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特許7476383設備の物理シミュレーションモデル作成支援システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】設備の物理シミュレーションモデル作成支援システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20240422BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20240422BHJP
【FI】
G05B23/02 G
G06Q50/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023038340
(22)【出願日】2023-03-13
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 健司
(72)【発明者】
【氏名】渋川 直紀
(72)【発明者】
【氏名】平野 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 誠二
(72)【発明者】
【氏名】藁科 正彦
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英樹
(72)【発明者】
【氏名】柏瀬 翔一
(72)【発明者】
【氏名】塚田 圭祐
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-102115(JP,A)
【文献】特開2017-084056(JP,A)
【文献】特開平05-313557(JP,A)
【文献】特開2006-244072(JP,A)
【文献】特開2009-238102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
G06Q 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備を構成する機器を含む要素に対して作成された標準の物理モデルが要素モデルとして格納される要素モデルデータベースと、
前記設備を構成する前記要素の種類及び仕様を含む情報を取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段にて取得された前記情報から物理シミュレーションモデルの作成に必要な必須情報を抽出する情報抽出手段と、
前記必須情報に基づいて前記要素モデルデータベースから該当する前記要素モデルを選択すると共に、選択した前記要素モデルのパラメータに前記必須情報を入力して、前記設備の挙動を再現して評価するための前記物理シミュレーションモデルを作成するモデル作成手段と、を有して構成され
前記情報取得手段は、前記設備を構成する前記機器を含む前記要素の種類、仕様及び接続関係を示す設計図書から、前記要素の種類、仕様及び接続関係を含む情報を取得するよう構成され、
前記情報抽出手段は、前記設計図書におけるシンボル及び線種の情報を保持するシンボルデータベースと、前記設計図書における文字の記載ルールを保持する仕様表示ルールデータベースと、前記設計図書における前記シンボルを接続する前記線種の記載ルールを保持するシンボル間接続ルールデータベースとのそれぞれの情報に基づいて、前記情報取得手段にて取得された情報から、前記物理シミュレーションモデルの作成に必要な前記必須情報を抽出するよう構成されたことを特徴とする設備の物理シミュレーションモデル作成支援システム。
【請求項2】
設備を構成する機器を含む要素に対して作成された標準の物理モデルが要素モデルとして格納される要素モデルデータベースと、
前記設備を構成する前記要素の種類及び仕様を含む情報を取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段にて取得された前記情報から物理シミュレーションモデルの作成に必要な必須情報を抽出する情報抽出手段と、
前記必須情報に基づいて前記要素モデルデータベースから該当する前記要素モデルを選択すると共に、選択した前記要素モデルのパラメータに前記必須情報を入力して、前記設備の挙動を再現して評価するための前記物理シミュレーションモデルを作成するモデル作成手段と、を有して構成され、
前記情報抽出手段は、前記設備を構成する前記機器を含む前記要素の内部構造及び仕様に関する情報を保持するカタログデータベースの情報に基づいて、前記情報取得手段にて取得された情報から、前記物理シミュレーションモデルの作成に必要な前記必須情報を抽出するよう構成されたことを特徴とする設備の物理シミュレーションモデル作成支援システム。
【請求項3】
前記情報取得手段は、設備を構成する機器を含む要素に設けられた表示部から、前記要素の種類及び仕様を含む情報を取得するよう構成されたことを特徴とする請求項に記載の設備の物理シミュレーションモデル作成支援システム。
【請求項4】
設備を構成する機器を含む要素に対して作成された標準の物理モデルを要素モデルとして要素モデルデータベースに予め格納し、
前記設備を構成する機器を含む要素の種類、仕様及び接続関係を示す設計図書から、前記要素の種類、仕様及び接続関係を含む情報を取得し、
前記設計図書におけるシンボル及び線種の情報を保持するシンボルデータベースと、前記設計図書における文字の記載ルールを保持する仕様表示ルールデータベースと、前記設計図書における前記シンボルを接続する前記線種の記載ルールを保持するシンボル間接続ルールデータベースとのそれぞれの情報に基づいて、取得された前記要素の種類、仕様及び接続関係を含む情報から物理シミュレーションモデルの作成に必要な必須情報を抽出し、
前記必須情報に基づいて前記要素モデルデータベースから該当する前記要素モデルを選択すると共に、選択した前記要素モデルのパラメータに前記必須情報を入力して、前記設備の挙動を再現して評価するための前記物理シミュレーションモデルを作成することを特徴とする設備の物理シミュレーションモデル作成支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、設備の物理シミュレーションモデル作成支援システム、及び設備の物理シミュレーションモデル作成支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製品を製造するための設備を備えた工場等の施設は、発電所や変電所など機械設備、電気設備を所有している。これらの多くの施設では、設備を安定して運転できるように保守管理を行っている。長期間の安定運転が求められる上述の機械設備や電気設備では、設備の状態を継続的に計測して監視し、異常が発生する前に予兆を検知した場合には、速やかに対策を講じる予知保全等の技術が適用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6977364号公報
【文献】特許第6784551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
計測し監視したデータの変化から、設備に発生する異常の予兆を検知する手法として、正常時や異常時のデータを学習することで、変化が生じた場合に異常の予兆を検知するとともに、データの特徴から異常の原因を特定する手法が提案されている(特許文献1)。
【0005】
その他の手法としては、設備の物理モデルを構築し、物理モデル上で異常挙動に起因する要素部をモデル化することで、異常時の挙動を再現する手法が提案されている(特許文献2)。この手法では、設備に発生した異常事象以外の事象に対する挙動を評価することも可能であり、物理モデルから得られた挙動と、計測して監視したデータの挙動とを突き合わせることで、異常等の原因の特定が可能になる。
【0006】
上述の特許文献1においては、正常時からの変化を検知することは容易である。しかしながら、異常の原因を特定するためには、異常時のデータを学習する必要があり、過去に発生した事象や模擬的に発生させた事象以外については学習が困難であり、異常の原因の特定ができない場合があるという課題がある。
【0007】
また、特許文献2においては、物理モデルによって想定される異常等を再現することが可能である。ところが、機器や機器間を接続する配管などのように、設備を構成する機器が複雑または大規模になった場合、それぞれの物理モデルを構築するためには、機器や配管の仕様など、物理モデルを構築するために必要な情報の収集及びモデル化の作業に、多大な労力を要するという課題がある。
【0008】
本発明の実施形態は、上述の事情を考慮してなされたものであり、設備の物理シミュレーションモデルを作成する作業の省力化及び効率化を図ることができる設備の物理シミュレーションモデル作成支援システム及び設備の物理シミュレーションモデル作成支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態における設備の物理シミュレーションモデル作成支援システムは、設備を構成する機器を含む要素に対して作成された標準の物理モデルが要素モデルとして格納される要素モデルデータベースと、前記設備を構成する前記要素の種類及び仕様を含む情報を取得する情報取得手段と、前記情報取得手段にて取得された前記情報から物理シミュレーションモデルの作成に必要な必須情報を抽出する情報抽出手段と、前記必須情報に基づいて前記要素モデルデータベースから該当する前記要素モデルを選択すると共に、選択した前記要素モデルのパラメータに前記必須情報を入力して、前記設備の挙動を再現して評価するための前記物理シミュレーションモデルを作成するモデル作成手段と、を有して構成され、前記情報取得手段は、前記設備を構成する前記機器を含む前記要素の種類、仕様及び接続関係を示す設計図書から、前記要素の種類、仕様及び接続関係を含む情報を取得するよう構成され、前記情報抽出手段は、前記設計図書におけるシンボル及び線種の情報を保持するシンボルデータベースと、前記設計図書における文字の記載ルールを保持する仕様表示ルールデータベースと、前記設計図書における前記シンボルを接続する前記線種の記載ルールを保持するシンボル間接続ルールデータベースとのそれぞれの情報に基づいて、前記情報取得手段にて取得された情報から、前記物理シミュレーションモデルの作成に必要な前記必須情報を抽出するよう構成されたことを特徴とするものである。
また、本発明の実施形態における設備の物理シミュレーションモデル作成支援システムは、設備を構成する機器を含む要素に対して作成された標準の物理モデルが要素モデルとして格納される要素モデルデータベースと、前記設備を構成する前記要素の種類及び仕様を含む情報を取得する情報取得手段と、前記情報取得手段にて取得された前記情報から物理シミュレーションモデルの作成に必要な必須情報を抽出する情報抽出手段と、前記必須情報に基づいて前記要素モデルデータベースから該当する前記要素モデルを選択すると共に、選択した前記要素モデルのパラメータに前記必須情報を入力して、前記設備の挙動を再現して評価するための前記物理シミュレーションモデルを作成するモデル作成手段と、を有して構成され、前記情報抽出手段は、前記設備を構成する前記機器を含む前記要素の内部構造及び仕様に関する情報を保持するカタログデータベースの情報に基づいて、前記情報取得手段にて取得された情報から、前記物理シミュレーションモデルの作成に必要な前記必須情報を抽出するよう構成されたことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の実施形態における設備の物理シミュレーションモデル作成支援方法は、設備を構成する機器を含む要素に対して作成された標準の物理モデルを要素モデルとして要素モデルデータベースに予め格納し、前記設備を構成する機器を含む要素の種類、仕様及び接続関係を示す設計図書から、前記要素の種類、仕様及び接続関係を含む情報を取得し、前記設計図書におけるシンボル及び線種の情報を保持するシンボルデータベースと、前記設計図書における文字の記載ルールを保持する仕様表示ルールデータベースと、前記設計図書における前記シンボルを接続する前記線種の記載ルールを保持するシンボル間接続ルールデータベースとのそれぞれの情報に基づいて、取得された前記要素の種類、仕様及び接続関係を含む情報から物理シミュレーションモデルの作成に必要な必須情報を抽出し、前記必須情報に基づいて前記要素モデルデータベースから該当する前記要素モデルを選択すると共に、選択した前記要素モデルのパラメータに前記必須情報を入力して、前記設備の挙動を再現して評価するための前記物理シミュレーションモデルを作成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態によれば、設備の物理シミュレーションモデルを作成する作業の省力化及び効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】。一実施形態に係る設備の物理シミュレーションモデル作成支援システムの構成を示すブロック図。
図2図1の情報取得手段が情報を取得する配管計装接続図(P&ID)の一例を示す図。
図3図2の配管計装接続図(P&ID)に用いられるシンボル及び線等を説明する図表。
図4図1の情報抽出手段が行う情報の抽出手順を説明する説明図。
図5図1のモデル作成手段が行なう物理シミュレーションモデルの作成手順を説明する説明図。
図6図1のモデル作成手段にて作成された物理シミュレーションモデルの一例を示す図。
図7図6の物理シミュレーションモデルにおけるポンプモデルの詳細な例を示す図。
図8図1の情報取得手段が情報を取得する、機器に設置された銘版の一例を示す図。
図9図1のカタログデータベースに保持された類似機器の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づき説明する。
図1は、一実施形態に係る設備の物理シミュレーションモデル作成支援システムの構成を示すブロック図である。この図1に示す設備の物理シミュレーションモデル作成支援システム10は、対象とする設備の挙動を再現(シミュレーション)して評価するための物理シミュレーションモデル1の作成を支援するものであり、要素モデルデータベース11、情報取得手段12、情報抽出手段13及びモデル作成手段14を有して構成される。
【0014】
ここで、設備は、一般に、電動機やポンプ、バルブ、熱交換器などの個別の機器と、これらの機器を接続する配管と、運転状態を計測するための計測器と、運転制御を行なうための制御装置と、を有して構成される。
【0015】
物理シミュレーションモデル1は、設備の挙動を再現(シミュレーション)するために必要となる最小の要素単位(要素モデル)で構成されている。例えば、電動機はケーシング、回転体、軸受、軸継手(カップリング)、支持構造などの部品で構成されており、物理シミュレーションモデル1は、機器及びその部品のそれぞれの物理モデル(要素モデル)を有して構成される。最終的に、個々の機器などの要素モデルを組み合わせて、設備の物理シミュレーションモデル1が作成される。この物理シミュレーションモデル1は、シミュレーションで使用されるプログラムに準拠する形式で作成される。
【0016】
要素モデルは、設備を構成する機器、その部品、計測器、配管、ケーブルなどの要素の物理モデルである。従って、要素モデルは、電動機、バルブなどの機器単位で作成されたり、機器を構成する部品単位で作成されたりする。この要素モデルは、機器及び部品等の標準的な物理モデルを表す方程式(関係式)と、この方程式で使用される係数などのパラメータとから成り、プログラム言語で記載されている。上記パラメータの例としては、機器及びその部品の材料、寸法、回転数、及び特性値(例えばバルブ開度と流量との関係を表す比率)、機器及び配管内の温度及び圧力等、配管の外径及び肉厚などの仕様情報が該当する。
【0017】
図1に示す要素モデルデータベース11は、上述の設備を構成する機器を含む要素に対して作成された標準の物理モデルが、要素モデルとして事前に格納されたものである。
【0018】
情報取得手段12は、設備を構成する機器などの要素の種類、仕様及び接続関係を含む情報を、設計図書または設備の写真(例えば現場写真)から取得する。この情報取得手段12は、上述の情報をデジタルデータとして取得するものであり、紙図面をスキャンする手段、PDFなどの電子ファイルを読み込む手段、デジタルカメラなどの撮影機器を用いて実機の映像を取得する手段などである。
【0019】
この情報取得手段12が設計図書から情報を取得する例を、以下に説明する。ここで、設計図書は、設計図面や構造図面、設計仕様書などである。
【0020】
設計図書の一例である配管計装接続図(P&ID)を図2に示す。このP&IDは、機器や計測器を表すシンボルと、配管やケーブルを表す線と、識別番号や仕様を表す文字とが記載されたものである。この図2に示すP&IDでは、図3に示すように、機器としての仕切弁15、ポンプ16、温度計17及び貯水タンク18の各シンボルが、配管としての水管19を表す線にて接続されて記載されている。更に、このP&IDでは、P-000等のポンプの識別番号、100KL等の貯水タンクの貯水量(仕様)をそれぞれ表す文字が記載されている。
【0021】
情報取得手段12は、上述のP&IDを電子ファイルとして読み込み、または紙図面のP&IDをスキャンすることで、設備を構成する機器などの要素の種類、仕様及び接続関係を含む情報を、情報抽出手段13にて利用可能なデジタルデータとして取得する。
【0022】
図1に示す情報抽出手段13は、情報取得手段12にて取得された情報から、物理シミュレーションモデル1の作成に必要な必須情報のみを抽出し、この抽出した必須情報をモデル化用データベース20に登録させるものである。そのために、情報抽出手段13は、シンボルデータベース21、仕様表示ルールデータベース22、シンボル間接続ルールデータベース23及びカタログデータベース24(後述)を有する。
【0023】
つまり、シンボルデータベース21は、設計図書(例えばP&ID)にて使用されるシンボル及び線種の情報を保持する。また、仕様表示ルールデータベース22は、設計図書(例えばP&ID)にて使用される文字の表示位置や表示内容等の記載ルールを保持する。更に、シンボル間接続ルールデータベース23は、設計図書(例えばP&ID)にて使用されるシンボルを接続する線種の記載ルールを保持する。これらのシンボルデータベース21、仕様表示ルールデータベース22、シンボル間接続ルールデータベース23にそれぞれ保持される情報は、予め用意された設計ルール情報などを用いて事前に学習することにより得られる。
【0024】
図4に示すように、情報抽出手段13は、まず、情報取得手段12にて取得された情報である設計図書(例えばP&ID)中に存在するシンボル及び線に対して、シンボルデータベース21内の情報に基づき、該当するシンボル及び線を抽出し、抽出したシンボル及び線に相当する機器、計測器、配管及びケーブル等を関連付けてモデル化用データベース20に登録する。
【0025】
次に、情報抽出手段13は、情報取得手段12にて取得された情報である設計図書(例えばP&ID)中に記載されている文字を、仕様表示ルールデータベース22内の情報に基づいて、機器、計測器、配管などの仕様情報を含む情報として抽出し、この必須情報である仕様情報を含む情報(機器の識別番号及び名称、配管の外径など)を、機器、計測器及び配管等に関連付けてモデル化用データベース20に登録する。
【0026】
次に、情報抽出手段13は、情報取得手段12にて取得された情報である設計図書(例えばP&ID)中に存在するシンボル間の接続状態(接続関係)を、シンボル間接続ルールデータベース23内の情報に基づいて、必須情報である接続情報として抽出し、この接続情報を機器及び計測器等に関連付けてモデル化用データベース20に登録する。
【0027】
最後に、情報抽出手段13は、情報取得手段12にて取得された情報である設計図書(例えばP&ID)中に存在するが、シンボルデータベース21及び仕様表示ルールデータベース22に保持されていない図(シンボルなど)や文字等の情報について、標準表記以外の必須情報として抽出し、モデル化用データベース20に登録する。
【0028】
上述のようにしてモデル化用データベース20には情報抽出手段13により、機器、計測器、配管及びケーブルの識別番号、種類、名称及び設置場所、機器及び計測器等の接続関係、並びに仕様(例えば機器及びその部品の材料、寸法、回転数及び特性値、機器及び配管内の温度及び圧力等、配管の外径及び肉厚等)などの物理シミュレーションモデル1の作成に必要な必須情報が登録される。
【0029】
図1に示すモデル作成手段14は、モデル化用データベース20に登録された必須情報(機器及び計測器等の識別番号及び種類など)に基づいて、要素モデルデータベース11から該当する要素モデルを選択すると共に、この選択した要素モデルのパラメータに必須情報(仕様情報)を入力し、更に、選択した要素モデルを必須情報(機器及び計測器等の接続関係)に基づいて接続して、設備の挙動を再現(シミュレーション)するための物理シミュレーションモデル1を作成する。
【0030】
つまり、図5に示すように、モデル作成手段14は、まず、対象とする設備の物理シミュレーションモデル1に名称(タイトル)を付与することで、この物理シミュレーションモデル1を定義する。次に、モデル作成手段14は、モデル化用データベース20に登録された必須情報(機器、計測器、配管、ケーブルなどの識別番号、種類及び名称等)に基づいて、要素モデルデータベース11から該当する要素モデル(機器、計測器、配管、ケーブル等の各要素モデル)を選択する。次に、モデル作成手段14は、選択した要素モデルのパラメータに、モデル化用データベース20に登録された必須情報の仕様情報(例えば機器及びその部品の材料、寸法、回転数及び特性値、機器及び配管内の温度及び圧力等、配管の外径及び肉厚等)の値を入力して付与する。
【0031】
次に、モデル作成手段14は、モデル化用データベース20に登録された必須情報(機器及び計測器等の接続関係)に基づいて、選択した要素モデル(機器、計測器等の要素モデル)間の接続関係を定義する。最後に、物理シミュレーションモデル1が要素モデル及び接続関係を可視化するオブジェクト形式の場合には、モデル作成手段14は、要素モデルの配置位置を決定して、図6に示すようなオブジェクト形式の物理シミュレーションモデル1を作成する。モデル作成手段14は、作成した物理シミュレーションモデル1を図示しないデータベースに保存する。このデータベースに保存された物理シミュレーションモデル1を抽出して、対象とする設備の挙動が再現(シミュレーション)される。
【0032】
ここで、図6に示すオブジェクト形式の物理シミュレーションモデル1は、図2に示す配管計装接続図(P&ID)をモデル化したものであり、要素モデルとしての仕切弁モデル25、ポンプモデル26、温度計モデル27及び貯水タンクモデル28が、水管モデル29により接続されて記載されている。例えば、識別番号V-001の仕切弁モデル25は、流量とCv値の関係式(方程式)で表された関数であり、パラメータに流量、Cv値の数値が与えられる。また、識別番号P-000のポンプモデル26は、流量と揚程の関係式(方程式)が表す関数であり、パラメータに流量、揚程の数値が与えられる。
【0033】
更に、識別番号P-000、P-001のポンプモデル26は、図7に示すように、詳細な物理シミュレーションモデル1としてオブジェクト形式で記載することも可能である。このポンプモデル26の詳細な物理シミュレーションモデル1では、要素モデルとしてモータ軸モデル31、カップリングモデル32、ポンプ軸モデル33、インペラモデル34、軸受モデル35及び回転速度モデル36が記載されている。このうちの回転速度モデル36は、回転速度と時間との関係式(方程式)が表す関数である。
【0034】
次に、図1に示す情報取得手段12が写真から情報を取得する例を、以下に説明する。
【0035】
情報取得手段12は、設備を構成する要素(例えば機器、計測器等)に設けられた表示部としての図8に示す銘版40の画像を、デジタルカメラなどの撮影機器により取得する。この銘版40には、要素としての例えば機器の種類(3相誘導電動機)及び仕様(回転速度、軸受型式等)を含む情報が記載されている。情報取得手段12は、銘版40を撮影することで、上述の機器の種類及び仕様を含む情報を取得する。
【0036】
図1の情報抽出手段13が有するカタログデータベース24は、設備を構成する機器及び計測器を含む要素、並びに類似要素の内部構造及び仕様に関する情報を保持する。図9は、銘版40が設置された機器(例えば3相誘導電動機)の類似機器の内部構造を示す断面であり、カタログデータベース24に保持されたものである。この断面図では、ケーシング内に、固定子巻線が取り付けられると共に、回転子を備えた回転軸が、軸受により回転自在に設けられた例である。
【0037】
情報抽出手段13は、情報取得手段12が銘版40にて取得した情報から、カタログデータベース24の情報に基づいて、物理シミュレーションモデル1の作成に必要な必須情報を抽出する。つまり、情報抽出手段13は、機器の種類及び仕様に関する情報(例えば3相誘導電動機、回転速度)を銘版40から直接抽出する。更に、情報抽出手段13は、銘版40の情報(例えば軸受型式の番号)からカタログデータベース24内の例えば図9の断面図を検索し、この断面図中の符号a、b及びcから回転軸の軸長を、符号dから回転軸の外径を、符号a及びcから軸受の位置をそれぞれ抽出する。また、情報抽出手段13は、例えば図9の断面図から、回転軸及び軸受などの識別番号、種類及び名称等を抽出する。
【0038】
モデル作成手段14は、この場合にも、情報抽出手段13にて抽出された必須情報(回転軸、軸受など識別番号及び種類等)に基づいて、要素モデルデータベース11から該当する要素モデルを選択し、この選択した要素モデルのパラメータに必須情報(回転軸の外径、軸受の寸法、回転速度などの仕様情報)を入力する。そして、モデル作成手段14は、各要素モデルを必須情報(軸受位置などの接続関係)に基づいて接続して、物理シミュレーションモデル1を作成する。このようにして作成された物理シミュレーションモデル1は、図7の2点鎖線内に記載されたものである。この図7の2点鎖線内の物理シミュレーションモデル1は、モータ軸モデル31、軸受モデル35及び回転速度モデル36の要素モデルを有して構成される。
【0039】
以上のように構成されたことから、本実施形態によれば、次の効果(1)を奏する。
(1)設備を構成する機器、計測器などの種類及び仕様を含む、設計図書または写真の情報を情報取得手段12が取得する。この情報取得手段12が取得した情報から、物理シミュレーションモデル1の作成に必要な必須情報を情報抽出手段13が、シンボルデータベース21、仕様表示ルールデータベース22、シンボル間接続ルールデータベース23及びカタログデータベース24を用いて効率的に抽出する。
【0040】
そして、モデル作成手段14は、設備を構成する機器及び計測器を含む要素に対して作成された要素モデルが格納される要素モデルデータベース11から、必須情報(機器、計測器等の種類、識別番号など)に基づいて該当する要素モデル選択し、この選択した要素モデルのパラメータに必須情報(仕様情報)を入力し、更に、選択した要素モデルを必須情報(機器、計測器等の接続関係)に基づいて接続する。これにより、モデル作成手段14は物理シミュレーションモデル1を自動的に作成することができる。この結果、設備の物理シミュレーションモデル1を作成する作業の省力化及び効率化を図ることができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができ、また、それらの置き換えや変更、組み合わせは、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
1…物理シミュレーションモデル、10…設備の物理シミュレーションモデル作成支援システム、11…要素モデルデータベース、12…情報取得手段、13…情報抽出手段、14…モデル作成手段、20…モデル化用データベース、21…シンボルデータベース、22…仕様表示ルールデータベース、23…シンボル間接続ルールデータベース、24…カタログデータベース
【要約】
【課題】設備の物理シミュレーションモデルを作成する作業の省力化及び効率化を図ることができる。
【解決手段】設備を構成する機器を含む要素に対して作成された標準の物理モデルが要素モデルとして格納される要素モデルデータベース11と、設備を構成する機器などの要素の種類及び仕様を含む情報を取得する情報取得手段12と、情報取得手段にて取得された情報から物理シミュレーションモデル1の作成に必要な必須情報を抽出する情報抽出手段13と、必須情報に基づいて要素モデルデータベース11から該当する要素モデルを選択すると共に、選択した要素モデルのパラメータに必須情報を入力して、設備の挙動を再現して評価するための物理シミュレーションモデル1を作成するモデル作成手段14と、を有して構成されたものである。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9