(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】血圧計、血圧計の作動方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/022 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
A61B5/022 400E
A61B5/022 300F
A61B5/022 400C
A61B5/022 400D
A61B5/022 400L
A61B5/022 400M
(21)【出願番号】P 2019195246
(22)【出願日】2019-10-28
【審査請求日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2019149007
(32)【優先日】2019-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100122286
【氏名又は名称】仲倉 幸典
(72)【発明者】
【氏名】江副 美佳
(72)【発明者】
【氏名】澤野井 幸哉
(72)【発明者】
【氏名】山下 新吾
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/168797(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/018029(WO,A1)
【文献】特開昭63-234945(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109893110(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109893111(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血圧測定用カフによって被測定部位としての手首を一時的に圧迫して、オシロメトリック法により血圧測定を行う血圧計であって、
上記血圧測定用カフと一体に設けられた本体と、
血圧測定指示を入力する測定指示入力部
として上記本体の外面に設けられた測定スイッチと、
上記
測定スイッチによって入力された血圧測定指示に応じて血圧測定を行う通常の血圧測定モードと、予め定められたスケジュールに従って血圧測定を自動的に開始する夜間血圧測定モードとの間で、モードを切り替える指示を入力するモード操作部と、
オシロメトリック法による血圧算出のためのアルゴリズムとして、座位用のアルゴリズムと、仰臥位用のアルゴリズムとを記憶しているアルゴリズム記憶部と、
上記モード操作部によって通常の血圧測定モードから夜間血圧測定モードに切り替えられると、オシロメトリック法による血圧算出のためのアルゴリズムを上記座位用のアルゴリズムから上記仰臥位用のアルゴリズムに切り替えて設定する第1切り替え部と、
上記夜間血圧測定モードで、上記予め定められたスケジュールとは別に、上記測定スイッチによって割り込みで血圧測定指示が入力されると、その割り込みの血圧測定指示に応じた血圧測定のために、オシロメトリック法による血圧算出のためのアルゴリズムを上記仰臥位用のアルゴリズムから上記座位用のアルゴリズムに切り替えて設定する第2切り替え部と、
上記血圧測定用カフが加圧過程または減圧過程にあるとき、上記血圧測定用カフの圧力に基づいて、上記オシロメトリック法による血圧算出のために現在設定されているアルゴリズムを使用して血圧値を算出する血圧算出部と
を備えたことを特徴とする血圧計。
【請求項2】
請求項
1に記載の血圧計において、
上記割り込みの血圧測定指示に応じた血圧測定が完了すると、上記スケジュールによって血圧測定が未だ予定されている限り、オシロメトリック法による血圧算出のためのアルゴリズムを上記座位用のアルゴリズムから上記仰臥位用のアルゴリズムに切り替えて設定する第3切り替え部
を備えたことを特徴とする血圧計。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の血圧計において、
上記スケジュールに定められた全ての血圧測定が完了すると、オシロメトリック法による血圧算出のためのアルゴリズムを上記仰臥位用のアルゴリズムから上記座位用のアルゴリズムに切り替えて設定する第4切り替え部
を備えたことを特徴とする血圧計。
【請求項4】
請求項1から
3までのいずれか一つに記載の血圧計において、
上記モード操作部は
、上記本体の外面に設けられたスイッチを含み、
上記本体は、上記アルゴリズム記憶部と、各切り替え部と、上記血圧測定用カフの圧力を制御する圧力制御部と、上記血圧算出部とを搭載している
ことを特徴とする血圧計。
【請求項5】
請求項1に記載の血圧計を作動させる血圧計の作動方法であって、
上記モード操作部によって通常の血圧測定モードから夜間血圧測定モードに切り替えられると、
上記第1切り替え部は、オシロメトリック法による血圧算出のためのアルゴリズムを座位用のアルゴリズムから仰臥位用のアルゴリズムに切り替えて設定し、
上記夜間血圧測定モードで、上記予め定められたスケジュールとは別に、上記測定スイッチによって割り込みで血圧測定指示が入力されると、上記第2切り替え部は、その割り込みの血圧測定指示に応じた血圧測定のために、オシロメトリック法による血圧算出のためのアルゴリズムを上記仰臥位用のアルゴリズムから上記座位用のアルゴリズムに切り替えて設定し、
上記血圧算出部は、上記血圧測定用カフが加圧過程または減圧過程にあるとき、上記血圧測定用カフの圧力に基づいて、上記オシロメトリック法による血圧算出のために現在設定されているアルゴリズムを使用して血圧値を算出する
ことを特徴とする
血圧計の作動方法。
【請求項6】
請求項
5に記載の
血圧計の作動方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は血圧計に関し、より詳しくは、通常の血圧測定モードと夜間(睡眠時)血圧測定モードとを有する血圧計に関する。また、この発明は、そのような血圧計を作動させる血圧計の作動方法に関する。また、この発明は、そのような血圧計の作動方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の血圧計として、例えば特許文献1(国際公開第2018/168797号)には、座位と仰臥位のそれぞれの測定姿勢について血圧計の測定位置が正しいか否かを適切に判定するために、通常の血圧測定モードと夜間血圧測定モードとで測定姿勢判定条件を切り替えるものが開示されている。
【0003】
また、例えば特許文献2(特開2018-153240号公報)には、就寝中を含む測定中に計測した血圧計の高さ情報を用いて血圧値を補正する血圧計が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/168797号
【文献】特開2018-153240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1,2には、手首(前腕)に装着される手首式血圧計に対して、それらの技術を適用することも開示されている。しかしながら、手首式血圧計は位置の自由度が高いことから、就寝中に測定姿勢を正確に計測したり判定したりする処理は安定性が低いという問題がある。
【0006】
そこで、この発明の課題は、通常の血圧測定モードと夜間(睡眠時)血圧測定モードとを有する血圧計において、血圧値を安定して精度良く算出できる血圧計を提供することにある。また、この発明の課題は、そのような血圧計によって血圧を安定して精度良く算出できる血圧計の作動方法を提供することにある。また、この発明の課題は、そのような血圧計の作動方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、この開示の血圧計は、
血圧測定用カフによって被測定部位としての手首を一時的に圧迫して、オシロメトリック法により血圧測定を行う血圧計であって、
上記血圧測定用カフと一体に設けられた本体と、
血圧測定指示を入力する測定指示入力部として上記本体の外面に設けられた測定スイッチと、
上記測定スイッチによって入力された血圧測定指示に応じて血圧測定を行う通常の血圧測定モードと、予め定められたスケジュールに従って血圧測定を自動的に開始する夜間血圧測定モードとの間で、モードを切り替える指示を入力するモード操作部と、
オシロメトリック法による血圧算出のためのアルゴリズムとして、座位用のアルゴリズムと、仰臥位用のアルゴリズムとを記憶しているアルゴリズム記憶部と、
上記モード操作部によって通常の血圧測定モードから夜間血圧測定モードに切り替えられると、オシロメトリック法による血圧算出のためのアルゴリズムを上記座位用のアルゴリズムから上記仰臥位用のアルゴリズムに切り替えて設定する第1切り替え部と、
上記夜間血圧測定モードで、上記予め定められたスケジュールとは別に、上記測定スイッチによって割り込みで血圧測定指示が入力されると、その割り込みの血圧測定指示に応じた血圧測定のために、オシロメトリック法による血圧算出のためのアルゴリズムを上記仰臥位用のアルゴリズムから上記座位用のアルゴリズムに切り替えて設定する第2切り替え部と、
上記血圧測定用カフが加圧過程または減圧過程にあるとき、上記血圧測定用カフの圧力に基づいて、上記オシロメトリック法による血圧算出のために現在設定されているアルゴリズムを使用して血圧値を算出する血圧算出部と
を備えたことを特徴とする。
【0008】
本明細書で、「モード操作部」は、例えば、上記血圧計の本体に設けられたスイッチであって、ユーザによるスイッチオンを指示として受け付けるものでもよいし、または、上記血圧計の外部に存在するスマートフォン等から無線通信を介して指示を受け付ける通信部によって構成されてもよい。
【0009】
「オシロメトリック法による血圧算出のためのアルゴリズム」とは、上記血圧測定用カフが加圧過程または減圧過程にあるときカフ圧から得られた脈波振幅の列に対して包絡線を設定するとともに、上記包絡線の最大値に対して予め定められた割合のスレッシュレベル(収縮期用のスレッシュレベルと拡張期用のスレッシュレベルを含む。)を設定し、上記包絡線がそれらのスレッシュレベルを横切った時点のカフ圧を、それぞれ最高血圧(収縮期血圧)、最低血圧(拡張期血圧)として算出するアルゴリズムを意味する。座位用のアルゴリズムと仰臥位用のアルゴリズムとの相違は、典型的には、上記スレッシュレベルの相違(例えば、上記包絡線の最大値に対する割合の相違、または、或る割合に対するプラスマイナスの数値(オフセット値))として表される。
【0010】
「現在設定されているアルゴリズム」とは、血圧算出部による血圧算出の時点で設定されているアルゴリズムを意味する。
【0011】
この開示の血圧計では、アルゴリズム記憶部が、オシロメトリック法による血圧算出のためのアルゴリズムとして、座位用のアルゴリズムと、仰臥位用のアルゴリズムとを記憶している。上記モード操作部によって通常の血圧測定モードから夜間血圧測定モードに切り替えられると、第1切り替え部は、オシロメトリック法による血圧算出のためのアルゴリズムを上記座位用のアルゴリズムから上記仰臥位用のアルゴリズムに切り替えて設定する。上記夜間血圧測定モードでは、予め定められたスケジュールに従って血圧測定が自動的に開始される。すなわち、予め定められたスケジュールに従って、血圧測定用カフによって被測定部位が一時的に圧迫される。血圧算出部は、上記血圧測定用カフが加圧過程または減圧過程にあるとき、上記血圧測定用カフの圧力に基づいて、上記オシロメトリック法による血圧算出のために現在設定されているアルゴリズム(この時点では、仰臥位用のアルゴリズム)を使用して血圧値を算出する。上記夜間血圧測定モードでは、通常、被験者が仰臥位にあることが期待される。したがって、上記仰臥位用のアルゴリズムを使用することで、血圧値(最高血圧及び最低血圧)を安定して精度良く算出できる。
【0012】
また、この血圧計は、被測定部位としての手首を圧迫するタイプであるから、上腕を圧迫するタイプに比して、被験者の睡眠を妨げる程度が少ないことが期待される(Imai et al., “Development and evaluation of a home nocturnal blood pressure monitoring system using a wrist-cuff device”, Blood Pressure Monitoring 2018, 23,P318-326)。したがって、この血圧計は、夜間(睡眠時)血圧測定に適する。
【0013】
【0014】
上記血圧計が夜間血圧測定モードにある間であっても、上記予め定められたスケジュールとは別に、ユーザが、上記血圧測定用カフと一体に設けられた本体の外面に測定指示入力部として設けられた測定スイッチを押すことによって、割り込みで血圧測定を指示することがある。このとき、被験者は、仰臥位というよりも、むしろ座位にあることが期待される。このため、その血圧測定指示に応じた血圧測定を行う際に、仮にそのまま仰臥位用のアルゴリズムを使用して血圧値を算出すると、測定精度が良くない、という問題が生ずる。そこで、この血圧計では、上記夜間血圧測定モードで、上記予め定められたスケジュールとは別に、上記測定指示入力部としての測定スイッチによって割り込みで血圧測定指示が入力されると、第2切り替え部は、その割り込みの血圧測定指示に応じた血圧測定のために、オシロメトリック法による血圧算出のためのアルゴリズムを上記仰臥位用のアルゴリズムから上記座位用のアルゴリズムに切り替えて設定する。その状態で、上記割り込みの血圧測定指示に応じた血圧測定を行うために、血圧測定用カフによって被測定部位が一時的に圧迫される。血圧算出部は、上記血圧測定用カフが加圧過程または減圧過程にあるとき、上記血圧測定用カフの圧力に基づいて、上記オシロメトリック法による血圧算出のために現在設定されているアルゴリズム(この時点では、座位用のアルゴリズム)を使用して血圧値を算出する。上記夜間血圧測定モードであっても、上記測定指示入力部としての測定スイッチによって割り込みで血圧測定指示が入力されたとき、上述のように、被験者は、仰臥位というよりも、むしろ座位にあることが期待される。したがって、上記座位用のアルゴリズムを使用することで、血圧値(最高血圧及び最低血圧)を安定して精度良く算出できる。したがって、この一実施形態の血圧計によれば、上記夜間血圧測定モードで、予め定められたスケジュールとは別に、割り込みの血圧測定指示に応じた血圧測定を行う際に、血圧値を安定して精度良く算出できる。
【0015】
一実施形態の血圧計では、上記割り込みの血圧測定指示に応じた血圧測定が完了すると、上記スケジュールによって血圧測定が未だ予定されている限り、オシロメトリック法による血圧算出のためのアルゴリズムを上記座位用のアルゴリズムから上記仰臥位用のアルゴリズムに切り替えて設定する第3切り替え部を備えたことを特徴とする。
【0016】
この一実施形態の血圧計では、上記血圧測定指示に応じた血圧測定が完了すると、第3切り替え部は、上記スケジュールによって血圧測定が未だ予定されている限り、オシロメトリック法による血圧算出のためのアルゴリズムを上記座位用のアルゴリズムから上記仰臥位用のアルゴリズムに切り替えて設定する。したがって、上記割り込みの血圧測定指示に応じた血圧測定が完了した後、上記スケジュールに従って血圧測定が自動的に開始される。すなわち、上記スケジュールに従って、血圧測定用カフによって被測定部位が一時的に圧迫される。血圧算出部は、上記血圧測定用カフが加圧過程または減圧過程にあるとき、上記血圧測定用カフの圧力に基づいて、上記オシロメトリック法による血圧算出のために現在設定されているアルゴリズム(この時点では、仰臥位用のアルゴリズム)を使用して血圧値を算出する。上記夜間血圧測定モードでは、上述のように、通常、被験者が仰臥位にあることが期待される。したがって、上記割り込みの血圧測定指示に応じた血圧測定が完了した後、上記仰臥位用のアルゴリズムを使用することで、血圧値(最高血圧及び最低血圧)を安定して精度良く算出できる。
【0017】
一実施形態の血圧計では、上記スケジュールに定められた全ての血圧測定が完了すると、オシロメトリック法による血圧算出のためのアルゴリズムを上記仰臥位用のアルゴリズムから上記座位用のアルゴリズムに切り替えて設定する第4切り替え部を備えたことを特徴とする。
【0018】
この一実施形態の血圧計では、上記スケジュールに定められた全ての血圧測定が完了すると、第4切り替え部は、オシロメトリック法による血圧算出のためのアルゴリズムを上記仰臥位用のアルゴリズムから上記座位用のアルゴリズムに切り替えて設定する。したがって、上記夜間血圧測定モードの終了後、例えば通常の血圧測定モードをデフォルトで開始する際に、血圧算出部は、上記オシロメトリック法による血圧算出のために座位用のアルゴリズムを使用して血圧値を算出することができる。したがって、通常の血圧測定モードでの血圧算出を正しく実行することができる。
【0019】
一実施形態の血圧計では、
上記モード操作部は、上記本体の外面に設けられたスイッチを含み、
上記本体は、上記アルゴリズム記憶部と、各切り替え部と、上記血圧測定用カフの圧力を制御する圧力制御部と、上記血圧算出部とを搭載している
ことを特徴とする。
【0020】
ここで、「圧力制御部」は、例えば、上記血圧測定用カフに加圧用の流体を供給するポンプ、上記血圧測定用カフから流体を排気させる弁、これらのポンプ・弁などを駆動・制御する要素を含む。
【0021】
この一実施形態の血圧計は、手首式血圧計として一体かつコンパクトに構成され得る。したがって、ユーザによる取り扱いが便利になる。
【0022】
別の局面では、この開示の血圧計の作動方法は、
上記血圧計を作動させる血圧計の作動方法であって、
上記モード操作部によって通常の血圧測定モードから夜間血圧測定モードに切り替えられると、上記第1切り替え部は、オシロメトリック法による血圧算出のためのアルゴリズムを座位用のアルゴリズムから仰臥位用のアルゴリズムに切り替えて設定し、
上記夜間血圧測定モードで、上記予め定められたスケジュールとは別に、上記測定スイッチによって割り込みで血圧測定指示が入力されると、上記第2切り替え部は、その割り込みの血圧測定指示に応じた血圧測定のために、オシロメトリック法による血圧算出のためのアルゴリズムを上記仰臥位用のアルゴリズムから上記座位用のアルゴリズムに切り替えて設定し、
上記血圧算出部は、上記血圧測定用カフが加圧過程または減圧過程にあるとき、上記血圧測定用カフの圧力に基づいて、上記オシロメトリック法による血圧算出のために現在設定されているアルゴリズムを使用して血圧値を算出する
ことを特徴とする。
【0023】
この血圧計の作動方法によれば、上記夜間血圧測定モードで、予め定められたスケジュールとは別に、割り込みの血圧測定指示に応じた血圧測定を行う際に、血圧値を安定して精度良く算出できる。
【0024】
さらに別の局面では、この開示のプログラムは、上記血圧計の作動方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0025】
この開示のプログラムをコンピュータに実行させることによって、上記血圧計の作動方法を実施することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上より明らかなように、この開示の血圧計および血圧計の作動方法によれば、上記通常の血圧測定モードと上記夜間(睡眠時)血圧測定モードとを有する血圧計において、血圧値を安定して精度良く算出できる。また、この開示のプログラムによれば、そのような血圧計の作動方法をコンピュータに実行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】この発明の一実施形態の手首式血圧計の外観を示す図である。
【
図3】上記血圧計が被測定部位としての左手首に装着された態様を示す図である。
【
図5】上記血圧計によって通常の血圧測定モードで血圧測定を行う際の動作フローを示す図である。
【
図6】上記血圧計によって夜間血圧測定モードで血圧測定を行う際の動作フローを示す図である。
【
図7】
図7(A)は,血圧測定に伴うカフ圧PCの時間経過を示す図である。
図7(B)は、血圧測定に伴う脈波信号SMの時間経過を示す図である。
図7(C)は、上記脈波信号SMがなす脈波振幅の列に対して設定された包絡線ENVを示す図である。
【
図8】夜間血圧測定モードでの血圧算出の仕方を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0029】
(血圧計の構成)
図1は、この発明の一実施形態の手首式血圧計100の外観を示している。この血圧計100は、大別して、被測定部位としての左手首90(後述の
図3参照)に装着されるべき血圧測定用カフ20と、このカフ20に一体に取り付けられた本体10とを備えている。
【0030】
カフ20は、手首式血圧計用の一般的なものであり、左手首90を周方向に沿って取り巻くように細長い帯状の形状を有している。このカフ20内には、左手首90を圧迫するための流体袋22(
図2参照)が内包されている。なお、カフ20を常時環状に維持するために、カフ20内に、適度な可撓性を有するカーラが設けられてもよい。
【0031】
図3に示すように、本体10は、帯状のカフ20の長手方向に関して略中央の部位に、一体に取り付けられている。この例では、本体10が取り付けられた部位は、装着状態で左手首90の掌側面(手の平側の面)90aに対応することが予定されている。
【0032】
本体10は、カフ20の外周面に沿った偏平な略直方体状の形状を有している。この本体10は、ユーザ(この例では、被験者を指す。以下同様。)の睡眠の邪魔にならないように、小型で、薄厚に形成されている。また、本体10のコーナー部にはアールが施されている(角が丸くされている。)。
【0033】
図1に示すように、本体10の外面のうち左手首90から最も遠い側の面(頂面)には、表示画面をなす表示器50と、ユーザからの指示を入力するための操作部52とが設けられている。
【0034】
表示器50は、この例では、LCD(Liquid Crystal Display;液晶ディスプレイ)からなり、後述のCPU(Central Processing Unit;中央演算処理装置)110からの制御信号に従って所定の情報を表示する。この例では、最高血圧(単位;mmHg)、最低血圧(単位;mmHg)、脈拍(単位;拍/分)を表示するようになっている。なお、表示器50は、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイからなっていてもよいし、LED(Light Emitting Diode;発光ダイオード)を含んでいてもよい。
【0035】
操作部52は、ユーザによる指示に応じた操作信号を後述のCPU110に入力する。この例では、操作部52は、ユーザによる血圧測定指示を受け付けるための測定指示入力部としての測定スイッチ52Aと、通常の血圧測定モードと夜間血圧測定モードとの間でモードを切り替える指示を受け付けるためのモード操作部としての夜間測定スイッチ52Bとを含んでいる。ここで、「通常の血圧測定モード」とは、測定スイッチ52Aによって血圧測定指示が入力されると、その血圧測定指示に応じて血圧測定を行うモードを意味する。「夜間血圧測定モード」とは、ユーザが睡眠中に血圧値を測定することができるように、予め定められたスケジュールに従って血圧測定が自動的に開始されるモードを意味する。予め定められたスケジュールとは、例えば深夜1時、2時、3時などの定刻に測定する計画や、夜間測定スイッチ52Bが押されてから例えば2時間毎に1回測定する計画などを指す。
【0036】
具体的には、この例では、測定スイッチ52A、夜間測定スイッチ52Bは、いずれもモーメンタリタイプ(自己復帰タイプ)のスイッチであり、押し下げられている間だけオン状態になり、離されるとオフ状態に戻る。
【0037】
血圧計100が通常の血圧測定モードにある間に測定スイッチ52Aが一旦押し下げられると、それは血圧測定指示を意味し、カフ20によって被測定部位(左手首90)が一時的に圧迫されて、オシロメトリック法により血圧測定が実行される。血圧測定中(例えば、カフ20の加圧中)に測定スイッチ52Aが再び押し下げられると、それは血圧測定停止の指示を意味し、直ちに血圧測定が停止される。
【0038】
血圧計100が通常の血圧測定モードにある間に夜間測定スイッチ52Bが一旦押し下げられると、それは夜間血圧測定モードへの移行の指示を意味し、血圧計100は通常の血圧測定モードから夜間血圧測定モードへ移行する。夜間血圧測定モードでは、上述のように、予め定められたスケジュールに従ってオシロメトリック法による血圧測定が自動的に開始される。血圧計100が夜間血圧測定モードにある間に夜間測定スイッチ52Bが再び押し下げられると、それは夜間血圧測定モード停止の指示を意味し、血圧計100は夜間血圧測定モードから通常の血圧測定モードへ移行する。
【0039】
血圧計100が夜間血圧測定モードにある間であっても、上記予め定められたスケジュールとは別に、ユーザが、測定スイッチ52Aを押すことによって、割り込みで血圧測定を指示することがある。そのときは、その割り込みの血圧測定指示に応じて、カフ20によって被測定部位(左手首90)が一時的に圧迫されて、オシロメトリック法により血圧測定が実行される。
【0040】
【0041】
カフ20は、既述のように被測定部位としての左手首90を圧迫するための流体袋22を含んでいる。この流体袋22と本体10とは、エア配管39によって流体流通可能に接続されている。
【0042】
本体10は、既述の表示器50と操作部52とに加えて、制御部としてのCPU110と、記憶部としてのメモリ51と、電源部53と、圧力センサ31と、ポンプ32と、弁33とを搭載している。さらに、本体10は、圧力センサ31の出力をアナログ信号からデジタル信号へ変換するA/D変換回路310と、ポンプ32を駆動するポンプ駆動回路320と、弁33を駆動する弁駆動回路330とを搭載している。圧力センサ31、ポンプ32、および弁33は、エア配管39を通して共通に、流体袋22に対して流体流通可能に接続されている。
【0043】
メモリ51は、血圧計100を制御するためのプログラム、血圧計100を制御するために用いられるデータ、血圧計100の各種機能を設定するための設定データ、および血圧値の測定結果のデータなどを記憶する。また、メモリ51は、プログラムが実行されるときのワークメモリなどとして用いられる。特に、この例では、メモリ51は、アルゴリズム記憶部として働いて、オシロメトリック法による血圧算出のためのアルゴリズムとして、座位用のアルゴリズムと、仰臥位用のアルゴリズムとを記憶している。
【0044】
ここで、「座位」とは、
図4Aに示すように、左手首90に血圧計100を装着したユーザ80が椅子97などに座り、左肘をテーブル98に着いて左手首90を体幹に対して前方で斜め(手が上、肘が下)に挙げることにより、左手首90(および血圧計100)を心臓81の高さレベルに維持した姿勢を意味する。この姿勢は、ユーザ80の左手首90と心臓81との間の高低差を無くせるので、血圧測定精度を高めるために推奨される。一方、「仰臥位」とは、
図4Bに示すように、左手首90に血圧計100を装着したユーザ80が、左肘を伸ばし体幹に沿わせた状態で、水平な床面99などに仰向けに横たわった姿勢を意味する。この姿勢では、ユーザ80の左手首90(および血圧計100)と心臓81との間の高低差ΔHが生ずる(左手首90の高さよりも心臓81の高さが高い)ため、血圧測定値のずれが生ずる。また、座位(
図4A)では左肘が曲げられているのに対して仰臥位(
図4B)では左肘が伸ばされているため、左肘の屈伸のせいで血圧測定値のずれが生ずる可能性もある。このような座位での血圧測定値に対する仰臥位での血圧測定値のずれを解消するため、座位で血圧測定する場合の血圧算出アルゴリズムに対して、仰臥位で血圧測定する場合の血圧算出アルゴリズムを変更するのが望ましい。この理由から、この例では、メモリ51は、オシロメトリック法による血圧算出のためのアルゴリズムとして、座位用のアルゴリズムと、仰臥位用のアルゴリズムとを記憶している。それらの座位用のアルゴリズムと仰臥位用のアルゴリズムを使用した具体的な血圧算出の仕方については、後述する。
【0045】
図2中に示すCPU110は、この血圧計100全体の動作を制御する。具体的には、CPU110は、メモリ51に記憶された血圧計100を制御するためのプログラムに従って圧力制御部として働いて、操作部52からの操作信号に応じて、ポンプ32や弁33を駆動する制御を行う。また、CPU110は、血圧算出部として働いて、オシロメトリック法による血圧算出のためのアルゴリズムを使用して血圧値を算出し、表示器50およびメモリ51を制御する。
【0046】
電源部53は、この例では2次電池からなり、CPU110、圧力センサ31、ポンプ32、弁33、表示器50、メモリ51、A/D変換回路310、ポンプ駆動回路320、および弁駆動回路330の各部に電力を供給する。
【0047】
ポンプ32は、カフ20に内包された流体袋22内の圧力(カフ圧)を加圧するために、エア配管39を通して流体袋22に流体としての空気を供給する。弁33は、エア配管39を通して流体袋22の空気を排出し、または流体袋22に空気を封入してカフ圧を制御するために開閉される。ポンプ駆動回路320は、ポンプ32をCPU110から与えられる制御信号に基づいて駆動する。弁駆動回路330は、弁33をCPU110から与えられる制御信号に基づいて開閉する。
【0048】
圧力センサ31とA/D変換回路310は、カフの圧力を検出する圧力検出部として働く。圧力センサ31は、この例ではピエゾ抵抗式圧力センサであり、エア配管39を通して、カフ20に内包された流体袋22内の圧力(カフ圧)をピエゾ抵抗効果による電気抵抗として出力する。A/D変換回路310は、圧力センサ31の出力(電気抵抗)をアナログ信号からデジタル信号へ変換してCPU110に出力する。この例では、CPU110は、圧力センサ31からの電気抵抗に応じた周波数で発振する発振回路として働いて、その発振周波数に応じて、カフ圧を表す信号を取得する。
【0049】
(
血圧計の作動方法)
図5は、ユーザが血圧計100によって通常の血圧測定モードで血圧測定を行う際の動作フローを示している。なお、この例では、電源オフ状態で測定スイッチ52Aが例えば3秒間以上連続して押されると、電源がオンして、デフォルトで通常の血圧測定モードになる。
【0050】
図4Aに示したように、左手首90に血圧計100を装着したユーザ80が、座位の姿勢をとっているものとする。
【0051】
この状態で、
図5のステップS1に示すように、ユーザが本体10に設けられた測定スイッチ52Aを押し下げて血圧測定指示を入力すると、CPU110は、圧力センサ31を初期化する(ステップS2)。具体的には、CPU110は、処理用メモリ領域を初期化するとともに、ポンプ32をオフ(停止)し、弁33を開いた状態で、圧力センサ31の0mmHg調整(大気圧を0mmHgに設定する。)を行う。
【0052】
次に、CPU110は、弁駆動回路330を介して弁33を閉じ(ステップS3)、続いて、ポンプ駆動回路320を介してポンプ32をオン(起動)して、カフ20(流体袋22)の加圧を開始する(ステップS4)。このとき、CPU110は、ポンプ32からエア配管39を通して流体袋22に空気を供給しながら、圧力センサ31の出力に基づいて、
図7(A)に示すように、流体袋22内の圧力であるカフ圧PCの加圧速度を制御する。
【0053】
次に、
図5のステップS5で、CPU110は血圧算出部として働いて、この時点で取得されている脈波信号SM(圧力センサ31の出力に含まれた脈波による変動成分)(
図7(B)参照)に基づいて、メモリ51に記憶されている座位用のアルゴリズムを使用して血圧値(最高血圧(収縮期血圧)と最低血圧(拡張期血圧))の算出を試みる。
【0054】
この時点で、データ不足のために未だ血圧値を算出できない場合は(ステップS6でNo)、カフ圧PCが上限圧力(安全のために、例えば300mmHgというように予め定められている。)に達していない限り、ステップS4~S6の処理を繰り返す。
【0055】
ここで、CPU110は、次のようにして血圧値を算出する。すなわち、カフ20が加圧過程にあるときカフ圧PCから得られた、
図7(B)に示す脈波信号SMがなす脈波振幅(ピーク・ツゥ・ピーク)の列に対して、
図7(C)に示すような包絡線ENVを設定する。これとともに、包絡線ENVの最大値AmpMaxに対して、座位用に予め定められた割合α
dia,α
sysの2つのスレッシュレベルTHD1,THS1を設定する。THD1は、拡張期血圧用のスレッシュレベルであり、THD1=α
dia×AmpMaxとして設定される。また、THS1は、収縮期血圧用のスレッシュレベルであり、THS1=α
sys×AmpMaxとして設定される。一例として、α
dia=0.75であり、また、α
sys=0.4である(すなわち、THD1=0.75×AmpMaxとして設定され、また、THS1=0.4×AmpMaxとして設定される。)。そして、包絡線ENVがそれらのスレッシュレベルTHD1,THS1を横切った時点のカフ圧PCを、
図7(A)に示すように、それぞれ最低血圧(拡張期血圧)BPdia1、最高血圧(収縮期血圧)BPsys1として算出する。
【0056】
このようにして血圧値の算出ができたら(ステップS6でYes)、CPU110は、ポンプ32をオフし(ステップS7)、弁33を開いて(ステップS8)、カフ20(流体袋22)内の空気を排気する制御を行う。
【0057】
この後、CPU110は、算出した血圧値を表示器50へ表示し(ステップS9)、血圧値をメモリ51へ保存する制御を行う。
【0058】
図6は、ユーザが血圧計100によって夜間血圧測定モードで血圧測定を行う際の動作フローを示している。このフロー開始時に、血圧計100は、通常の血圧測定モードにあるものとする。
【0059】
図6のステップS11に示すように、ユーザが本体10に設けられた夜間測定スイッチ52Bを押し下げると、血圧計100は通常の血圧測定モードから夜間血圧測定モードへ移行する。この例では、夜間血圧測定モードでは、夜間測定スイッチ52Bが押されてから、例えば午前7時まで、2時間毎に1回測定するスケジュールが定められているものとする。なお、このスケジュールに限られるものではなく、夜間測定スイッチ52Bが押されてから、例えば午前7時まで、午前1時、2時、3時などの定刻に測定するスケジュールが定められていてもよい。
【0060】
夜間血圧測定モードへの移行に伴って、ステップS12に示すように、CPU110は第1切り替え部として働いて、オシロメトリック法による血圧算出のためのアルゴリズムを座位用のアルゴリズムから仰臥位用のアルゴリズムに切り替えて設定する。
【0061】
具体的には、
図8中に示すように、拡張期血圧用のスレッシュレベルをTHD1からTHD2に切り替えて設定し、また、収縮期血圧用のスレッシュレベルTHS1からTHS2に切り替えて設定する。ここで、THD2=0.6×AmpMaxとして設定され、また、THS2=0.5×AmpMaxとして設定される。このことは、包絡線ENVの最大値AmpMaxに対する割合α
diaを座位用の0.75から仰臥位用の0.6に変更し、また、包絡線ENVの最大値AmpMaxに対する割合α
sysを座位用の0.4から仰臥位用の0.5に変更したことに相当する。これらの割合α
dia,α
sysの変更は、座位(
図4A)での血圧測定値に対する仰臥位(
図4B)での血圧測定値のずれを解消するためのものである。
【0062】
なお、メモリ51は、座位用のアルゴリズムと仰臥位用のアルゴリズムのうち、現在設定されているアルゴリズムを示すフラグを備えるのが望ましい。その場合、CPU110は、そのフラグを参照することによって、現在設定されているアルゴリズムを簡単に認識できる。
【0063】
次に、
図6のステップS13に示すように、CPU110は、(夜間血圧測定モードの)スケジュールで定められた測定時刻であるか否かを判断する。スケジュールで定められた測定時刻でなければ(ステップS13でNo)、測定スイッチ52Aが押し下げられない限り、スケジュールで定められた測定時刻になるのを待つ(ステップS25でNo)。
【0064】
上記スケジュールで定められた測定時刻になると(ステップS13でYes)、CPU110は、
図6のステップS14~S16に示すように、
図5のステップS2~S4におけるのと同様に血圧測定を開始する。すなわち、CPU110は、まず、圧力センサ31を初期化する(ステップS14)。
【0065】
次に、CPU110は、弁駆動回路330を介して弁33を閉じ(ステップS15)、続いて、ポンプ駆動回路320を介してポンプ32をオン(起動)して、カフ20(流体袋22)の加圧を開始する(ステップS16)。このとき、CPU110は、
図7(A)に示したのと同様に、カフ圧PCの加圧速度を制御する。
【0066】
次に、
図6のステップS17で、CPU110は血圧算出部として働いて、この時点で取得されている脈波信号SM(圧力センサ31の出力に含まれた脈波による変動成分)(
図7(B)に示したのと同様)に基づいて、現在設定されているアルゴリズム(この時点では、仰臥位用のアルゴリズム)を使用して血圧値(最高血圧(収縮期血圧)と最低血圧(拡張期血圧))の算出を試みる。
【0067】
この時点で、データ不足のために未だ血圧値を算出できない場合は(ステップS18でNo)、カフ圧PCが上限圧力(安全のために、例えば300mmHgというように予め定められている。)に達していない限り、ステップS16~S18の処理を繰り返す。
【0068】
ここで、CPU110は、次のようにして血圧値を算出する。すなわち、カフ20が加圧過程にあるときカフ圧PCから得られた、脈波信号SMがなす脈波振幅(ピーク・ツゥ・ピーク)の列に対して、
図8に示すような包絡線ENV(
図7(C)に示したのと同様)を設定する。そして、包絡線ENVが現在設定されている仰臥位用のスレッシュレベルTHD2(=0.6×AmpMax)、THS2(=0.5×AmpMax)を横切った時点のカフ圧PCを、それぞれ最低血圧(拡張期血圧)BPdia2、最高血圧(収縮期血圧)BPsys2として算出する。
【0069】
夜間血圧測定モードでは、通常、ユーザが仰臥位にあることが期待される。したがって、仰臥位用のアルゴリズムを使用することで、血圧値(最高血圧及び最低血圧)を安定して精度良く算出できる。
【0070】
このようにして血圧値の算出ができたら(ステップS18でYes)、CPU110は、ポンプ32をオフし(ステップS19)、弁33を開いて(ステップS20)、カフ20(流体袋22)内の空気を排気する制御を行う。
【0071】
この後、CPU110は、算出した血圧値を表示器50へ表示し(ステップS21)、血圧値をメモリ51へ保存する制御を行う。
【0072】
このようにして上記スケジュールで定められた1回の血圧測定が完了すると、ステップS22で、CPU110は、上記スケジュールで定められた全ての血圧測定が完了したか否かを判断する。ここで、上記スケジュールによって血圧測定が未だ予定されている限り(ステップS22で「未完」)、現在設定されているアルゴリズムは仰臥位用のアルゴリズムであることから(ステップS23でNo)、そのままステップS13に戻る。そして、上記スケジュールで定められた次回の測定時刻になるのを待つ(ステップS13でNo、ステップS25でNo)。
【0073】
上記スケジュールで定められた次回の測定時刻になると(ステップS13でYes)、CPU110は、ステップS14~S21の処理を繰り返す。さらに、ステップS22で、CPU110は、上記スケジュールで定められた全ての血圧測定が完了したか否かを判断し、上記スケジュールによって血圧測定が未だ予定されている限り(ステップS22で「未完」)、そのままステップS13に戻る(ステップS23でNo)。そして、上記スケジュールで定められた次回の測定時刻になるのを待つ(ステップS13でNo、ステップS25でNo)。
【0074】
さて、血圧計100が夜間血圧測定モードにある間であっても、上記予め定められたスケジュールとは別に、ユーザが、測定スイッチ52Aを押し下げることによって、割り込みで血圧測定を指示することがある(ステップS25でYes)。このとき、ユーザは、仰臥位というよりも、むしろ座位にあることが期待される。そこで、CPU110は第2切り替え部として働いて、オシロメトリック法による血圧算出のためのアルゴリズムを仰臥位用のアルゴリズムから座位用のアルゴリズムに切り替えて設定する(ステップS26)。
【0075】
続いて、CPU110は、ステップS14~S16に示すように、その割り込みの血圧測定指示に応じた血圧測定を開始する。すなわち、CPU110は、まず、圧力センサ31を初期化する(ステップS14)。
【0076】
次に、CPU110は、弁駆動回路330を介して弁33を閉じ(ステップS15)、続いて、ポンプ駆動回路320を介してポンプ32をオン(起動)して、カフ20(流体袋22)の加圧を開始する(ステップS16)。このとき、CPU110は、
図7(A)に示したのと同様に、カフ圧PCの加圧速度を制御する。
【0077】
次に、
図6のステップS17で、CPU110は血圧算出部として働いて、この時点で取得されている脈波信号SM(圧力センサ31の出力に含まれた脈波による変動成分)(
図7(B)に示したのと同様)に基づいて、現在設定されているアルゴリズム(この時点では、座位用のアルゴリズム)を使用して血圧値(最高血圧(収縮期血圧)と最低血圧(拡張期血圧))の算出を試みる。
【0078】
この時点で、データ不足のために未だ血圧値を算出できない場合は(ステップS18でNo)、カフ圧PCが上限圧力(安全のために、例えば300mmHgというように予め定められている。)に達していない限り、ステップS16~S18の処理を繰り返す。
【0079】
ここで、CPU110は、次のようにして血圧値を算出する。すなわち、カフ20が加圧過程にあるときカフ圧PCから得られた、脈波信号SMがなす脈波振幅(ピーク・ツゥ・ピーク)の列に対して、
図8に示すような包絡線ENVを設定する。そして、包絡線ENVが現在設定されている座位用のスレッシュレベルTHD1(=0.75×AmpMax)、THS1(=0.4×AmpMax)を横切った時点のカフ圧PCを、それぞれ最低血圧(拡張期血圧)BPdia1、最高血圧(収縮期血圧)BPsys1として算出する。
【0080】
測定スイッチ52Aの押し下げによって血圧測定が指示されたとき(ステップS25でYes)、ユーザは、仰臥位というよりも、むしろ座位にあることが期待される。したがって、座位用のアルゴリズムを使用することで、血圧値(最高血圧及び最低血圧)を安定して精度良く算出できる。
【0081】
このようにして血圧値の算出ができたら(ステップS18でYes)、CPU110は、ポンプ32をオフし(ステップS19)、弁33を開いて(ステップS20)、カフ20(流体袋22)内の空気を排気する制御を行う。
【0082】
この後、CPU110は、算出した血圧値を表示器50へ表示し(ステップS21)、血圧値をメモリ51へ保存する制御を行う。
【0083】
このようにして上記割り込みの血圧測定指示に応じた血圧測定が完了すると、ステップS22で、CPU110は、上記スケジュールで定められた全ての血圧測定が完了したか否かを判断する。ここで、上記スケジュールによって血圧測定が未だ予定されているものとする(ステップS22で「未完」)。現在設定されているアルゴリズムは座位用のアルゴリズムであることから(ステップS23でYes)、CPU110は第3切り替え部として働いて、オシロメトリック法による血圧算出のためのアルゴリズムを上記座位用のアルゴリズムから上記仰臥位用のアルゴリズムに切り替えて設定する(ステップS24)。この後、ステップS13に戻る。そして、上記スケジュールで定められた次回の測定時刻になるのを待つ(ステップS13でNo、ステップS25でNo)。
【0084】
上記スケジュールで定められた次回の測定時刻になると(ステップS13でYes)、CPU110は、ステップS14~S21の処理を繰り返す。このようにして、上記割り込みの血圧測定指示に応じた血圧測定が完了した後でも、上記スケジュールに従って血圧測定が自動的に開始される。その際、ステップS18では、CPU110は、血圧算出部として、上記仰臥位用のアルゴリズムを使用して最低血圧(拡張期血圧)BPdia2、最高血圧(収縮期血圧)BPsys2を算出する。
【0085】
夜間血圧測定モードでは、上述のように、通常、ユーザが仰臥位にあることが期待される。したがって、上記割り込みの血圧測定指示に応じた血圧測定が完了した後、仰臥位用のアルゴリズムを使用することで、血圧値(最高血圧及び最低血圧)を安定して精度良く算出できる。
【0086】
このようにして、上記スケジュールで定められた全ての血圧測定が完了すると(ステップS22で「終了」)、CPU110は第4切り替え部として働いて、オシロメトリック法による血圧算出のためのアルゴリズムを仰臥位用のアルゴリズムから座位用のアルゴリズムに切り替えて設定する(ステップS27)。そして、上記夜間血圧測定モードを終了する。
【0087】
これにより、上記夜間血圧測定モードの終了後、例えば通常の血圧測定モードをデフォルトで開始する際に、
図5のステップS5では、CPU110は、血圧算出部として、上記オシロメトリック法による血圧算出のために座位用のアルゴリズムを使用して血圧値を算出することができる。したがって、通常の血圧測定モードでの血圧算出を正しく実行することができる。
【0088】
以上から明らかなように、この血圧計100によれば、夜間血圧測定モードで、予め定められたスケジュールとは別に、割り込みの血圧測定指示に応じた血圧測定を行う際に、血圧値を安定して精度良く算出できる。
【0089】
また、この血圧計100は、被測定部位としての手首(上の例では左手首90としたが、右手首でもよい。)を圧迫するタイプであるから、上腕を圧迫するタイプに比して、ユーザ(被験者)の睡眠を妨げる程度が少ないことが期待される(Imai et al., “Development and evaluation of a home nocturnal blood pressure monitoring system using a wrist-cuff device”, Blood Pressure Monitoring 2018, 23,P318-326)。したがって、この血圧計100は、夜間血圧測定に適する。
【0090】
また、この血圧計100は、手首式血圧計として一体かつコンパクトに構成されているので、ユーザによる取り扱いが便利になる。
【0091】
(変形例)
上述の実施形態では、血圧計100の夜間血圧測定モードの動作フロー(
図6)において、測定スイッチ52Aが押し下げられて、割り込みで血圧測定指示があったか否かを判断する処理(ステップS25)と、CPU110が第2切り替え部として働いて、オシロメトリック法による血圧算出のためのアルゴリズムを仰臥位用のアルゴリズムから座位用のアルゴリズムに切り替えて設定する処理(ステップS26)とを含むものとした。しかしながら、これに限られるものではなく、それらの処理(ステップS25,S26)を省略してもよい。その場合、現在設定されているアルゴリズムが座位用のアルゴリズムであるか否かを判断する処理(ステップS23)と、CPU110が第3切り替え部として働いて、オシロメトリック法による血圧算出のためのアルゴリズムを上記座位用のアルゴリズムから上記仰臥位用のアルゴリズムに切り替えて設定する処理(ステップS24)とを、併せて省略することができる。これらにより、夜間血圧測定モードの動作フロー(
図6)を簡素化できる。
【0092】
また、上述の実施形態では、血圧計100の夜間血圧測定モードの動作フロー(
図6)において、スケジュールで定められた全ての血圧測定が完了した後(ステップS22で「終了」)、CPU110が第4切り替え部として働いて、オシロメトリック法による血圧算出のためのアルゴリズムを仰臥位用のアルゴリズムから座位用のアルゴリズムに切り替えて設定する処理(ステップS27)を含むものとした。しかしながら、これに限られるものではなく、その処理(ステップS27)を省略してもよい。これにより、夜間血圧測定モードの動作フロー(
図6)を簡素化できる。なお、その場合、ユーザは、夜間血圧測定終了後に、血圧計100の電源を一旦オフするものとする(この例では、電源オン状態で測定スイッチ52Aが例えば3秒間以上連続して押されると、電源がオフする。)。ユーザが再び夜間血圧測定を希望するときは、血圧計100の電源をオンし(既述のように、電源オフ状態で測定スイッチ52Aが例えば3秒間以上連続して押されると、電源がオンする。)、デフォルトで一旦通常の血圧測定モード(座位用のアルゴリズム)にした後、夜間測定スイッチ52Bを押し下げて、夜間血圧測定モード(仰臥位用のアルゴリズム)にすればよい。
【0093】
また、上述の実施形態では、カフ20(流体袋22)の加圧過程で血圧を算出したが、これに限られるものではない。カフ20の減圧過程で血圧を算出してもよい。
【0094】
また、上述の実施形態では、測定指示入力部、モード操作部として、それぞれ本体10に設けられた測定スイッチ52A、夜間測定スイッチ52Bを備えたが、これに限られるものではない。測定指示入力部、モード操作部は、例えば、血圧計100の外部に存在するスマートフォン等から無線通信を介して指示を受け付ける通信部によって構成されてもよい。
【0095】
また、上述の実施形態では、本体10がカフ20と一体に設けられているものとしたが、これに限られるものではない。本体10は、カフ20と別体として構成され、可撓性のエアチューブを介してカフ20(流体袋22)と流体流通可能に接続されているものとしてもよい。
【0096】
上述の
血圧計の作動方法(特に、
図6の動作フロー)を、ソフトウェア(コンピュータプログラム)として、CD(コンパクトディスク)、DVD(デジタル万能ディスク)、フラッシュメモリなどの非一時的(non-transitory)にデータを記憶可能な記録媒体に記録してもよい。このような記録媒体に記録されたソフトウェアを、パーソナルコンピュータ、PDA(パーソナル・デジタル・アシスタンツ)、スマートフォンなどの実質的なコンピュータ装置にインストールすることによって、それらのコンピュータ装置に、上述の血圧算出方法を実行させることができる。
【0097】
以上の実施形態は例示であり、この発明の範囲から離れることなく様々な変形が可能である。上述した複数の実施の形態は、それぞれ単独で成立し得るものであるが、実施の形態同士の組みあわせも可能である。また、異なる実施の形態の中の種々の特徴も、それぞれ単独で成立し得るものであるが、異なる実施の形態の中の特徴同士の組みあわせも可能である。
【符号の説明】
【0098】
10 本体
20 血圧測定用カフ
50 表示器
51 メモリ
52 操作部
52A 測定スイッチ
52B 夜間測定スイッチ
110 CPU