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特許7476341漏れ電流検出回路、方法及び漏れ電流検出器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】漏れ電流検出回路、方法及び漏れ電流検出器
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/56 20200101AFI20240422BHJP
   G01R 31/52 20200101ALI20240422BHJP
【FI】
G01R31/56
G01R31/52
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022558381
(86)(22)【出願日】2022-03-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-16
(86)【国際出願番号】 CN2022081474
(87)【国際公開番号】W WO2022237319
(87)【国際公開日】2022-11-17
【審査請求日】2022-09-26
(31)【優先権主張番号】202111312286.3
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518199702
【氏名又は名称】深▲せん▼市徳蘭明海科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN POWEROAK NEWENER CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】19F, Tower 1, Kaidaer Building, Tongsha Road No.168, XiLi Town, Nanshan District, Shenzhen, Guangdong, 518000 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】雷 健華
(72)【発明者】
【氏名】張 勇波
(72)【発明者】
【氏名】馬 輝
(72)【発明者】
【氏名】秦 ▲ゲン▼
【審査官】小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102680851(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107703823(CN,A)
【文献】特開2012-233718(JP,A)
【文献】特開平3-191870(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104931758(CN,A)
【文献】韓国登録特許第10-2111489(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/50-31/74
G01R 15/00-15/26
G01R 19/00-19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出機器の漏れ電流を検出するための漏れ電流検出回路であって、主巻線と、補助巻線と、検出モジュールと、信号出力モジュールとを備えており、
前記主巻線は前記被検出機器の漏れ電流検出端に接続するためのものであり、前記補助巻線に結合され、前記補助巻線はそれぞれ前記信号出力モジュールと前記検出モジュールに接続され、
前記信号出力モジュールは、前記補助巻線が臨界飽和状態になるように正負交互のパルス信号を出力するためのものであり、
前記検出モジュールは、前記補助巻線が前記臨界飽和状態にあるとき、前記補助巻線の電流信号を検出し、前記電流信号に基づいて前記被検出機器の漏れ電流を検出するためのものであり、
前記電流信号に基づいて前記被検出機器の漏れ電流を検出することは、
前記電流信号がプリセット閾値より大きいか否かを検出することと、
前記電流信号が前記プリセット閾値より大きい場合に、前記電流信号の方向情報を取得することと、
前記方向情報に基づいて、前記パルス信号のデューティ比の大きさを逆方向調節し、前記補助巻線の電流信号を新たに得、ここで、前記電流信号が正であることを検出した場合、正方向パルス信号のデューティ比を小さくし、前記電流信号が負であることを検出した場合、負方向パルス信号のデューティ比を小さくすることと、
新たに得られた前記電流信号と調節後のデューティ比の大きさから、漏れ電流情報を算出して、前記被検出機器の漏れ電流を検出することと、含むことを特徴とする漏れ電流検出回路。
【請求項2】
前記信号出力モジュールは、第1のスイッチングトランジスタ、第2のスイッチングトランジスタ、第3のスイッチングトランジスタ、第4のスイッチングトランジスタ、及び第1の制御ユニットを含み、
前記第1のスイッチングトランジスタの第1の端及び前記第2のスイッチングトランジスタの第1の端は電源に接続するためのものであり、前記第1のスイッチングトランジスタの第2の端は前記検出モジュールを介して前記補助巻線の第1の端に接続され、また前記第4のスイッチングトランジスタの第1の端に接続され、前記第2のスイッチングトランジスタの第2の端はそれぞれ、前記補助巻線の第2の端と前記第3のスイッチングトランジスタの第1の端に接続され、前記第3のスイッチングトランジスタの第2の端及び前記第4のスイッチングトランジスタの第2の端は接地用であり、前記第1の制御ユニットはそれぞれ、前記第1のスイッチングトランジスタ、前記第2のスイッチングトランジスタ、前記第3のスイッチングトランジスタ及び前記第4のスイッチングトランジスタの制御端に接続され、
前記第1の制御ユニットは、前記第1のスイッチングトランジスタ、前記第2のスイッチングトランジスタ、前記第3のスイッチングトランジスタ及び前記第4のスイッチングトランジスタのオンオフ状態を制御して前記正負交互のパルス信号を出力するためのものであり、ただし、前記第1のスイッチングトランジスタと前記第3のスイッチングトランジスタとはオンオフ状態が同じであり、前記第2のスイッチングトランジスタと前記第4のスイッチングトランジスタとはオンオフ状態が同じであり、また、前記第1のスイッチングトランジスタと前記第2のスイッチングトランジスタを交互にオンにする、ことを特徴とする請求項1に記載の漏れ電流検出回路。
【請求項3】
前記検出モジュールは、サンプリング抵抗、演算増幅器、及び第2の制御ユニットを含み、
前記補助巻線の第1の端は前記サンプリング抵抗を介して前記信号出力モジュールに接続され、前記演算増幅器の2つの入力端は前記サンプリング抵抗の両端に接続され、前記演算増幅器の出力端は前記第2の制御ユニットに接続される、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の漏れ電流検出回路。
【請求項4】
前記検出モジュールは、さらに、前記電流信号がプリセット電流より大きいか否かを判断し、前記電流信号が前記プリセット電流より大きい場合に漏れ電流警報信号を出力するためのものである、ことを特徴とする請求項1に記載の漏れ電流検出回路。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の漏れ電流検出回路に適用される漏れ電流検出方法であって、
前記補助巻線が臨界飽和状態になるように、前記補助巻線に正負交互のパルス信号を入力することと、
前記補助巻線が前記臨界飽和状態にあるとき、前記補助巻線の電流信号を検出することと、

前記電流信号がプリセット閾値より大きいか否かを検出することと、
前記電流信号が前記プリセット閾値より大きい場合に、前記電流信号の方向情報を取得することと、
前記方向情報に基づいて、前記パルス信号のデューティ比の大きさを逆方向調節し、前記補助巻線の電流信号を新たに得、ここで、前記電流信号が正であることを検出した場合、正方向パルス信号のデューティ比を小さくし、前記電流信号が負であることを検出した場合、負方向パルス信号のデューティ比を小さくすることと、
新たに得られた前記電流信号と調節後のデューティ比の大きさから、前記漏れ電流情報を算出して、前記被検出機器の漏れ電流を検出することと、を含む、ことを特徴とする漏れ電流検出方法。
【請求項6】
前記補助巻線が臨界飽和状態になるように、前記補助巻線に正負交互のパルス信号を入力することは、
前記補助巻線の磁気コア断面積、コイル巻き数を含む前記補助巻線のパラメータ情報を取得することと、
前記補助巻線が臨界飽和状態にあるときの磁気誘導強度の変化量を取得することと、
前記パラメータ情報及び前記磁気誘導強度の変化量から、前記パルス信号の第1のデューティ比を算出することと、
前記補助巻線が前記臨界飽和状態になるように、前記補助巻線に前記正負交互のパルス信号を入力することとを含み、ここで、前記パルス信号のデューティ比の大きさが算出された前記第1のデューティ比であることを特徴とする請求項5に記載の漏れ電流検出方法。
【請求項7】
前記方向情報に基づいて、前記パルス信号のデューティ比の大きさを逆方向調節することは、
前記電流信号が正であることを検出した場合、正方向パルス信号のデューティ比を小さくし、負方向パルス信号のデューティ比を一定に保つことと、
前記電流信号が負であることを検出した場合、負方向パルス信号のデューティ比を小さくし、正方向パルス信号のデューティ比を一定に保つことを含む、ことを特徴とする請求項5に記載の漏れ電流検出方法。
【請求項8】
前記電流信号が第1のプリセット閾値より大きく、かつ、第2のプリセット閾値より小さいことを検出した場合、前記方向情報に基づいて、第2のデューティ比になるように前記パルス信号のデューティ比の大きさを逆方向調節することと、
前記電流信号が前記第2のプリセット閾値より大きいことを検出した場合、前記方向情報に基づいて、第3のデューティ比になるように前記パルス信号のデューティ比の大きさを逆方向調節することとをさらに含み、ここで、前記第1のプリセット閾値は前記第2のプリセット閾値よりも小さく、前記第2のデューティ比は前記第3のデューティ比よりも大きい、ことを特徴とする請求項5に記載の漏れ電流検出方法。
【請求項9】
前記補助巻線が臨界飽和状態になるように、前記補助巻線に正負交互のパルス信号を入力することの後に、
前記漏れ電流検出回路に電流入力源が外付けされて、前記漏れ電流検出回路に第1の電流が流れるようになり、ここで、前記第1の電流はプリセット電流以上であることと、
前記補助巻線からの第1の出力値を取得、記録し、外付け前記電流入力源を遮断して前記漏れ電流検出回路における第1の電流をゼロにし、前記補助巻線からの第2の出力値を取得することと、
前記正負交互のパルス信号のデューティ比を取得し、前記第1の出力値と前記第2の出力値との差分がプリセット範囲内になるように一方のパルス信号のデューティ比を調整し、調整後のデューティ比を取得することと、
調整後のデューティ比と他方のパルス信号のデューティ比を自己検初期パルス幅に設定することと、
主巻線の漏れ電流がゼロの場合、前記正負交互のパルス信号の一方を前記自己検初期パルス幅まで小さくし、漏れ電流故障を誘発するかどうかを判断して、前記漏れ電流検出回路の自己検を実現することとをさらに含む、ことを特徴とする請求項5に記載の漏れ電流検出方法。
【請求項10】
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の漏れ電流検出回路を備えることを特徴とする漏れ電流検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2021年11月08日に中国専利局(中国特許庁)に出願された、出願番号が202111312286.3であり、発明の名称が「漏れ電流検出回路、方法及び漏れ電流検出器」である中国特許出願に基づく優先権を主張し、その全ての内容は本願で参照により組み込まれる。
【0002】
本願はインバータの漏れ電流検出の技術分野に関し、例えば漏れ電流検出回路、方法及び漏れ電流検出器に関するものである。
【背景技術】
【0003】
太陽光発電・太陽エネルギー貯蔵グリッドタイインバーターでは、太陽光発電モジュールアレイの各端子と地との間の接触電流が30mAを超える場合、電力変換装置(例えば、インバーター)に残留電流(漏れ電流)の検出または監視保護の機能を備える必要がある。
【0004】
従来技術では、回路によって特定周波数の矩形波電圧を発生して変流器の二次巻線に印加する場合、変流器の交流出力に不平衡電流(すなわち、漏れ電流)があると、この漏れ電流が二次巻線に重畳され、これにより、検出回路に認識されている。上記のように漏れ電流を検出する場合では、漏れ電流の検出時に感度が低下し、コストが大きいという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願に係る実施形態は、漏れ電流検出感度を向上し、漏れ電流検出コストを低減した漏れ電流検出回路、方法及び漏れ電流検出器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に係る実施形態が上述した技術的課題を解決するために採用する一つの技術手段は、主巻線と、補助巻線と、検出モジュールと、信号出力モジュールとを備える漏れ電流検出回路を提供するものであり、
前記主巻線は前記被検出機器の漏れ電流検出端に接続するためのものであり、前記補助巻線に結合され、前記補助巻線はそれぞれ前記信号出力モジュールと前記検出モジュールに接続され、
前記信号出力モジュールは、前記補助巻線がプリセット状態になるように正負交互のパルス信号を出力するためのものであり、
前記検出モジュールは、前記補助巻線が前記プリセット状態にあるとき、前記補助巻線の電流信号を検出し、前記電流信号に基づいて前記被検出機器の漏れ電流を検出するためのものである。
【0007】
オプションとして、前記信号出力モジュールは、第1のスイッチ管、第2のスイッチ管、第3のスイッチ管、第4のスイッチ管、及び第1の制御ユニットを含み、
前記第1のスイッチ管の第1の端及び前記第2のスイッチ管の第1の端は電源に接続するためのものであり、前記第1のスイッチ管の第2の端は前記検出モジュールを介して前記補助巻線の第1の端に接続され、また前記第4のスイッチ管の第1の端に接続され、前記第2のスイッチ管の第2の端はそれぞれ、前記補助巻線の第2の端と前記第3のスイッチ管の第1の端に接続され、前記第3のスイッチ管の第2の端及び前記第4のスイッチ管の第2の端は接地用であり、前記第1の制御ユニットはそれぞれ、前記第1のスイッチ管、前記第2のスイッチ管、前記第3のスイッチ管及び前記第4のスイッチ管の制御端に接続され、
前記第1の制御ユニットは、前記第1のスイッチ管、前記第2のスイッチ管、前記第3のスイッチ管及び前記第4のスイッチ管のオンオフ状態を制御して前記正負交互のパルス信号を出力するためのものであり、ただし、前記第1のスイッチ管と前記第3のスイッチ管とはオンオフ状態が同じであり、前記第2のスイッチ管と前記第4のスイッチ管とはオンオフ状態が同じであり、また、前記第1のスイッチ管と前記第2のスイッチ管を交互にオンにする。
【0008】
オプションとして、前記検出モジュールは、サンプリング抵抗、演算増幅器、及び第2の制御ユニットを含み、
前記補助巻線の第1の端は前記サンプリング抵抗を介して前記信号出力モジュールに接続され、前記演算増幅器の2つの入力端は前記サンプリング抵抗の両端に接続され、前記演算増幅器の出力端は前記第2の制御ユニットに接続される。
【0009】
オプションとして、前記検出モジュールは、さらに、前記電流信号及び前記パルス信号のデューティ比から、漏れ電流情報を取得して、前記被検出機器の漏れ電流を検出するためのものであり、または、
前記検出モジュールは、さらに、前記電流信号がプリセット電流より大きいか否かを判断し、前記電流信号が前記プリセット電流より大きい場合に漏れ電流警報信号を出力するためのものである。
【0010】
本願に係る実施形態が上述した技術的課題を解決するために採用する別の技術手段は、上記実施形態の何れかに記載の漏れ電流検出回路に適用される漏れ電流検出方法を提供するものであり、この方法は、補助巻線がプリセット状態になるように、前記補助巻線に正負交互のパルス信号を入力すること、
前記補助巻線が前記プリセット状態にあるとき、前記補助巻線の電流信号を検出すること、
前記電流信号に基づいて、前記被検出機器の漏れ電流を検出することを含む。
【0011】
オプションとして、前記補助巻線がプリセット状態になるように、前記補助巻線に正負交互のパルス信号を入力することは、
前記補助巻線の磁気コア断面積、コイル巻き数を含むパラメータ情報である前記補助巻線のパラメータ情報を取得すること、
前記補助巻線が臨界飽和状態にあるときの磁気誘導強度の変化量を取得すること、
前記パラメータ情報及び前記磁気誘導強度の変化量から、前記パルス信号の第1のデューティ比を算出すること、
前記補助巻線が前記プリセット状態になるように、前記補助巻線に前記正負交互のパルス信号を入力することを含み、ただし、前記パルス信号のデューティ比の大きさが算出された前記第1のデューティ比である。
【0012】
オプションとして、前記方法は、さらに、
前記電流信号がプリセット閾値より大きいか否かを検出すること、
前記電流信号が前記プリセット閾値より大きい場合に、前記電流信号の方向情報を取得すること、
前記方向情報に基づいて、前記パルス信号のデューティ比の大きさを逆方向調節し、前記補助巻線の電流信号を新たに得ること、
新たに得られた前記電流信号と調節後のデューティ比の大きさから、前記漏れ電流情報を取得して、前記被検出機器の漏れ電流を検出することを含む。
【0013】
オプションとして、前記方向情報に基づいて、前記パルス信号のデューティ比の大きさを逆方向調節することは、
前記電流信号が正であることを検出した場合、正方向パルス信号のデューティ比を小さくし、負方向パルス信号のデューティ比を一定に保つこと、
前記電流信号が負であることを検出した場合、負方向パルス信号のデューティ比を小さくし、正方向パルス信号のデューティ比を一定に保つことを含む。
【0014】
オプションとして、前記方法は、さらに、
前記電流信号が第1のプリセット閾値より大きく、かつ、第2のプリセット閾値より小さいことを検出した場合、前記方向情報に基づいて、第2のデューティ比になるように前記パルス信号のデューティ比の大きさを逆方向調節すること、
前記電流信号が前記第2のプリセット閾値より大きいことを検出した場合、前記方向情報に基づいて、第3のデューティ比になるように前記パルス信号のデューティ比の大きさを逆方向調節することを含み、ただし、前記第1のプリセット閾値は前記第2のプリセット閾値よりも小さく、前記第2のデューティ比は前記第3のデューティ比よりも大きいである。
【0015】
オプションとして、前記補助巻線がプリセット状態になるように、前記補助巻線に正負交互のパルス信号を入力することの後に、
正方向パルス信号と負方向パルス信号とのデューティ比の大きさが互いに異なるように、前記正負交互のパルス信号における正方向または負方向のデューティ比の大きさを調整し、前記補助巻線の電流信号をリアルタイムで検出すること、
前記電流信号の大きさを判断することにより、前記漏れ電流検出回路の自己検を行うことをさらに含む。
【0016】
本願に係る実施形態が上述した技術的課題を解決するために採用する別の技術手段は、漏れ電流検出器を提供するものであり、この漏れ電流検出器は、上記実施形態の何れかに記載の漏れ電流検出回路を備える、及び/又は、上記実施形態の何れかに記載の漏れ電流検出方法によって漏れ電流を検出する。
【発明の効果】
【0017】
本願に係る実施形態は漏れ電流検出回路、方法及び漏れ電流検出器を提供しており、この漏れ電流検出回路は、主巻線と、補助巻線と、検出モジュールと、信号出力モジュールとを備え、被検出機器の漏れ電流を検出するためのものであり、前記主巻線は前記被検出機器の漏れ電流検出端に接続するためのものであり、前記補助巻線に結合され、前記補助巻線はそれぞれ前記信号出力モジュールと前記検出モジュールに接続され、前記信号出力モジュールは、前記補助巻線がプリセット状態になるように正負交互のパルス信号を出力するためのものであり、この場合、前記主巻線に漏れ電流があると、前記補助巻線に結合された漏れ電流が前記正負交互のパルス信号に重畳されるため、前記検出モジュールによる検出された電流信号は、前記正負交互のパルス信号が印加されていないときに検出された電流信号よりも大きくなり、これにより、漏れ電流検出感度を向上し、感度の高い検出手段を採用する必要がなく、検出コストを低減した。
【図面の簡単な説明】
【0018】
1つ又は複数の実施形態について、その対応する添付図面に基づいて例示的に説明するが、これらの例示的な説明によって実施形態を限定することはない。添付図面において、同じ参照数字番号を有する要素は、類似な要素であることを表し、特に明記しない限り、添付図面における図のスケールは制限されない。
図1】本願に係る実施形態による漏れ電流検出回路の構造模式図である。
図2a】本願に係る実施形態による漏れ電流検出回路において漏れ電流を検出しなかった場合の波形図である。
図2b】本願に係る実施形態による漏れ電流検出回路において漏れ電流を検出しなかった場合の波形図である。
図2c】本願に係る実施形態による漏れ電流検出回路において漏れ電流を検出しなかった場合の波形図である。
図3】本願に係る実施形態による漏れ電流検出回路において漏れ電流を検出した場合の波形図である。
図4】本願に係る実施形態による漏れ電流検出回路の回路構造模式図である。
図5】本願に係る実施形態による漏れ電流検出方法のフローチャートである。
図6a】本願に係る実施形態による漏れ電流検出回路において異なるデューティ比に対応する電流信号の波形図である。
図6b】本願に係る実施形態による漏れ電流検出回路において異なるデューティ比に対応する電流信号の波形図である。
図6c】本願に係る実施形態による漏れ電流検出回路において異なるデューティ比に対応する電流信号の波形図である。
図6d】本願に係る実施形態による漏れ電流検出回路において異なるデューティ比に対応する電流信号の波形図である。
図7a】本願に係る実施形態による漏れ電流検出回路における補助巻線の測定出力値の調整を示す図である。
図7b】本願に係る実施形態による漏れ電流検出回路における補助巻線の測定出力値の調整を示す図である。
図7c】本願に係る実施形態による漏れ電流検出回路における補助巻線の測定出力値の調整を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本願の目的、技術手段及び利点をより一層明らかにするように、添付図面及び実施形態に基づいて本願をさらに詳細に説明する。ここで記載された具体的な実施形態は、本願を釈明するためのものだけであり、本願がこれに制限されないことを理解すべきである。
【0020】
なお、衝突しなければ、本願に係る実施形態における各特徴は互いに組み合わせてもよく、いずれも本願の保護範囲内である。また、装置の模式図において機能モジュールを区画し、フローチャートにおいて論理的な手順を示しているが、場合によって、示されたまたは説明されたステップは、装置の模式図とは異なる機能モジュールの区画で、またはフローチャートとは異なる手順で実行されてもよい。
【0021】
特に定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本願の技術分野に属する当業者によって通常理解される意味と同じである。本願の明細書で使用される用語は、具体的な実施態様を説明する目的だけであり、本願を制限するためのものではない。本明細書で使用される「および/または」の用語は、1つまたは複数の挙げられた関連項目の任意およびすべての組み合わせを含む。
【0022】
図1を参照すると、図1は、本願に係る実施形態による漏れ電流検出回路の構造模式図であり、この漏れ電流検出回路1は、被検出機器の漏れ電流を検出するためのものであり、主巻線11、補助巻線12、検出モジュール13及び信号出力モジュール14を備える。
【0023】
ここで、前記主巻線11は前記被検出機器の漏れ電流検出端に接続するためのものであり、前記補助巻線12に結合されており、前記補助巻線12はそれぞれ前記検出モジュール13と信号出力モジュール14に接続されている。
【0024】
前記信号出力モジュール14は、前記補助巻線12がプリセット状態になるように正負交互のパルス信号を出力するためのものである。
【0025】
前記検出モジュール13は、前記補助巻線12が前記プリセット状態にあるとき、前記補助巻線12の電流信号を検出し、前記電流信号に基づいて前記被検出機器の漏れ電流を検出するためのものである。
【0026】
具体的には、前記主巻線11は前記被検出機器の漏れ電流検出端に接続されており、この漏れ電流検出端は例えばDC-ACモジュールの漏れ電流検出端であってもよい。いくつかの実施形態において、前記主巻線11と前記補助巻線12はインダクタンス部品であってもよく、前記主巻線11と前記補助巻線12はそれぞれコモンモードインダクタンスと補助インダクタンスであり、前記コモンモードインダクタンスと前記補助インダクタンスは例えば鉄芯で結合されて前記被検出機器の漏れ電流を検出する。
【0027】
具体的には、前記正負交互のパルス信号とは、第1のタイミングで正方向のパルス信号、第2のタイミングで負(逆)方向のパルス信号、第3のタイミングで正方向のパルス信号、第4のタイミングで負方向のパルス信号がそれぞれ入力されることを順次循環して、パルス信号を出力し続けることを意味し、ここで、前記正方向のパルス信号と前記負方向のパルス信号との方向は逆であり、例えば、前記補助巻線12は第1の端と第2の端を有し、前記正方向のパルス信号は前記補助巻線12に入力される場合、前記第1の端から流入して、前記第2の端から流出し、前記負方向のパルス信号は前記補助巻線12に入力される場合、前記第2の端から流入して、前記第1の端から流出し、ここで、前記正方向のパルス信号と前記負方向のパルス信号は電気信号であってもよい。このように、前記信号出力モジュール14によって前記正負交互のパルス信号を出力して、前記補助巻線12を前記プリセット状態にする。なお、前記プリセット状態とは、前記補助巻線12が臨界飽和している状態や、前記補助巻線12が磁気増幅されている状態、または、前記補助巻線12に印加された電圧が変化したときに電圧変化量が最大となる状態であってもよい。
【0028】
具体的には、図2a~図2cに示すように、前記主巻線11に漏れ電流が発生していない場合、前記信号出力モジュール14が前記補助巻線12に前記正負交互のパルス信号を入力すると、前記検出モジュール13によって正負交互の電流または電圧信号が検出され、かつ1サイクル内で正方向電流の実効値と負方向電流の実効値が等しくなり、このとき、前記検出モジュール13によって1サイクル内で採集された電流の実効値がゼロである。すなわち、前記検出モジュール13によって前記電流信号がゼロであることを検出した場合、前記被検出機器に漏れ電流故障が発生していないことを示す。
【0029】
一方、前記主巻線11に漏れ電流が流れている場合、前記補助巻線12には対応する誘導電流が発生され、発生された前記誘導電流は前記正負交互のパルス信号に重畳され、前記検出モジュール13によって検出された前記補助巻線12の電流情報は一方側にシフトし、図3に示すように、漏れ電流が正の場合、前記検出モジュール13によって採集された正方向電圧または正方向電流が増大し、負方向電圧または負方向電流が減少して、1サイクル内で検出された電流または電圧の実効値が大きくなり、これにより、漏れ電流検出を実現するとともに漏れ電流検出感度を向上することができ、また、高価の漏れ電流センサーを採用する必要がなく、漏れ電流検出コストを低減した。
【0030】
いくつかの実施例において、図4を参照すると、図4は本願に係る実施形態による漏れ電流検出回路の回路構成図である。
【0031】
図4に示すように、前記信号出力モジュール14は、第1のスイッチ管Q1、第2のスイッチ管Q2、第3のスイッチ管Q3、第4のスイッチ管Q4、及び第1の制御ユニットを含む。前記第1のスイッチ管Q1の第1の端及び前記第2のスイッチ管Q2の第1の端は電源に接続するためのものであり、前記第1のスイッチ管Q1の第2の端は前記検出モジュール13を介して前記補助巻線12の第1の端に接続され、また前記第4のスイッチ管Q4の第1の端に接続され、前記第2のスイッチ管Q2の第2の端はそれぞれ、前記補助巻線12の第2の端と前記第3のスイッチ管Q3の第1の端に接続され、前記第3のスイッチ管Q3の第2の端及び前記第4のスイッチ管Q4の第2の端は接地用であり、前記第1の制御ユニットはそれぞれ、前記第1のスイッチ管Q1、前記第2のスイッチ管Q2、前記第3のスイッチ管Q3及び前記第4のスイッチ管Q4の制御端に接続されている。
【0032】
前記第1の制御ユニットは、前記第1のスイッチ管Q1、前記第2のスイッチ管Q2、前記第3のスイッチ管Q3及び前記第4のスイッチ管Q4のオンオフ状態を制御して前記正負交互のパルス信号を出力するためのものであり、ただし、前記第1のスイッチ管Q1と前記第3のスイッチ管Q3とはオンオフ状態が同じであり、前記第2のスイッチ管Q2と前記第4のスイッチ管Q4とはオンオフ状態が同じであり、また、前記第1のスイッチ管Q1と前記第2のスイッチ管Q2を交互にオンにする。
【0033】
ここで、前記第1の制御ユニットは、前記第1のスイッチ管Q1、前記第2のスイッチ管Q2、前記第3のスイッチ管Q3及び前記第4のスイッチ管Q4のオンオフ状態を制御するためのPWM信号を出力するものであり、例えば、前記第1のスイッチ管Q1及び前記第3のスイッチ管Q3のオンオフ状態を制御するための第1の信号PWM1Aと、前記第2のスイッチ管Q2及び前記第4のスイッチ管Q4のオンオフ状態を制御するための第2の信号PWM1Bとを周期的に交互に出力しており、オンオフ状態とは、導通または切断の状態である。図2a~図2bを参照して、前記正負交互のパルス信号は、第1の信号PWM1Aと第2の信号PWM1Bを含む。前記第1の信号PWM1Aは正電圧VCCに対応し、前記第2の信号PWM1Bは負電圧-VCCに対応し、前記正負交互のパルス信号を周期的に出力して、前記補助巻線12に異なる方向の電流を流すことにより、前記補助巻線12を臨界飽和状態にする。
【0034】
なお、前記パルス信号を周期的に出力して、前記補助巻線12に流れる電流が変化することにより、誘導磁界が発生するが、一般的にVCC電圧は例えば、5Vや12Vなどと比較的小さいため、前記補助巻線12に発生する誘導起電力も比較的小さく、前記主巻線11への影響は無視できる。
【0035】
具体的には、前記第1の制御ユニットが前記第1のスイッチ管Q1および前記第3のスイッチ管Q3をオンにするように制御すると、電源から出力された電気信号は、前記電源から前記第1のスイッチ管Q1を介して前記検出モジュール13に送られた後に、前記検出モジュール13から前記補助巻線12に送られ、最後に前記第3のスイッチ管Q3を介して地に流入した。前記第1の制御ユニットが前記第2のスイッチ管Q2および前記第4のスイッチ管Q4をオンにするように制御すると、電源から出力された電気信号は、前記電源から前記第2のスイッチ管Q2を介して前記補助巻線12に送られた後に、前記補助巻線12から前記検出モジュール13を介して地に流入した。このように、前記第1のスイッチ管Q1および第2のスイッチ管Q2の導通状態を交互に制御することにより、前記補助巻線12に正負交互のパルス信号を入力することができる。
【0036】
図4に示すように、いくつかの実施形態において、前記検出モジュール13はサンプリング抵抗R1、演算増幅器U1及び第2の制御ユニットを含む。前記補助巻線12の第1の端は前記サンプリング抵抗を介して前記信号出力モジュール14に接続され、前記演算増幅器U1の2つの入力端は前記サンプリング抵抗の両端に接続され、前記演算増幅器の出力端は前記第2の制御ユニットに接続されている。本実施形態において、前記第2の制御ユニットと前記第1の制御ユニットは同一の制御モジュール、すなわち図4中のCPUである。
【0037】
いくつかの実施形態において、前記検出モジュール13はさらに、第1の端が前記演算増幅器U1の出力端に接続され、第2の端が前記第2の制御ユニットに接続されるフィルターを含む。
【0038】
具体的には、前記電流の方向が絶えず変化しており、前記補助巻線12の磁気コアの飽和時間がかなり短いので、前記補助巻線12の後にフィルターを設けることで、前記誘導電流による過渡スパイクを除去して、前記第2の制御ユニットによる誤判定を回避するようになる。
【0039】
いくつかの実施形態において、前記検出モジュール13はさらに、前記電流信号及び前記パルス信号のデューティ比から、漏れ電流情報を取得して、前記被検出機器の漏れ電流を検出するためのものである。具体的には、前記補助巻線12の両端には正負交互のパルス信号が印加されたため、前記検出モジュール13によって検出された前記電流信号は実際の漏れ電流信号と異なり、前記実際の漏れ電流信号は、印加されたパルス信号のデューティ比と一定の比例関係にあるため、デューティ比の大きさと検出された電流信号から漏れ電流値を計算することができる。さらに、前記電流信号と前記漏れ電流情報の関数関係式を取得し、この関係式より漏れ電流情報を算出し、また、この関係式を算出してもよいし、具体的な実験データで関数関係式または曲線図をフィッティングしてもよい。
【0040】
いくつかの実施形態において、前記検出モジュール13はさらに、前記電流信号がプリセット電流より大きいか否かを判断し、前記電流信号が前記プリセット電流より大きい場合、漏れ電流警報信号を出力するためのものである。具体的には、検出基準に従って、前記被検出機器の実際の漏れ電流値が30mAを超えた場合、前記被検出機器に漏れ電流故障が発生していることは示されるので、ユーザのニーズに応じて、漏れ電流故障の有無を判断するだけが必要であると、検出された電流信号がプリセット電流より大きいか否かを判断することで判断を行って、プロセッサの演算負荷を低減することができる。さらに、このプリセット電流は、ユーザの実際のニーズに応じて自己定義してもよいし、漏れ電流検出回路1の構築が完了した後、前記主巻線11に30mAの電流信号を模擬、測定し、その時に検出された電流信号を記録し、その電流信号をプリセット電流としてもよい。
【0041】
具体的には、前記警報信号は信号灯であってもよく、前記検出モジュール13によって前記被検出機器に漏れ電流があることを検出したときに、前記信号灯が点灯して前記警報信号を生成するようになる。
【0042】
ここで、前記第1の制御ユニットと前記第2の制御ユニットは、同一のCPUであってもよいし、2つのCPUであってもよい。これらは上記の回路設計の要求を満たせばよい。
【0043】
本願に係る実施形態は、主巻線、補助巻線、検出モジュールおよび信号出力モジュールを備える漏れ電流検出回路であって、被検出機器の漏れ電流を検出するための漏れ電流検出回路を提供しており、前記主巻線は前記被検出機器の漏れ電流検出端に接続され、かつ前記補助巻線に結合され、前記補助巻線はそれぞれ前記信号出力モジュールと前記検出モジュールに接続され、前記信号出力モジュールは、前記補助巻線がプリセット状態になるように正負交互のパルス信号を出力するためのものであり、前記主巻線に漏れ電流があると、前記補助巻線に結合された漏れ電流が前記正負交互のパルス信号に重畳されるため、前記検出モジュールによって検出された電流信号は、正負交互のパルス信号が印加されていないときに検出された電流信号よりも大きくなり、これにより、漏れ電流検出感度を向上し、感度の高い検出手段を採用する必要がなく、検出コストを低減した。
【0044】
図5を参照すると、前記図5は、本願に係る実施形態による漏れ電流検出方法のフローチャートであり、図5に示すように、前記方法は、前記漏れ電流検出回路によって実行され、以下のステップを含む。
【0045】
S01、前記補助巻線がプリセット状態になるように、前記補助巻線に正負交互のパルス信号を入力する。
【0046】
ここで、前記補助巻線のプリセット状態とは、前記補助巻線が臨界飽和状態にあることを意味し、また、前記臨界飽和状態とは、正負交互のパルス信号を周期的に出力することで、前記補助巻線における電流方向を変えて、前記補助巻線を臨界飽和状態にすることを意味する。
【0047】
前記パルス信号は、パルス信号のデューティ比を含む。具体的には、前記補助巻線の磁気コア断面積、コイル巻き数を含むパラメータ情報である前記補助巻線のパラメータ情報、および前記補助巻線が臨界飽和状態にあるときの磁気誘導強度の変化量を取得し、そして、前記パラメータ情報と前記磁気誘導強度の変化量から、前記パルス信号の第1のデューティ比を算出し、このとき、前記パルス信号のデューティ比の大きさは、算出した前記第1のデューティ比Dである。
【0048】
具体的には、前記デューティ比を計算する式は次のとおりである。
式の中で、Tsはサイクル時間であり、Tonは電圧印加時間である。
【0049】
前記電圧印加時間は以下の式で表される。
式の中で、△Bは磁気誘導強度の変化量であり、Uは補助巻線に印加される電圧であり、Tonは電圧印加時間であり、Aeは磁気コア断面積であり、Nsは補助巻線のコイル巻数である。
【0050】
前記サイクル時間は以下の式で表される。
式の中で、前記fはスイッチング周波数である。
【0051】
なお、前記磁気誘導強度の変化量は、磁気コア材料の最大磁気誘導強度Bmaxの1.2~1.5倍から選択すべきである。前記補助巻線に正負交互のパルス信号を印加することにより、前記補助巻線が臨界飽和状態になり、漏れ電流検出確さが向上される。
【0052】
以下に、一つの具体的な第1のデューティ比の計算過程を説明すると、磁気コアの最大飽和磁気誘導強度Bmaxが0.36Tであり、補助巻線の臨界飽和状態における磁気誘導強度の変化量ΔBを最大飽和磁気誘導強度Bmaxの1.2倍とすると、△B=0.432Tである。磁気コア断面積Ae=0.0596cmであり、スイッチング周波数fを7KHzとし、補助巻線の巻き数Nが73であり、前記パルス信号のピーク電圧VCC=5V、すなわちUL=5Vであり、上記のデータを式(1)、式(2)及び式(3)に代入して、デューティ比Dは0.263と算出された。すなわち、制御信号出力モジュールがデューティ比0.263のパルス信号を出力することで、前記補助巻線をプリセット状態、すなわち臨界飽和状態にすることができる。
【0053】
いくつかの実施形態において、前記漏れ電流検出回路は、磁気誘導強度の変化量の要件を確定できるという前提に、パルスのデューティ比と前記磁気コア材料および前記補助巻線のコイル巻き数との関係から、所要の前記磁気コア材料と前記補助巻線のコイル巻き数が要件を満たしていることを確定し、さらに、回路設計のコストを低減するために、最もコストパフォーマンスの良い前記磁気コア材料と前記補助巻線のコイル巻き数を選定する。
【0054】
他の実施形態において、前記漏れ電流検出回路は、前記磁気誘導強度の変化量の要件および前記磁気コア材料を確定できるという前提に、パルスのデューティ比と前記補助巻線のコイル巻き数との関係から、前記補助巻線のコイル巻き数が要件を満たしていることを確定し、さらに、回路設計のコストを低減するために、最もコストパフォーマンスの良い前記補助巻線のコイル巻き数を選定する。
【0055】
一つの実施形態において、前記第1のデューティ比はさらに、
前記補助巻線に複数の異なるデューティ比の正方向または負方向のパルス信号を入力すること、
各デューティ比に対応する電流信号を検出すること、
各デューティ比およびその対応する電流信号から、デューティ比と電流信号の曲線をフィッティングすること、
フィッティングされたデューティ比と電流信号の曲線の中で最も傾きの大きい点に対応するデューティ比の大きさを取得し、そのデューティ比の大きさを第1のデューティ比とすること、
前記補助巻線が前記プリセット状態になるように、デューティ比の大きさが第1のデューティ比である正負交互のパルス信号を前記補助巻線に入力することを含む方法によっても確定することができる。
【0056】
具体的には、前記補助巻線に複数の異なるデューティ比の正方向または負方向のパルス信号を入力し、前記検出モジュールによって前記補助巻線の異なるデューティ比に対応する電流情報を読み取ることにより、デューティ比と電流情報との対応関係の複数の離散点を取得することができ、取得された離散点が多いほど、フィッティングされたデューティ比と電流信号との曲線が実際の検出値に近くなり、前記漏れ電流の検出も正確になる。図6a~6dに示すように、前記補助巻線に異なるデューティ比が入力された場合、対応する電流信号の実効値も異なる(単向パルスを例とする)が、一般的には、パルス信号が大きくなるにつれて、対応する電流信号の変化量は徐々に大きくなり、その後徐々に小さくなる。したがって、フィッティングされたデューティ比と電流信号との曲線の中で最も傾きの大きい点に対応するデューティ比の大きさを取得すれば、デューティ比が変化したときに電流信号の変化量が最も大きくなる点を取得できる。つまり、前記主巻線に漏れ電流が発生している場合、検出された電流信号の値が大きいほど、漏れ電流検出感度が大きくなる。このように、デューティ比の大きさが第1のデューティ比である正負交互のパルス信号を前記補助巻線に印加することにより、漏れ電流検出感度を向上することができる。
【0057】
S02、前記補助巻線が前記プリセット状態にあるとき、前記補助巻線の電流信号を検出する。
【0058】
ここで、前記検出モジュールによって、前記電流の方向及び大きさを含む前記補助巻線の電流信号を検出し、具体的には、前記補助巻線から流出する電流信号を取得してから前記電流信号を増幅し、前記増幅された電流信号を濾波し、最後に前記第2の制御ユニットに入力する。ただし、前記電流信号を増幅することにより、前記漏れ電流検出感度を向上させることができるが、前記増幅された電流信号によって過渡スパイクが発生し、この場合、前記過渡スパイクを除去することにより、前記第2の制御ユニットの誤判定を低減することができる。
【0059】
具体的には、前記補助巻線が前記プリセット状態にあるときに、前記主巻線に漏れ電流があると、前記補助巻線にも、その対応する誘導電流が発生して、前記補助巻線に流れる電流を正方向または負方向に増加させ、式によると、
式の中で、Uは前記補助巻線における電圧であり、前記Lはインダクタンス量であり、dは前記補助巻線における電流増加量であり、dは前記補助巻線における時間増加量である。
前記補助巻線に誘導電流が発生すると、前記補助巻線における電流が急激に大きくなり、前記補助巻線における出力電圧も大きくなることがわかり、これが最終的に前記検出モジュールによって検出されて、これにより、前記被検出機器に漏れ電流があると確定され、警報信号が発せられる。
【0060】
S03、前記電流信号に基づいて、被検出機器の漏れ電流を検出する。
【0061】
具体的には、図2cを参照して、前記第1の制御ユニットは、正負交互のパルス信号を周期的に出力するように前記信号出力モジュールを制御することにより、前記補助巻線における電流の方向を変化させ、前記補助巻線における電圧も変化するようになる。前記主巻線に漏れ電流が発生していない場合、前記信号出力モジュールが前記補助巻線に正負交互の電流または電圧信号を入力すると、前記検出モジュールによって正負交互の電流または電圧信号が検出され、かつ1サイクル内で正方向電流の実効値と負方向電流の実効値が等しくなり、このとき、検出モジュールによって1サイクル内で採集された電流の実効値がゼロである。
【0062】
図3を参照して、前記漏れ電流検出回路に漏れ電流があると、発生された誘導電流は正負交互のパルス信号に重畳され、前記検出モジュールによって検出された前記補助巻線の電流情報は一方側にシフトし、漏れ電流が正の場合、前記検出モジュールによって採集された正方向電圧または正方向電流が増大し、負方向電圧または負方向電流が減少して、1サイクル内で検出された電流または電圧の実効値が大きくなり、これにより、漏れ電流の検出を実現するとともに漏れ電流検出感度を向上することができ、また、高価の漏れ電流センサーを採用する必要がなく、漏れ電流検出コストを低減した。
【0063】
具体的には、一実施形態において、前記電流信号に基づいて、前記被検出機器の漏れ電流を検出することは、前記電流信号が前記プリセット電流より大きいか否かを判断し、前記電流信号が前記プリセット電流より大きい場合に漏れ電流警報信号を出力するように行ってもよい。具体的には、ある基準に従って、前記被検出機器の実際の漏れ電流値が30mAを超えた場合、前記被検出機器に漏れ電流故障が発生していることは示されるので、ユーザのニーズに応じて、漏れ電流故障の有無を判断するだけが必要であると、検出された電流信号がプリセット電流より大きいか否かを判断することで判断を行って、プロセッサの演算負荷を低減することができる。さらに、このプリセット電流は、ユーザの実際のニーズに応じて自己定義してもよいし、漏れ電流検出回路の構築が完了した後、前記主巻線に30mAの電流信号を模擬、測定し、その時に検出された電流信号を記録し、その電流信号をプリセット電流としてもよい。別の実施形態において、前記電流信号に基づいて、前記被検出機器の漏れ電流を検出することは、前記電流信号及び前記パルス信号のデューティ比から、漏れ電流情報を取得して、前記被検出機器の漏れ電流を検出するように行ってもよい。具体的には、前記補助巻線の両端には正負交互のパルス信号が印加されたため、前記検出モジュールによって実に検出された電流信号は実際の漏れ電流信号と異なり、前記実際の漏れ電流信号は、印加されたパルス信号のデューティ比と一定の比例関係にあるため、デューティ比の大きさと検出された電流信号から漏れ電流値を計算することができる。さらに、電流信号と漏れ電流情報の関数関係式を取得し、この関係式より漏れ電流情報を算出し、また、この関係式を算出してもよいし、具体的な実験データで関数関係式または曲線図をフィッティングしてもよい。
【0064】
いくつかの実施形態では、前記漏れ電流検出方法は測定レンジの拡張も含む。前記補助巻線の飽和時に発生する過渡電流のピークはフィルターで除去されやすくため、測定レンジが小さくなり、そこで、前記補助巻線の測定出力を正負のバランスに近づけるようにデューティ比を逆方向調節することで、磁気コア飽和による測定結果への影響を低減し、検出精度を高め、測定レンジの拡張を実現する。
【0065】
具体的には、まず、前記電流信号がプリセット閾値より大きいか否かを判断し、前記電流信号がプリセット閾値より大きい場合に、前記電流信号の方向情報を取得してから、前記方向情報に基づいて、前記パルス信号のデューティ比の大きさを逆方向調節し、次に、前記補助巻線の電流信号を新たに取得し、新たに得られた前記電流信号と調節後のデューティ比の大きさから、前記漏れ電流情報を取得して、前記被検出機器の漏れ電流を検出する。上記のようにして、磁気コア飽和による測定結果への影響を低減しつつ、検出精度を高め、測定レンジの拡張を実現することができる。
【0066】
ここで、前記パルス信号のデューティ比の大きさを逆方向調節することは、前記電流信号が正であることを検出した場合、正方向パルス信号のデューティ比を小さくし、負方向パルス信号のデューティ比を一定に保つこと、前記電流信号が負であることを検出した場合、負方向パルス信号のデューティ比を小さくし、正方向パルス信号のデューティ比を一定に保つことを含む。図2a~図2cに示すように、前記補助巻線に正負交互のパルス信号を入力して検出された電流情報がプリセット値を超えていない場合、正方向パルス信号(PWM1A)のデューティ比と負方向パルス信号(PWM1B)のデューティ比の大きさは同等またはほぼ同等である。
【0067】
図7a~図7cを参照すると、図7a~図7cは、本願に係る実施形態による漏れ電流検出回路における補助巻線の測定出力値の調整を示す図であり、図7a~図7cに示すように、電流信号がプリセット閾値を超え、かつ電流信号が負であることを検出した場合、正方向パルス信号(PWM1A)のデューティ比を一定に保ち、負方向パルス信号(PWM1B)のデューティ比を小さくして、漏れ電流と正負交互のパルス信号は、補助巻線の測定出力を正負のバランスに近づくさせるようになり、これにより磁気コア飽和による測定結果への影響を低減しつつ、検出精度を高め、測定レンジの拡張を実現することができる。
【0068】
具体的には、前記電流信号が第1のプリセット閾値より大きく、かつ、第2のプリセット閾値より小さいことを検出した場合、前記方向情報に基づいて、第2のデューティ比になるように前記パルス信号のデューティ比の大きさを逆方向調節する。前記電流信号が前記第2のプリセット閾値より大きいことを検出した場合、前記方向情報に基づいて、第3のデューティ比になるように前記パルス信号のデューティ比の大きさを逆方向調節する。ここで、前記第1のプリセット閾値は前記第2のプリセット閾値よりも小さく、前記第2のデューティ比は前記第3のデューティ比よりも大きいであり、すなわち、前記電流信号と前記パルス信号のデューティ比は反比例関係にあり、前記電流信号が大きいほど前記パルス信号のデューティ比は小さくなる。前記第2のプリセット閾値、前記第3のプリセット閾値、前記第2のデューティ比及び前記第3のデューティ比は、ユーザの実際のニーズに応じて設計してもよいし、あるいは、構築した具体的な漏れ電流検出回路に応じて、具体的な実験データやシミュレーションの結果によって設計してもよいことを理解すべきである。例えば、前記主巻線に各種の漏れ電流を入力することを模擬し、パルス信号のデューティ比を調整することで複数組の実験データを得、実験データを解析することで前記第2のプリセット閾値、前記第3のプリセット閾値、前記第2のデューティ比及び前記第3のデューティ比に対応する値を設定する。即ち、当業者は、本願による技術手段を知った上で、有限回の実験によって上記数値を確定することができ、つまり、前記第2のプリセット閾値、前記第3のプリセット閾値、前記第2のデューティ比及び前記第3のデューティ比の具体的な設定値は本願の重点ではない。また、対応する実際の漏れ電流の計算について、具体的な実験データによって取得された対応表や対応関係を探することで得られても良い。
【0069】
なお、上記実施形態において、第2のプリセット閾値、第3のプリセット閾値のみが挙げられているが、ユーザは、実際のニーズに応じて第4のプリセット閾値、第5のプリセット閾値などを設定し、さらに、対応するデューティ比の大きさを調整してもよい。
【0070】
いくつかの実施形態において、前記漏れ電流検出方法は、前記漏れ電流検出回路の自己検を行うことをさらに含む。
【0071】
具体的には、前記正方向パルス信号と前記負方向パルス信号とのデューティ比の大きさが互いに異なるように、前記正負交互のパルス信号における正方向または負方向のデューティ比の大きさを調整し、前記補助巻線の電流信号をリアルタイムで検出し、そして、前記電流信号の大きさを判断することにより、前記漏れ電流検出回路の自己検を実現する。
【0072】
具体的には、前記漏れ電流検出回路に電流入力源が外付けされて、前記回路に第1の電流が流れるようになり、ここで、前記第1の電流は少なくとも30ミリアンペア以上である。このときの前記補助巻線からの第1の出力値を取得、記録し、外付け前記電流入力源を遮断して前記漏れ電流検出回路における第1の電流をゼロにし、前記補助巻線からの第2の出力値を取得する。次に、前記正負交互のパルス信号のデューティ比を取得し、前記第1の出力値と前記第2の出力値との差分がプリセット範囲内になるように一方のパルス信号のデューティ比を調整し、調整後のデューティ比を取得し、ここで、前記第2の出力値と前記第1の出力値との差分は0~0.1であってもよい。最後に、調整後のデューティ比と他方のパルス信号のデューティ比を自己検初期パルス幅に設定する。主巻線の漏れ電流がゼロの場合、磁気コアの正負の励磁が異なるように第1の信号PWM1Aまたは第2の信号PWM1Bのパルス幅を小さくすることにより、前記補助巻線に人為的に正負不平衡電流を発生させて、漏れ電流故障を積極的に誘発して機器の自己検を実現する。
【0073】
本願は、漏れ電流検出回路に適用される漏れ電流検出方法を提供しており、この方法は、前記補助巻線に正負交互のパルス信号を入力することにより、前記補助巻線をプリセット状態にし、続いて、前記補助巻線が前記プリセット状態にあるとき、前記補助巻線の電流信号を検出し、最後に、前記電流信号に基づいて、被検出機器の漏れ電流を検出するものであり、前記補助巻線をプリセット状態にすることにより、前記主巻線に漏れ電流があると、前記補助巻線に結合された漏れ電流が前記正負交互のパルス信号に重畳され、従って、漏れ電流検出感度を向上し、感度の高い検出手段を採用する必要がなく、検出コストを低減した。
【0074】
なお、上記の各実施形態において、上記の各ステップの間には必ずしも一定の前後順が存在するとは限らず、当業者であれば、本願に係る実施形態の説明から、異なる実施形態において、上記の各ステップは異なる実行順を有してもよく、すなわち、並列に実行されてもよく、交換して実行されてもよいことを理解できる。
【0075】
本願に係る実施形態はまた、上記のいずれかの漏れ電流検出回路を備える、及び/又は、上記のいずれかの漏れ電流検出方法を採用して漏れ電流を検出する漏れ電流検出器を提供しており、前記漏れ電流検出器は、信号出力モジュールによって電流の方向を変えることにより、前記漏れ電流検出器の感度を高め、漏れ電流検出器のコストを低減した。
【0076】
最後に、以上の実施形態は、本願の技術手段を説明するためのものであり、その制限を示すものではないことに留意されたい。本願の構想の下では、以上の実施形態または異なる実施形態における技術特徴はお互いに組み合わせることができ、ステップはいずれの手順で実現でき、また、上記のような本願の異なる側面での多くの他の変更があるが、説明の簡略化のために細部に提供されない。上記の実施形態を参照して本願を詳細に説明したが、当業者であれば、依然として上記の各実施形態に記載された技術手段に対して修飾し、又は、その中の一部の技術特徴を同等に置き換えることができ、これらの修飾又は置き換えでは、その対応する技術手段を実質的に本願に係る各実施形態の技術手段の範囲から逸脱させることはないことを理解すべきである。
図1
図2a
図2b
図2c
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図6d
図7a
図7b
図7c