(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】FE-CRレドックスフロー電池システムおよびこのシステムを使用する方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/18 20060101AFI20240422BHJP
H01M 8/02 20160101ALI20240422BHJP
【FI】
H01M8/18
H01M8/02
(21)【出願番号】P 2022573655
(86)(22)【出願日】2021-11-09
(86)【国際出願番号】 US2021058603
(87)【国際公開番号】W WO2022103744
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2022-11-28
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522464300
【氏名又は名称】クーガー クリーク テクノロジーズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】リ リユ
(72)【発明者】
【氏名】ルオ チンタオ
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-541146(JP,A)
【文献】特表2022-525563(JP,A)
【文献】特開2017-123225(JP,A)
【文献】特開2018-186014(JP,A)
【文献】特表2016-540351(JP,A)
【文献】特開2014-137898(JP,A)
【文献】特開2020-092014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/18
H01M 8/02
H01M 8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レドックスフロー電池システムであって、
溶液中にクロムイオン
および鉄イオンを含むアノード液であって、前記クロムイオンの少なくとも一部分が、以下のうちの少なくとも1種:NH
3、NH
4
+、CO(NH
2)
2、SCN
-、またはCS(NH
2)
2とクロム錯体を形成するアノード液、
溶液中に鉄イオン
およびクロムイオンを含むカソード液、
前記アノード液と接触している第1の電極を含む第1の半セル、
前記カソード液と接触している第2の電極を含む第2の半セル、および
前記第1の半セルを前記第2の半セルから分離している第1の分離体
を含む、レドックスフロー電池システム。
【請求項2】
前記クロム錯体が、式[Cr
3+(J)
x(M)
y(H
2O)
z]
(式中、x、y、およびzは負ではない整数であり、x+y+z=6であり、xは少なくとも1であり、
Jは、NH
3、NH
4
+、CO(NH
2)
2、SCN
-、
およびCS(NH
2)
2からなる群から選択され、
各MはJとは異なり、独立して、Cl
-、F
-、Br
-、I
-、NH
4
+、NH
3、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、CN
-、SCN
-、S
2-、O-NO
2
-、OH
-、NO
2
-、CH
3CN、C
5H
5N、NC
5H
4-C
5H
4N、C
12H
8N
2、CO(NH
2)
2、CS(NH
2)
2、P(C
6H
5)
3、-CO、CH
3-CO-CH
2-CO-CH
3、NH
2-CH
2-CH
2-NH
2、NH
2CH
2COO
-、O-SO
2
2-、
およびP(o-トリル)
3からなる群から選択される)
を有する化合物またはイオンを含む、請求項1に記載のレドックスフロー電池システム。
【請求項3】
JがNH
3またはNH
4
+であり、少なくとも1つのMがCO(NH
2)
2である、請求項2に記載のレドックスフロー電池システム。
【請求項4】
前記クロム錯体が、アンモニウム、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、フッ化物イオン、硫酸イオン、
および硝酸イオンからなる群から選択される少なくとも1つの対イオンをさらに含む、請求項2に記載のレドックスフロー電池システム。
【請求項5】
JがNH
3またはNH
4
+である、請求項2に記載のレドックスフロー電池システム。
【請求項6】
JがCO(NH
2)
2またはCS(NH
2)
2である、請求項2に記載のレドックスフロー電池システム。
【請求項7】
前記クロム錯体がインサイチュで形成される、請求項1に記載のレドックスフロー電池システム。
【請求項8】
NH
3、NH
4
+、CO(NH
2)
2、SCN
-、またはCS(NH
2)
2から選択される少なくとも1種の窒素含有化合物を有する溶液中にクロムイオンを含
み、さらに鉄イオンを含むアノード液、
溶液中に鉄イオン
およびクロムイオンを含むカソード液、
前記アノード液と接触している第1の電極を含む第1の半セル、
前記カソード液と接触している第2の電極を含む第2の半セル、および
前記第1の半セルを前記第2の半セルから分離している第1の分離体
を含む、レドックスフロー電池システム。
【請求項9】
前記窒素含有化合物がNH
3であるかまたはNH
4
+を含む、請求項8に記載のレドックスフロー電池システム。
【請求項10】
前記窒素含有化合物がCO(NH
2)
2またはCS(NH
2)
2である、請求項8に記載のレドックスフロー電池システム。
【請求項11】
前記クロムイオンの少なくとも一部分が、以下のうちの少なくとも1種:NH
3、NH
4
+、CO(NH
2)
2、SCN
-、またはCS(NH
2)
2とクロム錯体を形成する、請求項8に記載のレドックスフロー電池システム。
【請求項12】
前記クロム錯体が、式[Cr
3+(J)
x(M)
y(H
2O)
z]
(式中、x、y、およびzは負ではない整数であり、x+y+z=6であり、xは少なくとも1であり、
JはNH
3、NH
4
+、CO(NH
2)
2、SCN
-、
およびCS(NH
2)
2からなる群から選択され、
各MはJとは異なり、独立して、Cl
-、F
-、Br
-、I
-、NH
4
+、NH
3、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、CN
-、SCN
-、S
2-、O-NO
2
-、OH
-、NO
2
-、CH
3CN、C
5H
5N、NC
5H
4-C
5H
4N、C
12H
8N
2、CO(NH
2)
2、CS(NH
2)
2、P(C
6H
5)
3、-CO、CH
3-CO-CH
2-CO-CH
3、NH
2-CH
2-CH
2-NH
2、NH
2CH
2COO
-、O-SO
2
2-、
およびP(o-トリル)
3からなる群から選択される)
を有する化合物またはイオンを含む、請求項
11に記載のレドックスフロー電池システム。
【請求項13】
JがNH
3またはNH
4
+であり、少なくとも1つのMがCO(NH
2)
2である、請求項12に記載のレドックスフロー電池システム。
【請求項14】
JがNH
3またはNH
4
+である、請求項12に記載のレドックスフロー電池システム。
【請求項15】
前記クロム錯体が、アンモニウム、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、フッ化物イオン、硫酸イオン、および硝酸イオンからなる群から選択される少なくとも1つの対イオンをさらに含む、請求項12に記載のレドックスフロー電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願
本特許出願は、米国特許仮出願第63/120,204号;第63/126,408号;第63/127,048号;第63/131,738号;第63/147,182号;第63/154,547号;第63/174,352号;および第63/114,160号の利益を主張し、米国特許出願第17/362,610号;第17/362,543号;第17/362,521号;第17/362,499号;および第17/362,468号のそれぞれの一部継続出願であり、これらすべてがその全体において本明細書に参照により組み込まれている。
【0002】
分野
本発明は、レドックスフロー電池システムの領域ならびにレドックスフロー電池システムを作製および使用する方法を対象とする。
【背景技術】
【0003】
再生可能な発電コストは、過去十年間で急速に減少し、より多くの再生可能な発電要素、例えば、ソーラーパネルが設置されるにつれて、継続して低減している。しかし、再生可能な電源、例えば、太陽光、水力発電、および風力を供給源とするものは、多くの場合断続的であり、ユーザーの負荷のパターンは供給源の断続的性質と通常一致しない。利用可能な時に再生可能な電源により発電された電力を貯蔵し、再生可能な電源による発電が不十分な時にユーザーに電力を提供する、低価格で、信頼できるエネルギー貯蔵システムに対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態は、溶液中にクロムイオンを有するアノード液であって、クロムイオンの少なくとも一部分が以下のうちの少なくとも1種:NH3、NH4
+、CO(NH2)2、SCN-、またはCS(NH2)2とクロム錯体を形成するアノード液、溶液中に鉄イオンを有するカソード液、アノード液と接触している第1の電極を含む第1の半セル、カソード液と接触している第2の電極を含む第2の半セル、および第1の半セルを第2の半セルから分離している第1の分離体を含むレドックスフロー電池システムである。
少なくとも一部の実施形態では、クロム錯体は、式[Cr3+(J)x(M)y(H2O)z](式中、x、y、およびzは負ではない整数であり、x+y+z=6であり、xは少なくとも1であり、Jは、NH3、NH4
+、CO(NH2)2、SCN-、またはCS(NH2)2からなる群から選択され、各MはJとは異なり、独立して、Cl-、F-、Br-、I-、NH4
+、NH3、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、CN-、SCN-、S2-、O-NO2
-、OH-、NO2
-、CH3CN、C5H5N、NC5H4-C5H4N、C12H8-N2、CO(NH2)2、CS(NH2)2、P(C6H5)3、-CO、CH3-CO-CH2-CO-CH3、NH2-CH2-CH2-NH2、NH2CH2COO-、O-SO2
2-、またはP(o-トリル)3からなる群から選択される)を有する化合物もしくはイオンを含む。
少なくとも一部の実施形態では、JはNH3またはNH4
+であり、少なくとも1つのMはCO(NH2)2である。少なくとも一部の実施形態では、クロム錯体は、アンモニウム、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、フッ化物イオン、硫酸イオン、または硝酸イオンからなる群から選択される少なくとも1種の対イオンをさらに含む。少なくとも一部の実施形態では、JはNH3またはNH4
+である。少なくとも一部の実施形態では、JはCO(NH2)2またはCS(NH2)2である。少なくとも一部の実施形態では、クロム錯体はインサイチュで形成される。
【0005】
少なくとも一部の実施形態では、レドックスフロー電池システムは、溶液中にバナジウムイオンを含む平衡電解質、アノード液またはカソード液と接触している第3の電極を含む第3の半セル、平衡電解質と接触している第4の電極を含む第4の半セル、およびジオキソバナジウムイオンを還元するための平衡電解質内のまたは平衡電解質に導入可能な還元剤を含む平衡配置をさらに含む。少なくとも一部の実施形態では、還元剤はNH3、NH4
+、CO(NH2)2、またはCS(NH2)2である。少なくとも一部の実施形態では、還元剤は有機化合物である。
【0006】
別の実施形態は、溶液中にクロムイオンを、NH3、NH4
+、CO(NH2)2、SCN-、またはCS(NH2)2から選択される少なくとも1種の窒素含有化合物と共に有するアノード液、溶液中に鉄イオンを有するカソード液、アノード液と接触している第1の電極を含む第1の半セル、カソード液と接触している第2の電極を含む第2の半セル、および第1の半セルを第2の半セルから分離している第1の分離体を含むレドックスフロー電池システムである。
少なくとも一部の実施形態では、窒素含有化合物はNH3であるか、またはNH4
+を含む。少なくとも一部の実施形態では、窒素含有化合物はCO(NH2)2またはCS(NH2)2である。少なくとも一部の実施形態では、クロムイオンの少なくとも一部分は、以下のうちの少なくとも1種:NH3、NH4
+、CO(NH2)2、SCN-、またはCS(NH2)2と共にクロム錯体を形成する。
【0007】
少なくとも一部の実施形態では、クロム錯体は、式[Cr3+(J)x(M)y(H2O)z](式中、x、y、およびzは負ではない整数であり、x+y+z=6であり、xは少なくとも1であり、Jは、NH3、NH4
+、CO(NH2)2、SCN-、またはCS(NH2)2からなる群から選択され、各MはJとは異なり、独立して、Cl-、F-、Br-、I-、NH4
+、NH3、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、CN-、SCN-、S2-、O-NO2
-、OH-、NO2
-、CH3CN、C5H5N、NC5H4-C5H4N、C12H8-N2、CO(NH2)2、CS(NH2)2、P(C6H5)3、-CO、CH3-CO-CH2-CO-CH3、NH2-CH2-CH2-NH2、NH2CH2COO-、O-SO2
2-、またはP(o-トリル)3からなる群から選択される)を有する化合物またはイオンを含む。
少なくとも一部の実施形態では、JはNH3またはNH4
+であり、少なくとも1つのMはCO(NH2)2である。少なくとも一部の実施形態では、JはNH3またはNH4
+である。
少なくとも一部の実施形態では、レドックスフロー電池システムは、溶液中にバナジウムイオンを含む平衡電解質、アノード液またはカソード液と接触している第3の電極を含む第3の半セル、平衡電解質と接触している第4の電極を含む第4の半セル、およびジオキソバナジウムイオンを還元するための平衡電解質内のまたは平衡電解質に導入可能な還元剤を含む平衡配置をさらに含む。少なくとも一部の実施形態では、還元剤は、NH3、NH4
+、CO(NH2)2、またはCS(NH2)2である。少なくとも一部の実施形態では、還元剤は有機化合物である。
【0008】
また別の実施形態は、水素気体生成のための方法である。本方法は、溶液中にクロムイオンを含むアノード液、溶液中に鉄イオンを含むカソード液、アノード液と接触している第1の電極を含む第1の半セル、カソード液と接触している第2の電極を含む第2の半セル、および第1の半セルを第2の半セルから分離している第1の分離体を含むレドックスフロー電池を提供するステップ、電解セルをレドックスフロー電池に連結するステップであって、この電解セルが第3および第4の電極ならびに水を含むステップ、レドックスフロー電池を電解セルに放電して、電解セル内での水の電解により水素気体を生成するステップ、電解セルから水素気体を除去するステップ、ならびに水素気体を容器内に貯蔵するステップを含む。
【0009】
一実施形態は、レドックスフロー電池のための電解質の調製のための方法である。本方法は、炭素源を使用して、クロム鉱石を還元することによって、クロム鉱石を、炭素粒子を有する鉄/クロム合金に変換するステップ、炭素粒子を有する鉄/クロム合金を硫酸に溶解して、第1の溶液を形成するステップ、塩化カルシウムまたは塩化バリウムを第1の溶液に加えて、FeCl3およびCrCl3を含む第2の溶液を生成するステップ、ならびに酸を第2の溶液に加えて、電解質を形成するステップを含む。
少なくとも一部の実施形態では、クロム鉱石は少なくとも1種の金属不純物を含み、本方法は、レドックスフロー電池の電極を使用して、電解質中で少なくとも1種の金属不純物を還元して、少なくとも1種の金属不純物の粒子を形成するステップ、少なくとも1種の金属不純物の粒子を収集するステップ、およびクリーニング溶液を使用して、収集した粒子を除去するステップをさらに含む。少なくとも一部の実施形態では、粒子を収集するステップは、レドックスフロー電池システムの電極上の粒子の少なくとも一部分を収集するステップを含む。
【0010】
少なくとも一部の実施形態では、電極は、粒子の収集のための、交互嵌合された開口またはへこみを含む。少なくとも一部の実施形態では、少なくとも1種の金属不純物は、ニッケル、アンチモン、ビスマス、亜鉛、白金、パラジウム、金、または銅のうちの少なくとも1種を含む。少なくとも一部の実施形態では、クリーニング溶液は第二鉄イオンを含む。少なくとも一部の実施形態では、クリーニング溶液は、レドックスフロー電池システムのカソード液の少なくとも一部分である。少なくとも一部の実施形態では、クリーニング溶液は過酸化水素または塩化第二鉄を含む。
少なくとも一部の実施形態では、炭素源はグラファイト、活性炭、石炭、木炭、または一酸化炭素気体を含む。少なくとも一部の実施形態では、本方法は、FeCl3またはCrCl3を加えて、電解質内でのFeCl3/CrCl3の予め選択した比を得るステップをさらに含む。
【0011】
別の実施形態は、レドックスフロー電池のための電解質の調製のための方法である。本方法はHClまたはH2SO4にクロム廃棄物を溶解して、CrCl3またはCr2(SO4)3および少なくとも1種の金属不純物を含む電解質をそれぞれ生成するステップ、レドックスフロー電池の電極を使用して、電解質中で少なくとも1種の金属不純物を還元して、少なくとも1種の金属不純物の粒子を形成するステップ、少なくとも1種の金属不純物の粒子を収集するステップ、ならびにクリーニング溶液を使用して、収集した粒子を除去するステップを含む。
少なくとも一部の実施形態では、粒子を収集するステップは、レドックスフロー電池システムの電極上の粒子の少なくとも一部分を収集することを含む。少なくとも一部の実施形態では、電極は、粒子の収集のための、交互嵌合された開口またはへこみを含む。少なくとも一部の実施形態では、少なくとも1種の金属不純物は、ニッケル、アンチモン、ビスマス、亜鉛、白金、パラジウム、金、または銅のうちの少なくとも1種を含む。
【0012】
少なくとも一部の実施形態では、クリーニング溶液は第二鉄イオンを含む。少なくとも一部の実施形態では、クリーニング溶液はレドックスフロー電池システムのカソード液の少なくとも一部分である。少なくとも一部の実施形態では、クリーニング溶液は過酸化水素または塩化第二鉄を含む。
少なくとも一部の実施形態では、本方法は、FeCl2、Fe+FeCl3、Fe(OH)2、またはFe+Fe(OH)3を加えて、電解質内でのFeCl3/CrCl3の予め選択した比を得るステップをさらに含む。少なくとも一部の実施形態では、クロム廃棄物はCr(OH)3を含む。
【0013】
また別の実施形態は水素気体の生成のための方法である。本方法は、溶液中にクロムイオンを含むアノード液、溶液中に鉄イオンを含むカソード液、アノード液と接触している第1の電極を含む第1の半セル、カソード液と接触している第2の電極を含む第2の半セル、および第1の半セルを第2の半セルから分離している第1の分離体を含むレドックスフロー電池を提供するステップ、電解セルをレドックスフロー電池に連結するステップであって、この電解セルが第3および第4の電極ならびに水を含むステップ、レドックスフロー電池を電解セルに放電して、電解セル内での水の電解により水素気体を生成するステップ、電解セルから水素気体を除去するステップ、ならびに水素気体を容器内に貯蔵するステップを含む。
【0014】
一実施形態は、アノード液、カソード液、アノード液と接触している第1の電極を含む第1の半セル、カソード液と接触している第2の電極を含む第2の半セル、第1の半セル中のアノード液を、第2の半セル中のカソード液から分離している分離体、第1の半セルまたは第2の半セルにそれぞれ入る前またはそれから離れた後のアノード液またはカソード液の充電状態を示す値の測定を断続的、定期的、または連続的に行うように構成された少なくとも1種の状態測定デバイス、および測定を使用して、アノード液またはカソード液の時間的エネルギープロファイルをそれぞれ作成するための、少なくとも1種の状態測定デバイスに連結したコントローラーを含むレドックスフロー電池システムである。
【0015】
少なくとも一部の実施形態では、少なくとも1種の状態測定デバイスは、第1の半セルに入る前またはそれから離れた後のアノード液の充電状態を示す値の測定を断続的、定期的、または連続的に行うように構成されたアノード液の状態測定デバイス、および第2の半セルに入る前またはそれから離れた後のカソード液の充電状態を示す値の測定を断続的、定期的、または連続的に行うように構成されたカソード液の状態測定デバイスを含む。
少なくとも一部の実施形態では、レドックスフロー電池システムは、アノード液を第1の半セルに出し入れするポンプ供給を行うように構成されたアノード液ポンプ、およびカソード液を第2の半セルに出し入れするポンプ供給を行うように構成されたカソード液ポンプをさらに含む。少なくとも一部の実施形態では、コントローラーは、時間的エネルギープロファイルを使用して、アノード液およびカソード液ポンプのポンプ供給スピードを変動させるように構成されている。
少なくとも一部の実施形態では、少なくとも1種の状態測定デバイスは、アノード液またはカソード液の電圧を測定するように構成されている。少なくとも一部の実施形態では、コントローラーは、少なくとも1種の状態測定デバイスにより行われた測定からアノード液またはカソード液の充電状態を決定し、時間的エネルギープロファイルにおいてこの充電状態を使用するように構成されている。少なくとも一部の実施形態では、コントローラーは、少なくとも1種の状態測定デバイスにより行われた測定からアノード液またはカソード液の平均酸化状態を決定し、この平均酸化状態を時間的エネルギープロファイルにおいて使用するように構成されている。少なくとも一部の実施形態では、コントローラーは、測定を使用して時間的エネルギープロファイルおよび荷電種のアノード液またはカソード液内での拡散の推定を作成するように構成されている。
【0016】
別の実施形態は、上記に記載されているレドックスフロー電池システムのいずれかを作動する方法である。本方法は、第1の半セルまたは第2の半セルにそれぞれ入る前またはそれから離れた後のアノード液またはカソード液の充電状態を示す値の測定を断続的、定期的、または連続的に行うステップ、および測定を使用して、アノード液またはカソード液の時間的エネルギープロファイルをそれぞれ作成するステップを含む。
少なくとも一部の実施形態では、レドックスフロー電池システムは、アノード液を第1の半セルに出し入れするポンプ供給を行うように構成されたアノード液ポンプ、およびカソード液を第2の半セルに出し入れするポンプ供給を行うように構成されたカソード液ポンプをさらに含み、本方法は、時間的エネルギープロファイルを使用して、アノード液およびカソード液ポンプのポンプ供給スピードを変動させるステップをさらに含む。少なくとも一部の実施形態では、測定を行うことは、アノード液またはカソード液の電圧の測定を行うことを含む。
【0017】
少なくとも一部の実施形態では、時間的エネルギープロファイルを作成することは、少なくとも1種の状態測定デバイスにより行われた測定からアノード液またはカソード液の充電状態を決定すること、およびこの充電状態を時間的エネルギープロファイルにおいて使用することを含む。少なくとも一部の実施形態では、時間的エネルギープロファイルを作成することは、少なくとも1種の状態測定デバイスにより行われた測定からアノード液またはカソード液の平均酸化状態を決定すること、およびこの平均酸化状態を時間的エネルギープロファイルにおいて使用することを含む。少なくとも一部の実施形態では、時間的エネルギープロファイルを作成することは、測定および荷電種のアノード液またはカソード液内での拡散の推定を使用して時間的エネルギープロファイルを作成することを含む。
【0018】
また別の実施形態は、上記に記載されているレドックスフロー電池システムのいずれかを作動させるためのプロセッサー実行可能命令を有する非一時的コンピューター可読記憶媒体である。プロセッサー実行可能命令は、デバイスに組み込まれた場合、デバイスが動作を実施することを可能にする。動作は、第1の半セルまたは第2の半セルにそれぞれ入る前またはそれから離れた後のアノード液またはカソード液の充電状態を示す値の測定を断続的、定期的、または連続的に行うこと、および測定を使用して、アノード液またはカソード液の時間的エネルギープロファイルをそれぞれ作成することを含む。
【0019】
少なくとも一部の実施形態では、動作は、時間的エネルギープロファイルを使用して、レドックスフロー電池システムのアノード液およびカソード液ポンプのポンプ供給スピードを変動させることをさらに含む。少なくとも一部の実施形態では、測定を行うことは、アノード液またはカソード液の電圧の測定を行うことを含む。
少なくとも一部の実施形態では、時間的エネルギープロファイルを作成することは、少なくとも1種の状態測定デバイスにより行われた測定からアノード液またはカソード液の充電状態または平均酸化状態を決定すること、およびこの充電状態または平均酸化状態を時間的エネルギープロファイルにおいて使用することを含む。少なくとも一部の実施形態では、時間的エネルギープロファイルを作成することは、測定および荷電種のアノード液またはカソード液内での拡散の推定を使用して、時間的エネルギープロファイルを作成することを含む。
さらなる実施形態は、アノード液、カソード液、アノード液と接触している第1の電極を含む第1の半セル、カソード液と接触している第2の電極を含む第2の半セル、第1の半セル中のアノード液を、第2の半セル中のカソード液から分離している分離体、充電源により供給されるパワーの測定を断続的、定期的、または連続的に行うように構成された少なくとも1つの充電測定デバイス、および測定を使用して、アノード液またはカソード液の時間的エネルギープロファイルをそれぞれ作成するための、少なくとも1つの充電測定デバイスに連結したコントローラーを含むレドックスフロー電池システムである。
【0020】
一実施形態は、アノード液、カソード液、アノード液の少なくとも一部分を保持するように構成されているアノード液タンク、カソード液の少なくとも一部分を保持するように構成されているカソード液タンク、およびアノード液と接触している第1の電極を含む第1の半セル、カソード液と接触している第2の電極を含む第2の半セル、第1の半セルを第2の半セルから分離している第1の分離体、第1の半セルとアノード液タンクとの間にアノード液を移動するように構成されている第1のアノード液ポンプ、ならびに第2の半セルとカソード液タンクとの間にカソード液を移動するように構成されている第1のカソード液ポンプを含む第1次レドックスフロー電池配置を含むレドックスフロー電池システムである。レドックスフロー電池システムはまた、アノード液と接触している第3の電極を含む第3の半セル、カソード液と接触している第4の電極を含む第4の半セル、第3の半セルを第4の半セルから分離している第2分離体、第3の半セルとアノード液タンクとの間にアノード液を移動するように構成されている第2のアノード液ポンプ、および第4の半セルとカソード液タンクとの間にカソード液を移動するように構成されている第2のカソード液ポンプを含む第2次レドックスフロー電池配置であって、第2次レドックスフロー電池配置のピークパワー送達能力が、第1次レドックスフロー電池配置のピークパワー送達能力より低い、第2次レドックスフロー電池配置も含む。
【0021】
少なくとも一部の実施形態では、レドックスフロー電池システムは、第1次レドックスフロー電池配置および第2次レドックスフロー電池配置に連結したコントローラーをさらに含む。少なくとも一部の実施形態では、放電パワーが第1の予め定義したレベル未満の範囲に入った場合、コントローラーは、第1次レドックスフロー電池配置の作動から、第2次レドックスフロー電池の作動へと切り替えるように構成されている。少なくとも一部の実施形態では、放電パワーが第2の予め定義したレベルを超えた場合、コントローラーは、第2次レドックスフロー電池配置の作動から、第1次レドックスフロー電池の作動へと切り替えるように構成されている。少なくとも一部の実施形態では、第1の予め定義したレベルおよび第2の予め定義したレベルは同じである。少なくとも一部の実施形態では、第2の予め定義したレベルは第1の予め定義したレベルより大きい。
少なくとも一部の実施形態では、コントローラーは、放電パワーが第3の予め定義したレベルを超えた場合、第2次レドックスフロー電池配置の作動を、第1次レドックスフロー電池の作動に加えるように構成されている。少なくとも一部の実施形態では、第2次レドックスフロー電池配置のピークパワー送達能力の、第1次レドックスフロー電池配置のピークパワー送達能力に対する比は1:5~1:200の範囲である。
【0022】
少なくとも一部の実施形態では、レドックスフロー電池システムは、第1の表面および第1の表面の反対側の第2の表面を有する第1の非導電性基材を含み、第1の分離体および第1の非導電性基材を介して延びる第1の導電素子を含む第1の電極構造をさらに含み、第1の非導電性基材は第1の非導電性基材を介したアノード液およびカソード液の流れに抵抗し、第1の導電素子のそれぞれは第1の非導電性基材の第1の表面に曝露された第1の末端部分および第1の非導電性基材の第2の表面に曝露された第2の末端部分を含み、第1の電極は第1の非導電性基材の第1の表面上に配置され、第2の電極は第1の非導電性基材の第2の表面上に配置され、第1の電極は第1の導電素子の第1の末端部分を含み、第2の電極は第1の導電素子の第2の末端部分を含む。
【0023】
少なくとも一部の実施形態では、レドックスフロー電池システムは、第1の表面および第1の表面の反対側の第2の表面を有する第2の非導電性基材を含み、第2の分離体および第2の非導電性基材を介して延びる第2の導電素子を含む第2の電極構造をさらに含み、第2の非導電性基材は第2の非導電性基材を介したアノード液およびカソード液の流れに抵抗し、第2の導電素子のそれぞれは第2の非導電性基材の第1の表面に曝露された第1の末端部分および第2の非導電性基材の第2の表面に曝露された第2の末端部分を含み、第3の電極は第2の非導電性基材の第1の表面上に配置され、第4の電極は第2の非導電性基材の第2の表面上に配置され、第3の電極は第2の導電素子の第1の末端部分を含み、第4の電極は第2の導電素子の第2の末端部分を含む。
【0024】
少なくとも一部の実施形態では、アノード液は、クロムイオンを含み、クロムイオンの少なくとも一部分は以下のうちの少なくとも1種:NH3、NH4
+、CO(NH2)2、SCN-、またはCS(NH2)2とクロム錯体を形成する。
少なくとも一部の実施形態では、レドックスフロー電池システムは、溶液中にバナジウムイオンを含む平衡電解質、アノード液またはカソード液と接触している第5の電極を含む第5の半セル、平衡電解質と接触している第6の電極を含む第6の半セル、およびジオキソバナジウムイオンを還元するための平衡電解質内のまたは平衡電解質に導入可能な還元剤を含む平衡配置をさらに含む。少なくとも一部の実施形態では、第2のアノード液ポンプおよび第2のカソード液ポンプは、第1のアノード液ポンプおよび第2のアノード液ポンプよりも低いポンプ供給能力を有する。
【0025】
別の実施形態は、上記に記載されているレドックスフロー電池システムのいずれかを作動する方法である。本方法は、供給源を、第1次レドックスフロー電池配置または第2次レドックスフロー電池配置の少なくとも1つと連結することにより、レドックスフロー電池システムを充電し、負荷を、第1次レドックスフロー電池配置または第2次レドックスフロー電池配置の少なくとも1つに連結することにより、レドックスフロー電池システムを放電することを含む。
少なくとも一部の実施形態では、放電することは、放電パワーが第1の予め定義したレベル未満の範囲に入った場合、第1次レドックスフロー電池配置の負荷への連結から、第2次レドックスフロー電池作動の負荷への連結へと切り替えることを含む。少なくとも一部の実施形態では、放電することは、放電パワーが第2の予め定義したレベルを超えた場合、第2次レドックスフロー電池配置の負荷への連結から、第1次レドックスフロー電池の負荷への連結へと切り替えることを含む。少なくとも一部の実施形態では、第1の予め定義したレベルおよび第2の予め定義したレベルは同じである。少なくとも一部の実施形態では、第2の予め定義したレベルは第1の予め定義したレベルより大きい。
少なくとも一部の実施形態では、放電することは、放電パワーが第3の予め定義したレベルを超えた場合、第2次レドックスフロー電池配置と第1次レドックスフロー電池の両方を負荷に連結することを含む。少なくとも一部の実施形態では、第2次レドックスフロー電池配置のピークパワー送達能力の、第1次レドックスフロー電池配置のピークパワー送達能力に対する比は1:5~1:200であってもよい。
【0026】
一実施形態は、アノード液、カソード液、第1の表面および第1の表面の反対側の第2の表面を有する基材、基材の第1の表面上に配置された第1の電極、基材の第2の表面上に配置された第2の電極、および基材を介して延びる導電素子を含む第1の電極構造であって、基材が、基材を介したアノード液およびカソード液の流れに抵抗し、導電素子のそれぞれが、基材の第1の表面に曝露された第1の末端部分および基材の第2の表面に曝露された第2の末端部分を含み、第1の電極は導電素子の第1の末端部分を含み、第2の電極は導電素子の第2の末端部分を含む、第1の電極構造、第1の電極がアノード液と接触している第1の半セル、ならびに第2の電極がカソード液と接触している第2の半セルを含むレドックスフロー電池システムである。
【0027】
少なくとも一部の実施形態では、導電素子は金属導線、炭素繊維、グラファイト繊維、または炭化ケイ素のうちの少なくとも1種を含む。少なくとも一部の実施形態では、基材は、プラスチック、樹脂、炭素またはグラファイトプレート、または金属または合金プレートのうちの少なくとも1種を含む。少なくとも一部の実施形態では、基材は、ポリプロピレンまたはポリエチレンパーフルオロアルコキシアルカン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロ酢酸、ポリ塩化ビニル、または塩素化ポリ塩化ビニルを含む。
少なくとも一部の実施形態では、第1の電極または第2の電極のうちの少なくとも1つは追加の導電材料を含む。少なくとも一部の実施形態では、追加の導電材料は金属、炭素繊維、炭素フェルト、または炭化ケイ素を含む。
少なくとも一部の実施形態では、アノード液は溶液中にクロムイオンを含み、カソード液は溶液中に鉄イオンを含む。少なくとも一部の実施形態では、アノード液は溶液中に鉄イオンをさらに含み、アノード液は溶液中にクロムイオンを含む。
少なくとも一部の実施形態では、レドックスフロー電池システムは、平衡電解質、第1の表面および第1の表面の反対側の第2の表面を有する基材を含む第2の電極構造、基材の第1の表面上に配置された第3の電極、基材の第2の表面上に配置された第4の電極、および基材を介して延びる導電素子を含む平衡配置をさらに含み、基材は、基材を介したアノード液およびカソード液の流れに抵抗し、導電素子のそれぞれは、基材の第1の表面に曝露された第1の末端部分および基材の第2の表面に曝露された第2の末端部分を含み、第3の電極は導電素子の第1の末端部分を含み、第4の電極は、導電素子の第2の末端部分を含み、第3の半セルは、アノード液またはカソード液と接触している第3の電極を含み、第4の半セルは平衡電解質と接触している第4の電極を含む。
少なくとも一部の実施形態では、平衡電解質は、溶液中にバナジウムイオンを含み、平衡配置はジオキソバナジウムイオンを還元するための平衡電解質内のまたは平衡電解質に導入可能な還元剤をさらに含む。少なくとも一部の実施形態では、クロムイオンの少なくとも一部分は、以下のうちの少なくとも1種:NH3、NH4
+、CO(NH2)2、SCN-、またはCS(NH2)2と共にクロム錯体を形成する。
【0028】
別の実施形態は電極構造を作製する方法である。本方法は、基材を介した電解質の流れに抵抗するように構成されている基材を提供するステップ、および導電素子のそれぞれが、基材の第1の表面に曝露された第1の末端部分および基材の第2の表面に曝露された第2の末端部分を含むように、基材を介して複数の導電素子を延ばすステップを含み、第1の電極は導電素子の第1の末端部分を含み、第2の電極は導電素子の第2の末端部分を含む。
少なくとも一部の実施形態では、延ばすことは、導電素子の部分周辺で基材を成型することを含む。少なくとも一部の実施形態では、延ばすことは、基材を介して導電素子を押すことを含む。少なくとも一部の実施形態では、本方法は、基材を加熱して、導電素子周辺に基材を流動させることをさらに含む。
少なくとも一部の実施形態では、本方法は、追加の第1の導電材料を基材の第1の表面上に配置するステップをさらに含み、第1の電極は追加の第1の導電材料をさらに含む。少なくとも一部の実施形態では、本方法は、追加の第2の導電材料を基材の第2の表面上に配置するステップをさらに含み、第2の電極は追加の第2の導電材料をさらに含む。
【0029】
また別の実施形態は、上記に記載されているレドックスフロー電池システムのいずれかを作動する方法である。本方法は、供給源を第1および第2の電極に連結することによりレドックスフロー電池システムを充電するステップ、ならびに負荷を第1および第2の電極に連結することによりレドックスフロー電池システムを放電するステップを含む。
少なくとも一部の実施形態では、アノード液は溶液中にクロムイオンを含み、カソード液は溶液中に鉄イオンを含む。少なくとも一部の実施形態では、アノード液は溶液中に鉄イオンをさらに含み、アノード液は溶液中にクロムイオンを含む。
【0030】
本発明の非限定的および非網羅的実施形態が、以下の図を参照して記載されている。図において、同様の参照番号は、特に明記しない限り、様々な図全体にわたり同様の部分を指す。
本発明のより良い理解のため、以下の詳細な説明を参照されたい。詳細な説明は添付の図と共同で読み取られるものとする:
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明による、レドックスフロー電池システムの一実施形態の概略図である。
【
図2】本発明による、レドックスフロー電池システムのための電極の一実施形態の概略図である。
【
図3】本発明による、レドックスフロー電池システムにおいて不純物を除去または削減する一実施形態のフローチャートである。
【
図4】本発明による、保守のためにカソード液を第2の半セルに迂回させたレドックスフロー電池システムの別の実施形態の概略図である。
【
図5A】本発明による、レドックスフロー電池システムを平衡配置と併せて含むシステムの一実施形態の概略図である。
【
図5B】本発明による、
図5Aのシステムの平衡配置の一実施形態の概略図である。
【
図5C】本発明による、レドックスフロー電池システムを平衡配置と併せて含む、システムの別の実施形態の概略図である。
【
図5D】本発明による、
図5Cのシステムの平衡配置の一実施形態の概略図である。
【
図5E】本発明による、平衡配置の別の実施形態の概略図である。
【
図6A】本発明による、圧力放出弁を有するレドックスフロー電池システムの電解質タンクの概略図である。
【
図6B】本発明による、圧力逃しのための、液体を含有するU字管配置を有するレドックスフロー電池システムの電解質タンクの概略図である。
【
図6C】本発明による、タンク間の気体の移動のための配置を有するレドックスフロー電池システムの電解質タンクの概略図である。
【
図7】本発明による、第2の容器を有するレドックスフロー電池システムの別の実施形態の概略図である。
【
図8】本発明による、温度ゾーンを有するレドックスフロー電池システムの別の実施形態の概略図である。
【
図9A】本発明による、電極構造の一実施形態の概略的断面図である。
【
図9B】本発明による、レドックスフロー電池配置での
図9Aの電極構造の概略的断面図である。
【
図10】本発明による、第1次レドックスフロー電池配置および第2次レドックスフロー電池配置を有するレドックスフロー電池システムの一実施形態の概略図である。
【
図11】本発明による、水素気体生成のために電解セルと連結したレドックスフロー電池システムの一実施形態の概略図である。
【
図12】本発明による、粒子フィルターを有するレドックスフロー電池システムの一実施形態の概略図である。
【
図13】本発明による、1種の平衡したレドックスフロー電池システムおよび2種の不均衡なレドックスフロー電池システムに対する充電容量対充電電圧のグラフである。
【
図14】本発明による、レドックスフロー電池システムの平均酸化状態(AOS)を決定する方法の一実施形態のフローチャートである。
【
図15】本発明による、レドックスフロー電池システムの平均酸化状態(AOS)を決定する方法の別の実施形態のフローチャートである。
【
図16】本発明による、不均衡なレドックスフロー電池システムに対する自己放電時間対放電電圧のグラフである。
【
図17】本発明による、レドックスフロー電池システムの平均酸化状態(AOS)を決定する方法の第3の実施形態のフローチャートである。
【
図18】本発明による、レドックスフロー電池システムのまた別の実施形態の概略図であり、開回路電圧(OCV)を測定するためのセルを含む、
【
図19】本発明による、末端OCVの測定により、貯蔵または充電容量を決定する1つの方法のフローチャートである。
【
図20】本発明による、OCVの測定を使用して、AOSを決定する1つの方法のフローチャートである。
【
図21】貯蔵領域内に配置された複数の電解質タンクの概略的斜視図である。
【
図22】本発明による、充電状態を測定する配置を有するレドックスフロー電池システムの一実施形態の概略図である。
【
図23】時間的エネルギープロファイルを使用して、レドックスフロー電池システムを作動する方法の一実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、レドックスフロー電池システムの領域およびレドックスフロー電池システムを作製および使用する方法を対象とする。本発明はまた、Fe-Crレドックスフロー電池システムを作製および使用する電解質および方法において、窒素含有配位子を有するクロム錯体を利用する鉄-クロム(Fe-Cr)レドックスフロー電池システムを対象とする。本発明は、また鉄-クロム(Fe-Cr)レドックスフロー電池システムおよびこのシステムのためにクロム含有電解質を調製するための方法を対象とする。本発明はまた、レドックスフロー電池システムの作動に対して、時間的エネルギープロファイルを利用したレドックスフロー電池システムおよび方法を対象とする。本発明はまた、レドックスフロー電池システムを作製および使用する第1および第2のレドックスフロー電池配置および方法を利用したレドックスフロー電池システムを対象とする。本発明はまた、レドックスフロー電池システムを作製および使用するバイポーラ電極構造および方法を利用したレドックスフロー電池システムを対象とする。
【0033】
レドックスフロー電池システムは、再生可能なエネルギー供給源、例えば、太陽光、風力、および水力発電の供給源、ならびに非再生可能なおよび他のエネルギー供給源により生成されたエネルギーの貯蔵に対して有望な技術である。本明細書に記載されているように、少なくとも一部の実施形態では、レドックスフロー電池システムは、以下の特性のうちの1つまたは複数を有することができる:長い寿命、再利用可能なエネルギー貯蔵、または調節可能なパワーおよび貯蔵容量。
【0034】
図1はレドックスフロー電池システム100の一実施形態を例示している。他のレドックスフロー電池システム100は、より多くまたはより少ない要素を含んでいてもよく、要素は、例示された実施形態に示されたものと異なって配置されてもよいことを認識されたい。構成要素、方法、システムなどについての以下の説明は、例示された実施形態とは異なる他のレドックスフロー電池システムに適合できることもまた認識されたい。
図1のレドックスフロー電池システム100は、2つの電極102、104および分離体110で分離されている、関連する半セル106、108を含む。電極102、104は、分離体と接触していても、または分離体から分離されていてもよい。電解質溶液は半セル106、108を介して流動し、これらはアノード液112およびカソード液114と呼ばれる。レドックスフロー電池システム100はアノード液タンク116、カソード液タンク118、アノード液ポンプ120、カソード液ポンプ122、アノード液分配用配置124、およびカソード液分配用配置126をさらに含む。アノード液112はアノード液タンク116内に貯蔵され、アノード液分配用配置124周辺を流れ、少なくとも部分的に、アノード液ポンプ120の動作を介して、半セル106へと流れる。カソード液114はカソード液タンク118内に貯蔵され、カソード液分配用配置126周辺を流れ、少なくとも部分的に、カソード液ポンプ122の動作を介して半セル108へと流れる。例示された
図1の実施形態は、それぞれ単一の構成要素を含むが、他の実施形態は、いずれか1種または複数の例示された構成要素の1つ以上を含むことができることを認識されたい。例えば、他の実施形態は、複数の電極102、複数の電極104、複数のアノード液タンク116、複数のカソード液タンク118、複数の半セル112、または複数の半セル114、またはそのいずれかの組合せを含むことができる。
【0035】
アノード液およびカソード液は電解質であり、同じ電解質であっても、または異なる電解質であってもよい。エネルギー流がレドックスフロー電池システム100へ入るまたはこれから出る間、半セル106、108の一方の電解質は、酸化されて、電子を失い、半セルの他方の電解質は還元されて、電子を得る。
【0036】
レドックスフロー電池システム100は、
図1に例示されているように、負荷/電源130/132に結合していてもよい。充電モードでは、レドックスフロー電池システム100は、フロー電池を供給源132に結合することによって、充電または再充電することができる。供給源132は、これらに限定されないが、化石燃料電源、原子力電源、他の電池またはセル、および再生可能な電源、例えば、風力、太陽光、または水力発電の電源を含むいずれかの電源であることができる。放電モードでは、レドックスフロー電池システム100はエネルギーを負荷130に提供することができる。充電モードでは、レドックスフロー電池システム100は、供給源132からの電気エネルギーを化学ポテンシャルエネルギーへと変換する。放電モードでは、レドックスフロー電池システム100は、化学ポテンシャルエネルギーを電気エネルギーに変換し戻して、これが負荷130に提供される。
【0037】
レドックスフロー電池システム100はまた、レドックスフロー電池システムの作動を制御することができるコントローラー128に連結することもできる。例えば、コントローラー128は、レドックスフロー電池システム100を、負荷130または供給源132と接続させるまたは接続を断つことができる。コントローラー128は、アノード液ポンプ120およびカソード液ポンプ122の作動を制御することができる。コントローラー128は、アノード液タンク116、カソード液タンク118、アノード液分配システム124、カソード液分配システム126、または半セル106、108に関連する弁の作動を制御し得る。コントローラー128は、充電モード、放電モード、および、任意に、保守モード(またはシステム作動のいずれか他の適切なモード)の間の切替えを含む、レドックスフロー電池システム100の一般的な作動を制御するために使用することができる。少なくとも一部の実施形態では、コントローラーまたはレドックスフロー電池システムは、半セル内、またはシステム内の他の箇所での温度を制御することができる。少なくとも一部の実施形態では、半セル(またはシステム全般またはシステムのある部分)の温度は、作動中、摂氏65、60、55、または50度以下に制御される。
【0038】
少なくとも一部の実施形態では、アノード液ポンプ120またはカソード液ポンプ122(または両方)は、アノード液/カソード液または半セルの温度を増加させるまたは維持するように作動することができる。ポンプの作動は、熱を生じ、この熱は、少なくとも部分的に、アノード液またはカソード液に移動する可能性がある。少なくとも一部の実施形態では、アノード液またはカソード液(または対応する半セル106、108)の温度が予め決定された値未満に低下した場合、アノード液ポンプ120またはカソード液ポンプ122はそれぞれ、熱を生成するための作動を開始または増加させて、この熱を少なくとも部分的に、アノード液またはカソード液にそれぞれ移動させる。
これらに限定されないが、1つまたは複数のコンピューター、ラップトップコンピューター、サーバー、いずれか他のコンピューターデバイスなど、またはこれらのいずれかの組合せを含めて、いずれかの適切なコントローラー128を使用することができ、これは、例えば、1種または複数のプロセッサー、1種または複数のメモリー、1つまたは複数のインプットデバイス、1つまたは複数のディスプレイデバイスなどの構成要素を含むことができる。コントローラー128は、あらゆる有線またはワイヤレス接続またはそのいずれかの組合せを介して、レドックスフロー電池システムと連結することができる。コントローラー128(またはコントローラーの少なくとも一部分)は、レドックスフロー電池システム100に対してローカルに位置していてもよいし、またはレドックスフロー電池システムに関して部分的にまたは完全に非ローカルに位置してもよい。
【0039】
電極102、104は、これらに限定されないが、グラファイトまたは他の炭素材料(グラファイトまたは炭素で作製された固体、フェルト、紙、または布の電極を含む)、金、チタニウム、鉛などを含むいずれか適切な材料から作製することができる。2つの電極102、104は、同じまたは異なる材料で作製され得る。少なくとも一部の実施形態では、レドックスフロー電池システム100は、アノード液またはカソード液または両方の中で、レドックス反応に対するいかなる均質のまたは金属の触媒も含まない。これは、電極に対して使用することができる材料の種類を限定し得る。
【0040】
分離体110は、2つの半セル106、108を分離している。少なくとも一部の実施形態では、分離体110は、レドックスフロー電池システム100の充電または放電中に、選択されたイオン(例えば、H+、Cl
-、または鉄またはクロムイオンまたはそのいずれかの組合せ)の輸送を可能にする。一部の実施形態では、分離体110は微小孔性膜である。いずれか適切な分離体110を使用することができ、適切な分離体の例として、これらに限定されないが、イオン移動膜、アニオン性移動膜、カチオン性移動膜、微小孔性分離体などまたはこれらのいずれかの組合せが挙げられる。
電極102、104および分離体110の代替は、
図9Aに例示されているような、アノード、カソード、および分離体として作用する電極構造(これは「バイポーラ電極」とも呼ぶことができる)905である。電極構造905は、基材の第1の表面から、基材の第2の表面へと、基材を介して延びる、導電素子911を有する基材910を含む。これらの導電素子911は、
図9Bに例示されているように2種の半セル906、908に曝露されている。基材910は分離体110として作用することができる。
【0041】
基材910は、基材を介したアノード液およびカソード液の流れに不透過性であり、または流れに対して実質的に抵抗するまたは流れを妨害する材料で作製される。このような材料の例として、プラスチック(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロ酢酸(PTFE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩素化ポリ塩化ビニル(CPVC)、など)、樹脂、炭素またはグラファイトプレート、金属プレート、金属-合金プレートなどが挙げられる。少なくとも一部の実施形態では、基材は非導電性である。少なくとも一部の実施形態では、基材は伝導性、例えば、グラファイトプレートである。少なくとも一部の実施形態では、第1の表面と第2の表面との間の基材910の導電率は、導電素子911の導電率より低い。
【0042】
導電素子911は、これらがアノード液とカソード液との両方で利用しやすいように基材910を介して延びている。適切な導電素子の例として、これらに限定されないが、金属導線(例えば、チタニウム鉄、銅、亜鉛、銀、金、または白金導線)、炭素繊維、基材を介して電子導電性のために整列させたグラファイト繊維、炭化ケイ素などまたはこれらのいずれかの組合せが挙げられる。導電素子911は、基材910の対向する第1および第2の表面上に配置された電極902、904の一部(またはこれら全体)を形成する。任意に、電極902、904は、追加の導電材料、例えば、金属、炭素繊維、炭素フェルト、炭化ケイ素などを含むことができ、これらは、基材910を介して延びていないが、基材の表面上に配置される、または基材を介さずに、基材へと至る。
少なくとも一部の実施形態では、基材910は、導電素子が基材を介して延びるように導電素子911が配置されて、成型され得る。少なくとも一部の実施形態では、導電素子911は基材910を介して挿入されてもよいし、または押されてもよい。少なくとも一部の実施形態では、基材910は、基材を介して導電素子911を通過した後に加熱されて、基材の材料を流し、導電素子の中央部分を基材内に埋め込むことができる。
【0043】
電極構造905は、Fe-Crレドックスフロー電池システムとの関連で本明細書中に開示されているが、電極構造905は、これらに限定されないが、バナジウムレドックスフロー電池システム、バナジウム-臭素レドックスフロー電池システム、バナジウム-鉄レドックスフロー電池システム、亜鉛-臭素レドックスフロー電池システム、すべての鉄レドックスフロー電池システム、有機水性レドックスフロー電池システムなどを含む他のレドックスフロー電池システムに使用することができることを認識されたい。電極構造905はまた、他の電気化学的システムおよび方法で使用することもできる。
【0044】
レドックスフロー電池システムは、安全で、信頼でき、および再利用可能なエネルギー貯蔵媒体を提供することができる。しかし、長い寿命(例えば、多くの充電/放電サイクルに対してその貯蔵容量を維持するフロー電池システム)を有する望ましい貯蔵エネルギーを有し、豊富な入手の可能性を有する材料(例えば、地球上に豊富に存在し、商業的に採掘され、比較的に多量で利用可能なような材料)で作製されたレドックスフロー電池システムを特定するのは困難であった。現在のリチウムおよびバナジウム電池は、入手しにくい材料を利用している。多くの従来の電池システムの貯蔵容量はまた、10、50、または100回のまたはこれよりも上の充電/放電サイクルの対象下におかれた場合分解する。水性レドックスフロー電池システムに対するさらなる難題は、水からの水素または酸素の発生に対処するまたはこれを回避することである。
【0045】
本明細書に記載されているように、適切なおよび有用なレドックスフロー電池システムは、Fe3+/Fe2+およびCr3+/Cr2+レドックス化学反応を利用する、鉄-クロム(Fe-Cr)レドックスフロー電池システムである。鉄およびクロムは一般的に容易に商業的に入手可能であり、および、少なくとも一部の実施形態では、Fe-Crレドックスフロー電池システムの貯蔵容量は、少なくとも100、200、250、もしくは500充電/放電サイクルにわたり10%もしくは20%を超えて悪化することはなく、または保守手順を使用して、少なくとも100、200、250、または500回の充電/放電サイクルにわたり少なくとも70%、80%、または90%貯蔵容量を維持するように構成することができる。
少なくとも一部の実施形態では、Fe-Crレドックスフロー電池システムの電解質(すなわち、カソード液またはアノード液)は、溶媒中に溶解された鉄含有化合物またはクロム含有化合物(または両方)を含む。一部の実施形態では、アノード液およびカソード液は、鉄含有化合物とクロム含有化合物との両方を含有する。アノード液およびカソード液中のこれらの2種の化合物の濃度は同じまたは異なることができる。他の実施形態では、カソード液は鉄含有化合物のみを含み、アノード液はクロム含有化合物のみを含む。
【0046】
少なくとも一部の実施形態では、クロム含有化合物は、例えば、塩化クロム、硫酸クロム、臭化クロムなどまたはこれらのいずれかの組合せであることができる。少なくとも一部の事例では、塩化物で錯体化したクロムイオン(例えば、Cr(H2O)5Cl2+/+)は、少なくとも一部の他のクロムイオン錯体(例えば、Cr(H2O)6
3+/2+)より速い反応速度およびより低いH2生成を有することが見出された。したがって、アノード液中の(例えば、クロム含有化合物、溶媒、または両方から由来の)塩化物の包含は有益となり得る。
クロムは、窒素含有配位子と共に錯体を形成することができ、これは、少なくとも一部の事例では、クロムの塩化物錯体より安定していることが判明した。少なくとも一部の事例では、窒素含有配位子を有するクロム錯体は、Fe-Crレドックスフロー電池において、よりレドックス活性があり、またはより少ない副反応(例えば、水素生成)をもたらし得る。少なくとも一部の実施形態では、クロム含有化合物は、以下の窒素含有配位子のうちの少なくとも1種を含むクロム錯体であることができる:アンモニア(NH3)、アンモニウム(NH4
+)、ウレア(CO(NH2)2)、チオシアネート(SCN-)、またはチオウレア(CS(NH2)2)またはこれらのいずれかの組合せ。異なる窒素含有配位子の組合せとの錯体の例として、アンモニアおよびウレアとのクロム錯体が挙げられる。
【0047】
少なくとも一部の実施形態では、クロム錯体は、式[Cr3+(J)x(M)y(H2O)z](式中、xは正の整数であり、yおよびzは負ではない整数であり、x+y+z=6であり、Jは、NH3、NH4
+、CO(NH2)2、SCN-、またはCS(NH2)2からなる群から選択され、各MはJとは異なり、独立して、Cl-、F-、Br-、I-、NH4
+、NH3、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、CN-、SCN-、S2-、O-NO2
-、OH-、NO2
-、CH3CN、C5H5N、NC5H4-C5H4N、C12H8-N2、CO(NH2)2、CS(NH2)2、P(C6H5)3、-CO、CH3-CO-CH2-CO-CH3、NH2-CH2-CH2-NH2、NH2CH2COO-、O-SO2
2-、またはP(o-トリル)3からなる群から選択される)を有する。このクロム含有化合物はまた、これらに限定されないが、アンモニウム、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、フッ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオンなどまたはこれらのいずれかの組合せを含むいずれか適切な対イオンを含むことができる。クロム錯体の1つの例はCr(NH3)xCly(H2O)z(式中、xおよびzは1~6の範囲であり、yは1~3の範囲である)である。少なくとも一部の実施形態では、アノード液またはカソード液に対して、CrのNH-3(または他の窒素含有配位子)に対する比は、クロムイオンの一部分がアンモニア(または他の窒素含有配位子)と錯体を形成する限り、1未満であることができる。
【0048】
少なくとも一部の実施形態では、クロム錯体は、電解質(アノード液またはカソード液のいずれかまたは両方)中で、クロム塩(例えば、塩化クロム、硫酸クロム、臭化クロムなどまたはこれらのいずれかの組合せ)または他のクロム化合物を、配位子含有化合物(例えば、アンモニア、塩化アンモニウム、ウレア、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸ナトリウム、またはチオウレア)に曝露することによって、インサイチュで作り出すことができる。
少なくとも一部の実施形態では、電解質(アノード液またはカソード液のいずれかまたは両方)中の窒素含有配位子のクロムに対するモル比は、1:10~10:1の範囲である。アンモニアおよびウレアとのクロム錯体の場合、アンモニアのウレアに対するモル比は1:10~10:1の範囲である。窒素含有配位子の少なくとも一部は、クロムと錯体を形成することができないことを理解されたい。例えば、窒素含有配位子の少なくとも一部は、鉄と錯体を形成することができ、または電解質中で錯体を形成することができない。
【0049】
鉄含有化合物は、例えば、塩化鉄、硫酸鉄、臭化鉄、アンモニア(NH3)、アンモニウム(NH4
+)、ウレア(CO(NH2)2)、チオシアネート(SCN-)、またはチオウレア(CS(NH2)2)のうちの少なくとも1種を配位子として含む鉄錯体などまたはこれらのいずれかの組合せであることができる。少なくとも一部の実施形態では、鉄錯体は、同じ電解質(アノード液またはカソード液のいずれかまたは両方)中にクロム錯体と同じ配位子をまたはそれら配位子のサブセットを含むことができる。
溶媒は、水、水性の酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸など、または弱酸または塩基の溶解性塩を含む水溶液、例えば、塩化アンモニウムであることができる。少なくとも一部の実施形態では、アノード液またはカソード液(または両方)の含水量は少なくとも40、45、または50質量%である。少なくとも一部の実施形態では、Fe-Crレドックスフロー電池システムのカソード液とアノード液は両方とも塩酸中に溶解している塩化鉄および塩化クロムを含む。少なくとも一部の実施形態では、Fe-Crレドックスフロー電池システムのカソード液は、塩酸に溶解した塩化鉄を含み、アノード液は、塩酸に溶解した塩化クロムを含む。
【0050】
少なくとも一部の実施形態では、窒素含有化合物はまた、窒素含有化合物がクロムまたは鉄の配位子ではなくても、溶媒と比べて利点を提供し得る。例えば、電解質(アノード液またはカソード液のいずれかまたは両方)中のウレアまたはチオウレアは電解質中でHClを中和することができ、これは、電池作動中のHCl蒸気を還元することができる。別の例として、アンモニウムまたはアンモニウムイオン(例えば、塩酸のすべてまたは一部が塩化アンモニウムに置き換えられている)を有する溶媒は、より低い酸性度を有する有効な電解質(アノード液またはカソード液のいずれかまたは両方)をもたらすことができる。
【0051】
少なくとも一部の実施形態では、Fe-Crレドックスフロー電池システムのカソード液とアノード液の両方は、塩酸に溶解した塩化鉄および塩化クロムを含む。少なくとも一部の実施形態では、Fe-Crレドックスフロー電池システムのカソード液は塩酸に溶解した塩化鉄を含み、アノード液は塩酸に溶解した塩化クロムを含む。
少なくとも一部の実施形態では、カソード液またはアノード液または両方の中の鉄のモル濃度は0.5~2の範囲であるか、または少なくとも1Mである。少なくとも一部の実施形態では、アノード液またはカソード液または両方の中のクロムのモル濃度は0.1~2の範囲であるか、または少なくとも0.2、0.5、もしくは1Mである。少なくとも一部の実施形態では、塩酸または他の水性の酸または塩基のモル濃度は0.5~2の範囲である。少なくとも一部の実施形態では、アンモニアまたはアンモニウムイオンのモル濃度は0.5~4の範囲である。
クロム錯体とアノード液またはカソード液を形成するための方法の一例として、FeCl2・4H2O(35質量%)、CrCl3・6H2O(45質量%)、およびNH4Cl(20%)の100グラム混合物を250mLビーカーに加え、蒸留したイオン化水に溶解して、150mLの溶液を形成する。50℃~60℃での溶液の撹拌により、溶解が加速された。2mLの37質量%のHClを溶液に加えて、pHを調節した。
【0052】
別の例では、FeCl2・4H2O(32質量%)、CrCl3・6H2O(43質量%)、およびCO(NH2)2(25%)の100グラム混合物を250mLビーカーに加えて、蒸留したイオン化水に溶解して、150mL溶液を形成した。1.5mLの37質量%HClを溶液に加えて、pHを調節した。
第3の例として、FeCl2・4H2O(35質量%)、CrCl3・6H2O(45質量%)、NH4Cl(10%)、およびCO(NH2)2(10%)の100グラム混合物を250mLビーカーに加え、蒸留したイオン化水に溶解して、150mLの溶液を形成した。2mLの37質量%HClを溶液に加えて、pHを調節した。
【0053】
過去のFe-Crレドックス流電池の1つの難題が、レドックス反応の結果としての、陰極での水素(H2)の生成または発生である。少なくとも一部の事例では、レドックスフロー電池におけるクロムの利用の増加は、水素の生成を増加させる可能性がある。
多くの場合、レドックスフロー電池内の水素の生成を限定または削減することが望ましい。クロムの利用を制限することはより低い水素生成を結果として生じ、その一方で十分なエネルギー密度をレドックスフロー電池システム内に滞留させることが判明した。少なくとも一部の実施形態では、レドックスフロー電池システムのアノード液におけるクロムの利用は80%以下、70%以下、または60%これよりも低い利用に限定される。少なくとも一部の実施形態では、アノード液におけるクロムの利用は、カソード液中の鉄の量により限定され、またはカソード液中の鉄の100%利用に限定される。
【0054】
クロムの利用は、レドックスフロー電池システムにおける相対量のクロムおよび鉄を操作することにより、少なくとも部分的に対処することができる。「モル比」という用語は、本明細書で使用される場合、第2の構成要素のモルの量に対する、1つの構成要素のモルの量の比を意味する。少なくとも一部の実施形態では、アノード液中のクロムの、カソード液(Cr(アノード液)/Fe(カソード液))中の鉄に対するモル比は1ではなく、代わりに、Cr(アノード液)/Fe(カソード液)モル比は少なくとも1.25またはこれよりも高い(例えば、少なくとも1.43、1.67、またはこれよりも高い)。少なくとも一部の実施形態では、カソード液中の鉄のモル量は、アノード液中のクロムのモル量の80%以下、70%以下、または60%これよりも低い。少なくとも一部の実施形態では、より少量の利用可能な鉄は、利用可能なクロムの利用を80%以下、70%以下、または60%以下に限定する。少なくとも一部の実施形態では、アノード液およびカソード液は両方とも混合した鉄/クロム溶液である。
【0055】
少なくとも一部の実施形態では、カソード液中の鉄の濃度はアノード液中のクロムの濃度と異なることにより、所望のモル比をもたらす。少なくとも一部の実施形態では、カソード液中の鉄の濃度は、アノード液中のクロム濃度の80%以下、70%以下、または60%これよりも低い。
少なくとも一部の実施形態では、カソード液中の鉄の濃度およびアノード液中のクロムの濃度は同じである。このような実施形態では、アノード液およびカソード液中のクロムと鉄とのそれぞれのモル比は、アノード液およびカソード液の容量の選択により選択することができる。少なくとも一部の実施形態では、アノード液のカソード液に対する容積比は、少なくとも1.25:1またはこれよりも多く(例えば、少なくとも1.43:1または1.67:1またはこれよりも多く)、アノード液中のクロムおよびカソード液中の鉄の濃度が同じ場合、容積比と等しいモル比をもたらす。少なくとも一部の実施形態では、カソード液の容積は、アノード液の容積の80%以下、70%以下、または60%以下である。
【0056】
一部の実施形態では、アノード液およびカソード液の容積は、それぞれの半セル106、108の容積に基づくことができる。一部の実施形態では、アノード液およびカソード液の容積は、レドックスフロー電池システム100のそれぞれのカソード液およびアノード液部分の容積に基づくことができる。例えば、カソード液部分は半セル108、カソード液タンク118、およびカソード液分配用配置126を含むことができる。アノード液部分は、半セル106、アノード液タンク116、およびアノード液分配用配置124を含むことができる。
異なる鉄およびクロムの濃度と、異なるカソード液およびアノード液の容積との組合せを使用して、アノード液中のクロムおよびカソード液中の鉄の所望のモル比を達成することができることが認識されている。これら実施形態の少なくとも一部では、カソード液の容積は、アノード液の容積の95%以下、90%以下、80%以下、70%以下、または60%以下である。
少なくとも一部の事例では、アノード液中のより高いH+濃度が水素生成を促進することが判明した。アノード液による水素生成を削減するため、最初のアノード液中のH+濃度は、最初のカソード液中のH+濃度より低くすることができる。少なくとも一部の実施形態では、最初のアノード液中のH+濃度は、最初のカソード液中のH+濃度より少なくとも10、20、25、または50パーセント低い。
【0057】
表1は、異なる充電状態(SOC)でのアノード液のカソード液に対する1:1容積比を例示しており、ここで、充電状態は、アノード液およびカソード液中の最初の活性イオン種の、還元/酸化したイオン種への変換パーセンテージを表す。アノード液とカソード液との間で充電の平衡を維持するために、H+の濃度が変化することを認識されたい。表1では、最初のアノード液は1.25M Fe2+、1.25M Cr3+、および1.25M H+であり、最初のカソード液は1.25M Fe2+、1.25M Cr3+、および2.5M H+である。これら特定の濃度は、H+濃度が50%充電状態において等しくなるように選択される。
【0058】
【表1】
表2は、異なる充電状態(SOC)におけるアノード液のカソード液に対する2:1容積比を例示している。表2では、最初のアノード液は1.25M Fe
2+、1.25M Cr
3+、および1.5625M H+であり、最初のカソード液は1.25M Fe
2+、1.25M Cr
3+、および2.5M H
+である。これら特定の濃度は、アノード液が25%SOCであり、カソード液が50%SOCである場合、H
+濃度が等しくなるように選択される。アノード液とカソード液との間のSOCの差異は、アノード液がカソード液の容積の2倍を有することにより生じる。
【0059】
【表2】
Fe-Crレドックスフロー電池システム、ならびに他のレドックスフロー電池システムが有する別の難題は、金属不純物、例えば、ニッケル、アンチモン、亜鉛、ビスマス、白金、金、または銅の存在である。少なくとも一部の事例では、これらの金属不純物は、陰極表面上の水素生成を増加させ得る。このような金属の不純物は、天然不純物として、または鉄およびクロム化合物またはレドックスフロー電池システムの他の部分のリファイニングまたは製造の一部として、または他のあらゆるメカニズムを介して存在し得る。
【0060】
少なくとも一部の実施形態では、レドックスフロー電池システム100は、これら不純物を除去する、またはこれらのレベルを削減するように構成することができる。
図3に例示されているように、少なくとも一部の実施形態では、これら不純物を除去する、またはこれらのレベルを削減するため、レドックスフロー電池システム100は、不純物の少なくとも一部を金属形態へと電気化学的に還元させ(ステップ350)、粒子フィルターまたは以下に記載されている交互嵌合された電極などの他の配置を使用して、生成した金属の粒子を収集し(ステップ352)、および酸化種を含有するクリーニング溶液を使用してこれらの不純物を除去する(ステップ354)ように構成されている。
【0061】
少なくとも一部の実施形態では、不純物は、レドックス反応物の一部としてアノード液内で還元される。不純物は、充電中に還元された場合、金属粒子または粒子を形成する。レドックスフロー電池システム100は、半セル106または他の箇所で粒子フィルターを含んで、金属粒子または粒子を捕獲することができる。一部の実施形態では、陰極102は、金属粒子または粒子を濾過するのを補助することができる。また不純物の除去を促進するため、陰極102は、
図2に例示されているような交互嵌合された構造を有することができる。交互嵌合された構造は、レドックスフロー電池システム100の作動中、金属不純物の粒子の収集のための空のまたはへこんだチャネル240を含む。次いでこれら粒子は、以下に記載されているように、保守サイクルの間、電極から除去することができる。
図12は、これらに限定されないが、アノード液/カソード液タンク116、118のアップストリームまたはダウンストリーム、半セル106、108、などのダウンストリームまたはアップストリーム、またはこれらのいずれかの組合せを含めた、粒子フィルター121に対する代替の部位の例を例示している。少なくとも一部の実施形態では、フィルター121は、1~10マイクロメートルの範囲の細孔サイズを有する。少なくとも一部の実施形態では、両方の電解質タンクの不純物を除去することができるように、電極102、104の正のおよび負の割当を逆転させることもできる。
【0062】
少なくとも一部の実施形態では、本明細書に記載されているFe-Crレドックスフロー電池システムは、酸化種、例えば、Fe3+を有する溶液を使用して、これらの不純物を除去するよう配置される。レドックスフロー電池システム100の保守の一部として、保守サイクルの間、Fe3+(または他の酸化する)溶液は、システムのアノード液部分を介して流れることによって、システムの電極102からまたは他の箇所で不純物を除去することができる。少なくとも一部の実施形態では、Fe3+溶液はカソード液またはカソード液の一部分であることができる。代替の酸化溶液として、これらに限定されないが、過酸化水素溶液、塩化第二鉄溶液、硝酸などが挙げられる。少なくとも一部の実施形態では、レドックスフロー電池システム100は、アノード液/カソード液分配用配置124、126(またはさもなければフィルター121に連結)に連結して、定期的にフィルターを洗浄することができるクリーニング溶液タンク(示されていない)を含むことができる。
少なくとも一部の実施形態では、金属の不純物の除去または削減は、レドックスフロー電池システムの製造中、レドックスフロー電池システム作動開始前、またはレドックスフロー電池システムの作動中、またはこれらのいずれかの組合せにおいて実施される。金属不純物の除去のためのこれらの方法およびシステムは、Fe-Crレドックスフロー電池システムに限定されず、他のレドックスフロー電池システム、例えば、バナジウム、バナジウム-臭素、バナジウム-鉄、亜鉛-臭素、および有機レドックスフロー電池システムでもまた利用することができることを理解されたい。
【0063】
少なくとも一部の実施形態では、電極102のカソード液114への時々の曝露は、電極102の表面の不動態化を促進し、水素生成を削減することができることもまた判明した。一例として、1つのFe-Crレドックスフロー電池システムにおいて、17回の充電/放電サイクル後、電極102を1時間カソード液114で処理すると、水素生成速度は38.9ml/分から10.2ml/分へと低下した。少なくとも一部の実施形態では、レドックスフロー電池システムの作動は、定期的に(または開始時、またはオペレーターによる要求時)保守期間を含むことができ、半セル106または電極102を、カソード液(または構成要素、例えば、カソード液に対して上記で特定されたものなどを有する電解質)に、ある期間(例えば、5、10、15、30、45、60分間またはこれよりも長く)曝露する。保守期間の間、カソード液は、半セル106または電極102に1回、定期的に、断続的に、または連続的に導入することができる。これらの実施形態の少なくとも一部では、カソード液114は、保守期間後にカソード液タンク118に戻すことができる。少なくとも一部の実施形態では、保守期間は、アノード液の充電状態が少なくとも50%、75%または90%である場合に実施することができる。
【0064】
図4は、半電池106からのアノード液分配システム124の接続を断ち、カソード液分配システム126を半セル106に接続して、カソード液114を半セル106に流すためのスイッチ434を含むレドックスフロー電池システムの一実施形態を例示している。このような配置は、金属不純物を削減もしくは除去するため、または電極102またはこれらのいずれかの組合せを不動態化するために使用することができる。ポンプ122は、カソード液114を半セル106に流し、または保守が完了した時点で半セル106からカソード液114を除去するために使用することができる。
【0065】
Fe-Crレドックスフロー電池システムは、時間の経過と共に貯蔵容量が減少する可能性があり、これは少なくとも部分的には、Cr2+/Cr3+対の低い標準電位から生じ、これがシステムのアノード液側での少なくとも一部のレベルの水素生成を結果として生じる。その結果、システムの活性種の平均酸化状態(AOS)が増加し、システムは不均衡となり、貯蔵容量が低減し得る。したがって、AOSを回復することにより貯蔵容量を少なくとも部分的に修復するための方法または配置を有することは有用である。
少なくとも一部の実施形態では、Fe-Crレドックスフロー電池システムに対するAOSは、AOS=((カソード液およびアノード液中のFe3+のモル)*3+(カソード液およびアノード液中のFe2+のモル)*2+(アノード液およびカソード液中のCr3+のモル)*3+(アノード液およびカソード液中のCr2+のモル)*2)/(カソード液およびアノード液中のFeのモル+アノード液およびカソード液中のCrのモル)として記載することができる。
【0066】
少なくとも一部の実施形態では、電解質中のアンモニアまたはウレアの存在(例えば、クロム錯体の配位子として)は、システムの再平衡化および貯蔵容量の回復を促進することができる。少なくとも一部の実施形態では、以下の電解による反応が電極で生じる:
7H2O+2Cr3+-6e-→Cr2O7
2-+14H+E0=+1.33V
Fe3++e-→Fe2+E0=+0.77V
クロム酸イオンは、ウレアまたはアンモニアと反応して、Cr3+を再生し、システムを再平衡化することができる:
Cr2O7
2-+8H++CO(NH2)2→2Cr3++CO2+N2+6H2O
Cr2O7
2-+8H++2NH3→2Cr3++N2+7H2O
【0067】
少なくとも一部の実施形態では、生成された窒素または二酸化炭素は、レドックスフロー電池システムの昇圧を防止するために、放出することができる。
代わりにまたはさらに、少なくとも一部の実施形態では、レドックスフロー電池システムを再平衡化するために、レドックスフロー電池システムは、アノード液またはカソード液のいずれかと併せて平衡配置を含むことによって、システムを再平衡化し、貯蔵容量を回復する。少なくとも一部の実施形態では、平衡配置は、バナジウム供給源(オキソバナジウム(VO2+)およびジオキソバナジウム(VO2+)イオン性種を生成する)および還元剤、例えば、酸化可能な炭化水素化合物を利用して、システムを再平衡化し、貯蔵容量を回復させる。以下の実施形態はFe-Crレドックスフロー電池システムへの平衡配置の添加を例示している。このような平衡配置は他のレドックスフロー電池システム、または他の化学物質および/または電気化学的システムと共に使用することができることを理解されたい。
【0068】
図5Aは、レドックスフロー電池システム100および平衡配置500の部分の一実施形態を例示している。
図5Bは、平衡配置500の一実施形態を例示している。本実施形態では、カソード液114は、レドックスフロー電池システム100を再平衡化するために、平衡電解質562(例えば、VO
2+/VO
2
+を含有する電解質)および還元剤563と併せて使用される。平衡配置500は、カソード液タンク118、平衡電極552、554、平衡半セル556、558、平衡分離体560、カソード液平衡ポンプ572、カソード液平衡分配システム576、平衡タンク566、任意の還元剤タンク567、平衡電解質ポンプ570、平衡電解質分配用配置574、および電位供給源561を含む。少なくとも一部の実施形態では、還元剤は、ウレアまたはアンモニアであることができ、これらはクロムまたは鉄錯体の配位子として存在することができ、またはそうでなければ還元剤として提供され得る。
【0069】
以下の反応方程式は、鉄ベースのカソード液114、オキソバナジウムイオンを含有する平衡電解質562、およびウレアまたはアンモニアを含有する還元剤563を使用したシステムの再平衡化の1つの例を例示している。
VO2++H2O+Fe3+→VO2++Fe2++2H+
6VO2++6H++CO(NH2)2→6VO2++CO2+N2+5H2O
6VO2++6H++2NH3→6VO2++N2+6H2O
【0070】
少なくとも一部の実施形態では、生成された窒素または二酸化炭素は、レドックスフロー電池システムの昇圧を防止するために放出することができる。
以下の反応方程式は、鉄ベースのカソード液114、オキソバナジウムイオンを含有する平衡電解質562、およびフルクトースを含有する還元剤563を、少なくとも0.23Vの電位供給源561からの外部電位の適用と共に使用したシステムの再平衡化の別の例を例示している:
VO2++H2O+Fe3+→VO2++Fe2++2H+
24VO2
++24H++C6H12O6→24VO2++6CO2+18H2O
上記2つの例で例示された反応を介して、レドックスフロー電池システム100のAOSを減少させることができ、H+イオンは回復した水素生成において失われる。少なくとも一部の実施形態では、このような触媒は、多くの場合水素生成を増加させるので、この再平衡化(またはAOSの修復または貯蔵容量の回復)はいかなる金属触媒も利用しない。少なくとも一部の実施形態では、平衡電解質562のVO2+は、還元剤563を使用してVO2+イオンが再生されるので、均質な触媒であると考えることができる。少なくとも一部の実施形態では、VO2+イオンの還元は平衡半電池566において生じる。
【0071】
少なくとも一部の実施形態では、還元剤563の酸化は半セル556の代わりに平衡タンク566内で実施することができ、VO2+イオンが利用可能な限り、外部電位の適用を必要とし得ない。適切な還元剤として、糖(例えば、フルクトース、グルコース、スクロースなど、またはこれらのいずれかの組合せ)、カルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、などまたはこれらのいずれかの組合せ)、アルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなど、またはこれらのいずれかの組合せ)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなど、またはこれらのいずれかの組合せ)、アンモニア、ウレア、チオウレア、アンモニウムイオン、他の炭化水素、または水素気体が挙げられる。少なくとも一部の実施形態では、還元剤は溶解性がありまたは水には少なくとも部分的に溶解性がある。
【0072】
少なくとも一部の実施形態では、還元剤563は、還元剤タンク567から平衡電解質562へ、定期的に、断続的に、または連続的に加えられる。少なくとも一部の実施形態では、この再平衡化プロセス(貯蔵容量の回復またはAOCの修復のため)は、連続的に、断続的に、または定期的に生じる。例えば、カソード液平衡ポンプ572および平衡電解質ポンプ570は、連続的に、断続的に、または定期的に作動することができる。少なくとも一部の実施形態では、カソード液ポンプ122はまた、カソード液平衡ポンプ572として使用することもできる。さらに、カソード液平衡分配用配置576は、カソード液タンク118に連結するための、または接続を断つための弁を含み得る。
図5Cおよび5Dは、カソード液の代わりに、アノード液112(および対応するアノード液ポンプ572’およびアノード液平衡分配用配置576’)と共に作動する平衡配置500’を有するレドックスフロー電池システム100の別の実施形態を例示している。少なくとも一部の実施形態では、アノード液ポンプ120はまた、アノード液平衡ポンプ572’として使用することもできる。
【0073】
以下の反応方程式は、クロムベースのアノード液112、オキソバナジウムイオンを含有する平衡電解質562、およびフルクトースを含有する還元剤563を、電位供給源561からの、少なくとも1.40Vの外部電位の適用と共に使用したシステムの再平衡化の1つの例を例示している:
VO
2++H
2O+Cr
3+→VO
2++Cr
2++2H
+
24VO
2++24H
++C
6H
12O
6→24VO
2++6CO
2+18H
2O
フルクトースの代わりに、上記に列挙されたものを含めて、他の還元剤を使用することができる。
図5Eは、カソード液またはアノード液のいずれかおよびレドックスフロー電池システム100の残りの箇所に連結された対応するカソード液/アノード液タンク118/116と共に作動するように適合させることができる平衡配置500”の別の実施形態を例示している。この実施形態は、カソード液/アノード液タンク118/116および平衡タンク562との間に、中間タンク584および2つの中間半セル586、588ならびに対応する半セル556/558を組み込んでいる(平衡タンクと同様に、中間ポンプおよび中間分配用配置、ならびに2つの半セル586、588の間の中間分離体ならびに2つの半セル586、588の電極の間に電位を適用する供給源電位が存在し得る)。一実施形態では、中間タンク584内の中間電解質はV
2+/V
3+イオンを含有する。
【0074】
以下の反応方程式は、平衡配置500”およびレドックスフロー電池システム100のカソード液114を使用したシステムの再平衡化の1つの例を例示している(
図1)。
VO
2++H
2O-e
-→VO
2++2H
+(半セル556)
V
3++e
-→V
2+(半セル558)
V
2+-e
-→V
3+(半セル586)
Fe
3++e
-→Fe
2+(半セル588)
24VO
2
++24H++C
6H
12O
6→24VO
2++6CO
2+18H
2O(平衡タンク562または半電池556または両方)
フルクトースの代わりに、上記に列挙されたものを含めて、他の還元剤を使用することができる。
【0075】
別の実施形態は、カソード液の代わりに、中間電解質および平衡電解質と併せてアノード液(Cr2+/Cr3+)を使用する。また別の実施形態はアノード液を使用し、V2+/V3+中間電解質をFe2+/Fe3+中間電解質で置き換える。
本明細書に記載されている平衡配置は、他のレドックスフロー電池システムと共に、特に水素気体を生成することが可能な他のレドックスフロー電池システムと共に利用することができることを認識されたい。このようなレドックスフロー電池システムの例として、これらに限定されないが、Zn-BrまたはZn-Clレドックスフロー電池システム、バナジウムベースの(例えば、すべてのバナジウム、V-Br、V-Cl、またはV-ポリハライド)レドックスフロー電池システム;Fe-Vもしくは他の鉄ベースのレドックスフロー電池システム(例えば、すべての鉄レドックスフロー電池システム);または有機のレドックスフロー電池システムが挙げられる。
【0076】
一部の実施形態では、Fe
2+過充電条件の間、塩素気体(Cl
2)はレドックスフロー電池システム100のカソード液側に生成され得る。塩素は、例えば、カソード液タンク118または半セル108などまたはこれらのいずれかの組合せのカソード液ヘッドスペース内に閉じ込めることができる。塩素気体の継続した生成は、閉じ込められたカソード液ヘッドスペース内の圧力を増加させる。少なくとも一部の実施形態では、これは、流れを制御するための1つまたは複数の弁またはスイッチ639を含んでもよい接続638c(
図6C)を介して、塩素気体をアノード液ヘッドスペースに移動させる結果となり得る。少なくとも一部の実施形態では、塩素気体の少なくとも一部分はアノード液溶液により吸収され得る。少なくとも一部の実施形態では、以下の反応が塩素とアノード液溶液との間で生じることによって、過充電したシステムを化学的に放電することができる:
2Cr
2++Cl
2→2Cr
3++2Cl
-
2Fe
2++Cl
2→2Fe
3++2Cl
-
【0077】
少なくとも一部の実施形態では、レドックスフロー電池システム100は、カソード液またはアノード液ヘッドスペース内の圧力に対処するための圧力放出システムを含み得る。例えば、圧力逃しバルブ638a(
図6A)または液体含有U字管配置638b(
図6B)を、圧力に対処するためにカソード液ヘッドスペースに連結することができる。同様に、圧力逃しバルブまたは液体含有U字管配置を、アノード液ヘッドスペースに連結することができる。少なくとも一部の実施形態では、アノード液またはカソード液ヘッドスペース内の気体は、双方向性気体圧力制御システム、例えば、U字管配置を介して環境の大気と交換され得る。少なくとも一部の実施形態では、U字管配置はまた、気体リークモニターとして使用することができる。少なくとも一部の実施形態では、U字管配置内の液体は、レドックスフロー電池システムにより環境に放出された酸含有気体の量を推定するために使用することができる酸レベルインジケーターを含有することができる。
少なくとも一部の事例では、電解質およびレドックス反応の化学的生成物のリークからの酸性溶液および化学物質蒸気は、レドックスフロー電池システム100内の電子デバイス(例えば、コントローラー128、スイッチ、弁、ポンプ、センサーなど)を損傷する可能性がある。加えて、リークは環境の損傷または汚染をもたらし得る。
【0078】
少なくとも一部の実施形態では、アノード液またはカソード液または両方を含有するレドックスフロー電池システム100のすべて、または一部分は、酸吸収材、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、または酸化カルシウムなどを含有する第2の容器790(
図7)内に位置することができる。少なくとも一部の実施形態では、第2の容器は、少なくとも10、25、40、50、60、70、75、90パーセントまたはこれよりも多くのアノード液またはカソード液または両方を中和するのに十分な酸吸収材を含有することができる。
【0079】
一部の実施形態では、
図8に例示されているように、温度ゾーン892内での充電または放電する期間の間、アノード液およびカソード液を含有する構成要素、例えば、レドックスフロー電池システム100のアノード液またはカソード液タンク116、118、半セル106、108、アノード液またはカソード液分配システム124、126の少なくとも一部分、電極102、104などは、少なくとも50、60、70、または80℃またはこれよりも高い温度で維持される。これら構成要素の温度は、1つまたは複数の加熱デバイス894を使用して維持することができる。加えて、レドックスフロー電池システムの1つまたは複数の電子的構成要素、例えば、1つまたは複数のコントローラー128、ポンプ120、122、1つまたは複数のセンサー、1つまたは複数の弁などは、40、35、30、25、または20℃以下の温度で維持される。これらの構成要素の温度は、1つまたは複数の冷却デバイス896を使用して維持することができる。
少なくとも一部の実施形態では、クロマイト鉱石は、上記に記載されているアノード液またはカソード液に使用されているクロム含有化合物を得るための出発材料として使用することができる。クロマイト鉱石(化学式FeO-Cr
2O
3で表される鉄と酸化クロムの混合物)は高温(少なくとも1000℃)および還元条件下で、炭素源を用いて処理することによって、鉱石を予め決定された含有量の未燃焼炭素粒子を有する多孔質Fe-Cr合金へと変換する。
FeCr
2O
4+C→Fe-Cr-C+CO+CO
2
【0080】
適切な炭素源の例として、これらに限定されないが、クロマイト鉱石から酸素を一酸化炭素または二酸化炭素として除去することができるグラファイト、石炭、活性炭、木炭、一酸化炭素気体、および4未満の酸化状態を有する炭素を含有する炭素含有材料が挙げられる。
Fe-Cr-C粒子は、予め決定されたサイズに粉砕して、次いで大気中で高温硫酸に溶解して、FeSO4およびCr2(SO4)3を生成する。任意に溶液は濾過して、不溶性の構成要素を除去してもよい。
Fe+Cr+H2SO4→Fe2(SO4)3+Cr2(SO4)3+H2
塩化カルシウムまたは塩化バリウムを溶液に加えて、大部分の硫酸イオンアニオンを除去する。溶液を濾過して、硫酸カルシウムまたは硫酸バリウムおよび他の不溶性構成要素を除去する。
CaCl2+Fe2(SO4)3+Cr2(SO4)3→CaSO4+FeCl3+CrCl3
BaCl2+Fe2(SO4)3+Cr2(SO4)3→BaSO4+FeCl3+CrCl3
【0081】
任意に、FeCl3またはCrCl3を溶液に加えることによって、Cr:Fe比を調整して、所望の最終比(例えば、3:2Cr:Fe)を達成することができる。溶液を冷却して、FeCl3/CrCl3混合物を結晶化し、不純物を除去する。任意に、再結晶化を使用して、不純物を1回または複数回除去することができる。
FeCl3/CrCl3混合物は、水および還元した鉄粉末を加えて、FeCl2/CrCl3溶液を生成することによって、電解質として使用することができる。所望する場合、還元した鉄およびFeCl3の反応からの熱で溶液を加熱することができる。
Fe+2FeCl3→2FeCl2+熱(およそ168.3kJ/モルの鉄)
少なくとも一部の実施形態では、H2SO4またはHClを溶液に加えて、最終電解質組成物を生成する。
【0082】
他のクロム材料もまた使用することができる。このようなクロム材料として、クロム廃棄物、例えば、めっき廃液、革なめし廃棄物など(例えば、鉄紛またはFe2+またはCr3+化合物などの還元剤により最初に還元することができる、Cr6+化合物を有するクロム含有材料を含む)を挙げることができる。これらのクロム材料は、塩酸または硫酸などの酸を使用して、溶解させて、クロム塩を生成することができる。溶解したクロムのpHは、pH>3、5、7、またはより多くまで増加させて、Cr(OH)3を生成することができる。少なくとも一部の実施形態では、酸およびpHの選択は、他のクロム化合物、例えば:
Cr(OH)3+3HCl→CrCl3+3H2O
2Cr(OH)3+3H2SO4→Cr2(SO4)3+6H2O
を提供することができる。
代わりに、HClと組み合わせて、FeCl2、Fe+FeCl3、Fe(OH)2、またはFe+Fe(OH)3を加えることは、電解質組成物を生成することができる。
【0083】
クロマイト鉱石およびクロム廃棄物は、不純物、例えば、シリカ、アルミナ、鉄、および他の金属(Ni、Mn、Cu、Sb、Bi、など)を含有することができる。これらの金属の一部は、Fe-Crレドックスフロー電池の作動中、水素気体を推進させて、水素生成触媒として作用することができる。上に記載されているように、金属不純物はアノード液中で金属粒子に還元することができ、フィルター、例えば、
図12のフィルター121を使用して、これらの粒子を除去することができる。少なくとも一部の実施形態では、フィルター121は1~10マイクロメートルの範囲の細孔サイズを有する。フィルターは、酸化溶液、例えば、Fe
3+含有溶液またはフロー電池のカソード溶液を用いて定期的に洗浄して、フィルターで捕獲されたこれらの小さな金属粒子を溶解し、使用した洗浄溶液をシステムから除去する。捕獲され、除去された金属カチオンは、さらなる適用のために再利用することができる。
【0084】
少なくとも一部の実施形態では、レドックス電池システム100は、
図10に例示されているように、同じアノード液112およびカソード液114を利用した第2次レドックスフロー電池配置201を含むことができる。第2次レドックスフロー電池配置201は、2つの電極202、204、関連する半セル206、208、分離体210、アノード液ポンプ220、カソード液ポンプ222、アノード液分配用配置224、およびカソード液分配用配置226を含む。第2次レドックスフロー電池配置201はまた第1次レドックスフロー電池配置101で使用されるアノード液タンク116およびカソード液118を含み、同じコントローラー128により操作され、
図10に例示されているように、同じ負荷/供給源130/132に連結しているまたは連結可能である。(
図10は、第1次次レドックスフロー電池配置101と第2次レドックスフロー電池配置201との間で分割したアノード液およびカソード液タンク116、118を例示しているように見え得るが、アノード液およびカソード液タンク116、118の全体は、第1次および第2次レドックスフロー電池配置101、201のそれぞれの一部であることを理解されたい)。
【0085】
少なくとも一部の実施形態では、第2次レドックスフロー電池配置201は、より小さな半セル206、208またはアノード液/カソード液ポンプ220、222を有し、第1次レドックスフロー電池配置101よりも、ポンプ供給能力(またはこれらの特徴のいずれかの組合せ)が限定されている。少なくとも一部の実施形態では、第2次レドックスフロー電池配置201のピークパワー送達能力の、第1次レドックスフロー電池配置101のピークパワー送達能力に対する比は1:5~1:200の範囲、または1:1.1~1:10の範囲であり、または1:1.5~10の比である。少なくとも一部の実施形態では、第2次レドックスフロー電池配置のピークパワー送達能力は第1次レドックスフロー電池配置のピークパワー送達能力より低い。
少なくとも一部の実施形態では、第2次レドックスフロー電池配置201は、高パワー送達期間中、負荷130に対して直列または並行した立体配置で第2のレドックスフロー電池配置201を配置することにより、第1次レドックスフロー電池配置101を補助するために使用することができる。
【0086】
少なくとも一部の実施形態では、第2次レドックスフロー電池配置201は、低パワー送達期間中、第1次レドックスフロー電池配置101が作動しておらず、または静止の状態である期間を提供するように、第1次レドックスフロー電池配置101を置き換えるために使用することができる。第2次レドックスフロー電池配置201は、同じアノード液/カソード液112、114を継続して使用して、これらの電解質を放電し、第1次レドックスフロー電池配置101の非作動期間中の自己放電または過熱を減少させるまたは防止する。少なくとも一部の実施形態では、第2次レドックスフロー電池配置201を使用して、第1次レドックスフロー電池配置101を再開させることができる。
【0087】
少なくとも一部の実施形態では、コントローラー128は、引き出されている放電パワーが最初の予め定義したレベル以下の場合、第1次レドックスフロー電池配置101から第2次レドックスフロー電池配置201へとスイッチするように構成されている。少なくとも一部の実施形態では、コントローラー128は、引き出されている放電パワーが少なくとも第2の予め定義したレベルにある場合、第2次レドックスフロー電池配置201から第1のレドックスフロー電池配置101へとスイッチするように構成されている。少なくとも一部の実施形態では、第1および第2の予め定義したレベルは同じである。他の実施形態では、第2の予め定義したレベルは第1の予め定義したレベルより大きい。少なくとも一部の実施形態では、コントローラー128は、引き出される放電パワーが少なくとも第3の予め定義したレベルにある場合、第2次レドックスフロー電池配置201を第1のレドックスフロー電池配置101に加えるように構成されている。
【0088】
少なくとも一部の実施形態では、第2次レドックスフロー電池配置201は非常用電源として使用することができる。少なくとも一部の実施形態では、第1次レドックスフロー電池配置101が静止または非作動状態で配置された場合、第1次レドックスフロー電池配置の半セル106、108内の電解質112、114は、第2次レドックスフロー電池配置201を第1次レドックスフロー電池配置に連結することによって、負荷130として放電することができる(例えば、第1次レドックスフロー電池配置への損傷を回避するため)。少なくとも一部の実施形態では、目的は単に半セル106、108内の電解質112、114を放電することであるため、アノード液およびカソード液ポンプ120、122は、本プロセスの間、比較的にゆっくりと停止またはポンプ供給される。逆に、第2次レドックスフロー電池配置201が静止または非作動状態に配置される場合、第2次レドックスフロー電池配置の半セル206、208内の電解質112、114は、第1次レドックスフロー電池配置201を第2次レドックスフロー電池配置に連結することによって、負荷130として放電され得る。
【0089】
レドックスフロー電池システムは、1つまたは複数の第1次レドックスフロー電池配置202および1つまたは複数の第2次レドックスフロー電池配置201を含むことができることを認識されたい。1つまたは複数の第2のレドックスフロー電池配置201は、本明細書に記載されている他の実施形態のいずれかに組み込むことができ、レドックスフロー電池システムに対して本明細書に記載されている変化形のいずれかはまた、第2次レドックスフロー電池配置201に適用することができることを認識されたい。
レドックスフロー電池は、
図11に例示されているように、レドックスセル電池システム100に結合している電解セル1130中の水1112の電解による水素の生成のために使用することができる。電解セル1130は、電極1102、1108を含み、水素除去配置1125は、電解セル1130内の水の電解により生成される水素気体1113を、水素気体貯蔵タンク1117に送達する。酸素気体からの水素気体1113の分離は公知であり、いずれか適切な方法を使用して実施することができる。
【0090】
レドックスフロー電池システム100は、水素気体を生成するための、好都合で、有用なメカニズムを提供する。レドックスフロー電池システム100は充電して、次いで電解セル1130内の水を電解するために使用することができる。水を加水分解するためのACパワーからDCパワーへの変換を必要とする水素生成用の多くの従来の配置とは対照的に、レドックスフロー電池システム100は水を加水分解して水素気体を生成するのに十分であることができるDCパワーを本質的に生成する。
代わりにまたはさらに、少なくとも一部の実施形態では、水素気体1113はレドックスフロー電池システム100の作動の副生成物である。水素除去配置(水素除去配置1125と類似)は、第1の半セル106または第2の半セル108のいずれかで生成した水素気体1113を、水素気体貯蔵タンク1117に送達する。レドックスフロー電池システム100の充電のこの副生成物は追加の生成物として販売することができる。
【0091】
レドックスフロー電池システムにおいて、カソード液またはアノード液(または両方の)中の活性種の平均酸化状態(AOS)は、特に例えば、システムにおける水素生成または酸素侵入などの条件を変えることができる。AOSの変更の結果、システムは不均衡となる可能性があり、システム貯蔵容量は低減し、または副反応、例えば、水素生成、またはこれらの作用のいずれか組合せが加速され得る。
レドックスフロー電池システムを知ることは有用である。従来のAOS決定方法は、試料を採取し、オフラインで電位滴定分析を行い、インサイチュでUV-Vis測定を得ること、または基準電極に対してインサイチュで潜在的相違点測定を実施することを含む。これらの技術は速度が遅く、または比較的に不正確である可能性がある。
【0092】
これら従来の技術とは対照的に、比較的速いおよび正確な方法が本明細書で提示されている。本方法は、低電位充電プロセス中に電解質のうちの少なくとも1種のイオンの容量を測定し、この充電容量および電解質の公知の容積を使用して、AOSを決定することを含む。
少なくとも一部の実施形態では、アノード液/カソード液タンク116、118はそれぞれ一連のタンクであることができる。例えば、少なくとも一部の実施形態では、アノード液/カソード液タンク116、118は、
図21に例示されているように、第1次電解質タンク2116および1つまたは複数の補助電解質タンク2118をそれぞれ含む。少なくとも一部の実施形態では、第1次電解質タンク2116は、立方体または長方形の直方体とは対照的に
図21に例示されているように、円柱状である。少なくとも一部の実施形態では、円柱状タンクはリークの可能性が低いのに対して、立方体または長方形の直方体は特に比較的に大きなタンクに対してリークを起こす傾向がある。
【0093】
少なくとも一部の実施形態では、レドックスフロー電池システムに対するタンク貯蔵領域125は、
図21に例示されているように長方形の直方体であるか、または別の非円柱状の形状であり得る。円柱状の第1次電解質タンク2116は、
図21に例示されているように、タンク貯蔵領域125を満たし得ない。追加の電解質貯蔵を提供するために、1つまたは複数の(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはこれよりも多くの)補助電解質タンク2118がタンク貯蔵領域125内に含まれてもよい。補助電解質タンク2118は、第1次電解質タンク2116に直列にまたは並行して接続することができる。補助電解質タンク2118は円柱、立方体、長方形の直方体、またはいずれか他の適切な形状であることができる。補助電解質タンク2118が第1次電解質タンク2116よりも実質的に小さな容積(例えば、5、10、または25%以下)を有する場合、リーク(またはリークの可能性)に対する懸念はより低くなり得る。補助電解質タンク2118はすべて同じ形状または容積を有することもできるし、または異なる形状または容積を有することもできる。
【0094】
図13は、レドックスフロー電池システムに対する3つの異なる充電曲線を例示している。第1の充電曲線990は平衡したシステムに対するものである。第2の充電曲線992および第3の充電曲線994は2つ異なる不均衡システムに対するものである。不均衡システムでは、低い電位充電領域992a、994aおよび高い電位充電領域992b、994bが存在する。低い電位充電領域992a、994aにおいて1つまたは複数の測定を実施することにより、AOSを決定することができる。
このAOS決定方法は、上記に記載されているFe-Crレドックスフロー電池システムを使用して例示される。しかし、これらの方法は、いずれか他の適切なレドックスフロー電池システムと共に使用することができることを理解されたい。この例では、カソード液とアノード液の両方が鉄およびクロムイオンを含む。平衡したシステムに対して、レドックスフロー電池システムが完全に放電された場合、アノード液とカソード液の両方の中にFe
2+およびCr
3+のみが存在する。充電が適用されると、システムには以下のレドックス反応が生じる:
Fe
2+-→Fe
3++e(E
o=+0.77V、陽極側)
Cr
3++e
-→Cr
2+(E
o=-0.40V、陰極側)
少なくとも一部の実施形態では、陽極の電解質と陰極の電解質との間の潜在的相違は、
図13の第1の充電曲線990により例示されているように、0.9V超に直ちに増加し得る。
【0095】
しかし、システムが不均衡である場合、副反応によりAOSは増加する。例えば、Fe
2+/Fe
3+/Cr
3+の混合物は不均衡なFe-Crレドックスフロー電池システムの放電された電解質中に見出すことができる。このようなイオン混合物に対して、充電がレドックスフロー電池システムに適用された場合、システムは最初に以下のレドックス反応を生じる:
Fe
2+-→Fe
3++e(陽極側)
Fe
3++e
-→Fe
2+(陰極側)
これらの反応は、すべてのFe
3+イオンが陰極の電解質において消費されるまで、低い電位で生じる。これは
図13の低い電位充電領域992a、994aに対応する。すべてのFe
3+イオンが消費されて初めて、クロムイオンは、高い電位充電領域992b、994bに例示されているように、より高い帯電電位で還元される。
【0096】
この低い電位充電プロセスの充電容量を使用して、アノード液中のFe
3+イオンの量を決定することができる。例えば、
図13の分岐点993での充電容量を26.8Ah/モルで割ると(電子1モルに対する電荷)、アノード液中のFe
3+のモル量が得られる。これを陽極および陰極の電解質の容積と合わせて使用して、レドックスフロー電池システムのAOSを決定することができる。
【0097】
この情報はまた、例えば、上記に記載されている平衡配置を使用して、レドックスフロー電池システムを再平衡化するために使用することもできる。例として、
図5Aおよび5Bに例示された平衡配置500を使用して、オキソバナジウムイオンを含有する平衡電解質562、およびフルクトースを含有する還元剤563は、少なくとも0.23Vの電位供給源561からの外部電位の適用と共に以下の反応を生成する:
VO
2++H
2O+Fe
3+→VO
2
++Fe
2++2H
+
24VO
2
++24H
++C
6H
12O
6→24VO
2++6CO
2+18H
2O
AOSの再平衡化は、還元剤563(フルクトース)を平衡電解質562に提供することにより達成することができる。例えば、モル量のFe
3+を(1/24)で掛けたものと等しいモルの量のフルクトースを理想的に提供することによって、AOSを再平衡化することができる。より多くのフルクトースを使用して、システム内の非理想的要素によるAOSを、完全に再平衡化することができることを認識されたい。
【0098】
図14は、AOSを決定する方法の一実施形態のフローチャートである。ステップ1060では、低い電位充電期間の間、充電容量が測定される。例えば、充電容量は、充電曲線が、例えば、
図13の分岐点993、995において、低い電位充電期間から高い電位充電期間へと変化する場合、充電容量として測定することができる。次いで、ステップ1062では、AOSは、この測定(または測定のセット)ならびに公知の容積のアノード液およびカソード液およびカソード液およびアノード液のそれぞれの公知の鉄およびクロム濃度を使用して決定することができる。少なくとも一部の実施形態では、ステップ1060の前に、レドックスフロー電池システム100中のアノード液112およびカソード液114は、外部電位を適用するか、またはアノード液およびカソード液を完全に混合することにより、完全に放電することができる。少なくとも一部の実施形態では、カソード液およびアノード液は、充電容量を決定する前に完全に混合することができる。
【0099】
別の実施形態は、完全に放電したシステムを必要とせず、ニオブの滴定を使用していずれかの充電状態に対して決定することができる。
図15は本方法の一実施形態のフローチャートである。ステップ1166では、1種のイオン性種(例えば、Fe
3+またはCr
3+)の量は、1種の電解質(カソード液またはアノード液)において、その電解質の流れを停止し、非流動の電解質における最初のイオン性種のインサイチュでの滴定を実施することにより測定される。レドックスフロー電池システムを介して流れ続けることが好ましい、平衡配置500または他の電解質を、イオン性種を滴定するために使用することができる。一例として、Fe
3+の量は、カソード液の流れを停止し、a)平衡配置500におけるバナジウムイオン、またはb)アノード液中のCr
2+のいずれかを使用して、Fe
3+を滴定することによりカソード液中で決定することができ、これらはレドックス電池システムを介して流れ続けることにより、すべてのFe
3+を滴定するのに十分なCr
2+イオンが存在することを確実にすることができる。
【0100】
ステップ1168では、第2のイオン性種(例えば、Cr2+またはFe2+)の量は、その電解質の流れを停止し、非流動の電解質中の第2のイオン性種のインサイチュでの滴定を実施することにより、1種の電解質(アノード液またはカソード液)において測定される。好ましくは、第2のイオン性種は、1種のイオン性種がカソード液中で測定され、1種のイオン性種がアノード液で測定されるよう、第1のイオン性種が測定された電解質とは異なる電解質中で測定される。少なくとも一部の実施形態では、第1のイオン性種の測定は、第2のイオン性種の量または濃度を改変させて、第2のイオン性種の測定がこの改変を考慮に入れて調整されるようにする。平衡配置500または他の電解質は、レドックスフロー電池システムを介して流れ続けることが好ましいが、これらはイオン性種を滴定するために使用することができる。一例として、Cr2+の量は、アノード液の流れを停止し、a)平衡配置500中バナジウムイオンまたはb)カソード液中Fe3+のいずれかを使用して、Cr2+を滴定することにより、アノード液中で決定することができ、これらはレドックス電池システムを介して流れ続けることにより、すべてのCr2+を滴定するのに十分なFe3+イオンが存在するのを確実にすることができる。
次いでステップ1170では、これら2種の測定、鉄およびクロムの初期の濃度または量、半セルの容積、ならびにアノード液およびカソード液の容積を使用してAOSを決定することができる。
【0101】
別の実施形態では、充電プロセスの代わりに放電プロセスを観察することができる。充電したまたは部分的に充電したシステムに対して、放電または自己放電プロセスを使用して、2種の異なる電気化学的対(ここでは、Fe
2+/Fe
3+対Cr
2+/Cr
3+)および異なる濃度を有する1つの対(Fe
2+/Fe
3+)の間での放電速度差異に基づき、陽極電解質における過剰なFe
3+を推定することができる。電気化学的デバイスにおける2種の電気化学的対に対する放電速度の変化は、異なる濃度を有する1種の電気化学的対よりもずっと速い。その結果、
図16に例示されているように、分岐点1297が放電曲線1296において観察することができる。少なくとも一部の実施形態では、この分岐点1297を使用して、カソード液中の過剰なFe
3+の量を推定することができる。
図17は、放電曲線を使用してAOSを決定する方法の一実施形態である。ステップ1374では、放電速度は初期の放電の間に測定される。ステップ1376では、電圧放電における分岐点が決定され、開回路電圧が測定される。ステップ1378では、分岐点後の開回路電圧を使用して、ネルンスト方程式を使用して、活性のある電気化学的対(ここでは、Fe
3+/Fe
2++)の過剰濃度を推定することができる。少なくとも一部の実施形態では、放電終了ポイントは、(クロム全部の)1%、5%、または10%を超えるCr
2+イオンがアノード液中に存在するポイントとなるように選択される。ステップ1380では、AOSは、推定される濃度、および電解質の公知の容積から決定することができる。これは、
図14に例示されている以前に記述された方法の逆のプロセスである。
【0102】
少なくとも一部の実施形態では、上記に記載されているAOSを決定する方法および
図13~18を使用して例示されたAOSは、半セル106、108、アノード液112、カソード液114,レドックスフロー電池システム100の他の要素、または平衡システム500の要素を使用してインサイチュで実施することができる。他の実施形態では、AOSを決定する方法は、アノード液112またはカソード液114または両方の一部分を、測定のために、1つまたは複数の他の半セルへと流すことを含んでもよい。さらに他の実施形態では、AOSを決定する方法は、アノード液112またはカソード液114または両方の一部分を除去し、レドックスフロー電池システム100の外部で測定を実施することを含むことができる。
【0103】
少なくとも一部の実施形態では、決定されたAOSを使用して、生成される水素または他の副生物の生成の量を推定することができる。少なくとも一部の実施形態では、
図14、15、および17におけるAOSの決定に続いて、上に記載されているような平衡配置を作動させて、レドックスフロー電池システムを再平衡化させ、AOSを回復させることもできる。このような作動は、例えば、平衡電解質562に加えるための還元剤563の量を決定することを含むことができる。
所与のレドックスフロー電池システムに対して、電池スタック内側の電解質容積と、全電池システムとの固定された比が存在する。電池スタック内側の電解質容積は電解質タンクの外側の容積より常にずっと小さい。よって、スタック内側の電解質は、全システムの電解質を充電および放電するよりもずっと速く充電および放電する。レドックスフロー電池の利用可能な許容量のための迅速な測定のための解決策は、所与の作動条件において電解質の流れがないだけの条件下での、スタック内での電解質の充電または放電であり、次いでシステム設計パラメーターに基づき、この結果を全システムへと変換する。
【0104】
多くの場合、レドックスフロー電池システムの利用可能なエネルギーもしくは貯蔵容量、またはエネルギーもしくは貯蔵容量の変化を知りたいという要望がある。このような決定に対する従来の方法は、例えば、オフラインでの滴定または他の分析、インサイチュでの紫外線-可視(UV-Vis)測定、またはインサイチュでの基準電極に対する潜在的相違点の測定を行うために、レドックスフロー電池システムから試料を採取することを含む。これらの方法は速度が遅く、または不正確な方法である可能性がある。
【0105】
レドックスフロー電池システムの作動中、活性物質が不均衡となった場合、所与のセットの放電条件に対してレドックスフロー電池システムの終了OCV(開回路電圧)が変化することが判明した。終了OCVにおける差異は、その使用可能な貯蔵または充電容量と直接的関係を有する。加えて、終了OCVはAOSと直接的関係を有することができる。特に、所与のレドックスフロー電池システムに対して、同じ放電速度下で、終了OCVとシステム貯蔵または充電容量またはAOSとの間に信頼できる関係が存在する。ある特定の条件下、例えば、システムのアノード液側でのH2生成またはシステムへのO2侵入では、システム中の活性種は不均衡となる。その結果、システムの貯蔵または充電容量は低減し、副反応がさらに加速される。OCVとシステム貯蔵または充電容量またはAOSとの間の関係もまた変化する。
一例として、Fe-Crレドックスフロー電池システムの一実施形態に対して、1.100VのOCVに充電した後、これを33mW/cm2で0.60Vまで放電し、放電エネルギーおよび関連した終了OCVが以下の表に付与されている。
【0106】
【表3】
この表に示されている通り、同じ放電条件下での終了OCVは、システムの利用可能な貯蔵または充電容量に対する指標として使用することができる。したがって、終了OCVはまた、AOSの指標としても使用することもできる。
よって、少なくとも一部の実施形態では、利用可能な貯蔵または充電容量またはAOSは、一連の所与の条件下、例えば、予め選択した放電速度またはパワー下でのシステムの全放電、これに続く終了OCVの測定により決定することができる。この終了OCVは、予め決定されたOCV曲線、予め決定された参照表もしくは他の較正表、チャートなどと比較することができ、または予め決定された数学的関係に適用して、貯蔵もしくは充電容量もしくはレドックスフロー電池システムのAOSを決定することもできる。
少なくとも一部の実施形態では、放電および終了OCV測定は、半セル106、108および電極102、104を使用して実施することができる。少なくとも一部の実施形態では、全レドックスフロー電池システムは放電されている。
【0107】
レドックスフロー電池システムに対して、通常、電池スタック(例えば、半セル106、108)および全体のシステムにおける電解質容積の固定された比が存在する。電池スタック内側の電解質容積は通常、電解質タンク116、118内の容積よりずっと小さい。よって、半セル106、108の電解質内側の充電および放電は全体のシステム内の電解質の充電および放電よりずっと迅速に行うことができる。したがって、少なくとも一部の実施形態では、電解質の流れ(アノード液およびカソード液)は、半セル106、108中の電解質のみが放電されるように、この貯蔵容量の決定中に停止させることができる。通常、半セル106、108中の電解質の終了OCV測定は全レドックスフロー電池をシステム全体として示す。
【0108】
さらに、終了OCVの放電および測定を実施するために、電池スタックの半セル(例えば、半セル106、108)よりさらに小さな容積を有するセルを使用ことが有利となり得る。少なくとも一部の実施形態では、レドックスフロー電池システム100は、
図18に例示されているように、半セル1406、1408および電極1402、1404を有するOCVセル1401を含むことができる。少なくとも一部の実施形態では、OCVセル1401は半セル106、108および電極102、104よりも容積が、少なくとも25%、30%、40%、50%、60%、または75%小さくてもよい。OCVセル1401は、
図18に例示されているように、半セル106、108を介して、電解質(アノード液およびカソード液)の流れに一直線に並べられてもよい。代わりに、OCVセル1401は、アノード液分配用配置124およびカソード液分配用配置126を介して電解質の直列の流れの外側に配置されてもよく、OCVセル1401は、弁、スイッチなどを使用して電解質を充電することができる。OCVセルにおける放電プロセスは、半セル106、108より速く(電解質の流れは停止している)、終了OCVのより速い測定および貯蔵容量の決定をもたらすことができるので、比較的小さなOCVセル1401を有することが有利となり得る。したがって、少なくとも一部の実施形態では、電解質(アノード液およびカソード液)の流れは、OCVセル1401中の電解質のみが放電されるよう、この貯蔵容量決定中は停止させることができる。
【0109】
図19は、レドックスフロー電池システムの貯蔵または充電容量またはAOSを決定する方法の一実施形態のフローチャートである。ステップ1574では、レドックスフロー電池システムは予め選択した放電速度で放電される。少なくとも一部の実施形態では、実際の放電速度は、予め決定された放電速度から、1、5、または10%以下だけ変動する。少なくとも一部の実施形態では、放電はレドックスフロー電池システムの自己放電である。少なくとも一部の実施形態では、終了放電ポイントは、アノード液中のCr
2+イオンの量が全クロムの1%、5%、または10%以下となったポイントである。他の終了放電ポイントを使用することもできる。
ステップ1576では、放電後、終了OCVを測定する。ステップ1578では、測定された終了OCVは、予め決定されたOCV曲線、予め決定された参照表または他の較正表、チャートなどと比較され、または終了OCVを、1種もしくは複数の活性種の濃度、貯蔵もしくは充電容量、またはレドックスフロー電池システムのAOSと関係づける予め決定された数学的関係に適用される。少なくとも一部の実施形態では、予め決定された終了OCV曲線;予め決定された参照表もしくは他の較正表、チャートなど;または予め決定された数学的関係への適用は、1種もしくは複数の活性種、貯蔵、もしくは充電容量、またはAOSの濃度の異なる値を有するレドックスフロー電池システムの予め選択した放電速度を使用して、終了OCVを実験的に測定することにより得られる。
【0110】
任意のステップ1580では、1種もしくは複数の活性種の濃度または貯蔵または充電容量がステップ1578において決定される場合、電解質容積を使用してAOSを決定するために1種もしくは複数の活性種の濃度または貯蔵または充電容量を使用することができる。
少なくとも一部の実施形態では、貯蔵または充電容量またはAOSが決定され、システムが不均衡であることが示唆された場合、上記に記載されている技術のいずれかを利用して、レドックスフロー電池システムを再平衡化することができる。
【0111】
OCVの他の測定を使用して、AOSはまた決定することもできる。
図20は、レドックスフロー電池システムのAOSを決定する方法の一実施形態のフローチャートである。ステップ1680では、レドックスフロー電池システムのOCVは測定される。ステップ1682では、以下の手順のうちの1つまたは両方が実施される:a)カソード液中の1種の鉄イオン性種(例えば、Fe
3+またはFe
2+)の量が測定される;またはb)アノード液中の1種のクロムイオン性種(例えば、Cr
3+またはCr
2+)が測定される。アノード液またはカソード液(またはレドックスフロー電池システムの他の種類の中)のいずれかの中の他のイオン性種の測定をこのステップで使用することができることを認識されたい。少なくとも一部の実施形態では、1種の鉄イオン性種または1種のクロムイオン性種の量の測定に使用される2つの半セルは、レドックスフロー電池システムの電池スタックの一部、例えば、半セル106、108であることができる。他の実施形態では、2つの半セルは電池スタックの一部ではないが、例えば、
図18のOCVセル1401であることができる。少なくとも一部の実施形態では、測定は、レドックスフロー電池システム中の電解質の流れなしで行われる。少なくとも一部の実施形態では、測定の目的である電解質の流れは停止されるが、他の電解質の流れは、測定されているイオン性種の完全な滴定を促進するために維持される。少なくとも一部の実施形態では、1種の鉄イオン性種または1種のクロムイオン性種の測定は
図5Aの平衡配置500を利用することができ、測定ステップは、1種の鉄イオン性種または1種のクロムイオン性種の還元およびバナジウムイオンの酸化、これに続いて、上に記載されているような還元剤を使用してジオキソバナジウムイオンを還元することにより、バナジウムイオンを再生することを含むことができる。少なくとも一部の実施形態では、1種の鉄イオン性種または1種のクロムイオン性種の測定はオフラインで実施することもできるし、またはインサイチュで実施することもできる。
【0112】
ステップ1684では、AOSは、i)測定された量の1種の鉄イオン性種、測定された量の1種のクロムイオン性種、または測定された量の1種の鉄イオン性種と1種のクロムイオン性種の両方、ii)測定されたOCV、およびiii)カソード液またはアノード液中の1種の鉄イオン性種または1種のクロムイオン性種の量または濃度と、OCVとのそれぞれの関係を使用して決定される。少なくとも一部の実施形態では、AOSは、予め決定されたOCV曲線、参照表、較正表、またはOCVを以下の1種に関係させる数学的関係:1種の鉄イオン性種の濃度もしくは量、1種のクロムイオン性種の濃度もしくは量、または1種の鉄イオン性種もしくは1種のクロムイオン性種と両方の濃度または量から決定することができる。
【0113】
少なくとも一部の実施形態では、予め決定されたOCV曲線、参照表、較正表、もしくは数学的関係は、OCVと、平衡したシステムに対して測定もしくは計算されたイオン性種との間の関係であることができる。測定されたOCVはそのイオン性種の予想された濃度もしくは量を提供することができる。1)測定されたイオン性種の予想された濃度もしくは量と、2)イオン性種の測定された濃度もしくは量との間の差異の対比を使用して、AOSを決定することができる。
少なくとも一部の実施形態では、予め決定されたOCV曲線;予め決定された参照表もしくは他の較正表、チャートなど;もしくは予め決定された数学的関係への適用は、平衡したシステムにおける選択されたイオン性種の異なる量もしくは濃度に対してOCVを実験的に測定することにより得られる。
少なくとも一部の実施形態では、AOSが決定され、システムが不均衡であることが示唆された場合、上記に記載されている技術のいずれかを利用して、レドックスフロー電池システムを再平衡化することができる。
【0114】
アノード液/カソード液の充電および放電は、ポンプ供給速度、充電源により送達されるパワー、または負荷により必要とされるパワーを含む様々な要因に依存し得る。少なくとも一部の事例では、半セル内のアノード液/カソード液の充電/放電は一定ではなく、時間の経過と共に変動する。これは、特にアノード液/カソード液が限定されている場合、またはアノード液/カソード液の混合がない場合、半セルを出入りするアノード液/カソード液のAOS(平均酸化状態)またはSOC(充電状態)の一時的変化形をもたらし得る。(少なくとも一部の事例では、アノード液/カソード液を混合して、アノード液/カソード液全体にわたり比較的均一なAOSまたはSOCを得ることは困難であり得る)。
少なくとも一部の実施形態では、アノード液112またはカソード液114(または両方の)のAOSまたはSOC(またはAOSまたはSOCを示す他の値)は、アノード液またはカソード液が半セル106、108(またはアノード液またはカソード液分配用配置124、126に沿った他の箇所で)を出入りして、アノード液112またはカソード液114の時間的エネルギープロファイルを記録する際に、断続的、定期的、または連続的に測定または推定されてもよい。時間的エネルギープロファイルは、アノード液/カソード液の異なる部分のAOSまたはSOCを表すことができ、アノード液/カソード液の全容積を介してAOSまたはSOCにおける変化形プロファイルに対応することができる。
少なくとも一部の実施形態では、時間的エネルギープロファイルは、AOSもしくはSOCの測定、計算、もしくは推定、またはAOSもしくはSOCを示す量、例えば、アノード液またはカソード液の測定された電圧であってよい。少なくとも一部の実施形態では、AOSまたはSOCは、時間的エネルギープロファイルに対して決定または推定される。少なくとも一部の実施形態では、時間的エネルギープロファイルは、断続的、周期的、もしくは連続的な測定、またはAOSもしくはSOCを示す他の計算値(例えば、比例している、または線形もしくは非線形方式で相対的である)を含む(または基づく)。
【0115】
少なくとも一部の実施形態では、アノード液112またはカソード液114(または両方の)の開回路電圧(またはAOSまたはSOCを示す他の測定)、ならびに充電/放電する電流は、アノード液またはカソード液が半セルを通り抜ける際に断続的、定期的、または連続的に測定または推定される。少なくとも一部の実施形態では、AOSまたはSOCは開回路電圧および充電/放電する電流を使用して決定することができ、これを使用して、時間的エネルギープロファイルを作成することができる。少なくとも一部の実施形態では、小さな開回路電圧測定セルを使用して、例えば、開回路電圧測定セルに迂回させたアノード液およびカソード液のほんの一部を使用して、半セルを通過した前または後のアノード液およびカソード液の開回路電圧(OCV)を測定することができる。
【0116】
少なくとも一部の実施形態では、レドックスフロー電池システム100は、アノード液112またはカソード液114の時間的エネルギープロファイルが、アノード液/カソード液分配用配置124、126に沿っておよびアノード液/カソード液の容積内で信頼できるものとなるように、アノード液/カソード液の混合または拡散を減少させるように維持する。少なくとも一部の実施形態では、時間的エネルギープロファイルは、推定された拡散係数および1種または複数の因子、例えば、a)半セルを出てから半セルに再突入するまで、アノード液/カソード液分配用配置を介してアノード液/カソード液が移動する時間、b)アノード液/カソード液の一時的に隣接する部分のAOSまたはSOC、c)アノード液/カソード液の温度、電解質の流速などまたはこれらのいずれかの組合せを使用して、アノード液/カソード液内での拡散を説明するよう修正することもできる。
【0117】
少なくとも一部の実施形態では、時間的エネルギープロファイルは、アノード液/カソード液ポンプ120、122のスピードを変動させて、負荷130に対して十分なパワーを提供するために使用することができる。例えば、半セル106、108に入るアノード液/カソード液112、114が、測定または推定されたAOSまたはSOCにより示されるように、より低い充電を有することを時間的エネルギープロファイルが示唆する場合には、アノード液/カソード液ポンプ120、122のポンプ供給スピードを増加させることができる。ポンプ供給スピードはまた、負荷130により引き出されているパワーの量に基づき変化させることができる。
【0118】
図22は、アノード液またはカソード液の時間的エネルギープロファイルを作成するために、アノード液112またはカソード液114のAOSまたはSOC(またはAOSまたはSOCを示す量のもの)の測定、決定、または推定を促進させるための、測定を行うための1種または複数の状態測定デバイス123を含むレドックスフロー電池配置を例示している。例えば、状態測定デバイス123は、アノード液またはカソード液の電圧、アノード液112またはカソード液114の活性種の濃度(例えば、Cr
3+、Cr
2+、Fe
3+、またはFe
2+)を分光器などにより測定することができる。
図22は、状態測定デバイス123の位置の例を例示しているが、このような状態測定デバイスは、これらに限定されないが、半セル106、108に入る前またはそれから離れた後のアノード液112またはカソード液114を含めて、アノード液112またはカソード液114の流れの経路に沿ってどこにでも配置できることを理解されたい。
少なくとも一部の実施形態では、アノード液112またはカソード液114のみの測定を行うために状態測定デバイス123が配置される。このような配置は、アノード液/カソード液の平衡が維持された場合、最も良く作用し得る。
【0119】
少なくとも一部の実施形態では、時間的エネルギープロファイルは、
図22に例示されているように、充電測定デバイス127を使用して、充電源132により供給されるパワーの断続的、周期的、または連続的な測定により得られる時間的充電プロファイルを使用して少なくとも部分的に決定または推定することができる。最後の一部の実施形態では、充電プロファイルは、アノード液/カソード液ポンプ120、122の同時ポンプ供給スピードと組み合わせて、アノード液/カソード液112、114の時間的エネルギープロファイルを得ることができる。少なくとも一部の実施形態では、充電または放電電流はレドックスフロー電池作動中に連続的に記録される。これは、例えば、実際のポンプ供給速度および測定されたOCV(例えば、半セルを出入りするアノード液/カソード液のOCV)と組み合わせて、時間的充電プロファイルを作成することができる。
【0120】
少なくとも一部の実施形態では、コントローラー128は、状態測定デバイス123または充電測定デバイス127からの測定を受け取る。少なくとも一部の実施形態では、コントローラー128は、時間的エネルギープロファイルまたは時間的充電プロファイルまたはこれらのいずれかの組合せを決定し、計算し、記録し、または保存する。少なくとも一部の実施形態では、時間的エネルギープロファイルに基づき、コントローラー128は、アノード液またはカソード液ポンプ120、122のポンプ供給スピードを変動させる。ポンプ供給速度はまた、断続的、定期的、または連続的に記録され得る。少なくとも一部の実施形態では、ポンプ供給速度は、ポンプのパワー消費または実際の流速測定を使用して決定することができる。
【0121】
コントローラー128は少なくとも1種のプロセス129および少なくとも1種のメモリー131を含むことができる。コントローラー128は、ユーザーに対してローカルであってよいし、またはユーザーもしくはコンピューターの他の構成要素に対して非ローカルであってよい1種または複数のハードウエアプロセッサーを含むいずれか適切なプロセッサー129を利用することができる。プロセッサー129は、以下に記載されているように、プロセッサーに提供された命令を実行するように構成されている。
【0122】
いずれかの適切なメモリー131をコントローラー128に対して使用することができる。メモリー131は、ある種類のコンピューター可読媒体、すなわちコンピューター可読記憶媒体を例示している。コンピューター可読記憶媒体は、これらに限定されないが、情報の保存のためのいずれかの方法または技術で導入された不揮発性、非一時的、除去可能、および除去不可能な媒体、例えば、コンピューター可読命令、データ構造、プログラムモジュール、または他のデータを含むことができる。コンピューター可読記憶媒体の例として、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリー、または他のメモリー技術、CD-ROM、デジタル多目的ディスク(「DVD」)または他の光学記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク貯蔵または他の磁気記憶デバイス、クラウドストレージ、または所望の情報を保存するために使用することができ、プロセッサーによりアクセスできる他のいずれかの媒体が挙げられる。
【0123】
図23は、レドックスフロー電池システム、例えば、
図22のレドックスフロー電池システム100を作動する一実施形態を例示している。ステップ2302では、状態測定デバイス123を使用して、半セル106または第2の半セル108にそれぞれ入る前またはそれから離れた後のアノード液112またはカソード液114の充電状態を示す値の測定を断続的、定期的、または連続的に行う。例えば、状態測定デバイス123はアノード液またはカソード液の開回路電圧の測定を行う。
代わりにまたはさらに、充電測定デバイス127は、充電源132により供給されるパワーを断続的、定期的、または連続的に測定するために使用される。
ステップ2304では、アノード液またはカソード液の時間的プロファイルが測定を使用して作成される。少なくとも一部の実施形態では、アノード液またはカソード液のAOSまたはSOCは、少なくとも1種の状態測定デバイスにより行われる測定から決定され、これを使用して、時間的エネルギープロファイルを作成する。少なくとも一部の実施形態ではまた、アノード液またはカソード液内での荷電種の拡散の推定を使用して、時間的エネルギープロファイルを作成する。
ステップ2306では、放電中、システムのコントローラー128は、時間的エネルギープロファイルに基づきアノード液/カソード液ポンプ120、122のポンプスピードを変動させて、負荷に対して必要とされるパワーを提供する。
【0124】
図22のレドックスフロー電池システムおよび
図23のレドックスフロー電池システムの作動の方法は、Fe-Crレドックス流電池に限定されず、これらに限定されないが、バナジウムレドックスフロー電池システム、バナジウム-臭素レドックスフロー電池システム、バナジウム-鉄レドックスフロー電池システム、亜鉛-臭素レドックスフロー電池システム、すべての鉄レドックスフロー電池システム、有機水性レドックスフロー電池システムなどを含む他のレドックスフロー電池システムに使用することができることを認識されたい。
【0125】
本明細書に記載されている方法、システム、およびデバイスは、多くの異なる形態で実施形態化されてもよく、本明細書に記載の実施形態を限定すると解釈されるべきではない。したがって、本明細書に記載されている方法、システム、およびデバイスは、完全なハードウエアの実施形態、完全なソフトウエアの実施形態またはソフトウエアおよびハードウエア態様を組み合わせた実施形態の形態を取ることができる。したがって、以下の詳細な説明は、限定する意味でとらえてはならない。本明細書に記載されている方法は、いずれかの種類のプロセッサーおよびプロセッサーを含むいずれかの適切な種類のデバイスを使用して実施することができる。
【0126】
フローチャートの例示の各ブロック、および本明細書中に開示されているフローチャートの例示および方法におけるブロックの組合せはコンピュータープログラム命令により導入することができることを理解されたい。これらのプログラム命令は、プロセッサーに提供されて、機器を生成することができる、これによって、プロセッサー上で実行される命令が、本明細書で開示されているフローチャートブロックに特定された動作を実行するための手段を作り出すようになっている。コンピュータープログラム命令は、プロセッサーにより実行されて、一連の作業ステップをプロセッサーにより実施させて、コンピューターにより導入されたプロセスを生成することができる。コンピュータープログラム命令はまた、作業ステップの少なくとも一部を並行して実施させることができる。さらにステップの一部もまた、例えば、マルチプロセッサーコンピューターシステムにおいて生じ得るような1つより多くのプロセッサー全域にわたり実施することができる。加えて、1種または複数のプロセスはまた、他のプロセスと並行的に実施することができ、または、本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく、例示された配列とは異なる配列でも実施することができる。
【0127】
コンピュータープログラム命令は、これらに限定されないが、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリーまたは他のメモリー技術、CD-ROM、デジタル多目的ディスク(「DVD」)または他の光学記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク貯蔵もしくは他の磁気記憶デバイス、または所望の情報を保存するために使用することができ、プロセッサーにより入手できる他のいずれかの媒体(コンピューターに対してローカルであっても、または非ローカルであってもよい)を含めたいずれか適切なコンピューター読取り可能媒体に貯蔵することができる。
【0128】
上記明細書は、本発明の製造および使用の説明を提供する。本発明の多くの実施形態は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく作製することができるので、本発明はまた、本明細書でこれより以下に添付される特許請求の範囲に属する。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕レドックスフロー電池システムであって、
溶液中にクロムイオンを含むアノード液であって、前記クロムイオンの少なくとも一部分が、以下のうちの少なくとも1種:NH
3
、NH
4
+
、CO(NH
2
)
2
、SCN
-
、またはCS(NH
2
)
2
とクロム錯体を形成するアノード液、
溶液中に鉄イオンを含むカソード液、
前記アノード液と接触している第1の電極を含む第1の半セル、
前記カソード液と接触している第2の電極を含む第2の半セル、および
前記第1の半セルを前記第2の半セルから分離している第1の分離体
を含む、レドックスフロー電池システム。
〔2〕前記クロム錯体が、式[Cr
3+
(J)
x
(M)
y
(H
2
O)
z
]
(式中、x、y、およびzは負ではない整数であり、x+y+z=6であり、xは少なくとも1であり、
Jは、NH
3
、NH
4
+
、CO(NH
2
)
2
、SCN
-
、またはCS(NH
2
)
2
からなる群から選択され、
各MはJとは異なり、独立して、Cl
-
、F
-
、Br
-
、I
-
、NH
4
+
、NH
3
、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、CN
-
、SCN
-
、S
2-
、O-NO
2
-
、OH
-
、NO
2
-
、CH
3
CN、C
5
H
5
N、NC
5
H
4
-C
5
H
4
N、C
12
H
8
-N
2
、CO(NH
2
)
2
、CS(NH
2
)
2
、P(C
6
H
5
)
3
、-CO、CH
3
-CO-CH
2
-CO-CH
3
、NH
2
-CH
2
-CH
2
-NH
2
、NH
2
CH
2
COO
-
、O-SO
2
2-
、またはP(o-トリル)
3
からなる群から選択される)
を有する化合物またはイオンを含む、前記〔1〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔3〕JがNH
3
またはNH
4
+
であり、少なくとも1つのMがCO(NH
2
)
2
である、前記〔2〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔4〕前記クロム錯体が、アンモニウム、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、フッ化物イオン、硫酸イオン、または硝酸イオンからなる群から選択される少なくとも1つの対イオンをさらに含む、前記〔2〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔5〕JがNH
3
またはNH
4
+
である、前記〔2〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔6〕JがCO(NH
2
)
2
またはCS(NH
2
)
2
である、前記〔2〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔7〕前記クロム錯体がインサイチュで形成される、前記〔1〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔8〕溶液中にバナジウムイオンを含む平衡電解質、
前記アノード液または前記カソード液と接触している第3の電極を含む第3の半セル、
前記平衡電解質と接触している第4の電極を含む第4の半セル、および
ジオキソバナジウムイオンを還元するための前記平衡電解質内のまたは前記平衡電解質に導入可能な還元剤
を含む平衡配置
をさらに含む、前記〔1〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔9〕前記還元剤がNH
3
、NH
4
+
、CO(NH
2
)
2
、またはCS(NH
2
)
2
である、前記〔8〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔10〕前記還元剤が有機化合物である、前記〔8〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔11〕NH
3
、NH
4
+
、CO(NH
2
)
2
、SCN
-
、またはCS(NH
2
)
2
から選択される少なくとも1種の窒素含有化合物を有する溶液中にクロムイオンを含むアノード液、
溶液中に鉄イオンを含むカソード液、
前記アノード液と接触している第1の電極を含む第1の半セル、
前記カソード液と接触している第2の電極を含む第2の半セル、および
前記第1の半セルを前記第2の半セルから分離している第1の分離体
を含む、レドックスフロー電池システム。
〔12〕前記窒素含有化合物がNH
3
であるかまたはNH
4
+
を含む、前記〔11〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔13〕前記窒素含有化合物がCO(NH
2
)
2
またはCS(NH
2
)
2
である、前記〔11〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔14〕前記クロムイオンの少なくとも一部分が、以下のうちの少なくとも1種:NH
3
、NH
4
+
、CO(NH
2
)
2
、SCN
-
、またはCS(NH
2
)
2
とクロム錯体を形成する、前記〔11〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔15〕前記クロム錯体が、式[Cr
3+
(J)
x
(M)
y
(H
2
O)
z
]
(式中、x、y、およびzは負ではない整数であり、x+y+z=6であり、xは少なくとも1であり、
JはNH
3
、NH
4
+
、CO(NH
2
)
2
、SCN
-
、またはCS(NH
2
)
2
からなる群から選択され、
各MはJとは異なり、独立して、Cl
-
、F
-
、Br
-
、I
-
、NH
4
+
、NH
3
、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、CN
-
、SCN
-
、S
2-
、O-NO
2
-
、OH
-
、NO
2
-
、CH
3
CN、C
5
H
5
N、NC
5
H
4
-C
5
H
4
N、C
12
H
8
-N
2
、CO(NH
2
)
2
、CS(NH
2
)
2
、P(C
6
H
5
)
3
、-CO、CH
3
-CO-CH
2
-CO-CH
3
、NH
2
-CH
2
-CH
2
-NH
2
、NH
2
CH
2
COO
-
、O-SO
2
2-
、またはP(o-トリル)
3
からなる群から選択される)
を有する化合物またはイオンを含む、前記〔11〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔16〕JがNH
3
またはNH
4
+
であり、少なくとも1つのMがCO(NH
2
)
2
である、前記〔15〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔17〕JがNH
3
またはNH
4
+
である、前記〔15〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔18〕溶液中にバナジウムイオンを含む平衡電解質、
前記アノード液または前記カソード液と接触している第3の電極を含む第3の半セル、
前記平衡電解質と接触している第4の電極を含む第4の半セル、および
ジオキソバナジウムイオンを還元するための前記平衡電解質内のまたは前記平衡電解質に導入可能な還元剤
を含む平衡配置
をさらに含む、前記〔11〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔19〕前記還元剤がNH
3
、NH
4
+
、CO(NH
2
)
2
、またはCS(NH
2
)
2
である、前記〔18〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔20〕前記還元剤が有機化合物である、前記〔18〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔21〕レドックスフロー電池のための電解質の調製のための方法であって、
炭素源を使用して、クロム鉱石を還元することによって、前記クロム鉱石を、炭素粒子を有する鉄/クロム合金に変換するステップ、
炭素粒子を有する前記鉄/クロム合金を硫酸に溶解して、第1の溶液を形成するステップ、
塩化カルシウムまたは塩化バリウムを前記第1の溶液に加えて、FeCl
3
およびCrCl
3
を含む第2の溶液を生成するステップ、ならびに
酸を前記第2の溶液に加えて、前記電解質を形成するステップ
を含む、方法。
〔22〕前記クロム鉱石が、少なくとも1種の金属不純物を含み、本方法が、
前記レドックスフロー電池の電極を使用して、前記電解質中で前記少なくとも1種の金属不純物を還元して、前記少なくとも1種の金属不純物の粒子を形成するステップ、
前記少なくとも1種の金属不純物の粒子を収集するステップ、および
クリーニング溶液を使用して、前記収集した粒子を除去するステップ
をさらに含む、前記〔21〕に記載の方法。
〔23〕前記粒子を収集するステップが、前記レドックスフロー電池システムの電極上の前記粒子の少なくとも一部分を収集することを含む、前記〔22〕に記載の方法。
〔24〕前記電極が、前記粒子の収集のための交互嵌合された開口またはへこみを含む、前記〔23〕に記載の方法。
〔25〕前記少なくとも1種の金属不純物が、ニッケル、アンチモン、ビスマス、亜鉛、白金、パラジウム、金、または銅のうちの少なくとも1種を含む、前記〔22〕に記載の方法。
〔26〕前記クリーニング溶液が第二鉄イオンを含む、前記〔22〕に記載の方法。
〔27〕前記クリーニング溶液が前記レドックスフロー電池システムのカソード液の少なくとも一部分である、前記〔22〕に記載の方法。
〔28〕前記クリーニング溶液が過酸化水素または塩化第二鉄を含む、前記〔22〕に記載の方法。
〔29〕前記炭素源がグラファイト、活性炭、石炭、木炭、または一酸化炭素気体を含む、前記〔21〕に記載の方法。
〔30〕FeCl
3
またはCrCl
3
を加えて、前記電解質内でのFeCl
3
/CrCl
3
の予め選択した比を得るステップをさらに含む、前記〔21〕に記載の方法。
〔31〕レドックスフロー電池のための電解質の調製のための方法であって、
クロム廃棄物をHClまたはH
2
SO
4
中に溶解して、CrCl
3
またはCr
2
(SO
4
)
3
および少なくとも1種の金属不純物をそれぞれ含む電解質を生成するステップ、
前記レドックスフロー電池の電極を使用して、前記電解質中で少なくとも1種の金属不純物を還元して、前記少なくとも1種の金属不純物の粒子を形成するステップ、
前記少なくとも1種の前記金属不純物の粒子を収集するステップ、ならびに
クリーニング溶液を使用して、前記収集した粒子を除去するステップ
を含む、方法。
〔32〕前記粒子を収集するステップが、前記レドックスフロー電池システムの電極上の前記粒子の少なくとも一部分を収集することを含む、前記〔31〕に記載の方法。
〔33〕前記電極が、前記粒子の収集のための、交互嵌合された開口またはへこみを含む、前記〔32〕に記載の方法。
〔34〕前記少なくとも1種の金属不純物が、ニッケル、アンチモン、ビスマス、亜鉛、白金、パラジウム、金、または銅のうちの少なくとも1種を含む、前記〔31〕に記載の方法。
〔35〕前記クリーニング溶液が第二鉄イオンを含む、前記〔31〕に記載の方法。
〔36〕前記クリーニング溶液が前記レドックスフロー電池システムのカソード液の少なくとも一部分である、前記〔31〕に記載の方法。
〔37〕前記クリーニング溶液が過酸化水素または塩化第二鉄を含む、前記〔31〕に記載の方法。
〔38〕FeCl
2
、Fe+FeCl
3
、Fe(OH)
2
、またはFe+Fe(OH)
3
を加えて、電解質内でのFeCl
3
/CrCl
3
の予め選択した比を得るステップをさらに含む、前記〔31〕に記載の方法。
〔39〕前記クロム廃棄物がCr(OH)
3
を含む、前記〔31〕に記載の方法。
〔40〕水素気体の生成のための方法であって、
溶液中にクロムイオンを含むアノード液、溶液中に鉄イオンを含むカソード液、前記アノード液と接触している第1の電極を含む第1の半セル、前記カソード液と接触している第2の電極を含む第2の半セル、および前記第1の半セルを前記第2の半セルから分離している第1の分離体を含むレドックスフロー電池を提供するステップ、
電解セルを前記レドックスフロー電池に連結するステップであって、前記電解セルが第3および第4の電極ならびに水を含むステップ、
前記レドックスフロー電池を前記電解セルに放電して、前記電解セル内での前記水の電解により水素気体を生成するステップ、
前記電解セルから前記水素気体を除去するステップ、ならびに
前記水素気体を容器内に貯蔵するステップ
を含む、方法。
〔41〕アノード液、
カソード液、
前記アノード液と接触している第1の電極を含む第1の半セル、
前記カソード液と接触している第2の電極を含む第2の半セル、
前記第1の半セル中の前記アノード液を、前記第2の半セル中の前記カソード液から分離している分離体、
前記第1の半セルまたは第2の半セルにそれぞれ入る前またはそれから離れた後の前記アノード液または前記カソード液の充電状態を示す値の測定を断続的、定期的、または連続的に行うように構成された少なくとも1種の状態測定デバイス、および
前記測定を使用して、前記アノード液または前記カソード液の時間的エネルギープロファイルをそれぞれ作成するための、前記少なくとも1種の状態測定デバイスに連結したコントローラー
を含む、レドックスフロー電池システム。
〔42〕前記少なくとも1種の状態測定デバイスが、前記第1の半セルに入る前またはそれから離れた後の前記アノード液の充電状態を示す値の測定を断続的、定期的、または連続的に行うように構成されたアノード液の状態測定デバイス、および前記第2の半セルに入る前またはそれから離れた後の前記カソード液の充電状態を示す値の測定を断続的、定期的、または連続的に行うように構成されたカソード液の状態測定デバイスを含む、前記〔41〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔43〕アノード液を前記第1の半セルに出し入れするポンプ供給を行うように構成されたアノード液ポンプ、およびカソード液を前記第2の半セルに出し入れするポンプ供給を行うように構成されたカソード液ポンプをさらに含む、前記〔41〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔44〕前記コントローラーが、前記時間的エネルギープロファイルを使用して、前記アノード液およびカソード液ポンプのポンプ供給スピードを変動させるように構成されている、前記〔43〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔45〕前記少なくとも1種の状態測定デバイスが前記アノード液またはカソード液の電圧を測定するように構成されている、前記〔41〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔46〕前記コントローラーが、前記少なくとも1種の状態測定デバイスにより行われた測定から前記アノード液またはカソード液の充電状態を決定し、前記充電状態を前記時間的エネルギープロファイルにおいて使用するように構成されている、前記〔41〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔47〕前記コントローラーが、前記少なくとも1種の状態測定デバイスにより行われた測定から前記アノード液またはカソード液の平均酸化状態を決定し、前記平均酸化状態を前記時間的エネルギープロファイルにおいて使用するように構成されている、前記〔41〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔48〕前記コントローラーが、前記測定および前記アノード液またはカソード液内での荷電種の拡散の推定を使用して、前記時間的エネルギープロファイルを作成するように構成されている、前記〔41〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔49〕前記〔41〕に記載のレドックスフロー電池システムを作動する方法であって、
前記第1の半セルまたは第2の半セルにそれぞれ入る前またはそれから離れた後の前記アノード液または前記カソード液の充電状態を示す値の測定を断続的、定期的、または連続的に行うステップ、および
前記測定を使用して、前記アノード液または前記カソード液の時間的エネルギープロファイルをそれぞれ作成するステップ
を含む、方法。
〔50〕前記レドックスフロー電池システムが、アノード液を前記第1の半セルに出し入れするポンプ供給を行うように構成されたアノード液ポンプ、およびカソード液を前記第2の半セルに出し入れするポンプ供給を行うように構成されたカソード液ポンプをさらに含み、
本方法が前記時間的エネルギープロファイルを使用して、前記アノード液およびカソード液ポンプのポンプ供給スピードを変動させるステップをさらに含む、前記〔49〕に記載の方法。
〔51〕測定を行うことが、前記アノード液またはカソード液の電圧の測定を行うことを含む、前記〔49〕に記載の方法。
〔52〕前記時間的エネルギープロファイルを作成することが、前記少なくとも1種の状態測定デバイスにより行われた測定から前記アノード液またはカソード液の充電状態を決定すること、および前記充電状態を前記時間的エネルギープロファイルにおいて使用することを含む、前記〔49〕に記載の方法。
〔53〕前記時間的エネルギープロファイルを作成することが、前記少なくとも1種の状態測定デバイスにより行われた測定から前記アノード液またはカソード液の平均酸化状態を決定すること、および前記平均酸化状態を前記時間的エネルギープロファイルにおいて使用することを含む、前記〔49〕に記載の方法。
〔54〕前記時間的エネルギープロファイルを作成することが、前記測定および前記アノード液またはカソード液内での荷電種の拡散の推定を使用して、前記時間的エネルギープロファイルを作成することを含む、前記〔49〕に記載の方法。
〔55〕前記〔1〕に記載のレドックスフロー電池システムを作動するためのプロセッサー実行可能命令を有する非一時的コンピューター可読記憶媒体であって、前記プロセッサー実行可能命令が、デバイスに組み込まれた場合、前記デバイスが動作を実施することを可能にし、前記動作が、
前記第1の半セルまたは第2の半セルにそれぞれ入る前またはそれから離れた後の前記アノード液または前記カソード液の充電状態を示す値の測定を断続的、定期的、または連続的に行うこと、および
前記測定を使用して、前記アノード液または前記カソード液の時間的エネルギープロファイルをそれぞれ作成すること
を含む、非一時的コンピューター可読記憶媒体。
〔56〕前記動作が、前記時間的エネルギープロファイルを使用して、前記レドックスフロー電池システムのアノード液およびカソード液ポンプのポンプ供給スピードを変動させることをさらに含む、前記〔55〕に記載の非一時的コンピューター可読記憶媒体。
〔57〕測定を行うことが、前記アノード液またはカソード液の電圧の測定を行うことを含む、前記〔55〕に記載の非一時的コンピューター可読記憶媒体。
〔58〕前記時間的エネルギープロファイルを作成することが、前記少なくとも1種の状態測定デバイスにより行われた前記測定から前記アノード液またはカソード液の充電状態または平均酸化状態を決定すること、および前記充電状態または平均酸化状態を前記時間的エネルギープロファイルにおいて使用することを含む、前記〔55〕に記載の非一時的コンピューター可読記憶媒体。
〔59〕前記時間的エネルギープロファイルを作成することが、前記測定および前記アノード液またはカソード液内での拡散の推定を使用して、前記時間的エネルギープロファイルを作成することを含む、前記〔55〕に記載の非一時的コンピューター可読記憶媒体。
〔60〕アノード液、
カソード液、
前記アノード液と接触している第1の電極を含む第1の半セル、
前記カソード液と接触している第2の電極を含む第2の半セル、
前記第1の半セル中の前記アノード液を、前記第2の半セル中の前記カソード液から分離している分離体、
充電源により供給されるパワーの測定を断続的、定期的、または連続的に行うように構成された少なくとも1種の充電測定デバイス、および
前記測定を使用して、前記アノード液または前記カソード液の時間的エネルギープロファイルをそれぞれ作成するための、前記少なくとも1つの充電測定デバイスに連結したコントローラー
を含む、レドックスフロー電池システム。
〔61〕レドックスフロー電池システムであって、
アノード液、
カソード液、
前記アノード液の少なくとも一部分を保持するように構成されているアノード液タンク、
前記カソード液の少なくとも一部分を保持するように構成されているカソード液タンク、
第1次レドックスフロー電池配置であって、
前記アノード液と接触している第1の電極を含む第1の半セル、
前記カソード液と接触している第2の電極を含む第2の半セル、
前記第1の半セルを前記第2の半セルから分離している第1の分離体、
前記第1の半セルと前記アノード液タンクとの間に前記アノード液を移動するように構成されている第1のアノード液ポンプ、および
前記第2の半セルと前記カソード液タンクとの間に前記カソード液を移動するように構成されている第1のカソード液ポンプ
を含む第1次レドックスフロー電池配置、ならびに
第2次レドックスフロー電池配置であって、
前記アノード液と接触している第3の電極を含む第3の半セル、
前記カソード液と接触している第4の電極を含む第4の半セル、
前記第3の半セルを前記第4の半セルから分離している第2の分離体、
前記第3の半セルと前記アノード液タンクとの間に前記アノード液を移動するように構成されている第2のアノード液ポンプ、および
前記第4の半セルと前記カソード液タンクとの間に前記カソード液を移動するように構成されている第2のカソード液ポンプ
を含む第2次レドックスフロー電池配置
を含み、
前記第2次レドックスフロー電池配置のピークパワー送達能力が、前記第1次レドックスフロー電池配置のピークパワー送達能力より低い、レドックスフロー電池システム。
〔62〕前記第1次レドックスフロー電池配置および前記第2次レドックスフロー電池配置に連結したコントローラーをさらに含む、前記〔61〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔63〕前記コントローラーが、放電パワーが第1の予め定義したレベル未満の範囲に入った場合、前記第1次レドックスフロー電池配置の作動から、前記第2次レドックスフロー電池の作動へと切り替えるように構成されている、前記〔62〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔64〕前記コントローラーが、放電パワーが第2の予め定義したレベルを超えた場合、前記第2次レドックスフロー電池配置の作動から、前記第1次レドックスフロー電池の作動へと切り替えるように構成されている、前記〔63〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔65〕前記第1の予め定義したレベルおよび前記第2の予め定義したレベルが同じである、前記〔64〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔66〕前記第2の予め定義したレベルが前記第1の予め定義したレベルより大きい、前記〔64〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔67〕前記コントローラーが、放電パワーが第3の予め定義したレベルを超えた場合、前記第2次レドックスフロー電池配置の作動を前記第1次レドックスフロー電池の作動に加えるように構成されている、前記〔62〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔68〕前記第2次レドックスフロー電池配置のピークパワー送達能力の、前記第1次レドックスフロー電池配置のピークパワー送達能力に対する比が1:5~1:200の範囲である、前記〔62〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔69〕第1の表面および前記第1の表面の反対側の第2の表面を有する第1の非導電性基材を含む第1の電極構造をさらに含み、前記第1の分離体、および前記第1の非導電性基材を介して延びる第1の導電素子を含み、前記第1の非導電性基材が前記第1の非導電性基材を介したアノード液およびカソード液の流れに抵抗し、前記第1の導電素子のそれぞれが前記第1の非導電性基材の第1の表面に曝露された第1の末端部分および前記第1の非導電性基材の第2の表面に曝露された第2の末端部分を含み、前記第1の電極が、前記第1の非導電性基材の第1の表面上に配置され、前記第2の電極が前記第1の非導電性基材の第2の表面上に配置され、前記第1の電極が前記第1の導電素子の前記第1の末端部分を含み、前記第2の電極が前記第1の導電素子の前記第2の末端部分を含む、前記〔61〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔70〕第1の表面および前記第1の表面の反対側の第2の表面を有する第2の非導電性基材を含む第2の電極構造をさらに含み、前記第2の分離体、および前記第2の非導電性基材を介して延びる第2の導電素子を含み、前記第2の非導電性基材が前記第2の非導電性基材を介したアノード液およびカソード液の流れに抵抗し、前記第2の導電素子のそれぞれが前記第2の非導電性基材の第1の表面に曝露された第1の末端部分および前記第2の非導電性基材の第2の表面に曝露された第2の末端部分を含み、前記第3の電極が、前記第2の非導電性基材の第1の表面上に配置され、前記第4の電極が前記第2の非導電性基材の第2の表面上に配置され、前記第3の電極が前記第2の導電素子の前記第1の末端部分を含み、前記第4の電極が前記第2の導電素子の前記第2の末端部分を含む、前記〔69〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔71〕前記アノード液がクロムイオンを含み、前記クロムイオンの少なくとも一部分が、以下のうちの少なくとも1種:NH
3
、NH
4
+
、CO(NH
2
)
2
、SCN
-
、またはCS(NH
2
)
2
とクロム錯体を形成する、前記〔61〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔72〕溶液中にバナジウムイオンを含む平衡電解質、
前記アノード液または前記カソード液と接触している第5の電極を含む第5の半セル、
前記平衡電解質と接触している第6の電極を含む第6の半セル、および
ジオキソバナジウムイオンを還元するための前記平衡電解質内のまたは前記平衡電解質に導入可能な還元剤
を含む平衡配置
をさらに含む、前記〔61〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔73〕前記第2のアノード液ポンプおよび前記第2のカソード液ポンプが、前記第1のアノード液ポンプおよび前記第2のアノード液ポンプより低いポンプ供給能力を有する、前記〔61〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔74〕前記〔61〕に記載のレドックスフロー電池システムを作動する方法であって、
供給源を、前記第1次レドックスフロー電池配置または前記第2次レドックスフロー電池配置のうちの少なくとも1つに連結することにより、前記レドックスフロー電池システムを充電するステップ、および
負荷を、前記第1次レドックスフロー電池配置または前記第2次レドックスフロー電池配置のうちの少なくとも1つに連結することにより、前記レドックスフロー電池システムを放電するステップ
を含む、方法。
〔75〕前記放電するステップが、放電パワーが第1の予め定義したレベル未満の範囲に入った場合、前記第1次レドックスフロー電池配置の前記負荷への連結から、前記第2次レドックスフロー電池作動の前記負荷への連結へと切り替えることを含む、前記〔74〕に記載の方法。
〔76〕前記放電するステップが、放電パワーが第2の予め定義したレベルを超えた場合、前記第2次レドックスフロー電池配置の前記負荷への連結から、前記第1次レドックスフロー電池の前記負荷への連結へと切り替えることを含む、前記〔75〕に記載の方法。
〔77〕前記第1の予め定義したレベルおよび前記第2の予め定義したレベルが同じである、前記〔76〕に記載の方法。
〔78〕前記第2の予め定義したレベルが前記第1の予め定義したレベルより大きい、前記〔76〕に記載の方法。
〔79〕前記放電するステップが、放電パワーが第3の予め定義したレベルを超えた場合、前記第2次レドックスフロー電池配置と前記第1次レドックスフロー電池との両方を、前記負荷に連結することを含む、前記〔74〕に記載の方法。
〔80〕前記第2次レドックスフロー電池配置のピークパワー送達能力の、前記第1次レドックスフロー電池配置のピークパワー送達能力に対する比が1:5~1:200の範囲である、前記〔74〕に記載の方法。
〔81〕レドックスフロー電池システムであって、
アノード液、
カソード液、
第1の表面および前記第1の表面の反対側の第2の表面を有する基材、前記基材の前記第1の表面上に配置された第1の電極、前記基材の前記第2の表面上に配置された第2の電極、および前記基材を介して延びる導電素子を含む第1の電極構造であって、前記基材が、前記基材を介したアノード液およびカソード液の流れに抵抗し、前記導電素子のそれぞれが、前記基材の前記第1の表面に曝露された第1の末端部分および前記基材の前記第2の表面に曝露された第2の末端部分を含み、前記第1の電極が前記導電素子の前記第1の末端部分を含み、前記第2の電極が前記導電素子の前記第2の末端部分を含む、第1の電極構造、
前記第1の電極が前記アノード液と接触している第1の半セル、ならびに
前記第2の電極が前記カソード液と接触している第2の半セル
を含む、レドックスフロー電池システム。
〔82〕前記導電素子が、金属導線、炭素繊維、グラファイト繊維、または炭化ケイ素のうちの少なくとも1種を含む、前記〔81〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔83〕前記基材が、プラスチック、樹脂、炭素またはグラファイトプレート、または金属もしくは合金プレートのうちの少なくとも1種を含む、前記〔81〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔84〕前記基材が、ポリプロピレンまたはポリエチレンパーフルオロアルコキシアルカン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロ酢酸、ポリ塩化ビニル、または塩素化ポリ塩化ビニルを含む、前記〔81〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔85〕前記第1の電極または前記第2の電極のうちの少なくとも1つが追加の導電材料を含む、前記〔81〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔86〕前記追加の導電材料が、金属、炭素繊維、炭素フェルト、または炭化ケイ素を含む、前記〔85〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔87〕前記アノード液が溶液中にクロムイオンを含み、前記カソード液が溶液中に鉄イオンを含む、前記〔81〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔88〕前記アノード液が溶液中に鉄イオンをさらに含み、前記アノード液が溶液中にクロムイオンを含む、前記〔87〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔89〕平衡電解質、
第1の表面および前記第1の表面の反対側の第2の表面を有する基材、前記基材の前記第1の表面上に配置された第3の電極、前記基材の前記第2の表面上に配置された第4の電極、および前記基材を介して延びる導電素子を含む第2の電極構造であって、前記基材が、前記基材を介したアノード液およびカソード液の流れに抵抗し、前記導電素子のそれぞれが、前記基材の前記第1の表面に曝露された第1の末端部分および前記基材の前記第2の表面に曝露された第2の末端部分を含み、前記第3の電極が前記導電素子の前記第1の末端部分を含み、前記第4の電極が前記導電素子の前記第2の末端部分を含む、第2の電極構造、
前記アノード液または前記カソード液と接触している前記第3の電極を含む第3の半セル、および
前記平衡電解質と接触している前記第4の電極を含む第4の半セル
を含む平衡配置
をさらに含む、前記〔81〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔90〕前記平衡電解質が、溶液中にバナジウムイオンを含み、前記平衡配置がジオキソバナジウムイオンを還元するための前記平衡電解質内のまたは前記平衡電解質に導入可能な還元剤をさらに含む、前記〔81〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔91〕前記クロムイオンの少なくとも一部分が、以下のうちの少なくとも1種:NH
3
、NH
4
+
、CO(NH
2
)
2
、SCN
-
、またはCS(NH
2
)
2
と共にクロム錯体を形成する、前記〔81〕に記載のレドックスフロー電池システム。
〔92〕電極構造を作製する方法であって、
前記基材を介した電解質の流れに抵抗するように構成されている基材を提供するステップ、および
前記導電素子のそれぞれが、前記基材の第1の表面に曝露された第1の末端部分および前記基材の第2の表面に曝露された第2の末端部分を含むように、前記基材を介して複数の導電素子を延ばすステップであって、前記第1の電極が前記導電素子の前記第1の末端部分を含み、前記第2の電極が前記導電素子の前記第2の末端部分を含む、ステップ
を含む、方法。
〔93〕前記延ばすステップが、前記導電素子の部分周辺で前記基材を成型することを含む、前記〔92〕に記載の方法。
〔94〕前記延ばすステップが、前記基材を介して前記導電素子を押すことを含む、前記〔92〕に記載の方法。
〔95〕前記基材を加熱して、前記導電素子の周辺に前記基材を流すステップをさらに含む、前記〔94〕に記載の方法。
〔96〕追加の第1の導電材料を前記基材の前記第1の表面上に配置するステップをさらに含み、前記第1の電極が、前記追加の第1の導電材料をさらに含む、前記〔92〕に記載の方法。
〔97〕追加の第2の導電材料を前記基材の前記第2の表面上に配置するステップをさらに含み、前記第2の電極が前記追加の第2の導電材料をさらに含む、前記〔96〕に記載の方法。
〔98〕前記〔81〕に記載のレドックスフロー電池システムを作動する方法であって
供給源を前記第1および第2の電極に連結することにより、前記レドックスフロー電池システムを充電するステップ、ならびに
負荷を前記第1および第2の電極に連結することにより、前記レドックスフロー電池システムを放電するステップ
を含む、方法。
〔99〕前記アノード液が溶液中にクロムイオンを含み、前記カソード液が溶液中に鉄イオンを含む、前記〔98〕に記載の方法。
〔100〕前記アノード液が溶液中に鉄イオンをさらに含み、前記アノード液が溶液中にクロムイオンを含む、前記〔99〕に記載の方法。