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特許7476575構造体、形状可変立体構造物、構造体の変形方法、及び、形状可変立体構造物の変形方法
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  • 特許-構造体、形状可変立体構造物、構造体の変形方法、及び、形状可変立体構造物の変形方法 図1
  • 特許-構造体、形状可変立体構造物、構造体の変形方法、及び、形状可変立体構造物の変形方法 図2
  • 特許-構造体、形状可変立体構造物、構造体の変形方法、及び、形状可変立体構造物の変形方法 図3
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  • 特許-構造体、形状可変立体構造物、構造体の変形方法、及び、形状可変立体構造物の変形方法 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】構造体、形状可変立体構造物、構造体の変形方法、及び、形状可変立体構造物の変形方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/34 20060101AFI20240423BHJP
   E04B 7/08 20060101ALI20240423BHJP
   E04B 1/32 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
E04B1/34 Z
E04B7/08
E04B1/32 102Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020036250
(22)【出願日】2020-03-03
(65)【公開番号】P2021139137
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-01-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2019年10月31日付で、弾 健太郎、山室 涼平、大楠 海加、山下 勇紀、林山 赳大が、第14回コロキウム構造形態の解析と創生2019にて公開。
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】山室 涼平
(72)【発明者】
【氏名】弾 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】大楠 海加
(72)【発明者】
【氏名】山下 勇紀
(72)【発明者】
【氏名】林山 赳大
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-291585(JP,A)
【文献】特開平01-102145(JP,A)
【文献】特開平03-084142(JP,A)
【文献】米国特許第07228671(US,B1)
【文献】登録実用新案第3195508(JP,U)
【文献】特開平10-306539(JP,A)
【文献】国際公開第2005/026461(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/34
E04B 7/08
E04B 1/32
E04B 1/343
E04B 7/16
F16S 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2個のパネル部材と、
前記2個のパネル部材を連結する線状部材と、
前記線状部材の長さを調整可能な調整装置と、を備え、
前記調整装置は、前記線状部材の長さの調整により、前記2個のパネル部材の相互間の距離を設定可能である、構造体
【請求項2】
前記2個のパネル部材は、当接して互いの圧縮力を負担する圧縮材であり、
前記線状部材は、前記2個のパネル部材の相互間の引張力を負担する引張材である、請求項1に記載の構造体
【請求項3】
連接されている3個以上のパネル部材と、
前記3個以上のパネル部材の相互間を連係する複数の線状部材と、
前記線状部材の長さを調整可能な調整機構と、を備え、
各線状部材は、隣接する2個の前記パネル部材を連結し、
前記調整機構は、前記3個以上のパネル部材の相互間を連係する前記複数の線状部材の長さの調整により、前記3個以上のパネル部材の相互間の距離を設定可能である、形状可変立体構造物。
【請求項4】
前記3個以上のパネル部材は、隣接する任意の2個のパネル部材が相互に当接することで、互いに圧縮力を負担可能である、請求項3に記載の形状可変立体構造物。
【請求項5】
前記線状部材は、前記3個以上のパネル部材のうち隣接する少なくとも2個のパネル部材が相互に離間する離間状態となることで、前記隣接する少なくとも2個のパネル部材の相互間の引張力を負担可能である、請求項4に記載の形状可変立体構造物。
【請求項6】
前記パネル部材のパネル厚み方向に沿う断面視において、一方の表面の辺長は、他方の表面の辺長よりも短い、請求項4又は5に記載の形状可変立体構造物。
【請求項7】
構造体の変形方法であって、
前記構造体は、
2個のパネル部材と、
前記2個のパネル部材を連結する線状部材と、
前記線状部材の長さを調整可能な調整装置と、を備え、
前記調整装置により、前記線状部材の長さを調整することで、前記2個のパネル部材の相互間の距離を変化させる、変形方法。
【請求項8】
形状可変立体構造物の変形方法であって、
前記形状可変立体構造物は、
連接されている3個以上のパネル部材と、
前記3個以上のパネル部材の相互間を連係する複数の線状部材と、
前記線状部材の長さを調整可能な調整機構と、を備え、
各線状部材は、隣接する2個の前記パネル部材を連結し、
前記調整機構は、前記3個以上のパネル部材の相互間を連係する前記複数の線状部材の長さを調整することにより、前記3個以上のパネル部材の相互間の距離を変化させる、変形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体、形状可変立体構造物、構造体の変形方法、及び、形状可変立体構造物の変形方法、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、圧縮材と引張材とで構成されるテンセグリティ構造が知られている。特許文献1には、この種のテンセグリティ構造として、屋根架構として有効に適用可能なテンセグリッド構造が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載のテンセグリッド構造は、圧縮材を枠状に組んでなるフレーム体の内側に束材を配し、この束材の両端とフレーム体の各頂点との間にケーブルを張設してなるグリッドユニットを、構成要素とするものである。また、特許文献1に記載のテンセグリッド構造では、グリッドユニットのフレーム体の頂点どうしが互いに連結されることにより、それらフレーム体および各フレーム体間に形成される空隙を升目とするグリッドフレームが構成されている。更に、特許文献1に記載のテンセグリッド構造では、隣接するグリッドユニットの束材どうしが引張材により連結されており、この引張材には張力が付与されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-54492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えばドームなどの施設では、季節や天候等に対応するために、開閉式の屋根が採用される場合がある。特許文献1に記載のテンセグリッド構造が適用された屋根架構では、軽量の屋根架構を構築可能である。しかしながら、構築後に形状を変形させることができず、開閉可能な屋根架構を実現できない。また、屋根に限らず、軽量で、かつ、変形可能な立体構造物を実現可能とする構造体が望まれている。
【0006】
本発明は、軽量で、かつ、変形可能な立体構造物を実現可能な構造体、及び、この構造体が適用された形状可変立体構造物、を提供することを目的とする。また、本発明は、構造体の変形方法、及び、形状可変立体構造物の変形方法、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様としての構造体は、2個のパネル部材と、前記2個のパネル部材を連結する線状部材と、前記線状部材の長さを調整可能な調整装置と、を備え、前記調整装置は、前記線状部材の長さの調整により、前記2個のパネル部材の相互間の距離を設定可能である。
【0008】
本発明の1つの実施形態として、前記2個のパネル部材は、当接して互いの圧縮力を負担する圧縮材であり、前記線状部材は、前記2個のパネル部材の相互間の引張力を負担する引張材である。
【0009】
本発明の第2の態様としての形状可変立体構造物は、連接されている3個以上のパネル部材と、前記3個以上のパネル部材の相互間を連係する複数の線状部材と、前記線状部材の長さを調整可能な調整機構と、を備え、各線状部材は、隣接する2個の前記パネル部材を連結し、前記調整機構は、前記3個以上のパネル部材の相互間を連係する前記複数の線状部材の長さの調整により、前記3個以上のパネル部材の相互間の距離を設定可能である。
【0010】
本発明の1つの実施形態として、前記3個以上のパネル部材は、隣接する任意の2個のパネル部材が相互に当接することで、互いに圧縮力を負担可能である。
【0011】
本発明の1つの実施形態として、前記線状部材は、前記3個以上のパネル部材のうち隣接する少なくとも2個のパネル部材が相互に離間する離間状態となることで、前記隣接する少なくとも2個のパネル部材の相互間の引張力を負担可能である。
【0012】
本発明の1つの実施形態として、前記パネル部材のパネル厚み方向に沿う断面視において、一方の表面の辺長は、他方の表面の辺長よりも短い。
【0013】
本発明の第3の態様としての構造体の変形方法は、構造体の変形方法であって、前記構造体は、2個のパネル部材と、前記2個のパネル部材を連結する線状部材と、前記線状部材の長さを調整可能な調整装置と、を備え、前記調整装置により、前記線状部材の長さを調整することで、前記2個のパネル部材の相互間の距離を変化させる。
【0014】
本発明の第4の態様としての形状可変立体構造物の変形方法は、形状可変立体構造物の変形方法であって、前記形状可変立体構造物は、連接されている3個以上のパネル部材と、前記3個以上のパネル部材の相互間を連係する複数の線状部材と、前記線状部材の長さを調整可能な調整機構と、を備え、各線状部材は、隣接する2個の前記パネル部材を連結し、前記調整機構は、前記3個以上のパネル部材の相互間を連係する前記複数の線状部材の長さを調整することにより、前記3個以上のパネル部材の相互間の距離を変化させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、軽量で、かつ、変形可能な立体構造物を実現可能な構造体、及び、この構造体が適用された形状可変立体構造物、を提供することができる。また、本発明によれば、構造体の変形方法、及び、形状可変立体構造物の変形方法、を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態としての立体構造体の概要を示す概要図であり、図1(a)は、2個のパネル部材の当接状態を示し、図1(b)は2個のパネル部材の離間状態を示している。
図2】本発明の一実施形態としての形状可変立体構造物の鉛直断面を模式的に示す図である。
図3図2に示す形状可変立体構造物が図2に示す状態から変形した状態を示す図である。
図4図2に示す形状可変立体構造物が図3に示す状態から更に変形した状態を示す図である。
図5】本発明の一実施形態としての形状可変立体構造物を示す斜視図である。
図6図5に示す形状可変立体構造物が図5に示す状態から変形した状態を示す図である。
図7図5に示す形状可変立体構造物が図6に示す状態から更に変形した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る立体構造体、形状可変立体構造物、立体構造体の変形方法、及び、形状可変立体構造物の変形方法、の実施形態について図面を参照して例示説明する。各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。
【0018】
図1は、本発明に係る立体構造体の一実施形態としての立体構造体1の概要を示す概要図である。図1に示すように、立体構造体1は、2個のパネル部材2a、2bと、線状部材3と、調整装置4と、を備える。詳細は後述するが、図1(a)、図1(b)は、立体構造体1の異なる形態を示している。以下、複数のパネル部材を特に区別することなく記載する場合は単に「パネル部材2」と記載する。
【0019】
本実施形態のパネル部材2は、パネル厚み方向Aで見た平面視(以下、単に「平面視」と記載する。)で、三角形状、四角形状などの多角形状の外形を有する。2個のパネル部材2a、2bの平面視の外形は、異なる形状の多角形状であってもよい。また、2個のパネル部材2a、2bは、互いの側端面2a1、2b1が対向するように、2個のパネル部材2a、2bのパネル面内方向Bに配設されている。本実施形態では、2個のパネル部材2a、2bの平面状の側端面2a1、2b1同士が対向して平行に延在するように配設されているが、この構成に限られない。2個のパネル部材2a、2bの側端面の形状は平面状でなくてもよい。また、2個のパネル部材2a、2bの側端面同士が平行に延在していなくてもよい。
【0020】
線状部材3は、2個のパネル部材2a、2bを連係している。より具体的に、本実施形態の線状部材3は、2個のパネル部材2a、2bを連結している。2個のパネル部材2a、2bを「連係する」とは、2個のパネル部材2a、2bを相互作用が生じるように関係付けることを意味する。したがって、2個のパネル部材2a、2bを「連結する」とは、2個のパネル部材2a、2bを「連係する」の一態様であり、「連係」は「連結」に限られない。
【0021】
立体構造体1は、2個のパネル部材2a、2bを連係する1本以上の線状部材3を備えればよい。したがって、立体構造体1は、2個のパネル部材2a、2bを連係する複数の線状部材3を備えてもよい。
【0022】
調整装置4は、線状部材3の長さを調整可能である。調整装置4は、線状部材3の長さを調整することにより、2個のパネル部材2a、2bの相互間の距離を変化させることができる。つまり、調整装置4は、線状部材3の長さの調整により、2個のパネル部材2a、2bの相互間の距離を設定可能である。より具体的に、本実施形態の調整装置4は、2個のパネル部材2a、2bに連結されている線状部材3の長さを調整可能である。これにより、2個のパネル部材2a、2bの対向する側端面2a1、2b1間の距離を変動させることができる。
【0023】
このような立体構造体1を用いることで、軽量で、かつ、変形可能な立体構造物を構築することが可能となる。
【0024】
また、本実施形態の調整装置4は、線状部材3の長さを調整することにより、2個のパネル部材2a、2bの相互間の距離を任意に設定可能である。具体的に、本実施形態の調整装置4は、線状部材3の長さを調整することにより、2個のパネル部材2a、2bが相互に当接する当接状態と、2個のパネル部材2a、2bが相互に離間する離間状態と、の間で2個のパネル部材2a、2bの相互間の距離を変化させることができる。図1(a)は、上述の当接状態を示している。図1(b)は、上述の離間状態を示している。
【0025】
本実施形態において、2個のパネル部材2a、2bは、当接して互いの圧縮力を負担する圧縮材である。また、本実施形態において、線状部材3は、2個のパネル部材2a、2bの相互間の引張力を負担する引張材である。このようなパネル部材2及び線状部材3とすることで、より軽量な立体構造物を構築可能な立体構造体1を実現できる。
【0026】
圧縮材としてのパネル部材2は、例えば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等の繊維強化プラスチック、木材などにより構成可能である。また、引張材としての線状部材3は、例えば、鋼製のワイヤ、炭素繊維を含む複合材からなる線状部材等、により構成可能である。
【0027】
調整装置4は、例えば、巻き取り機により構成される。そのため、本実施形態の調整装置4は、第1ローラ4aと、第2ローラ4bと、駆動源4cと、制御部4dと、を備える。
【0028】
第1ローラ4aは、一方のパネル部材2aに回転可能に固定されている。第1ローラ4aの回転中心軸は、一方のパネル部材2aのパネル面内方向Bであって、かつ、2個のパネル部材2a、2bの離間方向(本実施形態では2個のパネル部材2の側端面2a1、2b1同士の対向方向であり、図1図2の左右方向)と直交する方向に延在している。第1ローラ4aは、回転中心軸周りの周方向の片側に回転することで線状部材3の一端側を巻き取り可能である。逆に、第1ローラ4aは、回転中心軸周りの周方向の反対側に回転することで、巻き付いている線状部材3を繰り出し可能である。
【0029】
第2ローラ4bは、他方のパネル部材2bに回転可能に固定されている。第2ローラ4bの回転中心軸は、他方のパネル部材2bのパネル面内方向Bであって、かつ、2個のパネル部材2a、2bの離間方向と直交する方向に延在している。換言すれば、本実施形態において、第1ローラ4aの回転中心軸及び第2ローラ4bの回転中心軸は略平行している。第2ローラ4bは、回転中心軸周りの周方向の片側に回転することで線状部材3の他端側を巻き取り可能である。逆に、第2ローラ4bは、回転中心軸周りの周方向の反対側に回転することで、巻き付いている線状部材3を繰り出し可能である。
【0030】
駆動源4cは、上述の第1ローラ4a及び第2ローラ4bに回転力を付与する。駆動源4cは、例えば、第1ローラ4a及び第2ローラ4bを周方向の両側に回転駆動可能な電動モータとすることができる。
【0031】
制御部4dは、上述の駆動源4cによる第1ローラ4a及び第2ローラ4bの回転駆動を制御する。制御部4dは、例えば、1つ以上のプロセッサを含む。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の汎用のプロセッサ、特定の処理に特化した専用のプロセッサ等であってよい。
【0032】
本実施形態では調整装置4として巻き取り機を用いているが、2個のパネル部材2a、2bの間で線状部材3の長さを調整可能な構成であれば、巻き取り機に限定されない。但し、パネル部材2により支持可能な小型の調整装置4とすることが好ましく、この観点では巻き取り機を採用することが好ましい。また、調整装置4として巻き取り機を用いる場合は、可撓性を有する線状部材3を用いる。このようにすることで、線状部材3は、第1ローラ4a及び第2ローラ4bにより巻き取り可能となる。
【0033】
次に、図1に示す立体構造体1を構造単位として形成される形状可変立体構造物100の一例について説明する。図2図4は、形状可変立体構造物100の一例としての屋根の鉛直断面を模式的に示す図である。図2に示す形状可変立体構造物100は、連接されている3個以上(本例では9個)のパネル部材2と、これら連接されている3個以上のパネル部材2の相互間を連係する線状部材3と、線状部材3の長さを調整可能な調整機構5と、を備える。
【0034】
連接されている3個以上のパネル部材2の相互間は、1本以上の線状部材3により連係されていればよい。つまり、3個以上(本例では9個)のパネル部材2の相互間は、1本の線状部材3により連係されていてもよく、複数の線状部材3により連係されていてもよい。3個以上(本例では9個)のパネル部材2の相互間が、1本の線状部材3により連係されている場合とは、例えば、1本の線状部材3が、連接されている3個以上のパネル部材2の両端の2個のパネル部材2に連結されている場合が挙げられる。このような線状部材3は、両端の2個のパネル部材2に挟まれるパネル部材2には連結されておらず、形成されている挿通孔を通じて単に挿通されている構成とすればよい。また、3個以上(本例では9個)のパネル部材2の相互間が、複数の線状部材3により連係されている場合とは、例えば、本例のように、各線状部材3が、隣接する2個のパネル部材2を連結している場合が挙げられる。このように、線状部材3の本数、及び、1本の線状部材3により連係されるパネル部材2の個数は、特に限定されない。
【0035】
また、調整機構5は、例えば、隣接する2個のパネル部材2に対して使用される上述の調整装置4(図1図2参照)の集合体とすることができるが、この構成に限られない。調整機構5は、例えば、複数の線状部材3の長さを纏めて制御可能な1つの制御部を備えてもよい。また、調整機構5は、例えば、別々の線状部材3を巻き取り可能又は繰り出し可能な複数のローラを纏めて回転駆動できる1つの駆動源を備えてもよい。
【0036】
図2に示すように、形状可変立体構造物100では、パネル部材2の平面状の側端面が、別のパネル部材2の平面状の側端面と対向するように配置されている。より具体的に、本例の形状可変立体構造物100では、全体が湾曲形状の屋根を形成するように、複数(本例では9個)のパネル部材2がパネル面内方向B(図1参照)に連接されている。
【0037】
図2図4に示すように、本例の調整機構5は、連接されている3個以上のパネル部材2の一例としての3個のパネル部材2c、2d、2eの相互間を連係する2本の線状部材3cd、3deの長さを調整できる。これにより、3個のパネル部材2c、2d、2eの相互間の距離を任意に設定可能である。ここでは、説明の便宜上、「連接されている3個以上のパネル部材」を、図2図4に示す3個のパネル部材2c、2d、2eにより例示説明するが、連接されている3個以上のパネル部材2であれば、連接されている別の3個以上のパネル部材2であっても同様であり、ここで例示する3個のパネル部材2c、2d、2eに限られるものではない。
【0038】
また、本例の形状可変立体構造物100は、連接されている3個のパネル部材2c、2d、2eのうち隣接する2個のパネル部材2を連結する2本の線状部材3cd、3deを備えるが、この構成に限られない。上述したように、連接されている3個のパネル部材2を連係する線状部材3の本数、及び、1本の線状部材3により連係されるパネル部材2の個数は、特に限定されない。以下、複数の線状部材を特に区別することなく記載する場合は、単に「線状部材3」と記載する。
【0039】
本例の調整機構5は、連接されている3個のパネル部材2c、2d、2eの相互間を連係する2本の線状部材3cd、3deの長さを調整できる。これにより、3個のパネル部材2c、2d、2eの相互間の距離を任意に設定できる。具体的に、図2に示す調整機構5は、図2で湾曲状の屋根を形成する全てのパネル部材2のうち連接されている3個のパネル部材2c、2d、2eの相互間を連係する2本の線状部材3cd、3deの長さを調整することができる。これにより、3個のパネル部材2c、2d、2eの隣接する任意の2個のパネル部材2が相互に当接する当接状態と、3個のパネル部材2c、2d、2eのうち隣接する少なくとも2つのパネル部材2が相互に離間する離間状態と、の間で、3個のパネル部材2c、2d、2eの相互間の距離を変化させることができる。図2図3では当接状態を示し、図4では離間状態を示している。
【0040】
図2に示す3個のパネル部材2c、2d、2eは、当接して互いの圧縮力を負担している。その一方で、図2に示す3個のパネル部材2c、2d、2eの相互間を連係する2本の線状部材3cd、3deは、3個のパネル部材2c、2d、2eの相互間で引張力を負担していない、又は、負担する引張力が極めて小さい。したがって、形状可変立体構造物100がこのような状態でも構造的に安定するように、パネル部材2は、隣接するパネル部材2と当接して互いの圧縮力を負担する圧縮材であることが好ましい。
【0041】
図3は、図2に示す状態から、2本の線状部材3cd、3deが繰り出された状態を示している。但し、図3では、依然として3個のパネル部材2c、2d、2eの隣接する任意の2個のパネル部材2が相互に当接する当接状態を維持している。したがって、図3に示す3個のパネル部材2c、2d、2eについても、当接して互いの圧縮力を負担している。しかしながら、図3に示す2個のパネル部材2d、2eは、2本の線状部材3cd、3deが繰り出されたことで、自重により垂れ下がっている。そのため、図3に示す3個のパネル部材2c、2d、2eは、図2に示す状態よりも負担する圧縮力が小さくなっている。その一方で、図3に示す3個のパネル部材2c、2d、2eの相互間を連係する2本の線状部材3cd、3deには、自重により垂れ下がった2個のパネル部材2d、2eにより、図2に示す状態よりも大きな引張力が負荷される。つまり、図3に示す2本の線状部材3cd、3deは、図2に示す状態よりも負担する引張力が大きくなっている。
【0042】
図4は、図3に示す状態から、2本の線状部材3cd、3deが更に繰り出された状態を示している。図4では、3個のパネル部材2c、2d、2eが相互に離間する離間状態を示している。したがって、図4に示す3個のパネル部材2c、2d、2eは、互いに当接しておらず、互いの圧縮力を負担していない。その一方で、図4に示す3個のパネル部材2c、2d、2eの相互間を連係する2本の線状部材3cd、3deには、図2及び図3に示す状態よりも大きな引張力が負荷される。つまり、図4に示す2本の線状部材3cd、3deは、図2及び図3に示す状態よりも負担する引張力が大きくなっている。そのため、形状可変立体構造物100がこの状態でも構造的に安定するように、線状部材3は、パネル部材2の相互間の引張力を負担する引張材により構成されていることが好ましい。
【0043】
このように、図2図4に示す形状可変立体構造物100では、変形に伴って、各部材が負担する荷重の割合が変動するように構成されている。より具体的に、図2図4に示す形状可変立体構造物100は、主にパネル部材2の圧縮力のみで構造的に安定する形状(図2参照)と、パネル部材2の圧縮力のみでは構造的に安定せず、線状部材3による引張力を利用することで構造的に安定する形状(図3図4参照)と、の間で変形することができる。そのため、上述したように、パネル部材2を圧縮材とし、線状部材3を引張材とすることで、形状可変立体構造物100が上述のように変形しても、形状可変立体構造物100を、両形状において構造的に安定させることができる。つまり、パネル部材2及び線状部材3を用いた軽量な構成で、かつ、変形可能な形状可変立体構造物100を実現することができる。
【0044】
なお、図2図4では、説明の便宜上、3個のパネル部材2c、2d、2eの相互間のみを変形させているが、この構成に限られない。つまり、3個のパネル部材2c、2d、2eに代えて又は加えて、別の連接されている3個以上のパネル部材2の相互間を変形させてもよい。
【0045】
次に、図2図4に鉛直断面が模式的に示される形状可変立体構造物100の一構成例について、図5図7を参照して説明する。図5は、形状可変立体構造物100の一構成例としてのドーム屋根を示す斜視図である。図5に示す形状可変立体構造物100の構造単位は、平面視の外形が三角形状の2個のパネル部材2と、この2個のパネル部材2を連係する線状部材3と、線状部材3の長さを調整する調整装置4(図1図2参照)と、で構成される立体構造体1である。図5では、説明の便宜上、調整装置4が省略されている。
【0046】
図5に示す形状可変立体構造物100としてのドーム屋根では、隣接する2個のパネル部材2が、2本の線状部材3により連結されているが、この構成に限られない。上述したように、隣接する2個のパネル部材2は、1本のみの線状部材3により連結されていてもよく、3本以上の線状部材3により連結されていてもよい。また、調整装置4(図1図2参照)は、隣接する2個のパネル部材2を連結する1本の線状部材3に対して1つ設けられてもよく、隣接する2個のパネル部材2を連結する複数の線状部材3に対して1つ設けられてもよい。以下、説明の便宜上、図5に示す隣接する2個のパネル部材2を連結する2本の線状部材3を纏めて「1組の線状部材3」と記載する。
【0047】
また、図5に示す形状可変立体構造物100は、連接されている3個以上のパネル部材2と、これら3個以上のパネル部材2の相互間を連係する線状部材3と、線状部材3の長さを調整可能な調整機構5と、を備える。図5では、説明の便宜上、調整機構5が省略されている。
【0048】
上述したように、図5に示す各線状部材3は、隣接する2個のパネル部材2を連結しているが、この構成に限られない。各線状部材3は、連接されている3個以上のパネル部材2を連係していてもよい。また、調整機構5は、例えば、各線状部材3の長さを調整する上述の調整装置4(図1図2参照)の集合体とすることができるが、この構成に限られない。調整機構5は、例えば、複数の線状部材3の長さを纏めて制御可能な1つの制御部を備えてもよい。また、調整機構5は、例えば、別々の線状部材3を巻き取り可能又は繰り出し可能な複数のローラを纏めて回転駆動できる1つの駆動源を備えてもよい。
【0049】
図5に示す形状可変立体構造物100では、パネル部材2の平面状の側端面を、別のパネル部材2の平面状の側端面と対向するように配置していくことで、複数のパネル部材2がパネル面内方向B(図1参照)に連接されており、全体としてドーム屋根を形成している。パネル部材2の平面視の外形を三角形状とすることで、各パネル部材2を小型化でき、ドーム屋根全体の大きさ及び形状の設計自由度を高めることができる。更に、図5に示す形状可変立体構造物100は、2種類のみのパネル部材2により構成されている。2種類のうち一方のパネル部材2は、平面視において、所定の寸法で構成された二等辺三角形の外形を有する。2種類のうち他方のパネル部材2は、平面視において、所定の寸法で構成された正三角形の外形を有する。このように、2種類のみのパネル部材2で形状可変立体構造物100を構成することで、多種のパネル部材を用意しなくてよい。そのため、形状可変立体構造物100を構成するパネル部材2の製造効率を高めることができる。
【0050】
本例の調整機構5は、連接されている3個以上のパネル部材2の一例としての12個のパネル部材2c、2d、2e、2f、2g、2h、2i、2j、2k、2l、2m、2n(以下、「2c~2n」と記載する。)の相互間を連係する12組の線状部材3cd、3de、3ef、3fg、3gh、3hc、3ci、3dj、3ek、3fl、3gm、3hn(以下、「3cd~3hn」と記載する。)の長さを調整可能である。12組の線状部材3cd~3hnの長さを調整することで、12個のパネル部材2c~2nの相互間の距離を任意に設定することができる。ここでは、説明の便宜上、「連接されている3個以上のパネル部材」を、図5に示す連接されている12個のパネル部材2c~2nにより例示説明するが、連接されている3個以上のパネル部材2であれば、連接されている別の3個以上のパネル部材2であっても同様であり、ここで例示する12個のパネル部材2c~2nに限られるものではない。
【0051】
図5に示す調整機構5は、ドーム屋根を形成する全て(本例では40個)のパネル部材2のうち連接されている12個のパネル部材2c~2nの相互間を連係する12組の線状部材3cd~3hnの長さを調整する。これにより、12個のパネル部材2c~2nの隣接する任意の2個のパネル部材2が相互に当接する当接状態と、12個のパネル部材2c~2nのうち隣接する少なくとも2つのパネル部材2が相互に離間する離間状態と、の間で、12個のパネル部材2c~2nの相互間の距離を変化させることができる。この変化の詳細は後述する(図6図7参照)。
【0052】
ここで、図5に示すように、形状可変立体構造物100は、12個のパネル部材2c~2nを一部のパネル部材2として含む複数(本例では40個)のパネル部材2を備える。また、図5に示す状態において、形状可変立体構造物100は、複数のパネル部材2のうち隣接する任意の2個のパネル部材2が相互に当接することで、シェル構造が形成されている。換言すれば、図5に示す状態において、形状可変立体構造物100は、各パネル部材2が圧縮力を負担することで保持されており、線状部材3は実質的に引張力を負担していない。そのため、各パネル部材2は、隣接するパネル部材2と当接して互いの圧縮力を負担する圧縮材であることが好ましい。
【0053】
図6図7は、図5に示す形状可変立体構造物100としてのドーム屋根の変形の一例を示す図である。
【0054】
図6において、12個のパネル部材2c~2nは、図5に示す状態と同様、隣接する任意の2個のパネル部材2が相互に当接する当接状態にある。しかしながら、図6において、12組の線状部材3cd~3hnは、図5に示す状態よりも繰り出されている。これにより、図6に示す形状可変立体構造物100では、図5に示す状態と比較して、12個のパネル部材2c~2nのうち中央の6個のパネル部材2c~2hが自重により落ち込むように変形している。この変形により、パネル部材2c~2nの相互間には、部分的な間隙が生じて、相互間の接触領域が小さくなる(図3参照)。これにより、パネル部材2c~2nが負担する圧縮力は、図5に示す状態よりも小さくなる。その一方で、12組の線状部材3cd~3hnが負担する引張力は大きくなる。つまり、図6に示す12個のパネル部材2c~2nは、図5に示す状態よりも負担する圧縮力が小さくなっている。その一方で、図6に示す12組の線状部材3cd~3hnには図5に示す状態よりも大きな引張力が負荷される。
【0055】
図7において、12組の線状部材3cd~3hnは、図6に示す状態よりも更に繰り出されている。これにより、図7に示す12個のパネル部材2c~2nのうち中央の6個のパネル部材2c~2hは、自重により更に落ち込み、相互に離間している。つまり、図7に示す12個のパネル部材2c~2nは、隣接する少なくとも2つのパネル部材2(本例では6個のパネル部材2c~2h)の相互間が離間する離間状態となる。つまり、図7に示す6個のパネル部材2c~2hは、互いに当接しておらず、実質的に互いの圧縮力を負担していない。その一方で、図7に示す12個のパネル部材2c~2nの相互間を連係する12組の線状部材3cd~3hnには、図5及び図6に示す状態よりも大きな引張力が負荷される。つまり、図7に示す12組の線状部材3cd~3hnは、図5及び図6に示す状態よりも負担する引張力が大きくなっている。そのため、線状部材3は、12個のパネル部材2c~2nの相互間の引張力を負担する引張材により構成されていることが好ましい。
【0056】
このように、12個のパネル部材2c~2nを一部のパネル部材2として含む複数(本例では40個)のパネル部材2は、隣接する任意の2つのパネル部材2の相互間が当接する当接状態となることで、上述のシェル構造(図5参照)を形成することができる。
【0057】
そして、このシェル構造(図5参照)は、12個のパネル部材2c~2nのうち6個の2c~2hの相互間が離間して離間状態となることで、12組の線状部材3cd~3hnの引張力で支持される6個のパネル部材2c~2hを含む別構造(図7参照)に変形する。なお、ここで言う「線状部材3の引張力で支持されるパネル部材2」とは、線状部材3の引張力のみで自重が支持されるパネル部材2に限られず、他のパネル部材2からの圧縮力に加えて線状部材3の引張力によって自重が支持されるパネル部材2をも含む意味である。したがって、図7に示す相互に離間している6個のパネル部材2c~2hは、12組の線状部材3cd~3hnの引張力と、6個のパネル部材2c~2hの周囲に位置する6個のパネル部材2i~2nの圧縮力と、により支持されおり、上述の「線状部材3の引張力で支持されるパネル部材2」に該当する。
【0058】
以上のように、図5図7に示す形状可変立体構造物100では、変形に伴って、各部材が負担する荷重の割合が変動するように構成されている。より具体的に、図5図7に示す形状可変立体構造物100は、主にパネル部材2の圧縮力のみで構造的に安定するシェル構造(図5参照)と、パネル部材2の圧縮力のみでは構造的に安定せず、線状部材3による引張力を利用することで構造的に安定する別構造(図6図7参照)と、の間を変形することができる。そのため、上述したように、パネル部材2を圧縮材とし、線状部材3を引張材とすることで、形状可変立体構造物100が上述のように変形しても、形状可変立体構造物100を、両形状において構造的に安定させることができる。つまり、パネル部材2及び線状部材3を用いた軽量な構成で、かつ、変形可能な形状可変立体構造物100を実現することができる。
【0059】
なお、図5図7では、説明の便宜上、12個のパネル部材2c~2nの相互間のみを変形させているが、この構成に限られない。つまり、12個のパネル部材2c~2nに代えて又は加えて、別の連接されている3個以上のパネル部材2の相互間を変形させてもよい。
【0060】
また、図5図7では、12個のパネル部材2c~2nを一部のパネル部材2として含む複数のパネル部材2が、シェル構造を形成可能な例を示したが、この構成に限られない。連接されている3個以上のパネル部材2が、隣接する任意の2個のパネル部材が相互に当接することで、互いに圧縮力を負担可能な構成であれば、シェル構造以外の構造であってもよい。このような構造において、引張部材3は、連接されている3個以上のパネル部材2のうち隣接する少なくとも2個のパネル部材2が相互に離間する離間状態となることで、前記隣接する少なくとも2個のパネル部材2の相互間の引張力を負担可能であればよい。
【0061】
また、上述したように、隣接するパネル部材2が離間することで、形状可変立体構造物100に開口20(図7参照)を形成することができる。このような開口20を通じて、形状可変立体構造物100の内部に風や光を採り込むことができる。また、図5図7に示すように、形状可変立体構造物100としての屋根に開口20を形成する際に一部のパネル部材2(図5図7の例では6個のパネル部材2c~2h)を鉛直方向に移動させることができる。つまり、形状可変立体構造物100としての屋根の一部について天井高さを変動させることができる。この天井高さの変動を、例えばコンサート等における演出に利用してもよい。
【0062】
また、形状可変立体構造物100は、図7に示す状態から図5に示す状態へ再変形することも可能である。具体的には、調整機構5を構成する各調整装置4により、各線状部材3を巻き取ることで、図7に示す状態から図5に示す状態へと変形させることができる。つまり、図5図7に示す形状可変立体構造物100により、開閉式のドーム屋根を構成することができる。
【0063】
なお、図5図7に示す形状可変立体構造物100におけるパネル部材2の、パネル厚み方向A(図1参照)に沿う断面は、図2図4に示すパネル部材2の断面と同様の断面形状となる。つまり、図2に示すように、シェル構造(図5参照)の内面を構成する一方の表面11の辺長が、シェル構造(図5参照)の外面を構成する他方の表面12の辺長よりも短い。このようにすることで、シェル構造において隣接する2つのパネル部材2の接触領域を広く確保し易い。そのため、パネル部材2が局所的な圧縮力により破損することを抑制できる。
【0064】
なお、図5に示すシェル構造の形状可変立体構造物100は、単に線状部材3を繰り出すように制御しても、隣接するパネル部材2の端面同士が当接した状態が維持されている限り、図6及び図7に示す変形を開始しない。そのため、形状可変立体構造物100は、形状可変立体構造物100の変形を開始させるトリガー機構を有することが好ましい。
【0065】
トリガー機構は、例えば、パネル厚み方向A及びパネル面内方向Bに収縮可能に構成された一部のパネル部材2を収縮させることができるパネル収縮機構としてもよい。ここでは、図5図7に示す形状可変立体構造物100のパネル部材2c、2e、2gが、パネル厚み方向A(図1参照)及びパネル面内方向B(図1参照)に収縮可能な構成であるとした上で、パネル収縮機構について例示説明する。トリガー機構としてのパネル収縮機構は、例えば、形状可変立体構造物100を図5に示す状態から図6及び図7に示す状態へと変形させる際は、パネル部材2c、2e、2gを、パネル厚み方向A(図1参照)及びパネル面内方向B(図1参照)に収縮変形させる。これにより、収縮変形したパネル部材2c、2e、2gに隣接するパネル部材2d、2f、2hは、パネル部材2c、2e、2gの側端面との間の係合が解除され、図6及び図7に示すように下方に落ち込むように移動することが可能となる。このように、パネル部材2d、2f、2hを先に落ち込ませることで、パネル収縮機構によって収縮させたパネル部材2c、2e、2gについても、図6及び図7に示すように、パネル部材2d、2f、2hの側端面に干渉することなく、パネル部材2d、2f、2hと同様に、下方に落ち込ませるように移動させることが可能となる。なお、パネル収縮機構は、パネル部材2d、2f、2hが下方に落ち込むように移動した後で、パネル部材2d、2f、2hを収縮状態から元の状態へと復帰させてもよい。また、ここでは、パネル部材2c、2e、2gが収縮可能な構成として説明しているが、別のパネル部材2を収縮可能に構成してもよい。
【0066】
また、トリガー機構は、上述のパネル収縮機構に限られない。トリガー機構は、例えば、一部のパネル部材2をパネル厚み方向A(図1参照)でシェル構造の外側に向かって移動可能なパネル移動機構としてもよい。トリガー機構としてのパネル移動機構は、例えば、形状可変立体構造物100を図5に示す状態から図6及び図7に示す状態へと変形させる際は、一部のパネル部材2c、2e、2gを、これらパネル部材2c、2e、2gのパネル厚み方向A(図1参照)で、シェル構造の外側に向かって移動させる。これにより、移動した一部のパネル部材2c、2e、2gに隣接するパネル部材2d、2f、2hは、パネル部材2c、2e、2gの側端面との間の係合が解除され、図6及び図7に示すように下方に落ち込むように移動することが可能となる。このように、パネル部材2d、2f、2hを先に落ち込ませることで、パネル移動機構によってシェル構造の外側に退避させたパネル部材2c、2e、2gについても、図6及び図7に示すように、パネル部材2d、2f、2hの側端面に干渉することなく、パネル部材2d、2f、2hと同様に、下方に落ち込ませるように移動させることが可能となる。つまり、このようなトリガー機構を設けることで、図5に示すシェル構造を形成する形状可変立体構造物100であっても、図6図7に示すような変形を生じさせることができる。なお、形状可変立体構造物100の変形を可能にするトリガー機構であれば、その構成は特に限定されず、上述のパネル移動機構に限られない。
【0067】
本発明に係る立体構造体、形状可変立体構造物、立体構造体の変形方法、及び、形状可変立体構造物の変形方法は、上述した具体的な構成及び方法に限られず、特許請求の範囲を逸脱しない限り、種々の変形・変更が可能である。上述した実施形態で示す各線状部材3は、隣接する2つのパネル部材2のみを連係する構成であるが、上述したようにこの構成には限られない。上述したように、各線状部材3は、連接される3個以上のパネル部材2を連係していてもよい。このような線状部材3は、例えば、シェル構造(図5参照)を形成する全部(図5に示す例では40個)のパネル部材2のうち、シェル構造の一端側の裾部から他端側の裾部まで連接されている複数のパネル部材2を纏めて連係してもよい。このような線状部材3を用いることにより、図7に示す状態から、線状部材3の両端をシェル構造の裾部に相当する位置で巻き取るように操作することで、容易に図5に示すシェル構造の状態へと変形させることができる。
【0068】
また、上述した実施形態では、立体構造体1を構造単位として形成される形状可変立体構造物100について説明したが、例えば内装壁材や天井材などの内装部材が、立体構造体1を構造単位として形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、立体構造体、形状可変立体構造物、立体構造体の変形方法、及び、形状可変立体構造物の変形方法、に関する。
【符号の説明】
【0070】
1:立体構造体
2、2a~2n:パネル部材
2a1、2b1:パネル部材の側端面
3、3cd~3hn:線状部材
4:調整装置
4a:第1ローラ
4b:第2ローラ
4c:駆動源
4d:制御部
5:調整機構
11:パネル部材の内側の表面
12:パネル部材の外側の表面
20:開口
100:形状可変立体構造物
A:パネル厚み方向
B:パネル面内方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7