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特許7476323ターボ機械用のファイバ強化動翼、および、その動翼の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】ターボ機械用のファイバ強化動翼、および、その動翼の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F01D 5/14 20060101AFI20240422BHJP
   F01D 5/28 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
F01D5/14
F01D5/28
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022548171
(86)(22)【出願日】2021-01-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(86)【国際出願番号】 EP2021051084
(87)【国際公開番号】W WO2021160383
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-11-08
(31)【優先権主張番号】102020201867.7
(32)【優先日】2020-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521001582
【氏名又は名称】シーメンス エナジー グローバル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS ENERGY GLOBAL GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ハジェ,デトレフ
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0152858(US,A1)
【文献】特表2009-516798(JP,A)
【文献】特開2008-261334(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102013225572(DE,A1)
【文献】特開2011-033037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/14
F01D 5/28
F01D 25/00
F02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ機械用の動翼(1)であって、翼形部(2)および翼根元部(3)を有する動翼(1)において、
前記動翼(1)が1つのファイバ強化複合材料からなる少なくとも1つのファイバ強化複合部品(4)および1つの封止部(5)を有し、
前記封止部(5)が前記ファイバ強化複合部品(4)を完全に封止しており
前記ファイバ強化複合部品(4)に前記封止部(5)に対する与圧がかけられ、
前記ファイバ強化複合部品(4)に、前記動翼(1)にかかる力の主方向の与圧がかけられる、
ことを特徴とする動翼。
【請求項2】
前記封止部(5)が複数の接触要素(6)を包含していることを特徴とする、請求項1に記載の動翼(1)。
【請求項3】
前記封止部(5)が金属材料から成り、前記ファイバ強化複合部品(4)を気密に封止していることを特徴とする、請求項1または2に記載の動翼(1)。
【請求項4】
前記ファイバ強化複合部品(4)の少なくとも1部の、少なくとも第1の箇所(6)および少なくとも第2の箇所(7)が前記封止部(5)に固定されていることを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載の動翼(1)。
【請求項5】
前記ファイバ強化複合部品(4)が、前記翼根元部(3)またはその近傍で、かつ、前記翼形部(2)で固定されていることを特徴とする、請求項に記載の動翼(1)。
【請求項6】
前記ファイバ強化複合部品(4)が前記翼形部(2)内で前記動翼(1)にかかる力の実質的に主方向にガイドされることを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載の動翼(1)。
【請求項7】
前記動翼(1)が前記封止部(5)内に軸方向の/ファイバに平行な孔(8)を少なくとも1つ有し、前記孔(8)の中に少なくとも1つのブッシュ(9)が配置され、前記ブッシュ(9)に前記少なくとも1つのファイバ強化複合部品(4)が固定されていることを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載の動翼(1)。
【請求項8】
前記少なくとも1つのブッシュ(9)が位置不変に配置されていることを特徴とする、請求項に記載の動翼(1)。
【請求項9】
前記少なくとも1つのブッシュ(9)が調整されるように形成されていることを特徴とする、請求項に記載の動翼(1)。
【請求項10】
前記ファイバ強化複合部品(4)を製作するステップと、
前記封止部(5)を製作するステップであって、前記封止部(5)は前記ファイバ強化複合部品(4)を挿入するための1つの開口部(10)を有する、ステップと、
予め製作された前記ファイバ強化複合部品(4)を、前記封止部(5)内へ収容するステップと、
別の閉鎖物(11)による、または、翼部品による、前記封止部(5)の前記開口部(10)を気密閉鎖するステップと、
を備えることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の動翼(1)の製造方法。
【請求項11】
前記封止部(5)を製作するステップであって、前記封止部(5)は1つの開口部(10)を有する、ステップと、
前記開口部(10)を通して複数の半製品を前記封止部(5)の内壁に取り付けるステップと、
前記半製品をマトリックス材料で含浸するステップと、
前記マトリックス材料を硬化するステップと、
別の閉鎖物(11)によって、または、翼部品によって、前記封止部(5)の前記開口部(10)を気密閉鎖するステップと、
を備えることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の動翼(1)の製造方法。
【請求項12】
前記ファイバ強化複合部品(4)に前記封止部(5)に対する与圧がかけられることを特徴とする請求項10に記載の動翼(1)の製造方法。
【請求項13】
前記封止部(5)内への前記ファイバ強化複合部品(4)を収容するステップと、
前記ファイバ強化複合部品(4)を、前記翼形部(3)の上部における第1の固定するステップと、
前記ファイバ強化複合部品(4)および前記封止部(5)を、少なくとも-20℃未満の温度に冷却するステップと、
前記ファイバ強化複合部品(4)を、前記翼形部(3)の下部、または、前記翼根元部(3)における第2の固定するステップと、
前記ファイバ強化複合部品(4)および前記封止部(5)を、少なくとも周囲温度まで加熱するステップと、
によって与圧が得られることを特徴とする請求項12に記載の動翼(1)の製造方法。
【請求項14】
前記ファイバ強化複合部品(4)が、前記封止部(5)内で軸方向の/ファイバに平行な複数の孔(8)の中に取付けられた複数のブッシュ(9)によって固定されることを特徴とする請求項13に記載の動翼(1)の製造方法。
【請求項15】
前記複数のブッシュ(9)が、前記封止部(5)内の固定された収容部内に位置不変に固定されることを特徴とする請求項14に記載の動翼(1)の製造方法。
【請求項16】
前記複数のブッシュ(9)が前記封止部(5)内で調整されるように設置されることを特徴とする請求項14に記載の動翼(1)の製造方法。
【請求項17】
前記調整が、ねじ接続(13)、楔、アダプタ、または、別のカバー(21)によって実現されることを特徴とする請求項16に記載の動翼(1)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ターボ機械の動翼は、とりわけ遠心力によって高負荷を受け、それに応じた寸法設定が必要である。特に、翼の長さが大きい場合や高い回転数の場合には、動翼は高強度の材料でしか製造できないか、最終的にはまったく製造できない。異なる回転数の翼はA×nという量で比較することができる。ここで、Aは受風面積、nは回転数である。
【0002】
大型動翼の場合、それをファイバ強化複合材料で製造することが知られている。この場合、高速回転数のもとでも大きな翼長を達成するために、ファイバ強化複合材料(特にCFK)の高い比強度が利用される。しかしながら、ファイバ強化複合材料は、ターボ機械に広く使用されることを妨げる幾つかの特性を有する:
方向性に強く依存する強度および剛性。最大値はファイバの方向に対して平行に得られ、これに対して垂直であれば強度と剛性は約1桁小さくなる。
・このことにより、横方向の力を伝達しなければならないので、設計上の諸限界に対して、特に、強く応力のかかる接触面(例えば、翼根元部)の形状が定められる。現時点ではこのことが達成可能な翼長に対する1つの制限要因である。
・十分なねじり剛性を有する翼形部を達成するために、強化ファイバは応力の主方向だけでなく、偏位方向(+/-30°、+/-45°)にも必要である。これらは負荷耐力への寄与が少ない。
媒体の影響および機械的な作用による損傷。
・媒体の影響により材料特性の変化が生じる可能性がある。蒸気タービンで使用される場合に、例えば水の蓄積による影響を受ける。これは経時的な強度低下を引き起こし、最終的にはその部品の故障につながる可能性がある。ガスタービンの圧縮機翼として使用する場合、流入空気中の湿気も水分蓄積を引き起こすことがある。これは、吸入空気に水を注入する場合に特に当てはまる。
・機械的な作用(特にファイバ方向に対して横方向の)には、僅かな程度しか耐えられない。作用箇所を限定することができる場合には、そこに保護部品(駆動装置―送風機翼の保護フレームなど)を設けることができる。蒸気タービンの場合、低圧翼に液滴衝撃エロージョンに対する局部保護フレームを取り付けるアプローチが知られている。この場合、保護フレームと複合材料との、振動および遠心力に耐える信頼性のある接続が、大きな挑戦課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術から発して、本発明の課題は、複合材料の特性をターボ機械における諸要求に適合させ、その結果、長期間の使用を可能にするようなターボ機械用のファイバ強化動翼、および、そのような動翼の製造方法を提示することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、動翼に関しては独立請求項1の特徴により、方法に関しては独立請求項12および13の特徴によって解決される。
【0005】
個別に、または、互いに組み合わせて使用することができる本発明の有利な形態および展開形態は従属請求項の主題である。
【0006】
本発明によるターボ機械用の動翼は翼形部および翼根元部に特徴を有し、この動翼は1つのファイバ強化複合材料からなる少なくとも1つのファイバ強化複合部品および1つの封止部を有し、この封止部は該少なくとも1つのファイバ強化複合部品を完全に封止している。
【0007】
このファイバ強化複合材部分が完全に封止されているので、この部品は媒体の影響から確実に遮蔽され、これにより、例えば強度低下が効果的に防がれる。これは長期間使用するための1つの重要条件である。
【0008】
本発明の1実施形態では、その封止部が複数の接触要素を包含している。動翼の、隣接する構成部品と接触している全ての部品を接触要素とみなすことができ、これらは例えば、ロータ溝に係合している翼根元部、または、カバープレート、または、振動を低減するために隣接する動翼に対して支持されている複数の振動減衰ワイヤである。これらの接触要素をこの封止部内に統合することにより、高い接触圧力、従って、大きな翼長が可能になる。
【0009】
本発明のさらなる実施形態では、封止部が金属材料から成り、少なくとも1つのファイバ強化複合部品を気密に封止している。この場合、この気密は通常の動作中に予期される圧力である。金属材料で作られた封止部により、複数の接触要素、特に翼根元部における高い接触圧力が可能となり、その結果、大きな翼長が可能となる。この封止部の気密な封止は、少なくとも1つのファイバ強化複合部品を収容した後で以下の接続方法の一つによって行われる。これらの接続方法とは:材料接続(例えば、溶接、ろう付け、接着)、形状接続(例えば、挿入、嵌め合い、インターロック、ボルト接続)、または、摩擦接続(例えば、ねじ止め、焼きばめ)である。また、この接続は積層造形法で行うこともできる(幾何学形状の積層)。さらに、これらの接続方法を組み合わせてもよい。
【0010】
少なくとも1つのファイバ強化複合部品の収容は、予め定められた中空空間内でのその部品の位置決めを意味する、すなわち、翼部品の内部でのその部品の位置決めと、それに続く、翼部品による内部の閉鎖を意味する。振動負荷が大きいので、堅牢で信頼性の高い閉鎖に努めるべきである。金属製の封止部の場合、溶接接続(シール溶接)が適切であることが実証されている。この場合、ファイバ強化複合材料が過熱して損傷しないように、プロセス制御(導入される熱量、溶接シームからの距離)が必要である。
【0011】
本発明のさらなる実施形態では、この少なくとも1つのファイバ強化複合部品に封止部に対する与圧が加えられる。ファイバ強化複合部品に封止部に対する与圧を加えることで、封止部の負荷が軽減され、全体断面(ファイバ強化複合部品+封止部)の高い耐負荷性が確保される。
【0012】
本発明の特に有利な実施形態では、この少なくとも1つのファイバ強化複合部品に、動翼に掛かる力の主方向の与圧がかけられる。ファイバ強化複合部品の与圧は封止部に対して主負荷方向にかけられ、結果として、封止部は圧縮与圧を受ける。このファイバ強化複合部品は主に一方向の力の伝達に対して最適化することができ、一方、封止部は、ねじり力、屈曲力および湾曲力を引き受けることができる。
【0013】
本発明のさらなる実施形態では、少なくとも1つのファイバ強化複合部品が、少なくとも2箇所で封止部に固定されている。この少なくとも1つのファイバ強化複合部品を2箇所で封止部に固定することにより、そのファイバ強化複合部品に封止部に対する最適な与圧を加えることができる。
【0014】
本発明の1実施形態では、少なくとも1つのファイバ強化複合部分が、翼根元部またはその近傍で、および、翼形部で固定されている。ファイバ強化複合部品を翼根元部または翼根元部近傍に、さらに、翼形部に固定することは、力の伝達に有利であることが分かった。さらに、翼形部におけるファイバ強化複合部品を動翼に掛かる力の実質的に主方向にガイドすることが、力の伝達に有利であることが証明されている。
【0015】
本発明のさらなる実施形態では、動翼が封止部内に軸方向の/ファイバに平行な孔を少なくとも1つ有し、この孔の中に複数のブッシュが配置され、このブッシュに少なくとも1つのファイバ強化複合部品が固定されている。この固定方法は耐負荷性および信頼性にとって非常に重要である。
【0016】
この場合、ファイバ強化複合部品に実質的に摩擦応力により力が導入される構造が特に適切であることが証明されている。このようにして、ファイバ強化複合部品への過度の負荷を避けることができる。こうして、少なくとも1つのファイバ強化複合部品は、軸方向に/ファイバに平行に配置された複数の孔の中に配設された複数のブッシュにより固定することができる。このようなブッシュは、位置不変に(固定した収容部内に)固定することも、または、翼内に調整されるように設置することもできる。調整は、例えば、ねじ接続、楔、アダプタ、または、別のカバーによって実現できる。次いで、この固定は、直接的な閉鎖(例えば、溶接シーム)または別の(例えば、溶接された)カバーによって確実に行うことができる。あるいは、この位置不変の固定は、封止部の内側に直接に接着/ラミネートすることにより達成することもできよう。次に、この位置は、気密になるように取り付けられたカバーによって閉鎖することができる。
【0017】
動翼を製造するための本発明による第1の方法は、以下の方法ステップを特徴とする。
少なくとも1つのファイバ強化複合部品を製作するステップ、
封止部を製作ステップであって、この封止部は前記少なくとも1つのファイバ複合部材を挿入するための1つの開口を有する、ステップ、
予め製作された上記少なくとも1つのファイバ強化複合部品を、封止部内へ収容するステップ、
別の閉鎖物による、または、翼部品、特に翼根元部による、封止部内の開口部を気密閉鎖するステップ。
【0018】
この方法では、まずファイバ強化複合部品と封止部を別々に製作し、次に、予め製作された少なくとも1つのファイバ強化複合部品を封止部の開口部を通して封止部内に挿入する。
【0019】
上記少なくとも1つのファイバ強化複合部品が収容された後、封止部の気密閉鎖は、好ましくは以下のいずれかの接合方法によって行うことができる:すなわち、材料接続(例えば、溶接、ろう付け、接着)、形状接続(例えば、挿入、嵌め合い、インターロック、ボルト接続)、または摩擦接続(例えば、ねじ接続、焼きばめ)。また、この接続を積層造形法で行うこともできる(幾何学形状の積層)。さらに、これらの接続方法を組み合わせることができる。
【0020】
ファイバ強化複合部品の収容は、予め設けられた中空空間内でのその部品の位置決めを意味する、すなわち、翼部品の内側での位置決めと、それに引き続く、1つの翼部品による内側の閉鎖を意味する。高い耐振動性能が要求されるので、堅牢で信頼性の高い閉鎖が必要である。金属製の封止部の場合、溶接接続(シール溶接)が有効であることが証明されている。この場合、ファイバ強化複合材料が過熱して損傷しないように、プロセス制御(導入される熱量、溶接シームからの距離)が必要である。
【0021】
本方法の有利な1実施形態では、少なくとも1つのファイバ強化複合部品に封止部に対する与圧がかけられていることを特徴とする。ファイバ強化複合部品に封止部に対して与圧をかけることにより、封止部の負荷が軽減され、全体断面(ファイバ複合材+封止部)の高い耐負荷性能が得られる。この場合、ファイバ強化複合部品の与圧は封止部に対して主負荷方向に行われ、結果として、その封止部は圧縮与圧を受ける。この場合、このファイバ強化複合部品は主に一方向の力の伝達に対して最適化することができ、一方、封止部は、ねじり力、屈曲力および湾曲力を引き受けることができる。例えば、横方向のガイドまたは封止部の軽い押圧による、振動に対して強いファイバ強化複合部品のガイドは有利である。
【0022】
本方法のさらなる実施形態は、以下の方法ステップによって与圧が得られることを特徴とする。
封止部内へ少なくとも1つのファイバ強化複合部品を収容するステップ、
前記ファイバ強化複合部品の、好ましくは翼形部上部における第1の固定するステップ、
前記ファイバ強化複合部品および前記封止部の、少なくとも-20、好ましくは-60℃未満の温度へ冷却するステップ、
前記ファイバ強化複合部品の、好ましくは翼形部下部における第2の固定するステップ、
前記ファイバ強化複合部品および前記封止部の、少なくとも周囲温度まで加熱するステップ。
【0023】
ファイバ強化複合部品に与圧をかけるために、機械的導入の場合には非常に大きな局部的な力が必要となるであろう。従って、ファイバ強化複合材料と通常の封止部材料との異なる熱膨張特性を利用するのが有利であることが判った。ファイバ強化複合材料は温度上昇に伴い収縮する、または、最小の正の熱膨張しかしない(典型的には<1×10-61/K)。対照的に、動翼用の通常の鋼材は12~16×10-61/Kの範囲である。この異なる膨張特性を利用するために、ファイバ強化複合部品を封止部内に導入し、好ましくはファイバ強化複合部品の片側を固定する。次に、この部品(封止部およびファイバ強化複合部品)を-20℃未満、好ましくは-60℃未満の温度に冷却する。次いで、ファイバ強化複合部品を封止部へ少なくとももう1回固定し、次いで、前記部品が加熱される。ファイバ強化複合材料によっては、数百MPaから1000MPa (ファイバ応力)までの与圧値を与えることができる。
【0024】
この固定方法は、耐荷重性および信頼性にとって非常に重要である。この場合、ファイバ強化複合部品への力の導入が実質的に摩擦応力を介して行われるような、接着に適した方法が特に適切であることが判った。このようにして、複合部品の過剰な応力を避けることができる。
【0025】
本方法の1実施形態では、ファイバ強化複合部品が、封止部内で軸方向に/ファイバに平行に配置された複数の孔の中に取付けられた複数のブッシュによって固定される。このようなブッシュは、翼内に位置不変に(固定的な収容部内に)固定することも、または、翼内に調整されるように設置することもできる。調整は、例えば、ねじ接続、楔、アダプタ、または、類似のものによって実現される。次いで、固定は、直接閉鎖(例えば、溶接シーム)または別の(例えば、溶接された)カバーによって確実に行うことができる。また、封止部の内側に直接に接着/ラミネートすることで、位置不変の固定を達成することができる。
【0026】
動翼を製造するための本発明による第2の方法は、以下の方法ステップを特徴とする。
封止部を製作するステップであって、この場合、封止部は1つの開口部を有する、ステップ、
前記開口部を通して複数の半製品を前記封止部の内壁に取り付けるステップ、
前記半製品をマトリックス材料で含浸するステップ、
前記マトリックス材料を硬化するステップ
別の閉鎖物による、または、翼部品、特に翼根元部による、封止部の開口部を気密閉鎖するステップ。
【0027】
この場合、位置不変の固定は封止部の内側に直接接着/ラミネートすることで達成される。
【0028】
本発明のさらなる利点および発展形態を、図を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明による動翼の原理的構成の側面図
図2】本発明による動翼の第1の実施例の断面図
図3】本発明による動翼の第2の実施例の断面図
図4】本発明による動翼の第3の実施例の断面図
図5図4の細部Zの詳細図
図6図4の動翼の線AAに沿った断面図
図7図4の細部Yの詳細図
図8図4の細部X1の詳細図
図9】本発明による動翼の第4の実施例の断面図
図10図9の細部X2の詳細図
【0030】
同一のまたは同一の機能を有する構成要素には、図面をまたいで同一の参照記号が付されている。これらの図は本発明の原理をより詳細に説明することを意図したものであり、発明に必要な必須の構成要素のみが示されている。イラストは必ずしも縮尺通りではない。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1はターボ機械、例えば蒸気タービン用の本発明による動翼1の基本構造を示す。動翼1は翼形部2と翼根元部3とを備えている。この動翼1は、1つのファイバ強化複合材料からなる複数のファイバ強化複合部品4と1つの封止部5とを有している。封止部5はこれらのファイバ強化複合部品4を完全に封止している。ファイバ強化複合部品4が完全に封止されているので、これらは媒体の影響から確実に遮蔽され、これにより、起こるかもしれない強度低下も効果的に防止される。このことは、ファイバ強化複合材料を長期間使用するための必須の前提条件である。媒体の影響により、例えば蒸気タービンで使用される場合には、水の沈着により材料特性が変化する可能性がある。これは経時的な強度低下を引き起こし、最終的にはその部品の故障につながる可能性がある。ガスタービンの圧縮機翼として使用する場合には、流入空気中の湿気も水分沈着を引き起こす可能性がある。これは、特に吸気に水が注入される場合に当てはまる。
【0032】
さらに、ファイバ強化複合材料は、(特にファイバの方向に対して横方向の)機械的作用に少ししか耐えられない。ここで、封止部5はファイバ強化複合材料をも同様に効果的に保護する。封止部5自体の特に応力のかかる領域15は、追加的に局部的に補強することができる(例えば、肉盛り溶接、硬化、硬化材料塗布)。このような特に応力のかかる領域15は、例えば、動翼1の前縁である。
【0033】
封止部5は金属材料で作られており、全ての必要な接触要素を閉じ込めている。動翼の、隣接する構成要素と接触する部分は全て接触要素とみなされ、これらは例えば、動翼の溝に係合する翼根元部3、カバープレート16、または、振動を低減するために隣接する動翼に対して支持される振動減衰ワイヤ17である。複数の接触要素3、16、17を封止部5内に統合することにより、高い接触圧力、従って、大きな翼長が可能になる。
【0034】
図2は、本発明による図1の動翼1の第1の実施例を断面図で示す。動翼1は複数の、この実施例では4つの、ファイバストランドとして形成された個別のファイバ強化複合部品4を備える。このようなファイバストランドは、例えば、互いに編み合わせられた多数の個別のファイバで構成することができる。これらの個別のファイバ強化複合部品4は、2箇所6、7で封止部5に固定され、封止部5に対して与圧がかけられている。このファイバストランドを、1端は翼形部2の翼尖端に近い場所で、他端は翼根元部3あるいは翼根元部3の近傍で固定すると有利であることが分かっている。その結果、両固定点は空間的に遠く離れており、これは高い与圧を達成できることを意味する。ファイバ強化複合部品4に与圧をかけるために、機械的に導入する場合には、非常に高い局部的な力が必要となるであろう。そこで、ファイバ強化複合材料と通常の封止部材料との異なる熱膨張特性を利用するのが有利であることが判っている。ファイバ強化複合材料は温度上昇に伴い収縮するか、または、最小の正の熱膨張(典型的には1×10-61/K未満)しかしない。これとは異なり、動翼1用の通常の鋼材は12~16×10-61/Kの範囲にある。この異なる膨張特性を利用するために、ファイバ強化複合部品4は封止部5内に収容され、好ましくは片側が固定される。次に、この部品(封止部およびファイバ強化複合部品)を-20℃未満、好ましくは-60℃未満の温度に冷却する。次いで、ファイバ強化複合部品4を封止部5に少なくとももう1回固定し、次いで、この部品が加熱される(例えば、周囲温度による加熱によって)。ファイバ強化複合材料によっては、数百MPaから1000MPa(ファイバ応力)を超えるまでの与圧値を達成できる。
【0035】
ファイバ強化複合部品4の与圧に続いて、封止部5は気密に閉鎖されるが、この閉鎖は翼部品(翼根元部)により直接に、または、別のカバーを用いて行うことができる。この閉鎖は材料接続式に(例えば、溶接、ろう付け、接着)、形状接続式に(例えば、挿入、嵌め合い、インターロック、ボルト接続)、または、摩擦接続式に(例えば、ねじ止め、焼きばめ)行うことができる。また、この結合は積層造形法で行うこともできる(幾何学形状の積層)。さらに、これらの接続方式を組み合わせることも可能である。
【0036】
高い耐振動性が要求されるので、堅牢で信頼性の高い閉鎖を実現すべきである。金属製の封止部の場合、溶接接続(シール溶接)が有効であることが実証されている。この場合、そのファイバ強化複合材料が過熱して損傷しないように、プロセス制御(導入される熱量、溶接シームからの距離)を行う必要がある。
【0037】
封止部5に対するファイバ強化複合部品4の与圧は、ファイバ強化複合部品にかかる応力の実質的に主方向に行われる。その結果、封止部は圧縮与圧を受ける。これらのファイバ強化複合部品4は主に一方向の力の伝達に対して最適化されており、一方、封止部5はねじり力、曲折力および湾曲力を引き受けることができる。
【0038】
図3は本発明による動翼1の第2の実施例を断面図で示す。この動翼1の原理的な構成は図2で説明したものと同じである。図2による構成とは異なり、この動翼1は、ファイバ強化ストランドとして形成された複数の個々のファイバ強化複合部品4ではなく、複数のファイバストランドから予め製作された1つのファイバ複合部品を有し、これが全体として封止部5の開口部10を通して封止部に挿入され、与圧される。次いで、開口部10は、カバーまたは翼根元部3を用いて気密に閉鎖される。これにより、ファイバ強化複合部品4の組立および与圧が容易になる。
【0039】
予め製作されたファイバ強化複合部品の代わりに、複数の半製品(フィラメント、布、多層織物)を導入し、次に、マトリックス材料を含侵することによってファイバ強化複合部品を形成することもできる。
【0040】
図4は、本発明による動翼1の第3の実施例を断面図で示す。この動翼1は、図2による動翼1と同様に、ファイバストランドとして形成された複数の個別のファイバ強化複合部品4を有し、これらに封止部5に対する与圧がかけられている。これらのファイバ強化複合部品4は、軸方向に/ファイバに平行に封止部5内に形成された複数の孔8内に配置された複数のブッシュ9内に固定されている。ファイバ強化複合部品4のこの振動減衰ガイドにより、これらのファイバ強化複合部品4が別々に振動するのが防止される。ブッシュ9およびファイバ強化複合部品4の振動減衰ガイド18の詳細な構成については、以下の図面を参照してより詳細に説明する。これらの図面はそれぞれ、図4で特定された細部に関する。
【0041】
図5図4の細部Zを示すが、これは、ブッシュ9を用いてファイバ強化複合部品4を翼形部2に取り付けたものである。このブッシュ9は封止部5内の孔8内に位置不変に配設されている。この固定は、ブッシュ9の内面とファイバ強化複合部品4の外面との直接的な接着/ラミネートにより行われる。このブッシュ9は肩19を有し、この肩によりブッシュが封止部5の凹部20に対して支持されている。
【0042】
図6は、図4の線AAに沿った位置不変の固定の詳細図を示す。この固定は、既に図5で説明した固定と実質的に同じであり、この場合、ブッシュ9は封止部内部の孔8内で位置不変に固定されており、凹部20で支持されている。図6は、別の(例えば、溶接された)カバー21による、または、代替的に直接的な閉鎖(例えば、溶接シーム)による、開口部10の気密な閉鎖が行われていることを示す。
【0043】
図7図4の細部Yを示しており、これは、ブッシュ9を用いた翼根元部3におけるファイバ強化複合部品4の取り付けである。このブッシュ9は封止部5の孔8内に調整できるように設置されている。この調整はねじ接続部22によって達成される。その代わりに、調整は、例えば、楔、アダプタ等によって実現することもできる。ブッシュ9が位置決めされた後に、次に、気密になる様に取り付けられたカバー21によって閉鎖が行われる。
【0044】
図8図4の細部X1を示す。この詳細図で、ファイバ強化複合部品4の振動減衰ガイド18を見ることができる。この振動減衰ガイド18は、ファイバ強化複合部品4が別々に振動するのを防止する。
【0045】
図9では、振動減衰ガイドがファイバ強化複合部品をわずかに曲げて導くことによって達成される。このアーチ状ガイドの詳細図を図10に細部X2として示す。この場合、ファイバ強化複合部品4は動翼1のアーチの内側に当接している。
【0046】
振動減衰ガイドは、鋳造または幾何学的ガイド(側壁)によっても達成することができる。
【0047】
要約すれば、本発明による動翼は、複合材料の特性をターボ機械における諸要求に初めて適合させるものであり、その結果、長期間の使用を可能にするものである。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10