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特許7476431二環性ピペラジン環を有するベンゾオキサゾール誘導体又はその塩の製造方法、並びに、その原料の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-19
(45)【発行日】2024-04-30
(54)【発明の名称】二環性ピペラジン環を有するベンゾオキサゾール誘導体又はその塩の製造方法、並びに、その原料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/08 20060101AFI20240422BHJP
   C07D 263/58 20060101ALI20240422BHJP
   C07D 417/04 20060101ALI20240422BHJP
【FI】
C07D487/08
C07D263/58 CSP
C07D417/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023532045
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(86)【国際出願番号】 JP2022026168
(87)【国際公開番号】W WO2023277120
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2021108230
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006091
【氏名又は名称】Meiji Seikaファルマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】弁理士法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津村 武史
(72)【発明者】
【氏名】一色 聡志
(72)【発明者】
【氏名】奥江 雅之
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 鋭郎
(72)【発明者】
【氏名】節原 謙一
(72)【発明者】
【氏名】毛利 伸介
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/124060(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/004518(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/004521(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/005429(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 487/08
C07D 417/04
C07D 263/58
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(10):
【化1】
[式(10)中、
は、ハロゲン原子を示し、
は、ハロゲン原子を示し、
は、水素原子を示す。]
で表される化合物とベンジルアルコールとを反応させ、式(10-11):
【化2】
[式(10-11)中、R はハロゲン原子であり、Bnはベンジル基である。]
で表される化合物とし、
前記式(10-11)で表される化合物と臭素化剤とを反応させ、式(10-12):
【化3】
[式(10-12)中、R はハロゲン原子であり、Bnはベンジル基である。]
で表される化合物とし、
前記式(10-12)で表される化合物とアルカリ水溶液とを反応させ、式(10-13):
【化4】
[式(10-13)中、Bnはベンジル基である。]
で表される化合物とし、
前記式(10-13)で表される化合物と還元剤とを反応させ、式(14):
【化5】
[式(14)中、Bnはベンジル基である。]
で表される化合物とし、
前記式(14)で表される化合物とテトラアルコキシメタンとを酸触媒存在下で反応させることにより、下記式(2)で表される化合物又はその塩を製造する工程Aと、
式(2):
【化6】
[式(2)中、
は、ベンジル基を示し、
は、置換されていてもよいアルキル基を示し、
、ハロゲン原子を示し、
は、水素原子を示す。]
で表される化合物又はその塩を用いて、式(3):
【化7】
[式(3)中、Bocはtert-ブトキシカルボニル基を示す。]
で表される化合物又はその塩を製造する工程Bと、
前記式(3)で表される化合物又はその塩を用いて、式(1):
【化8】
で表される化合物又はその塩を製造する工程Cと、
を含む、前記式(1)で表される化合物又はその塩の製造方法。
【請求項2】
前記工程Bが、
前記式(2)で表される化合物のORを、tert-ブチル 3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-カルボキシレートで置換して式(4):
【化9】
[式(4)中、Rベンジル基であり、Rはハロゲン原子であり、Bocはtert-ブトキシカルボニル基である。]
で表される化合物とし、
前記式(4)で表される化合物に、金属触媒存在下で交差カップリング反応によりチアゾール-2-イル基を導入して式(5):
【化10】
[式(5)中、Rベンジル基であり、Bocはtert-ブトキシカルボニル基である。]
で表される化合物とし、
前記式(5)で表される化合物と有機酸とを反応させることにより、前記式(3)で表される化合物又はその塩を製造する工程である、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記工程Bが、
前記式(2)で表される化合物に、金属触媒存在下で交差カップリング反応によりチアゾール-2-イル基を導入して、前記式(2)がチアゾール-2-イル基である化合物(2-11)とし、
化合物(2-11)のORを、tert-ブチル 3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-カルボキシレートで置換して式(5):
【化11】
[式(5)中、Rベンジル基であり、Bocはtert-ブトキシカルボニル基である。]
で表される化合物とし、
前記式(5)で表される化合物と有機酸とを反応させることにより、前記式(3)で表される化合物又はその塩を製造する工程である、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
式(15):
【化12】
[式(15)中、Bnはベンジル基であり、Etはエチル基である。]
で表される化合物又はその塩。
【請求項5】
式(6):
【化13】
[式(6)中、Bnはベンジル基であり、Etはエチル基である。]
で表される化合物又はその塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二環性ピペラジン環を有するベンゾオキサゾール誘導体又はその塩の製造方法、並びに、その原料の製造方法に関し、より詳しくは、1-{[2-(3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]へプタン-3-イル)-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-4-イル]オキシ}-1,1-ジフルオロ-2-メチルプロパン-2-オール又はその塩の製造方法、並びに、その原料の2-アルコキシベンゾ[d]オキサゾール誘導体又はその塩の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二環性ピペラジン環を有するベンゾオキサゾール誘導体である1-{[2-(3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]へプタン-3-イル)-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-4-イル]オキシ}-1,1-ジフルオロ-2-メチルプロパン-2-オール(後述する式(1)で表される化合物)は、優れたホスホジエステラーゼ4型(PDE4)選択的阻害活性を有する化合物である(特許文献1)。
【0003】
1-{[2-(3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]へプタン-3-イル)-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-4-イル]オキシ}-1,1-ジフルオロ-2-メチルプロパン-2-オール及びその塩は、例えば、4-(ベンジルオキシ)-7-ブロモベンゾ[d]オキサゾール-2-チオールから、イミノ化反応、交差カップリング反応、及び脱保護反応(脱-O-ベンジル化)等を経て、中間製造体:tert-ブチル 3-(4-ヒドロキシ-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-カルボキシレート(後述する式(3)で表される化合物)とし、さらに、官能基変換及び脱保護反応等を経て製造されることが知られている(特許文献1)。
【0004】
また、上記の製造方法に用いられる4-(ベンジルオキシ)-7-ブロモベンゾ[d]オキサゾール-2-チオールは、例えば、2-ニトロレゾルシノールからジ-O-ベンジルエーテル化反応(保護基の形成)、部分脱保護反応(部分脱-O-ベンジル化)、臭素化反応、還元反応、及び脱離基(チオール基)を伴った環化反応の5段階の工程を経て製造されることが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2018/124060号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
既存の4-(ベンジルオキシ)-7-ブロモベンゾ[d]オキサゾール-2-チオールを用いる製造方法では、当該4-(ベンジルオキシ)-7-ブロモベンゾ[d]オキサゾール-2-チオールの製造及びこれを用いた前記中間製造体の製造において、(i)保護基の形成の際に催涙性があり毒性を有する臭化ベンジルを使用する、(ii)前記保護基の形成の際に毒性の強い三塩化ホウ素を使用する、(iii)チオール基を伴った環化反応の際に毒性が強く日本の消防法で特殊引火物に分類されている二硫化炭素を使用し、また、反応の際に猛毒性の硫化水素が発生する、(iv)チオール基を伴った環化反応の際にチオール基の位置をイミノ基に置換すると猛毒性の硫化水素が発生する、等の複数の改善点を有する工程が見受けられ、毒性が強い試薬の使用、危険性の高い操作性等において課題を有する。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、安全性、操作性により優れ、工業的製造に適した1-{[2-(3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]へプタン-3-イル)-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-4-イル]オキシ}-1,1-ジフルオロ-2-メチルプロパン-2-オール又はその塩の新規の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、下記の式(2)で表される2-アルコキシベンゾ[d]オキサゾール誘導体又はその塩を1-{[2-(3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]へプタン-3-イル)-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-4-イル]オキシ}-1,1-ジフルオロ-2-メチルプロパン-2-オール又はその塩の原料として用いることを見出した。すなわち、式(2)で表される化合物及びその塩は、毒性が強く取り扱い難い試薬や危険性が高い操作を要さず、さらに、有毒な物質も反応中に発生しない方法で製造することができる。
【0009】
さらに、これを用いた製造中間体、tert-ブチル 3-(4-ヒドロキシ-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-カルボキシレート又はその塩の製造、並びに、これを用いた1-{[2-(3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]へプタン-3-イル)-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-4-イル]オキシ}-1,1-ジフルオロ-2-メチルプロパン-2-オール又はその塩の製造においても、毒性が強く取り扱い難い試薬や危険性が高い操作を要さない。加えて、本発明者らは、前記式(2)で表される化合物又はその塩を用いた製造方法によれば、既存の製造方法よりも工程数を少なくすることも可能であって、また、既存の製造方法と同等の高い収率で1-{[2-(3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]へプタン-3-イル)-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-4-イル]オキシ}-1,1-ジフルオロ-2-メチルプロパン-2-オール又はその塩を得られることも見出した。
【0010】
したがって、前記式(2)で表される化合物又はその塩を用いることにより、安全性、操作性に極めて優れた新規の工業的製造方法を提供することが可能となることを本発明者らは見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下に示す発明を提供するものである。
[1]
式(2):
【0011】
【化1】
【0012】
[式(2)中、
は、水素原子又は置換されていてもよいアリールメチル基を示し、
は、置換されていてもよいアルキル基又は環状アルキル基を示し、
は、水素原子、ハロゲン原子又はチアゾール-2-イル基を示し、
は、水素原子又はハロゲン原子を示す。]
で表される化合物又はその塩を用いて、式(3):
【0013】
【化2】
【0014】
[式(3)中、Bocはtert-ブトキシカルボニル基を示す。]
で表される化合物又はその塩を製造する工程Bと、
前記式(3)で表される化合物又はその塩を用いて、式(1):
【0015】
【化3】
【0016】
で表される化合物又はその塩を製造する工程Cと、
を含む、前記式(1)で表される化合物又はその塩の製造方法。
[2]
前記工程Bが、
前記式(2)中、Rが置換されていてもよいアリールメチル基であり、Rが置換されていてもよいアルキル基であり、Rがハロゲン原子であり、Xが水素原子である化合物(2-1)のORを、tert-ブチル 3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-カルボキシレートで置換して式(4):
【0017】
【化4】
【0018】
[式(4)中、Rは置換されていてもよいアリールメチル基であり、Rはハロゲン原子であり、Bocはtert-ブトキシカルボニル基である。]
で表される化合物とし、
前記式(4)で表される化合物に、金属触媒存在下で交差カップリング反応によりチアゾール-2-イル基を導入して式(5):
【0019】
【化5】
【0020】
[式(5)中、Rは置換されていてもよいアリールメチル基であり、Bocはtert-ブトキシカルボニル基である。]
で表される化合物とし、
前記式(5)で表される化合物と有機酸とを反応させることにより、前記式(3)で表される化合物又はその塩を製造する工程である、[1]に記載の製造方法。
[3]
前記工程Bが、
前記式(2)中、Rが置換されていてもよいアリールメチル基であり、Rが置換されていてもよいアルキル基であり、Rがハロゲン原子であり、Xが水素原子である化合物(2-1)に、金属触媒存在下で交差カップリング反応によりチアゾール-2-イル基を導入して、前記式(2)中、Rが置換されていてもよいアリールメチル基であり、Rが置換されていてもよいアルキル基であり、Rがチアゾール-2-イル基であり、Xが水素原子である化合物(2-11)とし、
化合物(2-11)のORを、tert-ブチル 3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-カルボキシレートで置換して式(5):
【0021】
【化6】
【0022】
[式(5)中、Rは置換されていてもよいアリールメチル基であり、Bocはtert-ブトキシカルボニル基である。]
で表される化合物とし、
前記式(5)で表される化合物と有機酸とを反応させることにより、前記式(3)で表される化合物又はその塩を製造する工程である、[1]に記載の製造方法。
[4]
前記工程Bが、
前記式(2)中、Rが水素原子であり、Rが置換されていてもよいアルキル基であり、Rが水素原子であり、Xが水素原子である化合物(2-2)と臭素化剤とを反応させ、前記式(2)中、Rが水素原子であり、Rが置換されていてもよいアルキル基であり、Rが臭素原子であり、Xが臭素原子である化合物(2-21)とし、
化合物(2-21)のORを、tert-ブチル 3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-カルボキシレートで置換して、式(8):
【0023】
【化7】
【0024】
[式(8)中、Bocはtert-ブトキシカルボニル基である。]
で表される化合物とし、
前記式(8)で表される化合物に、金属触媒存在下で交差カップリング反応によりチアゾール-2-イル基を導入して、式(9):
【0025】
【化8】
【0026】
[式(9)中、Bocはtert-ブトキシカルボニル基である。]
で表される化合物とし、
前記式(9)で表される化合物と金属類とを反応させることにより、前記式(3)で表される化合物又はその塩を製造する工程である、[1]に記載の製造方法。
[5]
式(10):
【0027】
【化9】
【0028】
[式(10)中、
は、水酸基又はハロゲン原子又はアリールメチルオキシ基を示し、
は、水酸基又はハロゲン原子を示し、
は、水素原子、ハロゲン原子又はチアゾール-2-イル基を示す。]
で表される化合物又はその塩を用いて、前記式(2)で表される化合物又はその塩を製造する工程Aを含む、[1]~[4]のうちのいずれか一項に記載の製造方法。
[6]
前記工程Aが、
前記式(10)中、Rがハロゲン原子であり、Rがハロゲン原子でありRが水素原子である化合物(10-1)とベンジルアルコールとを反応させ、式(10-11):
【0029】
【化10】
【0030】
[式(10-11)中、Rはハロゲン原子であり、Bnはベンジル基である。]
で表される化合物とし、
前記式(10-11)で表される化合物と臭素化剤とを反応させ、式(10-12):
【0031】
【化11】
【0032】
[式(10-12)中、Rはハロゲン原子であり、Bnはベンジル基である。]
で表される化合物とし、
前記式(10-12)で表される化合物とアルカリ水溶液とを反応させ、式(10-13):
【0033】
【化12】
【0034】
[式(10-13)中、Bnはベンジル基である。]
で表される化合物とし、
前記式(10-13)で表される化合物と還元剤とを反応させ、式(14):
【0035】
【化13】
【0036】
[式(14)中、Bnはベンジル基である。]
で表される化合物とし、
前記式(14)で表される化合物とテトラアルコキシメタンとを酸触媒存在下で反応させることにより、前記式(2)で表される化合物又はその塩を製造する工程である、[5]に記載の製造方法。
[7]
前記工程Aが、
前記式(10)中、Rが水酸基であり、Rが水酸基であり、Rが水素原子である化合物(10-2)を還元した後に酸触媒存在下でテトラアルコキシメタンと反応させ、次いで、臭素化剤と反応させることにより、前記式(2)で表される化合物又はその塩を製造する工程である、[5]に記載の製造方法。
[8]
式(15):
【0037】
【化14】
【0038】
[式(15)中、Bnはベンジル基であり、Etはエチル基である。]
で表される化合物又はその塩。
[9]
式(6):
【0039】
【化15】
【0040】
[式(6)中、Bnはベンジル基であり、Etはエチル基である。]
で表される化合物又はその塩。
[10]
式(7):
【0041】
【化16】
【0042】
[式(7)中、Etはエチル基である。]
で表される化合物又はその塩。
[11]
式(8):
【0043】
【化17】
【0044】
[式(8)中、Bocはtert-ブトキシカルボニル基である。]
で表される化合物又はその塩。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、安全性、操作性に優れ、工業的製造に適した1-{[2-(3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]へプタン-3-イル)-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-4-イル]オキシ}-1,1-ジフルオロ-2-メチルプロパン-2-オール(式(1)で表される化合物)又はその塩の新規の製造方法を提供することが可能となる。さらに本発明によれば、前記製造方法に好適に用いることができる原料として、2-アルコキシベンゾ[d]オキサゾール誘導体(式(2)で表される化合物)又はその塩、並びに、その製造方法を提供することも可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下に、本発明の式(1)で表される化合物又はその塩の製造方法、並びに、式(1)で表される化合物の製造方法に用いる式(2)で表される化合物又はその塩の製造方法について例を挙げて詳細に説明するが、本発明は提示した具体例の範囲に限定されるものではない。
【0047】
本発明の式(1)で表される化合物の製造方法は、式(2)で表される化合物又はその塩を用いて、式(3)で表される化合物又はその塩を製造する工程Bと、式(3)で表される化合物又はその塩を用いて、式(1)で表される化合物又はその塩を製造する工程Cと、を含む方法(以下、場合により単に「本発明の製造方法」という)である。
【0048】
本発明の製造方法で得られる化合物は、次式(1):
【0049】
【化18】
【0050】
で表される、1-{[2-(3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]へプタン-3-イル)-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-4-イル]オキシ}-1,1-ジフルオロ-2-メチルプロパン-2-オールである。この化合物は、優れたPDE4(4型ホスホジエステラーゼ)阻害活性を有し、かつ、代謝安定性にも優れた化合物である(特許文献1)。
【0051】
本発明の製造方法で得られる化合物としては、本発明に係る式(1)で表される化合物(以下、場合により「化合物(1)」という)の塩であってもよく、前記塩としては、薬理的に許容される塩であることが好ましい。前記薬理的に許容される塩としては、酸付加塩の形態であることが好ましく、前記酸付加塩の酸としては、例えば、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸等のハロゲン化水素酸;硫酸、硝酸、リン酸、過酸化水素酸、炭酸等の無機酸;酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、安息香酸、マンデル酸、酪酸、マレイン酸、プロピオン酸、ギ酸、リンゴ酸等の有機カルボン酸;アスパラギン酸、グルタミン酸などの酸性アミノ酸;メタンスルホン酸等のアルキルスルホン酸;p-トルエンスルホン酸等のアリールスルホン酸が挙げられる。
【0052】
化合物(1)及びその塩は、次式(3):
【0053】
【化19】
【0054】
[式(3)中、Bocはtert-ブトキシカルボニル基を示す。]
で表されるtert-ブチル 3-(4-ヒドロキシ-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-カルボキシレート(以下、場合により「化合物(3)」という)又はその塩を用いて得ることができる。このような化合物(3)から化合物(1)を得る方法としては、適宜公知の方法又はそれに準じた方法を採用することができ、例えば、特許文献1に記載の方法を用いることができる。化合物(3)の塩としては、その好ましい形態も含めて、化合物(1)の塩として挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0055】
本発明の製造方法においては、化合物(3)又はその塩を、本発明に係る式(2)で表される化合物(以下、場合により「化合物(2)」という)又はその塩を用いて得る(工程B)。化合物(2)は、次式(2):
【0056】
【化20】
【0057】
で表される化合物である。式(2)中、Rは、水素原子又は置換されていてもよいアリールメチル基を示し、Rは、置換されていてもよいアルキル基又は環状アルキル基を示し、Rは、水素原子、ハロゲン原子又はチアゾール-2-イル基を示し、Xは、水素原子又はハロゲン原子を示す。
【0058】
本明細書中、「アリールメチル基」としては、例えば、フェニルメチル基(ベンジル基)、ジフェニルメチル基(ベンズヒドリル基)及びトリフェニルメチル基(トリチル基)等が挙げられ、ベンジル基が特に好ましい。本発明に係るRが示すアリールメチル基としては、1種又は2種以上の互いに同一若しくは異なっていてもよい置換基で置換されていてもよい。
【0059】
本明細書中、「アリールメチルオキシ基」とは、次式:-OAで示され、かつ、Aがアリールメチル基を示す基である。前記アリールメチル基としては、例えば、上記に挙げた基が挙げられ、ベンジル基が特に好ましい。本発明に係る下記のRが示すアリールメチルオキシ基としては、前記アリールメチル基が1種又は2種以上の互いに同一若しくは異なっていてもよい置換基で置換されていてもよい。
【0060】
本明細書中、「アルキル基」とは、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を示し、炭素数が1~6であることが好ましく、炭素数が1~3であることがより好ましい。本発明に係るRが示すアルキル基としては、1種又は2種以上の互いに同一若しくは異なっていてもよい置換基で置換されていてもよい。前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。
【0061】
本明細書中、「環状アルキル基」とは、環状のアルキル基を示し、炭素数、すなわち環の員数が3~8であることが好ましく、3~6であることがより好ましい。本発明に係るRが示す環状アルキル基としては、1種又は2種以上の互いに同一若しくは異なっていてもよい置換基で置換されていてもよい。前記環状アルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0062】
本明細書中、「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を示す。
【0063】
また、本明細書中、「置換されていてもよい」とは、任意の1つ又は2つ以上の水素原子が、他の原子又は基(置換基)で置換されてよいことを示し、2つ以上の水素原子が置換される場合、前記置換基(原子、基)は互いに同一であっても異なっていてもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシ基、アルキル基、アルコキシ基、環状アルコキシ基、アルキルアミノ基、環状アルキルアミノ基、及びアジド基等が挙げられる。
【0064】
本発明に係る化合物(2)としては、例えば、次の化合物:
2-メトキシベンゾ[d]オキサゾール-4-オール、2-エトキシベンゾ[d]オキサゾール-4-オール、2-プロポキシベンゾ[d]オキサゾール-4-オール、2-イソプロポキシベンゾ[d]オキサゾール-4-オール、2-ブトキシベンゾ[d]オキサゾール-4-オール、2-イソブトキシベンゾ[d]オキサゾール-4-オール、2-(sec-ブトキシ)ベンゾ[d]オキサゾール-4-オール、2-(tert-ブトキシ)ベンゾ[d]オキサゾール-4-オール、2-ペントキシベンゾ[d]オキサゾール-4-オール、2-(ペンタン-2-イルオキシ)ベンゾ[d]オキサゾール-4-オール、2-[(3-メチルブタン-2-イル)オキシ]ベンゾ[d]オキサゾール-4-オール、2-(tert-ペンチルオキシ)ベンゾ[d]オキサゾール-4-オール、2-(ヘキシルオキシ)ベンゾ[d]オキサゾール-4-オール、2-シクロプロポキシベンゾ[d]オキサゾール-4-オール、2-シクロブトキシベンゾ[d]オキサゾール-4-オール、2-(シクロペンチルオキシ)ベンゾ[d]オキサゾール-4-オール、2-(シクロヘキシルオキシ)ベンゾ[d]オキサゾール-4-オール、2-ベンジルオキシベンゾ[d]オキサゾール-4-オール、5,7-ジブロモ-2-メトキシベンゾ[d]オキサゾール-4-オール、5,7-ジブロモ-2-エトキシベンゾ[d]オキサゾール-4-オール、5,7-ジブロモ-2-プロポキシベンゾ[d]オキサゾール-4-オール、5,7-ジブロモ-2-ブトキシベンゾ[d]オキサゾール-4-オール、5,7-ジブロモ-2-イソブトキシベンゾ[d]オキサゾール-4-オール、5,7-ジブロモ-2-(sec-ブトキシ)ベンゾ[d]オキサゾール-4-オール、5,7-ジブロモ-2-(tert-ブトキシ)ベンゾ[d]オキサゾール-4-オール、5,7-ジブロモ-2-ペントキシベンゾ[d]オキサゾール-4-オール、5,7-ジブロモ-2-(ペンタン-2-イルオキシ)ベンゾ[d]オキサゾール-4-オール、5,7-ジブロモ-2-[(3-メチルブタン-2-イル)オキシ]ベンゾ[d]オキサゾール-4-オール、5,7-ジブロモ-2-(tert-ペンチルオキシ)ベンゾ[d]オキサゾール-4-オール、5,7-ジブロモ-2-(ヘキシルオキシ)ベンゾ[d]オキサゾール-4-オール、5,7-ジブロモ-2-シクロプロポキシベンゾ[d]オキサゾール-4-オール、5,7-ジブロモ-2-シクロブトキシベンゾ[d]オキサゾール-4-オール、5,7-ジブロモ-2-シクロブトキシベンゾ[d]オキサゾール-4-オール、5,7-ジブロモ-2-(シクロペンチルオキシ)ベンゾ[d]オキサゾール-4-オール、5,7-ジブロモ-2-(シクロヘキシルオキシ)ベンゾ[d]オキサゾール-4-オール、5,7-ジブロモ-2-ベンジルオキシベンゾ[d]オキサゾール-4-オール、4-(ベンジルオキシ)-7-ブロモ-2-メトキシベンゾ[d]オキサゾール、4-(ベンジルオキシ)-7-ブロモ-2-エトキシベンゾ[d]オキサゾール、4-(ベンジルオキシ)-7-ブロモ-2-プロポキシベンゾ[d]オキサゾール、4-(ベンジルオキシ)-7-ブロモ-2-イソプロポキシベンゾ[d]オキサゾール、4-(ベンジルオキシ)-7-ブロモ-2-ブトキシベンゾ[d]オキサゾール、4-(ベンジルオキシ)-7-ブロモ-2-イソブトキシベンゾ[d]オキサゾール、4-(ベンジルオキシ)-7-ブロモ-2-(sec-ブトキシ)ベンゾ[d]オキサゾール、4-(ベンジルオキシ)-7-ブロモ-2-(tert-ブトキシ)ベンゾ[d]オキサゾール、4-(ベンジルオキシ)-7-ブロモ-2-ペントキシベンゾ[d]オキサゾール、4-(ベンジルオキシ)-7-ブロモ-2-(ペンタン-2-イルオキシ)ベンゾ[d]オキサゾール、4-(ベンジルオキシ)-7-ブロモ-2-[(3-メチルブタン-2-イル)オキシ]ベンゾ[d]オキサゾール、4-(ベンジルオキシ)-7-ブロモ-2-(tert-ペンチルオキシ)ベンゾ[d]オキサゾール、4-(ベンジルオキシ)-7-ブロモ-2-(ヘキシルオキシ)ベンゾ[d]オキサゾール、4-(ベンジルオキシ)-7-ブロモ-2-シクロプロポキシベンゾ[d]オキサゾール、4-(ベンジルオキシ)-7-ブロモ-2-シクロブトキシベンゾ[d]オキサゾール、4-(ベンジルオキシ)-7-ブロモ-2-(シクロペンチルオキシ)ベンゾ[d]オキサゾール、4-(ベンジルオキシ)-7-ブロモ-2-(シクロヘキシルオキシ)ベンゾ[d]オキサゾール、2,4-ジ(ベンジルオキシ)-7-ブロモベンゾ[d]オキサゾール、4-(ベンジルオキシ)-2-メトキシ-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール、4-(ベンジルオキシ)-2-エトキシ-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール、4-(ベンジルオキシ)-2-プロポキシ-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール、4-(ベンジルオキシ)-2-イソプロポキシ-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール、4-(ベンジルオキシ)-2-ブトキシ-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール、4-(ベンジルオキシ)-2-イソブトキシ-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール、4-(ベンジルオキシ)-2-(sec-ブトキシ)-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール、4-(ベンジルオキシ)-2-(tert-ブトキシ)-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール、4-(ベンジルオキシ)-2-ペントキシ-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール、4-(ベンジルオキシ)-2-(ペンタン-2-イルオキシ)-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール、4-(ベンジルオキシ)-2-[(3-メチルブタン-2-イル)オキシ]-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール、4-(ベンジルオキシ)-2-(tert-ペンチルオキシ)-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール、4-(ベンジルオキシ)-2-(ヘキシルオキシ)-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール、4-(ベンジルオキシ)-2-シクロプロポキシ-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール、4-(ベンジルオキシ)-2-シクロブトキシ-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール、4-(ベンジルオキシ)-2-(シクロペンチルオキシ)-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール、4-(ベンジルオキシ)-2-(シクロヘキシルオキシ)-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール及び2,4-ジ(ベンジルオキシ)-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール
が挙げられるが、本発明はこれらの特定の例に限定されるものではない。
【0065】
これらの中でも、本発明に係る化合物(2)として好ましくは、2-エトキシベンゾ[d]オキサゾール-4-オール、次式(7):
【0066】
【化21】
【0067】
[式(7)中、Etはエチル基である。]
で表される5,7-ジブロモ-2-エトキシベンゾ[d]オキサゾール-4-オール、次式(15):
【0068】
【化22】
【0069】
[式(15)中、Bnはベンジル基であり、Etはエチル基である。]
で表される4-(ベンジルオキシ)-7-ブロモ-2-エトキシベンゾ[d]オキサゾール、及び次式(6):
【0070】
【化23】
【0071】
[式(6)中、Bnはベンジル基であり、Etはエチル基である。]
で表される4-(ベンジルオキシ)-2-エトキシ-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾールである。
【0072】
本発明に係る化合物(2)の塩としては、その好ましい形態も含めて、化合物(1)の塩として挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0073】
本発明に係る化合物(2)又はその塩は、下記の式(10)で表される化合物(以下、場合により「化合物(10)」という)又はその塩を用いて、化合物(2)又はその塩を製造する工程Aにより得られることが好ましい。
【0074】
本発明に係る化合物(1)又はその塩は、以下のスキーム1に示す代表的な方法により製造することができる。
スキーム1:
【0075】
【化24】
【0076】
上記スキーム1の各式中、Rは、水酸基又はハロゲン原子又はアリールメチルオキシ基を示し、Rは、水酸基又はハロゲン原子を示し、Rは、それぞれ独立に水素原子又は置換されていてもよいアリールメチル基を示し、Rは、置換されていてもよいアルキル基又は環状アルキル基を示し、Rは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又はチアゾール-2-イル基を示し、Xは、それぞれ独立に水素原子又はハロゲン原子を示す。
【0077】
上記スキーム1では、先ず、工程Aの好ましい態様として、式(10)で表される化合物のニトロ基を還元反応で還元して式Aで表される化合物(以下、場合により「化合物A」という)とし、次いで、化合物Aの環化反応によって化合物(2)を得る。
【0078】
次いで、スキーム1では、工程Bの好ましい態様として、得られた化合物(2)の2-アルコキシ基(OR)をtert-ブチル 3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-カルボキシレートで置換して(置換反応)、式Bで表される化合物(以下、場合により「化合物B」という)又は化合物(3)を得る。また、化合物Bは、必要に応じて、交差カップリング反応によるチアゾール-2-イル基の導入、脱保護反応によるRの保護基の除去、水素原子以外のXの水素原子への変換をすることによって、化合物(3)を得る。
【0079】
その後、工程Cの好ましい態様として、化合物(3)のO-アルキル化を経て式Cで表される化合物(以下、場合により「化合物C」という)とした後、脱保護反応にてtert-ブトキシカルボニル基(以下、場合により「Boc」と示す)を除去して、化合物(1)を得る。
【0080】
本発明の製造方法としては、工程Aとして、好ましくは、化合物(10)として、R及びRがハロゲン原子であり、Rが水素原子である化合物(10-1)、より好ましくは、R及びRがフッ素原子でありRが水素原子である2,6-ジフルオロニトロベンゼンから、又は、化合物(10)として、R及びRが水酸基であり、Rが水素原子である化合物(10-2)、すなわち2-ニトロレゾルシノールから、それぞれ、化合物(2)又はその塩を製造する工程を含むことが好ましい。
【0081】
化合物(10)として、化合物(10-1)、より好ましくは2,6-ジフルオロニトロベンゼンを用いる場合には、例えば、先ず、化合物(10-1)(好ましくは2,6-ジフルオロニトロベンゼン)をベンジルアルコールと反応させ(部分置換反応)、次式(10-11):
【0082】
【化25】
【0083】
で表される化合物(化合物(10-11))とする。式(10-11)中、Bnはベンジル基であり(以下同じ)、Rはハロゲン原子であり、Rとしては、フッ素原子がより好ましい。次いで、化合物(10-11)と臭素化剤とを反応させ(臭素化反応)、次式(10-12):
【0084】
【化26】
【0085】
で表される化合物(化合物(10-12))とする。式(10-12)中、Rはハロゲン原子であり、Rとしてはフッ素原子がより好ましい。次いで、化合物(10-12)とアルカリ水溶液とを反応させ(水和反応)、次式(10-13):
【0086】
【化27】
【0087】
で表される化合物(化合物(10-13))とする。さらに、化合物(10-13)と還元剤とを反応させ(還元反応)、化合物Aとして、次式(14):
【0088】
【化28】
【0089】
で表される化合物(化合物(14))を得る。次いで、化合物(14)とテトラアルコキシメタンとを反応させる(アルコキシ基を伴った環化反応)ことにより、化合物(2)(例えば、前記式(15)で表される化合物)又はその塩を製造することができる。
【0090】
また、化合物(10)として、化合物(10-2)(2-ニトロレゾルシノール)を用いる場合には、例えば、先ず、化合物(10-2)と還元剤とを反応させ(還元反応)、化合物(10-21)(2-アミノレゾルシノール)とし、化合物(10-21)とテトラアルコキシメタンとを反応させ(アルコキシ基を伴った環化反応)、化合物(10-22)(2-エトキシベンゾ[d]オキサゾール-4-オール)とする。次いで、化合物(10-22)と臭素化剤とを反応させる(臭素化反応)ことにより、化合物(2)(例えば、前記式(7)で表される化合物)又はその塩を製造することができる。
【0091】
また、本発明の製造方法としては、工程Bとして、好ましくは、化合物(2)として、Rが置換されていてもよいアリールメチル基であり、Rが置換されていてもよいアルキル基であり、Rがハロゲン原子であり、Xが水素原子である化合物(2-1)(より好ましくは、Rがベンジル基である化合物)から、又は、化合物(2)として、Rが水素原子であり、Rが置換されていてもよいアルキル基であり、Rが水素原子であり、Xが水素原子である化合物(2-2)(より好ましくは、Rがエチル基である化合物)から、それぞれ、化合物(3)又はその塩を製造する工程を含むことが好ましい。
【0092】
化合物(2)として、化合物(2-1)を用いる場合には、例えば、先ず、化合物(2-1)(より好ましくは、Rがベンジル基であり、Rが臭素原子である化合物)のORをtert-ブチル 3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-カルボキシレートで置換して(置換反応)次式(4):
【0093】
【化29】
【0094】
で表される化合物(化合物(4)、化合物B)とする。式(4)中、Rは置換されていてもよいアリールメチル基であり、Rはハロゲン原子である。式(4)中のRとしてはベンジル基が好ましく、Rとしては臭素原子が好ましい。次いで、化合物(4)に、金属触媒存在下で交差カップリング反応によりチアゾール-2-イル基を導入して、次式(5):
【0095】
【化30】
【0096】
で表される化合物(化合物(5)、化合物B)とする。式(5)中、Rは置換されていてもよいアリールメチル基である。式(5)中のRとしては、ベンジル基が好ましい。次いで、化合物(5)と有機酸とを反応させる(脱保護反応)ことにより、化合物(3)又はその塩を製造することができる。
【0097】
また、化合物(2)として、化合物(2-1)を用いる場合の他の方法としては、例えば、先ず、化合物(2-1)(より好ましくは、Rがベンジル基であり、Rがエチル基である化合物)に、金属触媒存在下で交差カップリング反応によりチアゾール-2-イル基を導入して、前記式(2)中、Rが置換されていてもよいアリールメチル基であり、Rが置換されていてもよいアルキル基であり、Rがチアゾール-2-イル基であり、Xが水素原子である化合物(2-11)とする。化合物(2-11)としては、次式(6):
【0098】
【化31】
【0099】
で表される化合物(化合物(6))が好ましい。式(6)中、Etはエチル基である(以下同じ)。次いで、化合物(2-11)のORを、tert-ブチル 3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-カルボキシレートで置換して(置換反応)、化合物(5)(Rはベンジル基)とする。次いで、化合物(5)と有機酸とを反応させる(脱保護反応)ことにより、化合物(3)又はその塩を製造することができる。
【0100】
また、化合物(2)として、化合物(2-2)を用いる場合には、例えば、先ず、化合物(2-2)(より好ましくは、Rがエチル基である化合物)と臭素化剤とを反応させ、前記式(2)中、Rが水素原子であり、Rが置換されていてもよいアルキル基であり、Rが臭素原子であり、Xが臭素原子である化合物(2-21)とする。化合物(2-21)としては、次式(7):
【0101】
【化32】
【0102】
で表される化合物(化合物(7))が好ましい。次いで、化合物(2-21)のORを、tert-ブチル 3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-カルボキシレートで置換して(置換反応)、次式(8):
【0103】
【化33】
【0104】
で表される化合物(化合物(8)、化合物B)とする。次いで、化合物(8)に、金属触媒存在下で交差カップリング反応によりチアゾール-2-イル基を導入して、次式(9):
【0105】
【化34】
【0106】
で表される化合物(化合物(9)、化合物B)とする。次いで、化合物(9)と金属類とを反応させる(変換反応)ことにより、化合物(3)又はその塩を製造することができる。
【0107】
上記のスキーム1で示す工程において、中間体となる各化合物は、それぞれ単離しても、単離しなくてもよく、単離しない場合には、連続して各反応を行うことができる。
【0108】
以下、スキーム1における各反応をさらに詳細に説明する。なお、下記の各説明において、「当量」とは、化学当量であって、各反応で反応する官能基について、同反応で基質の官能基が全て反応するのに必要な分子の量(物質量)を1当量として示す。
【0109】
(部分置換反応)
本発明の製造方法では、好ましくは、化合物(10-1)をベンジルアルコールと反応させることにより、部分置換反応によって化合物(10-11)を得る。前記部分置換反応として好ましくは、基質(ここでは、化合物(10-1))を、適当な溶媒中、塩基の存在下又は非存在下で、ベンジルアルコールと反応させて行われ、その好ましい条件は以下のとおりである。
【0110】
前記溶媒としては、例えば、石油エーテル、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の炭化水素系有機溶媒;四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン及びクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系有機溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン及びジフェニルエーテル等のエーテル系有機溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸tert-ブチル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸イソブチル及びプロピオン酸tert-ブチル等のエステル系有機溶媒;並びに;アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド及びN-メチル-2-ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒等のうちの1種を単独で又は2種以上の複数を適宜の比率で混合して用いることができる。
【0111】
前記溶媒として好ましくは、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド及びN-メチル-2-ピロリドンからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられ、より好ましくは、N,N-ジメチルホルムアミド及びジメチルスルホキシドからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0112】
前記塩基としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化バリウム等の塩類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、2-(ジメチルアミノ)エタノール、N-メチルピロリジン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、N,N’-ジメチルピペラジン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N-ジメチルアニリン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン、ピリジン、ピコリン、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、2、6-ルチジン及び2,4,6-コリジン等のアミン類;水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化バリウム及び水素化カルシウム等の金属水素化物;リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド及びカリウムtert-ブトキシド等の金属アルコキシド類;リチウムアミド、ナトリウムアミド、カリウムアミド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウム-2,2,6,6-テトラメチルピペリジド、リチウムビストリメチルシリルアミド、ナトリウムビストリメチルシリルアミド及びカリウムビストリメチルシリルアミド等の金属アミド類;並びに;カリウムトリメチルシロキシド等のうちの1種を単独で又は2種以上の複数を適宜の比率で混合して用いることができる。
【0113】
前記塩基として好ましくは、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ナトリウムtert-ブトキシド及びカリウムtert-ブトキシドからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられ、より好ましくは、炭酸カリウム及びナトリウムtert-ブトキシドからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。前記部分置換反応における前記塩基の使用量としては、前記基質に対して0.01~20当量であり、好ましくは0.1~10当量であり、より好ましくは1~5当量である。
【0114】
前記部分置換反応におけるベンジルアルコールの使用量としては、前記基質に対して0.8~5当量であり、好ましくは0.9~2当量である。
【0115】
前記部分置換反応の反応温度は、0~200℃の範囲であり、好ましくは、50~150℃の範囲であり、より好ましくは、80~120℃の範囲である。
【0116】
前記部分置換反応の反応時間は、1~100時間の範囲であり、好ましくは、5~50時間の範囲であり、より好ましくは、10~30時間の範囲である。
【0117】
(臭素化反応)
本発明の製造方法では、好ましくは、化合物(2-2)と臭素化剤とを反応させることにより、臭素化反応によって化合物(2-21)を得る。また、化合物(10-11)と臭素化剤とを反応させることにより、臭素化反応によって化合物(10-12)を得る。さらに、化合物(10-22)と臭素化剤とを反応させることにより、臭素化反応によって化合物(2)を得る。前記臭素化反応として好ましくは、基質(ここでは、化合物(2-2)、化合物(10-11)又は化合物(10-22))に、適当な溶媒中、酸触媒の存在下又は非存在下で、臭素化剤を反応させて行われ、その好ましい条件は以下のとおりである。
【0118】
前記溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール及びtert-ブタノール等のプロトン性溶媒;石油エーテル、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の炭化水素系有機溶媒;四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン及びクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系有機溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン及びジフェニルエーテル等のエーテル系有機溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸tert-ブチル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸イソブチル及びプロピオン酸tert-ブチル等のエステル系有機溶媒;並びに;アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド及びN-メチル-2-ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒等のうちの1種を単独で又は2種以上の複数を適宜の比率で混合して用いることができる。
【0119】
前記溶媒として好ましくは、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド及びN-メチル-2-ピロリドンからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられ、より好ましくは、アセトニトリル及び酢酸エチルからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0120】
前記酸触媒としては、例えば、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、乳酸、コハク酸、クエン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、10-カンファ-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びp-トルエンスルホン酸等の有機酸類;塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸、12モリブド(VI)リン酸水和物及び12タングスト(VI)リン酸水和物等の無機酸類;並びに;テトラフルオロホウ酸ジエチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、塩化マグネシウム、臭化マグネシウムジエチルエーテル錯体、塩化亜鉛、塩化第二スズ、塩化第二鉄、塩化アルミニウム、四塩化チタン及び四塩化ジルコニウム等のルイス酸等が挙げられる。また、クロロトリメチルシラン、クロロトリエチルシラン、クロロトリイソプロピルシラン、クロロイソプロピルジメチルシラン、クロロジエチルイソプロピルシラン、tert-ブチルクロロジメチルシラン、tert-ブチルクロロジフェニルシラン、トリベンジルシリルクロリド、クロロトリフェニルシラン、クロロメチルジフェニルシラン及びジ-tert-ブチルクロロメチルシラン等のクロロシラン等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上の複数を適宜の比率で混合して用いてもよい。
【0121】
これらの中でも、前記酸触媒としては、毒性が低い観点から、好ましくは、酢酸、テトラフルオロホウ酸ジエチルエーテル錯体及びクロロトリメチルシランからなる群から選択される少なくとも1種(好ましくはいずれか1種)が挙げられ、より好ましくは、酢酸及びクロロトリメチルシランからなる群から選択される少なくとも1種(好ましくはいずれか1種)が挙げられる。
【0122】
前記臭素化反応において、前記酸触媒の使用量としては、前記基質に対して0~1当量であり、好ましくは0~0.7当量である。
【0123】
前記臭素化剤としては、例えば、臭素、臭素1,4-ジオキサン錯体、テトラブチルアンモニウムトリブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムトリブロミド、トリメチルフェニルアンモニウムトリブロミド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムトリブロミド、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセンハイドロゲントリブロミド、ピリジニウムブロミドペルブロミド、4-ジメチルアミノピリジニウムブロミドペルブロミド、N-ブロモアセトアミド、N-ブロモコハク酸イミド、N-ブロモフタル酸イミド、N-ブロモサッカリン、ジブロモシアヌル酸、ブロモシアヌル酸モノナトリウム、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン、ブロモジメチルスルホニウムブロミド、ビス(2,4,6-トリメチルピリジン)ブロモニウムヘキサフルオロホスファート、ブロモトリメチルシラン、四臭化炭素、ブロモトリクロロメタン、1,2-ジブロモ-1,1,2,2-テトラクロロエタン、5,5-ジブロモメルドラム酸、2,4,4,6-テトラブロモ-2,5-シクロヘキサジエノン、三臭化ホウ素及び三臭化りん等のうちの1種を単独で又は2種以上の複数を適宜の比率で混合して用いることができる。
【0124】
前記臭素化剤として好ましくは、臭素、テトラブチルアンモニウムトリブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムトリブロミド、N-ブロモコハク酸イミド、N-ブロモサッカリン及び1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントインからなる群から選択される少なくとも1種(好ましくはいずれか1種)が挙げられ、より好ましくは、N-ブロモコハク酸イミドからなる群から選択される少なくとも1種(好ましくはいずれか1種)が挙げられる。
【0125】
前記臭素化反応において、前記臭素化剤の使用量としては、前記基質1分子に臭素原子1原子を導入する場合には、前記基質に対して0.8~5当量であり、好ましくは1~2当量である。また、前記基質1分子に臭素原子2原子を導入する場合には、前記基質に対して1.8~5当量であり、好ましくは2~3当量である。
【0126】
前記臭素化反応の反応温度は、-50~100℃の範囲であり、好ましくは、-25~50℃の範囲であり、より好ましくは、-10~30℃の範囲である。
【0127】
前記臭素化反応の反応時間は、10分間~12時間の範囲であり、好ましくは、20分間~6時間の範囲であり、より好ましくは、30分間~4時間の範囲である。
【0128】
(水和反応)
本発明の製造方法では、好ましくは、化合物(10-12)とアルカリ溶液とを反応させることにより、水和反応によって化合物(10-13)を得る。前記水和反応として好ましくは、基質(ここでは、化合物(10-12))に、適当な溶媒中、アルカリ水溶液を反応させて行われ、その好ましい条件は以下のとおりである。
【0129】
前記溶媒としては、例えば、石油エーテル、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の炭化水素系有機溶媒;四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン及びクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系有機溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン及びジフェニルエーテル等のエーテル系有機溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸tert-ブチル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸イソブチル及びプロピオン酸tert-ブチル等のエステル系有機溶媒;並びに;アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド及びN-メチル-2-ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒等のうちの1種を単独で又は2種以上の複数を適宜の比率で混合して用いることができる。
【0130】
前記溶媒として好ましくは、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド及びN-メチル-2-ピロリドンからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられ、より好ましくは、N,N-ジメチルアセトアミド及びジメチルスルホキシドからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0131】
前記アルカリ水溶液としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化バリウム等の水溶液のうちの1種を単独で又は2種以上の複数を適宜の比率で混合して用いることができる。
【0132】
前記アルカリ水溶液として好ましくは、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群から選択される少なくとも1種(好ましくはいずれか1種)の水溶液が挙げれられ、より好ましくは、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群から選択される少なくとも1種(好ましくはいずれか1種)の水溶液が挙げられる。前記水和反応において、前記アルカリ水溶液の濃度としては、特に限定されず、適宜調整可能である。
【0133】
前記水和反応の反応温度は、0~200℃の範囲であり、好ましくは、25~150℃の範囲であり、より好ましくは、50~100℃の範囲である。
【0134】
前記水和反応の反応時間は、10分間~20時間の範囲であり、好ましくは、20分間~10時間の範囲であり、より好ましくは、30分間~5時間の範囲である。
【0135】
(還元反応)
本発明の製造方法では、好ましくは、化合物(10-13)と還元剤とを反応させることにより、還元反応によって化合物(14)を得る。また、化合物(10-2)と還元剤とを反応させることにより、還元反応によって化合物(10-21)を得る。前記還元反応として好ましくは、基質(ここでは、化合物(10-13)、化合物(10-2))に、適当な溶媒中、還元剤を反応させて行われ、その好ましい条件は以下のとおりである。
【0136】
前記溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール及びtert-ブタノール等のプロトン性溶媒;石油エーテル、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の炭化水素系溶媒;四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン及びクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン及びジフェニルエーテル等のエーテル系有機溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸tert-ブチル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸イソブチル及びプロピオン酸tert-ブチル等のエステル系有機溶媒;並びに;アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド及びN-メチル-2-ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒等のうちの1種を単独で又は2種以上の複数を適宜の比率で混合して用いることができる。
【0137】
前記溶媒として好ましくは、水、メタノール、エタノール、酢酸エチル及び酢酸n-ブチルからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられ、より好ましくは、水、エタノール及び酢酸エチルからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。また、前記溶媒には、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸及びトルエンスルホン酸等の酸、又は、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等の塩基を適宜添加してもよい。
【0138】
前記還元剤としては、例えば、亜鉛、アルミニウム、スズ、塩化第一スズ及び鉄等の金属類;水素源とともに用いられ、適宜担体とともに用いられても良いパラジウム、白金、ロジウム及びニッケル等の水素添加触媒類;並びに;亜ジチオン酸ナトリウム等の無機塩類等のうちの1種を単独で又は2種以上の複数を適宜の比率で混合して用いることができる。
【0139】
前記還元剤として好ましくは、亜鉛、鉄、活性炭担持パラジウム及び亜ジチオン酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種(好ましくはいずれか1種)が挙げられ、より好ましくは、活性炭担持パラジウム及び亜ジチオン酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種(好ましくはいずれか1種)が挙げられる。
【0140】
前記還元反応において、前記還元剤が前記金属類及び/又は前記無機塩類である場合、これらは大過剰用いられるが、その量としては、両者を含有させる場合には合計で、前記基質に対して、好ましくは20当量以下であり、より好ましくは10当量以下である。前記還元剤が前記水素添加触媒類である場合、これは触媒量用いられ、その量としては、仕込み原料の全重量(wt)に対して、好ましくは10wt%以下であり、より好ましくは5wt%以下である。
【0141】
前記還元反応の反応温度は、-10~100℃の範囲であり、好ましくは、-5~80℃の範囲であり、より好ましくは、0~50℃の範囲である。
【0142】
前記還元反応の反応時間は、10分間~24時間の範囲であり、好ましくは、20分間~12時間の範囲であり、より好ましくは、30分間~6時間の範囲である。
【0143】
(アルコキシ基を伴った環化反応)
本発明の製造方法では、好ましくは、化合物(14)とテトラアルコキシメタンとを反応させることにより、アルコキシ基を伴った環化反応により、化合物(2)を得る。また、化合物(10-21)とテトラアルコキシメタンとを反応させることにより、アルコキシ基を伴った環化反応により、化合物(10-22)を得る。
【0144】
前記アルコキシ基を伴った環化反応として好ましくは、基質(ここでは、化合物(14)又は化合物(10-21))を、適当な溶媒中、酸触媒存在下で、テトラアルコキシメタンと反応させて行われ、その好ましい条件は以下のとおりである。
【0145】
前記溶媒としては、例えば、石油エーテル、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の炭化水素系有機溶媒;四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン及びクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系有機溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン及びジフェニルエーテル等のエーテル系有機溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸tert-ブチル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸イソブチル及びプロピオン酸tert-ブチル等のエステル系有機溶媒;並びに;アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N、N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド及びN-メチル-2-ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒等のうちの1種を単独で又は2種以上の複数を適宜の比率で混合して用いることができる。
【0146】
前記溶媒として好ましくは、n-ヘキサン、n-ヘプタン、トルエン、キシレン、メチルtert-ブチルエーテル、2-メチルテトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル及び酢酸tert-ブチルからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられ、より好ましくは、トルエン及び酢酸エチルからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0147】
前記酸触媒としては、例えば、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、乳酸、コハク酸、クエン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、10-カンファ-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びp-トルエンスルホン酸等の有機酸類;塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸及び過塩素酸等の無機酸類;並びに;三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、塩化マグネシウム、臭化マグネシウムジエチルエーテル錯体、塩化亜鉛、塩化第二スズ、塩化第二鉄、塩化アルミニウム、四塩化チタン及び四塩化ジルコニウム等のルイス酸等のうちの1種を単独で又は2種以上の複数を適宜の比率で混合して用いることができる。
【0148】
前記酸触媒としては、毒性が低い観点から、好ましくは、酢酸及び塩酸からなる群から選択される少なくとも1種(好ましくはいずれか1種)が挙げられ、より好ましくは、酢酸が挙げられる。
【0149】
前記アルコキシ基を伴った環化反応において、前記酸触媒の使用量としては、前記基質に対して0.01~1当量であり、好ましくは0.1~0.6当量である。
【0150】
前記テトラアルコキシメタンとしては、例えば、テトラメトキシメタン、テトラエトキシメタン、テトラプロポキシメタン、テトライソプロポキシメタン、テトラブトキシメタン、テトライソブトキシメタン、テトラ(sec-ブトキシ)メタン、テトラ(tert-ブトキシ)メタン、テトラペントキシメタン、テトラ(ペンタン-2-イルオキシ)メタン、テトラ[(3-メチルブタン-2-イル)オキシ]メタン、テトラ(tert-ペンチルオキシ)メタン、テトラ(ヘキシルオキシ)メタン、テトラシクロプロポキシメタン、テトラシクロブトキシメタン、テトラ(シクロペンチルオキシ)メタン、テトラ(シクロヘキシルオキシ)メタン等のうちの1種を単独で又は2種以上の複数を適宜の比率で混合して用いることができる。
【0151】
前記テトラアルコキシメタンとして好ましくは、テトラメトキシメタン、テトラエトキシメタン及びテトラベンジルオキシメタンからなる群から選択される少なくとも1種(好ましくはいずれか1種)が挙げられ、より好ましくは、テトラエトキシメタンが挙げられる。
【0152】
前記アルコキシ基を伴った環化反応において、前記テトラアルコキシメタンの使用量としては、前記基質に対して0.9~5当量であり、好ましくは1~2当量である。
【0153】
前記アルコキシ基を伴った環化反応の反応温度は、0~200℃の範囲であり、好ましくは、50~150℃の範囲であり、より好ましくは、70~120℃の範囲である。
【0154】
前記アルコキシ基を伴った環化反応の反応時間は、5分間~10時間の範囲であり、好ましくは、10分間~5時間の範囲であり、より好ましくは、20分間~3時間の範囲である。
【0155】
(置換反応)
本発明の製造方法では、好ましくは、化合物(2)(例えば、化合物(2-1)、化合物(2-11)、又は化合物(2-21))の2-アルコキシ基(OR)を、tert-ブチル 3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-カルボキシレートで置換して、置換反応により化合物B(例えば、化合物(4)、化合物(5)、化合物(8))を得る。前記置換反応として好ましくは、適当な溶媒中、酸触媒存在下又は非存在下で、基質(ここでは、化合物(2))とtert-ブチル 3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-カルボキシレートとを反応させて行われ、その好ましい条件は以下のとおりである。
【0156】
前記酸触媒としては、例えば、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、乳酸、コハク酸、クエン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、10-カンファ-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びp-トルエンスルホン酸等の有機酸類;塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸及び過塩素酸等の無機酸類;並びに;三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、塩化亜鉛、塩化第二スズ、塩化第二鉄、塩化アルミニウム、四塩化チタン及び四塩化ジルコニウム等のルイス酸等のうちの1種を単独で又は2種以上の複数を適宜の比率で混合して用いることができる。
【0157】
前記酸触媒としては、毒性が低い観点から、好ましくは、酢酸及び塩酸からなる群から選択される少なくとも1種(好ましくはいずれか1種)が挙げられ、より好ましくは、酢酸が挙げられる。
【0158】
前記置換反応において、前記酸触媒の使用量としては、前記基質に対して0.01~1当量であり、好ましくは0.1~0.6当量である。
【0159】
前記置換反応において、tert-ブチル 3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-カルボキシレートの使用量としては、前記基質に対して0.9~3当量であり、好ましくは1~1.5当量である。
【0160】
前記溶媒としては、例えば、石油エーテル、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の炭化水素系有機溶媒;四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン及びクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系有機溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン及びジフェニルエーテル等のエーテル系有機溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸tert-ブチル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸イソブチル及びプロピオン酸tert-ブチル等のエステル系有機溶媒;並びに;アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド及びN-メチル-2-ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒等のうちの1種を単独で又は2種以上の複数を適宜の比率で混合して用いることができる。
【0161】
前記溶媒として好ましくは、n-ヘキサン、n-ヘプタン、トルエン、キシレン、メチルtert-ブチルエーテル、2-メチルテトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル及び酢酸tert-ブチルからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられ、より好ましくは、トルエン及び酢酸エチルからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0162】
前記置換反応の反応温度は、0~200℃の範囲であり、好ましくは、30~150℃の範囲であり、より好ましくは、60~130℃の範囲である。
【0163】
前記置換反応の反応時間は、10分間~10時間の範囲であり、好ましくは、20分間~5時間の範囲であり、より好ましくは、30分間~3時間の範囲である。
【0164】
(交差カップリング反応)
本発明の製造方法において、化合物(2)又は化合物BのRがチアゾール-2-イル基以外である場合には、必要に応じて、交差カップリング反応により、ここにチアゾール-2-イル基を導入する。好ましくは、化合物(2)又は化合物B(例えば、化合物(4)、化合物(2-1)、化合物(8))の第7位に、金属触媒存在下で交差カップリング反応によりチアゾール-2-イル基を導入して、Rがチアゾール-2-イル基である化合物B(例えば、化合物(5)、化合物(2-11)、化合物(9))を得る。
【0165】
前記交差カップリング反応としては、熊田・玉尾・コリューカップリング反応、右田・小杉・スティルカップリング反応、鈴木・宮浦カップリング反応、根岸カップリング反応、バックワルド・ハートウィッグカップリング反応又は檜山カップリング反応等を使用することができ、好ましくは、熊田・玉尾・コリューカップリング反応、鈴木・宮浦カップリング反応又は根岸カップリング反応を使用でき、より好ましくは、根岸カップリング反応を使用できる。
【0166】
前記交差カップリング反応として好ましくは、基質(ここでは、化合物(2)又は化合物B)を、適当な溶媒中、金属触媒存在下、配位子の存在下又は非存在下、塩基の存在下又は非存在下で、2-ハロチアゾール(必要に応じて反応剤と反応させたもの又はそのまま)と反応させて行われ、その好ましい条件は以下のとおりである。
【0167】
前記溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール及びtert-ブタノール等のプロトン性溶媒;石油エーテル、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン及びトリフルオロメチルベンゼン等のハロゲン系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン及びジフェニルエーテル等のエーテル系有機溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸tert-ブチル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸イソブチル及びプロピオン酸tert-ブチル等のエステル系有機溶媒;並びに;アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド及びN-メチル-2-ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒等のうちの1種を単独で又は2種以上の複数を適宜の比率で混合して用いることができる。
【0168】
前記溶媒として好ましくは、水、エタノール、トルエン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン及びN,N-ジメチルホルムアミドからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられ、より好ましくは、トルエン、テトラヒドロフラン及びN,N-ジメチルホルムアミドからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0169】
「2-ハロチアゾール」とは、チアゾールの第2位がハロゲン原子で置換されたものを表し、該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられ、好ましくは、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられ、より好ましくは臭素原子が挙げられる。
【0170】
前記反応剤とは、2-ハロチアゾールのハロゲン原子を他の反応性官能基に置換するためのものであり、トランスメタル化反応等を行うものが挙げられる。前記反応剤として好ましくは、宮浦・石山ホウ素化反応で用いられる後述の触媒及びホウ素化合物、例えば、ピナコールジボラン、ピナコールボラン及びジボロン酸等との組み合わせ、Grignard試薬又は亜鉛粉末等が挙げられ、より好ましくは、亜鉛粉末等が挙げられる。
【0171】
前記交差カップリング反応において、2-ハロチアゾールの使用量としては、前記基質に対して1~20当量であり、好ましくは1~10当量である。
【0172】
前記金属触媒としては、例えば、パラジウム金属、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、ヨウ化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、トリフルオロ酢酸パラジウム(II)、プロピオン酸パラジウム(II)、ピバル酸パラジウム(II)、パラジウム(II)アセチルアセトナート、パラジウム(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、シアン化パラジウム(II)、硫酸パラジウム(II)、硝酸パラジウム(II)、酸化パラジウム(II)、パラジウム(π-シンナミル)クロリドダイマー、パラジウム(II)[1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ビス(ベンゾニトリル)ビステトラフルオロボラート、trans-ビス(アセタート)ビス[o-(ジ-o-トリルホスフィノ)ベンジル]ジパラジウム(II)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)、trans-ビス(ジシクロヘキシルアミノ)パラジウム(II)アセタート、ビス[(ジシクロヘキシル)(4-ジメチルアミノフェニル)ホスフィン]ジクロロパラジウム(II)、[1,1’-ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)、[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ジクロロパラジウム(II)、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)ジクロロメタン付加物、[1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン]ジクロロパラジウム(II)、[1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ジクロロパラジウム(II)、ビス[ジ-(tert-ブチル)(4-トリフルオロメチルフェニル)ホスフィン]ジクロロパラジウム(II)、[1,1’-ビス(ジ-tert-ブチルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(0)、ビス[トリス-(2-メチルフェニル)ホスフィン]パラジウム(0)、ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム(II)、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム(0)、ビス[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム(0)、ビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム(II)、ビス(ベンゾニトリル)ジブロモパラジウム(II)、(2,2’-ビピリジン)ジクロロパラジウム(II)、(2-ブテニル)クロロパラジウムダイマー、[1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]パラジウム(II)トリフルオロメタンスルホナート、[1,2-ビス(フェニルスルフィニル)エタン]パラジウム(II)アセタート、ジアセトビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(II)、[2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル]ジブロモパラジウム(II)、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジブロモパラジウム(II)、(1,5-シクロオクタジエン)ジブロモパラジウム(II)、[2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル]ジクロロパラジウム(II)、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)アセトン付加物、ビス(メチルジフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム(II)、ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム(II)、(1,10-フェナントロリン)ジクロロパラジウム(II)、(N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン)ジクロロパラジウム(II)、ビス[ジ-tert-ブチル(4-ジメチルアミノフェニル)ホスフィン]ジクロロパラジウム(II)、アリルパラジウム(II)クロリドダイマー、(エチレンジアミン)パラジウム(II)クロリド、クロロ(1,5-シクロオクタジエン)メチルパラジウム(II)、(1,5-シクロオクタジエン)ジクロロパラジウム(II)、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジクロロパラジウム(II)、ビス(トリ-o-トリルホスフィン)ジクロロパラジウム(II)、2-(2’-ジ-tert-ブチルホスフィン)ビフェニルパラジウム(II)アセタート、テトラキス(アセトニトリル)パラジウム(II)テトラフルオロボラート、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)及びトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム付加物のうちの1種を単独で又は2種以上の複数を適宜の比率で混合して用いることができる。
【0173】
前記金属触媒として好ましくは、酢酸パラジウム(II)、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)ジクロロメタン付加物、ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)及びトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム付加物からなる群から選択される少なくとも1種(好ましくはいずれか1種)が挙げられ、より好ましくは、酢酸パラジウム(II)及び[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)ジクロロメタン付加物からなる群から選択される少なくとも1種(好ましくはいずれか1種)が挙げられる。
【0174】
前記配位子としては、例えば、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート、トリオクチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィンテトラフルオロボラート、トリス(ジメチルアミノ)ホスフィン、トリス(ジエチルアミノ)ホスフィン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-トリフルオロメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6-トリメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6-トリメトキシフェニル)ホスフィン、トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィン、トリス(4-フルオロフェニル)ホスフィン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホスフィン、トリス(o-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンオキシド、トリ(o-トリル)ホスフィン、トリ(o-トリル)ホスフィンテトラフルオロボラート、トリ(m-トリル)ホスフィン、トリ(p-トリル)ホスフィン、トリ(2-フリル)ホスフィン、ビス(ジシクロヘキシルホスフィノフェニル)エーテル、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、1,1’-ビス(ジ-tert-ブチルホスフィノ)フェロセン、ビス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル][2’,6’-ビス(イソプロポキシ)-3,6-ジメトキシビフェニル-2-イル]ホスフィン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビフェニル、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル、トリ-1-ナフチルホスフィン、トリス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホスフィン、トリス(4-クロロフェニル)ホスフィン、5-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-1’,3’,5’-トリフェニル-1’H-[1,4’]ビピラゾール、5-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-1-(ナフタレン-1-イル)-1H-ピラゾール、トリアリルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン及びトリイソプロピルホスホニウムテトラフルオロボラートのうちの1種を単独で又は2種以上の複数を適宜の比率で混合して用いることができる。
【0175】
前記配位子として好ましくは、トリフェニルホスフィン、トリ(o-トリル)ホスフィン、トリ(m-トリル)ホスフィン、トリ(p-トリル)ホスフィン、トリ(2-フリル)ホスフィン及び1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンからなる群から選択される少なくとも1種(好ましくはいずれか1種)が挙げられ、より好ましくはトリ(p-トリル)ホスフィン及び1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンからなる群から選択される少なくとも1種(好ましくはいずれか1種)が挙げられる。
【0176】
前記塩基としては、その好ましい形態も含めて、上記の(部分置換反応)で挙げたものが挙げられる。
【0177】
前記交差カップリング反応における前記金属触媒の使用量としては、仕込み原料の全モル数(溶媒を除く)に対して、0.01~20mol%であり、好ましくは0.1~15mol%である。
【0178】
前記配位子及び/又は前記塩基を用いる場合、前記金属触媒と前記配位子(金属触媒:配位子)、及び、前記金属触媒と前記塩基(金属触媒:塩基)の各比は、モル比で、それぞれ独立に、1:0.25~20であり、好ましくは1:1~5である。
【0179】
前記交差カップリング反応の反応温度は、0~200℃の範囲であり、好ましくは、30~150℃の範囲であり、より好ましくは、60~120℃の範囲である。
【0180】
前記交差カップリング反応の反応時間は、1分間~48時間の範囲であり、好ましくは、15分間~12時間の範囲であり、より好ましくは、30分間~6時間の範囲である。
【0181】
(脱保護反応)
本発明の製造方法において、脱保護反応としては、加水素分解反応、ルイス酸による脱保護反応又は有機酸等による脱保護反応が使用でき、好ましくは、ルイス酸及び/又は有機酸による脱保護反応が使用でき、より好ましくは、有機酸による脱保護反応が使用できる。
【0182】
本発明の製造方法においては、化合物BのRに保護基(例えばベンジル基)を有する場合には、これを除去する。好ましくは、化合物B(例えば、化合物(5))と有機酸とを反応させることにより、Rの保護基を除去して化合物(3)を得る。また、化合物Cと有機酸とを反応させることにより、Bocを除去して化合物(1)を得る。前記脱保護反応として好ましくは、基質(ここでは、化合物(5)又は化合物C)を、適当な溶媒中、有機酸と反応させて行われ、その好ましい条件は以下のとおりである。
【0183】
前記溶媒としては、例えば、石油エーテル、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の炭化水素系有機溶媒;四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン及びクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系有機溶媒;並びに;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン及びジフェニルエーテル等のエーテル系有機溶媒のうちの1種を単独で又は2種以上の複数を適宜の比率で混合して用いることができる。
【0184】
前記溶媒として好ましくは、トルエン、キシレン及びジクロロメタンからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられ、より好ましくは、トルエン及びジクロロメタンからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0185】
前記有機酸としては、例えば、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、クロロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、10-カンファ-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びp-トルエンスルホン酸のうちの1種を単独で又は2種以上の複数を適宜の比率で混合して用いることができる。前記有機酸として好ましくはトリフルオロ酢酸が挙げられる。
【0186】
前記脱保護反応において、前記有機酸の使用量としては、前記基質に対して1~50当量であり、好ましくは5~20当量である。
【0187】
前記脱保護反応の反応温度は、0~200℃の範囲であり、好ましくは、20~150℃の範囲である。
【0188】
前記脱保護反応の反応時間は、5分間~48時間の範囲であり、好ましくは、20分間~24時間の範囲である。
【0189】
(保護反応)
なお、上記のスキーム1の条件では、化合物Bに対する前記脱保護反応により、同化合物Bの保護基であるN-Bocも脱落し、化合物(3)の遊離塩基体が生成するので、再度Bocをかけなおす(Bocで置換して保護する)ことが好ましい。この場合には、化合物(3)の遊離塩基体を単離した後、当業者が知り得る一般的な方法で再度Bocをかけなおすことができ、又は、上記脱保護反応が終了した後の反応混合物を中性~塩基性に調整して、これを、適当な補助溶媒の存在下若しくは非存在下、前記反応混合物中の基質(ここでは、化合物(3)の遊離塩基体)と二炭酸ジ-tert-ブチルとを反応させて行うことができ、好ましくは、後者の方法である。後者の保護反応の好ましい条件は以下のとおりである。
【0190】
前記補助溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール及びtert-ブタノール等のプロトン性溶媒、石油エーテル、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の炭化水素系有機溶媒;四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン及びクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系有機溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン及びジフェニルエーテル等のエーテル系有機溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸tert-ブチル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸イソブチル及びプロピオン酸tert-ブチル等のエステル系有機溶媒;並びに;アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド及びN-メチル-2-ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒等のうちの1種を単独で又は2種以上の複数を適宜の比率で混合して用いることができる。
【0191】
前記溶媒として好ましくは、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、ジクロロメタン、クロロホルム及び酢酸エチルからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられ、より好ましくは、水、メタノール及びジクロロメタンからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0192】
前記反応混合物を中性~塩基性に調整するためには、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化バリウム等の塩類;アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、シクロヘキシルアミン、エタノールアミン、アニリン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ビストリメチルシリルアミン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、2-(ジメチルアミノ)エタノール、N-メチルピロリジン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、N,N’-ジメチルピペラジン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N-ジメチルアニリン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン、ピリジン、ピコリン、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、2、6-ルチジン及び2,4,6-コリジン等のアミン類;リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド及びカリウムtert-ブトキシド等の金属アルコキシド類;ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、乳酸、コハク酸、クエン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、10-カンファ-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びp-トルエンスルホン酸等の有機酸類;塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸及び過塩素酸等の無機酸類;並びに;三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、塩化マグネシウム、臭化マグネシウムジエチルエーテル錯体、塩化亜鉛、塩化第二スズ、塩化第二鉄、塩化アルミニウム、四塩化チタン及び四塩化ジルコニウム等のルイス酸等のうちの1種を単独で又は2種以上の複数を適宜の比率で混合して用いることができる。
【0193】
毒性が低い観点から、これらの中でも好ましくは、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、塩酸、硫酸及び硝酸等からなる群から選択される少なくとも1種(好ましくはいずれか1種)が挙げられ、より好ましくは、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、塩酸及び硫酸からなる群から選択される少なくとも1種(好ましくはいずれか1種)が挙げられる。このとき、前記反応混合物のpHは、6.8~12.0程度に調整され、好ましくは、7.0~9.5程度に調整される。
【0194】
二炭酸ジ-tert-ブチルは、前記基質に対して0.9~5当量使用され、好ましくは、1~2当量使用される。
【0195】
前記保護反応の反応温度は、0~100℃の範囲であり、好ましくは、10~80℃の範囲であり、より好ましくは、20~60℃の範囲である。
【0196】
前記保護反応の反応時間は、10分間~24時間の範囲であり、好ましくは、20分間~12時間の範囲であり、より好ましくは、30分間~6時間の範囲である。
【0197】
(変換反応)
本発明の製造方法において、ハロゲン原子の水素原子への変換反応としては、トランスメタル化反応又は還元反応等によってハロゲン原子を除去する方法が使用でき、好ましくは、接触水素化又は金属類による還元反応が使用でき、より好ましくは、金属類による還元反応が使用できる。
【0198】
本発明の製造方法においては、化合物BのXが水素原子ではなくハロゲン原子である場合には、これを水素原子に変換する。好ましくは、化合物B(例えば、化合物(9))と金属類とを反応させることにより、Xのハロゲン原子を水素原子に変換して化合物(3)を得る。前記変換反応として好ましくは、基質(ここでは、化合物B)に、適当な溶媒中、酸又は塩基の存在下又は非存在下で、金属類を反応させて行われ、その好ましい条件は以下のとおりである。
【0199】
前記溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール及びtert-ブタノール等のプロトン性溶媒;石油エーテル、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン及びジフェニルエーテル等のエーテル系有機溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸tert-ブチル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸イソブチル及びプロピオン酸tert-ブチル等のエステル系有機溶媒;並びに;アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド及びN-メチル-2-ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒のうちの1種を単独で又は2種以上の複数を適宜の比率で混合して用いることができる。
【0200】
前記溶媒として好ましくは、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、テトラヒドロフラン及び1,4-ジオキサンからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられ、より好ましくは、水、1,4-ジオキサン及びエタノールからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0201】
前記酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸及び硝酸等の鉱酸類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸及びトリフルオロ酢酸等のカルボン酸類;並びに;炭酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等のカルボン酸のアンモニウム塩等のうちの1種を単独で又は2種以上の複数を適宜の比率で混合して用いることができる。
【0202】
前記塩基としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化バリウム等の塩類;アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、シクロヘキシルアミン、エタノールアミン、アニリン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ビストリメチルシリルアミン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、2-(ジメチルアミノ)エタノール、N-メチルピロリジン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、N,N’-ジメチルピペラジン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N-ジメチルアニリン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン、ピリジン、ピコリン、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、2,6-ルチジン及び2,4,6-コリジン等のアミン類;並びに;リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド及びカリウムtert-ブトキシド等の金属アルコキシド類等のうちの1種を単独で又は2種以上の複数を適宜の比率で混合して用いることができる。
【0203】
前記塩基として好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ギ酸アンモニウム又は酢酸アンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられ、より好ましくは、水酸化ナトリウム又はギ酸アンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0204】
前記変換反応における前記酸又は塩基の使用量としては、それぞれ、前記基質に対して10~50当量であり、好ましくは20~40当量であり、より好ましくは20~30当量である。
【0205】
前記金属類としては、例えば、ヨウ化サマリウム(II)、ヨウ化イッテルビウム(III)、アルミニウム、亜鉛、鉄、スズ、サマリウム又はイッテルビウム等のうちの1種を単独で又は2種以上の複数を適宜の比率で混合して用いることができる。
【0206】
前記金属類として好ましくは、亜鉛及び鉄からなる群から選択される少なくとも1種(好ましくはいずれか1種)が挙げられ、より好ましくは、亜鉛が挙げられる。
【0207】
前記変換反応における前記金属類の使用量としては、前記基質に対して10~50当量であり、好ましくは20~40当量であり、より好ましくは20~30当量である。
【0208】
前記変換反応の反応温度は、0~200℃の範囲であり、好ましくは、30~150℃の範囲であり、より好ましくは、60~120℃の範囲である。
【0209】
前記変換反応の反応時間は、30分間~24時間の範囲であり、好ましくは、1時間~12時間の範囲であり、より好ましくは、2時間~6時間の範囲である。
【0210】
(O-アルキル化反応)
本発明の製造方法では、好ましくは、化合物(3)の第4位の水酸基をO-アルキル化反応によってジアルキル化することにより、化合物Cを得る。前記O-アルキル化反応として好ましくは、基質(ここでは、化合物(3))を、適当な溶媒中、塩基の存在下又は非存在下で、エチル 2-ブロモ-2,2-ジフルオロアセテートと反応させ、その後、有機金属試薬によってジアルキル化することで行われ、その好ましい条件は以下のとおりである。
【0211】
前記溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール及びtert-ブタノール等のプロトン性溶媒;石油エーテル、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン及びジフェニルエーテル等のエーテル系有機溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸tert-ブチル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸イソブチル及びプロピオン酸tert-ブチル等のエステル系有機溶媒;並びに;アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド及びN-メチル-2-ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒等のうちの1種を単独で又は2種以上の複数を適宜の比率で混合して用いることができる。
【0212】
前記溶媒として好ましくは、メタノール、エタノール、トルエン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトニトリル及びN,N-ジメチルホルムアミドからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられ、より好ましくは、アセトニトリル及びN,N-ジメチルホルムアミドからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0213】
前記塩基としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン、カリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化バリウム等の塩類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、2-(ジメチルアミノ)エタノール、N-メチルピロリジン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、N,N’-ジメチルピペラジン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N-ジメチルアニリン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン、ピリジン、ピコリン、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、2、6-ルチジン及び2,4,6-コリジン等のアミン類;水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化バリウム及び水素化カルシウム等の金属水素化物;リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド及びカリウムtert-ブトキシド等の金属アルコキシド類;リチウムアミド、ナトリウムアミド、カリウムアミド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウム-2,2,6,6-テトラメチルピペリジド、リチウムビストリメチルシリルアミド、ナトリウムビストリメチルシリルアミド及びカリウムビストリメチルシリルアミド等の金属アミド類;並びに;カリウムトリメチルシロキシド等のうちの1種を単独で又は2種以上の複数を適宜の比率で混合して用いることができる。
【0214】
前記塩基として好ましくは、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン、水素化ナトリウム及びナトリウムtert-ブトキシドからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられ、より好ましくは、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン及びナトリウムtert-ブトキシドからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0215】
前記O-アルキル化反応(エチル 2-ブロモ-2,2-ジフルオロアセテートとの反応)において、前記塩基の使用量としては、前記基質に対して1~20当量であり、好ましくは2~5当量である。
【0216】
前記O-アルキル化反応において、エチル 2-ブロモ-2,2-ジフルオロアセテートの使用量としては、前記基質に対して1~10当量であり、好ましくは2~6当量である。
【0217】
前記O-アルキル化反応(エチル 2-ブロモ-2,2-ジフルオロアセテートとの反応)の反応温度は、0~100℃の範囲であり、好ましくは、10~60℃の範囲であり、より好ましくは、15~40℃の範囲である。
【0218】
前記O-アルキル化反応(エチル 2-ブロモ-2,2-ジフルオロアセテートとの反応)の反応時間は、5分間~24時間の範囲であり、好ましくは、10分間~12時間の範囲であり、より好ましくは、20分間~6時間の範囲である。
【0219】
前記有機金属試薬としては、例えば、有機マグネシウム試薬、有機リチウム試薬、有機亜鉛試薬、有機ホウ素試薬、有機スズ試薬、有機ケイ素試薬、有機ビスマス試薬、有機ゲルマニウム試薬、有機水銀試薬等のうちの1種を単独で又は2種以上の複数を適宜の比率で混合して用いることができる。
【0220】
前記有機金属試薬として好ましくは、有機マグネシウム試薬、有機リチウム試薬、有機亜鉛試薬からなる群から選択される少なくとも1種(好ましくはいずれか1種)が挙げられ、より好ましくは、有機マグネシウム試薬が挙げられる。
【0221】
前記O-アルキル化反応において、前記有機金属試薬の使用量としては、前記基質に対して2~10当量であり、好ましくは、2.5~5当量である。
【0222】
前記O-アルキル化反応(有機金属試薬との反応)の反応温度は、0~100℃の範囲であり、好ましくは、10~60℃の範囲であり、より好ましくは、15~40℃の範囲である。
【0223】
前記O-アルキル化反応(有機金属試薬との反応)の反応時間は、5分間~24時間の範囲であり、好ましくは、10分間~12時間の範囲であり、より好ましくは、20分間~6時間の範囲である。
【実施例
【0224】
以下に本発明について、実施例を用いてより詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。下記実施例には、本発明の範囲を逸脱しない範囲で種々の応用、変形及び修正等が可能である。
【0225】
以下、実施例における略語は、下記の意味である。
M:mol/L
H-NMR:得られた化合物のプロトン核磁気共鳴スペクトルの結果
Pd-C:活性炭担持パラジウム触媒
THF:テトラヒドロフラン
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
Boc:tert-ブトキシカルボニル基
(Boc)O:二炭酸ジ-tert-ブチル
Bn:ベンジル基。
【0226】
(実施例1)
[合成例1] 3-ベンジルオキシ-6-ブロモ-2-ニトロフェノール
【0227】
【化35】
【0228】
2,6-ジフルオロニトロベンゼン(52.75g、331.6mmol)をDMSO(158mL)に溶解し、ベンジルアルコール(35.86g、331.6mmol)及び炭酸カリウム(91.65g、663mmol)を加え、90℃で24時間撹拌し、前記式(10-11)で表され、同式中のRがフッ素原子である化合物を含む反応液を得た。前記反応液を冷却後、酢酸エチル(422mL)で希釈し、水及び0.1M塩酸をそれぞれ211mLで順次洗浄した。得られた有機層をアセトニトリルに置換しながら濃縮し、211mLのアセトニトリル溶液を得た。得られた溶液にアセトニトリル(211mL)、N-ブロモコハク酸イミド(88.53g、497.4mmol)及び酢酸(4.75mL、83.1mmol)を加え、10℃以下に冷却後、クロロトリメチルシラン(18.02g、165.9mmol)を加え、10℃以下で2時間撹拌し、前記式(10-12)で表され、同式中のRがフッ素原子である化合物を含む反応液を得た。前記反応液に水(164mL)及び20%亜硫酸水素ナトリウム水溶液(164mL)を加えて撹拌後、トルエン(528mL)を加えて撹拌し、水層を除去した。得られた有機層を2M水酸化ナトリウム水溶液(249mL)で2回洗浄し、DMSO(492mL)を加えて濃縮し、トルエンを留去した。得られた溶液に6.25M水酸化ナトリウム水溶液(127mL)を加え、70℃で1時間撹拌した。反応液を冷却後、トルエン(633mL)及び水(1266mL)を加えて撹拌後、有機層を除去した。得られた水層にトルエン(791mL)及び6M塩酸(146mL)を加えて撹拌後、水層を除去した。得られた有機層を水で洗浄後、2-プロパノールに置換しながら濃縮し、2-プロパノール(370mL)溶液を得た。溶液に水(296mL)を加えて固体を析出させ、冷却撹拌後、固体を分離し、2-プロパノール/水=1/2の混液で洗浄、乾燥して表題の化合物84.08g(収率78.2%)を得た。
【0229】
H-NMR(400MHz,CDCl3)δppm:9.81(s,1H),7.61(d,J=9.1Hz,1H),7.45-7.32(m,5H),6.55(d,J=9.1Hz,1H),5.20(s,2H)。
【0230】
[合成例2] 2-アミノ-3-ベンジルオキシ-6-ブロモフェノール
【0231】
【化36】
【0232】
亜ジチオン酸ナトリウム(純度90.6%)(118.58g、617mmol)を水(480mL)に溶解し、10℃に冷却した。合成例1で得られた3-ベンジルオキシ-6-ブロモ-2-ニトロフェノール(40.0g、123.4mmol)をエタノール(560mL)に溶解し、亜ジチオン酸ナトリウム水溶液に加え、3~10℃で1時間撹拌した。反応液に水(1200mL)を加えて撹拌した後、生じた固体をろ取し、水で洗浄後、乾燥して表題の化合物29.9g(収率82.4%)を得た。
【0233】
H-NMR(400MHz,CDCl3)δppm:7.45-7.33(m,5H),6.80(d,J=8.7Hz、1H),6.44(d,J=8.7Hz、1H),5.37(br s,1H),5.07(s,2H),3.91(br s,2H)。
【0234】
[合成例3] tert-ブチル 3-(4-ベンジルオキシ-7-ブロモベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-カルボキシレート
【0235】
【化37】
【0236】
合成例2で得られた2-アミノ-3-ベンジルオキシ-6-ブロモフェノール(10.0g、33.99mmol)をトルエン(20mL)に懸濁し、酢酸(0.98mL、17.1mmol)及びテトラエトキシメタン(7.84mL、37.3mmol)を加えて、30分間加熱還流し、前記式(15)で表される化合物を含む反応液を得た。前記反応液にtert-ブチル 3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-カルボキシレート(8.79g、44.3mmol)及びトルエン(6mL)を加え、2時間加熱還流した。反応液を冷却した後、トルエン(40mL)で希釈し、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(40mL)及び水(40mL)で順次洗浄した後、24mLまで濃縮した。得られた溶液にn-ヘプタン(180mL)を加えて固体を析出させ、冷却撹拌後、固体をろ取し、n-ヘプタンで洗浄、乾燥し、表題の化合物15.93g(収率93.7%)を得た。
【0237】
H-NMR(400MHz,CDCl3)δppm:7.44(d,J=6.9Hz,2H),7.37-7.25(m,3H),6.97(d,J=8.4Hz,1H),6.59(d,J=8.4Hz,1H),5.35(s,2H),4.35-4.20(m,4H),3.76(d,J=11.0Hz,2H),2.75-2.67(m,1H),1.55(d,J=9.2Hz,1H),1.41(s,9H)。
【0238】
[合成例4] tert-ブチル 3-(4-ベンジルオキシ-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-カルボキシレート
【0239】
【化38】
【0240】
亜鉛粉末(6.47g,98.9mmol)をDMF(22.5mL)に懸濁し、クロロトリメチルシラン(0.6mL,4.7mmol)を加え、60℃で1時間撹拌した。反応液に2-ブロモチアゾール(6.7mL,75.6mmol)を加え、20分間撹拌し、合成例3で得られたtert-ブチル 3-(4-ベンジルオキシ-7-ブロモベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-カルボキシレート(7.5g,15.0mmol)のトルエン(15mL)溶液、塩化銅(I)(0.15g,1.5mmol)及び[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)ジクロロメタン付加物(0.61g,0.75mmol)を加え、85℃で1時間撹拌した。反応液を冷却した後、トルエン(225mL)、1M塩酸(225mL)を加えて30分間撹拌した後、不溶物をろ去した。水層を除去して得られた有機層を水で洗浄後、濃縮した。濃縮残渣に2-プロパノール(75mL)を加えて撹拌し、生じた結晶をろ取し、得られた結晶を2-プロパノールで洗浄後、減圧乾燥し、表題化合物6.67g(収率88%)を得た。
【0241】
H-NMR(400MHz,CDCl3)δppm:7.88(d,J=3.2Hz,1H),7.75(d,J=8.7Hz,1H)、7.48(d,J=7.4Hz,2H),7.38-7.25(m,4H),6.80(d,J=8.7Hz,1H),5.44(s,2H),4.45-4.25(m,4H),3.83(d,J=10.6Hz,2H),2.75-2.68(m,1H),1.58(d,J=8.7Hz、1H),1.42(s,9H)。
【0242】
[合成例5] tert-ブチル 3-(4-ヒドロキシ-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-カルボキシレート
【0243】
【化39】
【0244】
合成例4で得られたtert-ブチル 3-(4-ベンジルオキシ-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-カルボキシレート(50.0g、99.09mmol)をトルエン(150mL)に懸濁し、トリフルオロ酢酸(150mL、1960mmol)を加え、80℃で20時間撹拌した。反応液を室温付近に冷却し、あらかじめ5℃付近に冷却したメタノール(300mL)、水(200mL)及びジクロロメタン(480mL)を加えた。次いで5M水酸化ナトリウム水溶液(400mL)を加え、室温で撹拌し、6M塩酸でpHを8.6付近に調整した。(Boc)O(25.0mL、109.0mmol)を加え、30℃に加温し、20分後に5%炭酸水素ナトリウム水溶液(83.2mL、49.50mmol)を加え、さらに30分後に5%炭酸水素ナトリウム水溶液(83.2mL、49.50mmol)を加え、1時間撹拌した。反応液の水層及び有機層を分離し、水層をジクロロメタン(100mL)で再抽出した。合わせた有機層を約250mLまで減圧濃縮した後、アセトニトリル(300mL)を加え、約250mLまで減圧濃縮することを2回繰り返した。室温で30分間晶析・熟成させ、60℃で1時間撹拌した後、1時間かけて室温に降温して熟成させ、さらに氷浴上で1時間熟成させた。生じた固体をろ取し、冷却したアセトニトリル(75mL)で洗浄後、通気乾燥させた。得られた粗表題化合物にアセトニトリル(250mL)を加え、80℃で1時間撹拌し、2時間かけて室温に降温し熟成させ、さらに氷浴上で1時間熟成させた。固体をろ取し、冷却したアセトニトリル(75mL)で洗浄した後、40℃で減圧乾燥し、表題化合物の1アセトニトリル和物42.2g(収率93.5%)を得た。
【0245】
H-NMR(400MHz,CDCl3)δppm:9.44(br s,1H),7.90(d,J=3.2Hz,1H),7.81(d,J=8.7Hz,1H),7.38(d,J=3.2Hz,1H),6.87(d,J=8.7Hz,1H),4.38-4.18(m,4H),3.80-3.68(m,2H),2.75-2.67(m,1H),1.55(d,J=8.7Hz,1H),1.37(s,9H)。
【0246】
[合成例6] tert-ブチル 3-(4-(1,1-ジフルオロ-2-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-カルボキシレート
【0247】
【化40】
【0248】
合成例5で得られたtert-ブチル 3-(4-ヒドロキシ-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-カルボキシレート(50.0g、120.6mmol)をアセトニトリル(225mL)に溶解し、エチル 2-ブロモ-2,2-ジフルオロアセテート(46.7mL、361.9mmol)及び1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン(54.0mL、361.9mmol)を加え、30℃で3時間撹拌した。反応液を0℃付近まで冷却し、あらかじめ冷却したトルエン(750mL)及び0.3M塩酸を加えて撹拌し、水層を除去した。得られた有機層を水(250mL)で2回洗浄し、硫酸マグネシウム(5g)を加えた後、ろ過した。ろ液を250mLまで減圧濃縮し、トルエン(250mL)を加えた後、250mLまで減圧濃縮した。得られた溶液を5℃まで冷却し、1.08MメチルマグネシウムブロマイドTHF溶液(336mL、361.9mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。反応液を0℃付近まで冷却し、トルエン(500mL)及び1M塩酸(500m)を加えて撹拌し、水層を除去した。得られた有機層を0.1M水酸化ナトリウム水溶液(500mL)、10%硫酸水素カリウム水溶液(500mL)及び水(500mL)で順次洗浄した後、250mLまで減圧濃縮を行った。得られた溶液に活性炭(5g)を加え60℃で1時間撹拌し、セライトろ過を行った。ろ液を250mLまで減圧濃縮した後、エタノール(750mL)を加え、250mLまで減圧濃縮し、再度同様の操作を行った。得られた溶液を室温で2時間撹拌した後、0℃で1時間撹拌し、結晶を析出させた。生じた結晶をろ取し、エタノール(100mL)で洗浄した。結晶にエタノール(500mL)を加え、70℃に加温し3時間撹拌した後、2時間かけて室温に降温して終夜撹拌した。溶液を0℃以下に冷却後、1時間撹拌した。得られた結晶を10℃以下のエタノール(2vol)で洗浄後、減圧下にて乾燥して表題化合物の1エタノール和物50.69g(収率73.9%)を得た。
【0249】
H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δppm:8.05(s,J=4.0Hz,1H),7.97(s,J=4.0Hz,1H),7.79(s,J=10.0Hz,1H),7.21(s,J=10.0Hz,1H),5.59(s,1H),4.38-3.70(m,6H),2.70-2.55(m,1H),1.61(d,J=8.0Hz,1H),1.41(s,6H),1.27(S,9H)。
【0250】
[合成例7] 1-{[2-(3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)-7-(1,3-チアゾール-2-イル)-1,3-ベンゾオキサゾール-4-イル]オキシ}-1,1-ジフルオロ-2-メチルプロパン-2-オール
【0251】
【化41】
【0252】
合成例6で得られたtert-ブチル 3-(4-(1,1-ジフルオロ-2-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-カルボキシレート(10g、19.2mmol)をジクロロメタン(25mL)に溶解し、トリフルオロ酢酸(18.3mL、238.8mmol)を加え、40℃で2時間撹拌した。反応液にメタノール(30mL)及びジクロロメタン(165mL)を加えた後、30℃以下で5N水酸化ナトリウム水溶液(100mL)を加えて撹拌した。水層及び有機層を分離し、水層をジクロロメタン(10mL)で再抽出した。合わせた有機層にメタノール(30mL)及び水(100mL)を加え撹拌した。水層及び有機層を分離し、水層をジクロロメタン(10mL)で再抽出した。合わせた有機層を100mLまで濃縮し、トルエン(50mL)を加えた後、50mLまで濃縮した。この濃縮液にトルエン(100mL)を加え室温で1時間、55℃で1時間撹拌後、0℃で1時間以上撹拌した後、生じた固体をろ取した。得られた固体を10℃以下に冷却したトルエン(30mL)で洗浄し、減圧乾燥後、表題化合物の粗結晶6.76g(収率90.9%)を得た。
【0253】
[合成例8]
合成例7で得られた1-{[2-(3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)-7-(1,3-チアゾールー2-イル)-1,3-ベンゾオキサゾール-4-イル]オキシ}-1,1-ジフルオロ-2-メチルプロパン-2-オールの粗結晶(20g)を85%エタノール水溶液(300mL)に溶解した。この溶解液を70℃に加熱し、粗結晶の溶解を確認した後、40℃に冷却し、ろ過した。このろ液を100mLまで減圧濃縮し、エタノール(100mL)を加えた後、100mLまで減圧濃縮し、その後同操作を2回行った。この濃縮液を0℃にて終夜撹拌し、固体を析出させた。生じた固体をろ取し、あらかじめ冷却したエタノール(40mL)で洗浄し、減圧乾燥後、1-{[2-(3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-3-イル)-7-(1,3-チアゾールー2-イル)-1,3-ベンゾオキサゾール-4-イル]オキシ}-1,1-ジフルオロ-2-メチルプロパン-2-オール再結晶体17.8g(89.0%収率)を得た。
【0254】
H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δppm:8.02(d,J=3.2Hz,1H),7.92(d,J=3.2Hz,1H),7.76(d,J=8.7Hz,1H)、7.20(d,J=8.7Hz,1H),5.48(s,1H),3.93-3.80(m,4H),3.69(d,J=6.0Hz,2H),2.61-2.54(m,1H),1.89(s,1H),1.60(d,J=9.2Hz、1H),1.41(s,6H)。
【0255】
(実施例2)
[合成例1] 4-ベンジルオキシ-7‐ブロモ-2-エトキシベンゾ[d]オキサゾール
【0256】
【化42】
【0257】
実施例1の合成例2で得られた2-アミノ-3-ベンジルオキシ-6-ブロモフェノール(8.83g,30.0mmol)をトルエン(27mL)に溶解し、酢酸(0.86mL,15.0mmol)及びテトラエトキシメタン(6.34g,33.0mmol)を加え、30分間加熱還流した。反応液を酢酸エチルで希釈し、5%炭酸水素ナトリウム水溶液及び水で順次洗浄した。得られた有機層を2-プロパノールで置換しながら濃縮し、72mL溶液とし、これを撹拌して固体を析出させた。冷却後、生じた固体をろ取し、2-プロパノールで洗浄後、乾燥して表題の化合物9.84g(収率94.3%)を得た。
【0258】
H-NMR(400MHz,CDCl3)δppm:7.45(d,J=7.4Hz,2H),7.39-7.27(m,3H),7.12(d,J=8.7Hz,1H),6.65(d,J=8.7Hz,1H),5.37(s,2H),4.68(q,J=7.3Hz,2H)、1.51(t,J=7.3Hz,3H)。
【0259】
[合成例2] 4-ベンジルオキシ-2-エトキシ-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール
【0260】
【化43】
【0261】
亜鉛粉末(1.57g、24.0mmol)をDMF(15mL)に懸濁し、クロロトリメチルシラン(0.25mL、2.0mmol)を加え、50℃で1時間撹拌した。反応液を60℃に加熱し、2-ブロモチアゾール(1.8mL、20.3mmol)を加えて撹拌した後、合成例1で得られた4-ベンジルオキシ-7‐ブロモ-2-エトキシベンゾ[d]オキサゾール(3.48g、10.0mmol)、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)ジクロロメタン付加物(0.24g、0.29mmol)及びDMF(10mL)を加えた後、80℃以上で1時間撹拌し、冷却した。反応液にトルエン(35mL)、DMF(18mL)及び20倍に希釈した硫酸(18mL)を加え、1時間撹拌した後、水層を除去した。得られた有機層にDMF(18mL)及び20倍に希釈した硫酸(18mL)を加えて撹拌した後、水層を除去した。得られた有機層を水で洗浄した。再度同様の操作を行い、同量の有機層を得た。得られた有機層を混合し、2-プロパノールで置換しながら濃縮し、70mL溶液とした。この溶液を撹拌して固体を析出させ、冷却後、固体をろ取し、2-プロパノールで洗浄後、乾燥して表題化合物6.06g(収率86.0%)を得た。
【0262】
H-NMR(400MHz,CDCl3)δppm:7.91(d,J=3.2Hz,1H),7.84(d,J=9.2Hz,1H),7.49(d,J=7.4Hz,2H),7.40-7.30(m,4H)、6.86(d,J=9.2Hz,1H),5.45(s,2H),4.72(q,J=6.8Hz,2H),1.55(t,J=6.8Hz,3H)。
【0263】
[合成例3] tert-ブチル 3-(4-ベンジルオキシ-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-カルボキシレート
【0264】
【化44】
【0265】
合成例2で得られた4-ベンジルオキシ-2-エトキシ-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール(3.0g、8.5mmol)をトルエン(12mL)に溶解し、tert-ブチル 3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-カルボキシレート(1.86g、9.4mmol)及び酢酸(0.25mL、4.4mmol)を加え、1時間加熱還流した。反応液をトルエンで希釈し、5%炭酸水素ナトリウム水溶液及び水で順次洗浄した。得られた有機層を2-プロパノールに置換しながら濃縮し、30mL溶液とした。この溶液を撹拌して固体を析出させ、冷却後、固体をろ取し、2-プロパノールで洗浄後、乾燥して表題化合物3.97g(収率92.5%)を得た。H-NMRは実施例1の合成例4で得られた化合物と一致した。
【0266】
(実施例3)
[合成例1] 5,7-ジブロモ-2-エトキシベンゾ[d]オキサゾール-4-オール
【0267】
【化45】
【0268】
2-ニトロレゾルシノール(5.0g、32.235mmol)を酢酸エチル(50mL)に溶解し、10%Pd-C(PEtype)(0.25g)を加え、水素雰囲気下室温で1.5時間強く撹拌し、2-アミノレゾルシノールを含む反応液を得た。前記反応液をセライトろ過し、濾滓を酢酸エチル(30mLを数回に分割して)で洗浄し、ろ液を50mLまで減圧濃縮した。この溶液に窒素雰囲気下で酢酸エチル(25mL)、酢酸(0.92mL、16.060mmol)及びテトラエトキシメタン(10.1mL、48.330mmol)を加え、85℃で1時間撹拌し、2-エトキシベンゾ[d]オキサゾール-4-オールを含む反応液を得た。前記反応液を冷却後、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)及び水(50mL)で順次洗浄し、50mLまで減圧濃縮した。得られた溶液に酢酸エチル(50mL)を加え、氷冷下、N-ブロモコハク酸イミド(12.05g、67.770mmol)を分割投入し、室温に昇温し1時間撹拌し、表題化合物を含む反応液を得た。前記反応液に酢酸エチル(50mL)を加え、順次、20%亜硫酸水素ナトリウム水溶液(50mL)で洗浄し、5%食塩水(50mL)で2回洗浄した。得られた有機層を50mLまで減圧濃縮し、エタノール(50mL)を加え50mLまで減圧濃縮することを2回繰り返した。溶液に水(100mL)を滴下し固体を析出させ、氷冷下1時間熟成した。得られた固体をろ取し、エタノール/水=1/3(40mLを数回に分割して)で洗浄し、減圧乾燥し、表題化合物8.73g(収率80.4%)を得た。
【0269】
H-NMR(400MHz,CDCl3)δppm:7.45(s,1H),4.65(q,J=6.9Hz,2H),1.52(t,J=6.9Hz,3H)。
【0270】
[合成例2] tert-ブチル 3-(5,7-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-カルボキシレート
【0271】
【化46】
【0272】
合成例1で得られた5,7-ジブロモ-2-エトキシベンゾ[d]オキサゾール-4-オール(7.00g、20.773mmol)及びtert-ブチル 3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-カルボキシレート(4.94g、24.916mmol)をトルエン(70mL)に溶解し、125℃に加熱し、2時間撹拌した。反応液を冷却後、35mL溶液まで減圧濃縮し、n-ヘキサン(175mL)を滴下し固体を析出させた後、氷冷下1時間熟成させた。得られた固体をろ取し、トルエン/n-ヘキサン=1/4(35mLを数回に分割して)で洗浄し、減圧乾燥した。得られた固体をTHF(90mL)に溶解し、48mLまで減圧濃縮した。酢酸エチル(63mL)を加え48mLまで減圧濃縮することを3回繰り返した。得られた溶液を60℃で30分間撹拌し、室温まで降温後、氷冷で1時間熟成した。得られた固体をろ取し、冷酢酸エチル(18mLを数回に分割して)で洗浄後、減圧乾燥し、表題化合物7.77g(収率84.8%)を得た。
【0273】
H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ:10.65(s,1H),7.34(s,1H),4.02-4.26(m,4H),3.66(br d,J=11.0Hz,2H),2.53-2.63(m,1H),1.57(d,J=9.2Hz,1H),1.29(s,9H)。
【0274】
[合成例3] tert-ブチル 3-(5-ブロモ-4-ヒドロキシ-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-カルボキシレート
【0275】
【化47】
【0276】
塩化リチウム無水(2.22g、51.11mmol)及び亜鉛粉末(5.01g、76.65mmol)をTHF(10mL)に懸濁し、窒素雰囲気下クロロトリメチルシラン(0.45mL、3.58mmol)を加え、60℃で2時間強撹拌した。2-ブロモチアゾール(4.53mL、51.11mmol)をゆっくり滴下し、合成例2で得られたtert-ブチル 3-(5,7-ジブロモ-4-ヒドロキシベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-カルボキシレート(5.00g、10.22mmol)のDMF(15mL)溶液、酢酸パラジウム(II)(0.229g、1.022mmol)及びトリ(p-トリル)ホスフィン(1.24g、4.09mmol)を、DMF(15mL)を用いて素早く加え、85℃に昇温し2.5時間撹拌した。反応液を氷冷し、クロロホルム(50mL)、トルエン(25mL)、DMF(50mL)及び1.8M硫酸水溶液(50mL)を加え30分間撹拌した。静置後に水層を分離し、得られた有機層をDMF(50mL)及び1.8M硫酸水溶液(50mL)の混合溶液で洗浄した。得られた水層を先の水層と合わせ、クロロホルム(40mL)及びトルエン(20mL)の混合溶液で再抽出した。得られた有機層を先の有機層と合わせ、水(100mL)で2回洗浄した。有機層に活性炭(0.5g)及び20%亜硫酸水素ナトリウム水溶液(100mL)を加え、60℃で1時間撹拌した。冷却後セライトろ過し、濾滓をクロロホルムで洗浄し、ろ液を分液した。得られた有機層を水(100mL)で2回洗浄した後、有機層を30mLまで減圧濃縮した。得られた溶液にトルエン(100mL)を加え30mLまで減圧濃縮することを2回繰り返した。次いでエタノール(100mL)を加え30mLまで減圧濃縮することを2回繰り返した。得られた溶液を氷冷して晶析熟成させ、ろ取、減圧乾燥し、表題化合物4.88g(収率96.8%)を得た。
【0277】
H-NMR(400MHz,CDCl3)δ:8.10(s,1H),7.92(d,J=3.2Hz,1H),7.43(d,J=3.2Hz,1H),4.32(br m,4H),3.78(br d,J=11.9Hz,2H),2.66-2.83(m,1H),1.57(d,J=9.2Hz,1H),1.38(s,9H)。
【0278】
[合成例4] tert-ブチル 3-(4-ヒドロキシ-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-カルボキシレート
【0279】
【化48】
【0280】
合成例3で得られたtert-ブチル 3-(5-ブロモ-4-ヒドロキシ-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタン-6-カルボキシレート(0.469g、0.951mmol)、ギ酸アンモニウム(1.50g、23.79mmol)及び亜鉛粉末(1.554g、23.77mmol)をエタノール(7mL)に懸濁し、窒素雰囲気下2時間還流した。懸濁液を冷却後、酢酸エチル(4.7mL)を加え撹拌した後、セライトろ過し、濾滓を酢酸エチル(9.4mLを数回に分割して)で洗浄した。ろ液を5%硫酸水素カリウム水溶液(9.4mL)及び5%食塩水(9.4mL)で順次洗浄した。得られた有機層を4.7mLまで減圧濃縮し、アセトニトリル(9.4mL)を加え、4.7mLまで減圧濃縮することを2回繰り返した。得られた溶液を室温で2時間撹拌した後、氷冷で1時間晶析・熟成させ、表題化合物の1アセトニトリル和物397mg(収率91.7%)を得た。H-NMRは実施例1の合成例5で得られた化合物と一致した。
【産業上の利用可能性】
【0281】
本発明によれば、安全性、操作性に優れ、工業的製造に適した1-{[2-(3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]へプタン-3-イル)-7-(チアゾール-2-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-4-イル]オキシ}-1,1-ジフルオロ-2-メチルプロパン-2-オール(化合物(1))又はその塩の新規の製造方法を提供することか可能となる。さらに本発明によれば、化合物(1)又はその塩の製造方法に用いることができる原料として、2-アルコキシベンゾ[d]オキサゾール誘導体(化合物(2))又はその塩、並びに、その製造方法も提供することが可能となる。
【0282】
本発明に係る化合物(2)は、毒性が強く取り扱い難い試薬や危険性が高い操作を要さず、さらに、有毒な物質も反応中に発生しない方法で製造することができる。さらに、これを用いた化合物(1)又はその塩の製造においても、毒性が強く取り扱い難い試薬や危険性が高い操作を要さない。加えて、本発明によれば、既存の製造方法よりも工程数を少なくすることも可能であって、また、既存の製造方法と同等の高い収率で化合物(1)又はその塩を得ることができる。したがって、本発明の化合物(1)又はその塩の製造方法、及びそれに用いる化合物(2)又はその塩の製造方法は、工業的に極めて有用である。