(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】ハット形断面を有する金属梁を製造する方法
(51)【国際特許分類】
B21B 1/095 20060101AFI20240422BHJP
【FI】
B21B1/095
(21)【出願番号】P 2022552501
(86)(22)【出願日】2021-01-20
(86)【国際出願番号】 EP2021051117
(87)【国際公開番号】W WO2021180387
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-08-31
(31)【優先権主張番号】102020203094.4
(32)【優先日】2020-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390035426
【氏名又は名称】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トーマス コーザク
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-235406(JP,A)
【文献】特開2009-160649(JP,A)
【文献】国際公開第2013/064882(WO,A1)
【文献】特開平04-220102(JP,A)
【文献】特開2006-088176(JP,A)
【文献】特開2000-15334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 1/00 - 11/00
B21B 47/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハット形断面(A)の金属梁を製造する方法であって、スラブ(13)、ブロック(12)、棒材および予備成形材(14)または類似の半製品を圧延機列において熱間圧延することを含み、前記圧延機列が、少なくとも2基の圧延スタンドを含んでおり、一体的な半製品の入側横断面から、熱間圧延温度での複数の圧延ステーションにおける唯1つの圧延プロセス中に少なくとも2つの成形カリバを使用しながら
、ハット形断面を有する出側横断面を形成し、該出側横断面が、
脚部の角度偏差を除いて完成品の断面に幾何学的
に一致
し、
前記圧延プロセスに、矯正機または曲げ装置による曲げプロセスが後置され、
前記圧延プロセスによる成形材が、前記曲げプロセスにより、前記脚部およびウェブが互いに対して直角に配置されるように成形される、
方法。
【請求項2】
前記半製品の前記入側横断面が、矩形の横断面を有しており、該矩形の横断面の材料分布が、圧延プロセスの最初のパスにより製造すべき材料分布
に一致する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記半製品の前記入側横断面を、7~13個の成形カリバを使用しながら前記出側横断面を変形加工する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記圧延プロセスを、少なくとも部分的にデュオ圧延スタンドにより実施する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記圧延プロセスを、少なくとも2
基の圧延スタンド
の配置により相並んで実施する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記圧延
プロセスを、相前後して配置された4~8基の圧延スタンドを使用しながら実施する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記圧延
プロセスを、粗圧延スタンドおよびタンデム配置の仕上圧延スタンドを使用しながら少なくとも部分的に逆転して実施する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記圧延プロセスを、粗圧延スタンド、逆転運転されるタンデム配置の仕上圧延スタンドおよび連続運転される仕上圧延スタンドを含む、相前後して配置された4~10基の圧延スタンドを使用しながら実施する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記圧延プロセスを、粗圧延スタンドおよび/または逆転運転されるタンデム配列の圧延スタンドおよび連続運転される仕上圧延スタンドを使用して、7~18基の圧延スタンドを使用しながら実施する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記圧延プロセスを相前後して配置された7~20基の圧延スタンドを使用しながら完全に連続的に実施する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記圧延プロセスを、デュオ圧延スタンドおよび/またはユニバーサル圧延スタンドを使用しながら実施する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記圧延プロセスの最後の成形パス(10)の後の前記ハット形断面(A)のフランジの傾斜が、前記ハット形断面の対称軸線に対する垂線に関して0.1~15度である、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の原材料の熱間圧延によりハット形断面を有する金属梁を製造する方法に関する。
【0002】
このような方法は、たとえば、中国特許出願公開第102431568号明細書から知られている。この方法は、種々異なる半製品の3部分から成るアセンブリを熱間圧延することによる中梁の製造に関する。ハット形材は、2つのU字形の成形材と上側のカバー金属薄板とから組み立てられて、下方に向かって開いたU字形になる。個別の部材は、熱間圧延により形成される。
【0003】
さらに、熱間圧延された2本のZ形材から中梁を製造することが知られており、これらのZ形材は、一緒に溶接されてハット形材を形成する。その後に、矯正、アニーリング等のような通常の後加工ステップが行われる。この方法は、必要となる作業ステップに関して比較的手間がかかる。Z形材の溶接により、Z形材の熱影響領域における組織変化が生じる。これに基づいて、組織および材料組成において不均一性が生じる。溶接シームの領域における種々異なる材料組成は、腐食につながる。さらに、完成した溶接シームをたとえば超音波により検査することも必要となる。さらに、溶接シームは幾何学的な欠点も有している。たとえば、溶接シームによって切欠き効果が生じる。さらに、材料が溶接時に歪んでしまう。溶接シームは、シームの開始部と終了部において安定性の問題を引き起こす。複数の部材を接合することにより、欠陥が加算されるので、最終的に比較的高い欠陥誤差が生じる。最後に、異なるロットからの異なるZ形材の材料差も問題である。
【0004】
国際公開第2007/008152号に基づいて、ハット形材の冷間圧延のために設けられた圧延装置における1回の作業工程においてハット形材を冷間圧延する方法が知られている。所望の成形材を形成するための圧延装置は、欧州特許第1339508号明細書から知られている。この方法では、ハット形材が、原材料としての平坦な金属薄板から圧延もしくは曲げ加工される。この方法は、出発材料として比較的薄い金属薄板を処理するためにしか適していない。
【0005】
したがって、本発明の根底にある課題は、上述の欠点を回避する、ハット形材を製造するための簡略化された方法を提供することである。
【0006】
この課題は、請求項1に記載の特徴を有する方法によって解決される。本発明の有利な構成は、従属請求項から明らかである。
【0007】
本発明によれば、一体的な半製品の熱間圧延によりハット形断面を有する金属梁を製造する方法が提案される。特に、本発明は、ハット形断面を有する金属梁を製造する方法であって、この方法は、スラブ、棒材、予備成形材または同様の半製品を圧延機列において熱間圧延することを含み、圧延機列が、少なくとも2基の圧延スタンドを含んでおり、一体的な半製品の入側横断面から、熱間圧延温度での複数の圧延ステーションにおける唯1回の圧延プロセス中に少なくとも2つの成形カリバ(Formkaliber)を使用しながら、好ましくは単純な不規則なキャリブレーションにより、ハット形断面を有する出側横断面を形成し、この出側横断面は、完成品の断面に幾何学的にほぼ一致する。本発明の意図における「ほぼ」とは、熱間圧延された成形材の出側横断面が、成形材の個別の脚部の僅かな角度偏差を除いて、完成品の幾何学形状および寸法に一致することであると理解することができる。
【0008】
本発明の重要な点は、この方法が、別の中間ステップなしに、原材料としての比較的厚い半製品を圧延機列において熱間圧延によってほぼ完成品に至るまで熱間圧延することによって実施されることである。本発明は、熱間圧延温度で複数の圧延ステーションにおける唯1回の圧延プロセス中に、少なくとも2つの成形カリバを使用しながら一体的な半製品を変形加工することを想定している。これにより、ハット形材の出側横断面は、好適にはカリバもしくは成形カリバ/カリバロールによる単純な不規則なキャリブレーションにより形成される。キャリブレーション(Kalibrierung)とは、規定された圧延パス数で、定義された初期横断面から定義された仕上横断面の成形材を製造するための成形材圧延であると理解され、本発明の意図における単純な不規則のキャリブレーションとは、成形材幅にわたる高さ変化の分布が、少なくとも1つの対称平面を有しているキャリブレーションであると理解される。
【0009】
本発明の意図において熱間圧延温度とは、圧延材の温度であると理解される。この温度は、材料の再結晶温度よりも高い。原材料として鋼を使用する場合、圧延温度は、900℃を大幅に超える温度である。本発明の意図における熱間圧延温度での変形加工とは、圧延材もしくは半製品が、単に最初のパスの上流側または最初の成形パスの上流側でのみ熱間圧延温度を有しているか、もしくは熱間圧延温度に加熱されたことを意味すると理解することができる。別の成形パスは、対応して低い圧延温度で実施することができる。
【0010】
任意には、個別の圧延ステップもしくは圧延パスの前および/または後に、圧延材の加熱が、たとえば誘導炉等の形態の加熱装置を使用することにより行われることが規定されていてよい。
【0011】
好適には、第1の成形パスの通過時もしくは第1の圧延スタンドにおける温度は、950℃~1300℃である。
【0012】
半製品として、たとえば、矩形の横断面および500mm~1200mm×150mm~450mmの寸法を有するスラブ、400mm~700mm×150mm~450mmの寸法を有するいわゆるブルームまたはいわゆるビームブランク(予備成形材)が考えられる。ビームブランクは、たとえば、400mm~750mmの幅、400mm~500mmの高さを有していてよい。
【0013】
半製品の入側横断面が、矩形の横断面を有しており、この横断面の材料分布が、圧延プロセスの最初のパスにより製造すべき材料分布にほぼ一致していると有利である。
【0014】
本発明による熱間圧延プロセスは、多種多様なスタンド構成および圧延方法で実施することができる。たとえば、(デュオ圧延スタンドを使用しながらの)純粋なデュオモードでの圧延時には、7~13個の成形カリバを使用しながら半製品の入側横断面を出側横断面に変形加工することが規定されていてよい。
【0015】
本発明による方法の1つのバリエーションによれば、圧延プロセスを、少なくとも2基、好適には相並んで配置された3~8基の圧延スタンドの開放型配置で実施する。このような開放型圧延機列は、たとえば、独国特許発明第3902889号明細書に記載されている。
【0016】
代替的には、圧延プロセスを、相前後して配置された4~8基の圧延スタンドを使用しながら実施する。
【0017】
圧延工程を、粗圧延スタンドおよびタンデム配置の仕上圧延スタンドを使用しながら、少なくとも部分的に逆転して実施することができる。タンデム配置とは、概して、一緒に動作する複数の圧延スタンドであると理解することができ、これらの圧延スタンドを圧延材が1回または複数回通過する。この配列では、仕上圧延スタンドが逆転運転されることが規定されていてよい。
【0018】
代替的には、圧延プロセスを、粗圧延スタンド、逆転運転されるタンデム配置の仕上圧延スタンドおよび連続運転される仕上圧延スタンドを含む、相前後して配置された4~10基の圧延スタンドを使用しながら実施することができる。
【0019】
この方法の別のバリエーションでは、圧延プロセスを、逆転運転されるタンデム配置の粗圧延スタンドおよび/または圧延スタンドおよび連続運転される仕上スタンドを使用しながら、7~18基の圧延スタンドを使用しながら実施することができる。
【0020】
最終的には、圧延プロセスを、たとえば連続圧延機列において、相前後して配置された7~20基の圧延スタンドを使用しながら完全に連続的に実施することができる。
【0021】
基本的に、圧延プロセスは、デュオ圧延スタンドおよび/またはユニバーサル圧延スタンドを使用しながら実施することができる。ユニバーサル圧延スタンドとは、スタンド毎に4本のロールを備えており、これらのロールのうちの2本のロールが水平方向に、2本のロールが鉛直方向に配置されているロールスタンドであると理解される。
【0022】
好適には、本発明による方法において、圧延材の幾何学的な測定が、各圧延ステーションもしくは各成形パスの前および/または後に行われる。このような測定は、レーザによって行うことができ、かつ個別の圧延スタンドのロールの液圧調整と協働することができる。
【0023】
最後の圧延パスまたは成形パスの下流側で、好適にはシミュレーションモデルおよび/または組織検出器を使用しながら組織調節するために、形成されたハット形材または圧延材の冷却処理が予定されていてよい。組織検出は、レーザまたは超音波により行うことができる。
【0024】
方法の好適なバリエーションでは、圧延工程の最後の成形パスの後に、ハット形断面のフランジの傾斜が、ハット形断面の対称軸線に対する垂線に対して0.1~15度であることが規定されている。
【0025】
有利には、圧延プロセスに、好適には矯正機または曲げ装置による曲げプロセスが後置されている。曲げプロセスでは、成形材が最終形状に移行され、この最終形状では、ハット形断面の脚部およびウェブが実質的に互いに対して直角に配置されている。
【0026】
曲げ工程は、熱間圧延機列の最後の圧延スタンドの後の曲げ装置により、または付加的なユニバーサル圧延スタンドにより実施することができる。
【0027】
圧延プロセスは、「バッチモードまたはセミエンドレスモード(ホットチャージ)」で運転することができる。
【0028】
本発明を以下に図面に示された変形加工工程に関連して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【0030】
熱間圧延すべき半製品の入側横断面が参照符号10で示されている。この入側横断面10は矩形であり、最初の成形パスの材料分布にほぼ一致する材料分布を有している。変形加工すべき半製品として、たとえば、400mm~700mm×150~450mmの矩形の寸法を有するブロック11(ブルーム)が規定されており、このブロック11が、連続する10回の成形パスにより変形加工されて、参照符号Aで示されるハット形断面となる。ハット形断面を製造するためのキャリブレーションの連続する成形パスが、参照符号1~10で示されている。参照符号H~Aにより、逐次形成される断面が示されている。このためには、説明する実施例では、10個の成形カリバが必要であり、これらの成形カリバは、たとえば、相前後して配置された10基のデュオ圧延スタンドで実施することができる。成形パス10の後の完成したハット形断面Aにおいて容易に分かるように、ハット形断面は厳密に直角の幾何学的形状から、まだ僅かな角度偏差を有している。完成したハット形断面Aは、たとえば中梁のハット形断面である。最後の成形パス10後の角度偏差は、本発明による方法では、たとえば矯正機、または最後の成形パスの下流側の付加的なユニバーサル圧延スタンドによる曲げ工程によって除去される。ハット形断面Aのフランジ12の、水平線に対する傾斜は、図示された実施例では、約0.1度~15度である。
【0031】
代替的には、変形加工工程のための原材料として、もしくは変形加工すべき半製品として、同様に図面に図示した500mm~1200mm×150mm~450mmの矩形の寸法のスラブ13または400mm~750mm×400mm~500mmの寸法の予備成形材14が考えられる。
【符号の説明】
【0032】
1~10 成形パス
H~A 断面
11 入側横断面
12 ブロック(ブルーム)
13 スラブ
14 予備成形材(ビームブランク)