(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】画像読取装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/00 20060101AFI20240423BHJP
H04N 1/04 20060101ALI20240423BHJP
G03G 21/16 20060101ALI20240423BHJP
G03B 27/62 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
H04N1/00 519
H04N1/12 Z
G03G21/16 104
G03G21/16 133
G03B27/62
(21)【出願番号】P 2020018454
(22)【出願日】2020-02-06
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【氏名又は名称】亀井 岳行
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100108925
【氏名又は名称】青谷 一雄
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【氏名又は名称】中村 智廣
(72)【発明者】
【氏名】真原 毅
(72)【発明者】
【氏名】小林 健
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-271738(JP,A)
【文献】特開2019-140493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
H04N 1/04
G03G 21/16
G03B 27/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に開閉可能に装着され、原稿を押さえる原稿押さえ手段と、
圧縮変形されて前記原稿押さえ手段に対し開く方向の弾性復元力を作用させる復元力作用手段と、
前記原稿押さえ手段を開くとき操作者が手で把持することにより前記復元力作用手段の圧縮変形を解除する解除手段と、
を備え
、
前記解除手段は、前記原稿押さえ手段を開くときに前記操作者が手で把持することにより前記復元力作用手段の圧縮変形を解除する把持部と、前記原稿押さえ手段を開いた後に前記復元力作用手段を圧縮変形させる圧縮変形部を有する画像読取装置。
【請求項2】
前記圧縮変形部は、前記復元力作用手段側に屈曲した状態で装着され、前記復元力作用手段が前記原稿押さえ手段を開いた後に前記復元力作用手段を圧縮変形させた状態に保持するラッチ部を備える
請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
装置本体に開閉可能に装着され、原稿を押さえる原稿押さえ手段と、
圧縮変形されて前記原稿押さえ手段に対し開く方向の弾性復元力を作用させる復元力作用手段と、
前記原稿押さえ手段を開くとき操作者が手で把持することにより前記復元力作用手段の圧縮変形を解除する解除手段と、
を備え、
前記解除手段は、通常、前記復元力作用手段を圧縮変形させ且つ当該圧縮変形させた状態を保持するよう付勢手段により付勢されている
とともに、操作者が前記解除手段から手を放したときに前記復元力作用手段を圧縮変形させる画像読取装置。
【請求項4】
原稿の画像を読み取る画像読取手段と、
前記画像読取手段で読み取られた前記原稿の画像を形成する画像形成手段と、
を備え、
前記画像読取手段として
請求項1乃至3のいずれかに記載の画像読取装置を用いた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像読取装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像読取装置に関する技術としては、例えば、特許文献1及び2等に開示されたものが既に提案されている。
【0003】
特許文献1は、ヒンジ部を介して画像読取部の上方に回動自在に支持され、画像読取部の上面に配置された原稿載置台に原稿を搬送する自動原稿搬送装置において、自動原稿搬送装置は、原稿給紙トレイと、原稿給紙トレイの下方に配置される原稿排出トレイと、原稿給紙トレイ及び原稿給紙トレイの側方に配置され、原稿給紙トレイから原稿排出トレイまで原稿を搬送する原稿搬送路と、を有し、自動原稿搬送装置の回動端側の原稿搬送路に対向する側面の、画像読取部から回動端側に突出する操作部と上下方向に重ならない位置に、握り手形状の把持部を設けるように構成したものである。
【0004】
特許文献2は、記録部を備えた本体フレームの上に、ヒンジを介して開閉可能に搭載した上部フレームに、画像読取り装置を備えてなる画像形成装置において、上部フレームと本体フレームの間に、その一方の側に伸縮性弾力付勢部材を配置し、他方の側にはスプリング部材を介在させるように構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5594905号公報
【文献】特開平11-38714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の目的は、原稿押さえ手段と装置本体との間に単にスプリング部材を介在させた場合に比べて、簡単な構成で原稿押さえ手段を開く際の操作力を低減することが可能な画像読取装置及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載された発明は、装置本体に開閉可能に装着され、原稿を押さえる原稿押さえ手段と、
圧縮変形されて前記原稿押さえ手段に対し開く方向の弾性復元力を作用させる復元力作用手段と、
前記原稿押さえ手段を開くとき操作者が手で把持することにより前記復元力作用手段の圧縮変形を解除する解除手段と、
を備え、
前記解除手段は、前記原稿押さえ手段を開くときに前記操作者が手で把持することにより前記復元力作用手段の圧縮変形を解除する把持部と、前記原稿押さえ手段を開いた後に前記復元力作用手段を圧縮変形させる圧縮変形部を有する画像読取装置である。
【0010】
請求項2に記載された発明は、前記圧縮変形部は、前記復元力作用手段側に屈曲した状態で装着され、前記復元力作用手段が前記原稿押さえ手段を開いた後に前記復元力作用手段を圧縮変形させた状態に保持するラッチ部を備える請求項1に記載の画像読取装置である。
【0012】
請求項3に記載された発明は、装置本体に開閉可能に装着され、原稿を押さえる原稿押さえ手段と、
圧縮変形されて前記原稿押さえ手段に対し開く方向の弾性復元力を作用させる復元力作用手段と、
前記原稿押さえ手段を開くとき操作者が手で把持することにより前記復元力作用手段の圧縮変形を解除する解除手段と、
を備え、
前記解除手段は、通常、前記復元力作用手段を圧縮変形させ且つ当該圧縮変形させた状態を保持するよう付勢手段により付勢されているとともに、操作者が前記解除手段から手を放したときに前記復元力作用手段を圧縮変形させる画像読取装置である。
【0013】
請求項4に記載された発明は、原稿の画像を読み取る画像読取手段と、
前記画像読取手段で読み取られた前記原稿の画像を形成する画像形成手段と、
を備え、
前記画像読取手段として請求項1乃至3のいずれかに記載の画像読取装置を用いた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載された発明によれば、原稿押さえ手段と装置本体との間に単にスプリング部材を介在させた場合に比べて、簡単な構成で原稿押さえ手段を開く際の操作力を低減することができる。
【0015】
また、請求項1に記載された発明によれば、解除手段は、原稿押さえ手段を開くときに操作者が手で把持することにより復元力作用手段の圧縮変形を解除する把持部を有しない場合に比べて、復元力作用手段の圧縮変形を解除する操作を容易に行うことができる。
【0016】
さらに、請求項1に記載された発明によれば、解除手段は、原稿押さえ手段を開いた後に復元力作用手段を圧縮変形させる圧縮変形部を備えない場合に比べて、復元力作用手段を圧縮変形させる操作を容易に行うことができる。
【0017】
請求項2に記載された発明によれば、圧縮変形部は、復元力作用手段側に屈曲した状態で装着され、復元力作用手段が原稿押さえ手段を開いた後に復元力作用手段を圧縮変形させた状態に保持するラッチ部を備えない場合に比べ、圧縮変形部が他の部材と干渉するのを抑制することができる。
【0018】
請求項3に記載された発明によれば、解除手段は、通常、復元力作用手段を圧縮変形させ且つ当該圧縮変形させた状態を保持するよう付勢手段により付勢されていない場合に比べて、操作性が向上する。
【0019】
また、請求項3に記載された発明によれば、解除手段は、操作者が解除手段から手を放したときに復元力作用手段を圧縮変形させない場合に比べて、操作性が向上する。
【0020】
請求項4に記載された発明によれば、画像読取手段として請求項1乃至3のいずれかに記載の画像読取装置を用いない場合に比べて、簡単な構成で原稿押さえ手段を開く際の操作力を低減することができ、画像を読み取る際の操作性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】この発明の実施の形態1に係る画像読取装置を適用した画像形成装置を示す全体構成図である。
【
図2】この発明の実施の形態1に係る画像読取装置を示す構成図である。
【
図3】この発明の実施の形態1に係る自動原稿搬送装置を示す構成図である。
【
図4】この発明の実施の形態1に係る画像形成装置の自動原稿搬送装置を開いた状態を示す斜視構成図である。
【
図5】この発明の実施の形態1に係る自動原稿搬送装置を示す構成図である。
【
図6】この発明の実施の形態1に係る自動原稿搬送装置を開くのに要する回転モーメント示すグラフある。
【
図7】この発明の実施の形態1に係る自動原稿搬送装置を示す正面構成図である。
【
図8】この発明の実施の形態1に係る自動原稿搬送装置を示す斜視構成図である。
【
図9】この発明の実施の形態1に係る自動原稿搬送装置の要部を示す構成図である。
【
図10】この発明の実施の形態1に係る自動原稿搬送装置の要部を示す構成図である。
【
図11】この発明の実施の形態1に係る自動原稿搬送装置の要部を示す構成図である。
【
図12】この発明の実施の形態1に係る自動原稿搬送装置を開く操作を示す斜視構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0023】
[実施の形態1]
図1はこの発明の実施の形態1に係る画像読取装置を適用した画像形成装置の全体の概要を示す構成図である。
【0024】
<画像形成装置の全体の構成>
実施の形態1に係る画像形成装置1は、例えばカラー複写機として構成されたものである。画像形成装置1は、原稿6の画像を読み取る画像読取手段の一例としての画像読取装置3と、画像読取装置3で読み取られた画像データなどに基づいて記録媒体に画像を形成する画像形成手段の一例としての画像形成部2とを備えている。画像読取装置3は、画像形成部2を収容した装置本体1aの上方に支持部4により支持された状態で配置されている。画像読取装置3と装置本体1aとの間には、画像が形成された記録媒体を排出するための空間が形成されている。
【0025】
画像読取装置3には、
図1に示されるように、その筐体31の前面に位置する前壁311の上部に、画像形成装置1及び画像読取装置3を操作する操作部としてのコントロールパネル66が設けられている。コントロールパネル66は、操作者(ユーザ)に操作メニューや警告、メッセージ等を表示する表示部を兼ねるとともに表示した操作メニューに対する各種設定等を受け付けるタッチパネル67、及び複数の操作ボタン68を有している。
【0026】
画像形成部2は、現像剤を構成するトナーで現像されるトナー像を形成する複数の作像装置10と、各作像装置10で形成されるトナー像をそれぞれ保持して最終的に記録媒体の一例としての記録用紙5に二次転写する二次転写位置まで搬送する中間転写装置20と、中間転写装置20の二次転写位置に供給すべき所要の記録用紙5を収容して搬送する給紙装置50と、中間転写装置20で二次転写された記録用紙5上のトナー像を定着させる定着装置40等を備えている。装置本体1aは支持構造部材、外装カバー等で形成されている。なお、画像形成部2は、電子写真方式に限定されるものではなく、記録媒体に画像を形成可能なものであればインクジェット方式やサーマルヘッド方式、あるいはリソグラフ方式など他の方式を採用したものであっても良い。
【0027】
給紙装置50は、作像装置10の下方側の位置に存在するよう配置される。この給紙装置50は、所望のサイズ、種類等の記録用紙5を積載した状態で収容する複数(又は単数)の用紙収容体511~514と、用紙収容体511~514から記録用紙5を1枚ずつ送り出す送出装置52,53とで主に構成されている。用紙収容体51は、例えば、装置本体1aの正面(操作者が操作時に向き合う側面)側に引き出すことができるように取り付けられている。
【0028】
給紙装置50と中間転写装置20との間には、給紙装置50から送り出される記録用紙5を二次転写位置まで搬送する複数の用紙搬送ローラ54,55や図示しない搬送ガイドで構成される給紙搬送路56が設けられている。給紙搬送路56において二次転写位置の直前の位置に配置される用紙搬送ローラ55は、例えば記録用紙5の搬送時期を調整するローラ(レジストローラ)として構成されている。さらに、定着装置40の用紙搬送方向に沿った下流側には、記録用紙5を装置本体1aの上部に設けられた排出収容部57へと排出する搬送ローラ58及び排出ローラ59が配置されている。
【0029】
さらに、画像形成装置1は、記録用紙5の両面に画像を形成するための両面ユニット60を備えている。両面ユニット60は、片面に画像が形成された記録用紙5を排出ローラ59によって排出収容部57へ搬送する際に、排出ローラ59が記録用紙5の後端を保持している間に当該排出ローラ59を逆方向に回転させることで、切替ゲート61を介して記録用紙5を導入する。両面ユニット60は、導入された記録用紙5をその表裏を反転させた状態で搬送する複数の搬送ローラ62~64及び図示しない搬送ガイドから構成される両面用搬送経路65を有している。
【0030】
画像が形成された記録用紙5は、搬送ローラ58及び排出ローラ59により、例えば装置本体1aの上部に配置された排出収容部57に排出される。
【0031】
また、記録用紙5の両面に画像を形成するときは、片面に画像が形成された記録用紙5を排出ローラ59により排出収容部57へ搬送する際、排出ローラ59が記録用紙5の後端を保持している間に当該排出ローラ59の回転方向を逆方向に切り替える。排出ローラ59により逆方向に搬送される記録用紙5は、切替ゲート61によって搬送方向が両面ユニット60側へ切り替えられる。その後、記録用紙5は、搬送ローラ62~64等を備えた両面用搬送経路65を介して表裏が反転された状態で用紙搬送ローラ55へと搬送される。用紙搬送ローラ55は、記録用紙5を転写時期に合わせて二次転写位置に送り出して供給する。記録用紙5は、その裏面(第2面)に中間転写ベルト21からトナー像が二次転写され、定着装置40による定着処理が施されて、排出ローラ59により装置本体1aの上部に設置された排出収容部57に第2面を下にして排出される。
【0032】
<画像読取装置の構成>
図2はこの実施の形態1に係る画像読取装置の構成を示す概略構成図である。
【0033】
画像読取装置3は、大別して、上端面に原稿読取面(支持面)が形成された画像読取装置3の装置本体の一例としての筐体31と、筐体31に対して開閉可能に取り付けられ、原稿6を押さえる原稿押さえ手段の一例としての自動原稿搬送装置(DADF: Duplex Automatic Document Feeder)33を備えている。自動原稿搬送装置33には、原稿押さえカバー32が設けられている。なお、原稿押さえ手段は、自動原稿搬送装置33に限定されるものではなく、自動原稿搬送装置33を備えない原稿押さえカバー32そのものから構成しても良い。
【0034】
自動原稿搬送装置33は、当該自動原稿搬送装置33にセット(載置)された原稿6を一枚ずつ分離して読取位置へ搬送するため、原稿6を搬送するための複数の搬送部材や複数の搬送部材を駆動する駆動源としての駆動モータなどを備えている。そのため、自動原稿搬送装置33は、全体として重量が重くなる(重量化する)傾向にある。
【0035】
画像読取装置3は、操作者の操作に応じて、自動原稿搬送装置33によって原稿6を一枚ずつ自動的に搬送しながら原稿6の画像を読み取る第1の読取モードと、後述する原稿台83の上に置かれ原稿押さえカバー32により押さえられた原稿6の画像を読み取る第2の読取モードとに自動的に切り替え可能に構成されている。
図2は、第1の読取モードにおける原稿読み取り時の各部材の状態を示している。
【0036】
自動原稿搬送装置33は、読取面(第1面)を上にした状態で複数枚の原稿6を積載して収容可能なシート積載部の一例としての原稿収容部70と、原稿収容部70から原稿6を送り出す送り出し手段の一例としてのナジャーローラ71と、ナジャーローラ71によって送り出された原稿6を1枚ずつ捌いて供給する送り出し手段の一例としてのフィードローラ72と、フィードローラ72に押圧されて原稿6を1枚ずつ捌く押圧パッド72aと、原稿6を読取位置へ搬送する第1の搬送ローラ73と、第1の搬送ローラ73によって搬送される原稿6が読取位置を通過するよう搬送する搬送ローラ74,75と、原稿6を排出収容部76へ排出する第2の搬送ローラの一例としての排出ローラ77から構成される原稿搬送機構を有している。これらのナジャーローラ71、フィードローラ72、搬送ローラ73~75及び排出ローラ77は、原稿6の読み取り時に駆動される。第1の搬送ローラ73は、原稿6の読取位置への搬送時期を調整するレジストローラである。尚、この実施の形態1では、特にローラ対として明示的に記載していないが、搬送ローラや排出ローラなる用語は一対のローラを含むものである。
【0037】
また、第1の搬送ローラ73は、搬送方向に対する原稿6の傾きを機械的に補正(以下、「スキュー補正」という。)して原稿6の端縁を搬送方向と同一方向に補正する補正手段としても機能する。第1の搬送ローラ73のうち駆動ローラとしての搬送ローラ73bは、
図2に示されるように、駆動モータ等を駆動手段として、停止した状態から予め定められたタイミングで図の正転方向Raに回転するように駆動される。従動ローラである搬送ローラ73aは、搬送ローラ73bに圧接した状態で搬送ローラ73bに従って回転する。
【0038】
第1の搬送ローラ73は、駆動ローラとしての搬送ローラ73bが停止している間に、原稿6の搬送方向に沿った上流側に位置するフィードローラ72により搬送される原稿6の先端が当該搬送ローラ73bと搬送ローラ73aとの圧接部に突き当てられる。そして、搬送ローラ73は、原稿6の先端領域を撓ませることで原稿6の先端を搬送ローラ73の軸方向と一致させた後に原稿6の搬送を開始することによりスキュー補正を行う。
【0039】
また、自動原稿搬送装置33は、原稿6を読取位置に案内するとともに読取位置から排出方向に案内する湾曲形状の読取ガイド78と、読取窓79の上方であって読取ガイド78に設けられ原稿6の背面を支持する背面支持部材80と、原稿収容部70に設けられて原稿6の副走査方向のサイズを検知する第1のサイズ検知センサ81と、同じく原稿収容部70に設けられて原稿6の副走査方向のサイズを検知する第2のサイズ検知センサ82とを有する。
【0040】
画像読取装置3の筐体31は、上端面の一部が開口した直方体状の箱体として形成されている。筐体31は、原稿押さえカバー32に対向する上壁312と、上壁312に対向する底壁313と、底壁313を挟んで副走査方向(
図2の左右方向)に対向する側壁314及び側壁315と、上述した前壁311(
図1を併せて参照)と、前壁311に対して主走査方向(
図2の紙面に直交する方向)に沿って対向する後壁316とを有している。
【0041】
筐体31の上壁312には、第2の読取モード時に読み取られる原稿6の原稿読取位置に対応する部位に平面矩形状の大きな開口部317が形成されている。開口部317には、原稿6を支持する透明な原稿台83(プラテンガラス)が配置されている。また、原稿台83の自動原稿搬送装置33側には、第1の読取モード時に原稿6を読み取るための透明な読取窓79が設けられている。読取窓79と原稿台83との間には、第1の読取モード時に読取位置を通過した原稿6を搬送ローラ75へと案内する上端面が傾斜した案内部材84が設けられている。
【0042】
画像読取装置3は、筐体31の内部に、原稿6を照明するための光を照射する照明ランプやLED等からなる照明手段の一例としての光源85と、光源85から出射された光の一部を原稿6の方向へ向けて反射するリフレクタ86と、原稿6からの反射光を受ける第1のミラー87と、第1のミラー87からの反射光を受ける第2のミラー88と、第2のミラー88からの反射光を受ける第3のミラー89と、第3のミラー89からの反射光をCCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等からなる画像読取手段の一例としての画像読取素子90に結像する結像レンズ91などを有する画像読取部を備えている。光源85は、原稿6及びリフレクタ86の方向に向けて光を照射する。第1乃至第3のミラー87~89及び結像レンズ91は、原稿6の画像を画像読取素子90で読み取るための読取光学系を構成している。
【0043】
光源85、リフレクタ86及び第1のミラー87は、画像読取装置3の奥行き方向である主走査方向に沿って配置され、画像読取装置3の幅方向である副走査方向に沿って後述する駆動源により移動可能に構成されたキャリッジからなる第1の移動体92に取り付けられている。第1の移動体92は、第1のレール93によって案内される。第1の移動体92は、副走査方向に沿って移動しながら原稿6の読取対象領域を照明しつつ、第1のミラー87によって原稿6の反射光を第2の移動体94の第2のミラー88に向けて反射する。第1のレール93は、筐体31の後壁316に副走査方向に沿って配置されている。
【0044】
また、第2のミラー88及び第3のミラー89は、主走査方向に沿って配置され、副走査方向に沿って駆動手段により移動可能に設けられたキャリッジからなる第2の移動体94に取り付けられている。第2の移動体94は、第2のレール95により案内されて副走査方向に移動しながら、原稿6の反射光を画像読取部の結像レンズ91に向けて反射する。第2のレール95は、筐体31の底壁313に副走査方向に沿って配置されている。第1のレール93及び第2のレール95は、主走査方向に沿った両端部に対向するようにそれぞれ1つずつ配置されている。
【0045】
第1及び第2の移動体92,94は、
図2に示されるように、画像読取装置3の筐体31の内部に配置された駆動源の一例としての図示しない駆動モータにより駆動プーリや図示しない駆動ワイヤ等を介して副走査方向に沿って往復移動が可能となるよう駆動される。
【0046】
画像読取部は、
図2に示されるように、画像読取素子90を実装した画像読取基板97を有する。結像レンズ91及び画像読取基板97は、底壁313に支持されたベース板96に取り付けられている。画像読取部は、第3のミラー89からの反射光が結像レンズ91を透過してCCDやCMOS等からなる画像読取素子90に結像し、画像読取素子90によって原稿6の画像を読み取り画像データを出力する。画像読取素子90によって読み取られた画像データは、図示しない画像処理装置により必要に応じてシェーディング補正等の予め定められた画像処理が施され、制御装置100(
図1参照)へ送られる。
【0047】
第1の読取モード時には、
図2に実線で示されるように、第1及び第2の移動体92,94を筐体31の左側の端部に設定された読取位置に停止させた状態で、自動原稿搬送装置33によって原稿6を自動的に搬送し、読取窓79の上部を通過する原稿6を光源85により照明し、原稿6からの反射光像を第1のミラー87によって第2及び第3のミラー88,89を介して結像レンズ91へと反射する。画像読取部は、第3のミラー89からの反射光像を結像レンズ91によって画像読取素子90に結像し、画像読取素子90により原稿6の画像を読み取って画像読取素子90から画像データを出力する。
【0048】
一方、第2の読取モード時には、第1の移動体92及び第2の移動体94を後述する駆動源によって駆動し、第1の移動体92が副走査方向に沿って移動する間に、原稿6の画像読取位置から画像読取素子90に至る光路長が変化しないように、第2の移動体94の移動量が第1の移動体92の移動量の1/2となるよう構成されている。
図2中、二点鎖線は、第1の移動体92が原稿6の副走査方向の端部付近に移動したときの第1の移動体92及び第2の移動体94の位置を示す。
【0049】
画像読取装置3は、
図3に示されるように、原稿収容部70に収容されたシートの一例としての原稿6を1枚ずつ捌いて読取位置へと搬送するとともに、読取位置を通過したシートをスイッチバックさせて表裏を反転した状態で読取位置へと再度搬送するシート搬送装置320を備えている。シート搬送装置320は、ナジャーローラ71と、フィードローラ72と、押圧パッド72aと、第1の搬送ローラ73と、搬送ローラ74,75と、排出ローラ77と、これらのローラを駆動する駆動源である駆動モータ321と、第1の搬送ローラ73を駆動モータ321の回転方向にかかわらず一定方向に回転させる一定方向回転機構322と、第1の搬送ローラ73へ駆動力を伝達する状態と伝達しない状態とに切り替える第1の駆動伝達切替手段323と、フィードローラ72及びナジャーローラ71への駆動力を伝達する状態と伝達しない状態とに切り替える第2の駆動伝達切替手段324とを有している。尚、
図3中、破線は駆動力の伝達経路を示している。
【0050】
シート搬送装置320は、
図3に示されるように、ナジャーローラ71によって搬送される原稿6をフィードローラ72、第1の搬送ローラ73、搬送ローラ74,75、排出ローラ77を通過するように搬送する通常の搬送経路325と、排出ローラ77によって後端が保持された原稿6を当該排出ローラ77の回転方向を逆転させることにより原稿6の表裏を反転させて第1の搬送ローラ73へと再度搬送する反転搬送経路326とを備えている。通常の搬送経路325は、当該通常の搬送経路325に沿って複数に分割され、原稿6の表裏を案内するガイド部材325a,325b、読取ガイド78及び背面支持部材80を有している。反転搬送経路326は、原稿6の表裏を案内するガイド部材326a,326bを有している。また、通常の搬送経路325と反転搬送経路326とが分かれる分岐位置には、原稿6の搬送経路を通常の搬送経路325から反転搬送経路326へと切り替える切替ゲート327が設けられている。この切替ゲート327は、断面形状が略Y字形状に形成された弾性変形自在な合成樹脂製のフィルム等から形成されている。切替ゲート327は、通常、
図3に示されるように、その一部が通常の搬送経路325を斜めに横切るように配置されている。切替ゲート327は、原稿6を通常の搬送経路325に沿って排出ローラ77へと搬送する際、原稿6に押されて通常の搬送経路325を開放するように弾性変形し、原稿6の搬送方向を排出ローラ77へと切り替える。一方、切替ゲート327は、排出ローラ77が原稿6の後端を保持している間に当該排出ローラ77の回転方向を逆転させ、原稿6を反転搬送経路326に沿って第1の搬送ローラ73へと搬送する際、排出ローラ77によって搬送される原稿6の搬送経路を通常の搬送経路325から反転搬送経路326へ切り替える。
【0051】
シート搬送装置320は、ナジャーローラ71に対応した位置に原稿6の先端を検出する原稿センサ328を備えている。また、第1の搬送ローラ73の原稿6の搬送方向に沿った上流側には、原稿6の先端を検出するプリレジセンサ329を備えている。さらに、シート搬送装置320は、搬送ローラ74の原稿6の搬送方向に沿った下流側に配置され、原稿6の先端を検出する図示しないレジセンサと、排出ローラ77の原稿6の搬送方向に沿った上流側に配置され、原稿6の後端を検出する図示しないインバータセンサとを備えている。
【0052】
なお、シート搬送装置320は、原稿6を反転搬送経路326へと搬送することにより、原稿6の裏面の画像を読み取るように構成されているが、反転搬送経路326を設けるのではなく、通常の搬送経路325の途中に原稿6の裏面(第2面)の画像を読み取る図示しない第2の画像読取素子を配置することにより、原稿6の搬送方向を反転させることなく原稿6の表裏両面の画像を読み取り可能に構成しても良い。
【0053】
この場合、反転搬送経路326は不要となるが、新たに第2の画像読取素子を配置する必要がある。そのため、画像読取装置3は、第2の画像読取素子自体がある程度の重量を有するので、自動原稿搬送装置33は、更に重量化する可能性がある。
【0054】
<画像読取装置の要部の構成>
この実施の形態1に係る画像読取装置3は、
図4に示されるように、原稿押さえ手段の一例としての自動原稿搬送装置33を備えている。自動原稿搬送装置33には、上述したように、原稿押さえカバー32が設けられている。原稿押さえカバー32の下面には、原稿台83上に載置された図示しない原稿を押さえる白色のシート状に形成された押さえ部材32aが設けられている。押さえ部材32aは、原稿台83と略等しい大きさを有する平面矩形状に形成されている。自動原稿搬送装置33は、当該自動原稿搬送装置33にセットされた原稿6を一枚ずつ分離して読取位置へ搬送するものであり、原稿6を搬送するためのナジャーローラ71やフィードローラ72、第1の搬送ローラ73、搬送ローラ74,75、排出ローラ77等の搬送部材やこれらを駆動する駆動源としての駆動モータ321(
図3参照)を備えている。そのため、自動原稿搬送装置33は、上述したように、全体の重量が重くなる(重量化する)傾向にある。
【0055】
画像読取装置3は、第2の読取モード時、原稿台83上に原稿6を載置して当該原稿6の画像を読み取る際に、自動原稿搬送装置33を操作者が手で開閉する必要がある。そのため、画像読取装置3は、自動原稿搬送装置33の重量が重くなるとそれに伴って自動原稿搬送装置33を開閉するのに要する操作力も大きくなる。したがって、画像読取装置3は、自動原稿搬送装置33を開閉する際の操作力を低減することにより、操作性を向上させることが望まれている。
【0056】
自動原稿搬送装置33を開閉する際の操作性を向上し得る技術としては、前述した特許文献1に記載されているように、自動原稿搬送装置33の開閉角度を検出し当該自動原稿搬送装置33の開閉角度に応じて自動原稿搬送装置33の開閉速度を制御する技術が既に提案されている。
【0057】
しかしながら、画像読取装置3において自動原稿搬送装置33の開閉角度を検出し、自動原稿搬送装置33の開閉角度に応じて自動原稿搬送装置33の開閉速度を制御するよう構成した場合には、自動原稿搬送装置33の上に本等の重量物が載せられているときなど、自動原稿搬送装置33を開閉させる操作を行うと当該自動原稿搬送装置33を開閉させる駆動手段に過剰な負荷が掛かり、駆動手段のギアなどが破損したり開閉動作に誤作動を生じる虞れがあり、操作性が損なわれるという技術的課題を有している。
【0058】
そこで、この実施の形態1に係る画像読取装置3は、筐体31に開閉可能に装着され、原稿6を読取位置へ搬送する自動原稿搬送装置33と、圧縮変形されて自動原稿搬送装置33に対して開く方向の弾性復元力を作用させる復元力作用手段と、自動原稿搬送装置33を開くときに操作者が手で把持することにより復元力作用手段の圧縮変形を解除する解除手段を備えるように構成されている。
【0059】
すなわち、この実施の形態1に係る画像読取装置3は、
図4に示されるように、自動原稿搬送装置33が画像読取装置3の筐体31に第1及び第2の軸支部材43
1,43
2を介して開閉可能に装着されている。第1及び第2の軸支部材43
1,43
2は、画像読取装置3の筐体31側に設けられた軸受部44
1,44
2と、自動原稿搬送装置33側に設けられた読取回転部45
1,45
2とを有している。軸受部44
1,44
2と読取回転部45
1,45
2は、
図5に示されるように、回転軸46
1,46
2を中心にして回転可能に連結されている。読取回転部45
1,45
2には、自動原稿搬送装置33を開閉する際の荷重を減少させるため、自動原稿搬送装置33に対して開く方向の回転モーメントを作用させる図示しないカウンターバランスが内蔵されている。カウンターバランスは、自動原稿搬送装置33の開閉角度に応じて当該自動原稿搬送装置33に開く方向の回転モーメントを作用させる図示しないコイルバネ等を備えている。なお、カウンターバランスは、軸受部44
1,44
2側に配置しても勿論良い。
【0060】
また、画像読取装置3で画像が読み取られる原稿6としては、A4サイズやA3サイズ等の所望のサイズに裁断された原稿6に限らず、複数枚の原稿6を綴じた本のような複数ページにわたる原稿6を有する所謂ブック原稿なども含まれる。画像読取装置3においてブック原稿の画像を読み取るには、
図4に示されるように、自動原稿搬送装置33を開いた状態でブック原稿の読み取るページの画像を下にして原稿台83の上に載せ、自動原稿搬送装置33を閉じる操作が行われる。
【0061】
その際、ブック原稿は、ある程度の厚さを有しているため、自動原稿搬送装置33が第1及び第2の軸支部材431,432の回転軸461,462を支点として単に開閉可能に設けられていると、ブック原稿の画像を読み取る際に自動原稿搬送装置33を閉じても、自動原稿搬送装置33がブック原稿の上面に対して傾斜した状態となりブック原稿の全面を押さえることができない。
【0062】
そこで、自動原稿搬送装置33を開閉可能に支持する第1及び第2の軸支部材43
1,43
2は、
図5(b)(c)に示されるように、画像読取装置3の筐体31側に配置される軸受部44
1,44
2に筒状の昇降部44
1a,44
2aが設けられている。軸受部44
1,44
2の昇降部44
1a,44
2aは、筐体31に設けられた孔部31aに挿抜可能に挿入されている。そして、第1及び第2の軸支部材43
1,43
2は、ブック原稿などのようにある程度の厚さを有する原稿6の画像を読み取る際、筐体31に設けられた孔部31aに挿入された軸受部44
1,44
2の昇降部44
1a,44
2aが上方に移動して、自動原稿搬送装置33がブック原稿の上面と略平行となるようブック原稿の全面を押さえることが可能となるよう構成されている。
【0063】
自動原稿搬送装置33は、
図4に示されるように、原稿6を自動的に搬送するシート搬送装置320が内蔵される図中左側の端部が右側より重量が大きい。その結果、自動原稿搬送装置33の重心は、幅方向に沿った中央部よりも原稿6を自動的に搬送するシート搬送装置320が内蔵された図中左側に偏った位置に存在している。そのため、第1及び第2の軸支部材43
1,43
2に内蔵されるカウンターバランスは、自動原稿搬送装置33の駆動側である図中左側の第1の軸支部材43
1に内蔵される第1のカウンターバランスの方が、自動原稿搬送装置33の非駆動側である右側の第2の軸支部材43
2に内蔵される第2のカウンターバランスより自動原稿搬送装置33に与える回転モーメントが大きくなるよう設定されている。
【0064】
図6は、自動原稿搬送装置33を閉じた状態(開き角度=0度)から開くのに必要とされる回転モーメントM
1と、第1の軸支部材43
1が自動原稿搬送装置33に与える回転モーメントM
2と、第2の軸支部材43
2が自動原稿搬送装置33に与える回転モーメントM
3と、第1及び第2の軸支部材43
1,43
2が自動原稿搬送装置33に与える合成回転モーメントM
Tの各値を、自動原稿搬送装置33の開閉角度に応じて求めた結果を示したグラフである。
【0065】
この実施の形態1に係る画像読取装置3では、自動原稿搬送装置33を開く際の操作者の操作力を低減するため、自動原稿搬送装置33を5~25度程度の予め定められた角度θ(例えば10度)に開いたとき、自動原稿搬送装置33を開くのに要する回転モーメントM1と、第1及び第2の軸支部材431,432の合成回転モーメントMTの値が等しくなるよう設定されている。また、自動原稿搬送装置33の開き角度が予め定められた角度θを超えると、自動原稿搬送装置33を開くのに必要とされる回転モーメントM1より第1及び第2の軸支部材431,432の合成回転モーメントMTの方が大きくなるよう設定されている。その結果、操作者は、予め定められた角度θを超える角度領域では自動原稿搬送装置33を開く操作を、当該自動原稿搬送装置33の重量が増大したときでも容易に行うことが可能となる。ただし、第1及び第2の軸支部材431,432は、自動原稿搬送装置33の開き角度が予め定められた角度θを超えた場合であっても、操作者が自動原稿搬送装置33を開く操作を停止したとき不本意に自動原稿搬送装置33が開くことを回避することが望ましい。そのため、第1及び第2の軸支部材431,432は、自動原稿搬送装置33の開き角度が予め定められた角度θを超えた場合であっても、操作者が自動原稿搬送装置33から手を放したときの開き角度を維持する程度の摩擦力が作用するよう構成されている。
【0066】
また、自動原稿搬送装置33は、完全に閉じられた状態(開き角度=0度)においても、第1及び第2の軸支部材43
1,43
2によって開く方向の合成回転モーメントM
Tが作用している。このとき、第1及び第2の軸支部材43
1,43
2によって自動原稿搬送装置33に作用する所要の合成回転モーメントM
Tは、
図6に示されるように、自動原稿搬送装置33を開くのに必要とされる回転モーメントM
1より僅かΔMだけ小さい値となっている。
【0067】
画像読取装置3の自動原稿搬送装置33は、
図7及び
図8に示されるように、下端面が平坦に形成された原稿押さえカバー32を備えている。自動原稿搬送装置33には、その左側の端部に内蔵されたシート搬送装置320を覆う開閉カバー411が設けられている。自動原稿搬送装置33は、原稿押さえカバー32の上端面が原稿6を排出する排出収容部76を構成している。また、自動原稿搬送装置33は、その背面側の端部に当該自動原稿搬送装置33の幅方向に沿った全領域にわたり原稿押さえカバー32及びシート搬送装置320等を一体的に支持する支持構造部32b(
図8参照)を備えている。
【0068】
また、自動原稿搬送装置33の前面側の下端部には、その幅方向に沿った中央部に、当該自動原稿搬送装置33を開閉する際に操作者が手で把持して開閉操作を行う操作部200が設けられている。操作部200は、自動原稿搬送装置33の幅方向に沿って所要の幅を有する細長い凹所から構成されている。
【0069】
更に説明すると、操作部200は、自動原稿搬送装置33の下端面から所要の高さを有する位置に配置された天井面201と、自動原稿搬送装置33の幅方向に沿って所要の間隔を隔てて配置された左右の側面202,203と、自動原稿搬送装置33の背面側に所要の奥行きをもって配置された背面204(
図7参照)と、自動原稿搬送装置33の下端部に配置された底面205から、前面が開口した細長い略直方体状の凹所として形成されている。操作部200の天井面201は、
図7に示されるように、自動原稿搬送装置33の前面側の端部に位置する上端面より所要の高さΔHだけ下方に位置している。この所要の高さΔHは、操作者が操作部200に手を挿入して当該操作部200を把持する際の握り部の厚さに相当する。なお、操作部200は、底面205を有さずに前面及び底面が開口された細長い凹所として構成しても良い。
【0070】
自動原稿搬送装置33の操作部200の内部には、
図7に示されるように、操作者が自動原稿搬送装置33を開閉する際に手で把持して開閉操作を行う把持部の一例としての操作レバー210が回転可能に装着されている。操作レバー210は、
図9に示されるように、操作部200の形状に対応した細長い平板状に形成されている。操作レバー210は、操作部200の奥行方向に沿った奥側の端部に配置された回転軸211に固定した状態で取り付けられている。操作レバー210は、回転軸211に設けられた図示しないトーションスプリング等の付勢手段によって図中時計回り方向に付勢されている。回転軸211は、操作部200の幅方向に沿った長さよりも長い軸状部材である。
【0071】
回転軸211は、
図7及び
図9に示されるように、その軸方向に沿った両端部が操作部200の左右の側面202,203を貫通して自動原稿搬送装置33の内部にわたり回転可能に取り付けられている。自動原稿搬送装置33の内部には、回転軸211を回転可能に支持する平板状の支持板部212が設けられている。
【0072】
自動原稿搬送装置33の内部には、圧縮変形されて自動原稿搬送装置33に対して開く方向の弾性復元力を作用させる復元力作用手段の一例としての第1及び第2のコイルスプリング2201,2202と、自動原稿搬送装置33を開くとき操作者が手で把持することにより第1及び第2のコイルスプリング2201,2202の圧縮変形を解除する解除手段の一例として第1及び第2のラッチ部材2301,2302が、回転軸211の軸方向に沿った両端部にそれぞれ設けられている。なお、コイルスプリング220及びラッチ部材230の数は、2つに限定されるものではなく、コイルスプリング220及びラッチ部材230を1つのみ設けても良く、あるいは3つ以上設けても良い。
【0073】
第1及び第2のコイルスプリング220
1,220
2は、
図9(a)に示されるように、鋼材やステンレス、あるいは合成樹脂等の弾性を有する線状材料からなり、所要の外径を有する螺旋状に形成されて予め定められたバネ定数を有するように構成されている。第1及び第2のコイルスプリング220
1,220
2は、バネ定数が必ずしも等しいものである必要はない。第1及び第2のコイルスプリング220
1,220
2は、例えば、シート搬送装置320側に配置される第1のコイルスプリング220
1のバネ定数を他方の第2のコイルスプリング220
2のバネ定数より大きく設定しても良い。
【0074】
第1及び第2のコイルスプリング2201,2202は、その上端部に固着された円板状の固定部材223を介して支持板部212に接着やネジ止め等の手段により固定した状態で取り付けられている。また、第1及び第2のコイルスプリング2201,2202の下端部には、ゴム等の弾性材料からなる円板状の緩衝部材224が接着等の手段により固定した状態で設けられている。なお、第1及び第2のコイルスプリング2201,2202の下端部は、他の部材に固定されていない自由端となっている。
【0075】
第1及び第2のコイルスプリング2201,2202の下端部には、第1及び第2のラッチ部材2301,2302とそれぞれ当接することにより当該第1及び第2のコイルスプリング2201,2202の姿勢を鉛直方向に沿った上下方向に保持する保持部材225がそれぞれ固定した状態で設けられている。保持部材225は、第1及び第2のコイルスプリング2201,2202の下端部を挟んで左右一対の板状部材を前面側(図中、右側)の位置で互いに連結し、筐体31の前面側へ向けて延在させた側面略三角形状の部材として形成されている。保持部材225は、第1及び第2のコイルスプリング2201,2202の下端部に接着等の手段により固着されている。緩衝部材224は、保持部材225の下面に配置されている。なお、保持部材225は、第1及び第2のコイルスプリング2201,2202の姿勢が鉛直方向に沿った上下方向に保持可能な構成であれば、必ずしも設けなくとも良い。この場合には、例えば、第1及び第2のコイルスプリング2201,2202の内部に当該第1及び第2のコイルスプリング2201,2202より短い軸状乃至円筒状の部材を配置することにより、第1及び第2のコイルスプリング2201,2202の姿勢を鉛直方向に沿った上下方向に保持する構成などが挙げられる。
【0076】
第1及び第2のコイルスプリング220
1,220
2は、
図7に示されるように、第1のコイルスプリング220
1が第1の軸支部材43
1に対応した位置に配置され、第2のコイルスプリング220
2が第2の軸支部材43
2より自動原稿搬送装置33の筐体31の幅方向に沿った内側に配置されている。自動原稿搬送装置33は、その幅方向に沿った重量が図中左側が相対的に重く、その非駆動側である図中右側が相対的に軽い。そのため、第1及び第2のコイルスプリング220
1,220
2のうち、一方の第1のコイルスプリング220
1は、例えば、相対的に重量が重い第1の軸支部材43
1に対応した位置に配置され、他方の第2のコイルスプリング220
2は、相対的に重量が軽い第2の軸支部材43
2より自動原稿搬送装置33の筐体31の幅方向に内側つまり第1の軸支部材43
1寄りに配置されている。
【0077】
自動原稿搬送装置33には、
図9(a)に示されるように、第1及び第2のコイルスプリング220
1,220
2と対応した筐体31の上壁312に、第1及び第2のコイルスプリング220
1,220
2の下端部が当接する当接部312aがそれぞれ設けられている。当接部312aは、筐体31の上壁312の表面より上方に突出した凸部から構成されている。なお、当接部312aは、必ずしも設ける必要はなく、第1及び第2のコイルスプリング220
1,220
2の下端部が筐体31の上壁312に直接当接するよう構成しても良い。
【0078】
第1及び第2のラッチ部材230
1,230
2は、
図9(a)に示されるように、合成樹脂や金属等からなり、所要の厚さを有する側面略L字形状の板状部材として構成されている。第1及び第2のラッチ部材230
1,230
2は、平面円形状の第1及び第2のコイルスプリング220
1,220
2の中心にそれぞれ当接するよう、支持板部212の図示しない凹部において回転軸211に固定した状態で取り付けられている。
【0079】
第1及び第2のラッチ部材2301,2302は、回転軸211に固定された状態で設けられる細長い平板状の軸支部231と、軸支部231の下端部に傾斜した状態で一体に配置される細長い略平行四辺形状の保持部232と、保持部232の下端に軸234を中心にして回転可能に設けられた短い板状のラッチ部233とを備えている。第1及び第2のラッチ部材2301,2302の保持部232は、傾斜した状態で配置される上端縁が、第1及び第2のコイルスプリング2201,2202の保持部材225の側面と当接している。
【0080】
第1及び第2のラッチ部材230
1,230
2のラッチ部233は、
図9(b)(c)に示されるように、軸234に配置された図示しないトーションスプリング等の付勢手段によって反時計回り方向に付勢されている。ラッチ部233は、軸234を介して反対側に突出するように一体的に設けられたストッパー235が、保持部232の下端部に設けられた当接部236に当接することにより
図9(c)に示した停止した状態を維持している。
【0081】
第1及び第2のラッチ部材230
1,230
2は、
図10に示されるように、操作者が操作レバー210を手で把持することにより、操作レバー210の反時計回り方向の回転力が回転軸211を介して伝達されて操作レバー210とともに反時計回り方向に回転する。そして、第1及び第2のラッチ部材230
1,230
2は、ラッチ部233が第1及び第2のコイルスプリング220
1,220
2の下端部を抜けると、当該ラッチ部233による第1及び第2のコイルスプリング220
1,220
2の圧縮状態が解除され、第1及び第2のコイルスプリング220
1,220
2が自由形状へと伸張する。このとき、第1及び第2のコイルスプリング220
1,220
2の下端部は、自動原稿搬送装置33の筐体31の上壁312に設けられた当接部312aに当接して、当該当接部312aを押し下げるような押圧力が作用する。自動原稿搬送装置33には、第1及び第2のコイルスプリング220
1,220
2の押圧力の反力として上方への押し上げ力が作用する。
【0082】
第1及び第2のコイルスプリング220
1,220
2が自動原稿搬送装置33を押し上げることにより自動原稿搬送装置33に作用させる回転モーメントMは、
図6に示されるように、自動原稿搬送装置33を開くのに必要とされる回転モーメントM
1と、第1及び第2の軸支部材43
1,43
2のカウンターバランスが自動原稿搬送装置33に与える合成回転モーメントM
Tとの差ΔM以上であれば良い。そのため、第1及び第2のコイルスプリング220
1,220
2は、自動原稿搬送装置33にそれ程大きな回転モーメントMを作用させる必要がないので、バネ定数が比較的小さな小型のコイルスプリングで良く、自動原稿搬送装置33が大型化することが回避される。
【0083】
また、第1及び第2のラッチ部材2301,2302は、操作者が操作レバー210から手を離すと、回転軸211に設けられた図示しないトーションスプリング等の付勢手段によって図中時計回り方向に回転する。
【0084】
第1及び第2のラッチ部材230
1,230
2は、図中時計回り方向に回転すると、
図11に示されるように、ラッチ部233が第1及び第2のコイルスプリング220
1,220
2の下端面に設けられた緩衝部材224を介して当該第1及び第2のコイルスプリング220
1,220
2を圧縮変形させる。第1及び第2のラッチ部材230
1,230
2は、保持部232が第1及び第2のコイルスプリング220
1,220
2の保持部材225に当接した状態で停止する。したがって、第1及び第2のラッチ部材230
1,230
2は、操作者が操作レバー210から手を離すと、図中時計回り方向に回転して第1及び第2のコイルスプリング220
1,220
2を圧縮変形させて停止する。
【0085】
<画像読取装置の動作>
この実施の形態1に係る画像読取装置3が適用された画像形成装置1では、次のようにして、原稿6の画像をコピーしたり、原稿6の画像を読み取ってファクシミリ機能等より送信する際など、原稿押さえ手段と装置本体との間に単にスプリング部材を介在させた場合に比べて、簡単な構成で原稿押さえ手段を開く際の操作力を低減することが可能となっている。
【0086】
すなわち、画像形成装置1の画像読取装置3では、
図4に示されるように、第2の読取りモードにおいて原稿6の画像を読み取る際、原稿押さえ手段として機能する自動原稿搬送装置33を開き、画像読取装置3の筐体31の上端面に設けられた原稿台(プラテンガラス)83上に原稿6を載置し、自動原稿搬送装置33を閉じた後に画像形成装置1のコントロールパネル66によって所望のコピー動作等を実行する。
【0087】
画像読取装置3は、コントロールパネル66で指定された動作に応じて、画像読取装置3によって原稿6の画像を読み取り、画像形成装置1の画像形成部2によって原稿6の画像を記録用紙5に形成したり、画像読取装置3によって読み取られた原稿6の画像を図示しないパーソナルコンピュータへ送信したり、画像読取装置3によって読み取られた原稿6の画像をファクシミリ機能により送信する動作などを実行する。
【0088】
原稿6の画像を読み取る画像読取装置3は、自動原稿搬送装置33が、第1の読取りモード時に原稿6を自動的に搬送するための搬送部材や駆動モータ321等からなるシート搬送装置320を備えており、相対的に重量が大きなものとなっている。そのため、画像読取装置3では、第2の読取りモードにおいて、原稿6を原稿台83の上に載せた状態で当該原稿6を自動原稿搬送装置33により押さえて原稿6の画像を読み取る際に、相対的に重量が大きな自動原稿搬送装置33を操作者が開閉する操作を行う必要がある。
【0089】
ところで、この実施の形態1に係る画像読取装置3は、
図12に示されるように、操作者が自動原稿搬送装置33を開くとき、自動原稿搬送装置33の前面側の端部に設けられた操作部200を手で把持するようになっている。
【0090】
そのため、自動原稿搬送装置33の操作部200を操作者が手で把持する際に、当該操作部200に設けられた操作レバー210を手で把持することにより、操作レバー210が反時計回り方向に沿って回転する。すると、操作レバー210が固定された回転軸211は、操作レバー210とともに反時計回り方向に沿って回転する。
【0091】
同じく回転軸211に固定された第1及び第2のラッチ部材230
1,230
2は、
図10に示されるように、操作レバー210とともに反時計回り方向に回転して、ラッチ部233による第1及び第2のコイルスプリング220
1,220
2の圧縮状態を解除する。このとき、第1及び第2のコイルスプリング220
1,220
2の下端部は、自動原稿搬送装置33の筐体31の上壁312に設けられた当接部312aに当接して、自動原稿搬送装置33を上方へと押し上げる。
【0092】
また、第1及び第2のラッチ部材230
1,230
2は、
図11に示されるように、操作者が操作レバー210から手を離すと、回転軸211に設けられた図示しないトーションスプリング等の付勢手段によって図中時計回り方向に回転する。
【0093】
第1及び第2のラッチ部材2301,2302は、図中時計回り方向に回転すると、ラッチ部233が第1及び第2のコイルスプリング2201,2202の下端面に設けられた緩衝部材224を介して当該第1及び第2のコイルスプリング2201,2202を圧縮変形させる。したがって、第1及び第2のラッチ部材2301,2302は、操作者が操作レバー210から手を離すと、図中時計回り方向に回転して第1及び第2のコイルスプリング2201,2202を圧縮変形させて停止する。
【0094】
そのため、第1及び第2のコイルスプリング2201,2202を押し上げて圧縮変形させる動作は、操作者が自動原稿搬送装置33の操作レバー210を把持する動作を解除することで自動的に実行される。したがって、操作者が何らかの部材を操作して第1及び第2のコイルスプリング2201,2202を押し上げて圧縮変形させる動作は不要となる。
【0095】
一方、自動原稿搬送装置33を閉じる動作は、操作者が操作部200を把持することにより行われる。その際、操作者は、自動原稿搬送装置33の操作部200の上部を押し下げることにより自動原稿搬送装置を閉じる動作が実行されるため、操作レバー210が把持されて第1及び第2のラッチ部材2301,2302によるラッチが解除されることはない。
【0096】
なお、自動原稿搬送装置33を開いた後は、操作レバー210を把持しても第1及び第2のラッチ部材2301,2302の回転を停止させる図示しないロック手段を設けるように構成しても良い。その際、ロック手段は、自動原稿搬送装置33を閉じて第1及び第2のラッチ部材2301,2302の下端部が当接部312aに当接したときにロック状態が解除されるように構成すればよい。
【0097】
よって、この実施の形態1に係る画像読取装置3によれば、自動原稿搬送装置33を開くとき操作者が手で把持することにより復元力作用手段の圧縮変形を解除する第1及び第2のラッチ部材2301,2302を備えない場合に比べ、簡単な構成で原稿搬送手段を開く際の操作性を向上させることが可能となる。
【0098】
なお、前記実施の形態では、画像読取装置を画像形成装置の一例としてのカラー複写機に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、画像読取装置をスキャナーやファックスなどとして用いても良いことは勿論である。
【符号の説明】
【0099】
1…画像形成装置
1a…画像形成装置本体
3…画像読取装置
31…画像読取装置の筐体
33…自動原稿搬送装置
210…操作レバー
2201,2202…第1及び第2のコイルスプリング
2301,2302…第1及び第2のラッチ部材