(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】子宮内膜を模倣するための三次元生体模倣チップ、及びそれを利用した子宮内膜模倣方法
(51)【国際特許分類】
C12M 3/00 20060101AFI20240422BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20240422BHJP
【FI】
C12M3/00 A
C12N5/071
(21)【出願番号】P 2022579672
(86)(22)【出願日】2021-06-23
(86)【国際出願番号】 KR2021007860
(87)【国際公開番号】W WO2021261902
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】10-2020-0076780
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519137394
【氏名又は名称】チャ ユニバーシティ インダストリー-アカデミック コオペレーション ファンデーション
(73)【特許権者】
【識別番号】518018056
【氏名又は名称】スンクワン メディカル ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カン,ヤン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】アン,ジュン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ヨーン,ミン ジ
(72)【発明者】
【氏名】チャ,フイ ジェ
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ソン ファ
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】GNECCO Juan S. et al.,Compartmentalized Culture of Perivascular Stroma and Endothelial Cells in a Microfluidic Model of the Human Endometrium,Annals of Biomedical Engineering,2017年,vol. 45,p. 1758-1769
【文献】AHN Jungho et al.,Investigation on vascular cytotoxicity and extravascular transport of cationic polymer nanoparticles using perfusable 3D microvessel model,Acta Biomaterialia,2018年,vol. 76,p. 154-163
【文献】LI Wei-Xuan et al.,Artificial Uterus on a Microfluidic Chip,Chin J Anal Chem,2013年,vol. 41, no. 4,p. 467-472
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレートと、複数個のチャンバと、前記複数個のチャンバ間に配される複数個の
柱と、を含む子宮内膜を
模倣する三次元生体
模倣チップであり、
前記複数個のチャンバは、
内部に互いに異なる細胞が培養されるチャネルを具備し、前記プレート上に一方向に並んで配され、少なくとも一部区間が連通するように互いに隣接して配され
、かつ、
前記複数個のチャンバは、
第1培養チャネルを具備し、子宮内膜上皮細胞が培養される第1細胞培養チャンバと、
前記第1細胞培養チャンバの一側に配され、前記第1培養チャネルと連通する第2培養チャネルを具備し、子宮内膜線維芽細胞が培養される第2細胞培養チャンバと、
前記第2細胞培養チャンバの一側に配され、前記第2培養チャネルと連通する第1培養液チャネルを具備し、培養液が注入される第1培養液チャンバと、を含み、
子宮内膜上皮細胞及び
子宮内膜線維芽細胞が、それぞれ、前記第1細胞培養チャンバ及び前記第2細胞培養チャンバに注入され、第1期間が過ぎた後、
子宮血管内皮細胞が
前記第1培養液チャンバ内で培養され、かつ、
前記複数個の柱は、それぞれ、第1培養チャネルと、第2培養チャネルと、第1培養液チャネルとの間に配され、第1培養チャネルと、第2培養チャネルと、第1培養液チャネルとの間の境界を区画する、
前記生体
模倣チップ。
【請求項2】
前記第1培養チャネルと、前記第2培養チャネルと、前記第1培養液チャネルは、1つのボディによってなる、請求項
1に記載の生体
模倣チップ。
【請求項3】
前記第2細胞培養チャンバと対向するように、前記第1培養液チャンバの他側に配され、前記第1培養液チャネルと連通する第3培養チャネルを具備し、前記
子宮内膜線維芽細胞が培養される第3細胞培養チャンバをさらに含む、請求項
1に記載の生体
模倣チップ。
【請求項4】
前記第1培養液チャンバと対向するように、前記第1細胞培養チャンバの他側に配され、前記第1培養チャネルと連通する第2培養液チャネルを具備し、培養液が注入される第2培養液チャンバをさらに含む、請求項
1に記載の生体
模倣チップ。
【請求項5】
前記複数個の
柱は、
前記第1培養チャネルと前記第2培養チャネルとの境界に沿い、第1間隔に配される複数個の第1
柱と、
前記第2培養チャネルと前記第1培養液チャネルとの境界に沿い、第2間隔に配される複数個の第2
柱と、を含み、
前記第2間隔は、前記第1間隔より大きい、請求項
1に記載の生体
模倣チップ。
【請求項6】
前記複数個の
柱は、一面がふくらんでいる曲面を有する多角柱形状である、請求項
5に記載の生体
模倣チップ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の三次元生体模倣チップを用いて子宮内膜を三次元に
模倣する方法であり、
前記第1細胞培養チャンバにおいて、
子宮内膜上皮細胞を培養する段階と、
前記第2細胞培養チャンバにおいて、
子宮内膜線維芽細胞を培養する段階と、
前記第1培養液チャンバに培養液を注入する段階と、
第1期間後、前記第1培養液チャンバにおいて、
子宮血管内皮細胞を培養する段階を含む、子宮内膜
模倣方法。
【請求項8】
前記培養液を注入する段階前、第3細胞培養チャンバにおいて、前記
子宮内膜線維芽細胞を培養する段階をさらに含む、請求項
7に記載の子宮内膜
模倣方法。
【請求項9】
前記第1期間は、前記
子宮内膜線維芽細胞が、前記第2細胞培養チャンバにおいて、自己組み立てを行い、血管が、前記第1細胞培養チャンバでおいて生成される期間である、請求項
7に記載の子宮内膜
模倣方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体模倣チップに係り、さらに具体的には、子宮内膜を三次元に模倣することができる生体模倣チップと、それを利用し、子宮内膜を模倣する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体臓器模倣チップ(organ-on-a-chip)は、心臓、肺、肝臓のような生体臓器を模倣して作ったマイクロチップの一種であり、臓器を構成する細胞と、その周辺環境とを再現することにより、実際の臓器が作動するシステムを具現することができる。該生体臓器模倣チップは、模倣された生体臓器に薬物を投与することにより、薬物の安定性と、薬物伝達過程で起こる現象とを効果的に把握することができ、既存の前臨床新薬スクリーニング(screening)と比較したとき、実際の臓器が作動する生理環境を効果的に反映させることができる。また、該生体臓器模倣チップは、動物実験で生じる倫理的問題、過度な時間及びコスト、並びに不正確な結果を解決することができ、最近、注目されている。
【0003】
ここで、代表的な子宮難治性疾患のうち一つである子宮内膜症の場合、患者が、2013年の8万人から、2017年の12万人に35%以上増加し、難妊患者も、10年間に2.5倍増加するというように、子宮関連疾患が最近問題になっている。それにより、子宮と係わる疾病原因を研究することができる子宮前臨床プラットホームが要求される。しかしながら、従来の生体臓器模倣チップは、細胞培養を二次元で具現するか、あるいは特定細胞のみを考慮するために、実際の子宮の生物学的な構成と機能とを模倣するには不十分である。
【0004】
前述の背景技術は、発明者が本発明導出のために保有していたか、あるいは本発明の導出過程で習得した技術情報であり、必ずしも本発明の出願前に一般公衆に公開された公知技術とすることはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、実際の子宮組織の形態を物理的及び化学的に具現し、実際の子宮と生体類似性が高い生体模倣チップを提供することができる。
【0006】
また、本発明は、特定細胞に制限されるものではなく、複数種の細胞を生体模倣チップ装置で培養することにより、子宮組織の生理的機能を具現することができる生体模倣チップを提供することができる。
【0007】
また、本発明は、多層化された培養チャネルを介し、細胞が自ら組織を組み立てる環境を具現し、実際の子宮内環境と生理的類似性を高めることにより、実際の子宮の有機的特性を模倣することができる生体模倣チップを提供することができる。
ただし、それらは、一例であり、本発明の目的は、それらに限定されるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施例による生体模倣チップは、プレートと、複数個のチャンバと、前記複数個のチャンバ間に配される複数個の柱と、を含む子宮内膜を模倣する三次元生体模倣チップであり、前記複数個のチャンバは、内部に互いに異なる細胞が培養されるチャネルを具備し、前記プレート上に一方向に並んで配され、少なくとも一部区間が連通するように互いに隣接して配される。
【0009】
本発明の一実施例による生体模倣チップ装置において、前記複数個のチャンバは、第1培養チャネルを具備し、第1細胞が培養される第1細胞培養チャンバ、前記第1細胞培養チャンバの一側に配され、前記第1培養チャネルと連通する第2培養チャネルを具備し、第2細胞が培養される第2細胞培養チャンバ、及び前記第2細胞培養チャンバの一側に配され、前記第2培養チャネルと連通する第1培養液チャネルを具備し、培養液が注入される第1培養液チャンバを含むものでもある。
【0010】
本発明の一実施例による生体模倣チップ装置において、前記第1培養チャネルと、前記第2培養チャネルと、前記第1培養液チャネルは、1つのボディによってもなる。
【0011】
本発明の一実施例による生体模倣チップ装置において、前記第2細胞培養チャンバと対向するように、前記第1培養液チャンバの他側に配され、前記第1培養液チャネルと連通する第3培養チャネルを具備し、前記第2細胞が培養される第3細胞培養チャンバをさらに含むものでもある。
【0012】
本発明の一実施例による生体模倣チップ装置において、前記第1培養液チャンバと対向するように、前記第1細胞培養チャンバの他側に配され、前記第1培養チャネルと連通する第2培養液チャネルを具備し、培養液が注入される第2培養液チャンバをさらに含むものでもある。
【0013】
本発明の一実施例による生体模倣チップ装置において、前記第1培養液チャンバは、前記第1細胞及び前記第2細胞が、それぞれ前記第1細胞培養チャンバ及び前記第2細胞培養チャンバに注入され、第1期間が過ぎた後、第3細胞が注入されうる。
【0014】
本発明の一実施例による生体模倣チップ装置において、前記複数個の柱は、前記第1培養チャネルと前記第2培養チャネルとの境界に沿い、第1間隔に配される複数個の第1柱、及び前記第2培養チャネルと前記第1培養液チャネルの境界に沿い、第2間隔に配される複数個の第2柱を含み、前記第2間隔は、前記第1間隔よりも大きい。
本発明の一実施例による生体模倣チップ装置において、前記複数個の柱は、一面がふくらんでいる曲面を有する多角柱形状でもある。
【0015】
本発明の一実施例による生体模倣チップ装置において、前記細胞は、子宮内膜の特異的細胞である子宮内膜上皮細胞、子宮内膜線維芽細胞及び子宮血管内皮細胞のうち少なくともいずれか一つでもある。
【0016】
本発明の他の実施例による子宮内膜模倣方法は、一方向に並んで配され、互いに連通する複数個のチャンバに互いに異なる細胞を培養し、子宮内膜を三次元に模倣する方法であり、第1細胞培養チャンバにおいて、第1細胞を培養する段階、第2細胞培養チャンバにおいて、第2細胞を培養する段階、第1培養液チャンバに培養液を注入する段階、及び第1期間後、前記第1培養液チャンバにおいて、第3細胞を培養する段階を含むものでもある。
【0017】
本発明の他の実施例による子宮内膜模倣方法において、前記培養液を注入する段階前、第3細胞培養チャンバにおいて、前記第2細胞を培養する段階をさらに含むものでもある。
【0018】
本発明の他の実施例による子宮内膜模倣方法において、前記第1細胞は、子宮血管内皮細胞であり、前記第2細胞は、子宮内膜線維芽細胞であり、前記第3細胞は、子宮内膜上皮細胞でもある。
【0019】
本発明の他の実施例による子宮内膜模倣方法において、前記第1期間は、前記第2細胞が、前記第2細胞培養チャンバにおいて、自己組み立て(self-assembly)し、血管が、前記第1細胞培養チャンバで生成される期間でもある。
前述のところ以外の他の側面、特徴、利点は、以下の発明を実施するための具体的な内容、特許請求の範囲、及び図面から明確になるであろう。
【発明の効果】
【0020】
本発明による三次元生体模倣チップ及び子宮内膜模倣方法は、多層構造をなす複数個のチャンバに互いに異なる細胞を培養して子宮内膜を三次元に模倣することができる。
【0021】
また、本発明による三次元生体模倣チップ及び子宮内膜模倣方法は、子宮内膜特異的細胞(例えば、子宮内膜線維芽細胞、子宮内膜上皮細胞、子宮血管内皮細胞)を利用し、子宮内膜と生体類似性が高い生体模倣チップを提供することができる。
【0022】
また、三次元生体模倣チップ及び子宮内膜模倣方法は、各種子宮疾患を治療するための薬物実験に使用されうるか、患者オーダーメード型治療に使用されうる生体模倣チップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施例による三次元生体
模倣チップを示す図である。
【
図2】
図1のII-IIに沿って切り取った横断面を示す図である。
【
図4A】第1細胞を第1培養チャネルに投入した状態を示す図である。
【
図4B】第2細胞を第2培養チャネルに投入した状態を示す図である。
【
図4C】第2細胞を第3培養チャネルに投入した状態を示す図である。
【
図4D】第1細胞が第2細胞に向けて血管を生成し始めた状態を示す図である。
【
図4E】第1細胞の生成した血管が第2培養チャネルで成長し、第1培養液チャネルに第3細胞が投入された状態を示す図である。
【
図5】第1細胞が血管を生成する状態を示す図である。
【
図6】第1細胞培養チャンバと、第2細胞培養チャンバと、第3細胞培養チャンバとの組み合わせによる第1細胞の状態を示す図である。
【
図7A】
図6による第1細胞培養チャンバの血管面積を示す図である。
【
図7B】
図6による第2細胞培養チャンバの血管面積を示す図である。
【
図8】血管生成因子による血管生成状態を示す図である。
【
図9A】本発明の一実施例による生体
模倣チップを利用した細胞生存度実験を示す図である。
【
図9B】本発明の一実施例による生体
模倣チップを利用した、血管のリグレッション(regression)実験結果を示す図である。
【
図10A】子宮内膜上皮細胞の透過度テストを示す比較例である。
【
図10B】子宮内膜上皮細胞の透過度テストを示す発明例である。
【
図11A】比較例と発明例との子宮内膜上皮細胞の厚みを示す図である。
【
図12】薬物処理による蛍光物質の透過状態を示す図である。
【
図13】本発明を利用した胚芽着床テストを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施例による生体模倣チップは、プレートと、複数個のチャンバと、前記複数個のチャンバ間に配される複数個の柱と、を含む子宮内膜を模倣する三次元生体模倣チップであり、前記複数個のチャンバは、内部に互いに異なる細胞が培養されるチャネルを具備し、前記プレート上に一方向に並んで配され、少なくとも一部区間が連通するように互いに隣接して配される。
【0025】
本発明は、多様な変換を加えることができ、さまざまな実施例を有しうるが、特定実施例を図面に例示し、発明の説明によって詳細に説明する。しかしながら、それらは、本発明を、特定の実施例に限定するものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変換、均等物ないし代替物を含むと理解されなければならない。本発明の説明において、他の実施例に図示されているとしても、同一構成要素については、同一識別符号を使用する。
【0026】
第1、第2のような用語は、多様な構成要素の説明にも使用されるが、該構成要素は、用語によって限定されるものではない。該用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的だけに使用される。
【0027】
本出願で使用された用語は、単に特定実施例について説明するために使用されたものであり、本発明を限定する意図ではない。本出願において、「含む」または「有する」のような用語は、明細書上に記載された特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、またはそれらの組み合わせが存在することを指定するものであり、1またはそれ以上の他の特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、またはそれらの組み合わせたもの存在または付加の可能性を事前に排除するものではないと理解されなければならない。
以下、添付された図面に図示された本発明に係わる実施例を参照し、本発明について詳細に説明する。
【0028】
図1は、本発明の一実施例による子宮内膜を
模倣するための生体
模倣チップ10を示し、
図2は、
図1のII-IIに沿って切り取った横断面を示し、
図3は、
図2のIIIを拡大して示す。
【0029】
図1ないし
図3を参照すれば、本発明の一実施例による生体
模倣チップ10は、プレート100と、第1細胞培養チャンバ200と、第2細胞培養チャンバ300と、第1培養液チャンバ400と、を含むものでもある。
【0030】
プレート100は、後述するチャンバが配される領域を具備する。プレート100の形状は、特別に限定されるものではなく、平坦な形状を有すれば、十分である。一実施例として、プレート100は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)によってなり、四角平板形状を有しうる。
第1細胞培養チャンバ200は、内部において細胞が培養される部材であり、プレート100上に配される。
第1細胞培養チャンバ200は、第1培養チャネル210と、第1培養ブリッジ220と、第1細胞注入口230と、を含むものでもある。
【0031】
第1培養チャネル210は、プレート100上において、一方向(例えば、
図1のX軸方向)にも配される。第1培養チャネル210の高さは、特別に限定されるものではないが、後述するように、安定した胚芽の着床のために、250μmないし300μmでもある。第1培養チャネル210の内部には、第1細胞C1が培養されうる。それについては、後述する。
【0032】
第1培養ブリッジ220は、第1培養チャネル210の端部から、所定方向に延長される。一実施例として、第1培養ブリッジ220は、第1培養チャネル210の両端から延長される。第1培養ブリッジ220の延長される方向は、特別に限定されるものではないが、第1細胞培養チャンバ200と隣接するように配される第2細胞培養チャンバ300などから十分に離隔されることが望ましい。
一実施例として、第1培養ブリッジ220の幅は、第1培養チャネル210の幅よりも狭い。
【0033】
第1細胞注入口230は、第1培養ブリッジ220の端部と連結される。一実施例として、第1細胞注入口230は、それぞれの第1培養ブリッジ220と連結されるように、第1培養チャネル210の一端と他端とに配され、第1細胞C1が注入される貫通孔(図示せず)を具備することができる。注入された第1細胞C1は、第1培養ブリッジ220を経て、第1培養チャネル210の内部に移動することができる。
【0034】
第1細胞注入口230の形状は、特別に限定されるものではない。一実施例として、第1細胞注入口230は、第1培養チャネル210より高い高さを有する円柱形状でもある。
【0035】
第2細胞培養チャンバ300は、内部において細胞が培養される部材であり、プレート100上において、第1細胞培養チャンバ200と平行になるように、第1細胞培養チャンバ200の一側にも配される。一実施例として、第2細胞培養チャンバ300は、第1細胞培養チャンバ200と隣接するものの、そこから+Y軸方向にも配される。
第2細胞培養チャンバ300は、第2培養チャネル310と、第2培養ブリッジ320と、第2細胞注入口330と、を含むものでもある。
【0036】
第2培養チャネル310は、プレート100上において、一方向(例えば、
図1のX軸方向)にも配される。第2培養チャネル310の高さは、特別に限定されるものではないが、第1培養チャネル210と同一高さを有しうる。第2培養チャネル310の内部には、第2細胞C2が培養されうる。一実施例として、第2細胞C2は、血管新生促進因子を生成することができる。それについては、後述する。
【0037】
第2培養チャネル310は、第1培養チャネル210と連通しうる。一実施例として、
図2に示されているように、第1培養チャネル210と第2培養チャネル310との境界は、開放されており、境界に沿い、後述する第1
柱510が複数個配されうる。
【0038】
第2培養ブリッジ320は、第2培養チャネル310の端部から、所定方向にも延長される。第2細胞注入口330は、第2培養ブリッジ320と連結され、第2細胞C2が注入されうる。注入された第2細胞C2は、第2培養ブリッジ320を経て、第2培養チャネル310の内部に移動することができる。
【0039】
第2培養ブリッジ320と第2細胞注入口330との残り構成は、第1培養ブリッジ220及び第1細胞注入口230の構成と同一でもあり、それに係わる詳細な説明は、省略する。
【0040】
第1培養液チャンバ400は、培養液が注入される部材であり、プレート100上において、第1細胞培養チャンバ200及び/または第2細胞培養チャンバ300と平行になるように、第2細胞培養チャンバ300の一側にも配される。一実施例として、第1培養液チャンバ400は、第2細胞培養チャンバ300と隣接するものの、そこから+Y軸方向にも配される。
第1培養液チャンバ400は、第1培養液チャネル410と、第1培養液ブリッジ420と、第1培養液注入口430と、を含むものでもある。
【0041】
第1培養液チャネル410は、プレート100上において、一方向(例えば、
図1のX軸方向)にも配される。第1培養液チャネル410の高さは、特別に限定されるものではないが、第1培養チャネル210と同一高さを有しうる。第1培養液チャネル410の内部には、第3細胞C3が培養されうる。それについては、後述する。
【0042】
第1培養液チャネル410は、第2培養チャネル310と連通しうる。一実施例として、
図2に示されているように、第2培養チャネル310と第1培養液チャネル410との境界は、開放されており、境界に沿い、後述する第2
柱520が複数個配されうる。
【0043】
第1培養液ブリッジ420は、第1培養液チャネル410の端部から、所定方向にも延長される。第1培養液注入口430は、第1培養液ブリッジ420と連結され、第1培養液チャネル410の両端にそれぞれ配されうる。第1培養液注入口430に注入された培養液は、第1培養液ブリッジ420を経て、第1培養液チャネル410の内部に移動することができる。
【0044】
一実施例として、第1培養チャネル210と、第2培養チャネル310と、第1培養液チャネル410は、互いに隣接するように配されるものの、一方向に並んで配されうる。
【0045】
それにより、本発明の一実施例による生体模倣チップ10は、それぞれ互いに異なる細胞が培養されるチャネル(チャンバ)が一方向に多層構造を形成することにより、身体、特に、子宮内膜を、生体に適して模倣することができる。
【0046】
一実施例として、第1培養チャネル210と、第2培養チャネル310と、第1培養液チャネル410は、共通する連通領域を形成することができる。さらに具体的には、
図2に示されているように、第1培養チャネル210と、第2培養チャネル310と、第1培養液チャネル410は、少なくとも一部区間を共有するように、チャネル間の境界が開放されうる。
【0047】
それにより、本発明の一実施例による生体模倣チップ10は、それぞれのチャネル(チャンバ)内において培養される互いに異なる細胞が互いに連結され、細胞ネックワークを具現することができる。従って、従来の二次元生体模倣装置に比べ、生体適合性が向上され、三次元で子宮内膜を模倣することができる生体模倣チップを提供することができる。
【0048】
一実施例として、第1細胞培養チャンバ200と、第2細胞培養チャンバ300と、第1培養液チャンバ400は、1つのボディをなすことができる。さらに具体的には、第1培養チャネル210と、第2培養チャネル310と、第1培養液チャネル410は、一体のボディに形成され、前記ボディから、第1培養ブリッジ220と、第2培養ブリッジ320と、第1培養液ブリッジ420が所定方向にも分岐される。
図2及び
図3を参照すれば、本発明の一実施例による生体
模倣チップ10は、
柱500をさらに含むものでもある。
【0049】
柱500は、チャンバ間の境界に沿い、複数個配されうる。さらに具体的には、第1細胞培養チャンバ200と第2細胞培養チャンバ300との間、及び/または第2細胞培養チャンバ300と第1培養液チャンバ400のと間に所定間隔にも配される。柱500は、チャンバとチャンバとの境界を区画しながら、所定間隔に配されることにより、チャンバで培養される細胞の間隔またはパターンを設定することができる。
【0050】
一実施例として、柱500間には、細胞外基質(extracellular matrix)が配されうる。微細な形状の柱500の外周面は、一種の疎水性パターンを形成するために、細胞外基質は、柱500間において、球形状にも存在しうる。一実施例として、細胞外基質として、ヒドロゲル(hydrogel)が利用されうる。
柱500は、第1柱510と、第2柱520と、を含むものでもある。
【0051】
第1
柱510は、第1細胞培養チャンバ200と第2細胞培養チャンバ300との境界に沿い、一方向(例えば、
図2のX軸方向)に複数個配されうる。第1
柱510の形状は、特別に限定されるものではなく、多角柱または円柱の形状を有しうる。一実施例として、第1
柱510の形状は、
図3の拡大図に示されているように、一面がふくらんでいる曲面である多角柱形状でもある。
【0052】
それにより、細胞が第2細胞培養チャンバ300に注入され、生体模倣チップ10をティルティングしたとき、細胞が第1柱510の曲面上をローリング(rolling)しながら、自然に第1柱510間にも配される。
【0053】
第1柱510の大きさは、特別に限定されるものではない。一実施例として、第1柱510の高さL1は、第1細胞培養チャンバ200及び第2細胞培養チャンバ300の高さと同一でもあり、250μmないし300μmでもある。また、第1柱510の上面または下面の最大長L2は、180μmないし200μmでもある。
第1柱510の間隔d1は、特別に限定されるものではなく、一実施例として、間隔d1は、長さL2と同一でもある。
【0054】
第2
柱520は、第2細胞培養チャンバ300と第1培養液チャンバ400との境界に沿い、一方向(例えば、
図2のX軸方向)に複数個配されうる。第2
柱520の大きさと形状は、第1
柱510の形状と同一でもあり、あるいは異なってもいる。
【0055】
それにより、後述するように、第1培養液チャンバ400を介し、胚芽(embryo)が注入され、生体模倣チップ10をティルティングしたとき、胚芽が、第2柱520の曲面上をローリングしながら、自然に第2柱520間にも配される。
【0056】
一実施例として、第2柱520の間隔d2は、第1柱510の間隔d1よりも大きい。さらに具体的には、第2柱520の間隔d2は、180μmないし200μmでもある。後述するように、第2柱520の間隔をより大きく確保することにより、胚芽を第2柱520間にさらに安定して着床させることができる。
【0057】
再び
図1及び
図2を参照すれば、本発明の一実施例による生体
模倣チップ10は、第3細胞培養チャンバ600と、第2培養液チャンバ700をさらに含むものでもある。
【0058】
第3細胞培養チャンバ600は、内部において細胞が培養される部材であり、プレート100上において、第1培養液チャンバ400と平行になるように、第1培養液チャンバ400の一側にも配される。一実施例として、第3細胞培養チャンバ600は、第1培養液チャンバ400を挟み、第2細胞培養チャンバ300と対向するように、第1培養液チャンバ400と隣接するものの、そこから+Y軸方向にも配される。
さらに具体的には、
図2に示されているように、第3細胞培養チャンバ600は、第1培養液チャンバ400によって取り囲まれるようにも配される。
第3細胞培養チャンバ600は、第3培養チャネル610と、第3培養ブリッジ620と、第3細胞注入口630と、を含むものでもある。
【0059】
第3培養チャネル610は、プレート100上において、一方向(例えば、
図1のX軸方向)にも配される。第3培養チャネル610の高さは、特別に限定されるものではないが、第1培養チャネル210と同一高さを有しうる。第3培養チャネル610の内部には、第1細胞C1が培養されうる。それについては、後述する。
【0060】
第3培養チャネル610は、第1培養液チャネル410と連通しうる。一実施例として、
図2に示されているように、第1培養液チャネル410と第3培養チャネル610との境界は、開放されており、後述する第3
柱530が、境界に沿って複数個配されうる。
【0061】
第3培養ブリッジ620は、第3培養チャネル610の端部から、所定方向にも延長される。第3細胞注入口630は、第3培養ブリッジ620と連結され、第1細胞C1が注入されうる。注入された第1細胞C1は、第3培養ブリッジ620を経て、第3培養チャネル610の内部に移動することができる。
【0062】
第3培養ブリッジ620と第3細胞注入口630との残り構成は、第1培養ブリッジ220及び第1細胞注入口230の構成と同一でもあり、それに係わる詳細な説明は、省略する。
【0063】
第2培養液チャンバ700は、培養液が注入される部材であり、プレート100上において、第1細胞培養チャンバ200及び/または第2細胞培養チャンバ300と平行になるように、第1細胞培養チャンバ200の他側にも配される。第2培養液チャンバ700に注入される培養液は、第1培養液チャンバ400に注入される培養液と同一でもある。一実施例として、第2培養液チャンバ700は、第1細胞培養チャンバ200と隣接するものの、そこから-Y軸方向にも配される。
第2培養液チャンバ700は、第2培養液チャネル710と、第2培養液ブリッジ720と、第2培養液注入口730と、を含むものでもある。
【0064】
第2培養液チャネル710は、プレート100上において、一方向(例えば、
図1のX軸方向)にも配される。第2培養液チャネル710の高さは、特別に限定されるものではないが、第1培養チャネル210と同一高さを有しうる。
【0065】
第2培養液チャネル710は、第1培養チャネル210と連通しうる。一実施例として、
図2に示されているように、第1培養チャネル210と第2培養液チャネル710との境界は、開放されており、境界に沿い、後述する第4
柱540が複数個配されうる。
【0066】
第2培養液ブリッジ720は、第2培養液チャネル710の端部から、所定方向にも延長される。第2培養液注入口730は、第2培養液ブリッジ720と連結され、第2培養液チャネル710の両端にそれぞれ配されうる。第2培養液注入口730に注入された培養液は、第2培養液ブリッジ720を経て、第2培養液チャネル710の内部に移動することができる。
【0067】
一実施例として、第1培養チャネル210と、第2培養チャネル310と、第1培養液チャネル410と、第3培養チャネル610と、第2培養液チャネル710は、一方向に平行になるようにも配される。
【0068】
一実施例として、第1培養チャネル210と、第2培養チャネル310と、第1培養液チャネル410と、第3培養チャネル610と、第2培養液チャネル710は、共通する連通領域を形成することができる。さらに具体的には、
図2に示されているように、第1培養チャネル210と、第2培養チャネル310と、第1培養液チャネル410と、第3培養チャネル610と、第2培養液チャネル710は、少なくとも一部区間を共有するように、チャネル間の境界が開放されうる。
【0069】
一実施例として、第1培養チャネル210と、第2培養チャネル310と、第1培養液チャネル410と、第3培養チャネル610と、第2培養液チャネル710は、1つのボディをなすことができる。さらに具体的には、第1培養チャネル210と、第2培養チャネル310と、第1培養液チャネル410と、第3培養チャネル610と、第2培養液チャネル710は、一体のボディに形成され、ポリジメチルシロキサン(PDMS)によってもなる。また、前記ボディから、第1培養ブリッジ220と、第2培養ブリッジ320と、第1培養液ブリッジ420と、第3培養ブリッジ620と、第2培養液ブリッジ720が、それぞれ所定の方向にも分岐される。
【0070】
一実施例として、第1細胞C1と、第2細胞C2と、第3細胞C3は、それぞれ子宮内膜の特異的細胞でもある。さらに具体的には、第1細胞C1は、子宮血管内皮細胞(endothelial cell)、第2細胞C2は、子宮内膜線維芽細胞(endometrial stromal fibroblast)そして第3細胞C3は、子宮内膜上皮細胞(endometrial epithelial cell)でもある。
【0071】
第2細胞培養チャンバ300で培養される子宮内膜線維芽細胞である第2細胞C2は、血管新生促進因子を生成することができる。例えば、第2細胞C2は、血管内皮細胞成長因子(VEGF:vascular endothelial growth factor)を生成することができる。生成された血管内皮細胞成長因子により、第1細胞培養チャンバ200で培養される子宮血管内皮細胞である第1細胞C1が刺激を受け、自己組み立て(self-assembly)を行いながら、血管を生成することができる。それ以外にも、他の血管新生促進因子として、内皮細胞を直接刺激する直接血管新生因子(DAF:direct angiogenic factor;DAF)と、血管周囲細胞を刺激し、直接血管新生因子(DAF)の生成を介し、血管新生を誘発する間接血管新生因子(IAF:indirect angiogenic factor)と、を含むものでもある。
【0072】
前述のように、第1細胞培養チャンバ200と第2細胞培養チャンバ300は、一方向に並んで配される。すなわち、第1細胞培養チャンバ200と第2細胞培養チャンバ300は、一方向に多層構造をなすことができる。それにより、第1細胞培養チャンバ200で培養される第1細胞C1は、第2細胞C2がある第2細胞培養チャンバ300に向けて血管を生成する。
【0073】
従って、本発明の一実施例による生体模倣チップ10は、子宮内膜の特異的細胞を多層構造で培養することにより、子宮内膜と生体的に類似した生体模倣チップを具現することができる。
【0074】
また、本発明の一実施例による生体模倣チップ10は、第3細胞培養チャンバ600において、子宮血管内皮細胞である第1細胞C1を追加して培養することにより、血管の生成方向をより確実に誘導することができる。さらに具体的には、第2細胞培養チャンバ300だけではなく、第3細胞培養チャンバ600で培養される第1細胞C1からも、血管内皮細胞成長因子が生成される。従って、第1細胞C1によって生成される血管が、+Y軸方向に向かうように、配向をより確実に制御することができる。
【0075】
一実施例として、子宮内膜上皮細胞である第3細胞C3は、第1培養液チャンバ400で培養されうる。さらに具体的には、第1細胞C1と第2細胞C2とが培養された後、第1期間が過ぎた後、第3細胞C3が第1培養液チャンバ400にも注入される。第3細胞C3は、第2柱520間、または第2柱520間に配されたヒドロゲル上にも配される。このとき、第1期間は、第1細胞C1が、自己組み立てを行い、血管が血管網(vascular network)を形成し、形成された血管網が、第1培養チャネル210と第2培養チャネル310との境界を通り、第2培養チャネル310で成長する期間でもある。
【0076】
それにより、本発明の一実施例による生体模倣チップ10は、子宮血管内皮細胞、子宮内膜線維芽細胞及び子宮内膜上皮細胞のような子宮内膜の特異的細胞を利用し、子宮内膜を多層的に模倣することができる。
【0077】
また、本発明の一実施例による生体模倣チップ10は、そのように、生体適合性が高い子宮内膜を模倣することにより、子宮内膜上皮細胞上に、胚芽を容易であって効率的に着床させることができる。
【0078】
また、本発明の一実施例による生体模倣チップ10は、多層構造をなす複数個のチャネル(チャンバ)と、特定の柱形状とを利用することにより、別途の動力なしにも、子宮内膜の血管を所定方向に生成させることができ、重力を利用した自然な流動を形成することができる。
一実施例として、本発明による生体模倣チップ10は、第3柱530と第4柱540とをさらに含むものでもある。
【0079】
第3柱530は、第1培養液チャンバ400と第3細胞培養チャンバ600との境界に沿い、所定間隔d3ほど離隔されて複数個配されうる。また、第4柱540は、第1細胞培養チャンバ200と第2培養液チャンバ700との境界に沿い、所定間隔d4ほど離隔されて複数個配されうる。
【0080】
一実施例として、
図3に示されているように、第3
柱530は、曲面が第2
柱520の曲面と対向するようにも配される。それにより、後述するように、第1培養液チャンバ400から胚芽が注入されたとき、第2
柱520と第3
柱530との曲面上でローリングし、第2
柱520間の空間にも載置される。
次に、図面を参照し、本発明の他の実施例による子宮内膜
模倣方法について説明する。
【0081】
図4Aは、第1細胞C1を第1培養チャネル210に投入した状態を示し、
図4Bは、第2細胞C2を第2培養チャネル310に投入した状態を示し、
図4Cは、第2細胞C2を第3培養チャネル610に投入した状態を示し、
図4Dは、第1細胞C1が第2細胞C2に向けて血管を生成し始めた状態を示し、
図4Eは、第1細胞C1が生成した血管が、第2培養チャネル310から成長し、第1培養液チャネル410に、第3細胞C3が投入された状態を示す。
【0082】
本発明による子宮内膜模倣方法は、生体模倣チップ10を利用し、互いに連通する複数個のチャンバに、互いに異なる細胞を培養し、子宮内膜を三次元を模倣することができる。
【0083】
まず、
図1ないし
図4Aを参照すれば、第1細胞培養チャンバ200、すなわち、第1培養チャネル210において、第1細胞C1を培養する。細胞外基質であるヒドロゲルに、第1細胞C1を挿入した状態で、第1細胞培養チャンバ200の第1細胞注入口230を介し、第1細胞C1を注入する。そして、生体
模倣チップ10を適切な角度に傾け、第1細胞C1を第1培養チャネル210に移動させる。
【0084】
このとき、第1培養チャネル210に移動された第1細胞C1は、所定間隔d4で離隔された複数個の第4柱540上でローリングし、一定パターンに配される。それにより、第1細胞C1を、第1培養チャネル210においてパターニングすることができる。
一実施例として、第1細胞C1は、子宮内膜の特異的細胞である子宮血管内皮細胞でもある。
【0085】
次に、第2細胞培養チャンバ300、すなわち、第2培養チャネル310において、第2細胞C2を培養する。同様に、ヒドロゲルに第2細胞C2を挿入した状態で、第2細胞培養チャンバ300の第2細胞注入口330を介し、第2細胞C2を注入する。生体模倣チップ10のティルティングにより、第2細胞C2が第2培養チャネル310に移動する。
【0086】
同様に、第2培養チャネル310に移動された第2細胞C2は、所定間隔d2に離隔された複数個の第1柱510上でローリングし、一定パターンに配される。それにより、第2細胞C2を、第2培養チャネル310においてパターニングすることができる。
一実施例として、第2細胞C2は、子宮内膜の特異的細胞である子宮内膜線維芽細胞でもある。
【0087】
ただし、第1細胞C1と第2細胞C2とを培養する順序は、特別に限定されるものではなく、第2細胞C2を培養した後、第1細胞C1を培養するか、あるいは同時に培養することもできる。
【0088】
次に、第1培養液チャンバ400に培養液を注入する。第1培養液注入口430を介して注入された培養液は、柱500間の空間を経て、チャンバ全体にも伝達される。このとき、柱500間には、細胞外基質として、ヒドロゲルが配され、培養液は、ヒドロゲルを介して拡散されうる。
【0089】
それにより、第1細胞培養チャンバ200において、第1細胞C1が培養され、第2細胞培養チャンバ300において、第2細胞C2が培養されうる。
図4Dに示されているように、第1細胞C1は、自己組み立てを行いながら、血管網C1’を形成する。そして、第2細胞C2から血管内皮細胞成長因子が生成されることにより、
図4Eに示されているように、血管網C1’は、第2細胞C2がある第2細胞培養チャンバ300に向け、新生血管C1”を生成する。
【0090】
そのように、本発明による子宮内膜模倣方法は、一方向に並んで配される複数個のチャンバに、互いに異なる細胞を培養することにより、子宮内膜を多層的に模倣することができる。
【0091】
次に、第1期間後、第1培養液チャンバ400において、第3細胞C3を培養する。第1培養液チャンバ400を介し、第3細胞C3を注入した後、生体模倣チップ10を傾け、第3細胞C3をローリングさせる。第3細胞C3は、重力により、自然にローリングされ、第2柱520間または第2柱520間に配された細胞外基質に付着される。
【0092】
一実施例として、第1期間は、第1細胞C1が、第1培養チャネル210で自己組み立てを行い、血管網C1’を形成し、第2細胞C2がある第2培養チャネル310で新生血管を生成するのに所要される期間でもある。
一実施例として、第3細胞C3は、子宮内膜の特異的細胞である子宮内膜上皮細胞でもある。
【0093】
そのように、本発明による子宮内膜模倣方法は、子宮内膜の特異的細胞である子宮血管内皮細胞、子宮内膜線維芽細胞及び子宮内膜上皮細胞を多層構造で培養することにより、実際の子宮を、生体に適して模倣することができる。
【0094】
一実施例として、第3細胞培養チャンバ600において、第2細胞C2を培養する段階をさらに含むものでもある。さらに具体的には、第1細胞培養チャンバ200と第2細胞培養チャンバ300とにおいて、それぞれ第2細胞C2と第2細胞C2とを培養した後、培養液を注入する前、第3細胞培養チャンバ600において、第2細胞C2を培養する。第3細胞培養チャンバ600の第3細胞注入口630を介し、第2細胞C2を注入した後、生体
模倣チップ10を適切な角度に傾け、第2細胞C2を第3培養チャネル610に移動させる(
図4C参照)。
【0095】
このとき、第3培養チャネル610に移動された第2細胞C2は、所定間隔d3で離隔された複数個の第3柱530上においてローリングし、一定パターンに配される。それにより、第2細胞C2を、第3培養チャネル610においてパターニングすることができる。
【0096】
そのように、本発明による子宮内膜
模倣方法は、子宮内膜線維芽細胞である第2細胞C2を複層に配することができる。従って、第2細胞C2が生成する血管内皮細胞成長因子の絶対量が増大し、第1細胞C1の血管生成を促進させるだけではなく、血管が一方向(例えば、
図4Eの上方)に成長するように、方向性を付与することができる。
【0097】
図5は、第1細胞C1が血管を生成する状態を示し、
図6は、第1細胞培養チャンバ200と、第2細胞培養チャンバ300と、第3細胞培養チャンバ600との組み合わせによる第1細胞C1の状態を示し、
図7Aは、
図6による第1細胞培養チャンバ200の血管面積を示し、
図7Bは、
図6による第2細胞培養チャンバ300の血管面積を示す。
【0098】
また、
図8は血管生成因子による血管生成状態を示し、
図9A及び
図9Bは、本発明の一実施例による生体
模倣チップ装置を利用した細胞生存度実験と、血管のリグレッション(regression)実験結果と、を示し、
図10Aは、子宮内膜上皮細胞の透過度テストを示す比較例であり、
図10Bは、子宮内膜上皮細胞の透過度テストを示す発明例であり、
図11Aは、比較例と発明例との子宮内膜上皮細胞の厚みを示し、
図11Bは、発明例の透過度を示し、
図12は、薬物処理による蛍光物質の血管透過状態を示し、
図12Cは、
図12Aと
図12Bとの透過度を示し、
図13は、本発明を利用した胚芽着床テストを示す。
【0099】
本発明による生体模倣チップ10は、子宮内膜の特異的細胞である子宮内膜上皮細胞、子宮内膜線維芽細胞及び子宮血管内皮細胞を多層的に配し、子宮内膜組織の特性を模倣することができる。
【0100】
それにより、本発明による生体模倣チップ10は、それぞれのチャンバで培養される細胞の状態を確認し、薬物に対する細胞の定量反応、定性反応をリアルタイムにモニタリングすることができる。
【0101】
さらに具体的には、
図5(a)ないし
図5(c)は、生体
模倣チップ10の経時的な子宮内膜
模倣状態を示すものであり、
図5(a)は、1日目、
図5(b)は、6日目、
図5(c)は、8日目を示す。
【0102】
1日目には、子宮血管内皮細胞である第1細胞C1が、第1細胞培養チャンバ200で培養される状態を確認することができる。6日目には、第2細胞培養チャンバ300及び/または第3細胞培養チャンバ600において、子宮内膜線維芽細胞である第2細胞C2が培養されてから、第1細胞C1が自己組み立てを行い、血管網が生成されるところを確認することができる。そして、8日目には、第1培養液チャンバ400において、子宮内膜上皮細胞である第3細胞C3が培養され、第1細胞C1に起源する新生血管が第2細胞培養チャンバ300に成長することを確認することができる。
【0103】
また、
図6(a)は、第1細胞培養チャンバ200に、第1細胞C1だけが配される場合、
図6(b)は、第2細胞培養チャンバ300に、第2細胞C2が追加して配される場合、そして
図6(c)は、第3細胞培養チャンバ600に、第2細胞C2がさらに配される場合を示す。
【0104】
図6ないし
図7A、
図7Bで確認することができるように、第1細胞培養チャンバ200に、第1細胞C1だけが配される場合は、他の場合に比べ、第1細胞培養チャンバ200の血管面積が非常に狭く、特に、第2細胞培養チャンバ300においては、血管が全く成長しないということが分かる。一方、第2細胞培養チャンバ300と第3細胞培養チャンバ600とにおいて、それぞれ第2細胞C2が培養される場合、第2細胞C2で生成される血管内皮細胞成長因子により、第1細胞培養チャンバ200と第2細胞培養チャンバ300とにおいて、血管の面積が非常に大きく、血管が第2細胞C2に向けてはっきりした方向に生成されることを確認することができる。
【0105】
また、
図8(a)ないし
図8(d)は、生体
模倣チップ10に対し、互いに異なる血管誘導因子を注入した状態を示すものであり、
図8(a)は、血管誘導因子を注入していない状態、
図8(b)は、血管誘導因子として、血管新生効果を有するスフィンゴシン1-リン酸(S1P;sphingosine-1-phosphate)を注入した状態、
図8(c)は、血管誘導因子として、血管内皮細胞成長因子である血管内皮細胞成長因子(VEGF)を注入した状態、そして
図8(d)は、スフィンゴシン1-リン酸(S1P)と血管内皮細胞成長因子(VEGF)とをいずれも注入した状態を示す。
【0106】
そのように、本発明による生体模倣チップ10は、それぞれの血管誘導因子の注入状態により、血管の面積、長さ及び配向のような成長状態を視覚的であってリアルタイムに確認することができる。
【0107】
図9A及び
図9Bは、本発明の一実施例による生体
模倣チップ10に、薬物(応急避妊薬(levonorgestrel))を互いに異なる量(薬物処理せず(control)、10ng/ml、100ng/ml、1,000ng/ml、10,000ng/ml)で投入したとき、第3細胞C3が培養される第1培養液チャンバ400(epithelium layer(
図9A))と、第2細胞C2が培養される第2細胞培養チャンバ300(stromallayer(
図9A))との細胞生存度(cell viability)実験結果と、血管のリグレッション(regression)実験結果と、を示す。
【0108】
図10Aは、比較例であり、子宮内膜上皮細胞及び子宮血管内皮細胞のみを培養した状態を示す。
図10Aの(a)ないし(c)は、それぞれ蛍光物質であるFITC-デキストランを投与し、20秒、100秒、200秒が経った時点を示すが、子宮内膜上皮細胞が過度に厚く(
図11A参照)、蛍光物質が子宮内膜上皮細胞を適切に透過することができないところを確認することができる。それにより、子宮内膜上皮細胞及び子宮血管内皮細胞のみを培養する場合、子宮内膜の透過度を測定することができなかった。
【0109】
一方、
図10Bは、発明例であり、子宮内膜上皮細胞、子宮内膜線維芽細胞及び子宮血管内皮細胞をいずれも培養した状態を示す。
図10Bの(a)ないし(c)は、それぞれFITC-デキストランを投与し、20秒、100秒、200秒が経った時点を示すが、子宮内膜上皮細胞が相対的に薄いということが分かる(
図11A参照)。それにより、本発明のように、子宮内膜上皮細胞、子宮内膜線維芽細胞及び子宮血管内皮細胞をいずれも培養する場合、子宮内膜の透過度を測定することができた。
【0110】
図11Bは、それぞれ70kDaと10kDaとの蛍光物質(FITC-デキストラン)を利用し、本発明による生体
模倣チップ装置10において、子宮内膜の透過度(permeability coefficient)を算出した結果を示す。子宮内膜の透過度は、以下の数式によっても計算される。
【数1】
【0111】
ここでIwは、子宮内膜上皮細胞の厚み、IJは、子宮内膜上皮細胞外部の平均明るさ、Iは、子宮内膜上皮細胞の内部空間、すなわち、子宮内膜空間の明るさを示す。
【0112】
そのように、本発明による生体模倣チップ10は、子宮内膜を、生体に適する状態に模倣することにより、子宮内膜に対する多様な薬物反応性を実験することができる。また、本発明による生体模倣チップ10は、子宮内膜上皮細胞の透過度を測定することができる。また、それに基づき、避妊薬投与による子宮内膜上皮細胞の透過度を定量的に測定することができる。
【0113】
図12は、薬物処理による蛍光物質の透過状態を示す。さらに具体的には、
図12は、薬物を処理していない場合(control)と、薬物として、応急避妊薬を処理した(10μg/ml)場合とにおいて、蛍光物質投入後の時間(20秒、100秒、200秒)による蛍光物質の透過状態を示す。
【0114】
図12に示されているように、何らの処理も行っていない場合には、蛍光物質の透過が相対的に遅い一方、薬物を処理した場合には、蛍光物質の透過が相対的に迅速であるということが分かる。また、薬物を処理したときの蛍光物質の透過度が、そうではない場合に比べ、はるかに高いということが分かる。
図13(a)及び
図13(b)は、第1培養液チャンバ400に、胚芽(人造胚芽としてビード(bead))が着床された状態を示す。
【0115】
さらに具体的には、生体模倣チップ10に、子宮内膜上皮細胞、子宮内膜線維芽細胞及び子宮血管内皮細胞が培養された状態で、胚芽を注入する。該胚芽は、第1培養液チャンバ400を介しても注入される。そして、注入された胚芽が、重力によって自然に着床されうるように、生体模倣チップ10を垂直に立て、培養を進める。
【0116】
前述のように、第2細胞培養チャンバ300と第1培養液チャンバ400との境界上には、複数個の第2柱520が、所定間隔d2に配され、その周囲には、子宮内膜上皮細胞が培養される。特に、本発明による生体模倣チップ10の第2柱520は、従来の生体模倣装置に比べ、広い間隔に配される。それにより、該胚芽は、第2柱520の曲面に沿ってローリングしながら、自然に第2柱520間にそれぞれ配されうる。
【0117】
本発明による三次元生体模倣チップ及び子宮内膜模倣方法は、多層構造をなす複数個のチャンバに、互いに異なる細胞を培養し、子宮内膜を三次元に模倣することができる。
【0118】
また、本発明による三次元生体模倣チップ及び子宮内膜模倣方法は、子宮内膜特異的細胞(例えば、子宮内膜線維芽細胞、子宮内膜上皮細胞、子宮血管内皮細胞)を利用し、子宮内膜と生体類似性が高い生体模倣チップを提供することができる。
【0119】
また、本発明による三次元生体模倣チップ及び子宮内膜模倣方法は、各種子宮疾患を治療するための薬物実験に使用されるか、あるいは患者オーダーメード型治療にも使用される生体模倣チップを提供することができる。
【0120】
本明細書においては、本発明について、限定された実施例を中心に説明されたが、本発明の範囲内において、多様な実施例が可能である。また、本明細書において明示上に説明されていないにしても、実施例と均等な手段もまた、本発明にそのまま結合されるものとすることができるのである。従って、本発明の真の保護範囲は、特許請求の範囲によって定められるものである。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明は、微細流体チップに係わる産業に利用されうる。
本開示は以下の実施形態を包含する。
[1] プレートと、複数個のチャンバと、前記複数個のチャンバ間に配される複数個のポスト(柱)と、を含む子宮内膜を模写する三次元生体模写(模倣)チップであり、
前記複数個のチャンバは、
内部に互いに異なる細胞が培養されるチャネルを具備し、前記プレート上に一方向に並んで配され、少なくとも一部区間が連通するように互いに隣接して配される、生体模写チップ。
[2]前記複数個のチャンバは、
第1培養チャネルを具備し、第1細胞が培養される第1細胞培養チャンバと、
前記第1細胞培養チャンバの一側に配され、前記第1培養チャネルと連通する第2培養チャネルを具備し、第2細胞が培養される第2細胞培養チャンバと、
前記第2細胞培養チャンバの一側に配され、前記第2培養チャネルと連通する第1培養液チャネルを具備し、培養液が注入される第1培養液チャンバと、を含む、実施形態1に記載の生体模写チップ。
[3]前記第1培養チャネルと、前記第2培養チャネルと、前記第1培養液チャネルは、1つのボディによってなる、実施形態2に記載の生体模写チップ。
[4]前記第2細胞培養チャンバと対向するように、前記第1培養液チャンバの他側に配され、前記第1培養液チャネルと連通する第3培養チャネルを具備し、前記第2細胞が培養される第3細胞培養チャンバをさらに含む、実施形態2に記載の生体模写チップ。
[5]前記第1培養液チャンバと対向するように、前記第1細胞培養チャンバの他側に配され、前記第1培養チャネルと連通する第2培養液チャネルを具備し、培養液が注入される第2培養液チャンバをさらに含む、実施形態2に記載の生体模写チップ。
[6]前記第1培養液チャンバは、
前記第1細胞及び前記第2細胞が、それぞれ前記第1細胞培養チャンバ及び前記第2細胞培養チャンバに注入され、第1期間が過ぎた後、第3細胞が注入される、実施形態2に記載の三次元生体模写チップ。
[7]前記複数個のポストは、
前記第1培養チャネルと前記第2培養チャネルとの境界に沿い、第1間隔に配される複数個の第1ポストと、
前記第2培養チャネルと前記第1培養液チャネルとの境界に沿い、第2間隔に配される複数個の第2ポストと、を含み、
前記第2間隔は、前記第1間隔より大きい、実施形態2に記載の生体模写チップ。
[8]前記複数個のポストは、一面がふくらんでいる曲面を有する多角柱形状である、実施形態7に記載の生体模写チップ。
[9]前記細胞は、子宮内膜の特異的細胞である子宮内膜上皮細胞、子宮内膜線維芽細胞及び子宮血管内皮細胞のうち少なくともいずれか一つである、実施形態1に記載の三次元生体模写チップ。
[10]一方向に並んで配され、互いに連通する複数個のチャンバに互いに異なる細胞を培養し、子宮内膜を三次元に模写する方法であり、
第1細胞培養チャンバにおいて、第1細胞を培養する段階と、
第2細胞培養チャンバにおいて、第2細胞を培養する段階と、
第1培養液チャンバに培養液を注入する段階と、
第1期間後、前記第1培養液チャンバにおいて、第3細胞を培養する段階を含む、子宮内膜模写方法。
[11]前記培養液を注入する段階前、第3細胞培養チャンバにおいて、前記第2細胞を培養する段階をさらに含む、実施形態10に記載の子宮内膜模写方法。
[12]前記第1細胞は、子宮血管内皮細胞であり、前記第2細胞は、子宮内膜線維芽細胞であり、前記第3細胞は、子宮内膜上皮細胞である、実施形態10に記載の子宮内膜模写方法。
[13]前記第1期間は、
前記第2細胞が、前記第2細胞培養チャンバにおいて、自己組み立てを行い、血管が、前記第1細胞培養チャンバでおいて生成される期間である、実施形態12に記載の子宮内膜模写方法。