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特許7476430フレキシブルプリント回路基板及びフレキシブルプリント回路基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】フレキシブルプリント回路基板及びフレキシブルプリント回路基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/18 20060101AFI20240422BHJP
   H05K 3/24 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
H05K3/18 G
H05K3/24 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023531714
(86)(22)【出願日】2022-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2022021763
(87)【国際公開番号】W WO2023276510
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2021110599
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500400216
【氏名又は名称】住友電工プリントサーキット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深谷 洋介
(72)【発明者】
【氏名】新田 耕司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大介
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-116973(JP,A)
【文献】特開2014-75163(JP,A)
【文献】特開2004-259774(JP,A)
【文献】特開2005-191525(JP,A)
【文献】特開2005-210058(JP,A)
【文献】特開2006-66812(JP,A)
【文献】特開2007-165634(JP,A)
【文献】特開2012-80078(JP,A)
【文献】特開2017-224642(JP,A)
【文献】特開2020-47773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/00―3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルプリント回路基板であって、
第1面を有するベースフィルムと、
前記第1面上に配置されている第1配線とを備え、
前記第1配線は、前記第1面上に直接的又は間接的に配置されている第1層と、前記第1層を覆っている第2層とを有し、
前記第1面には、平面視において前記第1層の隣に第1溝が形成されており、
前記第2層は、前記第1層の側面並びに前記第1溝の底面及び側面に接する面を含む、フレキシブルプリント回路基板。
【請求項2】
前記第1溝の深さを前記ベースフィルムの厚さで除した値は、0.0005以上である、請求項1に記載のフレキシブルプリント回路基板。
【請求項3】
前記フレキシブルプリント回路基板の厚さは、200μm以下である、請求項に記載のフレキシブルプリント回路基板。
【請求項4】
前記第1層を構成している材料及び前記第2層を構成している材料は、同一である、請求項に記載のフレキシブルプリント回路基板。
【請求項5】
前記第1配線は、シード層をさらに有し、
前記第1層は、前記シード層を介して前記第1面上に配置されている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント回路基板。
【請求項6】
第2配線をさらに備え、
前記ベースフィルムは、前記第1面の反対面である第2面を有し、
前記第2配線は、前記第2面上に配置されており、
前記第2配線は、前記第2面上に配置されている第3層と、前記第3層を覆っている第4層とを有し、
前記第2面には、平面視において前記第3層の隣に第2溝が形成されており、
前記第4層は、前記第3層の側面並びに前記第2溝の底面及び側面に接する面を含む、請求項1に記載のフレキシブルプリント回路基板。
【請求項7】
フレキシブルプリント回路基板の製造方法であって、
第1面を有するベースフィルムを準備する工程と、
前記第1面上に配線を形成する工程とを備え、
前記配線を形成する工程は、前記第1面上に第1層を形成する工程と、前記第1層をマスクとして平面視において前記第1層の隣にある前記第1面に対してエッチングを行うことにより溝を形成する工程と、前記第1層を覆うように第2層を形成する工程と有し、
前記第2層は、前記第1層の側面並びに前記溝の底面及び側面に接する面を含む、フレキシブルプリント回路基板の製造方法。
【請求項8】
前記第1層を形成する工程は、
前記第1面上にシード層を形成する工程と、
前記シード層上にレジスト層を形成する工程と、
前記レジスト層をパターンニングする工程と、
パターンニングされた前記レジスト層から露出している前記シード層上に前記第1層をめっきする工程と、
パターンニングされた前記レジスト層及びパターンニングされた前記レジスト層の下にある前記シード層を除去する工程とを有する、請求項7に記載のフレキシブルプリント回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フレキシブルプリント回路基板及びフレキシブルプリント回路基板の製造方法に関する。本出願は、2021年7月2日に出願した日本特許出願である特願2021-110599号に基づく優先権を主張する。当該日本特許出願に記載された全ての記載内容は、参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
特開2016-9854号公報(特許文献1)に記載のフレキシブルプリント回路基板は、ベースフィルムと、ベースフィルムの表面上に配置されている配線とを有している。配線は、ベースフィルムの表面上に配置されている第1層と、第1層を覆っている第2層とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-9854号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示のフレキシブルプリント回路基板は、第1面を有するベースフィルムと、第1面上配置されている第1配線とを備える。第1配線は、第1面上に直接的又は間接的に配置されている第1層と、第1層を覆っている第2層とを有する。第1面には、平面視において第1層の隣に第1溝が形成されている。第2層は、第1層の側面並びに第1溝の底面及び側面に接する面を含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、フレキシブルプリント回路基板100の平面図である。
図2図2は、図1のII-IIにおける断面図である。
図3図3は、フレキシブルプリント回路基板100の製造方法の工程図である。
図4図4は、シード層形成工程S21を説明するための断面図である。
図5図5は、レジスト層形成工程S22aを説明するための断面図である。
図6図6は、めっき工程S22bを説明するための断面図である。
図7図7は、除去工程S22cを説明するための断面図である。
図8図8は、溝形成工程S23を説明するための断面図である。
図9図9は、フレキシブルプリント回路基板200の断面図である。
図10図10は、フレキシブルプリント回路基板100Aの断面図である。
図11図11は、フレキシブルプリント回路基板100Bの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示が解決しようとする課題]
特許文献1に記載のフレキシブルプリント回路基板では、配線が第1層及び第2層により形成されているため、配線を第1層のみで形成している場合と比較して、配線の電気抵抗値を下げることができる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のフレキシブルプリント回路基板では、配線の高さが大きくなる。そのため、特許文献1に記載のフレキシブルプリント回路基板を要求される厚さが小さい用途に適用しようとする場合、薄いベースフィルムを用いざるを得ない。フレキシブルプリント回路基板に薄いベースフィルムを用いると、フレキシブルプリント回路基板の搬送性が低下する。ここで、フレキシブルプリント回路基板の搬送性とは、搬送時に皺や折れが発生しにくいことを意味する。
【0008】
本開示は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。より具体的には、本開示は、配線の低抵抗化と搬送性の維持を両立することが可能なフレキシブルプリント回路基板を提供するものである。
【0009】
[本開示の効果]
本開示のフレキシブルプリント回路基板によると、配線の低抵抗化及び搬送性の維持を両立することが可能である。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
まず、本開示の実施形態を列記して説明する。
【0011】
(1)一実施形態に係るフレキシブルプリント回路基板は、第1面を有するベースフィルムと、第1面上配置されている第1配線とを備えている。第1配線は、第1面上に直接的又は間接的に配置されている第1層と、第1層を覆っている第2層とを有する。第1面には、平面視において第1層の隣に第1溝が形成されている。第2層は、第1層の側面並びに第1溝の底面及び側面に接する面を含む。
【0012】
上記(1)のフレキシブルプリント回路基板によると、配線の低抵抗化及び搬送性の維持を両立することが可能である。
【0013】
(2)上記(1)のフレキシブルプリント回路基板では、溝の深さをベースフィルムの厚さで除した値が、0.0005以上であってもよい。
【0014】
(3)上記(1)又は(2)のフレキシブルプリント回路基板では、フレキシブルプリント回路基板の厚さが、200μm以下であってもよい。
【0015】
(4)上記(1)から(3)のフレキシブルプリント回路基板では、第1層を構成している材料及び第2層を構成している材料が、同一であってもよい。
【0016】
(5)上記(1)から(4)のフレキシブルプリント回路基板では、第1配線が、シード層をさらに有していてもよい。第1層は、シード層を介して第1面上に配置されていてもよい。
【0017】
(6)上記(1)のフレキシブルプリント回路基板は、第2配線をさらに備えていてもよい。ベースフィルムは第1面の反対面である第2面を有していてもよい。第2配線は、第2面上に配置されていてもよい。第2配線は、第2面上に配置されている第3層と、第3層を覆っている第4層とを有していてもよい。第2面には、平面視において第3層の隣に第2溝が形成されていてもよい。第4層は、第3層の側面並びに第2溝の底面及び側面に接する面を含んでいてもよい。
【0018】
(7)一実施形態に係るフレキシブルプリント回路基板の製造方法は、第1面を有するベースフィルムを準備する工程と、第1面上に配線を形成する工程とを備える。配線を形成する工程は、第1面上に第1層を形成する工程と、第1層をマスクとして平面視において第1層の隣にある第1面に対してエッチングを行うことにより溝を形成する工程と、第1層を覆うように第2層を形成する工程と有する。第2層は、第1層の側面並びに溝の底面及び側面に接する面を含む。
【0019】
上記(7)のフレキシブルプリント回路基板の製造方法によると、配線の低抵抗化及び搬送性の維持が両立されたフレキシブルプリント回路基板を得ることができる。
【0020】
(8)上記(7)のフレキシブルプリント回路基板の製造方法では、第1層を形成する工程が、第1面上にシード層を形成する工程と、シード層上にレジスト層を形成する工程と、レジスト層をパターンニングする工程と、パターンニングされたレジスト層から露出しているシード層上に第1層をめっきする工程と、パターンニングされたレジスト層及びパターンニングされたレジスト層の下にあるシード層を除去する工程とを有していてもよい。
【0021】
[本開示の実施形態の詳細]
次に、本開示の実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面においては、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0022】
(実施形態に係るフレキシブルプリント回路基板の構成)
以下に、実施形態に係るフレキシブルプリント回路基板(「フレキシブルプリント回路基板100」とする)の構成を説明する。
【0023】
図1は、フレキシブルプリント回路基板100の平面図である。図2は、図1のII-IIにおける断面図である。図1及び図2に示されるように、フレキシブルプリント回路基板100は、ベースフィルム10と、配線20とを有している。フレキシブルプリント回路基板100の厚さを、厚さTとする。厚さTは、後述する高さH1及び厚さT1の合計である。厚さTは、例えば、30μm以上200μm以下である。厚さTは、45μm以上160μm以下であることが好ましい。
【0024】
ベースフィルム10は、電気絶縁性であり、かつ可撓性のある樹脂材料により形成されている。ベースフィルム10を構成している材料の具体例としては、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート及びフッ素樹脂が挙げられる。ベースフィルム10は、第1面10aと、第2面10bとを有している。第1面10a及び第2面10bは、厚さ方向におけるベースフィルム10の端面である。
【0025】
ベースフィルム10の厚さを、厚さT1とする。厚さT1は、第1面10aと第2面10bとの間の距離である。なお、厚さT1は、後述する溝11が形成されていない第1面10aの部分において測定される。厚さT1は、例えば、5μm以上100μm以下である。厚さT1は、45μm以上80μm以下であることが好ましい。厚さT1は、75μm以下であることが好ましい。
【0026】
配線20は、第1面10a上に配置されている。配線20の高さを、高さH1とする。高さH1は、例えば、25μm以上100μm以下である。高さH1は、35μm以上80μm以下であることが好ましい。高さH1は、40μm以上75μm以下であることがさらに好ましい。配線20は、シード層21と、第1層22と、第2層23とを有している。
【0027】
シード層21は、第1面10a上に配置されている。シード層21は、例えばニッケル(Ni)-クロム(Cr)合金により形成されている。シード層21は、例えば、スパッタ層(スパッタリングにより形成された層)である。なお、シード層21は、ニッケル-クロム合金の層の上にスパッタにより形成された銅(Cu)の層を含んでいてもよい。
【0028】
第1層22は、シード層21を介在させて第1面10a上に配置されている。第1層22は、例えば銅により形成されている。第1層22は、側面22aと、上面22bとを有している。シード層21の高さ及び第1層22の高さの合計を、高さH2とする。高さH2は、例えば、24μm以上80μm以下である。高さH2は、33μm以上70μm以下であることが好ましい。高さH2は、36.5μm以上65μm以下であることがさらに好ましい。第1層22は、例えば電解めっき層(電解めっきにより形成された層)である。
【0029】
第1面10aには、溝11が形成されている。第1面10aは、溝11において、第2面10b側に窪んでいる。平面視において、溝11は、配線20に沿って延在している。溝11は、平面視において、シード層21及び第1層22の隣にある第1面10aに形成されている。好ましくは、平面視において、一対の溝11がシード層21及び第1層22を挟み込むように形成されている。断面視において、溝11は、例えば矩形形状を有している。但し、溝11の断面形状は、これに限られない。断面視において、溝11の底面と溝11の側面とがなす角度は、鈍角又は鋭角であってもよい。断面視において、溝11の底面及び側面は、曲線により構成されていてもよく、直線により構成されていてもよい。
【0030】
溝11の深さを、深さD1とする。深さD1は、溝11が形成されていない第1面10aの部分と溝11の底面との間の距離である。深さD1は、例えば50nm以上1μm以下である。深さD1は、100nm以上500nm以下であることが好ましい。深さD1は、150nm以上400nm以下であることがさらに好ましい。深さD1を厚さT1で除した値(D1÷T1)は、例えば、0.0005以上である。深さD1を厚さT1で除した値は、0.0013以上であることが好ましい。深さD1を厚さT1で除した値は、0.0020以上であることがさらに好ましい。
【0031】
第2層23は、シード層21及び第1層22を覆っている。第2層23は、例えば、銅により形成されている。すなわち、第1層22を構成している材料及び第2層23を構成している材料は、同一であることが好ましい。「第1層22を構成している材料及び第2層23を構成している材料が同一である」には、第1層22を構成している材料の主たる成分(質量比において90パーセント以上の比率を占めている材料)と第2層23を構成している材料の主たる成分とが同一である場合が含まれている。第2層23は、例えば電解めっき層である。
【0032】
第2層23は、側面22a並びに溝11の底面及び側面に接する面を含んでいる。側面22a上にある第2層23の厚さを厚さT2とし、上面22b上にある第2層23の厚さを厚さT3とする。好ましくは、厚さT2は、厚さT3よりも大きい。厚さT2は、1.0μm以上20μm以下である。厚さT2は、2.0μm以上15μm以下であることが好ましい。厚さT2は、3.5μm以上10μm以下であることがさらに好ましい。厚さT3は、例えば1μm以上200μ以下である。
【0033】
(実施形態に係るフレキシブルプリント回路基板の製造方法)
以下に、フレキシブルプリント回路基板100の製造方法を説明する。
【0034】
図3は、フレキシブルプリント回路基板100の製造方法の工程図である。図3に示されるように、フレキシブルプリント回路基板100の製造方法は、準備工程S1と、配線形成工程S2とを有している。配線形成工程S2は、準備工程S1の後に行われる。準備工程S1においては、ベースフィルム10が準備される。配線形成工程S2は、シード層形成工程S21と、第1層形成工程S22と、溝形成工程S23と、第2層形成工程S24とを有している。第1層形成工程S22は、シード層形成工程S21の後に行われる。溝形成工程S23は、第1層形成工程S22の後に行われる。第2層形成工程S24は、溝形成工程S23の後に行われる。
【0035】
図4は、シード層形成工程S21を説明するための断面図である。図4に示されるように、シード層形成工程S21では、シード層21の形成が行われる。シード層21の形成は、シード層21を構成している材料を第1面10a上に成膜することにより行われる。この成膜は、例えばスパッタリングにより行われる。
【0036】
第1層形成工程S22では、第1層22の形成が行われる。より具体的には、第1層形成工程S22は、レジスト層形成工程S22aと、めっき工程S22bと、除去工程S22cとを有している。このことを別の観点から言えば、第1層形成工程S22は、例えばセミアディティブ法により行われる。但し、第1層形成工程S22は、サブトラクティブ法により行われてもよい。めっき工程S22bは、レジスト層形成工程S22aの後に行われる。除去工程S22cは、めっき工程S22bの後に行われる。
【0037】
図5は、レジスト層形成工程S22aを説明するための断面図である。図5に示されるように、レジスト層形成工程S22aでは、レジスト層24の形成が行われる。レジスト層24の形成においては、第1に、レジスト層24を構成している感光性の有機材料がシード層21上に成膜される。第2に、成膜されたレジスト層24を構成する材料に対して露光及び現像が行われることにより、成膜されたレジスト層24を構成している材料がパターンニングされる。これにより、レジスト層24が形成される。
【0038】
図6は、めっき工程S22bを説明するための断面図である。図6に示されるように、めっき工程S22bでは、第1層22の形成が行われる。第1層22の形成は、例えば、電解めっきにより行われる。
【0039】
めっき工程S22bにおいては、第1層22を構成している材料を含有しているめっき液中にフレキシブルプリント回路基板100が浸漬されるとともに、シード層21に通電される。これにより、レジスト層24から露出しているシード層21上に第1層22を構成している材料が電解めっきされ、第1層22が形成される。
【0040】
図7は、除去工程S22cを説明するための断面図である。図7に示されるように、除去工程S22cでは、レジスト層24及びレジスト層24の下にあるシード層21が除去される。より具体的には、レジスト層24を剥離した後、エッチングによりシード層21が除去される。
【0041】
図8は、溝形成工程S23を説明するための断面図である。図8に示されるように、溝形成工程S23では、溝11の形成が行われる。溝11の形成は、シード層21及び第1層22をマスクとして第1面10aに対するエッチングを行うことにより行われる。このエッチングは、ウェットエッチング(ウェットデスミア)又はドライエッチング(ドライデスミア)である。
【0042】
第2層形成工程S24では、第2層23の形成が行われる。第2層23の形成は、例えば、電解めっきにより行われる。すなわち、第2層23を構成している材料を含有しているめっき液中にフレキシブルプリント回路基板100が浸漬されるとともに、シード層21及び第1層22に通電される。これにより、シード層21及び第1層22を覆うように第2層23を構成している材料が電解めっきされ、第2層23が形成される。以上のようにして、図1及び図2に示される構造のフレキシブルプリント回路基板100が形成される。
【0043】
(実施形態に係るフレキシブルプリント回路基板の効果)
以下に、フレキシブルプリント回路基板100の効果を、比較例に係るフレキシブルプリント回路基板(「フレキシブルプリント回路基板200」とする)と対比しながら説明する。
【0044】
図9は、フレキシブルプリント回路基板200の断面図である。図9に示されているように、フレキシブルプリント回路基板200は、第1面10aに溝11が形成されていない点を除き、フレキシブルプリント回路基板100と同様の構成になっている。
【0045】
フレキシブルプリント回路基板100及びフレキシブルプリント回路基板200では、配線20がシード層21及び第1層22に加えて第2層23を有しているため、配線20の断面積が大きくなり、配線20がシード層21及び第1層22のみを有している場合と比較して、配線20が低抵抗化される。
【0046】
フレキシブルプリント回路基板100では、フレキシブルプリント回路基板200と異なり、第1面10aに溝11が形成されているため、第2層23は、側面22aのみならず溝11の側面及び底面を覆うように形成される。そのため、同一量の第2層23が形成された場合、フレキシブルプリント回路基板100における高さH1は、フレキシブルプリント回路基板200における高さH1よりも小さくなる。このことを別の観点から言えば、フレキシブルプリント回路基板200では、厚さTを小さくするために、厚さT1を小さくせざるを得ず、搬送性が低下する。
【0047】
そして、フレキシブルプリント回路基板100では、溝11が形成されている部分ではベースフィルム10の厚さが小さくなっているものの、溝11が形成されていない部分においてはベースフィルム10の厚さが維持されているため、搬送性が維持されている。このように、フレキシブルプリント回路基板100によると、配線20の低抵抗化及び搬送性の維持が両立されている。
【0048】
(実施例)
フレキシブルプリント回路基板100における深さD1と厚さT及び搬送性の関係を評価した。この評価には、フレキシブルプリント回路基板100のサンプルとして、サンプル1からサンプル10が供された。
【0049】
サンプル1からサンプル10では、配線20の断面積、配線20の幅及び厚さT2が、それぞれ1375μm、25μm及び4μmとされた。サンプル1からサンプル10では、厚さT1が0.1mmとされた。サンプル2からサンプル10では、深さD1が、表1に示されるように変化された。サンプル2からサンプル10では、厚さTの測定が行われた。厚さTは、各サンプルを断面研磨した後に顕微鏡を用いて断面画像を取得し、当該断面画像に基づいて測定された。各サンプルの搬送性は、目視により皺や折れが発生しているか否かを確認することにより評価された。なお、厚さTの評価及び搬送性の評価は、A、B、C及びDの4段階で評価された。厚さTの評価及び搬送性の評価は、Aが最も高く、Dが最も低い。厚さTの評価は厚さTが小さくなるほど高くなり、搬送性の評価は皺や折れの発生が少ないほど高くなる。
【0050】
【表1】
【0051】
表1に示されるように、サンプル1及びサンプル2では、深さD1を厚さT1で除した値が0.0005未満になっていた。その結果、サンプル1及びサンプル2では、厚さTが0.15499mm以上になっており、厚さTの評価がC以下であった。また、サンプル1及びサンプル2では、厚さTが大きく、厚さT1が小さいベースフィルムを使用せざるを得ないため、搬送性の評価がC以下であった。但し、サンプル2では溝11が形成されている一方で、サンプル1では溝11が形成されていないため、サンプル2の厚さT及び搬送性の評価は、サンプル1よりも高くなっていた。
【0052】
サンプル3からサンプル10では、深さD1を厚さT1で除した値が0.0005以上になっていた。その結果、サンプル3からサンプル10では、厚さTが0.15498mm以下になっており、厚さTの評価がB以上であった。また、サンプル3からサンプル10では、搬送性の評価がB以上であった。
【0053】
この比較から、深さD1を厚さT1で除した値が0.0005以上であることがフレキシブルプリント回路基板100の搬送性を改善する観点から特に好ましいことが、実験的に明らかになった。
【0054】
(変形例1)
以下に、変形例1に係るフレキシブルプリント回路基板100(「フレキシブルプリント回路基板100A」とする)を説明する。ここでは、フレキシブルプリント回路基板100と異なる点を説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0055】
図10は、フレキシブルプリント回路基板100Aの断面図である。図10に示されるように、フレキシブルプリント回路基板100Aは、ベースフィルム10と、配線20とを有している。この点に関して、フレキシブルプリント回路基板100Aの構成は、フレキシブルプリント回路基板100の構成と共通している。
【0056】
電力線になっている配線20を、配線20aとする。信号線となっている配線20を、配線20bとする。フレキシブルプリント回路基板100Aでは、配線20が、配線20a及び配線20bの双方を含んでいる。フレキシブルプリント回路基板100Aでは、配線20aがシード層21、第1層22及び第2層23を有しているのに対し、配線20bがシード層21及び第1層22のみを有している。すなわち、フレキシブルプリント回路基板100Aでは、配線20bが第2層23を有していない。
【0057】
また、フレキシブルプリント回路基板100Aでは、配線20aの第1層22の隣にある第1面10aに溝11が形成されているのに対して、配線20bの第1層22の隣にある第1面10aに溝11が形成されていない。これらの点に関して、フレキシブルプリント回路基板100Aの構成は、フレキシブルプリント回路基板100の構成と異なっている。
【0058】
電力線としての配線20には低抵抗が求められる一方、信号線としての配線20には低抵抗が求められないことがある。フレキシブルプリント回路基板100Aでは、配線20aが第2層23を有していることにより、低抵抗化に対応することができる。また、フレキシブルプリント回路基板100Aでは、配線20bのシード層21及び第1層22の隣にある第1面10aに溝11が形成されないことにより溝11の形成量が減少するため、フレキシブルプリント回路基板100Aの搬送性をさらに高めることができる。
【0059】
(変形例2)
以下に、変形例2に係るフレキシブルプリント回路基板100(「フレキシブルプリント回路基板100B」とする)を説明する。ここでは、フレキシブルプリント回路基板100と異なる点を説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0060】
図11は、フレキシブルプリント回路基板100Bの断面図である。図11に示されるように、フレキシブルプリント回路基板100Bは、ベースフィルム10と、配線20とを有している。この点に関して、フレキシブルプリント回路基板100Bの構成は、フレキシブルプリント回路基板100の構成と共通している。
【0061】
フレキシブルプリント回路基板100Bは、配線30をさらに有している。フレキシブルプリント回路基板100Bでは、ベースフィルム10に溝12が形成されている。これらの点に関して、フレキシブルプリント回路基板100Bの構成は、フレキシブルプリント回路基板100の構成と異なっている。
【0062】
配線30は、第2面10b上に配置されている。配線30の高さを、高さH3とする。高さH3は、例えば、25μm以上100μm以下である。高さH3は、35μm以上80μm以下であることが好ましい。高さH3は、40μm以上75μm以下であることがさらに好ましい。高さH3は、例えば高さH2に等しい。配線30は、シード層31と、第3層32と、第4層33とを有している。
【0063】
シード層31は、第2面10b上に配置されている。シード層31は、例えばニッケル-クロム合金により形成されている。シード層31は、例えばスパッタ層である。なお、シード層21は、ニッケル-クロム合金の層の上にスパッタにより形成された銅の層を含んでいてもよい。
【0064】
第3層32は、シード層31を介在させて第2面10b上に配置されている。第3層32は、例えば銅により形成されている。第3層32は、側面32aと上面32bとを有している。シード層31の高さ及び第3層32の高さの合計を、高さH4とする。高さH4は、例えば、24μm以上80μm以下である。高さH4は、33μm以上70μm以下であることが好ましい。高さH4は、36.5μm以上65μm以下であることがさらに好ましい。第3層32は、例えば電解めっき層である。
【0065】
溝12は、第2面10bに形成されている。第2面10bは、溝12において第1面10a側に窪んでいる。平面視において、溝12は、配線30に沿って延在している。溝12は、平面視において、シード層31及び第3層32の隣にある第2面10bに形成されている。好ましくは、平面視において、一対の溝12がシード層31及び第3層32を挟み込むように形成されている。断面視において、溝12は、例えば、矩形形状を有している。但し、溝12の断面形状は、これに限られない。断面視において、溝12の底面と溝12の側面とがなす角度は、鈍角又は鋭角であってもよい。断面視において、溝12の底面及び側面は、曲線により構成されていてもよく、直線により構成されていてもよい。
【0066】
溝12の深さを、深さD2とする。深さD2は、溝12が形成されていない第2面10bの部分と溝12の底面との間の距離である。深さD2は、例えば50nm以上1μm以下である。深さD2は、100nm以上500nm以下であることが好ましい。深さD2は、150nm以上400nm以下であることがさらに好ましい。深さD2を厚さT1で除した値(D2÷T1)は、例えば、0.0005以上である。深さD2を厚さT1で除した値は、0.0013以上であることが好ましい。深さD2を厚さT1で除した値は、0.0020以上であることがさらに好ましい。
【0067】
第4層33は、シード層31及び第3層32を覆っている。第4層33は、例えば、銅により形成されている。すなわち、第3層32を構成している材料及び第4層33を構成している材料は、同一であることが好ましい。「第3層32を構成している材料及び第4層33を構成している材料が同一である」には、第3層32を構成している材料の主たる成分(質量比において90パーセント以上の比率を占めている材料)と第4層33を構成している材料の主たる成分とが同一である場合が含まれている。第4層33は、例えば電解めっき層である。
【0068】
第4層33は、側面32a並びに溝12の底面及び側面に接する面を含んでいる。側面32a上にある第4層33の厚さを厚さT4とし、上面32b上にある第4層33の厚さを厚さT5とする。好ましくは、厚さT4は、厚さT5よりも大きい。厚さT4は、1.0μm以上20μm以下である。厚さT4は、2.0μm以上15μm以下であることが好ましい。厚さT4は、3.5μm以上10μm以下であることがさらに好ましい。厚さT5は、例えば1μm以上200μm以下である。
【0069】
フレキシブルプリント回路基板100Bの厚さを、厚さT6とする。厚さT6は、高さH1、高さH3及び厚さT1の合計である。厚さT6は、例えば、55μm以上300μm以下である。厚さT6は、80μm以上240μm以下であることが好ましい。厚さT6は、93μm以上225μm以下であることがさらに好ましい。
【0070】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施形態ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0071】
10 ベースフィルム、10a 第1面、10b 第2面、11,12 溝、20,20a,20b 配線、21 シード層、22 第1層、22a 側面、22b 上面、23 第2層、24 レジスト層、30 配線、31 シード層、32 第3層、32a 側面、32b 上面、33 第4層、100,100A,200 フレキシブルプリント回路基板、D1,D2 深さ、H1,H2,H3,H4 高さ、S1 準備工程、S2 配線形成工程、S21 シード層形成工程、S22 第1層形成工程、S22a レジスト層形成工程、S22b めっき工程、S22c 除去工程、S23 溝形成工程、S24 第2層形成工程、T,T1,T2,T3,T4,T5,T6 厚さ。
図1
図2
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図11