(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】紫外線吸収性単量体、アクリル重合体、樹脂組成物および成形体
(51)【国際特許分類】
C08F 20/36 20060101AFI20240423BHJP
C08F 220/36 20060101ALI20240423BHJP
C08F 220/34 20060101ALI20240423BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20240423BHJP
C08L 33/14 20060101ALI20240423BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
C08F20/36
C08F220/36
C08F220/34
C08L23/00
C08L33/14
C08L101/00
(21)【出願番号】P 2019210990
(22)【出願日】2019-11-22
【審査請求日】2022-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2018243259
(32)【優先日】2018-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591183153
【氏名又は名称】トーヨーカラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】日水 秋生
(72)【発明者】
【氏名】増子 啓介
(72)【発明者】
【氏名】三上 譲司
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-090184(JP,A)
【文献】特開平11-348199(JP,A)
【文献】特開2002-120329(JP,A)
【文献】特開2018-168278(JP,A)
【文献】国際公開第2012/161100(WO,A1)
【文献】特開2003-160703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-299/08
C08L 1/00-101/16
C09K 3/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示す紫外線吸収性単量体。
一般式(1)
【化1】
(一般式(1)中、R
1は、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、もしくは炭素数1~20のアルコキシ基を表す。R
2は、炭素数1~20のアルキレン基、
*
1
-R
5-O(CO)NH-R
6-
*
2
もしくは
*
1
-O-R
7-
*
2
もしくは
*
1
-O-R
8-O(CO)NH-R
9-
*
2
を表し、R
5、R
6、R
7、R
8、およびR
9は、それぞれ独立に炭素数1~20のアルキレン基を表す。R
3は、水素原子又はメチル基を表す。R
4は、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、もしくは炭素数3~20のシクロアルキル基を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載の紫外線吸収性単量体を含む、単量体混合物の重合体である、アクリル重合体。
【請求項3】
前記単量体混合物中に、請求項1に記載の紫外線吸収性単量体を2~50質量%含む、請求項2に記載のアクリル重合体。
【請求項4】
前記単量体混合物が、下記一般式(2)で示す不飽和単量体を含む、請求項2または3記載のアクリル重合体。
一般式(2)
【化2】
(式中、R
109は水素原子またはシアノ基を表し、R
110、R
111はそれぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、R
112は水素原子または炭化水素基を表し、Y
1は酸素原子またはイミノ基を表す。)
【請求項5】
請求項2~4いずれか1項に記載のアクリル重合体、および第二の樹脂を含む、樹脂組成物。
【請求項6】
前記第二の樹脂がポリオレフィンである、請求項5記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項5または6に記載の樹脂組成物を含む、成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合可能な紫外線吸収性単量体、そのアクリル重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、塗料、ウインドウフィルム、樹脂成形体(以下、成形体という)は、紫外線による劣化を防止するため紫外線吸収性単量体が配合されていた。しかし、紫外線吸収性単量体は、マイグレーションにより被膜内の凝集、表面への析出、または内容物への移行が起こる場合が多かった。
【0003】
上記用途の中での成形体は、洗剤、飲料、医薬用薬剤、化粧品等の包装材料として使用されていた。特に飲料、医薬用薬剤、化粧品等の用途は、内容物を視認しつつ、その紫外線劣化を防止する必要があったが、紫外線吸収性単量体がマイグレーションすると内容物の品質に悪影響を与える。
【0004】
紫外線吸収剤のマイグレーションを抑制する方法として、特許文献1および2には、エチレン性不飽和結合を有するベンゾトリアゾール系化合物を重合した重合体を使用した樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-72722号公報
【文献】特開2001-114842号公報
【発明の概要】
【0006】
しかし、従来の樹脂組成物は、可視光に近い360nm付近の紫外線を遮断できるものの、可視光に含まれるより長波長領域の光を遮断できなかった。そのため、例えば、410nm付近の光で劣化する医薬品を包装する成形体は、視認性、または医薬品のセルフライフを同時に満たすことは難しかった。
【0007】
本発明は、紫外線、および可視光の短波長領域を遮断しつつ、紫外線吸収成分のマイグレーションを抑制する重合体を合成できる紫外線吸収性単量体、およびアクリル重合体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記一般式(1)で示す紫外線吸収性単量体である。
【0009】
【0010】
一般式(1)中、R1は、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、もしくは炭素数1~20のアルコキシ基を表す。R2は、炭素数1~20のアルキレン基、*
1
-R5-O(CO)NH-R6-*
2
もしくは*
1
-O-R7-*
2
もしくは*
1
-O-R8-O(CO)NH-R9-*
2
を表し、R5、R6、R7、R8、およびR9は、それぞれ独立に炭素数1~20のアルキレン基を表す。R3は、水素原子又はメチル基を表す。R4は、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、もしくは炭素数3~20のシクロアルキル基を表す。
【発明の効果】
【0011】
上記の本発明によれば、紫外線、および可視光の短波長領域を遮断しつつ、紫外線吸収成分のマイグレーションを抑制する重合体を合成できる紫外線吸収性単量体、アクリル重合体、樹脂組成物、および成形体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書の用語を定義する。本明細書において、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリレート」「(メタ)アクリロイル」等は、「アクリル又はメタクリル」、「アクリレート又はメタクリレート」「アクリロイル又はメタクリロイル」等を意味するものとし、例えば「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸又はメタクリル酸」を意味する。不飽和単量体および単量体は、エチレン性不飽和基含有化合物である。
【0013】
本明細書の本発明は、下記一般式(1)で示す紫外線吸収性単量体(以下、紫外線吸収性単量体(A)という)である。紫外線吸収性単量体(A)は、紫外線吸収性基および(メタ)アクリロイル基を有するため重合体を形成できる。本明細書で紫外線吸収性単量体(A)は単独重合可能だが、様々な用途に使用することを考慮すると他の単量体と共重合することが好ましい。
紫外線吸収性単量体(A)、および紫外線吸収性単量体(A)を重合するアクリル重合体は、例えば、塗料、粘着シート、成形体等の紫外線を遮断したい用途に制限なく使用できる。本明細書では、成形体用途への適用を中心に説明する。
【0014】
【0015】
一般式(1)中、R1は、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、もしくは炭素数1~20のアルコキシ基を表す。R2は、炭素数1~20のアルキレン基、-R5-O(CO)NH-R6-もしくは-O-R7-もしくは-O-R8-O(CO)NH-R9-を表し、R5、R6、R7、R8、およびR9は、それぞれ独立に炭素数1~20のアルキレン基を表す。R3は、水素原子又はメチル基を表す。R4は、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、もしくは炭素数3~20のシクロアルキル基を表す。なお、シクロアルキル基は、さらに置換基を有することができる。
【0016】
一般式(1)中、炭素数1~20のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。炭素数3~20のシクロアルキル基は、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基等が挙げられる、炭素数1~20のアルコキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、ノナデシルオキシ基、イコシルオキシ基等が挙げられる。
【0017】
また、一般式(1)中、炭素数1~20のアルキル基は、その水素原子をハロゲンで置換できる。例えば、1-ブロモメチル基、2-ブロモエチル基、2-クロロエチル基、2-ヨードエチル基、3-ブロモプロピル基、4-ブロモブチル基、1-ブロモブチル基、5-ブロモペンチル基、6-ブロモヘキシル基、7-ブロモヘプチル基、8-ブロモオクチル基、9-ブロモノニル基、10-ブロモデシル基、11-ブロモウンデシル基、12-ブロモドデシル基、13-ブロモトリデシル基、14-ブロモテトラデシル基、15-ブロモペンタデシル基、16-ブロモヘキサデシル基、17-ブロモヘプタデシル基、18-ブロモオクタデシル基、19-ブロモノナデシル基、20-ブロモイコシル基等が挙げられる。炭素数3~20のシクロアルキル基は、例えば、2-ブロモシクロプロピル基、2-ブロモシクロペンチル基、4-ブロモシクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数1~20のアルコキシ基は、例えば、1-ブロモメトキシ基、2-ブロモエトキシ基、3-クロロプロポキシ基等が挙げられる。
【0018】
炭素数1~20のアルキレン基は、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基等の直鎖状アルキレン基;プロピレン基、2-メチルトリメチレン基、2-メチルテトラメチレン基等の分枝鎖状アルキレン基等が挙げられる。
炭素数1~20のアルキレン基は、その水素原子をハロゲンで置換できる。。例えば、モノブロモメチレン基、モノブロモエチレン基、モノクロロエチレン基、モノヨードエチレン基、ジブロモエチレン基、モノブロモトリメチレン基、モノブロモテトラメチレン基、モノブロモペンタメチレン基、モノブロモヘキサメチレン基、モノブロモヘプタメチレン基、モノブロモオクタメチレン基等が挙げられる。
【0019】
紫外線吸収性単量体(A)の構造は、以下の化学式が挙げられる。
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
<アクリル重合体>
本明細書のアクリル重合体は、紫外線吸収性単量体(A)を含む単量体混合物の重合体である。上記の通り紫外線吸収性単量体(A)は、単独重合できるが、様々な用途への適用を考慮すると単量体混合物の重合体が好ましい。
【0024】
紫外線吸収性単量体(A)の含有量は、単量体混合物中、2~50質量%が好ましく、5~40質量%がより好ましい。
【0025】
アクリル重合体は、紫外線吸収性基を有するため紫外線を吸収する。また、樹脂(重合体)構造に紫外線吸収性基が結合しているため、紫外線吸収成分のマイグレーションを大幅抑制できる。
【0026】
本明細書のアクリル重合体は、前記単量体混合物中にその他単量体を含有できる。本明細書において単量体混合物は、下記一般式(2)で示す不飽和単量体を含むことが好ましい。
【0027】
【0028】
一般式(2)中、R109は、水素原子またはシアノ基を表し、R110、R111は、それぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、R112は水素原子または炭化水素基を表し、Y1は酸素原子またはイミノ基を表す。)
【0029】
一般式(2)で示す不飽和単量体を使用して合成したアクリル重合体は、その「窒素含有複素環により光安定性が向上する。
【0030】
一般式(2)で示す不飽和単量体は、例えば、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルアミノ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等が非限定的に挙げられる。
【0031】
一般式(2)で示す不飽和単量体の含有量は、単量体混合物100質量%中、3~30質量%であることが好ましく、5~20質量%がより好ましい。適量含有すると、光安定性、および第二の樹脂との相溶性を両立しやすい。
【0032】
前記単量体混合物は、一般式(2)で示す不飽和単量体以外のその他単量体として、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、クロトン酸エステル、ビニルエステル、マレイン酸ジエステル、フマル酸ジエステル、イタコン酸ジエステル、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルアルコールのエステル、スチレン系化合物、(メタ)アクリロニトリル、酸性基含有モノマーが挙げられる。
【0033】
(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸t-オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸アセトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-(2-メトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸β-フェノキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸トリフロロエチル、(メタ)アクリル酸オクタフロロペンチル、(メタ)アクリル酸パーフロロオクチルエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニルオキシエチル等が挙げられる。
【0034】
クロトン酸エステルは、例えば、クロトン酸ブチル、クロトン酸ヘキシル等が挙げられる。
【0035】
ビニルエステルは、例えば、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルメトキシアセテート、安息香酸ビニル等が挙げられる。マレイン酸ジエステルは、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等が挙げられる。
【0036】
フマル酸ジエステルは、例えば、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル等が挙げられる。
【0037】
イタコン酸ジエステルは、例えば、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル等が挙げられる。
【0038】
(メタ)アクリルアミドは、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチルアクリル(メタ)アミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-(2-メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-フェニル(メタ)アクリルアミド、N-ベンジル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジアセトンアクリルアミド等が挙げられる。
【0039】
ビニルエーテルは、例えば、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、及びメトキシエチルビニルエーテル等が挙げられる。スチレン系化合物は、例えば、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヒドロキシスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、クロロメチルスチレン、酸性物質により脱保護可能な基(例えばt-Bocなど)で保護されたヒドロキシスチレン、ビニル安息香酸メチル、及びα-メチルスチレン等が挙げられる。
【0040】
酸性基含有モノマーは、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α-クロルアクリル酸、けい皮酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和ジカルボン酸またはその酸無水物;3価以上の不飽和多価カルボン酸またはその酸無水物;こはく酸モノ(2-アクリロイロキシエチル)、こはく酸モノ(2-メタクリロイロキシエチル)、フタル酸モノ(2-アクリロイロキシエチル)、フタル酸モノ(2-メ
タクリロイロキシエチル)等の2価以上の多価カルボン酸のモノ〔(メタ)アクリロイロキシアルキル〕エステル;ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノアクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノメタクリレート等の両末端カルボキシポリマーのモノ(メタ)アクリレート類等を挙げられる。
【0041】
その他単量体は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0042】
アクリル重合体の合成に使用する単量体混合物は、下記一般式(3)で示す不飽和単量体、および下記一般式(4)で示す不飽和単量体のうち少なくとも一方を含有できる。
【0043】
【0044】
一般式(3)中、R16は、水素原子又はメチル基を表す。Zは、炭素数が10以上の炭化水素基を表す。
【0045】
一般式(3)で示す不飽和単量体は、上記(メタ)アクリル酸エステルに含まれる。アクリル重合体は、一般式(4)で示す不飽和単量体を使用すると、第二の樹脂、特にポリオレフィンとの相溶性が向上する。上記Zが炭素数10以上の炭化水素基であることで、アクリル重合体の疎水性が高くなり、同様に疎水性が高いポリオレフィンとの相溶性が向上する。
【0046】
一般式(3)で示す不飽和単量体は、例えば、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、イソステアリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートが好ましく、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0047】
一般式(4)中、R17は、水素原子又は炭素数1~8の炭水素基を表す。
【0048】
一般式(4)で示す不飽和単量体は、上記スチレン系化合物に含まれる。アクリル重合体は、一般式(4)で示す不飽和単量体を使用すると、第二の樹脂、特にポリオレフィンとの相溶性が向上する。
【0049】
一般式(4)で示す不飽和単量体は、例えば、スチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。
【0050】
一般式(3)で示す不飽和単量体、および一般式(4)で示す不飽和単量体の合計する含有量は、単量体混合物中、30~97質量%が好ましく、50~90質量%がより好ましい。適量含有すると相溶性と透明性がより向上する。
【0051】
アクリル重合体の合成は、例えば、アニオン重合、リビングアニオン重合、カチオン重合、リビングカチオン重合、フリーラジカル重合、及びリビングラジカル重合等が挙げられる。これらの中でもフリーラジカル重合、リビングラジカル重合が好ましい。
【0052】
フリーラジカル重合は、重合開始剤を使用するのが好ましい。重合開始剤は、例えば、アゾ系化合物、過酸化物が好ましい。アゾ系化合物は、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、または2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等が挙げられる。過酸化物は、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、またはジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0053】
重合開始剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0054】
反応温度は、40~150℃が好ましく、50~110℃がより好ましい。反応時間は、3~30時間が好ましく、5~20時間がより好ましい。
【0055】
リビングラジカル重合は、一般的なラジカル重合に起こる副反応が抑制され、更には、重合の成長が均一に起こる為、容易にブロックポリマーや分子量の揃った樹脂を合成できる。
【0056】
リビングラジカル重合は、有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤とし、遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合法は、広範囲の単量体に適応できる点、既存の設備に適応可能な重合温度を採用できる点で好ましい。原子移動ラジカル重合法は、下記の参考文献1~8等に記載された方法で行うことができる。
(参考文献1)Fukudaら、Prog.Polym.Sci.2004,29,329
;
(参考文献2)Matyjaszewskiら、Chem.Rev.2001,101,2921
(参考文献3)Matyjaszewskiら、J.Am.Chem.Soc.1995,117,5614
(参考文献4)Macromolecules 1995,28,7901,Scien
ce,1996,272,866
(参考文献5)国際公開第96/030421号
(参考文献6)国際公開第97/018247号
(参考文献7)特開平9-208616号公報
(参考文献8)特開平8-41117号公報
【0057】
アクリル重合体の合成には、有機溶剤を用いることが好ましい。有機溶剤は、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、
ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、またはジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0058】
有機溶剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0059】
アクリル重合体の質量平均分子量は、1,000~500,000が好ましく、3,000~15,000がより好ましい。なお、質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定する。
【0060】
本明細書の樹脂組成物は、アクリル重合体、および他の成分を含むことが好ましい。他の成分として第二の樹脂が好ましい。
第二の樹脂は、透明性を有する樹脂が好ましく、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート等が挙げられる。これらの中でもポリオレフィンが好ましい。
【0061】
<ポリオレフィン>
ポリオレフィンは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン-1、およびポリ-4-メチルペンテン、ならびにこれらの共重合体が挙げられる。
ポリエチレンは、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンが挙げられる。
ポリプロピレンは、例えば、結晶性または非晶性ポリプロピレンが挙げられる。
これらを用いた共重合体は、例えば、エチレン-プロピレンのランダム、ブロックあるいはグラフト共重合体、α-オレフィンとエチレンあるいはプロピレンの共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体およびエチレン-アクリル酸共重合体等が挙げられる。これらの中でも結晶性または非晶性ポリプロピレン、エチレン-プロピレンのランダム、ブロックあるいはグラフト共重合体が好ましく、プロピレン-エチレンブロック共重合体がより好ましい。また安価で、比重が小さいために成形品を軽量化できる観点からはポリプロピレン系樹脂が好ましい。
【0062】
ポリオレフィンのメルトフローレイト(MFR)は、1~100(g/10分)が好ましい。なお、MFRはJISK-7210に準拠して求めた数値である。
【0063】
<ポリエステル>
ポリエステルは、分子の主鎖にエステル結合を有する樹脂であり、ジカルボン酸(その誘導体を含む)と、ジオール(2価アルコールまたは2価フェノール)とから合成した重縮合物;、ジカルボン酸(その誘導体を含む)と、環状エーテル化合物とから合成した重縮合物;、環状エーテル化合物の開環重合物等が挙げられる。ポリエステルは、ジカルボン酸とジオールでの重合体によるホモポリマー、複数の原料を使用するコポリマー、これらを混合するポリマーブレンド体が挙げられる。なお、ジカルボン酸の誘導体とは、酸無水物、エステル化物である。ジカルボン酸は、脂肪族および芳香族の2種類のジカルボン酸があるところ、耐熱性が向上する芳香族がより好ましい。
【0064】
芳香族ジカルボン酸は、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、クロルフタル酸、ニトロフタル酸、p-カルボキシルフェニル酢酸、m-フェニレンジグリゴール酸、p-フェニレンジグリコール酸、ジフェニルジ酢酸、ジフェニル-p,p′-ジカルボン酸、ジフェニル-4,4′-ジ酢酸、ジフェニルメタン-p,p′-ジカルボン酸、ジフェニルエタン-m,m′-ジカルボン酸、スチルベンジルカルボン酸、ジフェニルブタン-p,p′-ジカルボン酸、ベンゾフェノン-4,4′-ジカルボン酸、ナフタリン-1,4-ジカルボン酸、ナフタリン-1,5-ジカルボン酸、ナフタリン-2,6-ジカルボン酸、ナフタリン-2,7-ジカルボン酸、p-カルボキシフェノキシ酢酸、p-カルボキシフェノキシブチル酸、1,2-ジフェノキシプロパン-p,p′-ジカルボン酸、1,5-ジフェノキシペンタン-p,p′-ジカルボン酸、1,6-ジフェノキシヘキサン-p,p′-ジカルボン酸、p-(p-カルボキシフェノキシ)安息香酸、1,2-ビス(2-メトキシフェノキシ)-エタン-p,p′-ジカルボン酸、1,3-ビス(2-メトキシフェノキシ)プロパン-p,p′-ジカルボン酸、1,4-ビス(2-メトキシフェノキシ)ブタン-p,p′-ジカルボン酸、1,5-ビス(2-メトキシフェノキシ)-3-オキシペンタン-p,p′-ジカルボン酸等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸は、例えば、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、コルク酸、マゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。
【0065】
ジカルボン酸は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0066】
2価アルコールは、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、2,2-ジメチルプロパン-1,4-ジオール、cis-2-ブテン-1,4-ジオール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらの中でもエチレングリコール、ブタン-1,4-ジオール、シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
2価フェノールは、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノールA等が挙げられる。
環状エーテル化合物は、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0067】
ジカルボン酸は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0068】
<ポリカーボネート>
ポリカーボネートは、2価のフェノールとカーボネート前駆体とを公知の方法で合成した化合物である。2価のフェノールは、例えば、ハイドロキノン、レゾルシノール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ビドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、ビス(4-ビドロキシフェニル)サルファイド等が挙げられる。これらの中でビス(4-ビドロキシフェニル)アルカン系が好ましく、ビスフェノールAと称される2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンがより好ましい。
カーボネート前駆体は、例えば、ホスゲン、ジフェニルカーボネート、2価のフェノールのジハロホルメート等が挙げられる。この中でもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0069】
2価のフェノール、およびカーボネート前駆体は、それぞれ単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0070】
第二の樹脂の数平均分子量は、30,000~500,000が好ましい。
【0071】
アクリル重合体の含有量は、第二の樹脂100質量部に対して、0.01~10質量部が好ましい。
【0072】
本明細書の樹脂組成物は、ワックスを含有できる。
【0073】
ワックスは、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等が挙げられる。ワックスの融点は、50~180℃が好ましく、80~170℃がより好ましい。なお、ワックスの融点は、示差走査熱量計を用いて窒素雰囲気下で測定する。なお、ポリオレフィン(A)は、融点を有さず、軟化点を有する化合物である。
【0074】
ワックスの数平均分子量は、500~25000が好ましく、1000~15000がより好ましい。なお、数平均分子量はJIS K2207:1996(日本工業規格)に準拠して測定した数値である。
【0075】
ワックスの含有量は、第二の樹脂100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましい。
【0076】
本明細書の樹脂組成物は、その他添加剤を含有できる。
その他添加剤は、例えば、酸化防止剤、光安定剤、分散剤等が挙げられる。
【0077】
本明細書の樹脂組成物は、たとえば、アクリル重合体を高濃度で配合したマスターバッチとして製造することが好ましい。マスターバッチは、例えば、アクリル重合体と第二の樹脂を溶融混練し、ペレタイザーを使用してペレット状に製造できる。なお、アクリル重合体の凝集を防ぐため、予め、アクリル重合体とワックスを溶融混練した分散体を作製した後、第二の樹脂と共に、溶融混錬してマスターバッチを作製することが好ましい。ここで、分散体の作製は、ブレンドミキサーや3本ロールミルを用いることが好ましい。
アクリル重合体は、成形体が含む配合比率を成形時に配合するよりも、一旦、マスターバッチとして樹脂組成物に予備分散した後に、希釈樹脂(熱可塑性樹脂)と配合(溶融混錬)して所望の成形体を製造すると、アクリル重合体を成形体内に均一に分散しやすくなる。
【0078】
樹脂組成物をマスターバッチとして作製する場合、第二の樹脂100質量部に対して、アクリル重合体を1~30質量部配合することが好ましい。マスターバッチ(X)と希釈樹脂(Y)との質量比は、X/Y=1/5~1/100が好ましい。この範囲にすると成形品は、紫外線、および可視光の短波長領域の遮断、ならびに内容物の視認性を高度に両立できる。
【0079】
希釈樹脂は、第二の樹脂に限定されず、第二の樹脂と相溶性の良い熱可塑性樹脂を適宜選択して使用できる。
【0080】
溶融混練は、例えば、単軸混練押出機、二軸混練押出機、タンデム式二軸混練押出機等を用が好ましい。溶融混錬温度は、第二の樹脂の種類により異なるが、通常150~250℃程度である。
【0081】
本明細書の成形体は、樹脂組成物を含む。本明細書の成形体は、原料に紫外線吸収性単量体(A)を使用しているため、紫外線、および可視光の短波長領域の遮断しつつ、内容物を視認できる。これにより、医薬品や化粧品等のセルフライフが延長できる。
【0082】
成形体の成形方法は、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形等が挙げられる。押出成形は、例えばコンプレッション成形、パイプ押出成形、ラミネート成形、Tダイ成形、インフレーション成形、溶融紡糸等が挙げられる。
【0083】
成形温度は、希釈樹脂の軟化点によるところ、通常160~240℃程度である。
【0084】
本明細書の成形品は、例えば、医療用薬剤、化粧品、食品用容器および包装材、雑貨、繊維製品、医薬品用容器、各種産業用被覆材、自動車用部品、家電製品、住宅等の建材、トイレタリー用品などの用途で幅広く使用できる。
【実施例】
【0085】
以下に、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の技術思想を逸脱しない限り、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、「質量部」は「部」、「質量%」は「%」と記載する。表中の配合量は、質量部である。
【0086】
実施例で使用したポリオレフィンを以下に示す。なお、ポリオレフィンの数平均分子量は、全て30,000以上である。
(C-1)ポリエチレン(サンテックLD M2270、MFR=7g/10min、旭化成ケミカルズ社製)
(C-2)ポリエチレン(ノバテックUJ790、MFR=50g/10min、日本ポリエチレン社製)
(C-3)ポリプロピレン(ノバテックPP FA3EB、MFR=10.5g/10min、日本ポリプロ社製)
(C-4)ポリプロピレン(プライムポリプロJ226T、MFR=20g/10min、プライムポリマー社製)
【0087】
また実施例で使用したワックスを以下に示す。
(D-1)ポリエチレンワックス(サンワックス131-P 数平均分子量3,500、融点105℃、三洋化成工業社製)
(D-2)ポリエチレンワックス(ハイワックス405MP 数平均分子量4,500、融点120℃、三井化学社製)
(D-3)ポリプロピレンワックス(ハイワックスNP056 数平均分子量7,200、融点130℃、三井化学社製)
【0088】
[紫外線吸収性単量体の製造例]
(紫外線吸収性単量体(A-1))
【0089】
【0090】
上記の中間体1について、4-アミノ-5-ブロモ-N-メチルフタルイミドとバニリルアルコールを原料とし、WO2014/165434の実施例の合成法に準じて合成を行った。
続いて、温度計、攪拌機を具備した200mL4つ口フラスコに、テトラヒドロフランを100g、先の中間体1を28.6mmol仕込み、室温で撹拌した。その後、アクリロイルクロリドを62.9mmol、少しずつ滴下した。その後、トリエチルアミンを85.7mmol、少しずつ滴下し、室温で1時間撹拌した。一方、500mLビーカーに水を300g仕込み、先の反応液を少しずつ滴下し、加熱撹拌して紫外線吸収性単量体が析出するまでテトラヒドロフランを揮発させ、ろ過した。その後、水300gでふりかけ洗浄を行った。得られたウエットケーキを水300g中に戻して室温で30分リスラリーを行い、ろ過した。その後、水300gでふりかけ洗浄を行った。次いで40℃で減圧乾燥を行い、紫外線吸収性単量体(A-1)を得た。
【0091】
(紫外線吸収性単量体(A-2))
紫外線吸収性単量体(A-1)の製造で使用したアクリロイルクロリドの代わりにメタクリロイルクロリドを使用した以外は同様に行い、紫外線吸収性単量体(A-2)を得た。
【0092】
(紫外線吸収性単量体(A-3))
温度計、攪拌機を具備した200mL4つ口フラスコに、テトラヒドロフランを100g、先の中間体1を28.6mmol仕込み、室温で撹拌した。その後、2-アクリロイルオキシエチルイソシアナートを28.6mmol添加し、さらにネオスタンU-810(スズ系触媒 日東化成製)を0.02mmol添加し、60℃で5時間撹拌した。その後、加熱撹拌して紫外線吸収性単量体が析出するまでテトラヒドロフランを揮発させ、さらに40℃で減圧乾燥を行い、紫外線吸収性単量体(A-3)を得た。
【0093】
(紫外線吸収性単量体(A-4))
紫外線吸収性単量体(A-3)の製造で使用した2-アクリロイルオキシエチルイソシアナートの代わりに2-メタクリロイルオキシエチルイソシアナートを使用した以外は同様に行い、紫外線吸収性単量体(A-4)を得た。
【0094】
(紫外線吸収性単量体(A-5))
中間体2
【化9】
【0095】
上記の中間体2について、中間体1の合成で使用したバニリルアルコールの代わりに4-ヒドロキシベンジルアルコールを使用した以外は中間体1と同様な方法で合成した。
続いて、温度計、攪拌機を具備した200mL4つ口フラスコに、テトラヒドロフランを100g、先の中間体2を28.6mmol仕込み、室温で撹拌した。その後、アクリロイルクロリドを62.9mmol、少しずつ滴下した。その後、トリエチルアミンを85.7mmol、少しずつ滴下し、室温で1時間撹拌した。一方、500mLビーカーに水を300g仕込み、先の反応液を少しずつ滴下し、加熱撹拌して紫外線吸収性単量体が析出するまでテトラヒドロフランを揮発させ、ろ過した。その後、水300gでふりかけ洗浄を行った。得られたウエットケーキを水300g中に戻して室温で30分リスラリーを行い、ろ過した。その後、水300gでふりかけ洗浄を行った。次いで40℃で減圧乾燥を行い、紫外線吸収性単量体(A-5)を得た。
【0096】
(紫外線吸収性単量体(A-6))
紫外線吸収性単量体(A-5)の製造で使用したアクリロイルクロリドの代わりにメタクリロイルクロリドを滴下した以外は同様に行い、紫外線吸収性単量体(A-6)を得た。
【0097】
(紫外線吸収性単量体(A-7))
温度計、攪拌機を具備した200mL4つ口フラスコに、テトラヒドロフランを100g、先の中間体2を28.6mmol仕込み、室温で撹拌した。その後、2-アクリロイルオキシエチルイソシアナートを28.6mmol添加し、さらに日東化成製ネオスタン
U-810を0.02mmol添加し、60℃で5時間撹拌した。その後、加熱撹拌して紫外線吸収性単量体が析出するまでテトラヒドロフランを揮発させ、さらに40℃で減圧乾燥を行い、紫外線吸収性単量体(A-7)を得た。
【0098】
(紫外線吸収性単量体(A-8))
紫外線吸収性単量体(A-7)の製造で使用した2-アクリロイルオキシエチルイソシアナートの代わりに2-メタクリロイルオキシエチルイソシアナートを使用した以外は同様に行い、紫外線吸収性単量体(A-8)を得た。
【0099】
(紫外線吸収性単量体(A-9))
中間体3
【化10】
【0100】
上記の中間体3について、中間体1の合成で使用したバニリルアルコールの代わりに4-ヒドロキシ-3-メチルベンジルアルコールを使用した以外は中間体1と同様な方法で合成した。
続いて、温度計、攪拌機を具備した200mL4つ口フラスコに、テトラヒドロフランを100g、先の中間体3を28.6mmol仕込み、室温で撹拌した。その後、アクリロイルクロリドを62.9mmol、少しずつ滴下した。その後、トリエチルアミンを85.7mmol、少しずつ滴下し、室温で1時間撹拌した。一方、500mLビーカーに水を300g仕込み、先の反応液を少しずつ滴下し、加熱撹拌して紫外線吸収性単量体が析出するまでテトラヒドロフランを揮発させ、ろ過した。その後、水300gでふりかけ洗浄を行った。得られたウエットケーキを水300g中に戻して室温で30分リスラリーを行い、ろ過した。その後、水300gでふりかけ洗浄を行った。次いで40℃で減圧乾燥を行い、紫外線吸収性単量体(A-9)を得た。
【0101】
(紫外線吸収性単量体(A-10))
紫外線吸収性単量体(A-9)の製造で使用したアクリロイルクロリドの代わりにメタクリロイルクロリドを滴下した以外は同様に行い、紫外線吸収性単量体(A-10)を得た。
【0102】
(紫外線吸収性単量体(A-11))
上記の中間体3の合成に続いて、温度計、攪拌機を具備した200mL4つ口フラスコに、テトラヒドロフランを100g、先の中間体3を28.6mmol仕込み、室温で撹拌した。その後、2-アクリロイルオキシエチルイソシアナートを28.6mmol添加し、さらに日東化成製ネオスタンU-810を0.02mmol添加し、60℃で5時間撹拌した。その後、加熱撹拌して紫外線吸収性単量体が析出するまでテトラヒドロフランを揮発させ、さらに40℃で減圧乾燥を行い、紫外線吸収性単量体(A-11)を得た。
【0103】
(紫外線吸収性単量体(A-12))
紫外線吸収性単量体(A-11)の製造で使用した2-アクリロイルオキシエチルイソシアナートの代わりに2-メタクリロイルオキシエチルイソシアナートを使用した以外は同様に行い、紫外線吸収性単量体(A-12)を得た。
【0104】
(紫外線吸収性単量体(A-13))
中間体4
【化11】
【0105】
上記の中間体4について、中間体1とn-ブチルアミンを原料とし、WO2014/165434の実施例の合成法に準じて合成を行った。
続いて、温度計、攪拌機を具備した200mL4つ口フラスコに、テトラヒドロフランを100g、先の中間体4を28.6mmol仕込み、室温で撹拌した。その後、アクリロイルクロリドを62.9mmol、少しずつ滴下した。その後、トリエチルアミンを85.7mmol、少しずつ滴下し、室温で1時間撹拌した。一方、500mLビーカーに水を300g仕込み、先の反応液を少しずつ滴下し、加熱撹拌して紫外線吸収性単量体が析出するまでテトラヒドロフランを揮発させ、ろ過した。その後、水300gでふりかけ洗浄を行った。得られたウエットケーキを水300g中に戻して室温で30分リスラリーを行い、ろ過した。その後、水300gでふりかけ洗浄を行った。次いで40℃で減圧乾燥を行い、紫外線吸収性単量体(A-13)を得た。
【0106】
(紫外線吸収性単量体(A-14))
紫外線吸収性単量体(A-13)の製造で使用したアクリロイルクロリドの代わりにメタクリロイルクロリドを滴下した以外は同様に行い、紫外線吸収性単量体(A-14)を得た。
【0107】
(紫外線吸収性単量体(A-15))
上記の中間体4の合成に続いて、温度計、攪拌機を具備した200mL4つ口フラスコに、テトラヒドロフランを100g、先の中間体4を28.6mmol仕込み、室温で撹拌した。その後、2-アクリロイルオキシエチルイソシアナートを28.6mmol添加し、さらに日東化成製ネオスタンU-810を0.02mmol添加し、60℃で5時間撹拌した。その後、加熱撹拌して紫外線吸収性単量体が析出するまでテトラヒドロフランを揮発させ、さらに40℃で減圧乾燥を行い、紫外線吸収性単量体(A-15)を得た。
【0108】
(紫外線吸収性単量体(A-16))
紫外線吸収性単量体(A-15)の製造で使用した2-アクリロイルオキシエチルイソシアナートの代わりに2-メタクリロイルオキシエチルイソシアナートを使用した以外は同様に行い、紫外線吸収性単量体(A-16)を得た。
【0109】
(紫外線吸収性単量体(A-17))
中間体5
【化12】
【0110】
上記の中間体5について、中間体1の合成で使用したバニリルアルコールの代わりに4-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メトキシフェノールを使用した以外は中間体1と同様な方法で合成した。
続いて、温度計、攪拌機を具備した200mL4つ口フラスコに、テトラヒドロフランを100g、先の中間体5を28.6mmol仕込み、室温で撹拌した。その後、アクリロイルクロリドを62.9mmol、少しずつ滴下した。その後、トリエチルアミンを85.7mmol、少しずつ滴下し、室温で1時間撹拌した。一方、500mLビーカーに水を300g仕込み、先の反応液を少しずつ滴下し、加熱撹拌して紫外線吸収性単量体が析出するまでテトラヒドロフランを揮発させ、ろ過した。その後、水300gでふりかけ洗浄を行った。得られたウエットケーキを水300g中に戻して室温で30分リスラリーを行い、ろ過した。その後、水300gでふりかけ洗浄を行った。40℃で減圧乾燥を行い、紫外線吸収性単量体(A-17)を得た。
【0111】
(紫外線吸収性単量体(A-18))
紫外線吸収性単量体(A-17)の製造で使用したアクリロイルクロリドの代わりにメタクリロイルクロリドを滴下した以外は同様に行い、紫外線吸収性単量体(A-18)を得た。
【0112】
(紫外線吸収性単量体(A-19))
温度計、攪拌機を具備した200mL4つ口フラスコに、テトラヒドロフランを100g、先の中間体5におけるメトキシ基を水素原子に置換した化合物を28.6mmol仕込み、室温で撹拌した。その後、2-アクリロイルオキシエチルイソシアナートを28.6mmol添加し、さらに日東化成製ネオスタンU-810を0.02mmol添加し、60℃で5時間撹拌した。その後、加熱撹拌して紫外線吸収性単量体が析出するまでテトラヒドロフランを揮発させ、さらに40℃で減圧乾燥を行い、紫外線吸収性単量体(A-19)を得た。
【0113】
(紫外線吸収性単量体(A-20))
紫外線吸収性単量体(A-19)の製造で使用した2-アクリロイルオキシエチルイソシアナートの代わりに2-メタクリロイルオキシエチルイソシアナートを使用した以外は同様に行い、紫外線吸収性単量体(A-20)を得た。
【0114】
[アクリル重合体の製造例]
(アクリル重合体(B-1))
温度計、攪拌機、蒸留管、冷却器を具備した4つ口セパラブルフラスコに、メチルエチルケトン75.0部を仕込み窒素気流下で75℃に昇温した。別途、紫外線吸収性単量体(A-1)を10部、ジシクロペンタニルメタクリレートを45部、スチレンを45部、2.2’-アゾビス(イソ酪酸メチル)を5.0部、およびメチルエチルケトン20.0部を均一にした後、滴下ロートに仕込み、4つ口セパラブルフラスコに取り付け、2時間かけて滴下した。滴下終了2時間後、サンプリングを行い重合転化率が98%以上である事を確認し、50℃へ冷却した。このようにして不揮発分が50質量%のアクリル重合体(B-1)溶液を得た。
【0115】
(アクリル重合体(B-2)~(B-31))
アクリル重合体(B-1)の合成で使用した紫外線吸収性単量体およびその他不飽和単量体を表1に示すように変更した以外はアクリル重合体(B-1)と同様に行い、アクリル重合体(B-2)~(B-31)をそれぞれ得た。
【0116】
【0117】
表中の製品名は以下の通りである。
アデカスタブLA-82(ADEKA製)下記一般式(2)で示す不飽和単量体
【0118】
【0119】
(実施例1)
〔マスターバッチの製造〕
ワックス(D‐1)100質量部、およびアクリル重合体(B-1)100質量部を混合し、3本ロールミルを使用して160℃で混練を行いアクリル重合体(B-1)の分散体を得た。次いで、ポリオレフィン(C-1)100質量部と共に得られた上記分散体10質量部をヘンシェルミキサーで混合した。次いで、スクリュー径30mmの単軸押出機にて180℃で溶融混練した後、ペレタイザーを用いてペレット状にカッティングしてマスターバッチを得た。
【0120】
[フィルム成形]
希釈樹脂としてポリオレフィン(C-1)100質量部に対して、得られたマスターバッチ10質量部を混合した。次いで、T-ダイ成形機(東洋精機製)を用いて、温度180℃で溶融混合し成形を行い厚さ250μmのフィルムを得た。
【0121】
(実施例2~37、比較例1)
実施例1の材料を表2に示す材料および配合量に変更した以外は、実施例1と同様にして、マスターバッチを製造し、次いで実施例2~37、比較例1のフィルムを製造した。なお、比較例では、実施例1のアクリル重合体(B-1)の代わりに、中間体1を用いた。なお、本明細書で実施例7は、参考例である。
【0122】
[フィルム成形]
希釈樹脂としてポリオレフィン(C-1)~(C-4)のいずれか100質量部に対して、得られたマスターバッチ10質量部を混合した。次いで、T-ダイ成形機(東洋精機製)を用いて、温度180℃で溶融混合し成形を行い厚さ250μmのフィルムを得た。
【0123】
[紫外線吸収性]
得られたフィルムの透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所社製)を用いて測定した。評価基準は以下の通りである。
〇:波長280~420nmの光透過率が全領域にわたって2%以下:良好
△:波長280~420nmの光透過率が一部2%以上:実用域
×:波長280~420nmの光透過率が全領域にわたって2%以上:実用不可
【0124】
[透明性]
得られたフィルムの透明性を目視評価した。
◎:濁りが全く認められない。非常に良好
〇:濁りがほとんど認められない。良好
△:濁りがわずかに認められる。実用域
×:明らかに濁りが認められる。実用不可
【0125】
[耐光性試験]
得られたフィルムをキセノンウェザーメーターで、300~400nmが60W/m2の照度で1500時間暴露した。
◎:濁りが全く認められない。非常に良好
〇:濁りがほとんど認められない。良好
△:濁りが若干認められる。実用域
×:明らかに濁りが認められる。実用不可
【0126】
[マイグレーション評価]
得られたフィルムを2枚の軟質塩化ビニルシートで挟み、熱プレス機を使用して圧力100g/cm2・温度170℃30秒間の条件で加熱圧着した。次いで、直ちにフィルムを外して軟質塩化ビニルシートへのマイグレーションを紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所社製)を用いて評価した。評価は、上記の処理を行った軟質塩化ビニルシート上の場所5点を選び、紫外領域の吸光度を測定し、その平均を算出することで行った。
○:280~400nmにおける吸光度が検出されない(0.05以下)。
△:280~400nmにおける吸光度が0.05以上0.2以下。
×:280~400nmにおける吸光度が0.2以上。
【0127】