(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】火災検出設備及び火災検出方法
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20240423BHJP
G08B 17/117 20060101ALI20240423BHJP
G08B 21/14 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
G08B17/00 C
G08B17/117
G08B21/14
(21)【出願番号】P 2020029059
(22)【出願日】2020-02-25
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】坂野 賀津士
【審査官】山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-089566(JP,A)
【文献】特開2004-053188(JP,A)
【文献】特開昭47-003679(JP,A)
【文献】特開平07-272158(JP,A)
【文献】特開2001-216580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B17/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気流を排出する流出経路に連通した流出口を有する区画空間内で発生した火災を検出するための火災検出設備であって、
前記区画空間は、衛生薄葉紙の製造設備の一部をフードによって囲うことにより前記フード内に形成された空間であり、
前記流出口に向かって流れる気流を前記区画空間内に発生させるための送風機又は吸引機と、
前記流出口が形成された壁面と同じ壁面で、かつ、前記流出口の縁から1m以内に配置された
、前記区画空間内の一酸化炭素濃度を検出するための一酸化炭素検出器を備える
火災検出設備。
【請求項2】
前記送風機又は吸引機は、前記区画空間内に空気を送り込む送風機である
請求項1に記載の火災検出設備。
【請求項3】
気流を排出する流出経路に連通した流出口を有する区画空間内で発生した火災を検出するための火災検出方法であって、
前記区画空間は、衛生薄葉紙の製造設備の一部をフードによって囲うことにより前記フード内に形成された空間であり、
送風機又は吸引機により前記流出口に向かって流れる気流を前記区画空間内に発生させる工程と、
前記流出口が形成された壁面と同じ壁面で、かつ、前記流出口の縁から1m以内に配置された
、前記区画空間内の一酸化炭素濃度を検出するための一酸化炭素検出器により火災によって発生した一酸化炭素を検出する工程を含む
火災検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、区画された空間で発生した火災を検出するための設備や方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物内の部屋などの区画された空間内に、異常を検知するための感知器を設けておき、火災等が発生した場合に周辺にいる人に対して異状が発生したことを認識させるための警報システムが一般的に用いられている。このような感知器としては、例えば、火災の熱を検出する熱検出器、火災の煙を検出する煙検出器、火災の炎を検出する炎検出器、及び空気中の一酸化炭素濃度を検出する一酸化炭素検出器などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、熱検出器、煙検出器、及び炎検出器は、実際に発生した炎を検知する場合には有効であるが、炎発生前の予備的状況を検知することは難しい。この点、一酸化炭素検出器は、物体の不完全燃焼による燻り状態を検知できるため、炎発生前の予備的状況を検知するには有効な手段であるといえる。しかし、空気循環がある区画空間内においては一酸化炭素濃度が上昇しくいため、その検知が遅れてしまう。
【0005】
そこで、本発明は、気流のある区画空間内で発生した火災を早期に検出するための手段を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者は、上記目的を達成する手段について鋭意検討した結果、区画空間内の流出口に向かって気流を発生させるとともに、その流出口付近又は流出口後の流出経路内に一酸化炭素検出器を配置することで、炎発生前の予備的状況を早期に検出できるようになるという知見を得た。そして、本発明者は、上記知見に基づけば従来技術の課題を解決できることに想到し、本発明を完成させた。具体的に説明すると、本発明は以下の構成又は工程を有する。
【0007】
本発明の第1の側面は、火災検出設備に関する。本発明に係る火災検出設備は、気流を排出する流出経路に連通した流出口を有する区画空間内で発生した火災を検出するためのものである。なお、本願明細書において「火災」とは、実際に炎が発生している状態に加えて、炎発生前の予備的状況を含む用語として用いられる。火災検出設備は、流出口に向かって流れる気流を区画空間内に発生させるための送風機又は吸引機を備える。なお、送風機と吸引機の両方が火災検出設備に備わっていてもよい。さらに、火災検出設備は、区画空間の流出口付近又は流出経路内に配置された一酸化炭素検出器を備える。なお、流出口付近とは、流出口の縁から1m以内であることが好ましく、50cm以内であることが特に好ましい。
【0008】
上記構成のように、送風機又は吸引機によって区画空間内に流出口へと向かう気流を作り出し、その気流の流出口付近に一酸化炭素検出器を配置しておくことで、火災を早期に発見することができる。特に、機械が出火原因となる火災では、区画空間の奥の方に火元がある場合が少なくなく、火災発見の遅れに繋がり易い。また、区画空間に気流がある場合であっても、一酸化炭素検出器と無関係な方向に向かって気流が生じている場合には、一酸化炭素検出器周辺で一酸化炭素濃度が上がりにくく、この場合も火災発見の遅れに繋がる。従って、本発明のように、送風機又は吸引機を利用して流出口に向かう気流を意図的に作り出し、その流出口付近に設置した一酸化炭素検出器にて一酸化炭素濃度の上昇を検出することが有効である。
【0009】
本発明に係る火災検出設備において、流出経路には、気流が一時的に滞留する小区画が設けられており、一酸化炭素検出器が、その小区画内に配置されていることが好ましい。このように、気流が滞留する小区画内に一酸化炭素検出器を配置しておくことで、火災検出の精度が高まるとともに、より早期段階で火災を検出することができる。
【0010】
本発明に係る火災検出設備において、区画空間には複数の流出口が設けられており、複数の流出口から排出される気流が小区画内に導入されるように流通経路が形成されていることが好ましい。このように、区画空間に複数の流出口を設け、各流出口から排出された気流が一つの小区画に集まるように流通経路を設計することで、例えば区画空間が広大である場合でも、火元から流出口までの距離が平均的に短くなるため、火災を早期に発見することが可能になる。また、一つの一酸化炭素検出器で各流出口から排出された気流の一酸化炭素濃度を一括して測定することがきるため、設備全体をコンパクト化することができる。
【0011】
本発明に係る火災検出設備において、流出口を有する区画空間は複数存在していてもよい。この場合、各区画空間の流出口から排出される気流が小区画内に導入されるように流通経路が形成されていることが好ましい。なお、各区画空間に複数の流出口が設けられており、各区画空間の複数の流出口から排出される気流が小区画内に導入されるように流通経路が形成されていてもよい。このように、複数の区画空間が存在する場合において、各区画空間の流出口から排出された気流が一つの小区画に集まるように流通経路を設計しておくことで、複数の区画空間で発生する火災をまとめて検出することが可能になる。
【0012】
本発明の第2の側面は、火災検出方法に関する。本発明に係る火災検出方法は、基本的に上記した第1の側面に係る火災検出設備によって実行できる。本発明の火災検出方法は、気流を排出する流出経路に連通した流出口を有する区画空間内で発生した火災を検出するための方法である。火災検出方法は、送風機又は吸引機により流出口に向かって流れる気流を前記区画空間内に発生させる工程(気流発生工程)と、流出口付近又は流出経路内に配置された一酸化炭素検出器により火災によって発生した一酸化炭素を検出する工程(一酸化炭素検出工程)を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、気流のある区画空間内において火災を早期に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、火災検出システムの機能構成例を示したブロック図である。
【
図2】
図2は、火災検出設備の実施形態を示した模式図である。
【
図3】
図3は、火災検出設備の実施形態を示した模式図である。
【
図4】
図4は、火災検出設備が導入されたロール製品の製造設備の例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は、以下に説明する形態に限定されるものではなく、以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
【0016】
まず、
図1を参照して、火災検出システム10の概要について説明する。火災検出システム10は、少なくとも一酸化炭素検出器11を含み、この一酸化炭素検出器11が本発明に係る火災検出設備100内に設置される。なお、この火災検出システム10全体が火災検出設備100に含まれるものであると捉えることとしてもよい。
【0017】
図1に示されるように、火災検出システム10は、少なくとも一酸化炭素検出器11を含み、これに加えて、熱検出器12、煙検出器13、及び炎検出器14のうちの1種又は2種以上をさらに含んでいてもよい。一酸化炭素検出器11は、空気中の一酸化炭素濃度を検出(測定)するものであり、主に酸化還元電位を利用して還元性ガスである一酸化炭素の濃度を検出する。一酸化炭素検出器11としては、一般的に、半導体表面における一酸化炭素分子の吸着と表面での酸化還元反応による抵抗値の変化を利用する半導体型と、陽極及び陰極の電極間に生じる電位差を利用する電気化学型が知られているが、どちらかの型あるいはこれらを組み合わせた型のものを採用できる。また、一酸化炭素検出器11としては、一定の単位時間における一酸化炭素濃度の上昇割合が閾値を超えたときに作動する差動方式と、一酸化炭素濃度が一定の閾値を超えたときに作動する定量方式のいずれであってもよい。熱検出器12は、火災による熱を検出(測定)する。熱検出器12としては、一定の単位時間における検出器内部の上昇割合が閾値を超えたときに作動する差動方式と、感知器周囲の温度が一定の閾値を超えたときに作動する定量方式のいずれであってもよい。煙検出器13は、火災によって発生した煙を検出する。煙検出器13としては、一般的に、検出器内部に侵入した煙に発光部から光を照射して煙粒子の乱反射を受光部で感知する光電スポット型と、互いに分離された発光部から受光部へ向けてビームを照射してこのビームが煙粒子によって遮られたことを感知する光電式分離型とが知られている。炎検出器14は、火災による炎を検出する。炎検出器14としては、炎に含まれる紫外線又は赤外線の非可視光線の量が一定の閾値を超えたときに作動する紫外線感知型又は赤外線感知型を用いればよい。
【0018】
上記した各検出器11~14によって検出された情報は信号として火災判定装置15に伝達される。火災判定装置15は、各検出器11~14から受け取った検出情報に基づいて、火災発生(実際に炎が発生している状態及び炎発生前の予備的状態を含む)の有無を判定する。火災判定装置15としては、汎用的なコンピュータを用いればよい。火災判定装置15は、各検出器11~14から情報が入力される入力部と、所定の演算用プログラムを記憶した記憶部と、この記憶部からプログラムを読み出して入力部を通じて受け取った情報に基づいて所定の演算を行う制御部と、この制御部の演算結果を出力する出力部を含む。火災判定装置15は、複数種類の検出器11~14のうちの一つの検出器から得られた検出情報に基づいて火災発生の有無を判定することとしてもよいし、各検出器11~14から得られた検出情報を併用することとしてもよいし、複数種類の検出器11~14から得られた検出情報を組み合わせて火災発生の有無を判定することとしてもよい。具体的には、一酸化炭素検出器11は長時間燻っているタイプの火災の早期発見に有効であり、炎検出器14は早期に炎が出るタイプの火災の発見に有効であり、その他の熱検出器12と煙検出器13は温度上昇あるいは煙の発生を伴うタイプの火災の発見に有効である。これら各種検出器11~14の検出情報を利用することで、およそ一般的に想定され得るあらゆるタイプの火災に対応することができる。特に、本発明においては、火災の早期発見のために一酸化炭素検出器11が利用される。火災判定装置15は、少なくとも一酸化炭素検出器11が作動方式又は定量方式によって作動したときに、火災が発生したものと判定すればよい。
【0019】
火災判定装置15は、表示装置16、警報装置17、及び消火装置18などの出力装置に接続されている。火災判定装置15は、各検出器11~14からの検出情報に基づいて火災が発生していると判定した場合に、これらの出力装置16~18に対して火災発生情報を出力し、周囲の人間に対して火災発生の警告を行ったり消火活動を行う。表示装置16としては、一般的な液晶ディスプレイもしくは有機ELディスプレイ、又はこれらのディスプレイにタッチスクリーンを重ねて構成されたタッチパネルディスプレイを利用できる。警報装置17としては、警告音を放音するスピーカや警告用の光を発光する警告灯などを利用できる。消火装置18としては、例えば水を散布するスプリンクラーや、消火剤を噴射する自動消化器、二酸化炭素等の不燃性ガスを噴射するガス噴射装置などを利用できる。
【0020】
図2及び
図3は、一酸化炭素検出器11を備える火災検出設備100の実施形態を示している。
図2及び
図3に示した火災検出設備100の各実施形態は、区画空間20の中で発生した火災を検出するための設備である点で共通する。区画空間20は、例えば室内の部屋や、倉庫、フードで覆われた空間などのように、通気孔(気体の流出口21及び流入口23)以外に出入口がないか、あるいは出入口があってもその出入口を扉で閉じることが可能な空間である。区画空間20は、基本的に天面、底面、及び前後左右の側面が壁面で囲われている空間を意味し、壁面に気体の通気孔や扉付きの出入口が設けられていてもよい。
【0021】
図2(a)に示した第1の実施形態において、区画空間20には、気体の流出口21とそこに繋がる流出経路22、及び気体の流入口23とそこに繋がる流入経路24が設けられている。また、流入経路24には送風機30が設置されている。送風機30によって流入経路24及び流入口23を通じて区画空間20に空気が送り込まれるが、送り込まれた空気は、その後流出口21及び流出経路22を通じて区画空間20の外へと排出される。このように、送風機30によって区画空間20内に流出口21へと向かう気流が形成されている。
【0022】
ここで、
図2(a)の実施形態においては、区画空間20の流出口21付近に、前述した火災検出システム100に含まれる一酸化炭素検出器11が設置されている。具体的には、一酸化炭素検出器11は、区画空間20を構成する壁面(天面、底面、及び左右前後の側面)のうち、流出口21が形成された壁面と同じ壁面に取り付けられていることが好ましい。さらに具体的には、一酸化炭素検出器11は、流出口21の縁から1m以内の距離に設置されていることが好ましく、特に流出口21から50cm以内の距離に設置されていることが好ましい。このように、気流のある区画空間20において流出口21付近に一酸化炭素検出器11を設置しておくことで、区画空間20内で何らかの可燃物が不完全燃焼を起こし一酸化炭素濃度が上昇している状況において、正確かつ早期にそのような火災の予備的状況を検出することが可能となる。
【0023】
図2(b)に示した第2の実施形態は、上記
図2(a)の実施形態とは異なり、区画空間20に送風機30を設置するための流入経路24及び流入口23は設けられておらず、その代わりに、気体の流出口21に繋がる流出経路22に吸引機40が設けられている。なお、図示は省略しているが、区画空間20の壁面には吸気のための微小な通気孔が形成されている。このため、吸引機40によって吸引を行うことで、区画空間20内には流出口21へ向かう気流が発生する。この実施形態においても、一酸化炭素検出器11が流出口21付近、具体的には流出口21が形成された壁面と同じ壁面で、かつ、流出口21の縁から1m以内に設置されている。
【0024】
なお、
図2(a)及び
図2(b)に示した実施形態において、区画空間20内に熱検出器12、煙検出器13、及び炎検出器14の1種又は2種以上を設置することも可能である。一酸化炭素検出器11に加えてこれらの他の検出器12~14を設置することで、火災検出の精度が向上する。また、区画空間20内に消火装置18を設置しておき、各検出器11~14により火災が検出された場合に、消火装置18によって自動的に消火活動が実行されることとしてもよい。
【0025】
図3は、
図2とは別に、区画空間20の外に小区画50が形成された火災検出設備100の実施形態を示している。
図3に示した各実施形態において、気体の流出口21に繋がる流出経路22に吸引機40が設けられている。なお、図示は省略しているが、区画空間20の壁面には吸気のための微小な通気孔が形成されているため、吸引機40によって吸引を行うことで、区画空間20内には流出口21へ向かう気流が発生する。また、
図3の各実施形態において、区画空間20の流出口21に繋がる流出経路22の途中に、火災検出対象となる区画空間20よりも空間容積の小さい小区画50が形成されている。小区画50には、流出経路22に繋がる気流の入口と出口があり、流出経路22から入口を通じて小区画50に流入した気体が出口を通じて再び流出経路22へと戻るように構成されている。この小区画50は、その前後の流出経路22よりも空間容積が広がっている。このため、流出経路22を通じて排出される気流は、小区画50において一旦滞留することとなる。また、この小区画50には、基本的に一酸化炭素検出器11が配置される。これにより、一酸化炭素検出器11により、小区画50内に滞留した空気の中の一酸化炭素濃度を検出することができる。
【0026】
図3(a)に示した第3の実施形態では、区画空間20の流出口21に繋がる流出経路22上に小区画50が設けられており、区画空間20から排出された気体が一時的に小区画50に滞留するように構成されている。小区画50には一酸化炭素検出器11が設置されており、小区画50に滞留している空気の一酸化炭素濃度を測定する。
【0027】
図3(b)に示した第4の実施形態は、火災検出対象となる一つの区画空間20に複数の流出口21が設けられている。
図3(b)に示した例では、一つの区画空間20には第1の流出口21(a)、第2の流出口21(b)、及び第3の流出口21(c)の合計3箇所に流出口21が形成されている。ただし、流出口21の数は2箇所でもよいし4箇所以上とすることもできる。また、各流出口21(a)~(b)は、それぞれ流出経路22に繋がっている。この流出経路22は、各流出口21(a)~(b)から排出された気体を一つ同じ小区画50に導くように設計されている。このため、一つの小区画50内に一酸化炭素検出器11を設置しておくことで、各流出口21(a)~(b)から排出された空気の一酸化炭素濃度を一括して検出することが可能である。このように、区画空間20内に複数の流出口21(a)~(c)を設けておくことで、例えば区画空間20が広大である場合でも、火元から流出口21までの距離が平均的に短くなるため、火災を早期に発見することが可能になる。
【0028】
図3(c)に示した実施形態は、火災検出対象となる区画空間20が複数存在している。
図3(c)に示した例では、第1の区画空間20(a)、第2の区画空間20(b)、及び第3の区画空間20(c)の合計3箇所が存在しているが、区画空間20の数は2箇所であってもよいし4箇所以上とすることもできる。この場合に、複数の区画空間20(a)~(c)にはそれぞれ一又は複数の流出口21が設けられており、各流出口21から排出された気体が一つの同じ小区画50に導かれるように流出経路22が設計されている。このため、一つの小区画50内に一酸化炭素検出器11を設置しておくことで、複数の区画空間20で発生した火災を一箇所でまとめて検出することが可能となる。
【0029】
なお、
図3(a)、
図3(b)、及び
図3(c)に示した実施形態においても、区画空間20内に熱検出器12、煙検出器13、及び炎検出器14の1種又は2種以上を設置することも可能である。また、区画空間20内に消火装置18を設置しておき、各検出器11~14により火災が検出された場合に、消火装置18によって自動的に消火活動が実行されることとしてもよい。
【0030】
図4は、トイレットロールに代表される紙製のロール製品の製造設備200に、本発明に係る火災検出設備100を導入した例を模式的に示している。
【0031】
図4に示されるように、まず、原反ロール210から長尺広幅の薄葉紙P(原紙)が繰り出される。薄葉紙Pは、一枚(1プライ)であってもよいし、二枚以上が積層されたもの(2プライ以上)であってもよい。薄葉紙Pの原料については特に限定されないが、トイレットペーパーやキッチンペーパーなどの衛生薄葉紙の原料として用いられる公知のものを用いればよい。例えば、薄葉紙Pの原料には、古紙パルプや、バージンパルプ、又はこれらを配合したものを用いることができる。ここにいうバージンパルプには、例えば、木材パルプ、非木材パルプ、合成パルプなどが含まれる。
【0032】
その後、原反ロール210から繰り出された薄葉紙Pに対して、エンボス加工機220により所定パターンのエンボスが付与される。エンボス加工機220は、公知のエンボスロール221とアンビルロール222を利用して付与すればよい。エンボスロール221は薄葉紙Pの一方面側に配置され、アンビルロール222は薄葉紙Pの他方面側に配置されている。エンボスロール221の周面には、所定のエンボスパターンに対応した形状の多数の突起が形成されている。他方、アンビルロール222の周面は、金属製又はラバー製の平坦面となっている。このため、エンボスロール221とアンビルロール222との間に圧接状態で薄葉紙Pを導入することで、エンボスロール221の突起の形状に対応したパターンのエンボスが薄葉紙Pに付与される。
【0033】
その後、巻取り機230により、エンボスの付与された長尺の薄葉紙Pを所定の長さで紙管に巻き付けることでログLが形成される。巻取り機230は、エンボスロール231とアンビルロール232を備えており、薄葉紙Pが2層以上に重なっている場合に、層間剥離を防止するためのライン状のコンタクトエンボスを付与が付与される。また、巻取り機230は、周面に軸心方向に沿って多数の刃が配設された刃列を有するパーフォレーションロール233とこのロールと対をなす受けロール234を備えており、パーフォレーションロール233の回転により、薄葉紙Pの幅方向に沿ったミシン目線が、薄葉紙P流れ方向に所定間隔を空けて形成される。また、コンタクトエンボスとミシン目の形成後、薄葉紙Pは、巻取りロール235によって紙管に巻きつけられる。このとき、紙管に巻き付ける薄葉紙Pの長さを調節することで、ログLの直径を調整できる。なお、ここにいうログLの直径とは、紙管の直径に薄葉紙Pの巻径を加えた値である。ログLは、最終的に製造されるロール製品Rが、薄葉紙Pの幅方向(ログLの軸方向)に複数個連結した形状となっている。このため、この段階において、ログLの直径と最終製品であるロール製品Rの直径は一致している。例えば、トイレットロールやキッチンロールを製造する場合には、ログLの直径は、110mm~120mmとすればよい。
【0034】
その後、ログアキュームレータ240により、ログLの搬送タイミングなどを調整した後、このログLは薄葉紙Pの幅方向(ログLの軸方向)に分断される。
図1に示されるように、ログLは、ログソー250によって連続的に分断される。これにより、1本のログLから、所定の幅を有するロール製品Rが複数個得られる。例えば、1本のログLからは、4~10個程度のロール製品Rを得られるようにすればよい。ロール製品Rの幅(軸方向の長さ)は、その用途に応じて変更できる。例えば、トイレットロールの場合、その幅(紙幅)を114±2mmとすればよい。また、キッチンロールの場合、その幅(紙幅)を210~235mm程度とすればよい。
【0035】
以上のようにして、エンボスが付与された薄葉紙Pを巻回したロール製品Rを製造することができる。その後、ロール製品Rは、所定個数にまとめられて一袋に包装され、ロール製品の包装体となって出荷される。
【0036】
ここで、
図4に示した具体例では、ログソー250をフード化し、そのフードによって囲われた区画空間20内に一酸化炭素検出器11を配置することによって、火災検出設備100をロール製品の製造設備200に導入している。具体的には、
図2(b)で示した実施形態と同様に、フード内の区画空間20には気体の流出経路22に繋がる流出口21が設けられており、その流出経路22の先には吸引機40が設置されている。これにより、区画空間20内には、流出口21へと向かう気流が発生する。そして、この流出口21の付近(具体的には1m以内)に一酸化炭素検出器11が配置される。ログソー250は、回転刃の摩擦熱等によって生じた火花がログ切断時の紙粉等に引火して出火する恐れのある設備であるが、このようにフード化した上で本発明に係る火災検出設備100を導入することで、火災あるいはその予備的状況を早期に検出することができる。
【0037】
なお、
図4では、ログソー250に対して
図2(b)に示した実施形態に係る火災検出設備100を導入した例を示しているが、その他にも、
図2(a)や
図3(a)~(c)に示した実施形態に係る火災検出設備100を導入することも当然に可能である。
【0038】
以上、本願明細書では、本発明の内容を表現するために、図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【符号の説明】
【0039】
10…火災検出システム 11…一酸化炭素検出器
12…熱検出器 13…煙検出器
14…炎検出器 15…火災判定装置
16…表示装置 17…警報装置
18…消火装置 20…区画空間
21…流出口 22…流出経路
23…流入口 24…流入経路
30…送風機 40…吸引機
50…小区画 100…火災検出設備
200…ロール製品の製造設備 210…原反ロール
220…エンボス加工機 221…エンボスロール
222…アンビルロール 230…巻取り機
231…エンボスロール 232…アンビルロール
233…パーフォレーションロール 234…受けロール
235…巻取りロール 240…ログアキュームレータ
250…ログソー