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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】歯科用ハンドピースの先端工具
(51)【国際特許分類】
   A61C 17/00 20060101AFI20240423BHJP
   A61B 17/24 20060101ALI20240423BHJP
   A61C 17/02 20060101ALI20240423BHJP
   A61C 17/32 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
A61C17/00 T
A61B17/24
A61C17/02 B
A61C17/32 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020183544
(22)【出願日】2020-11-02
(65)【公開番号】P2022073516
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】591179101
【氏名又は名称】株式会社ミクロン
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】竹下 三郎
(72)【発明者】
【氏名】長井 琢也
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-131339(JP,A)
【文献】特開2004-113417(JP,A)
【文献】特許第6757085(JP,B1)
【文献】特開2005-342489(JP,A)
【文献】特表2019-500107(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0038302(US,A1)
【文献】特開2016-137177(JP,A)
【文献】特表2014-533158(JP,A)
【文献】特開2002-001236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 17/00
A61C 17/02
A61B 17/24
A61C 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動発生源および注液管路を内蔵するハンドピース本体90の先端90aに着脱自在に取り付けられる先端工具10であって、
前記ハンドピース本体の先端に着脱自在に取り付けられる近位端11と、ディスク2と連続するように構成される遠位端12と、前記ハンドピース本体の先端から供給される液体を前記ディスクに供給できる液体流路13とを有し、前記ハンドピース本体の前記振動発生源により発生する振動を前記ディスクに伝達できるホルダー1;及び
前記ホルダー1から伝達される振動により振動する円盤状の振動子21と、前記円盤状振動子の一方の面21bの円中心部に設けられ、前記ホルダーの遠位端と連続するように構成されるホルダー連結部22と、前記ホルダーの遠位端から供給される液体を前記円盤状振動子のもう一方の面21aの円中心部に設けられた液体吐出口23aまで送液できる液体流路23とを有するディスク2;
を含む、前記先端工具10。
【請求項2】
少なくとも前記ディスク2における液体吐出口が設けられた面21aの全体を着脱自在に、且つ、実質的に密着するように覆うことができるキャップ3;
を更に含み、
前記キャップの外側表面3aに凹凸部31が設けられ、
前記キャップにその内側表面3bから外側表面3aに流体が通過可能な貫通孔32が1つ以上設けられ、
前記キャップの内側表面3bに円中心部と各貫通孔とを連絡する溝33がそれぞれ設けられ、
前記キャップを前記ディスクに装着した際に、前記溝とディスク表面とが一緒になって、前記ディスクの液体吐出口から供給される液体を前記キャップの各貫通孔まで送液できる液体流路34を形成することができる、
請求項1に記載の先端工具。
【請求項3】
前記ディスク2における液体吐出口が設けられた面21aの表面に凹凸部24が設けられている、
請求項1に記載の先端工具。
【請求項4】
前記円盤状振動子21の形状が、外周部より中心部に向かって厚くなる形状である、請求項1~3のいずれか一項に記載の先端工具。
【請求項5】
前記ディスク2の液体吐出口が設けられた面21aの形状が、凸面である、請求項1~4のいずれか一項に記載の先端工具。
【請求項6】
前記ディスク2の液体吐出口が設けられた面21aの形状が、凹面である、請求項1~4のいずれか一項に記載の先端工具。
【請求項7】
前記ディスク2の液体吐出口が設けられた面21aの形状が、平面である、請求項1~4のいずれか一項に記載の先端工具。
【請求項8】
前記ホルダー1の遠位端12が、ホルダー本体に対して略直角である、請求項1~7のいずれか一項に記載の先端工具。
【請求項9】
前記ホルダー1とディスク2との取付けが着脱自在なねじ締結であり、ディスクのホルダー連結部22、あるいは、ホルダーの遠位端12であるおねじ22aのねじ先端部にねじ山のないガイド部分22bを設ける、請求項1~8のいずれか一項に記載の先端工具。
【請求項10】
前記ホルダー1と前記ディスク2とが一体成形されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の先端工具。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の先端工具10と、
振動発生源および注液管路を内蔵し、前記先端工具10を先端90aに着脱自在に取り付けられるハンドピース本体90と
を含む、ハンドピース10A。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔衛生に用いる歯科用ハンドピース、特には口腔粘膜(例えば、舌、頬、口蓋、口底、歯肉などを覆う粘膜)の清掃、マッサージ等に用いるハンドピースの先端に取り付けて使用する先端工具に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔衛生の一つとして、舌の舌苔清掃が行われている。手で持って使用する様々な形状の舌ブラシが市販されている一方、このような舌ブラシは清掃能力が低いため、振動を利用した電動の舌ブラシも開発・報告されている(特許文献1、2)。
【0003】
特許文献1には、「チップベースと、その先側の作用部とを含み、振動発生源を内蔵するハンドピース本体の先端に着脱自在に取付けられる舌苔除去用チップであって、上記作用部は、リング状に形成されたブラシ体からなり、振動発生源からチップベースを介して伝播される振動をして舌面に作用し、舌苔除去に供せられるものであり、上記ハンドピース本体に取付けられたとき、該ハンドピース本体内の注液管路に連通し、舌面の被作用部に向け噴液する為の注液口が設けられている舌苔除去用チップ」(請求項1)が記載されている。
【0004】
特許文献1に記載の舌苔除去用チップでは、作用部であるブラシ体は「多数の毛体を植毛した金属ワイヤをリング状に形成したもの」(請求項2)であり、前記毛体の材質として「ナイロン等」(段落0025)を使用しているため、舌へダメージを与える欠点がある。また、特許文献1に記載の舌苔除去用チップでは、「上記注液口が上記作用部の基部に設けられ」(請求項5)ているが、下から上に向かって、あるいは、横方向からブラシ体を接触させる必要がある舌以外の口腔粘膜(例えば、口蓋、頬、歯肉)に対しては、安定した注液が難しい欠点があった。更に、金属ワイヤに多数の毛体を植毛する構造を採用しているため、汚れがたまりやすい欠点があり、従って、ブラシ体先端の作用部は使い捨ての「消耗品」(段落0027)と捉えている。
【0005】
特許文献2には、「口腔衛生装置の電動ポンプを使用せずに流体を送達するように構成される口腔衛生装置とともに使用するためのアタッチメントアセンブリであって:
前記口腔衛生装置の遠位端に結合するように構成される近位端を有する接続部材と;
前記接続部材の遠位端で前記接続部材に結合される実質的に細長い主アタッチメントと;
を備え、前記主アタッチメントは、
前記口腔衛生装置とともに使用するために流体をその中に貯蔵する流体チャンバと、
前記主アタッチメントの遠位端で前記主アタッチメントの長手方向軸に沿った第1側面上にある接触パッドと、
前記主アタッチメントの前記第1側面上にあり、前記流体チャンバと流体連通して、前記流体チャンバから流体を受け取り、該流体を前記接触パッドに送達するように動作可能な少なくとも1つの流体出口孔と、
前記接触パッドが配置される前記主アタッチメントの前記第1側面と反対にある前記主アタッチメントの第2側面上に配置されて、前記流体チャンバと流体連通する空気入口孔と、
を有し、前記流体チャンバ内の流体は、前記口腔衛生装置の作動中に前記少なくとも1つの流体出口孔を出る、
アタッチメントアセンブリ。」(請求項1)が記載されている。
【0006】
特許文献2に記載のアタッチメントアセンブリでは、舌に接触する主アタッチメントが「実質的に細長い」形状をしており(請求項1)、前記主アタッチメントの遠位端に設けられた「接触パット」の形状も略長方形であるため(図2A図2B)、舌苔除去を行うときの先端の移動が単調(例えば、単純な往復運動)となり、舌苔の除去効率に偏りが生じる可能性がある。また、特許文献2に記載のアタッチメントアセンブリでは、「電動ポンプを使用せずに流体を送達する」ために「遠心力」(請求項6)を利用しており、そのため、液体を供給する水回路が複雑になる欠点がある。更に、水回路を含むアタッチメントアセンブリ全体の構造が複雑であるため、アタッチメントアセンブリをリユースすることを前提としており、衛生面での不安がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4079745号公報
【文献】特許第6700394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の課題は、舌を含む種々の口腔粘膜の清掃、マッサージ等に用いることのできる歯科用ハンドピースの先端工具であって、
(1)種々の方向から工具先端を当てる必要のある任意の口腔内膜に対して、偏りのない清掃効果またはマッサージ効果を得ることができ、
(2)簡単な構造であって、口腔内の施術箇所にかかわらず、安定した注水を行うことができ、
(3)衛生的である、
前記先端工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、本発明による:
[1]振動発生源および注液管路を内蔵するハンドピース本体90の先端90aに着脱自在に取り付けられる先端工具10であって、
前記ハンドピース本体の先端に着脱自在に取り付けられる近位端11と、ディスク2と連続するように構成される遠位端12と、前記ハンドピース本体の先端から供給される液体を前記ディスクに供給できる液体流路13とを有し、前記ハンドピース本体の前記振動発生源により発生する振動を前記ディスクに伝達できるホルダー1;及び
前記ホルダー1から伝達される振動により振動する円盤状の振動子21と、前記円盤状振動子の一方の面21bの円中心部に設けられ、前記ホルダーの遠位端と連続するように構成されるホルダー連結部22と、前記ホルダーの遠位端から供給される液体を前記円盤状振動子のもう一方の面21aの円中心部に設けられた液体吐出口23aまで送液できる液体流路23とを有するディスク2;
を含む、前記先端工具10;
[2]少なくとも前記ディスク2における液体吐出口が設けられた面21aの全体を着脱自在に、且つ、実質的に密着するように覆うことができるキャップ3;
を更に含み、
前記キャップの外側表面3aに凹凸部31が設けられ、
前記キャップにその内側表面3bから外側表面3aに流体が通過可能な貫通孔32が1つ以上設けられ、
前記キャップの内側表面3bに円中心部と各貫通孔とを連絡する溝33がそれぞれ設けられ、
前記キャップを前記ディスクに装着した際に、前記溝とディスク表面とが一緒になって、前記ディスクの液体吐出口から供給される液体を前記キャップの各貫通孔まで送液できる液体流路34を形成することができる、
[1]の先端工具;
[3]前記ディスク2における液体吐出口が設けられた面21aの表面に凹凸部24が設けられている、
[1]の先端工具;
[4]前記円盤状振動子21の形状が、外周部より中心部に向かって厚くなる形状である、[1]~[3]のいずれかの先端工具;
[5]前記ディスク2の液体吐出口が設けられた面21aの形状が、凸面である、[1]~[4]のいずれかの先端工具;
[6]前記ディスク2の液体吐出口が設けられた面21aの形状が、凹面である、[1]~[4]のいずれかの先端工具;
[7]前記ディスク2の液体吐出口が設けられた面21aの形状が、平面である、[1]~[4]のいずれかの先端工具;
[8]前記ホルダー1の遠位端12が、ホルダー本体に対して略直角である、[1]~[7]のいずれかの先端工具;
[9]前記ホルダー1とディスク2との取付けが着脱自在なねじ締結であり、ディスクのホルダー連結部22、あるいは、ホルダーの遠位端12であるおねじ22aのねじ先端部にねじ山のないガイド部分22bを設ける、[1]~[8]のいずれかの先端工具;
[10]前記ホルダー1と前記ディスク2とが一体成形されている、[1]~[8]のいずれかの先端工具;
[11][1]~[10]のいずれかの先端工具10と、
振動発生源および注液管路を内蔵し、前記先端工具10を先端90aに着脱自在に取り付けられるハンドピース本体90と
を含む、ハンドピース10A;
により解決することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、口腔粘膜と直接または間接的に接触して作用するディスクの形状が円形であるため、偏った方向性がなく、口腔内の様々な粘膜に種々の方向から先端工具を当てることができ、更に、各施術箇所において偏りのない清掃効果またはマッサージ効果を期待することができる。
また、本発明によれば、簡単な構造で、キャップの貫通孔(第一態様)またはディスク作用面の円中心部に設けられた液体吐出口(第二態様)から、どの場所の粘膜に対しても安定した注水を行うことができるため、口腔内の施術箇所にかかわらず清掃効率を向上させることができ、従って、不要な力を口腔粘膜(特には舌)にかける必要がなく、口腔粘膜(特には舌)を傷付けるのを防止することができる。
更に、本発明によれば、口腔粘膜と直接または間接的に接触する部分(例えば、ディスク、キャップ)が滅菌可能な材料からなるため、衛生的であり、所望により、頻繁に交換することも可能であるため、更に衛生的である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の先端工具の第一態様の一実施形態をハンドピース本体の先端に取り付けた状態で模式的に示す、キャップ側からみた斜視図である。
図2図1に示す実施形態をハンドピース本体の先端に取り付けた状態で模式的に示す、ホルダー側からみた斜視図である。
図3図1に示す実施形態を構成するディスク及びキャップを、それぞれ、取り外した状態で、ホルダーを取り付けた状態のハンドピース本体と共に、模式的に示す側面図である。
図4図1に示す実施形態における、(a)キャップを取り外した状態のディスクの模式的断面斜視図、(b)キャップを取り付けた状態のディスクの模式的断面斜視図、(c)キャップを取り付けた状態のディスクの模式的断面図である。
図5図1に示す実施形態におけるディスクの、(a)外側表面側からみた模式的斜視図、(b)内側表面側からみた模式的斜視図、(c)模式的平面図、(d)模式的底面図、(e)模式的断面図である。
図6】本発明の先端工具の第一態様で用いるキャップの一例を示す、(a)模式的平面図、(b)模式的側面図、(c)模式的底面図である。
図7】本発明の先端工具の第一態様で用いるキャップの別の一例を示す、(a)模式的平面図、(b)模式的側面図、(c)模式的底面図である。
図8】本発明の先端工具の第一態様で用いるキャップの更に別の一例を示す、(a)模式的平面図、(b)模式的側面図、(c)模式的底面図である。
図9】本発明の先端工具の第一態様で用いるキャップの更に別の一例を示す、(a)模式的平面図、(b)模式的側面図、(c)模式的底面図である。
図10】本発明の先端工具の第一態様の別の実施形態における、(a)キャップを取り外した状態のディスクの模式的断面斜視図、(b)キャップを取り付けた状態のディスクの模式的断面斜視図、(c)キャップを取り付けた状態のディスクの模式的断面図である。
図11】本発明の先端工具に用いるディスクの模式的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の先端工具は、用途に応じて交換する歯科用ハンドピースの種々の先端工具の一つであり、ハンドピース本体の先端に取り付けることにより口腔粘膜(例えば、舌、頬、口蓋、口底、歯肉などを覆う粘膜)の清掃、マッサージ等に使用でき、特に舌苔除去を含む舌清掃に適している。本発明の先端工具を適用することのできるハンドピース本体は、振動発生源および注液管路を内蔵する限り、特に限定されるものではないが、前記振動発生源として、例えば、エア式発振器、超音波発振器、音波発振器、モーターを利用することができる。これらの振動発生源の内、エア式発振器による振動は、最適な振動を与えることができ、なでる程度の軽い力で口腔粘膜の付着物(特には舌苔)を除去でき、口腔粘膜への感触も心地よいため、好適である。
【0013】
本発明の先端工具は、図3に示すように、少なくとも、振動して施術対象である口腔粘膜に直接または間接的に接触して作用するディスク2と、前記ディスクをハンドピース本体90に取り付けるためのホルダー1とを含む。以下、前記ディスクの両面の内、施術対象に直接または間接的に作用する面を作用面21aと称し、その反対側の面を連結面21bと称する。
【0014】
本発明の先端工具の第一の態様は、前記ディスク2の作用面21aの全体を着脱自在に覆うことのできる弾性材料からなるキャップ3を更に含む。本発明における第一態様では、前記キャップを介して、ディスクの振動を間接的に施術対象に作用させるため、間接作用型と称することがある。あるいは、本発明における第一態様では、ディスクが振動し、それに追従してキャップも振動し、その振動を施術対象に作用させるため、キャップ-ディスク型と称することがある。
【0015】
本発明の先端工具の第二の態様は、図4(a)に示すように、前記ディスク2の作用面21aに凹凸部24を有する。本発明における第二態様では、ディスクの作用面と施術対象とが直接接触し、ディスクの振動を直接的に施術対象に作用させるため、直接作用型又はディスク単独型と称することがある。
【0016】
以下、添付図面に基づいて本発明について説明するが、本発明はこれらの特定の実施形態に限定されるものではない。また、本発明の第一の態様について説明した後、第二の態様について説明するが、本発明の課題を達成することができ、本発明の効果が発揮できる範囲において、特に断りのない限り、第一の態様に関する説明を第二の態様に適用することができ、第二の態様に関する説明を第一の態様に適用することができる。
【0017】
本発明の先端工具の第一態様(間接作用型、キャップ-ディスク型)
本発明の第一態様は、ホルダー1及びディスク2を含み、更に、前記ディスク2の一部を着脱自在に、且つ、実質的に密着するように覆うことができるキャップ3を含む。
【0018】
前記ホルダー1は、前記ディスク2及びキャップ3をハンドピース10Aの先端に所望の距離および角度で保持するための支持体であり、且つ、ハンドピース本体90の振動発生源により発生した振動をディスク2に伝達する機能を有する。
【0019】
前記ホルダー1の形状は、ハンドピースの先端に所望の距離および角度でディスク及びキャップを保持することができれば、特に限定されるものではないが、ハンドピース本体90の先端90Aから供給される液体をディスク2に供給するための液体流路13を兼ねることから、典型的にはハンドピース本体の概ね軸方向に延びる細身の管形状である。なお、ホルダーの一端(近位端11)は、ハンドピース本体の先端に着脱自在に取り付けられる近位端であり、ホルダーの反対側の一端(遠位端12)は、ディスクと連続するように構成される遠位端である。
【0020】
本発明の先端工具においては、ホルダー全体が一方向に延びる管形状であることもできるし、あるいは、ホルダーの途中の一箇所または複数箇所で方向を変える管形状であることもできる。図1図3に示すホルダーは、二箇所で方向を変える管形状である。
また、本発明の先端工具においては、図1図3に示すように、ホルダーの遠位端が、ホルダー本体の軸方向に対して略直角であると、ホルダーの金属部分が口腔粘膜に接触しないため、ホルダーの振動が口腔粘膜に伝わらず、好ましい。この場合、ハンドピース本体の概ね軸方向に延びるホルダー本体の長さ(図3に示す距離X)は典型的には20~40mmであり、ホルダーの遠位端及びその近傍の長さ(図3に示す距離Y)は典型的には5~10mmである。ホルダーの遠位端及びその近傍の長さがこの範囲であると、施術時に大きく開口する必要はない。
【0021】
ホルダーの材質は、歯科用ハンドピースの先端工具に一般に用いられるものであり、滅菌処理(例えば、滅菌ガス処理、紫外線処理、オートクレーブ処理)できるものであれば、特に限定されるものではない。
【0022】
前記ディスク2は、ディスク本体である円盤状の振動子21と、前記円盤状振動子の一方の面(連結面21b)の円中心部に設けられたホルダー連結部22とからなる。前記円盤状振動子21は、前記ホルダー1から伝達される振動により振動する。また、前記ホルダー連結部22は、前記ホルダー1の遠位端12に連続するように構成されており、前記ディスク2をホルダー1に取り付けることができる。ホルダー連結部22と、前記ホルダー1の遠位端12は、ディスク2とホルダー1が着脱自在に結合できる構造(典型的にはねじ締結)とすることもできるし、一度取り付けると外れない(若しくは簡単に外れない)構造(例えば、篏合、接着、溶接)とすることもできるし、あるいは、ディスクとホルダーとを一体成形することもできる。更に、ディスクの中心部(ディスクの軸およびその近傍)には、ホルダー連結部22の端部に設けられた液体吸入口23bから、円盤状振動子のもう一方の面(作用面21a)の円中心部に設けられた液体吐出口23aまで、ホルダーの遠位端から供給される液体を送液できる液体流路23が設けられている。
【0023】
前記ディスク2の主面(すなわち、作用面21aおよび連結面21b)の形状は円形であり、前記円形には、真円が含まれるだけでなく、均一な振動が生じる範囲で楕円も含まれる。ディスクの主面の形状が円形であると、偏った方向性がないため、口腔内の様々な粘膜に種々の方向から先端工具を当てることができるメリットがある。
【0024】
前記円盤状振動子21の厚さ方向の形状は、キャップを取り付けやすい形状で、且つ、キャップ3とディスク2とを密着できる形状であれば、特に限定されるものではないが、例えば、厚さが一定の形状、あるいは、円盤状振動子の外周部より中心部が厚くなる形状(すなわち、円盤状振動子の中心部より外周部が薄くなる形状;図4図10参照)を挙げることができる。外周部より中心部に向かって、キャップのオーバーハング部分にあたる範囲が厚くなると、キャップとディスクとがより密着することにより振動を伝えやすい。更には、外周部より中心部が厚くなると、ディスクの強度が向上する点で、好ましい。また、中心部より外周部が薄くなると、キャップを取り付けるのが容易である点で、好ましい。
また、ディスク作用面21aの形状は、特に限定されるものではないが、例えば、凸面(図4参照)、凹面(図10参照)、又は平面であることができる。
【0025】
ディスクの材質は、歯科用ハンドピースの先端工具に一般に用いられるものであり、滅菌処理(例えば、滅菌ガス処理、紫外線処理、オートクレーブ処理)できるものであれば、特に限定されるものではない。
【0026】
以上、本発明の第一態様について、キャップに係わる説明を除き、本発明の第二態様と共通する構成について説明したが、これらの構成(但し、キャップに係わる説明を除く)は本発明の第二態様にも適用することができる。
【0027】
本発明の第一態様における前記ディスク2の作用面21aの表面形状は、平滑面とすることもできるし、あるいは、後述する本発明の第二態様におけるディスクの作用面の表面形状と同じ形状とすることもできる。なお、後述する本発明の第二態様におけるディスクの作用面の表面形状に関する説明では、各種の凹部および凸部に関する例示があるが、本発明の第一態様では、ディスクの作用面にキャップを装着するため、キャップとディスクの密着性を高めるために、凸部の高さは低く抑えることが好ましい。
【0028】
本発明の第一態様における前記キャップは、前記ディスクの円盤状振動子を包み込むように装着する。ディスクの外周部がはまり込むキャップの篏合部の溝幅(キャップの内側表面とキャップのオーバーハング部分との距離;図4(c)における幅W)はディスク外周部の厚さ以下であると、より密着するため、好ましい。また、前記オーバーハング部分の長さ(図4(c)における長さL)は典型的には1~2mmである。短すぎると密着しにくく、長すぎるとはめづらいからである。前記キャップにより、少なくともディスクの作用面の全体を着脱自在に、且つ、実質的に密着するように覆うことができるため、本発明の第一態様では、キャップの外側表面が施術対象である口腔粘膜と直接接触する。
【0029】
前記キャップ3の外側表面(作用面)3aには、口腔粘膜上の付着物を除去したり、口腔粘膜に対してマッサージ効果を示す凹凸部31が設けられ、また、キャップ3には、その内側表面から外側表面に流体が通過可能な貫通孔32が1つ以上設けられている。更に、キャップ3の内側表面3bには、円中心部と各貫通孔とを連絡する溝33が設けられている。キャップ3をディスク2に装着すると、キャップ3の内側表面3bとディスク2の作用面21aとが実質的に密着しているため、前記溝33とディスク作用面21aとが一緒になって、ディスク3の液体吐出口23aから供給される液体をキャップの各貫通孔まで送液できる液体流路34を形成することができる。なお、本明細書において、キャップの内側表面とディスク作用面とが「実質的に密着している」とは、溝および貫通孔を除くキャップの内側表面と、ディスク作用面(ディスク作用面に凹凸部が設けられている場合には、前記凹凸部を除くディスク作用面)とが密着していることを意味する。
【0030】
キャップの外径は典型的には10~20mmである。口腔内での操作性がよく、効率的な施術が可能である。
前記貫通孔の孔径は典型的には0.3~2mmである。キャップの外径が前記の範囲であれば、貫通孔は典型的には1~35個設ける。貫通孔の配置は、キャップの作用面の全体に安定した注水が可能であれば、特に限定されるものではなく、キャップの側面部の内壁を削らない範囲で、円中心部から円周辺部の任意の範囲に設けることができる。複数の貫通孔を設ける場合には、図5図9に示すように、等間隔で配置することが好ましく、また、作用面の全面にわたって配置する場合には、均一に分布させることが好ましい。
本発明の第一態様では、ディスク-キャップ間に液体流路の役割を持たせることで複雑な水回路を必要とせず、低コストで提供することができる。
【0031】
キャップの外側表面に設ける前記凹凸部の形状は、凸部としては、例えば、点状突起、円柱もしくは円錐または角柱若しくは角錐状突起(突起先端は、平面または頂点のままであっても、あるいは、丸みを付けてもよい)、半球状突起、直線または曲線状突起、同心円状突起、格子状突起を挙げることができ、凹部としては、例えば、点状窪み、円柱もしくは円錐または角柱若しくは角錐状窪み(窪みの底は、平面または頂点のままであっても、あるいは、丸みを付けてもよい)、半球状窪み、直線または曲線(例えば、円弧もしくは波状曲線、特には正弦曲線)状溝、同心円状溝、仮想同心円上に配置した波状曲線(特には正弦曲線)状溝、直線または曲線からなる格子状溝を挙げることができる。これらの凹凸部は、凸部のみ、若しくは凹部のみを設けることもできるし、凸部と凹部とを組み合わせて設けることもできる。なお、前記溝のエッジ又は窪みの開口周縁は、角を付けてもよいし、あるいは、Rを付けてもよい。
キャップ3の外側表面3aに設ける凹凸部31および貫通孔32、並びに内側表面3bに設ける貫通孔32および溝33の形状および配置の具体例を図5図9に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
キャップの外側表面のベース形状(すなわち、前記凹凸部を設ける前の形状)は、キャップ本体の厚みを一定にすることにより、ディスク作用面の形状(例えば、凸面、凹面、又は平面)をそのまま反映させることもできるし、あるいは、キャップ本体の厚みを適宜設定することにより、ディスク作用面の形状とは異なる凸面、凹面、又は平面とすることもできる。
【0033】
キャップの外側表面の形状が凸面(図4参照)であると、例えば、舌の平面および正中溝に対する施術に適している。凸面形状のキャップ表面は、正中溝にフィットし、また、除去した付着物(特には舌苔)を施術箇所の外に流しやすく、従って、キャップや口腔粘膜(特には舌)に再付着することを防止でき、残渣を残しにくい。
また、キャップの外側表面の形状が凹面(図10参照)であると、例えば、舌の凸部(舌側縁(サイド))の施術に対して適している。また、舌の奥側へアクセスしやすい。
【0034】
キャップの材質は、歯科用ハンドピースの先端工具に一般に用いられるものであり、滅菌処理(例えば、滅菌ガス処理、紫外線処理、オートクレーブ処理)できる弾性材料であれば、特に限定されるものではない。キャップ本体およびその表面の凹凸部が弾性材料からできていると、口腔粘膜の付着物(特には舌苔)を、口腔粘膜を傷付けることなく、優しく効率的に除去することができ、更には、口腔粘膜を優しくマッサージすることができる。
【0035】
本発明の先端工具の第二態様(直接作用型、ディスク単独型)
本発明の第二態様は、ホルダー1及びディスク2を含むが、第一態様で用いる前記キャップ3は使用しない。
本発明の第二態様におけるホルダー及びディスクについては、第一態様で説明した構成をそのまま適用することができる。本発明の第二態様においては、ディスクの作用面の表面に、口腔粘膜上の付着物を除去したり、口腔粘膜に対してマッサージ効果を示す凹凸部が設けられている。
【0036】
ディスクの作用面の形状は、その施術対象に応じて、凸面、凹面、平面から選択することができる。
ディスク作用面の形状が凸面であると、例えば、舌の平面および正中溝の施術に対して適している。凸面形状の作用面は、正中溝にフィットし、また、除去した付着物(特には舌苔)を施術箇所の外に流しやすく、従って、ディスクや口腔粘膜(特には舌)に再付着することを防止でき、残渣を残しにくい。
また、ディスク作用面が凹面であると、例えば、舌の凸部(舌側縁(サイド))の施術に対して適している。また、舌の奥側へアクセスしやすい。
【0037】
本発明の第二態様におけるディスクの外径は典型的には10~20mmである。また、円盤状振動子の厚さ(最大厚さ)は典型的には1~3mmである。口腔内での操作性がよく、効率的な施術が可能である。
【0038】
ディスク作用面の表面に設ける前記凹凸部の形状は、凹部としては、例えば、点状窪み、円柱もしくは円錐または角柱若しくは角錐状窪み(窪みの底は、平面または頂点のままであっても、あるいは、丸みを付けてもよい)、半球状窪み、直線または曲線(例えば、円弧もしくは波状曲線、特には正弦曲線)状溝、同心円状溝、仮想同心円上に配置した波状曲線(特には正弦曲線)状溝、直線または曲線からなる格子状溝を挙げることができ、凸部としては、例えば、点状突起、円柱もしくは円錐または角柱若しくは角錐状突起(突起先端は、平面または頂点のままであっても、あるいは、丸みを付けてもよい)、半球状突起、直線または曲線状突起、同心円状突起、格子状突起を挙げることができる。これらの凹凸部は、凸部のみ、若しくは凹部のみを設けることもできるし、凸部と凹部とを組み合わせて設けることもできる。なお、前記溝のエッジ又は窪みの開口周縁は、角を付けたままでもよいし、あるいは、Rを付けてもよいが、直接接触する口腔粘膜を傷付けることを防止できる点で、Rを付けることが好ましい。
【0039】
前記凹凸部としては、以下に示す効果を充分に発揮できる点で、同心円状溝が好適である。この場合、溝の深さは典型的には0.1~1mmである。円盤状振動子の外径が前記の範囲であれば、同心円状溝を典型的には1~5本設ける。溝のエッジにRを付けると、口腔粘膜(特には舌)を傷付けることを防止でき、好ましい。
前記凹凸部としてこのような同心円状溝を設けると、付着物を掻き出すことができ、液体溜まりをつくることができ、残渣を逃す効果がある。
【0040】
本発明の先端工具(第一態様および第二態様を含む)
本発明の先端工具は、施術時に、キャップの貫通孔(第一態様)またはディスク作用面の円中心部に設けられた液体吐出口(第二態様)から安定した注水を行うことができる。従って、清掃効率を向上させることができ、不要な力を口腔粘膜(特には舌)にかける必要がなく、口腔粘膜(特には舌)を傷付けるのを防止することができる。
【0041】
本発明の先端工具において、ホルダーへのディスクの取り付けをねじ締結とし、ディスクのホルダー連結部をおねじに、ホルダーの遠位端をめねじにした場合、ねじの径に対して、ディスクの円盤状振動子の外径が大きいため、手で取り付ける際におねじが傾きやすく、ねじが締めにくいことが判明した。
前記の場合、図11に示すように、ディスク2のホルダー連結部22であるおねじ22aのねじ先端部にねじ山のないガイド部分22bを設けることにより、驚くことに、極めて容易にねじを締めることができる。逆に、ホルダー1の遠位端12をおねじに、ディスク2のホルダー連結部22をめねじにした場合にも、ホルダーの遠位端であるおねじのねじ先端部にねじ山のないガイド部分を設けることにより、同じ効果を得ることができる。
ガイド部分の長さは、適宜決定することができるが、典型的にはねじ山のピッチの1~3倍である。
【0042】
本発明のハンドピース
本発明には、本発明の先端工具10と、振動発生源および注液管路を内蔵し、前記先端工具を先端に着脱自在に取り付けられるハンドピース本体90とを含む、ハンドピース10Aが含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、歯科用医療機器の分野で使用することができる。
【符号の説明】
【0044】
10・・・先端工具;10A・・・ハンドピース;
1・・・ホルダー;11・・・近位端;12・・・遠位端;13・・・液体流路;
2・・・ディスク;21・・・円盤状振動子;22・・・ホルダー連結部;
23・・・液体流路;24・・・凹凸部;
3・・・キャップ;31…凹凸部;32・・・貫通孔;33・・・溝;
34・・・液体流路;
90・・・ハンドピース本体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11