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  • 特許-充填ノズルおよび液体充填方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】充填ノズルおよび液体充填方法
(51)【国際特許分類】
   B65B 39/00 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
B65B39/00 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020041874
(22)【出願日】2020-03-11
(65)【公開番号】P2021142997
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】綱代 雅裕
【審査官】種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3053074(JP,U)
【文献】特開2019-006467(JP,A)
【文献】特開2004-359340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に液体を充填するための充填ノズルであって、
ノズル先端部から液体を吐出させる際通されるフィルターメッシュを前記ノズル先端部に有し、
前記充填ノズル内で液体の吐出、停止を行う吐出バルブを有し、
前記吐出バルブの開閉にかかわらず前記ノズル先端部内で前記フィルターメッシュの直前に開口した吸引用ノズルを備え、該吐出バルブが閉塞して前記吐出バルブを通した液体の吐出が停止した時点で、前記フィルターメッシュの直前に残留した液体を次の容器に対する充填が開始される直前まで前記吸引用ノズルを通して連続的に吸引除去し得る液体吸引機構を備えた
ことを特徴とする充填ノズル。
【請求項2】
前記液体吸引機構は、前記引用ノズル直結し、吸引を作動させる吸引ポンプを備えることを特徴とする
請求項1に記載の充填ノズル。
【請求項3】
前記液体吸引機構は、
気ポンプによって減圧された吸引タンクと、 前記吸引用ノズルと前記吸引タンクの間の配管経路に設けられる開閉バルブと
を備え、
前記吸引用ノズルと前記吸引タンクの間の配管経路に設けた前記開閉バルブの開閉により、前記吸引用ノズルを通して吸引の開始と停止を切り替えるものであることを特徴とする
請求項1に記載の充填ノズル。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の充填ノズルを使用する液体充填方法であって、
前記吐出バルブを開け、前記容器に前記充填ノズルの前記フィルターメッシュを通して液体を吐出し、前記容器に前記液体を充填すること、
前記吐出バルブを閉塞し、前記吐出バルブを通した液体の吐出を停止させること、
前記吐出バルブを通した液体の吐出を停止させた時点で、前記フィルターメッシュの直前に残留した前記液体を次の容器に対する充填が開始される直前まで前記吸引用ノズルを通して連続的に吸引除去すること、
前記引除去された液体を容器に対する充填用液体として再利用するため、または、廃棄のために貯留すること
を含むことを特徴とする液体充填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体用充填機において各種容器に内容物である液体を充填する際に用いられる充填ノズルおよび液体充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種容器に液体の内容物を充填する際には、液体用充填機が使用される。液体用充填機の一般的な構造としては、内容物を蓄えるタンクと、内容物をタンクから充填ノズルまで移送する内容物供給機構と、空容器を順序良く充填ノズル部まで供給する容器供給機構と、空容器に所定量の内容物を充填する充填機構と、充填が完了した容器を封止して排出する機構などが備わっている。
【0003】
充填機構部には、所定量の内容物を計量する定量吐出機構、内容物を吐出する充填ノズルと、吐出、停止を行うバルブ機構等が含まれている。容器の形状によっては、充填ノズル自体を上昇、下降させる機構等が含まれる場合もある。
【0004】
充填ノズルの一形態として、先端部にメッシュを備えたメッシュノズルと呼ばれる形式が知られている。メッシュノズルは、万一の異物を濾過除去したり、液はねや液だれの防止に効果がある一方、ノズル先端の開口面積が広いため、液体の性状によっては、充填完了後に液だれを生じる場合がある。
【0005】
液だれし易い液体としては、酒類やヘアートニック、アフターシェーブローション等、比較的粘度が低くて、しかもアルコール分を含む液体が挙げられる。これらの液体は、表面張力が極端に低いために、充填完了後のノズル先端部の液面が保持できず、液だれが発生し易いものと考えられている。
【0006】
特許文献1に記載された液体供給ノズルは、充填時の液だれを防止することを目的として提案されたものであり、その第一実施例においては、導液口と給液口とのあるノズル本体の内部に給液導入路と、該給液導入路の下方部にバルブ閉塞室とを設け、ノズル本体の先端部にメッシュネットを有する給液吐出部材を着脱自在に備えると共に、バルブ閉塞室中に閉塞バルブを作動シリンダで昇降自在に設けて、閉塞バルブの上昇時に給液導入路を閉塞するように構成したことを特徴とする液体供給ノズルである。
【0007】
特許文献1の第二実施例においては、第一実施例の構成に加えて、閉塞バルブ及びシャフトにバルブ閉塞室に連通する吸気路を設け、該吸気路にチャンバを経てエジェクタ用シリンダのある吸引用ピストンを備えたものである。
【0008】
特許文献1の第一実施例においては、液体の吐出終了と同時に閉塞バルブが上昇することにより、バルブ閉塞室内が陰圧となり、液だれが防止されるものであるが、液体の性状によっては、完全に液だれを防止することはできない。これは、バルブ閉塞室内が陰圧になるとは言っても、閉塞バルブの上昇が終了し停止した時点で、陰圧が解放されてしまうからである。
【0009】
そこで、特許文献1の第二の実施例においては、さらにバルブ閉塞室に連通する吸気路を設け、吸引用ピストンによってバルブ閉塞室内の液体を吸引するようにしたものである。この対策によれば、バルブ閉塞室内に残された液体が吸引用ピストンによって吸引されるので、液だれは、生じ難くなる。
【0010】
しかしながら、特許文献1の第二実施例によれば、充填終了時に充填ノズル先端部の液体が、吸引用ピストンによって吸引されるが、吸引用ピストンの上昇が終了して吸引が停止すると、液だれ防止効果が発揮されなくなってしまうという基本的な問題が残されていた。また、液体の種類が替わった場合に吸引用ピストンのストローク量や吸引のタイミング等を再調整する必要が生じる場合があり、これに要する時間のロスや、変更ミスの発生も問題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】実用新案第3053074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の解決しようとする課題は、面倒な調整が不要で、広範な液体に使用することができ、しかも液だれ防止効果が安定して持続する充填ノズルを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、容器に液体を充填するための充填ノズルであって、ノズル先端部から液体を吐出させる際通されるフィルターメッシュを前記ノズル先端部に有し、前記充填ノズル内で液体の吐出、停止を行う吐出バルブを有し、前記吐出バルブの開閉にかかわらず前記ノズル先端部内で前記フィルターメッシュの直前に開口した吸引用ノズルを備え、該吐出バルブが閉塞して前記吐出バルブを通した液体の吐出が停止した時点で、前記フィルターメッシュの直前に残留した液体を次の容器に対する充填が開始される直前まで前記吸引用ノズルを通して連続的に吸引除去し得る液体吸引機構を備えたことを特徴とする充填ノズルである。
【0014】
本発明に係る充填ノズルは、液体の吐出が停止した時点で、フィルターメッシュの直前に残留した液体を連続的に吸引除去する液体吸引機構を備えたので、次の容器に対する充填が開始するまで吸引を継続することができ、液だれが生じ難い。
【0015】
また、請求項2に記載の発明は、前記液体吸引機構が、前記引用ノズル直結し、吸引を作動させる吸引ポンプを備えることを特徴とする請求項1に記載の充填ノズルである。
【0016】
また、請求項3に記載の発明は、前記液体吸引機構が、気ポンプによって減圧された吸引タンクと、前記吸引用ノズルと前記吸引タンクの間の配管経路に設けられる開閉バルブとを備え、前記吸引用ノズルと前記吸引タンクの間の配管経路に設けた前記開閉バルブの開閉により、前記吸引用ノズルを通して吸引の開始と停止を切り替えるものであることを特徴とする請求項1に記載の充填ノズルである。
【0017】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1~3のいずれかに記載の充填ノズルを使用する液体充填方法であって、前記吐出バルブを開け、前記容器に前記充填ノズルの前記フィルターメッシュを通して液体を吐出し、前記容器に前記液体を充填すること、前記吐出バルブを閉塞し、前記吐出バルブを通した液体の吐出を停止させること、前記吐出バルブを通した液体の吐出を停止させた時点で、前記フィルターメッシュの直前に残留した前記液体を次の容器に対する充填が開始される直前まで前記吸引用ノズルを通して連続的に吸引除去すること、前記引除去された液体を容器に対する充填用液体として再利用するため、または、廃棄のために貯留することを含むことを特徴とする液体充填方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る充填ノズルは、液体の吐出が停止した時点で、フィルターメッシュの直前に残留した液体を連続的に吸引除去する液体吸引機構を備えたので、次の容器に対する充填が開始するまで吸引を継続することができ、従って液だれが生じ難い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1~3は、本発明に係る充填ノズルの作動を説明するための断面説明図であり、図1は、容器への充填が開始される直前の状態を示したものである。
図2図1~3は、本発明に係る充填ノズルの作動を説明するための断面説明図であり、図2は、容器に対する充填中の状態を示したものである。
図3図1~3は、本発明に係る充填ノズルの作動を説明するための断面説明図であり、図3は、充填が終了して液体吸引機構が作動を開始した状態を示したものである。
図4図4は、本発明に係る充填ノズルの他の実施態様を模式的に示した説明図である。
図5図5は、従来の充填ノズルの構造の一例を模式的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明に係る充填ノズルについて詳細に説明する。図1~3は、本発明に係る充填ノズル1の一実施態様において、その作動を説明するための断面説明図であり、図1は、容器への充填が開始される直前の状態を示したものである。また図2は、容器に対する充填中の状態を示したものである。また図3は、充填が終了して液体吸引機構が作動を開始した状態を示したものである。
【0021】
本発明に係る充填ノズル1は、容器に液体を充填するための充填ノズルであって、ノズル先端部にフィルターメッシュ3を有し、液体の吐出、停止を行う吐出バルブ4を有し、吐出バルブ4が閉塞して液体の吐出が停止した時点で、図3に示したように、フィルターメッシュ3の直前に残留した液体20を連続的に吸引除去する液体吸引機構を備えたことを特徴とする充填ノズルである。
【0022】
図1~3に示した例では、液体吸引機構として、フィルターメッシュ3の直前に開口した吸引用ノズル2と、これに直結した吸引ポンプ5とが設置されており、吸引ポンプ5の作動により、フィルターメッシュ3の直前に残留した液体20を吸引することにより、充填ノズル先端からの液だれを防止することができる。
【0023】
吸引ポンプ5の作動は、次の容器に対する充填が開始される直前まで継続することができるので、液だれの防止効果が高いのである。なお吸引除去された液体20は、そのまま給液タンクに戻しても良いし、別のタンクに一旦貯留して滅菌処理等必要な処理をした後に給液タンクに戻しても良い。また吸引除去される液体の量が少ない場合や、回収した液体の処理に手間が掛かる場合には、そのまま廃棄しても良い。
【0024】
充填ノズル1の先端に取り付けられたフィルターメッシュ3は、一連の充填作業が終了した時点で、簡単に取外して洗浄することができるような構造であることが望ましい。
【0025】
図5は、従来の充填ノズルの構造の一例を模式的に示した説明図である。この例では、充填シリンダ11が作動することにより、シリンダ内の液体が充填ノズル10の先端から吐出される。充填シリンダ11の行程は一定であるから、吐出される液体の量も一定である。
【0026】
液体の吐出が完了した時点で、サックバック用シリンダ12が作動して充填ノズル先端に負圧を生じさせ、これにより液だれを防止していたのであるが、サックバック用シリンダ12は、液体の種類に応じて最適なサックバック量を調整する必要があり、シリンダのストローク量やタイミングを都度調整する手間と設定ミスの問題があった。また、サックバック用シリンダ12が終点まで後退した時点で負圧の発生も停止するため、液体の性状によっては、液だれが発生することがあった。
【0027】
本発明に係る充填ノズル1にあっては、次の充填が開始するまでの間、連続的に液体の
吸引を行うことができるため、確実に液だれを防止する効果が高いのである。
【0028】
図4は、本発明に係る充填ノズル1の他の実施態様を模式的に示した説明図である。この例では、液体吸引機構として、フィルターメッシュ3の直前に開口した吸引用ノズル2と、排気ポンプ7によって減圧された吸引タンク6を備え、吸引用ノズル2と吸引タンク6の間の配管経路に設けたソレノイドバルブ8を開閉することにより、充填ノズル1のフィルターメッシュ3の直前に残留した液体20の吸引の開始と停止を行うものである。
【0029】
吸引除去された液体20は、吸引タンク6内に貯留されるが、この液体は同様にして廃棄することもできるし、再度充填用液体として再利用することもできる。
以下、この特許出願時の特許請求の範囲を付記する。
[付記1]
容器に液体を充填するための充填ノズルであって、ノズル先端部にフィルターメッシュを有し、液体の吐出、停止を行う吐出バルブを有し、該吐出バルブが閉塞して液体の吐出が停止した時点で、前記フィルターメッシュの直前に残留した液体を連続的に吸引除去する液体吸引機構を備えたことを特徴とする充填ノズル。
[付記2]
前記液体吸引機構は、前記フィルターメッシュの直前に開口した吸引用ノズルと、これに直結した吸引ポンプの作動によるものであることを特徴とする付記1に記載の充填ノズル。
[付記3]
前記液体吸引機構は、前記フィルターメッシュの直前に開口した吸引用ノズルと、排気ポンプによって減圧された吸引タンクを備え、前記吸引用ノズルと吸引タンクの間の配管経路に設けたバルブの開閉によるものであることを特徴とする付記1に記載の充填ノズル。
[付記4]
付記1~3のいずれかに記載の充填ノズルを使用する液体充填方法であって、前記液体吸引機構によって吸引除去された液体を充填用液体として再利用することを特徴とする液体充填方法。
【符号の説明】
【0030】
1・・・充填ノズル
2・・・吸引用ノズル
3・・・フィルターメッシュ
4・・・吐出バルブ
5・・・吸引ポンプ
6・・・吸引タンク
7・・・排気ポンプ
10・・・従来の充填ノズル
11・・・充填シリンダ
12・・・サックバック用シリンダ
20・・・液体
図1
図2
図3
図4
図5