(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】オリゴマー化触媒およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 23/755 20060101AFI20240423BHJP
C07C 11/02 20060101ALI20240423BHJP
C07C 2/10 20060101ALI20240423BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240423BHJP
【FI】
B01J23/755 Z
C07C11/02
C07C2/10
C07B61/00 300
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019043536
(22)【出願日】2019-03-11
【審査請求日】2022-02-10
(32)【優先日】2018-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】523448406
【氏名又は名称】エボニック オクセノ ゲーエムベーハー ウント コー. カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン ナドルニー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン パイツ
(72)【発明者】
【氏名】グイド ストッハニオル
(72)【発明者】
【氏名】ロバート フランケ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス クヴァント
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-151253(JP,A)
【文献】特開2011-080063(JP,A)
【文献】台湾特許出願公開第200417555(TW,A)
【文献】国際公開第2016/165531(WO,A2)
【文献】特開2014-065674(JP,A)
【文献】特表2009-536642(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102009027408(DE,A1)
【文献】特表2012-522109(JP,A)
【文献】特表平09-505618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C07B 31/00 - 61/00
C07B 63/00 - 63/04
C07C 1/00 - 409/44
C10G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化ニッケル、Alを含有せずかつSiを含有するバインダ(Al:0.1重量%未満)および非晶質シリカ-アルミナ担体材料を含有し、
NiO:15重量%~40重量%、Al
2O
3:5重量%~20重量%、SiO
2:55重量%~80重量%およびアルカリ金属酸化物:0.01重量%~1重量%、好ましくは0.05重量%~0.5重量%の組成を有し、
27Al MAS NMRにより測定される、四面体配位骨格アルミニウム原子対八面体配位骨格アルミニウム原子の比が、75:25~100:0であること、
を特徴とするオリゴマー化触媒。
【請求項2】
窒素物理吸着法により測定されるBET比表面積が、150~400m
2/gである請求項1に記載のオリゴマー化触媒。
【請求項3】
メソ細孔およびマクロ細孔を有する請求項1または2に記載のオリゴマー化触媒。
【請求項4】
水銀ポロシメトリーにより測定される前記メソ細孔の平均細孔直径が、5~15nmである請求項3に記載のオリゴマー化触媒。
【請求項5】
水銀ポロシメトリーにより測定される前記マクロ細孔の平均孔直径が、1~100μmの請求項3に記載のオリゴマー化触媒。
【請求項6】
粒状である請求項1~5のいずれか1項に記載のオリゴマー化触媒。
【請求項7】
ISO 13322-1(2004-12-01版)およびISO 13322-2(2006-11-01版)に準拠する画像検査法により測定される平均粒径(d50)が、0.1mm~7mmである請求項1~6のいずれか1項に記載のオリゴマー化触媒。
【請求項8】
C
3-~C
6-オレフィンのオリゴマー化方法であり、
前記C
3-~C
6-オレフィンを含有するオレフィン含有インプット混合物を反応帯中の触媒を通過させ、
前記請求項1~7のいずれか1項に記載の触媒が、オリゴマー化反応の触媒に使用されるオリゴマー化方法。
【請求項9】
C
3-~C
5-オレフィンがオリゴマー化され、前記オレフィン含有インプット混合物が前記C
3-~C
5-オレフィンを含有する、請求項8に記載のオリゴマー化方法。
【請求項10】
C
4-オレフィンがオリゴマー化され、前記オレフィン含有インプット混合物が前記C
4-オレフィンを含有する、請求項8に記載のオリゴマー化方法。
【請求項11】
前記オレフィン含有インプット混合物が、2重量%未満の分岐鎖状オレフィンを含有する請求項8~10のいずれか1項に記載のオリゴマー化方法。
【請求項12】
前記オリゴマー化が液相で行われる、請求項8~11のいずれか1項に記載のオリゴマー化方法。
【請求項13】
前記オリゴマー化が、10~70バールの圧力かつ50℃~200℃の温度で行われ、
前記オリゴマー化が液相で行われる場合、前記圧力および温度のパラメータは、反応物流が液相中にあるように選択される、
請求項8~12のいずれか1項に記載のオリゴマー化方法。
【請求項14】
前記オレフィン含有インプット混合物の重量基準空間速度(WHSV)が、1h-
1~190h-
1の範囲内である請求項8~13のいずれか1項に記載のオリゴマー化方法。
【請求項15】
酸化ニッケル、Alを含有せずかつSiを含有するバインダ(Al:0.1重量%未満)および非晶質シリカ-アルミナ担体材料を混合して焼成するオリゴマー化触媒の製造方法であって、
前記非晶質シリカ-アルミナ担体材料は、
27
Al MAS NMRにより測定される、四面体配位骨格アルミニウム原子対八面体配位骨格アルミニウム原子の比が、50:50~74:26であり、
前記オリゴマー化触媒は、NiO:15重量%~40重量%、Al
2
O
3
:5重量%~20重量%、SiO
2
:55重量%~80重量%およびアルカリ金属酸化物:0.01重量%~1重量%の組成を有し、
27
Al MAS NMRにより測定される、四面体配位骨格アルミニウム原子対八面体配位骨格アルミニウム原子の比が、75:25~100:0であること、
を特徴とするオリゴマー化触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化ニッケルとシリカ-アルミナ担体材料とを含有するオリゴマー化触媒、および前記オリゴマー化触媒の製造方法に関する。本発明は、さらに前記オリゴマー化触媒を使用するC3-~C6-オレフィンのオリゴマー化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オリゴマー化は、一般に、不飽和炭化水素自体を反応させ、それに応じてより長鎖の炭化水素、いわゆるオリゴマーを形成することを意味すると理解されている。したがって、例えば、6個の炭素原子を有するオレフィン(ヘキセン)は、3個の炭素原子を有する2つのオレフィンのオリゴマー化によって形成されることができる。2つの分子が互いにオリゴマー化することは、二量体化とも呼ばれる。
【0003】
得られるオリゴマーは、アルデヒド、カルボン酸およびアルコールの製造等に使用され得る中間体である。前記オレフィンのオリゴマー化は、溶解触媒を使用する均一相で、または固体触媒上で不均一に、あるいは二相触媒システムを使用して、大きな工業規模で行われる。
【0004】
不均一系触媒プロセスの中で、酸性オリゴマー化触媒を超えるオリゴマー化が長い間確立されてきた。工業的に使用されるシステムは、担体上のゼオライトまたはリン酸等がある。ここで分岐鎖状オレフィンの異性体混合物が得られる。高い二量体選択性を有するオレフィンの非酸性不均一触媒オリゴマー化に、担体材料上のニッケル化合物が工業的にしばしば使用されている。したがって、特許文献1には、オレフィンオリゴマー化のための成分、すなわち酸化チタンおよび/または酸化ジルコニウム、酸化ケイ素および任意に酸化アルミニウムのみからなる担体材料を含有するニッケル触媒が記載されている。これらの触媒上で、直鎖状ブテンの混合物が、75%未満の選択率でC8-オレフィンにオリゴマー化される。
【0005】
特許文献1には、900℃での熱処理後の強熱減量を差し引いた後の活性成分として、NiOとして計算して、10重量%~70重量%の酸化ニッケル、5重量%~30重量%の二酸化チタンおよび/または酸化ジルコニウム、0重量%~20重量%の酸化アルミニウム、20重量%~40重量%の二酸化ケイ素、および0.01重量%~1重量%のアルカリ金属酸化物を含有するオリゴマー化触媒によるオレフィンのオリゴマー化方法が記載されている。
【0006】
オレフィン、特に3~6個の炭素原子を有するオレフィンのオリゴマー化のための、ニッケル系不均一触媒の触媒活性は、ニッケルカチオンと表面アルミニウム原子との相互作用に基づくと考えられている。しかし、二酸化チタンおよび/または二酸化ジルコニウムを添加すると、全体組成中のアルミニウム/酸化アルミニウムの割合が低くなり、その結果、触媒活性および/または転化率が低下する可能性がある。同時に、二酸化チタンおよび/または二酸化ジルコニウムを添加すると、望ましくないオリゴマー化生成物、特に高度に分岐したオリゴマーが比較的大量に形成される可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、上記の欠点を持たない改良されたオリゴマー化触媒を提供することである。本発明のさらなる目的は、触媒の耐用年数と強度等の機械的性質とに悪影響を及ぼすことなく、オリゴマー化でのより高い選択性とより高い転化率を達成し得るオリゴマー化触媒を提供することである。
【0009】
本発明の目的は、請求項1に記載のオリゴマー化触媒および請求項8に記載のオリゴマー化方法により達成された。好ましい実施形態は、従属請求項に明記されている。
【0010】
本発明によるオリゴマー化触媒は、酸化ニッケルと、Alを含有せずかつSiを含有するバインダ(「Alを含有しない」とは、前記バインダの全体組成においてAlが0.1重量%未満であることを意味する)、好ましくは二酸化ケイ素と、非晶質シリカ-アルミナ担体材料、好ましくは非晶質アルミノケイ酸塩と、を含有する。前記バインダは、本発明に従って製造された触媒が、必要な機械的強度を確実に有するための材料である。本発明の文脈において、「X線非晶質」は、固体が結晶構造、すなわち長距離規則度を有さないという事実に起因する該固体の特性を意味すると理解されるべきである。しかし、本発明の文脈において、前記非晶質シリカ-アルミナ担体材料が、小さな結晶性ドメインを有することは排除されるべきではない。前記非晶質シリカ-アルミナ担体材料は、結晶性材料ではなく、例としてゼオライト材料ではない。
【0011】
前記オリゴマー化触媒は、NiO:15重量%~40重量%、好ましくは15重量%~30重量%、Al2O3:5重量%~20重量%、SiO2:55重量%~80重量%、およびアルカリ金属酸化物、好ましくは酸化ナトリウム:0.01重量%~1重量%、好ましくは0.05重量%~0.5重量%の組成を有する。さらに、前記数値は、100重量%の全体組成に対するものである。さらに、本発明によるオリゴマー化触媒は、27Al MAS NMRにより測定される四面体配位骨格アルミニウム原子対八面体配位骨格アルミニウム原子の比が、75:25~100:0、好ましくは90:10~100:0、特に好ましくは100:0である。上記比における八面体配位と四面体配位の各値は、存在するアルミニウム原子の総数に対する割合として理解されるべきである。本発明の特に好ましい実施形態では、前記オリゴマー化触媒は、二酸化チタンおよび/または二酸化ジルコニウムを実質的に含有せず、前記オリゴマー化触媒は、特に、二酸化チタンおよび/または酸化ジルコニウム:0.5重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、特に好ましくは0.01重量%未満をその全体組成中に含有する。
【0012】
前記オリゴマー化触媒の組成および配位特性は、特にオリゴマー化に使用される前の状態、すなわち触媒が反応帯に充填される形態に関係する。触媒の状態、特に触媒の表面原子の状態は、オリゴマー化中に決定的に決めることはできない。しかし、本件の場合、触媒は、反応帯からの脱離後に実質的に同一の組成および実質的に同一の配位特性を示す。
【0013】
本明細書に記載のアルミニウム原子の種々の配位比は、前記シリカ-アルミナ担体材料中の全アルミニウム原子、つまりバルク原子と表面原子の両方に関係する。アルミノケイ酸塩のバルク構造は、典型的には、非常に小さい程度で、SiO4四面体、AlO4四面体および任意にAlO6八面体から構成される。しかし、この構造の外向き表面は、隣接する四面体または八面体の酸素が欠乏している。表面のケイ素原子は、比較的容易にシラノール基を形成する。しかし、アルミニウム原子は、形式上、自由軌道の三価配位しか有さない。前記自由軌道も含め、これは四面体配位に相当する。前記自由軌道は、分子または原子、例えばアンモニア(アンモニウム型、下図の構造Iを参照)または隣接シラノール基の酸素(H型、下図の構造IIを参照)と配位結合していてもよい。アルミニウムと隣接する酸素との相互作用により、前記隣接シラノール基のOH結合が弱まり、前記OH基がプロトン供与体として機能することができる。外気からの水と共に、水分子からの酸素は、電子供与体としてのアルミニウム原子に配位結合する。3つの水分子が結合し、八面体配位を形成することがあり得る(下図の構造IIIを参照)。
【0014】
【0015】
前記オリゴマー化触媒のアルミニウム原子の配位特性は、オリゴマー化に影響を与える。従来技術では、焦点は、特に、US7,572,946B2またはUS6,733,657B2に記載されているように、主にアルミニウム原子の八面体配位に当てられる。しかし、本件では、四面体配位骨格アルミニウム原子と八面体配位骨格アルミニウム原子との比率を75:25~100:0、好ましくは90:10~100:0、特に好ましくは100:0の範囲の値に調整することにより、本発明によるオリゴマー化触媒を使用する際に、より高い転化率および/またはより高い選択性といった特に良好な触媒特性を達成できることが驚くべきことに見出された。
【0016】
八面体配位アルミニウム原子に対する四面体配位アルミニウム原子の比は、27Al MAS NMRにより測定されることができ、アルミニウム原子の四面体配位は50~60ppmで検出され、アルミニウム原子の八面体配位は0ppmで検出され、これらの配位はピークの統合によって評価され得る。NMRスペクトルの正確な測定は、次のようにして行った:これには、分析前に調査対象の試料を水蒸気で飽和した雰囲気中に約2時間貯蔵する試料調製が含まれる(デシケーター中、室温で、蒸留水より2cm~3cm上に試料)。その結果、シグナル強度が増加し、すべての試料が同じ開始点を持つようになる。続いて、密度に応じて、300~500mgの試料材料をZrO2固体スピナー(外径4mm)に入れ、わずかな圧力で圧縮する。
【0017】
実際のNMR測定は、特別な固体試料ヘッドを備えたBruker 400 Avance III HD分光計で行われる。異方性を排除するために、固体試料については、試料を約54°傾けて急速回転させる(例えば27Alの場合、12kHz)。信号励起には単純な90°パルスが使用される。27Al核の非常に急速な緩和のおかげで、非常に速いパルスシーケンスが可能なほど、約50msの非常に短い待ち時間で測定が行われる。掃引幅は400ppmで、センダーは0ppmに設定される(測定範囲+200~-200ppm)。
【0018】
スペクトルの評価は以下のように行われる:四重極核の固体スペクトル(27Alは四重極核(核スピンI=5/2))は、しばしば補正が困難なベースラインを有する。多項式を使用するベースライン補正は、一旦位相補正が実行された後は、ほとんどの場合本目的に適している。等間隔(12kHz間隔)に現れる回転側波帯は、評価範囲外であるため、評価には影響しない。関連する信号はそれぞれの線幅を考慮して積分され、互いに関連してパーセンテージ割合(%Al)を決定してよい。スペクトルは飽和Al(NO3)3溶液(δ=0.0ppm)を基準としている。アルミニウム原子の四面体配位は、50~60ppmのNMRスペクトル範囲で検出される。アルミニウム原子の八面体配位は、NMRスペクトルにおいて0ppm付近でピークを生じる。
【0019】
本発明によれば、オリゴマー化触媒はさらに(BETに従って計算して)150~400m2/g、好ましくは190~350m2/g、特に好ましくは220~330m2/gの比表面積を有していてもよい。比表面積は、DIN ISO 9277(2014-01版)に従って、窒素物理吸着によって測定され、またはそれらから算出される。
【0020】
さらに好ましい実施形態では、オリゴマー化触媒は、メソ細孔およびマクロ細孔、すなわち二峰性細孔径分布を有する。本発明によるオリゴマー化触媒のメソ細孔は、5~15nm、好ましくは7~14nm、特に好ましくは9~13nmの平均細孔直径を有する。対照的に、本発明によるオリゴマー化触媒のマクロ孔は、好ましくは1~100μm、特に好ましくは2~50μmの平均孔径を有する。本発明によるオリゴマー化触媒の平均細孔容積、すなわちメソ細孔とマクロ細孔との両方の平均細孔容積は、0.5~1.5cm3/g、好ましくは0.7~1.3cm3/gであってもよい。平均細孔直径および平均細孔容積は、DIN 66133(1993-06版)に従って、水銀圧入法によって測定され得る。
【0021】
本発明によるオリゴマー化触媒は、好ましくは粒状物として存在する。さらに、本発明によるオリゴマー化触媒は、0.1mm~7mm、好ましくは0.5~6mm、特に好ましくは1mm~5mmの平均粒径(d50)を有していてもよい。平均粒径は、画像化方法によって、特に規格ISO 13322-1(2004-12-01版)およびISO 13322-2(2006-11-01版)で命名された方法によって測定され得る。粒径の分析に適した機器は、例えばCamsizer 2006機器(Retsch Technology社製)である。
【0022】
さらに好ましい実施形態では、オリゴマー化触媒は、0.5MPa超、好ましくは0.6MPa超、特に好ましくは0.8MPa超のバルククラッシュ強度(BCS)を有する。BCS値は、鉱物粒状物の機械的強度の尺度である。固体のバルククラッシュ強度(BCS)は、固体試料がチューブ内のピストンを介して圧力を受けた際に、0.5重量%の細粒画分(すなわち、0.425mmのメッシュサイズを有するスクリーンを使用して選別された粒子)が形成されるMPaでの圧力として定義されるパラメータを意味すると理解されるべきである。この目的のために、20mlの固体をスクリーン(メッシュサイズ:0.425mm)で予め選別し、円筒形の試料管(内径:27.6mm、壁厚:5mm、高さ:50mm)に充填し、さらに5mlの鋼球(直径3.9mm)を固体の上面に配置する。続いて、固体に3分間異なる(増加する)圧力をかける。次いで、圧力をかけることにより形成された細粒画分をスクリーニングによって除去し、各場合、合計として秤量し、そのパーセンテージ割合を測定する。この工程は、細粒画分が0.5重量%に達するまで行われる。
【0023】
オリゴマー化触媒はまた、その最大注入密度によっても特徴付けられ得る。好ましい実施形態において、本発明によるオリゴマー化触媒は、0.1~2g/cm3、好ましくは0.2~1.5g/cm3、特に好ましくは0.3~1.0g/cm3の最大注入密度を有する。注入密度の測定は、メスシリンダーを介して実施できる。メスシリンダーを、例えばDR100装置(Retsch社製)等の適切な計量装置を介して、一定量の調査対象固体で満たし、そして秤量する。最大注入密度は、重量と体積から測定できる。試料重量から残留水分を差し引く必要がある場合もあり得る。
【0024】
本発明によるオリゴマー化触媒は、以下の工程を含む方法によって製造される;
a)非晶質シリカ-アルミナ担体材料と、Alを含有せずかつSiを含有するバインダと、任意にニッケル源の少なくとも一部と、を混合し、そのようにして製造された混合物を造粒する工程、
b)工程a)で製造された粒状物を、ニッケル源の少なくとも一部で処理(含浸)する工程であり、ただし、工程a)では、ニッケル源の全部が、まだシリカ-アルミナ担体材料および非晶質のAlを含有せずかつSiを含有するバインダと混合されておらず、かつ
c)粒状物を焼成し、オリゴマー化触媒を製造する工程。
【0025】
工程a)で使用される非晶質シリカ-アルミナ担体材料は、焼成状態(Niなし)で、四面体配位骨格アルミニウム原子と八面体配位骨格アルミニウム原子との比が50:50~74:26、好ましくは55:45~70:30である。よって、シリカ-アルミナ担体材料中の四面体配位骨格アルミニウム原子と八面体配位骨格アルミニウム原子の配位比は、最終オリゴマー化触媒における同じ比とは異なり、したがって、触媒の製造中に変化する。上記の比率における四面体配位の割合は、使用されるケイ素-アルミナ担体材料から最終オリゴマー化触媒まで増加するが、八面体配位の割合は低下する。
【0026】
非晶質のシリカ-アルミナ担体材料は、10~20重量%、好ましくは12~17重量%のAl2O3と80~90重量%、好ましくは83~88重量%のSiO2とを含む非晶質アルミノケイ酸塩である。これは、例えば市販の製品において強熱減量という用語で報告される、収着化合物(例えば水またはアンモニア)を全く含まない組成物に関する。好ましい実施態様では、シリカ-アルミナ担体材料として使用される非晶質アルミノケイ酸塩は、10~80μm、好ましくは15~75μmの範囲の粒径(d50)を有していてもよい。シリカ-アルミナ担体材料として使用される非晶質アルミノケイ酸塩は、さらに好ましくは、DIN-ISO 9277(2014-01版)に準拠する窒素物理吸着法により測定して、290~380m2/g、特に好ましくは300~360m2/gの比表面積(BETとして計算)を有する。ニッケル源の全部が工程a)においてすでに添加されている場合、工程a)における全バッチ(水等のありとあらゆる使用溶媒を含む全組成)中のシリカ-アルミナ担体材料の割合は、20~60重量%、好ましくは25~50重量%である。ニッケル源が、工程b)においてのみ、部分的にまたは完全に添加される場合、造粒を可能にするのに十分な量の液体が、溶媒、好ましくは水またはアンモニア溶液の添加により、工程a)において混合物に添加されるべきである。
【0027】
工程a)において同様に使用されるAlを含有せずかつSiを含有するバインダ(「Alを含有しない」とは、バインダの全組成において、Alが0.1重量%未満であることを表す)は、好ましくは二酸化ケイ素である。Alを含有せずかつSiを含有するバインダは、さらに好ましくは、固体形態ではなくむしろコロイド分散形態で、特に好ましくはシリカゾルとして存在する。好ましい実施形態では、「Alを含有せずかつSiを含有するバインダ、好ましくは二酸化ケイ素が分散した状態で存在する溶媒」は、水であり、分散液は安定化のためにアンモニアをさらに含有ことが好ましい。Alを含有せずかつSiを含有するバインダ、好ましくは二酸化ケイ素は、分散液中に7~50重量%、好ましくは12~42重量%、特に好ましくは20~35重量%の量で存在する。Alを含有せずかつSiを含有するバインダ、好ましくは二酸化ケイ素の平均粒径は、特に分散液中で、5~20nm、好ましくは6~10nmであってよい(光散乱法により測定可能)。Alを含有せずかつSiを含有するバインダ、好ましくは二酸化ケイ素を含む分散液の粘度は、1~50m・Pas、好ましくは5~25m・Pasの範囲であってよい。Alを含有せずかつSiを含有するバインダ、好ましくは二酸化ケイ素を含有する分散液は、さらに好ましくは7~12、好ましくは8~10の範囲のpHを有してよい。Alを含有せずかつSiを含有するバインダ、好ましくは二酸化ケイ素を含有する分散液の密度は、好ましくは1~1.3g/cm3、特に好ましくは1.1~1.25g/cm3である。工程a)および場合により工程b)における、全バッチ(水等のありとあらゆる使用溶媒を含む全組成物)中のAlを含有せずかつSiを含有するバインダの割合は、0.5~15重量%、好ましくは1~10重量%である。
【0028】
工程a)またはb)において、混合物に別のアルカリ源は添加しない。アルカリ金属酸化物の含有量は、ケイ素-アルミナ担体材料および/または少量のアルカリ金属、特にナトリウムを含有し得るAlを含有せずかつSiを含有するバインダに由来する。担体材料およびバインダのアルカリ含有量は、それらが0.01重量%の割合を下回らず、かつ1重量%の割合を超えないように選択されるべきである。
【0029】
工程a)またはb)で使用されるニッケル源は、ニッケル化合物の溶液、ニッケル化合物のペースト、または溶液およびペーストであり、原則として任意の可溶性ニッケル化合物を使用することができる。これらの中には、硝酸ニッケル(Ni(NO3)2)、酢酸ニッケル(Ni(ac)2)、ニッケルアセチルアセトネート(Ni(acac)2)、硫酸ニッケル(NiSO4)、クエン酸ニッケルまたは炭酸ニッケル(NiCO3)が含まれる。硝酸ニッケル(Ni(NO3)2)、硫酸ニッケル(NiSO4)、炭酸ニッケル(NiCO3)が好ましい。ニッケル溶液は、水性またはアンモニア性溶液である。アンモニア溶液は、アンモニアと混合された水溶液である。ニッケルペーストは水を含有し、そして本発明によるニッケルペーストは、(同じ量のニッケル化合物を想定する場合、)含有される水がニッケル溶液よりも少ない。ニッケルペーストは、原則として、不完全に水和され、さらにその中で水酸化ニッケル化合物が形式的に形成されたニッケル化合物からなる加湿固体である;炭酸ニッケルの場合、例えば、NiCO3*Ni(OH)2だけでなく、非化学量論的炭酸ニッケル水酸化物も挙げられる。好ましい実施形態では、ニッケルペーストは、ペーストの全重量に対し、30~50重量%、好ましくは35~45重量%のニッケルを含有する。ニッケル溶液は、各場合において溶液の全重量に対し、1~20重量%、好ましくは5~15重量%の範囲の量でニッケルを含有していてもよい。
【0030】
好ましい実施形態では、使用されるニッケル溶液は、ニッケル含有量が1~20重量%、好ましくは5~15重量%であるNiHAC溶液(ニッケルヘキサミンカーボネート錯体が溶液中に形成される([Ni(NH3)6]CO3))として知られる、アンモニア性Ni(CO3)溶液である。ニッケルペーストとしては、炭酸ニッケルと、溶媒としての水と、からなるペーストを使用することができ、ニッケルは炭酸塩/水酸化物として存在する(一般実験式NiCO3*Ni(OH)2だけでなく、非化学量論的炭酸ニッケル水酸化物も形成され得る)。ペーストは、ニッケル含有量が30~50重量%、好ましくは35重量%~45重量%の範囲であってもよい。特に好ましい実施形態では、オリゴマー化触媒の製造は、工程a)および/または任意に工程b)において、NiHAC溶液を使用する。
【0031】
製造方法の工程a)および任意に工程b)における全バッチ(水等のありとあらゆる使用溶媒の全組成)中のニッケル源(ペーストおよび/または溶液)の総量は、40~70重量%、好ましくは45~65重量%である。
【0032】
本発明による方法は、工程a)において二酸化チタンも二酸化ジルコニウムも混合物に添加されず、むしろ二酸化チタンおよび二酸化ジルコニウムを添加することなくオリゴマー化触媒が製造されるという特別な特徴を有する。オリゴマー化触媒の全組成中の二酸化チタンおよび/または二酸化ジルコニウムの発生は、使用した成分中の不純物/微量発生物によるものである。
【0033】
工程a)では、個々の成分、すなわちシリカ-アルミナ担体材料、Alを含有せずかつSiを含有するバインダ、および任意にニッケル源を、攪拌機を使用して混合容器中で互いに混合し、それと同時にまたはその後造粒する。これは、例えば強力ミキサーを使用して達成することができる。混合および造粒は、通常、周囲圧力で行われ得る。混合および造粒を実施可能な温度は、好ましくは10~60℃の範囲である。工程a)、すなわち混合および造粒の期間は、5分~1時間、好ましくは10~30分である。
【0034】
任意の工程b)では、ニッケル源の残りの部分、好ましくはNiHAC溶液形態のものを、工程a)で製造された粒状物に添加し、粒状物をニッケルで処理するために粒状物と混合する。ニッケル源の少なくとも一部を工程b)で添加する場合、工程a)からの湿っている可能性のある粒状物を、ニッケル源で処理する前に乾燥させてもよい。乾燥温度は、80~250℃、好ましくは100~220℃であってもよい。
【0035】
ニッケル源は、ニッケル化合物を、シリカ-アルミナ担体材料の表面に担持させる。その結果、表面における予め八面体に配位したアルミニウム原子の少なくともいくつかは、四面体配位に固定され、そして焼成後にはもはや八面体配位をとることができない。追加の八面体配位アルミニウム原子が触媒に導入されないことを確実にするために、種々の材料を結合しかつAlを含有しない物質として、バインダを添加する。それにより、担体材料のバルク中の八面体配位アルミニウム原子はすべて手付かずのままであり、その結果として、バインダと混合した後でさえも、一定量の八面体配位アルミニウム原子が、完成したオリゴマー化触媒中に存在し得る。
【0036】
工程a)および/または工程b)から得られる粒状物は、使用された溶媒、特に水の少なくとも一部をなおも含有し得る。したがって、湿った粒状物が重要である。まだ湿っている可能性がある粒状物を工程c)で焼成する前に、湿っている粒状物を、好ましくは0.1~1.5mmのメッシュサイズを有するスクリーンで選別してもよい。粒状物のスクリーニングされた部分(小さい)を、粒状化の工程a)にリサイクルしてもよい。
【0037】
工程a)における混合および粒状化の後、任意に工程b)におけるニッケル源の少なくとも一部を用いる粒状物の処理(含浸)の後、さらに任意に湿った粒状物のスクリーニングの後、工程c)において初めに粒状物を乾燥させてもよい。これは、例えばベルトドライヤー等の公知の装置を用いて達成することができる。乾燥温度は80℃~250℃の範囲、好ましくは100℃~220℃の範囲である。
【0038】
任意に乾燥させた粒状物を焼成に供する前に、粒子物の特定の粒径を確立するために、該乾燥粒状物を分画してもよい。そのような分画は、例えば規定のメッシュサイズを有する少なくとも1つのスクリーンを使用することによって達成することができる。特に好ましい実施形態では、2つのスクリーンが使用され、一方のスクリーンは0.1~1.5mmのメッシュサイズを有し、他方のスクリーンは2.5~7mmのメッシュサイズを有する。残った画分(大きすぎるものおよび小さすぎるもの)は、先行する粉砕の後、任意に工程a)にリサイクルされてよい。
【0039】
粒状物の任意の乾燥およびなし得る分画の後、粒状物の焼成を行う。これには、適当な炉中、好ましくは窒素流中、特に好ましくは窒素向流中での粒状物の加熱が含まれてよい。焼成中に空気を窒素流に加えてもよく、供給される空気量は100~10,000体積ppm、好ましくは300~7,000体積ppmであってよい。焼成温度は、400℃~900℃、好ましくは450℃~700℃、特に好ましくは500℃~600℃であってよい。この温度は、粒状物が冷却される前に、数時間、好ましくは5~20時間、特に好ましくは8~15時間にわたって維持されてよい。冷却中に空気が炉内に導入されてもよいが、導入される空気の量は制御される必要がある。任意に供給される空気の量は100~10,000体積ppm、好ましくは300~7,000体積ppmである。
【0040】
冷却された粒状物/完成したオリゴマー化触媒は、冷却された粒状物の特定の粒径を確立するために、場合によりもう一度分画されてもよい。そのような分画は、例えば規定のメッシュサイズを有する少なくとも1つのスクリーンを使用することによって達成することができる。特に好ましい実施形態では、2つのスクリーンが使用され、一方のスクリーンは0.1~1.5mmのメッシュサイズを有し、他方のスクリーンは2.5~7mmのメッシュサイズを有する。残った画分(大きすぎるものおよび小さすぎるもの)は、先行する粉砕の後、任意に工程a)にリサイクルされてよい。
【0041】
焼成およびそれに続く冷却後の分画の最終工程後、このようにして製造されたオリゴマー化触媒は、NiO:15~40重量%、好ましくは15~30重量%、Al2O3:10~30重量%、SiO2:55~70重量%、およびアルカリ金属酸化物:0.01~1重量%、好ましくは0.05~0.5重量%の最終全組成を有する。該数値は100重量%の全組成に基づいている。
【0042】
オリゴマー化中の転化率および/または選択率の低下は、オリゴマー化触媒の使用時間が長くなるにつれて生じ得る。本発明による触媒は、オリゴマー化反応に使用された後、再生されることができる。
【0043】
オリゴマー化触媒の再生は、以下の工程:
d)バーンオフ、および
e)オリゴマー化触媒の活性表面構造の回復
を有する。
【0044】
オリゴマー化反応に使用された後、オリゴマー化触媒は、除去を必要とする有機物質の担持を生じることがある。触媒に担持した有機化合物の除去は、炭素酸化物および水を形成するバーンオフ(酸化)により、工程d)において達成されることが好ましい。バーンオフ工程d)は、炉内、例えばロータリーキルン内またはシャフト炉内で、連続的または非連続的に実施され得る。この目的のために、(粒状物形態の)オリゴマー化触媒を炉に供給し、そして400℃~600℃、特に好ましくは500℃~600℃の所定の炉温度に維持することが好ましい。バーンオフ時に使用される燃焼用空気は向流で供給され、さらに追加の空気が適切な入口を介して粒状物(オリゴマー化触媒)中に吹き込まれ、迅速なバーンオフを確実にする。
【0045】
工程e)、すなわちオリゴマー化触媒の活性表面構造の回復は、工程e1)においてニッケルを用いた(追加の)処理(含浸)を含んでもよい。ニッケルでの処理は、オリゴマー化触媒の製造(工程b)と同様に行うことができるが、場合によっては、オリゴマー化触媒の製造におけるニッケル濃度よりも低いニッケル濃度を有するニッケル溶液を使用できるという違いがあり得る。ニッケルペーストは通常再生には使用されない。ここでの目的は、オリゴマー化触媒上に追加量のニッケルを担持させることである。原理上、硝酸ニッケル(Ni(NO3)2)、酢酸ニッケル(Ni(ac)2)、ニッケルアセチルアセトネート(Ni(acac)2)、硫酸ニッケル(NiSO4)または炭酸ニッケル(NiCO3)等の可溶性ニッケル化合物を使用して、水性またはアンモニア性ニッケル溶液を製造することができる。
【0046】
「任意に炭酸アンモニウムを添加して、炭酸ニッケル(NiCO3)を濃縮アンモニア溶液に溶解することによって得られるNiHAC溶液」の使用が特に有利であることが証明されている。そのような溶液は、0.5~14重量%、特に2~10重量%、非常に特に4~8重量%のニッケル含有量での含浸に使用され得る。
【0047】
ニッケル用途のために、工程d)でバーンオフされたオリゴマー化触媒は、例えば、0.5~14重量%、特に2~10重量%、非常に特に4~8重量%のニッケル含有量を有するNiHAC溶液で、間隙が湿潤するまで含浸される。含浸は、例えば表面上に液体フィルムが永久的に現れるまで吹き付けを行う(incipient wetness法)など、当業者によく知られている方法で実施されてよい。溶液の吸収が、オリゴマー化触媒1g当たり約0.8~1.2gの溶液である場合、塩基性カーボネートの形態で約0.5~6重量%の追加ニッケルの析出が達成され得る。
【0048】
オリゴマー化触媒が工程e1)に供される場合、すなわちニッケルで処理される場合、オリゴマー化触媒は、適切な乾燥装置内で、例えば空気流を用いるベルトドライヤーまたはコニカルドライヤー内で、80℃~250℃、好ましくは100℃~220℃の温度で、さらに標準的な圧力であるいは真空下で、乾燥されなければならない。
【0049】
工程e)は、少なくとも工程e2)、任意の工程e1)の後に行われる焼成を有する。オリゴマー化触媒の焼成は、適切な炉、例えばシャフト炉またはロータリーキルン中で、連続的または不連続的に実施されてよい。工程e2)における連続焼成の場合、ガスがオリゴマー化触媒(粒状物)を向流で通過し続けることがさらに好ましい。使用されるガスは、空気、窒素またはそれらの混合物であってよい。ガス流は、粒状物1kgかつ1時間当たり0.2~4m3のガスであってよく、さらにガスの入口温度は、400℃~800℃、好ましくは450℃~700℃であってよい。ガスを介して導入されるこの熱に加えて、エネルギーが、炉壁の能動的加熱により、導入されてもよい。
【0050】
炉内焼成温度は、400℃~800℃、好ましくは450℃~700℃、特に好ましくは500℃~600℃である。この温度は、粒状物が冷却される前に、数時間、好ましくは5~60時間、特に好ましくは10~40時間にわたって維持されてよい。冷却は、窒素流中で実施されるのが好ましい。窒素が空気にさらに添加されてもよく、空気量は制御されることが好ましい。窒素に添加されることが好ましい空気量は、100~10,000体積ppm、好ましくは300~7,000体積ppmであってよい。
【0051】
本発明によるオリゴマー化触媒/本発明による方法により製造または再生される触媒は、C3~C6-オレフィン、好ましくはC3~C5-オレフィン、特に好ましくはC4-オレフィン、またはそれらをベースとするオレフィン含有インプット混合物のオリゴマー化に特に使用され得る。オレフィンまたはオレフィン含有インプット混合物は、反応物流として使用される。
【0052】
また、本発明は、C3~C6-オレフィンのオリゴマー化方法を提供し、該方法では、C3~C6-オレフィンを含有するオレフィン含有インプット混合物が、少なくとも1つの反応帯において触媒を通過し、本発明によるオリゴマー化触媒が、オリゴマー化反応に触媒作用を及ぼすために用いられる。本発明によれば、反応帯は、「少なくとも1つの反応器」と「生成されたオリゴマーをその内部で分離することができる少なくとも1つの蒸留カラム」とを有する。また、本発明による方法は、2つ以上の反応帯によって操作されてもよい。オリゴマー化は、液相で行われることが好ましい。
【0053】
本発明による方法に使用されるオレフィンには、C3~C6-オレフィン、好ましくはC3~C5-オレフィン、特に好ましくはC4-オレフィン、またはある割合の類似アルカンを含み得る、それらをベースとするオレフィン含有インプット混合物が含まれる。適切なオレフィンは、とりわけ、α-オレフィン、n-オレフィンおよびシクロアルケンである。反応物として使用されるオレフィンは、好ましくはn-オレフィンである。特に好ましい実施形態では、オレフィンはn-ブテンである。本発明によれば、用語「それらをベースとするオレフィン含有インプット混合物」は、「“オリゴマー化の対象である関連C3~C6-オレフィン”を、オリゴマー化を実施し得る量で含有する、あらゆる種類の混合物」を包含するものと理解される。オレフィン含有インプット混合物は、実質的に、さらなる不飽和化合物およびポリ不飽和化合物、例えばジエンまたはアセチレン誘導体を含有しないことが好ましい。オレフィンの割合に対し、5重量%未満、特に2重量%未満の分岐鎖オレフィンを含有するオレフィン含有インプット混合物を使用することが好ましい。2重量%未満の分岐鎖オレフィン、特にイソオレフィンを含有するオレフィン含有インプット混合物を使用することがさらに好ましい。
【0054】
プロピレン(C3)は、ナフサのクラッキングによって大規模工業規模で製造され、そして容易に入手可能な商品化学物質である。C5-オレフィンは、精油所またはクラッカーからの軽油留分中に存在する。直鎖状C4-オレフィンを含有する工業用混合物には、精油所からの軽油留分、FCクラッカーまたはスチームクラッカーからのC4-留分、フィッシャー・トロプシュ合成からの混合物、ブタンの脱水素化からの混合物、およびメタセシスまたは他の工業プロセスにより生成される混合物が含まれる。本発明による方法に適した混合物は、例えばスチームクラッカーのC4-留分から得ることができる。ブタジエンは、最初の工程で除去される。これは、ブタジエンの抽出もしくは抽出蒸留または選択的水素化によって達成される。両方の場合において、実質的にブタジエンを含まないC4-カット、すなわちラフィネートIが得られる。第二工程では、例えばメタノールとの反応によるメチル-tert-ブチルエーテル(MTBE)の製造により、イソブテンをC4-ストリームから除去する。他の選択肢としては、ラフィネートIからのイソブテンを水と反応させて、tert-ブタノールを得ること、またはイソブテンを酸触媒オリゴマー化してジイソブテンを得ることが挙げられる。イソブテンを含まないC4-カット、すなわちラフィネートIIは、必要に応じて、直鎖状ブテンおよび場合によりブタンを含有する。1-ブテンは、任意に蒸留によってさらに除去されてもよい。両方の画分、すなわち1-ブテンを含むものまたは2-ブテンを含むものは、本発明による方法において使用され得る。
【0055】
さらなる好ましい実施形態では、C4-オレフィン含有材料流は、オレフィン含有インプット混合物として工程に供給される。これに適したオレフィン含有インプット混合物は、とりわけラフィネートI(スチームクラッカーからのブタジエンを含まないC4-カット)およびラフィネートII(スチームクラッカーからのブタジエンおよびイソブテンを含まないC4-カット)である。
【0056】
適切なオレフィン含有インプット混合物を製造するためのさらなる選択肢としては、ラフィネートI、ラフィネートIIまたは同様に構成された炭化水素混合物を、反応性カラム中で水素異性化に供することである。これには、とりわけ2-ブテン、少量の1-ブテンおよび場合によりn-ブタン、さらにはイソブタンおよびイソブテンのみからなる混合物が含まれる。
【0057】
オリゴマー化は、一般に、50℃~200℃の範囲、好ましくは60℃~180℃の範囲、より好ましくは60℃~130℃の範囲の温度、かつ10~170バール、好ましくは20~55バールの圧力で実施される。オリゴマー化が液相で行われる場合、圧力および温度のパラメータは、この目的のために、反応物流(使用されるオレフィンまたはオレフィン混合物)が液相に存在するように選択されなければならない。オレフィン含有インプット混合物の重量基準の空間速度(単位時間当たりの単位触媒質量当たりの反応物質量;重量毎時空間速度(WHSV))は、触媒1g当たりかつ1時間当たりの反応体1g(=1時間-1)~190時間-1、好ましくは2時間-1~35時間-1、特に好ましくは3時間-1~25時間-1の範囲である。
【0058】
一実施形態では、転化反応物をベースとするオリゴマー化後の二量化度(「二量化に対する選択率」とも呼ばれる)は、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも75%、特に好ましくは少なくとも80%である。
【0059】
オリゴマー化生成物/形成された二量体の直線性は、ISO指数によって記載され、二量体中のメチル分岐の平均数についての値を表す。したがって、(反応物としてのブテンについて、)C8留分のISO指数に、n-オクテンは0を与え、メチルヘプテンは1を与え、そしてジメチルヘキセンは2を与える。ISO指数が低いほど、それぞれの画分中の分子の構造はより直線的である。ISO指数は、次の一般式に従って計算される。
【0060】
【0061】
したがって、1.0のISO指数を有する二量体混合物は、二量体分子当たり正確に平均して1つのメチル分岐を有する。
【0062】
本発明によるオリゴマー化方法からの生成物のISO指数は、好ましくは0.8~1.2、特に好ましくは0.8~1.15である。
【0063】
本発明による方法によって製造されるオリゴマーは、とりわけアルデヒド、アルコールおよびカルボン酸を製造するために利用される。したがって、例えば直鎖状ブテンの二量化は、ヒドロホルミル化によりノナナール混合物を提供する。これは、酸化による対応するカルボン酸または水素化によるC9-アルコール混合物を提供する。C9-酸混合物は、潤滑剤または乾燥剤を製造するために使用され得る。C9-アルコール混合物は、可塑剤、特にジノニルフタレートまたはDINCHの製造のための前駆体である。
【0064】
さらに詳述しなくても、当業者は、上記の説明を最大限可能な範囲で利用できると考えられる。したがって、好ましい実施形態および実施例は、単に説明的な開示として解釈されるべきであり、それは決して限定的なものではない。
【0065】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。本発明の代替的実施形態は、同様にして得ることができる。
【0066】
実施例:
触媒合成(発明性のある触媒1):
インテンシブミキサーの混合容器に、バインダ(二酸化ケイ素を含有するコロイド溶液、SiO2含量:約30重量%)、ニッケル源(NiHAC溶液、ニッケル含量:11~12.5重量%)および非晶質シリカ-アルミナ(SiO2:77.2重量%、Al2O3:12.2重量%、残部:水、アンモニア、微量のさらなる酸化物(強熱減量)、平均粒径:22μm、比表面積:320m2/g、四面体配位骨格アルミニウム原子対八面体配位骨格アルミニウム原子の比:65対35(Niなしで焼成))を入れる。
【0067】
全ての成分が添加されたら、混合物を比較的低速で撹拌して確実に効果的に分配させる。続いて攪拌機の速度を上げると、組成物の緻密化および粒状化が遅くなる。適切な粒径(0.1mm~7mm)を有する粒状物が得られたらすぐに攪拌を止める。このようにして得られた粒状物を約120℃で乾燥し、続いて、2つのスクリーンを用いてスクリーニングし、粒状物から過度に小さい粒子または過度に大きい粒子を除去する。
【0068】
次に粒状物を炉内で焼成する。焼成のために、粒状物を500℃~600℃の温度に加熱し、そしてこの温度を約10~12時間維持する。粒状物で満たされた炉には、それを通って流れる窒素が含まれ、1時間当たりの窒素体積に対する粒状物体積の比(標準体積)は、少なくとも1:1000に維持される。粒状物を室温に冷却する間、約6,000体積ppmの空気を窒素流中に計量供給する。冷却された粒状物は、完成したオリゴマー化触媒に対応する。このようにして製造された触媒は、四面体配位骨格アルミニウム原子対八面体配位骨格アルミニウム原子の比が約95:5である。
【0069】
触媒合成(発明性のない触媒2):
インテンシブミキサーの混合容器に、バインダ(ベーマイトと1重量%の硝酸溶液とからなる溶液、アルミニウム含有量:15~17重量%)、ニッケル源(ニッケルペースト、湿った炭酸ニッケル、ニッケル含有量:40~42重量%)および非晶質シリカ-アルミナ(SiO2:77.2重量%、Al2O3:12.2重量%、残部:水、アンモニア、微量のさらなる酸化物(強熱減量)、平均粒径:22μm、比表面積:320m2/g、四面体配位骨格アルミニウム原子対八面体配位骨格アルミニウム原子の比:65対35(Niなしで焼成))を入れる。
【0070】
シリカ-アルミナ、バインダおよび固体ニッケル源を、インテンシブミキサー中で混合する。混合中に、NiHAC溶液(濃縮アンモニア溶液に溶解した炭酸ニッケル、ニッケル含有量:11%~12.5%)およびアルカリ金属化合物(蒸留水に溶解した炭酸ナトリウム)を含有する追加の液体成分を、漏斗を通して混合容器にゆっくりと添加する。
【0071】
造粒、乾燥、スクリーニングおよび焼成を有する、製造の残りの部分は、触媒1の製造に相当する。こうして製造された触媒は、約65:35の四面体配位アルミニウム原子対八面体配位アルミニウム原子の比を有する。
【0072】
オリゴマー化における触媒の使用:
いずれの場合も、約12gの触媒を内径6mmの金属管に充填した。触媒の前後に、予熱相/予冷却相として働く直径2mmのガラスパールを配置した。30バールの供給流と、触媒1グラム当たり7.5g/hのブテンの充填剤と、を用いて、オリゴマー化を行った。反応温度は、80℃~100℃の間で変化した。ブテンの転化率およびオクテンの直線性について、生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。オリゴマー化のための供給流の組成を以下の表1に示す。
【0073】
触媒1(発明性あり)および触媒2(発明性なし)に係る温度の関数としての供給流について達成された転化率および選択率、ならびにそれから生じるISO指数を表2および3に報告する。
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
四面体配位アルミニウム対八面体配位アルミニウムの比が約65:35である触媒2とは対照的に、本発明による触媒の比は95:5である。驚くべきことだが、これにより、ISO指数がほぼ一定である場合の転化率の顕著な向上が達成され得ることが見出された。