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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】コントローラおよび照明制御システム
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/12 20200101AFI20240423BHJP
   H05B 47/13 20200101ALI20240423BHJP
   H05B 47/165 20200101ALI20240423BHJP
【FI】
H05B47/12
H05B47/13
H05B47/165
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019132710
(22)【出願日】2019-07-18
(65)【公開番号】P2021018878
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-03-30
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390014546
【氏名又は名称】三菱電機照明株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大澤 祐也
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2014-0132218(KR,A)
【文献】特開2015-060828(JP,A)
【文献】実開平03-054089(JP,U)
【文献】特開2007-012492(JP,A)
【文献】特開2012-221624(JP,A)
【文献】特開2005-317417(JP,A)
【文献】特開昭50-071177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声を検出する音声センサと、
前記音声の周波数、振幅または長さが、予め定められた乳幼児の声に対応する快適ではない感情を示す範囲内のとき、照明器具の点灯状態を第1状態から前記第1状態よりも調光率が高く、20%以下の調光率または3000K以下の色温度である第2状態に変更する演算部と、
を備えることを特徴とするコントローラ
【請求項2】
前記第1状態は、消灯状態であることを特徴とする請求項に記載のコントローラ。
【請求項3】
前記演算部は、前記周波数、前記振幅または前記長さが前記範囲内のとき、前記照明器具の色温度を制御することを特徴とする請求項1または2に記載のコントローラ。
【請求項4】
前記演算部は、前記音声の前記周波数が前記範囲内のとき、前記照明器具の前記点灯状態を変更することを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載のコントローラ。
【請求項5】
前記音声センサが乳幼児の泣き声を検出すると、前記演算部は前記点灯状態を変更することを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載のコントローラ。
【請求項6】
前記演算部は、前記周波数が300Hzよりも高いとき、前記点灯状態を変更することを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載のコントローラ。
【請求項7】
前記演算部は、前記周波数が400Hz以上500Hz以下のとき、前記点灯状態を変更することを特徴とする請求項に記載のコントローラ。
【請求項8】
前記演算部は、前記周波数、前記振幅または前記長さが前記範囲内の前記音声が停止した後、予め定められた保持時間だけ変更後の点灯状態を保持することを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載のコントローラ。
【請求項9】
前記音声に基づく前記点灯状態の制御が行われている期間は、人感センサの検出結果に基づき前記点灯状態は変更されないことを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載のコントローラ。
【請求項10】
人感センサまたは照度センサを備え、
前記演算部は、1日のうち第1制御期間は前記音声に基づき前記点灯状態の制御を行い、前記1日のうち第2制御期間は前記人感センサまたは前記照度センサの検出結果に基づき前記点灯状態を制御することを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載のコントローラ。
【請求項11】
前記第1制御期間は深夜を含むことを特徴とする請求項1に記載のコントローラ。
【請求項12】
前記第2制御期間は昼間を含むことを特徴とする請求項1または1に記載のコントローラ。
【請求項13】
前記範囲は外部の設定器から設定されることを特徴とする請求項1から1の何れか1項に記載のコントローラ。
【請求項14】
前記範囲は、前記音声センサによってサンプリングされた前記音声から決定されることを特徴とする請求項1から1の何れか1項に記載のコントローラ。
【請求項15】
請求項1から1の何れか1項に記載のコントローラと、
前記照明器具と、
を備えることを特徴とする照明制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コントローラおよび照明制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、快適さ向上支援装置が開示されている。この支援装置は、乳幼児の声を分析して乳幼児の感情を判定するとともに、検出された室内環境状況に基づいて室内環境の状況を分析する。そして、支援装置は、乳幼児の感情と室内環境状況とに基づいて家電製品の遠隔制御内容を決定し、遠隔制御内容に相当する赤外線信号の発信制御を行って家電製品の動作を制御する。家電製品はエアコン、テレビ、照明を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-338476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、感情判定用テーブルを基にした感情分析プログラムを用いて、乳幼児の声を音声分析して感情を判定する。これに加えて、室内環境分析プログラム、家電制御プログラム等を使用して、各家電製品が制御される。従って、家電製品の制御が複雑となるおそれがある。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、容易に照明器具を制御できるコントローラおよび照明制御システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るコントローラは、音声を検出する音声センサと、該音声の周波数、振幅または長さが、予め定められた乳幼児の声に対応する快適ではない感情を示す範囲内のとき、照明器具の点灯状態を第1状態から該第1状態よりも調光率が高く、20%以下の調光率または3000K以下の色温度で点灯する第2状態に変更する演算部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るコントローラでは、音声の周波数、振幅または長さが、予め定められた範囲内のとき、照明器具の点灯状態を変更する。従って、容易に照明器具を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る照明制御システムの構成を説明する図である。
図2】実施の形態1に係るコントローラの構成を説明する図である。
図3】実施の形態1に係る音声センサが検出した音声が変換された電気信号を説明する図である。
図4】実施の形態1の第1の変形例に係る照明制御システムの構成を説明する図である。
図5】実施の形態1の第2の変形例に係る照明制御システムの構成を説明する図である。
図6】実施の形態2に係る照明制御システムの動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態に係るコントローラおよび照明制御システムについて図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る照明制御システム100の構成を説明する図である。照明制御システム100は、コントローラ1と、複数の照明器具2とを備える。コントローラ1は、複数の照明器具2と通信線61で接続される。コントローラ1は、複数の照明器具2を制御する。照明制御システム100が備える照明器具2の数は1台以上であれば良い。
【0011】
コントローラ1は、天井などに設置される。コントローラ1は、複数の照明器具2に対して、ON/OFF制御、調光制御または調色制御を行う。コントローラ1と照明器具2は、通信線61を介して有線通信を行う。コントローラ1と照明器具2は、PWM(Pulse Width Modulation)信号による通信またはシリアル通信等を行う。後述するように、コントローラ1と照明器具2は無線通信を行っても良い。
【0012】
照明器具2は、光源と、光源を点灯させる電源を有する。光源は、例えばLED、蛍光ランプ、白熱電球である。照明器具2の電源は、コントローラ1からの信号に応じて光源を点灯させる。照明器具2の電源は、直接コントローラ1からの信号を受信しなくても良い。照明器具2は通信用のアダプタを内蔵し、電源はアダプタを介してコントローラ1からの信号により制御されても良い。
【0013】
また、コントローラ1は、設定器3と無線通信62により通信する。無線通信62は赤外線通信等である。設定器3は、例えばワイヤレスリモコンである。設定器3からの操作指令を受信すると、コントローラ1は操作指令に応じて照明器具2を制御する。これにより、使用者は設定器3を操作することで、容易に照明器具2のON/OFF、調光、調色を実施できる。また、コントローラ1は、設定器3から送信された情報を後述する記憶部1dに記憶する。これにより、使用者は、設定器3から照明器具2の制御に用いられるパラメータを送信することで、コントローラ1にパラメータを設定できる。パラメータは、スケジュール運転のパラメータまたは後述する各種センサのパラメータ等である。
【0014】
図2は、実施の形態1に係るコントローラ1の構成を説明する図である。コントローラ1は演算部1aを備える。演算部1aは照明器具2の制御のための演算を行う。演算部1aは例えばマイコンを備える。
【0015】
コントローラ1は電源生成部1eを備える。電源生成部1eは、外部の商用電源から電力の供給を受け、演算部1aのマイコン等を動作させるための直流電源を生成する。演算部1aは、電源生成部1eから電力を供給され動作する。電源生成部1eは、コントローラ1が有する各種センサ、設定部1b、記憶部1d、調光調色出力部1kに電力を供給しても良い。
【0016】
コントローラ1は設定部1bを備える。設定部1bは、設定器3との通信を行う通信部1cを有する。通信部1cは、赤外線信号の受光部および送信部を含む。使用者が設定器3から、照明器具2のON/OFF、調光または調色の操作指令を送信すると、設定部1bは受光部で操作指令を受信する。設定部1bは、操作指令を操作用データとして演算部1aに通知する。
【0017】
演算部1aは、操作用データに応じた制御データを演算によって算出する。これにより、演算部1aは、調光調色出力部1kに制御データを送信する。調光調色出力部1kは、照明器具2に対して制御データを送信する。調光調色出力部1kは、制御データをアナログのPWM信号またはデジタル信号として送信する。
【0018】
コントローラ1は照度センサ1hを備える。照度センサ1hは、周囲の明るさを検出し、検出データを演算部1aへ通知する。照度センサ1hは、例えば下方の床面または作業面の明るさを検出する。演算部1aは、通知された照度に応じて、適切な調光率または色温度を算出し、調光調色出力部1kに制御データを送信する。
【0019】
照度センサ1hによるフィードバック制御のためのパラメータは、使用者が設定器3から送信することで設定できる。コントローラ1は設定部1bによりパラメータを受信すると、パラメータを記憶部1dに保存する。パラメータは、例えば基準となる明るさ、目標となる明るさ、または、相対制御するための照度値である。演算部1aは、例えば照度センサ1hが検出した明るさに対して、目標となる明るさが実現されるように、照明器具2の調光率を制御する。
【0020】
コントローラ1は人感センサ1jを備える。人感センサ1jは、周囲に人体が存在することを検出する。人感センサ1jは、例えば人感センサ1jの下方に人体が存在することを検出する。人感センサ1jは、人体を検出すると、検出データを演算部1aに通知する。演算部1aは、検出データを予め記憶部1dに保存されたパラメータと照合して、照明器具2の制御データを算出する。制御データは、調光調色出力部1kから照明器具2に送信される。これにより演算部1aは、点灯または調光率を上昇させる制御を行う。
【0021】
また、人感センサ1jが人の不在を検出すると、演算部1aは減光または消灯制御を行う。これにより、人が不在の時に不要な点灯を防止できる。
【0022】
人感センサ1jには、例えば焦電センサを用いることができる。焦電センサは、背景との温度差がある物体が移動することを検出する。また、人感センサ1jは画像センサであっても良い。画像センサは、カメラによって画像を撮影し、基準画像との差異を検出する。画像センサは、画像解析用のアルゴリズムによって、人の移動または滞在状態を検出する。
【0023】
コントローラ1は音声センサ1fを備える。音声センサ1fは音声を検出する。音声センサ1fは、例えば集音用のマイク1gを搭載している。音声センサ1fは、コントローラ1を設置した空間内で発生した音声を検出する。
【0024】
音声センサ1fは、検出した音声を電気信号に変換する。音声センサ1fは、音声の周波数、振幅、長さを電気信号の波形から抽出する。音声センサ1fは音声を電気信号に変換することのみを行っても良い。この場合、電気信号の解析は演算部1aが行っても良い。
【0025】
音声センサ1fは演算部1aに検出データを通知する。検出データは、検出した音声の周波数、振幅、長さ等である。演算部1aは、予め記憶部1dに保存されたパラメータである判定範囲と、検出データとを比較する。演算部1aは、検出データが予め定められた判定範囲内のとき、照明器具2の点灯状態を変更する。このとき、演算部1aは、照明器具2を予め記憶部1dに保存された状態に設定するように、照明器具2に対して調光または調色の制御データを送信する。
【0026】
記憶部1dには、演算部1aの演算に用いられるパラメータが記憶される。記憶部1dは、例えばフラッシュROMである。このため、パラメータは何度も書き換えることが可能である。パラメータは、照度センサ1h、人感センサ1jまたは音声センサ1fの感度であっても良い。また、パラメータは、調光時のフェード値であっても良い。
【0027】
また、設定器3とコントローラ1は、双方向通信が可能であっても良い。設定器3は、コントローラ1にモニタ信号を送信する。コントローラ1は、モニタ信号に応じて、コントローラ1に設定された各種パラメータを設定器3に送信する。これにより、設定器3から現在の設定値を確認できる。
【0028】
次に、音声センサ1fを用いた制御について詳細に説明する。図3は、実施の形態1に係る音声センサ1fが検出した音声が変換された電気信号を説明する図である。音声の周波数は音声の高さを示す。振幅は音声の大きさを示す。音声の長さは、音声の継続時間を示す。音声の長さは、音声の周期であっても良い。
【0029】
ここでは、例えば音声の周波数を用いた制御について説明する。一般に乳幼児の泣き声の周波数は約440Hzである。個人差を考慮しても、泣き声の周波数は一般に400Hz~500Hzである。これに対し、一般男性の声は120Hz~200Hz、一般女性の声は200Hz~300Hzである。従って、乳幼児の泣き声と大人の声は、周波数範囲が明らかに異なると言える。本実施の形態では、この周波数の違いを利用して乳幼児の泣き声を検出し、照明器具2を制御する。なお、乳幼児には、新生児、乳児および幼児が含まれるものとする。
【0030】
具体的には、夜間の就寝時間帯に、乳幼児が空腹または不快感等によって泣いたときに、照明器具2を制御する。音声センサ1fは音声を検出すると、音声を解析し、音声の周波数を演算部1aに送信する。演算部1aは、周波数が判定範囲内であった場合には、乳幼児が泣いているものと判定する。判定範囲は例えば400Hz~500Hzである。
【0031】
このようにして、音声センサ1fが乳幼児の声を検出すると、演算部1aは照明器具2の点灯状態を第1状態から第1状態よりも調光率が高い第2状態に変更する。第1状態は、例えば消灯状態であり、第2状態の調光率は例えば20%である。また、演算部1aは音声の周波数が判定範囲内のとき、照明器具2の色温度を制御しても良い。演算部1aは、照明器具2の色温度を例えば3000Kに設定する。3000Kは、例えば白熱灯の色に対応する。
【0032】
一般に、泣いている乳幼児に対して保育作業を行う際に、保育者が壁スイッチまたはリモコンによって照明器具2の点灯または調光を行うのは、困難である場合がある。保育作業は、例えば授乳、ミルクを飲ませることまたはオムツ交換である。特に、詳細な調光率または色温度の設定を、保育作業の前または保育作業と同時に行うことは、一般に難しい。また、壁スイッチまたはリモコンの操作には、手間および時間がかかり、保育者のストレスになるおそれがある。これに対し本実施の形態では、乳幼児の泣き声を検出することで、最適な照明空間を作り出すことができる。
【0033】
また、演算部1aは、泣き声を検出すると、照明器具2を通常の点灯時よりも低い調光率で点灯させる。また、演算部1aは、泣き声を検出すると、照明器具2を通常の点灯時よりも低い色温度で点灯させる。これにより、乳幼児が泣いた時に、消灯状態から突然明るさが大きく変化することを抑制できる。従って、天井を向いて寝ている乳幼児を更に不快にすることを抑制できる。また、目または脳への悪影響を抑制できる。
【0034】
また、夜間の就寝時間帯においては、保育作業時に乳幼児および保育者は一時的に起きる。このとき、乳幼児および保育者は、完全に覚醒すると、保育作業終了後に再度就寝することが難しくなるおそれがある。このため、低照度、低色温度の環境にて保育作業をすることで、スムーズに再度就寝することが可能になる。
【0035】
また、人感センサ1jが人体の動きを検出することで、照明器具2が点灯する場合、乳幼児または保育者の就寝時の寝返りまたは手足の動きのみで照明器具2が点灯するおそれがある。また、保育者が所用により一時的に起きて移動することで、照明器具2が点灯するおそれがある。このような不要な点灯により、就寝中の乳幼児を刺激して起こすおそれがある。
【0036】
これに対し、本実施の形態では、音声センサ1fが検出した音声に基づく点灯状態の制御が行われている第1制御期間は、人感センサ1jの検出結果に基づき点灯状態は変更されない。従って、人の動きによる不要な点灯動作は実施されず、泣き声のみにより照明器具2を点灯させることができる。音声に基づく点灯状態が行われている第1制御期間は、人感センサ1jが人体の動作の検出を行わないものとしても良い。また、第1制御期間において、人感センサ1jが人体の動作を検出しても、演算部1aが人感センサ1jの検出データに基づき制御を行わないものとしても良い。また、コントローラ1はタイマーを有し、第1制御期間に対応する時刻になると、自動で人感センサ1jの人体の検出機能をオフしても良い。また、第1制御期間において、消灯状態または第1状態のときに、人感センサ1jの検出結果に基づき点灯状態は変更されないものとしても良い。つまり、第1制御期間において、周波数が判定範囲内の音声を演算部1aが検出する前の状態で、人感センサ1jの検出結果に基づき点灯状態は変更されないものとしても良い。
【0037】
また、演算部1aは、周波数が判定範囲内の音声を検出して照明器具2を点灯させた後は、継続してその音声を検出し続けることで、点灯状態を継続させる。また、演算部1aは、周波数が判定範囲内の音声が停止した後、予め定められた保持時間だけ、変更後の点灯状態を保持しても良い。つまり、演算部1aは、泣き声が検出されなくなった後、保持時間の経過後に、照明器具2を消灯させても良い。これにより、乳幼児が再度就寝した後、保育者が手動で消灯する手間を省くことができる。
【0038】
本実施の形態では、演算部1aは、音声の周波数が判定範囲内のとき、照明器具2の点灯状態を変更した。本実施の形態の変形例として、周波数に加えて、音声の振幅または継続時間を判定基準に追加しても良い。つまり、音声センサ1fが検出した音声の振幅または長さが、予め定められた判定範囲内のとき、演算部1aは照明器具2の点灯状態を変更しても良い。音声の周波数、振幅または長さのうち複数を組み合わせて、乳幼児の泣き声を判定することで、誤判定の可能性を低減できる。
【0039】
また、音声の振幅または継続時間のみから乳幼児の泣き声を判定しても良い。一般に就寝時間帯に発せられる大きな音声は、乳幼児の泣き声である可能性が高い。このため、例えば音声センサ1fが検出した音声の振幅が予め定められた値以上の時、演算部1aは音声が乳幼児の泣き声であると判定できる。また、一般に就寝時間帯に一定時間以上継続して発せられる音声は、乳幼児の泣き声である可能性が高い。このため、例えば音声センサ1fが検出した音声の長さが予め定められた値以上の時、演算部1aは音声が乳幼児の泣き声であると判定できる。
【0040】
このように、本実施の形態の照明制御システム100では、検出した音声の周波数、振幅または長さと、判定範囲とを比較し、比較結果に応じて、照明器具2を予め定められた状態に変更すれば良い。このため、音声から感情等を判定して複雑な制御をする必要がない。また、音声センサ1fのみの検出データによって照明器具2を制御すればよく、複数のセンサを用いて室内環境を分析する必要がない。従って、容易に照明器具2を制御できる。また、照明制御システム100を簡易な構成により低コストで構成できる。
【0041】
点灯状態の変更前の第1状態は、消灯状態に限らず、調光率が5%等の低照度の点灯状態であっても良い。また、第2状態は、第1状態よりも調光率が高い状態であれば良い。第2状態の調光率は、例えば20%以下であっても良い。また、第2状態の調光率は、全灯状態よりも低い調光率であっても良い。また、乳幼児が不快になるおそれがなければ、第2状態は全灯状態であっても良い。また、第2状態の色温度は3000K以下であっても良い。第2状態の色温度は、白色LEDまたは太陽光よりも低い色温度であっても良い。第1状態と第2状態の調光率および色温度は、パラメータとして、設定器3から任意に設定できても良い。
【0042】
また、調光率の上昇時および下降時には、調光率をフェード制御しても良い。フェード制御は、調光率を連続的に変化させる制御である。
【0043】
また、本実施の形態では、演算部1aは、音声センサ1fが検出した音声の周波数が400Hz以上500Hz以下のとき、音声が乳幼児の泣き声であると判定し、点灯状態を変更した。これに限らず、周波数の判定範囲は、外部の設定器3からパラメータとして任意に設定できても良い。400Hz以上500Hz以下である判定範囲は、初期設定値として記憶部1dに保存されている。しかし、一般に声の高さには個人差があり、年齢によって変化する。このため、対象となる乳幼児の泣き声に合せて、使用者が任意に判定範囲を調整および設定できても良い。例えば、判定範囲は、一般女性の声よりも高い範囲である300Hzよりも高い周波数に設定されても良い。
【0044】
また、声の振幅および泣き声の長さについても、一般に個人差がある。このため、周波数と同様に、使用者が振幅または長さの判定範囲を調整できても良い。また、使用環境によっては、泣き声に近い音が発生する場合がある。この場合には、その音の周波数等をマスクして、演算部1aがその音を泣き声として検出しないようにしても良い。以上から、乳幼児の泣き声だけを確実に検出することができる。
【0045】
また、音声の周波数、振幅または長さの判定範囲は、音声センサ1fによってサンプリングされた音声から決定されても良い。つまり、音声センサ1fは対象の乳幼児の泣き声をサンプルとして取得する。演算部1aは、対象の乳幼児の泣き声の周波数、振幅および長さを記憶部1dに保存する。演算部1aは、保存された周波数、振幅または長さに基づき、音声の判定を行う。
【0046】
使用者は設定器3によって、音声のサンプリングを実行する。これにより、コントローラ1は一定期間だけサンプル取得モードとなる。サンプル取得モードは、例えば1分間継続する。一定期間内において、音声センサ1fは、検出した音声を解析し、周波数、振幅または長さを抽出し、検出データとして演算部1aに送信する。演算部1aは、検出データから判定範囲を決定する。
【0047】
音声が一定期間に複数回発生した場合、音声センサ1fは、複数の音声についての周波数、振幅または長さの抽出を行い、演算部1aに送信する。演算部1aは、検出データを集計する。演算部1aは、複数の検出データの最大値と最小値から判定範囲を決定しても良い。また、演算部1aは、複数の検出データの平均値を算出し、平均値から任意の変化幅の範囲を判定範囲としてもよい。
【0048】
また、泣き声以外の音声をサンプリングすると、検出データにバラつきが出るおそれがある。このため、乳幼児の泣き声に周波数、振幅、長さが近いサンプリング範囲を設定し、サンプリング範囲内の音声のみについてサンプリングを行っても良い。サンプリング範囲は、設定器3で設定することができる。
【0049】
また、サンプリングによって算出した判定範囲についても、設定器3からモニタできるものとしても良い。これにより、判定範囲を使用者が確認できる。サンプリング機能により、対象の乳幼児の個人差、年齢差または照明制御システム100の設置環境によらず、判定範囲を最適化できる。
【0050】
また、ここではコントローラ1が乳幼児の泣き声に応じて照明器具2を点灯させる例について説明した。これに限らず、本実施の形態は、特定範囲の周波数、振幅または長さを有するあらゆる音声を用いた照明器具2の制御に適用できる。例えば、コントローラ1は、大人の声を検出すると、照明器具2の点灯状態を変更しても良い。この場合も、コントローラ1は、使用者の感情または使用者の発言の内容を解析する必要はなく、使用者が発した声の周波数、振幅または長さが判別できれば良い。従って、照明器具2を容易に制御できる。
【0051】
図4は、実施の形態1の第1の変形例に係る照明制御システム200の構成を説明する図である。コントローラ1と照明器具2間の通信は、無線通信63であっても良い。無線通信63には、無線LAN(Local Area Network)、ZigBee、920MHz帯の特定小電力無線などが採用できる。また、コントローラ1と照明器具2が無線通信63を行う場合、調光調色出力部1kは無線通信用のRFモジュールまたはアンテナを搭載する。調光調色出力部1kはRFモジュールまたはアンテナにより、照明器具2に制御データを送信する。
【0052】
図5は、実施の形態1の第2の変形例に係る照明制御システム300の構成を説明する図である。照明制御システム300は、通信インターフェース4と複数のコントローラ1とを備える。複数のコントローラ1はそれぞれ1つ以上の照明器具2を制御する。複数のコントローラ1と通信インターフェース4は通信線64で接続される。通信インターフェース4と複数のコントローラ1は、無線で接続されても良い。
【0053】
複数のコントローラ1は連動して制御される。コントローラ1は、例えばセンサの検出範囲毎に設置される。複数のコントローラ1同士を接続することで、パラメータまたは運転状態を共有できる。
【0054】
例えば、複数のコントローラ1はグルーピングされる。これにより、設定器3によって1つのコントローラ1に設定した内容が、同じグループの他のコントローラ1にも送信される。従って、同一グループのコントローラ1を同じ設定にすることができる。また、コントローラ1の個別アドレスを指定して、コントローラ1毎に設定を実施しても良い。また、設定器3からコントローラ1の個別アドレスを指定してモニタ信号を送信することで、設定値をモニタすることできる。
【0055】
通信インターフェース4は、図示しない外部装置との間で、コントローラ1に設定されるパラメータの送受信を行う。外部装置は例えばパソコンまたはタブレットである。また、通信インターフェース4は、外部装置からの信号に応じて、コントローラ1に照明器具2のON/OFF、調光、調色などの指令を送信する。
【0056】
使用者は、パソコンまたはタブレットにより、通信インターフェース4を介して、各コントローラ1と通信を行っても良い。パソコンまたはタブレットと通信インターフェース4とは、有線LAN、無線LAN、Bluetooth(登録商標)などの通信手段を用いて通信する。使用者は、パソコンまたはタブレットを用いて各コントローラ1に対して、個別に設定、制御またはモニタを行う。使用者は、複数のコントローラ1をグループ一括で制御しても良い。
【0057】
これらの変形は、以下の実施の形態に係るコントローラおよび照明制御システムについて適宜応用することができる。なお、以下の実施の形態に係るコントローラおよび照明制御システムについては実施の形態1との共通点が多いので、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0058】
実施の形態2.
図6は実施の形態2に係る照明制御システム100の動作を説明する図である。照明制御システム100は、スケジュール運転を行う。演算部1aは、1日のうち就寝中などの第1制御期間は、実施の形態1で説明したように、音声に基づき点灯状態の制御を行う音声検出モードとなる。また、演算部1aは、1日のうち就寝時間帯以外の第2制御期間は、人感センサ1jまたは照度センサ1hの検出結果に基づき点灯状態を制御する検出モードとなる。演算部1aは、タイマーを用いたスケジュール制御によって、動作モードを切替える。
【0059】
本実施の形態では第1制御期間は、22時から翌朝6時までである。また、第2制御期間は、6時から22時までである。第1制御期間および第2制御期間はこれに限らない。例えば、第1制御期間は深夜を含む時間帯であっても良い。また、第2制御期間は昼間を含む時間帯であっても良い。
【0060】
これにより、夜間の第1制御期間には、乳幼児の泣き声に応じて、保育作業のための最低限の照明環境が実現される。図6に示される例では、第1制御期間に3回泣き声の検出が行われ、調光率が20%での点灯が実施されている。
【0061】
第2制御期間には、安全に生活するために必要な明るさが得られる必要がある。図6に示される例では、第1制御期間から第2制御期間に切り替わる朝6時に照明器具2が点灯する。第2制御期間において、照度センサ1hは外光を検出する。時間の経過とともに外光が明るくなる。このため、目標となる明るさに対して、必要な調光率は低下する。従って、6時から時間の経過とともに調光率は低下する。図6の例では、9時頃から15時頃までは外光により十分な明るさが得られるため、調光率は0%となる。
【0062】
15時頃から時間の経過とともに外光が暗くなる。このため、目標となる明るさに対して、必要な調光率が上昇する。従って、15時頃から時間の経過とともに調光率は上昇し、18時頃に朝6時と同様の点灯状態となる。
【0063】
また、第2制御期間において、人感センサ1jは人の存在、不在を検出する。第2制御期間において、人の存在が検出されると照明器具2は点灯状態となる。また、第2制御期間において、人の不在が検出されると、照明器具2は消灯状態となる。また、第2制御期間において、人の不在が検出されると、照明器具2は減光制御されても良い。図6の例では、18時から22時において、人が不在となることで調光率が低下する。
【0064】
記憶部1dには動作モードの切り替え時間が保存される。切り替え時間は、使用者が設定器3などから容易に設定できる。切り替え時間に代えて、第1制御期間および第2制御期間が設定されても良い。これらのパラメータは、使用者の生活パターン等に合わせて、任意に設定できる。
【0065】
また、時間帯毎の目標となる明るさ、人感センサ1jおよび照度センサ1hの制御モードも、パラメータとして自由に設定できる。例えば、第2制御期間において、夜間は昼間と比べて目標となる明るさを暗くしても良い。また、第2制御期間においても、時間帯によっては人感センサ1jによる人の検出を行わなくても良い。また、第2制御期間においても、夜間は照度センサ1hによる照度の検出を行わなくても良い。これらのパラメータは、記憶部1dに保存される。
【0066】
演算部1aは、記憶部1dに保存されたパラメータを参照し、照度センサ1h、人感センサ1jまたは音声センサ1fの検出データに基づき、時刻に合った照明器具2の制御を行う。これにより、昼間は照度センサ1hまたは人感センサ1jを用いた制御で省エネを実現できる。また、夜間には音声センサ1fを用いた制御で、快適な睡眠および効率の良い保育作業を自動で実現できる。
【0067】
本実施の形態で説明した技術的特徴は適宜に組み合わせて用いてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 コントローラ、1a 演算部、1b 設定部、1c 通信部、1d 記憶部、1e 電源生成部、1f 音声センサ、1g マイク、1h 照度センサ、1j 人感センサ、1k 調光調色出力部、2 照明器具、3 設定器、4 通信インターフェース、61 通信線、62、63 無線通信、64 通信線、100、200、300 照明制御システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6