(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】電気化学素子用の分離膜及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/451 20210101AFI20240422BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20240422BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20240422BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20240422BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20240422BHJP
【FI】
H01M50/451
H01M50/443 M
H01M50/434
H01M50/414
H01M50/42
(21)【出願番号】P 2022557180
(86)(22)【出願日】2021-04-06
(86)【国際出願番号】 KR2021004306
(87)【国際公開番号】W WO2021206431
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】10-2020-0041791
(32)【優先日】2020-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】515351884
【氏名又は名称】ユニスト(ウルサン ナショナル インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー)
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジ-ウン・キム
(72)【発明者】
【氏名】サン-ヨン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ソ-ミ・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ジ-ヨン・ソ
(72)【発明者】
【氏名】ヨン-ヒョク・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジェ-アン・イ
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/055882(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/067778(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0034470(KR,A)
【文献】国際公開第2012/050152(WO,A1)
【文献】特表2008-524824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40-50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性分離膜基材及び前記基材の表面に形成された多孔性コーティング層を含む電気化学素子用の分離膜であって、
前記多孔性コーティング層が、無機物粒子とバインダー樹脂を、重量比を基準にして50:50~99:1の割合で含み、
前記バインダー樹脂は、第1バインダー樹脂及び第2バインダー樹脂を含み、
前記第1バインダー樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が30~60℃であり、極性基を有するエチレン系高分子樹脂であり、
第2バインダー樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が80~120℃であるアクリル系バインダー樹脂であ
り、
前記第1バインダー樹脂は、前記バインダー樹脂100wt%に対して50~90wt%の含量で含まれ、前記第2バインダー樹脂は、前記バインダー樹脂100wt%に対して10~50wt%の含量で含まれ、
前記第1バインダー樹脂は、分子量(Mw)が10万~50万の範囲を有する、電気化学素子用の分離膜。
【請求項2】
前記バインダー樹脂は、第3バインダー樹脂をさらに含み、前記第3バインダー樹脂は、分子量(Mw)が50万以下であり、主鎖にシアノ基が結合したビニル系高分子である、請求項1に記載の電気化学素子用の分離膜。
【請求項3】
前記第3バインダー樹脂は、前記バインダー樹脂100wt%に対して6wt%以下の含量で含まれる、請求項2に記載の電気化学素子用の分離膜。
【請求項4】
前記第1
バインダー樹脂は
、下記の化学式1で表されるポリビニルアセテート(PVAc)を含み、下記の化学式1において、nは1以上の整数である、請求項1から
3のいずれか一項に記載の電気化学素子用の分離膜。
【化1】
【請求項5】
前記第2
バインダー樹脂は、下記化学式2で表されるポリメチルメタクリレート(PMMA)を含み、下記の化学式2において、xは1以上の整数である、請求項1から
4のいずれか一項に記載の電気化学素子用の分離膜。
【化2】
【請求項6】
前記第3バインダー樹脂が、ポリアクリロニトリル(PAN)を含む、請求項2に記載の電気化学素子用の分離膜。
【請求項7】
多孔性分離膜基材及び前記基材の表面に形成された多孔性コーティング層を含む電気化学素子用の分離膜であって、
前記多孔性コーティング層は、無機物粒子とバインダー樹脂を重量比を基準にして50:50~99:1の割合で含み、
前記バインダー樹脂は、第1、第2及び第3バインダー樹脂を含み、
前記第1バインダー樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が30~60℃であり、ポリビニルアセテート(PVAc)を含み、
前記第2バインダー樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が80~120℃であり、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を含み、
前記第3バインダー樹脂は、ポリアクリロニトリル(PAN)を含
み、
前記第1バインダー樹脂は、前記バインダー樹脂100wt%に対して50~90wt%の含量で含まれ、前記第2バインダー樹脂は、前記バインダー樹脂100wt%に対して10~50wt%の含量で含まれ、
前記第1バインダー樹脂は、分子量(Mw)が10万~50万の範囲を有する、電気化学素子用の分離膜。
【請求項8】
正極、負極及び前記正極と負極との間に介在された分離膜を含み、前記分離膜は、請求項1から
6のいずれか一項に記載のものである、電気化学素子。
【請求項9】
請求項
8に記載の電気化学素子を含む、リチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池などの電気化学素子に使用される分離膜及びその製造方法に関する。
【0002】
本出願は、2020年4月6日出願の韓国特許出願第10-2020-0041791号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
モバイル機器に関する技術開発及び需要が増加するにつれ、エネルギー源としての二次電池の需要が急増しつつあり、最近は、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)などのエネルギー源として二次電池が適用されている。それにつれ、多様な要求に応え得る二次電池に対して研究が盛んであり、特に、高いエネルギー密度、高い放電電圧及び出力安定性のリチウム二次電池に対する需要が高い。特に、電気自動車及びハイブリッド電気自動車のエネルギー源として使用されるリチウム二次電池には、短時間に大きい出力を発揮する高出力特性が求められる。電気化学素子の分離膜として通常使用されるポリオレフィン系微多孔膜は、材料的特性と延伸を含む製造工程上の特性によって100℃以上の温度で激しい熱収縮挙動を示すことで、正極と負極との短絡を起こす問題点がある。このような問題点を補うために、最近は、ポリオレフィン系微多孔性膜のように複数の気孔膜を有する分離膜基材の少なくとも一面に、無機物粒子とバインダー高分子を含む混合物からなる多孔性コーティング層を形成した分離膜が適用されている。通常、前記多孔性コーティング層に使用されるバインダー高分子は、重合単位でビニリデンを含むPVdF系バインダー樹脂が使用される。しかし、PVdF系バインダー樹脂を使用する場合、高接着の特性を具現するのに限界がある。そこで、分離膜の多孔性コーティング層のバインダー樹脂として適切なバインダー樹脂組成物の開発が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、電極との接着力が向上し、収縮率が低い電気化学素子用の分離膜及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
また、本発明は、前記分離膜に使用されるバインダー樹脂組成物を提供することを他の目的とする。
【0006】
なお、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に記載される手段及びその組合せによって実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1面によると、電気化学素子用の分離膜に関し、前記分離膜は、多孔性分離膜基材及び前記基材の表面に形成された多孔性コーティング層を含み、
前記多孔性コーティング層は、無機物粒子とバインダー樹脂を、重量比を基準にして約50:50~99:1の割合で含み、
前記バインダー樹脂は、第1バインダー樹脂及び第2バインダー樹脂を含み、
前記第1バインダー樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が30~60℃であり、極性基を有するエチレン系高分子樹脂であり、
第2バインダー樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が80~120℃であるアクリル系バインダー樹脂である。
【0008】
本発明の第2面によると、前記第1面において、前記バインダー樹脂は、第3バインダー樹脂をさらに含み、前記第3バインダー樹脂は、分子量(Mw)が50万以下であり、主鎖にシアノ基が結合したビニル系高分子である。
【0009】
本発明の第3面によると、前記第1面または第2面において、前記第1バインダー樹脂は、前記バインダー樹脂100wt%に対して50~90wt%の含量で含まれ、前記第2バインダー樹脂は、前記バインダー樹脂100wt%に対して10~50wt%の含量で含まれる。
【0010】
本発明の第4面によると、前記第2面及び第3面のいずれか一面において、前記第3バインダー樹脂は、前記バインダー樹脂100wt%に対して6wt%以下の含量で含まれる。
【0011】
本発明の第5面によると、前記第1から第4面のいずれか一面において、前記第1高分子樹脂は、分子量(Mw)が10万~50万であり、下記の化学式1で表されるポリビニルアセテート(PVAc)を含み、
【化1】
上記の化学式1において、nは1以上の整数である。
【0012】
本発明の第6面によると、第1面から第5面のいずれか一面において、前記第2高分子樹脂は、下記化学式2で表されるポリメチルメタクリレート(Polymethylmethacrylate,PMMA)を含み、
【化2】
上記の化学式2において、xは1以上の整数である。
【0013】
本発明の第7面によると、第2から第6面のいずれか一面において、前記第3バインダー樹脂は、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile,PAN)を含む。
【0014】
また、本発明の第8面によると、本発明の分離膜の具体的な一実施様態として、多孔性分離膜基材及び前記基材の表面に形成された多孔性コーティング層を含む電気化学素子用の分離膜を提案する。前記分離膜において、前記多孔性コーティング層は、無機物粒子とバインダー樹脂を重量比を基準にして約50:50~99:1の割合で含み、
前記バインダー樹脂は、第1、第2及び第3バインダー樹脂を含み、
前記第1バインダー樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が30~60℃であり、ポリビニルアセテート(PVAc)を含み、
前記第2バインダー樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が80~120℃であり、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を含み、
前記第3バインダー樹脂は、ポリアクリロニトリル(PAN)を含む。
【0015】
なお、本発明の第9面は、電気化学素子に関し、前記電気化学素子は、正極、負極及び前記正極と負極との間に介在された分離膜を含み、前記分離膜は、前記第1面から第8面のいずれか一面によるものである。
【0016】
また、本発明の第10面は、リチウムイオン二次電池に関し、前記第9面による電気化学素子を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によるバインダー樹脂組成物を用いて製造された分離膜は、分離膜の表面に別の接着層を配置しなくても電極と分離膜との接着力が高い。また、従来に通常使用されていたポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系バインダー樹脂が適用された分離膜よりも電極と分離膜との接着力が高い。したがって、前記分離膜を電池に適用する場合、温度と圧力が緩和した条件で電極組立体の製造が可能であり、組立生産性が向上し、不良率が減少することで、歩留まりが増大する効果を奏する。また、本発明による分離膜は、別に接着層が形成されないため、分離膜と電極との界面抵抗が低く、フッ素系バインダー樹脂などの半結晶性高分子と比較して電解液に対する親和性が高いため、電池の出力特性が向上する。
【0018】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施例を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。なお、本明細書に添付の図面における要素の形状、大きさ、縮尺または比率などは、より明確な説明を強調するために誇張され得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施例及び比較例による分離膜の接着力を評価したグラフである。
【
図2】本発明の比較例2で製造された分離膜の試片に対する剥離強度を測定したグラフである。
【
図3】本発明の実施例1及び実施例2の分離膜の収縮率を評価して示した図である。
【
図4a】実施例2の分離膜表面のSEMイメージである。
【
図4b】実施例3の分離膜表面のSEMイメージである。
【
図4c】実施例4の分離膜表面のSEMイメージである。
【
図4d】比較例4の分離膜表面のSEMイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。したがって、本明細書に記載された実施例及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0021】
なお、明細書の全体にかけて、ある部分が、ある構成要素を「含む(include(s)、comprise(s))」とするとき、これは特に反する記載がない限り、他の構成要素を除くことではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0022】
本明細書の全体にかけて使われる用語、「約」、「実質的に」などは、言及された意味に、固有の製造及び物質許容誤差が提示されるとき、その数値またはその数値に近接した意味として使われ、本願の理解を助けるために正確または絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に用いることを防止するために使用される。
【0023】
本明細書の全体において、「A及び/またはB」の記載は、「AまたはB、もしくはこれら全部」を意味する。
【0024】
本明細書の全体において、特に指示しない限り、温度単位は摂氏温度(℃)を使用し、含量または含量比は重量を基準とする。
【0025】
「上」、「下」、「左」及び「右」の単語は、参照される図面における方向を示し、制限的でない。
【0026】
以下の詳細な説明において使用された特定の用語は、便宜のためのものであって制限的なものではない。このような用語は、上記例示の単語、その派生語及び類似な意味の単語を含む。
【0027】
本発明は、分離膜の製造時に使用されるバインダー樹脂組成物に関する。また、本発明は、前記バインダー樹脂組成物を含む分離膜に関する。また、本発明は、前記分離膜の製造方法に関する。
【0028】
本発明において、前記電気化学素子は、電気化学的反応によって化学的エネルギーを電気的エネルギーに変換する装置であって、一次電池と二次電池(Secondary Battery)を含む概念であり、前記二次電池は、充電と放電が可能なものであって、リチウムイオン電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池などを包括する概念である。
【0029】
本発明において、分離膜は、前記電気化学素子において負極と正極との電気的接触を遮断しながらイオンを通過させるイオン伝導性バリアー(porous ion-conducting barrier)の役割を果たすものである。その内部には、複数の気孔が形成されており、前記気孔は相互に連結された構造となっており、分離膜の一面から他面へ気体または液体が通過可能であることが望ましい。
【0030】
本発明の一実施様態において、前記分離膜は、高分子材料を含む多孔性の分離膜基材及び前記基材の少なくとも一表面に形成された多孔性コーティング層を含み、前記多孔性コーティング層は、無機物粒子とバインダー樹脂を含む。前記多孔性コーティング層は、無機物粒子がバインダー樹脂を介して結着しており、前記無機物粒子の間に形成されたインタースティシャルボリューム(interstitial volume)に起因した気孔を含む多孔性構造を有し得る。
【0031】
前記多孔性コーティング層は、バインダー樹脂及び無機物粒子を含み、内部に複数の微細気孔を有し、これら微細気孔が相互に連結された構造となっており、一面から他面へ気体または液体が通過可能な多孔質層の構造的特徴を有する。本発明の一実施様態において、前記多孔性コーティング層中のバインダー樹脂と前記無機物粒子は、バインダー樹脂:無機物粒子が、重量比で50:50~1:99の割合で含まれる。前記の割合は、前記範囲内で適切に調節可能である。例えば、バインダー樹脂と無機物粒子との和100wt%に対して、バインダー樹脂が50wt%以下、40wt%以下、または30wt%以下であり得る。また、前記範囲内でバインダー樹脂が1wt%以上、5wt%以上または10wt%以上であり得る。本発明において、前記多孔性コーティング層は、イオン透過性という観点で多孔化された構造であることが望ましい。本発明の一実施様態において、前記バインダー樹脂の含量が1重量%に及ばない場合、分離膜と電極が接着されにくく、前記含量が多すぎる場合、気孔度が低下することがあり、電池内の抵抗が上昇して電池の電気化学的特性が減少し得る。
【0032】
本発明の一実施様態において、前記多孔性コーティング層は、無機物粒子が高分子樹脂を介して相互に結着して集積された状態を示し、無機物粒子の間のインタースティシャルボリュームによって気孔が形成され得る。本明細書において、前記インタースティシャルボリュームとは、無機物粒子の充填構造(closed packed or densely packed)において実質的に接触する無機物粒子によって限定される空間を意味する。
【0033】
本発明の一実施様態において、前記多孔性コーティング層の気孔度は40~70vol%であり、前記範囲内で気孔度は40vol%以上または45vol%以上であり、これと同時にまたは各々独立的に70vol%以下または65vol%以下であり得る。前記気孔度は、イオン伝導度を考慮したとき、即ち、イオンが通過可能な十分な経路の確保面で気孔度が40vol%以上に調節され得る。また、耐熱性及び接着性の確保面で気孔度が65vol%以下に調節され得る。このように電気化学的な特性を考慮して前記範囲内で多孔性コーティング層の気孔度を適切に調節し得る。
【0034】
一方、本発明において、前記多孔性コーティング層は、総厚さが1~10μm以下の範囲で適切に調節可能である。前記多孔性コーティング層の総厚さは、分離膜基材の表面に形成された全ての面の多孔性コーティング層の厚さを合算したものである。もし、分離膜基材の片面のみに多孔性コーティング層が形成された場合、一つの多孔性コーティング層の厚さは前記範囲を満たし得る。もし、分離膜基材の両面に共に多孔性コーティング層が形成された場合、各多孔性コーティング層の厚さを合算したものが前記範囲を満たし得る。前記多孔性コーティング層の厚さが1μmに及ばない場合、多孔性コーティング層に含まれる無機物粒子の量が少なくて耐熱性の改善効果が僅かである。一方、多孔性コーティング層が前記厚さよりも過度に厚く形成される場合には、分離膜が厚くなって薄型電池の製造及び電池のエネルギー密度を向上させにくい。
【0035】
一方、本発明の具体的な一実施様態において、前記多孔性コーティング層は、無機物粒子とバインダー樹脂を含む。本発明において、前記バインダー樹脂は、第1バインダー樹脂及び第2バインダー樹脂を含む。本発明において、前記バインダー樹脂は、第3バインダー樹脂をさらに含み得る。前記バインダー樹脂のうち第1バインダー樹脂は、約50~90wt%の量で含まれ得る。前記第1バインダー樹脂は、比較的低いガラス転移温度(Tg)を示すため、その含量が90wt%を超過する場合には部分的に高い接着力が得られるが、分離膜の全面にかけて均一な接着力を確保しにくい。また、製造された分離膜同士も接着力に偏差があり、均一な再現性を確保しにくい。一方、第1バインダー樹脂の含量が50wt%未満で含まれる場合には、含量が低下して高接着力の特性具現が難しい。
【0036】
一方、前記第2バインダー樹脂は、10~50wt%の量で含まれ得る。前記第2バインダー樹脂は、相対的に第1バインダー樹脂に比べてガラス転移温度が高い。これによって前記第2バインダー樹脂が前記範囲内に含有される場合、第1バインダー樹脂の、比較的低いTgによる不均一な接着性の問題を解消することができる。
【0037】
一方、前記第3バインダー樹脂は、バインダー樹脂100wt%に対して約6wt%以下、または約5wt%以下の含量で含まれ得る。前記第3バインダー樹脂の添加によって接着力改善の効果を高めることができるが、過度に投入される場合、粘度が高くなり、かえって相分離が低下し、その結果、所望の水準の接着力が確保されないことがある。これによって、適切な接着力の確保及び粘度上昇の防止のために、前記第3バインダー樹脂を前記範囲内に適切に制御することが望ましい。
【0038】
前記第1バインダー樹脂としては極性基を有するエチレン系高分子樹脂が使用され得る。本発明の一実施様態において、前記第1バインダー樹脂のガラス転移温度(Tg)は、30~60℃である。一方、前記第1バインダー樹脂は、分子量(Mw)が10万~50万の範囲を有し得る。本発明の一実施様態において、前記極性基を有するエチレン系高分子樹脂は、下記の化学式1で表されるポリビニルアセテート(PVAc)を含み得る。下記の化学式1において、nは1以上の整数である。
【0039】
【0040】
前記第2バインダー樹脂は、アクリル系バインダー樹脂を含み、前記アクリル系バインダー樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が80~120℃である。第2バインダー樹脂のガラス転移温度が後述する乾燥温度よりも低いと、多孔性コーティング層中のバインダー樹脂が局所的に集中して分布するなど、バインダー樹脂の分布が不均一になり得る。これに対し、ガラス転移温度が120℃を超過する場合には、後述する電極と分離膜のラミネーション工程時、印加される温度よりも高いため、所望の水準の接着力を確保しにくい。一方、前記第1バインダー樹脂は、分子量(Mw)が10万~50万の範囲を有し得る。本発明の一実施様態において、前記アクリル系バインダー樹脂は、アルキル基の炭素数が1~8のアクリル酸アルキルエステル及び/またはメタクリル酸アルキルエステルを単量体で含み得る。前記アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、及び2-エチルヘキシルアクリレートから選択された少なくとも一種が含まれ得る。また、メタクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、及び2-エチルヘキシルメタクリレートから選択された少なくとも一種が含まれ得る。本発明の一実施様態において、前記第2バインダー樹脂としてポリメチルメタクリレート(Polymethylmethacrylate,PMMA)が使用され得る。前記PMMAは、下記の化学式2で表され得る。下記の化学式2において、xは1以上の整数である。
【0041】
【0042】
前記第3バインダー樹脂は、主鎖にシアノ基が結合したビニル系高分子であり、分子量(Mw)が50万以下のものである。前記第3バインダー樹脂は、DMFやNMPなどを溶媒として用い、これらの溶解性を考慮して50万以下の低い分子量の範囲を有することが望ましい。本発明の具体的な一実施様態において、前記第3バインダー樹脂としては、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile,PAN)を使用することができ、PANは、下記の化学式3で表され得る。下記の化学式3において、nは1以上の整数である。
【0043】
【0044】
本発明において、前記分子量(Mw)は重量平均分子量を意味する。本発明の一実施様態において、前記分子量(Mw)は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定され得る。例えば、分子量測定対象の高分子樹脂200mgを200mlのテトラヒドロフラン(THF)などの溶媒に希釈して約1,000ppmのサンプルを製造し、Agilent 1200 seriesのGPC機器を使用して1ml/分の流量でRI detectorによって測定し得る。
【0045】
また、前記第1乃至第3バインダー樹脂の外に、必要な場合、追加的に、単量体としてビニリデンを含むフッ素系バインダー樹脂、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide)、ポリアリレート(polyarylate)、シアノエチルプルラン(cyanoethylpullulan)、シアノエチルポリビニルアルコール(cyanoethylpolyvinylalcohol)、シアノエチルセルロース(cyanoethylcellulose)、シアノエチルスクロース(cyanoethylsucrose)、プルラン(pullulan)からなる群より選択された一つ以上の第4バインダー樹脂をさらに含み得る。前記第4バインダー樹脂は、バインダー樹脂の全体100wt%に対して10wt%以下、または5wt%以下、または1wt%以下で含まれ得る。
【0046】
本発明の具体的な一実施様態において、前記無機物粒子は、電気化学的に安定さえすれば特に制限されない。即ち、本発明で使用可能な無機物粒子は、適用される電気化学素子の作動電圧範囲(例えば、Li/Li+基準で0~5V)で酸化及び/または還元反応が起こらないものであれば、特に制限されない。特に、無機物粒子として誘電率の高い無機物粒子を用いる場合、液体電解質内の電解質塩、例えば、リチウム塩の解離度の増加に寄与して電解液のイオン伝導度を向上させることができる。
【0047】
前述した理由から、前記無機物粒子は、誘電率定数が5以上、望ましくは10以上の高誘電率無機物粒子を含むことが望ましい。誘電率定数が5以上の無機物粒子の非制限的な例には、BaTiO3、Pb(Zr,Ti)O3(PZT)、Pb1-xLaxZr1-yTiyO3(PLZT,0<x<1,0<y<1)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3-PbTiO3(PMN-PT)、ハフニア(HfO2)、SrTiO3、SnO2、CeO2、MgO、Mg(OH)2、NiO、CaO、ZnO、ZrO2、SiO2、Y2O3、Al2O3、SiC、Al(OH)3、AlOOH及びTiO2などが挙げられ、これらのうち一種以上を含み得る。
【0048】
また、無機物粒子としては、リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子、即ち、リチウム元素を含むが、リチウムを保存せずリチウムイオンを移動させる機能を有する無機物粒子を用い得る。リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子の非制限的な例には、リチウムホスフェート(Li3PO4)、リチウムチタンホスフェート(LixTiy(PO4)3、0<x<2、0<y<3)、リチウムアルミニウムチタンホスフェート(LixAlyTiz(PO4)3,0<x<2、0<y<1、0<z<3)、14Li2O-9Al2O3-38TiO2-39P2O5などのような(LiAlTiP)xOy系ガラス(0<x<4、0<y<13)、リチウムランタンチタネート(LixLayTiO3、0<x<2、0<y<3)、Li3.25Ge0.25P0.75S4などのようなリチウムゲルマニウムチオホスフェート(LixGeyPzSw、0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、Li3Nなどのようなリチウムニトライド(LixNy、0<x<4、0<y<2)、Li3PO4-Li2S-SiS2などのようなSiS2系ガラス(LixSiySz、0<x<3、0<y<2、0<z<4)、LiI-Li2S-P2S5などのようなP2S5系ガラス(LixPySz、0<x<3、0<y<3、0<z<7)またはこれらの混合物などが挙げられる。
【0049】
また、無機物粒子の平均直径(D50)は、10nm~5μmの範囲を有し得る。前記粒子の平均直径(D50)が10nm未満の場合には、無機物粒子の表面積が大きすぎて多孔性コーティング層形成用のスラリーの製造時、前記スラリー中の無機物粒子の分散性が低下し得る。一方、無機物粒子の粒径が大きくなるほど分離膜の機械的特性が低下し得るため、5μmを超過しないことが望ましい。
【0050】
本発明の一実施様態において、前記無機物粒子の粒径(D50)は、本技術分野で使用される通常の粒度分布測定装置によって分級後の粒度分布を測定し、その測定結果に基づいて算出される小さい粒径側からの積算値50%の粒度を意味する。このような粒度分布は、粒子に光が当たることで発生する回折や散乱の強度パターンから測定でき、このような粒度分布測定装置としては、例えば、日機装株式会社製、マイクロトラック9220FRAやマイクロトラックHRAなどを使用し得る。
【0051】
前述したように、本発明による分離膜は、高分子材料を含む多孔性分離膜基材を含む。前記分離膜基材は、高分子樹脂を含む多孔膜であり、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどポリオレフィン素材の多孔性高分子フィルムであり得る。前記分離膜基材は、電池温度が上昇する場合、少なくとも部分的に溶融して気孔を閉塞してシャットダウンを誘導し得る。本発明の具体的な一実施様態において、前記分離膜基材の気孔度は、40~70vol%の範囲を有し得る。一方、前記分離膜基材の気孔は、気孔の最長径を基準にして約10~70nmの直径範囲を有し得る。本発明において、前記分離膜基材は、電気化学素子の薄膜化及び高エネルギー密度化の面で、その厚さが5~14μmの範囲を有し得る。
【0052】
本明細書において、用語「気孔度(porosity)」は、ある構造体において全体体積に対して気孔が占める体積の割合を意味し、その単位として%を使い、空隙率、多孔度などの用語と相互交換的に使用し得る。本発明において、前記気孔度の測定は特に限定されず、本発明の一実施例によって、例えば、窒素気体を用いたBET(Brunauer-Emmett- Teller)測定法または水銀浸透法(Hg porosimeter)及びASTM D-2873によって測定できる。または、分離膜の密度(見掛け密度)、分離膜に含まれた材料の組成比及び各成分の密度から分離膜の真密度を計算し、見掛密度(apparent density)と真密度(true density)との差から分離膜の気孔度を計算することができる。
【0053】
なお、本発明の一実施様態において、気孔の大きさ、気孔分布及び気孔の平均直径(nm)は、キャピラリーフローポロメーター(Capillary flow porometer)を用いて測定し得る。これは、表面張力を知っている液体を用いて分離膜の気孔を濡らした後(wetting)、ここに空気圧を加えて最初の流量が発生する圧力(bubble point=max pore)を測定する方式による。このようなキャピラリーフローポロメーターの具体的な例には、Porous Materials社のCFP-1500-AEなどがある。
【0054】
一方、発明の具体的な一実施様態において、前記分離膜基材は、耐久性の向上などのために、必要な場合、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルファイド、ポリエチレンナフタレンのような高分子樹脂の少なくともいずれか一つをさらに含み得る。
【0055】
本発明の具体的な一実施様態において、前記分離膜基材は、後述する方式で製造された多孔性高分子フィルムであってもよく、一枚の単層フィルムや二枚以上が積層されて形成された多層フィルムであってもよい。二枚以上が積層される場合には、材料の面で、各層が前述した特徴を有することが望ましい。
【0056】
前記分離膜は、前記構造を有する製造方法であれば、製造方法は特に限定されない。例えば、適切な溶媒に前記バインダー樹脂組成物と無機物粒子を投入して多孔性コーティング層形成用のスラリーを準備し、これを高分子基材の少なくとも一表面に塗布して乾燥する方式で得られうる。本発明の一実施様態において、前記乾燥は、相対湿度約40~80%の条件下で所定時間静置し、バインダー樹脂を固化する方法で行われ得る。この際、バインダー樹脂の相分離が誘導される。このように相分離過程で溶媒が無機コーティング層の表面部へ移動し、溶媒の移動につれてバインダー樹脂が無機コーティング層の表面部へ移動しながら多孔性コーティング層の表面部のバインダー樹脂の含有量が高くなる。一方、多孔性コーティング層の表面部の下部は、無機物粒子間のインタースティシャルボリュームから起因した気孔が形成されながら、多孔性コーティング層が多孔性特性を有するようになる。本発明の一実施様態において、前記溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどの極性アミド溶媒などが挙げられ、これらより選択されたいずれか一つまたは二つ以上の混合物を含み得る。
【0057】
一方、第3高分子樹脂は、アセトンなどの前述した溶媒に対する溶解度が相対的に低い。これに対し、本発明の一実施様態において、無機物粒子と前記第1及び第2バインダー樹脂を含む第1スラリーと、第3バインダー樹脂を含む高分子溶液と、を各々別に準備した後、この二つを混合して多孔性コーティング層形成用のスラリーを準備し得る。この際、前記高分子溶液において、溶媒としてジメチルホルムアミド(dimethyl formamide;DMF)、N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone;NMP)、ジメチルアセトアミド(dimethylacetamide;DMAC)、テトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran;THF)、メチルイソブチルケトン(methyl isobutyl ketonel;MIBK)、メチルエチルケトン(methyl ethyl ketone;MEK)などが使用でき、前記溶媒は、これらより選択された一種以上を含み得る。
【0058】
前記多孔性コーティング層形成用のスラリーの塗布は、メイヤーバーコーター、ダイコーター、リバースロールコーター、グラビアコーターなどの従来の塗工方式を適用し得る。前記多孔性コーティング層を分離膜基材の両面に形成する場合、塗工液を片面ずつ塗工してから加湿相分離及び乾燥することも可能であるが、塗工液を分離膜基材の両面に同時に塗工してから加湿相分離及び乾燥することが、生産性の面で望ましい。
【0059】
本発明の実施様態において、前記二次電池は、負極、正極及び前記負極と正極との間に介在される分離膜を含む電極組立体と、電解液と、を含む。前記電極組立体が適切な電池外装材に収納され、ここに電解液が注液されて電池が製造され得る。
【0060】
本発明において、正極は、正極集電体及び前記集電体の少なくとも一表面に、正極活物質、導電材及び電極バインダー樹脂を含む正極活物質層を備える。前記正極活物質は、リチウムマンガン複合酸化物(LiMn2O4、LiMnO2など)、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)などの層状化合物や、一つまたはそれ以上の遷移金属で置き換えられた化合物;化学式Li1+xMn2-xO4(ここで、xは0~0.33である。)、LiMnO3、LiMn2O3、LiMnO2などリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(Li2CuO2);LiV3O8、LiV3O4、V2O5、Cu2V2O7などのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-xMxO2(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGaであり、x=0.01~0.3である。)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2-xMxO2(ここで、M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTaであり、x=0.01~0.1である。)またはLi2Mn3MO8(ここで、M=Fe、Co、Ni、CuまたはZnである。)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土類金属イオンで置き換えられたLiMn2O4;ジスルフィド化合物;Fe2(MoO4)3のうち一種または二種以上の混合物を含み得る。
【0061】
本発明において、前記負極は、負極集電体及び前記集電体の少なくとも一表面に、負極活物質、導電材及びバインダー樹脂を含む負極活物質層を備える。前記負極は、負極活物質として、リチウム金属酸化物、難黒鉛化炭素、黒鉛系炭素などの炭素;LixFe2O3(0≦x≦1)、LixWO2(0≦x≦1)、SnxMe1-xMe’yOz(Me:Mn,Fe,Pb,Ge;Me’:Al,B,P,Si,周期表の1族,2族,3族元素,ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;スズ系合金;SnO,SnO2,PbO,PbO2,Pb2O3,Pb3O4,Sb2O3,Sb2O4,Sb2O5,GeO,GeO2,Bi2O3,Bi2O4及びBi2O5などの金属酸化物;ポリアセチレンなどの導電性高分子;Li-Co-Ni系材料;チタン酸化物より選択された一種または二種以上の混合物を含み得る。
【0062】
本発明の具体的な一実施様態において、前記導電材は、例えば、黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維または金属繊維、金属粉末、導電性ウイスカー、導電性金属酸化物、活性炭(activated carbon)及びポリフェニレン誘導体からなる群より選択されたいずれか一種またはこれらの二種以上の混合物であり得る。より具体的には、天然黒鉛、人造黒鉛、スーパーp(super-p)、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、デンカ(denka)ブラック、アルミニウム粉末、ニッケル粉末、酸化亜鉛、チタン酸カリウム及び酸化チタンからなる群より選択された一種またはこれらの二種以上の混合物であり得る。
【0063】
前記集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せず、かつ高い導電性を有するものであれば、特に制限されない。例えば、ステンレススチール、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面に、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどを用いることができる。
【0064】
前記電極バインダー樹脂としては、当業界で電極に通常使用する高分子を使うことができる。このようなバインダー樹脂の非制限的な例には、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン(PVdF-HFP,polyvinylidene fluoride-co-hexafluoropropylene)、ポリビニリデンフルオライド-トリクロロエチレン(polyvinylidene fluoride-trichloroethylene)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリエチルヘキシルアクリレート(polyetylhexyl acrylate)、ポリブチルアクリレート(polybutylacrylate)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ポリビニルアセテート(polyvinylacetate)、エチレンビニルアセテート共重合体(polyethylene-co-vinyl acetate)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide)、ポリアリレート(polyarylate)、セルロースアセテート(cellulose acetate)、セルロースアセテートブチレート(cellulose acetate butyrate)、セルロースアセテートプロピオネート(celluloseacetate propionate)、シアノエチルプルラン(cyanoethylpullulan)、シアノエチルポリビニルアルコール(cyanoethylpolyvinylalcohol)、シアノエチルセルロース(cyanoethylcellulose)、シアノエチルスクロース(cyanoethylsucrose)、プルラン(pullulan)、カルボキシルメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
本発明において、前記電解液は、A+B-のような構造の塩であって、A+は、Li+、Na+、K+のようなアルカリ金属陽イオンまたはこれらの組合せからなるイオンを含み、B-は、PF6
-、BF4
-、Cl-、Br-、I-、ClO4
-、AsF6
-、CH3CO2
-、CF3SO3
-、N(CF3SO2)2
-、C(CF2SO2)3
-のような陰イオンまたはこれらの組合せからなるイオンを含む塩が、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ガンマブチロラクトン(γ-ブチロラクトン)またはこれらの混合物からなる有機溶媒に溶解または解離したものがあるが、これに限定されることではない。
【0066】
また、本発明は、前記電極組立体を含む電池を単位電池として含む電池モジュール、前記電池モジュールを含む電池パック、及び前記電池パックを電源として含むデバイスを提供する。前記デバイスの具体的な例には、電気モーターによって動力を受けて動くパワーツール(power tool);電気自動車(Electric Vehicle,EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle,HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle,PHEV)などを含む電気自動車;電気自転車(E-bike)、電気スクーター(E-scooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(electric golf cart);電力貯蔵用システムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形されることができ、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0068】
[実施例]
(1)分離膜の製造
実施例1
Al2O3(D50:500nm)、PVAc(Mw:15万、Tg:40℃)、PMMA(Mw:13万、Tg:116℃)及び分散剤(タンニン酸)をアセトンに投入して第1スラリーを準備した。一方、PAN(Mw:15万、Tg:85℃、Tm:320℃)をDMFに溶解して高分子溶液を準備した。次に、前記第1スラリーと前記高分子溶液を混合して多孔性コーティング層形成用のスラリー(第2スラリー)を準備した。前記第2スラリー濃度は18wt%であり、前記第2スラリー中のAl2O3、PVAc、PMMA、PAN及び分散剤(タンニン酸)の含量は、80:16:2:1:1の割合(wt%)にした。前記スラリー分離膜(ポリエチレン、気孔度45%、厚さ16μm、通気度、100sec/100cc)の上に、分離膜の面積に対して13.5g/m2のロード量で塗布した後、乾燥した。前記乾燥は、温度23℃、相対湿度45%の加湿条件下で行われた。その後、これを60mm(長さ)×25mm(幅)で切断して分離膜を得た。なお、得られた分離膜の厚さは25μmであった。
【0069】
実施例2
PANは使用せず、Al
2O
3、PVAc、PMMA及び分散剤(タンニン酸)をwt%で80:17:2:1の割合でアセトンに投入して多孔性コーティング層形成用のスラリーを得たことを除いては、実施例1と同様の方法で分離膜を得た。なお、得られた分離膜の表面のSEMイメージを
図4aに示した。
【0070】
実施例3
PANは使用せず、Al
2O
3、PVAc、PMMA及び分散剤(タンニン酸)をwt%で80:15:4:1の割合でアセトンに投入して多孔性コーティング層形成用のスラリーを得たことを除いては、実施例1と同様の方法で分離膜を得た。なお、得られた分離膜の表面のSEMイメージを
図4bに示した。
【0071】
実施例4
PANは使用せず、Al
2O
3、PVAc、PMMA及び分散剤(タンニン酸)をwt%で80:9.5:9.5:1の割合でアセトンに投入して多孔性コーティング層形成用のスラリーを得たことを除いては、実施例1と同様の方法で分離膜を得た。なお、得られた分離膜の表面のSEMイメージを
図4cに示した。
【0072】
比較例1
Al2O3、PVdF-HFP(Mw:40万、Tm:145℃)、PVDF-CTFE(Mw:40万、Tm:160℃)及び分散剤(タンニン酸)をwt%を基準にして80:10:9:1の割合でアセトンに投入して多孔性コーティング層形成用のスラリーを得た。前記スラリー分離膜(ポリエチレン、気孔度45%、厚さ16μm)の上に、分離膜の面積に対して13.5g/m2のロード量で塗布した後、乾燥した。前記乾燥は、温度23℃、相対湿度45%の加湿条件下で行われた。次に、これを60mm(長さ)×25mm(幅)で切断して分離膜を得た。得られた分離膜の厚さは25μmであった。
【0073】
比較例2
Al2O3、PVAc及び分散剤を80:19:1の割合(wt%)でアセトンに投入して多孔性コーティング層形成用のスラリーを得た。前記スラリー分離膜(ポリエチレン、気孔度45%、厚さ16μm)の上に、分離膜の面積に対して13.5g/m2のロード量で塗布した後、乾燥した。前記乾燥は、温度23℃、相対湿度45%の加湿条件下で行われた。その後、それを60mm(長さ)×25mm(幅)で切断して分離膜を得た。
【0074】
比較例3
Al2O3、PMMA及び分散剤を80:19:1の割合(wt%)でアセトンに投入して多孔性コーティング層形成用のスラリーを得た。前記スラリー分離膜(ポリエチレン、気孔度45%、厚さ16μm)の上に、分離膜の面積に対して13.5g/m2のローディング量で塗布した後、乾燥した。前記乾燥は、温度23℃、相対湿度45%の加湿条件下で行われた。次に、これを60mm(長さ)×25mm(幅)で切断して分離膜を得た。
【0075】
比較例4
Al
2O
3、PVAc、PMMA及び分散剤を80:6:13:1の割合(wt%)でアセトンに投入して多孔性コーティング層形成用のスラリーを得た。前記スラリー分離膜(ポリエチレン、気孔度45%、厚さ16μm)の上に、分離膜面積に対して3.5g/m
2のロード量で塗布した後、乾燥した。前記乾燥は、温度23℃、相対湿度45%の加湿条件下で行われた。次に、それを60mm(長さ)×25mm(幅)で切断して分離膜を得た。また、得られた分離膜の表面のSEMイメージを
図4dに示した。
【0076】
比較例5(PVAc分子量の範囲を外れた場合)
Al2O3(D50:500nm)、PVAc(Mw:80万、Tg:40℃)、PMMA(Mw:13万、Tg:116℃)及び分散剤(タンニン酸)をアセトンに投入して第1スラリー準備した。一方、PAN(Mw:15万、Tg:85℃、Tm:320℃)をDMFに溶解して高分子溶液を準備した。次に、前記第1スラリーと前記高分子溶液を混合して多孔性コーティング層形成用のスラリー(第2スラリー)を準備した。前記第2スラリーの濃度は18wt%であり、前記第2スラリー中のAl2O3、PVAc、PMMA、PAN及び分散剤(タンニン酸)の含量は、80:16:2:1:1の割合(wt%)にした。前記スラリー分離膜(ポリエチレン、気孔度45%、厚さ16μm、通気度100秒/100cc)の上に、分離膜の面積に対して13.5g/m2のロード量で塗布した後、乾燥した。前記乾燥は、温度23℃、相対湿度45%の加湿条件下で行われた。次に、これを60mm(長さ)×25mm(幅)で切断して分離膜を得た。得られた分離膜の厚さは25μmであった。
【0077】
(2)電極の製造
天然黒鉛、SBR及びCMC(重量比で90:9:1)を水に入れて負極スラリーを得た。前記負極スラリーを銅薄膜(厚さ10μm)の上に125mg/cm2のロード量で塗布した後、乾燥した。次に、それを90μmの厚さになるように圧延して50mm(長さ)×25mm(幅)で切断して負極を得た。
【0078】
(3)電極接着力の測定
前記各実施例または比較例から得た分離膜を60mm(長さ)×25mm(幅)で切断して準備した負極と分離膜を、プレスを用いて60℃、6.5MPaの条件でラミネートして試片を製作した。準備した試片を両面テープを用いてガラス板に付着して固定し、この際、負極がガラス板に対面するように配置した。試片の分離膜部分を25℃で300mm/分の速度で180゜の角度に剥離し、この際の強度を測定した。前記分離膜と負極との接着力については、下記の表1及び
図1にその結果を整理して示した。一方、比較例2で同様の製造方法によって得られた分離膜試片5個を準備し、25℃で300mm/分の速度で180゜の角度に剥離し、距離による剥離強度を測定した。その結果を下記の表2及び
図2に示した。
【0079】
(4)分離膜の収縮率の測定
各実施例及び比較例から得られた分離膜を130℃の温度条件下で0.5時間維持した後、分離膜の収縮率を測定した。収縮率は、分離膜に任意の二つの点を標示し、これら間の距離(標点距離)の増減率を下記の式1によって計算した。
図2は、実施例1及び2の分離膜の収縮率の測定前と後の様子を示す写真である。これによると、実施例1及び2の分離膜は、収縮率が1%以内であって、収縮率特性が非常に高いことが確認された。
【0080】
[式1]収縮率(%)={(B-A)/A}×100
【0081】
前記式1において、Aは、高温放置前の初期状態の標点距離であり、Bは、高温放置後の最終状態の標点距離である。
【0082】
下記の表1は、前記実験で得られた結果を整理して示した表である。
【0083】
【0084】
前記表1から分かるように、本発明の実施例1及び2の分離膜は、電気化学素子用の分離膜として使用可能な水準の通気度を確保した。また、実施例1及び2の分離膜は、比較例1~5の分離膜に比べて負極との接着力及び熱収縮率が共に向上したことが分かる。一方、
図3は、本発明の実施例1による分離膜の熱収縮率の評価前後の状態を示した写真であり、二回の実験とも収縮率0%を示した。
【0085】
【0086】
なお、前記表2から分かるように、比較例2で得られた同じ分離膜から得られた分離膜試片#1~#5は、各試片の距離別の接着力においても均一性が低かった。また、前記表2に示したように、各試片の平均力(Mean Force)を計算した結果からも一定の接着力の再現が難しいことを確認した。
【0087】
一方、実施例2~4及び比較例4の分離膜の表面のSEMイメージを各々、
図4a、
図4b、
図4c及び
図4dに示した。これを確認すると、PMMAの含量が増加するほどバインダー樹脂組成物の分離膜の表面側への相分離がよく起こらず、表面部のバインダー樹脂組成物の含量が低かった。このことから、PMMAなどの第2バインダー樹脂の含量が高すぎると、接着力低下の原因になることを確認した。