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特許7476495自律走行車両の衝突回避装置、衝突回避方法、衝突回避プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】自律走行車両の衝突回避装置、衝突回避方法、衝突回避プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240423BHJP
   G01S 13/58 20060101ALI20240423BHJP
   G01S 13/931 20200101ALI20240423BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G01S13/58 200
G01S13/931
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019150403
(22)【出願日】2019-08-20
(65)【公開番号】P2021033457
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三嶋 一馬
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/014280(WO,A1)
【文献】特開2018-114774(JP,A)
【文献】特開2018-096747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
G01S 13/58
G01S 13/931
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミリ波を送信し、物体からの反射波を受信するレーダセンサを有する自律走行車両の衝突回避装置であって、
指向方向が異なる複数のレーダセンサと、
前記複数のレーダセンサが受信した信号から、前記物体の位置に関する情報及び前記反射波の反射パワーに関する情報を取得する処理部と、
前記反射パワーが所定値以上の場合に、前記物体から所定の距離に外縁をもつエリアを前記自律走行車両が走行できないエリアである走行不可エリアに設定し、前記走行不可エリアに関する情報を生成する生成部と、
前記走行不可エリアに関する情報を出力する出力部と、
を備え
前記生成部は、前記複数のレーダセンサが夫々受信した信号の中で、前記処理部によって取得される反射パワーが最も小さい信号に基づいて、前記走行不可エリアに関する情報を生成する、
自律走行車両の衝突回避装置。
【請求項2】
前記生成部は、前記反射パワーが大きいほど、前記物体から前記走行不可エリアの外縁までの距離が長くなるように、前記走行不可エリアに関する情報を生成する、
請求項1に記載の自律走行車両の衝突回避装置。
【請求項3】
ミリ波を送信し、物体からの反射波を受信するレーダセンサを有する自律走行車両の衝突回避方法であって、
コンピュータが、
指向方向が異なる複数のレーダセンサが受信した信号を取得することと、
前記複数のレーダセンサが受信した信号から、前記物体の位置に関する情報及び前記反射波の反射パワーに関する情報を取得することと、
前記反射パワーが所定値以上の場合に、前記物体から所定の距離に外縁をもつエリアを前記自律走行車両が走行できないエリアである走行不可エリアに設定し、前記走行不可エリアに関する情報を生成することと、
前記走行不可エリアに関する情報を出力することと、
を実行し、
前記走行不可エリアに関する情報を生成する場合に、前記複数のレーダセンサが夫々受信した信号の中で反射パワーが最も小さい信号に基づいて、前記走行不可エリアに関する情報を生成する、自律走行車両の衝突回避方法。
【請求項4】
ミリ波を送信し、物体からの反射波を受信するレーダセンサを有する自律走行車両の衝突回避プログラムであって、
コンピュータに、
指向方向が異なる複数のレーダセンサが受信した信号を取得することと、
前記複数のレーダセンサが受信した信号から、前記物体の位置に関する情報及び前記反射波の反射パワーに関する情報を取得することと、
前記反射パワーが所定値以上の場合に、前記物体から所定の距離に外縁をもつエリアを前記自律走行車両が走行できないエリアである走行不可エリアに設定し、前記走行不可エリアに関する情報を生成することと、
前記走行不可エリアに関する情報を出力することと、
を実行させ
前記走行不可エリアに関する情報を生成させる場合に、前記複数のレーダセンサが夫々受信した信号の中で反射パワーが最も小さい信号に基づいて、前記走行不可エリアに関する情報を生成させる、自律走行車両の衝突回避プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行車両の衝突回避装置、衝突回避方法、衝突回避プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場や倉庫内で前方の障害物をレーザレーダにより検知しつつ、走行ルートを走行する無人搬送車が知られている。レーザレーダにより検知した障害物の中から、走行ルートにおけるルート幅内に存在する障害物のみを抽出し、抽出した障害物に基づいて無人搬送車を減速させたり、停止させたりする技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平09-026826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来用いられたレーザレーダでは、例えば、二次元平面内に存在する物体を検知可能であるが、三次元空間内に存在する物体の検知が困難な場合があった。これに対して、例えばミリ波レーダを用いることにより、三次元空間内の物体も検知可能となる。しかし、ミリ波レーダでは、例えば、金属壁のように反射波の反射パワーが比較的大きな物体の前方に、反射波の反射パワーが比較的小さな他の物体が存在していると、反射パワーが比較的大きな物体の反射波に、反射パワーが比較的小さな他の物体の反射波が重なってしまい、両者を分離することが困難になり得る。このため、他の物体の検知が困難になり得る。例えば、アンテナ数を増やすことによってミリ波レーダの分離分解能を高めることが考えられるが、アンテナ数を増やすために、レーダシステムの規模が大きくなったり、既存のシステムが使えなくなったりすると、コストが高くなり得る。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、レーダセンサで検知することが困難な物体との衝突を避けることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様の一つは、ミリ波を送信し、物体からの反射波を受信するレーダセンサを有する自律走行車両の衝突回避装置であって、指向方向が異なる複数のレーダセンサと、前記複数のレーダセンサが受信した信号から、前記物体の位置に関する情報及び前記反射波の反射パワーに関する情報を取得する処理部と、前記反射パワーが所定値以上の場合に、前記物体から所定の距離に外縁をもつエリアを前記自律走行車両が走行できないエリアである走行不可エリアに設定し、前記走行不可エリアに関する情報を生成する生成部と、前記走行不可エリアに関する情報を出力する出力部と、を備え、前記生成部は、前記複数のレーダセンサが夫々受信した信号の中で、前記処理部によって取得される反射パワーが最も小さい信号に基づいて、前記走行不可エリアに関する情報を生成する、自律走行車両の衝突回避装置である。
【0007】
この構成によれば、物体からの反射波の反射パワーが所定値以上の場合に、物体の周りに走行不可エリアが設定される。そのため、例えば、反射パワーが大きな物体が検知された場合に、その周りに反射パワーが小さいためにレーダセンサで検知できない他の物体(以下、単に他の物体ともいう。)が存在していても、他の物体が、走行不可エリア内に存在するように走行不可エリアが生成される。そして、自律走行車両(以下、単に車両ともいう。)が走行不可エリアを回避して走行することにより、反射パワーが小さな他の物体を車両が回避できる。なお、所定値とは、例えば、検知された物体の周りに他の物体が存在する場合に、他の物体を検知できない反射パワーまたは他の物体を検知できない虞のあ
る反射パワーである。
【0008】
レーダセンサは、例えばミリ波レーダを利用することができる。レーダの方式は特に限定しないが、例えば、FMCW方式またはパルス方式であってもよい。レーダセンサは、例えば、車両の周りに存在する障害物などの物体からの反射波を受信する。レーダセンサは複数の受信アンテナを備えることができる。複数の受信アンテナを備えるレーダセンサは、三次元空間内の物体の位置を検知可能である。処理部は、レーダセンサが受信した信号に基づいて、物体の位置に関する情報及び反射波の反射パワーに関する情報を取得する。なお、物体の位置に関する情報は、物体を構成する複数の点(点群)の夫々の位置に関する情報として捉えてもよい。そして、反射パワーに関する情報は、夫々の位置に対応する反射パワーに関する情報としてもよい。
【0009】
物体からの反射波の反射パワーは、レーダ方程式から、物体のレーダ反射断面積(RCS: Radar cross-section)と比例関係にある。すなわち、RCSが大きいほど、反射パ
ワーは大きくなる。そして、反射パワーが大きな物体の周りに反射パワーが小さな他の物体が存在していると、反射パワーが小さな他の物体の反射波が、反射パワーが大きな物体の反射波に埋もれてしまい、反射パワーが小さな他の物体を検知することが困難になり得る。そこで、生成部は、反射パワーが所定値以上の物体が検知された場合に、その物体の周りに走行不可エリアを設定する。走行不可エリアは、その物体の周りにその物体よりも反射パワーが小さな他の物体が存在していたとしても、他の物体を検知することが困難なエリアとしてもよい。
【0010】
走行不可エリアに関する情報には、例えば、走行不可エリアを三次元空間上で示す座標情報や、走行不可エリアを示す関数または算出式に関する情報、リンクに関するリンクデータ、または、ノード点に関するノードデータなどを含むことができる。また、走行不可エリアに関する情報には、例えば、走行不可エリアの外縁に仮想の物体が存在しているとの情報を含むことができる。
【0011】
出力部は、走行不可エリアに関する情報を、例えば車両の走行を制御する走行制御部に出力することができる。これにより、走行不可エリアに車両が進入しないように車両を制御できる。したがって、例えば、走行不可エリアに存在する反射パワーが小さな他の物体を車両が避けることができる。
【0012】
また、前記生成部は、前記反射パワーが大きいほど、前記物体から前記走行不可エリアの外縁までの距離が長くなるように、前記走行不可エリアに関する情報を生成してもよい。
【0013】
物体からの反射波の反射パワーが大きいほど、反射パワーが小さな他の物体を検知することが困難になるエリアが広くなり得る。これに対して、物体からの反射波の反射パワーが大きいほど、物体から走行不可エリアの外縁までの距離が長くなるように走行不可エリアを設定することで、他の物体を検知することが困難なエリアの大きさに応じて、走行不可エリアを設定することができる。すなわち、物体からの反射波の反射パワーが大きいほど、走行不可エリアが大きくなるため、検知が困難な他の物体に車両が衝突することを抑制できる。なお、物体から走行不可エリアの外縁までの距離は、反射パワーに応じて連続的に変化させてもよく、反射パワーに応じて段階的に変化させてもよい。また、物体から走行不可エリアの外縁までの距離と、反射パワーとの関係は、比例関係に限らず何らかの相関があればよい。
【0014】
また、指向方向が異なる複数のレーダセンサを有し、前記生成部は、前記複数のレーダセンサが夫々受信した信号の中で、前記処理部によって取得される反射パワーが最も小さ
い信号に基づいて、前記走行不可エリアに関する情報を生成してもよい。
【0015】
指向方向が異なる複数のレーダセンサは、例えば、照射方向が異なる複数のレーダセンサまたは利得が最大となる方向が異なる複数のレーダセンサとしてもよい。このような複数のレーダセンサから送信されるレーダ波によって、同じ物体を検知した場合であっても、送信アンテナから物体に入射するレーダ波の角度がレーダセンサごとに異なるため、各レーダ波に対応する反射パワーが異なる場合がある。すなわち、同じ位置からの反射波の反射パワーが、レーダセンサによって異なる場合がある。ここで、物体からの反射波の反射パワーが小さければ、他の物体を検知できないエリアが小さくなるため、走行不可エリアが小さくなる。そして、反射パワーが最も小さい信号に基づいて走行不可エリアを設定すれば、走行不可エリアを可及的に小さくすることができる。このようにして設定された走行不可エリアの外部に存在する物体は、反射パワーが最も小さい信号を出力したレーダセンサによって検知可能である。
【0016】
本発明の態様の一つは、ミリ波を送信し、物体からの反射波を受信するレーダセンサを有する自律走行車両の衝突回避方法であって、コンピュータが、指向方向が異なる複数のレーダセンサが受信した信号を取得することと、前記複数のレーダセンサが受信した信号から、前記物体の位置に関する情報及び前記反射波の反射パワーに関する情報を取得することと、前記反射パワーが所定値以上の場合に、前記物体から所定の距離に外縁をもつエリアを前記自律走行車両が走行できないエリアである走行不可エリアに設定し、前記走行
不可エリアに関する情報を生成することと、前記走行不可エリアに関する情報を出力することと、を実行し、前記走行不可エリアに関する情報を生成する場合に、前記複数のレーダセンサが夫々受信した信号の中で反射パワーが最も小さい信号に基づいて、前記走行不可エリアに関する情報を生成する、自律走行車両の衝突回避方法である。
【0017】
本発明の態様の一つは、ミリ波を送信し、物体からの反射波を受信するレーダセンサを有する自律走行車両の衝突回避プログラムであって、コンピュータに、指向方向が異なる複数のレーダセンサが受信した信号を取得することと、前記複数のレーダセンサが受信した信号から、前記物体の位置に関する情報及び前記反射波の反射パワーに関する情報を取得することと、前記反射パワーが所定値以上の場合に、前記物体から所定の距離に外縁をもつエリアを前記自律走行車両が走行できないエリアである走行不可エリアに設定し、前記走行不可エリアに関する情報を生成することと、前記走行不可エリアに関する情報を出力することと、を実行させ、前記走行不可エリアに関する情報を生成させる場合に、前記複数のレーダセンサが夫々受信した信号の中で反射パワーが最も小さい信号に基づいて、前記走行不可エリアに関する情報を生成させる、自律走行車両の衝突回避プログラムである。
【0018】
本発明は、上記構成の少なくとも一部を有する自律走行車両の制御装置として捉えてもよい。また、本発明は、上記処理の少なくとも一部を含む制御方法、または、かかる方法を実現するためのプログラムやそのプログラムを非一時的に記録した記録媒体として捉えることもできる。なお、上記構成および処理の各々は可能な限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、レーダセンサで検知することが困難な物体との衝突を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態の車両の概略構成を模式的に示すブロック図である。
図2】レーダセンサの概略構成図である。
図3】制御部の機能構成の一例を示す図である。
図4】実施形態に係る走行不可距離及び走行不可エリアを説明するための図である。
図5】走行不可エリアが設定されない場合を説明するための図である。
図6】実施形態に係る制御部による制御フローを示したフローチャートである。
図7】変形例の車両の概略構成を模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<適用例>
本発明に係る自律走行車両の衝突回避装置の適用例の一つについて説明する。自律走行車両の衝突回避装置は、レーダセンサを利用して、例えば、無人搬送車が障害物などの物体に衝突することを回避する装置である。
【0022】
自律走行車両の衝突回避装置は、レーダセンサからの信号に基づいて反射パワーを取得し、取得した反射パワーが所定値以上の場合に、物体の周りに車両の走行を制限するエリア(走行不可エリア)を設定する。例えば、反射パワーが比較的大きな金属壁の手前に、反射パワーが比較的小さな他の物体が存在している場合には、反射パワーが比較的小さな他の物体の検知が困難になり得るが、本発明に係る自律走行車両の衝突回避装置は、金属壁の周りに他の物体の位置を含む走行不可エリアを設定する。車両は、走行不可エリアに進入しないように制御されるため、反射パワーが比較的小さな他の物体に車両が衝突することを回避できる。
【0023】
<実施形態>
(車両の構成)
図1は、実施形態の車両1の概略構成を模式的に示すブロック図である。本実施形態の車両1は、主な構成として、レーダセンサ11、制御部12、走行制御部13、駆動部14を有している。車両1は、自律的に走行可能な車両であり、例えば、無人搬送車である。車両1は、自律走行車両の一例である。
【0024】
レーダセンサ11は、例えば、ミリ波レーダを用いたレーダセンサである。本実施形態では、レーダの検知方式としてFMCWレーダを例示できるが、検知方式はこれに限らず他の検知方式(例えば、パルスレーダ)を採用することもできる。制御部12は、車両1の周辺に障害物等の物体が存在する場合に、レーダセンサ11から出力される信号を処理することにより、車両1から物体までの距離及び物体の方角を検知する。制御部12は、物体までの距離及び物体の方角に基づいて、その物体の位置(例えば、三次元座標)を算出してもよい。また、制御部12は、走行制御部13に対して物体に関する情報を出力し、走行制御部13は、物体を避けるように駆動部14を制御する。
【0025】
(レーダセンサの構成)
図2は、レーダセンサ11の概略構成図である。レーダセンサ11は、シンセサイザ101、送信アンテナ102、受信アンテナ103、ミキサ104を有している。シンセサイザ101は、チャープ信号を生成する。チャープ信号は、時間と共に周波数が増加または減少する信号である。送信アンテナ102は、チャープ信号にしたがってレーダ波(電波)を送信する。レーダ波は、例えば、車両1の直進方向に指向するように、その照射方向が設定されていてもよい。受信アンテナ103は、送信アンテナ102から送信されたレーダ波が物体で反射した反射波を受信する。なお、受信アンテナ103は複数存在してもよい。本実施形態では、三次元的に物体の位置を検知するために、例えば、水平方向に複数の受信アンテナ103をずらして配置し、且つ、垂直方向に複数の受信アンテナ103をずらして配置してもよい。ミキサ104は、シンセサイザ101により生成されるチャープ信号と、受信アンテナ103により受信された反射波の信号とを組み合わせて、中間周波数信号を生成する。中間周波数信号は、制御部12に出力される。なお、レーダセンサ11から制御部12へは、例えば、物体までの距離、物体の方角、及び、物体からの反射波の反射パワーが算出可能となる情報が出力されればよい。また、レーダセンサ11は、ミキサ104の出力から不要な信号成分を除去するフィルタや、A/D変換器を有していてもよい。
【0026】
(制御部の構成)
次に、制御部12について説明する。制御部12は、物体の検知処理を行うコンピュータであり、例えば、プロセッサ及びメモリを含んで構成される。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)等である。
メモリは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、ハードディスクドライブ(HDD、Hard Disk
Drive)、リムーバブルメディア等である。メモリは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体である。メモリには、各種プログラム等が格納される。メモリに格納されたプログラムをプロセッサが実行し、このプログラムの実行を通じて各構成部等が制御される。これにより、所定の目的に合致した機能を制御部12が実現する。制御部12は複数のコンピュータによって構成されていてもよい。
【0027】
制御部12は、レーダセンサ11からの出力信号を用いて、物体の検知処理を行う。物体の検知処理には、車両1から物体までの距離及び物体の方角の算出を含む。図3は、制御部12の機能構成の一例を示す図である。制御部12は、機能構成要素として、送受信部201、処理部202、判定部203、生成部204、出力部205を含む。送受信部201、処理部202、判定部203、生成部204、出力部205は、例えば、プロセッサが、メモリに記憶された各種プログラムを実行することで提供される機能構成要素である。
【0028】
送受信部201は、レーダセンサ11によるレーダ波の送受信を制御する。送受信部201は、シンセサイザ101からチャープ信号を出力させ、ミキサ104から中間周波数信号を取得する。処理部202は、中間周波数信号等に基づいて、物体の検知処理を行う。処理部202は、送受信部201からの信号に基づいて、物体までの距離及び物体の方角を算出する。また、処理部202は、送受信部201からの信号に基づいて、反射波の反射パワーを算出する。反射パワーは、例えば、受信電力または受信強度としてもよい。これらの算出には、公知の技術を用いることができる。
【0029】
判定部203は、反射波の反射パワーに基づいて、走行不可エリアが存在するか否か判定する。走行不可エリアは、車両1の走行が制限されるエリアとしてもよい。また、走行不可エリアは、物体が存在するか否か判定することが困難なエリアとしてもよい。例えば、判定部203は、物体を検知したときの反射波の反射パワーが所定値以上であるか否か判定し、所定値以上である場合には、走行不可エリアが存在すると判定する。所定値は、物体が存在するか否か判定することが困難なエリアが存在し得る反射パワーの閾値であり、例えば、検知された物体の周りに他の物体が存在する場合に、他の物体を検知できない反射パワーである。所定値は、実験またはシミュレーション等によって得てもよい。なお、所定値にはある程度の余裕を持たせて、他の物体を検知できない反射パワーより小さくしてもよい。
【0030】
生成部204は、走行不可エリアに関する情報を生成する。走行不可エリアに関する情報には、例えば、走行不可エリアの外縁を示す座標に関する情報が含まれる。生成部204は、反射パワーと、メモリに格納されている情報とに基づいて、その物体に対応する走行不可エリアを求める。走行不可エリアを求めるときには、例えば、反射パワーのピーク値を用いる。なお、走行不可エリアは、物体が検知された位置(点)からの走行不可距離に基づいて求めることができる。走行不可距離は、車両1の走行が制限される物体からの最大距離であり、物体から走行不可エリアの外縁までの距離に相当する。反射パワーに対応する走行不可距離に関する情報は、実験またはシミュレーションにより求めてメモリに格納しておいてもよい。なお、走行不可距離は、レーダの分離分解能及び検知誤差を考慮して設定される。すなわち、レーダの分離分解能及び検知誤差によって他の物体を検知することが困難なエリアが変化するため、他の物体を検知することが困難なエリアが走行不可エリアに含まれるように、走行不可距離が設定される。レーダセンサ11の分離分解能
及び検知誤差は、例えば、レーダセンサ11の仕様に基づいて得てもよい。
【0031】
ここで、図4は、本実施形態に係る走行不可距離及び走行不可エリアを説明するための図である。図4は、車両1の正面に金属壁40が存在し、車両1と金属壁40との間の金属壁40付近に金属棒50が存在している場合を例示している。図4に示した例では、車両1の直進方向が金属壁40の壁面と直交している。そのため、レーダ波の指向方向と金属壁40の壁面とが直交している。この場合、金属壁40は、反射波の反射パワーが比較的大きな物体に相当し、金属棒50は、反射波の反射パワーが比較的小さな他の物体に相当する。図4における破線60は、レーダ波によって物体を検知するエリア(監視エリアA1)の外縁を示している。また、図4における矢印61は、金属壁40の各位置62に対応する走行不可距離を示している。レーダセンサ11は、金属壁40の各位置62から夫々反射波を受信している。そのため、金属壁40は、点群として検知される。また、図4における一点鎖線63は、金属壁40の各位置62に対応する走行不可エリアの外縁を示している。
【0032】
図4において、金属壁40はレーダ反射断面積(RCS)が比較的大きく、レーダ波を反射し易いために、レーダセンサ11が受信する反射波の反射パワーは比較的大きい。一方、金属棒50は、金属壁40に比べるとRCSが小さいために、受信する反射波の反射パワーは小さい。レーダセンサ11では、監視エリアA1内にRCSが大きな物体が存在すると、このRCSが大きな物体の近くにあるRCSが小さな他の物体を検知できなくなり得る。すなわち、RCSが大きな物体の反射波に、RCSが小さな他の物体の反射波が埋め込まれて両者を分離できなくなり得る。そのため、金属壁40の手前に存在する金属棒50を検知できない虞がある。このような場合には、金属壁40からの反射波の反射パワーが所定値以上となるため、判定部203において、金属壁40の周りに走行不可エリアが存在すると判定される。
【0033】
そして、生成部204は、金属壁40の周りに走行不可エリアを設定し、走行不可エリアに関する情報を生成する。ここで、図4に示した金属壁40では、車両1の正面において反射パワーが最も大きくなり、正面から左右に離れるほど、レーダ波の金属壁40への入射角度が小さくなるため、反射パワーが小さくなっていく。金属壁40からの反射波の反射パワーが小さくなるにしたがって、他の物体からの反射波を検知しやすくなる。そのため、金属壁40の各位置62に対応する走行不可距離は、車両1の正面において最も長くなり、正面から左右に離れるほど短くなっている。金属壁40の各位置62に対応する走行不可距離は、反射パワー、分離分解能(周波数帯域としてもよい。)、検知誤差と関連性を有することから、反射パワー、分離分解能、検知誤差に応じて走行不可距離を設定してもよい。ただし、分離分解能及び検知誤差は予め求められるため、これらを考慮した反射パワーと走行不可距離との関係を予め求めておけば、反射パワーに応じて走行不可距離を求めることができる。そして、各位置62を中心とした走行不可距離までのエリアを、各位置62に対応する走行不可エリアとして設定する。この場合、金属壁40に対して複数の走行不可エリアが設定される。一方、図4の二点鎖線B1を金属壁40全体としての走行不可エリアA2の外縁として設定してもよい。二点鎖線B1は、金属壁40の各位置62に対応する走行不可エリアの外縁63の接線である。なお、二点鎖線B1は直線である必要はない。
【0034】
一方、図5は、走行不可エリアが設定されない場合を説明するための図である。金属壁40に対して車両1の進行方向が斜めになっている場合は、車両1の進行方向が金属壁40の壁面と直交する場合と比較すると、金属壁40からの反射波の反射パワーが小さくなる。そのため、金属壁40からの反射波と金属棒50からの反射波との分離が可能となり得る。そうすると、金属壁40の手前に存在する金属棒50を処理部202によって検知できる。このような場合には、反射パワーが所定値未満となるため、判定部203におい
て、走行不可エリアが存在しないと判定される。したがって、生成部204による走行不可エリアに関する情報の生成も行われない。
【0035】
次に、出力部205は、走行不可エリアに関する情報を走行制御部13に出力する。出力される情報には、例えば、走行不可エリアの外縁の座標等である。また、出力部205は、検出した物体に関する情報を走行制御部13に出力する。この情報には、例えば、処理部202によって算出された車両1から物体までの距離及び物体の方角に関する情報が含まれていてもよい。
【0036】
(走行制御部の構成)
走行制御部13は、車両1の走行を制御するコンピュータであり、例えば、プロセッサ及びメモリを含んで構成される。なお、プロセッサ及びメモリは、制御部12と同じであるため説明を省略する。なお、制御部12と走行制御部13とは一つのコンピュータによって構成されていてもよい。
【0037】
走行制御部13は、ユーザによって入力された運行計画、及び、出力部205から出力された情報に基づいて、車両1の自律的な走行を制御するための制御指令を生成する。運行計画は、予めメモリに記憶されていてもよい。例えば、走行制御部13は、運行計画にしたがった所定の走行可能エリアに沿って走行し、車両1を中心とする所定の領域内に障害物が進入しないように且つ車両1が走行不可エリアに進入しないように車両1を走行させるべく制御指令を生成する。生成された制御指令は、駆動部14へ送信される。車両1を自律走行させるための制御指令の生成方法については、公知の方法を採用することができる。
【0038】
(駆動部の構成)
駆動部14は、走行制御部13が生成した制御指令に基づいて、車両1を走行させる。駆動部14は、例えば、車両1が備える車輪を駆動するためのモータやインバータ、ブレーキ、ステアリング機構等を含んで構成され、制御指令に従ってこれらの機器が駆動されることで、車両1の自律走行が実現される。
【0039】
(制御部12の動作)
図6は、本実施形態に係る制御部12による制御フローを示したフローチャートである。本フローチャートは、制御部12によって所定時間毎に繰り返し実行される。なお、運行計画は予めメモリに記憶されているものとし、この運行計画にしたがって車両1が動作しているものとする。
【0040】
ステップS101では、送受信部201が、レーダ波の送受信を行う。次に、ステップS102では、処理部202が、物体の検知処理を行う。すなわち、処理部202は、レーダセンサ11からの出力に基づいて物体の位置(距離及び方角)及び反射パワーを算出する。ステップS103では、処理部202が、物体の検知処理によって物体を検知したか否か判定する。ステップS103で肯定判定された場合には、ステップS104へ進み、否定判定された場合にはステップS108へ進む。ステップS108では、出力部205が、物体が検知されなかったことを示す情報を走行制御部13へ出力する。
【0041】
ステップS104では、判定部203が、検知された物体からの反射波の反射パワーが所定値以上であるか否か判定する。すなわち、判定部203は、走行不可エリアが存在するか否か判定する。ステップS104で肯定判定された場合にはステップS105へ進み、否定判定された場合にはステップS107へ進む。
【0042】
ステップS105では、生成部204が、走行不可エリアに関する情報を生成する。生
成部204は、反射パワーと、メモリに格納されている情報(反射パワーに対応する走行不可距離に関する情報等)とに基づいて、その反射パワーが検知された位置からの走行不可距離を取得する。そして、反射パワーが所定値以上の各位置からの走行不可距離を夫々求めることにより、各位置に対応した走行不可エリアを求める。なお、各位置に対応した走行不可距離に基づいて、物体全体に対応する走行不可エリアを算出してもよい。
【0043】
ステップS106では、出力部205が、走行不可エリアに関する情報を走行制御部13に出力する。また、ステップS107では、出力部205が、物体に関する情報を走行制御部13へ出力する。
【0044】
制御部12からの信号を受け取った走行制御部13は、その信号に基づいて車両1の走行を制御する。走行制御部13が物体に関する情報を取得した場合、すなわち、ステップS107において物体に関する情報が出力された場合には、その物体を避けるように車両1の移動方向を変更したり、その物体との接触をさけるように車両1を減速または停止させたりする。また、走行不可エリアに関する情報を取得した場合、すなわち、ステップS106において走行不可エリアに関する情報が出力された場合には、走行不可エリアに車両1が進入しないように、車両1の移動方向を変更したり、車両1を減速または停止させたりする。なお、例えば、車両1が走行可能エリアに沿って走行する場合には、走行可能エリアと走行不可エリアとが重なっている場所は、その分、走行可能エリアが狭くなっているものとして車両1を走行させてもよい。また、物体が検知されていない場合、すなわち、ステップS108において物体が検知されなかったことを示す情報が出力された場合には、運行計画にしたがって車両1を制御する。
【0045】
(実施形態の利点)
以上述べた構成によれば、レーダセンサ11によって物体を検知することにより、水平方向のみならず垂直方向に存在する物体を検知することができる。したがって、例えば、三次元空間に存在する障害物に衝突することを避けることができる。また、物体が検知された場合に、物体からの反射波の反射パワーに基づいて走行不可エリアを設定するため、反射パワーの大きな物体の近くに存在する反射パワーの小さな他の物体であって、検知が困難な物体に車両1が衝突することを回避できる。また、既存のハード構成を用いることが可能であり、コストの削減が可能である。
【0046】
<変形例>
図7は、変形例の車両1の概略構成を模式的に示すブロック図である。本変形例では、レーダ波の指向方向が異なるレーダセンサ11を複数備える。以下では、本変形例に特有の構成を説明し、上記の実施形態と共通する構成については説明を省略する。
【0047】
図4及び図5で説明したように、金属壁40のようなレーダ波を反射しやすい物体であっても、壁面に対してレーダ波が斜め方向から入射することにより、反射波の反射パワーが比較的小さくなる。この場合、金属壁40のすぐ近くに存在する金属棒50を検知することができる。したがって、金属棒50の位置を走行不可エリアに含ませる必要はなく、走行制御部13は、検知された金属棒50を避けるように車両1を走行させればよい。
【0048】
レーダ波の指向方向が異なるレーダセンサ11を複数備える場合には、同じ物体に対して、入射角度が異なる複数のレーダ波が入射し得る。そのため、同じ物体からの反射波の反射パワーが、レーダセンサ11毎に異なる場合があり、したがって、同じ物体に対して設定される走行不可エリアが、レーダセンサ11によって異なる場合がある。本実施形態では、同じ物体(点)を検知した夫々のレーダセンサ11からの信号の中で、反射波の反射パワーが最も小さい信号を選択し、その選択した信号に基づいて、その物体に対応した走行不可エリアを設定する。
【0049】
この場合の処理を図6に基づいて説明すると、ステップS101では、送受信部201が、各レーダセンサ11についてレーダ波の送受信を行う。次に、ステップS102では、処理部202が、各レーダセンサ11からの出力に基づいて物体の位置(距離及び方角)及び反射パワーを算出する。ステップS103では、処理部202が、物体の検知処理によって物体を検知したか否か判定する。この場合、いずれかのレーダセンサ11において物体が検知された場合に、肯定判定してもよい。
【0050】
また、ステップS104では、判定部203が、各レーダセンサ11によって検知された物体からの反射波の反射パワーが、全て所定値以上であるか否か判定する。また、ステップS105では、生成部204が、各レーダセンサ11から出力された信号のうち、反射波の反射パワーが最も小さい信号を選択し、その選択した信号に基づいて、その物体に対応した走行不可エリアに関する情報を生成する。
【0051】
ステップS106では、出力部205が、走行不可エリアに関する情報を走行制御部13に出力する。また、ステップS107では、出力部205が、物体に関する情報を走行制御部13へ出力する。ステップS108では、出力部205が、物体が検知されなかったことを示す情報を走行制御部13へ出力する。
【0052】
このようにして、反射波の反射パワーが最も小さい信号に基づいて走行不可エリアを設定することにより、走行不可エリアが可及的に小さくなる。なお、同じ物体に対して、例えば、反射波パワーが所定値以上の反射波と、所定値未満の反射波とが検知された場合には、走行不可エリアを設定しなくてもよい。
【0053】
以上のように、走行不可エリアを可及的に小さくすることができるため、物体への接触を抑制しつつ、車両1が走行可能なエリアを可及的に広くすることができる。また、不要な車両1の減速や停止が起こることを抑制できる。
【0054】
<その他>
上記実施形態は、本発明の構成例を例示的に説明するものに過ぎない。本発明は上記の具体的な形態には限定されることはなく、その技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。
【0055】
例えば、上記実施形態では、無人搬送車について例示したが、搬送を目的としない自律走行車両に適用してもよい。また、上記実施形態では、車両1が制御部12を有しているが、制御部12の少なくとも一部が車両1の外部に配置されていてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、物体からの反射波の反射パワーに応じて走行不可距離を長くしているが、これに代えて、反射パワーが所定値以上の場合の走行不可距離を一定値としてもよい。この場合、例えば、反射パワーが最も大きい場合を想定して走行不可距離を設定してもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、生成部204が、物体からの反射波の反射パワーに応じて走行不可エリアに関する情報を生成しているが、この情報には、走行不可エリアの外縁(例えば、図4の二点鎖線B1)に仮想の物体が存在していることを示す情報を含むことができる。この場合、走行制御部13は、仮想の物体を避けるように制御指令を生成する。
【0058】
<付記1>
(1)レーダ波を送信し、物体からの反射波を受信するレーダセンサ11を有する自律走行車両の衝突回避装置であって、
前記レーダセンサ11が受信した信号から、前記物体の位置に関する情報及び前記反射波の反射パワーに関する情報を取得する処理部202と、
前記反射パワーが所定値以上の場合に、前記物体の周りのエリアであって前記自律走行車両が走行できないエリアである走行不可エリアに関する情報を生成する生成部204と、
前記走行不可エリアに関する情報を出力する出力部205と、
を備える自律走行車両の衝突回避装置。
【符号の説明】
【0059】
1 車両
11 レーダセンサ
12 制御部
13 走行制御部
14 駆動部
102 送信アンテナ
103 受信アンテナ
201 送受信部
202 処理部
203 判定部
204 生成部
205 出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7