(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】等方性非水性電極用センシング素材
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20240422BHJP
A61B 5/27 20210101ALI20240422BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20240422BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20240422BHJP
C08L 33/04 20060101ALI20240422BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240422BHJP
C08K 7/06 20060101ALI20240422BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20240422BHJP
A61B 5/263 20210101ALI20240422BHJP
【FI】
C08L101/00
A61B5/27
C08K5/17
C08L75/04
C08L33/04
C08K3/04
C08K7/06
C08K3/08
A61B5/263
(21)【出願番号】P 2022558039
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(86)【国際出願番号】 US2021024083
(87)【国際公開番号】W WO2021195332
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-11-28
(32)【優先日】2020-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500364837
【氏名又は名称】フレクスコン カンパニー インク
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スコフ リチャード
(72)【発明者】
【氏名】バーナム ケネス
(72)【発明者】
【氏名】マリウッチ パトリス
(72)【発明者】
【氏名】フィッツジェラルド パメラ
(72)【発明者】
【氏名】ケイシー ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ペナス ジョン
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-062342(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0118773(US,A1)
【文献】米国特許第04750482(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0132537(US,A1)
【文献】特開2020-000853(JP,A)
【文献】特表平07-501738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 101/00
A61B 5/27
C08K 5/17
C08L 75/04
C08L 33/04
C08K 3/04
C08K 7/06
C08K 3/08
A61B 5/263
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水性等方導電性
の信号受容複合材であって、
極性素材が誘電性ポリマ素材内に実質的に分散された誘電性ポリマ素材であって、前記極性素材が前記信号受容複合材の外側の交番電気信号に反応して前記信号受容複合材内に電荷発生反応を提供する誘電性ポリマ素材と、前記誘電性ポリマ素材内にあり、前記信号受容複合材の全体にわたって実質的に延設された連続的導電素材であって、前記連続的導電素材は、前記電荷発生反応を受容して前記信号受容複合材の全体にわたって散布し、前記信号受容複合材は、上面及び下面を
含み、その両面が
前記極性素材が分散された前記誘電性ポリマ素材により実質被覆されて
いる、連続的導電素材と、を含む、非水性等方導電性の信号受容複合材。
【請求項2】
請求項1記載の複合材であって、前記誘電性ポリマ
素材及び前記極性素材が、高湿度への露出後でも実質的な相分離を呈さない複合材。
【請求項3】
請求項1及び2のうち何れかに記載の複合材であって、前記極性素材が、
前記極性素材を含む前記誘電性ポリマ素材に対して最高で45重量%の濃度を有し
、且つ
前記極性素材が、前記誘電性ポリマ
素材内で実質分散されている複合材。
【請求項4】
請求項1~3のうち何れかに記載の複合材であって、前記誘電性ポリマ
素材がPSAである複合材。
【請求項5】
請求項4記載の複合材であって、前記PSAがアクリル系ポリマをベースとしている複合材。
【請求項6】
請求項1~5のうち何れかに記載の複合材であって、前記誘電性ポリマ
素材が非粘着性ポリマである複合材。
【請求項7】
請求項6記載の複合材であって、前記非粘着性ポリマ
の素材が熱可塑性ウレタンである複合材。
【請求項8】
請求項1~7のうち何れかに記載の複合材であって、前記極性素材が、第四アンモニウム塩属に発するものである複合材。
【請求項9】
請求項1~8のうち何れかに記載の複合材であって、前記連続的導電素材が導電繊維不織物である複合材。
【請求項10】
請求項1~9のうち何れかに記載の複合材であって、前記連続的導電素材が、導電炭素繊維ヤーンで構成された織布である複合材。
【請求項11】
請求項1~10のうち何れかに記載の複合材であって、前記連続的導電素材に金属箔が含まれる複合材。
【請求項12】
請求項11記載の複合材であって、前記連続的導電層にアルミニウム箔が含まれる複合材。
【請求項13】
請求項1~12のうち何れかに記載の複合材であって、前記連続的導電素材が導電スクリーンである複合材。
【請求項14】
非ハイドロゲル等方導電性
の信号受容
複合材を
作製する方法であって、
極性素材が誘電性ポリマ素材内に実質的に分散された誘電性ポリマ素材であって、前記極性素材が前記信号受容複合材の外側の交番電気信号に反応して前記信号受容複合材内に電荷発生反応を提供する誘電性ポリマ素材を提供することと、前記誘電性ポリマ素材内にあり、前記信号受容複合材の全体にわたって実質的に延設された連続的導電素材であって、前記連続的導電素材は、前記電荷発生反応を受容して前記信号受容複合材の全体にわたって散布し、前記信号受容複合材はその両側が
前記誘電性ポリマ
素材及び
前記極性素材の混合物で以て実質被覆されている
、連続的導電素材を提供する
ことと、を含む方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法であって、前記連続的導電素材が前記誘電性ポリマ
素材及び前記極性素材
の混合物により実質被覆されるようその誘電性ポリマ
素材及び前記極性素材
の混合物を溶液塗料からその連続的導電素材上へと投ずる方法であり、前記極性素材が前記誘電
性ポリマ素材内で実質分散されている方法。
【請求項16】
請求項14及び15のうち何れかに記載の方法であって、前記誘電性ポリマ
素材及び前記極性素材
の混合物を感圧接着剤とし、それにより剥離性支持材上を覆い更に乾燥させ、その上で前記連続的導電素材の片側にその感圧接着剤の混合物を積層し、その後そのプロセスをその連続的導電素材の逆側でも反復する方法。
【請求項17】
非水性等方導電性
の信号受容複合材であって、
極性素材がポリマ素材内に実質的に分散されたポリマ素材であって、前記極性素材が前記信号受容複合材の外側の交番電気信号に反応して前記信号受容複合材内に電荷発生反応を提供するポリマ素材と、前記ポリマ素材内にあり、前記信号受容複合材の全体にわたって実質的に延設された連続的導電素材であって、前記連続的導電素材は、前記電荷発生反応を受容して前記信号受容複合材の全体にわたって散布し、前記信号受容複合材は、上面及び下面
を含み、それら上面及び下面双方の上に
前記ポリマ素材があり、そのポリマ素材が、そのポリマ素材を構成するポリマに
置換基として付属する極性置換基を含有する
、連続的導電素材と、を含む、非水性等方導電性
の信号受容複合材。
【請求項18】
請求項17記載の非水
性等方導電性
の信号受容
複合材であって、前記ポリマ素材が、更に、そのなかに実質分散された極性素材を含有する非水
性等方導電性
の信号受容
複合材。
【請求項19】
請求項17及び18のうち何れかに記載の非水
性等方導電性
の信号受容
複合材であって、前記ポリマ素材が、ポリマに付属するカチオン性置換基を含有する非水
性等方導電性
の信号受容
複合材。
【請求項20】
請求項17~19のうち何れかに記載の非水
性等方導電性
の信号受容
複合材であって、前記ポリマ素材が、ポリマに付属するアニオン性置換基を含有する非水
性等方導電性
の信号受容
複合材。
【請求項21】
非水性等方性の信号受容素材
複合材であって、ポリマ素材内に分散された極性素材
であって前記極性素材が前記信号受容素材複合材の外側の交番電気信号に反応して前記信号受容素材複合材内に電荷発生反応を提供する極性素材と、そのポリマ素材内にあ
り、前記信号受容素材複合材の全体にわたって実質的に延設された導電素材と、を備え、その導電素材が、
前記電荷発生反応を受容して前記信号受容素材複合材の全体にわたって散布し、前記信号受容素材
複合材の厚み方向よりもそれぞれ実質的に大きく長さ方向及び幅方向に延びている
、非水性等方性の信号受容素材
複合材。
【請求項22】
請求項21記載の
非水性等方性の信号受容素材
複合材であって、前記導電素材に炭素繊維ベールが含まれる
非水性等方性の信号受容素材
複合材。
【請求項23】
請求項21及び22のうち何れかに記載の
非水性等方性の信号受容素材
複合材であって、前記導電素材に炭素繊維布が含まれる
非水性等方性の信号受容素材
複合材。
【請求項24】
請求項21~23のうち何れかに記載の
非水性等方性の信号受容素材
複合材であって、前記導電素材に金属箔が含まれる
非水性等方性の信号受容素材
複合材。
【請求項25】
繊維質
の信号受容
複合材であって、
極性素材が誘電性ポリマ素材内に分散された
誘電性ポリマ素材であって、前記極性素材
が前記信号受容複合材の外側の交番電気信号に反応して前記信号受容複合材内に電荷発生反応を提供する誘電性ポリマ素材と、その
誘電性ポリマ素材内にあ
り、前記信号受容複合材の全体にわたって実質的に延設された連続的導電素材
であって、前記連続的導電素材は、前記電荷発生反応を受容して前記信号受容複合材の全体にわたって散布し、その
連続的導電素材が、そのなかに前記極性素材が分散された前記
誘電性ポリマ素材によって実質被覆されている
、連続的導電素材と、を含む、繊維質
の信号受容
複合材。
【請求項26】
請求項25記載の繊維質
の信号受容
複合材であって、前記導電素材に炭素繊維が含まれており、前記被覆が施されたその繊維素材が織布の態に形成されている繊維質
の信号受容
複合材。
【請求項27】
請求項25及び26のうち何れかに記載の繊維質
の信号受容
複合材であって、前記導電素材に炭素繊維が含まれており、前記被覆が施されたその繊維素材が不織布の態に形成されている繊維質
の信号受容
複合材。
【請求項28】
請求項25~27のうち何れかに記載の繊維質
の信号受容
複合材であって、前記導電素材に炭素繊維が含まれており、前記被覆が施されたその繊維素材がマット化布の態に形成されている繊維質
の信号受容
複合材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権]
本願では、2020年3月25日付米国暫定特許出願第62/994558号に基づく優先権を主張し、参照によりその全容を本願に繰り入れるものとする。
【0002】
本発明は総じてセンサシステムに関し、具体的には電気信号を検出して伝えるセンサシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
古くから、バイオメディカル(生体医療)信号例えば心電図(ECG又はEKG)信号、表面筋電図(sEMG)信号及び皮膚電位(EDA)信号をピックアップするため、様々な形態のイオン伝導性媒質(例.例えばハイドロゲル)が用いられてきた。これら水性ベース信号捕捉複合材の働きは、大まかには、その水性ベース素材内に溶け込んだ元素(例えば塩)によるイオン導電に根差している。塩、例えば塩化カリウム又は塩化ナトリウムは、水性媒質内にあるときには速やかに溶解してイオン分解する(正イオン及び負イオンに分離する)。そして、その分解で生じたイオンにより、電流又は信号を運ぶことができる。こうした理由で、久しく、塩を水に添加し更にそれをポリマ素材及びエラストマ素材に添加することで、良好な導電率が提供されていた。
【0004】
例えば特許文献1には、バイオメディカル電極用の感圧接着性ハイドロゲルが開示されている。このハイドロゲル素材は、開示によれば少なくとも水、塩化カリウム及びポリエチレングリコールを含有しており、また開示によれば導電性である。特許文献2にも、水、塩、開始剤又は触媒並びに架橋剤を含有する導電接着性ハイドロゲルが開示されている。しかしながら、こうしたハイドロゲルの使用に際しては、一般に、そのハイドロゲルの片側(患者から遠い方の側)で、イオン伝導電荷を受容可能な導電性低抵抗面、例えば銀/塩化銀を用いることも必要となるが、それは割合に高価である。
【0005】
これらのハイドロゲル/接着剤は、良好な導電特性を呈しうるものの、かすかにしか接着特性を呈さないことが多い。もう一つの否定的側面は、水含有量の変化、例えば蒸発を原因とする変化により導電率が変化するため、それらハイドロゲルを、使用前は封止環境内に留置しなければならず、その後の使用が蒸発故にある限定的期間だけとなることである。従って、この種の複合材では水の量が電気特性に大きく影響する。封止パッケージングでもある程度の経時蒸発は余儀なくされるので、これは水性ベース電極の貯蔵寿命及び格納環境との関連で難題となる。
【0006】
特許文献3~8にて教示されている通り、代替的なテクノロジが開発されてきた。それら代替テクノロジのうちある種のものは、部分的に、極性有機化合物を誘電性有機ポリマ内に実質分散させたものを利用する非水性ベースシステムを基礎としている。その誘電性ポリマの選択次第では、そうした複合材を、患者上への配置を容易化する感圧接着剤(PSA)として機能させることもできる。更に、そのPSAの注意深い選択により、対皮膚長期接合から新生児又は老人病患者向け低侵襲性接着に至る諸用途向けに、接着レベルを調整することができる。極性素材をポリマ質誘電素材と組み合わせるときには、時間及び温度による相分離や超高湿条件にさらされたときの相分離を、回避することが求められる。
【0007】
導電性PSAの設計は、少なくとも、導電素材存在量の増加につれ接着強度及び可撓性が一般に低下することから、久しく難題とされてきた。良好な導電性を得るため通常使用(添加)される素材が、一般にあまり可撓性でないし、しかも接着を阻害するのである。従来の導電被覆調製方法では、ポリマ素材に導電粒子、例えばグラファイト、銀、銅等を入れ、更にそれをポリマ質バインダに被せ、乾かし硬化させている。その場合における導電粒子の濃度は、諸粒子がそれぞれ少なくとも1個の近隣他粒子に物理的に接触しているとき形成される導電性網状体が、存在している濃度とする。こうすることで、その複合材内に導電経路が設けられる。
【0008】
しかしながら、感圧接着剤では、網状体が形成されその内部で粒子対粒子接触が維持されるほど粒子濃度が高いと、ポリマ(例.エラストマ)系のPSA成分が十分高濃度で存在する機会、ひいてはその成分が流出して基板・電極間に十分な面対面接触をもたらす機会即ち接着剤として働く機会が、些少となる。逆に、そのPSA成分が十分に高濃度であり基板に対する十分な面接触をもたらせる場合、そのPSAが必然的に近隣導電粒子にとり邪魔となって粒子対粒子接触が途絶されるため、導電率に悪影響が及ぶこととなろう。
【0009】
別種の導電性PSAとしては、PSAの厚み以上の直径を有する導電性球状粒子を含有するものがある。この形態であれば、信号又は電流をそれら粒子の表面に沿い運ぶこと、ひいてはその接着剤の厚み方向に沿い異方的に電流を提供することができる。しかしながら、その接着剤の連続性が、それら大きな球状粒子の体積が原因で損なわることがある。
【0010】
特許文献9には炭素粒子入りの導電性感圧接着剤が開示されており、またその導電性接着剤を調製するに当たり感圧接着剤内にブラックフィラ(炭素)を入れて導電性を付与すること、但しその濃度を十分に低くすることでその接着剤の物理特性(例えば粘着性)に対する悪影響を避けることが、開示されている。とりわけ、この特許文献には、温和で強剪断のない攪拌即ちかき混ぜ下で、有機溶媒内でカーボンブラック(登録商標)のスラリを形成することによって、炭素構造を形成することが、述べられている。その上でその混合物を接着剤内に入れればよい。こうした複合材では、しかしながら、ある種の用途にて、十分な接着性及び導電率を提供することができない。また、この種の複合材は、導電素材濃度が比較的高いエリアや低いエリアを有するものとなることがある。ある種の導電性ポリマ素材及びエラストマ素材では、そのポリマ又はエラストマ素材内で導電粒子が濃淡を呈し、ひいてはその素材の表面全体に亘り電気特性不均一性が現れることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第6121508号明細書
【文献】米国特許第5800685号明細書
【文献】米国特許第7651638号明細書
【文献】米国特許第8788009号明細書
【文献】米国特許第8792957号明細書
【文献】米国特許第8673184号明細書
【文献】米国特許第9818499号明細書
【文献】米国特許第9775235号明細書
【文献】米国特許第5082595号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このように、導電性ポリマ素材として用いられ導電性を提供する複合材にて、そのポリマ素材の望ましい特性が損なわれないようにすることが求められており、更には均一な電気特性を呈する導電性ポリマ素材が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のある態様によれば、非水性等方導電性信号受容複合材であって、上面及び下面を有する連続的導電素材を有し、その両面が誘電性ポリマ素材により実質被覆されていて、その誘電性ポリマ内に極性素材があるものが、提供される。
【0014】
本発明の別の態様によれば、非ハイドロゲル等方導電性信号受容素材を作成する方法が提供される。本方法では、その両側が誘電性ポリマ及び極性素材の混合物で以て実質被覆されている連続的導電素材を提供する。
【0015】
本発明の別の態様によれば、非水性等方導電性信号受容複合材であって、上面及び下面を有する連続的導電素材を有し、それら上面及び下面双方の上にポリマ素材があり、そのポリマ素材が、そのポリマ素材を構成するポリマに付属する極性置換基を含有するものが、提供される。
【0016】
本発明の別の態様によれば、信号受容素材であって、ポリマ素材内に分散された極性素材と、そのポリマ素材内にある導電素材と、を有し、その導電素材が、本信号受容素材の厚み方向よりもそれぞれ実質的に大きく長さ方向及び幅方向に延びているものが、提供される。
【0017】
本発明の更なる実施形態によれば、繊維質信号受容素材であって、ポリマ素材内に分散された極性素材と、そのポリマ素材内にある導電素材と、を有し、その導電素材が、そのなかにその極性素材が分散されたポリマ素材により実質被覆されているものが、提供される。
【0018】
以下の添付図面を参照することで、後掲の記述を更に理解頂けよう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明のある態様に係る複合材の例証図である。
【
図3】
図2の付着複合材を有する電極の例証的上面図である。
【
図4】
図3の電極の対の被験者付着時例証図である。
【
図5A】本発明のある態様に係る複合素材の交番電界由来電荷存在時例証図である。
【
図5B】本発明のある態様に係る複合素材の交番電界由来電荷解消時例証図である。
【
図6】本発明の別態様に係る連続的導電素材入り複合材の例証図である。
【
図7】
図6の複合材の交番電界存在時例証図である。
【
図8】本発明のある態様に係る固体フィルム形態の連続的導電素材の例証図である。
【
図9】本発明のある態様に係る織素材形態の連続的導電素材の例証図である。
【
図10】本発明のある態様に係る不織グリッド素材形態の連続的導電素材の例証図である。
【
図11】本発明のある態様に係る無秩序素材形態の連続的導電素材の例証図である。
【
図12】極性素材付複合材のインピーダンス試験結果の例証図である。
【
図13】極性素材付複合材のインピーダンス試験結果の例証図である。
【
図14】極性素材及び導電素材付複合材のインピーダンス試験結果の例証図である。
【
図15】銀入り電極(SilverMacrode(商標))の皮膚インピーダンス試験結果の例証図である。
【
図16】導電素材及び極性素材入り複合電極の皮膚インピーダンス試験結果の例証図である。
【
図17】導電素材入りで極性素材抜きの複合電極の皮膚インピーダンス試験結果の例証図である。
【
図18】
図15の電極を用いたECG/EKG試験の結果の例証図である。
【
図19】
図16の複合電極を用いたECG/EKG試験の結果の例証図である。
【
図20】
図17の複合電極を用いたECG/EKG試験の結果の例証図である。
【
図21】極性素材付及び抜きのECGスナップ電極を試験制御電極と併用しているときの電極対皮膚インピーダンスの例証図である。
【
図22】導電素材として炭素繊維が入っている複合素材の例証図である。
【
図24A】織素材入り信号受容複合材の例証的部分図である。
【
図24B】不織素材入り信号受容複合材の例証的部分図である。
【
図24C】マット化又はフェルト化素材入り信号受容複合材の例証的部分図である。
【
図25】本発明のある態様に係る複合材と銀入り複合材(SilverMacrode(商標))とにおける経皮的神経電気刺激(TENS)試験の例証的信号比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
諸図は専ら例証目的で示されている。
【0021】
本発明の諸態様によれば、その信号受容複合材内に非水性誘電素材及び極性素材がある信号受容複合材が提供される。この複合材の非水性誘電素材内には導電素材もあり、ある種の態様によれば、その導電素材が、信号受容複合材厚の少なくとも2倍以上の長さに亘り少なくとも長尺方向に沿い延設される。更なる諸態様によれば、その導電素材が、少なくとも信号受容複合材厚以上の長さに亘り長尺方向に沿い延設された諸要素を有するものとされる。更なる態様によれば、その導電素材が、その導電素材自体は真っすぐではないが全体として長尺方向に沿い延びる諸要素を有するものとされ、信号受容複合材によりくるまれたルース或いは織又は不織或いはマット化又はフェルト化繊維束により形成される。更なる諸態様によれば、その導電素材が、金属箔、メッシュ素材、スクリム素材或いは織又は不織メタルウール素材を含むものとされる。
【0022】
図1には、本発明のある態様に係り、誘電素材12と、その各側にある一対の剥離ライナ14,15と、を有する複合材10が示されている。誘電素材12内には極性素材16があり、また導電素材18(例.本願でベール材と呼んでいるもの)もある。
図1に示されている通り、本発明のある態様によれば、その導電素材(例.長い炭素繊維ストランド)をその誘電素材内にランダム分散させることができる。
図2によれば、剥離ライナ14,15を除去すること及び導電接続電極22を複合材20の片側に付着させることができる。その複合材20の逆側が被験者(例.患者)に付着しているときには、交番電気信号(24として表されているそれ)がその複合材に伝わりうる。なお、その電気信号が接続電極22直下のものである必要はない。
図3には複合材20の上面外観が示されており、ここではその接続電極22がリード線26に結合されている。好ましいことに、誘電素材12の表面エネルギを、導電素材18の表面を十分濡らせるほどに低くすることで、その導電素材の表面を(その素材18の露出端がその露出面にあるときでさえも)、誘電素材12により覆わせることができる。従って、本発明のある態様によれば、接続電極22でさえ、何れの導電素材18にも直に接触しないこととなる。
【0023】
本発明のある具体的態様によれば、極性素材をその誘電素材内に分散させることができ、また例えば(これに限られるものではないが)第四アンモニウム塩とすることができる。この種の商業入手可能な素材は多様であり、大抵は、カチオン界面活性剤又は帯電防止剤としての使用や特定の化粧用品としての使用を指向している。後に詳論する通り、この種の化合物には分子変異の多様性があるため、所与の誘電性ポリマに対し好相性ペアリングとなるであろうそれを見出せる勝算は増すこととなる。こうした第四アンモニウム塩は、以下の如く表すことができる:
【化1】
但しRはH、或いは何らかの炭素ベース部分であり、R基のうち何れかが同じであっても異なっていてもよい。例えば、極性素材を、米国イリノイ州シカゴ所在のAkzo Nobel Surfactantsにより販売されているArquad(登録商標)HTL8-MS第四アンモニウム塩とすることができる。
【0024】
そのポリマ素材は、例えば、これに限られるものではないがアクリル系接着剤とすること、例えば以下の如く表せるものとすることができる:
【化2】
但しRは可変であり且つエチル又はブチル又は2-エチルヘキシルその他の有機部分とすることができ、またnは繰り返し単位の個数である。例えば、ポリマ素材を、米国マサチューセッツ州スペンサー所在のFLEXcon Company, Inc.により販売されているFLEXcon(登録商標)V95感圧接着剤とすることができる。
【0025】
ある態様によれば、それらバインダ剤及び極性素材の組合せの選択目的は、それら二種類の物質それぞれを、各素材が自身の分子に対し呈する吸着によく似た相互吸着を呈するものにすることにある。これにより、その極性素材がそのバインダ剤内に均等分散される結果となる。そのポリマ素材・極性素材組合せの好適性は、以下の手順によって確認することができる。まず、極性素材を、約5通りの別々な濃度(典型的には約5重量%~約45重量%)にてポリマ素材と組み合わせる。その上で、その接着剤・塩複合材を(約1.5ミル(1ミル=1/1000インチ;1インチ=約2.54cm)の)剥離ライナ上に引き入れ、乾燥及び硬化に供する。その後、ある短い時間を経た後にその複合材の表面を検査する。極性素材が表面に晶出又は発現していたら、その成分組合せは好相性でない。逆に、その複合材が清澄であれば、それを次レベルの相性検査の対象とする。その後は、それらの標本を露出試験、即ち諸標本を3日間に亘り華氏100度(摂氏約38度)、相対湿度95%にさらす試験に、供すべきである。その上で、それら標本を再検査することで、その極性素材が何れかの表面に向かい移動したか否かを判別する。極性素材移動がなく複合材が清澄であった場合は、その複合材の比誘電率を判別し、医用モニタリング素材としての使用との関連でその複合材を試験する。
【0026】
ある態様によれば、このようにして、ポリマ素材及び極性素材が、それ自体に対する吸着と実質同一な相互吸着を各々呈するように選択される。そのため、極性素材はポリマ素材の表面に凝集も発現もせず、寧ろそのポリマ素材内で静止したままとなる。これは他の用途における塩の使用、なかでも塩が表面に発現する(それにより表面沿いに導電層がもたらされ例えば静電放電を担う)と思しき、或いは塩がバインダ剤と化学反応する(例.その中に溶け込む)と思しき、用途でのそれと、対照的である。言い換えれば、バインダ剤及び極性素材が、好相性となるよう、それでいてそれらが分子的変化、例えば水中にてNaClで以て生じるであろうそれを被らないよう、選択される。従って、この分子スケール極性素材は、バインダ剤内で分散されるものの、分子転移は被らない。
【0027】
とはいえ、本発明の更なる諸態様によれば、誘電素材を構成しているポリマにその極性素材が結合するよう極性素材を選択することもできる。従って、所望の親水/疎水特性を持つようポリマ(例.先に論じたある特定のR基を有するもの)を選択するのに加え、そのポリマを更に、ある特定の極性素材と結合するよう選択することができる。極性素材を含有しておりそれがその誘電素材のポリマに結合している誘電素材の使用は、時間経過につれ分解又は発現が生じうる場合に有用である。例えば、その極性素材が適切な官能基、例えばヒドロキシル官能基等を有していて、且つそのバインダ剤がカルボキシル基を有している場合、その極性素材がそのバインダ剤内に幾ばくか取り込まれる反応が、生じることがありうる。他の諸態様によれば、そのバインダ剤がエステルペンデント基を有していて、且つその極性素材がヒドロキシル官能性、さらに言えばカルボキシル官能性を有している場合、何らかのエステル交換反応が生じ、やはり極性素材が付属するポリマ鎖がもたらされることがありうる。
【0028】
PSAは、例えば、アクリル系ポリマのカチオン性置換基を含有するものと、することができる。例えば、FLEXcon(登録商標)V-19接着剤(米国マサチューセッツ州スペンサー所在のFLEXcon Company, Inc.により販売されているもの)は、アクリル系ポリマのカチオン性置換基を有するPSAであり、それを極性素材に結合させることができる。一例として、この接着剤を、連続的導電層と共に且つ極性素材の付属なしで準備した。その連続的導電層を、米国ニューヨーク州スケネクタディ所在のTechnical Fibre Products LTD発の不織導電ベール製品#20353Aにより作成した。この例を試験したところ、53kΩなる皮膚インピーダンスがもたらされた。更に、同じ接着剤及びベールを、通常装荷量の半分の極性素材(例.3M Company, Inc.発のFC-5000イオン性帯電防止剤)で以て作成したところ、その試料により5.2kΩなるインピーダンスがもたらされた。これは顕著なトレードオフであり、その他の外面的懸案事項、例えば皮膚接着が具体的な組成の選択に関する重要な懸案事項であるとはいえ、ポリマ素材に対するカチオン性その他の極性置換基の使用或いは非粘着層に対するPSAの使用の方が、最終的な信号受容素材(SRM)の構築に際しより多くの選択肢を与えてくれる。
【0029】
そうした極性素材をそれらの構造の一部として有するポリマの認識可能特徴の一つは、その比誘電率である。例えば、FLEXcon(登録商標)H582ベース接着剤の100Hzでの比誘電率は2.0であり、FLEXcon(登録商標)V-19の比誘電率は3.9である。比誘電率は、そのポリマをSRMとして、更には連続層の含有物と併せ使用できる可能性を示しているが、その他の特性、例えば無数の皮膚コンディションとの相性も、樹脂選択上、重要な役を演ずることとなろう。
【0030】
非水ベースSRMを実用しうるか否かを判別可能な試験手順は、ECG試験(AAMI(医療器具開発協会)EC12 2015 4.2.2例えば4.2.2.1、4.2.2.2、4.2.2.3、4.2.2.4)にて規定されており、皮膚インピーダンス試験として知られている。この皮膚インピーダンス試験の一部は、腕又は脚上の皮膚に第1試験電極を付け、タイマをスタートさせ、同じ腕又は脚上の皮膚に第2試験電極を付け、それら試験電極に電圧計のリード線を取り付け、計測結果を記録し、そして数分に亘り結果記録を反復する、というものである。
図4によれば、そうした電極30,32の対を、被験者(例.腕34)上で、相互近接配置することができる。個々の電極は、皮膚インピーダンス判別用のインダクタンス・キャパシタンス・抵抗値(LCR)メータに接続されている接続線36,38に、結合させる。
【0031】
本発明のある態様により本願中で提示される非水組成は、架橋又は活性化なしでもAMMIに合格しうるものであり、本発明のある態様によれば等方性とされる。一例に係る組成は、そのなかに極性化合物が実質分散されている誘電素材と、その素材で以て実質被覆されている導電層例えば布、織又は不織炭素繊維或いは金属スクリーン或いは金属箔素材とを、有するものである。その連続的導電層としては、炭素膜、金属箔及びスクリーンから織及び不織布に至る様々な形態のものを利用でき、また数通りの厚み及び密度のものを利用することができる。誘電素材は、感圧接着剤(PSA)から非粘着性ポリマ素材まで、様々な特性のものとすることができる。
【0032】
極性素材濃度は、誘電性ポリマとの混合物のうち45重量%以上の高さとすることができる。どの極性素材をどの誘電性ポリマと併存させるかについての選択基準は、先に論じた通り、その有機誘電体との相性に基づくものとされる。その誘電性ポリマがPSAである場合のもう一つの属性は、その素材の対皮膚接着能力を極性素材の適切な選択により改善できることである。皮膚の表面性状には大きなばらつきがあるので、皮膚接着特性を補う極性素材を有していることは、有益である。
【0033】
連続的導電素材は、被覆、積層、押出等、ポリマ極性素材混合物内に連続的又は半連続的導電層を組み込める何れの方法により、導入してもよい。更に、導電粒子を整列させ又は活性化する必要がないので、更に高粘度な熱可塑性非粘着性誘電性ポリマがSRM内へとより容易に組み込まれることとなり、ラップ、ベストその他の類種圧迫装身具で以てその場に保持されるウェアラブルなバイオセンシング電極の使用に関連する用途を、見出すことができる。
【0034】
本発明のある態様によれば、等方性であり例えばその誘電素材内に連続的導電層がある非水性信号受容素材が、提供される。その連続的導電層は、導電膜、スクリーン又は金属箔や、導電繊維例えば炭素繊維で構成された導電布や、導電性表面被覆付の非導電素材から、得ることができる。その布は、織布又はニットでも、不織布でも構わないが、多くの例では、得られる連続的導電層を、少なくとも大きめな非厚み次元(X及びY)、オプション的には(X,Y,Z)の全次元に沿い導電性を有するものとすることが、その基礎原理とされる。等方性とすることで、裏側の導電接触部との接続も容易になる。導電路を介しモニタに接続された導電面が用いられ、信号ピックアップ量にその導電面の面積が直に関連する異方性信号受容素材とは、逆である。そのなかに極性素材が分散された誘電性ポリマにより構成されていて、更にその誘電性ポリマ内に連続的導電素材がある組成であるので、架橋や活性化等といった更なる処理工程なしで、AMMI EC12 2015に合格することとなる。見い出されたところによれば、非水ベース信号受容素材にしたところ、皮膚インピーダンスが、AAMIへの単なる合格よりも良好な、非水性電極機能の予測子となった。
【0035】
電気信号が運ばれる機構は動的であり、本願にて論ずる通り、容量性結合と低インピーダンス導電素材、例えば導電ベールその他の連続的導電層とが共に関わっている。
図5A及び
図5Bによれば、本発明のある態様に係る複合材50は、先に論じた通り、誘電素材54及び導電素材56内に分散された極性素材52を有している。複合材厚d
1はバイオメディカル及び非バイオメディカル用途の多様性に従い大きく変わりうるものであり、やはりその用途次第ではあるが、例えば数μmオーダの薄さとされることもあれば1インチ超とされることもある。炭素繊維56の直径は、同じくその用途次第で、例えば1μm未満とされることも50μm超とされることもある。極性素材(
図5Aでは58と図示)のうち信号源60の近くにあるものが、その交番信号と反応することとなる一方、極性素材のうちその信号源の近くにないものは、そのようには反応しない。とはいえ、本発明のある態様によれば、導電素材56によりその信号がピックアップされることとなり、また
図5Bのエリア62内に矢印で以て示されている通り、電荷分布の働きでその信号が複合材中に散布されることとなる。
【0036】
上述した通り、連続的導電素材は、導電膜(例.アルミニウム又は炭素)の層、織又は不織素材(例.炭素繊維)の層、或いは無秩序素材の平坦化マット(例.同じく炭素繊維)として提供される導電素材層を、備えるものとすることができる。
図6によれば、そうした導電素材層を、そのなかに極性素材が分散されている誘電素材層2個の間に、設けることができる。具体的には、この複合材70は、そのなかに極性素材74が分散されている第1誘電素材72と、そのなかに極性素材84が分散されている第2誘電素材82とに加え、それら第1誘電素材72及び第2誘電素材82の間に挟まる導電層80を有している。複合材70は、更に、自複合材の露出面上にある剥離ライナ76,78を有している。この複合材の(剥離ライナ抜きでの)厚みd
2、第1誘電素材72の厚みd
3、第2誘電素材82の厚みd
5、並びに導電層80の厚みd
4は、やはり、何れもその具体的用途に見合うものとすることができる。本発明の諸態様の利点の一つは、厚みその他の次元につき広範な多様性が求められる用途にて、高度に万能なことである。
図7によれば、交番信号(例.86で示されている生体信号)が存在しているときには、幾ばくかの極性素材(
図7にて88で示されているもの)が、その生体信号に対し整列することとなる。この整列に由来する発生電荷が導電層80によりピックアップされ、複合材付近で運ばれることとなるため、
図7に示す如く別の極性素材74も整列状態になる。こうして別の極性素材が整列することで、電極78へと信号が供給されることとなる。
図8~
図11によれば、その導電層80を、膜90(例.アルミニウム又は炭素のそれ)、織導電素材の金属布92(例.織炭素繊維のそれ)、不織グリッド94(例.炭素繊維のそれ)及び無秩序素材の平坦化マット94(例.同じく炭素繊維のそれ)のうち、何れともすることができる。
【0037】
以下の諸例により示される複合材は、本発明の諸態様に従い作成されたものである。
【0038】
[実施例1]
PSA(米国マサチューセッツ州スペンサー所在のFLEXcon Company, Inc.により販売されているFLEXcon(登録商標)H-582)の有機溶媒溶液に、乾燥重量で15%の極性素材、この例ではオランダ国のNouryon Chemicalsにより販売されているArquad(登録商標)HTL8-MSを添加した。その溶液を、38μmポリエステルフィルムの剥離被覆側に注いだ。これに連続的導電層素材を付着させた。この例では、その連続的導電層を、米国ニューヨーク州スケネクタディ所在のTechnical Fibre Products LTD.から入手可能な4g/smの不織導電ベール材、特に製品#20352Aのものとした。そのベール材を、まだウェットなPSA溶液上に寝かせ、その中へと押し込んだ。その上でその複合材を乾燥させた。そして、2個目の標本を、同じ感圧接着剤及び同じベール材を用い同じ要領で、但し極性素材の組込みなしで調製した。
【0039】
それら2個の標本、即ち極性素材ありの1個及びなしの1個を、制御基準として働く従来型の水性ベースECG電極(米国マサチューセッツ州マールボロ所在のGE Healthcare, Inc.により作成されたSilverMacrode(商標)Plus)と一緒に、AAMI EC12 2015 4.2.2.1、4.2.2.4及び4.2.2.2、4.2.2.3及び4.2.2.5、並びに先に参照した皮膚インピーダンス試験に従い、全て試験した。その結果が
図12~
図14に示されており、なかでも
図12にはSilverMacrode(商標)に係る結果100が、
図13には極性素材ありの複合材(FLEXcon(登録商標)H-582及びカーボンベール20352Aがあり極性素材はない)に係る結果102が、
図14には極性素材なしの複合材(FLEXcon(登録商標)H-582、極性素材(Arquad(登録商標)HTL8-MS)及びカーボンベール20352A)に係る結果104が示されている。図示の通り、どの電極も、適用可能なAAMI EC12 2015試験の全項目に合格した。
【0040】
しかしながら、
図4を参照し上述したFLEXcon(登録商標)皮膚インピーダンス試験で以てそれら3個の標本を試験したところ、その結果に違いが現れた。SilverMactrode(商標)や、ベール導電素材及び極性素材双方を有する標本は、軽々と合格した。接着剤にベール導電素材のみが添加されていて極性素材なしの標本では、極性素材の添加を伴う標本よりも8倍高い皮膚インピーダンスがもたらされた。具体的には、
図15にはSilverMacrode(商標)についての皮膚インピーダンス試験の結果106が、
図16には極性素材ありの複合材についての皮膚インピーダンス試験の結果108が、また
図17には極性素材なしの複合材についての皮膚インピーダンス試験の結果110が示されており、図示の通り極性素材省略時にはインピーダンスがかなり増大した。
【0041】
これら3個の電極を、GE Healthcare, Inc.発のMAC1200G(商標)ECG/EKGマシン上でも試験した。
図18にはSilverMacrode(商標)電極に係る結果120が、
図19には極性素材なしの複合材に係る結果122が、また
図20には極性素材ありの複合材に係る結果124が示されている。明白な通り、
図19に検出ECG信号が現れていないことからして極性素材は必要であり、見ての通り、極性素材ありの複合材では秀逸なECG信号データが得られている。
【0042】
連続的導電素材及び極性素材を有する信号受容素材についての以後の処理は、その複合材の等方導電性故に、非常に効率的となる。架橋や活性化が必要でないのに加え、その信号受容素材が装着される基板にて、その基板(信号受容素材が接触することとなるそれ)の全表面を導電性とする必要がない。
【0043】
一例として、支持基板(米国マサチューセッツ州スペンサー所在のFLEXcon Company, Inc.により販売されているFLEXMARK(商標)NWP不織ポリエステル)に、誘電性ポリマ(FLEXcon Company, Inc.により販売されているH-582)と、30重量%分の極性素材(米国ミネソタ州セントポール所在の3M Company, Inc.により販売されておりアルコキシル化第四アルキルアンモニウムフルオロアルキルスルホンアミドの塩であるイオン性液状帯電防止剤FC-5000)と、導電素材(英国のTechnical Fibre Products LTDにより販売されているOptiveil(商標)20352A炭素繊維素材)と、で構成されている信号受容素材を付着させた。2個目の標本を、同様に調製すると共に、その支持基板のうち、信号受容素材が付加されるであろう側と同じ側に、外側導電被覆(FLEXcon Company, Inc.により販売されているEXV-461導電被覆)、即ち従来技術の異方性信号受容素材で以て必要とされるであろう導電被覆を付加した。
【0044】
両標本にECGスナップ電極を実装し、皮膚インピーダンスに関し試験した。水性電極素材(米国フロリダ州インバネス所在のLeonard Long USA, Inc.により販売されているSkintact(登録商標)FS-40)も、対照例として試験した。
図21によれば、水性制御電極と、その信号受容素材下の支持基板上に導電被覆がない電極(図中の130)又はある電極(図中の132)或いはSkintact(登録商標)電極(図中の134)との間に、電極対皮膚インピーダンスの有意差は見出されなかった。これは、現行製品・等方導電性非水性信号受容素材間で以後の製造工程を変えることはほとんど又は全く必要ないであろう、ということを意味している。更なる利点としては、大抵の水性スナップ電極では、電極を皮膚に固定するための接着剤によりハイドロゲルがくるまれている、という点がある。本発明の諸態様によれば、その信号受容素材も接着剤とされる。
【0045】
連続的導電層を用いることの更に他の利点としては、活性化工程がないため、電気泳動により形成される「Z」カラムを維持すべくそのベース接着剤を(百万cps超の)高粘度にする必要がない、という点がある。これにより、他のより低粘度なPSA、例えば輻射硬化性PSAが許容されることとなる。低粘度の輻射硬化性PSAを導電粒子と併用する際には、諸素材例えば炭素に相応しく強い電界が、また強磁性粒子を使用する際には磁界が、必要とされよう。何れの場合にも、異方性信号受容素材がその結果物となろう。ベールを輻射硬化性PSAと併用する際の制限因子は、粒子整列が必要とされず、得られる製品が等方性であることからすれば、硬化である。
【0046】
[実施例2]
100パーツの接着剤(米国イリノイ州シカゴ所在のActega North Americaにより販売されているRadBond(商標)12PS 12L V FB接着剤)に、5パーツの極性素材(オランダ国のNouryon Chemicalsにより販売されているArquad(登録商標)HTL8-MS)を添加した。その混合物で、FLEXcon Company, Inc.により販売されている90プライ平坦白色(PFW)剥離ライナ上で支持されており米国ニューヨーク州スケネクタディ所在のTechnical Fibre Products Inc.により販売されているカーボンベール20352A上を、被覆した。こうして構成された標本群を、UVランプ下で硬化させた後、導電炭素被覆付50μmポリエステルに積層した。二組目の標本群を同様に、但しこの場合は極性素材(Arquad(登録商標)HTL8-MS)を添加せずに調製した。
【0047】
両組の標本群を、導電性炭素充填アクリル上に配置して試験した。導電被覆付50μmポリエステルベースに接触させ、そのSRMの逆側に導電アイランドを配置して試験した。電極対電極インピーダンスの結果は、極性素材ありでのインピーダンスが1.5kΩ、極性素材なしでのインピーダンスが420Ωとなった。次に、それらの標本を皮膚インピーダンスに関し試験したところ、対照例(SilverMactrode(商標))でのインピーダンスが4kΩ、極性素材(Arquad(登録商標))あり標本でのインピーダンスが19kΩ、極性素材(Arquad(登録商標))なし標本でのインピーダンスが380kΩとなった。
【0048】
なお、電極対電極インピーダンスが示すところによれば、Arquad(登録商標)(極性素材)なし標本の方がArquad(登録商標)あり電極よりも低インピーダンスであるところ、皮膚インピーダンス試験が示すところによれば、まさに前出の例にある通り、その結果が保持されていた。アルミニウム箔、金属質精細スクリーン素材及び導電織布を用いる類似した複合材も作成したところ、それらの何れでも、不織ベール材で以て見出された等方性特性が現れた。
【0049】
[実施例3]
第3の例は、電極をどの程度の薄さで調製できるかを調べるため、金属箔例えばアルミニウム箔の使用を組み込んだものである。平坦なアルミニウム箔とすることで、織布であれ不織布であれ、布の不規則プロファイルが回避される。0.0007インチのアルミニウム箔を、極性化合物(3M Company, Inc.により販売されているFC-5000)とFLEXcon Company, Inc.により販売されている感圧接着剤(PSA H-582)との混合物に、付着させた。その混合物を、0.0002インチなる被覆堆積厚(乾燥時)になるまでそのアルミニウム箔上に被せ、それをシリコーン被覆付ポリエステルで覆うことで、その接着剤複合材を保護するようにした。そのアルミニウム/PSA/保護ライナ複合材の逆側に、接着剤/極性素材からなる第2の被覆を、同じく0.0002インチなる乾燥時堆積厚になるまで付着させた。上掲の複合材の標本群を、厚み(Z)次元及び長さ,幅(X,Y)次元の双方において、インピーダンスに関し試験した。Z方向における平均インピーダンスは540Ω、X,Y平面における平均インピーダンスは590Ωとなった。これらの値は、電気的等方性の定義の枠内によく収まっている。
【0050】
更なる諸態様によれば、連続的ポリマ媒体が感圧接着剤とされないことがある(例.それが実質的に非粘着性素材とされることがある)。そうした電極は、圧迫ガーメントとの組合せで用いられることが多い。全てではないが、多くの場合、その非粘着性電極をその圧迫ガーメントに恒久装着することで、多くの潜在的な用途に関し、反復洗浄生存性が基準とされることとなる。即ち、連続ポリママトリクス内のあらゆる極性素材の水可溶性を最小化することが必要となる。別の考慮点としては、その電極の水蒸気透過率を、例えば、皮膚・電極間での発汗のビルドアップが最小化されるものにする必要がある、という点がある。
【0051】
更なる例として、熱可塑性ポリウレタン(TPU)(FLEXcon Company, Inc.により販売されているH-501)からなる連続的で実質的に非粘着性の層のなかに、乾燥重量で15%の極性素材(3M Company, Inc.により販売されているFC-5000)と、ベール材(Technical Fibre Products LTDにより販売されているOptiveil(商標)20352A)とがある複合材を、形成した。誘電性連続層としてPSAを有する例の場合と同様、TPU樹脂及びFC-5000の溶液を、ベールと併せ剥離性キャリアフィルム上に被せた後、その複合材を乾燥させた。その上で試験ストリップ群を調製し、皮膚インピーダンス試験のため60gの重りを用い皮膚に圧力を加えた。その結果として、40kΩなる皮膚インピーダンスがもたらされた。
【0052】
非粘着性の試験用バイオ信号センシング素材を圧迫布に固定するに際しては、その剥離性キャリアの非被覆側を加熱するだけで、そのTPU樹脂を多くの布に接着させることができよう。その非粘着層及びガーメントの双方が好相性であれば、接合を形成することができる。その布がそのセンサ内の連続層に対し好相性でない場合は、接合を容易に行えるよう、そのSRM上に付加的な素材層を付加することが必要となろう。
【0053】
本発明の更なる諸態様によれば、信号をあるエリアから別のエリアへと通すことが求められている場合に、その信号受容複合材を、バイオメディカルなもの及びその他のものを含め、広範な用途に用いることができる。用途によっては、例えば、そのポリマ素材が接着剤である必要さえないことがある。更に、本発明の複合材を、パッドや旧来的な電極として設ける必要もない。
【0054】
例えば、本発明の更なる諸態様によれば、その導電素材を炭素繊維入りのものとすることができ、それら炭素繊維を、先に論じた通りそのなかに極性素材が分散されている誘電素材で以て被覆することができる。
図22には、例えば、導電素材152たる炭素繊維と、極性素材156がそのなかに分散されている誘電素材158による被覆と、を有する信号受容複合材150が示されている。
図23に示されている通り、誘電素材154(誘電素材158及び極性素材156を内包するそれ)により、導電素材繊維152がくるまれている。
【0055】
更に、
図24Aによれば、その被覆付繊維150複数本を一緒に織ることで、そうした信号受容複合材150を用い、織複合材160を形成することができる。同様に、
図24Bに示されている通り、その被覆付繊維150複数本を不織要領にて組み合わせることで、そうした信号受容複合材150を用い不織複合材162を形成することができる。
図24Cに示されている通り、その被覆付繊維150をマット化又はフェルト化要領で組み合わせることで、そうした信号受容複合材150を用いマット化又はフェルト化複合材164を形成することができる。
【0056】
本発明の諸態様による等方性SRM素材の更なる用法には、被験者への電子パルスの送給がある。例えば、経皮的神経電気刺激(TENS)を、苦痛軽減を初め様々な用途に用いることができる。TENSユニットは小さな電気インパルスを電極経由で患者の皮膚へと送給するユニットであり、それら電気インパルスにより身体を刺激することでエンドルフィンを産生させ、それにより(用途によっては)苦痛を軽減することができる。
【0057】
そうした複合材の例の一つが、FLEXcon(登録商標)ドライ電極と併せFLX068983 OMNI-WAVE(商標)TT200及びBLACK(商標)H-502を有するものであり、それを、SilverMactrode(商標)Plusハイドロゲル電極を有する例と共に作成した。試験装置は、信号源としてiReliev(商標)iRenew(商標)TENS+EMSシステムモデル#ET-7070を有し、信号モニタとしてTektronix(登録商標)MDO3024オシロスコープ及びクリップ付リードを有するものにした。試験方法は電極対装着を伴うものとし、その際に保護剥離ライナを2個の電極それぞれの接着剤側から除去するものとした。その後、各電極の接着剤層を一緒に配置することで電極対を形成させた。電極信号試験向け試験方法は、計測装置への電極対の接続を伴うものとした。信号計測結果を、電極対装着から2分後に収集した。電極インピーダンス試験向け試験方法は、LCRメータへの電極対の接続を伴うものにした。インピーダンス計測結果を、電極対装着から2分後に10Hz、20mVにて採取した。
【0058】
その計測結果は以下の通りとなった。電極対インピーダンスに関しては、SilverMactrode(商標)Plusでは444Ωなるインピーダンスがもたらされ、SRM複合材(FLEXcon(登録商標)OMNI-WAVE(商標)H-502)では139Ωなるインピーダンスがもたらされた。電極信号試験に関しては(また
図25によれば)、SRM複合材に係るインピーダンスが170にて指し示されるものとなり、SilverMacrode(商標)Plusハイドロゲルに係るインピーダンスが172にて指し示されるものとなった。OMNI-WAVE(商標)H-502を有するFLEXcon(登録商標)ドライ電極の電圧及びインピーダンス計測結果は、SilverMactrode(商標)Plus(ハイドロゲル)電極と同様であり又はそれより良好である。
【0059】
本件技術分野に習熟した者(いわゆる当業者)であれば、本発明の神髄及び技術的範囲から離隔することなく、上掲の開示諸実施形態に対し多様な修正及び改変をなしうることを、察せられよう。
【0060】
特許請求の範囲は以下の通りである。