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特許7476394非共焦点点走査式フーリエ領域光干渉断層計撮像システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】非共焦点点走査式フーリエ領域光干渉断層計撮像システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/17 20060101AFI20240422BHJP
   A61B 3/10 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
G01N21/17 625
A61B3/10 100
G01N21/17 630
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023079911
(22)【出願日】2023-05-15
(65)【公開番号】P2023168322
(43)【公開日】2023-11-24
【審査請求日】2023-07-07
(31)【優先権主張番号】22173231.6
(32)【優先日】2022-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509012991
【氏名又は名称】オプトス ピーエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミゲル アンヘル プレシアド
【審査官】三宅 克馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-194459(JP,A)
【文献】特開2012-115575(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0000320(US,A1)
【文献】Fierck Hilolmann,Aberration-free volumetric high-speed imaging of in vivo retina,ArXiv:1605.03747, phisics.optics,ArXiv:1605.03747,米国,2016年,p.1-10,https://arxiv.org/abs/1605.03747
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/17
A61B 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非共焦点点走査式フーリエ領域光干渉断層計(OCT)撮像システムであって、
撮像対象にわたって光ビームの2次元点走査を行い、前記点走査中に前記撮像対象によって散乱された光を集めるように構成された走査システムと、
前記点走査中に前記走査システムによって集められた前記光と参照光との間の干渉から生じる干渉光に基づいて検出信号を生成するように構成された光検出器と、
OCTデータ処理ハードウェアであって、
前記検出信号に基づいて前記撮像対象の複素体積OCTデータを生成し、前記複素体積OCTデータは、前記複素体積OCTデータの正面投影を生成するように処理されると、焦点ぼけ又は歪みのうち少なくとも1つを有する正面投影を提供する、前記複素体積OCTデータの生成と、
前記複素体積OCTデータにおいて符号化された位相情報を使用して前記複素体積OCTデータを補正する補正アルゴリズムを実行することによって補正複素体積OCTデータを生成し、これにより、前記補正複素体積OCTデータは、前記補正複素体積OCTデータの正面投影を生成するように処理されると前記複素体積OCTデータの正面投影よりも焦点ぼけ又は歪みのうちの少なくとも一方が少ない正面投影を提供する、前記補正複素体積OCTデータの生成と、
を行うように構成されたOCTデータ処理ハードウェアと、
を備えたシステム。
【請求項2】
光源と、光源開口部と、第1の光学系とを含む光ビーム発生器をさらに備え、前記光源は、前記光源開口部を介して前記第1の光学系を通って光を発して前記光ビームを生じるように構成されており、
前記光検出器は検出開口部と第2の光学系とを備え、前記光検出器は前記第2の光学系を介して前記検出開口部を通って伝播する干渉光を検出するように構成されており、
前記第2の光学系の焦点距離に正規化された前記検出開口部のサイズは、前記第1の光学系の焦点距離に正規化された前記光源開口部のサイズよりも大きい、
請求項1に記載の非共焦点点走査式フーリエ領域OCT撮像システム。
【請求項3】
前記光源開口部は第1の光ファイバーのコアの端部によって提供され、前記検出開口部は第2の光ファイバーのコアの端部によって提供される、請求項2に記載の非共焦点点走査式フーリエ領域OCT撮像システム。
【請求項4】
前記第1の光ファイバーは単一モード光ファイバーである、請求項3に記載の非共焦点点走査式フーリエ領域OCT撮像システム。
【請求項5】
前記第2の光ファイバーはマルチモード光ファイバーである、請求項3又は請求項4に記載の非共焦点点走査式フーリエ領域OCT撮像システム。
【請求項6】
前記走査システムは走査素子と曲面ミラーとを備え、前記走査システムは、前記走査素子が前記曲面ミラーを介して前記撮像対象にわたって前記光ビームを走査することで前記2次元点走査を行うように構成されている、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の非共焦点点走査式フーリエ領域OCT撮像システム。
【請求項7】
前記曲面ミラーは楕円面ミラーを含む、請求項6に記載の非共焦点点走査式フーリエ領域OCT撮像システム。
【請求項8】
非共焦点点走査式波長掃引型OCT撮像システム及び非共焦点点走査式スペクトル領域OCT撮像システムのうちの一方である、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の非共焦点点走査式フーリエ領域OCT撮像システム。
【請求項9】
非共焦点点走査式フーリエ領域光干渉断層計(OCT)撮像システムによって生成された撮像対象の複素体積OCTデータを処理するためのコンピュータ実施方法であって、前記非共焦点点走査式フーリエ領域OCT撮像システムは、
撮像対象にわたって光ビームの2次元点走査を行い、前記点走査中に前記撮像対象によって散乱された光を集めるように構成された走査システムと、
前記点走査中に前記走査システムによって集められた前記光と参照光との間の干渉から生じる干渉光に基づいて検出信号を生成するように構成された光検出器と、
前記検出信号に基づいて前記撮像対象の前記複素体積OCTデータを生成するように構成され、前記複素体積OCTデータは、前記複素体積OCTデータの正面投影を生成するように処理されると、焦点ぼけ又は歪みのうち少なくとも1つを有する正面投影を提供する、OCTデータ処理ハードウェアと、
を備え、
前記撮像対象の前記複素体積OCTデータを前記OCTデータ処理ハードウェアから取得することと、
前記複素体積OCTデータにおいて符号化された位相情報を使用して前記複素体積OCTデータを補正する補正アルゴリズムを実行することによって補正複素体積OCTデータを生成し、これにより、前記補正複素体積OCTデータは、前記補正複素体積OCTデータの正面投影を生成するように処理されると前記複素体積OCTデータの正面投影よりも焦点ぼけ又は歪みのうちの少なくとも一方が少ない正面投影を提供することと、
を含む方法。
【請求項10】
前記非共焦点走査式フーリエ領域OCT撮像システムは、
光源と、光源開口部と、第1の光学系とを含む光ビーム発生器をさらに備え、前記光源は、前記光源開口部を介して前記第1の光学系を通って光を発して前記光ビームを生じるように構成されており、
前記光検出器は検出開口部と第2の光学系とを備え、前記光検出器は前記第2の光学系を介して前記検出開口部を通って伝播する干渉光を検出するように構成されており、
前記第2の光学系の焦点距離に正規化された前記検出開口部のサイズは、前記第1の光学系の焦点距離に正規化された前記光源開口部のサイズよりも大きい、
請求項9に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項11】
前記光源開口部は第1の光ファイバーのコアの端部によって提供され、前記検出開口部は第2の光ファイバーのコアの端部によって提供される、請求項10に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項12】
前記第1の光ファイバーは単一モード光ファイバーである、請求項11に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項13】
前記第2の光ファイバーはマルチモード光ファイバーである、請求項11又は請求項12に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項14】
前記走査システムは走査素子と曲面ミラーとを備え、前記走査システムは、前記走査素子が前記曲面ミラーを介して前記撮像対象にわたって前記光ビームを走査することにより前記2次元点走査を行うように構成されている、請求項9~請求項13のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項15】
プロセッサによって実行されると請求項9~請求項14の少なくとも一項に記載の方法を前記プロセッサに実行させるコンピュータ可読命令を含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の例示態様は概してフーリエ領域光干渉断層計(optical coherence tomography、OCT)システムの分野に関し、特に点走査式フーリエ領域OCTシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
光干渉断層計(OCT)は、生体組織のような光散乱媒体の高分解能の2次元画像及び三次元画像を取得するために広く使用されている低コヒーレンス干渉法に基づいた撮像技術である。
【0003】
周知のように、OCT撮像システムは、深度の測距を実現する態様に応じて時間領域OCT(TD-OCT)又はフーリエ領域OCT(FD-OCT)(周波数領域OCTとも呼ぶ)として分類することができる。TD-OCTでは、OCT撮像システムによって撮像されている散乱媒体(本明細書では「撮像対象」と呼ぶ)の反射率プロファイルの取得中に撮像システムの干渉計の参照アームの光路長を時間的に変化させる。反射率プロファイルは一般に「深度走査」又は「軸方向走査」(「A走査」)と呼ばれる。FD-OCTでは、参照アームの光路長の変動を必要とせずに、参照アームと各A走査位置における干渉計のサンプルアームとの間の干渉から生じるスペクトルインターフェログラムをフーリエ変換し、A走査の深度に沿った全ての点を同時に取得する。FD-OCTでは、サンプルからの全ての後方反射が同時に測定されるため、干渉計内のサンプルアームのミラーの走査よりもはるかに速い撮像が可能になる。2つの一般的なタイプのFD-OCTは、スペクトル領域OCT(SD-OCT)及び波長掃引型OCT(SS-OCT)である。SD-OCTでは、広帯域光源が多くの波長を撮像対象に照射し、分光計を検出器として用いて全ての波長を同時に測定する。SS-OCT(時間符号化周波数領域OCTとも呼ぶ)では、光源をある波長範囲にわたって掃引し、検出器の時間出力をスペクトル干渉に変換する。
【0004】
また、OCTデータを横方向に取得するために撮像システムがどのように構成されているかに応じて、OCT撮像システムを点走査(「点検出」又は「走査点」としても知られる)、ライン走査又はフルフィールドとして分類することもできる。点走査式OCT撮像システムは、集束したサンプルビームを撮像対象の表面を横切るように、一般的には撮像対象の表面上の1つのライン(直線でもよいし、例えば円や螺旋を画定するように曲線でもよい)又は1組の(通常はほぼ平行である)ラインに沿って走査し、ラインに沿った複数の点の各々の軸方向深度プロファイル(A走査)を一度に一点ずつ取得することによってOCTデータを取得し、サンプルの2次元又は3次元(体積)反射率プロファイルを表すA走査の1次元又は2次元アレイを含むOCTデータを構築する。
【0005】
点走査式OCTシステムは通常は共焦点であり、これは、OCTシステムの光路において干渉光検出器の前に共焦点ゲートがあることを意味する。これにより、OCTスキャナの焦点面にあるがその焦点の近傍にない点からの光が検出器に到達することが防止され、よって点走査式OCTシステムの横方向分解能が改善する。点走査式OCTシステムは一般に単一モードの光ファイバーを使用して、OCT光源から撮像対象に向かう光と撮像対象から干渉光検出器に向かう戻り光の双方を搬送し、単一モード光ファイバーのコアの端部は点光源と共焦点ゲートの双方を効果的に提供する。
【0006】
しかしながら、著しい光学収差及び/又は焦点ぼけを生じる光学素子を有するこの種の点走査式OCT撮像システム(例えば、走査システムにおいてレンズではなく楕円ミラーなどを有するミラーベースのOCTシステム)において、共焦点ゲートの面に到達する戻り光は、その強度のかなりの割合が共焦点ゲートの外側に分布している場合がある。これによって検出時の信号対雑音比(SNR)が低減し、その結果検出感度が低下し、したがってOCT撮像システムの撮像品質が低下してしまう。同様の問題が、OCT撮像システム自体ではなく、撮像対象に由来する収差/焦点ぼけによって生じる場合がある。例えば、眼の網膜を撮像するために共焦点点走査式OCT撮像システムが広く使用される眼科の用途では、眼の光学要素(主に角膜及び水晶体)の曲率に差異があったり不完全な場合があることで生じる、撮像光の波面に対する走査位置に依存的な収差や患者に固有の収差が、OCT撮像システムの感度を制限する可能性がある。これらの用途において、これらの収差は網膜の周辺を撮像する際により大きな影響を及ぼす傾向があり、その結果、許容可能な画質を得ることができるOCT撮像システムの視野に制限要因をもたらすことにもなる。この問題に対処するための努力として、これまでに、収差などをより効果的に補償又は補正することができる補償光学(AO)技術(AO補正に対する波面センサベースのアプローチにおけるハードウェアや、波面センサレスアプローチに用いられるアルゴリズムを含む)を開発してきた。
【発明の概要】
【0007】
本明細書の第1の例示態様に従って、非共焦点点走査式フーリエ領域光干渉断層計(FD-OCT)撮像システムが提供される。このシステムは、撮像対象にわたって光ビームの2次元点走査を行い、点走査中に撮像対象によって散乱された光を集めるように構成された走査システムと、点走査中に走査システムによって集められた光と参照光との間の干渉から生じる干渉光に基づいて検出信号を生成するように構成された光検出器とを備える。このFD-OCT撮像システムはOCTデータ処理ハードウェアをさらに備えている。OCTデータ処理ハードウェアは、検出信号に基づいて撮像対象の複素体積OCTデータ(複素体積OCTデータは、複素体積OCTデータの正面投影を生成するように処理されると、焦点ぼけ又は歪みのうち少なくとも1つを有する正面投影を提供する)を生成し、複素体積OCTデータにおいて符号化され、ある程度の位相安定性を有することのできる位相情報を使用して複素体積OCTデータを補正する補正アルゴリズムを実行することによって補正複素体積OCTデータを生成するように構成されており、これにより、補正複素体積OCTデータは、補正複素体積OCTデータの正面投影を生成するように処理されると複素体積OCTデータの正面投影よりも焦点ぼけ又は歪みのうちの少なくとも一方が少ない正面投影を提供する。
【0008】
本明細書の第2の例示態様に従って、非共焦点点走査式フーリエ領域OCT撮像システムによって生成された撮像対象の複素体積OCTデータを処理するためのコンピュータ実施方法が提供される。この非共焦点点走査式フーリエ領域OCT撮像システムは、撮像対象にわたって光ビームの2次元点走査を行い、点走査中に撮像対象によって散乱された光を集めるように構成された走査システムと、点走査中に走査システムによって集められた光と参照光との間の干渉から生じる干渉光に基づいて検出信号を生成するように構成された光検出器と、検出信号に基づいて撮像対象の複素体積OCTデータ(複素体積OCTデータは、複素体積OCTデータの正面投影を生成するように処理されると、焦点ぼけ又は歪みのうち少なくとも1つを有する正面投影を提供する)を生成するように構成されたOCTデータ処理ハードウェアと、を備えている。この方法は、撮像対象の複素体積OCTデータをOCTデータ処理ハードウェアから取得することと、複素体積OCTデータにおいて符号化され、ある程度の位相安定性を有することのできる位相情報を使用して複素体積OCTデータを補正する補正アルゴリズムを実行することによって補正複素体積OCTデータを生成し、これにより、補正複素体積OCTデータは、補正複素体積OCTデータの正面投影を生成するように処理されると複素体積OCTデータの正面投影よりも焦点ぼけ又は歪みのうちの少なくとも一方が少ない正面投影を提供することと、を含む。
【0009】
前述のコンピュータ実施方法の例において、複素体積OCTデータは位相情報として位相成分を含むことができ、複素体積OCTデータの少なくとも一部分にわたる位相成分の変動は、撮像対象の構造によって定義される第1の成分と、撮像対象の構造とは無関係である第2の成分とからなる。補正複素体積OCTデータは、位相成分を使用して複素体積OCTデータを補正する補正アルゴリズム132を実行することにより生成することができ、ここで、補正複素体積OCTデータ160が、補正複素体積OCTデータ160の正面投影を生成するように処理されると複素体積OCTデータの正面投影よりも焦点ぼけ又は歪みの少なくとも一方が少ない正面投影を提供するように、第1の成分は、複素体積OCTデータの少なくとも一部分にわたる位相成分の変動において第2の成分よりも優勢である。これに加えて又はこの代わりに、撮像対象140の各走査位置に対応する複素体積OCTデータの位相情報のそれぞれの項目は、点のそれぞれの問い合わせ時間(すなわち、点走査中に走査位置から散乱された光が走査システム110によって集められる時間)の間に位相安定性を有することができる。これにより、補正複素体積OCTデータが、補正複素体積OCTデータの正面投影を生成するように処理されると複素体積OCTデータの正面投影よりも焦点ぼけ又は歪みのうち少なくとも一方が少ない正面投影を提供するように、補正アルゴリズム132は複素体積OCTデータを補正することが可能になる。
【0010】
また、本明細書の第3の例示態様に従って、プロセッサによって実行されると本明細書の第2の例示態様の方法又は前述したその例をプロセッサに実行させるコンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラムが提供される。コンピュータプログラムは、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体(例えば、コンピュータハードディスクやCDなど)に記憶されてもよいし、コンピュータ可読信号によって担持されてもよい。
【0011】
前述の非共焦点点走査式FD-OCT撮像システムにおいて、複素体積OCTデータは位相情報として位相成分を含むことができ、複素体積OCTデータの少なくとも一部分にわたる位相成分の変動は、撮像対象の構造によって定義される第1の成分と、撮像対象の構造とは無関係である第2の成分とからなる。OCTデータ処理ハードウェアは、位相成分を使用して複素体積OCTデータを補正する補正アルゴリズム132を実行することにより補正複素体積OCTデータを生成するように構成されることが可能であり、ここで、補正複素体積OCTデータが、補正複素体積OCTデータの正面投影を生成するように処理されると複素体積OCTデータの正面投影よりも焦点ぼけ又は歪みの少なくとも一方が少ない正面投影を提供するように、第1の成分は、複素体積OCTデータの少なくとも一部分にわたる位相成分の変動において第2の成分よりも優勢である。これに加えて又はこの代わりに、撮像対象140の各走査位置に対応する複素体積OCTデータの位相情報のそれぞれの項目は、点のそれぞれの問い合わせ時間(すなわち、点走査中に走査位置から散乱された光が走査システム110によって集められる時間)の間に位相安定性を有することができる。これにより、補正複素体積OCTデータが、補正複素体積OCTデータの正面投影を生成するように処理されると複素体積OCTデータの正面投影よりも焦点ぼけ又は歪みのうち少なくとも一方が少ない正面投影を提供するように、補正アルゴリズム132は複素体積OCTデータを補正することが可能になる。
【0012】
非共焦点点走査式フーリエ領域OCT撮像システムを、撮像対象が患者の眼である眼科用の非共焦点点走査式フーリエ領域OCT撮像システムとしてもよい。この場合、眼の一部にわたって光ビームの2次元点走査を行うように走査システムを構成し、これにより、点走査の時間スケールで眼科用の非共焦点点走査式フーリエ領域OCT撮像システムに対して眼を静止させ、その間に走査システムが眼の一部にわたって光ビームの2次元点走査を行うことができる。
【0013】
非共焦点点走査式FD-OCT撮像システムは、光源と、光源開口部と、第1の光学系とを含む光ビーム発生器をさらに備えることができ、光源は、光源開口部を介して第1の光学系を通って光を発して光ビームを生じるように構成されており、光検出器は検出開口部と第2の光学系とを備え、光検出器は第2の光学系を介して検出開口部を通って伝播する干渉光を検出するように構成されており、第2の光学系の焦点距離に正規化された検出開口部のサイズは、第1の光学系の焦点距離に正規化された光源開口部のサイズよりも大きい。光源開口部は第1の光ファイバーのコアの端部によって提供されてもよく、検出開口部は第2の光ファイバーのコアの端部によって提供されてもよい。第1の光ファイバーは単一モード光ファイバーであってもよく、第2の光ファイバーはマルチモード光ファイバーであってもよい。
【0014】
前述の非共焦点点走査式FD-OCT撮像システムにおいて、走査システムは少なくとも1つの走査素子と少なくとも1つの曲面ミラーとを備えることができる。少なくとも1つの走査素子が、少なくとも1つの曲面ミラーを介して撮像対象にわたって光ビームを走査することで2次元点走査を行うように、走査システムを構成することができる。少なくとも1つの曲面ミラーは楕円面ミラーを含むことができる。
【0015】
非共焦点点走査式FD-OCT撮像システムは、例えば非共焦点点走査式スペクトル領域OCT撮像システムでもよいし、非共焦点点走査式波長掃引型OCT撮像システムでもよい。
【0016】
ここで、例示的な実施形態を、以下に説明する添付の図面を参照して、非限定的な例のみを用いて詳細に説明する。異なる図面において示される同様の参照番号は、特に指定がない限り、同一又は機能的に類似した要素を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本明細書の例示実施形態による非共焦点点走査式フーリエ領域OCT撮像システムの概略図である。
図2】本明細書に記載のOCTデータ処理ハードウェアの機能を実行するように構成することのできるプログラマブル信号処理ハードウェアの概略図である。
図3】例示実施形態による補正複素体積OCTデータの生成プロセスを示すフロー図である。
図4】本明細書の第1の例示実施形態による非共焦点点走査式波長掃引型OCT撮像システムの概略図である。
図5】例示実施形態に含まれる例示的な走査システムの概略図である。
図6】本明細書の第2の例示実施形態による非共焦点点走査式スペクトル領域OCT撮像システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
前述の従来の点走査式OCT撮像システムの欠点に鑑みて、本発明者は、これらのシステムを共焦点にする、という確立された実施から逸脱することによってフーリエ領域点走査式OCT撮像システムの検出感度を改善できることを認識した。共焦点は、通常、撮像対象によって散乱された光が、撮像対象を照射するための光が初めに発射されたのと同じ開口部を通して集められることによって達成され、この開口部は、多くの一般的な実施では光ファイバーコアの端部である。さらに、本発明者は、共焦点点走査式FD-OCT撮像システムの共焦点ゲートによって遮断されてしまう撮像対象からの戻り光の成分が、非共焦点点走査式FD-OCT撮像システムにおいて検出される干渉光に寄与できるように、点走査式FD-OCT撮像システムを非共焦点にすることによって検出感度の改善(即ち、改善されたSNR)を実現できることを認識した。非共焦点点走査式FD-OCT撮像システムの光ファイバーベースの実施では、例えば、端部が検出開口部を提供する光ファイバーの直径を、端部が光源開口部(これを介して撮像対象が照射される)を提供する別の光ファイバーの直径よりも大きくすることにより、非共焦点性を実現することができる。共焦点性の低下に起因する焦点ぼけ(デフォーカス)及び収差の大きいOCT撮像システムでは横方向の分解能が低下するため、非共焦点点走査式FD-OCT撮像システムはこれまで魅力のない提案とされ、検出感度の問題は、例えばPCT国際出願PCT/GB2013/052556号(WO2014/053824 A1号として公開)に提案されるように、従来、撮像システムの光学系及び/又は撮像対象における収差を補償する適応光学ハードウェアを含むように共焦点OCT撮像システムを適応させることによって対処されてきた。
【0019】
しかしながら、共焦点点走査式FD-OCT撮像システムからの画像をリフォーカス(再焦点合わせ)して(例えば、正面投影又はB走査)これらのシステムに通常生じるわずかな焦点ぼけを除去するために開発されたデジタルフォーカス(焦点合わせ)技術を適用し、焦点が合っていない及び/又は収差の大きい非共焦点点走査式FD-OCT撮像システムからの画像に見られるよりも広範な焦点ぼけを効果的に軽減し、よってこのようなシステムにおいて生じてしまう横方向分解能の低下の低減又は防止が可能であることも、本発明者は見出した。本発明者は、共焦点性の低下により生じる特定の複雑な問題にもかかわらず、このようなデジタルフォーカス技術を非共焦点点走査式FD-OCT撮像システムに適用可能であることを発見し、この発見は驚くべきものである。より具体的には、共焦点点走査式FD-OCT撮像システムの場合、撮像対象上のある位置でOCT測定を行うことはその位置で二次空間変動を有する位相項を用いた畳み込みと等しく、これを補償して数値リフォーカスに使用できることを示すことができる。しかしながら、非共焦点点走査式FD-OCT撮像システムの場合、共焦点ゲートがないことによって許容される多重干渉が破壊的に増加することが予期されるため、このような位相項の適用性は一見したところ不明瞭である。本発明者は、このことが事実ではなく、共焦点点走査式FD-OCT撮像システムからの画像をリフォーカスするためにこれまでに開発された既知のデジタルフォーカス技術を適用し、非共焦点点走査式FD-OCT撮像システムからの画像を効果的にリフォーカスできることを発見した。
【0020】
[第1の例示実施形態]
図1は、本明細書の例示実施形態による非共焦点点走査式FD-OCT撮像システム100の概略図である。FD-OCT撮像システム100は、走査システム110、光検出器120及びOCTデータ処理ハードウェア130を備えている。第1の例示実施形態のように、非共焦点点走査式FD-OCTシステム100は、図4の第1の例示実施形態のより詳細な図に示すように非共焦点点走査式波長掃引型OCT(SS-OCT)システム300であってもよい。しかしながら、非共焦点点走査式FD-OCTシステム100はこの形態で提供される必要はなく、例えば、図6を参照して後述する第2の例示実施形態の場合のように、スペクトル領域OCT(SD-OCT)システム400といった代わりの形態をとってもよい。より一般的には、複素体積OCTデータ、すなわち、2次元点走査中にOCT測定が行われる走査位置毎に得られる複素A走査情報を表すそれぞれのスペクトル干渉図(干渉スペクトル)のフーリエ変換を生成することができる、非共焦点点走査式FD-OCT撮像システムの任意の形態として例示実施形態を提供することができる。このような複素体積OCTデータは、取得されたOCT測定値からの位相情報を符号化し、本明細書に記載のような補正アルゴリズムによってこの情報を使用してOCT画像データをデジタル的にリフォーカスすることができる。
【0021】
走査システム110は、撮像対象140をわたって光線Lの2次元点走査を行い、点走査中に撮像対象140によって散乱した光Lを集めるように構成されている。したがって、走査システム110は、一度に1つの走査位置でそれぞれの走査位置を光線Lで順次照射し、撮像対象140によって散乱した光Lの少なくとも一部を各走査位置で集めることにより、撮像対象140の表面にわたって2次元で分布するそれぞれの走査位置でA走査を取得するように構成されている。走査システム110は、例えば一方向走査(平行走査ラインのセットが、それらが延びる共通の方向をたどる)、蛇行走査又は螺旋状走査など、当業者に知られている任意の適切な走査パターンを使用して2次元点走査を行うことができる。
【0022】
本例示実施形態において、FD-OCT撮像システム100は、撮像対象140から眼の網膜の領域の形態のOCTデータを取得するように構成された眼科用FD-OCT撮像システムであるが、この代わりに又はこれに加えて、前眼部の一部など、OCTによって撮像することのできる眼の任意の他の部分も撮像対象140を形成することができる。眼の一部にわたって光ビームLの2次元点走査を行うように走査システム110を構成することができ、これにより、眼は点走査の時間スケールで眼科用FD-OCT撮像システムに対して静止し、その間に走査システム110が眼の一部にわたって光ビームLの2次元点走査を行う。しかしながら、撮像対象140は眼の一部に限定されず、その代わりに、任意の組織(例えば皮膚)、生物学的サンプル、又はより一般的には、OCTによって表面下の構造を撮像すべきである任意の散乱媒体とすることができる。
【0023】
FD-OCT撮像システム100は、光源152、光源開口部155及び第1の光学系157を含む光ビーム発生器150をさらに備えることができる。この場合、光源開口部155の形状及びサイズ(例えば、光源開口部155が円形である場合は直径)が光ビームLの断面形状及びサイズ(例えば直径)を画定するように(すなわち、これらのサイズ及び形状が同じであるように)、光源152は第1の光学系157を通して光を発し、光源開口部155を介して光ビームLを生じるように構成されている。いくつかの例示実施形態において、光ビーム発生器150は、例えば光源152からの光をコリメートする1つ以上のコリメートレンズなど、さらなる素子(図1には図示せず)を備えることができる。
【0024】
光検出器120は、参照光Lと、点走査中に走査システム110によって集められた光Lとの間の干渉から生じる干渉光Lに基づいて検出信号Sを生成するように構成されている。換言すると、参照光と点走査中に走査システムによって収集された光は互いに同時に生じて干渉するように導かれ、生じた干渉光Lは光検出器120の第2の光学系121及び光検出開口部122を介して光検出器120の光検出素子(図示せず)に向けられ、これらによって受光される。これにより、光検出器120は、第2の光学系121を介して検出開口部122を通って伝播する干渉光Lを検出することができる。第2の光学系121の焦点距離に正規化された検出開口部122のサイズ(例えば直径)は、第1の光学系157の焦点距離に正規化された光源開口部155のサイズ(例えば直径)よりも大きい。換言すると、第2の光学系121の焦点距離に対する検出開口部122のサイズの比は、第1の光学系157の焦点距離に対する光源開口部155のサイズの比よりも大きい。本明細書でいう開口部のサイズは、開口部を通る光の伝播方向に垂直な面上の投影領域を指す。光検出器120は、受光した干渉光Lの光電変換を行うことによって検出信号Sを生成する。光検出器120がとりうる具体的な形態は、非共焦点点走査式FD-OCT撮像システム100を実施する形態に依存する。例えば、FD-OCT撮像システム100をSD-OCT撮像システムとして実施する場合、光検出器120は、回折格子、フーリエ変換レンズ及び検出器アレイ(又はライン走査カメラ)を有することのできる分光計を備える。FD-OCT撮像システム100を本例示実施形態のようにSS-OCT撮像システムとして実施する場合、光検出器120は2つの光検出器(例えば逆バイアスフォトダイオード)を含むバランス型光検出器の構成(set-up)を備えることができ、その出力光電流は互いから減じられ、減じられた電流信号はトランスインピーダンス増幅器によって電圧検出信号に変換される。検出信号Sは、次にOCTデータ処理ハードウェア130によって処理される。
【0025】
OCTデータ処理ハードウェア130は、公知のデータ処理技術を用いて、撮像対象140の複素体積OCTデータを検出信号Sに基づいて生成するように構成されている。複素体積OCTデータは、(総ボクセル投影(Summed-voxel projection、SVP)又は撮像したサンプルの選択されたスラブにSVPを制限する制限SVP(RSVP)など、任意の周知の投影技術を用いて)複素体積OCTデータの正面投影を生成するように処理されると、焦点ぼけ及び/又は歪みを有する正面投影を正面投影画像に提供する。換言すると、OCTデータ(又はそのサブセットのみ)が(前述の任意の周知の投影技法を使用して)OCTデータの正面投影を生成するように処理されると、OCTデータは焦点ぼけ及び/又は歪みを正面投影画像にもたらす成分(例えば、後述する位相誤差)を含む。正面投影(又は、例えばB走査画像など、画像形式のOCTデータの他の表現)における焦点ぼけ及び/又は歪みは、FD-OCT撮像システム100内の光学系のうちのいくつか、例えば、走査システム110内に設けることのできるより湾曲したミラーのうちの1つにおける収差から生じうる。この代わりに又はこれに加えて、焦点ぼけ及び/又は歪みは撮像対象の光学的欠陥によって生じる場合がある。従来の共焦点点走査式FD-OCT撮像システムにおける共焦点ゲートの効果により、正面投影画像におけるこの焦点ぼけ及び/又は歪みは、このような撮像システムによって生成されるOCTデータにおいてさほど重要ではなく、例えばリウら(G.Liu et al.)による「スカラー回折理論及び情報エントロピーに基づいたOCT画像のデジタルフォーカシング(Digital focusing of OCT images based on scalar diffraction theory and information entropy)」(バイオメディカルオプティックエクスプレス(Biomedical Optic Express)、第3巻、第11号、2774-2783頁、その内容全体が参照により本明細書に援用される)という題の論文に開示されているように、既知の数値リフォーカスアルゴリズムを用いて抑制されることが可能である。
【0026】
OCTデータ処理ハードウェア130はさらに、補正アルゴリズム132を実行することによって補正された複素体積OCTデータ160を生成するように構成されている。補正アルゴリズム132は、複素体積OCTデータにおいて符号化され、位相安定度を有する位相情報を処理して複素体積OCTデータを補正する。これにより、補正複素体積OCTデータ160は、補正複素体積OCTデータ160の正面投影を生成するように処理されると、複素体積OCTデータの正面投影よりも焦点ぼけ及び/又は歪みの少ない(すなわち、焦点ぼけ及び/又は歪みの程度(規模)が小さい)正面投影を提供する。換言すると、OCTデータ処理ハードウェア130はさらに、複素体積OCTデータにおいて符号化された位相情報を処理して前述の成分(すなわち、複素体積OCTデータにある、正面投影に存在する焦点ぼけ及び/又は歪みの原因)の少なくとも一部を複素体積OCTデータから除去又は低減する補正アルゴリズム132を実行することにより、補正複素体積OCTデータ160を生成するように構成されている。FD-OCTでは、FD-OCT撮像システムによって測定された干渉の光学スペクトルの離散フーリエ変換(DFT)から、位相情報を符号化する複素データを得ることができる。
【0027】
複素体積OCTデータは位相情報として位相成分を含むことができ、複素体積OCTデータの少なくとも一部分にわたる位相成分の変動は、撮像対象140の構造によって定義される第1の成分と、撮像対象140の構造とは無関係である残りの第2の成分とを含む。より詳細に後述するOCTデータ処理ハードウェア130は、位相成分を使用して複素体積OCTデータを補正する補正アルゴリズム132を実行することにより、補正複素体積OCTデータを生成するように構成が可能である。ここで、補正複素体積OCTデータ160が、補正複素体積OCTデータ160の正面投影を生成するように処理されると複素体積OCTデータの正面投影よりも焦点ぼけ又は歪みの少なくとも一方が少ない正面投影を提供するように、第1の成分は、複素体積OCTデータの少なくとも一部分にわたる位相成分の変動において第2の成分よりも優勢である。
【0028】
よって、OCTデータ処理ハードウェア130は、補正アルゴリズム132への入力として複素体積OCTデータを取り込む。補正アルゴリズム132は、補正複素体積OCTデータ160の正面投影の焦点ぼけ及び/又は歪みが入力された複素体積OCTデータの正面投影よりも少なくなるように、補正複素体積OCTデータ160を生成し、出力するために実行される。よって、補正複素体積OCTデータ160の、複素体積OCTデータからの前述の成分(原因)の少なくとも一部が除去又は低減される。結果として、補正されたOCTデータ160の正面投影は焦点ぼけ及び/又は収差によって生じる歪みの減少を示しており、したがって、補正アルゴリズム132への入力として機能する複素体積OCTデータの正面投影と比べて改善された横方向分解能を示している。正面投影画像における(デ)フォーカスの程度を、当業者に知られている多くの異なる方法のうちのいずれかを用いて定量化することができる。例として、勾配ベース、ラプラシアンベース、ウェーブレットベース、統計ベース又は離散コサイン変換ベースの焦点測度演算子を使用して焦点ぼけの程度を定量化することができる。このような焦点測度演算子の種々の例は、パートゥズら(S.Pertuz et al.)による「shape from focus法からの焦点測度演算子の解析(Analysis of focus measure operators from shape-from-focus)」という題の論文(パターン認識(Pattern Recognition)第46号(2013年)、1415-1432頁に掲載され、その内容全体が参照により本明細書に援用される)に挙げられている。
【0029】
補正アルゴリズム132は、体積測定OCTデータ内の複素数体情報を使用することによって補正体積測定OCTデータ260の正面投影における横方向分解能を改善することのできる、当技術分野で知られている任意の数値的リフォーカス及び/又は収差補正アルゴリズムとすることが可能である。一般に、補正アルゴリズム132はフーリエ領域における複素体積OCTデータに位相フィルタを適用し、その結果に対して逆フーリエ変換を行う。位相フィルタは、複素体積OCTデータの正面投影に焦点ぼけ/歪みを生じる位相誤差を低減又は除去するように選択される。適切な位相フィルタを、FD-OCT撮像システムの数学的モデルから導出することができる。
【0030】
一例として、補正アルゴリズム132は、シェモンスキら(N.D.Shemonski et al.)の「生きたヒト網膜の計算による高分解能光学撮像(Computational high-resolution optical imaging of the living human retina)」という題の論文(ネイチャーフォトニックス(Nature Photonics)第9巻(2015年)、440-443頁、その内容全体が参照により本明細書に援用される(補足部を含む))に記載のような、完全に自動化された収差補正アルゴリズムの形態をとることができる。前述の収差補正アルゴリズムでは、逆フーリエ変換を適用する前に複素体積OCTデータのフーリエ変換に位相フィルタを乗じる。この位相フィルタは、シャックハルトマン波面センサの関数を計算的に模倣するが、シェモンスキらによる前述の論文に説明されているように、焦点ぼけ補正を含むように適応されてもよい。ピーク検出メトリックをガイド星ベースのアルゴリズムと併せて適用し、収差補正を反復的に微調整してもよい。
【0031】
別の例として、補正アルゴリズム132は、リウらによる「スカラー回折理論及び情報エントロピーに基づいたOCT画像のデジタルフォーカシング」(バイオメディカルオプティックエクスプレス、第3巻、2774-2783頁(2012年)、その内容全体が参照により本明細書に援用される)におけるデジタルリフォーカス法の形態をとることができる。記載のデジタルリフォーカス法は、複素体積OCTデータのフーリエ変換を取得してこれを線形のk空間に再スケーリングすることを含む。次にこのデータを軸方向に再サンプリングし、軸方向に沿った一連の正面フレームを取得する。そして、各距離に応じて変化する画像のエントロピー関数を最小にする焦点距離(異なる焦点距離でリフォーカスされた画像の範囲外の最小シャノンエントロピーを有する画像に対応する距離など)の探索を行うことにより、これらの正面フレームを新しい焦点面にデジタル的にリフォーカスする。全ての正面フレームが軸方向に沿ってリフォーカスされると、リフォーカスされた画像領域体積OCTデータが得られるように、リフォーカスされた正面フレームに逆フーリエ変換を適用する。
【0032】
しかしながら、補正アルゴリズム132は前述の例に限定されないことに留意されたい。補正アルゴリズム132は、例えば、リウらによる「計算光干渉断層計[Invited]」(バイオメディカルオプティックエクスプレス、第8巻、1549-1574頁 (2017年)、その内容全体が参照により本明細書に援用される)で開示及び/又は参照されている計算収差補正アルゴリズム、デジタルリフォーカシングアルゴリズム及び干渉合成開口部顕微鏡アルゴリズムのうち1つの代替形態をとることができる。
【0033】
リウらによる前述の論文の第6節に記載のように、撮像対象140内の各点に対応する複素体積OCTデータのそれぞれの位相情報は、点のそれぞれの問い合わせ時間(すなわち、点走査中にその点によって散乱された光が走査システム110によって集められる時間)の間に位相安定性を有することが必要とされ、これにより、補正アルゴリズム132は複素体積OCTデータを補正することが可能になる。必要な位相安定性は、補正アルゴリズム132の実施に依存しており、非共焦点点走査式FD-OCT撮像システム100のハードウェアの適切な構成によって、又は後述するような複素体積OCT撮像データの後処理(補正アルゴリズム132の一部とすることができる)によって達成が可能である。非共焦点点走査式FD-OCT撮像システム100の位相安定性をさらに高めることで、補正アルゴリズム132による、補正複素体積OCTデータ160の正面投影に存在する焦点ぼけ及び/又は歪みの低減の有効性を改善することができる。
【0034】
換言すると、前述の非共焦点点走査式FD-OCT撮像システム100において、複素体積OCTデータは位相成分を含むことができ、複素体積OCTデータの少なくとも一部分にわたる位相成分の変動は、撮像対象140の構造、具体的には、入射する光ビームが構造を走査するにつれて構造がビームを散乱する態様によって定義される第1の成分を含む。位相成分の残りの変動は、撮像対象140の構造とは無関係である(これにより、位相成分は、第1の成分と、撮像対象140の構造とは無関係の残りの第2の成分とからなる)。OCTデータ処理ハードウェア130は、位相成分を使用して複素体積OCTデータを補正する補正アルゴリズム132を実行することにより、補正複素体積OCTデータ160を生成するように構成が可能である。ここで、補正複素体積OCTデータ160が、補正複素体積OCTデータ160の正面投影を生成するように処理されると複素体積OCTデータの正面投影よりも焦点ぼけ又は歪みのうち少なくとも一方が少ない正面投影を提供するように、第1の成分は、複素体積OCTデータの少なくとも一部分にわたる位相成分の変動を支配する(すなわち、第1の成分は、複素体積OCTデータの少なくとも一部分にわたる位相成分の変動において第2の成分よりも優勢である)。
【0035】
点走査式FD-OCT撮像システムの位相安定性におけるこのような改善を、例えばリウらの論文に記載のように、撮像ハードウェア及び/又は後処理方法の適切な設定によって達成することができる。例えば、2次元点走査の持続時間が、患者の動き又は走査システム100内の1つ以上の要素のジッタによって誘発されるものなど、非共焦点点走査式FD-OCT撮像システム100内のモーションアーチファクトの平均(又は、好ましくは最小)期間よりも実質的に短く(例えば1桁以上)なるように、例えば、非共焦点点走査式OCT撮像システム100を、少なくとも部分的な位相安定性を達成するのに十分な高速度で撮像するように構成してもよい。例えば、非共焦点点走査式FD-OCT撮像システム100が眼科用FD-OCT撮像システムであり、眼科用FD-OCT撮像システムにおいて、撮像対象140が患者の眼であり、走査システム110が眼の一部をわたる光ビームの2次元点走査を行うように構成されている場合、走査システム110が2次元点走査を行う時間スケールで眼を眼科用FD-OCT撮像システムに対して静止させることができる。このことは、走査システム110が例えば100kHz以上の走査速度で2次元点走査を行うように構成されることによって実現可能である。走査速度を、軸方向深さの走査速度(A走査速度又はライン速度)によって特徴づけることができる。SS-OCTシステムでは走査速度を掃引反復率によって求めることができ、SD-OCTでは適用されたライン走査カメラのライン速度によって求めることができる。
【0036】
示される他のハードウェア方法としては、リウらの論文にさらに記載されているように、OCT撮像システムをその撮像対象に結合すること、サンプルの近く及びOCT画像内に固定位相基準対象を導入して軸方向の動きの補正のための基準点を提供すること、そして、追加のスペックルトラッキング撮像サブシステムを使用して横方向の動きを補正することが挙げられる。
【0037】
(補正アルゴリズム132の一部を形成することができる)1つの可能な後処理方法では、リウらの論文にさらに記載されているように、隣接する高速軸フレーム(すなわち、平行2次元点走査におけるB走査)の複素共役乗算を使用してフレーム間の位相差を決定し、よってOCT撮像システムの低速軸に沿って軸方向の動きを補正する。後処理方法の使用により、同様の位相安定性の達成に必要なOCT撮像システム上の撮像速度要件を低減することができる。
【0038】
安定性に関する前述の考察は、シェモンスキらによる「光干渉断層計における安定性(パートI):安定性の要件(Stability in computed optical interferometric tomography(Part I):Stability requirements)」(オプティックエクスプレス第22号、19183-19197頁(2014年)、その内容全体が参照により本明細書に援用される)にさらに詳述されている。
【0039】
OCTデータ処理ハードウェア130を、任意の好適な形態で、例えば図2に概略的に示す種類のプログラマブル信号処理ハードウェア200として提供することができる。プログラマブル信号処理装置200は、光検出器120からの検出信号Sを受信し、例えばコンピュータ画面などのディスプレイに表示するための補正複素体積OCTデータ160及び/又はそのグラフィカル表現(例えば、補正複素体積OCTデータ160の正面投影の形態)を出力する通信インターフェース(I/F)210を備えている。信号処理ハードウェア200は、プロセッサ(例えば、中央処理ユニット(CPU)及び/又はグラフィック処理ユニット(GPU))220と、作業メモリ230(例えばランダムアクセスメモリ)と、コンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラム245を記憶する命令記憶装置240とをさらに備えており、コンピュータ可読命令は、プロセッサ220によって実行されると、本明細書で説明するOCTデータ処理ハードウェア130のものを含む種々の機能をプロセッサ220に実行させる。作業メモリ230は、コンピュータプログラム245の実行中にプロセッサ220によって使用される情報を記憶する。命令記憶装置240は、コンピュータ可読命令が予めロードされたROM(例えば、電気的消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)又はフラッシュメモリの形態)を備えることができる。あるいは、命令記憶装置240はRAM又は同様のタイプのメモリを備えることができ、CD-ROM、DVDROMなどの形態である非一時的コンピュータ可読記憶媒体250などのコンピュータプログラム製品、又はコンピュータ可読命令を担持するコンピュータ可読信号260から、コンピュータプログラム245のコンピュータ可読命令をそこに入力することができる。いずれの場合も、コンピュータプログラム245は、プロセッサ220によって実行されると、本明細書で説明するOCTデータ処理ハードウェア130の機能をプロセッサ220に実行させる。換言すると、本例示実施形態のOCTデータ処理ハードウェア130は、コンピュータプロセッサ220と、コンピュータ可読命令を記憶するメモリ240を備えることができ、コンピュータ可読命令は、コンピュータプロセッサ220によって実行されると、光検出器120からの検出信号Sに基づいた撮像対象の複素体積OCTデータをコンピュータプロセッサ220に生成させる。ここで、複素体積OCTデータは、複素体積OCTデータの正面投影を生成するように処理されると、正面投影において焦点ぼけ又は歪みの少なくとも一方を有する正面投影を提供する。さらに、本明細書で説明するように、コンピュータ可読命令は、コンピュータプロセッサ220によって実行されるとコンピュータプロセッサ220に補正アルゴリズム132を実行させ、成分の少なくとも一部がOCTデータから除去されて補正OCTデータ160が生成される。
【0040】
しかしながら、この代わりに、前述のOCTデータ処理ハードウェア130の機能を実行することに特化したASIC、FPGAもしくは他の集積回路などの非プログラマブルハードウェア、又は図2を参照して前述したような非プログラマブルハードウェア及びプログラマブルハードウェアの組み合わせでOCTデータ処理ハードウェア130を実施できることに留意されたい。
【0041】
図3は、複素体積OCTデータにおいて符号化された位相情報を処理して複素体積OCTデータを補正する補正アルゴリズム132を実行することにより、本例示実施形態のOCTデータ処理ハードウェア130が補正複素体積OCTデータ160を生成するプロセス(複素体積OCTデータ補正アルゴリズム)を示すフロー図である。
【0042】
図3のプロセスS10において、OCTデータ処理ハードウェア130は、先に生成された撮像対象140の複素体積OCTデータを、例えばOCTデータ処理ハードウェア130のメモリ(図2に示す作業メモリ230など)からこのデータを取り出すことによって取得する。
【0043】
次に、図3のプロセスS20において、OCTデータ処理ハードウェア130は、前述の補正アルゴリズム132を実行し、よって複素体積OCTデータから成分の少なくとも一部を除去することにより、補正複素体積OCTデータ160を生成する。
【0044】
図2を参照して前述したプログラマブル信号処理ハードウェア200の形態で実行されるOCTデータ処理ハードウェア130によって図3のプロセスを実行することができ、OCTデータ処理ハードウェア130は、コンピュータプログラムが1つ以上のプロセッサによって実行されると、複素体積OCTデータ補正コンピュータプログラムに含まれる命令に従って動作する。CD-ROM、DVDROMなどの形態である非一時的なコンピュータ可読記憶媒体などのコンピュータプログラム製品、又はコンピュータ可読命令を担持するコンピュータ可読信号にこのコンピュータプログラムを記憶することができる。
【0045】
複素体積OCTデータ補正コンピュータプログラムは、検出信号Sに基づいて撮像対象140の複素容積測定OCTデータを同様に生成するコンピュータプログラムの一部を形成することができ、あるいは、検出信号Sに基づいて撮像対象140の複素体積OCTデータを生成する同一の1つ以上のプロセッサによって実行されても実行されなくてもよい別個のプログラムとすることができる。複素体積OCTデータ補正コンピュータプログラムが1つ以上のプロセッサの第1のセットによって実行される一方で、撮像対象140の複素体積OCTデータが(異なる)1つ以上のプロセッサの第2のセットによって検出信号Sに基づいて生成される実施において、1つ以上のプロセッサの第1のセットは、プロセッサの2つのセット間の適切なインターフェースを介して1つ以上のプロセッサの第2のセットから撮像対象140の複素体積OCTデータを受信することにより、図3のプロセスS10においてこのデータを取得することができる。
【0046】
図4は、本明細書の第1の例示実施形態の非共焦点点走査式FD-OCTシステムのさらなる詳細を示しており、具体的には、FD-OCT撮像システム100が非共焦点点走査式波長掃引型OCT(SS-OCT)撮像システム300の形態で提供される場合に実施可能なシステムの構成要素の態様を示している。
【0047】
図4に示すように、光ビーム発生器150は、例えば波長掃引(又は「波長可変」)レーザの形態の掃引光源152-1を備えており、これは、出力されたレーザ光の波長を、狭い瞬間線幅を維持しながら波長の範囲にわたって経時的に(好ましくは線形に)変化させるよう構成されている。波長可変レーザは、例えば、ファブリペロー波長可変フィルタもしくはポリゴン走査ミラーを有するフーリエ領域モードロッキング(FDML)レーザ、又は微小電気機械システム(MEMS)を有するマイクロキャビティ波長可変レーザに基づいたものなど、当業者に知られているタイプのものとすることができる。掃引光源152-1の中央周波数は撮像対象に応じて選択され、通常、例えば眼科の用途ではスペクトルの近赤外線又は赤外線部分(通常は約1050nm)にある。
【0048】
掃引光源152-1によって出力された光は光ファイバーに結合され、次いで、本例示実施形態の光ファイバーの実施のように、光ファイバーカプラとすることのできるスプリッタ153によって2つの部分に分割される。あるいは、SS-OCT撮像システム300の代わりのフリースペースの実施においてスプリッタ153をビームスプリッタの形態で提供してもよい。スプリッタ153の出力のうちの1つは、第1の光ファイバー154-1を介してビームスプリッタ310への第1の光路を辿る。スプリッタ153の第2の出力は、第2の光ファイバー154-2を介してビームスプリッタ320への第2の光路を辿る。したがって、第1の光ファイバー154-2は、掃引光源152-1から(任意のビームスプリッタ320を介して)走査システム110へ光を導くように配置されている。光ファイバー154-1及び154-2は単一モード光ファイバーであることが好ましい。
【0049】
参照光ビームLがビームスプリッタ310に入射する第1の光ファイバー154-1のコアの端部は参照光開口部155-1を提供し、光ビームLがビームスプリッタ320に入射する第2の光ファイバー154-2のコアの端部は光源開口部155-2を提供する。しかしながら、スプリッタ153がビームスプリッタであるSS-OCT撮像系300の代わりのフリースペースの実施では、光ビームL及び参照光ビームLの大きさを、掃引光源152-1の一部であるピンホール又はウィンドウなどを介して掃引光源152-1により設定することができる。
【0050】
ビームスプリッタ320は、光ビームLを走査システム110に反射させる。走査システム110は、撮像対象140をわたる光ビームLの2次元点走査を行い、点走査中に撮像対象140によって散乱された光を集めるように構成されている。
【0051】
本例示実施形態のように、走査システム110は走査素子及びミラーを備えることができ、走査システム110は、走査素子がミラーを介して撮像対象140をわたるように光ビームLを走査することによって2次元点走査を行うように構成されている。広視野網膜走査を行うことができるこのような走査システムの例が国際公開第WO2014/53824 A1号に記載されており、その内容全体が参照により本明細書に援用される。このような走査システムの構成要素が図5に示されており、光カプラ111、第1の走査素子112、第1の曲面ミラー113、第2の走査素子114及び第2の曲面ミラー115を備えている。光ビームLは、光カプラ111を介して走査システム110に入射する。そして、光ビームLは第1の走査素子112、第1の曲面ミラー113、第2の走査素子114及び第2の曲面ミラー115によって順に反射され、撮像対象140に入射する。撮像対象140によって散乱され、走査システム110によって集められた光Lは光ビームLと同じ光路だが逆の順番で辿って走査システム110を通り、光カプラ111を介して走査システム110を出る。
【0052】
2次元点走査は、第1の走査素子112が第1の軸116を中心に回転して撮像対象140をわたる第1の方向に光線Lを走査し、第2の走査素子114が第2の軸117を中心に回転して撮像対象140をわたる第2の方向(本例示実施形態のように第1の方向に対して直角であってもよい)に光線Lを走査することによって行われる。このように、第1の走査素子112及び第2の走査素子114を回転させることにより、光ビームLを撮像対象140上の任意の位置に向けることができる。第1の走査素子112及び第2の走査素子114の回転を走査システムコントローラ(図示せず)によって調整し、前述のように、光ビームLが所定の走査パターンに従って撮像対象140をわたって走査されるようにすることができる。
【0053】
図5の例では、第1の曲面ミラー113は楕円面ミラー(スリットミラーと呼ぶ)であり、第2の曲面ミラー115も楕円面ミラーである。これらの楕円面ミラーの各々は2つの焦点を有する。第1の走査素子112は第1の曲面ミラー113の第1の焦点に配置され、第2の走査素子114は第1の曲面ミラー113の第2の焦点に配置されている。また、第2の走査素子114は第2の曲面ミラー115の第1の焦点に配置され、撮像対象140(より具体的には、本例では眼の瞳孔)が第2の曲面ミラー115の第2の焦点に配置されている。
【0054】
第1の走査素子112及び第2の走査素子114は、本例示実施形態のようにそれぞれガルバノメータ光学スキャナ(すなわち「ガルボ」)であってもよいが、例えばMEMS走査ミラー又は共振走査ミラーなど、別のタイプの走査素子を代わりに使用することができる。
【0055】
再び図4を参照すると、光検出器120は本例示実施形態のように、第1の光検出器124-1及び第2の光検出器124-2を備えたバランス型検出器であってもよく、この例では、各光検出器はフォトダイオードの形態で設けられている(しかしながら、他の形態の光検出器を代わりに使用することもできる)。また、光検出器120は、第1の光検出器124-1及び第2の光検出器124-2の出力光電流の差に基づいて電圧検出信号Sを生成するトランスインピーダンス増幅器128を有する。第1の光検出器124-1及び第2の光検出器124-2は、点走査中に走査システム110によって集められた光Lと参照光Lとの干渉から生じ、ビームスプリッタ310において重畳された干渉光Li1及びLi2をそれぞれ検出するように構成されている。第1の光検出器124-1は、第3の光ファイバー125-1のコアの端部の形態で設けられた第1の光検出開口部122-1を介して干渉光Li1を受光し、第2の光検出器124-2は、第4の光ファイバー125-2のコアの端部の形態で設けられた第2の光検出開口部122-2を介して干渉光Li2を受光する。第3の光ファイバー125-1及び第4の光ファイバー125-2を本例示実施形態のように共にマルチモード光ファイバーとし、これらは検出開口部122-1及び122-2からそれぞれ光検出器124-1及び124-2に光を導くように機能することができる。これらのマルチモード光ファイバーは同じ直径を有してもよいし、有していなくてもよい。しかしながら、干渉光Li1及びLi2は、光ファイバー125-1及び125-2によって光検出器124-1及び124-2に導かれる必要はなく、光検出器の一部として形成されたピンホール、ウィンドウなどの形態でそれぞれ設けられたそれぞれの検出開口部を介して、光検出器124-1及び124-2によって直接集められてもよいことに留意されたい。
【0056】
参照光Lは、点走査中に走査システム110によって集められた光Lの全てと干渉する。光Lは焦点ぼけをある程度含むため、光ビーム発生器150によって生成された光ビームLよりも大きいビームサイズを有する場合がある。よって、本例示実施形態では同一種類の単一モードファイバーが第1の光ファイバー154-1及び第2の光ファイバー154-2の双方に使用されており、参照光開口部155-1及び光源開口部155-2は同じサイズであるため、光Lはさらに参照光Lよりも大きいビームサイズを有する場合がある。集められた全ての光Lが参照光Lと干渉することを確実にするために、第1の光学系121(例えば1つ以上のレンズ)がSS-OCT撮像システム300に含まれており、集められた光Lのビームサイズが参照光Lのビームサイズと等しいか又はそれよりも小さくなるように光Lのビームサイズを縮小する。あるいは、集められた光Lのビームサイズを縮小するのではなく、参照光Lが通過する光学素子(例えば1つ以上のレンズ)によって、又はより大きな参照光開口部155-1を使用することによって(例えば、光ファイバー154-2よりも大きな径の光ファイバーを光ファイバー154-1として使用することによって)参照光ビームLを拡大することができる。
【0057】
通常、バランス型光検出器の使用は信号対雑音の増大を達成するために好ましいが、ある例示実施形態ではバランス型光検出器を単一の光検出器に置き換えることができる。このような変形例では、前述の光検出器124-1及び124-2のうちの1つのみを保持し、トランスインピーダンス増幅器128を省略し、単一の光検出器が検出信号SをOCTデータ処理ハードウェア130に出力する。
【0058】
本例示的実施形態では、マルチモード光ファイバー125-1及び125-2がそれぞれの検出開口部122-1及び122-2を提供するように使用され、干渉光Li1及びLi2を光検出器124-1及び124-2に導く。これは、通常単一モード光ファイバーがこれらの目的を果たす従来の共焦点点走査式FD-OCT撮像システムとは顕著な相違点である。というのも、このような従来のシステムにおける干渉計のサンプルアーム及び参照アームは一般に単一モード光ファイバーを使用して実施されるためである(マルチモード光ファイバーを使用するとその中の光ビームにモード分散が生じるため)。通常は、同一の単一モード光ファイバーが、サンプルビームを撮像対象に伝送し、撮像対象から散乱した光を光カプラに戻すように使用され、光カプラはOCT光源からの光を分割して干渉計のサンプルアーム及び参照アームに沿って光を移動させる。散乱光と参照光との間の干渉は光カプラにおいて生じる。よって、この従来の光学セットアップでは、単一モード光ファイバーの端部が光源開口部及び検出開口部の双方を効果的に提供しており、これは、これらの開口部が異なる光ファイバーの端部によって提供される本例示実施形態の非対称構成とは対照的である。光検出器120の光ファイバー125-1及び125-2は、干渉光Li1及びLi2をそれぞれの光検出器124-1及び124-2に導くように機能するため、モード分散は問題ではなく(重要なのは光検出器における光子の数のみであるため)、よって光ファイバー125-1及び125-2が単一モードファイバーである必要はない。
【0059】
[第2の実施形態]
図6は、本明細書の第2の例示実施形態による非共焦点点走査式スペクトル領域OCT(SD-OCT)撮像システム400の概略図である。
【0060】
本例示実施形態のSD-OCT撮像システム400は、第1の例示実施形態と同様の走査システム110、OCTデータ処理ハードウェア130、ビームスプリッタ310、320及び第1の光学系121を備えている。これらの構成要素、そして図5の第1の例示実施形態と同一の参照番号が付されたSD-OCT撮像システム400の他の構成要素については再度説明しない。本実施形態は、光検出器120’及び光ビーム発生器150’の構成が図5の第1の実施形態と異なっており、これらについて図6を参照して説明する。
【0061】
光ビーム発生器150’は広帯域光源152-2を備えており、これを本例示実施形態のようにスーパールミネッセントダイオードとすることができる。光検出器120’は、干渉信号のスペクトルを光の波長の関数として測定するように構成された分光計129を備えている。OCTデータ処理ハードウェア130によって、スペクトルのデータをk空間において均等に再スケーリングしてサンプリングし、それからフーリエ変換を適用してA走査を得ることができる。
【0062】
前述の説明では、いくつかの例示実施形態を参照して例示的な態様を説明している。したがって、本明細書は、限定的なものではなく例示的なものとみなすべきである。同様に、例示実施形態の機能性及び利点を強調する、図面に示した数字は、あくまで参考として提示されている。例示実施形態の構造は十分に柔軟であり、構成可能であるため、添付の図面に示された方法以外の方法で利用することができる。
【0063】
1つの例示実施形態において、本明細書で提示した例のいくつかの態様(撮像対象140の複素体積OCTデータを生成するための検出信号Sの処理、及び補正アルゴリズム132など)を、製品(それぞれが非一時的でありうる機械アクセス可能媒体、機械可読媒体、命令記憶装置又はコンピュータ可読記憶装置など)に含まれたか又は記憶されたコンピュータプログラム又はソフトウェア(命令もしくは一連の命令を有する1つ又は複数のプログラムなど)として提供することができる。非一時的な機械アクセス可能媒体、機械可読媒体、命令記憶装置又はコンピュータ可読記憶デバイス上のプログラム又は命令を用いて、コンピュータシステム又は他の電子デバイスをプログラムすることができる。機械可読媒体又はコンピュータ可読媒体、命令記憶装置及び記憶装置は、フロッピー(登録商標)ディスケット、光ディスク及び光磁気ディスク、又は、電子命令の記憶もしくは送信に適した他のタイプの媒体可読媒体、機械可読媒体、命令記憶装置もしくは記憶装置を含むことができるが、これらに限定されるものではない。本明細書で説明した技術は特定のソフトウェア構成に限定されない。これらの技術は、いずれのコンピューティング環境又は処理環境においても適用可能性を見出すことができる。本明細書で使用した「コンピュータ可読」、「機械アクセス可能媒体」、「機械可読媒体」、「命令記憶装置」及び「コンピュータ可読記憶装置」という用語は、機械、コンピュータ又はコンピュータプロセッサによる実行のために命令又は一連の命令を記憶、符号化又は送信することが可能であり、かつ機械/コンピュータ/コンピュータプロセッサに本明細書で説明した方法のいずれか1つを実行させる任意の媒体を含むものとする。さらに、何らかの形態のソフトウェア(例えばプログラム、手順、プロセス、アプリケーション、モジュール、ユニット、論理など)を、アクションを実行するもの又は結果を生じるものとして言及することは当技術分野では一般的である。そのような表現は、処理システムがソフトウェアを実行することにより、プロセッサにアクションを実行させて結果を生じさせることを述べる簡潔な方法にすぎない。
【0064】
特定用途向け集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイの準備により、又は従来の構成要素回路の適切なネットワークを相互接続することにより、OCTデータ処理ハードウェア130の機能の一部又は全部を実施することもできる。
【0065】
コンピュータプログラム製品は、命令を記憶した記憶媒体、命令記憶装置又は記憶装置の形態で提供が可能であり、コンピュータプログラム製品を用いて、本明細書で説明した例示実施形態の手順のいずれかを実行するようにコンピュータ又はコンピュータプロセッサを制御したり、例示実施形態の手順のいずれかをコンピュータ又はコンピュータプロセッサに実行させたりすることができる。記憶媒体/命令記憶装置/記憶装置は、例として光ディスク、ROM、RAM、EPROM、EEPROM、DRAM、VRAM、フラッシュメモリ、フラッシュカード、磁気カード、光カード、ナノシステム、分子メモリ集積回路、RAID、リモートデータ記憶装置/アーカイブ/ウェアハウジング、ならびに/又は命令及び/もしくはデータを記憶するのに適した任意の他のタイプのデバイスを含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0066】
コンピュータ可読媒体、命令記憶装置又は記憶装置のいずれか1つに記憶されるいくつかの実施は、システムのハードウェアの双方を制御し、システム又はマイクロプロセッサが本明細書で説明した例示実施形態の結果を利用して人間のユーザ又は他のメカニズムと対話できるようにするためのソフトウェアを含む。このようなソフトウェアは、デバイスドライバ、オペレーティングシステム及びユーザアプリケーションを含むことができるが、これらに限定されるものではない。最終的に、このようなコンピュータ可読媒体又は記憶装置は、前述のように、本発明の例示態様を実行するためのソフトウェアをさらに含む。
【0067】
システムのプログラミング及び/又はソフトウェアに含まれるのは、本明細書に記載の手順を実施するためのソフトウェアモジュールである。本明細書のいくつかの例示実施形態において、モジュールはソフトウェアを含むが、本明細書の他の例示実施形態では、モジュールは、ハードウェア、又はハードウェアとソフトウェアの組み合わせを含む。
【0068】
本発明の様々な例示実施形態について上記に説明したが、これらの実施形態は例として提示されたものであり、限定されるものではないことを理解されたい。当業者にとっては、形態及び詳細において種々の変更が可能なことは明らかであろう。したがって、本発明は、上記の例示実施形態のいずれによっても限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲及びそれらの同等物に従ってのみ定義されるべきである。
【0069】
さらに、要約書の目的は、特許庁及び一般の人々、特に特許用語、法律用語又は表現法に精通していない当該技術分野の科学者、技術者及び実務者が一見して本願の技術開示の性質及び本質を迅速に確認できるようにすることである。要約書は、本明細書に示された例示実施形態の範囲に関して、いかなる方法においても限定されることを意図しているわけではない。また、特許請求の範囲に記載されたいずれの手順も、提示された順序で実行する必要がないことを理解されたい。
さらに、要約書の目的は、特許庁及び一般の人々、特に特許用語又は法律用語又は表現法に精通していない当該技術分野の科学者、技術者及び実務者が、出願の技術的開示の性質及び本質を、迅速に検索することができるようにすることである。要約書は、ここに示された実施例の範囲に関して、いかなる方法においても限定されることを意図しているわ
けではない。また、特許請求の範囲に記載されたいずれの手順も、提示された順序で実施する必要がないものであることを理解されたい。
【0070】
本明細書は多くの具体的な実施形態の詳細を含むが、これらは、いかなる発明の範囲又は特許請求の範囲に記載されうるものを制限するものとして解釈されるべきではなく、むしろ、本明細書に記載される特定の実施形態に特有の特徴の説明として解釈されるべきである。別個の実施形態との関連で本明細書に記載されている特定の特徴も、単一の実施形態において組み合わせて実施することができる。逆に、単一の実施形態との関連で記載されている種々の特徴を、複数の実施形態において別々に、又は任意の適切な組み合わせで実施することも可能である。さらに、このような特徴は特定の組み合わせで作用するものとして上記で説明され、当初そのように主張されたとしても、特許請求の範囲に記載された組み合わせからの1つ以上の特徴は、場合によってはその組み合わせから切除することができ、特許請求の範囲に記載された組み合わせをサブコンビネーション又はサブコンビネーションの変形に向けることができる。
【0071】
特定の状況下では、多段階処理及び並列処理が有利な場合がある。さらに、前述の実施形態における種々の構成要素の分離は、全ての実施形態においてそのような分離を必要とするものとして理解されるべきではなく、説明したプログラム構成要素及びシステムは、一般に、単一のソフトウェア製品において一緒に統合されうるか、又は複数のソフトウェア製品にパッケージ化されうることを理解されたい。
【0072】
いくつかの例示実施形態及び実施形態を説明してきたが、上記の内容は例示的であって限定的なものではなく、例として示されたことが明らかである。特に、本明細書で示した例の多くは装置又はソフトウェア要素の特定の組み合わせを含むが、これらの要素は、同一の目的を達成するために他の方法で組み合わされてもよい。1つの実施形態に関連してのみ論じられる行為、要素及び特徴は、他の実施形態又は実施形態における同様の役割から除外されるように意図されるものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6