しくは染みを隠すために使用される。従来のファンデーションは、流体又は固体の形態で存在し、それぞれ、その形態による独自の利点を持つ。
【0003】
WO2012/145862は、脂肪相、水性相及び少なくとも1種のオルガノポリシロキサンエラストマー、少なくとも1種のジメチコンコポリオール、並びに少なくとも1種のC8~C22アルキルジメチコンを含む、シリコーン中水型エマルションの形態の流体ファンデーション組成物を開示している。脂肪相は、少なくとも1種の揮発性油及び/又は少なくとも1種の不揮発性油、及び任意選択で少なくとも1種のワックスを含む。
【0004】
しかし、従来技術のファンデーションは、その流体の形態が原因で、持ち運びが容易ではなく、皮膚への適用が容易ではないことが見出されている。
【0005】
一般的に、消費者を惹き付けるのは、使用が容易であり、良好なメイクアップフィニッシュを与え、良好な感覚をもたらす化粧用組成物、特にファンデーションである。
【0006】
「使用が容易」とは、持ち運びが容易であり、皮膚への適用が容易な組成物を意味することが意図される。
【0007】
「良好なメイクアップフィニッシュ」とは、良好な塗布性を意味することが意図される。
【0008】
「良好な感覚」とは、爽やかで瑞々しい感覚を意味することが意図される。
【0009】
これらの特性を持つ組成物を開発するために努力がなされてきている。
【0010】
他に、安定性も依然として改善されるべきである。
【0011】
したがって、持ち運びが容易であり、使用者による指又は塗布器での、皮膚への適用が容易な固体組成物を開発する必要がある。
【0012】
また、皮膚、特に顔及び/又は首に適用されたとき、良好な塗布性を有する固体組成物を開発する必要もある。
【0013】
また、皮膚、特に顔及び/又は首に適用したとき、良好な感覚、すなわち爽やかで瑞々しい感覚を提供し、同時に、時間及び温度変化に対し良好な安定性を提示する、固体組成物を開発する必要もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】WO2012/145862
【文献】FR-A-2792190
【文献】EP-A-542669
【文献】EP-A-787730
【文献】EP-A-787731
【文献】WO-A-96/08537
【文献】US4,578,266
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、持ち運びが容易であり、皮膚への適用が容易であり、時間及び温度変化に対して良好な安定性を有し、皮膚に適用されたとき、良好な塗布性を有し、良好な感覚を提供する、固体組成物を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、第一の態様によると、本発明は、油中水型エマルションの形態の固体組成物であって、
(i)少なくとも1種のシリコーン油と、
(ii)ポリエチレンワックス及びホホバエステルワックスを含む、65℃以上の融点を有する少なくとも2種のワックスと、
(iii)組成物の総質量に対して少なくとも5wt%の顔料と、
(iv)組成物の総質量に対して40wt%以上の水性相と
を含む、固体組成物を提供する。
【0017】
驚くべきことに、本発明者らは、本発明の組成物が、持ち運びが容易であり、皮膚への適用が容易であり、時間及び温度変化に対して良好な安定性を有し、皮膚に適用されたとき、良好な塗布性を有し、良好な感覚を提供することを発見した。
【0018】
更に驚くべきことに、ポリエチレンワックス及びホホバエステルワックスを含む、65℃以上の融点を有する少なくとも2種のワックスと、シリコーン油と、40wt%以上の水性相との組合せは、感覚、塗布性及び安定性の良好なバランスを提供することが観察された。
【0019】
第二の態様によると、本発明は皮膚をケアする及び/又はメイクアップする美容方法であって、本発明の組成物を皮膚に適用することを含む、方法を提供する。
【0020】
本発明の他の主題及び特徴、態様及び利点は、以下の発明を実施するための形態及び実施例を読むことによって、なお更に明解となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
第一の態様によると、本発明は、油中水型エマルションの形態の固体組成物であって、
(i)少なくとも1種のシリコーン油と、
(ii)ポリエチレンワックス及びホホバエステルワックスを含む、65℃以上の融点を有する少なくとも2種のワックスと、
(iii)組成物の総質量に対して少なくとも5wt%の顔料と、
(iv)組成物の総質量に対して40wt%以上の水性相と
を含む、固体組成物を提供する。
【0022】
以下において、特に指定のない限り、値の範囲の限界値は、特に「...から...の間」及び「...~...の」という表現において、この範囲内に含まれる。
【0023】
本発明の目的において、「皮膚」という用語は、ヒトの皮膚を意味し、顔、首及び唇を網羅することが意図される。
【0024】
更に、本記載において使用される「少なくとも1つ」という表現は、「1つ又は複数」という表現と同等である。
【0025】
本出願全体にわたって、「含む(comprising)」という用語は、特定的に記述されるすべての特徴部に加えて、任意選択で追加の不特定の特徴部を包含すると解釈されるべきである。
【0026】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という用語の使用は、また、特定的に記述される特徴部以外の特徴部が存在しない(すなわち、「~からなる(consisting of)」)実施形態も開示している。
【0027】
本発明の目的において、「安定」とは、2カ月間、45℃、37℃及び4℃のオーブンに入れておいた後、室温に戻したとき、組成物の微細層が指の間で剪断変形したときの手触りで粒を呈しない組成物を指す。
【0028】
本発明による組成物は、好ましくはコンパクトエマルションの形態のファンデーション又はキャスト固体製品、例えばスティックファンデーションである。
【0029】
本発明の目的において、「固体」という用語は、組成物が室温(25℃)でそれ自体の質量で流動しないことを意味する。
【0030】
組成物の固体性(solid nature)は、組成物の硬度を決定することによって決定されうる。組成物の硬度は、例えば、重量グラム(force in gram)(g)により表すことができる。本発明の固体組成物は、例えば、20g~200g、例えば、20g~90g、20g~80g、更に例えば20g~60g、20g~40gの範囲の硬度を有してもよい。
【0031】
固体組成物の硬度は、以下のプロトコールに従って測定される。
【0032】
硬度が決定される組成物は、硬度の測定前に20℃で24時間貯蔵される。
【0033】
この硬度は、プローブを組成物の中に貫通させる、特に、3.26cmの直径を持つプローブを備えたテクスチャーアナライザー(例えば、Stable Micro System社のTA-XT PLUS)を使用する方法に従って測定される。硬度測定は、組成物の5つの試料の中心に20℃で実行される。シリンダーは、組成物のそれぞれの試料の中に1.5mm/sのプレ速度(pre-speed)、次いで2mm/sの速度、最後に10mm/sのポスト速度(post-speed)で導入され、総変位は5mmである。記録された硬度値は、観察された最大ピークの値である。
【0034】
異なる温度で測定するため、スティックを、測定の前に、この新しい温度で24時間貯蔵する。
【0035】
シリコーン油
第一態様によると、本発明の組成物は、少なくとも1種のシリコーン油を含む。
【0036】
「シリコーン油」という用語は、少なくとも1個のケイ素原子を含み、とりわけSi-O基を含む油を意味する。油は、揮発性であっても不揮発性であってもよい。
【0037】
本明細書で使用される場合、「油(oils)」又は「油(oil)」とは、約30℃未満の融点を有し、一般的に水に不溶性であり、疎水性部分を含む化合物を意味する。疎水性部分は、直鎖状、環状、芳香族、飽和又は不飽和の基を含んでもよい。疎水性化合物は、ある特定の実施形態において両親媒性ではなく、このように、この実施形態では、極性のある親水性部分、例えば、陰イオン性、陽イオン性、双性イオン性又は非イオン性基を含まず、スルフェート、スルホネート、カルボキシレート、ホスフェート、ホスホネート、モノ-、ジ-及びトリアルキルアンモニウム種を含むアンモニウム、ピリジニウム、イミダゾリニウム、アミジニウム、ポリ(エチレンイミニウム)、アンモニオアルキルスルホネート、アンモニオアルキルカルボキシレート、アンホアセテート及びポリ(エチレンオキシ)スルホニル部分が挙げられる。ある特定の実施形態において、油はヒドロキシル部分を含まない。
【0038】
「揮発性」という用語は、室温及び大気圧で、皮膚と接触した際に1時間未満で蒸発しうる化合物を指す。揮発性油は、室温で液体であり、とりわけ室温及び大気圧で蒸気圧が非ゼロであり、特に蒸気圧が0.13Pa~40000Pa(10-3~300mmHg)の範囲、好ましくは1.3Pa~13000Pa(0.01~100mmHg)の範囲、優先的には1.3Pa~1300Pa(0.01~10mmHg)の範囲である、揮発性の化粧用油である。
【0039】
ある特定の実施形態において、記述されうる揮発性シリコーン油には、シクロポリジメチルシロキサン(INCI名:シクロメチコン)、例えば、シクロペンタシロキサン、シクロヘキサシロキサン、オクチルメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン;直鎖状シロキサン、例えば、ヘプタメチルヘキシルトリシロキサン、ヘプタメチルオクチルトリシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン及びドデカメチルペンタシロキサンが挙げられる。
【0040】
ある特定の実施形態において、シリコーン油は、直鎖状又は環状のシリコーン油、例えば、室温で液体又はペースト状である直鎖状又は環状ポリジメチルシロキサン(PDMS)、とりわけシクロポリジメチルシロキサン(シクロメチコン)、例えば、シクロヘキサシロキサン;ペンダント(pendent)である又はシリコーン鎖の末端にある、2~24個の炭素原子を含有するアルキル、アルコキシ又はフェニル基を含むポリメチルシロキサン;フェニルシリコーン、例えば、フェニルトリメチコン、フェニルジメチコン、フェニルトリメチルシロキシジフェニル-シロキサン、ジフェニルジメチコン、ジフェニルメチル-ジフェニルトリシロキサン又は2-フェニルエチルトリメチルシロキシシリケート及びポリメチルフェニルシロキサン;これらの組合せから選択されうる。
【0041】
好ましくは、シリコーン油はポリジメチルシロキサンから選択される。
【0042】
有利には、シリコーン油は、組成物の総量に対して、20wt%~45wt%、好ましくは20wt%~40wt%、より好ましくは25wt%~35wt%の範囲の量で存在する。
【0043】
ワックス
第一の態様によると、本発明の組成物は、ポリエチレンワックス及びホホバエステルワックスを含む、65℃以上の融点を有する少なくとも2種のワックスと、少なくとも1種の固体脂肪物質とを含む。
【0044】
本発明の文脈において考慮されるワックスは、一般的に、室温(25℃)で固体であり、固体/液体の可逆的状態変化を有する親油性化合物である。
【0045】
本発明によると、組成物は、ポリエチレンワックスとホホバエステルワックスの組合せを含み、両方とも65℃以上の融点を有する。
【0046】
ポリエチレンワックス
本発明に使用される、65℃以上の融点を有するポリエチレンワックスは、エチレンホモポリマー、又はエチレンと以下の式(I):
CH2=CHR(I)
[式中、
Rは、モノ若しくはポリオキシアルキレン単位で中断されうる直鎖状若しくは分岐鎖状アルキル鎖、アリール若しくはアラルキル基、又は-CH2COOH若しくは-CH2CH2OH基を表す]
に対応する別の共重合性モノマーとのコポリマーである。
【0047】
アルキル基は、特に、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、デシル、ドデシル及びオクタデシル基を示す。
【0048】
モノ又はポリオキシアルキレン単位は、好ましくは、モノ若しくはポリオキシエチレン基、又はモノ若しくはポリオキシプロピレン基を示す。
【0049】
アリール基は、好ましくは、フェニル又はトリル基である。
【0050】
アラルキル基は、例えば、ベンジル又はフェネチル基である。
【0051】
本発明の高融点を有するポリエチレンワックスの質量平均モル質量は、好ましくはおよそ400から1000の間、特におよそ400から700の間であり、好ましくは約500である。
【0052】
好ましい実施形態によると、上記に定義されたワックスは、エチレンホモポリマー、エチレンとプロピレンのコポリマー、エチレンと無水マレイン酸若しくはマレイン酸とのコポリマー、又は酸化若しくはエトキシル化ポリエチレンから選択される。
【0053】
本発明に従って使用されうるエチレンホモポリマーのうち、Petrolite社によりPolywax 500、Polywax 655及びPolywax 1000の名称で販売されているものを特に挙げることができる。
【0054】
本発明に従って使用されうるエチレンコポリマーのうち、特に記述されてもよいものは、Petrolite社により名称Petrolite(登録商標)で販売されているエチレンとプロピレンのコポリマー、Petrolite社により名称Ceramer(登録商標)で販売されているエチレンと無水マレイン酸とのコポリマー、Petrolite社により名称Unilin(登録商標)及びUnicid(登録商標)で販売されている酸化ポリエチレン、並びにPetrolite社により名称Unithox(登録商標)で販売されているエトキシル化ポリエチレンを特に挙げることができる。
【0055】
本発明の特に好ましい実施形態によると、ポリエチレンワックスはエチレンホモポリマーワックスである。記述されてもよいものは、例えば、New Phase Technologies社により商標名Performalene 500-L Polyethyleneで販売されているポリエチレンを挙げることができる。
【0056】
好ましくは、ポリエチレンワックスは、組成物の総量に対して、2wt%~10wt%、好ましくは2wt%~8wt%、より好ましくは5wt%~5wt%の範囲の量で存在する。
【0057】
ホホバエステルワックス
本発明に使用される65℃以上の融点を有するホホバエステルワックスは、ホホバエステルの飽和形態であり、式(II):
R1-COO-CH2-R1(II)
[式中、R1はCH3-(CH2)y-を含み、yは、16、18、20又は22である]
の完全水素化ホホバエステルでありうる。
【0058】
ホホバエステルワックスは、以下の式:
【化1】
[式中、x及びyは、6、8、10又は12である]
のホホバワックスエステル(ホホバ油)の水素化によって得ることができる。
【0059】
ホホバワックスエステルは、直鎖単不飽和脂肪アルコール及び単不飽和脂肪酸から構成される。単一の二重結合は、対応する脂肪酸又はアルコール鎖の末端メチル基(-CH3)から数えて中間(n-9位)に配置されている。そのようなワックスエステルは、偶数の炭素原子、主に20及び22個の炭素の脂肪アルコール及び脂肪酸から構成される。得られるエステルは、鎖長さの38、40、42及び44を有し、36個及び4個の炭素原子のエステルが少量存在する。ワックスエステルの典型的な組成が以下に記載される。
【0060】
【表1】
【0061】
ホホバワックスエステルは、ホホバ植物(シンモンドシア・キネンシス(Simmondsia chinensis))の種子に由来しうる。
【0062】
65℃以上の融点を有するホホバエステルワックスの例として、International Flora Technologies Ltd社により販売されているFloraesters(登録商標)70、vantage社により販売されているJojoba Esters-70を挙げることができる。
【0063】
好ましくは、ホホバエステルワックスは、組成物の総量に対して、1wt%~10wt%、好ましくは1.5wt%~8wt%、より好ましくは2wt%~5wt%の範囲の量で存在する。
【0064】
追加のワックス
上記に記述されたポリエチレンワックス及びホホバエステルワックスに加えて、本発明の組成物は、追加のワックスを含むことができる。
【0065】
本発明に適したワックスの例示として、とりわけ、炭化水素ベースックス、例えばビーズワックス、ラノリンワックス、イボタロウ(Chinese insect wax)、コメヌカワックス、カルナバワックス、カンデリラワックス、オーリクリーワックス、アフリカハネガヤワックス(esparto grass wax)、ベリーワックス、セラックワックス、モクロウ及びスマックワックス(sumach wax);モンタンワックス、オレンジワックス及びレモンワックス、微晶ワックス、パラフィン、及びオゾケライト;フィッシャー・トロプシュ合成によって得られるワックス及びワックス状コポリマー、並びにまた、それらのエステル、直鎖状若しくは分岐鎖状C8~C32脂肪鎖、好ましくはC16~C18鎖を含有する動物油若しくは植物油の接触水素化によって得られる脂肪酸若しくはエステル、シリコーンワックス及びフルオロワックス、又はこれらの混合物を挙げることができる。
【0066】
また、直鎖状又は分岐鎖状C8~C32脂肪鎖、好ましくはC16~C18鎖を含有する動物油又は植物油の接触水素化によって得られる脂肪酸を挙げることができる。これらの化合物のうち、とりわけ、ステアリン酸、パルミチン酸、又はこれらの混合物を挙げることができる。本発明に使用される脂肪酸は、例えば、A & E Connock (Perfumery & Cosmetics) Ltd.社により販売されているAEC Stearic Acid、Emery Oleochemical LLC社により販売されているEmersol、Protameen Chemicals, Inc.社により販売されているPalmitic Acid PCの商標名で市販されている。
【0067】
動物油又は植物油の接触水素化によって得られるエステルとしては、Sophim社により名称Phytowax ricin 16L64(登録商標)及び22L73(登録商標)で販売されている、セチルアルコールでエステル化されたヒマシ油の水素化によって得られるワックスを挙げることができ、使用してもよい。このようなワックスは、特許出願FR-A-2792190に記載されている。
【0068】
C12~C18鎖脂肪アルコールでエステル化されたオリーブ油の水素化によって得られるワックス、例えばSOPHIM社によって商品名Phytowax Olive 12L44、14L48、16L55及び18L57で販売されているものも都合がよい。
【0069】
使用されうるワックスは、単独で又は混合物としての、C20~C40アルキル(ヒドロキシステアリルオキシ)ステアレート(20~40個の炭素原子を含有するアルキル基)である。そのようなワックスは、とりわけ、Koster Keunen社により名称Kester Wax K82P(登録商標)、Hydroxypolyester K82P(登録商標)及びKester Wax K80P(登録商標)で販売されている。
【0070】
カンデリラ(ユーフォルビアセリフェラワックス)、例えばCera Rica Noda社により参照名「NC 1630」で販売されているものを挙げることができる。
【0071】
また、オゾケライト、例えばStrahl & Pitsch社により販売されている市販参照名「Ozokerite Wax SP 1020 P」を挙げることできる。
【0072】
存在する場合、追加のワックスは、組成物の総質量に対して、0.1質量%~10質量%、好ましくは0.5質量%~5質量%、とりわけ1質量%~4質量%の範囲の量で存在しうる。
【0073】
顔料
第一態様によると、本発明の組成物は、組成物の総質量に対して少なくとも5.0wt%の顔料を含む。
【0074】
「顔料」は、白色又は有色、有機又は無機、親水性又は疎水性の不干渉粒子であり、水性及び非水性媒体に不溶性であり、組成物を着色することが意図される。
【0075】
本発明に使用されうる無機顔料には、チタン、ジルコニウム又はセリウムの酸化物又は二酸化物、並びにまた、亜鉛、鉄又はクロムの酸化物、雲母、プルシアンブルー、マンガンバイオレット、ウルトラマリンブルー及びクロム水和物、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0076】
本発明に使用されうる有機顔料には、D&C顔料、コチニールカーマインベースのレーキ、並びにバリウム、ストロンチウム、カルシウム及びアルミニウムベースのレーキ、或いはジケトピロロピロール(DPP)が挙げられ、これらはEP-A-542669、EP-A-787730、EP-A-787731及びWO-A-96/08537の文献に記載されている。
【0077】
有利には、本発明に使用されうる顔料は、処理された又は未処理の疎水性顔料である。
【0078】
使用されるものは、特に、未処理の又は少なくとも1種の疎水性物質(hydrophobic agent)で処理された、酸化チタン及び酸化鉄(とりわけ、黄色、黒色及び赤色)、雲母から選択される無機顔料である。
【0079】
本発明に使用されうる顔料は、好ましくは、疎水性物質で、特にフルオロ、脂肪酸若しくはアミノ酸、又はシリコーン化合物、又はこれらの混合物によって全体的又は部分的に表面処理される。
【0080】
例として、疎水性処理剤は、脂肪酸、例えばステアリン酸;金属石鹸、例えば、ジミリスチン酸アルミニウム、及び水添タロウグルタミン酸のアルミニウム塩;ペルフルオロアルキルホスフェート及びポリヘキサフルオロプロピレンオキシド;ペルフルオロポリエーテル;アミノ酸;N-アシルアミノ酸又はその塩;レシチン、イソプロピルトリソステアリルチタネート(isopropyl trisostearyl titanate)、セバシン酸イソステアリル、及びシリコーン化合物、例えばジメチコン又はポリジメチルシロキサン、並びにこれらの混合物から選択されうる。
【0081】
疎水性処理剤は、好ましくは、ペルフルオロアルキルホスフェート、ポリヘキサフルオロプロピレンオキシド、ペルフルオロポリエーテル、アミノ酸、N-アシルアミノ酸又はその塩、イソプロピルトリソステアリルチタネート、及びこれらの混合物から選択される。
【0082】
より好ましくは、疎水性物質は、ペルフルオロアルキルホスフェート、N-アシルアミノ酸又はその塩、イソプロピルトリソステアリルチタネート、及びこれらの混合物から選択される。
【0083】
表面処理顔料は、当業者に周知の化学的、電子的、化学力学的又は機械的表面処理技術に従って調製されうる。また、市販製品を使用することも可能である。
【0084】
表面剤は、溶媒蒸発、化学反応及び共有結合創出によって顔料上に吸収又は吸着されうる。
【0085】
一変形形態によると、表面処理は、顔料のコーティングを含む。
【0086】
コーティングは、コーティングされた顔料の総質量の0.1~10質量%、特に1質量%~5質量%を占めてもよい。
【0087】
コーティングは、例えば、顔料をケア又はメイクアップ組成物の他の成分に組み込む前に、顔料及び前記表面剤を任意選択により高温条件下で撹拌しながら単に混合して、顔料の表面上に液体表面剤を吸着させることによって実行することができる。
【0088】
コーティングは、例えば、表面剤を顔料の表面と化学反応させ、表面剤と顔料との間に共有結合を創出することによって実行してもよい。この方法は、とりわけ特許US4,578,266に記載されている。
【0089】
疎水性処理剤は、脂肪酸、例えばステアリン酸;金属石鹸、例えば、ジミリスチン酸アルミニウム、及び水添タロウグルタミン酸のアルミニウム塩;アミノ酸;N-アシルアミノ酸又はその塩;レシチン、イソプロピルトリソステアリルチタネート(又は、代替的にITTと呼ばれる)、並びにこれらの混合物から選択されうる。
【0090】
N-アシルアミノ酸は、8~22個の炭素原子を有するアシル基、例えば、2-エチルヘキサノイル、カプロイル、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル又はココイル基を含んでもよい。これらの化合物の塩は、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ジルコニウム、亜鉛、ナトリウム又はカリウムの塩であってもよい。アミノ酸は、例えば、リジン、グルタミン酸又はアラニンであってもよい。
【0091】
本発明の脂肪酸は、特に1~30個の炭素原子を有する、好ましくは5~18個の炭素原子を有する炭化水素鎖を有する酸である。炭化水素鎖は、飽和、単不飽和又は多不飽和であってもよい。
【0092】
脂肪酸でコーティングされた顔料の例には、ステアロイルグルタミン酸二ナトリウム/水酸化アルミニウムの対を含有するものが挙げられ、これらは、特に三好化成株式会社から商標名NAI-TAO-77891、NAI-C33-8073-10、NAI-C33-8075、NAI-C47-051-10、NAI-C33-115、NAI-C33-134、NAI-C33-8001-10、NAI-C33-7001-10、NAI-C33-9001-10で販売されている。
【0093】
トリイソステアリン酸イソプロピルチタン(isopropyltitanium triisostearate)(ITT)で処理された顔料の例には、Kobo社により商標名BWBO-12(酸化鉄CI77499及びトリイソステアリン酸イソプロピルチタン)、BWYO-12(酸化鉄CI77492及びトリイソステアリン酸イソプロピルチタン)、並びにBWRO-12(酸化鉄CI77491及びトリイソステアリン酸イソプロピルチタン)で販売されているものが挙げられる。
【0094】
好ましくは、脂肪酸でコーティングされた顔料、例えば、ステアロイルグルタミン酸二ナトリウム/水酸化アルミニウムの対を含有するものが本発明に使用される。
【0095】
好ましくは、本発明の顔料は、未処理の又ステアロイルグルタミン酸二ナトリウム/水酸化アルミニウム対でコーティングされた、雲母、酸化チタン及び酸化鉄、又はこれらの混合物から選択される。
【0096】
有利には、顔料は、組成物の総質量に対して18wt%までの量で存在する。
【0097】
水性相
本発明による組成物は、水性相を含む。
【0098】
水性相は、組成物の総質量に対して、40質量%以上、特に40質量%~50質量%、とりわけ40質量%と45質量%の間の量で存在する。
【0099】
一実施形態において、この水性相は、アルコール、特に6~80個のエチレンオキシド単位を有するポリエチレングリコール;ポリオール、例えば、プロピレングリコール、イソプレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、グリセリン、マルチトール、ソルビトール、ジプロピレングリコール又はジエチレングリコール;グリコールエーテル、例えばモノ-、ジ-若しくはトリプロピレングリコール又はモノ-、ジ-若しくはトリエチレングリコール(C1~C4)アルキルエーテル、並びにこれらの任意の混合物を含むことができる。
【0100】
好ましい一実施形態において、本発明の水性相は少なくとも1種のポリオールを含む。好ましくは、ポリオールは、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンチレングリコール、グリセリン及びこれらの任意の混合物から選択される。
【0101】
水性相は、安定剤、例えば、塩化ナトリウム、二塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、好ましくは塩化ナトリウムを追加的に含むことができる。
【0102】
オキシプロピレン化及び/又はオキシエチレン化ポリジメチル(メチル)シロキサン
好ましい実施形態によると、本発明の組成物は、少なくとも1種のオキシプロピレン化及び/又はオキシエチレン化ポリジメチル(メチル)シロキサンを乳化剤として含む。
【0103】
オキシプロピレン化及び/又はオキシエチレン化ポリジメチル(メチル)シロキサンとして、以下の式(III):
【化2】
[式中、
R1、R2及びR3は、互いに独立に、C1~C6アルキル基又は-(CH2)x-(OCH2CH2)y-(OCH2CH2CH2)z-OR4基を表し、R1、R2又はR3基のうちの少なくとも1つはアルキル基ではなく、R4は、水素、C1~C3アルキル基又はC2~C4アシル基であり、
Aは、0~200の範囲の整数であり、
Bは、0~50の範囲の整数であるが、但しA及びBは同時にゼロに等しくなることはなく、
xは、1~6の範囲の整数であり、
yは、1~30の範囲の整数であり、
zは、0~5の範囲の整数である]
に対応するものを挙げることができる。
【0104】
本発明の好ましい実施形態によると、式(III)の化合物において、R1=R3=メチル基であり、xは2~6の範囲の整数であり、yは4~30の範囲の整数であり、R4は、特に水素である。
【0105】
式(II)の化合物の例として、記述されてもよいものは、式(IV):
【化3】
[式中、Aは、20~105の範囲の整数であり、Bは、2~10の範囲の整数であり、yは、5~20の範囲の整数である]
の化合物である。
【0106】
また、式(II)の化合物の例として、式(V)
HO-(CH2CH2O)y-(CH2)3-[(CH3)2SiO]A'-(CH2)3-(OCH2CH2)y-OH(V)
[式中、A'及びyは、5~20、好ましくは8~20の範囲の整数である]
の化合物を挙げることができる。
【0107】
オキシプロピレン化及び/又はオキシエチレン化ポリジメチル(メチル)シロキサンの例として、PEG-7ジメチコン、PEG-8ジメチコン、PEG-9ジメチコン、PEG-10ジメチコン、PEG-12ジメチコン、PEG-14ジメチコン、PEG-17ジメチコン及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0108】
オキシプロピレン化及び/又はオキシエチレン化ポリジメチル(メチル)シロキサンとして、使用されてもよいものは、Dow Corning社によりDC 5329、DC 7439-146、DC 2-5695及びQ4-3667の名称で販売されているもの、並びに信越化学工業株式会社によりKF-6013、KF-6015、KF-6016、KF-6017及びKF-6028の名称で販売されているものである。
【0109】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、オキシプロピレン化及び/又はオキシエチレン化ポリジメチル(メチル)シロキサンとして、信越化学工業株式会社により名称KF-6013、KF-6015、KF-6016、KF-6017及びKF-6028で販売されているものうちの1つ、特にKF-6017を含む。KF-6017のINCI名は、PEG-10ジメチコンである。
【0110】
好ましくは、本発明による組成物は、オキシプロピレン化及び/又はオキシエチレン化ポリジメチル(メチル)シロキサンを、組成物の総質量に対して、0.1質量%~2質量%、好ましくは0.2質量%~1.5質量%、優先的には0.5質量%~1質量%の範囲の量で含んでもよい。
【0111】
より好ましい実施形態において、本発明の組成物は、オキシプロピレン化及び/又はオキシエチレン化ポリジメチル(メチル)シロキサンとしてPEG-10ジメチコンを、組成物の総質量に対して、0.1質量%~2質量%、好ましくは0.2質量%~1.5質量%、更により好ましくは0.5質量%~1質量%の範囲の量で含む。
【0112】
C8~C22アルキルジメチコンコポリオール
好ましい実施形態によると、本発明の組成物は、少なくとも1種のC8~C22アルキルジメチコンコポリオールを乳化剤として含む。
【0113】
本発明の目的において、C8~C22アルキルジメチコンコポリオールは、上記に定義されたオキシプロピレン化及び/又はオキシエチレン化ポリジメチル(メチル)シロキサンと異なっている。
【0114】
有利には、C8~C22アルキルジメチコンコポリオールの存在は、本発明の組成物に室温(25℃)で良好な安定性を与える。本発明による組成物は、また、特に2か月間にわたって貯蔵した後、37℃又は45℃で良好な安定性を呈する。
【0115】
本発明のC8~C22アルキルジメチコンコポリオールは、特にオキシプロピレン化及び/又はオキシエチレン化ポリメチル(C8~C22)アルキルジメチルメチルシロキサンである。
【0116】
C8~C22アルキルジメチコンコポリオールは、有利には、以下の式(VI):
【化4】
[式中、
- PEは、(-C2H4O)x-(C3H6O)y-R基を表し、Rは、水素原子及び1~4個の炭素原子を含むアルキル基から選択され、xは0~100の範囲の整数であり、yは0~80の範囲の整数であるが、但しx及びyは、同時に0に等しくなることはなく、
- mは1~40の範囲の整数であり、nは10~200の範囲の整数であり、oは1~100の範囲の整数であり、pは7~21の範囲の整数であり、qは0~4の範囲の整数である]
の化合物である。
【0117】
好ましくは、Rは水素原子であり、mは1~10の範囲の整数であり、nは10~100の範囲の整数であり、oは1~30の範囲の整数であり、pは15であり、qは3である。
【0118】
好ましい実施形態において、本発明の少なくとも1種のC8~C22アルキルジメチコンコポリオールは、セチルジメチコンコポリオール、例えばGoldschmidt社により名称Abil EM-90で市販されている製品から選択される。
【0119】
本発明による組成物は、C8~C22アルキルジメチコンコポリオールを、組成物の総質量に対して、0.1質量%~1.5質量%、好ましくは0.1質量%~1質量%、特に0.1質量%~0.8質量%の範囲の量で含んでもよい。
【0120】
Abil EM-90は、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコンである。
【0121】
より好ましい実施形態において、本発明の組成物は、C8~C22アルキルジメチコンコポリオールとしてセチルPEG/PPG-10/1ジメチコンを、組成物の総質量に対して、0.1質量%~1.5質量%、好ましくは0.2質量%~1質量%、特に0.2質量%~0.8質量%の範囲の量で含む。
【0122】
別の好ましい実施形態において、本発明の組成物は、ジメチコンコポリオールとしてPEG-10ジメチコン、及びC8~C22アルキルジメチコンコポリオールとしてセチルPEG/PPG-10/1ジメチコンを含む。
【0123】
別の好ましい実施形態において、本発明の組成物は、組成物の総質量に対して、0.5質量%~1質量%のPEG-10ジメチコン、及び0.2質量%~0.8質量%のセチルPEG/PPG-10/1ジメチコンを含む。
【0124】
有効成分
任意選択で、本発明による組成物は、有効成分を更に含むことができる。
【0125】
本発明の組成物に使用されうる有効成分として、例えば、保湿剤、例えばトレハロース;ビタミン、例えば、ビタミンA(レチノール)、ビタミンE(トコフェロール)、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンB5(パンテノール)、ビタミンB3(ナイアシンアミド)、これらのビタミンの誘導体(特に、エステル)及びこれらの混合物;尿素;カフェイン;サリチル酸及びその誘導体;アルファ-ヒドロキシ酸、例えば、乳酸及びグリコール酸、並びにこれらの誘導体;レチノイド、例えばカロテノイド及びビタミンA誘導体;日焼け止め剤;ミント、アロエ又はチョウセンニンジン及びこれらの混合物の精油;皮膚軟化剤、例えば水添ポリイソブテン;感覚調整剤、例えばジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサンクロスポリマーを挙げることができる。
【0126】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、少なくとも1種の有効成分を更に含むことができ、それはエチルメンタンカルボキサミドである。
【0127】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、化粧品の分野で使用されうる化学的日焼け止め剤、例えば、任意のUV-A又はUV-B遮蔽剤を更に含むことができる。日焼け止め剤(又はUV遮蔽剤)は、有機遮蔽剤、物理的遮蔽剤及びこれらの混合物から選択することができ、特に、エチルヘキシルメトキシシンナム(ethylhexyl methoxycinnamm)、二酸化チタン又はこれらの混合物から選択することができる。
【0128】
添加剤
既知の方法において、本発明の組成物は、美容及び皮膚科学の分野に通常の添加剤:親水性又は親油性ゲル化及び/又は増粘剤、例えば、ヒアルロン酸ナトリウム及びオクテニル(ocetenyl)コハク酸デンプンアルミニウム;充填剤;金属イオン封鎖剤;酸化防止剤;防腐剤、例えば、フェノキシエタノール及びクロロフェネシン;塩基性化又は酸性化剤;芳香剤;乳化剤、例えば、セスキオレイン酸ソルビタン、並びにこれらの混合物のうちの1つ又は複数を含むことができる。
【0129】
様々な補助剤の量は、ファンデーションに従来から使用されている量である。
【0130】
当然のことながら、当業者は、本発明による組成物に添加される任意選択の補助剤を、本発明による組成物に本質的に付与された有利な特性が、想定される添加によって有害又は実質的に有害な影響を受けないように配慮して選択する。
【0131】
好ましい実施形態において、本発明は、油注水型エマルションの形態の固体化粧用組成物であって、組成物の総質量に対して、
(i)25wt%~35wt%の、ポリジメチルシロキサンから選択される少なくとも1種のシリコーン油と、
(ii) 両方とも65℃以上の融点を有する融点を有する、2wt%~5wt%のエチレンホモポリマーワックス及び2wt%~5wt%のホホバエステルワックスと、
(iii)少なくとも5wt%の、未処理の又はステアロイルグルタミン酸二ナトリウム/水酸化アルミニウム対でコーティングされた、雲母、酸化チタン及び酸化鉄、又はこれらの混合物から選択される顔料と、
(iv)40wt%以上の、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンチレングリコール、グリセリン及びこれらの任意の混合物から選択される少なくとも1種のポリオールを含む水性相と
を含む、組成物を提供する。
【0132】
ガレヌス形態
本発明の組成物は、スキンケア、メイクアップ又は美容トリートメント製品として使用するのに適している。
【0133】
特に、本発明の組成物は、コンパクトパウダー又はキャスト固体製品、例えば、スティックファンデーションの形態である。
【0134】
方法及び使用
本発明による組成物を、皮膚、特に顔及び/又は首のケア/メイクアップのために使用することができる。
【0135】
本発明による組成物を、使用者の指又は塗布器により皮膚に適用することができる。
【0136】
故に、別の態様によると、本発明は皮膚をケアする及び/又はメイクアップする美容方法であって、本発明の組成物を皮膚に適用することを含む、方法を提供する。
【0137】
特に定義のない限り、本明細書に使用されるすべての技術的及び科学的用語は、本発明が関係する当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
【0138】
以下の実施例は、本発明の非限定的例示として示されるものである。
【実施例
【0139】
(実施例1)
本発明の式(本発明1)及び比較式(比較)1~2の油注水型エマルションの形態のスティックファンデーションを調製した(含有物は、特に指定のない限り、それぞれの組成物の総質量に関して活性物質の質量パーセンテージとして表されている):
【0140】
【表2】
【0141】
比較式のスティックファンデーションは、65℃以上の融点を有するポリエチレンワックスを含まない。
【0142】
比較式のスティックファンデーションは、65℃以上の融点を有するホホバエステルワックスを含まない。
【0143】
上に列挙した式のスティックファンデーションを以下の工程に従って調製した。
1.A1の成分を主ビーカーの中に添加し、90℃に加熱し、均一になるまで混合した。
2.A2の成分を均一になるまで粉砕し、主ビーカーの中に添加し、5分間混合した。
3.A3の成分を主ビーカーの中に添加し、5分間混合し、次いで80℃に冷却し、それにA4の成分を添加し、5分間混合した。
4.Bの成分を小型ビーカー中に80℃で均一になるまで予備混合し、主ビーカーに移し、80℃で10分間均質化した。
【0144】
(実施例2)
本発明の式1及び比較式1~2のスティックファンデーションの安定性及び硬度、並びに適用した際の塗布性及び皮膚感覚を評価した。
【0145】
それぞれのスティックファンデーションの安定性を、45℃、37℃及び4℃で8週間評価した。
【0146】
それぞれのスティックファンデーションの硬度を、以前に記述されたStable Micro System社のTA-XT PLUSタイプのテクスチャーアナライザーにより室温で評価した。
【0147】
それぞれのスティックファンデーションの塗布性を、Anton Paar社のMCR 301タイプRheometerにより以下のように評価した。
【0148】
試験されるスティックファンデーションをプレートの上に置き、G'(貯蔵弾性係数)及びG"(損失弾性係数)の交差点の剪断応力値をPP25プローブで測定した。低い値ほど、良好な塗布性を意味する。一般的に、500Pa以下の剪断応力は良好な塗布性を示す。
【0149】
それぞれのスティックファンデーションの皮膚感覚(爽やかで瑞々しい感覚を含む)を、以下の基準に基づいて10人の感覚の専門家によってスコア付し、平均化した。
5:極めて良い、
4:基本的に良い、
3:許容される、
2:やや不良で許容されない、
1:不良で許容されない。
【0150】
安定性、硬度、塗布性及び皮膚感覚の結果を以下の表にまとめた。
【0151】
【表3】
【0152】
本発明の式1のファンデーションは、スティックファンデーションとして容易にキャストされ、消費者が片手又は塗布器のいずれかを使用して皮膚をメイクアップすることを可能にしたことが観察された。これは、日中に皮膚のメイクアップを補う上で消費者にとって好都合であった。