IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 鹿島建設株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-屋上配管取出構造 図1
  • 特許-屋上配管取出構造 図2
  • 特許-屋上配管取出構造 図3
  • 特許-屋上配管取出構造 図4
  • 特許-屋上配管取出構造 図5
  • 特許-屋上配管取出構造 図6
  • 特許-屋上配管取出構造 図7
  • 特許-屋上配管取出構造 図8
  • 特許-屋上配管取出構造 図9
  • 特許-屋上配管取出構造 図10
  • 特許-屋上配管取出構造 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】屋上配管取出構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 5/00 20060101AFI20240422BHJP
   F16L 5/02 20060101ALI20240422BHJP
   E04F 17/08 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
F16L5/00 N
F16L5/02 P
E04F17/08 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023110078
(22)【出願日】2023-07-04
【審査請求日】2023-07-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾嶋 雅也
(72)【発明者】
【氏名】堀田 基文
(72)【発明者】
【氏名】木村 友昭
(72)【発明者】
【氏名】古田 和真
(72)【発明者】
【氏名】西山 光佳
(72)【発明者】
【氏名】水野 和亮
【審査官】広瀬 雅治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0093813(US,A1)
【文献】実開平05-052474(JP,U)
【文献】中国実用新案第203979666(CN,U)
【文献】特開2015-078746(JP,A)
【文献】特開2017-066699(JP,A)
【文献】登録実用新案第3237850(JP,U)
【文献】実開昭52-163228(JP,U)
【文献】実開昭54-107224(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 5/00
F16L 5/02
E04F 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋上スラブに設けられた貫通孔を通じて屋外へと設置される配管を取り出すための屋上配管取出構造であって、
下方において開口する下方開口部と、側面において開口する側面開口部と、を有し、前記貫通孔を覆うように前記屋上スラブ上に設置される箱体と、
前記側面開口部に前記箱体の外側に向かって着脱可能に取り付けられ、前記配管が挿通する挿通孔が形成されたパネル材と、を備え、
前記箱体は、金属製の板材で形成され、
前記パネル材は、アルミ製またはアルミ合金製の板材で形成され、前記挿通孔が予め形成されており、
前記側面開口部は、前記側面に貫通して形成された貫通孔である屋上配管取出構造。
【請求項2】
屋上スラブに設けられた貫通孔を通じて屋外へと設置される配管を取り出すための屋上配管取出構造であって、
下方において開口する下方開口部と、側面において開口する側面開口部と、を有し、前記貫通孔を覆うように前記屋上スラブ上に設置される箱体と、
前記側面開口部に着脱可能に取り付けられ、前記配管が挿通する挿通孔が形成されたパネル材と、を備え、
前記箱体は、金属製の板材で形成され、
前記側面開口部は、前記側面に貫通して形成された貫通孔であり、
前記側面開口部の内縁には、前記箱体の内側に向かって折り曲げられた折り曲げ部が全周にわたって設けられており、
前記パネル材の外縁には、前記箱体の内側に向かって折り曲げられた折り曲げ部が全周にわたって設けられており、
前記パネル材は、前記側面開口部の前記折り曲げ部の先端部を折り曲げることによって形成された取付部に、前記パネル材の前記折り曲げ部の先端部を折り曲げることによって形成されたフランジ部が固定されることにより前記側面開口部に取り付けられ、
前記側面開口部の前記折り曲げ部と前記パネル材の前記折り曲げ部との間に形成された隙間であって、前記フランジ部が臨む隙間にはシール材が充填される屋上配管取出構造。
【請求項3】
屋上スラブに設けられた貫通孔を通じて屋外へと設置される配管を取り出すための屋上配管取出構造であって、
下方において開口する下方開口部と、側面において開口する側面開口部と、を有し、前記貫通孔を覆うように前記屋上スラブ上に設置される箱体と、
前記側面開口部に着脱可能に取り付けられ、前記配管が挿通する挿通孔が形成されたパネル材と、を備え、
前記箱体の側面には、折り曲げ部が全周にわたって設けられており、
前記箱体は、前記屋上スラブのうち、前記貫通孔を囲んで立ち上がる立上り部に取り付けられた部材に、前記折り曲げ部の先端部を折り曲げることによって形成された縁部が固定されることにより前記屋上スラブ上に設置され、
前記立上り部と前記折り曲げ部との間に形成された隙間であって、前記縁部が臨む隙間にはシール材が充填される屋上配管取出構造。
【請求項4】
前記箱体は、
上方において開口する上方開口部と、
前記上方開口部を閉塞可能な蓋部材と、をさらに有する、
請求項1から3の何れか1つに記載の屋上配管取出構造。
【請求項5】
前記箱体は、
前記側面開口部が形成された側面に対向する対向側面に形成された対向開口部と、
前記対向開口部を閉塞可能な閉塞パネル材と、をさらに有する、
請求項1から3の何れか1つに記載の屋上配管取出構造。
【請求項6】
前記箱体は、金属製の板材で形成される、
請求項3に記載の屋上配管取出構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋上配管取出構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、屋外へと配管を取り出すために屋上スラブに設けられた貫通孔を通じて建築物の内部へと雨水が浸入することを防止するために施工されたコンクリート製の構造体、いわゆる、ハト小屋が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-284414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるようなコンクリート製のハト小屋を屋上スラブ上に施工する場合、鉄筋の配筋や型枠の設置、コンクリートの打設、コンクリートの養生、型枠の脱型といった多くの作業工程が必要となるため、施工が完了するまでに時間を要することになる。そして、ハト小屋の施工が完了するまでは、下階の天井裏での配管設置作業等に着手することができないことから、結果として建築物の施工期間が長期化してしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、建築物の施工期間を短縮させることが可能な屋上配管取出構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、屋上スラブに設けられた貫通孔を通じて屋外へと設置される配管を取り出すための屋上配管取出構造であって、下方において開口する下方開口部と、側面において開口する側面開口部と、を有し、貫通孔を覆うように屋上スラブ上に設置される箱体と、側面開口部に箱体の外側に向かって着脱可能に取り付けられ、配管が挿通する挿通孔が形成されたパネル材と、を備え、箱体は、金属製の板材で形成され、パネル材は、アルミ製またはアルミ合金製の板材で形成され、挿通孔が予め形成されており、側面開口部は、側面に貫通して形成された貫通孔である。また、本発明は、屋上スラブに設けられた貫通孔を通じて屋外へと設置される配管を取り出すための屋上配管取出構造であって、下方において開口する下方開口部と、側面において開口する側面開口部と、を有し、貫通孔を覆うように屋上スラブ上に設置される箱体と、側面開口部に着脱可能に取り付けられ、配管が挿通する挿通孔が形成されたパネル材と、を備え、箱体は、金属製の板材で形成され、側面開口部は、側面に貫通して形成された貫通孔であり、側面開口部の内縁には、箱体の内側に向かって折り曲げられた折り曲げ部が全周にわたって設けられており、パネル材の外縁には、箱体の内側に向かって折り曲げられた折り曲げ部が全周にわたって設けられており、パネル材は、側面開口部の折り曲げ部の先端部を折り曲げることによって形成された取付部に、パネル材の折り曲げ部の先端部を折り曲げることによって形成されたフランジ部が固定されることにより側面開口部に取り付けられ、側面開口部の折り曲げ部とパネル材の折り曲げ部との間に形成された隙間であって、フランジ部が臨む隙間にはシール材が充填される。また、本発明は、屋上スラブに設けられた貫通孔を通じて屋外へと設置される配管を取り出すための屋上配管取出構造であって、下方において開口する下方開口部と、側面において開口する側面開口部と、を有し、貫通孔を覆うように屋上スラブ上に設置される箱体と、側面開口部に着脱可能に取り付けられ、配管が挿通する挿通孔が形成されたパネル材と、を備え、箱体の側面には、折り曲げ部が全周にわたって設けられており、箱体は、屋上スラブのうち、貫通孔を囲んで立ち上がる立上り部に取り付けられた部材に、折り曲げ部の先端部を折り曲げることによって形成された縁部が固定されることにより屋上スラブ上に設置され、立上り部と折り曲げ部との間に形成された隙間であって、縁部が臨む隙間にはシール材が充填される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、建築物の施工期間を短縮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る屋上配管取出構造の断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る屋上配管取出構造の正面図である。
図3】本発明の実施形態に係る屋上配管取出構造の背面図である。
図4図1の矢印Bで示される部分を拡大して示した拡大図である。
図5図1の矢印Cで示される部分を拡大して示した拡大図である。
図6図1の矢印Dで示される部分を拡大して示した拡大図である。
図7図1の矢印Eで示される部分を拡大して示した拡大図である。
図8】本発明の実施形態に係る屋上配管取出構造の第1変形例の正面図である。
図9】本発明の実施形態に係る屋上配管取出構造の第2変形例の正面図である。
図10】本発明の実施形態に係る屋上配管取出構造の第3変形例の拡大図である。
図11】本発明の実施形態に係る屋上配管取出構造の第4変形例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る屋上配管取出構造について説明する。
【0010】
本発明の実施形態に係る屋上配管取出構造100は、図1に示されるように、空調配管や給水配管といった配管1を建築物の屋上側へと通すために屋上スラブ10に設けられた貫通孔11を通じて雨水が屋内に浸入することを防止するための構造体であり、従来、屋上スラブ10上に形成されていたハト小屋と称される鉄筋コンクリート造等の防雨構造体に代わって用いられるものである。
【0011】
図1は、屋上配管取出構造100の断面図であり、図2のA-A線に沿う断面を示している。図2は、屋上配管取出構造100の正面図であり、図3は、屋上配管取出構造100の背面図である。また、図4、5、6及び7は、図1において矢印B、C、D及びEで示された部分をそれぞれ拡大して示した拡大図である。
【0012】
屋上配管取出構造100は、屋上スラブ10に設けられた貫通孔11を覆うように屋上スラブ10上に設置される箱体20と、箱体20に着脱可能に取り付けられ配管1が挿通する挿通孔54を有するパネル材50と、を備える。なお、パネル材50を介して屋外へと取り出される配管1は、空調配管や給水配管といった流体用の配管に限定されず、管状の形態によって屋内から屋上へと取り回されるものであればどのようなものであってもよく、例えば、電源配線や信号配線といったケーブルであってもよい。
【0013】
箱体20は、アルミ製またはアルミ合金製の板材によって略直方体状に形成された中空の構造体であり、板材の継ぎ目となる各辺や頂点は、気密性を確保するためにそれぞれ溶接接合されている。なお、箱体20の材質は、アルミやアルミ合金に限定されないが、気密性を確保する観点からは溶接可能な金属製であることが好ましく、特に設置作業性の観点からは、箱体20の重量を軽くすることが可能なアルミやアルミ合金であることが好ましい。また、加工性の観点からも、箱体20の材質は、加工性が比較的容易なアルミやアルミ合金であることが好ましい。また、箱体20の変形を抑える必要性がある場合には、剛性の高い亜鉛メッキ鋼板やステンレス鋼板が用いられてもよい。
【0014】
箱体20は、一側面において開口しパネル材50が着脱可能に取り付けられる側面開口部21と、下方において開口し貫通孔11よりも大きい開口面積を有する下方開口部22と、を有し、箱体20の外形の大きさ(三辺寸法)は、側面開口部21の大きさ、すなわち、パネル材50により保持される配管1の外径の大きさやその数、及び、下方開口部22の大きさ、すなわち、貫通孔11の大きさなどを考慮して適宜設定される。
【0015】
箱体20は、図4に示されるように、下端に形成された下端縁部27を介して、屋上スラブ10のうち、貫通孔11を囲んで立ち上がる立上り部12の上面に設置される。なお、下端縁部27により囲まれた開口部が下方開口部22となる。
【0016】
下端縁部27は、箱体20の側面25の下方部分を全周にわたって内側に向かって折り曲げることによって形成された第1折り曲げ部26(折り曲げ部)の先端部を、下方に向かって側面25とほぼ平行となるようにさらに折り曲げることによって形成された部分である。
【0017】
一方、立上り部12の上面には、固定方向線F1に沿って立上り部12に取り付けられた図示しないアンカーボルトを介してアングル材14の一方の辺が固定されている。このように立上り部12に固定されたアングル材14の他方の辺に対して、下端縁部27が固定方向線F2に沿って図示しないビス等の締結部材により固定されることによって、箱体20は、立上り部12の上面に取り付けられた状態となる。
【0018】
このように立上り部12に固定された箱体20の第1折り曲げ部26と立上り部12の上面との間には、図2図4に示されるように、シール材を充填可能な第1隙間G1(隙間)が全周にわたって形成される。なお、図2及び図3では、シール材が充填される隙間をわかりやすく示すために、シール材の図示を省略している。
【0019】
第1折り曲げ部26と立上り部12の上面との間の第1隙間G1には、最初に第1バックアップ材61aが装填され、その後、コーキングにより第1シール材62aが充填される。そして、第1シール材62aがある程度乾燥した後、第2バックアップ材61bが装填され、その後、コーキングにより第2シール材62bが充填される。
【0020】
このように、箱体20と立上り部12との間に全周にわたって設けられるシールを二重シールとすることにより、箱体20と立上り部12との間の隙間を通じて雨水が浸入することを確実に防止することができる。また、箱体20は、立上り部12の上面に設置されていることから、屋上スラブ10上に溜まった雨水が、箱体20と立上り部12との間の隙間に至りにくくなっている。なお、立上り部12を含む屋上スラブ10の表面には、予め塗膜防水等の防水処理が施されている。
【0021】
パネル材50は、アルミ製またはアルミ合金製の板材によって略平板状に形成された部材であり、平板部51と、平板部51の外縁に形成されるフランジ部53と、平板部51に貫通して形成される挿通孔54と、を有する。パネル材50は、フランジ部53を介して箱体20に着脱可能に取り付けられる。
【0022】
フランジ部53は、図5に示すように、平板部51の外縁を全周にわたって箱体20の内側に向かって折り曲げることによって形成された折り曲げ部52の先端部を、挿通孔54から離れる方向に向かって平板部51とほぼ平行となるようにさらに折り曲げることによって形成された部分である。
【0023】
一方、箱体20の側面25のうち、側面開口部21が設けられる第1側面25aには、パネル材50のフランジ部53が取り付けられる取付部29が環状に形成される。取付部29は、図5に示すように、第1側面25aに形成された開口部の内縁を全周にわたって箱体20の内側に向かって折り曲げることによって形成された第2折り曲げ部28の先端部を、挿通孔54に向かって第1側面25aとほぼ平行となるようにさらに折り曲げることによって形成された部分である。なお、取付部29により囲まれた開口部が上述の側面開口部21となる。
【0024】
このように箱体20の第1側面25aに形成された取付部29に対して、フランジ部53が固定方向線F3に沿って図示しないビスにより固定されることによって、パネル材50は、箱体20に取り付けられた状態となる。
【0025】
このように箱体20に固定されたパネル材50の折り曲げ部52と第1側面25aに設けられた第2折り曲げ部28との間には、図2及び図5に示されるように、シール材を充填可能な環状の第2隙間G2が形成される。
【0026】
この第2隙間G2には、最初に第1バックアップ材63aが装填され、その後、コーキングにより第1シール材64aが充填される。そして、第1シール材64aがある程度乾燥した後、第2バックアップ材63bが装填され、その後、コーキングにより第2シール材64bが充填される。
【0027】
このように、箱体20の第1側面25aとパネル材50との間に全周にわたって設けられるシールを二重シールとすることにより、箱体20とパネル材50との間の隙間を通じて雨水が浸入することを確実に防止することができる。
【0028】
また、パネル材50は、図6に示すように、平板部51から箱体20の外側に向かって筒状に形成された筒状部55を有しており、筒状部55の内周面が上述の挿通孔54となっている。なお、筒状部55は、平板部51に溶接固定されていてもよい。
【0029】
このように挿通孔54内に配置された配管1の外周面と筒状部55の内周面との間には、図2及び図6に示されるように、シール材を充填可能な環状の第3隙間G3が形成される。
【0030】
この第3隙間G3には、最初に第1バックアップ材65aが装填され、その後、コーキングにより第1シール材66aが充填される。そして、第1シール材66aがある程度乾燥した後、第2バックアップ材65bが装填され、その後、コーキングにより第2シール材66bが充填される。
【0031】
このように、パネル材50と配管1との間に全周にわたって設けられるシールを二重シールとすることにより、パネル材50と配管1との間の隙間を通じて雨水が浸入することを確実に防止することができる。
【0032】
パネル材50を介して屋外へと取り出される配管1は、図1に示されるように、屋上スラブ10を構成するデッキプレート13に形成された貫通孔13aと、屋上スラブ10に設けられた貫通孔11と、を通って箱体20内へと至っており、必要に応じて、貫通孔11に設けられたスリーブ材16に取り付けられた支持ブラケット17により支持される。なお、支持ブラケット17は、スリーブ材16に代えて、図示しないアンカーボルトを介して立上り部12に取り付けられていてもよい。
【0033】
また、デッキプレート13に形成された貫通孔13aと配管1との間の隙間は、アルミテープ等の封止部材18によって封止され、屋上スラブ10に設けられた貫通孔11と配管1との間には、グラスウール等の断熱材15が所定の厚さとなるまで敷き込まれる。
【0034】
このように断熱材15や封止部材18が適宜設けられることによって、箱体20内の空間と屋内空間との間における熱の出入り及び空気の出入りが遮断されるため、結果として、箱体20内で結露が生じることが抑制される。また、断熱材15は、箱体20に雨が当たることによって生じる雨音が屋内に響くことを防止する吸音材としても機能する。なお、箱体20内での結露の発生や雨音が屋内に響くことをさらに防止するために、箱体20の外面を覆うように断熱材や吸音材を設けてもよい。
【0035】
ここで、図2に示される屋上配管取出構造100では、2つの略同径の配管1が屋上へと取り出されているが、配管1の径や本数に変更があった場合には、パネル材50が、変更後の配管1の仕様に合わせて筒状部55の位置や大きさが変更されたものに交換される。
【0036】
具体的には、例えば、図8に示す変形例のように、配管1の数及び外径に変更があった場合、従来のような鉄筋コンクリート造等のハト小屋では、配管1を通す孔の径を変えたり孔の数を増やしたりすることは実質的に困難であるのに対して、上記構成の屋上配管取出構造100では、各配管1に対応した挿通孔154が形成されたパネル材150を箱体20に取り付けることによって、容易に対応することが可能である。
【0037】
また、上記構成の屋上配管取出構造100では、図9に示す変形例のように、配管1の断面形状が略矩形状である場合も、配管1の断面形状に対応した挿通孔254が形成されたパネル材250を箱体20に取り付けることによって、容易に対応することが可能である。なお、断面形状が略矩形状の配管1内には、図示しない複数の配管が配置されていてもよい。
【0038】
また、箱体20には、側面開口部21及び下方開口部22に加えて、上方において開口する上方開口部31と、上方開口部31を閉塞可能な蓋部材32と、側面開口部21が形成された第1側面25aに対向する第2側面25b(対向側面)に形成された対向開口部41と、対向開口部41を閉塞可能な閉塞パネル材42と、が設けられ、蓋部材32及び閉塞パネル材42は、箱体20の本体部23に対して着脱可能に取り付けられている。
【0039】
蓋部材32は、図1及び図7に示されるように、矩形状の天板部33と、天板部33から下方に向かって延びる側面34と、側面34の下方部分を全周にわたって内側に向かって折り曲げることによって形成された第3折り曲げ部35と、第3折り曲げ部35の先端部を下方に向かって側面34とほぼ平行となるようにさらに折り曲げることによって形成された下端縁部36と、を有する。
【0040】
このように形成された蓋部材32は、下端縁部36を介して、本体部23の側面25の上端縁部38に取り付けられる。なお、蓋部材32の上面に雨水が溜まらないようにするために、天板部33は、水平面に対して緩やかな勾配を有していることが好ましい。
【0041】
側面25の上端縁部38は、図7に示されるように、箱体20の側面25の上方部分を全周にわたって内側に向かって折り曲げることによって形成された第4折り曲げ部37の先端部を、上方に向かって側面25とほぼ平行となるようにさらに折り曲げることによって形成された部分である。なお、上端縁部38により囲まれた開口部が上方開口部31となる。
【0042】
このように側面25に形成された上端縁部38に対して、蓋部材32の下端縁部36が固定方向線F4に沿って図示しないビスにより固定されることによって、蓋部材32は、上方開口部31を閉塞した状態となる。
【0043】
蓋部材32の第3折り曲げ部35と側面25に設けられた第4折り曲げ部37との間には、図2図3及び図7に示されるように、シール材を充填可能な環状の第4隙間G4が形成される。
【0044】
この第4隙間G4には、上述の各隙間G1,G2,G3と同様に、バックアップ材67a,67bとシール材68a,68bがそれぞれ二重に設けられる。このため、蓋部材32が取り付けられる箇所を通じて雨水が浸入することを確実に防止することができる。
【0045】
閉塞パネル材42は、挿通孔54が設けられていないパネル材50と同様の形状であり、パネル材50と同様にして本体部23の側面25に取り付けられる。このため、その詳細な説明を省略する。
【0046】
また、閉塞パネル材42が取り付けられる箇所に形成される第5隙間G5(図3参照)には、上述の各隙間G1,G2,G3,G4と同様に、バックアップ材とシール材がそれぞれ二重に設けられる。このため、閉塞パネル材42が取り付けられる箇所を通じて雨水が浸入することを確実に防止することができる。
【0047】
このように上方開口部31と対向開口部41とが箱体20に設けられることによって、貫通孔11及び下方開口部22を通じて屋内から複数の配管1を取り出して箱体20の側面開口部21へと送り出す作業や、側面開口部21、下方開口部22及び貫通孔11を通じて屋外から屋内へと複数の配管1を送り出す作業、箱体20内において配管1同士を接続する作業、貫通孔11に設けられたスリーブ材16に支持ブラケット17を介して配管1を固定する作業といった箱体20内で行われる作業の作業性を向上させることができる。
【0048】
特に、パネル材50が取り付けられる第1側面25aに対向する第2側面25b(対向側面)に対向開口部41が設けられることによって、貫通孔11からパネル材50に向かって延びる複数の配管1の状態を、対向開口部41を通じて目視により容易に確認することができる。
【0049】
このように、上方開口部31及び対向開口部41は、作業用開口部として機能するとともに点検用開口部としても機能する。なお、上方開口部31及び対向開口部41の何れか一方の開口部を通じて、作業や点検を十分行うことが可能である場合には、他方の開口部は設けられなくてもよい。
【0050】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0051】
上記構成の屋上配管取出構造100において、貫通孔11を覆うように屋上スラブ10上に設置される箱体20は、下方において開口する下方開口部22と、側面において開口する側面開口部21と、を有し、側面開口部21に着脱可能に取り付けられるパネル材50には、配管1が挿通する挿通孔54が設けられる。
【0052】
このため、パネル材50が取り付けられた箱体20を、貫通孔11を覆うように屋上スラブ10上に設置するだけで、貫通孔11を通じて屋上へと配管1を取り出すことが可能となるとともに、貫通孔11を通じて雨水が屋内に浸入することを防止することが可能となる。これにより、貫通孔11を通じて雨水が浸入することを防止するために、従来の鉄筋コンクリート造等のハト小屋を屋上スラブ10上に施工することが不要となることから、結果として、建築物の施工期間を短縮させることができる。
【0053】
具体的には、例えば、鉄筋コンクリート造等のハト小屋を屋上スラブ10上に施工する場合、ハト小屋の施工が完了するまでは屋内から配管1を立ち上げることができず、下階での内装工事が遅延してしまうおそれがあるが、上記構成の屋上配管取出構造100では、例えば、貫通孔11を覆うように箱体20を屋上スラブ10上に設置し、防水シート等で箱体20を覆うことによって、屋内へ雨水が浸入することを防止することができるため、屋上側で行われる防水等の工事と屋内側で行われる内装工事とを同時並行で進行させることが可能となる。
【0054】
また、配管1は、箱体20に着脱可能なパネル材50を介して屋外へと取り出されることから、配管1の数や径、断面形状に変更があった場合であっても、変更後の配管1に応じた挿通孔54が形成されたパネル材50を予め用意しておくことによって、建築物の改修施工期間を短縮させることができるとともに、改修費用を低減させることができる。
【0055】
なお、次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0056】
上記実施形態では、箱体20は、屋上スラブ10から立ち上がる立上り部12の上面に設置されている。これに代えて、箱体20は、屋上スラブ10上に直接設置されてもよい。なお、屋上スラブ10上に溜まった雨水が貫通孔11を通じて屋内に浸入しにくくするためには、貫通孔11を囲んで立ち上がる立上り部12を設け、その上に箱体20を設置することが好ましい。
【0057】
また、上記実施形態では、パネル材50と第1側面25aとの間に形成される隙間は、シール材64a,64bによって封止されている。これに代えて、パネル材350と第1側面25aとの間に形成される隙間は、図10に示される変形例のように、箱体20とパネル材350とにより挟持されるガスケット365によって封止されてもよい。この場合、パネル材350の平板部351が、固定方向線F5に沿って図示しないビス等の締結部材により箱体20の第1側面25aにガスケット365を介して固定されることによって、パネル材350は、箱体20に取り付けられた状態となる。なお、図10は、図5に相当する断面を示している。
【0058】
なお、シール性を向上させるために、パネル材350の平板部351の上方部分を第1側面25aから離れる方向に向かって折り曲げることによって形成された折り曲げ部352の先端部を、上方に向かって平板部351とほぼ平行となるようにさらに折り曲げることによって、第1側面25aとの間にシール材を充填可能な第6隙間G6を構成するフランジ部353を形成してもよい。このように形成された第6隙間G6には、例えば、上方からコーキングによりシール材364aが充填される。なお、雨水の浸入を確実に防止するためには、パネル材350と箱体20とを締結するビス等の締結部材の周囲にもシール材をコーキングすることが好ましい。
【0059】
また、上記実施形態では、内周面がパネル材50の挿通孔54となっている筒状部55は、シール材66a,66bが充填される空間が確保される程度に平板部51から突出した形状となっている。これに代えて、内周面が挿通孔454となる筒状部455は、図11に示される変形例のように、開口端455aが下方を向くように、平板部451から屋上スラブ10に向かって比較的長く延びて形成されていてもよい。なお、図11は、図1に相当する断面を示している。
【0060】
このようにパネル材450に設けられた筒状部455の開口端455aが下方を向いている場合、筒状部455内を通じて雨水が浸入しにくくなるため、配管1と筒状部455との間にシール材を充填することが不要となる。また、筒状部455の断面形状は、円形に限定されず、例えば、略矩形状であってもよく、この場合、1つの筒状部455、すなわち、1つの挿通孔454を通じて複数の配管1を、シール材を介在させることなく、屋内から屋外へと容易に取り出すことが可能となる。なお、筒状部455は、平板部451に溶接固定されていてもよいし、図示しないボルト等の締結部材により平板部451に固定されていてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、箱体20やパネル材50,150,250,350,450には、折り曲げることにより形成される部位(例えば、下端縁部27やフランジ部53など)があると説明したが、これらの部位は各図に図示されるような形状となればどのような加工方法によって形成されてもよく、例えば、部材を直接的に折り曲げることによって形成されてもよいし、絞り加工等によって形成されてもよいし、部材同士を溶接接合することによって形成されてもよい。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0063】
100・・・屋上配管取出構造
1・・・配管
10・・・屋上スラブ
11・・・貫通孔
12・・・立上り部
20・・・箱体
21・・・側面開口部
22・・・下方開口部
25a・・・第1側面(側面)
25b・・・第2側面(対向側面)
26・・・第1折り曲げ部(折り曲げ部)
31・・・上方開口部
32・・・蓋部材
41・・・対向開口部
42・・・閉塞パネル材
50,150,250,350,450・・・パネル材
54,154,254,454・・・挿通孔
62a・・・第1シール材(シール材)
62b・・・第2シール材(シール材)
G1・・・第1隙間(隙間)
【要約】
【課題】建築物の施工期間を短縮する。
【解決手段】屋上配管取出構造100は、下方において開口する下方開口部22と側面において開口する側面開口部21とを有し貫通孔11を覆うように屋上スラブ10上に設置される箱体20と、側面開口部21に着脱可能に取り付けられ配管1が挿通する挿通孔54が形成されたパネル材50と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11