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特許7476355船舶の液化ガス再気化方法およびそのシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】船舶の液化ガス再気化方法およびそのシステム
(51)【国際特許分類】
   B63B 25/16 20060101AFI20240422BHJP
【FI】
B63B25/16 D
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2022570138
(86)(22)【出願日】2020-12-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-15
(86)【国際出願番号】 KR2020018810
(87)【国際公開番号】W WO2022080590
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2022-11-16
(31)【優先権主張番号】10-2020-0132686
(32)【優先日】2020-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0132687
(32)【優先日】2020-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517430897
【氏名又は名称】ハンファ オーシャン カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】アン,ス ギョン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,トゥ ヘヨン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,デ ハン
(72)【発明者】
【氏名】ビョン,ヨン ジン
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ダ ヘ
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0110753(KR,A)
【文献】特開昭62-093406(JP,A)
【文献】特表2013-507585(JP,A)
【文献】特開2020-147221(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0127936(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 1/00-85/00
B63J 1/00-99/00
F17C 9/00- 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスと第1熱媒体を気化器で熱交換させて前記液化ガスを気化させ、前記気化器から排出される第1熱媒体の冷熱を回収した後で前記気化器に再循環させ、
前記第1熱媒体の冷熱を回収することは、
前記気化器で熱交換によって凝縮した液体状態の第1熱媒体を第1熱交換器で気化させ、前記気化した第1熱媒体をエキスパンダ発電機に供給して膨張させることで電力を生産し、前記膨張した第1熱媒体を前記気化器に供給し、
前記エキスパンダ発電機の前段または後段の圧力を制御して前記気化器の後段圧力を制御することを含
前記エキスパンダ発電機の後段圧力を制御するために、
前記気化器から排出された第1熱媒体をレシーバーで収容し、前記レシーバーから第1熱媒体を排出させて、
前記レシーバーの圧力測定値が設定値よりも小さいときには、前記エキスパンダ発電機で膨張した高温の第1熱媒体が前記気化器を迂回してレシーバーに供給される迂回モードで運転し、
前記レシーバーの圧力測定値が設定値よりも大きいときには、前記気化器から排出された低温の第1熱媒体を前記レシーバーの上部に噴射供給するクエンチモードで運転することを含む、船舶の液化ガス再気化方法。
【請求項2】
前記第1熱媒体は、前記気化器と第1熱交換器で熱交換によって相変化することを特徴とする、請求項1に記載の船舶の液化ガス再気化方法。
【請求項3】
前記気化器から熱交換後に排出される低温の第1熱媒体の温度と、前記気化器から熱交換後に排出される再気化ガスの温度が設定値を維持するように、前記気化器まで供給する液化ガスの流量を調節することを特徴とする、請求項1に記載の船舶の液化ガス再気化方法。
【請求項4】
前記気化器から熱交換後に排出される低温の第1熱媒体の温度を設定値で維持するための出力値と、
前記気化器から熱交換後に排出される再気化ガスの温度を設定値で維持するための出力値のうち、
小さい値に基づいて前記気化器まで供給する液化ガスの流量を制御することを特徴とする、請求項1に記載の船舶の液化ガス再気化方法。
【請求項5】
前記気化器で気化した再気化ガスを第2熱媒体と熱交換させてガス需要先で要求される温度まで追加加熱することを特徴とする、請求項1に記載の船舶の液化ガス再気化方法。
【請求項6】
前記エキスパンダ発電機の後段圧力が設定値よりも低いか、または発電負荷が低い時には、前記第1熱交換器で気化した第1熱媒体がエキスパンダ発電機を迂回して後段に移送されるように制御することを特徴とする、請求項1に記載の船舶の液化ガス再気化方法。
【請求項7】
前記第1熱交換器で気化した第1熱媒体をエキスパンダ発電機まで供給する前にノックアウト・ドラムで収容し、
前記ノックアウト・ドラムの圧力測定値が設定値よりも高い時には、前記エキスパンダ発電機の出力を増加させて前記エキスパンダ発電機の前段圧力を制御することを特徴とする、請求項1に記載の船舶の液化ガス再気化方法。
【請求項8】
前記エキスパンダ発電機の出力の増加は、前記ノックアウト・ドラムからエキスパンダ発電機に第1熱媒体を流入させる第2流量調節バルブの開度率を増加させ、前記エキスパンダ発電機の出力を前記第2流量調節バルブの開度率に相応して増加させることを含む、請求項に記載の船舶の液化ガス再気化方法。
【請求項9】
前記エキスパンダ発電機の回転数は第6制御部によって制御し、
前記第2流量調節バルブの開度は、前記圧力測定値に基づいた制御信号を第5制御部から伝送された第6制御部によって制御することを特徴とする、請求項に記載の船舶の液化ガス再気化方法。
【請求項10】
前記第2流量調節バルブの開度率が最大であるか、または前記エキスパンダ発電機の出力が最大になると、第5制御部によって、前記第1熱媒体が前記ノックアウト・ドラムからエキスパンダ発電機を迂回しエキスパンダ発電機の下流まで移送されるように調節する第3流量調節バルブを開放することを特徴とする、請求項9に記載の船舶の液化ガス再気化方法。
【請求項11】
前記エキスパンダ発電機の出力の増加は、
前記第1熱媒体が前記ノックアウト・ドラムからエキスパンダ発電機を迂回してエキスパンダ発電機の下流まで移送されるように調節する第3流量調節バルブを先に開放した後、
前記第3流量調節バルブの開度率を減少させながら前記エキスパンダ発電機の許容範囲内での出力を増加させ、前記ノックアウト・ドラムからエキスパンダ発電機まで第1熱媒体を流入させる第2流量調節バルブの開度率を増加させることを含む、請求項に記載の船舶の液化ガス再気化方法。
【請求項12】
前記エキスパンダ発電機の回転数は第6制御部によって制御され、
前記第3流量調節バルブの変位を制御する第7制御部は、前記第3流量調節バルブの開度率が0%になるまでエキスパンダ発電機の回転数を増加させるように前記第6制御部まで信号を伝達する、請求項1に記載の船舶の液化ガス再気化方法。
【請求項13】
前記第1熱媒体の循環流量は、前記気化器の加熱デューティに応じて決定されることを特徴とする、請求項1に記載の船舶の液化ガス再気化方法。
【請求項14】
液化ガスを第1熱媒体と熱交換させて気化させる気化器;
前記気化器で熱交換によって凝縮した液体状態の第1熱媒体を気化させる第1熱交換器;
前記第1熱交換器で気化した第1熱媒体を膨張させて電力を生産するエキスパンダ発電機;と
前記エキスパンダ発電機の前段または後段の圧力を制御する圧力制御手段;を備え、
前記エキスパンダ発電機の前段または後段の圧力を制御して、前記気化器の後段圧力制御され
前記気化器から熱交換後に排出される低温の第1熱媒体を収容するレシーバー;をさらに備え、
前記エキスパンダ発電機から膨張した第1熱媒体が気化器に移送され、気化器で液化ガスの冷熱を回収した第1熱媒体がレシーバーまで移送される第1熱媒体ライン;
前記エキスパンダ発電機の下流で第1熱媒体が気化器を迂回してレシーバーまで移送されるように調節する第2バルブ;
前記気化器から排出された第1熱媒体が前記レシーバー上部の噴射ノズルを介して噴射供給されるように調節する第3バルブ;と
前記レシーバーの圧力測定値が設定値よりも低い場合には前記第2バルブを開放し、設定値よりも高い場合には前記第3バルブを開放する第2制御部;を備えることを特徴とする、船舶の液化ガス再気化システム。
【請求項15】
前記気化器に供給する液化ガスの流量を調節するための第1バルブ;と
前記気化器から熱交換後に排出される低温の第1熱媒体の温度と、前記気化器から熱交換後に排出される再気化ガスの温度が設定値を維持するように前記第1バルブを制御する第1制御部;をさらに備えた、請求項1に記載の船舶の液化ガス再気化システム。
【請求項16】
前記第1熱媒体の温度設定値は第1熱媒体の飽和温度であり、
前記レシーバーの圧力測定値に基づいて前記第1熱媒体の温度設定値を調整する第3制御部;をさらに備えた、請求項1に記載の船舶の液化ガス再気化システム。
【請求項17】
前記第1熱交換器で気化した第1熱媒体がエキスパンダ発電機を迂回してエキスパンダ発電機の下流まで移送されるように調節する第3流量調節バルブ;と、
前記エキスパンダ発電機の後段圧力およびエキスパンダ発電機の発電負荷に応じて前記第3流量調節バルブを制御するガバナー;をさらに備えた、請求項1に記載の船舶の液化ガス再気化システム。
【請求項18】
前記第1熱交換器で気化した第1熱媒体を収容するノックアウト・ドラム;
前記ノックアウト・ドラムから排出された気体状態の第1熱媒体がエキスパンダ発電機まで供給されるように開度が調節される第2流量調節バルブ;
前記ノックアウト・ドラムから排出された気体状態の第1熱媒体がエキスパンダ発電機を迂回するように開度が調節される第3流量調節バルブ;と
前記ノックアウト・ドラムの圧力測定値に基づいて前記エキスパンダ発電機の出力を制御し、前記エキスパンダ発電機の出力に応じて前記第2流量調節バルブの開度を調節する第6制御部;を備え、
前記エキスパンダ発電機の前段圧力を制御することを特徴とする、請求項1に記載の船舶の液化ガス再気化システム。
【請求項19】
前記ノックアウト・ドラムの圧力測定値に基づいて前記第6制御部にエキスパンダ発電機出力の増加信号を送信し、前記エキスパンダ発電機の出力が最大になったら前記第3流量調節バルブを開放する第5制御部;をさらに備えた、請求項18に記載の船舶の液化ガス再気化システム。
【請求項20】
前記ノックアウト・ドラムの圧力測定値が設定値よりも高い場合には前記第3流量調節バルブを開放する圧力調節器;と
前記第3流量調節バルブの開度率が最小になるまで前記第6制御部に回転数の増加信号を送信する第7制御部;をさらに備えた、請求項18に記載の船舶の液化ガス再気化システム。
【請求項21】
前記気化器は1パスタイプのシェル・アンド・チューブ式熱交換器であることを特徴とする、請求項1に記載の船舶の液化ガス再気化システム。
【請求項22】
前記気化器で気化した再気化ガスをガス需要先で要求される温度まで追加加熱するトリムヒーター;を備えた、請求項1に記載の船舶の液化ガス再気化システム。
【請求項23】
前記トリムヒーターで前記再気化ガスと熱交換して前記再気化ガスの冷熱を回収する第2熱媒体が循環する第2サイクル;をさらに備えた、請求項2に記載の船舶の液化ガス再気化システム。
【請求項24】
前記トリムヒーターは2パスタイプのシェル・アンド・チューブ式熱交換器であることを特徴とする、請求項2に記載の船舶の液化ガス再気化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の液化ガス再気化方法およびそのシステムに関し、液化ガスを再気化させるために、液化ガスと熱交換する熱媒体が循環するサイクルの主要地点で運転条件を一定に維持させて、サイクルの安定的な運転ができるものに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、天然ガスは生産地で極低温に液化された液化天然ガス(LNG;Liquefied Natural Gas)の状態で製造された後、LNG運搬船を用いて目的地まで遠距離輸送される。LNGは天然ガスを常圧で約-163℃の極低温まで冷却して得られるものであり、ガス状態の天然ガスよりもその体積が約1/600まで減少する。このため、海上を通じた遠距離輸送に非常に適している。
【0003】
LNGーRV(LNG Regasification Vessel)やLNGーFSRU(Floating Storage and Regasification Unit)などのLNG再気化船舶または浮遊式海上構造物(以下、「LNG再気化船舶」に通称する。)は、海上でLNGを再気化させた天然ガスを陸上のガス需要先に供給することを目的とする船舶である。
【0004】
これらのLNG再気化船舶には、LNGを貯蔵するLNG貯蔵タンクと、LNG貯蔵タンクに貯蔵されたLNGを再気化させて陸上の需要先に供給する再気化設備が設置され、再気化設備で気化した天然ガスは配管を介して陸上の需要先に移送される。
【0005】
LNG再気化船舶の再気化設備は、LNG貯蔵タンクに貯蔵されたLNGを需要先で要求される圧力まで圧縮する高圧ポンプと、高圧ポンプで圧縮された高圧LNGを天然ガスに気化させる気化器を備える。
【0006】
気化器でLNGを気化させる熱源としては、供給が容易な海水が主に使用される。このとき、LNGと直接または間接的に熱交換させてLNGの冷熱を回収した低温の海水は海上へと排出される。つまり、LNGを再気化させる過程で海水により回収されたLNGの冷熱は海上へそのまま廃棄される。
【0007】
LNGは、1kg当たり200kcalの冷熱エネルギーを有しているものの、LNG再気化船舶では、LNGを再気化させる過程で回収される冷熱を使用することなく、無駄に捨てていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、液化ガスの再気化の過程で捨てられる冷熱を回収して電力を生産することでエネルギー効率を高めることと、圧力を制御してシステムを安定的に運転することができる、船舶の液化ガス再気化方法およびそのシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するため本発明の一実施形態では、液化ガスと第1熱媒体を気化器で熱交換させて前記液化ガスを気化させ、前記気化器から排出される第1熱媒体の冷熱を回収した後で前記気化器に再循環させ、前記第1熱媒体の冷熱を回収することは、前記気化器で熱交換によって凝縮した液体状態の第1熱媒体を第1熱交換器で気化させて、前記気化した第1熱媒体をエキスパンダ発電機に供給して膨張させることで電力を生産し、前記膨張した第1熱媒体を前記気化器に供給し、前記エキスパンダ発電機の前段または後段の圧力を制御して、前記気化器の後段圧力を制御することを含む、船舶の液化ガス再気化方法が提供される。
【0010】
上述した目的を達成するため本発明の他の一実施形態では、液化ガスを第1熱媒体と熱交換させて気化させる気化器;前記気化器で熱交換によって凝縮した液体状態の第1熱媒体を気化させる第1熱交換器;前記第1熱交換器で気化した第1熱媒体を膨張させて電力を生産するエキスパンダ発電機;と、前記エキスパンダ発電機の前段または後段の圧力を制御する圧力制御手段;を備え、前記エキスパンダ発電機の前段または後段の圧力を制御して前記気化器の後段圧力を制御する、船舶の液化ガス再気化システムが提供される。
【0011】
上述した目的を達成するため本発明のさらに他の一実施形態では、液化ガスと第1熱媒体を気化器で熱交換させて前記液化ガスを気化させ、前記気化器から排出される第1熱媒体の冷熱を回収した後で前記気化器に再循環させ、前記第1熱媒体の冷熱を回収することは、前記気化器で熱交換によって凝縮した液体状態の第1熱媒体を第1熱交換器で気化させて、前記気化した第1熱媒体をエキスパンダ発電機に供給して膨張させることで電力を生産し、前記膨張した第1熱媒体を前記気化器に供給し、前記エキスパンダ発電機の後段圧力を制御するために、前記気化器から排出された第1熱媒体をレシーバーで収容し、前記レシーバーから第1熱媒体を排出させて気化させ、前記レシーバーの圧力測定値が設定値よりも小さいときには前記エキスパンダ発電機で膨張した高温の第1熱媒体を前記気化器を迂回させてレシーバーに供給する迂回モードで運転し、前記レシーバーの圧力測定値が設定値よりも大きいときには前記気化器から排出された低温の第1熱媒体を前記レシーバーの上部に噴射供給するクエンチモードで運転することを含む、船舶の液化ガス再気化方法が提供される。
【0012】
好ましくは、前記第1熱媒体は、前記気化器および第1熱交換器で熱交換により相変化する冷媒から選択される。
【0013】
好ましくは、前記気化器から熱交換後に排出される低温の第1熱媒体の温度と、前記気化器から熱交換後に排出される再気化ガスの温度が設定値を維持するように、前記気化器に供給する液化ガスの流量を調節する。
【0014】
好ましくは、前記気化器から熱交換後に排出される低温の第1熱媒体の温度を設定値で維持するための出力値と、前記気化器から熱交換後に排出される再気化ガスの温度を設定値で維持するための出力値のうち、小さい値に基づいて前記気化器に供給する液化ガスの流量を制御する。
【0015】
好ましくは、前記第1熱媒体の温度設定値は第1熱媒体の飽和温度であり、前記第1熱媒体の飽和圧力に基づいて前記第1熱媒体の温度設定値を変えることでエキスパンダ発電機の後段圧力を制御する。
【0016】
好ましくは、前記気化器で気化した再気化ガスは、トリムヒーターで第2熱媒体と熱交換させてガス需要先で要求される温度まで加熱される。
【0017】
好ましくは、前記エキスパンダ発電機の後段圧力が設定値よりも低いか、または発電負荷が低いときには、前記気体状態の第1熱媒体がエキスパンダ発電機を迂回して後段に移送されるように制御する。
【0018】
上述した目的を達成するため本発明のさらに他の一実施形態では、液化ガスを第1熱媒体と熱交換させて気化させる気化器;前記気化器から熱交換後に排出される低温の第1熱媒体を収容するレシーバー;前記レシーバーから供給された液体状態の第1熱媒体を気化させる第1熱交換器;前記第1熱交換器で気化した第1熱媒体を膨張させて電力を生産するエキスパンダ発電機;前記エキスパンダ発電機から膨張した第1熱媒体が気化器に移送され、気化器で液化ガスの冷熱を回収した第1熱媒体がレシーバーに移送される第1熱媒体ライン;前記エキスパンダ発電機の下流で第1熱媒体が気化器を迂回してレシーバーに移送されるように調節する第2バルブ;前記気化器から排出された第1熱媒体が前記レシーバー上部の噴射ノズルを介して噴射供給されるように調節する第3バルブ;と、前記レシーバーの圧力測定値が設定値よりも低い場合には前記第2バルブを開放し、設定値よりも高い場合には前記第3バルブを開放する第2制御部;を備える、船舶の液化ガス再気化システムが提供される。
【0019】
好ましくは、前記気化器に供給する液化ガスの流量を調節するための第1バルブ;と、前記気化器から熱交換後に排出される低温の第1熱媒体の温度と、前記気化器から熱交換後に排出される再気化ガスの温度が設定値を維持するように前記第1バルブを制御する第1制御部;をさらに備える。
【0020】
好ましくは、前記第1熱媒体の温度設定値は第1熱媒体の飽和温度であり、前記レシーバーの圧力測定値に基づいて前記第1熱媒体の温度設定値を調整する第3制御部;をさらに備える。
【0021】
好ましくは、前記気化器で気化した再気化ガスをガス需要先で要求される温度まで追加加熱するトリムヒーター;を備える。
【0022】
好ましくは、前記トリムヒーターで前記再気化ガスと熱交換して前記再気化ガスの冷熱を回収する第2熱媒体が循環する第2サイクル;をさらに備える。
【0023】
好ましくは、前記第1熱交換器で気化した第1熱媒体がエキスパンダ発電機を迂回してエキスパンダ発電機の下流まで移送されるように調節する第3流量調節バルブ;と、前記エキスパンダ発電機の後段圧力及びエキスパンダ発電機の発電負荷に応じて前記第3流量調節バルブを制御するガバナー;をさらに備える。
【0024】
好ましくは、前記気化器は1パスタイプのシェル・アンド・チューブ式熱交換器である。
【0025】
好ましくは、前記トリムヒーターは2パスタイプのシェル・アンド・チューブ式熱交換器である。
【0026】
上述した目的を達成するため本発明のさらに他の一実施形態では、液化ガスと第1熱媒体を気化器で熱交換させて前記液化ガスを気化させ、前記気化器から排出される第1熱媒体の冷熱を回収した後で前記気化器に再循環させ、前記第1熱媒体の冷熱を回収することは、前記気化器で熱交換によって凝縮した液体状態の第1熱媒体を第1熱交換器で気化させ、前記気化した第1熱媒体をエキスパンダ発電機に供給して膨張させることで電力を生産し、前記膨張した第1熱媒体を前記気化器に供給し、前記第1熱交換器で気化した第1熱媒体をエキスパンダ発電機に供給する前にノックアウト・ドラムで収容し、前記ノックアウト・ドラムの圧力測定値が設定値よりも高いときには前記エキスパンダ発電機の出力を増加させて前記エキスパンダ発電機の前段圧力を制御することを含む、船舶の液化ガス再気化方法が提供される。
【0027】
好ましくは、前記エキスパンダ発電機の出力を増加させることは、前記ノックアウト・ドラムからエキスパンダ発電機まで第1熱媒体を流入させる第2流量調節バルブの開度率を増加させ、前記エキスパンダ発電機の出力を前記第2流量調節バルブの開度率に相応して増加させることを含む。
【0028】
好ましくは、前記エキスパンダ発電機の回転数は第6制御部によって制御され、前記第2流量調節バルブの開度は、前記圧力測定値に基づいた制御信号を第5制御部から伝送された第6制御部によって制御される。
【0029】
好ましくは、前記第2流量調節バルブの開度率が最大であるか、前記エキスパンダ発電機の出力が最大になると、前記第5制御部は前記第1熱媒体が前記ノックアウト・ドラムからエキスパンダ発電機を迂回してエキスパンダ発電機の下流まで移送されるように調節する第3流量調節バルブを開放する。
【0030】
好ましくは、前記エキスパンダ発電機の出力を増加させることは、前記第1熱媒体が前記ノックアウト・ドラムからエキスパンダ発電機を迂回してエキスパンダ発電機の下流まで移送されるように調節する第3流量調節バルブを先に開放した後、前記第3流量調節バルブの開度率を減少させながら前記エキスパンダ発電機の許容範囲内での出力を増加させ、前記ノックアウト・ドラムからエキスパンダ発電機まで第1熱媒体を流入させる第2流量調節バルブの開度率を増加させることを含む。
【0031】
好ましくは、前記エキスパンダ発電機の回転数は第6制御部によって制御され、前記第3流量調節バルブの変位を制御する第7制御部は、前記第3流量調節バルブの開度率が0%になるまで前記エキスパンダ発電機の回転数を増加させるように前記第6制御部まで信号を伝送する。
【0032】
好ましくは、前記第1熱媒体の循環流量は、前記気化器の加熱デューティによって決定される。
【0033】
上述した目的を達成するため本発明のさらに他の一実施形態では、液化ガスを第1熱媒体と熱交換させて気化させる気化器;前記気化器で熱交換によって凝縮した液体状態の第1熱媒体を気化させる第1熱交換器;前記第1熱交換器で気化した第1熱媒体を膨張させて電力を生産するエキスパンダ発電機;前記気化器で気化した第1熱媒体を収容するノックアウト・ドラム;前記ノックアウト・ドラムから排出された気体状態の第1熱媒体がエキスパンダ発電機に供給されるように開度が調節される第2流量調節バルブ;前記ノックアウト・ドラムから排出された気体状態の第1熱媒体がエキスパンダ発電機を迂回するように開度が調節される第3流量調節バルブ;と、前記ノックアウト・ドラムの圧力測定値に基づいて前記エキスパンダ発電機の出力を制御し、前記エキスパンダ発電機の出力に応じて前記第2流量調節バルブの開度を調節する第6制御部;を備え、前記エキスパンダ発電機の前段圧力を制御する、船舶の液化ガス再気化システムが提供される。
【0034】
好ましくは、前記ノックアウト・ドラムの圧力測定値に基づいて前記第6制御部にエキスパンダ発電機の出力の増加信号を送信し、前記エキスパンダ発電機の出力が最大になったら前記第3流量調節バルブを開放する第5制御部;をさらに備える。
【0035】
好ましくは、前記ノックアウト・ドラムの圧力測定値が設定値よりも高い場合には前記第3流量調節バルブを開放する圧力調節器;と、前記第3流量調節バルブの開度率が最小になるまで前記第6制御部に回転数の増加信号を送信する第7制御部;をさらに備える。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る船舶の液化ガス再気化方法およびシステムでは、廃棄される液化ガスの冷熱を回収して電力を生産することにより、システム全体のエネルギー効率を高め、電力を生産するための燃料消費量を減らすことができ、その結果、温室効果ガスの排出を低減することができる。
【0037】
また、レシーバーの圧力制御を介して気化器の後段圧力を制御することにより、気化器の後段圧力を制御するための第1熱媒体の温度と、気化させる液化ガスの流量を制御することにおいて応答性が向上する。
【0038】
また、前記エキスパンダ発電機の入側(高圧側)の圧力を制御することにより、気化器の後段圧力を制御するための第1熱媒体の温度と、気化させる液化ガスの流量を制御することにおいて応答性が向上する。
【0039】
また、第1熱媒体を利用して電力を生産するので、気化器で第1熱媒体の熱容量が足りない場合でもトリムヒーターを利用することにより、再気化ガスを最小送出温度以上まで加熱して安定的に需要先まで送出することができる。
【0040】
また、トリムヒーターを使用することにより、再気化システムの起動初期に第1熱媒体のループサイクルの液化ガス供給量と第1熱媒体供給量との間で熱の均衡が取れないことで、液化ガスが十分に気化されない問題を防止することができるため、システムを安定的に運転することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明の一実施形態に係る船舶の液化ガスシステムを簡単に図示した構成図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る気化器の後段圧力の制御構成を説明するための図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る気化器の後段圧力の制御構成を説明するための図である。
図4】本発明の第3実施形態に係るエキスパンダ発電機の入口圧力の制御構成を説明するための図である。
図5】本発明の第4実施形態に係るエキスパンダ発電機の入口圧力の制御構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明の動作上の利点及び本発明の実施形態によって達成される目的を十分に理解するため、本発明の実施形態を例示する添付の図面およびそこに記載された内容を参照しなければならない。
【0043】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。ここで、各図面の構成要素に参照符号を付加することにおいて、同一の構成要素については、たとえ他の図面上に表示されても可能な限り同一の符号で表記したことに留意してほしい。また、下記の実施形態は様々な他の実施形態に変更することができ、本発明の範囲が下記の実施形態によって限定されるものではない。
【0044】
本発明の実施形態における後述の液化ガスは、ガスを低温で液化させて輸送できる液化ガスであり、例えば、LNG(Liquefied Natural Gas)、LEG(Liquefied Ethane Gas)、LPG(Liquefied Petroleum Gas)、液化エチレンガス(Liquefied Ethylene Gas)、液化プロピレンガス(Liquefied Propylene Gas)などの液化石油化学ガスである。また、液化二酸化炭素、液化水素、液化アンモニアなどの液体ガスも含む。ただし、後述の実施形態では、代表的な液化ガスであるLNGを例に説明する。
【0045】
また、後述の本発明の一実施形態に係るLNG再気化システムは、船舶で適用されることを例に説明するが、陸上で適用されるものでもよい。
【0046】
また、本発明の一実施形態におけるLNG再気化船舶は、LNGを再気化させてガス需要先まで供給するLNG再気化設備が設置された全種類の船舶、すなわち、LNG-RV(Regasification Vessel)などの自己推進能力を有する船舶をはじめ、LNG-FSRU(Floating Storage Regasification Unit)のように海上に浮遊している海上構造物も含む。ただし、後述する実施形態では、LNG-FSRUを例に説明する。
【0047】
また、本発明の一実施形態に係るLNG再気化船舶は、LNGを海上で再気化させ、再気化ガス(Regas)を配管網を介して陸上のガス需要先まで供給することができる。
【0048】
以下、図1ないし図5を参照して、本発明の一実施形態に係る船舶の液化ガス再気化方法およびそのシステムを説明する。
【0049】
本実施形態に係る船舶の液化ガス再気化システムは、LNGを貯蔵するLNG貯蔵タンク(図示せず)から排出されたLNGをガス需要先(図示せず)で要求される圧力、またはそれ以上まで圧縮する高圧ポンプ(図示せず)、高圧ポンプで圧縮された高圧のLNGを第1熱媒体との熱交換によって気化させる気化器(120)と、気化器(120)で気化した再気化ガス、すなわち天然ガスをガス需要先で要求される温度に調節するか、または気化器(120)で気化しなかったLNGを完全に気化させてガス需要先で要求される温度まで加熱するトリムヒーター(130)を備える。
【0050】
LNG貯蔵タンクには、貯蔵されたLNGを排出して高圧ポンプに供給する供給ポンプ(図示せず)を設けることができる。供給ポンプは、例えば、LNG貯蔵タンクの内部で設置されるインタンクポンプ、またはLNG貯蔵タンクに貯蔵されたLNGに浸された状態で運転することができる半潜水型ポンプである。
【0051】
本実施形態の高圧ポンプは、再気化させるLNGをガス需要先で要求される再気化ガスの圧力まで圧縮して気化器(120)に供給する。ガス需要先で要求される圧力は、各突堤(jetty)ごとに異なるが、一般的には約50bar~100barの範囲である。すなわち、本実施形態の高圧ポンプは、LNGを約50bar~100barの範囲、または圧力損失などを考慮し、それより一定水準の高圧力まで圧縮することができる。
【0052】
本実施形態の気化器(120)は、高圧ポンプによってガス需要先で要求される再気化ガスの圧力で圧縮された高圧のLNGが第1サイクルを循環する第1熱媒体との熱交換によって気化して気体状態になるか、一部のみ気化して気液混合状態になる。気化器(120)で気化する圧縮LNGの温度は、第1熱媒体および/または海水の温度や流量などの熱源の状態によって異なる。
【0053】
本実施形態の気化器(120)は、例えば、シェル・アンド・チューブ式熱交換器であり、特に、チューブがシェルを一回のみ通過する1パスタイプのシェル・アンド・チューブ式熱交換器である。
【0054】
本実施形態のトリムヒーター(130)は、気化器(120)で気化した再気化ガスをガス需要先で要求される温度まで加熱してガス需要先に供給する。また、第1熱媒体の熱容量が足りなくて気化器(120)で気化していないLNGがある場合にはトリムヒーター(130)で全量が気化され、ガス需要先にて要求される温度まで加熱される。
【0055】
本実施形態のトリムヒーター(130)は、例えば、シェル・アンド・チューブ式熱交換器器であり、特に、チューブがシェルを2回通過する2パスタイプのシェル・アンド・チューブ式熱交換器である。
【0056】
陸上のガス需要先では、通常、約0℃~10℃、または8℃~10℃の範囲で、50bar~100barの範囲の再気化ガスを必要とするので、トリムヒーター(130)は気化器(120)から陸上のガス需要先まで供給される再気化ガスを約0℃~10℃の範囲に加熱してガス需要先まで供給することになる。
【0057】
本実施形態によると、LNG貯蔵タンクで貯蔵されたLNGは液化ガスライン(LL)に沿って流動し、高圧ポンプで圧縮され、気化器(120)で気化し、トリムヒーター(130)で加熱されてガス需要先に移送される。
【0058】
一方、液化ガスライン(LL)には、気化器(120)の上流に設けられて気化器(120)に供給するLNGの流量を制御するための第1バルブ(LV)を備える。
【0059】
第1バルブ(LV)は、気化器(120)でLNGと熱交換した後に排出される第1熱媒体の温度を測定する第2温度制御部(TIC02)の温度測定値を利用した出力値と、気化器(120)で気化して排出される再気化ガスの温度を測定する第1温度制御部(TIC01)の温度測定値を利用した出力値によって制御される。
【0060】
本実施形態における第1温度制御部(TIC01)は、温度を測定する温度測定器(TT01)と、温度測定器(TT01)の温度測定値を伝送され温度調節に必要な各種手段を制御するための出力値を算出して各種手段まで制御信号を送出する温度調節器(temperature controller)を全て含めた名称である。
【0061】
また、第2温度制御部(TIC02)も、温度を測定する温度測定器(TT02)と、温度測定器(TT02)の温度測定値を伝送され温度調節に必要な各種手段を制御するための出力値を算出して各種手段まで制御信号を送出する温度調節器を全て含めた名称である。
【0062】
第1バルブ(LV)を制御する第1制御部(LS1)は、例えば、ローセレクタ(low selector)である。すなわち、第1制御部(LS1)は、第2温度制御部(TIC02)の温度測定値に基づいた出力値と、第1温度制御部(TIC01)の温度測定値に基づいた出力値のうち、小さい値によって第1バルブ(LV)を制御する。
【0063】
また、本実施形態に係る船舶の液化ガス再気化システムは、気化器(120)でLNGと熱交換しLNGを気化させるための熱源である第1熱媒体を循環させるランキンサイクルの第1サイクルを備える。
【0064】
本実施形態の第1熱媒体は、例えば、第1サイクルを循環しながら相変化を伴う冷媒である。
【0065】
従来では、気化器(120)でLNGを気化させるための熱媒体として、主にグリコールウォーターが利用される。グリコールウォーターを選択した場合、気化器(120)でLNGと熱交換する過程および熱交換器で海水と熱交換しながら加熱される過程で相変化が起こらないので、顕熱を利用してのみ熱伝達が行われる。
【0066】
一方、本実施形態のように気化器(120)でLNGと熱交換する過程および熱交換器で海水と熱交換しながら加熱される過程で相変化を伴う冷媒が熱媒体として採用される場合には、潜熱によっても熱伝達が行われるので、LNGを気化させるためのデューティが同一である条件を基準とした場合、第1サイクルを循環させる熱媒体の流量がグリコールウォーターを使用する場合に比べて著しく減少する。このため、熱媒体を循環させるためのポンプの動力を削減でき、システム全般の効率が改善される。
【0067】
本実施形態の第1サイクルは、第1熱媒体を循環させる第1ポンプ(210)、第1ポンプ(210)によって加圧された第1熱媒体を気化させる第1熱交換器(220)、第1熱交換器(220)で気化した第1熱媒体を膨張させ、第1熱媒体の膨張仕事を動力に変換して電力を生産するエキスパンダ発電機(expander-generator:230)と、気化器(120)でLNGとの熱交換によって凝縮した第1熱媒体を貯蔵するレシーバー(240)を備える。
【0068】
第1熱媒体は、第1熱媒体ライン(RL)に沿って流動しつつ、第1ポンプ(210)によって加圧され、第1熱交換器(220)で気化し、エキスパンダ発電機(230)で膨張した後、気化器(120)で凝縮し、レシーバー(240)を経由して第1ポンプ(210)に循環されるように形成されるループサイクルの第1サイクルを循環する。
【0069】
本実施形態の第1熱交換器(220)で第1熱媒体は、海水ポンプ(図示せず)によって吸引され第1海水ライン(SL1)に沿って第1熱交換器(220)に供給された海水との熱交換によって気化する。
【0070】
第1熱交換器(220)において、海水は第1熱媒体を気化させながら冷却され、冷却された海水は第1海水ライン(SL1)に沿って第1熱交換器(220)から排出される。
【0071】
本実施形態では、第1熱交換器(220)で第1熱媒体を気化させる熱源として海水を使用するものを例に説明するが、熱源は船内の蒸気発生器(図示せず)で生産された蒸気を使用することもでき、また、海水と蒸気を相互補完的に使用することもできる。
【0072】
海水と蒸気を相互補完的に使用するというのは、例えば、第1熱交換器(220)が海水と蒸気と第1熱媒体を熱交換させる3ストリーム熱交換器を備えることを含む。または、海水と第1熱媒体が熱交換する第1段熱交換器と蒸気と第1熱媒体が熱交換する2段熱交換器を直列に設置して第1熱媒体が段階的に加熱されるか、または海水及び第1熱媒体が熱交換する第1段熱交換器と蒸気および第1熱媒体が熱交換する2段熱交換器を並列に設置して第1熱交換器(220)における第1熱媒体の加熱温度を調節することもできる。また、海水を蒸気との熱交換により加熱する海水加熱器を追加設置し、海水加熱器で加熱された海水を第1熱交換器(220)に供給することもできる。
【0073】
本実施形態の第1熱交換器(220)は、例えば、シェル・アンド・チューブ式熱交換器(shell and tube heat exchanger)またはプレート型熱交換器(plate heat exchanger)である。
【0074】
第1熱交換器(220)で海水によって気化または加熱された第1熱媒体は、エキスパンダ発電機(230)に供給され膨張し、第1熱媒体の膨張仕事は電力に変換される。エキスパンダ発電機(230)で生産された電力は船内の電力需要先で使用することができる。
【0075】
第1熱媒体ライン(RL)の第1ポンプ(210)の下流には、第1ポンプ(210)から第1熱交換器(220)まで供給される第1熱媒体の流量を調節するための第1流量調節バルブ(FV1)を設けることができる。
【0076】
第1流量調節バルブ(FV1)は、第4制御部(LS2)によって第1ポンプ(210)の回転速度または負荷、第1熱交換器(210)から熱交換後に排出される第1熱媒体の温度および気化器(120)から熱交換後に排出される天然ガスの流量を利用した出力値に基づいて制御される。
【0077】
第4制御部(LS2)は、例えば、ローセレクタである。すなわち、第4制御部(LS2)は、第1ポンプ(210)の回転速度または負荷測定値に基づいた出力値、第1熱交換器(210)から熱交換後に排出される第1熱媒体の温度測定値に基づいた出力値および気化器(120)から熱交換後に排出される天然ガスの流量測定値に基づいた出力値のうち、最小値によって第1流量調節バルブ(FV1)を制御する。
【0078】
一方、本実施形態によれば、本実施形態の第1熱媒体ライン(RL)は、エキスパンダ発電機(230)の上流で分岐し第1熱交換器(220)で気化した第1熱媒体がエキスパンダ発電機(230)を迂回して、すなわち、前記エキスパンダ発電機(230)を経由せず、第1熱交換器(220)から気化器(120)まで直接供給されるように連結された、第1分岐ライン(RL1)を備える。
【0079】
例えば、エキスパンダ発電機(230)が故障して使用不能である場合、第1分岐ライン(RL1)を活用し、第1熱交換器(220)から第1分岐ライン(RL1)を介して気化器(120)まで第1熱媒体が供給されるようすることで、陸上の需要先までの天然ガスの供給に悪影響を与えないようにできる。
【0080】
本実施形態の第1分岐ライン(RL1)は、エキスパンダ発電機(230)のメンテナンス(maintenance)時において第1熱媒体を迂回させるための目的と、気化器(120)における急激な再気化容量の増加によって第1熱媒体の循環流量が増加した時にエキスパンダ発電機(230)の入口側のバルブである第2流量調節バルブ(FV2)の反応速度の遅延による前段圧力を調節するための目的で備えられる。
【0081】
また、本実施形態の第1サイクルは、第1熱交換器(220)とエキスパンダ発電機(230)との間に設けられ、第1熱交換器(220)で気化した第1熱媒体をエキスパンダ発電機(230)に供給する前に一時貯蔵し、エキスパンダ発電機(230)に供給する第1熱媒体に含まれる液状のものを分離するノックアウト・ドラム(250)をさらに備えることができる。
【0082】
ノックアウト・ドラム(250)とエキスパンダ発電機(230)との間の第1熱媒体ライン(RL)には、ノックアウト・ドラム(250)からエキスパンダ発電機(230)に移送される気体状態の第1熱媒体の流量を調節するために第2流量調節バルブ(FV2)が備えられる。
【0083】
第2流量調節バルブ(FV2)はエキスパンダ発電(230)の発電負荷または速度、エキスパンダ発電機(230)によって膨張した後に排出される第1熱媒体の圧力およびノックアウト・ドラム(250)の圧力に応じて制御する。
【0084】
また、エキスパンダ発電機(230)の発電負荷または速度測定値、エキスパンダ発電機(230)によって膨張した後に排出される第1熱媒体の圧力測定値およびノックアウト・ドラム(250)の圧力測定値を利用し、第2流量調節バルブ(FV2)と第1分岐ライン(RL1)に設けられた第3流量調節バルブ(FV3)を制御することにより、ノックアウト・ドラム(250)から気体状態の第1熱媒体が第1熱媒体ライン(RL)または第1分岐ライン(RL1)に沿って移送されるように制御する。
【0085】
第2流量調節バルブ(FV2)および第3流量調節バルブ(FV3)はガバナー(governor)により、エキスパンダ発電機(230)の後段圧力と、エキスパンダ発電機(230)の発電負荷測定値と、エキスパンダ発電機(230)の回転数と、ノックアウト・ドラム(250)の圧力のうちいずれか一つ以上による出力値に基づいて制御される。
【0086】
エキスパンダ発電機(230)では、第1熱交換器(220)で海水との熱交換によって気化または加熱された第1熱媒体が膨張しながら圧力および温度が低くなる。
【0087】
エキスパンダ発電機(230)で膨張した第1熱媒体は、第1熱媒体ライン(RL)に沿って気化器(120)に供給されLNGと熱交換しながら冷却または凝縮する。気化器(120)で冷却または凝縮した第1熱媒体は、第1熱媒体ライン(RL)に沿ってレシーバー(240)に移送される。
【0088】
本実施形態のレシーバー(240)は、気化器(120)で凝縮した第1熱媒体が集まる圧力容器(pressure vessel)であり、第1サイクルを循環する第1熱媒体の流量と圧力を制御するなど緩衝タンクの役割も果たす。
【0089】
本実施形態によると、レシーバー(240)の圧力を調節するための手段をさらに備えることができ、レシーバー(240)の圧力調節手段は、後述する第2バルブ(RV)及び第3バルブ(QV)を備える。
【0090】
また、本実施形態によると、第1ポンプ(210)の下流で第1熱媒体ライン(RL)から分岐してレシーバー(240)まで連結される第4分岐ライン(RL4)およびノックアウト・ドラム(250)から第4分岐ライン(RL4)まで連結される第5分岐ライン(RL5)をさらに備える。
【0091】
第4分岐ライン(RL4)には、第1ポンプ(210)の最小流量を維持させるために、第1熱交換器(220)で要求される第1熱媒体の流量が最小流量よりも少ない場合のように第1ポンプ(210)の吐出流量の中で第1熱媒体の要求流量を超える量があった場合、その該当流量をレシーバー(240)に戻すための第1水位バルブ(LV1)が設けられる。第1水位バルブ(LV1)は第1ポンプ(210)の回転速度による出力値に基づいて制御される。
【0092】
また、第5分岐ライン(RL5)には、ノックアウト・ドラム(250)から分離された液体状態の第1熱媒体をレシーバー(240)まで回収するために、開閉が制御される第2水位バルブ(LV2)が設けられる。第2水位バルブ(LV2)は、ノックアウト・ドラム(250)の水位測定値による出力値に基づいて制御される。
【0093】
本実施形態の第1熱媒体は、第1サイクルを循環しながら相変化を伴う物質または混合物から選択される。すなわち、第1熱媒体は、第1熱交換器(220)で海水と熱交換して気化し、エキスパンダ発電機(230)で膨張した後、気化器(120)で凝縮する。
【0094】
本実施形態では、第1熱媒体は、基本的に火災と爆発の危険がない自然冷媒、HFC系(Hydrofluorocarbons)およびHFO系(Hydrofluorolefin)の冷媒を単一または混合して使用することができ、例えば、R-23、R-32、R-134a、R-407c、R-410Aなどを単一または混合の状態で適用することができる。
【0095】
一方、エキスパンダ発電機(230)で第1熱媒体は等エントロピー過程で膨張し、この過程で第1熱媒体の温度は低下することになる。
【0096】
例えば、第1熱交換器(220)で気化または加熱されて排出される第1熱媒体が11℃、5barGであり、エキスパンダ発電機(230)で2barGまで膨張したら、第1熱媒体の温度は約-10.5℃まで低下する。エキスパンダ発電機(230)から排出される-10.5℃の第1熱媒体が気化器(120)からLNGを気化させるための熱源として供給されると、気化器(120)から排出される天然ガスの最小温度条件、例えば、8℃を充足しなくなる。
【0097】
そこで、本実施形態では、気化器(120)からガス需要先に供給する天然ガスの温度をガス需要先で要求される最低温度条件以上を充足するためトリムヒーター(130)をさらに備える。
【0098】
このように、本発明の一実施形態によると、第1熱交換器(220)で気化した第1熱媒体が、エキスパンダ発電機(230)で電力を生産しながら温度が低下し、それによって気化器(120)に供給される第1熱媒体の温度が再気化ガスの温度をガス需要先で要求される温度まで加熱するために必要な温度よりも低くなっても、気化器(120)の下流に設けたトリムヒーター(130)により前記問題を解決することができる。
【0099】
本発明の一実施形態に係る再気化システムは、例えば、トリムヒーター(130)で天然ガスを加熱するための熱源である第2熱媒体を循環させる第2サイクルをさらに備える。
【0100】
トリムヒーター(130)では、第2サイクルを循環する第2熱媒体と天然ガスが熱交換し、天然ガスは最小温度条件、すなわちガス需要先で要求される温度またはそれ以上まで加熱され、第2熱媒体は天然ガスの冷熱を回収して冷却または凝縮する。
【0101】
本実施形態の第2サイクルは、第2熱媒体を循環させる第2ポンプ(図示せず)と、第2熱媒体を加熱または気化させる第2熱交換器(図示せず)と、トリムヒーター(130)で熱交換後に排出される第2熱媒体を安定化させる膨張タンク(図示せず)を備える。
【0102】
第2熱媒体は、第2熱媒体ライン(図示せず)に沿って流動しつつ、第2ポンプによって加圧され、第2熱交換器で気化または加熱され、トリムヒーター(130)で冷却または凝縮し、膨張タンクを経て第2ポンプまで循環されるように形成されるループサイクルの第2サイクルを循環する。
【0103】
本実施形態の第2熱交換器で第2熱媒体を加熱する熱源は、海水ポンプによって吸引され第2海水ラインに沿って第2熱交換器に供給された海水である。
【0104】
第2熱交換器で第2熱媒体を気化または加熱させながら冷却された海水は、第2海水ラインに沿って外部に排出される。
【0105】
また、本実施形態では、第2熱交換器で第2熱媒体を気化または加熱させる熱源として海水を例に説明するが、熱源は船内蒸気発生器で生産された蒸気を使用することも可能であり、上述した第1熱交換器(220)の場合と同様に海水と蒸気を相互補完的に使用することもできる。
【0106】
また、本実施形態の第2熱交換器は、例えば、プレート型熱交換器である。
【0107】
本実施形態の膨張タンクは、第2熱交換器での熱交換によって第2熱媒体の温度変化に伴う体積膨張に対応するため緩衝器の役割を果たす。
【0108】
また、膨張タンクでは、第2熱媒体に混入した空気(air)などの異物を第2熱媒体から分離し、トリムヒーター(130)から天然ガスが漏出(leak)して第2熱媒体にガスが流入した場合、第2熱媒体に流入したガスも第2熱媒体から分離する。
【0109】
本実施形態の第2熱媒体は、例えば、グリコールウォーター(glycol water)である。
【0110】
エキスパンダ発電機(230)では、第1熱交換器(220)で海水との熱交換により気化または加熱された第1熱媒体が膨張しながら圧力と温度が低下する。第1熱交換器(220)で熱源として使用される海水の温度がガス需要先の最小温度条件よりも十分に高い場合を除けば、第1熱媒体のエキスパンダ発電機(230)における圧力変化の過程での温度降下が非常に大きく、第1熱媒体の熱容量が小さいため、天然ガスを最小温度条件以上まで加熱することには困難がある。
【0111】
そこで、本実施形態では、天然ガスを最小温度条件以上まで加熱(trim heating)するための中間熱媒体として第2熱媒体、すなわちグリコールウォーターを使用する。
【0112】
一般的に、天然ガスを最小温度条件以上まで加熱するには、高圧ポンプを利用してLNGを最小圧力条件以上まで圧縮し、気化器(120)で最低温度条件以上まで気化と加熱をしなければならない。例えば、気化器(120)から排出される天然ガスの最低温度条件が8℃であれば、これを満たすためには気化器(120)に供給される第1熱媒体の温度が最低温度条件の8℃より高くする必要がある。一般の熱交換器で加熱流体と被加熱流体との間の最小温度差が2~3℃であることを考慮すれば、気化器(120)に供給される第1熱媒体の温度は約11℃以上でなければならない。
【0113】
また、本実施形態の第1熱媒体は、第1熱交換器(220)で海水との熱交換によって加熱されるので、同様に一般の熱交換器の加熱流体と被加熱流体との間の最小温度差を考慮すると、第1熱交換器(220)に供給される海水の温度は約14℃以上でなければならない。
【0114】
しかし、第1熱交換器(220)で第1熱媒体が11℃に加熱されたとしても、上述したように、前記エキスパンダ発電機(230)で電力を生産しながら第1熱媒体の温度は-10.5℃まで低くなる。
【0115】
したがって、本実施形態によれば、必ずトリムヒーター(130)を用いて、気化器(120)で気化した天然ガスをガス需要先の最低温度条件、すなわち天然ガスの最終送出温度まで加熱しなければならない。
【0116】
もし、第1熱交換器(220)からエキスパンダ発電機(230)まで供給される第1熱媒体の一部を分岐させてトリムヒーター(130)で天然ガスを加熱するための熱媒体として使用すると、海水の温度が十分に高くて第1熱交換器(220)で熱交換する第1熱媒体と海水との温度差が最小水準以上より高い場合を除けば、トリムヒーター(130)での熱交換性能が十分でないため天然ガスを最終送出温度まで加熱することができない問題が発生するおそれがある。
【0117】
第1熱媒体の低い熱容量と相変化によりトリムヒーター(130)の内部でピンチポイントが決定されるので、トリムヒーター(130)の設計は容易ではない。したがって、このような設計上の困難を第2熱媒体の使用で解決し、再気化ガスを安定的に加熱することができる。
【0118】
本実施形態によると、第1熱交換器(220)で海水との熱交換により第1熱媒体、すなわち冷媒は気化器(120)の熱源としてのみ使用し、第2熱交換器で海水との熱交換によって加熱した第2熱媒体、すなわちグリコールウォーターをトリムヒーター(130)の熱源として供給してピンチポイントがトリムヒーター(130)の内部で発生しないようにすることで、十分な熱交換性能を確保し、天然ガスを最終送出温度まで安定的に加熱することができる。
【0119】
また、再気化システムを初期起動する時には、LNGが気化器(120)に供給されなければ第1熱媒体が気化器(120)で凝縮せず、第1熱媒体の循環が不可能であるため、LNGと第1熱媒体の供給のバランスをよく維持しながら気化器(120)の負荷を増加させなければならない。これは運転上に多くの困難を引き起こすことになる。
【0120】
本実施形態によると、トリムヒーター(130)からの天然ガスを加熱するための第2熱媒体としてグリコールウォーターを使用することにより、再気化システムを初期起動する時、LNG供給量と第1熱媒体の熱均衡が取れないためにLNGが気化器(120)に流入することを防止することができ、安定した運転が可能になる。
【0121】
一方、本実施形態では、エキスパンダ発電機(230)で第1熱媒体の冷熱を活用して電力を生産するため、上述した再気化船舶に設置される発電エンジンの負荷を下げ、燃料消費量を削減することができる。
【0122】
このように、本実施形態によると、高圧ガス状態の第1熱媒体の冷熱を活用してエキスパンダ発電機(230)を駆動させて電力を生産し、エキスパンダ発電機(230)を駆動させた後の低圧ガス状態の第1熱媒体を利用してLNGを気化させるが、この時、高圧部であるエキスパンダ発電機(230)の入口側と低圧部であるエキスパンダ発電機(230)の出口側の圧力制御が非常に重要である。
【0123】
これを目的として備えられるレシーバー(240)は、前記エキスパンダ発電機(230)の出口圧力を一定に制御する役割と、第1ポンプ(210)まで液体状態の第1熱媒体を安定的に供給するためのバッファタンクの役割を果たす。
【0124】
再気化システムが正常に運転するとき、気化器(120)でLNGとの熱交換によって気化器(120)から排出される第1熱媒体の温度は低下する。この時、第1熱媒体と熱交換するLNGの流量、すなわち、気化器(120)に供給されるLNGの流量を調節することにより、気化器(120)から排出される第1熱媒体の温度を調節することができる。
【0125】
気化器(120)から熱交換後に凝縮して排出される第1熱媒体の温度に応じて第1熱媒体の飽和圧力が決定されるので、気化器(120)から排出される第1熱媒体の温度を正常に制御しなければ、エキスパンダ発電機(230)から排出される第1熱媒体の圧力も正常に維持することができない。
【0126】
すなわち、レシーバー(240)の圧力は、気化器(120)から排出された第1熱媒体の温度に応した飽和圧力で維持されなければならない。
【0127】
正常な状況では、第1熱媒体の温度に応じてレシーバー(240)の圧力が安定的に制御および維持されるが、レシーバー(240)に流入する第1熱媒体の気体流量が急に多くなる状況(transient condition)などの問題が発生した場合、応答速度が遅くなって気化器(120)から排出される第1熱媒体の温度が正常に制御されても、レシーバー(240)の圧力がそれに追従しないおそれがある。
【0128】
したがって、本発明の一実施形態に係る再気化方法およびそのシステムは、このように応答速度が遅くなる状況でも、再気化システムの制御応答性を向上させるため、エキスパンダ発電機(230)の後段圧力、すなわち低圧側の圧力を制御することを特徴とする。
【0129】
より具体的には、気化器(120)の後段圧力、すなわちレシーバー(240)の圧力を制御することによりエキスパンダ発電機(230)の後段圧力を迅速に制御する。
【0130】
図2を参照すると、本発明の第1実施形態に係る再気化システムは、前記エキスパンダ発電機(230)の下流で第1熱媒体ライン(RL)から分岐してレシーバー(240)に連結される第2分岐ライン(RL2)及び第2分岐ライン(RL2)に設けられた第2バルブ(RV)、レシーバー(240)の上流で第1熱媒体ライン(RL)から分岐してレシーバー(240)の上端部に連結される第3分岐ライン(RL3)及び第3分岐ライン(RL3)に設けられた第3バルブ(QV)を備える。
【0131】
また、レシーバー(240)の圧力を測定する第1圧力制御部(PIC01)及び第1圧力制御部(PIC01)の圧力測定値による出力値に基づいて、第2バルブ(RV)及び第3バルブ(QV)を制御する第2制御部(BQ)をさらに備える。
【0132】
本実施形態の第1圧力制御部(PIC01)は、圧力を測定する圧力測定器(PT01)と、圧力測定器(PT01)の圧力測定値を伝送され圧力調節に必要な各種手段を制御するための出力値を算出して各種手段まで制御信号を送出する圧力調節器(pressure controller)の全てを含めた名称である。
【0133】
第2制御部(BQ)の制御ロジックは、スプリットレンジ制御(split range control)であり、第1圧力制御部(PIC01)で測定したレシーバー(240)の圧力測定値が設定値よりも低い場合、エキスパンダ発電機(230)から気化器(120)に供給される高温の第1熱媒体が第2分岐ライン(RL2)を介して気化器(120)を迂回してレシーバー(240)まで供給されるように、第2バルブ(RV)を開放する迂回モード(bypass mode)を含む。
【0134】
また、第2制御部(BQ)の制御ロジックは、第1圧力制御部(PIC01)で測定したレシーバー(240)の圧力測定値が設定値よりも高い場合、気化器(120)から排出された低温の第1熱媒体が第3分岐ライン(RL3)を介してレシーバー(240)の上端からレシーバー(240)の内部に噴射供給されるように、第3バルブ(QV)を開放するクエンチモード(queching mode)をさらに含む。
【0135】
迂回モードは、レシーバー(240)の圧力測定値が設定値よりも低くなると、第2バルブ(RV)を開放し高温の第1熱媒体をレシーバー(240)に流入させることでレシーバー(240)の圧力を高めて、エキスパンダ発電機(230)の出口圧力が低くならないように、事前に迅速に制御することができる。
【0136】
迂回モードはレシーバー(240)の圧力測定値が設定値に達するまで継続する。
【0137】
一方、平常時には第1熱媒体を第1熱媒体ライン(RL)に沿ってレシーバー(240)の中間の高さで設けられた流体入口を介してレシーバー(240)に供給しながら、クエンチモードが作動すると、第3バルブ(QV)を開放し低温の第1熱媒体がレシーバー(240)の上部に設けられた噴射ノズルを介して噴射供給されることで、レシーバー(240)の上部に存在する高温の気体状態の第1熱媒体の温度を下げてレシーバー(240)内の圧力を下げる。レシーバー(240)内の圧力を下げることでエキスパンダ発電機(230)の出口圧力が高くならないように、事前に迅速に制御することができる。
【0138】
クエンチモードはレシーバー(240)の圧力測定値が設定値に達するまで継続する。
【0139】
一方、第1熱媒体の実際の組成などの様々な要因によって飽和圧力と温度との関係が初期設定値から変化する。例えば、第1熱媒体が複数の成分が混合された複合冷媒である場合、沸点が低い成分は運転中に一部が気化して消失するなどの状況が発生し、第1熱媒体の組成が運転中に変わって、それに応じて圧力と温度の関係も変化する。
【0140】
このように、第1熱媒体の組成が運転初期と変わったにも関わらず、第2制御部(BQ)の様々な温度測定値および圧力測定値を初期設定値を維持した状態で運転すると、乖離が発生して必要以上の迂回モードとクエンチモードによるバルブ操作が行われる。
【0141】
したがって、このような問題を解決するため、本発明の第2実施形態に係る再気化システムは、圧力と温度との間の飽和曲線の関係を調整するために設定値(set point)の調整手段を備える。
【0142】
図3を参照すると、本発明の第2実施形態に係る設定値の調整手段として、第1圧力制御部(PIC01)の圧力測定値を用いて、第2温度制御部(TIC02)の設定値を変更する第3制御部(PID)をさらに備える。
【0143】
すなわち、レシーバー(240)の飽和圧力に応じて気化器(120)から排出される第1熱媒体の温度の設定値、すなわち、第1熱媒体の飽和温度を調整し、第1熱媒体の組成が変動しても、それに合わせてレシーバー(240)の設定圧力、第2バルブ(BV)及び第3バルブ(QV)の開放時点を調整し、システムを正常に制御することができる。
【0144】
本実施形態に係るLNG再気化システムの第1熱媒体は、LNG再気化システムの正常運転時、気化器(120)でLNGとの熱交換によって凝縮して相対的に低い圧力を維持しながら第1サイクルを循環する。
【0145】
また、前記エキスパンダ発電機(230)の前段圧力、すなわち第1サイクルの高圧側の圧力を制御するためには、第1サイクルを循環する第1熱媒体の流量に対応してエキスパンダ発電機(230)の上流に設けられた第2流量調節バルブ(FV2)と第3流量調節バルブ(FV3)の開度率を調節する必要がある。
【0146】
このとき、エキスパンダ発電機(230)での電力生産量を最大にするためには、第1熱媒体が第1分岐ライン(RL1)に流入してエキスパンダ発電機(230)を迂回することよりも、エキスパンダ発電機(230)に供給されるように流れを誘導する必要がある。
【0147】
すなわち、限られた第1熱媒体の流量を気化器(120)側に流れるように調節する場合、第3流量調節バルブ(FV3)の開度率は小さいほど、第2流量調節バルブ(FV2)の開度率は大きいほど、エキスパンダ発電機(230)による電力生産量が増加し、システム全体をエネルギー効率面で有利に運転することができる。
【0148】
したがって、後述する本発明の第3及び第4実施例に係る再気化方法およびそのシステムは、システムの効率を改善するためにエキスパンダ発電機(230)の前段圧力、すなわち高圧側の圧力を制御することを特徴とする。
【0149】
図4を参照すると、本発明の第3実施形態に係る再気化の方法は、ノックアウト・ドラム(250)の圧力測定値による出力値に基づいてエキスパンダ発電機(230)の前段圧力を制御する。
【0150】
本実施形態によると、ノックアウト・ドラム(250)の圧力を測定する第2圧力制御部(PIC02)と、第2圧力制御部(PIC02)の圧力測定値を第6制御部(SIC)に伝送し、第2圧力制御部(PIC02)の圧力測定値による出力値に基づいて第3流量調節バルブ(FV3)の開度を調節する第5制御部(FB)と、第2圧力制御部(PIC02)の圧力測定値による出力値に基づいてエキスパンダ発電機(230)の出力と回転数の制御を司り、第2流量調節バルブ(FV2)の開度を調節する第6制御部(SIC)をさらに備える。
【0151】
本実施形態の第2圧力制御部(PIC02)は、ノックアウト・ドラム(250)の圧力を測定する圧力測定器(PT02)と圧力測定器(PT02)の圧力測定値(pressure signal)を伝送され圧力を調節する各種手段を制御するための出力値を算出して各種手段まで制御信号を送出する圧力調節器(pressure controller)を全て含めた名称である。
【0152】
第5制御部(FB)は、第2圧力制御部(PIC02)の圧力測定値が設定値よりも高い場合、スプリットレンジ制御方式で、第2流量調節バルブ(FV2)を優先的に開放するように第6制御部(SIC)へ信号を送信し、第6制御部(SIC)は第5制御部(FB)から当該信号を伝送されてエキスパンダ発電機(230)の出力を高め、第2流量調節バルブ(FV2)を開放するか開度率を高めてエキスパンダ発電機(230)の回転数(rotating speed)を維持させる。
【0153】
このとき、第2流量調節バルブ(FV2)の開度率が100%、すなわち最大であるにもかかわらず、ノックアウト・ドラム(250)の圧力が継続的に設定値以上である場合、またはエキスパンダ発電機(230)の出力が最大値に到達した場合には、第5制御部(FB)のスプリットレンジ制御によって第3流量調節バルブ(FV3)を開放するように命令し、第1熱媒体を第1分岐ライン(RL1)にも流入させることにより、ノックアウト・ドラム(250)の圧力、すなわちエキスパンダ発電機(230)の前段圧力を制御する。
【0154】
本実施形態によると、第6制御部(SIC)は、例えば、ガバナー(図1参照)である。すなわち、本実施形態によると、安定した電力供給のために、エキスパンダ発電機(230)のタービン回転数が設定範囲内で適正に運転しているか否かをモニタリングし、その回転数を制御するなど、エキスパンダ発電機(230)の出力を制御するガバナーが、第2流量調節バルブ(FV2)の開度を調節する役割を果たす。
【0155】
一方、エキスパンダ発電機(230)の出力変換速度はエキスパンダ発電機(230)の製作会社によってその許容範囲が異なるが、平均的に1分当たり10%水準である。すなわち、エキスパンダ発電機(230)の出力を増加させるときには、1分当たり10%の範囲内で増加させなければならない。
【0156】
上述したように、ノックアウト・ドラム(250)の圧力測定値による出力値に基づいてエキスパンダ発電機(230)の出力(タービンの回転数)を変化させることにおいて、第1熱媒体の循環量の変化がエキスパンダ発電機(230)の出力調整率より速く行われる場合や、ノックアウト・ドラム(250)に流入される第1熱媒体の気体流量が急に多くなる状況などの問題が発生した場合、エキスパンダ発電機(230)の入口圧力が要求圧力範囲を大きく逸脱してシステムの過負荷を引き起こす問題が発生する。したがって、安定的にエキスパンダ発電機(230)を運転することができない。
【0157】
このような問題を解決するため、本発明の第4実施形態に係る再気化方法は、第2圧力制御部(PIC02)の圧力測定値による出力値に基づいて、第3流量調節バルブ(FV3)を優先的に開放してエキスパンダ発電機(230)の前段圧力を迅速に制御する。
【0158】
本実施形態によると、第2圧力制御部(PIC02)の圧力測定値が設定値よりも高くなったら、優先的に第3流量調節バルブ(FV3)を開放することにより、圧力超過分だけの第1熱媒体をノックアウト・ドラム(250)から第1分岐ライン(RL1)に排出させてエキスパンダ発電機(230)の入口圧力を要求圧力範囲(設定値)まで低下するように迅速に制御する。
【0159】
また、本実施形態では、第5制御部(FB)で第2圧力制御部(PIC02)の圧力調節器からの圧力測定値を伝送されて第3流量調節バルブ(FV3)を制御する第3実施形態とは異なり、第2圧力制御部(PIC02)の圧力調節器が圧力測定値による出力値に基づいて、第3流量調節バルブ(FV3)に開度の制御信号を直接伝送する。
【0160】
また、本実施形態によれば、図5で示すように、第3流量調節バルブ(FV3)のバルブ変位を制御する第7制御部(ZIC)をさらに備える。
【0161】
本実施形態の第7制御部(ZIC)は、第3流量調節バルブ(FV3)の開度率が閉鎖状態(SP:0%)になるために必要なだけの負荷がエキスパンダ発電機(230)に割り当てられるように、第2流量調節バルブ(FV2)の開度率を調節する。
【0162】
このように本実施形態によると、ノックアウト・ドラム(250)の圧力測定値が設定値よりも高い場合には、第3流量調節バルブ(FV3)を優先的に開放してエキスパンダ発電機(230)の入口圧力を事前に設定値に合わせる。
【0163】
次に、第7制御部(ZIC)は第3流量調節バルブ(FV3)の開度率を可能な限り最大限減少させ、エキスパンダ発電機(230)の出力を最大まで高めるため第6制御部(SIC)に信号を伝送する。
【0164】
第6制御部(SIC)はそれに応じて、第2流量調節バルブ(FV2)の開度率を可能な限り最大限増加させることで、エキスパンダ発電機(230)の前段圧力を維持させながらもエキスパンダ発電機(230)の出力を許容範囲内で変化させながら発電量を最大にすることができる。
【0165】
以上、本発明の各実施実施について説明したが、これら以外にも本発明はその趣旨またはカテゴリに逸脱することなく、他の特定の形態で具体的に実施できるということは当該技術における通常の知識を有する者にとって自明である。したがって、前述した実施形態は、限定的なものではなく例示的なものであると解釈すべきである。それに応じて、本発明は、前述した説明に限定されず、添付した請求項の範囲とその均等範囲内で変更することができる。
【符号の説明】
【0166】
120:気化器、130:トリムヒーター、210:第1ポンプ、220:第1熱交換器、230:エキスパンダ発電機、240:レシーバー、250:ノックアウト・ドラム、LL:液化ガスライン、RL:第1熱媒体ライン、RL1:第1分岐ライン、RL2:第2分岐ライン、RL3:第3分岐ライン、RL4:第4分岐ライン、RL5:第5分岐ライン、SL1:第1海水ライン、LV:第1バルブ、FV1:第1流量調節バルブ、FV2:第2流量調節バルブ、FV3:第3流量調節バルブ、LV1:第1水位バルブ、LV2:第2水位バルブ、RV:第2バルブ、QV:第3バルブ、TIC01:第1温度制御部、TIC02:第2温度制御部、PIC01:第1圧力制御部、PIC02:第2圧力制御部、LS1:第1制御部、BQ:第2制御部、PID:第3制御部、LS2:第4制御部、FB:第5制御部、SIC:第6制御部、ZIC:第7制御部。
図1
図2
図3
図4
図5