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  • 特許-半導体装置の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-22
(45)【発行日】2024-05-01
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20240423BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20240423BHJP
【FI】
H01L23/30 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020045781
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021150344
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】光田 昌也
(72)【発明者】
【氏名】木村 俊次
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-178272(JP,A)
【文献】国際公開第2017/199639(WO,A1)
【文献】特開2009-283621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子および前記半導体素子を封止する第1の封止材を有する構造体を準備する工程と、
前記第1の封止材の表面の特定の部位に活性エネルギー線を照射する工程と、
前記第1の封止材の表面の前記活性エネルギー線が照射された領域に金属層を選択的に形成することにより、前記半導体素子に設けられた導体部に電気的に接続する第1の配線層を形成する工程と、
前記第1の封止材上に、前記第1の封止材および前記第1の配線層を封止する第2の封止材を圧縮成形により形成する工程と、
第1の配線層を形成する前記工程の後、第2の封止材を形成する前記工程の前に、前記第1の配線層が設けられた前記第1の封止材の表面にArプラズマ処理を施す工程と、
前記第2の封止材の表面の特定の部位に活性エネルギー線を照射する工程と、
前記第2の封止材の表面の前記活性エネルギー線が照射された領域に金属層を選択的に形成することにより、前記第1の配線層に電気的に接続する第2の配線層を形成する工程と、
を含み、
構造体を準備する前記工程が、前記第1の封止材を圧縮成形により形成する工程を含み、
前記第1および第2の封止材が、それぞれ、
熱硬化性樹脂と、
無機充填材と、
活性エネルギー線の照射により金属核を形成する非導電性金属化合物と、
を含む、第1および第2のLDS(LASER DIRECT STRUCTURING)用熱硬化性樹脂組成物の硬化物により構成されている、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1および第2のLDS用熱硬化性樹脂組成物がカップリング剤をさらに含む、請求項1に記載の半導体装置の製造方法
【請求項3】
前記第2のLDS用熱硬化性樹脂組成物がシート状または液状である、請求項またはに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1および第2のLDS用熱硬化性樹脂組成物が硬化剤をさらに含み、
前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂を含む、請求項1乃至3いずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記無機充填材のd 50 粒径が、1.0μm以上20μm以下である、請求項1乃至4いずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LASER DIRECT STRUCTURING(LDS)に用いられる樹脂材料に関する技術として、特許文献1(特開2015-134903号公報)に記載のものがある。同文献には、LDS添加剤を含む熱可塑性樹脂組成物を連続繊維に含浸させてなる繊維強化樹脂材料について記載されており、熱可塑性樹脂としてポリアミド樹脂が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-134903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、成形回路部品(Molded Interconnect Device:MID)等の半導体装置の製造にLDSによる微細加工を用いることを検討した。
本発明は、封止材とその隣接部材との密着性に優れる半導体装置の製造技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、
半導体素子と、
前記半導体素子および前記半導体素子に設けられた導体部を封止する第1の封止材と、
前記第1の封止材上に設けられるとともに、前記導体部に電気的に接続する第1の配線層と、
前記第1の封止材上に設けられるとともに、前記第1の封止材および前記第1の配線層を封止する第2の封止材と、
前記第2の封止材上に設けられるとともに前記第1の配線層に電気的に接続する第2の配線層と、
を含み、
前記第1および第2の封止材が、それぞれ、
熱硬化性樹脂と、
無機充填材と、
活性エネルギー線の照射により金属核を形成する非導電性金属化合物と、
を含む、第1および第2のLDS(LASER DIRECT STRUCTURING)用熱硬化性樹脂組成物の硬化物により構成されている、半導体装置が提供される。
【0006】
本発明によれば、
半導体素子および前記半導体素子を封止する第1の封止材を有する構造体を準備する工程と、
前記第1の封止材の表面の特定の部位に活性エネルギー線を照射する工程と、
前記第1の封止材の表面の前記活性エネルギー線が照射された領域に金属層を選択的に形成することにより、前記半導体素子に設けられた導体部に電気的に接続する第1の配線層を形成する工程と、
前記第1の封止材上に、前記第1の封止材および前記第1の配線層を封止する第2の封止材を形成する工程と、
前記第2の封止材の表面の特定の部位に活性エネルギー線を照射する工程と、
前記第2の封止材の表面の前記活性エネルギー線が照射された領域に金属層を選択的に形成することにより、前記第1の配線層に電気的に接続する第2の配線層を形成する工程と、
を含み、
前記第1および第2の封止材が、それぞれ、
熱硬化性樹脂と、
無機充填材と、
活性エネルギー線の照射により金属核を形成する非導電性金属化合物と、
を含む、第1および第2のLDS(LASER DIRECT STRUCTURING)用熱硬化性樹脂組成物の硬化物により構成されている、半導体装置の製造方法が提供される。
【0007】
なお、これらの各構成の任意の組み合わせや、本発明の表現を方法、装置などの間で変換したものもまた本発明の態様として有効である。
たとえば、本発明によれば、前記本発明における半導体装置の前記第1または第2の封止材に用いられるLDS用熱硬化性樹脂組成物およびその硬化物を得ることもできる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、封止材とその隣接部材との密着性に優れる半導体装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態における半導体装置の構成例を示す断面図である。
図2】実施形態における半導体装置の製造工程の一例を示す断面図である。
図3】実施形態における半導体装置の製造工程の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは必ずしも一致していない。数値範囲の「A~B」は断りがなければ、「A以上B以下」を表す。組成物は、各成分をいずれも単独でまたは2種以上を組み合わせて含むことができる。
【0011】
(半導体装置)
図1は、本実施形態における半導体装置の構成例を示す断面図である。図1に示した半導体装置100は、半導体素子103と、半導体素子103および半導体素子103に設けられた導体部105を封止する第1の封止材(第1封止層107)と、第1封止層107の上に設けられるとともに、導体部105に電気的に接続する第1の配線層(第1配線層109)と、第1封止層107の上に設けられるとともに、第1封止層107および第1配線層109を封止する第2の封止材(第2封止層111)と、第2封止層111の上に設けられるとともに第1配線層109に電気的に接続する第2の配線層(第2配線層113)と、を含む。
第1封止層107および第2封止層111は、それぞれ、熱硬化性樹脂と、無機充填材と、活性エネルギー線の照射により金属核を形成する非導電性金属化合物と、を含む、第1および第2のLDS(LASER DIRECT STRUCTURING)用熱硬化性樹脂組成物の硬化物により構成されている。LDS用熱硬化性樹脂組成物の構成については後述する。
【0012】
半導体装置100の具体例として、成形回路部品、各種半導体パッケージが挙げられる。
成形回路部品の具体例として、携帯電話等の携帯電子機器、自動車等のセンサー部品または医療機器、パワーマネジメント部品等の部材に用いられるものなどが挙げられる。
半導体パッケージの具体例として、MAP(Mold Array Package)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、CSP(Chip Size Package)、QFN(Quad Flat Non-leaded Package)、SON(Small Outline Non-leaded Package)、BGA(Ball Grid Array)、LF-BGA(Lead Flame BGA)、FCBGA(Flip Chip BGA)、MAPBGA(Molded Array Process BGA)、eWLB(Embedded Wafer-Level BGA)、Fan-In型eWLB、Fan-Out型eWLBなどの半導体パッケージ;SIP(System In package)などが挙げられる。
【0013】
また、半導体装置100は、たとえば三次元成形回路部品(Molded Interconnect Device:MID)である。MIDは、三次元形状、上記樹脂成形品、三次元回路の3要素を有するものであり、たとえば、三次元構造の樹脂成形品の表面に金属膜で回路形成された部品である。MIDは、具体的には、三次元構造を有する樹脂成形品と、この樹脂成形品の表面に形成された三次元回路と、を備えることができる。このようなMIDを使用することにより、空間を有効活用でき、部品点数の削減や軽薄短小化が可能である。
【0014】
半導体装置100において、半導体素子103は、基板101上に搭載されている。半導体素子103は、たとえばワイヤボンディングまたはフリップチップ接続等により、基板101に電気的に接続される。
なお、半導体素子103は半導体チップまたは半導体パッケージの形態で基板101の上に設けられていてもよい。
基板101は、たとえば、インターポーザ等の配線基板、またはリードフレームである。
【0015】
導体部105は、半導体素子103に設けられ、さらに具体的には半導体素子103の表面に露出する導電部材である。導体部105の具体例として、配線、電極が挙げられる。導体部105は、第1配線層109および第2配線層113に電気的に接続する。
【0016】
導体部105は、具体的には導電性材料により構成され、さらに具体的には金属材料により構成される。導体部105の材料は、接続信頼性向上の観点から、好ましくは構成元素として銅(Cu)を含み、より好ましくは銅または銅合金であり、さらに好ましくは銅である。
【0017】
第2封止層111は、第1封止層107の少なくとも一部を覆えばよく、図1の例では、第1封止層107の上面全体を覆っている。また、第2封止層111が第1封止層107の表面全体を覆う構成としてもよい。
【0018】
第1封止層107の厚さは、半導体素子103を安定的に封止する観点から、好ましくは100μm以上であり、より好ましくは150μm以上、さらに好ましくは200m以上である。
また、装置全体の薄型化の観点から、第1封止層107の厚さは、好ましくは600μm以下であり、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは400μm以下である。
【0019】
第2封止層111の厚さは、第1封止層107を安定的に封止する観点から、たとえば第1封止層107と同程度としてもよい。また、LDSによる加工安定性向上の観点から、第2封止層111の厚さは、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは50μm以上である。
また、装置全体の薄型化の観点から、第2封止層111の厚さは、好ましくは300μm以下であり、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは150μm以下である。
【0020】
次に、半導体装置100の製造方法を説明する。図2(a)~図2(d)、図3(a)および図3(b)は、半導体装置100の製造工程の一例を示す断面図である。
半導体装置100の製造方法は、たとえば以下の工程1~工程6を含む。
(工程1)半導体素子103および半導体素子103を封止する第1封止層107を有する構造体を準備する工程
(工程2)第1封止層107の表面の特定の部位に活性エネルギー線を照射する工程
(工程3)第1封止層107の表面の活性エネルギー線が照射された領域(凹部115)に金属層を選択的に形成することにより、半導体素子103に設けられた導体部105に電気的に接続する第1配線層109を形成する工程
(工程4)第1封止層107の上に、第1封止層107および第1配線層109を封止する第2封止層111を形成する工程
(工程5)第2封止層111の表面の特定の部位に活性エネルギー線を照射する工程、
(工程6)第2封止層111の表面の活性エネルギー線が照射された領域(凹部117)に金属層を選択的に形成することにより、第1配線層109に電気的に接続する第2配線層113を形成する工程
【0021】
また、半導体装置100の製造方法は、好ましくは、工程1~6を含むとともに以下の工程7をさらに含む。
(工程7)第1配線層109を形成する工程3の後、第2封止層111を形成する工程4の前に、第1配線層109が設けられた第1封止層107の表面にArプラズマ処理を施す工程
以下、各工程についてさらに具体的に説明する。
【0022】
工程1においては、たとえば常法に従い基板101上に半導体素子103を搭載し(図2(a))、第1封止層107を形成する(図2(b))。第1封止層107の形成には、生産安定性向上の観点、および、チップ等の半導体素子やワイヤーの封止の安定性を高める観点から、好ましくは圧縮成形またはトランスファー成形が用いられる。
【0023】
工程2においては、第1封止層107の表面の特定の部位にレーザー等の活性エネルギー線を選択的に照射する。レーザー照射により、たとえば、第1封止層107のレーザー照射部に凹部115を形成することができる(図2(c))。凹部115は、たとえば、第1封止層107をその厚さ方向に貫通する領域と、第1封止層107の面内方向に延びる領域とを有する。
レーザーは、たとえば、YAGレーザー、エキシマレーザー、電磁線等の公知のレーザーから適宜選択することができ、YGAレーザーが好ましい。また、レーザーの波長も定めるものではないが、たとえば、200nm以上2000nm以下であり、細線化の観点から、好ましくは240nm以上1100nm以下である。この中でも、好ましくは248nm、308nm、355nm、515nm、532nm、1064nmまたは1060nmのものがレーザーとして挙げられる。
また、工程2の後、工程3の前に表面洗浄工程を追加してもよい。
【0024】
工程3においては、LDSにより第1封止層107の所定の領域に選択的に金属膜が形成される。LDSにおいては、具体的には、LDS添加剤を含有する第1封止層107の表面に活性エネルギー線を照射して金属核を生成し、その金属核をシードとして、無電解めっき等のめっき処理により、エネルギー線照射領域にめっきパターンを形成する。このめっきパターンに基づき配線、回路等の導電性部材を形成することができる。以下、さらに具体的に説明する。
【0025】
工程3において、第1封止層107の表面のレーザー照射部位、具体的には凹部115に第1配線層109を選択的に形成する(図2(d))。
図2(d)には、工程3において、凹部115の内壁において、第1封止層107の厚さ方向全体にわたるとともに、第1封止層107の表面にわたって、第1配線層109を形成した例が示されている。第1配線層109は、導体部105に接続するように設けられていればよく、たとえば第1配線層109は、凹部115の一部または全体に埋設されていてもよい。
第1配線層109は、具体的にはめっき膜により構成される。
また、工程3は、具体的には、凹部115に金属を適用する工程と、凹部115に金属のめっき層を成長させる工程と、を含む。
【0026】
めっき処理としては、電解めっきまたは無電解めっきのいずれを用いてもよい。工程2においてレーザーが照射された領域に、めっき処理を施すことにより、回路(めっき層)を形成することができる。めっき液としては、定めるものではなく、公知のめっき液を広く採用することができ、金属成分として銅、ニッケル、金、銀、パラジウムが混合されているめっき液を用いてもよい。
【0027】
工程3の後、工程4の前に工程7をおこなうとき、工程7により、第1配線層109上に存在する密着を阻害する成分を除去することができるため、第1封止層107と第2封止層111との密着性をさらに向上することができる。密着を阻害する成分の具体例として、第1封止層107をトランスファー成形で形成するときに熱硬化性樹脂組成物中に含まれるワックス成分が挙げられる。
【0028】
工程7において、具体的には、Ar(アルゴン)プラズマ発生装置内に第1配線層109が設けられた構造体を配置し、20~500sccm程度の流量でArガスをチャンバー内に供給し、チャンバー内の圧力を50~1000Pa程度にして、マイクロ波(たとえば電力100~1000W程度、周波数1~20MHz程度)の印加によりArプラズマを生成することによりプラズマ処理をおこなうことができる。
【0029】
次に、工程4において、第1配線層109および第1封止層107の上面を覆う第2封止層111を形成する(図3(a))。第2封止層111の形成には、生産安定性向上の観点、および、チップ等の半導体素子やワイヤーの封止の安定性を高める観点から、好ましくは真空ラミネート、圧縮成形またはトランスファー成形が用いられる。
また、第2封止層111の形成に用いられる熱硬化性樹脂組成物には、固形(たとえば粒状)、シート状または液状のものを用いることができる。
さらに具体的には、圧縮成形の場合、第2封止層の樹脂厚制御性向上観点から、好ましくは固形またはシート状の熱硬化性樹脂組成物が用いられる。また、トランスファー成形の場合、材料ハンドリング性を高める観点から、好ましくは固形の熱硬化性樹脂組成物が用いられる。真空ラミネートの場合は、材料ハンドリング性を高める観点からシート状の熱硬化性樹脂組成物が用いられる。
【0030】
工程5においては、たとえば工程2で前述の方法を用いて第2封止層111の表面の特定の部位にレーザー等の活性エネルギー線を選択的に照射する。レーザー照射により、たとえば、第2封止層111のレーザー照射部に凹部117を形成することができる(図3(b))。凹部117は、たとえば、第2封止層111をその厚さ方向に貫通する領域と、第2封止層111の面内方向に延びる領域とを有する。
【0031】
工程6においては、たとえば工程3で前述の方法を用いて凹部117に第2配線層113を選択的に形成する。第2配線層113は、具体的にはめっき膜により構成される。
図3(b)および図1には、工程6において、凹部117の内壁において、第2封止層111の厚さ方向全体にわたるとともに、第2封止層111の表面にわたって、第2配線層113を形成した例が示されている。第2配線層113は、第1配線層109に接続するように設けられていればよく、たとえば第2配線層113は、凹部117の一部または全体に埋設されていてもよい。
以上の工程により、図1に示した半導体装置100が得られる。
【0032】
本実施形態においては、第1封止層107および第2封止層111の形成に、いずれもLDS用の樹脂組成物を用いることにより、第1封止層107または第2封止層111と隣接部材との密着性に優れる半導体装置100を簡便で安定的に得ることができる。さらに具体的には、第1封止層107と第1配線層109または第2封止層111との密着性、あるいは、第2封止層111と第1配線層109または第2配線層113との密着性を向上することも可能となる。
また、本実施形態において、第1配線層109および第2配線層113をLDSにより加工することにより、第1配線層109および第2配線層113を微細化、複雑化する場合にも、これらの配線層の製造安定性を向上することができる。
【0033】
なお、図1には、封止材が2つの封止層の積層体から構成される構成を例示したが、封止材が3以上の封止層を有する構成としてもよい。
たとえば、半導体装置100の第2封止層111の上に第3封止層が設けられるとともに、第2配線層113に接続する第3配線層が設けられてもよく、これらはそれぞれ第2封止層111および第2配線層113の形成方法に準じて形成することができる。
【0034】
次に、第1封止層107または第2封止層111に用いる熱硬化性樹脂組成物について説明する。
【0035】
(熱硬化性樹脂組成物)
本実施形態において、熱硬化性樹脂組成物は、レーザーダイレクトストラクチャリング(LASER DIRECT STRUCTURING:LDS)に用いるLDS用熱硬化性樹脂組成物である。LDSとは、MIDの製造方法の一つである。LDSにおいては、具体的には、LDS添加剤を含有する樹脂成形品の表面に活性エネルギー線を照射して金属核を生成し、その金属核をシードとして、無電解めっき等のめっき処理により、エネルギー線照射領域にめっきパターンを形成する。このめっきパターンに基づき配線、回路等の導電性部材を形成することができる。
【0036】
本実施形態において、LDS用熱硬化性樹脂組成物(以下、単に「熱硬化性樹脂組成物」ともよぶ。)は、熱硬化性樹脂と、無機充填材と、活性エネルギー線の照射により金属核を形成する非導電性金属化合物と、を含む。
熱硬化性樹脂組成物の構成成分および配合は、たとえば第1封止層107および第2封止層111の成形方法に応じてそれぞれ選択することができる。
【0037】
また、熱硬化性樹脂組成物の形状についても、たとえば第1封止層107および第2封止層111の成形方法に応じてそれぞれ選択することができる。
第1封止層107の形成方法を圧縮成形またはトランスファー成形とするとき、たとえば粒状またはシート状の熱硬化性樹脂組成物を用いることができる。
第2封止層111の形成方法を圧縮成形とするとき、たとえばシート状、粒状等の固形または液状の熱硬化性樹脂組成物を用いることができる。
また、第2封止層111の形成方法をトランスファー成形とするとき、たとえばシート状等の固形の熱硬化性樹脂組成物を用いることができる。
【0038】
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂は、LDSによる微細加工時のめっき付き特性を向上する観点、および、回路を形成する際に配線幅および配線間隔を小さくする観点から、好ましくはエポキシ樹脂およびビスマレイミド樹脂からなる群から選択される1種以上を含む。
また、硬化性、保存性、耐熱性、耐湿性、および耐薬品性を向上させる観点から、熱硬化性樹脂は好ましくはエポキシ樹脂を含み、より好ましくはエポキシ樹脂である。
一方、より優れる耐熱性を得る観点からは、熱硬化性樹脂は好ましくはビスマレイミド樹脂を含み、より好ましくはビスマレイミド樹脂である。
【0039】
エポキシ樹脂として、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を用いることができ、その分子量や分子構造は限定されない。
エポキシ樹脂は、たとえばビフェニル型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等に例示されるトリスフェノール型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂等のナフトール型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂からなる群から選択される1種類または2種類以上を含む。
熱硬化性樹脂組成物を硬化して得られる成形体の反り抑制や、充填性、耐熱性、耐湿性等の諸特性のバランスを向上させる観点から、これらのうち、ノボラック型エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂、およびフェノールアラルキル型エポキシ樹脂を好ましく用いることができる。また、同様の観点から、エポキシ樹脂は、好ましくはオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂およびトリフェニルメタン型エポキシ樹脂からなる群から選択される1種以上を含み、より好ましくはオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂およびビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂からなる群から選択される1種以上を含む。
【0040】
また、ビスマレイミド樹脂は、マレイミド基を2つ以上有する化合物の(共)重合体である。
マレイミド基を2つ以上有する化合物は、たとえば下記一般式(1)に示す化合物および下記一般式(2)に示す化合物のうちの少なくとも一方を含む。これにより、熱硬化性樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度を高めることができ、硬化物の耐熱性をより効果的に向上させることができる。
【0041】
【化1】
【0042】
上記一般式(1)において、R1は炭素数1以上30以下の2価の有機基であり、酸素原子および窒素原子のうちの1種以上を含んでいてもよい。硬化物の耐熱性を向上させる観点からは、R1が芳香環を含む有機基であることがより好ましい。本実施形態においては、R1として、たとえば下記一般式(1a)または(1b)のような構造が例示できる。
【0043】
【化2】
【0044】
上記一般式(1a)において、R31は、酸素原子および窒素原子のうちの1種以上を含んでいてもよい炭素数1以上18以下の2価の有機基である。また、複数のR32は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1以上4以下の置換もしくは無置換の炭化水素基である。
【0045】
【化3】
【0046】
上記一般式(1b)において、複数存在するRはそれぞれ独立して存在し、Rは水素原子、炭素数1~5のアルキル基もしくはフェニル基を表し、好ましくは水素原子である。また、mは平均値であり、1以上5以下の数であり、好ましくは1より大きく5以下の数、より好ましくは1より大きく3以下の数、さらに好ましくは1より大きく2以下の数である。
【0047】
本実施形態において適用することができる上記一般式(1)に示した化合物としては、たとえば、下記式(1-1)~(1-3)に示す化合物が挙げられる。
【化4】
【0048】
【化5】
【0049】
上記一般式(2)において、複数のR2は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1以上4以下の置換もしくは無置換の炭化水素基である。nは平均値であり、0以上10以下の数であり、好ましくは0以上5以下の数である。
【0050】
また、熱硬化性樹脂は、他の熱硬化性樹脂をさらに含んでもよい。このような熱硬化性樹脂としては、たとえば、ベンゾオキサジン樹脂、フェノール樹脂、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂等、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、シアネート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、およびベンゾシクロブテン樹脂からなる群から選択される1種または2種以上が挙げられる。
【0051】
熱硬化性樹脂組成物中の熱硬化性樹脂の含有量は、成形時における流動性を向上させて、充填性や成形安定性の向上を図る観点から、熱硬化性樹脂組成物全体に対して好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは2.5質量%以上である。
一方、耐湿信頼性や耐リフロー性を向上させる観点、および、成形体の反りを抑制する観点から、熱硬化性樹脂の含有量は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは14質量%以下、さらに好ましくは13質量%以下である。
ここで、本実施形態において、熱硬化性樹脂組成物全体に対する含有量とは、熱硬化性樹脂組成物が溶媒を含む場合には、熱硬化性樹脂組成物のうちの溶媒を除く固形分全体に対する含有量を指す。熱硬化性樹脂組成物の固形分とは、熱硬化性樹脂組成物中における不揮発分を指し、水や溶媒等の揮発成分を除いた残部を指す。
【0052】
(硬化剤)
熱硬化性樹脂組成物は、硬化剤を含んでもよい。硬化剤としては、たとえば重付加型の硬化剤、触媒型の硬化剤、および縮合型の硬化剤の3タイプに大別することができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
重付加型の硬化剤は、たとえば、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、メタキシレリレンジアミン(MXDA)などの脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、m-フェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)などの芳香族ポリアミンのほか、ジシアンジアミド(DICY)、有機酸ジヒドラジドなどを含むポリアミン化合物;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)などの脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)などの芳香族酸無水物などを含む酸無水物;ノボラック型フェノール樹脂、ポリビニルフェノール、アラルキル型フェノール樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型樹脂などのフェノール樹脂硬化剤;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテルなどのポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネートなどのイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂などの有機酸類からなる群から選択される1種または2種以上を含む。
【0054】
触媒型の硬化剤は、たとえば、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール(EMI24)などのイミダゾール化合物;BF3錯体などのルイス酸からなる群から選択される1種または2種以上を含む。
【0055】
縮合型の硬化剤は、たとえば、メチロール基含有尿素樹脂などの尿素樹脂;メチロール基含有メラミン樹脂などのメラミン樹脂からなる群から選択される1種または2種以上を含む。
【0056】
これらの中でも、耐熱性向上の観点から、熱硬化性樹脂組成物は、好ましくはフェノール樹脂から選択される1または2以上の硬化剤を含み、より好ましくはビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型樹脂を含む。
【0057】
熱硬化性樹脂組成物中の硬化剤の含有量は、成形時において、優れた流動性を実現し、充填性や成形性の向上を図る観点から、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上、さらにより好ましくは3質量%以上である。
一方、電子部品の耐湿信頼性や耐リフロー性を向上させる観点、および、得られる成形体の反りを抑制する観点から、硬化剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、好ましくは9質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは7質量%以下である。
【0058】
(無機充填材)
無機充填材は、たとえば、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ等の溶融シリカ;結晶シリカ、非晶質シリカ等のシリカ(二酸化珪素);アルミナ;水酸化アルミニウム;窒化珪素;および窒化アルミからなる群から選択される1種または2種以上の材料を含む。熱硬化性樹脂組成物の硬化物の機械特性または熱特性を好ましいものとする観点から、無機充填材は、好ましくは溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶シリカ等のシリカを含み、より好ましくはシリカである。
【0059】
無機充填材のd50粒径は、成形性を向上する観点から、好ましくは1.0μm以上であり、より好ましくは2.0μm以上である。
一方、レーザー加工後のメッキ配線幅を小さくする観点から、無機充填材のd50粒径は、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。
【0060】
ここで、無機充填材の粒径分布は、市販のレーザー回折式粒度分布測定装置(たとえば、島津製作所社製、SALD-7000)を用いて粒子の粒度分布を体積基準で測定することができる。
【0061】
熱硬化性樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、硬化物の耐熱性や耐湿性を向上する観点から、熱硬化性樹脂組成物全体に対して好ましくは65質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは75質量%以上である。
一方、熱硬化性樹脂組成物の成形時における流動性や充填性をより効果的に向上させる観点から、無機充填材の含有量は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。
【0062】
(活性エネルギー線の照射により金属核を形成する非導電性金属化合物)
活性エネルギー線の照射により金属核を形成する非導電性金属化合物(以下、単に「非導電性金属化合物」とも呼ぶ。)は、活性エネルギー線の照射により金属核を形成する非導電性金属化合物である。かかる化合物は、LDS添加剤として作用する。非導電性金属化合物は、活性エネルギー線の照射により金属核を形成できるものであれば限定されない。詳細なメカニズムは定かでないが、このような非導電性金属化合物は、吸収可能な波長領域を有するYAGレーザー等の活性エネルギー線が照射されると、金属核が活性化して(たとえば、還元されて)、金属めっきが可能な金属核が生成される、と考えられる。そして、非導電性金属化合物が分散された熱硬化性樹脂組成物の硬化物の表面に対して活性エネルギー線を照射すると、その照射面に、金属めっきが可能な金属核を有するシード領域が形成される。得られたシード領域を利用することにより、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の表面に、回路などのめっきパターンを形成することが可能になる。
【0063】
非導電性金属化合物は、たとえば、(i)スピネル型の金属酸化物、(ii)周期表第3族~第12族の中から選択されており、かつ当該族が隣接する2以上の遷移金属元素を有する金属酸化物、および、(iii)錫含有酸化物からなる群から選択される1種以上を含む。
【0064】
上記(i)において、スピネル型の構造とは、複酸化物でAB24型の化合物(AとBは金属元素である。)にみられる代表的結晶構造型の一つである。スピネル構造は、順スピネル構造、(AとBが一部入れ替わった)逆スピネル構造(B(AB)O4)のいずれでもよいが、順スピネル構造がより好ましく使用できる。この場合、順スピネル構造のAが銅であってもよい。
【0065】
スピネル型の金属酸化物を構成する金属原子としては、たとえば、銅やクロムを用いることができる。つまり、非導電性金属化合物は、銅またはクロムを含むスピネル型の金属酸化物を含有することができる。たとえば、銅メッキパターンとの密着性を高める観点から、金属原子として銅を用いることができる。
【0066】
また、金属原子として、銅やクロムの他に、アンチモン、スズ、鉛、インジウム、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、カドミウム、銀、ビスマス、ヒ素、マンガン、マグネシウム、カルシウムなどの金属原子を微量含有していてもよい。これらの微量金属原子は酸化物として存在していてもよい。また、微量金属原子の含有量は、それぞれ、金属酸化物中の金属原子全体に対して、0.001質量%以下とすることができる。
【0067】
スピネル型の金属酸化物は、熱的に高安定性があり、酸性またはアルカリ性の水性金属化浴において耐久性を有することができる。スピネル型の金属酸化物は、たとえば、熱硬化性樹脂組成物の分散性を適切に制御することにより、高酸化物の状態で、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の表面における未照射領域に存在することができる。以上のようなスピネル型の金属酸化物の一例として、たとえば、特表2004-534408号公報に記載されているものが挙げられる。
【0068】
上記(ii)の遷移金属元素を有する金属酸化物としては、周期表第3族~第12族の中から選択されており、かつ当該族が隣接する2以上の遷移金属元素を有する金属酸化物である。ここで、上記遷移金属元素に属する金属は、周期表のn族の金属と、n+1族の金属とを含有すると表すことができる。上記遷移金属元素を有する金属酸化物は、これら金属の酸化物を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
周期表のn族に属する金属としては、たとえば、3族(スカンジウム、イットリウム)、4族(チタン、ジルコニウムなど)、5族(バナジウム、ニオブなど)、6族(クロム、モリブテンなど)、7族(マンガンなど)、8族(鉄、ルテニウムなど)、9族(コバルト、ロジウム、イリジウムなど)、10族(ニッケル、パラジウム、白金)、11族(銅、銀、金など)、12族(亜鉛、カドミウムなど)、13族(アルミニウム、ガリウム、インジウムなど)が挙げられる。
【0070】
周期表のn+1族の金属としては、たとえば、4族(チタン、ジルコニウムなど)、5族(バナジウム、ニオブなど)、6族(クロム、モリブテンなど)、7族(マンガンなど)、8族(鉄、ルテニウムなど)、9族(コバルト、ロジウム、イリジウムなど)、10族(ニッケル、パラジウム、白金)、11族(銅、銀、金など)、12族(亜鉛、カドミウムなど)、13族(アルミニウム、ガリウム、インジウムなど)が挙げられる。
以上のような遷移金属元素を有する金属酸化物の一例として、たとえば、特表2004-534408号公報に記載されているものが挙げられる。
【0071】
また、上記(iii)の錫含有酸化物としては、少なくとも錫を含有する金属酸化物である。錫含有酸化物を構成する金属原子が、錫のほかにアンチモンを含んでもよい。このような錫含有酸化物は、酸化錫、酸化アンチモンを含有することができる。さらに具体的には、錫含有酸化物に含まれる金属成分中、90質量%以上が錫であり、5質量%以上がアンチモンであってもよい。この錫含有酸化物は、金属成分として、鉛および/または銅をさらに含有してもよい。具体的には、錫含有酸化物に含まれる金属成分においては、たとえば、90質量%以上が錫であり、5~9質量%がアンチモンであり、0.01~0.1質量%の範囲で鉛を含み、0.001~0.01質量%の範囲で銅を含むことができる。このような錫含有酸化物は、たとえば、酸化錫および酸化アンチモンと、酸化鉛および酸化銅の1種以上とを含有することができる。なお、錫含有酸化物は、スピネル型の金属酸化物で例示された微量金属原子を含有してもよい。
また、錫含有酸化物は、上記(i)のスピネル型の金属酸化物または上記(ii)の遷移金属元素を有する金属酸化物と併用して使用してもよい。
【0072】
熱硬化性樹脂組成物中の非導電性金属化合物の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の硬化物において、めっき付き特性を良好なものとする観点から、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、たとえば2質量%以上であり、好ましくは4質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上である。また、熱硬化性樹脂組成物の硬化物において、絶縁性の低下や誘電正接の増加を抑制する観点、および、非導電性金属化合物の形状が非球形の場合において、熱硬化性樹脂組成物の流動性を良好なものとする観点から、非導電性金属化合物の含有量は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、たとえば20質量%以下であり、好ましくは18質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0073】
また、熱硬化性樹脂組成物中の無機充填材および非導電性金属化合物の含有量の合計は、樹脂機械特性、樹脂強度の向上の観点から、熱硬化性樹脂組成物全体に対して好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。
一方、成形性を向上する観点から、無機充填材および非導電性金属化合物の含有量の合計は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して好ましくは98質量%以下であり、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である。
【0074】
(その他の成分)
本実施形態において、熱硬化性樹脂組成物は、上述の成分以外の成分を含んでもよい。
たとえば、熱硬化性樹脂組成物は、カップリング剤、密着助剤および硬化促進剤からなる群から選択される1種または2種以上をさらに含んでもよい。
【0075】
(カップリング剤)
熱硬化性樹脂組成物は、第1封止層107または第2封止層111の成形性を向上する観点から、好ましくはカップリング剤をさらに含む。
同様の観点から、カップリング剤は、好ましくはメルカプトシラン、アミノシランおよびエポキシシランからなる群から選択される1種以上を含む。連続成形性という観点では、メルカプトシランが好ましく、流動性の観点では、2級アミノシランが好ましく、密着性という観点ではエポキシシランが好ましい。
【0076】
このうち、エポキシシランとして、たとえば、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられ、好ましくはγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランである。
【0077】
アミノシランとして、たとえば、フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(6-アミノヘキシル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(3-(トリメトキシシリルプロピル)-1,3-ベンゼンジメタナン等が挙げられ、好ましくはN-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシランである。アミノシランの1級アミノ部位をケトンまたはアルデヒドを反応させて保護した潜在性アミノシランカップリング剤として用いてもよい。また、アミノシランは、2級アミノ基を有してもよい。
【0078】
また、メルカプトシランとして、たとえば、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランのほか、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドのような熱分解することによってメルカプトシランカップリング剤と同様の機能を発現するシランカップリング剤などが挙げられ、好ましくはγ-メルカプトプロピルトリメトキシシランである。
【0079】
これらのシランカップリング剤は予め加水分解反応させたものを配合してもよい。これらのシランカップリング剤は1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0080】
熱硬化性樹脂組成物中のカップリング剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物のフロー流動長を長くすることにより成形性を向上させる観点から、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。
一方、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の吸水性の増大を抑制し、良好な防錆性を得る観点から、カップリング剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.8質量%以下、さらに好ましくは0.6質量%以下、さらにより好ましくは0.4質量%以下である。
【0081】
(硬化促進剤)
硬化促進剤は、熱硬化性樹脂と硬化剤との架橋反応を促進させるものであればよく、一般の熱硬化性樹脂組成物に使用するものを用いることができる。
【0082】
硬化促進剤は、たとえば有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、ベンジルジメチルアミン(BDMA)等が例示されるアミジンや2,4,6-トリスジメチルアミノメチルフェノール(DMP-30)などの3級アミン、上記アミジンやアミンの4級塩等の窒素原子含有化合物から選択される1種類または2種類以上を含むことができる。これらの中でも、硬化性を向上させる観点からはリン原子含有化合物を含むことがより好ましい。また、成形性と硬化性のバランスを向上させる観点からは、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等の潜伏性を有するものを含むことがより好ましい。同様の観点から、硬化促進剤は、好ましくはトリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムビス(ナフタレン-2,3-ジオキシ)フェニルシリケートおよびテトラフェニルホスホニウム-4,4'-スルフォニルジフェノラートから選択される1以上を含む。
【0083】
熱硬化性樹脂組成物が硬化促進剤を含むとき、硬化促進剤の含有量は、成形時における硬化性を効果的に向上させる観点から、熱硬化性樹脂組成物の全体に対して好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.15質量%以上、さらに好ましくは0.25質量%以上である。
一方、成形時における流動性の向上を図る観点から、硬化促進剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の全体に対して好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.8質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0084】
また、熱硬化性樹脂組成物は、上述の非導電性金属化合物のほかに、少なくとも1種類の有機性の熱安定性金属キレート錯塩を含有していてもよい。
また、熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、たとえば、界面活性剤、シリコーン、離型剤、難燃剤、イオン捕捉剤、着色剤、低応力材および酸化防止剤等の添加剤を含有することができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
熱硬化性樹脂組成物中のこれら各成分の量は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、それぞれ、0.01~10質量%程度の量とすることができる。
【0085】
本実施形態において、熱硬化性樹脂組成物の製造方法は、熱硬化性樹脂組成物の形状や配合成分に応じて選択することができる。熱硬化性樹脂組成物の形状の具体例として、シート状、粒状(たとえば顆粒状、タブレット状)等の固形状;液状が挙げられる。
たとえば、液状の熱硬化性樹脂組成物の製造方法としては、たとえば、各成分、添加剤などをプラネタリーミキサー、三本ロール、二本熱ロール、ライカイ機などの装置を用いて分散混練したのち、真空下で脱泡処理して製造する方法が挙げられる。
また、粒状またはシート状の熱硬化性樹脂組成物の製造方法としては、たとえば、熱硬化性樹脂組成物の各成分を、公知の手段で混合することにより混合物を得、混合物を溶融混練することにより、混練物を得る方法が挙げられる。混練方法としては、たとえば、1軸型混練押出機、2軸型混練押出機等の押出混練機や、ミキシングロール等のロール式混練機を用いることができるが、2軸型混練押出機を用いることが好ましい。冷却した後、混練物を所定の形状とすることができる。
【0086】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 半導体素子と、
前記半導体素子および前記半導体素子に設けられた導体部を封止する第1の封止材と、
前記第1の封止材上に設けられるとともに、前記導体部に電気的に接続する第1の配線層と、
前記第1の封止材上に設けられるとともに、前記第1の封止材および前記第1の配線層を封止する第2の封止材と、
前記第2の封止材上に設けられるとともに前記第1の配線層に電気的に接続する第2の配線層と、
を含み、
前記第1および第2の封止材が、それぞれ、
熱硬化性樹脂と、
無機充填材と、
活性エネルギー線の照射により金属核を形成する非導電性金属化合物と、
を含む、第1および第2のLDS(LASER DIRECT STRUCTURING)用熱硬化性樹脂組成物の硬化物により構成されている、半導体装置。
2. 前記第1および第2のLDS用熱硬化性樹脂組成物がカップリング剤をさらに含む、1.に記載の半導体装置。
3. 半導体素子および前記半導体素子を封止する第1の封止材を有する構造体を準備する工程と、
前記第1の封止材の表面の特定の部位に活性エネルギー線を照射する工程と、
前記第1の封止材の表面の前記活性エネルギー線が照射された領域に金属層を選択的に形成することにより、前記半導体素子に設けられた導体部に電気的に接続する第1の配線層を形成する工程と、
前記第1の封止材上に、前記第1の封止材および前記第1の配線層を封止する第2の封止材を形成する工程と、
前記第2の封止材の表面の特定の部位に活性エネルギー線を照射する工程と、
前記第2の封止材の表面の前記活性エネルギー線が照射された領域に金属層を選択的に形成することにより、前記第1の配線層に電気的に接続する第2の配線層を形成する工程と、
を含み、
前記第1および第2の封止材が、それぞれ、
熱硬化性樹脂と、
無機充填材と、
活性エネルギー線の照射により金属核を形成する非導電性金属化合物と、
を含む、第1および第2のLDS(LASER DIRECT STRUCTURING)用熱硬化性樹脂組成物の硬化物により構成されている、半導体装置の製造方法。
4. 第1の配線層を形成する前記工程の後、第2の封止材を形成する前記工程の前に、前記第1の配線層が設けられた前記第1の封止材の表面にArプラズマ処理を施す工程を含む、3.に記載の半導体装置の製造方法。
5. 前記第2のLDS用熱硬化性樹脂組成物がシート状または液状である、3.または4.に記載の半導体装置の製造方法。
【0087】
(実施例1)
表1に記載の配合にてLDS用熱硬化性樹脂組成物を調製し、評価した。LDS用熱硬化性樹脂組成物に用いた成分は以下のとおりである。
【0088】
(無機充填材)
無機充填材1:二酸化珪素、SC-2500-SQ、アドマテックス社製、平均粒子径0.6μm
無機充填材2:二酸化珪素、SC-5500-SQ、アドマテックス社製、平均粒子径1.6μm
無機充填材3:二酸化珪素、TS-6026、マイクロンカンパニー社製 平均粒子径9.0μm
(カップリング剤)
カップリング剤1:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、S510、チッソ社製
カップリング剤2:N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、CF-4083、東レダウコーニング社製
(熱硬化性樹脂)
エポキシ樹脂1:ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、NC3000、日本化薬社製
(硬化剤)
硬化剤1:ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型樹脂、MEH-7851SS、明和化成社製
(硬化促進剤)
硬化促進剤1:テトラフェニルホスホニウムビス(ナフタレン-2,3-ジオキシ)フェニルシリケート
硬化促進剤2:テトラフェニルホスホニウム-4,4'-スルフォニルジフェノラート
(離型剤)
離型剤1:グリセリントリモンタン酸エステル、リコルブ-WE-4、クラリアント・ジャパン社製
(添加剤:非導電性金属化合物)
添加剤1:無機複合酸化物、Black3702、アサヒ化成工業社製
(シリコーン)
シリコーン1:ポリオキシアルキレンエポキシ変性ジメチルポリシロキサン、FZ-3730、東レダウコーニング社製
【0089】
(熱硬化性樹脂組成物の調製)
表1に示す配合量の各原材料を、常温でミキサーを用いて混合した後、70~100℃でロール混練した。次いで、得られた混練物を冷却した後、これを粉砕して、粉粒状の熱硬化性樹脂組成物を得た。次いで、高圧で打錠成形することによってタブレット状の熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0090】
(無機充填材のサイズの測定)
組成物中の無機充填材全体のd50をレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製、SALD-7000)により測定した。
【0091】
(成形性)
各例で得られた樹脂組成物を175℃の条件で、圧縮成形機を用いて、70mm×240mm×厚さ0.6μmの成形物を得た。得られた成形物のサンプルを観察し、以下の判断基準で評価した。
◎:内部ボイド、外部ボイドともになし
△:外部ボイドが観察される
×:未充填がある
【0092】
(メッキ性)
各例で得られた樹脂組成物を175℃の条件で成形硬化し硬化物を得た。得られた硬化物の表面に、YAGレーザー(波長1064nm)を照射し、無電解銅メッキを実施して、そのレーザー照射領域におけるメッキ付き性について、以下の判断基準で評価した。
◎:めっき表面にムラなし
○:めっき表面に多少のムラが見えるがめっき未着部分はなし
△:めっき表面にムラが見えるがめっき未着部分はなし
×:めっき表面にひどいムラが見えめっき未着部あり
【0093】
(多段構造性)
各例で得られた樹脂組成物を175℃の条件で、圧縮成形機を用いて、70mm×100mm×厚さ0.3μmの成形物を得た。成形物の表面に、YAGレーザー(波長1064nm)を照射し、無電解銅メッキを実施して、第一層を形成した。第一層として成形したサンプルを基板としてプラズマ処理(Arガス雰囲気下、パワー200W、処理時間2分)を実施してから、第二層を各例で得られた樹脂組成物を175℃の条件で、圧縮成形機を用いて、70mm×100mm×厚さ0.3μmの成形物を得た。第一層と同様に成形物の表面に、YAGレーザー(波長1064nm)を照射し、無電解銅メッキを実施して、第二層を形成した。第二層の形成手順と同様にして、さらに第三層を成形して多段構造の成形物を作製し、樹脂成形物を評価した。
樹脂組成物の評価基準を以下に示す。
◎:成形物が得られる
×:成形物が得られない
【0094】
(密着性)
密着性の指標として、上記多層品のMSL(moisture sensitivity level:吸湿耐熱性)試験を以下の方法でおこなった。多段構造性評価の項で上述の多層品について、IPC/JEDEC J-STD-033Dに準拠して、所定の吸湿条件(表1中「L1」、85℃/85%、168h)で処理後、260℃リフローで3回処理を行い、第一層と第二層と第三層のいずれかの界面で剥離が発生していないかどうか、超音波映像装置(Scanning Acoustic Tomograph:SAT、日立パワーソリューションズ社製)を用いて評価した。評価基準を以下に示す。
Pass:SAT観察で剥離無し
×:SAT観察で、剥離あり
【0095】
【表1】
【0096】
表1より、実施例1においては、封止材の成形性、メッキ性に優れ、また、多段構造の封止材の積層性、および、成形品同士および銅メッキとの密着性に優れていた。
【符号の説明】
【0097】
100 半導体装置
101 基板
103 半導体素子
105 導体部
107 第1封止層
109 第1配線層
111 第2封止層
113 第2配線層
115 凹部
117 凹部
図1
図2
図3