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特許7476514血圧計、血圧計の作動方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】血圧計、血圧計の作動方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/022 20060101AFI20240423BHJP
   A61B 5/16 20060101ALI20240423BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20240423BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20240423BHJP
   A61B 5/107 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
A61B5/022 400L
A61B5/022 300F
A61B5/16 130
A61B5/11 200
A61B5/02 D
A61B5/107 300
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019196142
(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公開番号】P2021069444
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100122286
【弁理士】
【氏名又は名称】仲倉 幸典
(72)【発明者】
【氏名】山下 新吾
(72)【発明者】
【氏名】澤野井 幸哉
(72)【発明者】
【氏名】江副 美佳
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/018029(WO,A1)
【文献】特開2002-149830(JP,A)
【文献】特開2006-247175(JP,A)
【文献】特開2019-117612(JP,A)
【文献】特表2016-538097(JP,A)
【文献】特開2011-180857(JP,A)
【文献】特表2016-500287(JP,A)
【文献】国際公開第2011/019091(WO,A1)
【文献】特開2012-061105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02- 5/03
A61B 5/06- 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血圧測定用カフによって被験者の被測定部位を一時的に圧迫して、血圧測定を行う血圧計であって、
予め定められたスケジュールに従って血圧測定を自動的に開始する夜間血圧測定モードを有し、
測定された血圧値を記憶する記憶部と、
上記夜間血圧測定モードで、上記スケジュールに従って血圧測定を自動的に開始し、上記血圧測定用カフが加圧過程または減圧過程にあるとき、血圧を測定する血圧測定部と、
上記測定された今回の血圧値が、上記記憶部に記憶されている過去の血圧値に対して予め定められた許容範囲を超えて相違しているか否かを判定する相違判定部と、
上記今回の血圧値が上記過去の血圧値に対して上記許容範囲を超えて相違しているとき、上記被験者に、血圧値に影響し得る予め定められた複数種類の現象のうち何れの現象が起こったか否か、を判別する現象判別部と、
上記複数種類の現象のうち何れの現象が起こったか否かに応じて予め定められた相対的な時間差を加算することによって、上記今回の血圧値の測定時刻に対する再測定の時刻設定するスケジュール再設定部と
を備えたことを特徴とする血圧計。
【請求項2】
請求項1に記載の血圧計において、
上記記憶部は、上記複数種類の現象のそれぞれについて、上記相対的な時間差を予め記憶している時間差テーブルを含み、
上記スケジュール再設定部は、上記複数種類の現象のうち何れの現象が起こったか否かに応じて、上記時間差テーブルに記憶されている上記相対的な時間差を読み出し、上記今回の血圧値の測定時刻に対して上記読み出した相対的な時間差を加算して、上記再測定の時刻を設定する
ことを特徴とする血圧計。
【請求項3】
請求項2に記載の血圧計において、
上記複数種類の現象のうち2つ以上の現象が重ねて起こったとき、上記スケジュール再設定部は、上記重ねて起こった2つ以上の現象について上記時間差テーブルから読み出した上記相対的な時間差のうち、最も長い時間差を選択する
ことを特徴とする血圧計。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一つに記載の血圧計において、
上記血圧測定用カフと一体に設けられた本体を備え、
上記本体は、上記記憶部、上記血圧測定部、上記相違判定部、上記現象判別部、および、上記スケジュール再設定部を搭載している
ことを特徴とする血圧計。
【請求項5】
請求項4に記載の血圧計において、
上記血圧測定部は、上記血圧測定用カフの圧力を検出する圧力センサを含み、上記血圧測定用カフが加圧過程または減圧過程にあるとき、上記血圧測定用カフの圧力に基づいて、オシロメトリック法によって血圧値を取得し、
上記現象判別部は、
上記血圧測定用カフの圧力から得られた脈拍数に基づいて、上記被験者の睡眠状態が変化したか否かを判定する睡眠状態判定部と、
上記血圧測定用カフの圧力から得られた脈波の間隔に基づいて、不規則脈波が発生したか否かを判定する不規則脈波判定部と、
上記本体に一体に搭載された加速度センサを含み、上記加速度センサの出力に基づいて、上記被験者の姿勢が変化したか否かを判定する姿勢判定部と、
上記加速度センサの出力に基づいて、上記被験者の体動があったか否かを判定する体動判定部と
を有することを特徴とする血圧計。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一つに記載の血圧計において、
上記被測定部位は手首である
ことを特徴とする血圧計。
【請求項7】
請求項1に記載の血圧計を作動させる血圧計の作動方法であって、
上記血圧測定部は、上記夜間血圧測定モードで、上記スケジュールに従って血圧測定を自動的に開始し、上記血圧測定用カフが加圧過程または減圧過程にあるとき、血圧を測定し、
上記相違判定部は、上記測定された今回の血圧値が、上記記憶部に記憶されている過去の血圧値に対して予め定められた許容範囲を超えて相違しているか否かを判定し、
上記現象判別部は、上記今回の血圧値が上記過去の血圧値に対して上記許容範囲を超えて相違していると判定されたとき、上記今回の血圧測定で、血圧値に影響し得る予め定められた複数種類の現象のうち何れの現象が起こったか否か、を判別し、
上記スケジュール再設定部は、上記複数種類の現象のうち何れの現象が起こったか否かの判別結果に応じて予め定められた相対的な時間差を加算することによって、上記今回の血圧値の測定時刻に対する再測定の時刻設定する
ことを特徴とする血圧計の作動方法
【請求項8】
請求項7に記載の血圧計の作動方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は血圧計に関し、より詳しくは、夜間(睡眠時)血圧測定モードを有する血圧計に関する。また、この発明は、そのような血圧計を作動させる血圧計の作動方法に関する。また、この発明は、そのような血圧計の作動方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の血圧計として、例えば特許文献1(国際公開第2018/168797号)には、夜間(睡眠時)血圧測定モードで、測定された血圧値に誤差が含まれている(姿勢が悪く測定誤差が生じている)可能性があると判定されると、予め設定した設定時間の経過後に、再度血圧を測定するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/168797号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
夜間血圧測定を長時間(典型的には、一晩)にわたって行う場合、被験者には、睡眠状態の変化、不規則脈波の発生、姿勢の変化、体動など、血圧値に影響し得る様々な現象が起こり得る。
【0005】
しかしながら、上記従来の血圧計では、夜間血圧測定モードで、今回の血圧値が測定誤差を含む可能性がある場合に、或る一定の設定時間経過後に再度血圧を測定している。このため、被験者に起こった現象の割に設定時間が長すぎると(例えば、数十秒間の体動に対して、30分間以上待つと)、本来血圧測定を行うべき時刻から無用に大きく外れた時刻での再測定となって、適切な時刻での血圧値が得られない、という問題がある。一方、被験者に起こった現象の割に設定時間が短すぎると、起こった現象が再測定時にまだ継続していて、正しい血圧値が得られない可能性が高い、という問題がある。
【0006】
そこで、この発明の課題は、夜間血圧測定モードで測定された今回の血圧値が測定誤差を含む可能性がある場合に、被験者に起こった現象に応じて再測定の時刻を適切に設定できる血圧計および血圧計の作動方法を提供することにある。また、この発明の課題は、そのような血圧計の作動方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、この開示の血圧計は、
血圧測定用カフによって被験者の被測定部位を一時的に圧迫して、血圧測定を行う血圧計であって、
予め定められたスケジュールに従って血圧測定を自動的に開始する夜間血圧測定モードを有し、
測定された血圧値を記憶する記憶部と、
上記夜間血圧測定モードで、上記スケジュールに従って血圧測定を自動的に開始し、上記血圧測定用カフが加圧過程または減圧過程にあるとき、血圧を測定する血圧測定部と、
上記測定された今回の血圧値が、上記記憶部に記憶されている過去の血圧値に対して予め定められた許容範囲を超えて相違しているか否かを判定する相違判定部と、
上記今回の血圧値が上記過去の血圧値に対して上記許容範囲を超えて相違しているとき、上記被験者に、血圧値に影響し得る予め定められた複数種類の現象のうち何れの現象が起こったか否か、を判別する現象判別部と、
上記複数種類の現象のうち何れの現象が起こったか否かに応じて予め定められた相対的な時間差を加算することによって、上記今回の血圧値の測定時刻に対する再測定の時刻設定するスケジュール再設定部と
を備えたことを特徴とする。
【0008】
本明細書で、今回の血圧値が過去の血圧値に対して「予め定められた許容範囲を超えて相違している」とは、典型的には、測定誤差を考慮した上で、今回の血圧値が過去の血圧値に対して実質的に異なっていることを意味する。「過去の血圧値」は、例えば、上記夜間血圧測定モードで上記スケジュールに従って得られた前回の血圧値でもよいし、または、上記夜間血圧測定モードで上記スケジュールに従って得られた前日の夜間血圧値の平均値でもよい。
【0009】
「予め定められた複数種類の現象」とは、典型的には、睡眠状態の変化、不規則脈波の発生、姿勢の変化、体動など、血圧値に影響し得る現象を指す。「睡眠状態の変化」とは、睡眠の深さの変化、例えばノンレム睡眠(深い睡眠)からレム睡眠(浅い睡眠)への変化、レム睡眠(浅い睡眠)から覚醒状態への変化などを指す。「不規則脈波の発生」とは、本来一定周期・一定強度で繰り返すべき脈波に乱れ(不整脈を含む。)が生じている状態を指す。「姿勢の変化」とは、被験者が或る姿勢(夜間血圧測定の場合、典型的には仰臥位)から別の姿勢へシフトする現象を指す。「体動」とは、姿勢の変化に該当しない体の動き(例えば、反復運動)を指す。
【0010】
「現象が起こったか否か」とは、血圧値の測定時刻に現象が起こっていたか否かを意味する。なお、予め定められた複数種類の現象が全く起こっていなかった場合も、判別の対象に含まれる。
【0011】
血圧値の「測定時刻」とは、上記スケジュールに従って血圧測定(通常は1分間~2分間程度要する)が自動的に開始された時刻を指し、血圧測定用カフの加圧過程または減圧過程で実際に血圧値が算出された時刻と同義であるものとする。
【0012】
この開示の血圧計は、上記夜間血圧測定モードで、上記スケジュールに従って血圧測定を自動的に開始する。血圧測定部は、上記血圧測定用カフが加圧過程または減圧過程にあるとき、血圧を測定する(例えば、上記血圧測定用カフの圧力に基づいて、上記オシロメトリック法によって血圧値を算出する)。相違判定部は、上記測定された今回の血圧値が、上記記憶部に記憶されている過去の血圧値に対して予め定められた許容範囲を超えて相違しているか否かを判定する。これにより、今回の血圧値が測定誤差を含む可能性があるか否かが判定される。現象判別部は、上記今回の血圧値が上記過去の血圧値に対して上記許容範囲を超えて相違しているとき、上記被験者に、血圧値に影響し得る予め定められた複数種類の現象のうち何れの現象が起こったか否か、を判別する。スケジュール再設定部は、上記複数種類の現象のうち何れの現象が起こったか否かに応じて予め定められた相対的な時間差を加算することによって、上記今回の血圧値の測定時刻に対する再測定の時刻設定する。したがって、この血圧計によれば、今回の血圧値が測定誤差を含む可能性がある場合に、被験者に起こった現象に応じて再測定の時刻を適切に設定できる。この結果、起こった現象の割に再測定の時刻が遅すぎたり、起こった現象の割に再測定の時刻が早すぎたりするのを、避けることができる。
【0013】
一実施形態の血圧計では、
上記記憶部は、上記複数種類の現象のそれぞれについて、上記相対的な時間差を予め記憶している時間差テーブルを含み、
上記スケジュール再設定部は、上記複数種類の現象のうち何れの現象が起こったか否かに応じて、上記時間差テーブルに記憶されている上記相対的な時間差を読み出し、上記今回の血圧値の測定時刻に対して上記読み出した相対的な時間差を加算して、上記再測定の時刻を設定する
ことを特徴とする。
【0014】
ここで、「再測定時刻を定めるための相対的な時間差」は、例えば「姿勢の変化」については30分間、「体動」については5分間、というように、それぞれ対応する現象が継続する通常の時間を考慮して経験的に設定されているものとする。
【0015】
この一実施形態の血圧計では、時間差テーブルは、上記複数種類の現象のそれぞれについて、上記相対的な時間差を予め記憶している。上記スケジュール再設定部は、上記複数種類の現象のうち何れの現象が起こったか否かに応じて、上記時間差テーブルに記憶されている上記相対的な時間差を読み出し、上記今回の血圧値の測定時刻に対して上記読み出した相対的な時間差を加算して、上記再測定の時刻を設定する。これにより、上記再測定の時刻を円滑に設定できる。
【0016】
一実施形態の血圧計では、
上記複数種類の現象のうち2つ以上の現象が重ねて起こったとき、上記スケジュール再設定部は、上記重ねて起こった2つ以上の現象について上記時間差テーブルから読み出した上記相対的な時間差のうち、最も長い時間差を選択する
ことを特徴とする。
【0017】
この一実施形態の血圧計は、上記複数種類の現象のうち2つ以上の現象が重ねて起こったとき、上記スケジュール再設定部は、上記重ねて起こった2つ以上の現象について上記時間差テーブルから読み出した上記相対的な時間差のうち、最も長い時間差を選択する。つまり、上記重ねて起こった2つ以上の現象のうち最も長く継続する可能性がある現象に応じて、上記再測定の時刻を設定する。この結果、上記重ねて起こった2つ以上の現象のうち或る現象(最も長く継続する現象)が未だ継続している間に上記再測定が開始されてしまうような事態を、避けることができる。
【0018】
一実施形態の血圧計では、
上記血圧測定用カフと一体に設けられた本体を備え、
上記本体は、上記記憶部、上記血圧測定部、上記相違判定部、上記現象判別部、および、上記スケジュール再設定部を搭載している
ことを特徴とする。
【0019】
ここで、「血圧測定部」は、例えば、上記血圧測定用カフに加圧用の流体を供給するポンプ、上記血圧測定用カフから流体を排気させる弁、これらのポンプ・弁などを駆動・制御する要素を含む。
【0020】
この一実施形態の血圧計は、一体かつコンパクトに構成され得る。したがって、ユーザによる取り扱いが便利になる。
【0021】
一実施形態の血圧計では、
上記血圧測定部は、上記血圧測定用カフの圧力を検出する圧力センサを含み、上記血圧測定用カフが加圧過程または減圧過程にあるとき、上記血圧測定用カフの圧力に基づいて、オシロメトリック法によって血圧値を取得し、
上記現象判別部は、
上記血圧測定用カフの圧力から得られた脈拍数に基づいて、上記被験者の睡眠状態が変化したか否かを判定する睡眠状態判定部と、
上記血圧測定用カフの圧力から得られた脈波の間隔に基づいて、不規則脈波が発生したか否かを判定する不規則脈波判定部と、
上記本体に一体に搭載された加速度センサを含み、上記加速度センサの出力に基づいて、上記被験者の姿勢が変化したか否かを判定する姿勢判定部と、
上記加速度センサの出力に基づいて、上記被験者の体動があったか否かを判定する体動判定部と
を有することを特徴とする。
【0022】
この一実施形態の血圧計では、比較的少ないハードウェア要素(特に、圧力センサと加速度センサ)を用いて、上記複数種類の現象として、睡眠状態の変化、不規則脈波の発生、姿勢の変化、体動という4種類の現象が起こったか否かをそれぞれ判定できる。
【0023】
一実施形態の血圧計では、上記被測定部位は手首であることを特徴とする。
【0024】
この一実施形態の血圧計は、被測定部位としての手首を圧迫するタイプであるから、上腕を圧迫するタイプに比して、被験者の睡眠を妨げる程度が少ないことが期待される(Imai et al., “Development and evaluation of a home nocturnal blood pressure monitoring system using a wrist-cuff device”, Blood Pressure Monitoring 2018, 23,P318-326)。したがって、この血圧計は、夜間(睡眠時)血圧測定に適する。
【0025】
別の局面では、この開示の血圧計の作動方法は、
上記血圧計を作動させる血圧計の作動方法であって、
上記血圧測定部は、上記夜間血圧測定モードで、上記スケジュールに従って血圧測定を自動的に開始し、上記血圧測定用カフが加圧過程または減圧過程にあるとき、血圧を測定し、
上記相違判定部は、上記測定された今回の血圧値が、上記記憶部に記憶されている過去の血圧値に対して予め定められた許容範囲を超えて相違しているか否かを判定し、
上記現象判別部は、上記今回の血圧値が上記過去の血圧値に対して上記許容範囲を超えて相違していると判定されたとき、上記今回の血圧測定で、血圧値に影響し得る予め定められた複数種類の現象のうち何れの現象が起こったか否か、を判別し、
上記スケジュール再設定部は、上記複数種類の現象のうち何れの現象が起こったか否かの判別結果に応じて予め定められた相対的な時間差を加算することによって、上記今回の血圧値の測定時刻に対する再測定の時刻設定する
ことを特徴とする
【0026】
この開示の血圧計の作動方法によれば、今回の血圧値が測定誤差を含む可能性がある場合に、被験者に起こった現象に応じて再測定の時刻を適切に設定できる。この結果、起こった現象の割に再測定の時刻が遅すぎたり、起こった現象の割に再測定の時刻が早すぎたりするのを、避けることができる。
【0027】
さらに別の局面では、この開示のプログラムは、上記血圧計の作動方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0028】
この開示のプログラムをコンピュータに実行させることによって、上記血圧計の作動方法を実施することができる。
【発明の効果】
【0029】
以上より明らかなように、この開示の血圧計および血圧計の作動方法によれば、夜間血圧測定モードで測定された今回の血圧値が測定誤差を含む可能性がある場合に、被験者に起こった現象に応じて再測定の時刻を適切に設定できる。また、この開示のプログラムによれば、そのような血圧計の作動方法をコンピュータに実行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】この発明の一実施形態の手首式血圧計の外観を示す図である。
図2】血圧計のブロック構成を示す図である。
図3】上記血圧計が被測定部位としての左手首に装着された態様を示す図である。
図4A】測定姿勢としての座位を示す図である。
図4B】測定姿勢としての仰臥位を示す図である。
図5】上記血圧計によって通常の血圧測定モードで血圧測定を行う際の動作フローを示す図である。
図6】上記血圧計によって夜間血圧測定モードで血圧測定を行う際の動作フローを示す図である。
図7図7(A)は,血圧測定に伴うカフ圧PCの時間経過を示す図である。図7(B)は、血圧測定に伴う脈波信号SMの時間経過を示す図である。図7(C)は、上記脈波信号SMがなす脈波振幅の列に対して設定された包絡線ENVを示す図である。
図8】夜間血圧測定モードでの血圧算出の仕方を説明する図である。
図9図9(A)、図9(B)は、それぞれ、夜間血圧測定モードで測定された今回の血圧値が過去の血圧値に対して相違しているか否かの判定の仕方を示す図である。
図10】夜間血圧測定モードにおける、現象判別およびスケジュール再設定の処理の具体的なフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0032】
(血圧計の構成)
図1は、この発明の一実施形態の手首式血圧計100の外観を示している。この血圧計100は、大別して、被測定部位としての左手首90(後述の図3参照)に装着されるべき血圧測定用カフ20と、このカフ20に一体に取り付けられた本体10とを備えている。
【0033】
カフ20は、手首式血圧計用の一般的なものであり、左手首90を周方向に沿って取り巻くように細長い帯状の形状を有している。このカフ20内には、左手首90を圧迫するための流体袋22(図2参照)が内包されている。なお、カフ20を常時環状に維持するために、カフ20内に、適度な可撓性を有するカーラが設けられてもよい。
【0034】
図3に示すように、本体10は、帯状のカフ20の長手方向に関して略中央の部位に、一体に取り付けられている。この例では、本体10が取り付けられた部位は、装着状態で左手首90の掌側面(手の平側の面)90aに対応することが予定されている。
【0035】
本体10は、カフ20の外周面に沿った偏平な略直方体状の形状を有している。この本体10は、ユーザ(この例では、被験者を指す。以下同様。)の睡眠の邪魔にならないように、小型で、薄厚に形成されている。また、本体10のコーナー部にはアールが施されている(角が丸くされている。)。
【0036】
図1に示すように、本体10の外面のうち左手首90から最も遠い側の面(頂面)には、表示画面をなす表示器50と、ユーザからの指示を入力するための操作部52とが設けられている。
【0037】
表示器50は、この例では、LCD(Liquid Crystal Display;液晶ディスプレイ)からなり、後述のCPU(Central Processing Unit;中央演算処理装置)110からの制御信号に従って所定の情報を表示する。この例では、最高血圧(単位;mmHg)、最低血圧(単位;mmHg)、脈拍数(単位;拍/分)を表示するようになっている。なお、表示器50は、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイからなっていてもよいし、LED(Light Emitting Diode;発光ダイオード)を含んでいてもよい。
【0038】
操作部52は、ユーザによる指示に応じた操作信号を後述のCPU110に入力する。この例では、操作部52は、ユーザによる血圧測定指示を受け付けるための測定スイッチ52Aと、通常の血圧測定モードと夜間血圧測定モードとの間でモードを切り替える指示を受け付けるための夜間測定スイッチ52Bとを含んでいる。ここで、「通常の血圧測定モード」とは、測定スイッチ52Aによって血圧測定指示が入力されると、その血圧測定指示に応じて血圧測定を行うモードを意味する。「夜間血圧測定モード」とは、ユーザが睡眠中に血圧値を測定することができるように、予め定められたスケジュールに従って血圧測定が自動的に開始されるモードを意味する。予め定められたスケジュールとは、例えば深夜1時、2時、3時などの定刻に測定する計画や、夜間測定スイッチ52Bが押されてから例えば2時間毎に1回測定する計画などを指す。
【0039】
具体的には、この例では、測定スイッチ52A、夜間測定スイッチ52Bは、いずれもモーメンタリタイプ(自己復帰タイプ)のスイッチであり、押し下げられている間だけオン状態になり、離されるとオフ状態に戻る。
【0040】
血圧計100が通常の血圧測定モードにある間に測定スイッチ52Aが一旦押し下げられると、それは血圧測定指示を意味し、カフ20によって被測定部位(左手首90)が一時的に圧迫されて、オシロメトリック法により血圧測定が実行される。血圧測定中(例えば、カフ20の加圧中)に測定スイッチ52Aが再び押し下げられると、それは血圧測定停止の指示を意味し、直ちに血圧測定が停止される。
【0041】
血圧計100が通常の血圧測定モードにある間に夜間測定スイッチ52Bが一旦押し下げられると、それは夜間血圧測定モードへの移行の指示を意味し、血圧計100は通常の血圧測定モードから夜間血圧測定モードへ移行する。夜間血圧測定モードでは、上述のように、予め定められたスケジュールに従ってオシロメトリック法による血圧測定が自動的に開始される。血圧計100が夜間血圧測定モードにある間に夜間測定スイッチ52Bが再び押し下げられると、それは夜間血圧測定モード停止の指示を意味し、血圧計100は夜間血圧測定モードから通常の血圧測定モードへ移行する。
【0042】
血圧計100が夜間血圧測定モードにある間であっても、上記予め定められたスケジュールとは別に、ユーザが、測定スイッチ52Aを押すことによって、割り込みで血圧測定を指示することがある。そのときは、その割り込みの血圧測定指示に応じて、カフ20によって被測定部位(左手首90)が一時的に圧迫されて、オシロメトリック法により血圧測定が実行される。
【0043】
図2は、血圧計100のブロック構成を示している。
【0044】
カフ20は、既述のように被測定部位としての左手首90を圧迫するための流体袋22を含んでいる。この流体袋22と本体10とは、エア配管39によって流体流通可能に接続されている。
【0045】
本体10は、既述の表示器50と操作部52とに加えて、制御部としてのCPU110と、記憶部としてのメモリ51と、電源部53と、加速度センサ34と、圧力センサ31と、ポンプ32と、弁33とを搭載している。さらに、本体10は、圧力センサ31の出力をアナログ信号からデジタル信号へ変換するA/D変換回路310と、ポンプ32を駆動するポンプ駆動回路320と、弁33を駆動する弁駆動回路330と、加速度センサ34の出力をアナログ信号からデジタル信号へ変換するA/D変換回路340とを搭載している。圧力センサ31、ポンプ32、および弁33は、エア配管39を通して共通に、流体袋22に対して流体流通可能に接続されている。
【0046】
メモリ51は、血圧計100を制御するためのプログラム、血圧計100を制御するために用いられるデータ、血圧計100の各種機能を設定するための設定データ、および血圧値の測定結果のデータ、脈拍数、脈波間隔、加速度センサ34の出力データなどを記憶する。また、メモリ51は、プログラムが実行されるときのワークメモリなどとして用いられる。
【0047】
特に、この例では、メモリ51は、オシロメトリック法による血圧算出のためのアルゴリズムとして、座位用のアルゴリズムと、仰臥位用のアルゴリズムとを記憶している。ここで、「座位」とは、図4Aに示すように、左手首90に血圧計100を装着したユーザ80が椅子97などに座り、左肘をテーブル98に着いて左手首90を体幹に対して前方で斜め(手が上、肘が下)に挙げることにより、左手首90(および血圧計100)を心臓81の高さレベルに維持した姿勢を意味する。この姿勢は、ユーザ80の左手首90と心臓81との間の高低差を無くせるので、血圧測定精度を高めるために推奨される。一方、「仰臥位」とは、図4Bに示すように、左手首90に血圧計100を装着したユーザ80が、左肘を伸ばし体幹に沿わせた状態で、水平な床面99などに仰向けに横たわった姿勢を意味する。この姿勢では、ユーザ80の左手首90(および血圧計100)と心臓81との間の高低差ΔHが生ずる(左手首90の高さよりも心臓81の高さが高い)ため、血圧測定値のずれが生ずる。また、座位(図4A)では左肘が曲げられているのに対して仰臥位(図4B)では左肘が伸ばされているため、左肘の屈伸のせいで血圧測定値のずれが生ずる可能性もある。このような座位での血圧測定値に対する仰臥位での血圧測定値のずれを解消するため、座位で血圧測定する場合の血圧算出アルゴリズムに対して、仰臥位で血圧測定する場合の血圧算出アルゴリズムを変更するのが望ましい。この理由から、この例では、メモリ51は、オシロメトリック法による血圧算出のためのアルゴリズムとして、座位用のアルゴリズムと、仰臥位用のアルゴリズムとを記憶している。それらのアルゴリズムを使用した具体的な血圧算出の仕方については、後述する。
【0048】
また、この例では、メモリ51は、次の表1の時間差テーブルに示すように、夜間血圧測定モードで被験者に起こり得る、予め定められた複数種類の現象のそれぞれについて、再測定の時刻を定めるための相対的な時間差を、予め記憶している。ここで、「予め定められた複数種類の現象」とは、この例では、睡眠状態の変化、不規則脈波の発生、姿勢の変化、体動という、血圧値に影響し得る4種類の現象を指す。「睡眠状態の変化」とは、睡眠の深さの変化、例えばノンレム睡眠(深い睡眠)からレム睡眠(浅い睡眠)への変化、レム睡眠(浅い睡眠)から覚醒状態への変化などを指す。「不規則脈波の発生」とは、本来一定周期・一定強度で繰り返すべき脈波に乱れ(不整脈を含む。)が生じている状態を指す。「姿勢の変化」とは、被験者が或る姿勢(夜間血圧測定の場合、典型的には仰臥位)から別の姿勢へシフトする現象を指す。「体動」とは、姿勢の変化に該当しない体の動き(例えば、反復運動)を指す。この例では、姿勢の変化については時間差「30分間」、体動については時間差「5分間」、睡眠状態の変化については時間差「15分間」、不規則脈波の発生については時間差「5分間」がそれぞれ記憶されている。これらの時間差は、それぞれ対応する現象が継続する通常の時間を考慮して経験的に設定されている。この時間差テーブルを用いた具体的な再測定の時刻を定める仕方については、後述する。
(表1)時間差テーブル
【0049】
図2中に示すCPU110は、この血圧計100全体の動作を制御する。具体的には、CPU110は、メモリ51に記憶された血圧計100を制御するためのプログラムに従って圧力制御部として働いて、操作部52からの操作信号に応じて、ポンプ32や弁33を駆動する制御を行う。また、CPU110は、血圧測定部として働いて、オシロメトリック法による血圧算出のためのアルゴリズムを使用して血圧値を算出し、表示器50およびメモリ51を制御する。
【0050】
電源部53は、この例では2次電池からなり、CPU110、圧力センサ31、ポンプ32、弁33、加速度センサ34、表示器50、メモリ51、A/D変換回路310,340、ポンプ駆動回路320、および弁駆動回路330の各部に電力を供給する。
【0051】
加速度センサ34は、この例では、本体10に一体に搭載された3軸加速度センサを含み、本体10に対する重力加速度ベクトルの向き(したがって、本体10を装着した被験者の姿勢)を表すデータ、被験者の体動を表すデータなどを出力する。A/D変換回路340は、加速度センサ34の出力をアナログ信号からデジタル信号へ変換してCPU110に出力する。この加速度センサ34は、後述する現象判別部、特に姿勢判定部と体動判定部をなす要素として働く。
【0052】
ポンプ32は、カフ20に内包された流体袋22内の圧力(カフ圧)を加圧するために、エア配管39を通して流体袋22に流体としての空気を供給する。弁33は、エア配管39を通して流体袋22の空気を排出し、または流体袋22に空気を封入してカフ圧を制御するために開閉される。ポンプ駆動回路320は、ポンプ32をCPU110から与えられる制御信号に基づいて駆動する。弁駆動回路330は、弁33をCPU110から与えられる制御信号に基づいて開閉する。
【0053】
圧力センサ31とA/D変換回路310は、カフの圧力を検出する圧力検出部として働く。圧力センサ31は、この例ではピエゾ抵抗式圧力センサであり、エア配管39を通して、カフ20に内包された流体袋22内の圧力(カフ圧)をピエゾ抵抗効果による電気抵抗として出力する。A/D変換回路310は、圧力センサ31の出力(電気抵抗)をアナログ信号からデジタル信号へ変換してCPU110に出力する。この例では、CPU110は、圧力センサ31からの電気抵抗に応じた周波数で発振する発振回路として働いて、その発振周波数に応じて、カフ圧を表す信号を取得する。この圧力センサ31は、血圧測定部をなす要素として働くほか、後述する現象判別部、特に睡眠状態判定部と不規則脈波判定部をなす要素として働く。
【0054】
血圧計の作動方法
図5は、ユーザが血圧計100によって通常の血圧測定モードで血圧測定を行う際の動作フローを示している。なお、この例では、電源オフ状態で測定スイッチ52Aが例えば3秒間以上連続して押されると、電源がオンして、デフォルトで通常の血圧測定モードになる。
【0055】
図4Aに示したように、左手首90に血圧計100を装着したユーザ80が、座位の姿勢をとっているものとする。
【0056】
この状態で、図5のステップS1に示すように、ユーザが本体10に設けられた測定スイッチ52Aを押し下げて血圧測定指示を入力すると、CPU110は、圧力センサ31を初期化する(ステップS2)。具体的には、CPU110は、処理用メモリ領域を初期化するとともに、ポンプ32をオフ(停止)し、弁33を開いた状態で、圧力センサ31の0mmHg調整(大気圧を0mmHgに設定する。)を行う。
【0057】
次に、CPU110は、弁駆動回路330を介して弁33を閉じ(ステップS3)、続いて、ポンプ駆動回路320を介してポンプ32をオン(起動)して、カフ20(流体袋22)の加圧を開始する(ステップS4)。このとき、CPU110は、ポンプ32からエア配管39を通して流体袋22に空気を供給しながら、圧力センサ31の出力に基づいて、図7(A)に示すように、流体袋22内の圧力であるカフ圧PCの加圧速度を制御する。
【0058】
次に、図5のステップS5で、CPU110は血圧測定部として働いて、この時点で取得されている脈波信号SM(圧力センサ31の出力に含まれた脈波による変動成分)(図7(B)参照)に基づいて、メモリ51に記憶されている座位用のアルゴリズムを使用して血圧値(最高血圧(収縮期血圧)と最低血圧(拡張期血圧))の算出を試みる。
【0059】
この時点で、データ不足のために未だ血圧値を算出できない場合は(ステップS6でNo)、カフ圧PCが上限圧力(安全のために、例えば300mmHgというように予め定められている。)に達していない限り、ステップS4~S6の処理を繰り返す。
【0060】
ここで、CPU110は、次のようにして血圧値を算出する。すなわち、カフ20が加圧過程にあるときカフ圧PCから得られた、図7(B)に示す脈波信号SMがなす脈波振幅(ピーク・ツゥ・ピーク)の列に対して、図7(C)に示すような包絡線ENVを設定する。これとともに、包絡線ENVの最大値AmpMaxに対して、座位用に予め定められた割合αdia,αsysの2つのスレッシュレベルTHD1,THS1を設定する。THD1は、拡張期血圧用のスレッシュレベルであり、THD1=αdia×AmpMaxとして設定される。また、THS1は、収縮期血圧用のスレッシュレベルであり、THS1=αsys×AmpMaxとして設定される。一例として、αdia=0.75であり、また、αsys=0.4である(すなわち、THD1=0.75×AmpMaxとして設定され、また、THS1=0.4×AmpMaxとして設定される。)。そして、包絡線ENVがそれらのスレッシュレベルTHD1,THS1を横切った時点のカフ圧PCを、図7(A)に示すように、それぞれ最低血圧(拡張期血圧)BPdia1、最高血圧(収縮期血圧)BPsys1として算出する。
【0061】
このようにして血圧値の算出ができたら(ステップS6でYes)、CPU110は、ポンプ32をオフし(ステップS7)、弁33を開いて(ステップS8)、カフ20(流体袋22)内の空気を排気する制御を行う。
【0062】
また、CPU110は、ステップS4~S6の処理を繰り返す間、カフ圧PCから得られた脈波をカウントして、脈拍数(単位;拍/分)を算出する。
【0063】
この後、CPU110は、算出した血圧値、脈拍数を表示器50へ表示し(ステップS9)、血圧値、脈拍数などのデータをメモリ51へ保存する制御を行う。
【0064】
図6は、ユーザが血圧計100によって夜間血圧測定モードで血圧測定を行う際の動作フローを示している。このフロー開始時に、血圧計100は、通常の血圧測定モードにあるものとする。
【0065】
図6のステップS11に示すように、ユーザが本体10に設けられた夜間測定スイッチ52Bを押し下げると、血圧計100は通常の血圧測定モードから夜間血圧測定モードへ移行する。この例では、夜間血圧測定モードでは、夜間測定スイッチ52Bが押されてから、例えば午前7時まで、例えば1時間毎に1回測定するスケジュールが定められているものとする。なお、このスケジュールに限られるものではなく、夜間測定スイッチ52Bが押されてから、例えば午前7時まで、午前1時、2時、3時のように定刻に測定するスケジュールが定められていてもよい。
【0066】
次に、図6のステップS12に示すように、CPU110は、(夜間血圧測定モードの)スケジュールで定められた測定時刻であるか否かを判断する。スケジュールで定められた測定時刻でなければ(ステップS12でNo)、スケジュールで定められた測定時刻になるのを待つ。
【0067】
上記スケジュールで定められた測定時刻になると(ステップS12でYes)、CPU110は、図6のステップS13~S15に示すように、図5のステップS2~S4におけるのと同様に血圧測定を開始する。すなわち、CPU110は、まず、圧力センサ31を初期化する(ステップS13)。
【0068】
次に、CPU110は、弁駆動回路330を介して弁33を閉じ(ステップS14)、続いて、ポンプ駆動回路320を介してポンプ32をオン(起動)して、カフ20(流体袋22)の加圧を開始する(ステップS15)。このとき、CPU110は、図7(A)に示したのと同様に、カフ圧PCの加圧速度を制御する。
【0069】
次に、図6のステップS16で、CPU110は血圧測定部として働いて、この時点で取得されている脈波信号SM(圧力センサ31の出力に含まれた脈波による変動成分)(図7(B)に示したのと同様)に基づいて、仰臥位用のアルゴリズムを使用して血圧値(最高血圧(収縮期血圧)と最低血圧(拡張期血圧))の算出を試みる。
【0070】
この時点で、データ不足のために未だ血圧値を算出できない場合は(ステップS17でNo)、カフ圧PCが上限圧力(安全のために、例えば300mmHgというように予め定められている。)に達していない限り、ステップS15~S17の処理を繰り返す。
【0071】
ここで、CPU110は、次のようにして血圧値を算出する。すなわち、カフ20が加圧過程にあるときカフ圧PCから得られた、脈波信号SMがなす脈波振幅(ピーク・ツゥ・ピーク)の列に対して、図8に示すような包絡線ENV(図7(C)に示したのと同様)を設定する。仰臥位用のアルゴリズムでは、図8中に示すように、拡張期血圧用のスレッシュレベルとして、THD1=0.75×AmpMaxに代えてTHD2=0.6×AmpMaxを用い、また、収縮期血圧用のスレッシュレベルとして、THS1=0.4×AmpMaxに代えてTHS2=0.5×AmpMaxを用いる。これにより、座位(図4A)での血圧測定値に対する仰臥位(図4B)での血圧測定値のずれを解消する。そして、包絡線ENVが現在設定されている仰臥位用のスレッシュレベルTHD2(=0.6×AmpMax)、THS2(=0.5×AmpMax)を横切った時点のカフ圧PCを、それぞれ最低血圧(拡張期血圧)BPdia2、最高血圧(収縮期血圧)BPsys2として算出する。
【0072】
夜間血圧測定モードでは、通常、ユーザが仰臥位にあることが期待される。したがって、仰臥位用のアルゴリズムを使用することで、血圧値(最高血圧及び最低血圧)を安定して精度良く算出できる。
【0073】
このようにして血圧値(今回の血圧値)の算出ができたら(ステップS17でYes)、CPU110は、ポンプ32をオフし(ステップS18)、弁33を開いて(ステップS19)、カフ20(流体袋22)内の空気を排気する制御を行う。
【0074】
また、CPU110は、ステップS15~S17の処理を繰り返す間、後述の現象判別、特に、睡眠状態判定、不規則脈波判定のために、カフ圧PCから得られた脈波をカウントして、脈拍数(単位;拍/分)、脈波間隔(単位;秒)を算出する。これとともに、CPU110は、後述の姿勢判定、体動判定のために、加速度センサ34の出力データを取得する。
【0075】
この後、CPU110は、算出した血圧値、脈拍数を表示器50へ表示し(ステップS20)、今回の血圧値、脈拍数、脈波間隔のデータ、および、加速度センサ34の出力データを、メモリ51へ保存する制御を行う。
【0076】
このようにして上記スケジュールで定められた1回の血圧測定が完了すると、ステップS21で、CPU110は相違判定部として働いて、今回の血圧値が過去の血圧値に対して相違しているか否かを判定する。具体的には、次のようにして判定する。なお、この判定では、今回の血圧値と過去の血圧値とは、最高血圧(収縮期血圧)同士で比較されるものとする。
【0077】
i)今回の血圧値が過去の血圧値に対して相違しているか否かの判定の仕方その1
例えば、過去の血圧値としての前回の血圧値が午前2時に取得され、今回の血圧値が午前3時に取得されたものとする。その場合、図9(A)のステップS31に示すように、CPU110は、前回(この例では、午前2時)の血圧値をメモリ51より読み出す。次に、ステップS32に示すように、CPU110は、今回(この例では、午前3時)の血圧値が前回の血圧値に対して予め定められた許容範囲(この例では、20mmHg)を超えて相違しているか否かを判定する。ここで、今回の血圧値が前回の血圧値に対して20mmHg以上相違していれば(ステップS32でYes)、今回の血圧値が過去の血圧値に対して「相違あり」と判定する(ステップS33)。一方、今回の血圧値と前回の血圧値との差が20mmHg未満であれば(ステップS32でNo)、今回の血圧値が過去の血圧値に対して「相違なし」と判定する(ステップS34)。
【0078】
ii)今回の血圧値が過去の血圧値に対して相違しているか否かの判定の仕方その2
また、過去の血圧値として、前日の夜間血圧測定モードのスケジュールに従って、複数回の夜間血圧値が測定され、メモリ51に保存されているものとする。今回の血圧値は、上の例と同様に、午前3時に取得されたものとする。その場合、図9(B)のステップS41に示すように、CPU110は、前日の夜間血圧値の全部をメモリ51より読み出す。次に、ステップS42に示すように、CPU110は、前日の夜間血圧値の平均値を算出する。次に、ステップS43に示すように、CPU110は、今回(この例では、午前3時)の血圧値が前日の夜間平均値(夜間血圧値の平均値)に対して予め定められた許容範囲(この例では、20mmHg)を超えて相違しているか否かを判定する。ここで、今回の血圧値が前回の血圧値に対して20mmHg以上相違していれば(ステップS43でYes)、今回の血圧値が過去の血圧値に対して「相違あり」と判定する(ステップS44)。一方、今回の血圧値と前回の血圧値との差が20mmHg未満であれば(ステップS43でNo)、今回の血圧値が過去の血圧値に対して「相違なし」とは、と判定する(ステップS45)。
【0079】
典型的には、CPU110は、図9(A)による判定の仕方と図9(B)による判定の仕方とのうち、予め定められたいずれか一方の判定の仕方によって、今回の血圧値が過去の血圧値に対して相違しているか否かを判定する。ただし、これに限られるものではなく、CPU110は、今回の測定を行う都度、図9(A)と図9(B)との両方による判定を行い、いずれか一方でも「相違あり」と判定された場合、今回の血圧値が過去の血圧値に対して「相違あり」と判定してもよい。これにより、今回の測定値が測定誤差を含む可能性がある場合に、そのことを広く検出できる。または、それに代えて、両方の判定の仕方によって「相違あり」と判定された場合に限り、CPU110は、今回の血圧値が過去の血圧値に対して「相違あり」と判定してもよい。これにより、今回の測定値が測定誤差を含む可能性が高い場合に限り、後述の現象判別およびスケジュール再設定の処理(ステップS22,S23)を行うことができ、省電力を測ることができる。
【0080】
このようにして、図6のステップS21では、今回の血圧値が過去の血圧値に対して相違しているか否かが判定される。これにより、今回の血圧値が測定誤差を含む可能性があるか否かが判定される。
【0081】
ここで、今回の血圧値が過去の血圧値に対して「相違なし」と判定された場合(ステップS21でNo)、ステップS24へ進んで、CPU110は、上記スケジュールで定められた全ての血圧測定が完了したか否かを判断する。
【0082】
ここで、上記スケジュールによって血圧測定が未だ予定されている限り(ステップS24で「未完」)、ステップS12に戻る。そして、上記スケジュールで定められた次回の測定時刻になるのを待つ(ステップS12でNo)。上記スケジュールで定められた次回の測定時刻になると(ステップS12でYes)、CPU110は、ステップS13~S20の処理を繰り返す。
【0083】
一方、図6のステップS21で、今回の血圧値が過去の血圧値に対して「相違あり」と判定された場合(ステップS21でYes)、ステップS22,S23へ進んで、CPU110は、現象判別部およびスケジュール再設定部として働く。すなわち、現象判別部として、今回の血圧値が過去の血圧値に対して上記許容範囲(上の例では、20mmHg)を超えて相違しているとき、被験者に、予め定められた複数種類の現象(この例では、睡眠状態の変化、不規則脈波の発生、姿勢の変化、体動という、血圧値に影響し得る4種類の現象)のうち何れの現象が起こったか否か、を判別する(ステップS22)。さらに、スケジュール再設定部として、上記複数種類の現象のうち何れの現象が起こったか否かに応じて、今回の血圧値の測定時刻に対する再測定の時刻を可変して設定する(ステップS23)。
【0084】
具体的には、現象判別およびスケジュール再設定の処理は、図10に示すフローに従って行われる。この例では、図10におけるステップS51~S55の処理B1と、ステップS56~S60の処理B2とが、並行して行われる。処理B1は、圧力センサ31の出力から算出された脈拍数、脈波間隔のデータに基づく現象判別処理を含んでいる。処理B2は、加速度センサ34の出力から得られた、本体10に対する重力加速度ベクトルの向き(したがって、本体10を装着した被験者の姿勢)を表すデータ、被験者の体動を表すデータに基づく現象判別処理を含んでいる。
【0085】
処理B1では、まず、ステップS51において、CPU110は睡眠状態判定部として働いて、メモリ51に保存されている脈拍数のデータに基づいて、被験者の睡眠状態が変化したか否かを判定する。具体的には、CPU110は、例えば特開2001-061819公報、特開2007-199025号公報に開示されているような公知の手法によって、脈拍数の変化から被験者の睡眠状態が、深い睡眠状態(ノンレム睡眠)であるか浅い睡眠状態(レム睡眠)であるか、睡眠状態から覚醒状態となったか否かを検出する。ここでは、簡単な例として、CPU110は、脈拍数が過去の平均値(例えば、70拍/分とする)から予め定められた許容範囲±20パーセントを超えて変化したとき、被験者の睡眠状態が、本来のノンレム睡眠からレム睡眠または覚醒状態へ変化したと判定する(ステップS51でYes)。このとき、CPU110は、メモリ51の時間差テーブル(表1参照)から、「睡眠状態の変化」に応じた時間差15分間を候補として読み出す(ステップS52)。一方、それ以外の場合は、CPU110は、睡眠状態の変化なしと判定して(ステップS51でNo)、ステップS53へ進む。
【0086】
ステップS53では、CPU110は不規則脈波判定部として働いて、メモリ51に保存されている脈波間隔のデータに基づいて、不規則脈波が発生したか否かを判定する。具体的には、CPU110は、例えば特開2018-102670号公報、特開2019-115614号公報に開示されているような公知の手法によって、過去の平均的な脈波間隔に対して±25%以上ずれた場合に、不規則脈波が発生したと判定する(ステップS53でYes)。このとき、CPU110は、メモリ51の時間差テーブル(表1参照)から、「不規則脈波の発生」に応じた時間差5分間を候補として読み出す(ステップS54)。一方、そうでない場合には、CPU110は、規則脈波であると判定する(ステップS53でNo)。このとき、CPU110は、時間差なし(ゼロ)を候補とする(ステップS55)。
【0087】
処理B2では、まず、ステップS56において、CPU110は姿勢判定部として働いて、メモリ51に保存されている加速度センサ34の出力データ、特に本体10に対する重力加速度ベクトルの向きを表すデータに基づいて、被験者の姿勢が変化したか否かを判定する。具体的には、CPU110は、例えば特許3297971号公報、特開2013-183975号公報に開示されているような公知の手法によって、本体10に対する重力加速度ベクトルの向きが予め定められた閾値を超えた場合に、被験者の姿勢が変化したと判定する(ステップS56でYes)。このとき、CPU110は、メモリ51の時間差テーブル(表1参照)から、「姿勢の変化」に応じた時間差30分間を候補として読み出す(ステップS57)。一方、そうでない場合には、CPU110は、姿勢の変化なしと判定して(ステップS56でNo)、ステップS58へ進む。
【0088】
ステップS58では、CPU110は体動判定部として働いて、メモリ51に保存されている加速度センサ34の出力データ、特に加速度センサ34の出力の変化に基づいて、被験者の体動があったか否かを判定する。具体的には、CPU110は、例えば特開2017-118982号公報に開示されているような公知の手法によって、加速度センサ34の出力の変化に基づいて、被験者の体動があったか否かを判定する。すなわち、血圧測定中において、単位期間(例えば1秒間または数秒間)毎に、加速度センサ34の出力αx,αy,αzの平均値<αx>,<αy>,<αz>を求め、さらに、単位期間中の各時刻の加速度出力αx,αy,αzがそれぞれ平均値<αx>,<αy>,<αz>に対して変動した変動量(αx-<αx>)、(αy-<αy>)、(αz-<αz>)を求める。そして、それらの変動量の2乗和平方根{(αx-<αx>)+(αy-<αy>)+(αz-<αz>)1/2が予め定められた閾値(Δαとする。)を超えたとき、体動があったと判定する(ステップS58でYes)。このとき、CPU110は、メモリ51の時間差テーブル(表1参照)から、「体動」に応じた時間差5分間を候補として読み出す(ステップS59)。一方、そうでない場合には、CPU110は、体動なしと判定する(ステップS58でNo)。このとき、CPU110は、時間差なし(ゼロ)を候補とする(ステップS60)。
【0089】
処理B1,B2の後、ステップS61において、CPU110はスケジュール再設定部として働いて、今回の血圧値の測定時刻に対して上記時間差テーブルから読み出した相対的な時間差を加算して、再測定の時刻を設定する。例えば、今回の血圧値の測定時刻が午前3時であり、上記読み出した相対的な時間差が「睡眠状態の変化」に応じた15分間のみであれば、再測定の時刻を午前3時15分に設定する。これにより、再測定の時刻を円滑に設定できる。
【0090】
ここで、今回の血圧値の測定時刻に、上記複数種類の現象のうち2つ以上の現象が重ねて起こったときは、処理B1,B2によって、上記時間差テーブルから上記相対的な時間差が2つ以上読み出される。例えば、今回の血圧値の測定時刻に、姿勢の変化と不規則脈波の発生とが重ねて起こったときは、処理B1,B2によって、「姿勢の変化」に応じた相対的な時間差30分間と、「不規則脈波の発生」に応じた相対的な時間差5分間とが読み出される。このとき、ステップS61において、CPU110は、上記重ねて起こった2つ以上の現象について上記時間差テーブルから読み出した上記相対的な時間差のうち、最も長い時間差を選択する。上の例では、「姿勢の変化」に応じた相対的な時間差30分間と、「不規則脈波の発生」に応じた相対的な時間差5分間とのうち、最も長い時間差30分間を選択する。このとき、CPU110は、今回の血圧値の測定時刻(例えば、午前3時とする。)に対して、選択した最も長い時間差30分間を加算して、再測定の時刻を午前3時30分に設定する。このように、CPU110は、上記重ねて起こった2つ以上の現象のうち最も長く継続する可能性がある現象に応じて、上記再測定の時刻を設定する。この結果、上記重ねて起こった2つ以上の現象のうち或る現象(最も長く継続する現象。上の例では、姿勢の変化)が未だ継続している間に上記再測定が開始されてしまうような事態を、避けることができる。
【0091】
なお、処理B1,B2(特に、ステップS55,S60)によって、時間差なし(ゼロ)が候補となっていれば、ステップS61において、CPU110は、再測定の時刻を設定しない。
【0092】
このようにして現象判別およびスケジュール再設定の処理(図10、すなわち、図6のステップS22,S23)が完了すると、図6のステップS24へ進んで、上記スケジュール(上述の現象判別およびスケジュール再設定の処理で設定された再測定を含む。)で定められた全ての血圧測定が完了したか否かを判断する。
【0093】
ここで、上記スケジュールによって血圧測定が未だ予定されている限り(ステップS24で「未完」)、ステップS12に戻る。そして、上記スケジュールで定められた次回の測定時刻になるのを待つ(ステップS12でNo)。
【0094】
上記スケジュールで定められた次回の測定時刻になると(ステップS12でYes)、CPU110は、ステップS13~S20の処理を繰り返す。このようにして、CPU110は、上記スケジュールによって血圧測定が未だ予定されている限り(ステップS21で「未完」)、測定を繰り返し、上記スケジュールで定められた全ての血圧測定が完了すると(ステップS24で「終了」)、上記夜間血圧測定モードを終了する。
【0095】
このように、この血圧計100によれば、今回の血圧値が測定誤差を含む可能性がある場合(図6のステップS21でYes)に、被験者に起こった現象に応じて再測定の時刻を適切に設定できる(図6のステップS22,S23)。この結果、起こった現象の割に再測定の時刻が遅すぎたり、起こった現象の割に再測定の時刻が早すぎたりするのを、避けることができる。
【0096】
また、この血圧計100は、被測定部位としての手首(上の例では左手首90としたが、右手首でもよい。)を圧迫するタイプであるから、上腕を圧迫するタイプに比して、ユーザ(被験者)の睡眠を妨げる程度が少ないことが期待される(Imai et al., “Development and evaluation of a home nocturnal blood pressure monitoring system using a wrist-cuff device”, Blood Pressure Monitoring 2018, 23,P318-326)。したがって、この血圧計100は、夜間血圧測定に適する。
【0097】
また、この血圧計100は、手首式血圧計として一体かつコンパクトに構成されているので、ユーザによる取り扱いが便利になる。
【0098】
また、この血圧計100によれば、比較的少ないハードウェア要素(特に、圧力センサ31と加速度センサ34)を用いて、上記複数種類の現象として、睡眠状態の変化、不規則脈波の発生、姿勢の変化、体動という4種類の現象が起こったか否かをそれぞれ判定できる。
【0099】
(変形例)
なお、上述の実施形態では、カフ20(流体袋22)の加圧過程で血圧を算出したが、これに限られるものではない。カフ20の減圧過程で血圧を算出してもよい。
【0100】
また、上述の実施形態では、本体10に設けられた操作部としての測定スイッチ52A、夜間測定スイッチ52Bによって、血圧測定指示、夜間血圧測定モードへの移行指示を入力したが、これに限られるものではない。例えば、本体10に無線通信が可能な通信部を搭載して、この通信部を介して、血圧計100の外部に存在するスマートフォン等から血圧測定指示、夜間血圧測定モードへの移行指示を入力してもよい。
【0101】
また、上述の実施形態では、本体10がカフ20と一体に設けられているものとしたが、これに限られるものではない。本体10は、カフ20と別体として構成され、可撓性のエアチューブを介してカフ20(流体袋22)と流体流通可能に接続されているものとしてもよい。
【0102】
上述の血圧計の作動方法(特に、図5図6図9図10の動作フロー)を、ソフトウェア(コンピュータプログラム)として、CD(コンパクトディスク)、DVD(デジタル万能ディスク)、フラッシュメモリなどの非一時的(non-transitory)にデータを記憶可能な記録媒体に記録してもよい。このような記録媒体に記録されたソフトウェアを、パーソナルコンピュータ、PDA(パーソナル・デジタル・アシスタンツ)、スマートフォンなどの実質的なコンピュータ装置にインストールすることによって、それらのコンピュータ装置に、上述の血圧計の作動方法を実行させることができる。
【0103】
また、上述の実施形態では、血圧計はオシロメトリック法によって血圧を測定したが、これに限られるものではない。血圧計は、マイクロフォンを備えて、コロトコフ音を観測する方法(コロトコフ法)によって血圧を測定してもよい。
【0104】
以上の実施形態は例示であり、この発明の範囲から離れることなく様々な変形が可能である。上述した複数の実施の形態は、それぞれ単独で成立し得るものであるが、実施の形態同士の組みあわせも可能である。また、異なる実施の形態の中の種々の特徴も、それぞれ単独で成立し得るものであるが、異なる実施の形態の中の特徴同士の組みあわせも可能である。
【符号の説明】
【0105】
10 本体
20 血圧測定用カフ
31 圧力センサ
34 加速度センサ
50 表示器
51 メモリ
52 操作部
52A 測定スイッチ
52B 夜間測定スイッチ
110 CPU
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10