(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】自覚式検眼装置及び自覚式検眼プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 3/028 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
A61B3/028
(21)【出願番号】P 2020032320
(22)【出願日】2020-02-27
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2019037303
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】滝井 通浩
(72)【発明者】
【氏名】立花 献
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-143571(JP,A)
【文献】特開2017-164113(JP,A)
【文献】特開2018-047095(JP,A)
【文献】特開平04-200434(JP,A)
【文献】特開昭61-293422(JP,A)
【文献】特開2002-315724(JP,A)
【文献】特開2017-099532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼に向けて視標呈示部から出射された視標光束を投影する投光光学系と、前記投光光学系の光路中に配置され、前記視標光束の光学特性を変化させる矯正光学系と、を備え、前記投光光学系からの前記視標光束を、前記矯正光学系を介して前記被検眼に投影することで、前記被検眼に視標を呈示し、前記被検眼の光学特性を自覚的に測定する自覚式検眼装置であって、
前記視標呈示部の呈示領域において視標が呈示される呈示領域と、前記呈示領域に前記視標を呈示するために前記視標呈示部から出射された視標光束を前記矯正光学系によって矯正する矯正量と、が対応付けられた設定情報を記憶する記憶手段と、
前記設定情報に基づいて、前記視標呈示部を制御して前記呈示領域に前記視標を呈示するとともに、前記矯正光学系を制御して前記視標光束を前記矯正量にて矯正する制御を実行する制御手段と、
を備え、
前記記憶手段には、第1設定情報と、前記第1設定情報とは呈示領域及び矯正量が異なる第2設定情報と、の少なくとも2つの設定情報が記憶され、
前記制御手段は、前記第1設定情報に基づく、第1呈示領域において第1矯正量で矯正された第1視標を呈示する第1制御と、前記第2設定情報に基づく、第2呈示領域において第2矯正量で矯正された第2視標を呈示する第2制御と、の制御の切り換えを自動的に繰り返し実行し、
前記第1制御中における前記第1視標の呈示に連動させて、前記第2視標を呈示しないかあるいは前記第2呈示領域に背景のみを呈示させるとともに、前記第2制御中における前記第2視標の呈示に連動させて、前記第1視標を呈示しないかあるいは前記第1呈示領域に背景のみを呈示させることによって、前記第1呈示領域において前記第1矯正量で矯正された前記第1視標と、前記第2呈示領域において前記第2矯正量で矯正された前記第2視標と、を前記被検眼に対して実質的に同時に呈示さ
れているかのように視認させることを特徴とする自覚式検眼装置。
【請求項2】
請求項1の自覚式検眼装置において、
前記視標呈示部の前記呈示領域と、前記矯正光学系によって前記視標光束を矯正する前記矯正量と、の対応関係を設定する設定手段を備え、
前記記憶手段は、少なくとも、前記設定手段により設定された第1設定情報と、前記設定手段により設定された第2設定情報と、を記憶することを特徴とする自覚式検眼装置。
【請求項3】
請求項1または2の自覚式検眼装置において、
前記第1制御と前記第2制御との制御の切り換えを繰り返さない第1モードと、前記第1制御と前記第2制御との制御の切り換えを繰り返す第2モードと、を設定する測定モード設定手段を備え、
前記制御手段は、前記測定モード設定手段により前記第2モードが設定された状態において、前記第1制御と前記第2制御との制御の切り換えを自動的に繰り返し行うことを特徴とする自覚式検眼装置。
【請求項4】
被検眼に向けて視標呈示部から出射された視標光束を投影する投光光学系と、前記投光光学系の光路中に配置され、前記視標光束の光学特性を変化させる矯正光学系と、を備え、前記投光光学系からの前記視標光束を、前記矯正光学系を介して前記被検眼に投影することで、前記被検眼に視標を呈示し、前記被検眼の光学特性を自覚的に測定する自覚式検眼装置において用いる自覚式検眼プログラムであって、
前記自覚式検眼装置のプロセッサに実行されることで、
前記視標呈示部の呈示領域において視標が呈示される呈示領域と、前記呈示領域に前記視標を呈示するために前記視標呈示部から出射された視標光束を前記矯正光学系によって矯正する矯正量と、を対応付けた設定情報を記憶する記憶ステップであって、第1設定情報と、前記第1設定情報とは呈示領域及び矯正量が異なる第2設定情報と、の少なくとも2つの設定情報を記憶する記憶ステップと、
前記設定情報に基づいて、前記視標呈示部を制御して前記呈示領域に前記視標を呈示するとともに、前記矯正光学系を制御して前記視標光束を前記矯正量にて矯正する制御を実行する制御ステップであって、前記第1設定情報に基づく、第1呈示領域において第1矯正量で矯正された第1視標を呈示する第1制御と、前記第2設定情報に基づく、第2呈示領域において第2矯正量で矯正された第2視標を呈示する第2制御と、の制御の切り換えを自動的に繰り返し実行し、
前記第1制御中における前記第1視標の呈示に連動させて、前記第2視標を呈示しないかあるいは前記第2呈示領域に背景のみを呈示させるとともに、前記第2制御中における前記第2視標の呈示に連動させて、前記第1視標を呈示しないかあるいは前記第1呈示領域に背景のみを呈示させることによって、前記第1呈示領域において前記第1矯正量で矯正された前記第1視標と、前記第2呈示領域において前記第2矯正量で矯正された前記第2視標と、を前記被検眼に対して実質的に同時に呈示さ
れているかのように視認させる制御ステップと、
を前記自覚式検眼装置に実行させることを特徴とする自覚式検眼プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼の光学特性を自覚的に測定する自覚式検眼装置、及び、自覚式検眼装置にて用いる自覚式検眼プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
自覚式検眼装置として、被検者の眼前に光学部材(例えば、球面レンズ、円柱レンズ、等)を配置し、この光学部材を介した視標を呈示することによって、被検眼の光学特性を測定するものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自覚式測定では、被検眼の眼前に配置された前述の光学部材を変更することで、被検眼を様々な矯正度数で矯正し、視標の見え具合を確認しながら、光学特性の測定が進められる。一例としては、検者が、被検眼に呈示された特定の視標に対して複数の矯正状態を交互に変更し、被検者が見やすい矯正状態を答えることで、光学特性の測定が進められる。しかし、このように自覚式測定を行うと、被検者は各々の矯正状態を比較しづらく、見やすい矯正状態を答えにくい場合があった。
【0005】
本開示は、上記従来技術に鑑み、自覚式測定を容易に行うことができる自覚式検眼装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示は、以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0007】
(1)本開示の第1態様に係る自覚式検眼装置は、被検眼に向けて視標呈示部から出射された視標光束を投影する投光光学系と、前記投光光学系の光路中に配置され、前記視標光束の光学特性を変化させる矯正光学系と、を備え、前記投光光学系からの前記視標光束を、前記矯正光学系を介して前記被検眼に投影することで、前記被検眼に視標を呈示し、前記被検眼の光学特性を自覚的に測定する自覚式検眼装置であって、前記視標呈示部の呈示領域において視標が呈示される呈示領域と、前記呈示領域に前記視標を呈示するために前記視標呈示部から出射された視標光束を前記矯正光学系によって矯正する矯正量と、が対応付けられた設定情報を記憶する記憶手段と、前記設定情報に基づいて、前記視標呈示部を制御して前記呈示領域に前記視標を呈示するとともに、前記矯正光学系を制御して前記視標光束を前記矯正量にて矯正する制御を実行する制御手段と、を備え、前記記憶手段には、第1設定情報と、前記第1設定情報とは呈示領域及び矯正量が異なる第2設定情報と、の少なくとも2つの設定情報が記憶され、前記制御手段は、前記第1設定情報に基づく、第1呈示領域において第1矯正量で矯正された第1視標を呈示する第1制御と、前記第2設定情報に基づく、第2呈示領域において第2矯正量で矯正された第2視標を呈示する第2制御と、の制御の切り換えを自動的に繰り返し実行し、前記第1制御中における前記第1視標の呈示に連動させて、前記第2視標を呈示しないかあるいは前記第2呈示領域に背景のみを呈示させるとともに、前記第2制御中における前記第2視標の呈示に連動させて、前記第1視標を呈示しないかあるいは前記第1呈示領域に背景のみを呈示させることによって、前記第1呈示領域において前記第1矯正量で矯正された前記第1視標と、前記第2呈示領域において前記第2矯正量で矯正された前記第2視標と、を前記被検眼に対して実質的に同時に呈示されているかのように視認させることを特徴とする。
【0008】
(2)本開示の第2態様に係る自覚式検眼プログラムは、被検眼に向けて視標呈示部から出射された視標光束を投影する投光光学系と、前記投光光学系の光路中に配置され、前記視標光束の光学特性を変化させる矯正光学系と、を備え、前記投光光学系からの前記視標光束を、前記矯正光学系を介して前記被検眼に投影することで、前記被検眼に視標を呈示し、前記被検眼の光学特性を自覚的に測定する自覚式検眼装置において用いる自覚式検眼プログラムであって、前記自覚式検眼装置のプロセッサに実行されることで、前記視標呈示部の呈示領域において視標が呈示される呈示領域と、前記呈示領域に前記視標を呈示するために前記視標呈示部から出射された視標光束を前記矯正光学系によって矯正する矯正量と、を対応付けた設定情報を記憶する記憶ステップであって、第1設定情報と、前記第1設定情報とは呈示領域及び矯正量が異なる第2設定情報と、の少なくとも2つの設定情報を記憶する記憶ステップと、前記設定情報に基づいて、前記視標呈示部を制御して前記呈示領域に前記視標を呈示するとともに、前記矯正光学系を制御して前記視標光束を前記矯正量にて矯正する制御を実行する制御ステップであって、前記第1設定情報に基づく、第1呈示領域において第1矯正量で矯正された第1視標を呈示する第1制御と、前記第2設定情報に基づく、第2呈示領域において第2矯正量で矯正された第2視標を呈示する第2制御と、の制御の切り換えを自動的に繰り返し実行し、前記第1制御中における前記第1視標の呈示に連動させて、前記第2視標を呈示しないかあるいは前記第2呈示領域に背景のみを呈示させるとともに、前記第2制御中における前記第2視標の呈示に連動させて、前記第1視標を呈示しないかあるいは前記第1呈示領域に背景のみを呈示させることによって、前記第1呈示領域において前記第1矯正量で矯正された前記第1視標と、前記第2呈示領域において前記第2矯正量で矯正された前記第2視標と、を前記被検眼に対して実質的に同時に呈示されているかのように視認させる制御ステップと、を前記自覚式検眼装置に実行させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】検眼装置の内部を正面方向から見た概略構成図である。
【
図4】検眼装置の内部を側面方向から見た概略構成図である。
【
図5】検眼装置の内部を上面方向から見た概略構成図である。
【
図8】第1制御と第2制御の切り換えを説明する図である。
【
図9】被検眼の両眼に第1検査視標と第2検査視標を実質的に同時に呈示する場合である。
【
図10】クロスシリンダテストを実施する際の第1制御と第2制御の切り換えを説明する図である。
【
図11】被検眼の両眼に輻輳角度が異なる第1検査視標と第2検査視標を実質的に同時に呈示する場合である。
【
図12】平行平面ガラスを用いた光学系とディスプレイの呈示領域を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<概要>
本開示の実施形態に係る自覚式検眼装置(以下、検眼装置と省略する)の概要について説明する。以下の<>にて分類された項目は、独立または関連して利用されうる。
【0012】
本実施形態における検眼装置は、被検眼の光学特性を自覚的に測定する。より詳細には、投光光学系からの視標光束を、矯正光学系を介して被検眼に投影することで、被検眼に視標を呈示し、被検眼の光学特性を自覚的に測定する。被検眼の光学特性は、被検眼の眼屈折力であってもよい。例えば、被検眼の球面度数、円柱度数、乱視軸角度、等の少なくともいずれかが測定される。
【0013】
<投光光学系>
検眼装置は、投光光学系(例えば、投光光学系30)を備える。投光光学系は、被検眼に向けて視標光束を出射する視標呈示手段からの視標光束を、被検眼に向けて投影してもよい。また、投光光学系は、視標呈示手段からの視標光束を、少なくとも1つの光学部材を介すことにより、被検眼に向けて投影してもよい。
【0014】
なお、本実施形態では、視標呈示手段として、ディスプレイ(例えば、ディスプレイ31)を用いてもよい。ディスプレイは、LCOS(Liquid crystal on silicon)、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro Luminescence)等であってもよい。
【0015】
例えば、投光光学系は、左右一対に設けられた左眼用投光光学系と右眼用投光光学系を有してもよい。例えば、左眼用投光光学系と右眼用投光光学系は、左眼用投光光学系を構成する部材と、右眼用投光光学系を構成する部材と、が同一の部材で構成されていてもよい。また、例えば、左眼用投光光学系と右眼用投光光学系は、左眼用投光光学系を構成する部材と、右眼用投光光学系を構成する部材と、の少なくとも一部が異なる部材で構成されていてもよい。また、例えば、左眼用投光光学系と右眼用投光光学系は、左眼用投光光学系を構成する部材と、右眼用投光光学系を構成する部材と、の少なくとも一部の部材を兼用する構成であってもよい。また、例えば、左眼用投光光学系と右眼用投光光学系は、左眼用投光光学系を構成する部材と、右眼用投光光学系を構成する部材と、が別途それぞれ設けられる構成であってもよい。
【0016】
<矯正光学系>
検眼装置は、矯正光学系(例えば、投光光学系30、矯正光学系60)を備える。矯正光学系は、投光光学系の光路中に配置され、視標光束の光学特性を変化させる。視標光束の光学特性は、視標光束の球面度数、円柱度数、乱視軸角度、等の少なくともいずれかであってもよい。
【0017】
矯正光学系は、視標光束の光学特性を変更可能な構成であればよい。例えば、矯正光学系は、光学素子を制御することで、視標光束の光学特性を変更可能としてもよい。光学素子は、球面レンズ、円柱レンズ、クロスシリンダレンズ、ロータリプリズム、波面変調素子、可変焦点レンズ、等の少なくともいずれかであってもよい。もちろん、これらの光学素子とは異なる光学素子であってもよい。
【0018】
また、例えば、矯正光学系は、被検眼に対する視標の呈示位置(呈示距離)を光学的に変えることで、被検眼の球面度数を矯正してもよい。この場合、視標の呈示位置を光学的に変更するために、視標呈示手段を光軸方向に移動させる構成としてもよい。また、この場合、視標の呈示位置を光学的に変更するために、光路中に配置された光学素子(例えば、球面レンズ等)を光軸方向に移動させる構成としてもよい。
【0019】
なお、矯正光学系は、光学素子を制御する構成と、視標呈示手段を光軸方向に移動させる構成と、光路中に配置された光学素子を光軸方向に移動させる構成と、を組み合わせた構成であってもよい。
【0020】
本実施形態において、矯正光学系は、被検眼の眼前に光学素子を配置する眼屈折力測定ユニット(フォロプタ)であってもよい。例えば、眼屈折力測定ユニットは、可変焦点レンズを有し、可変焦点レンズの屈折力を変化させる構成であってもよい。また、例えば、眼屈折力測定ユニットは、複数の光学素子が同一円周上に配置されたレンズディスクと、レンズディスクを回転させるための駆動手段(例えば、モータ)と、を有し、駆動手段の駆動によって、光学素子を電気的に切り換える構成であってもよい。もちろん、眼屈折力測定ユニットは、可変焦点レンズと、レンズディスク及び駆動手段と、を有する構成であってもよい。これらの構成を備える場合、被検眼に向けた視標光束は、眼屈折力測定ユニットを介して投影される。なお、矯正光学系として少なくとも可変焦点レンズを用い、可変焦点レンズを制御することで、視標光束の光学特性を異なる矯正度数で矯正した複数の矯正状態を、より高速に切り換えることができる。本実施形態では、可変焦点レンズが、複数の矯正状態にて各々呈示される視標が同時に視認できる速度で、高速に切り換えられる。
【0021】
また、本実施形態において、矯正光学系は、投光光学系の視標呈示手段と、投光光学系から視標光束を被検眼に向けて導光するための光学部材と、の間に光学素子を配置して、光学素子を制御することで、視標光束の光学特性を変更する構成であってもよい。すなわち、矯正光学系は、ファントムレンズ屈折計(ファントム矯正光学系)の構成であってもよい。この場合、例えば、矯正光学系によって矯正された視標光束が、光学部材を介して被検眼に導光される。
【0022】
例えば、矯正光学系は、左右一対に設けられた左眼用矯正光学系と右眼用矯正光学系を有するようにしてもよい。例えば、左眼用矯正光学系と右眼用矯正光学系は、左眼用矯正光学系を構成する部材と、右眼用矯正光学系を構成する部材と、が同一の部材で構成されていてもよい。また、例えば、左眼用矯正光学系と右眼用矯正光学系は、左眼用矯正光学系を構成する部材と、右眼用矯正光学系を構成する部材と、の少なくとも一部が異なる部材で構成されていてもよい。また、例えば、左眼用矯正光学系と右眼用矯正光学系は、左眼用矯正光学系を構成する部材と、右眼用矯正光学系を構成する部材と、の少なくとも一部が兼用される構成であってもよい。また、例えば、左眼用矯正光学系と右眼用矯正光学系は、左眼用矯正光学系を構成する部材と、右眼用矯正光学系を構成する部材と、が別途それぞれ設けられる構成であってもよい。
【0023】
<設定手段>
検眼装置は、設定手段(例えば、制御部70)を備える。設定手段は、少なくとも、視標呈示手段の呈示領域と、矯正光学系によって視標光束を矯正する矯正量と、の対応関係を設定する。なお、設定手段は、視標呈示手段の呈示領域と、視標光束を矯正する矯正量と、に加えて、視標呈示手段の呈示領域の数、視標呈示手段に呈示する視標、被検眼から視標呈示手段までの距離(すなわち、被検眼に対する視標の呈示距離)、被検眼の輻輳角度、等の対応関係を設定してもよい。例えば、設定手段は、検者により操作手段から入力される操作信号に基づいて、少なくとも、視標呈示手段の呈示領域と、視標光束を矯正する矯正量と、の対応関係を設定してもよい。設定手段を備えることによって、少なくとも呈示領域と矯正量における様々な対応関係を、容易に設定することができる。
【0024】
一例として、検眼装置は、距離設定手段を備えてもよい。距離設定手段は、被検眼から視標呈示手段に呈示する視標までの呈示距離を設定する。例えば、距離設定手段は、距離情報取得手段(例えば、制御部70)と、距離変更手段(例えば、投光光学系30)と、距離制御手段(例えば、制御部70)と、により構成されてもよい。
【0025】
距離情報取得手段は、被検眼から視標呈示手段に呈示する視標までの呈示距離である呈示距離情報を取得する。距離情報取得手段は、検者により操作手段(例えば、モニタ4)から入力される操作信号に基づいて、被検眼から視標までの任意の呈示距離を取得してもよい。また、距離情報取得手段は、予め記憶された呈示距離を自動的に取得してもよい。例えば、遠方の呈示距離(例えば、5m等)、近方の呈示距離(例えば、30cm等)、等を取得してもよい。
【0026】
距離変更手段は、被検眼から視標までの呈示距離を変更する。距離変更手段としては、視標呈示手段が用いられてもよい。また、距離変更手段は、投光光学系が備える光学部材(例えば、ミラー、レンズ、等)であってもよい。また、距離変更手段は、投光光学系の光路中に配置された光学部材(例えば、可変焦点レンズ等)であってもよい。
【0027】
距離制御手段は、距離情報取得手段により取得された呈示距離情報に基づいて、距離変更手段の駆動を制御する。距離制御手段は、視標呈示手段を移動させてもよい。また、距離変更手段は、投光光学系が備える光学部材を移動させてもよい。また、距離変更手段は、投光光学系の光路中に光学部材を挿抜してもよい。また、距離変更手段は、投光光学系の光路中にて光学部材の屈折力を変化させてもよい。もちろん、距離制御手段は、視標呈示手段の移動、光学部材の移動、光学部材の挿抜、光学部材の屈折力の変化、等を組み合わせて制御してもよい。これによって、被検眼に対する視標の呈示距離が光学的に変更される。
【0028】
本実施形態において、設定手段は、上記の距離設定手段により設定された呈示距離と、視標呈示手段の呈示領域と、矯正光学系によって視標光束を矯正する矯正量と、の対応関係を設定してもよい。例えば、距離設定手段により設定された呈示距離に応じて、視標呈示部の呈示領域において視標が呈示される呈示領域が決定され、呈示領域からの視標光束を矯正する矯正量が設定されるように、これらの対応関係を設定してもよい。一例として、視標の呈示距離が遠方の呈示距離である場合は、視標を呈示する呈示領域が、視標呈示手段の呈示領域における中央付近に決定され、呈示領域からの視標光束を矯正する矯正量が設定されるように、対応関係を設定してもよい。また、一例として、視標の呈示距離が近方の呈示距離である場合は、視標を呈示する呈示領域が、視標呈示部の呈示領域における内側付近に決定され、呈示領域からの視標光束を矯正する矯正量が設定されるように、対応関係を設定してもよい。
【0029】
<記憶手段>
検眼装置は、記憶手段(例えば、メモリ75)を備える。記憶手段は、視標呈示手段の呈示領域において視標が呈示される呈示領域と、呈示領域に視標を呈示するために視標呈示手段から出射された視標光束を矯正光学系によって矯正する矯正量と、を対応付けた設定情報を記憶する。記憶手段は、設定手段により設定された設定情報を記憶する構成としてもよい。また、記憶手段は、少なくとも、視標が呈示される呈示領域と、視標光束を矯正する矯正量と、が予め対応付けられた設定情報を記憶する構成としてもよい。すなわち、設定情報が予め蓄積されることで記憶されている構成としてもよい。
【0030】
本実施形態において、記憶手段は、少なくとも2つの設定情報(つまり、複数の設定情報)を記憶してもよい。例えば、複数の設定情報のうちの第1設定情報は、視標呈示部の呈示領域において第1視標が呈示される第1呈示領域と、第1呈示領域に第1視標を呈示するために視標呈示部から出射された第1視標光束を矯正光学系によって矯正する第1矯正量と、を対応付けた設定情報であってもよい。また、例えば、複数の設定情報のうちの第2設定情報は、視標呈示部の呈示領域における第1呈示領域とは異なる第2呈示領域であって、第2視標が呈示される第2呈示領域と、第2呈示領域に第2視標を呈示するために視標呈示部から出射された第2視標光束を矯正光学系によって矯正する矯正量であって、1矯正量とは異なる矯正量である第2矯正量と、を対応付けた設定情報であってもよい。
【0031】
なお、記憶手段は、第1設定情報と、第1設定情報とは呈示領域及び矯正量が異なる第2設定情報と、の少なくとも2つの設定情報に限定されず、第3設定情報、第4設定情報、…、第n設定情報を記憶してもよい。
【0032】
<制御手段>
検眼装置は、制御手段(例えば、制御部70)を備える。制御手段は、記憶手段に記憶された設定情報に基づいて、視標呈示手段を制御して呈示領域に視標を呈示するとともに、矯正光学系を制御して視標光束を矯正量にて矯正する制御を実行する。つまり、制御手段は、記憶手段に記憶された設定情報に基づいて、視標呈示手段を制御して呈示領域に視標を呈示することに連動させて、矯正光学系を制御して視標光束を矯正量にて矯正する。
【0033】
本実施形態においては、矯正光学系が可変焦点レンズを少なくとも有し、制御手段が可変焦点レンズを制御して視標光束を矯正量にて矯正する制御を実行してもよい。この場合、制御手段は、可変焦点レンズに与える印加電圧の大きさを調節することで、可変焦点レンズの屈折力を変化させ、視標光束における球面度数、円柱度数、及び乱視軸角度の少なくともいずれかを矯正してもよい。なお、矯正光学系においては、視標光束における球面度数を矯正するための可変焦点レンズを配置してもよいし、視標光束における円柱度数及び乱視軸角度を矯正するための可変焦点レンズを配置してもよい。もちろん、視標光束における球面度数を矯正するための可変焦点レンズと、視標光束における円柱度数及び乱視軸角度を矯正するための可変焦点レンズと、を組み合わせて配置してもよい。可変焦点レンズとしては、液体レンズ、液晶レンズ、等を用いることができる。制御手段が可変焦点レンズを制御することで、第1制御と第2制御の切り換えが高速に行われ、第1視標と第2視標のチラつきを抑制して、矯正状態の違いをより比較しやすい状態にすることができる。
【0034】
例えば、制御手段は、第1設定情報に基づく、第1呈示領域において第1矯正量で矯正された第1視標を呈示する第1制御と、第2設定情報に基づく、第2呈示領域において第2矯正量で矯正された第2視標を呈示する第2制御と、の制御の切り換えを自動的に繰り返し実行する。より詳細には、例えば、制御手段は、第1設定情報に基づいて、視標呈示部を制御して第1呈示領域に第1視標を呈示するとともに、矯正光学系を制御して第1視標光束を第1矯正量にて矯正する第1制御と、第2設定情報に基づいて、視標呈示部を制御して第2呈示領域に第2視標を呈示するとともに、矯正光学系を制御して第2視標光束を第2矯正量にて矯正する第2制御と、の切り換えを自動的に繰り返し実行する。例えば、制御手段は、第1制御と第2制御の切り換えを、被検眼に第1視標と第2視標を同時に呈示可能な速度で高速に繰り返し実行する。これによって、制御手段は、第1呈示領域において第1矯正量で矯正された第1視標と、第2呈示領域において第2矯正量で矯正された第2視標と、を被検眼に対して実質的に同時に呈示させる。例えば、被検者には、矯正状態が異なる複数の視標が1つのディスプレイに表示されてみえるようになり、矯正状態の違いによる見え具合が容易に確認される。
【0035】
本実施形態において、実質的に同時とは、第1制御により呈示される第1視標と、第2制御により呈示される第2視標と、を被検眼がどちらも同時に視認可能な状態であればよい。より詳細には、第1制御と第2制御の切り換えを繰り返すことで、第1視標と第2視標は交互に点滅するが、第1視標と第2視標がどちらも点灯しているように被検眼が視認可能な状態であればよい。例えば、第1制御と第2制御の切り換えを繰り返す際の時間間隔を短く設定することで、第1視標と第2視標とを実質的に同時に呈示させることができる。
【0036】
例えば、本実施形態においては、投光光学系が左右一対に設けられた左被検眼用の視標呈示手段と右被検眼用の視標呈示手段を備え、矯正光学系が左右一対に設けられた左被検眼用の矯正光学系と右被検眼用の矯正光学系を備えていてもよい。この場合、制御手段は、左被検眼用の視標呈示手段を制御して第1呈示領域または第2呈示領域に視標を呈示することに連動させて、左被検眼用の矯正光学系を制御して視標光束を左被検眼用の第1矯正量または第2矯正量にて矯正する。すなわち、左被検眼用の第1制御と第2制御の切り換えを実行する。また、右被検眼用の視標呈示手段を制御して第1呈示領域または第2呈示領域に視標を呈示することに連動させて、右被検眼用の矯正光学系を制御して視標光束を右被検眼用の第1矯正量または第2矯正量にて矯正する。すなわち、右被検眼用の第1制御と第2制御の切り換えを実行する。制御手段は、左被検眼に対する第1制御と右被検眼に対する第1制御とを連動させ、さらに、左被検眼に対する第2制御と右被検眼に対する第2制御とを連動させ、これらの第1制御と第2制御との制御の切り換えを自動的に繰り返し行うようにしてもよい。
【0037】
<モード設定手段>
検眼装置は、測定モード設定手段(例えば、制御部70)を備える。測定モード設定手段は、第1モードあるいは第2モードのいずれかを設定する。第1モードは、記憶手段に記憶された第1設定情報に基づく第1制御と、第2設定情報に基づく第2制御と、の制御の切り換えを繰り返さないモードである。言い換えると、第1モードは、視標呈示手段に特定の視標を呈示した状態で、特定の視標に対して複数の矯正状態を変更可能に設定するモードである。第2モードは、記憶手段に記憶された第1設定情報に基づく第1制御と、第2設定情報に基づく第2制御と、の制御の切り換えを繰り返すモードである。言い換えると、第2モードは、視標呈示手段への第1視標の呈示に連動して第1矯正量で矯正した状態と、視標呈示手段への第2視標の呈示に連動して第2矯正量で矯正した状態と、が自動的に切り換わるモードである。
【0038】
測定モード設定手段は、検者により操作手段から入力される操作信号に基づいて、第1モードあるいは第2モードのいずれかを設定してもよい。また、測定モード設定手段は、第1測定モードと第2測定モードとを自動的に切り換えて設定してもよい。一例として、第1測定モードによる測定が終了した後、自動的に第2測定モードが設定されてもよい。また、一例として、第2測定モードによる測定が終了した後、自動的に第1測定モードが設定されてもよい。
【0039】
検眼装置がこのような測定モード設定手段を備える場合、制御手段は、測定モード設定手段により第2モードが設定された状態において、第1設定情報に基づく、第1制御と、第2設定情報に基づく第2制御と、の制御の切り換えを繰り返し行ってもよい。これによって、被検者や状況に合わせた自覚式測定を容易に行うことができる。一例として、第1モードを適用した自覚式測定で被検眼を矯正するための矯正度数を大まかに決定した後、第2モードを適用した自覚式測定で矯正度数を細かく決定し、被検眼にとって最適な矯正度数(最終処方値)を取得することができる。
【0040】
なお、本開示は、本実施形態に記載する装置に限定されない。例えば、下記実施形態の機能を行う端末制御ソフトウェア(プログラム)を、ネットワークまたは各種記憶媒体等を介してシステムあるいは装置に供給し、システムあるいは装置の制御装置(例えば、CPU等)がプログラムを読み出して実行することも可能である。
【0041】
<実施例>
以下、典型的な実施形態の1つである実施例について説明する。
【0042】
図1は、検眼装置1の外観図である。例えば、検眼装置1は、筐体2、呈示窓3、モニタ4、顎台5、基台6、前眼部撮像光学系100、等を備える。筐体2は、基台6に固定される。筐体2の内部には、後述する測定部7が備えられる。呈示窓3は、被検者の眼(被検眼E)に視標を呈示するために用いる。モニタ4は、被検眼Eの光学特性の測定結果等を表示する。モニタ4は、タッチパネル機能をもつディスプレイである。すなわち、モニタ4が操作部(コントローラ)として機能する。なお、モニタ4はタッチパネル式でなくてもよく、モニタ4と操作部とを別に設ける構成であってもよい。この場合には、マウス、ジョイスティック、キーボード、携帯端末、等の少なくともいずれかを操作部として用いてもよい。モニタ4から入力された操作指示に応じた信号は、後述する制御部70に出力される。顎台5は、基台6に固定される。顎台5は、被検眼Eと検眼装置1との距離を一定に保つために用いる。なお、顎台5に限定されず、額当て、顔当て、等を用いて、被検眼Eと検眼装置1との距離を一定に保つ構成としてもよい。
【0043】
前眼部撮像光学系100は、被検者の顔を撮像するために用いる。前眼部撮像光学系100は、図示なき撮像素子とレンズで構成される。前眼部撮像光学系100は、左右の被検眼Eの少なくとも一方を撮像し、その前眼部画像を取得する。前眼部撮像光学系100が取得した前眼部画像は、後述する制御部70に解析される。
【0044】
<測定部>
測定部7からの視標光束は、呈示窓3を介して被検眼Eに導光される。測定部7は、左眼用測定部7Lと右眼用測定部7Rを備える。測定部7は、左右一対の後述する自覚式測定部と、左右一対の後述する他覚式測定部と、を有する。本実施例における左眼用測定部7Lと右眼用測定部7Rは、同一の部材で構成される。もちろん、左眼用測定部7Lと右眼用測定部7Rは、その少なくとも一部が異なる部材で構成されてもよい。
【0045】
図2は、測定部7を示す図である。
図2では、測定部7として、左眼用測定部7Lを例に挙げる。右眼用測定部7Rは、左眼用測定部7Lと同様の構成であるため省略する。例えば、左眼用測定部7Lは、自覚式測定光学系25、他覚式測定光学系10、第1指標投影光学系45、第2指標投影光学系46、観察光学系50、等を備える。
【0046】
<自覚式測定光学系>
自覚式測定光学系25は、被検眼Eの光学特性を自覚的に測定する自覚式測定部の構成の一部として用いられる(詳細は後述する)。本実施例では、被検眼Eの光学特性として、被検眼Eの眼屈折力を測定する自覚式測定部を例に挙げる。なお、被検眼Eの光学特性は、眼屈折力の他、コントラスト感度、両眼視機能(例えば、斜位量、立体視機能、等)、等であってもよい。例えば、自覚式測定光学系25は、投光光学系(視標投光系)30、矯正光学系60、及び、補正光学系90、で構成される。
【0047】
<投光光学系>
投光光学系30は、被検眼Eに向けて視標光束を投影する。例えば、投光光学系30は、ディスプレイ31、投光レンズ33、投光レンズ34、反射ミラー36、ダイクロイックミラー35、ダイクロイックミラー29、対物レンズ14、等を備える。
【0048】
ディスプレイ31には、視標(固視標、検査視標、等)が表示される。ディスプレイ31から出射した視標光束は、投光レンズ33、投光レンズ34、反射ミラー36、ダイクロイックミラー35、ダイクロイックミラー29、対物レンズ14、の順に光学部材を経由して、被検眼Eに投影される。
【0049】
<矯正光学系>
矯正光学系60は、投光光学系30の光路中に配置される。また、矯正光学系60は、ディスプレイ31から出射した視標光束の光学特性を変化させる。例えば、矯正光学系60は、乱視矯正光学系63、可変焦点レンズ40、駆動機構39、等を備える。
【0050】
乱視矯正光学系63は、被検眼Eの円柱度数や乱視軸角度を矯正するために用いる。乱視矯正光学系63は、投光レンズ33と投光レンズ34の間に配置される。乱視矯正光学系63は、焦点距離の等しい、2枚の正の円柱レンズ61aと円柱レンズ61bで構成される。円柱レンズ61aと円柱レンズ61bは、回転機構62aと回転機構62bの駆動によって、光軸L2を中心として、各々が独立に回転する。なお、本実施例では、乱視矯正光学系63として、円柱レンズ61aと円柱レンズ61bを用いる構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。乱視矯正光学系63は、円柱度数、乱視軸角度、等を矯正できる構成であればよい。一例としては、投光光学系30の光路に矯正レンズを出し入れしてもよい。
【0051】
可変焦点レンズ40は、被検眼Eの球面度数、円柱度数、及び乱視軸角度、の少なくともいずれかを矯正するために用いる。可変焦点レンズ40は、光軸L2に対して静止した状態で、制御部70により設定される印加電圧の大きさに応じて屈折力を変化させることで、焦点位置を変更する。可変焦点レンズ40は、液体レンズ、液晶レンズ、等であってもよい。
【0052】
本実施例では、可変焦点レンズ40として、球面度数を矯正するための可変焦点レンズ40a(
図8参照)と、円柱度数及び乱視軸角度を矯正するための可変焦点レンズ40b(
図8参照)と、を配置する場合を例に挙げる。このため、本実施例では、可変焦点レンズ40bの屈折力、及び、乱視矯正光学系63が備える円柱レンズの回転角度、の少なくともいずれかを変更することで、被検眼Eの円柱度数及び乱視軸角度を矯正する乱視矯正光学系が構成されている。
【0053】
駆動機構39は、モータ及びスライド機構からなる。駆動機構39は、後述する駆動ユニット95を光軸L2方向に移動させることで、ディスプレイ31を光軸L2方向に移動させる。他覚式測定では、ディスプレイ31を移動させることで、被検眼Eに雲霧をかけることができる。自覚式測定では、ディスプレイ31を移動させることで、被検眼Eに対する視標の呈示位置(呈示距離)を光学的に変更し、被検眼Eの球面度数を矯正することができる。すなわち、本実施例では、可変焦点レンズ40aの屈折力、及び、ディスプレイ31の位置、の少なくともいずれかを変更することで、被検眼Eの球面度数を矯正する球面矯正光学系が構成されている。なお、球面矯正光学系の構成は、本実施例とは異なっていてもよい。例えば、多数の光学素子を光路中に配置することで、球面度数を矯正してもよい。また、例えば、レンズを光路中に配置し、レンズを光軸方向に移動させることで、球面度数を矯正してもよい。
【0054】
なお、本実施例では、球面度数、円柱度数、及び乱視軸角度を矯正する矯正光学系が例示されている。しかし、矯正光学系は、他の光学特性(例えば、プリズム値、等)を矯正してもよい。プリズム値が矯正されることで、被検眼が斜位眼であっても、被検眼に視標光束が適切に投影される。
【0055】
また、本実施例では、円柱度数及び乱視軸角度を矯正する乱視矯正光学系63と、球面度数を矯正する駆動機構39が別で設けられている。しかし、球面度数、円柱度数、及び乱視軸角度が同一の構成によって矯正されてもよい。例えば、波面を変調させる光学系によって、球面度数、円柱度数、及び乱視軸角度が矯正されてもよい。また、複数の光学素子(例えば、球面レンズ、円柱レンズ、および分散プリズム等の少なくともいずれか)が同一円周上に配置されたレンズディスクと、レンズディスクを回転させるアクチュエータが、矯正光学系として用いられてもよい。この場合、レンズディスクが回転されて、光軸L2上に位置する光学素子が切り替えられることで、種々の光学特性が矯正される。また、光軸L2上に配置された光学素子(例えば、円柱レンズ、クロスシリンダレンズ、およびロータリプリズム等の少なくともいずれか)が、アクチュエータによって回転されてもよい。
【0056】
<補正光学系>
補正光学系90は、対物レンズ14と偏向ミラー81(後述)の間に配置される。補正光学系90は、自覚式測定で生じる光学収差(例えば、非点収差、等)を補正するために用いる。補正光学系90は、円柱度数と乱視軸角度を調整することで、非点収差を補正する。補正光学系90は、焦点距離の等しい、2枚の正の円柱レンズ91aと円柱レンズ91bで構成される。円柱レンズ91aと円柱レンズ91bは、回転機構92aと回転機構92bの駆動によって、光軸L3を中心として、各々が独立に回転する。なお、本実施例では、補正光学系90として、2枚の正の円柱レンズ91aと円柱レンズ91bを用いる構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。補正光学系90は、非点収差を矯正できる構成であればよい。例えば、この場合には、光軸L3に補正レンズを出し入れしてもよい。
【0057】
<他覚式測定光学系>
他覚式測定光学系10は、被検眼の光学特性を他覚的に測定する他覚式測定部の構成の一部として用いられる(詳細は後述する)。本実施例では、被検眼Eの光学特性として、被検眼Eの眼屈折力を測定する他覚式測定部を例に挙げて説明する。なお、被検眼Eの光学特性は、眼屈折力の他、眼軸長、角膜形状、等であってもよい。例えば、他覚式測定光学系10は、投影光学系10a、受光光学系10b、及び、補正光学系90、で構成される。
【0058】
投影光学系(投光光学系)10aは、被検眼Eの瞳孔中心部を介して、被検眼Eの眼底にスポット状の測定指標を投影する。例えば、投影光学系10aは、光源11、リレーレンズ12、ホールミラー13、プリズム15、ダイクロイックミラー35、ダイクロイックミラー29、対物レンズ14、等を備える。
【0059】
光源11は、測定光束を出射する。光源11は、被検眼Eの眼底と共役な関係となっている。ホールミラー13のホール部は、被検眼Eの瞳孔と共役な関係となっている。プリズム15は、光束偏向部材である。プリズム15は、被検眼Eの瞳孔と共役な位置から外れた位置に配置され、プリズム15を通過する測定光束を光軸L1に対して偏心させる。プリズム15は、光軸L1を中心として、駆動部(モータ)23により回転駆動される。ダイクロイックミラー35は、他覚式測定光学系10の光路と、後述する自覚式測定光学系25の光路と、を共通にする。すなわち、ダイクロイックミラー35は、他覚式測定光学系10の光軸L1と、自覚式測定光学系25の光軸L2と、を同軸にする。ダイクロイックミラー29は、光路分岐部材である。ダイクロイックミラー29は、投影光学系10aによる測定光束と、自覚式測定光学系25による測定光束と、を反射して被検眼Eに導く。
【0060】
受光光学系10bは、被検眼Eの眼底で反射された眼底反射光束を、被検眼Eの瞳孔周辺部を介してリング状に取り出す。例えば、受光光学系10bは、対物レンズ14、ダイクロイックミラー29、ダイクロイックミラー35、プリズム15、ホールミラー13、リレーレンズ16、ミラー17、受光絞り18、コリメータレンズ19、リングレンズ20、撮像素子22、等を備える。リングレンズ20は、リング状に形成されたレンズ部と、レンズ部以外の領域に遮光用のコーティングを施した遮光部と、から構成される。リングレンズ20は、被検眼Eの瞳孔と光学的に共役な位置関係となっている。受光絞り18と撮像素子22は、被検眼Eの眼底と共役な関係となっている。撮像素子22からの出力は、制御部70に入力される。
【0061】
本実施例において、投影光学系10aが備える光源11と、受光光学系10bが備える受光絞り18、コリメータレンズ19、リングレンズ20、及び撮像素子22と、投光光学系30が備えるディスプレイ31と、は駆動機構39により光軸方向に一体的に移動可能となっている。つまり、光源11、受光絞り18、コリメータレンズ19、リングレンズ20、撮像素子22、及び、ディスプレイ31、が駆動ユニット95として同期し、駆動機構39がこれらを一体的に移動させる。例えば、駆動機構39が移動した移動位置は、図示なきポテンショメータによって検出される。
【0062】
駆動ユニット95は、外側のリング光束が各経線方向に関して撮像素子22上に入射するように、他覚式測定光学系10の一部を光軸方向に移動させる。すなわち、他覚式測定光学系10の一部を被検眼Eの球面屈折誤差(球面屈折力)に応じて光軸L1方向に移動させることで、球面屈折誤差を補正し、被検眼Eの眼底に対して光源11、受光絞り18及び撮像素子22が光学的に共役になるようにする。なお、ホールミラー13とリングレンズ20は、駆動ユニット95の移動量にかかわらず、被検眼Eの瞳と一定の倍率で共役になるように配置されている。
【0063】
上記の構成において、光源11から出射された測定光束は、リレーレンズ12、ホールミラー13、プリズム15、ダイクロイックミラー35、ダイクロイックミラー29、対物レンズ14、を経て被検眼Eの眼底上にスポット状の点光源像を形成する。このとき、光軸周りに回転するプリズム15によって、ホールミラー13におけるホール部の瞳投影像(瞳上での投影光束)は高速に偏心回転される。眼底に投影された点光源像は、反射・散乱されて被検眼Eから射出し、対物レンズ14によって集光され、ダイクロイックミラー29、ダイクロイックミラー35、高速回転するプリズム15、ホールミラー13、リレーレンズ16、ミラー17を介して受光絞り18の位置に再び集光され、コリメータレンズ19とリングレンズ20とによって撮像素子22にリング状の像が結像する。
【0064】
例えば、プリズム15は、投影光学系10aと受光光学系10bの共通光路に配置されている。例えば、眼底からの反射光束は投影光学系10aと同じプリズム15を通過するため、それ以降の光学系では、あたかも瞳孔上における投影光束・反射光束(受光光束)の偏心がなかったかのように逆走査される。
【0065】
なお、本実施例において、他覚式測定部の構成は変更することが可能である。例えば、他覚式測定部は、瞳孔周辺部から眼底にリング状の測定指標を投影し、瞳孔中心部から眼底反射光を取り出し、撮像素子22にリング状の眼底反射像を受光させる構成を備えていてもよい。また、他覚式測定部はシャックハルトマンセンサを備えていてもよいし、スリットを投影する位相差方式の構成を備えていてもよい。
【0066】
<第1指標投影光学系及び第2指標投影光学系>
例えば、本実施例においては、第1指標投影光学系45及び第2指標投影光学系46が、補正光学系90と、偏向ミラー81との間に配置される。もちろん、第1指標投影光学系45及び第2指標投影光学系46の配置位置は、これに限定されない。例えば、第1指標投影光学系45と第2指標投影光学系46は、筐体2のカバーに備えられていてもよい。例えば、この場合には、第1指標投影光学系45及び第2指標投影光学系46が、呈示窓3の周囲に配置される構成が挙げられる。
【0067】
例えば、第1指標投影光学系45は、光軸L3を中心に配置されたリング状の赤外光源を備える。例えば、第1指標投影光学系45は、被検眼Eの角膜にアライメント指標を投影するための近赤外光を発する。例えば、第2指標投影光学系46は、第1指標投影光学系45とは異なる位置に配置されたリング状の赤外光源を備える。なお、
図2では、便宜上、第1指標投影光学系45と第2指標投影光学系46におけるリング状の赤外光源の一部(断面部分)のみが図示されている。本実施例において、第1指標投影光学系45は、被検者眼の角膜に無限遠のアライメント指標を投影する。また、第2指標投影光学系46は、被検者眼の角膜に有限遠のアライメント指標を投影する。なお、第2指標投影光学系46から出射されるアライメント光は、観察光学系50によって被検眼の前眼部を撮影するための前眼部撮影光としても用いられる。また、第1指標投影光学系45および第2指標投影光学系46の光源は、リング状の光源に限定されず、複数の点状の光源、またはライン状の光源等であってもよい。
【0068】
<観察光学系>
観察光学系(撮像光学系)50は、対物レンズ14、ダイクロイックミラー29、撮像レンズ51、撮像素子52、等を備える。ダイクロイックミラー29は、前眼部観察光及びアライメント光を透過する。撮像素子52は、被検眼Eの前眼部と略共役な位置に配置された撮像面をもつ。撮像素子52からの出力は、制御部70に入力される。これによって、被検眼Eの前眼部画像は撮像素子52により撮像され、モニタ4上に表示される。なお、この観察光学系50は、第1指標投影光学系45及び第2指標投影光学系46によって、被検眼Eの角膜に形成されるアライメント指標像を検出する光学系を兼ね、制御部70によってアライメント指標像の位置が検出される。
【0069】
<検眼装置内部構成>
以下、検眼装置1の内部構成について説明する。
図3は、本実施例に係る検眼装置1の内部を正面方向(
図1のA方向)から見た概略構成図である。
図4は、本実施例に係る検眼装置1の内部を側面方向(
図1のB方向)から見た概略構成図である。
図5は、本実施例に係る検眼装置1の内部を上面方向(
図1のC方向)から見た概略構成図である。なお、
図4及び
図5では、説明の便宜上、左眼用測定部7Lの光軸のみを示している。
【0070】
例えば、検眼装置1は、自覚式測定部と、他覚式測定部と、を備える。例えば、自覚式測定部及び他覚式測定部において、測定部7からの視標光束は、光学部材(例えば、後述する凹面ミラー85)の光軸Lに一致する光路を通過して被検眼Eに導光されてもよい。また、例えば、自覚式測定部及び他覚式測定部において、測定部7からの視標光束は、光学部材(例えば、後述する凹面ミラー85)の光軸Lから外れた光路を通過して被検眼Eに導光されてもよい。例えば、本実施例において、光軸Lは凹面ミラー85の球中心に向かう軸である。なお、以下では、測定部7からの視標光束が凹面ミラー85の光軸Lから外れた経路を通過する構成を例に挙げる。すなわち、測定部7からの視標光束が凹面ミラー85の光軸Lに対して斜め方向から照射され、その反射光束が被検眼Eに導光される。
【0071】
例えば、自覚式測定部は、測定部7、偏向ミラー81、駆動機構82、駆動部83、反射ミラー84、凹面ミラー85で構成される。なお、自覚式測定部はこの構成に限定されない。例えば、反射ミラー84を有しない構成であってもよい。この場合には、測定部7からの視標光束が、偏向ミラー81を介した後に凹面ミラー85の光軸Lに対して斜め方向から照射されてもよい。また、例えば、ハーフミラーを有する構成であってもよい。この場合には、測定部7からの視標光束を、ハーフミラーを介して凹面ミラー85の光軸Lに対して斜め方向に照射し、その反射光束を被検眼Eに導光してもよい。なお、本実施例では凹面ミラー85を配置しているが、凹面ミラー85ではなく、凸レンズを配置した構成であってもよい。
【0072】
例えば、他覚式測定部は、測定部7、偏向ミラー81、反射ミラー84、凹面ミラー85で構成される。なお、他覚式測定部はこの構成に限定されない。例えば、反射ミラー84を有しない構成であってもよい。この場合には、測定部7からの視標光束が、偏向ミラー81を介した後に凹面ミラー85の光軸Lに対して斜め方向から照射されてもよい。また、例えば、ハーフミラーを有する構成であってもよい。この場合には、測定部7からの視標光束を、ハーフミラーを介して凹面ミラー85の光軸Lに対して斜め方向に照射し、その反射光束を被検眼Eに導光してもよい。なお、本実施例では凹面ミラー85を配置しているが、凹面ミラー85ではなく凸レンズを配置した構成であってもよい。
【0073】
例えば、検眼装置1は、左眼用駆動部9Lと右眼用駆動部9Rとを有し、左眼用測定部7L及び右眼用測定部7RをそれぞれX方向に移動することができる。例えば、左眼用測定部7L及び右眼用測定部7Rが移動されることによって、偏向ミラー81と測定部7との間の距離が変更され、Z方向における視標光束の呈示位置が変更される。これによって、矯正光学系60によって矯正された視標光束を被検眼Eに導光し、矯正光学系60によって矯正された視標光束の像が被検眼Eの眼底に形成されるように、測定部7をZ方向に調整することができる。
【0074】
例えば、偏向ミラー81は、左右一対にそれぞれ設けられた、右眼用の偏向ミラー81Rと左眼用の偏向ミラー81Lとを有する。例えば、偏向ミラー81は、矯正光学系60と被検眼Eとの間に配置される。すなわち、本実施例における矯正光学系60は、左右一対に設けられた左眼用矯正光学系と右眼用矯正光学系とを有しており、左眼用の偏向ミラー81Lは左眼用矯正光学系と左被検眼ELの間に配置され、右眼用の偏向ミラー81Rは右眼用矯正光学系と右被検眼ERの間に配置される。例えば、偏向ミラー81は、瞳の共役位置に配置されることが好ましい。
【0075】
例えば、左眼用の偏向ミラー81Lは、左眼用測定部7Lから投影される光束を反射し、左被検眼ELに導光する。また、例えば、左眼用の偏向ミラー81Lは、左被検眼ELで反射された反射光を反射し、左眼用測定部7Lに導光する。例えば、右眼用の偏向ミラー81Rは、右眼用測定部7Rから投影される光束を反射し、右被検眼ERに導光する。また、例えば、右眼用の偏向ミラー81Rは、右被検眼ERで反射された反射光を反射し、右眼用測定部7Rに導光する。なお、本実施例においては、測定部7から投影される光束を反射し、被検眼Eに導光する偏向部材として、偏向ミラー81を用いる構成を例に挙げて説明しているがこれに限定されない。偏向部材は、測定部7から投影される光束を反射し、被検眼Eに導光する偏向部材であればよい。例えば、偏向部材としては、プリズムやレンズ等が挙げられる。
【0076】
例えば、駆動機構82は、モータ(駆動部)等からなる。例えば、駆動機構82は、左眼用の偏向ミラー81Lを駆動するための駆動機構82Lと、右眼用の偏向ミラー81Rを駆動するための駆動機構82Rと、を有する。例えば、駆動機構82の駆動によって、偏向ミラー81は回転移動する。例えば、駆動機構82は、水平方向(X方向)の回転軸、及び鉛直方向(Y方向)の回転軸に対して偏向ミラー81を回転させる。すなわち、駆動機構82は偏向ミラー81をXY方向に回転させる。なお、偏向ミラー81の回転は、水平方向又は鉛直方向の一方であってもよい。
【0077】
例えば、駆動部83は、モータ等からなる。例えば、駆動部83は、左眼用の偏向ミラー81Lを駆動するための駆動部83Lと、右眼用の偏向ミラー81Rを駆動するための駆動部83Rと、を有する。例えば、駆動部83の駆動によって、偏向ミラー81はX方向に移動する。例えば、左眼用の偏向ミラー81L及び右眼用の偏向ミラー81Rが移動されることによって、左眼用の偏向ミラー81L及び右眼用の偏向ミラー81Rとの間の距離が変更され、被検眼Eの瞳孔間距離にあわせて、左眼用光路と右眼用光路との間のX方向における距離を変更することができる。
【0078】
なお、例えば、偏向ミラー81は、左眼用光路と右眼用光路とのそれぞれにおいて複数設けられてもよい。例えば、左眼用光路と右眼用光路とのそれぞれにおいて、2つの偏向ミラーが設けられる(例えば、左眼用光路で2つの偏向ミラー等)構成が挙げられる。この場合、一方の偏向ミラーがX方向に回転され、他方の偏向ミラーがY方向に回転されてもよい。例えば、偏向ミラー81が回転移動されることによって、矯正光学系60の像を被検眼の眼前に形成するためのみかけの光束を偏向させることにより、像の形成位置を光学的に補正することができる。
【0079】
例えば、凹面ミラー85は、右眼用測定部7Rと左眼用測定部7Lとで共有される。例えば、凹面ミラー85は、右眼用矯正光学系を含む右眼用光路と、左眼用矯正光学系を含む左眼用光路と、で共有される。すなわち、凹面ミラー85は、右眼用矯正光学系を含む右眼用光路と、左眼用矯正光学系を含む左眼用光路と、を共に通過する位置に配置されている。もちろん、凹面ミラー85は、右眼用光路と左眼用光路とで共有される構成でなくてもよい。すなわち、右眼用矯正光学系を含む右眼用光路と、左眼用矯正光学系を含む左眼用光路と、でそれぞれ凹面ミラーが設けられる構成であってもよい。例えば、凹面ミラー85は、矯正光学系を通過した視標光束を被検眼Eに導光し、矯正光学系を通過した視標光束の像を被検眼Eの眼前に形成する。なお、本実施例においては凹面ミラー85を用いる構成を例に挙げて説明したが、これに限定されず、種々の光学部材を用いることができる。例えば、光学部材としては、レンズや平面ミラー等を用いることができる。
【0080】
例えば、凹面ミラー85は、自覚式測定部と、他覚式測定部と、で兼用される。例えば、自覚式測定光学系25から投影された視標光束は、凹面ミラー85を介して、被検眼Eに投影される。例えば、他覚式測定光学系10から投影された測定光は、凹面ミラー85を介して、被検眼Eに投影される。また、例えば、他覚式測定光学系10から投影された測定光の反射光は、凹面ミラー85を介して、他覚式測定光学系10の受光光学系10bに導光される。なお、本実施例においては、他覚式測定光学系10による測定光の反射光が、凹面ミラー85を介して、他覚式測定光学系10の受光光学系10bに導光される構成を例に挙げているがこれに限定されない。例えば、他覚式測定光学系10による測定光の反射光は、凹面ミラー85を介さない構成であってもよい。
【0081】
より詳細には、例えば、本実施例においては、自覚式測定部における凹面ミラー85から被検眼Eまでの間の光軸と、他覚式測定部における凹面ミラー85から被検眼Eまでの間の光軸と、が少なくとも同軸で構成されている。例えば、本実施例においては、ダイクロイックミラー35によって、自覚式測定光学系25の光軸L2と他覚式測定光学系10の光軸L1とが合成され、同軸となっている。
【0082】
<自覚式測定部の光路>
以下、自覚式測定部の光路について説明する。例えば、自覚測定部は、矯正光学系60を通過した視標光束を、凹面ミラー85によって被検眼方向に反射することで被検眼Eに視標光束を導光し、矯正光学系60を通過した視標光束の像を光学的に所定の検査距離となるように被検眼Eの眼前に形成する。例えば、このとき、矯正光学系60を通過した視標光束は、凹面ミラー85の光軸Lから外れた光路を通過して凹面ミラー85へ入射し、凹面ミラー85の光軸Lから外れた光路を通過するように反射されて、被検眼Eに導光される。例えば、被検者から見た視標は、被検眼Eからディスプレイ31までの実際の距離よりも遠方にあるように見える。すなわち、凹面ミラー85を用いることで被検眼Eに対する視標の呈示距離を延長し、所定の検査距離の位置に視標光束の像が見えるように、被検者に視標を呈示することができる。
【0083】
より詳細に説明する。なお、以下の説明においては左眼用光路を例に挙げて説明するが、右眼用光路においても左眼用光路と同様の構成となっている。例えば、左眼用の自覚測定部において、左眼用測定部7Lのディスプレイ31から投影された視標光束は、投光レンズ33を介して、乱視矯正光学系63に入射する。乱視矯正光学系63を通過した視標光束は、反射ミラー36、ダイクロイックミラー35、ダイクロイックミラー29、対物レンズ14を経由して、補正光学系90に入射する。補正光学系90を通過した視標光束は、左眼用測定部7Lから左眼用の偏向ミラー81Lに向けて導光される。左眼用測定部7Lから出射されて左眼用の偏向ミラー81で反射された視標光束は、反射ミラー84により凹面ミラー85に向けて反射される。例えば、ディスプレイ31から出射した視標光束は、このように光学部材を経由することで左被検眼ELに到達する。
【0084】
これによって、左被検眼ELの眼鏡装用位置(例えば、角膜頂点位置から12mm程度)を基準として、矯正光学系60により矯正された視標が左被検眼ELの眼底上に形成される。従って、乱視矯正光学系63があたかも眼前に配置されたことと、球面度数の矯正光学系(本実施例においては、駆動機構39の駆動)による球面度数の調整が眼前で行われたことと、が等価になっており、被検者は凹面ミラー85を介して自然な状態で視標の像を視準することができる。なお、本実施例においては、右眼用光路においても、左眼用光路と同様の構成であり、左被検眼EL及び右被検眼ERの眼鏡装用位置(例えば、角膜頂点位置から12mm程度)を基準として、左右一対の矯正光学系60により矯正された視標が、両被検眼の眼底上に形成されるようになっている。このようにして、被検者は自然視の状態で視標を直視しつつ検者に対する応答を行い、視標が適正に見えるまで矯正光学系60による矯正を図り、その矯正値に基づいて自覚的に被検眼の光学特性の測定を行う。
【0085】
<他覚式測定部の光路>
次いで、他覚式測定部の光路について説明する。なお、以下の説明においては左眼用光路を例に挙げて説明するが、右眼用光路においても左眼用光路と同様の構成となっている。例えば、左眼用の他覚測定部において、他覚式測定光学系10における投影光学系10aの光源11から出射された測定光は、リレーレンズ12から対物レンズ14までを介して補正光学系90に入射する。補正光学系90を通過した測定光は、左眼用測定部7Lから左眼用の偏向ミラー81Lに向けて投影される。左眼用測定部7Lから出射されて左眼用の偏向ミラー81で反射された測定光は、反射ミラー84によって凹面ミラー85に向けて反射される。凹面ミラーによって反射された測定光は、反射ミラー84を透過して左被検眼ELに到達し、左被検眼ELの眼底上にスポット状の点光源像を形成する。このとき、光軸周りに回転するプリズム15によって、ホールミラー13のホール部の瞳投影像(瞳上での投影光束)は高速に偏心回転される。
【0086】
左被検眼ELの眼底上に形成された点光源像の光は、反射・散乱されて被検眼Eを射出し、測定光が通過した光路を経由して対物レンズ14により集光され、ダイクロイックミラー29、ダイクロイックミラー35、プリズム15、ホールミラー13、リレーレンズ16、ミラー17までを介する。ミラー17までを介した反射光は、受光絞り18の開口上で再び集光され、コリメータレンズ19にて略平行光束(正視眼の場合)とされ、リングレンズ20によってリング状光束として取り出され、リング像として撮像素子22に受光される。受光したリング像を解析することによって、他覚的に被検眼Eの光学特性を測定することができる。
【0087】
<制御部>
図6は、本実施例に係る検眼装置1の制御系を示す図である。例えば、制御部70には、モニタ4、不揮発性メモリ75(以下、メモリ75)、測定部7が備える光源11、撮像素子22、ディスプレイ31、撮像素子52等の各種部材が電気的に接続されている。また、例えば、制御部70には、駆動部9、駆動機構39、回転機構62aと62b、駆動部83、回転機構92aと92bがそれぞれ備える図示なき駆動部が電気的に接続されている。
【0088】
例えば、制御部70は、CPU(プロセッサ)、RAM、ROM、等を備える。例えば、CPUは、検眼装置1における各部材の制御を司る。例えば、RAMは、各種の情報を一時的に記憶する。例えば、ROMには、検眼装置1の動作を制御するための各種プログラム、各種検査のための視標データ、初期値等が記憶されている。なお、制御部70は、複数の制御部(つまり、複数のプロセッサ)によって構成されてもよい。
【0089】
例えば、メモリ75は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、メモリ75としては、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、USBメモリ、等を使用することができる。例えば、メモリ75には、自覚式測定部及び他覚式測定部を制御するための制御プログラムが記憶されている。
【0090】
<制御動作>
検眼装置1の制御動作について説明する。
【0091】
検者は、モニタ4(操作部)を操作し、ディスプレイ31に固視標を表示させる。また、検者は、被検者に、顎を顎台5に載せて呈示窓3を観察するように指示する。これにより、被検眼Eには固視標が投影される。
【0092】
<被検眼と装置のアライメント(位置合わせ)>
検者は、モニタ4からアライメントを開始するための操作信号を入力する。制御部70は、操作信号に応じて、第1指標投影光学系45及び第2指標投影光学系46を制御し、被検眼Eの角膜にアライメント指標像を投影する。また、制御部70は、アライメント指標像を用いて、被検眼Eに対する測定部7のアライメントを実行する(詳細は、例えば、特開2017-86652号公報を参照されたい)。
【0093】
<他覚式測定>
検者は、被検眼Eに対する他覚式測定を実施する。検者は、モニタ4から他覚式測定を開始するための操作信号を入力する。制御部70は、操作信号に応じて、他覚式測定光学系10を制御する。制御部70は、光源11を点灯させ、被検眼Eの眼底に向けて測定光束を照射する。被検眼Eの眼底にて測定光束が反射した眼底反射光束は、撮像素子22にリング像として撮像される。
【0094】
制御部70は、被検眼Eの他覚式測定における光学特性(すなわち、被検眼Eの他覚値)を、リング像に基づいて演算する。例えば、制御部70は、リング像を解析処理して、リング像の各経線方向の眼屈折力を求める。また、例えば、制御部70は、眼屈折力に対して所定の演算処理を行う。これによって、被検眼Eの他覚値を取得する。制御部70は、被検眼Eの他覚値をモニタ4に表示させるとともに、メモリ75に記憶させる。
【0095】
<自覚式測定>
続いて、検者は、被検眼Eに対する自覚式測定を実施する。検者は、モニタ4から自覚式測定を開始するための操作信号を入力する。制御部70は、操作信号に応じて、ディスプレイ31に検査視標(例えば、ランドルト環視標)を表示させ、被検眼Eに検査視標を投影する。また、制御部70は、操作信号に応じて、自覚式測定光学系25を制御する。
【0096】
ここで、本実施例における自覚式測定では、検者が測定モードを選択すると、制御部70が操作信号に応じた測定モードを設定し、被検眼Eへの検査視標の呈示方法が変更される。例えば、制御部70が第1モードを設定すると、後述する第1制御と第2制御の切り換えは繰り返し行われず、被検眼Eに対して特定の検査視標が呈示される。また、例えば、制御部70が第2モードを設定すると、後述する第1制御と第2制御の切り換えが繰り返し行われ、被検眼Eに対して、第1制御にて呈示される第1検査視標と、第2制御にて呈示される第2検査視標が、実質的に同時に呈示される。なお、第1モードによる自覚式測定と、第2モードによる自覚式測定は、その少なくともいずれかが行われる構成であってもよい。
【0097】
<第1モード>
以下、第1モードを説明する。第1モードは、被検眼Eに特定の検査視標を呈示するモードである。より詳細には、第1モードは、ディスプレイ31に特定の検査視標を常に表示し、被検眼Eに特定の検査視標を呈示するモードである。
【0098】
制御部70は、被検眼Eの他覚値に基づいて、投光光学系30と矯正光学系60の少なくともいずれかを制御し、被検眼Eの眼屈折度を所定のディオプタ値(例えば、0D等)に矯正する。例えば、制御部70は、ディスプレイ31を光軸L2方向へ移動させることで、被検眼Eの球面度数を矯正してもよい。また、例えば、制御部70は、円柱レンズ61aと61bを光軸L2周りに回転させることで、被検眼Eの円柱度数と乱視軸角度の少なくともいずれかを矯正してもよい。これによって、被検眼Eの眼屈折力は所定のディオプタ値に矯正されるとともに、被検眼Eの眼屈折度が所定のディオプタ値となる矯正度数が取得される。
【0099】
検者は、被検者に検査視標の向き(ランドルト環視標のすき間の向き)を問い、被検者の回答を考慮しながら、被検眼Eを矯正する矯正度数が適切であるかを確認する。なお、矯正度数が不適切であった場合等には、被検眼Eの眼屈折度を所定のディオプタ値とは異なるディオプタ値で矯正し、再度、矯正度数が適切であるかを確認してもよい。制御部70は、検者が適切と判断した矯正度数を、自覚式測定における被検眼Eの光学特性(自覚値)として取得する。また、制御部70は、被検眼Eの自覚値をメモリ75に記憶する。
【0100】
<第2モード>
以下、第2モードを説明する。第2モードは、被検眼Eに第1検査視標と第2検査視標を実質的に同時に呈示するモードである。より詳細には、第2モードは、ディスプレイ31に第1検査視標と第2検査視標を交互に高速で表示させることで、被検眼Eに第1検査視標と第2検査視標を実質的に同時に呈示するモードである。なお、ここでは、被検眼Eの他覚値が、球面度数-5D、円柱度数0D、乱視軸角度0度であった場合を例に挙げる。
【0101】
<呈示領域と矯正量の対応付け>
図7は、ディスプレイ31の呈示領域の一例である。検者は、モニタ4を操作して、ディスプレイ31の呈示領域Kにおいて検査視標を呈示する領域と、ディスプレイ31から出射される視標光束を矯正する矯正量と、をそれぞれ対応付けるための操作信号を入力する。制御部70は、操作信号に応じて、ディスプレイ31の呈示領域と、視標光束を矯正する矯正量と、をそれぞれ対応付ける。
【0102】
まず、本実施例では、ディスプレイ31の呈示領域(表示領域)の分割数(領域数)が指定される。検者は、ディスプレイ31の呈示領域Kの分割数を入力する。一例として、ディスプレイ31の呈示領域Kを2分割するように入力してもよい。制御部70は、入力された操作信号に応じて、ディスプレイ31の呈示領域Kを、第1呈示領域K1と、第1呈示領域K1とは異なる第2呈示領域K2と、に分割する。なお、この場合、ディスプレイ31の呈示領域Kは、1×2分割(左右方向に2分割)でもよいし、2×1分割(上下方向に2分割)でもよい。もちろん、これらとは異なるレイアウトで分割してもよいし、第1呈示領域K1と第2呈示領域K2の一部は重複してもよい。
【0103】
続いて、本実施例では、呈示領域Kが分割された各々の領域に対して矯正量が設定される。検者は、第1呈示領域K1から出射される視標光束を矯正する第1矯正量と、第2呈示領域K2から出射される視標光束を矯正する第2矯正量と、を入力する。一例として、被検眼Eの他覚値に基づき、被検眼Eの眼屈折度が0Dとなるように視標光束を矯正するための第1矯正量(本実施例では、球面度数-5D、円柱度数0D、乱視軸角度0度)を入力してもよい。また、一例として、被検眼Eの他覚値に基づき、被検眼Eの眼屈折度が-0.5Dとなるように視標光束を矯正するための第1矯正量とは異なる第2矯正量(本実施例では、球面度数-4.5D、円柱度数0D、乱視軸角度0度)を入力してもよい。なお、上記では被検眼Eの他覚値に基づいた第1矯正量及び第2矯正量を入力しているが、被検眼Eの自覚値に基づいた第1矯正量及び第2矯正量を入力するようにしてもよい。制御部70は、入力された操作信号に応じて、第1呈示領域K1に対して第1矯正量を対応付ける。また、制御部70は、入力された操作信号に応じて、第2呈示領域K2に対して第2矯正量を対応付ける。
【0104】
なお、本実施例では、検者が第1呈示領域K1及び第2呈示領域に対して第1矯正量及び第2矯正量を入力することで、制御部70が各々の領域に対する矯正量を設定する場合を例に挙げたがこれに限定されない。例えば、制御部70は、被検眼Eの他覚値に基づき、ディスプレイ31の分割数に応じた矯正量を所定の間隔(例えば、0.25Dステップ)で自動設定してもよい。一例として、第1呈示領域K1には、被検眼Eの眼屈折度が0Dとなるように視標光束を矯正するための矯正量、第2呈示領域K2には、被検眼Eの眼屈折度が-0.25Dとなるように視標光束を矯正するための矯正量、を適宜設定してもよい。
【0105】
<呈示領域と視標の対応付け>
続いて、本実施例では、ディスプレイ31の呈示領域と視標光束を矯正するための矯正量に、検査視標が対応付けられる。検者は、第1呈示領域K1に表示する第1検査視標の種類、数、大きさ、等を入力する。例えば、所定の視力値をもつ検査視標を入力してもよいし、第1矯正量に基づく検査視標を入力してもよい。また、検者は、第2呈示領域K2に表示する第2検査視標の種類、数、大きさ、等を入力する。例えば、所定の視力値をもつ検査視標を入力してもよいし、第2矯正量に基づく検査視標を入力してもよい。第1検査視標と第2検査視標は、種類、数、大きさ、等の少なくともいずれかが異なる検査視標であってもよいし、同一の検査視標であってもよい。なお、詳細は後述するが、被検眼に矯正状態の異なる検査視標の見え方を比較させる場合は、同一の検査視標であるほうが好ましい。制御部70は、入力された操作信号に応じて、第1呈示領域K1に対して第1検査視標を対応付ける。また、制御部70は、入力された操作信号に応じて、第2呈示領域K2に対して第2検査視標を対応付ける。
【0106】
なお、本実施例では、検者が第1呈示領域K1及び第2呈示領域に対して第1検査視標及び第2検査視標を入力することで、制御部70が各々の領域に表示する検査視標を設定する場合を例に挙げたがこれに限定されない。例えば、制御部70は、視標光束を矯正する矯正量等に基づき、ディスプレイ31の呈示領域に表示する検査視標を自動設定してもよい。
【0107】
<設定情報の記憶>
制御部70は、上記のように、ディスプレイ31の呈示領域、視標光束を矯正するための矯正量、及び呈示領域に表示する検査視標をそれぞれ対応付けると、これらの情報を対応付けた設定情報をメモリ75に記憶させる。本実施例では、第1呈示領域K1、第1矯正量、及び第1検査視標が対応付けられた第1設定情報がメモリ75に記憶される。また、本実施例では、第2呈示領域K2、第2矯正量、及び第2検査視標が対応付けられた第2設定情報がメモリ75に記憶される。
【0108】
<初期状態の設定>
制御部70は、第1設定情報及び第2設定情報を取得すると、これらの情報に基づいて、投光光学系30及び矯正光学系60の少なくともいずれかを制御し、ディスプレイ31からの視標光束を矯正するための初期状態を設定する。本実施例では、第1矯正量が球面度数-5D、第2矯正量が球面度数-4.5Dであるため、投光光学系30と、矯正光学系60が備える可変焦点レンズ40aが制御される。なお、本実施例では、第1矯正量と第2矯正量がともに、円柱度数0D、乱視軸角度0度であるため、矯正光学系60が備える可変焦点レンズ40bと乱視矯正光学系63は必ずしも制御されなくてもよい。
【0109】
例えば、初期状態とは、前述の他覚値に基づき、被検眼Eの眼屈折度が0Dとなるように視標光束を矯正した状態である。すなわち、本実施例では、ディスプレイ31からの視標光束を第1矯正量で矯正した状態となる。制御部70は、第1設定情報に基づいて、投光光学系30及び可変焦点レンズ40aを制御し、ディスプレイ31からの視標光束を第1矯正量で矯正した状態を、初期状態として設定する。制御部70は、第1矯正量の整数部の値(例えば、-5)を投光光学系30の制御によって矯正し、第1矯正量の小数部の値(例えば、0.0)を可変焦点レンズ40aの制御によって矯正することで、被検眼Eの球面度数が0Dとなるように視標光束を矯正する。例えば、制御部70は、ディスプレイ31を光軸L2方向へ-5Dに対応する位置に移動させ、さらに、可変焦点レンズ40aに印加電圧を与えないことで、被検眼Eの球面度数が0Dとなるように視標光束を矯正してもよい。これによって、初期状態が設定される。
【0110】
なお、上記では、ディスプレイ31からの視標光束を第1矯正量で矯正した状態を初期状態として設定したが、ディスプレイ31からの視標光束を第2矯正量で矯正した状態を初期状態として設定してもよい。この場合、制御部70は、ディスプレイ31を光軸L2方向へ-5Dに対応する位置に移動させ、さらに、可変焦点レンズ40の屈折力が+0.5Dとなるように印加電圧を与えることで、被検眼Eの球面度数が-0.5Dとなるように視標光束を矯正してもよい。
【0111】
<第1制御と第2制御の切り換え>
制御部70は、初期状態を設定すると、第1設定情報に基づく第1制御と、第2設定情報に基づく第2制御と、の制御の切り換えを自動的に繰り返し行う。例えば、第1制御は、ディスプレイ31の第1呈示領域K1において、第1矯正量(本実施例では球面度数-5D)で矯正された第1検査視標M1を呈示する制御である。例えば、第2制御は、ディスプレイ31の第2呈示領域K2において、第2矯正量(本実施例では球面度数-4.5D)で矯正された第2検査視標M2を呈示する制御である。例えば、本実施例では、ディスプレイ31からの視標光束を第1矯正量で矯正した状態が初期状態として設定されているため、初期状態から、第2制御、第1制御、第2制御、…と制御の切り換えが自動的に繰り返し行われる。
【0112】
図8は、第1制御と第2制御の切り換えを説明する図である。
図8(a)は、第1制御時における測定部7の光学系とディスプレイ31の呈示領域を模式的に示す図である。
図8(b)は、第2制御時における測定部7の光学系とディスプレイ31の呈示領域を模式的に示す図である。なお、
図8(a)及び
図8(b)では、光軸L2上のディスプレイ31と可変焦点レンズ40a及び40bのみを図示し、その他の光学部材は省略している。また、本実施例では、被検眼Eの円柱度数と乱視軸角度を矯正しないため、
図8(a)及び
図8(b)のどちらにおいても、可変焦点レンズ40bの屈折力は0Dに設定される。
図8(c)は、被検眼Eに対して第1制御と第2制御の切り換えを繰り返した際に、被検眼Eに視認される検査視標を示す図である。
【0113】
制御部70は、第1制御を行うときには、ディスプレイ31を制御するとともに、可変焦点レンズ40aを制御する。つまり、ディスプレイ31の制御に連動させて、可変焦点レンズ40を制御する。例えば、
図8(a)のように、ディスプレイ31を制御して第1呈示領域K1に第1検査視標M1を表示させるとともに、可変焦点レンズ40aに印加電圧を与えないことで(印加電圧を0にすることで)可変焦点レンズ40aの屈折力を0Dにする。なお、このとき、制御部70は、ディスプレイ31を制御し、第1呈示領域K1への第1検査視標M1の表示に連動させて、第2呈示領域K2を黒地の背景としてもよい。もちろん、黒地とは異なる背景としてもよい。これにより、ディスプレイ31の第1呈示領域から出射された視標光束は、第1矯正量(すなわち、球面度数-5D)で矯正されて、被検眼Eに導光される。より詳細には、ディスプレイ31が球面度数-5Dに対応する位置にあるため、ディスプレイ31の第1呈示領域から出射された視標光束(球面度数-5D)は、可変焦点レンズ40bと40a(ともに球面度数0D)を通過して、被検眼Eに導光される。本実施例において、被検眼Eの眼屈折度は球面度数-5Dであるが、第1制御時は被検眼Eに視標光束が球面度数-5Dで入射するため、被検眼Eには球面度数0Dに矯正された状態で第1検査視標M1が視認される。
【0114】
また、制御部70は、第2制御を行うときには、ディスプレイ31を制御するとともに、可変焦点レンズ40を制御する。つまり、ディスプレイ31の制御に連動させて、可変焦点レンズ40aを制御する。例えば、
図8(b)のように、ディスプレイ31を制御して第2呈示領域K2に第2検査視標M2を表示させるとともに、可変焦点レンズ40aに印加電圧を与えることで可変焦点レンズ40aの屈折力を+0.5Dにする。なお、このとき、制御部70は、ディスプレイ31を制御し、第2呈示領域K2への第2検査視標M2の表示に連動させて、第1呈示領域K1を黒地の背景としてもよい。もちろん、黒地とは異なる背景としてもよい。これにより、ディスプレイ31の第2呈示領域から出射された視標光束は、第2矯正量(すなわち、球面度数-4.5D)で矯正されて、被検眼Eに導光される。より詳細には、ディスプレイ31が球面度数-5Dに対応する位置にあるため、ディスプレイ31の第1呈示領域から出射された視標光束(球面度数-5D)は、可変焦点レンズ40b(球面度数0D)と可変焦点レンズ40a(球面度数+0.5D)を通過して、被検眼Eに導光される。本実施例において、被検眼Eの眼屈折度は球面度数-5Dであるが、第2制御時は被検眼Eに視標光束が球面度数-5Dで入射するため、被検眼Eには球面度数0Dに矯正された状態で第1検査視標M1が視認される。本実施例において、被検眼Eの眼屈折度は球面度数-5Dであるため、第2制御時は被検眼Eに視標光束が球面度数-4.5Dで入射するため、被検眼Eには球面度数-0.5Dに矯正された状態で第2検査視標M2が視認される。
【0115】
制御部70は、このような第1制御と第2制御を繰り返し、被検眼に対して、ディスプレイ31の第1呈示領域K1において第1矯正量で矯正された第1検査視標M1と、ディスプレイ31の第2呈示領域K2において第2矯正量で矯正された第2検査視標M2と、を実質的に同時に呈示させる。例えば、制御部70は、第1制御と第2制御の切り換えを所定の時間間隔で繰り返し高速に行うことで、第1検査視標M1と第2検査視標M2を実質的に同時に呈示させる。この場合、第1制御と第2制御の切り換えを、被検眼Eに対して残像効果が生じる時間間隔で繰り返し高速に行ってもよい。一例として、第1制御と第2制御を15ミリ秒間隔で繰り返し高速に行ってもよい。これによって、被検眼Eには、
図8(c)のように、異なる矯正量(第1矯正量及び第2矯正量)で矯正された複数の検査視標(第1検査視標M1及び第2検査視標M2)が、いずれもディスプレイ31に表示されているように視認される。
【0116】
検者は、被検者に、第1検査視標M1と第2検査視標M2のどちらか見やすいかを問い、被検者の回答を考慮しながら、被検眼Eを矯正する矯正度数を調整してもよい。例えば、被検者の回答に応じて、矯正量をより細かい間隔に設定し、再度、被検眼Eを矯正する矯正度数を調整してもよい。制御部70は、検者により適切と判断された矯正度数を、自覚式測定における被検眼Eの光学特性(自覚値)として取得する。また、制御部70は、被検眼Eの自覚値をメモリ75に記憶する。
【0117】
なお、上記の自覚式測定は、被検眼Eの両眼に対して実行されてもよい。被検眼の両眼に対して実行する際は、左被検眼ELと右被検眼ERとで、視標光束を矯正するための第1矯正量と第2矯正量が、各々に設定される。つまり、左被検眼EL用の第1矯正量及び第2矯正量と、右被検眼ER用の第1矯正量及び第2矯正量と、が設定される。この場合、左被検眼EL用の第1矯正量と右被検眼ER用の第1矯正量は互いに異なってもよいが、左被検眼ELと右被検眼ERが同一の矯正状態となるように設定される。同様に、左被検眼EL用の第2矯正量と右被検眼ER用の第2矯正量は互いに異なってもよいが、左被検眼ELと右被検眼ERが同一の矯正状態となるように設定される。
【0118】
これについて、左被検眼ELの球面度数-5Dを、0Dあるいは-0.5Dに矯正した状態にするとともに、右被検眼ERの球面度数-3Dを、0Dあるいは-0.5Dに矯正した状態にすることで、第1検査視標M1と第2検査視標M2を視認させる場合を例に挙げて説明する。
【0119】
なお、球面度数0Dと-0.5Dでは、被検眼Eの輻輳角度の変化がわずかであるため、必ずしも後述のようにディスプレイの呈示領域の位置を考慮しなくても、被検眼Eは左右の検査視標を融像させることができる。つまり、左被検眼EL用のディスプレイ31Lに呈示した検査視標と、右被検眼ER用のディスプレイ31Rに呈示した検査視標と、を1つのディスプレイに呈示されているように見せることができる。
【0120】
図9は、被検眼Eの両眼に第1検査視標M1と第2検査視標M2を実質的に同時に呈示する場合である。
図9(a)は、第1設定情報に基づく第1制御を実行した状態のディスプレイ31を示している。
図9(b)は、第2設定情報に基づく第2制御を実行した状態のディスプレイ31を示している。
図9(c)は、被検眼Eに対して第1制御と第2制御の切り換えを繰り返した際に、被検眼Eに視認される検査視標(後述の融像視標)を示している。
【0121】
被検眼Eの両眼に対して第2モードにより検査視標を呈示する場合、制御部70は、左眼用測定部7L及び右眼用測定部7Rが備えるディスプレイ31を制御し、左被検眼EL及び右被検眼ERに対して各々に検査視標を投影する。例えば、制御部70は、
図9(a)のように、左被検眼EL側のディスプレイ31Lの第1呈示領域K1に、左被検眼EL用の第1検査視標M1Lを表示するとともに、右被検眼ER側のディスプレイ31Rの第1呈示領域K1に、右被検眼ER用の第1検査視標M1Rを表示する。なお、左被検眼EL用の第1検査視標M1Lと、右被検眼ER用の第1検査視標M1Rと、は同一形状であることが好ましい。また、例えば、制御部70は、
図9(b)のように、左被検眼EL側のディスプレイ31Lの第2呈示領域K2に、左被検眼EL用の第2検査視標M2Lを表示するとともに、右被検眼ER側のディスプレイ31Rの第2呈示領域K2に、右被検眼ER用の第2検査視標M2Rを表示する。なお、左被検眼EL用の第2検査視標M2Lと、右被検眼ER用の第2検査視標M2Rと、は同一形状であることが好ましい。これによって、左被検眼ELと右被検眼ERのどちらにおいても検査視標が視認される。
【0122】
本実施例では、左被検眼ELの球面度数-5Dを0Dにするための第1矯正量が-5D、左被検眼ELの球面度数-5Dを-0.5Dにするための第2矯正量が-4.5Dとなる。制御部70は、第1設定情報に基づいて、左被検眼EL側のディスプレイ31Lを-5Dに対応する位置に移動させ、可変焦点レンズ40aの屈折力を0Dまたは+0.5Dとなるように制御することで、ディスプレイ31からの視標光束を第1矯正量または第2矯正量で矯正する。
【0123】
制御部70は、左被検眼EL側のディスプレイ31Lの表示を制御するとともに、左被検眼EL側の可変焦点レンズ40aに与える印加電圧を制御する。より詳細には、第1設定情報に基づいた第1制御を実行し、左被検眼EL側のディスプレイ31の第1呈示領域K1に、左被検眼EL用の第1検査視標M1Lを表示させるとともに、左被検眼EL側の可変焦点レンズ40aに印加電圧を与えることで、左被検眼EL用の第1矯正量を設定する。また、第2設定情報に基づいた第2制御を実行し、左被検眼EL側のディスプレイ31の第2呈示領域K2に、左被検眼EL用の第2検査視標M2Lを表示させるとともに、左被検眼EL側の可変焦点レンズ40aに印加電圧を与えることで、左被検眼EL用の第2矯正量を設定する。制御部70は、このような左被検眼ELに対する第1制御と第2制御を繰り返してもよい。
【0124】
同様に、本実施例では、右被検眼ERの球面度数-3Dを0Dにするための第1矯正量が-3D、右被検眼ERの球面度数-3Dを-0.5Dにするための第2矯正量が-2.5Dとなる。制御部70は、第2設定情報に基づいて、右被検眼ER側のディスプレイ31Rを-3Dに対応する位置に移動させ、可変焦点レンズ40aの屈折力を0Dまたは+0.5Dとなるように制御することで、ディスプレイ31からの視標光束を第1矯正量または第2矯正量で矯正する。
【0125】
制御部70は、右被検眼ER側のディスプレイ31Rの表示を制御するとともに、右被検眼ER側の可変焦点レンズ40に与える印加電圧を制御する。より詳細には、第1設定情報に基づいた第1制御を実行し、右被検眼ER側のディスプレイ31の第1呈示領域K1に、右被検眼ER用の第1検査視標M1Rを表示させるとともに、右被検眼ER側の可変焦点レンズ40aに印加電圧を与えることで、右被検眼ER用の第1矯正量を設定する。また、第2設定情報に基づいた第2制御を実行し、右被検眼ER側のディスプレイ31の第2呈示領域K2に、右被検眼ER用の第2検査視標M2Rを表示させるとともに、右被検眼ER側の可変焦点レンズ40に印加電圧を与えることで、右被検眼ER用の第2矯正量を設定する。制御部70は、このような右被検眼ERに対する第1制御と第2制御を繰り返してもよい。
【0126】
本実施例では、左被検眼ELに対する第1制御と右被検眼ERに対する第1制御とが連動して同時に実行され、左被検眼ELに対する第2制御と右被検眼ERに対する第2制御とが連動して同時に実行される。これによって、被検眼Eには、
図9(c)のように、左被検眼用の第1矯正量で矯正された左被検眼用の第1検査視標M1Lと、右被検眼用の第1矯正量で矯正された右被検眼用の第1検査視標M1Rと、が融像された第1融像視標P1と、左検眼用の第2矯正量で矯正された左被検眼用の第2検査視標M2Lと、右被検眼用の第2矯正量で矯正された右被検眼用の第2検査視標M2Rと、が融像された第2融像視標P2と、が、いずれもディスプレイ31に表示されているように視認される。
【0127】
以上説明したように、例えば、本実施例における自覚式検眼装置は、第1設定情報と、第1設定情報とは呈示領域及び矯正量が異なる第2設定情報と、の少なくとも2つの設定情報を記憶し、第1設定情報に基づく、第1呈示領域において第1矯正量で矯正された第1視標を呈示する第1制御と、第2設定情報に基づく、第2呈示領域において第2矯正量で矯正された第2視標を呈示する第2制御と、の制御の切り換えを自動的に繰り返し実行する。このような制御により、被検眼に対して、第1呈示領域において第1矯正量で矯正された第1視標と、第2呈示領域において第2矯正量で矯正された第2視標と、が実質的に同時に呈示される。例えば、被検者には、矯正状態が異なる複数の視標が1つのディスプレイに表示されてみえるため、矯正状態の違いによる見え具合を容易に確認できる。
【0128】
また、例えば、本実施例における自覚式検眼装置は、視標呈示部の呈示領域と、矯正光学系によって視標光束を矯正する矯正量と、の対応関係を設定して記憶する。例えば、視標呈示部の第1呈示領域と、視標光束を矯正する第1矯正量と、の対応関係を設定した第1設定情報を記憶し、視標呈示部の第2呈示領域と、視標光束を矯正する第2矯正量と、の対応関係を設定した第2設定情報を記憶する。このように、呈示領域と矯正量の対応関係が設定可能であることによって、被検眼に呈示する呈示領域(視標)の数、及び、呈示領域からの視標光束を矯正するための矯正量を、様々な組み合わせに変更し、被検者に異なる矯正状態の視標を容易に呈示することができる。
【0129】
また、例えば、本実施例における自覚式検眼装置は、第1設定情報に基づく第1制御と、第2設定情報に基づく第2制御と、の制御の切り換えを繰り返さない第1モードと、第1制御と第2制御との制御の切り換えを繰り返す第2モードと、を設定可能であって、第1制御と第2制御との切り換えが、第2モードが設定された状態において自動的に繰り返し行われる。これによって、第1モードでは、従来のように、被検眼に複数の矯正状態を切り換えて順に視標を呈示することができる。第2モードでは、矯正状態が異なる複数の視標を同時に呈示することができる。このように測定モードが切り換えられることで、被検者や状況に合わせた自覚式測定を容易に行うことができる。
【0130】
また、例えば、本実施例における自覚式検眼装置は、矯正光学系が可変焦点レンズを少なくとも有し、第1矯正量及び第2矯正量に基づいて少なくとも可変焦点レンズを制御することで、第1制御と第2制御との制御の切り換えが自動的に繰り返し行われる。例えば、可変焦点レンズは、焦点距離を変更するために要する時間(すなわち、印加電圧の変化に応答する応答速度)が短く、可変焦点レンズを制御することで、第1制御と第2制御の切り換えを高速に行うことができる。このため、被検眼に第1視標と第2視標とを実質に同時に呈示した際、各々の視標のチラつきを抑制し、矯正状態の違いをより比較しやすい状態にすることができる。
【0131】
<変容例>
なお、本実施例では、ディスプレイ31の呈示領域を分割することで、被検眼Eに第1検査視標と第2検査視標を実質的に同時に表示する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、第1検査視標を表示するディスプレイと、第2検査視標を表示するディスプレイと、の複数のディスプレイを設け、第1制御と第2制御を繰り返し実行することで、被検眼Eに第1検査視標と第2検査視標を実質的に同時に表示する構成としてもよい。
【0132】
なお、本実施例では、ディスプレイ31の呈示領域Kを第1呈示領域K1と第2呈示領域K2の2つの領域に分割し、第1呈示領域K1に対して第1矯正量を対応付けた第1設定情報と、第2呈示領域K2に対して第2矯正量を対応付けた第2設定情報と、に基づく第1制御と第2制御を繰り返し実行する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。ディスプレイ31の呈示領域Kは、2つ以上の任意の領域数に分割してもよく、これらの領域に対して矯正量を対応付けた各々の設定情報に基づく複数の制御を繰り返し実行する構成であればよい。一例として、ディスプレイ31の呈示領域Kを、第1呈示領域K1~第4呈示領域K4の4つの領域に分割してもよい。この場合には、第1呈示領域K1に対して第1矯正量を対応付けた第1設定情報と、第2呈示領域K2に対して第2矯正量を対応付けた第2設定情報と、第3呈示領域K3に対して第3矯正量を対応付けた第3設定情報と、第4呈示領域K4に対して第4矯正量を対応付けた第4設定情報と、に基づく第1制御~第4制御が繰り返し実行される。例えば、第1制御から、第2制御、第3制御、第4制御へと順に切り換わり、第4制御から再び第1制御に切り換わるまでの所要時間が短いほど、ディスプレイ31の各々の領域で検査視標が点滅表示されることによるチラつきが抑えられる。
【0133】
なお、本実施例では、第1制御と第2制御の繰り返しを所定の時間間隔(例えば、15ミリ秒間隔)で実行する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。第1制御から第2制御への切り換えの時間間隔と、第2制御から第1制御への切り換えの時間間隔と、は異なっていてもよい。一例として、第1制御から第2制御への切り換えは30ミリ秒間隔で、第2制御から第1制御への切り換えは15ミリ秒間隔で、各々の制御を繰り返し切り換えてもよい。これによって、第1制御にてディスプレイ31に表示される第1検査視標M1と、第2制御にてディスプレイ31に表示される第2検査視標M2と、のコントラスト等が調整され、被検眼Eに検査視標をより見やすく呈示することができる。特に、ディスプレイ31に表示する第1検査視標M1と第2検査視標M2とで呈示距離が異なる場合(詳細は後述)にも、被検眼Eに検査視標をより見やすく呈示することができる。
【0134】
なお、本実施例では、検眼装置1が投光光学系30と矯正光学系60を備え、制御部70がこれらの少なくともいずれかを制御することで、第1制御と第2制御との制御の切り換えを繰り返し実行する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。検眼装置1は、被検眼Eの眼前に配置され、矯正光学系を内部に有する眼屈折力測定ユニット(フォロプタ)を備え、制御部が眼屈折力測定ユニットを制御することで、第1制御と第2制御との制御の切り換えを繰り返し実行する構成としてもよい。例えば、眼屈折力測定ユニットは、被検眼Eの眼前に可変焦点レンズを配置する構成でもよい。また、例えば、眼屈折力測定ユニットは、被検眼Eの眼前に切り換え可能な光学素子を配置する構成でもよい。もちろん、眼屈折力測定ユニットは、被検眼Eの眼前に、可変焦点レンズと、切り換え可能な光学素子と、を組み合わせて配置する構成としてもよい。
【0135】
なお、本実施例では、被検眼Eの球面度数を矯正するために、ディスプレイ31の第1呈示領域K1と第2呈示領域K2に、被検眼Eの球面度数を調整するように視標光束を矯正する第1矯正量及び第2矯正量を設定することで、被検眼Eに球面度数が互いに異なる第1検査視標M1と第2検査視標M2を実質的に同時に呈示する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、被検眼Eの円柱度数及び乱視軸角度の少なくともいずれかを矯正するために、ディスプレイ31の第1呈示領域K1と第2呈示領域K2に、被検眼Eの円柱度数及び乱視軸角度の少なくともいずれかを調整するように視標光束を矯正する第1矯正量及び第2矯正量を設定することで、被検眼Eに円柱度数が互いに異なる第1検査視標M1と第2検査視標M2を実質的に同時に呈示することも可能である。
【0136】
この場合、制御部70は、円柱レンズ61aと61bを所定の円柱度数及び乱視軸角度となるように光軸L2周りに回転させる。さらに、制御部70は、ディスプレイ31の第1呈示領域K1に第1検査視標M1を表示させる制御と、可変焦点レンズ40bに所定の印加電圧を与える制御と、を連動させた第1制御、及び、ディスプレイ31の第2呈示領域K2に第2検査視標M2を表示させる制御と、可変焦点レンズ40bに所定の印加電圧とは異なる印加電圧を与える制御と、を連動させた第2制御、を繰り返す。これによって、被検眼Eに、円柱度数及び乱視軸角度の少なくともいずれかが互いに異なる第1検査視標M1と第2検査視標M2を実質的に同時に呈示してもよい。
【0137】
例えば、第1制御と第2制御の切り換えは、被検眼Eに対してクロスシリンダテストを実施する際に実行されてもよい。クロスシリンダテストでは、被検眼Eの乱視軸角度を矯正するために、ディスプレイ31の第1呈示領域K1と第2呈示領域K2に、被検眼Eの乱視軸角度を調整するように視標光束を矯正する第1矯正量及び第2矯正量を設定することで、被検眼Eに乱視軸角度が互いに異なる第1検査視標M1と第2検査視標M2を実質的に同時に呈示することができる。
【0138】
図10は、クロスシリンダテストを実施する際の第1制御と第2制御の切り換えを説明する図である。
図10(a)は、第1制御時のディスプレイ31を示している。
図10(b)は、第2制御時のディスプレイ31を示している。
図10(c)は、被検眼Eに対して第1制御と第2制御の切り換えを繰り返した際に、被検眼Eに視認される検査視標を示している。
【0139】
クロスシリンダテストを実施する際、制御部70は、
図10(a)のように、ディスプレイ31を制御して第1呈示領域K1に第1検査視標M1を表示させるとともに、可変焦点レンズ40bに印加電圧を与えて可変焦点レンズ40bの乱視軸角度を第1矯正量にする第1制御を実行する。また、制御部70は、
図10(b)のように、ディスプレイ31を制御して第2呈示領域K2に第2検査視標M2を表示させるとともに、可変焦点レンズ40bに印加電圧を与えて可変焦点レンズ40bの乱視軸角度を第2矯正量にする第2制御を実行する。第1検査視標M1と第2検査視標M2は、同一の点群チャートであってもよい。
【0140】
制御部70は、第1制御と第2制御を繰り返すことで、ディスプレイ31の第1呈示領域K1において第1矯正量で矯正された第1検査視標M1と、ディスプレイ31の第2呈示領域K2において第2矯正量で矯正された第2検査視標M2と、を実質的に同時に呈示させることができる。なお、クロスシリンダテストでは、第1制御と第2制御で同一の検査視標を表示していても、被検眼Eの乱視軸角度によっては、検査視標が異なって視認される。例えば、
図10(c)のように、はっきり見える第1検査視標M1と、ぼやけて見える第2検査視標M2と、が実質的に同時に視認される。
【0141】
なお、本実施例では、被検眼Eの球面度数、円柱度数、及び乱視軸角度の少なくともいずれかを調整するように視標光束を矯正する第1矯正量と第2矯正量が設定されればよい。例えば、被検眼Eの球面度数、円柱度数、及び乱視軸角度のうち、複数が異なる第1矯正量と第2矯正量が設定されてもよい。一例として、被検眼Eの球面度数を0D、円柱度数を-1D、乱視軸角度を45度に調整するように視標光束を矯正する第1矯正量と、被検眼Eの球面度数を-1D、円柱度数を-1.5D、乱視軸角度を45度に調整するように視標光束を矯正する第2矯正量と、が設定されてもよい。
【0142】
なお、本実施例の検眼装置1において、制御部70は、被検眼Eからディスプレイ31に表示される検査視標までの距離(呈示距離)を、ディスプレイ31の呈示領域と矯正量に加えて対応付けてもよい。すなわち、制御部70は、被検眼Eからディスプレイ31の第1呈示領域K1に表示された第1検査視標M1までの光学的な呈示距離を、ディスプレイ31の第1呈示領域K1と、第1呈示領域K1から出射された視標光束を矯正する第1矯正量と、に対応付けてもよい。同様に、制御部70は、被検眼Eからディスプレイ31の第2呈示領域K2に表示された第2検査視標M2までの光学的な呈示距離を、ディスプレイ31の第2呈示領域K2と、第2呈示領域K2から出射された視標光束を矯正する第2矯正量と、に対応付けてもよい。例えば、本実施例では、被検眼Eに対する遠方の呈示距離(例えば、5m)と、被検眼Eに対する近方の呈示距離(例えば、30cm)と、が設定されてもよい。自覚式測定において、このような検査視標の呈示距離、呈示領域、及び矯正量の対応付けは、被検眼Eの片眼に対して実行されてもよいし、両眼に対して実行されてもよい。
【0143】
また、本実施例の検眼装置1において、制御部70は、被検眼Eの輻輳角度を、ディスプレイ31の呈示領域と矯正量に加えて対応付けてもよい。すなわち、制御部70は、被検眼Eの輻輳角度を、ディスプレイ31の第1呈示領域K1と、第1呈示領域K1から出射された視標光束を矯正する第1矯正量と、に対応付けてもよい。同様に、制御部70は、被検眼Eの輻輳角度を、ディスプレイ31の第2呈示領域K2と、第2呈示領域K2から出射された視標光束を矯正する第2矯正量と、に対応付けてもよい。自覚式測定において、このような検査視標の呈示距離、呈示領域、及び矯正量の対応付けは、被検眼Eの片眼に対して実行されてもよいし、両眼に対して実行されてもよい。
【0144】
以下、被検眼の両眼に対して、被検眼の輻輳角度、呈示領域、及び矯正量を対応付けた制御を実行する場合を例に挙げて、より詳細に説明する。
図11は、被検眼Eの両眼に輻輳角度が異なる第1検査視標M1と第2検査視標M2を実質的に同時に呈示する場合である。
図11(a)は、第1設定情報に基づく第1制御を実行した状態のディスプレイ31を示している。
図11(b)は、第2設定情報に基づく第2制御を実行した状態のディスプレイ31を示している。
図11(c)は、被検眼Eに対して第1制御と第2制御の切り換えを繰り返した際に、被検眼Eが視認する検査視標を模式的に示している。
【0145】
まず、制御部70は、第1設定情報及び第2設定情報に基づいて、左被検眼EL及び右被検眼ERに呈示する左被検眼用の第1検査視標M1Lと右被検眼用の第1検査視標M1Rの第1輻輳角度と、左被検眼用の第2検査視標M2Lと右被検眼用の第2検査視標M2Rの第2輻輳角度と、をそれぞれ設定する。例えば、輻輳角度は、検者によるモニタ4の操作により入力されてもよい。また、例えば、輻輳角度は、左被検眼EL及び右被検眼ERから検査視標までの呈示距離、被検眼Eの瞳孔間距離、等に基づいて設定されてもよい。
【0146】
ここで、被検眼Eの輻輳角度は、被検眼Eから検査視標までの距離に応じて変化する。例えば、被検眼Eが遠方の呈示距離にある検査視標をみた状態の第1輻輳角度と、被検眼Eが近方の呈示距離にある検査視標をみた状態の第2輻輳角度と、では、第2輻輳角度のほうが大きくなる。言い換えると、被検眼Eが遠方の呈示距離にある検査視標をみた状態よりも、被検眼Eが近方の呈示距離にある検査視標をみた状態のほうが、被検眼Eの瞳孔が内寄りとなる。このため、被検眼Eの輻輳角度を考慮してディスプレイの呈示領域の位置を設定することで、被検眼Eは左右の検査視標を融像させやすくなる。
【0147】
制御部70は、第1設定情報及び第2設定情報に基づいて、左被検眼用のディスプレイ31Lの第1呈示領域K1と、右被検眼用のディスプレイ31Rの第1呈示領域K1と、を設定する。例えば、制御部70は、第1輻輳角度に対応させて、ディスプレイ31L及び31Rの中央付近に第1呈示領域K1を設定してもよい。また、制御部70は、第1設定情報及び第2設定情報に基づいて、左被検眼用のディスプレイ31Lの第2呈示領域K2と、右被検眼用のディスプレイ31Rの第2呈示領域K2と、を設定する。例えば、制御部70は、第2輻輳角度に対応させて、ディスプレイ31L及び31Rの内側付近に第2呈示領域K2を設定してもよい。
【0148】
制御部70は、左被検眼EL側のディスプレイ31Lの表示を制御するとともに、左被検眼EL側の可変焦点レンズ40に与える印加電圧を制御する。より詳細には、第1設定情報に基づいた第1制御を実行し、左被検眼EL側のディスプレイ31の第1呈示領域K1に、左被検眼EL用の第1検査視標M1Lを表示させるとともに、左被検眼EL側の可変焦点レンズ40に印加電圧を与えることで、左被検眼EL用の第1矯正量を設定する。また、第2設定情報に基づいた第2制御を実行し、左被検眼EL側のディスプレイ31の第2呈示領域K2に、左被検眼EL用の第2検査視標M2Lを表示させるとともに、左被検眼EL側の可変焦点レンズ40に印加電圧を与えることで、左被検眼EL用の第2矯正量を設定する。制御部70は、このような左被検眼ELに対する第1制御と第2制御を繰り返してもよい。
【0149】
また、制御部70は、右被検眼ER側のディスプレイ31Rの表示を制御するとともに、右被検眼ER側の可変焦点レンズ40に与える印加電圧を制御する。より詳細には、第1設定情報に基づいた第1制御を実行し、右被検眼ER側のディスプレイ31の第1呈示領域K1に、右被検眼ER用の第1検査視標M1Rを表示させるとともに、右被検眼ER側の可変焦点レンズ40に印加電圧を与えることで、右被検眼ER用の第1矯正量を設定する。また、第2設定情報に基づいた第2制御を実行し、右被検眼ER側のディスプレイ31の第2呈示領域K2に、右被検眼ER用の第2検査視標M2Rを表示させるとともに、右被検眼ER側の可変焦点レンズ40に印加電圧を与えることで、右被検眼ER用の第2矯正量を設定する。制御部70は、このような右被検眼ERに対する第1制御と第2制御を繰り返してもよい。
【0150】
本実施例では、左被検眼ELに対する第1制御と右被検眼ERに対する第1制御とが連動して同時に実行され、左被検眼ELに対する第2制御と右被検眼ERに対する第2制御とが連動して同時に実行される。これによって、被検眼Eには、
図10(c)のように、左被検眼用の第1検査視標M1Lと、右被検眼用の第1検査視標M1Rと、が融像された第1融像視標P1が、被検眼Eの遠方に呈示されているように視認される。また、左被検眼用の第2検査視標M2Lと、右被検眼用の第2検査視標M2Rと、が融像された第2融像視標P2が、被検眼Eの近方に呈示されているように視認される。
【0151】
なお、上記では、被検眼Eの輻輳角度を考慮するために、ディスプレイ31における呈示領域の位置を設定する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、偏向ミラー81(偏向ミラー81L及び81R)を回転移動させてその角度を調整するように、駆動機構82の駆動を制御する構成としてもよい。この場合、制御部70は、ディスプレイ31の呈示領域と視標光束を矯正するための矯正量に加えて、偏向ミラー81の回転角度を対応付けて記憶し、このような設定情報に基づく制御の切り換えを繰り返し実行する。例えば、ディスプレイ31を制御して各々の呈示領域に検査視標を表示させるとともに、可変焦点レンズの屈折力を変化させ、さらに、偏向ミラー81の回転角度を変更する。これによっても、被検眼Eには、異なる矯正量で矯正された複数の検査視標が、いずれもディスプレイ31に表示されているように視認される。なお、ディスプレイ31における第1呈示領域K1と第2呈示領域K2は、同一(略同一)の位置に設定されてもよい。
【0152】
例えば、本実施例における検眼装置は、このように、視標呈示部に呈示する視標の呈示距離を設定し、呈示距離に基づいて、視標呈示部の呈示領域と、矯正光学系によって視標光束を矯正する矯正量と、の対応関係を設定する。これによって、例えば、被検眼が遠方距離を見たり近方距離を見たりする際の輻輳角度を考慮して、被検眼に呈示距離の異なる複数の視標を実質的に同時に呈示し、自覚式測定をより適切に行うことができる。
【0153】
なお、本実施例における検眼装置は、視標呈示部(ディスプレイ31)および矯正光学系(矯正光学系60)を制御し、第1呈示領域において第1矯正量で矯正された第1視標を呈示する第1制御と、第2呈示領域において第2矯正量で矯正された第2視標を呈示する第2制御と、の制御の切り換えを自動的に繰り返し実行することによって、第1矯正量で矯正された第1視標と、第2矯正量で矯正された第2視標と、を被検眼に対して実質的に同時に呈示させる構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。本実施例における検眼装置は、投光光学系の光路中に、視標光束の矯正量を変更するための、矯正光学系が有する光学部材とは異なる光学部材であって、矯正光学系とは独立して制御される光学部材を配置させることによって、第1矯正量で矯正された第1視標と、第2矯正量で矯正された第2視標と、を被検眼に対して同時に呈示させる構成としてもよい。
【0154】
この場合、検眼装置は、被検眼に向けて視標呈示部(ディスプレイ31)から出射された視標光束を投影する投光光学系(投光光学系30)と、投光光学系の光路中に配置され、視標光束の光学特性を変化させる矯正光学系(矯正光学系60)と、視標光束の矯正量を変更するための、矯正光学系が有する光学部材とは異なる光学部材であって、矯正光学系とは独立して制御される光学部材(例えば、後述の平行平面ガラス80)と、を備え、投光光学系からの視標光束を、矯正光学系を介して被検眼に投影することで、被検眼に視標を呈示し、被検眼の光学特性を自覚的に測定する検眼装置であって、光学部材は、視標呈示部にて第1視標が呈示される第1呈示領域に対応する第1光学領域であって、第1呈示領域から出射する第1視標光束を第1矯正量に変更する第1光学領域(例えば、後述の第1光学領域A1)と、視標呈示部にて第2視標が呈示される第2呈示領域に対応する第2光学領域であって、第2呈示領域から出射する第2視標光束を第1矯正量とは異なる第2矯正量に変更する第2光学領域(例えば、後述の第1光学領域A2)と、を少なくとも有し、投光光学系の光路中に光学部材を配置させることによって、第1矯正量で矯正された第1視標と、第2矯正量で矯正された第2視標と、を被検眼に対して同時に呈示させる制御手段と、を備えてもよい。
【0155】
以下、より詳細に説明する。例えば、投光光学系30の光路中には、視標光束の矯正量を変更するための光学部材が配置される。光学部材は、矯正光学系60が有する乱視矯正光学系63や可変焦点レンズ40とは異なる光学部材であり、これらとは独立して制御される。また、光学部材は、視標光束が通過することで眼底に対する集光位置が変化するように設計される。また、光学部材としては、平行平面ガラス、球面レンズ、非球面レンズ、等が用いられる。なお、光学部材は、これらのいずれかの部材であってもよいし、これらが組み合わされた部材であってもよい。
【0156】
光学部材は、ディスプレイ31における第1呈示領域K1からの第1視標光束の矯正量と、第1呈示領域とは異なる第2呈示領域K2からの第2視標光束の矯正量と、を変化させる。この場合、光学部材は、第1呈示領域K1に対応し、第1呈示領域K1から出射する第1視標光束を第1矯正量に変更する第1光学領域(後述の第1光学領域A1)と、第2呈示領域K2に対応し、第2呈示領域K2から出射する第2視標光束を第2矯正量に変更する第2光学領域(後述の第2光学領域A2)と、を有してもよい。なお、第1光学領域と第2光学領域は、一体的に形成されてもよい。
【0157】
第1光学領域と第2光学領域は、いずれも矯正量を変化させる部材で構成されてもよい。例えば、各々の領域は、同一の部材で構成されてもよい。一例として、各々の領域は、厚みの異なる屈折率が同一な平行平面ガラスでもよいし、厚みが同一な屈折率の異なる平行平面ガラスでもよい。また、第1光学領域と第2光学領域とは、異なる部材で構成されてもよい。一例としては、一方の領域を平行平面ガラスとし、他方の領域を非球面ガラスとしてもよい。なお、これらのような光学部材を用いて、第1矯正量あるいは第2矯正量のいずれかを0Dとする際には、ディスプレイ31を光軸L2方向に移動させてもよい。
【0158】
また、第1光学領域と第2光学領域とは、いずれも矯正量を変化させるが、一方は矯正量をわずかに変化させる部材で構成されてもよい。例えば、このような部材は、被検眼Eの自覚式測定に影響を与えない程度(例えば、0.05D等)で、矯正量を変化させる部材でもよい。一例としては、屈折率が小さな部材、等を用いてもよい。これによって、第1光学領域と第2光学領域との一方を通過した視標光束の矯正量を所定の値とし、他方を通過した視標光束の矯正量を0D(略0D)とすることができる。
【0159】
このような光学部材による矯正量の異なる視標の呈示について、第1光学領域と第2光学領域を有し、各々の領域の厚みが異なる平行平面ガラスを用いる場合を例に挙げて説明する。
【0160】
図12は、部分的に厚みが異なる平行平面ガラス80を用いた光学系とディスプレイ31の呈示領域を模式的に示す図である。
図12(a)に示す投光光学系30は、ディスプレイ31の中間結像(視標の中間結像)を形成させない光学系である。
図12(b)に示す投光光学系30は、被検眼Eの眼底にディスプレイ31の中間結像をリレーして結像させるリレー光学系である。例えば、ディスプレイ31と、ディスプレイ31の中間結像位置Pと、の間には、レンズ(ここでは、レンズB1及びレンズB2)が配置されてもよい。
【0161】
なお、
図12では、便宜上、対物レンズ14、投光レンズ34、及び投光レンズ33を1枚のレンズMで表している。また、
図12に示す被検眼Eは、第1呈示領域K1または第2呈示領域K2に視線を向けることで、実際には旋回する。例えば、被検眼Eが第1呈示領域K1に表示された第1検査視標M1に視線を向けた場合は、第1呈示領域K1からの第1視標光束が眼底に導光される。また、被検眼Eが第2呈示領域K2に表示された第2検査視標M2に視線を向けた場合は、第2呈示領域K2からの第2視標光束が眼底に導光される。
【0162】
第1視標光束および第2視標光束は、それぞれ、平行平面ガラス80の厚みが異なる部分を通過する。例えば、第1視標光束は、平行平面ガラス80が厚い第1光学領域A1を通過し、さらにレンズMを通過することで、集光位置f1に集光する。また、例えば、第2視標光束は、平行平面ガラス80が薄い第2光学領域A2を通過し、さらにレンズMを通過することで、集光位置f2に集光する。このように、各々の視標光束は、平行平面ガラス80の厚みが異なる部分を通過することで、被検眼Eの深さ方向に所定のずれ量Δdだけ、集光位置が変化する。視標光束の集光位置が変化することによって、被検眼Eを矯正する矯正量が変更される。
【0163】
例えば、
図12(a)のように、投光光学系30をリレー光学系としない場合、投光レンズ33(
図2参照)とディスプレイ31との間に、平行平面ガラス80を配置してもよい。また、例えば、
図12(b)のように、投光光学系30をリレー光学系とする場合、投光レンズ33(
図2参照)とレンズB1との間に、平行平面ガラス80を配置してもよい。なお、平行平面ガラス80は、眼底共役位置Nから離れるほど、第1視標光束と第2視標光束とが重なりやすくなり、これによって、第1検査視標M1と第2検査視標M2とを表示可能な領域が狭くなる。このため、リレー光学系でなければ、眼底と共役(略共役)な関係であるディスプレイ31の直前に、平行平面ガラス80を配置することが好ましい。また、リレー光学系であれば、眼底と共役(略共役)な関係である中間結像位置Pに、平行平面ガラス80を配置することが好ましい。
【0164】
例えば、制御部70は、図示なき駆動機構(例えば、モータおよびスライド機構)を制御して、平行平面ガラス80を光路中の所定の位置(例えば、眼底共役位置N)に挿入する。平行平面ガラス80は、1枚の平行平面ガラスにより構成されてもよい。また、平行平面ガラス80は、複数枚の平行平面ガラスにより構成されてもよい。例えば、制御部70は、第1視標光束を矯正する第1矯正量と、第2視標光束を矯正する第2矯正量と、に応じて、平行平面ガラスを挿入する枚数を変更してもよい。これによって、被検眼Eには、矯正量が異なる複数の検査視標を、同時に呈示することができる。
【0165】
なお、本実施例では、ディスプレイ31の呈示領域Kを2分割しているが、ディスプレイ31の呈示領域Kを分割する領域数に合わせて、平行平面ガラス80の厚みを予め設定しておくことで、被検眼Eに矯正量が異なる複数の検査視標を同時に呈示することができる。また、平行平面ガラス80は、必ずしもその厚みが四角形状に異なるように設計する必要はなく、ディスプレイ31に表示する視標(例えば、検査視標、風景視標、図形、等)に応じて、適宜、設計してもよい。一例として、平行平面ガラス80の厚みは、同心円状に異なるように設計してもよい。
【符号の説明】
【0166】
1 検眼装置
2 筺体
4 モニタ
5 顎台
7 測定部
10 他覚式測定光学系
25 自覚式測定光学系
30 投光光学系
45 第1指標投影光学系
46 第2指標投影光学系
50 観察光学系
60 矯正光学系
70 制御部
75 メモリ
90 補正光学系
100 前眼部撮像光学系