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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】長尺物の支持構造体
(51)【国際特許分類】
   F02M 55/02 20060101AFI20240423BHJP
   F16L 3/00 20060101ALI20240423BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
F02M55/02 350H
F16L3/00 F
F02M37/00 321B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021086954
(22)【出願日】2021-05-24
(65)【公開番号】P2022180051
(43)【公開日】2022-12-06
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【弁理士】
【氏名又は名称】芳野 理之
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 全
(74)【代理人】
【識別番号】100121647
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 和孝
(72)【発明者】
【氏名】田村 亮
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-2165(JP,A)
【文献】特開平7-139663(JP,A)
【文献】特開2006-38040(JP,A)
【文献】特開平8-35465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 39/00-71/04
F02M 37/00-37/54
F16L 3/00- 3/26
F16B 7/00- 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに設けられている長尺物を支持する長尺物の支持構造体であって、
前記長尺物の外面を支持する第1弾性部材を有する第1クランプ部材と、
前記第1クランプ部材に対向しており前記長尺物の前記外面を支持する第2弾性部材を有する第2クランプ部材と、
前記第1弾性部材と前記第2弾性部材との間に前記長尺物を挟んだ状態で前記第1クランプ部材と前記第2クランプ部材とを締結させる締結ねじと、
前記第1弾性部材および前記第2弾性部材が前記長尺物を挟んで支持する際に、前記第1クランプ部材および前記第2クランプ部材が互いに分離することを抑制する分離抑制部と、
を備え
前記分離抑制部は、前記第1弾性部材の一端部と前記第2弾性部材の一端部とに一体的に形成され前記第1弾性部材の一端部と前記第2弾性部材の一端部とを連結する連結部であることを特徴とする長尺物の支持構造体。
【請求項2】
エンジンに設けられている長尺物を支持する長尺物の支持構造体であって、
前記長尺物の外面を支持する第1弾性部材を有する第1クランプ部材と、
前記第1クランプ部材に対向しており前記長尺物の前記外面を支持する第2弾性部材を有する第2クランプ部材と、
前記第1弾性部材と前記第2弾性部材との間に前記長尺物を挟んだ状態で前記第1クランプ部材と前記第2クランプ部材とを締結させる締結ねじと、
前記第1弾性部材および前記第2弾性部材が前記長尺物を挟んで支持する際に、前記第1クランプ部材および前記第2クランプ部材が互いに分離することを抑制する分離抑制部と、
を備え
前記分離抑制部は、前記第2弾性部材のねじ貫通孔に設けられ前記締結ねじのおねじ部の外径寸法よりも小さい内径寸法を有し前記締結ねじを仮止めする仮止め用係合部であることを特徴とする長尺物の支持構造体。
【請求項3】
エンジンに設けられている長尺物を支持する長尺物の支持構造体であって、
前記長尺物の外面を支持する第1弾性部材を有する第1クランプ部材と、
前記第1クランプ部材に対向しており前記長尺物の前記外面を支持する第2弾性部材を有する第2クランプ部材と、
前記第1弾性部材と前記第2弾性部材との間に前記長尺物を挟んだ状態で前記第1クランプ部材と前記第2クランプ部材とを締結させる締結ねじと、
前記第1弾性部材および前記第2弾性部材が前記長尺物を挟んで支持する際に、前記第1クランプ部材および前記第2クランプ部材が互いに分離することを抑制する分離抑制部と、
を備え
前記分離抑制部は、
前記第1弾性部材のねじ貫通孔に設けられ前記締結ねじのおねじ部の外径寸法よりも小さい内径寸法を有し前記締結ねじを仮止めする第1仮止め用係合部と、
前記第2弾性部材のねじ貫通孔に設けられ前記締結ねじのおねじ部の外径寸法よりも小さい内径寸法を有し前記締結ねじを仮止めする第2仮止め用係合部と、
を有することを特徴とする長尺物の支持構造体。
【請求項4】
エンジンに設けられている長尺物を支持する長尺物の支持構造体であって、
前記長尺物の外面を支持する第1弾性部材を有する第1クランプ部材と、
前記第1クランプ部材に対向しており前記長尺物の前記外面を支持する第2弾性部材を有する第2クランプ部材と、
前記第1弾性部材と前記第2弾性部材との間に前記長尺物を挟んだ状態で前記第1クランプ部材と前記第2クランプ部材とを締結させる締結ねじと、
前記第1弾性部材および前記第2弾性部材が前記長尺物を挟んで支持する際に、前記第1クランプ部材および前記第2クランプ部材が互いに分離することを抑制する分離抑制部と、
を備え
前記第1弾性部材は、前記長尺物の一部が嵌まる複数の第1湾曲部を有し、
前記第2弾性部材は、前記複数の第1湾曲部に対向して設けられ前記長尺物の一部が嵌まる複数の第2湾曲部を有し、
前記第1弾性部材および前記第2弾性部材の少なくともいずれかは、前記複数の第1湾曲部および前記複数の第2湾曲部のうち互いに対向するいずれかの前記第1湾曲部および前記第2湾曲部を埋めるダミー部材を有することを特徴とする長尺物の支持構造体。
【請求項5】
前記第1弾性部材は、前記長尺物の一部が嵌まる複数の第1湾曲部を有し、
前記第2弾性部材は、前記複数の第1湾曲部に対向して設けられ前記長尺物の一部が嵌まる複数の第2湾曲部を有し、
前記第1弾性部材および前記第2弾性部材の少なくともいずれかは、前記複数の第1湾曲部および前記複数の第2湾曲部のうち互いに対向するいずれかの前記第1湾曲部および前記第2湾曲部を埋めるダミー部材を有することを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の長尺物の支持構造体。
【請求項6】
前記長尺物は、ディーゼルエンジンの燃料噴射管であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の長尺物の支持構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばディーゼルエンジン等のエンジンに設けられている燃料噴射管等の配管のような長尺物を挟んで支持する長尺物の支持構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
コモンレール式燃料噴射装置を有するディーゼルエンジンや副室式(IDI:Indirect Injection)のディーゼルエンジン等は、細い配管として燃料噴射管を備える。そのため、このようなエンジンでは、燃料噴射管が振動することを抑制するために、燃料噴射管のクランプ支持体が用いられる。クランプ支持体は、一方の金属板と他方の金属板とを有する。一方の金属板と他方の金属板とのそれぞれの内側には、ゴム材が貼り付けられている。一方の金属板に貼り付けられたゴム材と他方の金属板に貼り付けられたゴム材とは、燃料噴射管を挟む。そして、一方の金属板と他方の金属板とは、例えば締結ねじにより互いに締結される。これにより、燃料噴射管は、クランプ支持体により支持され、振動を抑制される。また、特許文献1には、共振防止を必要とするディーゼルエンジン用の燃料噴射管をクランプするクランプ体が開示されている。
【0003】
従来の燃料噴射管のクランプ支持体では、一方の金属板と他方の金属板との両方が締結作業中に脱落することを抑える必要がある。このため、作業者は、一方の金属板と他方の金属板との両方を手で持ちながら燃料噴射管を挟んだ状態で、締結ねじを一方の金属板の貫通孔に通してから他方の金属板のめねじ部に完全にねじ込む必要がある。この作業の際に、締結ねじが他方の金属板のめねじ部に完全にねじ込まれるまで、作業者は、一方の金属板と他方の金属板とを手で持ちながら、ゴム材の間に燃料噴射管を挟んだ状態を維持しなければならない。このため、エンジン周辺の狭いスペースあるいは手が届きにくいスペースにおいて、燃料噴射管の振動を抑制するための支持作業を行うことが難しいという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-130077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、燃料噴射管等の配管のような長尺物を挟んで支持する作業の際に、部材の落下を抑えつつ長尺物の支持作業を容易に行うことができる長尺物の支持構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、エンジンに設けられている長尺物を支持する長尺物の支持構造体であって、前記長尺物の外面を支持する第1弾性部材を有する第1クランプ部材と、前記第1クランプ部材に対向しており前記長尺物の前記外面を支持する第2弾性部材を有する第2クランプ部材と、前記第1弾性部材と前記第2弾性部材との間に前記長尺物を挟んだ状態で前記第1クランプ部材と前記第2クランプ部材とを締結させる締結ねじと、前記第1弾性部材および前記第2弾性部材が前記長尺物を挟んで支持する際に、前記第1クランプ部材および前記第2クランプ部材が互いに分離することを抑制する分離抑制部と、を備えたことを特徴とする本発明に係る長尺物の支持構造体により解決される。
【0007】
本発明に係る長尺物の支持構造体によれば、第1クランプ部材の第1弾性部材と第2クランプ部材の第2弾性部材とが、互いの間に長尺物を挟んで支持する。そして、締結ねじが、第1弾性部材と第2弾性部材との間に長尺物を挟んだ状態で第1クランプ部材と第2クランプ部材とを締結させる。ここで、第1弾性部材および第2弾性部材が長尺物を挟んで支持する際に、分離抑制部は、第1クランプ部材および第2クランプ部材が互いに分離することを抑制する。そのため、分離抑制部は、作業者がエンジン周辺の狭いスペースあるいは手が届きにくいスペースにおいて第1弾性部材と第2弾性部材との間に長尺物を挟んで支持する際に、第1クランプ部材および第2クランプ部材の少なくともいずれかが落下することを抑えることができる。また、第1クランプ部材および第2クランプ部材の少なくともいずれかの落下が抑えられるため、作業者は、エンジン周辺の狭いスペースあるいは手が届きにくいスペースにおいて長尺物の支持作業を容易に行うことができる。これにより、本発明に係る長尺物の支持構造体は、長尺物を挟んで支持する作業の際に、部材の落下を抑えつつ長尺物の支持作業を容易に行うことができる。
【0008】
本発明に係る長尺物の支持構造体において、好ましくは、前記分離抑制部は、前記第1弾性部材の一端部と前記第2弾性部材の一端部とに一体的に形成され前記第1弾性部材の一端部と前記第2弾性部材の一端部とを連結する連結部であることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る長尺物の支持構造体によれば、分離抑制部は、第1弾性部材の一端部と第2弾性部材の一端部とに一体的に形成されるとともに第1弾性部材の一端部と第2弾性部材の一端部とを連結する連結部である。そのため、分離抑制部としての連結部は、第1弾性部材および第2弾性部材が長尺物を挟んで支持する際に、第1クランプ部材および第2クランプ部材が互いに分離することをより一層抑制することができる。そのため、分離抑制部としての連結部は、作業者がエンジン周辺の狭いスペースあるいは手が届きにくいスペースにおいて第1弾性部材と第2弾性部材との間に長尺物を挟んで支持する際に、第1クランプ部材および第2クランプ部材の少なくともいずれかが落下することをより一層抑えることができる。また、分離抑制部としての連結部は、第1クランプ部材に設けられた第1弾性部材と第2クランプ部材に設けられた第2弾性部材とを連結しているため、第1クランプ部材と第2クランプ部材とを一体化された一部品として纏めることができる。これにより、本発明に係る長尺物の支持構造体は、部品点数の削減を図りつつ、長尺物を挟んで支持する作業の際に、部材の落下を抑えることができる。
【0010】
本発明に係る長尺物の支持構造体において、好ましくは、前記分離抑制部は、前記第2弾性部材のねじ貫通孔に設けられ前記締結ねじのおねじ部の外径寸法よりも小さい内径寸法を有し前記締結ねじを仮止めする仮止め用係合部であることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る長尺物の支持構造体によれば、分離抑制部は、第2弾性部材のねじ貫通孔に設けられた仮止め用係合部である。分離抑制部としての仮止め用係合部は、締結ねじのおねじ部の外径寸法よりも小さい内径寸法を有し、締結ねじを仮止めする。そのため、分離抑制部としての仮止め用係合部は、第1クランプ部材と第2クランプ部材とを締結させる締結ねじを仮止めすることにより、第1弾性部材および第2弾性部材が長尺物を挟んで支持する際に、第1クランプ部材および第2クランプ部材が互いに分離することを抑制することができる。そのため、分離抑制部としての仮止め用係合部は、作業者がエンジン周辺の狭いスペースあるいは手が届きにくいスペースにおいて第1弾性部材と第2弾性部材との間に長尺物を挟んで支持する際に、第1クランプ部材および第2クランプ部材の少なくともいずれかが落下することを簡易的な構造により抑えることができる。これにより、本発明に係る長尺物の支持構造体は、長尺物を挟んで支持する作業の際に、簡易的な構造を用いて、部材の落下を抑えつつ長尺物の支持作業を容易に行うことができる。
【0012】
本発明に係る長尺物の支持構造体において、好ましくは、前記分離抑制部は、前記第1弾性部材のねじ貫通孔に設けられ前記締結ねじのおねじ部の外径寸法よりも小さい内径寸法を有し前記締結ねじを仮止めする第1仮止め用係合部と、前記第2弾性部材のねじ貫通孔に設けられ前記締結ねじのおねじ部の外径寸法よりも小さい内径寸法を有し前記締結ねじを仮止めする第2仮止め用係合部と、を有することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る長尺物の支持構造体によれば、分離抑制部は、第1弾性部材のねじ貫通孔に設けられた第1仮止め用係合部と、第2弾性部材のねじ貫通孔に設けられた第2仮止め用係合部と、を有する。第1仮止め用係合部および第2仮止め用係合部のそれぞれは、締結ねじのおねじ部の外径寸法よりも小さい内径寸法を有し、締結ねじを仮止めする。そのため、分離抑制部は、第1仮止め用係合部および第2仮止め用係合部の両方を用いて、第1クランプ部材と第2クランプ部材とを締結させる締結ねじを仮止めすることにより、第1弾性部材および第2弾性部材が長尺物を挟んで支持する際に、第1クランプ部材および第2クランプ部材が互いに分離することをより一層抑制することができる。そのため、分離抑制部は、作業者がエンジン周辺の狭いスペースあるいは手が届きにくいスペースにおいて第1弾性部材と第2弾性部材との間に長尺物を挟んで支持する際に、第1クランプ部材および第2クランプ部材の少なくともいずれかが落下することをより一層抑えることができる。これにより、本発明に係る長尺物の支持構造体は、長尺物を挟んで支持する作業の際に、部材の落下をより一層抑えつつ長尺物の支持作業を容易に行うことができる。
【0014】
本発明に係る長尺物の支持構造体において、好ましくは、前記第1弾性部材は、前記長尺物の一部が嵌まる複数の第1湾曲部を有し、前記第2弾性部材は、前記複数の第1湾曲部に対向して設けられ前記長尺物の一部が嵌まる複数の第2湾曲部を有し、前記第1弾性部材および前記第2弾性部材の少なくともいずれかは、前記複数の第1湾曲部および前記複数の第2湾曲部のうち互いに対向するいずれかの前記第1湾曲部および前記第2湾曲部を埋めるダミー部材を有することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る長尺物の支持構造体によれば、第1弾性部材および第2弾性部材の少なくともいずれかは、ダミー部材を有する。ダミー部材は、第1弾性部材に設けられ長尺物の一部が嵌まる複数の第1湾曲部と、第2弾性部材に設けられ長尺物の一部が嵌まる複数の第2湾曲部と、のうち互いに対向するいずれかの第1湾曲部および第2湾曲部を埋める。そのため、長尺物が複数の第1湾曲部および複数の第2湾曲部のすべてに支持されない場合であっても、ダミー部材が、互いに対向する第1湾曲部および第2湾曲部を埋めることができる。これにより、長尺物が複数の第1湾曲部および複数の第2湾曲部のすべてに支持されない場合であっても、本発明に係る長尺物の支持構造体は、バランス良く安定して長尺物を支持することができる。
【0016】
本発明に係る長尺物の支持構造体において、好ましくは、前記長尺物は、ディーゼルエンジンの燃料噴射管であることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る長尺物の支持構造体によれば、分離抑制部は、作業者がディーゼルエンジン周辺の狭いスペースあるいは手が届きにくいスペースにおいて第1弾性部材と第2弾性部材との間に燃料噴射管を挟んで支持する際に、第1クランプ部材および第2クランプ部材の少なくともいずれかが落下することを抑えることができる。また、第1クランプ部材および第2クランプ部材の少なくともいずれかの落下が抑えられるため、作業者は、ディーゼルエンジン周辺の狭いスペースあるいは手が届きにくいスペースにおいて燃料噴射管の支持作業を容易に行うことができる。これにより、本発明に係る長尺物の支持構造体は、ディーゼルエンジンの燃料噴射管を挟んで支持する作業の際に、部材の落下を抑えつつディーゼルエンジンの燃料噴射管の支持作業を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、燃料噴射管等の配管のような長尺物を挟んで支持する作業の際に、部材の落下を抑えつつ長尺物の支持作業を容易に行うことができる長尺物の支持構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係る長尺物の支持構造体を備えるエンジンを示す斜視図である。
図2】本実施形態に係る長尺物の支持構造体の構造例を示す断面図である。
図3】比較例に係る長尺物の支持構造体を示す断面図である。
図4】変形例に係る長尺物の支持構造体の構造例を示す断面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る長尺物の支持構造体を示す断面図である。
図6】本発明の第3実施形態に係る長尺物の支持構造体を示す断面図である。
図7】本発明の第4実施形態に係る長尺物の支持構造体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0021】
(第1実施形態)
(エンジン1)
図1は、本発明の第1実施形態に係る長尺物の支持構造体を備えるエンジンを示す斜視図である。
図1に示すエンジン1は、内燃機関であって、例えば産業用ディーゼルエンジンである。エンジン1は、例えばターボチャージ付きの過給式の高出力な4気筒エンジン等の立型の直列の多気筒エンジンである。エンジン1は、コモンレール式燃料噴射装置を有するディーゼルエンジンや副室式(IDI:Indirect Injection)のディーゼルエンジンである。エンジン1は、例えば建設機械、農業機械、芝刈り機のような車両等に搭載される。
【0022】
エンジン1は、シリンダヘッド2と、ヘッドカバー2Hと、を備える。シリンダヘッド2の付近には、配管としての複数本の燃料噴射管3,4,5が配置されている。燃料噴射管3,4,5は、長尺物の例であり、例えば断面円形状の金属パイプである。図1に示すエンジン1では、燃料噴射管3,4,5は、コモンレール式燃料噴射装置9に接続されている。燃料噴射管3,4,5は、2つの長尺物の支持構造体10により互いに連結され支持されている。これにより、燃料噴射管3,4,5の振動が抑制される。具体的には、燃料噴射管3,4の組が、1つの長尺物の支持構造体10により互いに連結され支持されている。また、燃料噴射管4,5の組が、別の長尺物の支持構造体10により互いに連結され支持されている。このようにして、細い燃料噴射管3,4,5が、エンジン1により発生する振動や機器等の走行時に発生する振動と共振することを抑える。すなわち、燃料噴射管3,4,5が不要な振動を起こさないように保護されている。
【0023】
(長尺物の支持構造体10)
次に、図1に表した長尺物の支持構造体10を、図1および図2を参照して説明する。
図2は、本実施形態に係る長尺物の支持構造体の構造例を示す断面図である。
図3は、比較例に係る長尺物の支持構造体を示す断面図である。
図2は、図1に示す長尺物の支持構造体10の切断面B-Bにおける断面図である。
図3は、図1に表した切断面B-Bにおける断面図に相当する。
【0024】
図1および図2に表したように、長尺物の支持構造体10は、第1クランプ部材11と、第2クランプ部材12と、締結ねじ30と、分離抑制部40と、を備えている。第1クランプ部材11は、第1弾性部材21を有している。第2クランプ部材12は、第2弾性部材22を有している。
第1クランプ部材11と第2クランプ部材12と締結ねじ30とは、金属製の部材であり、例えば鉄やステンレス鋼等により作られている。但し、第1クランプ部材11と第2クランプ部材12と締結ねじ30との材料は、特に限定されるわけではない。図2に表したように、締結ねじ30は、エンジン1の組立現場において、工具を用いて第1クランプ部材11と第2クランプ部材12とを互いに締結するための締結部材であり、おねじ部31と、ヘッド32と、を有する。
【0025】
第1クランプ部材11は、板状の金属板を折り曲げて形成されており、平坦部11Aと、2つの折り曲げ部分11Bと、ねじ貫通孔11Cと、を有する。平坦部11Aは、長方形状を有している。平坦部11Aの中央位置には、円形状のねじ貫通孔11Cが設けられている。ねじ貫通孔11Cの内径寸法は、締結ねじ30のおねじ部31の外径寸法よりも大きい。
【0026】
図2に表したように、2つの折り曲げ部分11Bは、平坦部11Aの一端部と他端部とにおいて、略90度で折り曲げて形成されている。第1弾性部材21は、平坦部11Aの内面11Dと、2つの折り曲げ部分11Bの内面11Eと、に対して、密着して取り付けられていて、例えば接着材により固定されている。第1弾性部材21は、例えば耐熱性を有する弾性変形可能なプラスチックやゴム等により作られており、燃料噴射管3,4,5の外面を支持する。第1弾性部材21は、2つの円弧状の湾曲部21Bと、ねじ貫通孔21Hと、を有する。本実施形態の湾曲部21Bは、本発明の「第1湾曲部」の一例である。燃料噴射管3,4,5の一部が湾曲部21Bに嵌まることにより、第1弾性部材21は、燃料噴射管3,4,5の外面を支持することができる。断面円形状のねじ貫通孔21Hは、2つの円弧状の湾曲部21Bの間の位置に設けられている。第1弾性部材21のねじ貫通孔21Hの内径寸法は、締結ねじ30のおねじ部31の外径寸法よりも大きい。具体的には、ねじ貫通孔21Hの内径寸法は、ねじ貫通孔11Cの内径寸法と同じである。
【0027】
一方、図2に表したように、第2クランプ部材12は、板状の金属板を折り曲げて形成されており、平坦部12Aと、2つの折り曲げ部分12Bと、めねじ部12Nと、を有する。第2クランプ部材12は、第1クランプ部材11に対向して配置される部材である。2つの折り曲げ部分12Bは、平坦部12Aの一端部と他端部とにおいて、略90度で折り曲げて形成されている。
【0028】
第2弾性部材22は、平坦部12Aの内面12Dと、2つの折り曲げ部分12Bの内面12Eと、に対して、密着して取り付けられていて、例えば接着材により固定されている。第2弾性部材22は、例えば耐熱性を有する弾性変形可能なプラスチックやゴム等により作られており、燃料噴射管3,4,5の外面を支持する。第2弾性部材22は、2つの円弧状の湾曲部22Bと、ねじ貫通孔22Hと、を有する。本実施形態の湾曲部22Bは、本発明の「第2湾曲部」の一例である。燃料噴射管3,4,5の一部が湾曲部22Bに嵌まることにより、第2弾性部材22は、燃料噴射管3,4,5の外面を支持することができる。断面円形状のねじ貫通孔22Hは、2つの円弧状の湾曲部22Bの間の位置に設けられている。2つの円弧状の湾曲部21Bと2つの円弧状の湾曲部22Bとは、互いに対面している。第2弾性部材22のねじ貫通孔22Hの内径寸法は、締結ねじ30のおねじ部31の外径寸法よりも大きい。具体的には、ねじ貫通孔22Hの内径寸法は、ねじ貫通孔11Cの内径寸法と同じである。
【0029】
平坦部12Aの中央位置には、筒状の突出部分12Rが形成されている。めねじ部12Nは、突出部分12R内に形成されている。締結ねじ30のおねじ部31が、第1クランプ部材11と第2クランプ部材12とを互いに締め付けて連結しようとする際に、めねじ部12Nに対してねじ込まれることでかみ合うようになっている。つまり、締結ねじ30は、第1弾性部材21と第2弾性部材22との間に燃料噴射管3,4の組あるいは燃料噴射管4,5の組を挟んだ状態で第1クランプ部材11と第2クランプ部材12とを締結させる。図2の例では、互いに対向する湾曲部21B、22Bは、図1に示す燃料噴射管3,4の組あるいは燃料噴射管4,5の組を挟み、燃料噴射管3,4あるいは燃料噴射管4,5の外周面に対して密着されている。
【0030】
次に、図1および図2を参照しながら、燃料噴射管3,4,5の振動を抑制するために、長尺物の支持構造体10の取り付けを行う作業例を説明する。
【0031】
ここでは、まず、図3を参照しながら、比較例に係る長尺物の支持構造体について説明する。
図3に表した比較例に係る長尺物の支持構造体300は、分離抑制部を有していない。第1クランプ部材311の第1弾性部材321は、第2クランプ部材312の第2弾性部材322とは完全に別体になっている。このため、作業者が、長尺物の支持構造体300を用いて2本の燃料噴射管3,4の組あるいは2本の燃料噴射管4,5の組を支持する際に、エンジンの狭いスペースにおいて第1クランプ部材311と第2クランプ部材312とを締結ねじ330により互いに締結しようとすると、第1クランプ部材311および第2クランプ部材312の少なくともいずれかを誤って脱落あるいは落下させてしまうおそれがある。この理由のひとつとして、作業者が片手では第1クランプ部材311と第2クランプ部材312とを同時に支持し難いことが挙げられる。締結ねじ330を用いた締結作業中に、第1クランプ部材311および第2クランプ部材312の少なくともいずれかが脱落あるいは落下すると、エンジン1の組立現場での組立作業性が低下してしまう。
【0032】
これに対して、本実施形態では、作業者は、例えば左手で長尺物の支持構造体10を持って、分離抑制部40を中心にして第1クランプ部材11と第2クランプ部材12とを開く。続いて、作業者は、第1弾性部材21の湾曲部21Bと第2弾性部材22の湾曲部22Bとの間に、燃料噴射管3,4の組あるいは燃料噴射管4,5の組を挟むようにして配置して、第1弾性部材21と第2弾性部材22とを燃料噴射管3,4,5の外周面に対して密着させる。このときに、第1クランプ部材11の第1弾性部材21が、第2クランプ部材12の第2弾性部材22に対して、分離抑制部40により連結されているので、作業者が片手で長尺物の支持構造体10を持っていても、第1クランプ部材11および第2クランプ部材12が互いに分離することを抑えることができる。これにより、作業者が燃料噴射管3,4,5を挟んで支持する作業を行う際に、第1クランプ部材11および第2クランプ部材12が落下することを抑えることができる。
【0033】
次に、作業者は、例えば右手で締結ねじ30のおねじ部31をねじ貫通孔11C,21H,22Hに通し、工具を用いて締結ねじ30のおねじ部31をめねじ部12Nにねじ込んで係合させる。これにより、第1クランプ部材11および第2クランプ部材12は、第1弾性部材21および第2弾性部材22を用いて、燃料噴射管3,4の組あるいは燃料噴射管4,5の組を挟み、燃料噴射管3,4,5の外周面に対して密着して、互いに締結される。
【0034】
上述したように、作業者は、2本の燃料噴射管3,4あるいは2本の燃料噴射管4,5を長尺物の支持構造体10を用いて支持する作業を行う際に、エンジン1の周辺の狭いスペースにおいて第1クランプ部材11および第2クランプ部材12を互いに脱落させることなく、容易に燃料噴射管3,4,5の連結作業(すなわち支持作業)を行うことができる。すなわち、長尺物の支持構造体10を用いて燃料噴射管3,4,5等の長尺物を支持する作業の際に、第1クランプ部材11および第2クランプ部材12の落下を抑えつつ燃料噴射管3,4,5等の長尺物の支持作業を容易に行うことができる。このため、エンジン1の組立現場での組立作業性が向上する。
【0035】
本実施形態に係る長尺物の支持構造体10によれば、第1クランプ部材11の第1弾性部材21と第2クランプ部材12の第2弾性部材22とが、互いの間に燃料噴射管3,4,5を挟んで支持する。そして、締結ねじ30が、第1弾性部材21と第2弾性部材22との間に燃料噴射管3,4,5を挟んだ状態で第1クランプ部材11と第2クランプ部材12とを締結させる。ここで、第1弾性部材21および第2弾性部材22が燃料噴射管3,4,5を挟んで支持する際に、分離抑制部40は、第1クランプ部材11および第2クランプ部材12が互いに分離することを抑制する。そのため、分離抑制部40は、作業者がエンジン1の周辺の狭いスペースあるいは手が届きにくいスペースにおいて第1弾性部材21と第2弾性部材22との間に燃料噴射管3,4,5を挟んで支持する際に、第1クランプ部材11および第2クランプ部材12の少なくともいずれかが落下することを抑えることができる。また、第1クランプ部材11および第2クランプ部材12の少なくともいずれかの落下が抑えられるため、作業者は、エンジン1の周辺の狭いスペースあるいは手が届きにくいスペースにおいて燃料噴射管3,4,5の支持作業を容易に行うことができる。これにより、本実施形態に係る長尺物の支持構造体10は、燃料噴射管3,4,5を挟んで支持する作業の際に、部材の落下を抑えつつ燃料噴射管3,4,5の支持作業を容易に行うことができる。
【0036】
また、分離抑制部40は、第1弾性部材21の一端部21Tと第2弾性部材22の一端部22Tとに一体的に形成されるとともに第1弾性部材21の一端部21Tと第2弾性部材22の一端部22Tとを連結する連結部である。そのため、分離抑制部40としての連結部は、第1弾性部材21および第2弾性部材22が燃料噴射管3,4,5を挟んで支持する際に、第1クランプ部材11および第2クランプ部材12が互いに分離することをより一層抑制することができる。そのため、分離抑制部40としての連結部は、作業者がエンジン1の周辺の狭いスペースあるいは手が届きにくいスペースにおいて第1弾性部材21と第2弾性部材22との間に燃料噴射管3,4,5を挟んで支持する際に、第1クランプ部材11および第2クランプ部材12の少なくともいずれかが落下することをより一層抑えることができる。また、分離抑制部40としての連結部は、第1クランプ部材11に設けられた第1弾性部材21と第2クランプ部材12に設けられた第2弾性部材22とを連結しているため、第1クランプ部材11と第2クランプ部材12とを一体化された一部品として纏めることができる。これにより、本実施形態に係る長尺物の支持構造体10は、部品点数の削減を図りつつ、燃料噴射管3,4,5を挟んで支持する作業の際に、部材の落下を抑えることができる。
【0037】
(変形例)
図4は、変形例に係る長尺物の支持構造体の構造例を示す断面図である。
図1および図2に示す第1実施形態の長尺物の支持構造体10では、第1クランプ部材11および第2クランプ部材12は、第1弾性部材21および第2弾性部材22を用いて、燃料噴射管3,4の組あるいは燃料噴射管4,5の組を互いに連結している。すなわち、長尺物の支持構造体10は、エンジン1の周辺においてエンジン1から離れた位置で、燃料噴射管3,4,5を互いに連結している。
【0038】
これに対して、図4に示す変形例に係る長尺物の支持構造体10Aでは、おねじ部31の長さを延長させた締結ねじ30が用いられる。また、第2クランプ部材12の平坦部12Aの中央位置には、円形状のねじ貫通孔12Cが設けられている。ねじ貫通孔12Cの内径寸法は、締結ねじ30のおねじ部31の外径寸法よりも大きい。具体的には、ねじ貫通孔12Cの内径寸法は、ねじ貫通孔11Cの内径寸法と同じである。
【0039】
図4に示すように、締結ねじ30のおねじ部31は、ねじ貫通孔11C、21H、22H、12Cを通過し、例えばエンジン1のシリンダヘッド2のめねじ部2Rに対してねじ込まれている。これにより、燃料噴射管3,4の組あるいは燃料噴射管4,5の組は、長尺物の支持構造体10Aを用いて、例えばシリンダヘッド2に対して直接固定されている。
【0040】
本変形例によれば、燃料噴射管3,4の組あるいは燃料噴射管4,5の組が、長尺物の支持構造体10Aを用いて、例えばシリンダヘッド2に対して直接固定されるため、作業者は、エンジン1の周辺の狭いスペースあるいは手が届きにくいスペースにおいて燃料噴射管3,4,5の支持作業を容易に行うことができるとともに、燃料噴射管3,4,5の振動をより一層抑制することができる。
【0041】
次に、本発明の第2実施形態から第4実施形態に係る長尺物の支持構造体を順に説明する。本発明の第2実施形態から第4実施形態に係る長尺物の支持構造体の要素が、図2に示す第1実施形態に係る長尺物の支持構造体10の要素と実質的に同じであるが場合には、同じ符号を記してその説明を省略する。
【0042】
(第2実施形態)
図5は、本発明の第2実施形態に係る長尺物の支持構造体を示す断面図である。
図5は、図1に表した切断面B-Bにおける断面図に相当する。
図2に示す本発明の第1実施形態に係る長尺物の支持構造体10では、分離抑制部40は、第1弾性部材21の一端部21Tと第2弾性部材22の一端部22Tとに一体的に形成され第1弾性部材21の一端部21Tと第2弾性部材22の一端部22Tとを連結する連結部である。
これに対して、図5に示す本発明の第2実施形態に係る長尺物の支持構造体10Xでは、第1弾性部材21の一端部21Tと第2弾性部材22の一端部22Tとは、互いに別体になっている。分離抑制部40Xは、第2弾性部材22に設けられている。
【0043】
具体的には、分離抑制部40Xは、第2弾性部材22の2つの湾曲部22Bの間の位置に形成された仮止め用係合部であり、締結ねじ30のおねじ部31を仮止め用に係合することができる。具体的には、分離抑制部40Xでは、ねじ貫通孔22Hの内周面の内径寸法が、締結ねじ30のおねじ部31の外径寸法よりも小さい。これにより、締結ねじ30のおねじ部31は、ねじ貫通孔11Cとねじ貫通孔21Hとを通って、ねじ貫通孔22Hに達すると、ねじ貫通孔22Hの内周面に嵌まる。
【0044】
従って、締結ねじ30のおねじ部31は、分離抑制部40Xを用いて第2クランプ部材12の第2弾性部材22に係合されて仮止めされているので、第1クランプ部材11および第2クランプ部材12が互いに分離することを抑えることができる。このように仮止めした状態で、作業者が工具を用いて締結ねじ30をさらに回転させることにより、締結ねじ30のおねじ部31は、めねじ部12Nに係合できる。
【0045】
このため、作業者は、2本の燃料噴射管3,4の組あるいは2本の燃料噴射管4,5の組を長尺物の支持構造体10Xを用いて支持する作業を行う際に、エンジン1の周辺の狭いスペースにおいて、第1クランプ部材11および第2クランプ部材12を互いに脱落させることなく、容易に燃料噴射管3,4,5の連結作業(すなわち支持作業)を行うことができる。すなわち、長尺物の支持構造体10Xを用いて燃料噴射管3,4,5等の配管を支持する作業の際に、第1クランプ部材11および第2クランプ部材12の落下を抑えつつ燃料噴射管3,4,5等の長尺物の支持作業を容易に行うことができる。このため、エンジン1の組立現場での組立作業性が向上する。
【0046】
本実施形態に係る長尺物の支持構造体10Xによれば、分離抑制部40Xは、第2弾性部材22のねじ貫通孔22Hに設けられた仮止め用係合部である。分離抑制部40Xとしての仮止め用係合部は、締結ねじ30のおねじ部31の外径寸法よりも小さい内径寸法を有し、締結ねじ30を仮止めする。そのため、分離抑制部40Xとしての仮止め用係合部は、第1クランプ部材11と第2クランプ部材12とを締結させる締結ねじ30を仮止めすることにより、第1弾性部材21および第2弾性部材22が燃料噴射管3,4,5を挟んで支持する際に、第1クランプ部材11および第2クランプ部材12が互いに分離することを抑制することができる。そのため、分離抑制部40Xとしての仮止め用係合部は、作業者がエンジン1の周辺の狭いスペースあるいは手が届きにくいスペースにおいて第1弾性部材21と第2弾性部材22との間に燃料噴射管3,4,5を挟んで支持する際に、第1クランプ部材11および第2クランプ部材12の少なくともいずれかが落下することを簡易的な構造により抑えることができる。これにより、本実施形態に係る長尺物の支持構造体10Xは、燃料噴射管3,4,5を挟んで支持する作業の際に、簡易的な構造を用いて、部材の落下を抑えつつ燃料噴射管3,4,5の支持作業を容易に行うことができる。
【0047】
(第3実施形態)
図6は、本発明の第3実施形態に係る長尺物の支持構造体を示す断面図である。
図6は、図1に表した切断面B-Bにおける断面図に相当する。
図5に示す本発明の第2実施形態に係る長尺物の支持構造体10Xでは、分離抑制部40Xは、第2弾性部材22の2つの湾曲部22Bの間の位置だけに形成されている。
【0048】
これに対して、図6に示す本発明の第3実施形態に係る長尺物の支持構造体10Yでは、分離抑制部40Xが、第2弾性部材22の2つの湾曲部22Bの間の位置に形成されているだけではなく、別の分離抑制部40Yが、第1弾性部材21の2つの湾曲部21Bの間の位置に形成されている。具体的には、分離抑制部40Yでは、ねじ貫通孔21Hの内周面の内径寸法が、締結ねじ30のおねじ部31の外径寸法よりも小さい。すなわち、本実施形態の分離抑制部40X、40Yは、第1弾性部材21のねじ貫通孔21Hに設けられ締結ねじ30のおねじ部31の外径寸法よりも小さい内径寸法を有し締結ねじ30を仮止めする第1仮止め用係合部と、第2弾性部材22のねじ貫通孔22Hに設けられ締結ねじ30のおねじ部31の外径寸法よりも小さい内径寸法を有し締結ねじ30を仮止めする第2仮止め用係合部と、を有する。このため、分離抑制部40Y,40Xは、締結ねじ30のおねじ部31を仮止め用に係合することができる。締結ねじ30のおねじ部31は、ねじ貫通孔11Cを通って、ねじ貫通孔21Hに達するとねじ貫通孔21Hに嵌まり、ねじ貫通孔22Hに達するとねじ貫通孔22Hにさらに嵌まる。
【0049】
従って、第2クランプ部材12の第2弾性部材22と第1クランプ部材11の第1弾性部材21とは、分離抑制部40Y,40Xの両方を用いて締結ねじ30のおねじ部31に係合されているので、第1クランプ部材11および第2クランプ部材12が互いに分離することをより一層抑えることができる。そのため、作業者は、2本の燃料噴射管3,4の組あるいは2本の燃料噴射管4,5の組を長尺物の支持構造体10Yを用いて支持する作業を行う際に、エンジン1の周辺の狭いスペースにおいて、第1クランプ部材11および第2クランプ部材12を互いに脱落させることなく、容易に燃料噴射管3,4,5の連結作業(すなわち支持作業)を行うことができる。すなわち、長尺物の支持構造体10Yを用いて燃料噴射管3,4,5等の配管を支持する作業の際に、第1クランプ部材11および第2クランプ部材12の落下を抑えつつ燃料噴射管3,4,5等の長尺物の支持作業を容易に行うことができる。このため、エンジン1の組立現場での組立作業性が向上する。
【0050】
本実施形態に係る長尺物の支持構造体10Yによれば、分離抑制部40Y,40Xは、第1仮止め用係合部および第2仮止め用係合部の両方を用いて、第1クランプ部材11と第2クランプ部材12とを締結させる締結ねじ30を仮止めすることにより、第1弾性部材21および第2弾性部材22が燃料噴射管3,4,5を挟んで支持する際に、第1クランプ部材11および第2クランプ部材12が互いに分離することをより一層抑制することができる。そのため、分離抑制部40Y,40Xは、作業者がエンジン1の周辺の狭いスペースあるいは手が届きにくいスペースにおいて第1弾性部材21と第2弾性部材22との間に燃料噴射管3,4,5を挟んで支持する際に、第1クランプ部材11および第2クランプ部材12の少なくともいずれかが落下することをより一層抑えることができる。これにより、本実施形態に係る長尺物の支持構造体10Yは、燃料噴射管3,4,5を挟んで支持する作業の際に、部材の落下をより一層抑えつつ長尺物の支持作業を容易に行うことができる。
【0051】
(第4実施形態)
図7は、本発明の第4実施形態に係る長尺物の支持構造体を示す断面図である。
図7は、図1に表した切断面B-Bにおける断面図に相当する。
図7に示す長尺物の支持構造体10Zは、図5に示す本発明の第2実施形態に係る長尺物の支持構造体10Xと同様の構造を有している一方で、2本の燃料噴射管3,4の内のいずれか一方だけを支持する。図7に表した例では、長尺物の支持構造体10Zは、2本の燃料噴射管3,4の内の一方の燃料噴射管3だけを支持している。このような場合には、例えば一方の対向する湾曲部21B、22Bには、燃料噴射管3が挟まれるようにして支持されるが、他方の対向する湾曲部21B、22Bには、燃料噴射管の代わりにダミー部材60が配置されている。ダミー部材60は、例えば第2弾性部材22から連続して形成された部材であり、円形断面形状を有している。なお、ダミー部材60は、第1弾性部材21から連続して形成された部材であってもよい。つまり、第1弾性部材21および第2弾性部材22の少なくともいずれかは、複数の湾曲部21Bおよび複数の湾曲部22Bのうち互いに対向するいずれかの湾曲部21Bおよび湾曲部22Bを埋めるダミー部材60を有する。
【0052】
一方の対向する湾曲部21B、22Bには、燃料噴射管3が挟まれ、他方の対向する湾曲部21B、22Bには、ダミー部材60が挟まれるので、図7に示す長尺物の支持構造体10Zは、支持する対象が1本の燃料噴射管であっても、左右バランス良く安定して1本の燃料噴射管を支持することができる。すなわち、長尺物の支持構造体10Zは、1本の燃料噴射管とダミー部材60とを挟んで支持できるので、1本の燃料噴射管3だけを支持する場合であってもバランス良く安定して支持することができる。なお、ダミー部材60は、第2弾性部材22とは別体の円柱状の部材であってもよい。また、図7に示すダミー部材60は、図2に示す第1実施形態に係る長尺物の支持構造体10や、図5に示す第2実施形態に係る長尺物の支持構造体10Xや、図6に示す第3実施形態に係る長尺物の支持構造体10Yに適用されてもよい。
【0053】
本実施形態に係る長尺物の支持構造体10Zによれば、ダミー部材60は、第1弾性部材21に設けられ燃料噴射管3,4,5の一部が嵌まる複数の湾曲部21Bと、第2弾性部材22に設けられ燃料噴射管3,4,5の一部が嵌まる複数の湾曲部22Bと、のうち互いに対向するいずれかの湾曲部21Bおよび湾曲部22Bを埋める。そのため、燃料噴射管3,4,5が複数の湾曲部21Bおよび複数の湾曲部22Bのすべてに支持されない場合であっても、ダミー部材60が、互いに対向する湾曲部21Bおよび湾曲部22Bを埋めることができる。これにより、燃料噴射管3,4,5が複数の湾曲部21Bおよび複数の湾曲部22Bのすべてに支持されない場合であっても、本実施形態に係る長尺物の支持構造体10Zは、バランス良く安定して燃料噴射管3,4,5を支持することができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
例えば、本発明のエンジンの例として、本実施形態に係るエンジン1を例示している。エンジン1は、ターボチャージャ付きの過給式のディーゼルエンジンである。しかし、これに限らず、本発明のエンジンは、自然吸気式のディーゼルエンジン、ターボチャージャ付きの過給式のガソリンエンジン、自然吸気式のガソリンエンジン等であってもよい。また、エンジン1の種類は、例えばターボチャージ付きの過給式の高出力な4気筒エンジン等の多気筒エンジンである。但し、エンジン1の種類は、これだけに限定されるわけではなく、3気筒あるいは5気筒以上のエンジンであっても良い。エンジン1は、例えば建設機械、農業機械、芝刈り機のような車両以外の種類の車両に搭載できる。
【0055】
図示した本発明の各実施形態では、配管としての2本の燃料噴射管を挟み込んで支持する構造例を示している。しかし、これに限らず、本実施形態に係る長尺物の支持構造体は、3本以上の燃料噴射管等の配管のような長尺物を支持する構造を有していてもよい。本発明においては、長尺物としては、配管に限らず、例えばエンジン1に用いられる給電用の電線や信号供給用の電線であっても良い。電線は単線であっても、複数の電線を束ねた電線束であっても良い。あるいは、長尺物しては、オイルや冷却水を送る配管等であっても良い。
【0056】
さらに、例えば図5に示す分離抑制部40Xの構成例として、ねじ貫通孔22Hの内周面の内径寸法が、締結ねじ30のおねじ部31の外径寸法よりも小さい。そして、締結ねじ30のおねじ部31がねじ貫通孔22Hに達すると、おねじ部31は、ねじ貫通孔22Hに嵌まり係合するようになっている。ねじ貫通孔22Hの内周面は、段差の無い滑らかな円筒面になっている。これは、図6に示す分離抑制部40Yについても同様である。しかし、これに限らず、分離抑制部40X,40Yの構成例としては、ねじ貫通孔22H,21Hの内部には、らせん状やリング状の凹凸部分が設けられていてもよい。この場合であっても、締結ねじ30のおねじ部31は、ねじ貫通孔22H,21Hに達すると、ねじ貫通孔22H,21Hに嵌まり係合する。
【符号の説明】
【0057】
1:エンジン、 2:シリンダヘッド、 2H:ヘッドカバー、 2R:めねじ部、 3、4、5:燃料噴射管、 9:コモンレール式燃料噴射装置、 10、10A、10X、10Y、10Z:長尺物の支持構造体、 11:第1クランプ部材、 11A:平坦部、 11B:折り曲げ部分、 11C:ねじ貫通孔、 11D、11E:内面、 12:第2クランプ部材、 12A:平坦部、 12B:折り曲げ部分、 12C:ねじ貫通孔、 12D、12E:内面、 12N:めねじ部、 12R:突出部分、 21:第1弾性部材、 21B:湾曲部、 21H:ねじ貫通孔、 21T:一端部、 22:第2弾性部材、 22B:湾曲部、 22H:ねじ貫通孔、 22T:一端部、 30:締結ねじ、 31:おねじ部、 32:ヘッド、 40、40X、40Y:分離抑制部、 60:ダミー部材、 300:支持構造体、 311:第1クランプ部材、 312:第2クランプ部材、 321:第1弾性部材、 322:第2弾性部材、 330:締結ねじ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7