(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20240423BHJP
【FI】
H02M3/28 H
(21)【出願番号】P 2020044755
(22)【出願日】2020-03-13
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】田内 宏憲
(72)【発明者】
【氏名】鎌谷 祐貴
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-161917(JP,A)
【文献】特開2002-335674(JP,A)
【文献】特開2017-147824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された電圧を平滑化するコンデンサと、
第1スイッチング部と、
第2スイッチング部と、
リアクトルと、
絶縁トランスと、
第2コンデンサと、
前記第1スイッチング部及び前記第2スイッチング部のスイッチングを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部が、前記リアクトル及び前記絶縁トランスによって、直流電力を交流電力に変換し、前記第2コンデンサによって、該交流電力を直流電力に変換する電力変換装置において、
前記制御部は、
前記第1スイッチング部のスイッチングを制御する第1スイッチング制御信号のうちの少なくともいずれかを基準信号とし、
前記基準信号の位相をシフトさせる位相シフト量を演算する位相シフト量演算部と、
前記位相シフト量だけ前記基準信号の位相をシフトさせた信号を少なくとも一つの入力とする論理演算を行い、前記第2スイッチング部のスイッチングを制御する第2スイッチング制御信号を出力する論理演算部と、
を有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記リアクトルを流れる電流が連続か不連続かを判定する連続判定部を有することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力変換装置である双方向のDC/DCコンバータにおいて、特許文献1から4に記載されているように、スイッチング素子とボディダイオードの通流を活用して回路動作を実現していた。しかし、トランスの小型化を目的とした高周波での駆動にスイッチング素子にGaNを用いると、ボディダイオードの特性により導通す損失が大きくなる。高効率化を図るために、外付けのショットキーバリアダイオードをスイッチング素子に並列に設けることもできるが、コストが増加するとともに、回路面積も大きくなるという問題があった。
【0003】
このように、外付けのショットキーバリアダイオードを設けることなく、高効率化を図るために、同期整流を行うことが考えられる。しかし、同期整流の実現のために、瞬時電流計測を高速かつ高精度で行う必要があり、また、連続モードと不連即モードの判定に高性能なCPUが必要となり、同様にコストが増加するという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-204998号公報
【文献】特開2017-204999号公報
【文献】特開2017-205000号公報
【文献】特開2017-205001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、コストを抑制し、回路面積を増大させることなく、同期整流を実現できる高効率の電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための本発明は、
入力された電圧を平滑化するコンデンサと、
第1スイッチング部と、
第2スイッチング部と、
リアクトルと、
絶縁トランスと、
第2コンデンサと、
前記第1スイッチング部及び前記第2スイッチング部のスイッチングを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部が、前記リアクトル及び前記絶縁トランスによって、直流電力を交流電力に変換し、前記第2コンデンサによって、該交流電力を直流電力に変換する電力変換装置において、
前記制御部は、
前記第1スイッチング部のスイッチングを制御する第1スイッチング制御信号のうちの少なくともいずれかを基準信号とし、
前記基準信号の位相をシフトさせる位相シフト量を演算する位相シフト量演算部と、
前記位相シフト量だけ前記基準信号の位相をシフトさせた信号を少なくとも一つの入力とする論理演算を行い、前記第2スイッチング部のスイッチングを制御する第2スイッチング制御信号を出力する論理演算部と、
を有することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、第1スイッチング部のスイッチングを制御する第1スイッチング制御信号のうちの少なくともいずれかを基準信号とし、第2スイッチング部のスイッチングの所望の制御に応じて、位相シフト量を演算し、さらに、論理演算を行うことにより、第2スイッチング部のスイッチングを制御する第2スイッチング制御信号を生成することができる。位相シフト量演算部は、マイコン等の公知の制御部の機能を活用して行うことができ、論理演算は、論理素子を含む回路のように簡単なハードウェアによっても実現することができる。従って、第1スイッチング制御信号に含まれる基準信号から、同期演算に必要な位相シフト量を演算し、論理演算により、第2スイッチング制御信号を生成すれば、コストを抑制し、回路面積を増大させることなく、同期整流を実現し、高効率の電力変換装置を提供することができる。
【0008】
双方向の電力変換装置であれば、入出力の方向により、本発明における入力と、第1スイッチング部と第2スイッチング部は相互に入れ替わる。
また、本発明の電力変換装置は、例えば、双方向DC/DCコンバータが含まれるが、これらに限定されない。
【0009】
また、本発明においては、
前記制御部は、
前記リアクトルを流れる電流が連続か不連続かを判定する連続判定部を有するようにしてもよい。
【0010】
これによれば、連続判定部により、リアクトルを流れる電流が連続か不連続かの判定結果を取得できるので、不連続が生じる場合に応じた、第2スイッチング制御信号を生成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コストを抑制し、回路面積を増大させることなく、同期整流を実現できる高効率の電力変換装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例1に係るおける電力変換装置の概略構成図である。
【
図2】本発明の実施例1に係る電力変換装置の制御ユニットのブロック図である。
【
図3】本発明の実施例1に係るDC/DCコンバータの降圧モードの制御信号のタイミングチャートである。
【
図4】本発明の実施例1に係る論理演算回路の例を示す図である。
【
図5】本発明の実施例1に係るDC/DCコンバータの降圧モードでの電流経路を示す図である。
【
図6】本発明の実施例1に係るDC/DCコンバータの降圧モードでの電流経路を示す図である。
【
図7】本発明の実施例1に係るDC/DCコンバータの降圧モードでの電流経路を示す図である。
【
図8】本発明の実施例1に係るDC/DCコンバータの降圧モードでの電流経路を示す図である。
【
図9】本発明の実施例1に係るDC/DCコンバータの降圧モードでの電流経路を示す図である。
【
図10】本発明の実施例1に係るDC/DCコンバータの降圧モードでの電流経路を示す図である。
【
図11】本発明の実施例1に係るDC/DCコンバータの他の降圧モードの制御信号のタイミングチャートである。
【
図12】本発明の実施例1に係るDC/DCコンバータの昇圧モードの制御信号のタイミングチャートである。
【
図13】本発明の実施例1に係る他の論理演算回路の例を示す図である。
【
図14】本発明の実施例1に係るDC/DCコンバータの昇圧モードでの電流経路を示す図である。
【
図15】本発明の実施例1に係るDC/DCコンバータの昇圧モードでの電流経路を示す図である。
【
図16】本発明の実施例1に係るDC/DCコンバータの昇圧モードでの電流経路を示す図である。
【
図17】本発明の実施例1に係るDC/DCコンバータの昇圧モードでの電流経路を示す図である。
【
図18】本発明の実施例1に係るDC/DCコンバータの昇圧モードでの電流経路を示す図である。
【
図19】本発明の実施例1に係るDC/DCコンバータの昇圧モードでの電流経路を示す図である。
【
図20】本発明の実施例1に係るDC/DCコンバータの他の昇圧モードの制御信号のタイミングチャートである。
【
図21】本発明の実施例2に係る電力変換装置の制御ユニットのブロック図である。
【
図22】本発明の実施例2に係るDC/DCコンバータの降圧モードの制御信号のタイミングチャートである。
【
図23】本発明の実施例2に係る論理演算回路の例を示す図である。
【
図24】本発明の実施例2に係るDC/DCコンバータの他の降圧モードの制御信号のタイミングチャートである。
【
図25】本発明の実施例2に係るDC/DCコンバータの昇圧モードの制御信号のタイミングチャートである。
【
図26】本発明の実施例2に係る論理演算回路の他の例を示す図である。
【
図27】本発明の実施例2に係るDC/DCコンバータの他の昇圧モードの制御信号のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔適用例〕
以下、本発明の適用例について、図面を参照しつつ説明する。
本発明は、
図1に示す、絶縁型双方方向DC/DCコンバータ10を含む電力変換装置に適用される。
電力変換装置1は、DC/DCコンバータ10と制御ユニット20と2対の入出力端子対13(13p、13m)及び入出力端子対14(14p、14m)とを備える。入出力端子13m、13p間、及び、入出力端子14m、14p間には、それぞれ入力された電圧を平滑化するためのコンデンサC1及びC2が接続されている。ここで、コンデンサC1が、本発明の第1コンデンサに対応する。また、コンデンサC2が、本発明の第2コンデンサに対応する。ただし、入出力の方向により、コンデンサC1及びコンデンサC2と、本発明の第1コンデンサ及び第2コンデンサとの対応関係は相互に入れ替わる。
【0014】
DC/DCコンバータ10は、トランスTR、2つのリアクトルLr1及びLr2及び2つのフルブリッジ回路11及び12を主要構成要素とした絶縁型双方向DC/DCコン
バータである。リアクトルLr1とリアクトルLr2は第1フルブリッジ回路11と第2フルブリッジ回路12による制御で交流電力を生成し、コンデンサC1とコンデンサC2は前記交流電力を直流電力へと平滑する。トランスTRとしては、絶縁トランスを用いることができるが、非絶縁トランスでもよい。
DC/DCコンバータ10の第2フルブリッジ回路12は、直列接続された第5スイッチング素子SW5及び第7スイッチング素子SW7を有する第3レグL3と、直列接続された第6スイッチング素子SW6及び第8スイッチング素子SW8を有する第4レグL4と、を備える。図示してあるように、各レグの第nスイッチング素子SWn(n=5~8)の端子間には、第nダイオードDn(n=5~8)が並列に接続されている。また、第3レグL3、第4レグL4は、いずれも、第2入出力端子14と接続されている。そして、第3レグL3の、第5スイッチング素子SW5及び第7スイッチング素子SW7間の接続点p3は、第2リアクトルLr2を介してトランスTRの第2巻線Wn2の一端に接続され、第4レグL4の、第6スイッチング素子SW6及び第8スイッチング素子SW8間の接続点p4は、トランスTRの第2巻線Wn2の他端に接続されている。ここでは、第1フルブリッジ回路11が、本発明の第1スイッチング部に対応する。そして、第2フルブリッジ回路12が、本発明の第2スイッチング部に対応する。
【0015】
図2は、本実施例に係るDC/DCコンバータ10の制御ユニット20の機能ブロック図である。制御ユニット20は、マイクロコントローラ等からなる主制御部21と、アナログ回路又は小型CPU等で構成される同期整流用論理演算部22を含む。また、主制御部21は、基準信号生成部211、同期整流用位相シフト量演算部212、制御信号出力部213を含む。
【0016】
図3は、DC/DCコンバータ10を、降圧コンバータとして動作させる場合に用いられる信号のタイミングチャートを示す。
信号Toff2_1は、基礎制御信号G2の位相を、半周期遅らせた位相からさらにf
1(T,TON,Vin,Vout)だけ進ませた信号であり、信号Toff2_2は、Toff2_1の位相を反転させた信号である。ここでは、Tは周期,TONは基礎制御信号G1とG4の同時ON期間,TOFFは基礎制御信号G2とG3の同時ON期間,TOFFは基礎制御信号G2とG3の同時ON期間,VinはDC/DCコンバータ10の入力電圧、VoutはDC/DCコンバータ10の出力電圧であり、f
1(T,TON,Vin,Vout)は、これらを変数とする所定の関数であり、負値が除外されたものである。
信号G2_shiftは、基準制御信号G2の位相を、f
2(T,TON,Vin,Vout)だけ遅らせた信号であり、信号G4_shiftは、G2_shiftの位相を反転させた信号である。ここでは、f
2(T,TON,Vin,Vout)は、T,TON,Vin,Voutを変数とする所定の関数であり、負値が除外されたものである。
f
1(T,TON,Vin,Vout)、f2(T,TON,Vin,Vout)は、本発明の同期整流用位相シフト量に対応する。例えば、不連続モードにおける零電流区間や、連続モードにおける回生区間を演算して、同期整流用位相シフト量とする。
【0017】
制御信号G6及びG7は、
図4(A)に示されるように、信号Toff2_2と、信号G2_shiftとの、AND論理素子22011による論理積である。この論理演算回路2201は、同期整流用論理演算部22に設けられている。同様に、制御信号G5及びG8は、
図4(B)に示されるように、信号Toff2_1と、信号G4_shiftとの、AND論理素子22012による論理積である。この論理演算回路2202は、同期整流用論理演算部22に設けられている。
このようにして、生成された制御信号G1~G8は、制御信号出力部213から出力される。制御信号G1~G8により、DC/DCコンバータ10を駆動した場合のリアクトル電流IL1を
図3の最下段に示す。このとき、DC/DCコンバータ10は、以下の#
11~#16の状態を順に遷移する。#12、#13、#15、#16では、同期整流を実現できている。
【0018】
このようにDC/DCコンバータ10を含む電力変換装置1において、基準信号(ここではG2)から、位相シフト量の演算と、論理演算回路による論理演算によって、スイッチング素子SW5~SW8の同期制御を行う制御信号を生成することができ、外付けのショットキーバリアダイオードや高性能なCPU等を必要としないので、コストを抑制し、回路面積を増大させることなく、同期整流を実現し、高効率の電力変換装置を提供することが可能となる。
【0019】
〔実施例1〕
以下では、本発明の実施例に係る電力変換装置1について、図面を用いて、より詳細に説明する。
【0020】
<電力変換装置の構成>
図1に、本発明の実施形態に係る電力変換装置1の概略構成を示す。
本実施形態に係る電力変換装置1は、双方向の電力変換が可能な装置である。図示してあるように、電力変換装置1は、DC/DCコンバータ10と制御ユニット20と2対の入出力端子対13(13p、13m)及び入出力端子対14(14p、14m)とを備える。なお、入出力端子対13及び14においても、入出力端子13p、14pが、高電位側の入出力端子であり、入出力端子13m、14mが、低電位側の入出力端子である。また、入出力端子13m、13p間には入出力電圧を平滑化するためのコンデンサC1が接続されている。同様に、入出力端子14m、14p間にも入出力電圧を平滑化するためのコンデンサC2が接続されている。コンデンサC1及びC2としては、電解コンデンサを用いることができる。
【0021】
DC/DCコンバータ10は、トランスTR、2つのリアクトルLr1及びLr2及び2つのフルブリッジ回路11及び12を主要構成要素とした絶縁型双方向DC/DCコンバータである。以下、
図1における左側のフルブリッジ回路11、右側のフルブリッジ回路12のことを、それぞれ、第1フルブリッジ回路11、第2フルブリッジ回路12と表記する。同様に、
図1における左側及び右側のリアクトルLr1及びLr2のことを、それぞれ、第1リアクトルLr1、第2リアクトルLr2と表記し、トランスTRの
図1における左側の巻線Wn1、右側の巻線Wn2のことを、それぞれ、第1巻線Wn1、第2巻線Wn2と表記する。また、
図1における左側及び右側の各入出力端子対13(13p、13m)及び入出力端子対14(14p、14m)のことを、それぞれ、第1入出力端子対13、第2入出力端子対14と表記する。第1リアクトルLr1及び第2リアクトルLr2は、トランスTRの第1巻線Wn1及び第2巻線Wn2の漏れインダクタンスを利用してもよい。なお、DC/DCコンバータ10のトランスTRは、巻数比が1:1のものでなくても良い。ただし、以下では、トランスTRの巻数比が1:1であるものとして、電力変換装置1の構成及び動作を説明する。
【0022】
DC/DCコンバータ10の第1フルブリッジ回路11は、直列接続された第1スイッチング素子SW1及び第3スイッチング素子SW3を有する第1レグL1と、直列接続された第2スイッチング素子SW2及び第4スイッチング素子SW4を有する第2レグL2と、を備える。図示してあるように、各レグの第nスイッチング素子SWn(n=1~4)の端子間には、第nダイオードDn(n=1~4)が並列に接続されている。また、各レグは、第1入出力端子対13と接続されており、第1レグL1の、第1スイッチング素子SW1及び第3スイッチング素子SW3間の接続点p1は、第1リアクトルLr1を介してトランスTRの第1巻線Wn1の一端に接続されている。そして、第2レグL2の、第2スイッチング素子SW2及び第4スイッチング素子SW4間の接続点p2は、トラン
スTRの第1巻線Wn1の他端に接続されている。
【0023】
DC/DCコンバータ10の第2フルブリッジ回路12は、直列接続された第5スイッチング素子SW5及び第7スイッチング素子SW7を有する第3レグL3と、直列接続された第6スイッチング素子SW6及び第8スイッチング素子SW8を有する第4レグL4と、を備える。図示してあるように、各レグの第nスイッチング素子SWn(n=5~8)の端子間には、第nダイオードDn(n=5~8)が並列に接続されている。また、第3レグL3、第4レグL4は、いずれも、第2入出力端子14と接続されている。そして、第3レグL3の、第5スイッチング素子SW5及び第7スイッチング素子SW7間の接続点p3は、第2リアクトルLr2を介してトランスTRの第2巻線Wn2の一端に接続され、第4レグL4の、第6スイッチング素子SW6及び第8スイッチング素子SW8間の接続点p4は、トランスTRの第2巻線Wn2の他端に接続されている。
【0024】
スイッチング素子SW1~SW8の半導体材料としては、ガリウムナイトライド(GaN)、シリコン(Si)、シリコンカーバイド(SiC)等を用いることができるが、これらに限定されない。半導体スイッチング素子としては、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等を用いることができる。スイッチング素子SW1~SW8として用いられるこれらの半導体スイッチング素子に対して、各ダイオードD1~D8は逆並列に接続される。
【0025】
DC/DCコンバータ10には、第1リアクトルLr1及び第2リアクトルLr2を流れる電流の大きさをそれぞれ測定するための電流センサ15p、15sが取り付けられている。なお、DC/DCコンバータ10には、入出力電圧や入出力電流の大きさを測定するための各種センサ(図示略)も取り付けられている。
【0026】
制御ユニット20は、DC/DCコンバータ10内の各スイッチング素子への制御信号のレベルを変更することにより、DC/DCコンバータ10(DC/DCコンバータ10内の各スイッチング素子のON/OFF)を制御するユニットである。以下、第nスイッチング素子SWn(n=1~8)用の制御信号のことを、制御信号Gnと表記する。
【0027】
制御ユニット20は、プロセッサ(本実施形態では、マイクロコントローラ)、ゲートドライバ等から構成されており、制御ユニット20には、上記した各種センサ(電流センサ15p、15s等)の出力が入力されている。
【0028】
そして、制御ユニット20は、入力されているデータ(電流値、電圧値)に基づき、DC/DCコンバータ10を、以下の4種のコンバータの中のいずれかとして動作させるかを決定し、決定したコンバータとして動作するようにDC/DCコンバータ10を制御するように構成(プログラミング)されている。
・第1入出力端子対13側が一次側の昇圧コンバータ
・第1入出力端子対13側が一次側の降圧コンバータ
・第2入出力端子対14側が一次側の昇圧コンバータ
・第2入出力端子対14側が一次側の降圧コンバータ
【0029】
また、制御ユニット20は、DC/DCコンバータ10に対する制御内容の変更(DC/DCコンバータ10を第1入出力端子対13側が一次側の昇圧コンバータとして動作させる制御から、DC/DCコンバータ10を第2入出力端子対14側が一次側の降圧コンバータとして動作させる制御への変更等)を、即座に行うようにも構成(プログラミング)されている。
【0030】
<同期整流方法>
以下、本実施例に係る電力変換装置1の構成及び動作を具体的に説明する。
図2は、本実施例に係るDC/DCコンバータ10の制御ユニット20の機能ブロック図である。制御ユニット20は、マイクロコントローラ等からなる主制御部21と、アナログ回路又は小型CPU等で構成される同期整流用論理演算部22を含む。また、主制御部21は、基準信号生成部211、同期整流用位相シフト量演算部212、制御信号出力部213を含む。これら各部の具体的な機能については、後述する。
【0031】
<降圧モード1>
図3は、本実施例に係るDC/DCコンバータ10を、降圧コンバータとして動作させる場合に用いられる信号のタイミングチャートを示す。ここでは、制御ユニット20は、DC/DCコンバータ10の1次側の第1フルブリッジ回路11に含まれる4つのスイッチング素子SW1~SW4に対する制御信号G1~G4から、2次側の第2フルブリッジ回路12に含まれる4つのスイッチング素子SW5~SW8に対する制御信号を生成する。このため、本実施例に係るDC/DCコンバータ10の動作を実現するための制御を生成するための基礎となる、スイッチング素子SW1~SW8に対する制御信号を基礎制御信号という。基礎制御信号のうち、第1フルブリッジ回路11に含まれるスイッチング素子SW1~SW4に対する制御信号に対しては変更されず、そのまま、制御信号として用いられるが、第2フルブリッジ回路12に含まれるスイッチング素子SW5~SW8に対する制御信号は、基礎制御信号のうち、G2に対して位相量をシフトさせる等の処理を行うことにより生成される。このため、同期整流用の制御信号を生成する際の、信号処理の対象となる基礎制御信号を特に、基準信号という。基準信号生成部211は、第1フルブリッジ回路11のスイッチング素子SW1~SW4の制御信号を含む基礎制御信号のうち基準信号を同期整流用位相シフト量演算部212に出力する。そして基準信号生成部211は、基礎制御信号のうち、変更せずに制御信号として用いる制御信号を、制御信号出力部213に出力する。
図3に示す例では、上段から4つのG1~G4が基礎制御信号のタイミングチャートである。
【0032】
図3に示す例では、G2が基準信号として選択されている。
信号Toff2_1は、基礎制御信号G2の位相を、半周期遅らせた位相からさらにf
1(T,TON,Vin,Vout)だけ進ませた信号であり、信号Toff2_2は、Toff2_1の位相を反転させた信号である。ここでは、Tは周期,TONは基礎制御信号G1とG4の同時ON期間,TOFFは基礎制御信号G2とG3の同時ON期間,VinはDC/DCコンバータ10の入力電圧、VoutはDC/DCコンバータ10の出力電圧であり、f
1(T,TON,Vin,Vout)は、これらを変数とする所定の関数であり、負値が除外されたものである。
そして、信号G2_shiftは、基準制御信号G2の位相を、f
2(T,TON,Vin,Vout)だけ遅らせた信号であり、信号G4_shiftは、G2_shiftの位相を反転させた信号である。ここでは、f
2(T,TON,Vin,Vout)は、T,TON,Vin,Voutを変数とする所定の関数であり、負値が除外されたものである
同期整流用位相シフト量演算部212は、f
1(T,TON,Vin,Vout)、f
2(T,TON,Vin,Vout)を演算し、基準信号を位相シフトして生成された信号を同期整流用論理演算部32に出力する。例えば、同期整流用位相シフト量は、不連続モードにおける零電流区間と連続モードのおける回生区間を演算することで求める。このような、同期整流用位相シフト量の演算は、基準信号の周期ごとに行う。
【0033】
制御信号G6及びG7は、
図4(A)に示されるように、信号Toff2_2と、信号G2_shiftとの、AND論理素子22011による論理積である。この論理演算回路2201は、同期整流用論理演算部22に設けられている。同様に、制御信号G5及びG8は、
図4(B)に示されるように、信号Toff2_1と、信号G4_shiftと
の、AND論理素子22012による論理積である。この論理演算回路2202は、同期整流用論理演算部22に設けられている。同期整流用論理演算部22によって出力された制御信号は制御信号出力部213に出力され、各スイッチング素子の制御に用いられる。
【0034】
このようにして、生成された制御信号G1~G8は、制御信号出力部213から出力される。制御信号G1~G8により、DC/DCコンバータ10を駆動した場合のリアクトル電流IL1を
図3の最下段に示す。このとき、DC/DCコンバータ10は、以下の#11~#16の状態を順に遷移する。リアクトル電流IL1は電流センサ15pによって測定したリアクトルLr1を流れる電流値であってもよいし、2次側のリアクトルLr2を1次側のリアクトルに換算し、リアクトルLr1とリアクトルLr2とを合わせた等価なリアクトルを流れる電流値であってもよい。
・#11の状態では、スイッチング素子SW1、SW4のみがONになっており、他のスイッチン素子はOFFになっている。このとき、DC/DCコンバータ10における電流の経路は、
図5に示すようになる。
・#12の状態では、スイッチング素子SW1、SW4、SW5、SW8がONになっており、他のスイッチング素子はOFFとなっている。このとき、DC/DCコンバータ10における電流の経路は、
図6に示すようになる。
・#13の状態では、スイッチング素子SW3、SW4、SW5、SW8がONになっており、他のスイッチング素子はOFFになっている。このとき、DC/DCコンバータ10における電流の経路は、
図7に示すようになる。
・#14の状態では、スイッチング素子SW2、SW3のみがONになっており、他のスイッチング素子はOFFになっている。このとき、DC/DCコンバータ10における電流の経路は、
図8に示すようになる。
・#15の状態では、スイッチング素子SW2、SW3、SW6、SW7がONになっており、他のスイッチング素子はOFFになっている。このとき、DC/DCコンバータ10における電流の経路は、
図9に示すようになる。
・#16の状態では、スイッチング素子SW1、SW2、SW6、SW7がONになっており、他のスイッチング素子はOFFになっている。このとき、DC/DCコンバータ10における電流の経路は、
図10に示すようになる。
【0035】
このように、#12、#13、#15、#16では、同期整流を実現できている。#11及び#14では同期整流を実現できていないが、これらの状態の期間は短いので、これらの期間の損失は大きくない。
このようにDC/DCコンバータ10を含む電力変換装置1において、基準信号から、位相シフト量の演算と、論理演算回路による論理演算によって、スイッチング素子SW5~SW8の同期制御を行う制御信号を生成することができ、外付けのショットキーバリアダイオードや高性能なCPU等を必要としないので、コストを抑制し、回路面積を増大させることなく、同期整流を実現し、高効率の電力変換装置を提供することが可能となる。
【0036】
<降圧モード2>
図11は、降圧モードで、入出力条件によりリアクトル電流IL1が不連続となる場合の例である。
図11に示す例でも、G2が基準信号として選択されている。
ここでも、信号Toff2_1は、基礎制御信号G2の位相を、半周期遅らせた位相からさらにf
1(T,TON,TOFF,Vin,Vout)だけ進ませた信号であり、信号Toff2_2は、Toff2_1の位相を反転させた信号である。
そして、信号G2_shiftは、基準制御信号G2の位相を、f
2(T,TON,Vin,Vout)だけ遅らせた信号であり、G4_shiftは、G2_shiftの位相を反転させた信号である。
そして、制御信号G6及びG7は、
図4(A)に示されるように、信号Toff2_2
と、信号G2_shiftとの、AND論理素子22011による論理積である。この論理演算回路2201は、同期整流用論理演算部22に設けられている。同様に、制御信号G5及びG8は、
図4(B)に示されるように、信号Toff2_1と、信号G4_shiftとの、AND論理素子22012による論理積である。この論理演算回路2202は、同期整流用論理演算部22に設けられている。この降圧モード2において制御信号G5~G8を生成する論理演算回路2201及び2202は、降圧モード1と共通である。
【0037】
このようにして、生成された制御信号G1~G8は、制御信号出力部213から出力される。制御信号G1~G8により、DC/DCコンバータ10を駆動した場合のリアクトル電流IL1を
図11の最下段に示す。このとき、DC/DCコンバータ10は、#21~#26の状態を順に遷移する。各状態でのDC/DCコンバータ10の電流経路の説明は省略するが、#23と#26の不連続となる状態を除き、同期整流が実現できている。
このようにDC/DCコンバータ10を含む電力変換装置1において、基準制御信号から、位相シフト量の演算と、論理演算回路による論理演算によって、スイッチング素子SW5~SW8の同期制御を行う制御信号を生成することができ、外付けのショットキーバリアダイオードや高性能なCPU等を必要としないので、コストを抑制し、回路面積を増大させることなく、同期整流を実現し、高効率の電力変換装置を提供することが可能となる。
【0038】
<昇圧モード1>
図12は、本実施例に係るDC/DCコンバータ10を、昇圧コンバータとして動作させる場合に用いられる信号のタイミングチャートを示す。ここでは、DC/DCコンバータ10の1次側の第1フルブリッジ回路11に含まれる4つのスイッチング素子SW1~SW4に対する制御信号G1~G4、SW7及びSW8に対する制御信号G7及びG8を基礎制御信号として、これらの信号から、2次側の第2フルブリッジ回路12に含まれる4つのスイッチング素子SW5~SW8に対する制御信号を生成する。ここでは、基礎制御信号のうち、第1フルブリッジ回路11に含まれるスイッチング素子SW1~SW4に対する制御信号に対しては変更されず、そのまま、制御信号として用いられるが、第2フルブリッジ回路12に含まれるスイッチング素子SW5~SW8に対する制御信号は、基礎制御信号のうち、G2に対して位相量をシフトさせる等の処理とともに、スイッチング素子SW7、SW8に対する基礎制御信号であるG07、G08をそれぞれ入力の一つとする論理演算を行うことにより生成される。ここでは、スイッチング素子SW7、SW8に対する制御信号は、基礎制御信号に対する処理を経て生成されるので、スイッチング素子SW7、SW8に対する基礎制御信号をG07、G08と表記し、最終的に生成され、スイッチング素子SW7、SW8の制御に用いられる制御信号をG7、G8と表記する。このため、同期整流用の制御信号を生成する際の、信号処理の対象となる基礎制御信号を特に、基準信号という。
図12では、上段から4つのG1~G4、G07、G08が基準信号である。
【0039】
信号G1,4_shiftは、基準制御信号G1の位相を、f3(T,TON,Vin,Vout)だけ遅らせた信号であり、信号G2,3_shiftは、信号G1,4_shiftの位相を反転させた信号である。ここでは、f3(T,TON,Vin,Vout)は、T,TON,Vin,Voutを変数とする所定の関数であり、負値が除外されたものである
そして、信号Toff1_Aは、基礎制御信号G2の位相を、半周期遅らせた位相からさらにf4(T,TON,Vin,Vout)だけ進ませた信号であり、信号Toff1_Bは、Toff1_Aの位相を反転させた信号である。ここでは、Tは周期,TONは基礎制御信号G1、G4、G7の同時ON期間,TOFFは基礎制御信号G1、G4、G8の同時ON期間,VinはDC/DCコンバータ10の入力電圧、VoutはDC/DCコンバータ10の出力電圧であり、f4(T,TON,Vin,Vout)は、これら
を変数とする所定の関数であり、負値が除外されたものである
【0040】
同期整流用位相シフト量演算部212は、f4(T,TON,Vin,Vout)、f3(T,TON,Vin,Vout)を演算し、基準信号を位相シフトして生成された信号を同期整流用論理演算部32に出力する。例えば、同期整流用位相シフト量は、不連続モードにおける零電流区間と連続モードのおける回生区間を演算することで求める。このような、同期整流用位相シフト量の演算は、基準信号の周期ごとに行う。
【0041】
制御信号G5は、
図13(A)に示されるように、信号Toff1_Aと、信号G08との、AND論理素子22013による論理積である。この論理演算回路2203は、同期整流用論理演算部22に設けられている。制御信号G6は、
図13(B)に示されるように、信号Toff1_Bと、信号G07との、AND論理素子22014による論理積である。この論理演算回路2204は、同期整流用論理演算部22に設けられている。
【0042】
制御信号G7は、
図13(C)に示されるように、信号G2,3shiftと、信号G07との、OR論理素子22015による論理和である。この論理演算回路2205は、同期整流用論理演算部22に設けられている。制御信号G8は、
図13(D)に示されるように、信号G1,4shiftと、信号G08との、OR論理素子22016による論理和である。この論理演算回路2206は、同期整流用論理演算部22に設けられている。
【0043】
このようにして、生成された制御信号G1~G8は、制御信号出力部213から出力される。制御信号G1~G8により、DC/DCコンバータ10を駆動した場合のリアクトル電流IL1を
図12の最下段に示す。このとき、DC/DCコンバータ10は、以下の#31~#36の状態を順に遷移する。
・#31の状態では、スイッチング素子SW1、SW4、SW7がONになっており、他のスイッチン素子はOFFになっている。このとき、DC/DCコンバータ10における電流の経路は、
図14に示すようになる。
・#32の状態では、スイッチング素子SW1、SW4、SW7、SW8がONになっており、他のスイッチング素子はOFFとなっている。このとき、DC/DCコンバータ10における電流の経路は、
図15に示すようになる。
・#33の状態では、スイッチング素子SW1、SW4、SW5、SW8がONになっており、他のスイッチング素子はOFFになっている。このとき、DC/DCコンバータ10における電流の経路は、
図16に示すようになる。
・#34の状態では、スイッチング素子SW2、SW3、SW8がONになっており、他のスイッチング素子はOFFになっている。このとき、DC/DCコンバータ10における電流の経路は、
図17に示すようになる。
・#35の状態では、スイッチング素子SW2、SW3、SW7、SW8がONになっており、他のスイッチング素子はOFFになっている。このとき、DC/DCコンバータ10における電流の経路は、
図18に示すようになる。
・#36の状態では、スイッチング素子SW2、SW3、SW6、SW7がONになっており、他のスイッチング素子はOFFになっている。このとき、DC/DCコンバータ10における電流の経路は、
図19に示すようになる。
【0044】
このように、#32、#33、#35、#36では、同期整流を実現できている。#31及び#34では同期整流を実現できていないが、これらの状態の期間は短いので、これらの期間の損失は大きくない。
このようにDC/DCコンバータ10を含む電力変換装置1において、基準信号から、位相シフト量の演算と、論理演算回路による論理演算によって、スイッチング素子SW5~SW8の同期制御を行う制御信号を生成することができ、外付けのショットキーバリア
ダイオードや高性能なCPU等を必要としないので、コストを抑制し、回路面積を増大させることなく、同期整流を実現し、高効率の電力変換装置を提供することが可能となる。
【0045】
<昇圧モード2>
図20は、本実施形態に係るDC/DCコンバータ10を、昇圧コンバータとして動作させる場合に用いられる信号のタイミングチャートを示す。
図20は、昇圧モードで、入出力条件によりリアクトル電流IL1が不連続となる場合の例である。信号の表記については、昇圧モード1で説明したところに従う。ここでは、DC/DCコンバータ10の1次側の第1フルブリッジ回路11に含まれる4つのスイッチング素子SW1~SW4に対する制御信号G1~G4、SW7及びSW8に対する制御信号G07及びG08を基礎制御信号として、これらの信号から、2次側の第2フルブリッジ回路12に含まれる4つのスイッチング素子SW5~SW8に対する制御信号を生成する。ここでは、基礎制御信号のうち、第1フルブリッジ回路11に含まれるスイッチング素子SW1~SW4に対する制御信号に対しては変更されず、そのまま、制御信号として用いられるが、第2フルブリッジ回路12に含まれるスイッチング素子SW5~SW8に対する制御信号は、基礎制御信号のうち、G2に対して位相量をシフトさせる等の処理とともに、スイッチング素子SW7、SW8に対する基礎制御信号であるG07、G08をそれぞれ入力の一つとする論理演算を行うことにより生成される。
図20では、上段から4つのG1~G4、G07、G08が基準信号である。
【0046】
信号G1,4_shiftは、基準制御信号G1の位相を、f3(T,TON,Vin,Vout)だけ遅らせた信号であり、信号G2,3_shiftは、信号G1,4_shiftの位相を反転させた信号である。ここでは、f3(T,TON,Vin,Vout)は、T,TON,Vin,Voutを変数とする所定の関数であり、負値が除外されたものである
そして、信号Toff1_Aは、基礎制御信号G2の位相を半周期遅らせた位相からさらにf4(T,TON,Vin,Vout)だけ進ませた信号であり、信号Toff1_Bは、Toff1_Aの位相を反転させた信号である。ここでは、f4(T,TON,Vin,Vout)は、これらを変数とする所定の関数であり、負値が除外されたものである
【0047】
制御信号G5は、
図13(A)に示されるように、信号Toff1_Aと、信号G08との、AND論理素子22013による論理積である。この論理演算回路2203は、同期整流用論理演算部22に設けられている。制御信号G6は、
図13(B)に示されるように、信号Toff1_Bと、信号G07との、AND論理素子22014による論理積である。この論理演算回路2204は、同期整流用論理演算部22に設けられている。
この昇圧モード2において制御信号G5及びG6を生成する論理演算回路2203及び2204は、昇圧モード1と共通である。
【0048】
制御信号G7は、
図13(C)に示されるように、信号G2,3shiftと、信号G07との、OR論理素子22015による論理和である。この論理演算回路2205は、同期整流用論理演算部22に設けられている。制御信号G8は、
図13(D)に示されるように、信号G1,4shiftと、信号G08との、OR論理素子22016による論理和である。この論理演算回路2206は、同期整流用論理演算部22に設けられている。
この昇圧モード2において制御信号G7及びG8を生成する論理演算回路2205及び2206は、昇圧モード1と共通である。
【0049】
このようにして、生成された制御信号G1~G8は、制御信号出力部213から出力される。制御信号G1~G8により、DC/DCコンバータ10を駆動した場合のリアクト
ル電流IL1を
図20の最下段に示す。このとき、DC/DCコンバータ10は、#41~#46の状態を順に遷移する。各状態でのDC/DCコンバータ10の電流経路の説明は省略するが、#43と#46の不連続となる状態を除き、同期整流が実現できている。
このようにDC/DCコンバータ10を含む電力変換装置1において、基準信号から、位相シフト量の演算と、論理演算回路による論理演算によって、スイッチング素子SW5~SW8の同期制御を行う制御信号を生成することができ、外付けのショットキーバリアダイオードや高性能なCPU等を必要としないので、コストを抑制し、回路面積を増大させることなく、同期整流を実現し、高効率の電力変換装置を提供することが可能となる。
【0050】
上述の降圧モード1、降圧モード2、昇圧モード1、昇圧モード2に対する同期制御用の制御信号を生成する際に、G1、G2を基準信号として利用しているが、G3、G4を基準信号としてもよい。
【0051】
〔実施例2〕
以下、本発明の実施例2に係る電力変換装置1及びDC/DCコンバータ10について説明する。実施例2に係るDC/DCコンバータ10は、制御ユニット30の構成を除き、実施例1と同様であるため、同様の構成については、同様の符号を用いて詳細な説明を省略する。
【0052】
図21に制御ユニット30のブロック図を示す。制御ユニット30は、マイクロコントローラ等からなる主制御部31と、アナログ回路又は小型CPU等で構成される同期整流用論理演算部32を含む。また、主制御部31は、基準信号生成部211、同期整流用位相シフト量演算部212、制御信号出力部213、連続判定部311を含む。主制御部31が、連続判定部311を含む点と、同期整流用論理演算部32の構成が、実施例1に係る制御ユニット20と異なるが、他の構成は共通である。連続判定部311は、電力変換装置1の入出力条件等の情報を取得し、テーブル等の連続判定手段を用いて、DC/DCコンバータ10の動作が連続モードとなるか、不連続モードとなるかを判定し、その判定結果を、連続モードのとき制御信号のON(すなわち1)、不連続モードのとき制御信号のOFF(すなわち0)と同等の電圧を出力する。DC/DCコンバータ10のこれら各部の具体的な機能については、後述する。
【0053】
<降圧モード1>
図22は、本実施例に係るDC/DCコンバータ10を、降圧コンバータとして動作させる場合に用いられる信号のタイミングチャートを示す。ここでは、DC/DCコンバータ10の1次側の第1フルブリッジ回路11に含まれる4つのスイッチング素子SW1~SW4に対する制御信号G1~G4から、2次側の第2フルブリッジ回路12に含まれる4つのスイッチング素子SW5~SW8に対する制御信号を生成する。
図22に示す、
このため、同期整流用の制御信号を生成する際の、信号処理の対象となる基礎制御信号を特に、基準信号という。
図3に示す例では、上段から4つのG1~G4が基礎制御信号のタイミングチャートである。
【0054】
信号Toff2_1、信号Toff2_2、信号G2_shift及び信号G4_shiftの生成方法は、実施例1に係る降圧モード1と同様であるため、説明を省略する。
制御信号G6及びG7は、
図23(A)に示すように、信号Toff2_2と、信号G2_shiftとの、AND論理素子32011による論理積の出力と、信号G2_shiftと、連続判定信号との、AND論理素子32012の出力との、OR論理素子32013による論理和である。ここで、連続判定信号は、上述の連続判定部311の出力信号である。また、制御信号G5及びG8は、
図23(B)に示すように、信号Toff2_1と、信号G4_shiftとの、AND論理素子32014による論理積の出力と、信号G4_shiftと、連続判定信号との、AND論理素子32015の出力との、O
R論理素子32016による論理和である。この論理演算回路3201及び3202は、同期整流用論理演算部32に設けられている。
【0055】
このようにして、生成された制御信号G1~G8は、制御信号出力部213から出力される。制御信号G1~G8により、DC/DCコンバータ10を駆動した場合のリアクトル電流IL1を
図22の最下段に示す。このとき、DC/DCコンバータ10は、#51~#56の状態を順に遷移する。各状態でのDC/DCコンバータ10の電流経路の説明は省略するが、論理演算回路3201及び3202に連続判定信号を入力することで、連続か不連続かによりスイッチングパターンを変更せずに、#51~#56の全ての状態で同期整流が実現できる。
このようにDC/DCコンバータ10を含む電力変換装置1において、基準信号から、位相シフト量の演算と、論理演算回路による論理演算によって、スイッチング素子SW5~SW8の同期制御を行う制御信号を生成することができ、外付けのショットキーバリアダイオードや高性能なCPU等を必要としないので、コストを抑制し、回路面積を増大させることなく、同期整流を実現し、高効率の電力変換装置を提供することが可能となる。
【0056】
<降圧モード2>
図24は、降圧モードで、入出力条件によりリアクトル電流IL1が不連続となる場合の例である。
図24に示す例でも、G2が基準信号として選択されている。
信号Toff2_1、信号Toff2_2、信号G2_shift及び信号G4_shiftの生成方法は、実施例1に係る降圧モード1と同様であるため、説明を省略する。
制御信号G6及びG7は、
図23(A)に示すように、信号Toff2_2と、信号G2_shiftとの、AND論理素子32011による論理積の出力と、信号G2_shiftと、連続判定信号との、AND論理素子32012の出力との、OR論理素子32013による論理和である。また、制御信号G5及びG8は、
図23(B)に示すように、信号Toff2_1と、信号G4_shiftとの、AND論理素子32014による論理積の出力と、信号G4_shiftと、連続判定信号との、AND論理素子32015の出力との、OR論理素子32016による論理和である。この降圧モード2において制御信号G5~G8を生成する論理演算回路3201及び3202は、実施例2の降圧モード1と共通である。
【0057】
このようにして、生成された制御信号G1~G8は、制御信号出力部213から出力される。制御信号G1~G8により、DC/DCコンバータ10を駆動した場合のリアクトル電流IL1を
図24の最下段に示す。このとき、DC/DCコンバータ10は、#61~#66の状態を順に遷移する。論理演算回路3201及び3202に、連続判定信号を入力することで、不連続時にAND論理素子32012及び32015が機能しないようになっている。各状態でのDC/DCコンバータ10の電流経路の説明は省略するが、#53と#56の不連続となる状態を除き、同期整流が実現できている。
このようにDC/DCコンバータ10を含む電力変換装置1において、基準信号から、位相シフト量の演算と、論理演算回路による論理演算によって、スイッチング素子SW5~SW8の同期制御を行う制御信号を生成することができ、外付けのショットキーバリアダイオードや高性能なCPU等を必要としないので、コストを抑制し、回路面積を増大させることなく、同期整流を実現し、高効率の電力変換装置を提供することが可能となる。
【0058】
<昇圧モード1>
図25は、実施例2に係るDC/DCコンバータ10を、昇圧コンバータとして動作させる場合に用いられる信号のタイミングチャートを示す。ここでは、DC/DCコンバータ10の1次側の第1フルブリッジ回路11に含まれる4つのスイッチング素子SW1~SW4に対する制御信号G1~G4、SW7及びSW8に対する制御信号G07及びG0
8を基礎制御信号として、これらの信号から、2次側の第2フルブリッジ回路12に含まれる4つのスイッチング素子SW5~SW8に対する制御信号を生成する。ここでは、基礎制御信号のうち、第1フルブリッジ回路11に含まれるスイッチング素子SW1~SW4に対する制御信号に対しては変更されず、そのまま、制御信号として用いられるが、第2フルブリッジ回路12に含まれるスイッチング素子SW5~SW8に対する制御信号は、基礎制御信号のうち、G2に対して位相量をシフトさせる等の処理とともに、スイッチング素子SW7、SW8に対する基礎制御信号であるG07、G08をそれぞれ入力の一つとする論理演算を行うことにより生成される。このため、同期整流用の制御信号を生成する際の、信号処理の対象となる基礎制御信号を特に、基準信号という。
図25では、上段から4つのG1~G4、G07、G08が基準信号である。
【0059】
信号G1,4_shift、信号G2,3_shift、信号Toff1_A及び信号Toff1_Bの生成方法は、実施例1に係る昇圧モード1と、同様であるため、説明を省略する。
制御信号G5は、
図26(A)に示すように、信号Toff1_Aと、信号G08との、AND論理素子22013による論理積の出力と、信号G08と、信号G1,4_shiftと、連続判定信号とのAND論理素子32018による論理積の出力とのOR論理素子32019による論理和である。この論理演算回路3203は、同期整流用論理演算部32に設けられている。
【0060】
制御信号G6は、
図26(B)に示されるように、信号Toff1_Bと、信号G07とのAND論理素子32020の出力と、信号07と、信号Toff1_Bと、信号G07との、AND論理素子22014による論理積の出力と、信号G08と、信号G1,4_shiftと、連続判定信号とのAND論理素子32021による出力との、OR論理素子32022による論理和である。この論理演算回路3204は、同期整流用論理演算部32に設けられている。
【0061】
制御信号G7は、
図26(C)に示されるように、信号G2,3_shiftと、信号G07との、OR論理素子32023による論理和である。このOR論理素子32023を含む論理演算回路3205は、同期整流用論理演算部32に設けられている。また、制御信号G8は、
図26(D)に示されるように、信号G1,4_shiftと、信号G08との、OR論理素子32024による論理和である。このOR論演算素子32024を含む論理演算回路3206は、同期整流用論理演算部32に設けられている。
【0062】
このようにして、生成された制御信号G1~G8は、制御信号出力部213から出力される。制御信号G1~G8により、DC/DCコンバータ10を駆動した場合のリアクトル電流IL1を
図25の最下段に示す。このとき、DC/DCコンバータ10は、#71~#76の状態を順に遷移する。各状態でのDC/DCコンバータ10の電流経路の説明は省略するが、論理演算回路3201及び3202に連続判定信号を入力することで、連続か不連続かによりスイッチングパターンを変更せずに、#71~#76の全ての状態にわたって同期整流が実現できる。
このようにDC/DCコンバータ10を含む電力変換装置1において、基準信号から、位相シフト量の演算と、論理演算回路による論理演算によって、スイッチング素子SW5~SW8の同期制御を行う制御信号を生成することができ、外付けのショットキーバリアダイオードや高性能なCPU等を必要としないので、コストを抑制し、回路面積を増大させることなく、同期整流を実現し、高効率の電力変換装置を提供することが可能となる。
【0063】
<昇圧モード2>
図27は、昇圧モードで、入出力条件によりリアクトル電流IL1が不連続となる場合の例である。
信号G1,4_shift、信号G2,3_shift、信号Toff1_A及び信号Toff1_Bの生成方法は、実施例1に係る昇圧モード1と同様であるため、説明を省略する。また、制御信号G5~G8の生成方法も実施例2の昇圧モード1と同様であるため、説明を省略する。
【0064】
このようにして、生成された制御信号G1~G8は、制御信号出力部213から出力される。制御信号G1~G8により、DC/DCコンバータ10を駆動した場合のリアクトル電流IL1を
図27の最下段に示す。このとき、DC/DCコンバータ10は、#81~#86の状態を順に遷移する。各状態でのDC/DCコンバータ10の電流経路の説明は省略するが、論理演算回路3203及び3204に連続判定信号を入力することで、不連続時にAND論理素子32018及び32021が機能しないようになっている。各状態でのDC/DCコンバータ10の電流経路の説明は省略するが、#83と#86の不連続となる状態を除き、同期整流が実現できている。
このようにDC/DCコンバータ10を含む電力変換装置1において、基準信号から、位相シフト量の演算と、論理演算回路による論理演算によって、スイッチング素子SW5~SW8の同期制御を行う制御信号を生成することができ、外付けのショットキーバリアダイオードや高性能なCPU等を必要としないので、コストを抑制し、回路面積を増大させることなく、同期整流を実現し、高効率の電力変換装置を提供することが可能となる。
【0065】
〔変形例〕
第1フルブリッジ回路11及び第2フルブリッジ回路12のどちらを2次側とするかは、力行/回生の運転状態を同期整流用論理演算部22、32に入力して判断するようにしてもよい。
上述の実施例1及び実施例2において、絶縁側双方向DC/DCコンバータ10を例として説明したが、本発明は、絶縁型、非絶縁型にかかわらず、双方向昇降圧チョッパや、双方向多機能チョッパについても適用することができる。
【0066】
なお、以下には本発明の構成要件と実施例の構成とを対比可能とするために、本発明の構成要件を図面の符号付きで記載しておく。
<発明1>
入力された電圧を平滑化するコンデンサ(C1)と、
第1スイッチング部(11)と、
第2スイッチング部(12)と、
リアクトル(Lr1,Lr2)と、
絶縁トランス(TR)と、
第2コンデンサ(C2)と、
前記第1スイッチング部(11)及び前記第2スイッチング部(12)のスイッチングを制御する制御部(20)と、
を備え、
前記制御部(20)が、前記リアクトル(Lr1,Lr2)及び前記絶縁トランス(TR)によって、直流電力を交流電力に変換し、前記第2コンデンサ(C2)によって、該交流電力を直流電力に変換する電力変換装置(1)において、
前記制御部(20)は、
前記第1スイッチング部(SW1~SW4)のスイッチングを制御する第1スイッチング制御信号のうちの少なくともいずれかを基準信号とし、
前記基準信号の位相をシフトさせる位相シフト量を演算する位相シフト量演算部(212)と、
前記位相シフト量だけ前記基準信号の位相をシフトさせた信号を少なくとも一つの入力とする論理演算を行い、前記第2スイッチング部(SW5~SW8)のスイッチングを制御する第2スイッチング制御信号を出力する論理演算部(22)と、
を有することを特徴とする電力変換装置(1)。
【符号の説明】
【0067】
1 :電力変換装置
11 :第1フルブリッジ回路
12 :第2フルブリッジ回路
C1,C2 :コンデンサ
Lr1,Lr2 :リアクトル
TR :絶縁トランス
SW1~SW8 :スイッチング素子
20 :制御ユニット
22 :同期整流用論理演算部
212 :同期整流用位相シフト量演算部