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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/04 20060101AFI20240422BHJP
   B62D 5/083 20060101ALI20240422BHJP
   B62D 5/06 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
B62D5/04
B62D5/083
B62D5/06
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022572003
(86)(22)【出願日】2021-11-26
(86)【国際出願番号】 JP2021043343
(87)【国際公開番号】W WO2022137978
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2020212848
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】596148478
【氏名又は名称】クノールブレムゼ商用車システムジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【弁理士】
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 広輝
(72)【発明者】
【氏名】中村 慎二
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/141255(WO,A1)
【文献】特開平04-015170(JP,A)
【文献】特開平03-279076(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105128929(CN,A)
【文献】特開昭55-091456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/04
B62D 5/083
B62D 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールからの回転力が入力される操舵軸と、
前記操舵軸の回転を転舵輪に伝達する伝達機構と、
前記伝達機構に設けられたピストンおよび該ピストンによって画定された一対の液室を有し、前記転舵輪を操舵させる操舵力を付与可能なパワーシリンダと、
前記操舵軸の回転に応じて作動液を前記一対の液室に選択的に供給可能なロータリバルブと、
前記操舵軸にウォームシャフトとウォームホイールとの噛み合わせからなる減速機を介して回転力を付与可能な電動モータと、
を備え
記操舵軸が、前記ステアリングホイールに接続された第1軸と、該第1軸に接続され、前記第1軸から入力された回転力を前記伝達機構側へ出力し、かつ前記ウォームホイールが締結された、前記ロータリバルブの一部を形成する第2軸とを有する、ステアリング装置。
【請求項2】
前記第1軸と前記第2軸とは、トーションバーを介して互いに連結される、請求項1に記載のステアリング装置。
【請求項3】
前記第2軸は金属材料により形成され、
前記減速機は、金属材料により形成された筒状の芯金部を有した前記ウォームホイールを備え、
前記芯金部は、圧入によって前記第2軸の外周部に締結される、請求項2に記載のステアリング装置。
【請求項4】
前記第2軸は、前記第1軸側に位置する軸方向端面に形成された収容凹部を有しており、前記収容凹部の内周面には、前記芯金部の圧入に供する圧入装置の雄ねじ部と噛み合う雌ねじ部が設けられている、請求項3に記載のステアリング装置。
【請求項5】
前記第2軸は、その外周面に形成された円環状凹部を有しており、該円環状凹部には、前記芯金部の圧入に供する圧入装置の突起部が嵌め込まれる、請求項3に記載のステアリング装置。
【請求項6】
前記第2軸は金属材料により形成され、
前記減速機は、金属材料により形成された筒状の芯金部を有した前記ウォームホイールを備え、
前記芯金部は、焼き嵌めまたは冷やし嵌めによって前記第2軸の外周部に締結される、請求項2に記載のステアリング装置。
【請求項7】
前記第1軸と前記第2軸とは、トーションバーと、該トーションバーの周囲に設けられた筒状の接続軸とを介して互いに連結される、請求項1に記載のステアリング装置。
【請求項8】
前記第2軸は金属材料により形成され、
前記減速機は、金属材料により形成された筒状の芯金部を有した前記ウォームホイールを備え、
前記芯金部は、圧入によって前記第2軸の外周部に締結される、請求項7に記載のステアリング装置。
【請求項9】
前記第2軸は、前記第1軸側に位置する軸方向端面に形成された収容凹部を有しており、前記収容凹部の内周面には、前記芯金部の圧入に供する圧入装置の雄ねじ部と噛み合う雌ねじ部が設けられている、請求項8に記載のステアリング装置。
【請求項10】
前記第2軸は、その外周面に形成された円環状凹部を有しており、該円環状凹部には、前記芯金部の圧入に供する圧入装置の突起部が嵌め込まれる、請求項8に記載のステアリング装置。
【請求項11】
前記第2軸は金属材料により形成され、
前記減速機は、金属材料により形成された筒状の芯金部を有した前記ウォームホイールを備え、
前記芯金部は、焼き嵌めまたは冷やし嵌めによって前記第2軸の外周部に締結される、請求項7に記載のステアリング装置。
【請求項12】
前記第2軸は、前記第1軸側に位置する軸方向端面に形成された収容凹部を有しており、前記接続軸は、前記収容凹部内に挿入される、請求項7に記載のステアリング装置。
【請求項13】
前記操舵軸を収容するハウジングと、前記ハウジングに設けられ、前記接続軸を回転可能に支持するボールベアリングと、前記ハウジングの内周面に設けられ、前記ボールベアリングのアウタ-レースを支持するスナップリングと、前記スナップリングに対して前記ボールベアリングのアウタ-レースを押し付ける留め輪とをさらに備える、請求項7に記載のステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ステアリング装置として、例えば以下の特許文献1に記載されたステアリング装置が知られている。
【0003】
特許文献1に記載のステアリング装置では、操舵軸が、ステアリングホイールに接続された第1軸と、該第1軸に接続され、この第1軸から入力された回転力を伝達機構側へ出力する第2軸と、第1軸を回転可能に収容し、第2軸にスプライン部を介して接続された接続軸とを有している。また、接続軸は、減速機を介して電動モータに接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特願2019-026915
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のステアリング装置では、接続軸と第2軸とがスプライン部を介して接続されているので、この接続に伴うガタが接続軸と第2軸との間に生じる。そして、電動モータが減速機を介して接続軸に回転力を付与したときに、第2軸は、上記ガタに起因する応答性の悪化を伴って回転する虞がある。
【0006】
本発明は、従来の実情に鑑みて案出されたもので、第2軸に対する回転力の応答性を向上させることが可能なステアリング装置を提供することを1つの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、その一態様として、電動モータは、減速機を介して第2軸に回転力を付与する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第2軸に対する回転力の応答性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態のステアリング装置の斜視図である。
図2図1の線A-Aに沿って切断した第1の実施形態のステアリング装置の縦断面図である。
図3図2のステアリング装置の部分的な拡大断面図である。
図4】第1の実施形態の第1圧入装置の断面図である。
図5】第1の実施形態の被固定軸部の固定工程を示す工程図である。
図6】第1の実施形態のウォームホイールの圧入工程を示す工程図である。
図7】中間軸に圧入された状態のウォームホイールを示す第1の実施形態の説明図である。
図8】第2の実施形態の第2圧入装置の断面図である。
図9】第2の実施形態の被固定軸部の固定工程を示す工程図である。
図10】第2の実施形態の圧入工程を示す工程図である。
図11】中間軸に圧入された状態のウォームホイールを示す第2の実施形態の説明図である。
図12】第3の実施形態の第3圧入装置の被固定軸部の断面図である。
図13】第3の実施形態の被固定軸部の固定工程を示す工程図である。
図14】第3の実施形態の圧入工程を示す工程図である。
図15】中間軸に圧入された状態のウォームホイールを示す第3の実施形態の説明図である。
図16】第4の実施形態のウォームホイールの圧入工程を示す工程図である。
図17】第5の実施形態のステアリング装置の部分的な縦断面図である。
図18】第6の実施形態のステアリング装置の部分的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施形態]
(ステアリング装置の構成)
図1は、第1の実施形態のステアリング装置の斜視図、図2は、図1の線A-Aに沿って切断した第1の実施形態のステアリング装置の縦断面図、図3は、図2のステアリング装置の部分的な拡大断面図である。図1図3では、説明の便宜上、操舵軸7の長手方向を「軸方向」と定義し、操舵軸7と直行する方向を「径方向」と定義し、さらに、操舵軸7の周囲の方向を「周方向」と定義する。また、軸方向のうち図示せぬステアリングホイールに連係する側(各図中の上側)を「一端」とし、ピストン28に連係する側(各図中の下側)を「他端」として説明する。なお、図2および図3では、電動モータ2、EPSコントローラ3およびウォームシャフト21等を破線で示してある。
【0011】
ステアリング装置は、大型車両等に用いられるインテグラル型のステアリング装置であり、ステアリング装置本体1、電動モータ2およびEPSコントローラ(ECU)3から主に構成されている。
【0012】
ステアリング装置本体1は、操舵機構4と、セクタシャフト5と、パワーシリンダ6と、を備えている。
【0013】
操舵機構4は、図示せぬステアリングホイールからの回転力の入力に供するものであり、操舵軸7を有している。操舵軸7は、一部がハウジング8内に収容されており、入力軸9、接続軸10、中間軸11および出力軸12を備えている。
【0014】
入力軸9は、円筒状に形成されており、一端側がステアリングホイールに連係されており、運転者の操舵トルクの入力に供する。また、図2および図3に示すように、入力軸9は、他端部が概ね円筒状の接続軸10内に挿入されている。入力軸9の外周部には、軸方向中央に、第1ニードルベアリングNb1を収容する第1環状収容溝9aが形成されており、軸方向他端に、第2ニードルベアリングNb2を収容する環状窪み部9bが形成されている。入力軸9は、第1および第2ニードルベアリングNb1,Nb2を介して接続軸10の内周面によって回転可能に支持されている。
【0015】
接続軸10は、一端側で入力軸9の他端部を収容し、さらに、他端側がスプライン部13を介して中間軸11に連結されることで入力軸9と中間軸11とを接続する。なお、接続軸10の他端側は、スプライン部13ではなく、ねじ部を介して中間軸11に接続されても良い。図3に示すように、接続軸10は、一端側から他端側にかけて段差縮径状に連続する円筒状をなしており、一端側に位置する大径円筒部10aと、該大径円筒部10aと一体に形成され、大径円筒部10aよりも小径に形成された小径円筒部10bと、を有している。大径円筒部10aの外周部の軸方向中央よりも僅かに上方の位置には、径方向外側に突出する円環状をなす円環状突出部10cが形成されている。
【0016】
図3に示すように、円環状突出部10cの径方向端面には、一端側に段差縮形状に設けられた段部10dが設けられており、段部10dとハウジング8の一部を構成する入力側ハウジング14の内周壁との間に、接続軸10を回転可能に支持する第1ボールベアリングBb1が設けられている。第1ボールベアリングBb1は、ボルト15を介して入力側ハウジング14に固定される際に生じる締め付け力により、入力側ハウジング14に設けられた段差部14aに対して第1ボールベアリングBb1のアウターレース17を留め輪16によって一端側へ押し付けることで入力側ハウジング14に固定されている。
【0017】
また、小径円筒部10bの外周部は、円筒状の中間軸11の後述の小径凹部20bの内周部にスプライン部13を介して固定されている。
【0018】
中間軸11は、一端側が第1トーションバー18を介して入力軸9と相対回転可能に連結されるとともに、外周部に設けられた減速機19を介した電動モータ2の駆動トルクの入力に供する。中間軸11の軸方向一端面11aには、接続軸10の円環状突出部10cよりも他端側の部位を収容する収容凹部20が一端側に向かって開口形成されている。収容凹部20は、一端側に位置し、接続軸10の大径円筒部10aの他端側の外径に対応した内径を有する円形の大径凹部20aと、該大径凹部20aと軸方向に隣接し、小径円筒部10bの外径に対応した内径を有する円形の小径凹部20bと、を備えている。中間軸11の一端側の外周部には、電動モータ2に接続され、ウォームシャフト21とウォームホイール22とを噛み合わせてなるウォームギヤからなる減速機19が設けられている。
【0019】
ウォームホイール22は、円筒状をなす金属製の芯金部23と、該芯金部23の一端側の外周部に設けられた合成樹脂製の斜歯部24と、を有している。なお、斜歯部24は、金属材料によって形成されても良い。軸方向に沿った芯金部23の長さは、軸方向に沿った斜歯部24の長さよりも長くなっている。芯金部23は、後述する第1圧入装置48を用いて芯金部23の一端側の軸方向端面23aを他端側へ押圧することにより、中間軸11の一端側の外周部、より詳細には、大径凹部20aの外周部と、この外周部と軸方向に隣接した小径凹部20bの外周部の一部の軸方向領域とに圧入される。図3に示すように、芯金部23が中間軸11の外周部に圧入された状態では、軸方向端面23aは、中間軸11の軸方向一端面11aよりも他端側に位置している。また、圧入により中間軸11に芯金部23を取り付ける代わりに、焼き嵌めまたは冷やし嵌めによって中間軸11の外周部に芯金部23を取り付けるようにしても良い。さらに、圧入、焼き嵌めまたは冷やし嵌めの代わりに、楔ねじ、接着剤またはスプライン等を用いて中間軸11の外周部に芯金部23を取り付けるようにしても良い。なお、スプライン等を用いて中間軸11の外周部に芯金部23を取り付ける場合には、スプラインに樹脂をコーティングするか、またはスプラインにピンを挿入することにより、中間軸11と芯金部23との間のガタを抑制するようにしても良い。斜歯部24は、ウォームシャフト21の外周に形成された図示せぬウォームと噛み合う。
【0020】
また、芯金部23の他端側の外周部には、斜歯部24とウォームとの噛み合い部から漏れたグリスの出力軸12側への侵入を抑制する環状のグリス拡散防止部材25が設けられている。グリス拡散防止部材25は、斜歯部24の外径よりも大きな外径を有し、例えば圧入によって芯金部23の下端側の外周部に固定されている。なお、グリス拡散防止部材25の固定は、圧入による固定に限定されるものではなく、ねじ等の固定部材による固定であっても良い。また、ねじ等による固定の代わりに、接着剤によって芯金部23の下端側の外周部にグリス拡散防止部材25を接着しても良い。
【0021】
また、中間軸11の他端側は、出力軸12の一端側拡径部に形成された開口凹部12a内に挿入されている。出力軸12は、一端側が第2トーションバー26を介して中間軸11と相対回転可能に連結され、この中間軸11により入力される操舵トルクを、変換機構であるボールねじ機構27を介してピストン28に出力する。
【0022】
ボールねじ機構27は、他端側の外周部に螺旋溝であるボール溝27aが形成されたねじ軸としての上記出力軸12と、該出力軸12の外周側に設けられて内周部にボール溝27aに対応する螺旋溝であるボール溝27bが形成されたナットとしての上記ピストン28と、該ピストン28と出力軸12との間に設けられた複数のボール27c(図2に一部を破線で示す)と、から構成されている。
【0023】
中間軸11と出力軸12との間には、コントロールバルブとしての周知のロータリバルブ29が構成されている。ロータリバルブ29は、中間軸11および出力軸12の相対回転角より導き出される第2トーションバー26の捩れ量および捩れの方向に応じて車両に搭載された図示せぬポンプ装置により供給される作動液を後述する第1、第2液室(圧力室)P1,P2へと選択的に供給する。
【0024】
セクタシャフト5は、セクタギヤ5aを有し、該セクタギヤ5aが操舵軸7の他端側外周に設けられたピストン28のラック歯28aと噛み合うことにより、ピストン28の軸方向移動に伴って回動する。セクタシャフト5は、図示せぬピットマンアームを介して転舵輪に連係され、転舵に供する。
【0025】
このように、上記ボールねじ機構27、セクタシャフト5およびピットマンアームは、操舵軸7に入力された回転力(操舵力)を転舵輪の転舵力へと変換させる伝達機構を構成する。なお、ボールねじ機構27等を用いずにステアリング装置が構成される場合には、上記伝達機構として、例えばラック&ピニオン機構を構成するラックバー、ピニオン軸等を用いることができる。
【0026】
パワーシリンダ6は、ハウジング8内において摺動可能に収容された筒状のピストン28が一対の液室である第1、第2液室P1,P2を画定することによって構成されており、操舵トルクを補助するアシストトルクを生成する油圧アクチュエータである。
【0027】
電動モータ2は、第1トーションバー18の捩じれ量に応じて中間軸11に回転トルクを付与する3相交流式のブラシレスモータとして構成されている。図1に示すように、電動モータ2は、EPSコントローラ3と一体に構成されており、入力軸9等を収容する入力側ハウジング14と一体に形成されたモータ用ハウジング30内に収容されている。電動モータ2は、図示せぬモータシャフトを有しており、このモータシャフトの軸方向一端部が、図2および図3に仮想線で示すウォームシャフト21に接続されている。ウォームシャフト21の外周には、ウォームが一体に形成されており、該ウォームは、ウォームホイール22の斜歯部24と噛み合っている。
【0028】
トルクセンサ31は、第1トーションバー18が環状のトルクセンサ31の内部を貫通した状態で、接続軸10の円環状突出部10cよりも一端側の外周部の周囲に設けられている。トルクセンサ31は、永久磁石32と、一対の第1、第2ヨーク33,34と、一対の第1、第2集磁リング35,36と、磁気センサ37と、から主に構成されている。永久磁石32、ヨーク33,34および集磁リング35,36は、いずれも操舵軸7の回転中心線とほぼ同心円上となるように配置されている。
【0029】
永久磁石32は、磁性材料によりほぼ円筒状に形成され、接続軸10の一端部外周に取付固定された磁性部材である。永久磁石32は、該永久磁石32の周方向に沿ってN極とS極が交互に配置(着磁)されることで構成されている。
【0030】
一対のヨーク33,34は、いずれも軟磁性体によりほぼ円筒状に形成されている。このヨーク33,34は、それぞれ中間軸11側となる一端側が周方向に沿って一列に整列し、永久磁石32と径方向で対向するように設けられている。一方、他端側は、第1ヨーク33が内周側に配置され、第2ヨーク34が外周側に配置されることで、径方向に対向している。
【0031】
一対の集磁リング35,36は、両ヨーク33,34の他端側へと漏洩した永久磁石32による磁束を所定の範囲に集約するほぼ円環状のリングであり、ヨーク33,34の他端側の径方向間に配置される。集磁リング35は外周側に配置され、集磁リング36は内周側に配置されており、両者は径方向に対向している。集磁リング35,36の径方向間には、ホール素子38が配置されている。集磁リング35の周方向の所定位置には、径方向内側へ押圧されてなる集磁部35aが設けられており、一方、集磁リング36の周方向における集磁部35aと対向する位置には、径方向外部へ突出させてなる集磁部36aが設けられている。
【0032】
磁気センサ37は、集磁部35aと集磁部35bとの間の径方向隙間に収容配置されたホール素子38と、このホール素子38をトルクセンサ31の上方に配置された制御基板39に接続するための接続端子40と、から構成されている。磁気センサ37は、ホール素子38によるホール効果を利用することでホール素子38により集磁部35a,36aの間を通過する磁束を検出し、この磁束に応じた信号を制御基板39に出力する。これにより、制御基板39における入力軸9と中間軸11との間の相対回転角の演算や、該相対回転角に基づく操舵トルクの演算が行われる。
【0033】
ハウジング8は、一端側が開口し他端側が閉塞されてなる筒状を呈し、第1、第2液室P1,P2を画定する出力側ハウジング41と、該出力側ハウジング41の一端開口部を閉塞するように設けられ、内部にロータリバルブ29を収容する中間ハウジング42と、中間ハウジング42に連結され、入力軸9、接続軸10、中間軸11の一部およびトルクセンサ31を収容する上述の入力側ハウジング14と、から構成されている。図1に示すように、出力側ハウジング41および中間ハウジング42同士は、複数の固定手段、例えばボルト43を介して互いに締結されており、一方、中間ハウジング42および入力側ハウジング14同士は、複数の固定手段、例えばねじ44によって互いに締結されている。
【0034】
出力側ハウジング41の内部には、操舵軸7の軸方向に沿って形成されたパワーシリンダ本体部41aと、該パワーシリンダ本体部41aと直交するように、かつ、一部がパワーシリンダ本体部41aへと臨むように形成されたシャフト収容部41bと、が設けられている。パワーシリンダ本体部41a内には、出力軸12に連係するピストン28が収容されることで、ピストン28をもって一端側の第1液室P1と他端側の第2液室P2とが画定されている。また、シャフト収容部41b内には、軸方向一端側がピストン28に連係すると共に他端側が図示せぬピットマンアームを介して転舵輪に連係されるセクタシャフト5が収容されている。
【0035】
ピストン28およびセクタシャフト5の各外周部には、相互に噛み合い可能なラック歯28aおよびセクタギヤ5aが設けられている。ラック歯28aおよびセクタギヤ5aが噛み合うことによりピストン28の軸方向移動に伴ってセクタシャフト5が回動し、これにより、ピットマンアームが車体幅方向に引っ張られることで、転舵輪の向きが変更される。なお、この際、シャフト収容部41bには、第1液室P1内の作動液が導かれ、これにより、ラック歯28aとセクタギヤ5aとの間の潤滑が行われる。
【0036】
図2に示すように、中間ハウジング42の内周側には、互いに重なり合う中間軸11および出力軸12が挿入される軸挿入孔42aが、一端側から他端側へと軸方向に沿って段差縮径状に貫通している。そして、一端側の大径部には出力軸12を回転可能に支持する軸受Bnが設けられている。一方、他端側の小径部には、図示せぬポンプ装置と連通する導入ポート45と、該導入ポート45より導入された液圧を各液室P1,P2に給排する給排ポート46と、該給排ポート46を介して各液室P1,P2から排出された作動液を図示せぬリザーバタンクへ排出する排出ポート47と、が設けられている。なお、給排ポート46は、出力軸12の一端側拡径部に設けられた第1給排通路L1を介して第1液室P1と連通するとともに、出力側ハウジング41内部に設けられた第2給排通路L2等を介して第2液室P2と連通している。
【0037】
中間ハウジング42および出力側ハウジング41を有したステアリング装置の他端側部分は予め組み立てられ、接続軸10を介して、入力軸9を含むステアリング装置の予め組み立てられた一端側部分と組み合わされる。
【0038】
かかる構成から、ステアリング装置では、運転者がステアリングホイールを操舵すると、ポンプ装置により圧送された作動液がロータリバルブ29を介して操舵方向に応じた一方側の液室P1,P2に供給されるとともに、他方側の液室P1,P2から供給量に対応する作動液(余剰分)がリザーバタンクへと排出される。そして、当該液圧によりピストン28が駆動される結果、ピストン28に作用する液圧に基づいたアシストトルクがセクタシャフト5へと付与される。
【0039】
図4は、第1の実施形態におけるウォームホイール22の圧入方法で用いられる第1圧入装置48の断面図である。
【0040】
第1圧入装置48は、中間軸11に固定される被固定軸部49と、該被固定軸部49に対して軸方向に移動可能に設けられ、ウォームホイール22の芯金部23の押圧に供する押圧部50と、後述の雄ねじ部49hおよび雌ねじ部51aを介して被固定軸部49に設けられ、雄ねじ部49hへの雌ねじ部51aの締め付けの反力により押圧部50に押圧力を付与可能な押圧力付与部であるナット51と、該ナット51と押圧部50との間に設けられ、押圧時の被固定軸部49の後述の中央軸部49bと押圧部50の内周面との間の摩擦を低減する摩擦低減部であるスラストベアリング52と、を備えている。
【0041】
被固定軸部49は、金属材料により円柱状に形成されている。被固定軸部49は、軸方向一端側に位置する円柱状の一端側軸部49aと、該一端側軸部49aと一体に形成され、一端側軸部49aよりも大径に形成された円柱状の中央軸部49bと、該中央軸部49bと一体に形成され、中央軸部49bよりも小径に形成された円柱状の他端側軸部49cとを有している。
【0042】
一端側軸部49aの外周部は、中央軸部49bから軸方向一端付近にわたって形成され、ナット51の内周部に設けられた雌ねじ部51aと噛み合う雄ねじ部49hを有したねじ付き部49dと、該ねじ付き部49dよりも小径となるようにねじ付き部49dと一体に形成され、雄ねじ部を有していない非ねじ部49eと、を備えている。
【0043】
他端側軸部49cは、中央軸部49bから軸方向他端側へ向かって段差縮径状に形成されており、中央軸部49bと軸方向に隣接した大径円柱部49fと、該大径円柱部49fと一体に形成され、大径円柱部49fよりも小径である小径円柱部49gとを有している。小径円柱部49gの外周部には、中間軸11に設けられた後述の雌ねじ部11bにねじ込まれる雄ねじ部49iが形成されている。
【0044】
押圧部50は、金属材料により円筒状に形成されている。押圧部50は、軸方向一端側の内周面から径方向内側に突出する円環状の円環突出部50aを有している。円環突出部50aの内径は、一端側軸部49aの雄ねじ部49hの最大外径(ねじ山の外径)よりも僅かに大きくなるように設定されている。また、押圧部50のうち円環突出部50aを含まない部分の内径は、中央軸部49bの外径に対応した大きさを有するように設定されている。
【0045】
また、押圧部50の軸方向他端面は、中間軸11への芯金部23の圧入時に芯金部23の軸方向端面23aを押圧する押圧面50bと、芯金部23の圧入完了時に中間軸11の軸方向一端面11aに当接する当接面50cとを有している。押圧面50bは、押圧部50の径方向外側に位置した環状の面である。当接面50cは、押圧部50の径方向内側に位置し、段差50dを介して押圧面50bから軸方向一端側にオフセットするように配置された環状の面である。
【0046】
図5は、第1の実施形態におけるウォームホイール22の圧入方法の複数の工程のうちの被固定軸部49の固定工程を示す工程図である。図6は、第1の実施形態におけるウォームホイール22の圧入方法の複数の工程のうちのウォームホイール22の圧入工程を示す工程図である。図7は、中間軸11に圧入された状態のウォームホイール22を示す説明図である。
【0047】
まず、図5に示すように、中間軸11および出力軸12を含むステアリング装置の他端側の部位を、中間軸11の収容凹部20が上向きとなるように配置する。
【0048】
そして、図示せぬねじ形成用工具、例えばねじ切りタップを用いて、図5に示すように、中間軸11の小径凹部20bの底部の中央に、被固定軸部49の小径円柱部49gの雄ねじ部49iと噛み合う雌ねじ部11bを予め形成しておく。
【0049】
次に、図5に示す被固定軸部49の固定工程において、中間軸11の雌ねじ部11bに対して小径円柱部49gの雄ねじ部49iをねじ込むことにより、中間軸11に被固定軸部49を固定する。図5に示すように、被固定軸部49が中間軸11に固定された状態では、被固定軸部49の中央軸部49bの軸方向他端側の部位が中間軸11の収容凹部20内に配置されている。
【0050】
そして、図6に示すウォームホイール22の圧入工程において、被固定軸部49の中央軸部49bの軸方向一端部の周囲にウォームホイール22を配置してから、ウォームホイール22の芯金部23の軸方向端面23aに押圧部50の押圧面50bが接するように、被固定軸部49の軸方向一端側から押圧部50を配置する。押圧部50の配置後には、図6に示すように、押圧部50の軸方向一端部と軸方向に隣接するようにスラストベアリング52を配置する。スラストベアリング52の配置後には、図6に示すように、スラストベアリング52の軸方向一端部と軸方向に隣接するようにナット51を配置する。
【0051】
そして、図6に示すように、矢印B方向にナット51を回転させて、固定された一端側軸部49aの雄ねじ部49hに対してナット51の雌ねじ部51aを他端側へ矢印C方向に沿ってねじ込むことにより、このねじ込みによる反力が、スラストベアリング52を介して押圧部50に伝達される。そして、押圧部50の内周面が中央軸部49bの外周面を摺動しながら、押圧部50により芯金部23を矢印C方向へ押圧することで、中間軸11の外周部に芯金部23の内周部を圧入する。図7に示すように、芯金部23が中間軸11の外周部に圧入された状態では、押圧部50の当接面50cが中間軸11の軸方向一端面11aに当接しており、さらに、芯金部23の軸方向端面23aが中間軸11の軸方向一端面11aよりも僅かに他端側に位置している。
【0052】
[第1の実施形態の効果]
第1の実施形態では、減速機19を構成するウォームホイール22の芯金部23が中間軸11の外周部に接続されており、電動モータ2が、減速機19を介して中間軸11に回転力を付与する。仮に、芯金部23が接続軸10の外周部に接続されていると、電動モータ2からの回転力が接続軸10と中間軸11との間のスプライン部13を介して中間軸11へ伝達されることになり、電動モータ2からの回転力が、スプライン部13のガタに起因する応答性の悪化を伴って中間軸11へ伝達されてしまう。そこで、第1の実施形態では、電動モータ2からの回転力が接続軸10を経由せずに中間軸11へ直接伝達されるので、上記ガタに起因する応答性の悪化を伴うことなく、中間軸11に対する電動モータ2からの回転力の応答性を向上させることができる。
【0053】
なお、周知の技術として、中間軸11の外周部に中空モータを設けて中間軸11に直接回転力を付与するものがあるが、このような中空モータは比較的大型であり、中間軸11の周囲の中空モータを収容するハウジングの径方向寸法を増大させるという問題がある。
【0054】
しかし、本実施形態のように中間軸11の外側に設けられた電動モータ2の回転力を減速機19により増幅させることで、中間軸11等を収容する入力側ハウジング14の径方向寸法を減少させることができる。
【0055】
また、第1の実施形態では、ウォームホイール22の芯金部23は、第1圧入装置48を用いて中間軸11の外周部に圧入され、この圧入の際には、中間軸11の小径凹部20bの底部の中央付近に形成された雌ねじ部11bに被固定軸部49の小径円柱部49gの雄ねじ部49iをねじ込ませることで、中間軸11に被固定軸部49を固定する。そして、被固定軸部49の軸方向一端側からウォームホイール22、押圧部50、スラストベアリング52およびナット51を順次配置した後、矢印B方向へナット51を回転させて、被固定軸部49の中央軸部49bの外周部に押圧部50を摺動させながら中間軸11の外周部に芯金部23を圧入する。このように中央軸部49bの外周部に押圧部50を摺動させながら芯金部23を圧入することで、被固定軸部49を用いずに芯金部23に直接に押圧力を作用させる場合と比べて、中間軸11に加わるスラスト力を小さくし、中間軸11に接続された第2トーションバー26の損傷を抑制することができる。
【0056】
なお、本実施形態の電動モータ2は、上述した周知技術の中空モータよりも非常に大きい回転力を付与することを前提としており、減速機19を介して中間軸11に伝達される回転力も同様に大きくなる。従って、このような大きな回転力に耐えるために、中間軸11の外周部への芯金部23の圧入の際には、中間軸の外周部に中空モータを圧入する場合と比べて、非常に大きな圧入力が必要とされる。このため、本実施形態において中間軸11に加わるスラスト力を低減させ、第2トーションバー26の損傷を抑制することは特に重要である。
【0057】
また、第1の実施形態では、雌ねじ部11bが、中間軸11の軸方向一端面11aから他端側に比較的長く離間した小径凹部20bの底部付近に形成されているので、雌ねじ部11bが軸方向一端面11a近傍に形成される場合と比べて、中間軸11の収容凹部20内における被固定軸部49のインローを十分に確保できる等の設計の自由度を向上させることができる。
【0058】
さらに、第1の実施形態では、入力軸9と中間軸11とは、第1トーションバー18と、第1トーションバー18の周囲に設けられた筒状の接続軸10とを介して互いに連結される。接続軸10は、入力軸9、トルクセンサ31および電動モータ2を含むステアリング装置の入力側ステアリング装置部分と、中間軸11、出力軸12およびパワーシリンダ6等を含むステアリング装置の出力側部分とを隔てている。従って、予め組み立てられたステアリング装置の出力側部分に同じく予め組み立てられた入力側ステアリング装置部分を接続軸10を介して適宜配置し固定するだけで、容易にステアリング装置を製造することができる。逆に言えば、接続軸10がステアリング装置に設けられていない場合には、入力側部分から出力側部分までの組み立てを一連の作業により行う必要があり、ステアリング装置の製造に比較的長い時間を要することになる。また、ステアリング装置のメンテナンスの際には、接続軸10を有していないステアリング装置に比べて、ステアリング装置の出力側部分から入力側部分を取り外すだけで入力側部分および出力側部分の内部に容易にアクセスし、メンテナンスを行うことができる。
【0059】
また、従来技術では、中間軸の一端側外周部および他端側外周部の2箇所にボールベアリングが設けられることで中間軸がハウジングに対して回転可能に支持されていた。
【0060】
しかし、第1の実施形態では、接続軸10の一端側の外周部がボールベアリングBb1によって回転可能に支持され、一方、接続軸10の他端側の部分が中間軸11の収容凹部20内に挿入されている。従って、本実施形態では、接続軸10の他端側の部分が従来技術の接続軸の他端側の部分よりも多く収容凹部20内に挿入されるので、中間軸11に対する接続軸10の倒れを抑制することができる。
さらに、本実施形態では、従来技術と異なり、接続軸10の他端側の外周部に設けられるボールベアリングが必要ないので、ステアリング装置の製造コストを削減することができる。
【0061】
[第2の実施形態]
図8は、第2の実施形態におけるウォームホイール22の圧入方法で用いられる第2圧入装置53の断面図である。
【0062】
第2の実施形態では、第1の実施形態の第1圧入装置48の被固定軸部49と異なり、第2圧入装置53の被固定軸部49が、一端側軸部49aおよび中央軸部49bをねじにより結合することで構成されている。さらに、第2の実施形態の第2圧入装置53の押圧部50の軸方向他端部の形状が第1の実施形態の第1圧入装置48の押圧部50の軸方向他端部の形状と異なる。
【0063】
一端側軸部49aの外周部は、軸方向一端から軸方向他端にかけて形成された雄ねじ部49hを有している。雄ねじ部49hの軸方向他端側の部分は、中央軸部49bの軸方向一端部に形成された雌ねじ部49jにねじ込まれることで中央軸部49bに固定されている。
【0064】
中央軸部49bは、第1の実施形態の中央軸部49bよりも軸方向長さが短く、さらに外径が中間軸11の外径と概ね等しくなるように形成されている。図8に示すように、中央軸部49bは、軸方向他端側に小径円柱軸部49kを有しており、該小径円柱軸部49kの外周部には、中間軸11に設けられた後述の雌ねじ部11cにねじ込まれる雄ねじ部49nが形成されている。中央軸部49bの小径円柱軸部49kの付け根に位置する円環状の面49mは、後述の被固定軸部49の固定工程において被固定軸部49が中間軸11に固定された状態で中間軸11の軸方向一端面11aに当接する。
【0065】
押圧部50の軸方向他端面は、中間軸11への芯金部23の圧入時に芯金部23の軸方向端面23aを押圧する押圧面50bと、中間軸11への芯金部23の圧入時に芯金部23の軸方向端面23aを押圧しない非押圧面50eとを備えている。押圧面50bは、押圧部50の径方向内側に位置した環状の面である。非押圧面50eは、押圧部50の径方向外側に位置し、段差50fを介して押圧面50bから軸方向一端側にオフセットするように配置された環状の面である。
【0066】
図9は、第2の実施形態におけるウォームホイール22の圧入方法の複数の工程のうちの被固定軸部49の固定工程を示す工程図である。図10は、第2の実施形態におけるウォームホイール22の圧入方法の複数の工程のうちのウォームホイール22の圧入工程を示す工程図である。図11は、中間軸11に圧入された状態のウォームホイール22を示す説明図である。
【0067】
まず、図9に示すように、中間軸11および出力軸12を含むステアリング装置の他端側の部位を、中間軸11の収容凹部20が上向きとなるように配置する。
【0068】
そして、図示せぬねじ形成用工具、例えばねじ切りタップを用いて、図9に示すように、中間軸11の一端部の内周面に、被固定軸部49の小径円柱軸部49kの雄ねじ部49nと噛み合う雌ねじ部11cを予め形成しておく。
【0069】
次に、図9に示す被固定軸部49の固定工程において、中間軸11の雌ねじ部11cに対して小径円柱軸部49kの雄ねじ部49nをねじ込むことにより、中間軸11に被固定軸部49を固定する。図9に示すように、被固定軸部49が中間軸11に固定された状態では、被固定軸部49の小径円柱軸部49kが中間軸11の収容凹部20の大径凹部20a内に配置され、中央軸部49bの円環状の面49mが、中間軸11の軸方向一端面11aに当接している。
【0070】
そして、図10に示すウォームホイール22の圧入工程において、第1の実施形態の圧入工程と同様に、被固定軸部49の軸方向一端側からウォームホイール22、押圧部50、スラストベアリング52およびナット51を順次配置する。
【0071】
そして、図10に示すように、第1の実施形態と同様に、矢印B方向にナット51をねじ込むことにより、スラストベアリング52を介して押圧部50を矢印C方向へ移動させ、中間軸11の外周部に芯金部23の内周部を圧入する。図11に示すように、芯金部23が中間軸11の外周部に圧入された状態では、芯金部23の軸方向端面23aが中間軸11の軸方向一端面11aよりも僅かに他端側に位置しており、押圧部50の円環突出部50aの軸方向他端側の円環面50gが、中央軸部49bの軸方向一端に設けられた円環状対向面49oと当接している。
【0072】
[第2の実施形態の効果]
第2の実施形態では、中間軸11の軸方向一端面11a付近に形成された雌ねじ部11cに、被固定軸部49の小径円柱軸部49kの雄ねじ部49nがねじ込まれる。従って、第1の実施形態のように中間軸11の小径凹部20bの底部の中央付近に雌ねじ部11bを形成する場合と比べて、被固定軸部49の軸方向長さが短くなるから、被固定軸部49にかかる製造コストを削減することができる。
【0073】
また、軸方向一端面11a付近に形成された雌ねじ部11c、即ち収容凹部20の大径凹部20aの内周面に形成された雌ねじ部11cは、第1の実施形態の小径凹部20bの中央の雌ねじ部11bよりも外径が大きいから、第1の実施形態と比べて、雄ねじ部49nとの係り合わせの面積が大きく確保される。従って、第2の実施形態の雌ねじ部11cは、第1の実施形態の雌ねじ部11bよりも被固定軸部49に対する固定力を増加させることができる。
【0074】
[第3の実施形態]
図12は、第3の実施形態におけるウォームホイール22の圧入方法で用いられる第3圧入装置54の被固定軸部49の断面図である。
【0075】
第3の実施形態では、第2の実施形態のように一端側軸部49aおよび中央軸部49bがねじにより結合されることにより被固定軸部49が構成されているのではなく、半割状に構成された中央軸部49bにより一端側軸部49aの軸方向他端部を挟むことで被固定軸部49が構成されている。
【0076】
一端側軸部49aは、軸方向他端の外周部から径方向外側へ突出する円環状の円環突起部49pを有している。
【0077】
中央軸部49bは、比較的肉厚の円形の板状部材を径方向に二分割することにより形成された第1半部55と第2半部56とを有している。
【0078】
第1半部55は、第2半部56の半円形状の第2板状部56aと協働して円形の板状部を構成する半円形状の第1板状部55aと、該第1板状部55aの外周部から軸方向一端側に突出し、第2半部56の半円弧状の第2一端側突出部56bと協働して円環状部を構成する第1一端側突出部55bと、第1板状部55aの外周部から軸方向他端側に突出し、第2半部56の半円弧状の第2他端側突出部56cと協働して円環状部を形成する第1他端側突出部55cを有している。
【0079】
第1一端側突出部55bの内周面には、周方向に沿って半円弧状に連続する第1半円環溝55dが形成されており、この第1半円環溝55dは、第2半部56の第2一端側突出部56bに設けられた第2半円環溝56dと協働して、一端側軸部49aの円環突起部49pが嵌め込まれる円環状溝を形成する。
【0080】
第1他端側突出部55cは、軸方向他端部から径方向内側に突出した半円弧状の第1突起部55eを有しており、該第1突起部55eは、第2半部56の半円弧状の第2突起部56eと協働して、中間軸11の外周面に形成された後述の円環状凹部11dに嵌め込まれる円環状突起部を形成する。
【0081】
第2半部56は、第1板状部55a、第1一端側突出部55b、第1他端側突出部55c、第1半円環溝55dおよび第1突起部55eと同様の形状を有する第2板状部56a、第2一端側突出部56b、第2他端側突出部56c、第2半円環溝56dおよび第2突起部56eを備えている。
【0082】
図13は、第3の実施形態におけるウォームホイール22の圧入方法の複数の工程のうちの被固定軸部49の固定工程を示す工程図である。図14は、第3の実施形態におけるウォームホイール22の圧入方法の複数の工程のうちのウォームホイール22の圧入工程を示す工程図である。図15は、中間軸11に圧入された状態のウォームホイール22を示す説明図である。
【0083】
まず、図13に示すように、中間軸11および出力軸12を含むステアリング装置の他端側の部位を、中間軸11の収容凹部20が上向きとなるように配置する。
【0084】
そして、図13に示すように、機械加工により、中間軸11の一端部の外周に、周方向に連続した円環状凹部11dを予め形成しておく。
【0085】
次に、図13に示す被固定軸部49の固定工程において、中間軸11の軸方向一端面11aから一端側へ所定の距離だけ離間した位置に一端側軸部49aを配置する。一端側軸部49aの配置後には、図13に示すように径方向外側から径方向内側へ第1半部55および第2半部56を移動させ、互いに付き合わせる。図14に示すように、第1および第2半部55,56を互いに付き合わせた状態では、環状の突起部を構成する第1突起部55eおよび第2突起部56eが中間軸11の円環状凹部11dに嵌め込まれており、同時に、一端側軸部49aの円環突起部49pが、第1半円環溝55dおよび第2半円環溝56dからなる円環状溝に嵌め込まれている。
【0086】
そして、図14に示すウォームホイール22の圧入工程において、第1および第2の実施形態の圧入工程と同様に、矢印B方向にナット51をねじ込むことにより、スラストベアリング52を介して押圧部50を矢印C方向へ移動させ、中間軸11の外周部に芯金部23の内周部を圧入する。図15に示すように、芯金部23が中間軸11に圧入された状態では、芯金部23の軸方向端面23aが中間軸11の円環状凹部11dよりも僅かに他端側に位置しており、押圧部50の円環突出部50aの軸方向他端側の円環面50gが、第1半部55の軸方向一端55fおよび第2半部56の軸方向一端56fと当接している。
【0087】
[第3の実施形態の効果]
第3の実施形態では、ウォームホイール22の芯金部23は、第3圧入装置54を用いて中間軸11の外周部に圧入され、この圧入の際には、中間軸11に設けられた円環状凹部11dに第1半部55の第1突起部55eおよび第2半部56の第2突起部56eをはめ込むことで、中間軸11に被固定軸部49を固定する。従って、比較的簡潔な凹凸の嵌め合い結合により、ねじの形成やこの形成に伴う切り粉の除去等を必要とせずに、中間軸11に被固定軸部49を容易に固定することができる。
【0088】
さらに、上記のように中間軸11に固定された被固定軸部49の軸方向一端側からウォームホイール22、押圧部50、スラストベアリング52およびナット51を順次配置した後、矢印B方向へナット51を回転させて、第1半部55および第2半部56の外周部に押圧部50を摺動させながら中間軸11の外周部に芯金部23を圧入する。これにより、被固定軸部49を用いずに芯金部23に直接に押圧力を作用させる場合と比べて、中間軸11に加わるスラスト力を小さくし、中間軸11に固定された第2トーションバー26の損傷を抑制することができる。
【0089】
[第4の実施形態]
図16は、第4の実施形態のウォームホイール22の圧入工程を示す工程図である。
【0090】
第4の実施形態では、第4圧入装置57が、第1の実施形態の被固定軸部49から一端側軸部49aを取り除いた被固定軸部49と、第1の実施形態の押圧部50とは軸方向一端側の形状が異なる押圧部50とを有している。
【0091】
図16に示すように、被固定軸部49の中央軸部49bの軸方向一端部が、作業場に設けられた固定壁58から吊り下げられ、一方、他端側軸部49cが、中間軸11の雌ねじ部11bと他端側軸部49cの雄ねじ部49iとのねじ結合を介して中間軸11に固定されている。
【0092】
押圧部50は、軸方向一端部が一端側に段差拡径状に拡張した拡張一端部50hを有しており、この拡張一端部50hの環状に連続した軸方向端面50iが、図示せぬプレス機により押圧力Dが付与される押圧面となる。
【0093】
また、本実施形態では、ステアリング装置の出力側ハウジング41の底部が受け皿59上に設置されており、さらに、受け皿59は、ばね60を介して作業場の床部61に取り付けられている。ばね60は、ウォームホイール22の圧入時に中間軸11に作用する荷重を吸収する。
【0094】
かかる第4圧入装置57では、図示せぬプレス機によりウォームホイール22の芯金部23に押圧力Dを付与し、押圧部50の軸方向端面23aを他端側へ押圧することにより、中間軸11の外周部にウォームホイール22の芯金部23を圧入する。
【0095】
[第4の実施形態の効果]
第4の実施形態では、中央軸部49bの軸方向一端部が固定壁58から吊り下げられ、ステアリング装置の出力側ハウジング41の底部が受け皿59およびばね60を介して床部61に取り付けられている。このように設けられたステアリング装置においてプレス機により中間軸11の外周部にウォームホイール22の芯金部23を圧入することができる。この圧入の際、中間軸11に作用する荷重がばね60により吸収されるので、中間軸11に固定された第2トーションバー26の損傷を抑制することができる。
【0096】
[第5の実施形態]
図17は、第5の実施形態のステアリング装置の部分的な縦断面図である。
【0097】
第5の実施形態では、第1の実施形態の接続軸10が廃止され、入力軸9が、第1の実施形態よりも軸方向長さが大きい中間軸11の収容凹部20内に直接収容されている。
【0098】
さらに、本実施形態では、ウォームホイール22の芯金部23が圧入により中間軸11の外周部に締結されるのではなく、芯金部23は、一端側に設けられたテーパねじ62と、他端側に設けられたキー63(図17に破線で示す)とを介して中間軸11の外周部に取付固定されている。さらに、芯金部23の軸方向他端面23bは、中間軸11の外周部に設けられた留め輪64によって他端側への移動が規制されている。さらに、芯金部23の軸方向一端側の外周部は、入力側ハウジング14の内周部に設けられた第2ボールベアリングBb2によって回転可能に支持されている。
【0099】
[第5の実施形態の効果]
第5の実施形態では、入力軸9と中間軸11とは、接続軸を介さずに、第1トーションバー18を介して互いに連結されており、電動モータ2が、減速機19を介して中間軸11に回転力を付与する。このように構成された第5の実施形態のステアリング装置においても、電動モータ2からの回転力が中間軸11に直接作用し、電動モータ2から中間軸11への応答性を向上させることができる。
【0100】
[第6の実施形態]
図18は、第6の実施形態のステアリング装置の部分的な縦断面図である。
【0101】
第6の実施形態では、第1の実施形態の第1ボールベアリングBb1よりも小型である第3ボールベアリングBb3が用いられている。さらに、第6の実施形態では、第1の実施形態の段差部14aが廃止され、入力側ハウジング14が、斜歯部24の外径よりも僅かに小径に形成された内周面14bを有している。
【0102】
内周面14bは、ボルト15の根元部付近から永久磁石32の下側半部と径方向にオーバーラップする位置まで軸方向に連続している。内周面14bのうちトルクセンサ31よりも僅かに下端側の位置には、円環状のスナップリング溝14cが形成されており、該スナップリング溝14cには、例えば、螺旋形状をしたスナップリング65が嵌め込まれている。スナップリング65は、ボルト15により締め付けられるC字形状の留め輪16によって第3ボールベアリングBb3のアウターレース17が軸方向に押し付けられることで、留め輪16との間でアウターレース17を保持する。スナップリング65については、C字形状のスナップリングを用いても良い。
【0103】
円環状突出部10cの外周部には、第3ボールベアリングBb3のインナーレース66が嵌め込まれるインナーレース嵌合溝部67と、該インナーレース嵌合溝部67と軸方向に隣接し、C字形状をなす留め輪68を収容する収容凹溝部69と、を有している。留め輪68は、インナーレース嵌合溝部67の側壁に対してインナーレース66を一端側に押圧することでインナーレース66を保持する。図18に示すように、インナーレース66が保持された状態では、インナーレース66は、トルクセンサ31の集磁リング35と軸方向にオーバーラップしている。
【0104】
[第6の実施形態の効果]
第6の実施形態では、スナップリング65が、入力側ハウジング14のスナップリング溝14cに設けられており、留め輪16によってスナップリング65に対してアウターレース17を押し付けることで、アウターレース17が保持される。
【0105】
ここで、第1の実施形態の第1ボールベアリングBb1の固定方法について説明すると、第1の実施形態では、本来では、ボールベアリングの定格荷重が小さくても接続軸10の支持の要件を満たしていたが、ウォームシャフト21との干渉を避けるため、定格荷重の大きい第1ボールベアリングBb1を敢えて使用し、留め輪16により入力側ハウジング14の段差部14aに第1ボールベアリングBb1を押し当てて保持していた。
【0106】
しかし、第6の実施形態のように定格荷重が小さい第3ボールベアリングBb3を用いると、第1の実施形態の段差部14aを設ける必要がなくなり、入力側ハウジング14の内周面14bの内径が狭くなり、第3ボールベアリングBb3の固定のための新たな固定部を内周面14bに設ける必要がある。そこで、第6の実施形態では、スナップリング65を嵌め込むナップリング溝14cが、内周面14bに形成されている。
【0107】
このように、第1の実施形態の段差部14aを廃止して、スナップリング65を用いた第3ボールベアリングBb3の固定を行うことにより、段差部14aが廃止された分だけステアリング装置の径方向寸法を小さくし、ステアリング装置の製造コストを削減することができる。
【0108】
また、小型の第3ボールベアリングBb3を用いると、該第3ボールベアリングBb3とトルクセンサ31の下端部との干渉を避けるようにして、第3ボールベアリングBb3のインナーレース66を径方向のさらに内側に配置することができるので、ステアリング装置の径方向寸法をさらに小さくし、ステアリング装置の製造コストをさらに削減することができる。
図1
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図5
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図18