(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】樹脂組成物、それを用いたキャリア付樹脂膜、プリプレグ、積層板、プリント配線基板および半導体装置
(51)【国際特許分類】
C08F 290/06 20060101AFI20240423BHJP
C08L 45/00 20060101ALI20240423BHJP
C08K 5/3415 20060101ALI20240423BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20240423BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240423BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20240423BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
C08F290/06
C08L45/00
C08K5/3415
C08L9/00
C08K3/013
C08J5/24 CER
C08J5/24 CEZ
B32B15/08 J
(21)【出願番号】P 2020035740
(22)【出願日】2020-03-03
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】大東 範行
(72)【発明者】
【氏名】和布浦 徹
(72)【発明者】
【氏名】松澤 勝敏
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-047814(JP,A)
【文献】特開平04-218517(JP,A)
【文献】国際公開第2020/017399(WO,A1)
【文献】特開2019-194307(JP,A)
【文献】国際公開第2005/073264(WO,A1)
【文献】特開2003-115219(JP,A)
【文献】特開2004-131638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C08K
C08L
C08J
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)~(C)を含む、樹脂組成物。
(A)
当該樹脂組成物の樹脂固形分100重量部に対して、1重量部以上30重量部以下の量で含まれる、ポリフェニレンエーテルの分子末端のフェノール性水酸基を炭素-炭素不飽和二重結合を有する化合物により変性された変性ポリフェニレンエーテル
(B)
当該樹脂組成物の樹脂固形分100重量部に対して、5重量部以上40重量部以下の量で含まれるマレイミド化合物
(C)
当該樹脂組成物の樹脂固形分100重量部に対して、1重量部以上20重量部以下の量で含まれるインデン樹脂
【請求項2】
前記樹脂組成物の硬化物の10GHzにおける誘電正接が、0.006以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、以下の成分(D)を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
(D)ポリブタジエン系エラストマー
【請求項4】
成分(B)と成分(D)の重量比(B/D)が、0.5~8である、請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
成分(A)の重量平均分子量が500以上5,000以下である、請求項1乃至
4いずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、以下の成分(E)を含む、請求項1乃至
5いずれか一項に記載の樹脂組成物。
(E)不飽和二重結合を有するフェノール
【請求項7】
さらに、以下の成分(F)を含む、請求項1乃至
6いずれか一項に記載の樹脂組成物。
(F)多官能性ビニル化合物
【請求項8】
さらに、以下の成分(G)を含む、請求項1乃至
7いずれか一項に記載の樹脂組成物。
(G)無機充填材
【請求項9】
成分(G)の含有量が、樹脂固形分100重量部に対して、50重量部以上80重量部以下である、請求項
8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
さらに、以下の成分(H)を含む、請求項1乃至
9いずれか一項に記載の樹脂組成物。
(H)難燃剤
【請求項11】
請求項1乃至
10いずれか一項に記載の樹脂組成物の硬化物。
【請求項12】
請求項1乃至
10いずれか一項に記載の樹脂組成物中に繊維基材を含むプリプレグ。
【請求項13】
請求項
12に記載のプリプレグの少なくとも一方の面上に金属層を配置してなる積層板。
【請求項14】
キャリア基材と、
前記キャリア基材上に設けられた、請求項1乃至
10いずれか一項に記載の樹脂組成物からなる樹脂膜と、
を備える、キャリア付樹脂膜。
【請求項15】
請求項1乃至
10いずれか一項に記載の樹脂組成物の硬化物で構成された絶縁層を備える、プリント配線基板。
【請求項16】
請求項
15に記載のプリント配線基板と、
前記プリント配線基板の回路層上に搭載された、または前記プリント配線基板に内蔵された半導体素子と、を備える、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、それを用いたキャリア付樹脂膜、プリプレグ、積層板、プリント配線基板および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで回路基板に用いる樹脂組成物において様々な開発がなされてきた。この種の技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には、優れた誘電特性を得る観点から、ポリフェニレンエーテル、エポキシ樹脂、無機充填材を用いた樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者が検討した結果、上記特許文献1に記載の樹脂組成物において、低誘電正接と良好なレーザー加工性という特性において改善の余地があることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者はさらに検討したところ、変性ポリフェニレンエーテルと、マレイミド化合物と、インデン樹脂という新たな組み合わせを含む樹脂組成物とすることで、意外にもその樹脂組成物からなる樹脂膜(硬化物)の誘電正接が低減されつつ、当該樹脂膜のレーザー加工性を良好にできることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明によれば、以下の成分(A)~(C)を含む、樹脂組成物が提供される。
(A)当該樹脂組成物の樹脂固形分100重量部に対して、1重量部以上30重量部以下の量で含まれる、ポリフェニレンエーテルの分子末端のフェノール性水酸基を炭素-炭素不飽和二重結合を有する化合物により変性された変性ポリフェニレンエーテル
(B)当該樹脂組成物の樹脂固形分100重量部に対して、5重量部以上40重量部以下の量で含まれるマレイミド化合物
(C)当該樹脂組成物の樹脂固形分100重量部に対して、1重量部以上20重量部以下の量で含まれるインデン樹脂
【0007】
また本発明によれば、上記の樹脂組成物の硬化物が提供される。
【0008】
また本発明によれば、上記樹脂組成物中に繊維基材を含むプリプレグが提供される。
【0009】
また本発明によれば、上記プリプレグの少なくとも一方の面上に金属層を配置してなる積層板が提供される。
【0010】
また本発明によれば、キャリア基材と、上記キャリア基材上に設けられた、上記の樹脂組成物からなる樹脂膜と、を備える、キャリア付樹脂膜が提供される。
【0011】
また本発明によれば、上記樹脂組成物の硬化物で構成された絶縁層を備える、プリント配線基板が提供される。
【0012】
また本発明によれば、
上記プリント配線基板と、
前記プリント配線基板の回路層上に搭載された、または前記プリント配線基板に内蔵された半導体素子と、を備える、半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低誘電正接および良好なレーザー加工性を両立した樹脂組成物、それを用いたキャリア付樹脂膜、プリプレグ、積層板、プリント配線基板および半導体装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る基材付き樹脂シートの構成の一例を模式的に示す図である。
【
図2】本実施形態に係る半導体装置の製造プロセスの一例を示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。また、本明細書中、「~」は、特に明示しない限り、上限値と下限値を含むことを表す。
【0016】
<樹脂組成物>
本実施形態の樹脂組成物は、以下の成分(A)~(C)を含む。
(A)変性ポリフェニレンエーテル
(B)マレイミド化合物
(C)インデン樹脂
【0017】
本発明者の知見によれば、成分(A)~(C)の組み合わせにより、低誘電正接および良好なレーザー加工性を両立できる。
【0018】
また、本実施形態の樹脂組成物の硬化物の10GHzにおける誘電正接が、好ましくは0.006以下であり、より好ましくは0.005以下であり、さらに好ましくは0.004以下である。上記誘電正接の下限値は、特に限定されないが、例えば、1.0×10-3以上としてもよい。
なお、硬化物とは、本実施形態の樹脂組成物を225℃、2時間で加熱硬化させたものを意図する。
【0019】
上記の誘電正接は、たとえば樹脂組成物中に含まれる各成分の種類や配合量、樹脂組成物の調製方法等を適切に選択することにより、制御することが可能である。
【0020】
以下、本実施形態の樹脂組成物に含まれる各成分について詳述する。
【0021】
(A)変性ポリフェニレンエーテル
本実施形態の(A)変性ポリフェニレンエーテルは、ポリフェニレンエーテルを変性したものであり、例えば、国際公開第2014/203511号の段落0018~0061に記載のものを用いることができる。より具体的には、以下のとおりである。
【0022】
本実施形態に係る(A)変性ポリフェニレンエーテルは特に限定されないが、炭素-炭素不飽和結合を有する置換基により末端変性された変性ポリフェニレンエーテルであることが好ましい。
炭素-炭素不飽和結合を有する置換基としては、特に限定はされないが、例えば、下記式(1)で示される置換基が挙げられる。
【0023】
【0024】
上記式(1)中、nは0~10の整数を示し、Zはアリーレン基を示し、R1~R3は独立して水素原子またはアルキル基を示す。
【0025】
上記式(1)においてn=0の場合は、Zがポリフェニレンエーテルの末端に直接結合しているものを示す。また、Zのアリーレン基としては、例えば、フェニレン基等の単環芳香族基やナフタレン環等の多環芳香族基が挙げられ、芳香族環に結合する水素原子がアルケニル基、アルキニル基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、又はアルキニルカルボニル基等の官能基で置換された誘導体も含む。
【0026】
上記式(1)に示す官能基としては、例えば、ビニルベンジル基を含む官能基が挙げられる。より具体的には、下記式(2)または式(3)から選択される少なくとも1つの置換基等が挙げられる。
【0027】
【0028】
【0029】
また、ポリフェニレンエーテルの末端に直接結合している炭素-炭素不飽和結合を有する他の置換基としては、例えば、下記式(4)で示される(メタ)アクリレート基が挙げられる。
【0030】
【化4】
上記式(4)中、R4は水素原子またはアルキル基を示す。
【0031】
本実施形態の変性ポリフェニレンエーテルは、低誘電特性および良好なレーザー加工性を両立する観点から、両末端がヒドロキシ基またはメタアクリル基を有することが好ましい。
【0032】
また、本実施形態の変性ポリフェニレンエーテルにおけるポリフェニレンエーテルは、ポリフェニレンエーテル鎖を分子中に有しており、例えば、下記式(5)で表される繰り返し単位を分子中に有していることが好ましい。
【0033】
【0034】
上記式(5)において、mは1~50を示す。また、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ独立し、それぞれ同一の基であっても、異なる基であってもよい。また、R5、R6、R7及びR8は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、又はアルキニルカルボニル基を示す。これらの中でも、水素原子及びアルキル基が好ましい。
【0035】
上記アルキル基は特に限定されないが、例えば、炭素数1~18のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましい。より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、及びデシル基等が挙げられる。
アルケニル基は特に限定されないが、例えば、炭素数2~18のアルケニル基が好ましく、炭素数2~10のアルケニル基がより好ましい。より具体的には、ビニル基、アリル基、及び3-ブテニル基等が挙げられる。
アルキニル基は特に限定されないが、例えば、炭素数2~18のアルキニル基が好ましく、炭素数2~10のアルキニル基がより好ましい。より具体的には、エチニル基、及びプロパ-2-イン-1-イル基(プロパルギル基)等が挙げられる。
【0036】
アルキルカルボニル基はアルキル基で置換されたカルボニル基であれば特に限定されないが、例えば、炭素数2~18のアルキルカルボニル基が好ましく、炭素数2~10のアルキルカルボニル基がより好ましい。より具体的には、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、及びシクロヘキシルカルボニル基等が挙げられる。
アルケニルカルボニル基はアルケニル基で置換されたカルボニル基であれば特に限定されないが、例えば、炭素数3~18のアルケニルカルボニル基が好ましく、炭素数3~10のアルケニルカルボニル基がより好ましい。より具体的には、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びクロトノイル基等が挙げられる。
アルキニルカルボニル基はアルキニル基で置換されたカルボニル基であれば特に限定されないが、例えば、炭素数3~18のアルキニルカルボニル基が好ましく、炭素数3~10のアルキニルカルボニル基がより好ましい。より具体的には、プロピオロイル基等が挙げられる。
【0037】
本実施形態に係る変性ポリフェニレンエーテルの合成方法は、炭素-炭素不飽和結合を有する置換基により末端変性された変性ポリフェニレンエーテルを合成することができれば特に限定されない。例えば、末端のフェノール性水酸基の水素原子をナトリウムやカリウム等のアルカリ金属原子で置換したポリフェニレンエーテルと、下記式(6)で示されるような化合物とを反応させる方法等が挙げられる。
【0038】
【0039】
上記式(6)中、上記式(1)と同様に、nは0~10の整数を示し、Zはアリーレン基を示し、R1~R3は独立して水素原子またはアルキル基を示す。また、Xは、ハロゲン原子を示し、具体的には、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、及びフッ素原子等が挙げられる。この中でも、塩素原子が好ましい。
【0040】
また、上記式(6)で表される化合物は、特に限定されないが、例えば、p-クロロメチルスチレンやm-クロロメチルスチレンが好ましい。
【0041】
また、上記式(6)で表される化合物は、上記例示したものを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
原料であるポリフェニレンエーテルは、最終的に、所定の変性ポリフェニレンエーテルを合成することができるものであれば、特に限定されない。具体的には、2,6-ジメチルフェノールと2官能フェノール及び3官能フェノールの少なくともいずれか一方とからなるポリアリーレンエーテル共重合体やポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンオキサイド)等のポリフェニレンエーテルを主成分とするもの等が挙げられる。このようなポリフェニレンエーテルは、より具体的には、例えば、下記式(7)に示す構造を有するポリフェニレンエーテル等が挙げられる。
【0043】
【0044】
上記式(7)中、s、tは、例えば、sとtとの合計値が、1~30であることが好ましい。また、sが、0~20であることが好ましく、tが、0~20であることが好ましい。すなわち、sは、0~20を示し、tは、0~20を示し、sとtとの合計は、1~30を示すことが好ましい。
【0045】
上記式(7)のポリフェニレンエーテルの末端水酸基をメタクリル基で変性した変性ポリフェニレンエーテルの市販品としては、SABICイノベーティブプラスチックス社製の「SA9000」等がある。
【0046】
成分(A)の重量平均分子量は、好ましくは500以上5,000以下であり、より好ましくは800以上4,000以下であり、さらに好ましくは1,000以上3,000以下である。なお、重量平均分子量は、一般的な分子量測定方法で測定したものであればよく、具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定した値等が挙げられる。
【0047】
成分(A)の重量平均分子量が上記下限値以上とすることにより、ポリフェニレンエーテルが有する優れた誘電特性を発揮し、その硬化物において、さらに、密着性及び耐熱性によく優れた樹脂組成物が得られる。本実施形態の成分(A)は、変性されているため、末端の反応性基、なかでも末端に不飽和二重結合を有するため、低誘電性を保持しつつ、硬化物のガラス転移温度を向上し、良好なレーザー加工性が得られるとともに、耐熱性、密着性が充分に高いものになると考えられる。
一方、成分(A)の重量平均分子量が上記上限値以下とすることにより、成形性、溶剤溶解性や保存安定性が良好となる。
【0048】
成分(A)の含有量は、樹脂固形分100重量部に対して、好ましくは、1重量部以上30重量部以下である。樹脂固形分100重量部に対して、1重量部以上とすることにより、成分(A)による低誘電正接を得ることができ、30重量部以下とすることにより、樹脂残渣を抑制でき、良好なレーザー加工性が得られる。成分(A)の含有量は、樹脂固形分100重量部に対して、3重量部以上であることがより好ましく、5重量部以上であることがさらに好ましく、一方、25重量部以下であることがより好ましく、20重量部以下であることがさらに好ましい。
なお、樹脂固形分とは、ワニスにおける充填材及び溶媒を除いた樹脂成分のことである。
【0049】
(B)マレイミド化合物
マレイミド化合物のマレイミド基は、5員環の平面構造を有し、マレイミド基の二重結合が分子間で相互作用しやすく極性が高いため、マレイミド基、ベンゼン環、その他の平面構造を有する化合物等と強い分子間相互作用を示し、分子運動を抑制することができる。そのため、本実施形態の樹脂組成物は、マレイミド化合物を含むことにより、得られる絶縁層の線膨張係数を下げ、ガラス転移温度を向上させることができ、さらに、耐熱性を向上させることができる。
【0050】
マレイミド化合物としては、分子内に少なくとも2つのマレイミド基を有するマレイミド化合物が好ましい。
分子内に少なくとも2つのマレイミド基を有するマレイミド化合物としては、例えば、4,4'-ジフェニルメタンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、p-フェニレンビスマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス-(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、N,N'-エチレンジマレイミド、N,N'-ヘキサメチレンジマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド等の分子内に2つのマレイミド基を有する化合物、ポリフェニルメタンマレイミド等の分子内に3つ以上のマレイミド基を有する化合物等が挙げられる。
これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を併用することもできる。これらのマレイミド化合物の中でも、低吸水率である点等から、4,4'-ジフェニルメタンビスマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス-(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミドが好ましい。
【0051】
成分(B)の含有量は、樹脂固形分100重量部に対して、5重量部以上40重量部以下が好ましく、8重量部以上35重量部以下がより好ましく、10重量部以上30重量部以下がさらに好ましい。
成分(B)の含有量を、上記下限値以上とすることにより、良好な誘電正接およびレーザー加工性を得つつ、線膨張係数を下げ、ガラス転移温度を向上させ、耐熱性を向上させることができる。一方、成分(B)の含有量を、上記上限値以下とすることにより、良好な誘電正接およびレーザー加工性のバランスを向上できる。
【0052】
(C)インデン樹脂
本実施形態のインデン樹脂とは、その骨格構造にインデン残基を含む平均重合度4~8の(共)重合体のことを示し、インデン(C9H8)と、クマロン(1-ベンゾフラン)、スチレン(C8H8)、α-メチルスチレン、メチルインデン及びビニル卜ルエンとの共重合体であってもよい。なかでも、インデン-クマロン共重合体、インデン-スチレン共重合体、インデン-クマロン-スチレン共重合体であることが好ましい。
【0053】
すなわち、インデン樹脂は、インデン系モノマー由来の構造単位Aを含むものであり、他のモノマー由来の構造単位を有していてもよい。他のモノマー由来の構造単位としては、例えば、クマロン系モノマー由来の構造単位B、スチレン系モノマー由来の構造単位Cが挙げられる。インデン樹脂は、具体的には、インデン系モノマー由来の構造単位A、クマロン系モノマー由来の構造単位Bおよびスチレン系モノマー由来の構造単位Cを有するものであってもよく、インデン系モノマー由来の構造単位Aおよびクマロン系モノマー由来の構造単位Bを有するものであってもよく、インデン系モノマー由来の構造単位Aおよびスチレン系モノマー由来の構造単位Cを有するものであってもよい。これらの構造単位の繰り返し構造を有することができる。
【0054】
上記インデン系モノマーに由来する構造単位Aは、例えば、下記一般式(M1)で表されるものが挙げられる。
【0055】
【0056】
(一般式(M1)中、R1からR7は、それぞれ独立して水素または炭素数1以上3以下の有機基である。)
【0057】
上記クマロン系モノマーに由来する構造単位Bは、例えば、下記一般式(M2)で表されるものが挙げられる。
【0058】
【0059】
(一般式(M2)中、RCは、水素または炭素数1以上3以下の有機基である。RCは互いに同一でもよく、互いに異なっていてもよい。)
【0060】
上記スチレン系モノマーに由来する構造単位Cは、例えば、下記一般式(M3)で表されるものが挙げられる。
【化10】
【0061】
(一般式(M3)中、RSは、水素または炭素数1以上3以下の有機基である。RSは互いに同一でもよく、互いに異なっていてもよい。)
【0062】
上記一般式(M1)~(M3)において、R1からR7、RC及びRSは、例えば、有機基の構造に水素及び炭素以外の原子を含んでもよい。
水素及び炭素以外の原子としては、具体的には、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、フッ素原子、塩素原子などが挙げられる。水素及び炭素以外の原子としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を含むことができる。
【0063】
上記一般式(M1)~(M3)において、R1からR7、RC及びRSは、それぞれ独立して、例えば、水素又は炭素数1以上3の有機基であり、水素または炭素数1の有機基であることが好ましく、水素であることが更に好ましい。
【0064】
上記一般式(M1)~(M3)において、上記R1からR7、RC及びRSを構成する有機基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基などのアルキル基;アリル基、ビニル基などのアルケニル基;エチニル基などのアルキニル基;メチリデン基、エチリデン基などのアルキリデン基;シクロプロピル基などのシクロアルキル基;エポキシ基、オキセタニル基などのヘテロ環基などが挙げられる。
【0065】
上記インデン樹脂は、この中でも、インデン、クマロンおよびスチレンの共重合体、インデンとスチレンの共重合体を含むことができる。これにより、低誘電特性を向上させることができる。
【0066】
また、上記インデン樹脂は、分子内に、エポキシ樹脂のエポキシ基と反応する反応性基を備えることができる。これにより、低誘電特性を向上させることができる。
上記反応性基としては、OH基、COOH基などが挙げられる。
また、上記インデン樹脂は、内部または末端にフェノール性水酸基を有する芳香族構造を有していてもよい。
【0067】
上記インデン樹脂の重量平均分子量Mwの上限値は、例えば、4000以下であることが好ましく、2000以下であることがより好ましく、1500以下であることが更に好ましく、1200以下であることが一層好ましい。これにより、インデン樹脂とエポキシ樹脂との相溶性を高め、適切にインデン樹脂を分散できる。一方、インデン樹脂の重量平均分子量Mwの下限値は、例えば、400以上であることが好ましく、500以上であることがより好ましく、550以上であることが更に好ましく、600以上であることが一層好ましい。これにより、樹脂組成物の中にインデン樹脂が適切に分散できる。
【0068】
上記インデン樹脂の含有量の下限値は、樹脂固形分100重量部に対して、例えば、1重量部以上、好ましくは3重量部以上、より好ましくは5重量部以上である。これにより、低誘電特性とレーザー加工性の良好なバランスを得つつ、低吸水特性を向上できる。一方、上記インデン樹脂の含有量の上限値は、本実施形態の樹脂組成物全体に対して、例えば、20重量部以下、好ましくは15重量部以下、より好ましくは12重量部以下である。これにより、成形性、耐熱性などの他の物性とのバランスを図ることができる。
【0069】
インデン樹脂の融点は、40℃~120℃であることが好ましく、分子量、重合度により融点を制御することができる。
【0070】
成分(C)の含有量は、樹脂固形分100重量部に対して、0.1重量部以上20重量部以下が好ましく、0.5重量部以上15重量部以下がより好ましく、1重量部以上12重量部以下がさらに好ましい。
【0071】
本実施形態の樹脂組成物は、さらに以下の成分を含むことより、低誘電特性および良好なレーザー加工性を安定的に得るとともに、他の物性を向上することができる。
【0072】
(D)ポリブタジエン系エラストマー
本実施形態において、ポリブタジエン系エラストマーは、ブタジエン化合物をモノマー成分として用いた単独重合体または共重合体である。本実施形態において、耐熱性を向上させる観点からは、官能基を有しているポリブタジエン系エラストマーを用いることがより好ましい。官能基としては、ビニル基、エポキシ基、カルボキシ基、水酸基、またはマレイン酸基などが挙げられる。なかでも、相溶性と密着性を向上させる観点から、側鎖にビニル基を有するポリブタジエンであることが好ましい。
また、共重合体としては、樹脂中にブタジエンから重合してなるセグメント骨格を有するものであり、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、アクリレ-トブタジエン共重合体、ビニルピリジンブタジエン共重合体、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体、カルボキシル化ブタジエン共重合体、エポキシ化ブタジエン共重合体等が挙げられる。なかでも、分散性と耐熱性を向上させる観点から、ブタジエンホモポリマーおよびスチレン-ブタジエン共重合体であることが好ましい。
【0073】
成分(B)と成分(D)の重量比(B/D)は、好ましくは0.5~8であり、より好ましくは2~6である。重量比(B/D)をかかる範囲とすることにより、耐熱性を向上できる。
【0074】
成分(D)の含有量は、樹脂固形分100重量部に対して、0.1重量部以上20重量部以下が好ましく、0.2重量部以上15重量部以下がより好ましく、0.5重量部以上12重量部以下がさらに好ましい。
【0075】
(E)不飽和二重結合を有するフェノール
本実施形態において、不飽和二重結合を有するフェノールは、誘電特性およびレーザー加工性を良好にしつつ、他の物性とのバランスを保持する観点から、主に用いられる。不飽和二重結合を有するフェノールとは、フェノール骨格を有し、ベンゼン環の置換基に不飽和二重結合を有するものをいう。
本実施形態において、不飽和二重結合を有するフェノールとしては、アリルフェノール(o-,m-またはp-)、ビニルフェノール(o-,m-またはp-)、アリルレゾルシノール、ジアリルレゾルシノール、アリルカテコール、ジアリルカテコール、アリルヒドロキノン、ジアリルヒドロキノン、アリルピロガロール、トリアリルフェノール、トリビニルフェノール、トリアリルレゾルシノール、トリビニルレゾルシノール等が挙げられる。なかでも、密着を向上させる観点から、ビニルフェノール(特にp-ビニルフェノール;4-エテニルフェノール)、2,2'-ジアリルビスフェノールA、o-アリルフェノール(2-アリルフェノール)、アリルフェノールレゾルシノール型ノボラック樹脂であることが好ましい。
【0076】
成分(E)の含有量は、樹脂固形分100重量部に対して、1重量部以上30重量部以下が好ましく、5重量部以上25重量部以下がより好ましく、7重量部以上22重量部以下がさらに好ましい。
【0077】
(F)多官能性ビニル化合物
本実施形態において、(F)多官能性ビニル化合物とは、分子中に2以上の重合性不飽和結合を有する化合物をいう。
多官能性ビニル化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン等の2官能性芳香族ビニル化合物;1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンのジオールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールアクリレート、アクリル酸アリル、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、3-メチルペンタンジオールジアクリレート、メタクリル酸アリル等の2官能性(メタ)アクリル酸エステル;トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールへキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート等の3官能性以上の(メタ)アクリル酸エステル;(ポリ)エチレングリコールジメタクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル;ジアリルマレート、ジアリルフマレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアネート、ジアリルフタレート、ビスフェノールAのビス(アクリロイロキシエチル)エーテル等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
中でも、(ポリ)エチレングリコールジメタクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル;ジアリルマレート、ジアリルフマレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアネート、ジアリルフタレート、ビスフェノールAのビス(アクリロイロキシエチル)エーテルが好ましく、トリアリルイソシアネートがより好ましい。
【0078】
成分(F)の含有量は、樹脂固形分100重量部に対して、0.5重量部以上30重量部以下が好ましく、1重量部以上20重量部以下がより好ましく、4重量部以上15重量部以下がさらに好ましい。
【0079】
(G)無機充填材
本実施形態において、(G)無機充填材としては、例えば、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラス等のケイ酸塩;酸化チタン、アルミナ、ベーマイト、シリカ、溶融シリカ等の酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物;硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩または亜硫酸塩;ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩;窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素等の窒化物;チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等のチタン酸塩等を挙げることができる。
これらの中でも、タルク、アルミナ、ガラス、シリカ、マイカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが好ましく、シリカが特に好ましい。無機充填材としては、これらの中の1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0080】
上記無機充填材の平均粒子径の下限値は、特に限定されないが、例えば、0.01μm以上としてもよく、0.05μm以上としてもよい。これにより、上記熱硬化性樹脂のワニスの粘度が高くなるのを抑制でき、絶縁層作製時の作業性を向上させることができる。また、無機充填材の平均粒子径の上限値は、特に限定されないが、例えば、5.0μm以下が好ましく、2.0μm以下がより好ましく、1.0μm以下がさらに好ましい。これにより、上記熱硬化性樹脂のワニス中における無機充填材の沈降等の現象を抑制でき、より均一な樹脂膜を得ることができる。また、プリント配線基板の回路寸法L/Sが20μm/20μmを下回る際には、配線間の絶縁性への影響を抑制することができる。
【0081】
本実施形態において、無機充填材の平均粒子径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(HORIBA社製、LA-500)により、粒子の粒度分布を体積基準で測定し、そのメディアン径(D50)を平均粒子径とすることができる。
【0082】
また、無機充填材は、特に限定されないが、平均粒子径が単分散の無機充填材を用いてもよいし、平均粒子径が多分散の無機充填材を用いてもよい。さらに平均粒子径が単分散および/または多分散の無機充填材を1種類または2種類以上で併用してもよい。
【0083】
上記無機充填材はシリカ粒子を含むことが好ましい。シリカ粒子は球状であってもよい。上記シリカ粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、5.0μm以下としてもよく、0.1μm以上4.0μm以下としてもよく、0.2μm以上2.0μm以下としてもよい。これにより、無機充填材の充填性をさらに向上させることができる。
【0084】
無機充填材の含有量の下限値は、樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、特に限定されないが、例えば、40質量部以上が好ましく、45質量部以上がより好ましく、50質量部以上がさらに好ましい。これにより、樹脂膜の硬化物を特に低熱膨張、低吸水とすることができる。また、半導体パッケージの反りを抑制することができる。一方で、無機充填材の含有量の上限値は、樹脂組成物の全固形分100質量部に対して、特に限定されないが、例えば、85質量部以下としてもよく、80質量部以下としてもよく、75質量部以下としてもよい。これにより、ハンドリング性が向上し、樹脂膜を形成するのが容易となる。
【0085】
(H)難燃剤
本実施形態において、(H)難燃剤としては、例えば、臭素系難燃剤等のハロゲン系難燃剤やリン系難燃剤等が挙げられる。ハロゲン系難燃剤の具体例としては、例えば、ペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモシクロドデカン等の臭素系難燃剤や、塩素化パラフィン等の塩素系難燃剤等が挙げられる。また、リン系難燃剤の具体例としては、例えば、縮合リン酸エステル、環状リン酸エステル等のリン酸エステル、環状ホスファゼン化合物等のホスファゼン化合物、ジアルキルホスフィン酸アルミニウム塩等のホスフィン酸金属塩等のホスフィン酸塩系難燃剤、リン酸メラミン、及びポリリン酸メラミン等のメラミン系難燃剤等が挙げられる。難燃剤としては、例示した各難燃剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも、リン系難燃剤であることが好ましい。
【0086】
成分(H)の含有量は、樹脂固形分100重量部に対して、0.1重量部以上15重量部以下が好ましく、0.5重量部以上10重量部以下がより好ましく、1重量部以上5重量部以下がさらに好ましい。
【0087】
(重合開始剤)
本実施形態の樹脂組成物は、重合開始剤を含有してもよい。これにより、成分(A)がプロセス条件によらず、安定的に硬化進行される。重合開始剤としては、変性ポリフェニレンエーテルと熱硬化型硬化剤との硬化反応を促進することができるものであれば、特に限定されないが、例えば、α,α'-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3-ヘキシン,過酸化ベンゾイル、3,3',5,5'-テトラメチル-1,4-ジフェノキノン、クロラニル、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノキシル、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、アゾビスイソブチロニトリル等の酸化剤が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、硬化反応を一層促進させる観点から、さらにカルボン酸金属塩等を併用してもよい。
なかでも、α,α'-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼンが好ましく用いられる。α,α'-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼンは、反応開始温度が比較的に高いため、プリプレグ乾燥時等の硬化する必要がない時点での硬化反応の促進を抑制することができ、本実施形態の樹脂組成物の保存性の低下を抑制することができる。さらに、α,α'-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼンは、揮発性が低いため、プリプレグ乾燥時や保存時に揮発せず、良好な安定性が得られる。
【0088】
(カップリング剤)
本実施形態の樹脂組成物は、カップリング剤を含んでもよい。カップリング剤は樹脂組成物の調製時に直接添加してもよいし、無機充填材にあらかじめ添加しておいてもよい。カップリング剤の使用により無機充填材と各樹脂との界面の濡れ性を向上させることができる。したがって、カップリング剤を使用することは好ましく、樹脂膜の硬化物の耐熱性を改良することができる。また、カップリング剤を用いることにより、銅箔との密着性を向上させることができる。さらに、吸湿耐性を向上できるので、湿度環境下においても、銅箔との密着性を維持することができる。
【0089】
上記カップリング剤としては、例えば、ビニル系シランカップリング剤、エポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤等のシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤およびシリコーンオイル型カップリング剤等が挙げられる。カップリング剤は一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。本実施形態において、カップリング剤はシランカップリング剤を含有してもよい。
これにより、無機充填材と各樹脂との界面の濡れ性を高くすることができ、樹脂膜の硬化物の耐熱性をより向上させることができる。
【0090】
上記シランカップリング剤としては、各種のものを用いることができるが、例えば、エポキシシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、メルカプトシラン、ビニルシラン等が挙げられる。
【0091】
具体的な化合物としては、例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニルγ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニルγ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-6-(アミノヘキシル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(3-(トリメトキシシリルプロピル)-1,3-ベンゼンジメタナン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらのうちの一種または二種以上を組み合せて用いることができる。これらのうちビニルシラン、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシランが好ましく、アミノシランとしては、1級アミノシラン又はアニリノシランがより好ましい。
【0092】
上記カップリング剤の含有量は、無機充填材の比表面積に対して適切に調整することができる。このようなカップリング剤の含有量の下限値は、例えば、樹脂組成物の全固形分100重量部に対して、0.01重量部以上としてもよく、好ましくは0.05重量部以上としてもよい。カップリング剤の含有量が上記下限値以上であると、無機充填材を十分に被覆することができ、樹脂膜の硬化物の耐熱性を向上させることができる。一方、上記カップリング剤の含有量の上限値は、例えば、樹脂組成物の全固形分100重量部に対して、3重量部以下としてもよく、好ましくは1.5重量部以下としてもよい。カップリング剤の含有量が上記上限値以下であると、反応に影響を与えるのを抑制でき、樹脂膜の硬化物の曲げ強度等の低下を抑制することができる。
【0093】
(その他、添加剤)
なお、本実施形態の樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、上記以外の樹脂、緑、赤、青、黄、および黒等の染料、黒色顔料等の顔料、色素からなる群から選択される一種以上を含む着色剤、低応力剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、発泡剤、酸化防止剤、イオン捕捉剤、ゴム成分等の上記の成分以外の添加剤を含んでもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記以外の樹脂としては例えば、エポキシ樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂などの熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、フェノキシ樹脂、シアネート樹脂が挙げられる。
【0094】
(ワニス)
本実施形態において、ワニス状の樹脂組成物は、溶剤を含むことができる。
上記溶剤としては、たとえばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、酢酸エチル、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、セルソルブ系、カルビトール系、アニソール、およびN-メチルピロリドン等の有機溶剤が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0095】
樹脂組成物がワニス状である場合において、樹脂組成物の固形分含有量は、たとえば30質量%以上80質量%以下としてもよく、より好ましくは40質量%以上70質量%以下としてもよい。これにより、作業性や成膜性に非常に優れた樹脂組成物が得られる。
【0096】
ワニス状の樹脂組成物は、上述の各成分を、たとえば、超音波分散方式、高圧衝突式分散方式、高速回転分散方式、ビーズミル方式、高速せん断分散方式、および自転公転式分散方式などの各種混合機を用いて溶剤中に溶解、混合、撹拌することにより調製することができる。
【0097】
<樹脂膜>
次いで、本実施形態の樹脂膜について説明する。
本実施形態の樹脂膜は、ワニス状である上記樹脂組成物をフィルム化することにより得ることができる。例えば、本実施形態の樹脂膜は、ワニス状の樹脂組成物を塗布して得られた塗布膜に対して、溶剤を除去することにより得ることができる。このような樹脂膜においては、溶剤含有率が樹脂膜全体に対して5質量%以下とすることができる。本実施形態において、たとえば100℃~150℃、1分~5分の条件で溶剤を除去する工程を実施してもよい。これにより、熱硬化性樹脂を含む樹脂膜の硬化が進行することを抑制しつつ、十分に溶剤を除去することが可能となる。
【0098】
本実施形態の樹脂膜は、樹脂膜単独で構成されてもよく、繊維基材を内部に含むように構成されてもよい。
【0099】
<プリプレグ>
本実施形態のプリプレグは、樹脂組成物中に繊維基材を含むように構成される。プリプレグは、上記樹脂組成物を繊維基材に含浸してなるものである。
例えば、プリプレグは、樹脂組成物を繊維基材に含浸させ、その後、半硬化させて得られるシート状の材料として利用できる。このような構造のシート状材料は、誘電特性、高温多湿下での機械的、電気的接続信頼性等の各種特性に優れ、プリント配線基板の絶縁層の製造に適している。
【0100】
本実施形態において、樹脂組成物を繊維基材に含浸させる方法としては、特に限定されないが、例えば、樹脂組成物を溶剤に溶かして樹脂ワニスを調製し、繊維基材を上記樹脂ワニスに浸漬する方法、各種コーターにより上記樹脂ワニスを繊維基材に塗布する方法、スプレーにより上記樹脂ワニスを繊維基材に吹き付ける方法、樹脂組成物からなる上記樹脂膜で繊維基材の両面をラミネートする方法等が挙げられる。
【0101】
上記繊維基材としては、例えば、ガラス繊布、ガラス不繊布等のガラス繊維基材、あるいはガラス以外の無機化合物を成分とする繊布又は不繊布等の無機繊維基材、芳香族ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂等の有機繊維で構成される有機繊維基材等が挙げられる。これら基材の中でも強度の点でガラス織布に代表されるガラス繊維基材を用いると、プリント配線基板の機械的強度、耐熱性を良好なものとすることができる。
【0102】
繊維基材の厚みは、とくに限定されないが、好ましくは5μm以上150μm以下であり、より好ましくは10μm以上100μm以下であり、さらに好ましくは12μm以上90μm以下である。このような厚みを有する繊維基材を用いることにより、プリプレグ製造時のハンドリング性がさらに向上できる。
繊維基材の厚みが上記上限値以下であると、繊維基材中の樹脂組成物の含浸性が向上し、ストランドボイドや絶縁信頼性の低下の発生を抑制することができる。また炭酸ガス、UV、エキシマ等のレーザーによるスルーホールの形成を容易にすることができる。また、繊維基材の厚みが上記下限値以上であると、繊維基材やプリプレグの強度を向上させることができる。その結果、ハンドリング性が向上できたり、プリプレグの作製が容易となったり、樹脂基板の反りを抑制できたりする。
【0103】
上記ガラス繊維基材として、例えば、Eガラス、Sガラス、Dガラス、Tガラス、NEガラス、UTガラス、Lガラス、HPガラスおよび石英ガラスから選ばれる一種または二種以上のガラスにより形成されたガラス繊維基材が好適に用いられる。
【0104】
本実施形態において、プリプレグは、例えば、プリント配線基板におけるビルドアップ層中の絶縁層やコア層中の絶縁層を形成するために用いることができる。プリプレグをプリント配線基板におけるコア層中の絶縁層を形成するために用いる場合は、例えば、2枚以上のプリプレグを重ね、得られた積層体を加熱硬化することによりコア層用の絶縁層とすることもできる。
【0105】
<金属張積層板>
本実施形態の積層板は、上記プリプレグの硬化物の少なくとも一方の面に金属層が配置された金属張積層板である。
【0106】
また、プリプレグを用いた金属張積層板製造方法は、例えば以下の通りである。
プリプレグまたはプリプレグを2枚以上重ね合わせた積層体の外側の上下両面または片面に金属箔を重ね、ラミネーター装置やベクレル装置を用いて高真空条件下でこれらを接合する、あるいはそのままプリプレグの外側の上下両面または片面に金属箔を重ねる。また、プリプレグを2枚以上積層するときは、積層したプリプレグの最も外側の上下両面もしくは片面に金属箔を重ねる。次いで、プリプレグと金属箔とを重ねた積層体を加熱加圧成形することで金属張積層板を得ることができる。ここで、加熱加圧成形時に、冷却終了時まで加圧を継続することが好ましい。
【0107】
上記金属箔を構成する金属としては、例えば、銅、銅系合金、アルミ、アルミ系合金、銀、銀系合金、金、金系合金、亜鉛、亜鉛系合金、ニッケル、ニッケル系合金、錫、錫系合金、鉄、鉄系合金、コバール(商標名)、42アロイ、インバー、スーパーインバー等のFe-Ni系の合金、W、Mo等が挙げられる。これらの中でも、金属箔105を構成する金属としては、導電性に優れ、エッチングによる回路形成が容易であり、また安価であることから銅または銅合金が好ましい。すなわち、金属箔105としては、銅箔が好ましい。
また、金属箔としては、キャリア付金属箔等も使用することができる。
金属箔の厚みは、好ましくは0.5μm以上20μm以下であり、より好ましくは1.5μm以上18μm以下である。
【0108】
<キャリア付き樹脂膜>
次いで、本実施形態のキャリア付樹脂膜について説明する。
図1は、キャリア付樹脂膜10の構成の一例を示す図である。
【0109】
上記キャリア付樹脂膜10の一例は、キャリア基材30と、キャリア基材30上に設けられた、樹脂組成物からなる樹脂膜20)とを備えるものである。
【0110】
キャリア付樹脂膜10は、
図1(a)に示すような巻き取り可能なロール状でもよいし、矩形形状の枚葉状であってもよい。
【0111】
上記キャリア基材30としては、例えば、高分子フィルムや金属箔などを用いることができる。当該高分子フィルムとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネート、シリコーンシート等の離型紙、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂などの耐熱性を有した熱可塑性樹脂シート等が挙げられる。当該金属箔としては、特に限定されないが、例えば、銅および/または銅系合金、アルミおよび/またはアルミ系合金、鉄および/または鉄系合金、銀および/または銀系合金、金および金系合金、亜鉛および亜鉛系合金、ニッケルおよびニッケル系合金、錫および錫系合金などが挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレートで構成されるシートが安価および剥離強度の調節が簡便なため最も好ましい。これにより、上記キャリア付樹脂膜10から、適度な強度で剥離することが容易となる。
【0112】
また、キャリア付樹脂膜10の表面は、例えば、露出していてもよく、保護フィルム(カバーフィルム50)で覆われていてもよい。保護フィルムとしては、公知の保護機能を有するフィルムを用いることができるが、例えば、PETフィルムを使用してもよい。
図1(b)に示すように、樹脂膜20がキャリア基材30とカバーフィルム50との間に形成されていてもよい。これにより、樹脂膜20のハンドリング性が向上する。
【0113】
本実施形態のキャリア付樹脂膜10の樹脂膜20は、単層でも多層でもよく、1種または2種以上の膜で構成されていてもよい。当該樹脂シートが多層の場合、同種で構成されてもよく、異種で構成されてもよい。
【0114】
上記樹脂膜20の膜厚の下限値は、例えば、5μm以上であり、好ましくは10μm以上である。これにより、絶縁信頼性を向上させることができる。一方、上記樹脂膜20の膜厚の上限値は、例えば、50μm以下であり、好ましくは40μm以下である。これにより、プリント配線基板の薄層化を実現できる。また、樹脂膜20の膜厚を上記範囲内とすることにより、プリント配線基板を製造する際に、内層回路の凹凸を充填して成形することができるとともに、好適なビルドアップ層の絶縁樹脂層厚みを確保することができる。
【0115】
キャリア基材30の厚みは、特に限定されないが、例えば、10~100μmとしてもよく、10~70μmとしてもよい。これにより、キャリア付樹脂膜10を製造する際の取り扱い性が良好となり好ましい。
【0116】
<プリント配線基板>
本実施形態のプリント配線基板は、上記の樹脂膜の硬化物(樹脂組成物の硬化物)で構成された絶縁層を備えるものである。
本実施形態において、樹脂膜の硬化物は、例えば、通常のプリント配線基板のビルドアップ層、コア層を有しないプリント配線基板におけるビルドアップ層、PLPに用いられるコアレス基板のビルドアップ層、MIS基板のビルドアップ層等に用いることができる。このようなビルドアップ層を構成する絶縁層は、複数の半導体パッケージを一括して作成するために利用させる大面積のプリント配線基板において、当該プリント配線基板を構成するビルドアップ層にも好適に用いることができる。
【0117】
また、本実施形態において、絶縁膜形成用の樹脂組成物からなる樹脂膜において、ガラス繊維を含浸する構成とすることができる。このような樹脂膜をビルドアップ層に用いた半導体パッケージにおいても、樹脂膜の硬化物の線膨張係数を低くすることができるので、パッケージ反りを十分に抑制することができる。
【0118】
<半導体パッケージ>
図2は、本実施形態の半導体パッケージ200の製造工程の一例を示す工程断面図である。
本実施形態の半導体装置(半導体パッケージ200)は、プリント配線基板と、プリント配線基板の回路層上に搭載された、またはプリント配線基板に内蔵された半導体素子240と、を備えることができる。
【0119】
以下、本実施形態の半導体パッケージ200の製造工程の概要について説明する。
まず、
図2(a)に示すように、絶縁層102、ビアホール104および金属層108を備えるコア層100を準備する。絶縁層102にはビアホール104が形成されている。ビアホール104には、金属層(ビア)が埋設されている。当該金属層は、無電解金属めっき膜106で覆われていてもよい。絶縁層102の表面に形成された金属層108(所定の回路パターンを有する回路層)は、ビアホール104に形成されたビアと電気的に接続する。
図2(a)には、金属層108は、コア層100の一面上に形成されているが、両面に形成されていてもよい。
【0120】
続いて、コア層100の一面上に金属層108を埋め込むように、上記樹脂組成物からなる樹脂膜20を形成する。例えば、キャリア付樹脂膜10からカバーフィルム50を剥離し、その樹脂膜20(絶縁膜)をコア層100の回路形成面上に配置してもよい。この樹脂膜20の表面にはキャリア基材30が設けられている。キャリア基材30は、この時点で樹脂膜20から分離してもよいが、マスクとして使用してもよい。
なお、樹脂膜20は、絶縁膜単層でもよく、絶縁膜およびプライマー層の複数層で構成されてもよい。
【0121】
続いて、上記樹脂膜20に、キャリア基材30を介して、不図示の開口部を形成する。開口部は、金属層108を露出させるように形成することができる。開口部の形成方法としては、特に限定されず、例えば、レーザー加工法、露光現像法またはブラスト工法、などの方法を用いることができる。
【0122】
本実施形態において、このような開口部を形成した後、樹脂膜20を熱硬化させてもよい。その後、キャリア基材30を剥離する。
【0123】
また、必要に応じて、デスミア処理を行うことができる。デスミア処理では、開口部の内部に生じたスミアを除去するとともに、上記樹脂膜20の表面を粗化できる。
【0124】
上記デスミア処理の方法は特に限定されないが、たとえば、以下のように行うことができる。まず、樹脂膜20を積層したコア層100を、有機溶剤を含む膨潤液に浸漬し、次いでアルカリ性過マンガン酸塩水溶液に浸漬し、中和して粗化処理することができる。有機溶剤としては、ジエチレングリコールモノブチルエーテルやエチレングリコール等を用いる事ができる。このような膨潤液として、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリングディップ セキュリガント P」が挙げられる。過マンガン酸塩としては、たとえば過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等を用いることができる。膨潤液や過マンガン酸塩水溶液の液温としては、例えば、50℃以上でもよく、100℃以下でもよい。また、膨潤液や過マンガン酸塩水溶液への浸漬時間は、例えば、1分間以上でもよく、30分間以下でもよい。
【0125】
デスミア処理する工程では、上記の湿式のデスミア処理のみを行うことができるが、デスミア処理に加えてプラズマ照射を行っても良い。
【0126】
続いて、樹脂膜20、あるいは樹脂膜20上に形成されたプライマー層(不図示)上に、無電解金属めっき膜202を形成する。無電解めっき法の例を説明する。例えば、下地層の表面上に触媒核を付与する。この触媒核としては、特に限定されないが、例えば、貴金属イオンやパラジウムコロイドを用いることができる。引き続き、この触媒核を核として、無電解めっき処理により、無電解金属めっき膜202を形成する。無電解めっきには、例えば、硫酸銅、ホルマリン、錯化剤、水酸化ナトリウム等を含むものを用いることができる。なお、無電解めっき後に、100~250℃の加熱処理を施し、めっき被膜を安定化させることができる。
【0127】
続いて、
図2(b)に示すように、無電解金属めっき膜202上に所定の開口パターン(開口部206)を有するレジスト204を形成してもよい。この開口パターンは、例えば回路パターンに相当する。レジスト204としては、特に限定されず、公知の材料を用いることができるが、液状およびドライフィルムを用いることができる。微細配線形成の場合には、レジスト204としては、感光性ドライフィルム等を用いることができる。感光性ドライフィルムを用いた一例を説明する。例えば、無電解金属めっき膜202上に感光性ドライフィルムを積層し、非回路形成領域を露光して光硬化させ、未露光部を現像液で溶解、除去する。硬化した感光性ドライフィルムを残存させることにより、レジスト204を形成する。
【0128】
続いて、
図2(c)に示すように、少なくともレジスト204の開口パターン内部かつ無電解金属めっき膜202上に、電気めっき処理により、電解金属めっき層208を形成する。電気めっきとしては、特に限定されないが、通常のプリント配線基板で用いられる公知の方法を使用することができ、例えば、硫酸銅等のめっき液中に浸漬させた状態で、めっき液に電流を流す等の方法を使用することができる。電解金属めっき層208は単層でもよく多層構造を有していてもよい。電解金属めっき層208の材料としては、特に限定されないが、例えば、銅、銅合金、42合金、ニッケル、鉄、クロム、タングステン、金、半田のいずれか1種以上を用いることができる。
【0129】
続いて、
図2(d)に示すように、アルカリ性剥離液や硫酸または市販のレジスト剥離液等を用いて、レジスト204を除去する。
【0130】
続いて、
図2(e)に示すように、電解金属めっき層208が形成されている領域以外領域(開口部210)における無電解金属めっき膜202を除去する。すなわち、電解金属めっき層208をマスクとして、下層の無電解金属めっき膜202を選択的に除去する。例えば、ソフトエッチング(フラッシュエッチング)等を用いることにより、無電解金属めっき膜202を除去することができる。ここで、ソフトエッチング処理は、例えば、硫酸および過酸化水素を含むエッチング液を用いたエッチングにより行うことができる。これにより、所定のパターンを有する金属層220を形成することができる。このように、セミアディティブプロセス(SAP)によって、本実施形態の樹脂膜の硬化物からなる絶縁層上に、無電解金属めっき膜202および電解金属めっき層208で構成される金属層220を形成することができる。
【0131】
さらに、コア層100および上記ビルドアップ層で構成されるプリント配線基板上に、必要に応じてビルドアップ層を積層して、セミアディティブプロセスにより層間接続および回路形成する工程を繰り返すことにより、多層にすることができる。
以上により、本実施形態のプリント配線基板が得られる。
【0132】
続いて、
図2(f)に示すように、得られたプリント配線基板上に、必要に応じてビルドアップ層を積層して、セミアディティブプロセスにより層間接続および回路形成する工程を繰り返す。そして、必要に応じて、ソルダーレジスト層230をプリント配線基板の両面又は片面に積層する。
【0133】
ソルダーレジスト層230の形成方法は、特に限定されないが、例えば、ドライフィルムタイプのソルダーレジストをラミネートし、露光、および現像により形成する方法、または液状レジストを印刷したものを露光、および現像することにより形成する方法によりなされる。
【0134】
続いて、リフロー処理を行なうことによって、半導体素子240を配線パターンの一部である接続端子上に、半田バンプ250を介して固着させる。その後、半導体素子240、および半田バンプ250等を封止材層260で覆うように封止する。
以上により、
図2(f)に示す、半導体パッケージ200が得られる。
【0135】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例】
【0136】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0137】
(樹脂組成物の調製)
表1に示す固形分割合で各成分を溶解または分散させ、メチルエチルケトンで不揮発分70質量%となるように調整し、高速撹拌装置を用い撹拌して、ワニス状の樹脂組成物(樹脂ワニスP)を調製した。
なお、表1における各成分の配合割合を示す数値は、樹脂組成物の固形分全体に対する各成分の配合割合(質量%)を示している。
【0138】
表1における各成分の原料の詳細は下記のとおりである。
(A)変性ポリフェニレンエーテル:末端メタクリル基変性ポリフェニレンエーテル、「SA9000」SABICイノベーティブプラスチックス社製
(B)マレイミド化合物:ビフェニルアラルキル型マレイミド化合物、「MIR-3000-70MT」日本化薬社製
(C)インデン樹脂:末端にフェノール基を含むインデン・クマロン・スチレン共重合体(日塗化学社製、V-120S、重量平均分子量:950、水酸基価:30mg KOH/g)
(D)ポリブタジエン系エラストマー:ポリブタジエン、「B-1000」日本曹達社製
(E)不飽和二重結合を有するフェノール:アリルフェノール、「FATC-809」群栄化学社製
(F)多官能性ビニル化合物:トリアリルイソシアネート、架橋剤、「TAIC」三菱ケミカル社製
(G)無機充填材:シリカ粒子、「SC4050」、アドマテックス社製、(均粒径1.1μm、表面がアミノフェノキシシラン処理されたもの)
(H)難燃剤:縮合型リン酸エステル「PX-200」大八化学工業社製
(その他)
・重合開始剤:1,4-ビス[(t-ブチルパーオキシ)イソプロピル]ベンゼン「パーブチルP」日油社製
【0139】
各実施例および各比較例において、得られた樹脂ワニスP(樹脂組成物)を用い、次のようにして、プリプレグ、金属箔付き樹脂基板、プリント配線板を作成した。
【0140】
(プリプレグおよび金属箔付き積層板の作製)
得られた樹脂ワニスを、ガラス織布(クロスタイプ♯1078、NEガラス、坪量44g/m2)に塗布装置で含浸させ、140℃の熱風乾燥装置で10分間乾燥して、厚さ70μmのプリプレグを得た。
プリプレグの両面に極薄銅箔(三井金属鉱業社製、マイクロシンFL、1.5μm)を重ね合わせ、圧力3MPa、温度225℃で2時間加熱加圧成形することにより、金属箔付き積層板を得た。得られた金属箔付き積層板のコア層(樹脂基板からなる部分)の厚みは、0.070mmであった。
【0141】
(プリント配線板の作製)
得られた金属箔付き積層板を用いて、ドリル機で所定のところを開孔して、無電解めっきにより、導通を図り、銅箔をエッチングして回路形成面を有する残銅60%のコア層を作製した。次いで、コア層の両面にプリプレグ1を配置して、極薄銅箔(三井金属鉱業社製、マイクロシンFL、1.5μm)を重ね合わせ、圧力3MPa、温度225℃で2時間加熱加圧成形した。つぎに、得られた積層板に炭酸レーザーによりビア孔を形成した。ビア内を60℃の膨潤液(アトテックジャパン社製、スウェリングディップ セキュリガント P)に5分間浸漬し、さらに80℃の過マンガン酸カリウム水溶液(アトテックジャパン社製、コンセントレート コンパクト CP:過マンガン酸ナトリウム濃度60g/l、NaOH濃度45g/l)に15分浸漬後、中和して粗化処理をおこなった。
これを脱脂、触媒付与、活性化の工程を経た後、無電解銅めっき皮膜を約0.5μm形成し、レジストを形成し、無電解銅めっき皮膜を給電層としてパターン電気めっき銅20μm形成させ、回路加工を施した。つぎに、熱風乾燥装置にて200℃で60分間アニール処理を行った後、フラッシュエッチングで給電層を除去した。次いで、ソルダーレジスト層を形成し、半導体素子搭載パッドなどが露出するように開口部を形成した。最後に、ソルダーレジスト層から露出した回路層上へ、無電解ニッケルめっき層3μmと、さらにその上へ、無電解金めっき層0.1μmとからなるめっき層を形成し、得られた基板を50mm×50mmサイズに切断し、プリント配線板を得た。
【0142】
上記樹脂ワニスP(樹脂組成物)を用いて得られた、プリプレグ、金属箔付き積層板、プリント配線板について、以下の評価項目に基づいて評価を行い、表2に示す判定基準に従い評価を行った。結果を表1に示した。なお、表2中、数値範囲を示す「~」は、下限値以上上限値未満、または、下限値超上限値以下を示す。
【0143】
1)ピール強度
ピール強度測定は、JISC6481に準拠して行った。尚、サンプルは金属箔付き樹脂基板を電気めっき銅30μmとしたものを用いた
【0144】
2)めっき銅のHAST後ピール強度
得られた金属箔付き積層板を用いて、JISC-6481:1996に準拠して、上述の粗化処理後の23℃におけるめっき銅のピール強度を測定した。なお、前処理として温度130℃、湿度85%、時間100時間の吸湿処理を行った。
【0145】
3)ガラス転移温度
動的粘弾性装置を用いて、JISC-6481(DMA法)に準拠しておこなった。なお、サンプルは金属箔付き積層板をエッチングして銅を除去したものを用いた。
【0146】
4)熱膨張係数
熱膨張係数は、TMA(熱機械的分析)装置(TAインスツルメント社製、Q400)を用いて、4mm×20mmの試験片を作製し、温度範囲30~300℃、10℃/分、荷重5gの条件で2サイクル目の50~100℃における線膨張係数(CTE)を測定した。なお、サンプルは金属箔付き積層板をエッチングして銅を除去したものを用いた
【0147】
5,6)誘電正接
金属箔付き積層板をエッチングして銅を除去したものを10GHzの空洞共振器を用いて測定した。
【0148】
7)成形性
成形性は、上記のプリント配線板の外層銅箔を全面エッチング後に内層パターンへの埋め込み性を目視、および断面観察を実施し評価した。
【0149】
8)吸湿半田耐熱
50mm×50mm角のサンプルの片面の半分以外の、金属箔付き積層板の全銅箔をエッチング除去し、プレシッヤークッカー試験機(エスペック社製)で121℃、2気圧で所定時間処理後、260℃の半田槽に60秒間フロートさせて、外観変化の異常の有無を目視にて観察した。
【0150】
9)レーザー加工性
上記のプリント配線板のビアホール底部の周囲を走査電子顕微鏡(SEM)にて観察し、得られた画像からビアホール底部の壁面からの最大スミア長を測定した。スミア除去性は、以下の基準に従って評価した。
【0151】
10)絶縁性
スルーホール絶縁信頼性は、上記のプリント配線板のスルーホール壁間を0.1mmで、印加電圧5.5V、温度130℃湿度85%の条件で、連続測定で評価した。なお、絶縁抵抗値が106Ω未満となる時点で終了とした。
【0152】
11)燃焼性
上記で説明した金属箔付き積層板の製造工程において、上記プリプレグを5枚重ね、その両面に12μmの銅箔を重ねて、圧力3MPa、温度225℃で2時間加熱加圧成形し、厚さ0.35mmの両面銅張積層板を得た。上記で得られた両面銅張積層板の銅箔をエッチングし、UL-94規格に従い垂直法により測定した。
【0153】
【0154】
【符号の説明】
【0155】
10 キャリア付樹脂膜
20 樹脂膜
30 キャリア基材
50 カバーフィルム
100 コア層
102 絶縁層
104 ビアホール
106 無電解金属めっき膜
108 金属層
200 半導体パッケージ
202 無電解金属めっき膜
204 レジスト
206 開口部
208 電解金属めっき層
210 開口部
220 金属層
230 ソルダーレジスト層
240 半導体素子
250 半田バンプ
260 封止材層