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  • 特許-セラミックフィルタ及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】セラミックフィルタ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/20 20060101AFI20240423BHJP
   C04B 38/00 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
B01D39/20 D
C04B38/00 303A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020213909
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022058077
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2021-01-25
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】2001005742
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TH
(73)【特許権者】
【識別番号】520508295
【氏名又は名称】ザ シャム リフラクトリー インダストリー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】スーブタウィルクル、ソムキート
(72)【発明者】
【氏名】ピラセートフォル、タナポン
(72)【発明者】
【氏名】トングロッド、カノク-オン
(72)【発明者】
【氏名】タンガム、パウィーナ
(72)【発明者】
【氏名】チャティカノン、ナタリーヤ
(72)【発明者】
【氏名】トゥアプラコーン、ティーウィン
【合議体】
【審判長】宮澤 尚之
【審判官】小野 久子
【審判官】後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/050215(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D39/00-41/04
B01D46/00-46/90
F01N3/00
F01N3/02
F01N3/04-3/38
F01N3/04-3/38
F01N9/00-11/00
C04B38/00-38/10
B01J21/00-38/74
B01D53/73
B01D53/86-53/90
B01D53/94
B01D53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックフィルタであって、
a.中空円筒である本体(1)と、
b.前記本体(1)の一端に固定された閉塞部材(2)と、
c.前記本体(1)の他端に固定された端部部材(3)と、を含み、
前記本体(1)が、積層され、中空円筒としてバインダを用いて互いに結合された複数のセラミックファイバシートからなり、前記閉塞部材(2)前記端部部材(3)とが、前記セラミックフィルタを得るために、前記バインダを用いて前記本体(1)に固定されており、
前記バインダは、硫酸マグネシウム溶液、ケイ酸ナトリウム溶液、アルミナゾル、シリカゾル、コロイダルシリカ、リン酸塩溶液、及び塩化マグネシウム溶液からなる群から選択される1つ又は複数である、
セラミックフィルタ。
【請求項2】
前記本体(1)の断面は、円形又は楕円形である形状を有する、請求項1に記載のセラミックフィルタ。
【請求項3】
前記本体(1)は、セラミックペーパ及びセラミックファイバペーパの中からなる群から選択されるセラミックファイバシートからなる、請求項1に記載のセラミックフィルタ。
【請求項4】
前記バインダは、室温又は15℃~300℃の範囲の温度で前記セラミックファイバシートに結合することができ、前記バインダは、1000℃を超える温度又は1000℃~1450℃の範囲の温度で安定した状態を保つことができる、請求項1に記載のセラミックフィルタ。
【請求項5】
セラミックフィルタの製造方法であって、
a. セラミックファイバシートを準備する工程と、
b.前記セラミックファイバシートを巻いて前記セラミックフィルタの本体(1)を形成する工程と、
c.前記本体(1)に閉塞部材(2)及び端部部材(3)を固定する工程と、
を含み、
前記セラミックファイバシートを準備する工程は、前記セラミックファイバシート上にバインダを塗布、注入、又は噴霧することにより、又は、前記セラミックファイバシートを前記バインダに浸漬することにより、前記セラミックファイバシートに前記バインダを付与することにより行われ、
前記セラミックファイバシートを巻くことによる前記セラミックフィルタの本体(1)の形成と前記本体(1)への前記閉塞部材(2)及び前記端部部材(3)の固定とは、前記バインダを用いて積層された複数の前記セラミックファイバシート同士を結合して中空円筒に形成し、前記中空円筒に前記閉塞部材(2)及び前記端部部材(3)を固定して、焼結なしで前記セラミックフィルタを得ることにより行われ、
前記バインダは、硫酸マグネシウム溶液、ケイ酸ナトリウム溶液、アルミナゾル、シリカゾル、コロイダルシリカ、リン酸塩溶液、及び塩化マグネシウム溶液からなる群から選択される1つ又は複数である、
セラミックフィルタの製造方法。
【請求項6】
前記セラミックファイバシートを巻くことによる前記セラミックフィルタの形成は、前記セラミックファイバシート上の前記セラミックファイバシートの一端に型枠又は円筒状のコアを配置し、前記セラミックファイバシートを巻いて中空円筒を形成することによって行われると共に、
前記セラミックファイバシートを巻くことによる前記セラミックフィルタの形成は、複数の層が積層されるように前記セラミックファイバシートを巻くことによって行われる、
請求項5に記載のセラミックフィルタの製造方法。
【請求項7】
前記閉塞部材(2)及び前記端部部材(3)を固定する工程は、前記閉塞部材(2)及び前記端部部材(3)を前記本体(1)の一端及び他端にそれぞれ前記バインダを用いて固定することにより行われる、請求項5に記載のセラミックフィルタの製造方法。
【請求項8】
前記閉塞部材(2)は、前記本体(1)の一端に固定されて前記本体(1)の一端を閉塞し、前記閉塞部材(2)は、前記本体(1)と同じ形状の断面を有する厚いシートである、請求項7に記載のセラミックフィルタの製造方法。
【請求項9】
前記閉塞部材(2)及び前記端部部材(3)は、積層された複数のセラミックファイバシートからなる、請求項7又は請求項8に記載のセラミックフィルタの製造方法。
【請求項10】
前記閉塞部材(2)及び前記端部部材(3)は、前記バインダを用いて前記本体(1)に固定される、請求項7から請求項9までのいずれか1項に記載のセラミックフィルタの製造方法。
【請求項11】
前記端部部材(3)は、前記本体(1)の前記閉塞部材(2)とは反対側の端部で前記本体(1)に固定されるか、又は、前記本体(1)が前記端部部材(3)の開口部(4)に挿入されるように、前記閉塞部材(2)とは反対側で前記本体(1)に固定される、請求項7から請求項10までのいずれか1項に記載のセラミックフィルタの製造方法。
【請求項12】
前記端部部材(3)は、開口部(4)を有するシートであり、
前記開口部(4)は、前記本体(1)の内部開口部と類似又は同一の寸法を有するか、又は、前記本体(1)の外形寸法と類似又は同一の寸法を有し、
前記開口部(4)の寸法は、前記端部部材(3)の前記本体(1)への固定方法に依存し、
前記端部部材(3)の外径は、前記本体(1)の外径より大きい、
請求項7又は請求項11に記載のセラミックフィルタの製造方法。
【請求項13】
前記セラミックファイバシートを巻いて前記セラミックフィルタを形成する工程に続いて、又は前記閉塞部材(2)及び前記端部部材(3)を固定する工程に続いて行われる熱処理工程をさらに備え、
前記熱処理工程が、50℃~200℃の範囲の温度で行われる、
請求項5に記載のセラミックフィルタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックフィルタ及びその製造方法に関連する化学工学的手法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業プラントのオペレータは、環境要件によりプラントから排出される塵埃の量を制御する必要があるので、製造業においては、フィルタ又は交換用フィルタは、高温ガス又は高温空気中に含まれる塵埃を濾過して取り除くために、今日ではより広く使用されている。環境要件とは別に、塵埃や小さな粒子を濾過することにより、塵埃や小さな粒子によって引き起こされる、フィルタに接続されたデバイスへの損傷も低減することができる。高温用途のためのフィルタを必要とする産業又は活動としては、化学製品製造、石油精製、燃焼によるエネルギー生成、ガラス産業、及び金属製造が例示される。
【0003】
一般に、高温空気濾過とは、300℃を超える温度での濾過を意味する。また、一部の産業では、高温空気濾過には、高圧又は高腐食性の条件も含まれる。したがって、使用されるフィルタ又は交換用フィルタは、上記の条件に耐え得る材料を使用して製造されなければならない。そのため、高温用途のフィルタの製造においては、機械的耐久性と優れた耐薬品性を有するセラミックスと金属が一般的な材料である。セラミックスは機械的耐久性が高く、耐薬品性に優れているため、キャンドルに似た円筒形状を有するセラミックフィルタが、非常に人気のあるフィルタタイプの1つである。また、そのセラミックフィルタは、円筒形状であるため、使い勝手が良く、効率もよい。
【0004】
円筒形状のセラミックフィルタには種々の製造方法がある。一般的な製造方法の1つは、バインダと混合されたセラミックファイバシートを真空プレス成形して円筒形状のセラミックを形成することである。このようにして得られたフィルタの気孔率は、使用されるセラミックファイバシートの密度によって異なる。別の従来の方法は、粉末、ビーズ、又はスラリーの形態であり得るセラミック材料を型枠内に装填し、それを高温で焼成させることである。焼成工程で使用される温度は、得られるセラミックスの気孔率に影響を及ぼす。気孔率及び気孔径(pore size)は、セラミックフィルタの使用を必要とする用途又は産業に応じて異なる。既存のセラミックフィルタの製造方法は、高エネルギーと高温とを必要とし、その結果、製造コストが高くなることが分かる。
【0005】
さらに、現在のセラミックフィルタの製造方法は、バインダ又は接着剤と同時にセラミックファイバを型枠内に注入し、型枠内でこのような材料を加熱して加工物を形成することを含むので、多くのエネルギーを必要とする。
【0006】
本発明者は、フィルタ及びその製造方法に関する関連技術を探索し、以下のように、異なる製造工程を有する、異なるフィルタ及びその製造方法が開示されていることを見出した。
【0007】
「成形フィルタとその製造法」と題する特開2003-103126号公報(特許文献1)には、400℃を超える温度で使用される無機繊維で作製された円筒形状のフィルタが開示されている。無機繊維を無機系バインダと一緒に円筒形の型枠内に装填し、室温より20℃~30℃高い温度の熱風を24時間~48時間吹き付けて、フィルタの内部構造の密度を増加させる。次に、室温より20℃~30℃低い温度の空気を外面に24時間~48時間吹き付けて、フィルタが乾燥するまでフィルタの外部構造の密度を増加させる。この特許文献1に係るフィルタは、ロックウール、セラミックファイバ、ガラス繊維、炭素繊維等から選択することができる無機繊維5重量%~30重量%と、コロイダルシリカ、アルミナゾル、ベントナイト、アルミナセメント、低融点ガラス等から選択することができる無機系バインダ70重量%~95重量%とを含む。このような特許文献1に記載の発明は、低温を使用しているが、乾燥するまでに長時間かかり、製造時に多くのエネルギーを必要とする。
【0008】
「インフレータ用濾過部材及びその製造方法」と題する国際公開第2005/073036号(特許文献2)は、セーフティエアバッグ用のインフレータ(エアバッグを膨張させるための装置)用のフィルタを開示している。このフィルタは以下のように製造される。まず、金属製の素線を本体の周りに巻き付けて約38cmの厚さを有する円筒状の第1の層を形成する。次に、第1の層の外周面をセラミックペーパで覆い、第2の層の素線を巻き付ける。第2の層の素線は、第1の層の素線よりも間隔が狭くなっている。また、素線の第2の層は、圧力損失を低減するために第1の層よりも薄くされている。このような特許文献2によるフィルタは、製造に必要なエネルギーは少ないが、耐久性が低いために重工業用途には不適当である。
【0009】
「高温ナノフィルタシステム及び方法」と題された米国特許第7052532号明細書(特許文献3)には、ディーゼル排気ガスなどの200℃を超える温度のガス用のフィルタが開示されている。このフィルタは、様々な形状のセラミックファイバシート又はセラミックペーパを使用して、段ボール紙のような層を形成する。セラミックファイバシートは、その表面から延びる粒状フィルタを有する。セラミックファイバシートと共に使用されるバインダは、コロイダルアルミナ又はアルミノケイ酸塩の高固形分懸濁液である。特許文献3によるフィルタは、耐熱性及び耐薬品性に優れるが、機械的特性が劣るため、前述の産業においてフィルタとして使用するには適していない。
【0010】
低エネルギー且つ低温製造可能であり、加えて簡単な製造方法で得られる、セラミックファイバシート製のセラミックフィルタは、現在のところまだ提供されていないことが分かる。このような問題は、本発明によって対処されるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2003-103126号公報
【文献】国際公開第2005/073036号
【文献】米国特許第7052532号明細書
【発明の概要】
【0012】
本発明は、中空円筒である本体と、本体の一端に固定された第1の閉塞部材と、本体の他端に固定された第2の閉塞部材とを備え、本体がバインダを用いて中空円筒として結合された複数のセラミックファイバシートからなり、第1の閉塞部材及び第2の閉塞部材がバインダを用いて本体に固定されてセラミックフィルタを得ることを特徴とする、セラミックフィルタに関する。本発明はさらに、前記セラミックフィルタの製造方法に関する。
【0013】
本発明の目的は、高温ガス又は高温空気、特に1000℃を超える温度のガスに含まれる塵埃又は微粒子を濾過する必要がある産業に対して改善された技術的効果を提供する、中空円筒形状又はキャンドル形状を有するセラミックフィルタを開発することである。このようなセラミックフィルタは、最適な耐久性も備えている。その製造方法は単純であり、少ないエネルギーしか必要としない。このようなセラミックフィルタは、室温での結合能力を提供し、高温でも安定した状態を保つことができるバインダを用いて結合された複数のセラミックファイバシートからできている。
【0014】
また、本発明に係るセラミックフィルタ及びその製造方法は、セラミックファイバシートに適した接着剤又はバインダを選択し、セラミックファイバシートを巻いて(winding or rolling)所望の形状を形成し、閉塞部材を用いて中空円筒形状又はキャンドル形状を有するセラミックフィルタを得ることにより、製造に必要なエネルギーが少なくて済む。このことは、従来技術とは異なり独特である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明に係るセラミックフィルタの構成要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るセラミックフィルタは、高温、特に1000℃を超える温度のガスに含まれる塵埃又は微粒子を濾過して除去するのに適した特性を有する。このようなセラミックフィルタはまた、高温耐性、機械的又は物理的耐久性、及び耐薬品性を有する。加えて、このようなセラミックフィルタは、製造方法が簡単で、製造に必要なエネルギーが少なくて済む。
【0017】
以下、図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明に係るセラミックフィルタの構成要素を示す。上記のような特性を有し、上記課題を解決することができるセラミックフィルタを得るために、本発明に係るセラミックフィルタは、中空円筒である本体(1)と、本体(1)の一端に固定された第1の閉塞部材(2)と、本体(1)の他端に固定された第2の閉塞部材(3)とを備え、本体(1)は、中空円筒を形成するためにバインダを用いて結合された複数のセラミックファイバシートからなり、第1の閉塞部材(2)及び第2の閉塞部材(3)は、バインダを用いて本体(1)に固定されてセラミックフィルタを得ることを特徴とする。
【0019】
本体(1)は、中空円筒形状又はキャンドル形状を有する。本体(1)の断面は、円形、楕円形、三角形、正方形、五角形、及び多角形からなる群から選択される幾何学的形状を有する。本体(1)の断面は、好ましくは円形又は楕円形である。
【0020】
本体(1)の製造に使用されるセラミックファイバシートは、セラミックペーパ及びセラミックファイバペーパからなる群から選択することができる。セラミックファイバシートの高温に対する耐性は、セラミックファイバシートの製造に使用される材料に応じて異なる。
【0021】
セラミックフィルタの本体(1)の製造に使用されるバインダは、室温又は15℃~300℃の範囲の温度でセラミックファイバに結合することができる。バインダは、使用温度、1000℃を超える温度、又は1000℃~1450℃の範囲の温度で、安定した状態を保つことができる。このような特性により、高温用途向けのセラミックフィルタは、セラミックフィルタは使用中に損傷が発生することがなく、本発明によるセラミックフィルタの製造方法(これは、より詳細に説明される)に従って、室温で製造することができる。
【0022】
セラミックフィルタの製造に使用されるバインダは、硫酸マグネシウム溶液、ケイ酸ナトリウム溶液、アルミナソル、シリカゾル、コロイダルシリカ、リン酸塩溶液、塩化マグネシウム溶液などの群から1つ又は複数を選択することができる。バインダ溶液の濃度、即ち、バインダの結合能力を発揮させるバインダの量は、セラミックフィルタの本体(1)の剛性及び耐久性に直接影響を及ぼす。したがって、セラミックフィルタの使用が必要な用途に適した結合能力を得るために、溶液の濃度、即ち、バインダの量を調整する必要がある。
【0023】
以下、所望の特性を有し、上記課題を解決することができるセラミックフィルタを得るために、本発明に係るセラミックフィルタの製造方法について説明する。
【0024】
本発明によるセラミックフィルタの製造方法は、
a.セラミックファイバシートを準備する工程と、
b.セラミックファイバシートを巻いてセラミックフィルタを形成する工程と、
c.閉塞部材を固定する工程と、を含み、
セラミックファイバシートを巻いて閉塞部材を固定することによるセラミックフィルタの形成が、バインダを用いて複数のセラミックファイバシートを結合して中空円筒を形成し、このような中空円筒に閉塞部材を固定してセラミックフィルタを得ることにより行われることを特徴とする。
【0025】
セラミックファイバシートを準備する工程は、セラミックファイバシートを準備してそれを切断するか、又は他の適切な方法を使用することによって行われて、中空円筒を形成するのに適した形状を得る。中空円筒を形成するのに適した形状は、セラミックフィルタの本体(1)の長さ及び必要とされるセラミックフィルタの厚さに応じて異なるが、例示されるような長方形又は正方形である。次に、セラミックファイバシート上にバインダを塗布、注入又は噴霧することにより、又はセラミックファイバシートをバインダ中に浸漬(immersing or soaking)することにより、バインダをセラミックファイバシートに付与する。セラミックファイバシートに付与されるバインダは、得られたセラミックフィルタが中空円筒に成形された後で良好な耐久性を有するように、セラミックファイバシートの少なくとも片面の大部分を覆わなければならない。
【0026】
セラミックファイバシートを巻いてセラミックフィルタを形成する工程は、バインダが付与(例えば、塗布、注入、噴霧)されたセラミックファイバシート上に、型枠又は円筒状コアを配置することによって実施される。型枠又は円筒状コアを配置するための好ましい位置は、セラミックファイバシートの一端である。そして、少なくとも1層が形成されるように、セラミックファイバシートを型枠又は円筒状コアに巻き付けることにより、中空円筒を形成するようにセラミックファイバシートが巻かれる。層の数は、セラミックファイバシートの厚さと、セラミックフィルタの本体(1)の所望の厚さとに依存する。得られたセラミックフィルタの本体(1)は、使用中に発生する機械的な力に耐え得る十分な厚さを有する必要がある。形成工程が完了すると、中空円筒形状を有するセラミックフィルタの本体(1)が得られる。
【0027】
閉塞部材を固定する工程は、風又は空気がセラミックフィルタを完全に通過し、使用中に別の端部でセラミックフィルタから出るように、本体(1)の一端に、本体(1)の断面形状と同一又は類似の断面形状を有し且つ本体(1)と同様のサイズを有する平坦なシートである第1の閉塞部材(2)を固定して、本体(1)の一端を閉塞することにより行われる。
【0028】
第1の閉塞部材(2)は、様々な材料、好ましくはセラミックスから選択することができる材料でできている。このようなセラミックスは、既存の方法により、又は複数のセラミックファイバシートを積層し、本体(1)と同様の方法でバインダを用いてそれらを一緒に結合することにより製造することができる。第1の閉塞部材(2)は、バインダを用いて本体(1)に固定される。このバインダは、本体(1)で使用されるものと同じバインダであってもよいし、室温又は中程度の温度でも結合能力を有し、1000℃を超える温度又は1000℃~1450℃の温度で安定した状態を保つことができれば、異なるバインダであってもよい。
【0029】
閉塞部材を固定する工程は、さらに、開口部(4)を有するシートである第2の閉塞部材(3)を、本体(1)の第1の閉塞部材(2)とは反対側の端部で、本体(1)に固定することにより行われるか、又は、本体(1)が開口部(4)に挿入されるように、第2の閉塞部材(3)を本体(1)に固定することにより行われる。
【0030】
開口部(4)は、場合に応じて、本体(1)の内部開口部と類似又は同一の寸法を有するか、又は本体(1)の外形寸法と類似又は同一の寸法を有する。開口部(4)の寸法は、第2の閉塞部材(3)の本体(1)への固定方法に依存する。第2の閉塞部材(3)の外縁は、本体(1)の外形寸法よりも大きい。本体(1)の外表面から第2の閉塞部材(3)の外縁までの距離は、セラミックフィルタを所望の構造に固定するか、又はセラミックフィルタを所望の構造上に配置するのに十分な長さである。
【0031】
さらに、第2の閉塞部材(3)は、様々な材料、好ましくはセラミックスから選択することができる材料でできている。このようなセラミックスは、既存の方法により、又は複数のセラミックファイバシートを積層して、本体(1)と同様の方法でバインダを用いてそれらを一緒に結合することにより製造することができる。第2の閉塞部材(3)は、バインダを用いて本体(1)に固定される。このバインダは、本体(1)で使用されるものと同じバインダであってもよいし、又は、室温又は中程度の温度でも結合能力を有し、1000℃を超える温度又は1000℃~1450℃の温度で安定した状態を保つことができれば、異なるバインダであってもよい。
【0032】
また、本発明に係るセラミックフィルタの製造方法は、セラミックファイバシートを巻いてセラミックフィルタを形成する工程に続いて、又は、閉塞部材を固定する工程に続いて、熱処理工程を含むことにより、より使い易いセラミックフィルタを得ることができる。この熱処理工程は、50℃~200℃の温度で実施される。
【0033】
本発明に係るセラミックフィルタの構成例を図1に示す。本体(1)は、円形の断面を有する。第1の閉塞部材(2)は、本体(1)の一端に固定されており、本体(1)と同じサイズの円形断面を有する。第2の閉塞部材(3)は、本体(1)と同じサイズの円形の開口部(4)を備えた円形断面を有し、本体(1)の外径よりも大きい外径を有する。
【0034】
本発明に係るセラミックフィルタの別の例は、円形断面を有する中空円筒形状のセラミックフィルタである。本体(1)の外径は約50mm~160mmである。本体(1)は、1100℃~1400℃までの耐熱性を有するセラミックペーパでできている。セラミックペーパは20%~95%の気孔率を有する。使用されるバインダは、アルミナ又はシリカの溶液である。本体(1)は、約1mm~8mmの厚さが得られるまで、セラミックペーパを巻くことによって形成される。3mm~5mmの範囲の好ましい厚さは、セラミックフィルタの本体(1)に0.04μm以上の気孔径を与える。
【0035】
第1の閉塞部材(2)及び第2の閉塞部材(3)は、本体(1)と同じ材料でできており、本体(1)と同様の厚さを有する。第1の閉塞部材(2)及び第2の閉塞部材(3)は、本体(1)で使用されるものと同じバインダを使用して本体(1)に結合され、バインダが固化するまで乾燥される。このようにして得られたセラミックフィルタは、製鉄、ガラス溶融、発電などの産業で発生する熱風中の塵埃を濾過するために使用することができる。
【0036】
本発明に係るセラミックフィルタの製造方法によれば、上記用途に適した特性を有するセラミックフィルタを提供することができる。さらに、本発明に係るセラミックフィルタの製造方法は、他のタイプの装置又は製品の製造にも適用することができる。例えば、金属産業などの様々な産業で使用されるセラミックガスケットの製造、特に、ノズルとシュラウドとの間に取り付けられるガスケットセラミックの製造にも適用することができ、液体金属のこぼれを防止し、液体金属が空気又は周囲に曝されるのを防止する。
【0037】
本発明の最良の実施態様は、本発明の詳細な説明に記載されている通りである。
【符号の説明】
【0038】
1 本体
2 第1の閉塞部材
3 第2の閉塞部材
4 開口部
図1