(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】光学スキャンを使用した付加製造
(51)【国際特許分類】
B29C 64/386 20170101AFI20240422BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20240422BHJP
B29C 64/314 20170101ALI20240422BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20240422BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240422BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240422BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20240422BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20240422BHJP
B29C 64/112 20170101ALI20240422BHJP
G01N 21/47 20060101ALI20240422BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240422BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20240422BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20240422BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
B29C64/386
B29C64/393
B29C64/314
B33Y70/00
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/00
B33Y50/02
B29C64/112
G01N21/47 Z
C08L101/00
C08K5/00
G01N21/17 A
G01N21/64 Z
(21)【出願番号】P 2022525212
(86)(22)【出願日】2019-11-01
(86)【国際出願番号】 US2019059300
(87)【国際公開番号】W WO2021086392
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】521165035
【氏名又は名称】インクビット, エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】INKBIT, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(72)【発明者】
【氏名】マトゥシック, ウォーチエック
(72)【発明者】
【氏名】エリソン, グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】チェン, デサイ
(72)【発明者】
【氏名】ラモス, ハビエル
(72)【発明者】
【氏名】マリーニ, デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ウェーバー, アーロン
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-136311(JP,A)
【文献】国際公開第2018/147186(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0347005(US,A1)
【文献】特表2012-509471(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102232187(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0173946(US,A1)
【文献】特表2009-534501(JP,A)
【文献】特表2018-533657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 - 64/40
B33Y 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造方法であって:
物体を形成すること、該物体を形成することは、材料を付加造形プロセスで堆積させて前記物体を形成することを含み、前記材料は、構築材料成分及び光学強化成分を含む;
前記物体をスキャンすること、該物体をスキャンすることは、
レーザプロフィロメトリ技法を使用することを含み、以下を含む、
前記物体から光学信号を放射させること、ここで、前記光学信号の前記放射は、少なくとも部分的に、前記光学強化成分からの放射によって生じる、
前記光学信号の前記放射を検知すること、及び、
前記放射の前記スキャンから前記物体の少なくとも1つの性質を特定すること;
を含む、方法。
【請求項2】
付加製造方法であって:
物体を形成すること、該物体を形成することは、材料を付加造形プロセスで堆積させて前記物体を形成することを含み、前記材料は、構築材料成分及び光学強化成分を含む;
前記物体をスキャンすること、該物体をスキャンすることは、以下を含む、
前記物体から光学信号を放射させること、ここで、前記光学信号の前記放射は、少なくとも部分的に、前記光学強化成分からの放射によって生じる、
前記光学信号の前記放射を検知すること、及び、
前記放射の前記スキャンから前記物体の少なくとも1つの性質を特定すること;
を含み、
前記物体の前記少なくとも1つの性質を特定することは、前記物体における材料濃度を特定することを含む、方法。
【請求項3】
前記物体の前記特定された少なくとも1つの性質に従って、前記物体への前記材料の更なる堆積を制御することを更に含む、請求項
1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記光学信号の前記放射は、少なくとも部分的に、励起信号と前記物体における前記光学強化成分との相互作用によって生じる、請求項
1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記光学信号の前記放射は、少なくとも部分的に、一過性の化学的プロセスによって生じる、請求項
1または2に記載の方法。
【請求項6】
放射を生じさせることは、前記光学強化材料成分から入射光学信号の散乱を生じさせることを含む、請求項
1または2に記載の方法。
【請求項7】
放射を生じさせることは、入射信号による励起から生じる前記光学強化材料成分からのフォトルミネッセンスを生じさせることを含む、請求項
1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記物体を形成することは、複数の材料の堆積を含み、各材料は異なる光学強化成分を含み、前記物体をスキャンすることは、前記異なる光学強化成分の異なる放射特性に従って前記複数の材料のうちの材料を区別することを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記物体の前記少なくとも1つの性質を特定することは、前記物体の表面プロファイルを特定することを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記物体の前記少なくとも1つの性質を特定することは、前記物体における材料遷移を特定することを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記材料における前記光学強化成分の濃度を選択することを更に含む請求項1~
10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記材料は、1重量%未満の光学強化成分を有する、請求項1~
11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記材料は、0.1重量%未満の光学強化成分を有する、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記構築材料成分は、紫外線又は可視光硬化性樹脂を含む、請求項1~
13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記光学強化成分は、405nmにおいて光を吸収又は蛍光させる、請求項1~
14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記光学強化成分は、ス
チルベ
ンを含む、請求項1~
15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記光学強化成分は、チオフェ
ンを含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記光学強化成分は、2,2’-(2,5-チオフェンジイル)ビス(5-tert-ブチルベンゾオキサゾール)を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記光学強化成分は、2,2’-(1,2-エテンジイル)ビス(4,1-フェニレン)ビスベンゾオキサゾールを含む、請求項
16に記載の方法。
【請求項20】
請求項1~
19のいずれか1項に記載のステップの全てを実行するように構成された三次元プリントシステム。
【請求項21】
三次元プリントシステムであって、
液体状態の材料を制御可能に堆積させて物体を形成するように構成された材料堆積サブシステムであって、前記材料は、構築材料成分及び光学強化成分を含む、材料堆積サブシステムと、
前記物体から光学信号を放射させる
ように構成されたスキャンシステムであって、
前記スキャンシステムはレーザプロフィロメトリ技法を用いており、前記光学信号の前記放射は、少なくとも部分的に、励起信号と前記物体における前記光学強化成分との相互作用によって生じ、前記スキャンシステムは、前記光学信号の前記放射を検知し、前記放射の前記スキャンから前記物体の少なくとも1つの性質を特定するように更に構成される、スキャンシステムと、
前記物体の前記特定された少なくとも1つの性質に従って前記材料堆積サブシステムによる更なる材料堆積を制御するように構成されたコントローラと、
を備える、三次元プリントシステム。
【請求項22】
レーザプロフィロメトリ技法を用いた三次元付加造形で使用するための液体材料であって、
構築材料成分と、
光学強化成分と、
を含
み、
前記光学強化成分は、405nmにおいて光を吸収及び蛍光させる、液体材料。
【請求項23】
前記構築材料は、紫外線又は可視光硬化性樹脂を含む、請求項
22に記載の液体材料。
【請求項24】
前記構築材料は
、透明材料を含む、請求項
22に記載の液体材料。
【請求項25】
前記光学強化成分は、物体の造形での使用後、前記物体への入射信号による励起によって生じる前記物体からの光学信号を放射する、請求項
22に記載の液体材料。
【請求項26】
前記光学強化成分は、前記入射信号を散乱させることによって前記光学信号を放射する、請求項
25に記載の液体材料。
【請求項27】
前記光学強化成分は、前記入射信号によって励起したフォトルミネッセンスによって前記光学信号を放射する、
請求項
25に記載の液体材料。
【請求項28】
前記液体材料は、1重量%未満の光学強化成分を有する、請求項
22に記載の液体材料。
【請求項29】
前記液体材料は、0.1重量%未満の光学強化成分を有する、請求項
28に記載の方法。
【請求項30】
前記光学強化成分は、ス
チルベ
ン又はチオフェ
ンを含む、請求項
22に記載の液体材料。
【請求項31】
前記光学強化成分は、2,2’-(2,5-チオフェンジイル)ビス(5-tert-ブチルベンゾオキサゾール)を含む、請求項
22に記載の液体材料。
【請求項32】
前記光学強化成分は、2,2’-(1,2-エテンジイル)ビス(4,1-フェニレン)ビスベンゾオキサゾールを含む、請求項
22に記載の液体材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、産業用計測のための光学スキャンに関し、より詳細には、三次元プリント中、光学スキャンを改良する材料性質に関する。
【背景技術】
【0002】
透明な基板は、レーザビームがサンプルに吸収されるか、又はサンプルを透過することに起因して、レーザプロフィロメトリを使用して高信頼的にスキャンすることが難しい。これは、サンプルによって反射又は散乱される光の量を低下させ、それにより、センサ要素に提供される信号を低下させる。表面からセンサに達する光が不十分である場合、スキャナは、表面の正確な深度マップを生成しないことがある。これは、その多くが商用プロフィロメータシステムで使用されるレーザ波長にとって完全又は部分的に透明又は半透明であるポリマー材料で特に一般的である。
【0003】
付加製造は、材料の選択的付加を介して物体を造形できるようにする方法セットを指す。典型的な付加製造プロセスは、デジタルモデル(例えば、STLファイルを使用して表される)を一連の層にスライスすることによって機能する。次いで層は造形装置に送られ、造形装置は層を1つずつ下から上に堆積させる。付加製造は、自動車、航空、医療デバイス、医薬、及び産業ツールを含む多様な市場で急速に人気を博しつつある。
【0004】
付加製造プロセスの成長は、fused deposition modeling(登録商標)(FDM(登録商標))等の押出プロセス、ステレオリソグラフィ(SLA)及びマルチジェット/ポリジェット等の光重合プロセス、選択的レーザ焼結法(SLS)又はバインダジェット等の粉末床溶融結合プロセス、及び積層物体製造(LOM)等のラミネートプロセス、を含め、そのようなプロセスの種々の反復が商業化されることに繋がった。それにもかかわらず、この成長及び急速な進歩にも拘わらず、付加製造には、そのようなプロセスを併用することができる材料等の制限がある。限られたタイプの材料があり、材料の性能は、生じる効率及び品質を制限する。
【0005】
インクジェット3Dプリントは、プリントヘッドが液体プリント可能樹脂の液滴を堆積させる付加製造の一方法である。プリントヘッドは典型的には、ガントリシステムに搭載されて、プリント可能樹脂を構築ボリュームの異なる場所に堆積できるようにする。構築プラットフォームは、静止し得るプリントヘッドに対して移動することもできる。液体プリント可能樹脂は、UV又は可視光放射を使用して固化される。
【0006】
複数の基材を用いて物体を構築するために、1つのシステムで複数のプリントヘッドを使用することができる。例えば、異なる光学、機械的、熱的、電磁的性質を有する材料を使用することができる。これらの材料を結合して、広範囲の材料性質を有する複合材料を達成することができる。
【0007】
UV硬化ユニットは典型的には、インクジェット付加製造装置内で使用されるサブシステムの1つである。UV放射は、重合反応の光開始を介してプリント可能樹脂を固化させる手段を提供する。UV反応は、LEDのアレイ及び水銀灯又はキセノンアーク灯等の多様な異なる機構によって供給することができる。UV硬化は典型的には、プリントされた各層後又は層内への各材料の堆積後、適用される。UV硬化ユニットは、プリンタに対して固定されてもよく、又は物体に対して独立して移動してもよい。
【0008】
代替的には、プリント可能樹脂の固化は、熱状況の変更によって達成することができる。例えば、液体材料は、その温度が下がるにつれて固化する。ワックス等の多様な異なるプリント可能樹脂をこのカテゴリで使用することができる。UV位相変化及び熱位相変化プリント可能樹脂を結合して、物体を製造することができる。
【0009】
3Dプリントされた物体は、インクジェットプロセスを使用して製造される場合、構造的サポートを必要とし得る。例えば、張り出しを有する大半の物体はサポート構造を必要とする。典型的には、これらのサポート構造に追加のプリントデータが生成される。インクジェット付加製造では、典型的には別個のプリント可能樹脂がサポート材料として設計される。このプリント可能樹脂もプリントヘッド及び固化を使用して堆積する。プリントが完了した後、サポート材料が容易に除去されることが望ましい。水若しくは他の溶媒に対して可溶性のUV硬化性材料又は溶融によって除去することができるワックスベースの材料を含む多くの潜在的なサポート材料がある。
【0010】
プリントプロセスが完了した後、パーツは典型的には後処理される。例えば、サポート材料を除去する必要があり得る。機械的又は熱的性質を改善するためにも、パーツを後処理する必要があり得る。これは、熱処理及び/又は追加のUV露光を含み得る。
【0011】
インクジェットプリントに適したプリント可能樹脂は、特定の仕様に準拠する必要がある。重要な要件としては、1)粘度は典型的には動作条件でおいて3~15cps内である必要があり、2)表面張力は典型的には20~45mN/mであるべきであり、3)熱安定性-プリント可能樹脂はプリントヘッド、プリント可能樹脂容器、又は供給システム内で固化すべきではなく、4)配合安定性-プリント可能樹脂の異なる成分は妥当に長い時間にわたって分離すべきではないことがある。プリント可能樹脂は典型的には、プリントの仕様に合うように最適化される。
【0012】
さらに、プリントヘッドを駆動する波形は、各プリント可能樹脂で最適化され各プリント可能樹脂に適合されなければならない。さらに、プリントプロセスの多くの異なるパラメータは、プリントヘッド及びプリント可能樹脂余熱等の個々のプリント可能樹脂に適合する必要がある。
【0013】
多くの場合、プリント可能樹脂は添加剤を含み得る。これらの添加剤は、プリント可能樹脂に分散又は溶解する染料、顔料、若しくは顔料と染料との混合物の形態の着色剤を含む。界面活性剤を使用して、吐出性能又はプリント性能を改善するようにプリント可能樹脂の表面張力を調整することもできる。くわえて、他のタイプの粒子又は添加剤を使用して、硬化した樹脂の機械的、熱的、又は光学的特性を強化し得る。
【0014】
レーザプロフィロメトリは、物体の表面をスキャンしマッピングするのに使用されるテスト方法である。この方法では、レーザは物体の表面にわたってラスタ化される(例えばKulik,Eduard A.,and Patrick Calahan.“Laser profilometry of polymeric materials.”Cells and Materials 7,no.2(1997):3参照)。表面はレーザ信号を反射し、レーザ信号はセンサによって検出される。次いで、レーザ源及びセンサの既知の位置及び向きを使用して、表面場所を計算することができる。これは、非常に精密で正確な測定方法であることができ、サブミクロンの細かさで表面マップを生成することが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
レーザプロフィロメトリに向けてポリマーサンプルの信号品質を改善する典型的な方法は、サンプル表面を金等の反射性基板で被覆すること又は高度のフィルタリングを信号データに適用することである。被覆された基板は高品質信号を生成するが、この方法は、パーツが3Dプリントされている間、数千ものスキャンが実行され得る場合、実現可能ではない。信号処理はスキャン品質を改善することができるが、補正は多くの場合、材料固有であり、複数材料基板への適用が難しい。
【課題を解決するための手段】
【0016】
一般的な態様では、光学スキャンを改善する手法は、付加造形中、材料から光学(又は他の電磁)放射を生じさせ、又はその強度を増加させ、又はその特性(例えば強度、スペクトル内容等)に他の方法で影響する。材料からの信号の「放射」は、限定ではなく、材料内の信号の反射又は散乱からのものであるか、材料を透過する信号の減衰からのものであるか、材料内の蛍光又はルミネッセンスからのものであるか、それともそのような効果の組合せからのものであるかに関係なく、信号(即ち電磁放射)の任意の形態の伝播を意味し、放射された信号の「散乱」は、伝播信号の任意の形態の検知及び/又は処理を意味する。幾つかの例では、本手法は、産業用計測での光学スキャンにおいて光学放射を生じさせ、又は受信信号強度を増大させ、且つ/又は受信信号対雑音比を改善する添加剤(又は複数の添加剤の組合せ)を利用する。造形に使用される材料に自然には存在しない要素が添加剤において導入されて、蛍光、散乱、又はルミネッセンスを増大させる。そのような添加剤は、小分子、ポリマー、ペプチド、タンパク質、金属又は半導体ナノ粒子、及びケイ酸塩ナノ粒子の1つ又は複数を含み得る。
【0017】
一態様では、一般に、付加製造方法は、材料を付加造形プロセスで堆積させることによって物体を形成することを含む。堆積する材料は、構築材料成分及び光学強化成分を含む。物体がスキャンされる。スキャンの一環として、物体から光学信号を放射させ、ここで、光学信号の放射は少なくとも部分的に光学強化成分からの放射によって生じる。スキャンすることは、光学信号の放射を検知し、放射のスキャンから物体の少なくとも1つの性質を特定することを含む。
【0018】
別の態様では、一般に、三次元プリントシステムは、液体状態の材料を制御可能に堆積させて物体を形成するように構成された材料堆積サブシステムを含む。材料は、構築材料成分及び光学強化成分を含む。物体から光学信号を放射させる構成されたスキャンシステムであって、光学信号の放射は、少なくとも部分的に、励起信号と物体における光学強化成分との相互作用によって生じる。スキャンシステムは、光学信号の放射を検知し、放射のスキャンから物体の少なくとも1つの性質を特定するように更に構成される。物体の特定された少なくとも1つの性質に従って材料堆積サブシステムによる更なる材料堆積を制御するように構成されたコントローラ。
【0019】
別の態様では、一般に、三次元付加造形で使用される液体材料は、構築材料成分及び光学強化成分を含む。
【0020】
態様は以下の特徴の1つ又は複数を含むことができる。
【0021】
光学信号の放射は、少なくとも部分的に、励起信号と物体における光学強化成分との相互作用によって生じる。
【0022】
光学信号の放射は、少なくとも部分的に、一過性の化学的プロセスによって生じる。
【0023】
物体をスキャンすることは、レーザプロフィロメトリ技法を使用することを含む。
【0024】
本方法は、例えばフィードバック構成において、物体の特定された少なくとも1つの性質に従って物体への材料の更なる堆積を制御することを更に含む。
【0025】
放射を生じさせることは、光学強化材料成分から入射光学信号の散乱を生じさせることを含む。
【0026】
放射を生じさせることは、入射信号による励起から生じる光学強化材料成分からのフォトルミネッセンスを生じさせることを含む。
【0027】
物体を形成することは、複数の異なる材料の堆積を含み、各材料は異なる光学強化成分(又はそのような成分の組合せ)を含む。
【0028】
物体をスキャンすることは、異なる光学強化成分の異なる放射特性(例えばスペクトル)に従って材料を区別することを含む。
【0029】
物体の少なくとも1つの性質を特定することは、物体の表面プロファイルを特定することを含む。
【0030】
物体の前記少なくとも1つの性質を特定することは、物体における材料遷移を特定することを含む。
【0031】
物体の前記少なくとも1つの性質を特定することは、物体における材料濃度を特定することを含む。
【0032】
本方法は、材料における前記光学強化成分の濃度を選択することを更に含む。
【0033】
材料は、1重量%未満の光学強化成分を有し、又はより詳細には、材料は、0.1重量%未満の光学強化成分を有する。
【0034】
構築材料成分は、紫外線又は可視光硬化性樹脂を含む。
【0035】
光学強化成分は、405nmにおいて光を吸収又は蛍光させる。
【0036】
光学強化成分は、スチルルベンクラスの材料を含む。
【0037】
光学強化成分は、2,2’-(2,5-チオフェンジイル)ビス(5-tert-ブチルベンゾオキサゾール)を含む。
【0038】
光学強化成分は、チオフェンクラスの材料を含む。
【0039】
光学強化成分は、2,2’-(1,2-エテンジイル)ビス(4,1-フェニレン)ビスベンゾオキサゾールを含む。
【0040】
構築材料は、紫外線若しくは可視光硬化性樹脂又は熱硬化性(サーモセット)樹脂を含む。
【0041】
光学強化成分は、物体の造形に使用された後、物体への入射信号による励起によって生じた物体からの光学信号を放射する。
【0042】
光学強化成分は、入射信号の散乱により光学信号を放射する。
【0043】
光学強化成分は、入射信号によって励起したフォトルミネッセンスにより光学信号を放射する。
【0044】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の説明及び特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】光学増白剤材料を利用する付加製造プロセスを示す図である。
【
図2A】光学増白剤を含む材料をスキャンするプロセスにおける光学スキャナを示す図である。
【
図2B】光学増白剤を含む材料をスキャンするプロセスにおける光学スキャナを示す図である。
【
図3】チオフェンクラスの光学増白剤の化学構造である。
【
図4】スチルルベンクラスの光学増白剤の化学構造である。
【
図5】光学増白剤の吸収及び蛍光スペクトルのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
後述するスキャン改良の適用例は、造形中、部分的に造形された物体の達成された性質がスキャンされ、そのスキャンから得られた情報が、物体が例えば寸法又は組成において所望の特性に合うように材料の更なる付加を変更するのに使用される、光学スキャンフィードバック手法における三次元付加造形を含む。スキャンは、参照により本明細書に援用される、「SYSTEMS AND METHODS OF MACHINE VISION ASSISTED ADDITIVE FABRICATION」という名称の米国特許第10,252,466号明細書及び「ADAPTIVE MATERIAL DEPOSITION FOR ADDITIVE MANUFACTURING」という名称の米国特許出願公開第US2018/0169953A1号明細書に記載のプリント構成を含め、種々の物理的構成で使用することができる。これらの文献に記載される特定の例は、製造下の物体の表面をスキャンするのに光学コヒーレンストモグラフィ(OCT)を利用するが、後述する改良は必ずしも、物体からのコヒーレント反射を必要とする技法に向けられるわけではない。例えば、OCTベースのスキャンは、物体の表面形状を特定するために、スキャン信号が製造中の物体に衝突する1つ又は複数の点の検出に依拠する技法で置換してもよい。そのような技法は、例えば反射、散乱、フォトルミネッセンス、又は蛍光に起因して、照明点発光に依拠する。レーザプロフィロメトリ(例えば共焦点若しくは幾何学的手法を使用する)又は構造化光散乱(例えば非コヒーレント光を使用する投影法)を含め、幾つかの異なるタイプの散乱技法がそのような放射を利用し得る。一般に、幾つかのそのような技法では、物体は、1つの位置からの電磁放射(例えば光又は無線周波放射)を用いて照明又は他の方法で励起し、放射は別の場所から検出又は撮像され、位置の幾何学的関係を使用して、物体が照明された点、ひいては放射の発端となった点の座標を計算する。以下の説明はレーザプロフィロメトリに焦点を合わせ得るが、改良は他のスキャン手法にも広く適用可能なことが理解されるべきである。
【0047】
第1の適用例では、物体の製造中、レーザプロフィロメトリ手法を使用して、物体の表面上の点の場所を検知することによって深度(即ち堆積した材料の量)を特定する。この適用例では、非常に一般的に、ベース造形材料(「構築材料成分」)は、造形中、光学放射の性質を変える添加剤(「光学強化成分」)を材料に組み込むことにより、使用前、改変される。例えば、添加剤は、材料からの光の散乱を増大させ且つ/又は励起時に蛍光を生じさせ得る。添加剤は、プリント時に組み込まれてもよく(一般に後述するように)、又ははるかに早期に、例えば造形材料が準備され、後に造形に使用するために貯蔵するときに組み込まれてもよい。
【0048】
図1を参照すると、付加製造プロセス100は、基材102及び光学増白剤104(又はより一般的には、例えば異なる物理的性質を有する複数の異なる基材及び/又は例えば異なる光学放射性質を有する複数の異なる光学増白剤)を利用して、物体の幾何学的形状を指定する造形計画114に従って物体116を生成する。プリンタ112は、造形計画114に従って、造形が完了し、プロセス100が完全造形物体をもたらすまで、部分造形物体116に材料を繰り返し付加する。
【0049】
図1を更に参照すると、一般的に言えば、プロセスは光学検知閉ループフィードバック制御を利用し、プロセスでは、光学スキャンが、造形中の物体116の表面を表すスキャンデータ118を生成するのに使用される。プリンタ112は、スキャンデータ118aと併せて造形計画114を使用して、例えば、製造のばらつきを補償するようにプリントプロセスを制御する。
【0050】
非常に一般的には、光学スキャナ118の性能を強化し、スキャンデータ118aに部分造形物体116を正確に表現させるために、プリンタは強化造形材料108aを使用する。
図1を更に参照すると、付加製造プロセスは、基材102と光学増白剤104又は光学増白剤の組合せとの組合せを利用するように構成される。
図1に示す構成では、材料コンバイナ108が、付加製造プロセス100に使用するために、材料、特に基材102及び光学増白剤104を入力として受け取り、合わせるように構成される。幾つかの実施形態では、材料コンバイナは、基材102及び光学増白剤104のみよりも多くの材料を受け取り、例えば、造形プロセス中に反応する材料を合わせるように構成し得る。幾つかの実施形態では、材料コンバイナ108はプロポーションコントローラ110から入力を受け取り、プロポーションコントローラ110は、その割合で基材102及び光学増白剤104を合わせるように材料コンバイナ108に指示する制御信号を出力する。幾つかの実施形態では、基材102及び光学増白剤の組合せにおける光学増白剤104の割合は、0%よりも大きく、且つ1%未満である。受け取った基材102及び光学増白剤104を、どの割合で混合するかを材料コンバイナ108に指示するプロポーションコントローラ110によって提供される出力は、材料仕様106によって決定される。材料仕様は、付加造形プロセス100で使用すべき所望の材料組成の特徴付けである。この材料仕様106は、入力としてプロポーションコントローラ110において受信されると、プロポーションコントローラ110によって材料比率出力を決定するのに使用される。
【0051】
図1を更に参照すると、材料コンバイナ108は造形材料をプリンタ112に提供する。材料コンバイナ108から出力される造形材料108aは最終的には、材料仕様106によって指示された比率で合わせられた基材102及び光学増白剤104の組合せである。プリンタ112は、造形計画114に従って造形材料108aを堆積させて、部分造形物体116を生成することに進む。初期堆積では、プリンタは造形材料を構築面上に堆積することができる、造形材料の更なる層は、造形プロセスにおいて先に堆積した層上に堆積する。部分造形物体116は、フィードバック構成で光学スキャナ118によってスキャンされて、造形プロセスにおける材料の更なる堆積を制御するとともに、スキャンデータ118aを介して表される造形が造形計画に基づいて完了したか否かを判断する。幾つかの実施形態では、光学スキャナ118は部分造形物体116を連続スキャンし、造形が完了したか否かに関する判断120を提供する。幾つかの更なる実施形態では、光学スキャナは部分造形物体を周期的にスキャンし、造形プロセスが完了したか否かについての離散判断120を提供する。
【0052】
図2Aを参照すると、光学スキャナ200(例えば
図1の光学スキャナ118としての使用に適する)は、光学信号206を放射するように構成された光学源204、光学信号208の放射信号208(例えば信号206の散乱)を受け取るように構成された光学受信機210、及び光学源204及び光学受信機210から入力を受け取った物体特徴214を、生成するように構成された特徴付けモジュール212を含み、特徴付けモジュール212は、出力として、部分造形物体202の(本体構造の)表面形状を特徴付けた。
【0053】
物体202は、2つの材料で構成されると概略的に示されている:基材202a、例えばスキャン光学信号206が自由に透過することができ、又は信号が吸収される実質的に透明な材料、及びスキャン光学信号206に応答して信号208を放射させる(例えば散乱又は蛍光により)光学増白剤202b。なお、光学増白剤202bは、物体202の単なる表面ではなく、基材の塊内に埋め込まれている。次いでスキャン光学信号206が、光学増白剤202bと接触して示され、それにより、互いと接触したスキャン光学信号206は反射光学信号208を生成する。光学増白剤202bと接触しなかった散乱光学信号の部分は非反射光学信号(206aによって表される)になり、光学受信機210によって受け取られずに物体202を引き続き透過する。放射された信号の特性が基材202a及び添加材料202bの特性のみならず、添加材料の濃度にも依存することが明らかなはずである。例えば、添加材料の濃度が高いほど、物体表面近くからの放射信号の寄与は大きくなるとともに、放射信号の強度が大きくなる。したがって、添加剤の濃度の選択は、達成される撮像特性に依存し得る。
【0054】
図2Aを更に参照して、スキャン光学信号を送信するとき、光学源204はまた、スキャン光学信号206を特徴付ける情報を特徴付けモジュール212に通信する。例えば、幾つかの実施形態では、光学源204は信号206を物体の表面にわたってスキャンし、放射信号の方向をモジュール212に通信する。他の実施形態では、反射光学信号208を受信するとき、光学受信機210は、反射光学信号208を特徴付ける情報を特徴付けモジュール212に通信する。例えば、光学受信機は、受信機の視野を表す二次元センサを含み、これはその視野における反射場所を通信する。光学源及び光学受信機から各入力を受信した後、特徴付けモジュールは、受信した入力に基づいて、例えばジオメトリベースの計算に基づいて物体特徴214を生成する。幾つかの実施形態では、物体特徴214は物体202の表面を記述し得る。
【0055】
これより
図2Bを参照すると、光学スキャナ200はプリントプロセスの状況で示されている。ここでは、光学源204によって生成された光学信号206は、物体202の表面に衝突したときに分散し、反射光学信号208及び分散光学信号209を生成して示されている。インクジェット216は、特徴付けモジュールからの入力として物体特徴214に従って制御されて示されており、物体特徴214を使用して造形材料の堆積を調整することに進む。具体的には、光学源204及び光学受信機210により促進されたスキャンの結果として最終的に生成された物体特徴214は、インクジェット216が造形材料216aを堆積する計画を調整するために使用される。幾つかの実施形態では、インクジェット216は、造形中に生じ、続けて特徴付けモジュール212によって検出された予見できなかった欠陥を修正するように造形材料216aの堆積を改変し得る。
【0056】
これより
図3及び
図4を参照すると、例示的な光学増白剤は、織物、化粧品、及び製紙等の産業で明るい白色を生み出し、黄変を隠すために使用される分子のクラスに属する。光学増白化に使用される大半の化合物は、スチルルベン又はチオフェンのクラスにある。一般的な光学増白化合物の例は、商標名OBとしても知られる2,2’-(2,5-チオフェンジイル)ビス(5-tert-ブチルベンゾオキサゾール)(
図3の300)及び商標名OB-1としても知られる2,2’-(1,2-エテンジイル)ビス(4,1-フェニレン)ビスベンゾオキサゾール(
図4の400)である。これらの材料は典型的には、装荷率1%未満でUV硬化性樹脂に溶解可能である。光学増白剤は、紫外線及び近UV光を吸収し、蛍光を介して青色光として再放射することによって白化効果を生み出す。目には見えないUV光を吸収し、それを青として再放射することにより、サンプル表面からの光の色プロファイルは平坦になる。これは、多くのポリマー材料で見られる黄色がかった色合いを低下させる。
【0057】
図5を参照して、化合物OB(300)の吸収特性及び蛍光(放射)特性を記述するグラフを示す。UV硬化性樹脂は典型的には、硬化した形態であるとき、非晶質透明材料である。この透明性は、典型的にレーザプロフィロメトリ技法で利用される405nm光源に適用される。これにより、レーザ光の幾らかは不透明基板に達するまで材料透過することになり、残りは、パーツの向きに基づく角度で表面から反射される。この場合、検出器は、スペクトル反射が検出器に直接達するように角度をなす場合のみ、下にある基板又は表面から散乱した光を検出する。これは不良品質及び信頼できない表面スキャンを生み出す。
【0058】
光学増白剤は、405nm領域において吸収及び蛍光の両方を行う。これには2つの効果がある:光がサンプルに深く侵入し、下にある基板上で散乱することを防ぎ、405nm光が、レーザがサンプルに衝突した表面から全方向に放射される。これは、適切な量の光学増白剤を所与として、十分な強度の405nm光が検出器に達することを保証する。これが0.02%という非常に低い負荷率で達成可能なことが示されている。例えば、増白剤又は増白剤の吸収成分の濃度を調整することにより、光を少なくとも幾らかの距離、材料に侵入させて、表面からのそのような距離内にある物体の特性を検知することが望ましいことがあることを認識されたい。
【0059】
先の考察は、スキャンして、造形された構造の表面を特定することに焦点を合わせている。なお、付加造形の多くの状況では、1つの材料のサポート構造が、造形中の物体の周囲に堆積し、プリンタは、造形中、サポート材料又は造形材料のいずれかを放射するように制御可能である。したがって、サポート材料から構築材料への遷移位置の制御は、正確な造形にとって重要である。上述した手法では、添加剤はサポート材料ではなく構築材料に添加されていてもよく、それにより、サポート材料の領域から構築材料の領域への検出が可能になる。更に他の適用例では、複数の異なる構築材料が存在してもよく、異なる放射光学特性を生成させ得るために、異なる添加剤が各材料に添加されてもよい。例えば、異なる添加剤は異なる蛍光波長を有していてもよく、それにより、放射光のスキャンされた周波数の変化に従ってある材料から別の材料への遷移の検出を可能にする。更に他の複数の材料状況では、複数の構築材料の比率可変混合物は、例えば、空間的に変わる機械的特性をもたらし得るために使用することができ、放射信号における波長含有量の検出された混合物は、材料の物理的混合物を示し得る。
【0060】
上記で論じた実施形態は単なる例であり、より一般的には、手法の代替の実施形態は、独立して選択されて異なる実施形態を形成し得る以下の要素の組合せとして形成される:(a)製造方法、(b)基材、(c)添加剤、(d)検出強化メカニズム、並びに(e)マシンビジョン方法及び対応するソフトウェア。
【0061】
製造方法は、選択的レーザ焼結法(SLS)、融合堆積モデリング(FDM)、フォトポリマーインクジェットプリント、三次元プリント(3DP)、積層物体製造(LOM)、ステレオリソグラフィ(SLA)を含め、付加製造方法(例えば構築されたパーツに材料が付加されている)を含む。手法は、材料が付加されている(例えば既存の表面への被膜、蒸着法等)同様の方法に適用することができる。方法は、材料が除去されている減法プロセス(例えばCNCミリング)に適用することもできる。手法は、材料の付加及び除去の両方が行われている混合プロセスに適用することもできる。
【0062】
基材は種々の形態の液体又は固体であることができる。材料タイプの幾つかには、UV硬化性樹脂(例えばフォトポリマー)、熱硬化性樹脂、熱可塑性プラスチック、相変化材料がある。UV硬化性樹脂の幾つかは、アクリレート類、チオール-エン類、シリコーン類、エポキシ類、ビニルエステル類を含む。熱硬化性樹脂の幾つかは、ゴム類、シアン酸エステル類、フラン類、ポリイミド類、ポリウレタン類、ポリ尿素/ポリウレタンハイブリッド、ベークライト、デュロプラスト、ミラミンを含む。熱可塑性プラスチックの幾つかは、アクリル、abs、ナイロン、pla、ポリベンゾイミダゾール、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリオキシメチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエチレン、硫化ポリフェニレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、フッ化ポリビニリデン、テフロン(登録商標)を含む。材料は、補強材(例えば異なるタイプの充填剤)を含むことができる。このプロセスで金属類及びセラミック類を使用することもできる。固体材料は、押出フィラメント(例えばFDMの場合)、粉末/被覆粉末(例えばSLS、3DPの場合)、シート(例えばLOMの場合)、又は材料ブロック(例えばCNCミリングの場合)の形態であることができる。材料は液体形態であることもできる:1)堆積することができる任意のタイプの液体(例えば水、溶媒)、2)UV、IR放射下で液体形態から固体形態に遷移する任意のタイプの液体(例えばUV硬化性樹脂、フォトポリマー、熱硬化性樹脂)、3)液相から固相に遷移する任意のタイプの液体(例えばワックス類、比較的低い溶融温度を有するプラスチック類)。
【0063】
添加剤(「増白剤」)は一般に、対応するマシンビジョン/スキャンシステムの測定信号を改善する。多くの場合、全体材料/パーツがクリアであることができるように、添加材料が吸収する可視スペクトルが可能な限り少ないことが望ましい。多くの場合、材料が電磁スペクトルの別の部分(UV、近IR、遠IR等)の光を大きく反射/散乱させることが望まれる。この反射/散乱は典型的には、検出機構に調整される。使用し得る添加剤の幾つかは、小分子:例えば、フルオレセイン、クマリン、Texas Red、Pacific Blue、ThermoFisher Scientificによって商品化されているAlexa Fluorシリーズの染料等の蛍光染料を含む。ポリマー、例えばポリ(9-アントラセニルメチルアクリレート)、ポリ(フルオレセインO-アクリレート)、及びMillipore-Sigmaカタログに広く記載されている多くの他の蛍光ポリマー等の蛍光及びフォトルミネッセント材料を使用することができる。8-ヒドロキシキノリン銅(II)、8-ヒドロキシキノリン亜鉛、及びMillipore-Sigmaカタログに記載の多くの他の化合物等の金属錯体染料を使用することもできる。GFP(緑色蛍光タンパク質)、RFP、YFP、mCherry、多くの光励起性タンパク質、光スイッチング性タンパク質、光変換性タンパク質、及びFluorescent Protein Databaseに記載の他のタンパク質等のタンパク質を使用することもできる。フタロシアニングリーン、ポンペイアンレッド等の顔料を使用することができる。他の顔料には、近IRを強く散乱するが、それでもなお選択可能な可視色を与える「クールリーフ(cool roof)」顔料がある。微粒子及びナノ粒子は添加剤として使用することができる。金及び銀ナノ球体、金ナノロッド、銀ナノプレート等の金属ナノ粒子を使用することができる。そのような粒子の一例は金ナノロッドであり、これは、長さを調整することによって所望の周波数で散乱するように合成することができる。これらの粒子の溶液は可視スペクトルで透明であり、例えば、660nm又は990nmにピーク散乱を有する。金属コアを有するシリカシェル等の金属ハイブリッドナノ粒子を使用することができる。シリカシェルが被膜された金ナノ球体を使用することができる。メソポーラスナノ粒子は有用であり得る、その理由は、高い表面積対体積比に起因して、蛍光染料等の大量の小分子を装填することができるためである。メソポーラスシリカナノ粒子(nanoComposixからの)を使用し得る。典型的には酸化鉄で構成される磁性ナノ粒子は、周囲温度で超常磁性を示す。そのような粒子は、NMRによる検出可能性等の幾つかの魅力的な性質を有する。量子ドットは、数ナノメートルサイズの半導体粒子であり、量子力学に起因してより大きな粒子とは異なる光学的及び電子的性質を有する。UV光で照らされた場合、量子ドットにおける電子は、高エネルギー状態に励起することができる。半導体量子ドットの場合、このプロセスは、価電子帯から伝導帯への電子の遷移に対応する。励起した電子は落ちて価電子帯に戻り、光の放射によってそのエネルギーを解放することができる。UV散乱粒子を使用することができ、低毒性UV散乱体の一例は、Journal of Nanobiotechnology volume 8,Article number:12(2010)Li,Q.,Xia,L.,Zhang,Z.et al.Nanoscale Res Lett(2010)5:1487に記載のようなアイビー生成のナノ粒子である。上述した添加剤の組合せを使用することができる。例えば、限定されないが、色及び散乱を調整する二酸化チタン及び酸化亜鉛のような染料と広帯域散乱体との組合せ。これらの添加剤は基材に分散することができる(例えば基材が流体の場合)。添加剤は被膜として使用することもできる(例えば、粉末基材を扱う場合、添加剤は各基材粒子を被膜することができる)。添加剤被膜は、材料シートを扱う場合(例えばLOM)、適用することもできる。
【0064】
検出強化メカニズムを使用することができる。一般に、少なくとも幾つかの実施形態では、手法は、システムが光(又は他の電磁放射)を測定する材料に向けるアクティブ3Dスキャン手法を扱う。材料から検出器に戻る(即ち材料から「放射」された)光を使用して、材料についての3D情報を特定する。材料添加剤は、添加剤がない場合と比較して信号の振幅を増大させることによって検出器に向けられる信号を強化する。検出強化メカニズムは、露光された原子/分子/粒子が光エネルギーを吸収し、同じ波長の光を異なる方向に再放射する散乱に依拠し得る。光は検出器に達するまでに複数回散乱する場合がある、これは多重散乱と呼ばれる。メカニズムは光又は他の電磁放射を吸収した物質による光の放射を記述する蛍光を含み得る。典型的には、放射された光は、吸収された放射よりも長い波長を有する。蛍光の一例は、吸収される放射がUVにあり、一方、放射される光が可視領域にある場合である。メカニズムはルミネッセンス、特に化学ルミネッセンス、化学反応からの光の放射、及び他の形態のルミネッセンスを含み得る。更に別のメカニズムは、表面から直接反射された光を記述する鏡面反射を含む。更に別のメカニズムは、信号のレベル及び/又はスペクトルの内容が添加剤の存在(又は添加剤の量若しくは濃度)を反映するような減衰を含み、検出器は放射の特性を測定して、材料に存在する添加剤の特性を推測する。
【0065】
マシンビジョン方法及び対応するソフトウェアは、アクティブスキャンシステムを含むことができ、システムは電磁放射(例えばUV、可視、近IR、IR)を放射し、次いで、測定する部分によって検出器に向けられた放射を測定する(直接又は間接的に)。対応する手法は以下のスキャン方法を扱う:三角測量スキャン/プロフィロメトリ、飛行時間撮像(パルスベース及び位相シフト)、アクティブステレオ法/マルチベースラインステレオ/構造化光、フォーカス/デフォーカスからのアクティブ深度、干渉法、光学コヒーレンストモグラフィ、偏光からの形状(Shape from polarization)、及び加熱からの形状(Shape from heating)。アクティブ3Dスキャン法の更に他の方法も可能である。なお、1つのタイプのみの添加剤が使用される場合、モノクロ検出器で十分であるが、異なるスペクトルを有する複数の添加剤が使用される場合、マルチスペクトル検出器(例えばカラーカメラ)を使用して、異なる添加剤を区別することができる。
【0066】
添加剤はスキャンされる物体の表面下にあるため、大半の測定方法はバイアスを有することに留意することが重要である。すなわち、大半の測定方法は表面下の点の場所を測定する。表面の場所を計算するために、このバイアスを推定し、測定を補償してもよい。プロフィロメトリベースのスキャンセットアップ(ToF、OCT等も)を使用して、半透明材料(又は散乱を有する材料)をスキャンする場合、典型的には測定バイアスがある。例えば、検出器によって記録されたピーク値は、実際の表面に対応せず、表面下のある点に対応する。これは以下の手法を使用して是正することができる。バイアス値を推定し、次いで、記録された3Dスキャン位置が補正される。典型的には、半透明ではない(例えば薄い反射層で被膜される)材料サンプルを半透明のサンプルと比較することができる。バイアスは、これらの2つの場所間の深度差として推定することができる。3Dスキャンセットアップは、他よりも上手く機能する幾つかの幾何学的構成に鑑みて最適化しする場合がある。例えば、光源/プロジェクタを表面法線と位置合わせされると、バイアスが最小限に抑えられる。例えば典型的には、添加する添加剤(例えば光学増白剤、顔料)が増えるほど、バイアスが下がることを認識して、材料を最適化し得る。
【0067】
複数の材料(例えば複数の構築材料及びサポート材料)を使用して物体を造形する場合、対応する深度を正確に計算することができるようにこれらの材料の各々のバイアスを推定することが重要である。このプロセスは、添加剤の濃度が、各材料のバイアス値が概ね同じであるように調整される場合、最も容易である。その場合、同じバイアス値を使用して各サンプルの深度を調整することができる。バイアスが各材料タイプで異なる場合、まず、どのタイプの材料が所与のポイントに存在するかを推定し、次いで対応するバイアス値を適用する必要がある。材料タイプの検出を行うことができ、差はスペクトル測定値である。
【0068】
さらに、添加剤を励起させる多くのモードがあることを認識すべきであり、その幾つかについて上述した。例えば、光をレーザ、液晶ディスプレイプロジェクタ等から材料に向け得、そのような光は可視又は可視範囲外(例えば紫外線)であってよい。幾つかの例では、励起は無線周波信号である。幾つかの例では、励起は物体の本体を通り(例えば下から)、物体の本体に蛍光等の励起を生じさせる。更に別の励起モードでは、堆積直前に材料を合わせることによって生じる化学反応が、限られた時間、ルミネッセンスを生じさせ得、このルミネッセンスをスキャンして物体特性を特定する。
【0069】
小分子、巨大分子、超分子凝集体、タンパク質、ポリマー、量子ドット、金属ナノ粒子及び微粒子(金及び銀ナノ粒子、ナノロッド、又はナノプレート等)、非金属ナノ粒子及び微粒子(シリカ、ゼオライト、メソポーラス粒子等)顔料、細粉分散等を含め、種々のタイプの添加剤を使用し得る。別の代替の添加剤は、最も新しく堆積した層でのみ可視であるように、UV露光下で既知の速度で劣化する染料を含む。各ポイントでの強度を使用して、新たに堆積した層の深度マップを抽出することができる。連続層からの3Dプリントプロセス中、続くUV光への露出時、染料は劣化し、製品が機能的に使用されるときには、目に見えなくなる。別の例はOCT(光学コヒーレンストモグラフィ)を使用し、OCTは表面マップのみならず深度データを生成する。OCTの場合、蛍光に起因した散乱とは対照的に、添加剤は好ましくコヒーレント散乱を強化する。更に別の代替では、特定の分子を造形材料内で混合して、重合化が完全に行われたか否かを判断する。この場合、判断は、層が完全に硬化したか、それともUV光を更に通す必要があるかの評価することを意味する。例えば生命科学文献では、反応性酸素種の存在、例えば、非反応性モノマーを検出するのに使用することができる多くの蛍光染料及び他の分子の有無を判断するのに使用することができる染料がある。一例として、Thermo Fisherからのこのカタログページは、ROSの検出に利用可能な蛍光染料を列記している。一般に、添加剤は、プリント中の材料の重合状態、及びUV露光中に不要な副産物が形成されたか否かを検出するために使用することができる。そのような検知は、生産プロセスが正しく進んでいるか否かの判断の一部であるが、完全性を超えて、幾何学的正確性さえにも及ぶ。当然ながら、複数の添加剤を組み合わせて、例えば硬化の程度に関連するものもあれば、造形中の物体の表面又は本体構造の特定に使用されるものもある、異なるタイプの放射を提供し得ることを認識されたい。
【0070】
表面ジオメトリ、深度、重合の程度、又は造形する物体に関連する任意の他の物理的若しくは化学的性質についての情報を抽出するのに使用し得る多様な代替の物理原理がある。これらには、散乱、蛍光、吸収、蛍光寿命撮像、共焦点撮像、及び多くの他の方法の使用がある。
【0071】
応答を増白化するのではなく、添加剤の量が放射を低下させるように、純粋な吸収を使用することもできる。したがって、「増白剤」は、単に検知し得る放射を変える材料として広く理解されたい。また、UV領域を吸収し、可視領域を放射する分子又は例えば赤外線領域のみを散乱させるが、人間の目には見えない金ナノロッドを使用することにより、放射が人間の目には見えない(造形物の所望の色又は透明性を維持するために)が、検出器には可視であることが望ましいことがある。異なる強化剤を同じ材料に添加することへの代替として、一緒に作用して何らかの特定の機能を実行する異なる分子をそれら自体内に含む増白剤複合体を添加する。例えば、10~500nmの範囲のサイズのメソポーラスシリカナノ粒子内に蛍光分子を装填することが可能である。
【0072】
放射を検出するためのセンサはカメラであってもよく、物体からの放射への応答を強化する光電増倍管を含み得る。データの収集及び解釈に使用される方法は、線形読み出し、レシオメトリック撮像、マルチスペクトル撮像等を含み得る。種々の実施形態では、スキャンが物体の表面幾何学的構造の特定に限定されないことを理解されたい。物体の本体の構造(例えば表面近傍)及び材料、材料の組合せ(比率を含む)、硬化の程度等の性質も等しく特定することができる。
【0073】
なお、先に紹介したように、添加剤の濃度は放射信号の性質に影響し得る。例えば、低濃度では、材料の表面近傍の深度範囲からの散乱に起因して、表面測定の正確性及び/又はある構築材料から別の構築材料又はサポート材料への点の正確性は、高濃度よりも低下し得る。したがって、測定する必要がある特徴に応じて濃度を選択及び/又は改変し、恐らくは造形中の物体の表面にわたって変更して、所望のスキャン特性を達成することが可能である。
【0074】
さらに、散乱又は他の放射現象は、材料の表面下の相互作用から生じるため、入射光信号は一般に、材料の複数の堆積層と相互作用することになることに留意する。新たに付加された材料のみをスキャンするためには、示差スキャン技法を使用することができる、この技法では、放射は、材料(例えば材料堆積の1つ又は複数の層)を付加する前及び材料を付加した後、放射が検出され、次いで応答差を使用して、付加された層の性質を測定する。
【0075】
先に紹介したように、添加剤はプロセスの多くの異なる時点で構築材料に添加され得る。例えば、添加剤は、使用されるかなり前に構築材料に組み込まれ得る、例えば、構築材料は光学的に強化された形態で販売される。添加剤材料は、構築材料とは別個に配布され得る、例えば3D造形設備において貯蔵容器内で所望の濃度でバルク構築材料に添加され得る。添加剤は、例えば、プリンタにおいて組み合わせプロセスが制御される、
図1に示すように、プリンタ機構において「ジャストインタイム」方式で添加され得る、それにより、物体にわたる濃度変更等の技法を可能にする。
【0076】
少なくとも幾つかの実施形態では、コントローラがプリンタの動作を調整し、例えば、光学強化剤の組み込みを生じさせ、スキャンを処理し、強化剤からの放射を利用する。コントローラはソフトウェアで実装することができ、ソフトウェアは非一時的な機械可読媒体に記憶することができ、プロセッサによって実行されると、コントローラに上述した手順のステップを実行させる。幾つかの実施形態では、コントローラは、例えば特定用途向け集積回路又はフィールドプログラマブルゲートアレイを使用してハードウェアに実装し得る。
【0077】
上記説明は例を意図し、本発明の範囲の限定を意図せず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって規定されることを理解されたい。他の実施形態も以下の特許請求の範囲内にある。